JP6101494B2 - レドックスフロー二次電池用電解質膜 - Google Patents
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Description
特許文献2に開示された複合膜は、電気抵抗が高く、また、各イオンは多孔膜ほどではないが、自由に拡散してしまうという問題がある。特許文献3に開示された膜についても、上記と同様の問題があり、耐酸化耐久性にも劣る。
特許文献4に開示された電池は、電流効率が未だ不十分であり、長期にわたる硫酸電解液中での耐酸化劣化性にも劣る。また、同文献の比較例に、テフロン(登録商標)系イオン交換膜としての電流効率が64.8〜78.6%であることが記載されており、性能的にも問題を有する。
特許文献5についても、上記と同様の問題点を解決できておらず、また、大型設備では、価格的にも高価となってしまうという問題がある。
特許文献6に開示された膜は、塗布膜の厚みを極薄(数μm)にしないと、内部抵抗が増加すると記載されている。また、イオン選択透過性を向上させる工夫については一切記載されていない。
特許文献7に開示された電池は、ポリスルホン系隔膜を使用するため、隔膜のイオン選択透過性や耐酸化劣化性が十分ではなく、電池の電気抵抗、電流効率、耐久性が十分ではない。
特許文献8に開示された電池は、電流効率が不十分であり、また、酸化劣化するため長期使用に関しても問題点を有している。
特許文献9に開示された膜は、電気抵抗が高くなるという問題点を有している。
特許文献10の実施例に示された結果では、膜の内部抵抗(電気抵抗)が十分低いとは言えず、また、長期使用では耐酸化劣化が問題となる。
炭化水素系樹脂を主とした膜基材としては、両セルの主役の電解質を含む電解液を単に隔離しただけの単なるイオン選択性のない多孔膜や、イオン選択性のない(無孔の)親水性膜基材、多孔膜に親水性膜基材を埋め込むか又は被覆したもの等が用いられている。また、膜自身が各種アニオン基を有する所謂カチオン交換膜、又は多孔質膜基材の孔に、カチオン交換性樹脂を被覆又は埋め込んだ複合膜、同様に膜自身がカチオン基を有するアニオン交換膜、同様に多孔膜基材に、アニオン交換性樹脂を被覆又は埋め込んだ複合膜、両者の積層型等が隔膜として用いられており、それぞれの特徴を生かした研究が行われている。
隔膜としては、電気抵抗(プロトン透過性に主に依存)と、主役の活物質である金属イオン(多価カチオン)透過性阻止という、相反する2つの性能を十分に満足するイオン交換樹脂隔膜は、これまで開発されていない。フッ素系イオン交換樹脂に関しても、プロトン(H+)透過性に優れ、且つ、活物質イオンの透過を抑制するという相矛盾する性質に対する工夫が十分に検討されておらず、低電気抵抗、長期にわたる耐酸化劣化性(耐ヒドロキシラジカル性)などを充分に満足するレドックスフロー電池用電解質膜は開発されていない。
[1]
下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を含み、
前記イオン交換樹脂組成物が、フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部の塩基性重合体を含むレドックスフロー二次電池用電解質膜。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF((−O−CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− (1)
(式(1)中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。X4は、COOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH3R1、NH2R1R2、NHR1R2R3、NR1R2R3R4)を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X4がPO3Z2である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
[2]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーは、下記式(2)で表される構造を有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA)である、上記[1]記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
−[CF2CF2]a−[CF2−CF((−O−(CF2)m−X4)]g− (2)
(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示し、X4はSO3Hを示す。)
[3]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1500g/eqであり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、上記[1]又は[2]記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[4]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300g/eqであり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、上記[1]又は[2]記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[5]
前記塩基性重合体が、ポリアゾール系化合物である、上記[1]〜[4]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[6]
前記ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、上記[5]記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[7]
前記ポリアゾール系化合物は、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、上記[6]記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[8]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記塩基性重合体とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、上記[1]〜[7]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[9]
前記電解質膜は、130〜200℃にて1〜60分間加熱処理されたものである、上記[1]〜[8]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を含み、
