JP2014082285A - 太陽電池およびその製造方法、太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶シリコン基板の界面に形成される微結晶や欠陥あるいは界面準位を低減させ、光電変換効率の高い太陽電池を得ること。
【解決手段】n型単結晶シリコン基板1において凹凸構造が形成された主面上に、非晶質半導体薄膜層(真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3、p型非晶質シリコン系薄膜層4)と受光面側グリッド電極9aとがこの順で積層され、前記凹凸構造における平坦な凹部領域上のみに、化学反応を用いて前記平坦な凹部領域を人工的に酸化して形成された化学酸化膜2aを有し、前記化学酸化膜2a上に前記非晶質半導体薄膜層が当接している。
【選択図】図1−3
【解決手段】n型単結晶シリコン基板1において凹凸構造が形成された主面上に、非晶質半導体薄膜層(真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3、p型非晶質シリコン系薄膜層4)と受光面側グリッド電極9aとがこの順で積層され、前記凹凸構造における平坦な凹部領域上のみに、化学反応を用いて前記平坦な凹部領域を人工的に酸化して形成された化学酸化膜2aを有し、前記化学酸化膜2a上に前記非晶質半導体薄膜層が当接している。
【選択図】図1−3
Description
本発明は、太陽電池およびその製造方法、太陽電池モジュールに関し、特に、結晶半導体基板の表面にヘテロ接合を有する結晶系半導体の太陽電池およびその製造方法、太陽電池モジュールに関する。
近年、光起電力を利用した太陽光発電に用いられる種々のデバイス(光起電力を生じる個々のユニットを太陽電池セル、または単にセルと称する)が開発されており、単結晶や多結晶のシリコン基板を用いた結晶系デバイスや、シリコン等の薄膜半導体を用いた薄膜系デバイスが知られている。
このような結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン太陽電池は、既に太陽光発電システムとして広く一般に実用化されている。その中でも単結晶シリコンとはバンドギャップの異なる導電型薄膜を単結晶シリコンの表面に形成して拡散電位を形成した結晶シリコン太陽電池は、ヘテロ接合太陽電池と呼ばれている。このヘテロ接合太陽電池は、特に光電変換効率の高い太陽電池を実現している点で注目されている。ヘテロ接合太陽電池は、非晶質膜のバンドギャップが広いことを利用するとともに、非晶質膜形成によるパッシベーション効果を利用する。ヘテロ接合太陽電池では、入射光が吸収されやすい受光面側に非晶質膜によるヘテロ構造のpn接合を設けることにより、電子正孔対の効率的な分離回収を実現している。
さらにその中でも拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン基板の表面との間に薄い真性の非晶質シリコン層を介在させた太陽電池は、光電変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている(たとえば、特許文献1参照)。結晶シリコンの表面と導電型非晶質シリコン系薄膜との間に薄い真性の非晶質シリコン層を成膜することにより、成膜による新たな欠陥準位の生成を低減しつつ結晶シリコンの表面に存在する欠陥(主にシリコンの未結合手)を水素で終端化処理することができ、また導電型非晶質シリコン系薄膜を形成する際の結晶シリコンの表面へのキャリア導入不純物の拡散を防止することもできる。
ヘテロ接合太陽電池では、結晶シリコンの表面にテクスチャーと呼ばれる微細なピラミッド型の凹凸を形成することが多い。このテクスチャーは、太陽電池表面の光反射率を低下させる。このため、テクスチャーを設けることにより、短絡電流が向上し、太陽電池の性能は大きく向上する。
主面が(100)面の単結晶シリコンのアルカリ性溶液によるエッチングにおいては、(111)面のエッチレートが他の結晶面に比べて極めて小さい値を示す。このことから、テクスチャーは、アルカリ性溶液による異方性エッチングによって、高い結晶面方位選択性を有するエッチング方法により形成される。
しかし、エッチングレートを制御し易く、大量に処理可能なバッチ方式の装置を用いたアルカリ性溶液によるエッチングでは、薬液中に残存する銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の金属不純物がエッチング後に単結晶シリコン基板の活性な表面に再付着する問題が起き易い。このような金属不純物の単結晶シリコン基板の表面への再付着は、表面再結合による少数キャリアの損失を増加させるため、太陽電池特性を低下させる原因となる。
従来、このような金属不純物の再付着の対策として、半導体ウエハ表面洗浄方法として、シリコンウエハの表面をオゾン水、塩酸過水(HPM)、アンモニア過水(APM)等で洗浄する方法(たとえば、特許文献2参照)や、酸化性洗浄液による処理を実施した後、希フッ酸処理を行い、酸化性洗浄液により形成された酸化膜を除去するワンバス洗浄式の半導体ウエハ洗浄方法(たとえば、特許文献3参照)が用いられている。そして、結晶シリコン基板の両面に微細なピラミッド型の凹凸を形成する場合は、アルカリ性溶液の濃度調整や添加剤の使用により、エッチング速度を制御する方法が用いられている。
しかしながら、テクスチャー形成のメカニズムは十分に解明されておらず、ウエハの面内において、アルカリ性溶液によるエッチング後の凹凸の形状が不均一な部分が生じる。ウエハの面内において凹凸形状が不均一な場合は、結晶シリコンの表面への上述した金属不純物の再付着量や、テクスチャーを形成した後の洗浄後のウォーターマークの発生分布が大きな問題となっている。ウォーターマークとは、湿式の洗浄あるいはエッチングの後にシリコン表面を有する基板を乾燥させる際に、基板が濡れた状態から乾燥状態になる間に水滴が基板表面に付着して、その水滴の跡(酸化膜)が残る現象である。
