以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する形態に限定されることはなく、技術思想を逸脱しない範囲において種々変形を行なって実施することが可能である。また、添付の図面においては、説明のために上下、左右の縮尺を誇張して図示することがあり、実際のものとは縮尺が異なる場合がある。
まず、最初に、本発明のナノインプリントモールドの製造方法の第1の実施形態について図1〜図2を参照しつつ説明する。
<ナノインプリントモールドの製造方法(第1の実施形態)>
図1(A)〜(D)は、本発明のナノインプリントモールドの製造方法における第1の実施形態の工程例を経時的に説明するための断面図であり、図2(A)〜(C)は、本発明のナノインプリントモールドの製造方法における第1の実施形態の工程例を経時的に説明するための断面図であって図1(D)の工程に続く図面である。
第1実施形態における本発明のナノインプリントモールドの製造方法は、その要部として、基板の上に、中間膜を介して、凸状の基礎マスク部をパターン形成する基礎マスクパターン形成工程と、この基礎マスク部の上に当該マスク部の寸法を補正するための寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程と、を有して構成される。
さらに第1実施形態におけるナノインプリントモールドの製造方法を詳しく説明すると、当該製造方法は、(1)平面からなる第1主面部を有する基板を準備する工程と、(2)基板の第1主面部の上に、中間膜を介して凸状の基礎マスク部をパターン形成する基礎マスクパターン形成工程と、(3)凸状の基礎マスク部の側面および上面、ならびに中間膜の上面を覆うように寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程と、(4)寸法補正用の膜部をエッチバックして、中間膜の上面を露出させるエッチバック工程と、(5)エッチバック工程によって中間膜の上にパターン形成されたエッチング用マスクを利用して中間膜をエッチングする中間膜エッチング工程と、(6)中間膜エッチング工程により、基板の第1主面部の上にパターン形成された中間膜マスクを利用して、基板の第1主面部をエッチングする基板エッチング工程と、を有して構成される。
以下、各工程毎に順次説明する。
(1)平面からなる第1主面部を有する基板を準備する工程
図1(A)に示されるように、ナノインプリントモールド用の基板10が準備される。このように準備された基板10の片側の主面11には、第1主面部11aが形成されており、この第1主面部11aには、中間膜20が形成される。
中間膜20の上には、後述する凸状の基礎マスク部が形成される。
図1(A)においては、基板10の片側の主面11の全エリアが平面からなる第1主面部11aを構成している例が示されているが、図示の構成に限定されることなく、例えば、中間膜20や後述する凸状の基礎マスク部を設けるエリアのみが部分的に突出した平面の第1主面部を構成する、いわゆるメサ構造の基板10とすることもできる。メサ構造は一段に限定されることなく多段になっていてもよい。
基板10の材質は適宜選択することができるが、例えば、ナノインプリントモールドをいわゆる光インプリント用のモールドとして使用する場合、基板10は、照射光が透過可能な透明基材を用いて形成され、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラスや、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂等、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。また、例えば、ナノインプリントモールドをいわゆる熱インプリント用のモールドとして使用する場合、基板10は必ずしも透明基材である必要はなく、例えばニッケル、チタン、アルミニウムなどの金属、シリコンや窒化ガリウム等の半導体などを用いてもよい。
ナノインプリントモールドの基台となる基板10の厚さは、基板の強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定することができる。
基板10の上に設けられる中間膜20としては、基板10に比べてエッチングレートが小さく耐エッチング性を有する材料を用いることができ、例えば、クロム、チタン、タンタル、珪素、アルミニウム等の金属、窒化クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等のクロム系化合物、酸化タンタル、酸窒化タンタル、酸化硼化タンタル、酸窒化硼化タンタル等のタンタル化合物、窒化チタン、窒化珪素、酸窒化珪素等を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。膜厚は、通常、50nm以下、特に、1〜20nm、より好ましくは3〜10nm程度とされる。
中間膜20は、例えば、スパッタ、蒸着、イオンプレート等により形成することができる。
なお、中間膜20は2層以上の積層膜として構成してもよい。
(2)基礎マスクパターン形成工程
次いで、図1(B)に示されるように、基板10の第1主面部11aの上に形成された中間膜20の上に、凸状の基礎マスク部30を所定のパターンで形成する基礎マスクパターン形成工程が実施される。本発明でいう「基礎マスク部」とは、寸法補正用の膜部が直接被着されて寸法補正に直接的に関与する基礎となるマスクを意味する。
第1の実施形態において、凸状の基礎マスク部30は、樹脂を主成分とするいわゆるレジストから構成することが好ましく、例えば、電子線(EB)リソグラフィ法、光リソグラフィ法、またはナノインプリント法により凸状の基礎マスク部30をパターン形成することができる。
第1の手法として、電子線(EB)リソグラフィ法を用いる場合、基板10の中間膜20上に、電子線感応性樹脂膜を形成するレジスト形成工程が行なわれ、次いで、形成された電子線感応性樹脂膜に対して、所望のパターンを形成するように電子線描画が行われる。
電子線描画が完了した後、電子線感応性樹脂膜を現像するレジスト現像工程が行なわれる。例えば、ポジ型の電子線感応性樹脂膜を用いた場合、未照射部分が分解しない状態でレジストとして残り、凸状の基礎マスク部30が所定のパターンで形成される(ネガ型の電子線感応性樹脂膜を用いた場合、照射部分が分解しない状態でレジストとして残り、ポジ型と逆のパターンが形成される)。
第2の手法として、光リソグラフィ法を用いる場合、基板10の中間膜20上に、感光性樹脂膜を形成するレジスト形成工程が行なわれ、次いで、形成された感光性樹脂膜に対して、所望のパターンを形成するようにマスクパターンを介して露光操作が行われる。露光操作が完了した後、感光性樹脂膜を現像するレジスト現像工程が行なわれる。例えば、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合、未露光部分が分解しない状態でレジストとして残り、凸状の基礎マスク部30が所定のパターンで形成される(ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合、露光部分が分解しない状態でレジストとして残り、ポジ型と逆のパターンが形成される)。
第3の手法として、ナノインプリント法を用いる場合、例えば、基板10の中間膜20上に、被転写物として光硬化性の樹脂材料がディスペンサやインクジェット等によって供給・配設される。次いで、配設された樹脂材料に所望の凹凸構造を有するモールドを接触させ、必要に応じて圧力が加えられる(いわゆるモールドの押し込み工程)。この状態において、樹脂材料は凹凸構造を有する樹脂層となり、当該樹脂層に対して紫外線照射が行なわれることによって、樹脂材料が硬化される(いわゆる樹脂硬化工程)。次いで、樹脂材料からモールドを引き離すことにより、モールドが有する凹凸構造が反転した凸状の基礎マスク部30が所定のパターンで基板10の中間膜20上に形成される。なお、いわゆる残膜は、酸素アッシング等により除去することができる。
なお、第1の実施形態でいう凸状の基礎マスク部30は、いわゆるレジストであり、樹脂材料を主成分として含む構造体である。また、別の方法として、材質の異なる2層構成のハードマスクを使用して、上層のハードマスクを上述の各種パターン形成法を用いて所定のパターンに形成し、当該所定のパターンに形成された上層のハードマスクを凸状の基礎マスク部として構成することも可能である。
また、凸状の基礎マスク部30のパターン形態は、例えば、凹凸形状が長手方向に順次、列をなすように伸長したいわゆるラインアンドスペースの形態や、ドット形状が所定のパターンで分散した形態や、ホール形状が所定のパターンで分散した形態や、これらの個別な形状を複合的に組み合わせた形態や、これらとは別の特殊な三次元構造体等、いずれであってもよい。なお、本明細書ではマスターとなるナノインプリントモールドを単に「マスターモールド」と称し、またマスターモールドを用いて製造されたナノインプリントモールドを総称して「レプリカモールド」と称することがある。