前記イオン交換樹脂組成物が、フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部の塩基性重合体を含むレドックスフロー二次電池用電解質膜である。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF((−O−CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− (1)
(式(1)中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。X4は、COOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH3R1、NH2R1R2、NHR1R2R3、NR1R2R3R4)を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X4がPO3Z2である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
バナジウム系レドックスフロー二次電池の場合、正極セル室には、バナジウム4価(V4+)及び同5価(V5+)を含む硫酸電解液からなる正極電解液を、負極セル室には、バナジウム3価(V3+)及び同2価(V2+)を含む負極電解液を流通させることにより、電池の充電及び放電が行われる。このとき、充電時には、正極セル室においては、バナジウムイオンが電子を放出するためV4+がV5+に酸化され、負極セル室では外路を通じて戻って来た電子によりV3+がV2+に還元される。この酸化還元反応では、正極セル室ではプロトン(H+)が過剰になり、一方負極セル室では、プロトン(H+)が不足する。隔膜は正極セル室の過剰なプロトンを選択的に負極室に移動させ電気的中性が保たれる。放電時には、この逆の反応が進む。この時の電流効率(%)は、放電電力量を充電電力量で除した比率(%)で表され、両電力量は、電池セルの内部抵抗と隔膜のイオン選択性及びその他電流損失に依存する。内部抵抗の減少は電圧効率を向上させ、イオン選択性の向上及びその他電流損失の低減は、電流効率を向上させるので、レドックスフロー二次電池においては、重要な指標となる。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF((−O−CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− (1)
(式(1)中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。X4は、COOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH3R1、NH2R1R2、NHR1R2R3、NR1R2R3R4)を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X4がPO3Z2である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
式(3):CF2=CF−O−(CF2CFXO)n−[A](式中、Xは、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、nは0〜5の整数を示す。[A]は(CF2)m−W(mは0〜6の整数を示す。ただし、nとmは同時に0にならない。WはSO3Hを示す。)、
又は式(4):CF2=CF−O−(CF2)P−CFX(−O−(CF2)K−W)若しくはCF2=CF−O−(CF2)P−CFX(−(CF2)L−O−(CF2)m−W)(式中、Xは、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、Pは0〜12の整数を示し、kは1〜5の整数を示し、Lは1〜5の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。ただし、kとLは同じでも、異なっていてもよく、P、K、Lは同時に0とはならない。)。
−[CF2CF2]a−[CF2−CF((−O−(CF2)m−X4)]g− (2)
(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示し、X4はSO3Hを示す。)
PFSA樹脂の場合、例えば、下記一般式(5)で表されるフッ化ビニルエーテル化合物と、下記一般式(6)で表されるフッ化オレフィンモノマーとの共重合体からなるPFSA樹脂前駆体を加水分解することにより得られる。
(式中、Xは、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、nは0〜5の整数を示し、Aは(CF2)m−W、又はCF2=CF−O−(CF2)P−CFX(−O−(CF2)K−W)若しくはCF2=CF−O−(CF2)P−CFX(−(CF2)L−O−(CF2)m−W)を示し、pは0〜12の整数を示し、mは0〜6の整数を示し(ただし、nとmは同時に0にならない。)、kは1〜5の整数を示し、Lは1〜5の整数を示し(ただし、nとL又はKは同時に0とならない。)、Wは加水分解によりSO3Hに転換し得る官能基を示す。)
CF2=CFZ (6)
(式中、Zは、H、Cl、F、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。)
(1) PFSA樹脂前駆体のメルトフローインデックス
ASTM:D1238に準拠して、測定条件:温度270℃、荷重2160gで測定を行った。
PFSA樹脂0.3gを、25℃、飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中の遊離プロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和滴定の終点をpH7とし、中和滴定後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているPFSA樹脂分を純水ですすぎ、さらに上皿乾燥機により160℃で乾燥し、秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているPFSA樹脂の質量をW(mg)とし、下記式より当量質量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22
以上の操作を5回繰り返した後、算出された5つのEW値の最大値および最小値を除き、3つの値を相加平均して測定結果とした。
PFSA樹脂の分散液を清澄なガラス板上に塗布し、150℃で約10分間乾燥し、剥離して約30μmの膜を形成させ、これを23℃の水中に約3時間放置し、その後23℃、関係湿度(RH)50%の部屋に24時間放置した時の平衡含水率を測定した。基準の乾燥膜としては、80℃真空乾燥膜を用いた。平衡含水率は、膜の質量変化から算出した。