金属不純物やウォーターマークが結晶シリコン表面に残存した場合には、単結晶シリコン基板の表面とその上の真性の非晶質シリコン層との界面や、単結晶シリコン基板の裏面側の界面において、金属不純物やウォーターマークの一部が単結晶シリコン基板のシリコンに取り込まれることにより、結晶性不整合や微量の汚染物などの界面の不完全性に伴う微結晶や欠陥あるいは界面準位が形成され得る。この界面における微結晶や欠陥あるいは界面準位は、キャリアの再結合を引き起こし、最終的に太陽電池の光電変換効率の向上を妨げる原因となり得る。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、結晶シリコン基板の界面に形成される微結晶や欠陥あるいは界面準位を低減させ、光電変換効率の高い太陽電池およびその製造方法、太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる太陽電池は、結晶系半導体基板において凹凸構造が形成された主面上に、非晶質半導体薄膜層と集電極とがこの順で積層され、前記凹凸構造における平坦な凹部領域上のみに、化学反応を用いて前記平坦な凹部領域を人工的に酸化して形成された化学酸化膜を有し、前記化学酸化膜上に前記非晶質半導体薄膜層が当接していること、を特徴とする。
本発明によれば、結晶シリコン基板の界面に形成される微結晶や欠陥あるいは界面準位を低減させ、光電変換効率の高い太陽電池が得られる、という効果を奏する。
以下に、本発明にかかる太陽電池およびその製造方法、太陽電池モジュールの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
本発明者らは上記課題を検討した結果、単結晶シリコン基板を用いたヘテロ接合太陽電池において、テクスチャー構造の一部に化学酸化膜を形成することにより、受光面側あるいは受光面と反対側の裏面側のヘテロ接合部分の界面層の問題を克服する方法を見出した。
実施の形態1.
まず、本実施の形態にかかる結晶系半導体太陽電池であるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池に用いる単結晶シリコン基板について説明する。結晶シリコン系太陽電池に用いる一般的な単結晶シリコン基板は、導電性を持たせるためにシリコンに対して電荷を供給する不純物を含有し、たとえばリン原子を含有するn型の基板とボロン原子を含有するp型の基板とがある。このような単結晶シリコン基板を太陽電池に用いる場合は、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される光入射側(受光面側)のへテロ接合をPN接合として強い電場を設けることにより、電子正孔対を効率的に分離回収することができる。したがって、光入射側のヘテロ接合はPN接合とすることが好ましい。
まず、本実施の形態にかかる結晶系半導体太陽電池であるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池に用いる単結晶シリコン基板について説明する。結晶シリコン系太陽電池に用いる一般的な単結晶シリコン基板は、導電性を持たせるためにシリコンに対して電荷を供給する不純物を含有し、たとえばリン原子を含有するn型の基板とボロン原子を含有するp型の基板とがある。このような単結晶シリコン基板を太陽電池に用いる場合は、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される光入射側(受光面側)のへテロ接合をPN接合として強い電場を設けることにより、電子正孔対を効率的に分離回収することができる。したがって、光入射側のヘテロ接合はPN接合とすることが好ましい。
一方で、正孔と電子とを比較した場合は、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が一般的に移動度は大きくなることから、ハイブリッド型太陽電池においてはn型単結晶シリコン基板を用いることが好適である。以上の観点から、本実施の形態においてはn型単結晶シリコン基板を用いた場合について説明する。なお、p型単結晶シリコン基板を用いることも可能である。
図1−1は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の概略構成を示す上面図である。図1−2は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の概略構成を示す上面図である。図1−3は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の概略構成を示す要部断面図であり、図1−1中の線分A−A’に沿った要部断面図である。
実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池においては、n型単結晶シリコン基板1の両面にピラミッド形状の凸部が形成されて、凹凸形状からなるテクスチャー構造を備えている(図示せず)。n型単結晶シリコン基板1の光入射面側の一部には該n型単結晶シリコン基板1の光入射面の表面の一部を酸化して形成された酸化シリコン(SiO2)膜である化学酸化膜2aが形成されている。そして、化学酸化膜2a上を含むn型単結晶シリコン基板1の光入射面側に真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3、p型非晶質シリコン系薄膜層4、透明導電膜層7がこの順で積層形成されている。透明導電膜層7上には、受光面側グリッド電極9aと受光面側バス電極9bとからなる受光面側集電極9が櫛形状に形成されている。図1−3においては、受光面側グリッド電極9aのみを示している。