上記3つの凸状の基礎マスク部30を形成させる手法の中では特に、特に、ナノインプリント法を用いて図1(B)に示される凸状の基礎マスク部30の形態を作るケースが、本願発明の作用効果を効果的に発現させることができ、好ましい。すなわち、インプリント技術はいわゆる等倍転写のために、通常では一旦、図1(B)に示される凸状の基礎マスク部30を形成するためのマスターモールドを作った場合、最終的にマスターモールドから例えば1回の反転操作により形成されるレプリカモールドの凹凸寸法を補正することができない。しかしながら、本発明は後述する寸法補正用膜部形成工程を備えているので、マスターモールドから形成されるレプリカモールドの凹凸寸法を補正することができる。つまり、図1(B)に示される形態を製造するためのマスターモールドの凹凸寸法に不都合があっても、1回転写によって形成されるレプリカモールド(例えば、図2(C)参照)の凹凸寸法を調整することができるようになる。これによって、例えば、所定の凹凸パターンを有する既製の1枚のマスターモールドから僅かに凹凸寸法を変えた様々な寸法のレプリカモールドを作成することができる。さらに例えば、インプリント法のプロセス、材料、エッチング条件が変更となっても、1枚のマスターモールドから同一寸法のレプリカモールドを作成することができる。
もちろん、ナノインプリント法以外の他の手法である、電子線(EB)リソグラフィ法や光リソグラフィ法を用いて、図1(B)に示される凹凸のパターン形態を作った場合においても、本願発明を採用して凹凸パターンの寸法の補正を行うことができる。これらの手法においても凹凸パターンを最初から再度作り直すことなく、寸法補正のみで対処することが要求される場合があるからである。
(3)寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程
次いで、図1(C)に示されるように、凸状の基礎マスク部30の側面32および上面31、ならびに中間膜20の上面20aを覆うように寸法補正用の膜部40を被着させる寸法補正用膜部形成工程が実施される。
寸法補正用の膜部40は、被着させる面上に沿って、一連の膜を層状に形成させたものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、ALD法(原子層堆積法)で形成させた原子層とすることが望ましい。被着させる面は、凹凸面、湾曲面等如何なる形状の面であってもよい。ALD法を用いることにより、低温で精度良く成膜できる。さらに、ステップカバーレッジも極めてよい。
寸法補正用の膜部40の厚さは、要求される凹凸パターンの寸法補正の程度に合わせて形成することができる。1層の原子層から構成してもよいし、2層以上の複数層の原子層から構成してもよい。
好適な態様として、寸法補正用の膜部40を1層の原子層から構成する場合、1層の原子層を堆積させる際の温度が樹脂を主成分とするレジストである凸状の基礎マスク部30にダメージを与えないように、凸状の基礎マスク部30を構成するレジストのガラス転移温度Tgより十分低い第1の温度TL、(例えば、20〜100℃、より好ましくは室温)で堆積操作させることが望ましい。堆積後の1層の原子層は、堆積させる際の温度TLよりも高い温度TH1でアニール処理しても良い。これにより、原子層そのものの膜強度を高めたり、接合物との密着力を高めたりすることが可能となる。温度TH1は、原子層を構成する材料等に応じて適宜選定することができるが、例えば、200〜800℃の温度範囲とされる。
寸法補正用の膜部40を2層以上の複数層の原子層から構成する場合、1層目の原子層を堆積させる際の温度が樹脂を主成分とするレジストからなる凸状の基礎マスク部30にダメージを与えないように、レジストのガラス転移温度Tgより十分低い第1の温度TL、(例えば、20〜100℃、より好ましくは室温)で堆積操作されることが望ましい。その後、堆積後の1層目の原子層は、堆積させる際の温度TLよりも高い温度TH1でアニール処理しても良い。これにより1層目の原子層は、原子層そのものの膜強度を高めたり、接合物との密着力を高めたりすることが可能となる。温度TH1は、原子層を構成する材料等に応じて適宜選定することができるが、例えば、200〜800℃の温度範囲とされる。
このようにして強固な1層目の原子層を形成した後、2層目以降の原子層を1層目の原子層を堆積させる際の温度TLよりも高い温度TH2の堆積雰囲気下で順次堆積させることができる。原子層の強度を高めたり、密着力を高めたりするとともに、プロセスの効率化を図るためである。温度TH2は、原子層を構成する材料等に応じて適宜選定することができるが、例えば、80〜600℃の温度範囲とされる。温度TH2は、1層目の原子層のアニール温度TH1と同じ温度としてもよい。
なお、2層目以降の原子層を1層目の原子層を堆積させる際の温度TLと同程度の温度で堆積(成膜)させ、堆積(成膜)完了後に、堆積させる際の温度TLよりも高い温度TH1でアニール処理するようにしてもよい。
形成される寸法補正用の膜部40の膜厚は、目標とする補正寸法となるようにすればよい。例えば、50nm以下、好ましくは0.2〜10nm程度の厚さとされる。
寸法補正用の膜部40を構成する具体的材料としては、Si系、Al系、Ta系等の膜を例示することができる。
(4)エッチバック工程
次いで、図1(D)に示されるように、寸法補正用の膜部40をエッチバックして、中間膜20の上面20aを露出させるエッチバック工程が実施される。エッチバックとは、エッチングにより表面を全体的に厚さ方向に削っていく操作をいう。なお、エッチバックは、中間膜20の上面20aを確実に露出させることができるようにオーバーエッチングされることが一般的であり、エッチバック後における上面20aは必ずしもエッチバック前における上面20aと一致した同一平面でなくてもよい。
エッチバックは、寸法補正用の膜部40を構成する材料に応じて適切なエッチングガスを用いて行うようにすればよい。例えば、寸法補正用の膜部40が酸化シリコン(SiO2)で構成されている場合には、CF4、CHF3、C2F6等のフッ素系ガスをエッチングガスとして用いてエッチバックすればよい。
このようにして、図1(D)に示されるごとく中間膜20の上面20aに所定のパターンでエッチング用マスク50が形成される。エッチング用マスク50は、エッチバック後の寸法補正用の膜部40と凸状の基礎マスク部30を有し構成されている。
(5)中間膜エッチング工程
次いで、図2(A)に示されるように、中間膜20の上にパターン形成されたエッチング用マスク50を利用して中間膜20をエッチングする中間膜エッチング工程が実施される。この中間膜エッチング工程によって、図2(A)に示されるように、所定のパターンの中間膜マスク21が形成される。なお、エッチング用マスク50を構成する側面に、ALD膜からなる寸法補正用の膜部40を備えることにより、当該中間膜エッチング工程におけるマスクパターンサイズが変動し難くなり、エッチング精度は高いレベルを維持した状態で行うことができる。
なお、中間膜20は、前述したように、基板10に比べてエッチングレートが小さく耐エッチング性を有する材料を用いることができ、例えば、クロム、チタン、タンタル、珪素、アルミニウム等の金属、窒化クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等のクロム系化合物、酸化タンタル、酸窒化タンタル、酸化硼化タンタル、酸窒化硼化タンタル等のタンタル化合物、窒化チタン、窒化珪素、酸窒化珪素等を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
中間膜20が例えばクロムまたはクロムを含む化合物である場合には、エッチングガスとして、例えば酸素と塩素の混合ガスを用いて中間膜20をドライエッチングすることができる。
エッチング加工後は、例えば、所定のレジスト剥離液等を用いてエッチング用マスク50の一部を構成する基礎マスク部30の残部30aおよび寸法補正用の膜部40の残部40aを剥離除去して図2(B)に示される中間膜マスク21のみが形成される状態にしておくことが望ましいが、エッチング加工後のエッチング用マスク50をそのまま残しておいてもよい。
(6)基板エッチング工程
次いで、図2(C)に示されるように、基板10の第1主面部11aの上にパターン形成された中間膜マスク21を利用して、基板10の第1主面部11aをエッチングする基板エッチング工程が実施される。
基板10をエッチングするには、通常、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。
基板10をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基板10の材質を基本にして耐エッチング性に優れる中間膜20の材質を考慮しつつ、エッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基板10の材質が石英である場合には、中間膜20の材質をCrとし、エッチングガスを四フッ化炭素(CF4)等のフッ素系ガスとすることが好ましい。また、例えば、基板10の材質がシリコンである場合には、中間膜20の材質をSiO2とし、エッチングガスを、臭化水素(HBr)や塩素(Cl2)を含むエッチングガスとすることが好ましい。