レドックスフロー二次電池は、隔膜の両側にて、液透過性で多孔質の集電体電極(負極用、正極用)を隔膜の両側にそれぞれ配置し、押圧でそれらを挟み、隔膜で仕切られた一方を正極セル室、他方を負極セル室とし、スペーサーで両セル室の厚みを確保した。正極セル室には、バナジウム4価(V4+)及び同5価(V5+)を含む硫酸電解液からなる正極電解液を、負極セル室にはバナジウム3価(V3+)及び同2価(V2+)を含む負極電解液を流通させ、電池の充電及び放電を行った。このとき、充電時には、正極セル室においては、バナジウムイオンが電子を放出するためV4+がV5+に酸化され、負極セル室では外路を通じて戻って来た電子によりV3+がV2+に還元される。この酸化還元反応では、正極セル室ではプロトン(H+)が過剰になり、一方負極セル室では、プロトン(H+)が不足する。隔膜は正極セル室の過剰なプロトンを選択的に負極室に移動させ電気的中性が保たれる。放電時には、この逆の反応が進む。この時の電池効率(エネルギー効率)(%)は、放電電力量を充電電力量で除した比率(%)で表され、両電力量は、電池セルの内部抵抗と隔膜のイオン選択透過性及びその他電流損失に依存する。また、電流効率(%)は、放電電気量を充電電気量で除した比率(%)で表され、両電気量は、隔膜のイオン選択透過性及びその他電流損失に依存する。電池効率は、電流効率と電圧効率の積で表される。内部抵抗すなわちセル電気抵抗率の減少は電圧効率を向上させ、イオン選択透過性の向上及びその他電流損失の低減は、電流効率を向上させるので、レドックスフロー二次電池において、重要な指標となる。
充放電実験は、上述のようにして得られた電池を用いて行った。全バナジウム濃度が2M/Lで、全硫酸根濃度が4M/Lでの水系電解液を使用し、また、設置した正極及び負極セル室の厚みがそれぞれ5mmで、両多孔質電極と隔膜の間には炭素繊維からなる厚み5mmで嵩密度が約0.1g/cm3の多孔質状のフエルトを挟んで用いた。充放電実験は電流密度80mA/cm2で実施した。
セル電気抵抗率は、ACインピーダンス法を用いて、放電開始時においてAC電圧10mV,周波数20kHzでの直流抵抗値を測定し、それに電極面積を掛けることによって求めた。
(1)PFSA樹脂前駆体の作製
ステンレス製攪拌式オートクレーブに、C7F15COONH4の10%水溶液と純水とを仕込み、十分に真空、窒素置換を行った後、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)(以下、「TFE」とも略記する。)ガスを導入してケージ圧力で0.7MPaまで昇圧した。引き続いて、過硫酸アンモニウム水溶液を注入して重合を開始した。重合により消費されたTFEを補給するため、連続的にTFEガスを供給してオートクレーブの圧力を0.7MPaに保つようにして、供給したTFEに対して、質量比で0.70倍に相当する量のCF2=CFO(CF2)2−SO2Fを連続的に供給して重合を行い、重合条件を最適な範囲に調整して、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体粉末を得た。得られたPFSA樹脂前駆体粉末のMFIは、それぞれA1が1.5(g/10分)、A2が1.5(g/10分)、A3が1.8(g/10分)、A4が2.0(g/10分)であった。
得られたPFSA樹脂前駆体粉末を、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を更新して5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SO3H)を有し、式(1)で表される構造を有するPFSA樹脂を得た。得られたPFSA樹脂A1のEWは、それぞれA1が650(g/eq)、A2が910(g/eq)、A3が1100(g/eq)、A4が1500(g/eq)であった。
得られたPFSA樹脂分散液を、上記と同様の順に、分散液(ASF1)、分散液(ASF2)、分散液(ASF3)、分散液(ASF4)とした。
(3)電解質膜の作製
得られた混合分散液(ASBF1)を、公知の通常の方法にて、担体シートであるポリイミド製フィルム上にキャストし、120℃(20分)の熱風を当てて、溶媒をほぼ完全に飛ばし、乾燥させることにより膜を得た。これを更に、160℃10分の条件下における熱風空気雰囲気下で、熱処理することにより膜厚30μmの電解質膜を得た。得られた電解質膜の上記熱処理前後のEWは、その変化率が0.2〜0.3%程度であった。得られた電解質膜の平衡含水率は11質量%であった。
25℃水中3時間における電解質膜の最大含水率は21質量%であった。ここで、最大含水率は、平衡含水率測定時に観測される最大値を示す。
実施例1で用いた20%PFSA樹脂分散液(ASF1)の代わりにナフィオンDE2021(デュポン社製、20%溶液、EW1050)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は6質量%、最大含水率は14質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は97.5/0.97であった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が97.3%、セル電気抵抗が0.98Ω・cm2であった。
実施例1で用いた塩基性重合体のPBIの代わりにポリアニリン(米国POLYSCIENCES Inc.製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は10質量%、最大含水率は18質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は97.2/0.98であった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が97%、セル電気抵抗が0.99Ω・cm2であった。
実施例1で用いた塩基性重合体のPBIの代わりにポリビニルピリジン(日本国シグマアルドリッチジャパン(株)社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は10質量%、最大含水率は18質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は97.2/0.98であった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が97%、セル電気抵抗が0.99Ω・cm2であった。
実施例1で用いた混合分散液(ASBF1)の代わりに混合分散液(ASBF2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は8質量%、最大含水率は17質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は98.0/0.95であった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が97.8%、セル電気抵抗が0.96Ω・cm2であった。
実施例1で用いた混合分散液(ASBF1)の代わりに混合分散液(ASBF3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は5質量%、最大含水率は13質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は97.6/0.96であった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が97.6%、セル電気抵抗が0.96Ω・cm2であった。