一方、n型単結晶シリコン基板1の裏面側の一部には該n型単結晶シリコン基板1の裏面の表面の一部を酸化して形成された酸化シリコン(SiO2)膜である化学酸化膜2bが形成されている。そして化学酸化膜2b上を含むn型単結晶シリコン基板1の裏面側に真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5、n型非晶質シリコン系薄膜層6、透明導電膜層8がこの順で積層形成されている。透明導電膜層8上には、裏面側グリッド電極10aと裏面側バス電極10bとからなる裏面側集電極10が櫛形状に形成されている。図1−3においては、裏面側グリッド電極10aのみを示している。
図2は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池におけるn型単結晶シリコン基板1の両面に形成されたテクスチャー構造(凹凸形状)を示す模式断面図である。図3は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池におけるn型単結晶シリコン基板1の光入射面側に形成されたテクスチャー構造(凹凸形状)を示す模式斜視図である。図2に示すように、n型単結晶シリコン基板1の光入射側に形成されたテクスチャー構造においては、隣り合うピラミッド形状の凸部間に平坦部11aが形成されている。図2に示すように、n型単結晶シリコン基板1の裏面側に形成されたテクスチャー構造においては、隣り合うピラミッド形状の凸部間に平坦部11bが形成されている。平坦部11aおよび平坦部11aは、テクスチャー構造の凹凸形状における凹部に対応する。
また、図3に示すように、n型単結晶シリコン基板1の光入射側に形成されたテクスチャー構造において、ピラミッド形状の凸部の表面(側面)は(111)面とされ、ピラミッド形状の凸部の稜線は(110)面に位置しており、平坦部11aは(111)面以外の主に(100)面が少なくとも一部露出した面とされている。なお、図示していないが、n型単結晶シリコン基板1の裏面側に形成されたテクスチャー構造においても、同様に、ピラミッド形状の凸部の表面は(111)面とされ、平坦部11bは(111)面以外の主に(100)面が少なくとも一部露出した面とされている。
そして、この平坦部11aの少なくとも一部には、自然酸化膜とは異なり意図的に形成された清浄な薄い化学酸化膜2aが真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3と当接して形成されている。同様に、平坦部11bの少なくとも一部には、自然酸化膜とは異なり意図的に形成された清浄な薄い化学酸化膜2bが真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5と当接して形成されている。これらの化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2aは、平坦部11aおよび平坦部11bのみに形成されており、ピラミッド形状の凸部の表面(側面)の(111)面には形成されていない。
つぎに、上述した実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の製造方法について図4、図5−1〜図5−3および図6−1〜図6−3を参照して説明する。図4は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の製造方法におけるテクスチャー形成工程からシリコン薄膜形成工程までのフローを示すフローチャートである。図5−1〜図5−3は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の製造方法におけるn型単結晶シリコン基板1の洗浄工程を説明するための模式断面図である。図6−1〜図6−3は、実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の製造方法を説明するための模式断面図である。
まず、光入射面となる主面の面方位が(100)であり、厚みが200μm程度のn型単結晶シリコン基板1を有機溶剤、酸、アルカリ等で洗浄する。つぎに、n型単結晶シリコン基板1を熱アルカリ水溶液に3分間浸漬してインゴットからのスライス時に基板表面に生じるダメージ層をたとえば10μm厚程度除去した後、超純水によるリンス洗浄を行う。熱アルカリ水溶液としては、たとえば数重量%〜20重量%程度の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を70℃〜90℃程度に加熱したアルカリ水溶液を用いることができる。なお、これらの基板表面の処理方法として、プラズマ、UV、オゾン等を用いたドライクリーニング法や熱処理等など、シリコン基板表面状態に応じた洗浄方法を適宜用いることができる。
つぎに、数%のイソプロピルアルコール(IPA)水溶液を混入して70℃〜90℃程度に保持した数重量%〜10数重量%程度の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液にn型単結晶シリコン基板1を15〜30分間浸漬し、n型単結晶シリコン基板1の表面をエッチングする。これにより、平均数μm〜十数μmの凹凸ピッチと凹凸高さとを有するテクスチャーを、n型単結晶シリコン基板1の両面に形成する。その後、超純水によりn型単結晶シリコン基板1のリンスを行う。