このような基板エッチング工程の後、中間膜マスク21を除去して、図2(C)に示されるような本発明のナノインプリントモールド1が製造される。
以上の工程を経て形成された本発明のナノインプリントモールド1の凹凸パターンの寸法(図2(C)参照)は、凸状の基礎マスク部30により形成される凹凸パターンの寸法(図1(B)参照)を寸法補正用の膜部40によって寸法補正して形成されたものであることがわかる。そして、このナノインプリントモールド1は、ナノインプリントモールド用として使用した基板10の単一材料により均質に構成された凹凸部を有しており、この凹凸部には、異なる材料で形成された層が存在しないことは勿論、基板10と同じ材料で形成された層も存在しない。
なお、本発明のナノインプリントモールド1は、インプリントでの使用に際して、その凹凸部に離型層等を形成することを排除するものではない。
なお、本実施の形態においては、図1(B)に示される凸状の基礎マスク部30を、さらに酸素プラズマ等で処理してスリミングを図るようにすることもできる。
次いで、本発明のナノインプリントモールドの製造方法の第2の実施形態について図3〜図5を参照しつつ説明する。
<ナノインプリントモールドの製造方法(第2の実施形態)>
図3(A)〜(D)は、本発明のナノインプリントモールドの製造方法における第2の実施形態の工程例を経時的に説明するための断面図であり、図4(A)〜(C)は、本発明のナノインプリントモールドの製造方法における第2の実施形態の工程例を経時的に説明するための断面図であって図3(D)の工程に続く図面であり、図5(A)〜(C)は、本発明のナノインプリントモールドの製造方法における第2の実施形態の工程例を経時的に説明するための断面図であって図4(C)の工程に続く図面である。
第2実施形態における本発明のナノインプリントモールドの製造方法は、前述した第1実施形態の場合と同様に、その要部として、基板の上に、中間膜を介して、凸状の基礎マスク部をパターン形成する基礎マスクパターン形成工程と、この基礎マスク部の上に当該マスク部の寸法を補正するための寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程と、を有して構成される。
第2実施形態における本発明のナノインプリントモールドの製造方法は、さらに詳しくは、(1)平面からなる第1主面部を有する基板を準備する工程と、(2)基板の第1主面部の上に、中間膜を介して、凸状の第1マスク部をパターン形成する第1マスクパターン形成工程と、(3)第1マスク部の側面および上面、ならびに中間膜の上面を覆うように第1の膜部を被着させる第1膜部形成工程と、(4)第1の膜部をエッチバックして、第1マスク部の上面および中間膜の上面を露出させるとともに、第1の膜部を第1マスク部の側面に残して側壁凸部として形成させるエッチバック工程と、(5)第1マスク部を除去することによって基板の第1主面部の上に、中間膜を介して第1の膜部(側壁凸部)から構成される凸状の基礎マスク部をパターン形成する基礎マスクパターン形成工程と、(6)凸状の基礎マスク部の側面および上面、ならびに中間膜の上面を覆うように寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程と、(7)寸法補正用の膜部をエッチバックして、中間膜の上面を露出させることができるエッチバック工程と、(8)エッチバック工程によって中間膜の上にパターン形成されたエッチング用マスクを利用して中間膜をエッチングする中間膜エッチング工程と、(9)中間膜エッチング工程により、基板の第1主面部の上にパターン形成された中間膜のマスクを利用して、基板の第1主面部をエッチングする基板エッチング工程と、を有して構成される。
以下、各工程毎に順次説明する。
(1)平面からなる第1主面部を有する基板を準備する工程
図3(A)に示されるように、ナノインプリントモールド用の基板10が準備される。このように準備された基板10の片側の主面11には、第1主面部11aが形成されており、この第1主面部11aには、中間膜20が形成される。
図3(A)においては、基板10の片側の主面11の全エリアが平面からなる第1主面部11aを構成している例が示されているが、この構成に限定されることなく、例えば、中間膜20や後述する凸状の基礎マスク部を設けるエリアのみが部分的に突出した平面の第1主面部を構成する、いわゆるメサ構造の基板10とすることもできる。メサ構造は一段に限定されることなく多段になっていてもよい。
基板10の材質や厚さ等は前述した第1実施形態のそれらと同様に設定することができる。
基板10の上に設けられる中間膜20としては、基板10に比べてエッチングレートが小さく耐エッチング性を有する材料を用いることができ、例えば、クロム、チタン、タンタル、珪素、アルミニウム等の金属、窒化クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等のクロム系化合物、酸化タンタル、酸窒化タンタル、酸化硼化タンタル、酸窒化硼化タンタル等のタンタル化合物、窒化チタン、窒化珪素、酸窒化珪素等を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。膜厚は、通常、50nm以下、特に、1〜20nm、より好ましくは3〜10nm程度とされる。
中間膜20は、例えば、スパッタ、蒸着、イオンプレート等により形成することができる。
なお、中間膜20は2層以上の積層膜として構成してもよい。
(2)凸状の第1マスク部をパターン形成する第1マスクパターン形成工程
次いで、図3(B)に示されるように、基板10の第1主面部11aの上に形成された中間膜20の上面20aに、凸状の第1マスク部130をパターン形成する第1マスクパターン形成工程が実施される。
第2の実施形態において、凸状の第1マスク部130は、樹脂を主成分とするいわゆるレジストから構成することが好ましく、例えば、電子線(EB)リソグラフィ法、光リソグラフィ法、またはナノインプリント法により凸状の第1マスク部130をパターン形成することができる。
第1の手法として、電子線(EB)リソグラフィ法を用いる場合、基板10の中間膜20上に、電子線感応性樹脂膜を形成するレジスト形成工程が行なわれ、次いで、形成された電子線感応性樹脂膜に対して、所望のパターンを形成するように電子線描画が行われる。
電子線描画が完了した後、電子線感応性樹脂膜を現像するレジスト現像工程が行なわれる。例えば、ポジ型の電子線感応性樹脂膜を用いた場合、未照射部分が分解しない状態でレジストとして残り、凸状の第1マスク部130が所定のパターンで形成される(ネガ型の電子線感応性樹脂膜を用いた場合、照射部分が分解しない状態でレジストとして残り、ポジ型と逆のパターンが形成される)。
第2の手法として、光リソグラフィ法を用いる場合、基板10の中間膜20上に、感光性樹脂膜を形成するレジスト形成工程が行なわれ、次いで、形成された感光性樹脂膜に対して、所望のパターンを形成するようにマスクパターンを介して露光操作が行われる。露光操作が完了した後、感光性樹脂膜を現像するレジスト現像工程が行なわれる。例えば、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合、未露光部分が分解しない状態でレジストとして残り、凸状の第1マスク部130が所定のパターンで形成される(ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合、露光部分が分解しない状態でレジストとして残り、ポジ型と逆のパターンが形成される)。
第3の手法として、ナノインプリント法を用いる場合、例えば、基板10の中間膜20上に、被転写物として光硬化性の樹脂材料がディスペンサやインクジェット等によって供給・配設される。次いで、配設された樹脂材料に所望の凹凸構造を有するモールドを接触させ、必要に応じて圧力が加えられる(いわゆるモールドの押し込み工程)。この状態において、樹脂材料は凹凸構造を有する樹脂層となり、当該樹脂層に対して紫外線照射が行なわれることによって、樹脂材料が硬化される(いわゆる樹脂硬化工程)。次いで、樹脂材料からモールドを引き離すことにより、モールドが有する凹凸構造が反転した凸状の第1マスク部130が所定のパターンで基板10の中間膜20上に形成される。なお、いわゆる残膜は、後述するスリミング工程の酸素アッシング等により除去することができる。
なお、第2の実施形態でいう凸状の第1マスク部130は、樹脂材料を主成分として含む構造体である。レジストと称す場合もある。
また、凸状の第1マスク部130のパターン形態は、例えば、凹凸形状が長手方向に順次、列をなすように伸長したいわゆるラインアンドスペースの形態や、ドット形状が所定のパターンで分散した形態や、ホール形状が所定のパターンで分散した形態や、これらの個別な形状を複合的に組み合わせた形態や、これらとは別の特殊な三次元構造体等、いずれであってもよい。
(2´)スリミング工程
本実施の形態においては、図3(C)に示されるように、凸状の第1マスク部130をパターン形成する第1マスクパターン形成工程後に、必要に応じて設けることができるスリミング工程が付加されている。