実施例1で用いた混合分散液(ASBF1)の代わりに混合分散液(ASBF4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は4質量%、最大含水率は11質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は97.1/1.02であった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が96.8%、セル電気抵抗が1.04Ω・cm2であった。
実施例2において、ポリベンズイミダゾールを、PFSA樹脂成分100質量部に対して7質量部となるように混合したこと以外は実施例2と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は5質量%、最大含水率は12質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は98.0/0.99であった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が98.0%、セル電気抵抗が1.00Ω・cm2であった。
ポリベンズイミダゾールを用いなかったこと以外は実施例2と同様の方法により電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は6質量%、最大含水率は18質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は94.5/1.20であり、実施例と比較して劣っていた。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が86.0%、セル電気抵抗が1.30Ω・cm2であり、耐久性についても実施例と比較して劣っていた。
ポリベンズイミダゾールを用いなかったこと以外は実施例7と同様の方法により電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は8質量%、最大含水率は18質量%であった。
また、実施例1と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は95.0/1.00であり、実施例と比較して劣っていた。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果、電流効率が88.5%、セル電気抵抗が1.20Ω・cm2であり、耐久性についても実施例と比較して劣っていた。
2 正極セル室
3 負極
4 負極セル室
5 電解質膜
6 電解槽
7 正極電解液タンク
8 負極電解液タンク
9 交直変換装置
10 レドックスフロー二次電池
Claims (9)
- 下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を含み、
前記イオン交換樹脂組成物が、フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部の塩基性重合体を含むレドックスフロー二次電池用電解質膜。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF((−O−CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− (1)
(式(1)中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。X4は、COOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH3R1、NH2R1R2、NHR1R2R3、NR1R2R3R4)を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X4がPO3Z2である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。) - 前記フッ素系高分子電解質ポリマーは、下記式(2)で表される構造を有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA)である、請求項1記載のレドックスフロー二次
電池用電解質膜。
−[CF2CF2]a−[CF2−CF((−O−(CF2)m−X4)]g− (2)
(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示し、X4はSO3Hを示す。) - 前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1500g/eqであり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、請求項1又は2記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
- 前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300g/eqであり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、請求項1又は2記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
- 前記塩基性重合体が、ポリアゾール系化合物である、請求項1〜4のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
- 前記ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、請求項5記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
- 前記ポリアゾール系化合物は、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項6記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
- 前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記塩基性重合体とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、請求項1〜7のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
- 前記電解質膜は、130〜200℃にて1〜60分間加熱処理されたものである、請求項1〜8のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜の製造方法。
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