このような異方性エッチングにより、n型単結晶シリコン基板1の表面には{111}面が露出したピラミッド型のテクスチャーが形成されたテクスチャー構造が得られる(図5−1、ステップS101)。このようなテクスチャー構造を形成するためのエッチング条件として、たとえばエッチング速度は{100}面が最も速く、{110}面、{111}面が最も遅くなるようにエッチング条件が調整されていればよい。なお、ここでは、水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合について示したが、エッチング液としては水酸化カリウム水溶液や他のアルカリ性溶液を用いてもよい。
また、ここではn型単結晶シリコン基板1における{100}面と、{110}面および{111}面とのエッチング速度比を増大させる目的でアルカリ水溶液中にIPAを添加する場合について示したが、添加剤は特にこれに限定されることはない。たとえばIPAを添加した場合と同等以上のエッチング速度比を得ることができれば、他の添加剤を用いてもよく、あるいは添加剤を使用しなくてもよい。
ここで、アルカリ水溶液によるエッチング後のn型単結晶シリコン基板1の光入射面側の表面を顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察した結果、図3に示すように(111)面からなるピラミッド形状の凸部と、(100)面が一部露出した平坦面(平坦部11a)とを有するテクスチャーが形成されていることが確認された。同様に、アルカリ水溶液によるエッチング後のn型単結晶シリコン基板1の裏面側の表面には(111)面からなるピラミッド形状の凸部と、(100)面が一部露出した平坦面(平坦部11b)とを有するテクスチャー構造が形成されていることが確認された。また、エッチング後のn型単結晶シリコン基板1の光入射面側の表面には、金属不純物や有機不純物、酸化膜等からなる再付着物12aが発生する(図5−1)。同様に、エッチング後のn型単結晶シリコン基板1の裏面側の表面には、金属不純物や有機不純物、酸化膜等からなる再付着物12bが発生する(図5−1)。
本来、アルカリ水溶液によるエッチング後の単結晶シリコン基板の表面は、図7に示すようにテクスチャー構造において平坦部が存在せず、微細且つ緻密なピラミッド形状の凸形状が形成されていることが理想とされる。図7は、単結晶シリコン基板に形成される理想的なテクスチャー形状(凹凸形状)を示す模式斜視図である。
しかしながら、実際のエッチング時に発生する(100)面は、エッチング前のn型単結晶シリコン基板1の表面や酸化膜中の不純物量やエッチング装置、アルカリ水溶液の濃度や不純物量などのさまざまな要因により発生度合いが異なる。したがって、これらの要因によりシリコン表面の良好な異方性エッチングを行えず、n型単結晶シリコン基板1に所望のランダムテクスチャー構造を形成できなくなると考えられる。
たとえば図8に示すようにn型単結晶シリコン基板1の面内において平坦部11a(平坦部11b)形成の割合が大きくなり過ぎた場合は、光の反射が大きくなり、図3および図7に示すテクスチャー構造と比較して光閉じ込め効果が低減する。このため、図8に示すようなテクスチャー構造を有する単結晶シリコン基板を使用して製造される太陽電池では、短絡電流値が低下して出力特性が劣化する。図8は、単結晶シリコン基板が不良となるテクスチャー形状(凹凸形状)を示す模式斜視図である。
なお、テクスチャー構造における凹凸形状が良好に形成できているか否かは、凹凸形成後のn型単結晶シリコン基板1における光反射率によってモニタすることができる。そして、n型単結晶シリコン基板1の表面に図8に示すようなテクスチャー構造が形成されている場合には、その光反射率が不安定な高い値を示すことにより判別可能であり、該n型単結晶シリコン基板1は不良品とされる。
つぎに、第1洗浄工程(ステップS102〜ステップS104)および第2洗浄工程(ステップS105、ステップS106)により、n型単結晶シリコン基板1の洗浄を行う。なお、上述したテクスチャー構造の形成およびこの洗浄工程は、複数枚の基板を同時処理可能であり生産性に優れたワンバス洗浄方式、またはバッチ式洗浄方式により行うことができる。
第1洗浄工程では、まず、シリコン表面を酸化させる作用のある酸化剤を含んだ酸化性洗浄液で処理する。すなわちステップS102において、n型単結晶シリコン基板1の両面に付着した再付着物12aおよび再付着物12bを、オゾン水洗浄によって除去する。ステップS102のオゾン水洗浄では、n型単結晶シリコン基板1をたとえば20ppmのオゾンを含有する水溶液(オゾン水)へ浸漬して、n型単結晶シリコン基板1の表面に再付着しやすい金属不純物や有機不純物を除去し、且つn型単結晶シリコン基板1の表面に4nm以下程度の膜厚の酸化膜を形成する。この工程では、n型単結晶シリコン基板1の両面の全体に酸化膜が形成される。
このステップS102のオゾン水洗浄においてn型単結晶シリコン基板1を浸漬するオゾン水のオゾン濃度は1ppm以上が好ましい。このようなオゾン濃度のオゾン水にn型単結晶シリコン基板1を数分程度浸漬させることによって、金属不純物や有機不純物の除去と酸化膜の形成を行うことができる。酸化膜を形成することにより、n型単結晶シリコン基板1の表層の金属不純物や有機不純物が該酸化膜に取り込まれる。また、オゾン水のオゾン濃度は、オゾンの自己分解による濃度低下の影響が大きいため、オゾン水中のオゾンの溶存濃度を一定にするために炭酸ガスをオゾン水に添加することが好ましい。