スリミング工程においては、凸状の第1マスク部130を例えば酸素プラズマ等で処理して、図3(C)に示されるごとくスリミングさせた凸状の第1マスク部130aが形成される。
本明細書において、スリミングとは、ウエットエッチングあるいはドライエッチング(酸素プラズマ処理を含む)で凸状の第1マスク部130のパターンの幅を細くするとともに、膜厚を薄くすることである。例えば、酸素プラズマ処理によるスリミングを行うことによって、最初に形成された凸状の第1マスク部130のパターンのピッチは変えずに、1/2程度のパターン幅を形成することができる。
なお、スリミング処理を長時間に亘り行いスリミングの程度を大きくする(パターン幅の縮小度を大きくする)ことによって寸法精度が悪くなる場合がある。このような場合に、できるだけスリミング幅の縮小度を小さくするプロセス設計を試み、小さくした分は後述する寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程で対処することも本発明では可能となる。これについては、後述する実施例2と参考例との対比考察の記載を参照されたい。
(3)第1マスク部の側面および上面、ならびに中間膜の上面を覆うように第1の膜部を被着させる第1膜部形成工程
次いで、図3(D)に示されるように、スリミングされた凸状の第1マスク部130aの側面132および上面131、ならびに中間膜20の上面20aを覆うように第1の膜部140を被着させる第1膜部形成工程が実施される。
第1の膜部140は、被着させる面上に沿って、一連の膜を層状に形成させたものであれば特に限定されるものではないが、例えば、CVD法等のドライプロセスや自己組織化等で形成された膜を用いることができ、好適には、ALD法(原子層堆積法)で形成させた原子層堆積膜とすることが望ましい。被着させる面は、凹凸面、湾曲面等如何なる形状の面であってもよい。ALD法を用いることにより、低温で精度良く成膜できる。さらに、ステップカバーレッジも極めてよい。
第1の膜部140は、1層から構成してもよいし、2層以上の積層膜として構成してもよい。第1の膜部140の膜厚は、例えば、ハーフピッチ設計分の膜厚程度とすることが好ましく、例えば、数nm〜50nm、好ましくは5〜30nm程度の厚さが得られるまで、一連の原子層が連続的に積み重ねられる。多層に積み重ねる場合の温度条件等については、上述した第1の実施形態におけるALD膜(寸法補正用の膜部40)の形成手法に従うことができる。
第1の膜部140を構成する具体的材料としては、Si系、Al系、Ti系等の膜を例示することができる。
なお、次工程であるエッチバック工程におけるエッチバックを円滑に行うために図3(D)に示される凹部寸法Dpをできるだけ大きくとれるようにパターン膜厚を修正し、Dpを大きくした分は後述する寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程で対処することも本発明では可能となる。これについては、後述する実施例2と参考例との対比考察の記載を参照されたい。
(4)エッチバック工程
次いで、図4(A)に示されるように第1の膜部140をエッチバックして、凸状の第1マスク部130aの上面131および中間膜20の上面20aを露出させるとともに、第1の膜部140の一部を第1マスク部130aの側面132に残して側壁凸部140aを形成するエッチバック工程が実施される。エッチバックとは、エッチングにより表面を全体的に厚さ方向に削っていく操作をいう。
エッチバックは、第1の膜部140を構成する材料に応じて適切なエッチングガスを用いて行うようにすればよい。例えば、第1の膜部140が酸化シリコン(SiO2)で構成されている場合には、CF4、CHF3、C2F6等のフッ素系ガスをエッチングガスとして用いてエッチバックすればよい。
(5)基礎マスクパターン形成工程
次いで、図4(B)に示されるように第1マスク部130a(130)を除去することによって前記基板の第1主面部11aの上に、中間膜20を介して、第1の膜部140の一部である側壁凸部140aから構成される凸状の基礎マスク部140aをパターン形成する基礎マスクパターン形成工程が実施される。
本発明においては、その前の工程であるエッチバック工程において、第1の膜部140をエッチバックし、第1マスク部130a(130)の上面131が露出された状態になっているので、第1マスク部130a(130)の除去が容易にできる。
第1マスク部130a(130)の除去は、酸素系のガスを用いたドライ処理によって選択的に除去することができる。例えば、酸素プラズマによるドライエッチングやオゾン処理等のドライ処理を好適例として挙げることができる。第1マスク部130a(130)は、第1の膜部140の一部である側壁凸部140a(凸状の基礎マスク部140a)のパターンを形成させる際のいわゆるコアとなる部分であり、仮に、本実施形態の樹脂を主成分とする第1マスク部130a(130)に代えて、無機化合物からなる同様な凸状物をコアとして用いた場合、当該無機化合物を形成するための工程が増えるだけでなく、当該無機化合物コアを除去するドライエッチングの選択比は第1マスク部130a(130)をコアとする場合よりも悪いため、パターン寸法バラツキの原因となってしまう。また、無機化合物コアの除去にウエットエッチングを用いた場合には、ウエットエッチング液の表面張力による側壁凸部140a(凸状の基礎マスク部140a)のパターンの倒壊や変形が生じるおそれがある。
本発明においては、第1マスク部130a(130)のレジストコアとドライ処理を用いることによって、第1の膜部140の一部である側壁凸部140a(凸状の基礎マスク部140a)のパターンの倒壊や変形を最小限に抑えることが可能となる。
なお、第1マスク部130a(130)の除去が完了した時点で、第1の膜部140の一部である側壁凸部140a(凸状の基礎マスク部140a)の密着強度や膜強度等を向上させるために、例えば、200〜800℃程度の高温で熱処理(アニール処理)することは好ましい態様の一つである。
なお、本発明の第2の実施形態においては、上述のごとく第1マスク部130a(130)をコアとしてその側面に第1の膜部140の一部を側壁凸部140aとして形成している。そのため、図4(B)に示されるように凸状の基礎マスク部140aをパターン形成する基礎マスクパターン形成工程が完了した時点で、基礎マスク部140a(側壁凸部)のパターンを平面から見た場合、図6に示されるような閉ループを形取る基礎マスク部140a(側壁凸部)が複数個、所定のピッチで配置された状態が形成される。また、図8は、基礎マスク部140a(側壁凸部)のパターンを分かりやすくなるように描いた部分斜視図である。
一つの閉ループを形取る基礎マスク部140a(側壁凸部)は、図6に示されるようにコアとして存在していた第1マスク部130aを挟持するように配置された一対の側壁凸部145、145(140aと同じ)を有している。
ナノインプリントモールド製造の際に、図7に示されるようなラインアンドスペース形態の側壁凸部145(140a)のパターンを形成しておきたい場合には、図6に示される閉ループを形取る側壁凸部145(140a)の長手方向の両端部146を除去しておく必要がある。
長手方向の両端部146を除去するには、例えば、光リソグラフィ法によって図6におけるa−b−c−dで囲まれるエリアにレジスト膜をマスクとして被せた状態で、露出した状態にある側壁凸部の両端部146近傍をエッチング除去する方法が挙げられる。
なお、ナノインプリントモールド製造に際して、図6に示される閉ループを形取る側壁凸部の長手方向の両端部146を残しておいてもよい。この場合には、実際のナノインプリント操作によって、被処理基板の上に転写層の凹凸転写パターンを転写した後に、転写された端部相当部位の存在によって発生した転写層の不具合を必要に応じて追加処理等するようにすればよい。ナノインプリントモールドの構造として、閉ループを形取る側壁凸部の長手方向の両端部146を残しておいた場合には、閉ループであるがゆえに側壁凸部の倒壊や変形に対する強度がより一層高まるという効果が発現する。なお、閉ループを形取る側壁凸部の長手方向の両端部146の除去は、図3(D)に示される第1膜部形成工程の完了後であれば、どの段階で実施しても良い。
なお上記第2の実施形態における上記エッチバック工程におけるエッチバック処理や、上記基礎マスクパターン形成工程におけるコアとなる第1マスク部130a(130)の除去処理操作の影響を受けて、出来上がった凸状の基礎マスク部140aの寸法が所望の寸法より誤差を生じる場合がある。このような場合においても、次工程の寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程を有用に作用させることができる。
(6)寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程
次いで、図4(C)に示されるように、凸状の基礎マスク部140aの側面142および上面141、ならびに中間膜の上面20aを覆うように寸法補正用の膜部400を形成する寸法補正用膜部形成工程が実施される。
寸法補正用の膜部400は、1層から構成してもよいし、2層以上の積層膜として構成してもよい。寸法補正用の膜部400は、被着させる面上に沿って、一連の膜を層状に形成させたものであれば特に限定されるものではないが、好適には、ALD法(原子層堆積法)で形成させた原子層とすることが望ましい。被着させる面は、凹凸面、湾曲面等如何なる形状の面であってもよい。ALD法を用いることにより、低温で精度良く成膜できる。さらに、ステップカバーレッジも極めてよい。
寸法補正用の膜部400の厚さは、要求される凹凸パターンの寸法補正の程度に合わせて形成することができる。1層の原子層から構成してもよいし、2層以上の複数層の原子層から構成してもよい。その膜厚は、例えば、50nm以下、好ましくは0.2〜10nm程度とされる。
寸法補正用の膜部400を構成する具体的材料としては、Si系、Al系、Ti系等の膜を例示することができる。
寸法補正用の膜部400は、低温(例えば、室温〜100℃程度)で成膜することもできるし、密着強度や膜強度等を向上させるために高温(例えば、100〜600℃程度)で成膜することもできる。低温で成膜した場合には、密着強度や膜強度等を向上させるために、例えば、200〜800℃程度の高温で熱処理(アニール処理)することが望ましい。
凸状の基礎マスク部140a(側壁凸部140a)と、この上に被着される寸法補正用の膜部400とは、同一材料から構成されることが好ましい。両者の膜間の密着性を向上させることができ、また、同一材料とすることにより後述するエッチバック工程におけるエッチング等の挙動を把握しやすくなり、寸法精度を上げることが容易となり得る。
(7)エッチバック工程
次いで、図5(A)に示されるように寸法補正用の膜部400をエッチバックして、中間膜20の上面20aを露出させることができるエッチバック工程が実施される。
この工程によって、エッチング用マスク150が形成される。エッチング用マスク150は、凸状の基礎マスク部140aと寸法補正用の膜部400を有し構成される。通常、中間膜20の上面20aが露出した時点で、凸状の基礎マスク部140aの上面141も露出するが、上面141の露出は必須の要件とはならない。エッチング用マスクとして機能すれば十分であるからである。なお、エッチバックは、中間膜20の上面20aを確実に露出させることができるようにオーバーエッチングされることが一般的であり、エッチバック後における中間膜20の上面20aは、必ずしもエッチバック前における中間膜20の上面20aと一致した同一平面でなくてもよい。
なお、エッチバックとは、エッチングにより表面を全体的に厚さ方向に削っていく操作をいう。
エッチバックは、寸法補正用の膜部400を構成する材料に応じて適切なエッチングガスを用いて行うようにすればよい。例えば、寸法補正用の膜部400が酸化シリコン(SiO2)で構成されている場合には、CF4、CHF3、C2F6等のフッ素系ガスをエッチングガスとして用いてエッチバックすることができる。
(8)中間膜エッチング工程
次いで、図5(B)に示されるように、上記のエッチバック工程によって中間膜20の上面20aにパターン形成されたエッチング用マスク150を利用して中間膜20をエッチングする中間膜エッチング工程が実施される。
この中間膜エッチング工程によって、所定のパターンの中間膜マスク21が形成される。
中間膜20は、前述したように、基板10に比べてエッチングレートが小さく耐エッチング性を有する材料を用いることができ、例えば、クロム、チタン、タンタル、珪素、アルミニウム等の金属、窒化クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等のクロム系化合物、酸化タンタル、酸窒化タンタル、酸化硼化タンタル、酸窒化硼化タンタル等のタンタル化合物、窒化チタン、窒化珪素、酸窒化珪素等を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
中間膜20が例えばクロムまたはクロムを含む化合物である場合には、エッチングガスとして、例えば酸素と塩素の混合ガスを用いて中間膜20をドライエッチングすることができる。
エッチング加工後、中間膜マスク21の上に形成されているエッチング用マスク150は、そのまま残しておくこともできるし、除去して中間膜マスク21のみとすることもできる。
(9)基板エッチング工程
次いで、基板10の第1主面部11aの上にパターン形成された中間膜マスク21を利用して、基板10の第1主面部11aをエッチングする基板エッチング工程が実施される。
基板10をエッチングするには、通常、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。
基板10をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基板10の材質を基本にして耐エッチング性に優れる中間膜20の材質を考慮しつつ、エッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基板10の材質が石英である場合には、中間膜20の材質をCrとし、エッチングガスを四フッ化炭素(CF4)等のフッ素系ガスとすることが好ましい。また、例えば、基板10の材質がシリコンである場合には、中間膜20の材質をSiO2とし、エッチングガスを、臭化水素(HBr)や塩素(Cl2)を含むエッチングガスとすることが好ましい。
このような基板エッチング工程の後、中間膜マスク21を除去して、図5(C)に示されるような本発明のナノインプリントモールド101が製造される。
以上の工程を経て形成された本発明のナノインプリントモールド101の凹凸パターンの寸法(図5(C)参照)は、凸状の基礎マスク部140aにより形成される凹凸パターンの寸法(図4(B)参照)を寸法補正用の膜部400によって寸法補正して形成されたものであることがわかる。そして、このナノインプリントモールド101は、ナノインプリントモールド用として使用した基板10の単一材料により均質に構成された凹凸部を有しており、この凹凸部には、異なる材料で形成された層が存在しないことは勿論、基板10と同じ材料で形成された層も存在しない。
なお、本発明のナノインプリントモールド101は、インプリントでの使用に際して、その凹凸部に離型層等を形成することを排除するものではない。
<ナノインプリントモールドの製造方法(第3の実施形態)>
図9(A)〜(D)は、本発明のナノインプリントモールドの製造方法における第3の実施形態の工程例を経時的に説明するための断面図であり、図10(A)〜(D)は、本発明のナノインプリントモールドの製造方法における第3の実施形態の工程例を経時的に説明するための断面図であって図9(D)の工程に続く図面である。
第3実施形態における本発明のナノインプリントモールドの製造方法は、前述した第1実施形態の場合と同様に、その要部として、基板の上に、中間膜を介して、凸状の基礎マスク部をパターン形成する基礎マスクパターン形成工程と、この基礎マスク部の上に当該マスク部の寸法を補正するための寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程と、を有して構成される。
第3実施形態における本発明のナノインプリントモールドの製造方法は、さらに詳しくは、(1)平面からなる第1主面部を有する基板を準備する工程と、(2)基板の第1主面部の上に、中間膜を介して無機材料から構成される基礎マスク材料層を形成し、当該基礎マスク材料層上に、凸状の第1マスク部をパターン形成する第1マスクパターン形成工程と、(3)第1マスク部をエッチングマスクとして基礎マスク材料層をエッチングし、第1マスク部を除去することにより、中間膜上に凸状の基礎マスク部をパターン形成する基礎マスクパターン形成工程と、(4)凸状の基礎マスク部の側面および上面、ならびに中間膜の上面を覆うように寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程と、(5)寸法補正用の膜部をエッチバックして、中間膜の上面を露出させるエッチバック工程と、(6)エッチバック工程によって中間膜の上にパターン形成されたエッチング用マスクを利用して中間膜をエッチングする中間膜エッチング工程と、(7)中間膜エッチング工程により、基板の第1主面部の上にパターン形成された中間膜のマスクを利用して、基板の第1主面部をエッチングする基板エッチング工程と、を有して構成される。
以下、各工程毎に順次説明する。
(1)平面からなる第1主面部を有する基板を準備する工程
図9(A)に示されるように、ナノインプリントモールド用の基板10が準備される。このように準備された基板10の片側の主面11には、第1主面部11aが形成されており、この第1主面部11aには、中間膜20介して無機材料から構成される基礎マスク材料層230′が形成される。
図9(A)においては、基板10の片側の主面11の全エリアが平面からなる第1主面部11aを構成している例が示されているが、この構成に限定されることなく、例えば、中間膜20、基礎マスク材料層230′や後述する凸状の基礎マスク部を設けるエリアのみが部分的に突出した平面の第1主面部を構成する、いわゆるメサ構造の基板10とすることもできる。メサ構造は一段に限定されることなく多段になっていてもよい。