つぎに、ステップS103では、ステップS102のオゾン水洗浄でn型単結晶シリコン基板1の表面に形成された酸化膜を、フッ化水素を含む洗浄液により除去する。たとえば希フッ酸洗浄を行う。ステップS103の希フッ酸洗浄では、n型単結晶シリコン基板1をたとえば5重量%のフッ酸(HF)を含有する洗浄液に浸漬して、n型単結晶シリコン基板1の表面に形成された酸化膜を除去する。フッ酸を含有する溶液を用いることにより、特にシリコン系の太陽電池においてシリコンの酸化膜を効率良く除去できる。また、n型単結晶シリコン基板1の表面に形成された酸化膜の厚みに合わせてフッ酸を含む洗浄液の濃度を調整し、あるいは洗浄時間を調整して洗浄を行うことができる。
つぎに、ステップS104では、n型単結晶シリコン基板1の表面の両面に付着していた不純物やステップS102のオゾン水洗浄で形成された酸化膜の下層に存在し、除去しきれていないn型単結晶シリコン基板1の界面近傍の金属不純物や有機不純物をオゾン水洗浄により除去する。ステップS104のオゾン水洗浄では、n型単結晶シリコン基板1をたとえば20ppmのオゾンを含有する水溶液(オゾン水)へ浸漬して、n型単結晶シリコン基板1の界面近傍の金属不純物や有機不純物を除去し、且つn型単結晶シリコン基板1の表面に4nm以下程度の膜厚の酸化膜を形成する。酸化膜を形成することにより、n型単結晶シリコン基板1の表層の金属不純物や有機不純物が該酸化膜に取り込まれる。この工程では、n型単結晶シリコン基板1の両面の全体に酸化膜が形成される。
つぎに、第2洗浄工程では、まずステップS105において、ステップS104のオゾン水洗浄でn型単結晶シリコン基板1の表面に形成された酸化膜を希フッ酸洗浄により除去して清浄なシリコン表面を露出させる(図5−2)。第2希フッ酸洗浄では、n型単結晶シリコン基板1をたとえばフッ酸(HF)を含有する洗浄液として5重量%のフッ酸(HF)を含有する洗浄液に浸漬して、n型単結晶シリコン基板1の表面に形成された酸化膜を除去する。
つぎに、酸化性洗浄工程であるステップS106では、オゾン水洗浄により、n型単結晶シリコン基板1の界面近傍を洗浄するとともにn型単結晶シリコン基板1の表面に化学酸化膜を形成する。すなわち、ステップS105において酸化膜が除去されて露出した清浄なシリコン表面を酸化させる作用のある酸化剤を含んだ薬液で処理する。ここで、化学酸化膜とは、清浄なシリコン表面を大気中に放置することにより形成される自然酸化膜と異なり、化学反応を用いて意図的に、人工的に形成された酸化膜を意味する。
ステップS106のオゾン水洗浄では、n型単結晶シリコン基板1を酸化性洗浄液としてたとえば5ppmのオゾンを含有する水溶液(オゾン水)へ180秒間浸漬する。これにより、n型単結晶シリコン基板1の光入射面側においては平坦部11aのみに化学酸化膜2aが、n型単結晶シリコン基板1の裏面側においては平坦部11bのみに化学酸化膜2bが形成される(図5−3、図6−1)。なお、ステップS102およびステップS104においても化学反応を用いて意図的に、人工的に形成酸化膜を形成しているが、ここではステップS102およびステップS104においてn型単結晶シリコン基板1の両面の全体に形成する酸化膜と区別して、ステップS106で平坦部11aのみおよび平坦部11aのみに人工的に形成する酸化膜を化学酸化膜と呼ぶ。
ここで、化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bの形成メカニズムについて説明する。酸化シリコン(SiO2)膜は、シリコンの表面のシリコン(Si)原子のSi−Si結合に酸素が入りこんで、シリコン表面から酸化反応が始まって形成される。このため、酸化シリコン(SiO2)膜の形成速度は、Si−Si結合の状態に依存する。本実施の形態においてテクスチャー構造形成後のn型単結晶シリコン基板1のSi表面は、(111)面であるピラミッド形状の凸部の表面と、(111)面以外の面であって主に(100)面が露出した平坦部11aおよび平坦部11aの表面とで構成されている。したがって、その後のフッ酸洗浄後のn型単結晶シリコン基板1のSi表面は、モノハイドライド構造(111)面とダイハイドライド構造(100)面とで構成されている。
上記の結合状態のSi表面における酸化反応では、(100)面>(111)面の順で酸化レートが早い。このため、酸化速度を制御する、すなわちオゾンを含有する水溶液(オゾン水)のオゾン濃度および処理時間のうち少なくとも一方を制御することにより、(100)面上となる平坦部11aおよび平坦部11bのみに化学酸化膜が形成される。すなわち、化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bは、n型単結晶シリコン基板1の光入射面上および裏面上において不連続に分散して複数箇所に形成される。また、このように制御している場合には、n型単結晶シリコン基板1の表面に理想的なテクスチャー構造が形成されている場合には、化学酸化膜は形成されない。
化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bの膜厚が厚すぎる場合には、該化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bが抵抗成分となり、太陽電池のダイオード特性を低下させ、また該化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2b内における電荷キャリアの再結合が増加する。このため、化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bの膜厚は、2nm以下であることが好ましい。また、化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bの膜厚の下限は、下層の膜質に起因して非晶質シリコン薄膜に結晶化が生じることを抑制する観点から1nm以上とすることが好ましい。実施の形態1では、化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bの膜厚を略2nmとした。
また、化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bの幅や面積比は、テクスチャー構造の形成後の(100)面領域の幅や面積に対応する。そして、本実施の形態では、化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bの面積比は、(111)面の表面積に対して(100)面領域が1%〜10%であるテクスチャー構造を想定している。(111)面の表面積に対する(100)面領域の割合が大きすぎる場合には、図8に示すようなテクスチャー構造が形成されており、該単結晶シリコン基板を使用して製造される太陽電池では、短絡電流値が低下して出力特性が劣化する。
本実施の形態において、上記のように酸化性洗浄液による処理としてオゾン水洗浄を実施する場合には、洗浄槽の清浄度維持と希フッ酸洗浄後のリンス効果を一定とするために、オーバーフロー構造の洗浄装置を用いて洗浄を行うことが好ましい。また、フッ酸洗浄後のリンス処理としては上記のようにオゾン水による洗浄を行うことが好ましいが、n型単結晶シリコン基板1のフッ酸を含む水溶液への浸漬とオゾンを含む溶液への浸漬との間に、純水によるリンス処理を実施してもよい。
つぎに、ステップS107では、たとえばスピンドライ乾燥法、温風乾燥法を用いてn型単結晶シリコン基板1の表面の水分を乾燥させる。ここで、実施の形態1では、ステップS106のオゾン水洗浄において、(100)面が露出した平坦部11a上および平坦部11b上に、化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)が形成されている。ここでは、(111)面の表面積に対する(100)面領域の割合が1%〜10%とされ、親水性を示す酸化シリコン表面(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)の領域の割合が撥水性を示すシリコン表面((111)面)の表面積に対して少ないため、n型単結晶シリコン基板1の表面の水切り性が向上しており、n型単結晶シリコン基板1の表面の水分を迅速に乾燥させることができる。
単結晶シリコン基板の面内においてテクスチャー構造の凹凸形状が不均一な場合、金属不純物やウォーターマークが単結晶シリコン基板の表面に残存した場合には、単結晶シリコン基板の表面とその上の真性の非晶質シリコン層との界面や、単結晶シリコン基板の裏面側とその上の真性の非晶質シリコン層との界面において、金属不純物やウォーターマークの一部が単結晶シリコン基板のシリコンに取り込まれることにより、結晶性不整合や微量の汚染物などの界面の不完全性に伴う微結晶や欠陥あるいは界面準位が形成され得る。そして、この界面における微結晶や欠陥あるいは界面準位は、表面再結合による少数キャリアの損失を増加させ、最終的に太陽電池の光電変換効率を低下させる原因となる。
シリコン表面にウォーターマークが発生する現象においては、シリコン、酸素、水の3つが同時に存在する必要があり、シリコン表面の水滴が乾燥した後に該シリコン表面にシリコン酸化物が残り、これがウォーターマークになると考えられる。すなわち、この3つのうちの一つでも欠けるとウォーターマークは発生しない。
そこで、実施の形態1では、(100)面が露出した平坦部11a上および平坦部11b上に、化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)を形成している。このように、乾燥工程前のシリコン表面のうち、酸化反応のレートが早い(100)面が露出した平坦部11a上および平坦部11b上にあらかじめ化学酸化膜を形成することによりシリコン、酸素、水の3つが同時に存在する状態の発生を防止して、乾燥工程における平坦部11a上および平坦部11b上におけるウォーターマークの発生を防ぐことができる。これにより、単結晶シリコン基板1の表面とその上の真性の非晶質シリコン層との界面における微結晶や欠陥あるいは界面準位に起因した表面再結合による少数キャリアの損失を抑制し、太陽電池の光電変換効率の低下を抑制することができる。
そして、ステップS106のオゾン水洗浄はステップS105の希フッ酸洗浄に引き続いて連続して行われるため、この化学酸化膜2aおよび化学酸化膜2bは清浄なシリコン表面に形成され、すなわち、本実施の形態にかかる化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)は、金属不純物等の不純物が洗浄により除去されたシリコン表面であって且つ形成の直前に表面の酸化膜が除去された清浄なシリコン表面に形成された酸化膜であるため、自然酸化膜に比べて不純物および欠陥の量が大幅に低減されており、自然酸化膜と比べて良質な膜となる。
したがって、化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)の表面は良好な界面構造が形成されており、平坦部11a上および平坦部11b上の領域において化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)が形成された領域は良好な界面構造が形成されている。そして、この化学酸化膜2a上および化学酸化膜2b上に非晶質シリコン薄膜を形成した場合には、下層の膜質に起因して非晶質シリコン薄膜に結晶化が生じることを抑制することができる。これにより、高い閾値電圧(開放電圧Voc)特性が得られ、光電変換効率の向上が図られる。