基板10の材質や厚さ等は前述した第1実施形態のそれらと同様に設定することができる。
基板10の上に設けられる中間膜20としては、基板10に比べてエッチングレートが小さく耐エッチング性を有する材料を用いることができ、例えば、クロム、チタン、タンタル、珪素、アルミニウム等の金属、窒化クロム、酸化クロム、酸窒化クロム等のクロム系化合物、酸化タンタル、酸窒化タンタル、酸化硼化タンタル、酸窒化硼化タンタル等のタンタル化合物、窒化チタン、窒化珪素、酸窒化珪素等を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。膜厚は、通常、50nm以下、特に、1〜20nm、より好ましくは3〜10nm程度とされる。
中間膜20は、例えば、スパッタ、蒸着、イオンプレート等により形成することができる。
なお、中間膜20は2層以上の積層膜として構成してもよい。
中間膜20上に設けられる基礎マスク材料層230′としては、中間膜20に比べてエッチングレートが小さく耐エッチング性を有するとともに、後工程で形成する第1マスク部に対するエッチング選択性(基礎マスク材料層230′のエッチングレート/第1マスク部のエッチングレート)が、第1マスク部に対する中間膜20のエッチング選択性(中間膜20のエッチングレート/第1マスク部のエッチングレート)よりも大きく良好であるような材料を用いることができ、例えば、珪素、クロム、チタン、タンタル、モリブデン等、これらの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物等を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。膜厚は、通常、50nm以下、特に、1〜20nm、より好ましくは3〜10nm程度とされる。
基礎マスク材料層230′は、例えば、スパッタ、蒸着、イオンプレート等により形成することができる。
なお、基礎マスク材料層230′は2層以上の積層膜として構成してもよい。
(2)凸状の第1マスク部をパターン形成する第1マスクパターン形成工程
次いで、図9(B)に示されるように、基礎マスク材料層230′上に、凸状の第1マスク部235をパターン形成する第1マスクパターン形成工程が実施される。
凸状の第1マスク部235は、樹脂を主成分とするいわゆるレジストから構成することができ、例えば、電子線(EB)リソグラフィ法、光リソグラフィ法、またはナノインプリント法により凸状の第1マスク部235をパターン形成することができる。
第1の手法として、電子線(EB)リソグラフィ法を用いる場合、基礎マスク材料層230′上に、電子線感応性樹脂膜を形成するレジスト形成工程が行なわれ、次いで、形成された電子線感応性樹脂膜に対して、所望のパターンを形成するように電子線描画が行われる。
電子線描画が完了した後、電子線感応性樹脂膜を現像するレジスト現像工程が行なわれる。例えば、ポジ型の電子線感応性樹脂膜を用いた場合、未照射部分が分解しない状態でレジストとして残り、凸状の第1マスク部235が所定のパターンで形成される(ネガ型の電子線感応性樹脂膜を用いた場合、照射部分が分解しない状態でレジストとして残り、ポジ型と逆のパターンが形成される)。
第2の手法として、光リソグラフィ法を用いる場合、基礎マスク材料層230′上に、感光性樹脂膜を形成するレジスト形成工程が行なわれ、次いで、形成された感光性樹脂膜に対して、所望のパターンを形成するようにマスクパターンを介して露光操作が行われる。露光操作が完了した後、感光性樹脂膜を現像するレジスト現像工程が行なわれる。例えば、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合、未露光部分が分解しない状態でレジストとして残り、凸状の第1マスク部235が所定のパターンで形成される(ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合、露光部分が分解しない状態でレジストとして残り、ポジ型と逆のパターンが形成される)。
第3の手法として、ナノインプリント法を用いる場合、例えば、基礎マスク材料層230′上に、被転写物として光硬化性の樹脂材料がディスペンサやインクジェット等によって供給・配設される。次いで、配設された樹脂材料に所望の凹凸構造を有するモールドを接触させ、必要に応じて圧力が加えられる(いわゆるモールドの押し込み工程)。この状態において、樹脂材料は凹凸構造を有する樹脂層となり、当該樹脂層に対して紫外線照射が行なわれることによって、樹脂材料が硬化される(いわゆる樹脂硬化工程)。次いで、樹脂材料からモールドを引き離すことにより、モールドが有する凹凸構造が反転した凸状の第1マスク部235が所定のパターンで基板10の中間膜20上に形成される。なお、いわゆる残膜は、後述するスリミング工程の酸素アッシング等により除去することができる。
なお、凸状の第1マスク部235のパターン形態は、例えば、凹凸形状が長手方向に順次、列をなすように伸長したいわゆるラインアンドスペースの形態や、ドット形状が所定のパターンで分散した形態や、ホール形状が所定のパターンで分散した形態や、これらの個別な形状を複合的に組み合わせた形態や、これらとは別の特殊な三次元構造体等、いずれであってもよい。
(3)基礎マスクパターン形成工程
次いで、図9(C)に示されるように第1マスク部235をエッチングマスクとして基礎マスク材料層230′をエッチングし、第1マスク部235を除去することにより、中間膜20上に凸状の基礎マスク部230をパターン形成する。
基礎マスク材料層230′をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基礎マスク材料層230′と第1マスク部235の材質を考慮しつつ、基礎マスク材料層230′のエッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基礎マスク材料層230′が酸化シリコンであり、第1マスク部235がレジストである場合には、エッチングガスをCF4、CHF3等のフッ素系ガスとすることが好ましい。
このような第1マスク部235をエッチングマスクとした基礎マスク材料層230′のエッチングでは、例えば、レジストをエッチングマスクとしたクロム膜のエッチングに比較して、レジスト選択性が良好である。このため、エッチングマスクとしての第1マスク部235の厚みが薄くてよく、例えば、上記の第3の手法であるナノインプリント法を用いた第1マスク部235の形成において、パターンの倒れ、モールド離型時の欠陥発生等を低減することができる。
(4)寸法補正用の膜部を形成する寸法補正用膜部形成工程
次いで、図9(D)に示されるように、凸状の基礎マスク部230の側面232および上面231、ならびに中間膜の上面20aを覆うように寸法補正用の膜部240を形成する寸法補正用膜部形成工程が実施される。
寸法補正用の膜部240は、1層から構成してもよいし、2層以上の積層膜として構成してもよい。寸法補正用の膜部240は、被着させる面上に沿って、一連の膜を層状に形成させたものであれば特に限定されるものではないが、好適には、ALD法(原子層堆積法)で形成させた原子層とすることが望ましい。被着させる面は、凹凸面、湾曲面等如何なる形状の面であってもよい。ALD法を用いることにより、ステップカバーレッジも極めてよい。また、この第3の実施形態では、基礎マスク部230が無機材料から構成されているので耐熱性が高く、このため熱ALD法を採用することができ、寸法補正用の膜部240として利用できる材料の選択の幅が拡がるとともに、より緻密な寸法補正用の膜部240を形成することができる。
寸法補正用の膜部240の厚さは、要求される凹凸パターンの寸法補正の程度に合わせて形成することができる。1層の原子層から構成してもよいし、2層以上の複数層の原子層から構成してもよい。その膜厚は、例えば、50nm以下、好ましくは0.2〜10nm程度とされる。
寸法補正用の膜部240を構成する具体的材料としては、Si系、Al系、Ti系等の膜を例示することができる。
寸法補正用の膜部240は、低温(例えば、室温〜100℃程度)で成膜することもできるし、上記のように基礎マスク部230の耐熱性が高いので、密着強度や膜強度等を向上させるために高温(例えば、100〜600℃程度)で成膜することもできる。低温で成膜した場合には、密着強度や膜強度等を向上させるために、例えば、200〜800℃程度の高温で熱処理(アニール処理)することも可能である。
凸状の基礎マスク部230と、この上に被着される寸法補正用の膜部240とは、同一材料から構成されることが好ましい。両者の膜間の密着性を向上させることができ、また、同一材料とすることにより後述するエッチバック工程におけるエッチング等の挙動を把握しやすくなり、寸法精度を上げることが容易となり得る。
(5)エッチバック工程
次いで、図10(A)に示されるように寸法補正用の膜部240をエッチバックして、中間膜20の上面20aを露出させるエッチバック工程が実施される。