酸化シリコン膜は、膜質が良いほどフッ酸を含む溶液によるエッチングでのエッチングレートが低くなる。本実施の形態にかかる化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)は、フッ酸を含む溶液(たとえば希フッ酸)によるエッチングでのエッチングレートが、同じ膜厚の自然酸化膜と比較して1/2以下となる。これは、フッ酸を含む溶液(たとえば希フッ酸)の濃度に因らない。
つぎに、ステップS108では、テクスチャー構造および化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)が形成されたn型単結晶シリコン基板1の両面にシリコン系薄膜を成膜する。シリコン系薄膜の成膜には、プラズマCVD法を用いることが好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成条件としては、一般に、基板温度100℃〜300℃、圧力5Pa〜1000Pa、高周波パワー密度1W/cm2〜500W/cm2の条件が好適である。シリコン系薄膜の形成に使用する原料ガスとしては、たとえばシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)等のシリコン含有ガス、またはこれらのガスと水素(H2)とを混合したものが用いられる。
まず、n型単結晶シリコン基板1の光入射面となる一面側の表面に、実質的に真性な真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3が成膜される(図6−2)。真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3は、たとえばシリコンと水素とで構成されるi型水素化非晶質シリコン(a−Si:H)、シリコンと水素と酸素とで構成されるi型水素化非晶質酸化シリコン(a−SiOx:H)、シリコンと水素と炭素とで構成されるi型水素化非晶質炭化シリコン(a−SiCx:H)により構成することができる。真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3は、これらの中でも約5nmの厚みを有するi型水素化非晶質シリコン(a−Si:H)であることが好ましい。なお、真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、マイクロ波プラズマCVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)法、熱CVD法、LPCVD法等の公知手法も用いることができる。
実質的に真性な真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3の形成後、p型の導電性を有するp型非晶質シリコン系薄膜層4が真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3上に形成される(図6−2)。p型非晶質シリコン系薄膜層4の形成に用いるp型ドーパントとしては、たとえば3族元素であるボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などが挙げられる。成膜時に、シラン(SiH4)などのソースガスに、これらの少なくとも1つを含む化合物ガスを混合することで、膜をp型に価電子制御できる。
また、p型非晶質シリコン系薄膜層4を形成するためのドーパントガスとしては、たとえばジボラン(B2H6)等が好ましい。また、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)、アンモニア(NH3)、ゲルマン(GeH4)等の異種元素を含むガスを添加することで、膜を合金化してエネルギーギャップを変更することもできる。
つぎに、n型単結晶シリコン基板1の他面側の表面に、実質的に真性な真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5が成膜される(図6−2)。真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5は、たとえばシリコンと水素とで構成されるi型水素化非晶質シリコン(a−Si:H)、シリコンと水素と酸素とで構成されるi型水素化非晶質酸化シリコン(a−SiOx:H)、シリコンと水素と炭素とで構成されるi型水素化非晶質炭化シリコン(a−SiCx:H)により構成することができる。真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5は、これらの中でも約5nmの厚みを有するi型水素化非晶質シリコン(a−Si:H)であることが好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成条件および原料ガスとしては、真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3と同様の条件が使用できる。
実質的に真性な真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5の形成後、n型の導電性を有するn型非晶質シリコン系薄膜層6が真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5上に形成される(図6−2)。n型非晶質シリコン系薄膜層6の形成に用いるn型ドーパントとしては、たとえば5族元素であるリン(P)、チッソ(N)、砒素(As)などが挙げられる。成膜時に、シラン(SiH4)などのソースガスに、これらの少なくとも1つを含む化合物ガスを混合することで、膜をn型に価電子制御できる。上記n型非晶質シリコン系薄膜層6を形成するためのドーパントガスとしては、たとえばホスフィン(PH3)等が好ましい。また、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)、アンモニア(NH3)、ゲルマン(GeH4)等の異種元素を含むガスを添加することで、膜を合金化してエネルギーギャップを変更することもできる。