この工程によって、エッチング用マスク250が形成される。エッチング用マスク250は、凸状の基礎マスク部230と寸法補正用の膜部240を有し構成される。通常、中間膜20の上面20aが露出した時点で、凸状の基礎マスク部230の上面231も露出するが、上面231の露出は必須の要件とはならない。エッチング用マスクとして機能すれば十分であるからである。なお、エッチバックは、中間膜20の上面20aを確実に露出させることができるようにオーバーエッチングされることが一般的であり、エッチバック後における中間膜20の上面20aは、必ずしもエッチバック前における中間膜20の上面20aと一致した同一平面でなくてもよい。
エッチバックは、寸法補正用の膜部240を構成する材料に応じて適切なエッチングガスを用いて行うようにすればよい。例えば、寸法補正用の膜部240が酸化シリコン(SiO2)で構成されている場合には、CF4、CHF3、C2F6等のフッ素系ガスをエッチングガスとして用いてエッチバックすることができる。
なお、この第3の実施形態では、基礎マスク部230が無機材料から構成されていて耐洗浄性が高いので、基礎マスクパターン形成工程にて基礎マスク部230をパターン形成した後、寸法補正用膜部形成工程にて寸法補正用の膜部240を形成した後、エッチバック工程にてエッチング用マスク250を形成した後のいずれか任意の時点で、硫酸過水洗浄等の洗浄処理を施してもよい。これにより、異物付着等に起因する欠陥の発生を低減することができる。
(6)中間膜エッチング工程
次いで、図10(B)に示されるように、上記のエッチバック工程によって中間膜20の上面20aにパターン形成されたエッチング用マスク250を利用して中間膜20をエッチングする中間膜エッチング工程が実施される。
この中間膜エッチング工程によって、所定のパターンの中間膜マスク21が形成される。
中間膜20は、前述したように、基板10に比べてエッチングレートが小さく耐エッチング性を有する材料を用いることができ、例えば、中間膜20がクロムまたはクロムを含む化合物である場合には、エッチングガスとして、例えば酸素と塩素の混合ガスを用いて中間膜20をドライエッチングすることができる。
エッチング加工後、中間膜マスク21の上に形成されているエッチング用マスク250は、そのまま残しておくこともできるし、除去して中間膜マスク21のみとすることもできる。
(7)基板エッチング工程
次いで、図10(C)に示されるように、基板10の第1主面部11aの上にパターン形成された中間膜マスク21を利用して、基板10の第1主面部11aをエッチングする基板エッチング工程が実施される。
基板10をエッチングするには、通常、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることが望ましい。
基板10をエッチングするためのエッチングガスの選定は、例えば、基板10の材質を基本にして耐エッチング性に優れる中間膜20の材質を考慮しつつ、エッチングの選択比が大きくなるような組み合わせを適宜選定するようにすればよい。例えば、基板10の材質が石英である場合には、中間膜20の材質をクロムとし、エッチングガスを四フッ化炭素(CF4)等のフッ素系ガスとすることが好ましい。また、例えば、基板10の材質がシリコンである場合には、中間膜20の材質を酸化シリコンとし、エッチングガスを、臭化水素(HBr)や塩素(Cl2)を含むエッチングガスとすることが好ましい。
このような基板エッチング工程の後、中間膜マスク21を除去して、図10(D)に示されるような本発明のナノインプリントモールド201が製造される。
以上の工程を経て形成された本発明のナノインプリントモールド201の凹凸パターンの寸法(図10(D)参照)は、基礎マスク部230により形成される凹凸パターンの寸法(図9(C)参照)を寸法補正用の膜部240によって寸法補正して形成されたものであることがわかる。そして、このナノインプリントモールド201は、ナノインプリントモールド用として使用した基板10の単一材料により均質に構成された凹凸部を有しており、この凹凸部には、異なる材料で形成された層が存在しないことは勿論、基板10と同じ材料で形成された層も存在しない。
なお、本発明のナノインプリントモールド201は、インプリントでの使用に際して、その凹凸部に離型層等を形成することを排除するものではない。
以下、具体的実施例を示し本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
<ナノインプリントモールドの製造方法(第1の実施形態:図1〜図2参照)>
本実施例1では、凹部パターン幅30nm、ピッチ60nmのラインアンドスペースの凹凸パターン形態を有するマスターモールドの当該凹凸寸法を、1回転写させて凸部パターン幅35nm、凹部パターン幅25nmに寸法変更させた凹凸パターンを有するレプリカモールドを得ることを目的とした。
まず最初に、光透過性の基板10として、外形が6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を準備した。準備した基板10の一方の主面上に、Crをスパッタリング法で成膜して膜厚5nmのCr膜20(中間膜20)を形成した。本実施例におけるCr膜20はいわゆるハードマスク層を形成するためのものである。
次いで、このCr膜20上に凹部パターン幅30nm、ピッチ60nmのラインアンドスペースのパターン形態を有するマスターモールドを用いてナノインプリント法および残膜除去のための酸素アッシングを実施し、凸部パターン幅30nm、ピッチ60nmのラインアンドスペースのパターン形態からなるレジスト(凸状の基礎マスク部30)を形成した。レジスト(凸状の基礎マスク部30)の厚さは60nmとした。
このように形成した凸状の基礎マスク部30の側面32および上面31、並びにCr膜20の上面20aを覆うように、寸法補正用の膜部40を形成した。寸法補正用の膜部40は、ALD法により形成したSiO2膜であり、その膜厚は、厚さ2.5nmとした。
なお、ALD法によりSiO2膜を成膜するに際し、1層目の原子層を堆積させる際の第1の温度TL(成膜温度)は、室温(23℃)とした。
次いで、CF4ガスを用いて寸法補正用の膜部40であるSiO2被覆膜をドライエッチングにより厚さ方向に3nmエッチバック(0.5nmオーバーエッチング)させた。
これにより、Cr膜20の上に形成されていた寸法補正用の膜部40および凸状の基礎マスク部30の上面31に形成されていた寸法補正用の膜部40は除去され、凸状の基礎マスク部30(レジスト)とその側面32に形成された寸法補正用の膜部40(SiO2膜)からなるエッチング用マスク50が形成された。
次いで、エッチバック工程によって中間膜20の上にパターン形成されたエッチング用マスク50を利用してCr膜20をエッチングした。Cr膜20のエッチングは、酸素と塩素の混合ガスによるドライエッチングにより行った。
次いで、凸状の基礎マスク部30(レジスト)とその側面32に形成された寸法補正用の膜部40(SiO2膜)からなるエッチング用マスク50を、レジスト剥離液および洗浄(硫酸とメガソニック洗浄)で除去し、基板の上に所定のパターンで形成されたCr膜からなる中間膜マスク21をマスクとし、CF4ガスを用いて石英ガラス基板をドライエッチングし、石英ガラス基板の第1主面部に深さ50nmの凹部を形成した。
次いで、Cr膜からなる中間膜マスク21を硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液によるウエットエッチングで除去し、石英ガラス基板の第1主面部に凸部パターン幅35nm、凹部パターン幅25nmに寸法変更させたレプリカモールドを製造することができた。
(実施例2)
<ナノインプリントモールドの製造方法(第2の実施形態:図3〜図5参照)>
光透過性の基板10として、外形が6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を準備した。準備した基板10の一方の主面上に、Crをスパッタリング法で成膜して膜厚5nmのCr膜20(中間膜20)を形成した。本実施例におけるCr膜20はいわゆるハードマスク層を形成するためのものである。
次いで、このCr膜20上に凹部パターン幅30nm、ピッチ80nmのラインアンドスペースのパターン形態を有するマスターモールドを用いてナノインプリント法および残膜除去のための酸素アッシングを実施し、凸部パターン幅30nm、ピッチ80nmのラインアンドスペースのパターン形態からなるレジスト(凸状の第1マスク部130)を形成した。レジスト(凸状の第1マスク部130)の厚さは50nmとした。
次いで、形成された凸状の第1マスク部130のパターンを酸素プラズマ処理によりスリミングを行い、スリミング後の凸状の第1マスク部130aのパターン幅を22nmとした。レジスト厚は44nmであった。レジスト幅の縮小度は、〔(30−22)/30〕×100=26.7%であった。
スリミングした凸状の第1マスク部130aのパターンの側面132および上面131、並びにCr膜20の上面20aを覆うようにALD法によりSiO2膜を成膜し、厚さ18nmのSiO2被覆膜(第1の膜部140)を形成した。成膜温度は、室温とした。この際、図3(D)に示される凹部寸法Dpは22nmであった。
次いで、CF4ガスを用いてSiO2の被覆膜(第1の膜部140)の全面をドライエッチングによりエッチバックし、凸状の第1マスク部130aおよびCr膜20を露出させるとともに、第1の膜部140(SiO2の被覆膜)を凸状の第1マスク部130aの側面に残して側壁凸部140aを形成した。
次いで、酸素プラズマによるドライエッチングにより、選択的に凸状の第1マスク部130aを除去し(レジストコア除去操作)、Cr膜20上にSiO2の側壁凸部140aが形成された基板を作製した。SiO2の側壁凸部140aは、凸部パターン幅18nm、厚さ(高さ)40nm、ピッチ40nmのラインアンドスペースのパターン形態であった(凹部パターン幅22nm)。
このような側壁凸部140aは、本発明の第2実施形態において凸状の基礎マスク部140aに該当する。
次いで、側壁凸部140a(凸状の基礎マスク部140a)のパターンの側面142および上面141、並びにCr膜20の上面20aを覆うようにALD法により寸法補正用の膜部400であるSiO2膜を厚さ1nmに成膜した。寸法補正用の膜部400を形成させることによって、凸状の基礎マスク部140aと寸法補正用の膜部400とから構成される新たな複合凸状体は、凸部パターン幅20nm、ピッチ40nmのラインアンドスペースの形態となった。
次いで、CF4ガスを用いて寸法補正用の膜部400であるSiO2被覆膜をドライエッチングにより厚さ方向に1.5nmエッチバック(0.5nmオーバーエッチング)させた。
これにより、Cr膜20の上に形成されていた寸法補正用の膜部400および凸状の基礎マスク部140aの上面141に形成されていた寸法補正用の膜部400は除去され、凸状の基礎マスク部140(SiO2膜)とその側面142に形成された寸法補正用の膜部400(SiO2膜)とからなるエッチング用マスク150が形成された。
次いで、Cr膜20の上にパターン形成されたエッチング用マスク150を利用してCr膜20(中間膜20)をエッチングし、Cr膜からなる中間膜マスク21を形成した。Cr膜20のエッチングは酸素と塩素の混合ガスによるドライエッチングにより行った。
次いで、基板の上に所定のパターンで形成されたCr膜である中間膜マスク21をマスクとし、CF4ガスを用いて石英ガラス基板をドライエッチングし、石英ガラス基板の第1主面部に深さ50nmの凹部を形成した。
次いで、Cr膜である中間膜マスク21を硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液によるウエットエッチングで除去し、石英ガラス基板の第1主面部に凸部パターン幅20nm、凹部パターン幅20nm(ピッチ40nm)のレプリカモールドを製造することができた。このレプリカモールドは、レジストコア除去操作の結果得られた途中工程における凸状の基礎マスク部140aの寸法(凸部パターン幅18nm、ピッチ40nmのラインアンドスペース)を補正して製造することができたものである。
(実施例3)
<ナノインプリントモールドの製造方法(第3の実施形態:図9〜図10参照)>
光透過性の基板10として、外形が6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を準備した。準備した基板10の一方の主面上に、Crをスパッタリング法で成膜して膜厚5nmのCr膜20(中間膜20)を形成し、このCr膜20上に酸化シリコン(SiO2)をスパッタリング法で成膜して膜厚2.5nmの基礎マスク材料層230′を形成した。本実施例におけるCr膜20はいわゆるハードマスク層を形成するためのものである。
次いで、基礎マスク材料層230′上に、凹部パターン幅30nm、ピッチ30nmのラインアンドスペースのパターン形態を有するマスターモールドを用いてナノインプリント法および残膜除去のための酸素アッシングを実施し、凸部パターン幅30nm、ピッチ30nmのラインアンドスペースのパターン形態からなるレジスト(凸状の第1マスク部235)を形成した。レジスト(凸状の第1マスク部235)の厚さは30nmとした。
次に、第1マスク部235をエッチングマスクとしてCF4ガスを用いて基礎マスク材料層230′をドライエッチングした。その後、酸素プラズマによるドライエッチングで第1マスク部235を除去することにより、Cr膜20上に凸状の基礎マスク部230を形成した。この基礎マスク部230は、凸部パターン幅30nm、ピッチ30nmのラインアンドスペースのパターンであった。
このように形成した凸状の基礎マスク部230の側面232および上面231、並びにCr膜20の上面20aを覆うように、寸法補正用の膜部240を形成した。寸法補正用の膜部40は、ALD法により形成したSiO2膜であり、その膜厚は、厚さ2.5nmとした。
なお、ALD法によりSiO2膜の成膜時の温度は28℃とした。
次いで、CF4ガスを用いて寸法補正用の膜部240であるSiO2膜をドライエッチングにより厚さ方向に3nmエッチバック(0.5nmオーバーエッチング)させた。
これにより、Cr膜20の上に形成されていた寸法補正用の膜部240および凸状の基礎マスク部230の上面231に形成されていた寸法補正用の膜部240は除去され、凸状の基礎マスク部230とその側面232に形成された寸法補正用の膜部240(SiO2膜)からなるエッチング用マスク250が形成された。
次いで、硫酸過水洗浄を施し、その後、エッチング用マスク250を利用してCr膜20をエッチングした。Cr膜20のエッチングは、酸素と塩素の混合ガスによるドライエッチングにより行った。
次いで、凸状の基礎マスク部230(SiO2膜)とその側面232に形成された寸法補正用の膜部240(SiO2膜)からなるエッチング用マスク250を、洗浄(硫酸とメガソニック洗浄)によって除去し、基板の上に所定のパターンで形成されたCr膜からなる中間膜マスク21をマスクとし、CF4ガスを用いて石英ガラス基板をドライエッチングし、石英ガラス基板の第1主面部に深さ50nmの凹部を形成した。
次いで、Cr膜からなる中間膜マスク21を硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液によるウエットエッチングで除去し、石英ガラス基板の第1主面部に凸部パターン幅35nm、凹部パターン幅25nmに寸法変更させたレプリカモールドを製造することができた。
(参考例)
<寸法補正用の膜部400を使用しないナノインプリントモールドの製造方法>
上記実施例2の場合と同様に、Cr膜20上に凹部パターン幅30nm、ピッチ80nmのラインアンドスペースのパターン形態を有するマスターモールドを用いてナノインプリント法を実施し、凸部パターン幅30nm、ピッチ80nmのラインアンドスペースのパターン形態からなるレジストを形成した。
さらに、このレジストパターンを酸素プラズマ処理によりスリミングを行い、スリミング後のレジストパターン幅を2/3の20nmとした。この場合の幅の縮小度は、〔(30−20)/30〕×100=33%であった。
スリミングしたレジストおよびクロム膜20覆うようにALD法によりSiO2膜を成膜し、厚さ20nmのSiO2被覆膜(第1の膜部140)を形成した。この際、図3(D)の凹部寸法Dpは20nmであった。
次いで、CF4ガスを用いてSiO2の被覆膜(第1の膜部140)の全面をドライエッチングによりエッチバックし、凸状の第1マスク部130aおよびCr膜20を露出させるとともに、第1の膜部140(SiO2の被覆膜)を凸状の第1マスク部130aの側面に残して側壁凸部140aを形成した。
次いで、酸素プラズマによるドライエッチングにより、選択的に凸状の第1マスク部130aを除去し(レジストコア除去操作)、Cr膜20上にSiO2の側壁凸部140aが形成された基板を作製した。
次いで、Cr膜20の上にパターン形成された側壁凸部140aをマスクとして利用してCr膜20をエッチングし、Cr膜からなる中間膜マスク21を形成した。
次いで、基板の上に所定のパターンで形成されたCr膜である中間膜マスク21をマスクとし、CF4ガスを用いて石英ガラス基板をドライエッチングし、石英ガラス基板の第1主面部に深さ50nmの凹部を形成した。
次いで、Cr膜である中間膜マスク21を硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液によるウエットエッチングで除去し、石英ガラス基板の第1主面部に凸部パターン幅20nm、凹部パターン幅20nm(ピッチ40nm)のレプリカモールドを製造した。この凹凸パターン寸法は、上記実施例2と同じである。
<上記実施例2と上記参考例との対比考察>
実施例2は寸法補正可能な工程を含むことにより凹凸パターンの寸法変動等に対して柔軟な対応が可能である。さらに寸法補正可能な工程を含むことにより、スリミングによるレジスト幅の縮小度を小さくすることが可能となり、これによりスリミング寸法精度の向上を図ることが可能となる。さらに寸法補正可能な工程を含むことにより、凹部寸法Dpを大きくとることが可能となり、エッチバック工程を円滑に行うことができる。