n型非晶質シリコン系薄膜層6は、たとえばn型非晶質シリコン系薄膜層の単層により構成してもよいが、n型非晶質シリコン系薄膜層とn型微結晶シリコン系薄膜層との二層により構成してもよい。真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3および真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5の膜厚は、たとえばそれぞれ5nm〜10nmの範囲が好ましい。p型非晶質シリコン系薄膜層4およびn型非晶質シリコン系薄膜層6の膜厚は、それぞれ3nm〜20nmの範囲が好ましい。
なお、実施の形態1では、真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3とp型非晶質シリコン系薄膜層4を先に形成する場合について説明したが、真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5とn型非晶質シリコン系薄膜層6とを先に形成してもよい。さらに、真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3とp型非晶質シリコン系薄膜層4と真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5とn型非晶質シリコン系薄膜層6とを真空雰囲気下で連続的に形成できない場合、詳しくはn型単結晶シリコン基板1の片面が大気中に暴露される場合は、大気中に暴露される片面に対しては上記第2洗浄工程を真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層の形成直前に実施することが好ましい。これにより、シリコン表面への自然酸化膜の形成を抑制して、自然酸化膜の欠陥等に起因して真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層に欠陥等の膜質の低下が発生することを抑制できる。
真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3、p型非晶質シリコン系薄膜層4、真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5およびn型非晶質シリコン系薄膜層6の形成後、これらの膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で観察したところ、これらの非晶質シリコン薄膜のエピタキシャル成長が抑制されて非晶質化率の高い非晶質シリコン系薄膜が形成されていることが確認された。
つぎに、p型非晶質シリコン系薄膜層4上に、透明導電膜層7としてたとえば30nm〜100nmの厚みを有するインジウム錫酸化物(ITO)膜をスパッタリング法により形成する(図6−3)。スパッタリングターゲットは、たとえば酸化スズ(SnO2)を酸化インジウム(In2O3)へ0.5重量%〜5重量%添加したインジウム錫酸化物(ITO)を用いることができる。ここでは透明導電膜層7として、スパッタリングターゲットの添加物として酸化スズ(SnO2)を用いて成膜されるインジウム錫酸化物(ITO)膜を示したが、透明導電膜層7はこれに限定されない。たとえばドーパントとしてアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)から選択した少なくとも1種類以上の元素を酸化インジウム(In2O3)へ添加したスパッタリングターゲットを用いて形成した透明導電膜を用いることができる。
なお、ここでは透明導電膜層7の成膜方法として、スパッタリング法を用いる場合について説明したが、透明導電膜層7の成膜方法はこれに限定されない。スパッタリング法の他にも、たとえば蒸着法、イオンプレーティング法、熱CVD法、MOCVD法、ゾルゲル法、あるいは液状にした原料を噴霧加熱する方法やインクジェット法など公知の方法を用いて透明導電膜層7を形成することができる。
つぎに、n型非晶質シリコン系薄膜層6上に、透明導電膜層7の形成と同様の手順でたとえば30nm〜100nmの厚みを有する透明導電膜層8が成膜される(図6−3)。
つぎに、表裏面の電極を形成する。電極の形成は、導電ペーストを電極のパターンにスクリーン印刷し、乾燥、焼成することにより行う。導電ペーストの印刷は、電極パターンに対応した開口部を有する樹脂膜が金属メッシュ上に形成された印刷マスクに、導電ペーストをスキイジで押し込み、導電ペーストをマスクの開口部から透過させて行う。
まず、導電ペーストを、櫛形状の裏面側集電極10のパターンにn型単結晶シリコン基板1の他面側に印刷、乾燥する。導電ペーストには、熱硬化型樹脂(たとえばエポキシ樹脂とウレタン樹脂とが所定の体積割合で配合された樹脂)などに銀(Ag)微粉末を含んだ銀ペーストを用いる。銀(Ag)微粉末の直径は、100nm未満であり、好ましくは10nm前後である。微粉末材料には、Ag以外にも金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)等を用いることができる。
このような導電ペーストをスクリーン印刷法により、たとえば高さ10μm〜50μm、幅50μm〜300μmに形成して、乾燥する。つぎに、導電ペーストを、櫛形状の受光面側集電極9のパターンにn型単結晶シリコン基板1の受光面側に印刷する。
そして、印刷した導電ペーストを乾燥させた後、導電ペーストを200℃程度で焼成(硬化)する。これにより、n型単結晶シリコン基板1の受光面側では、受光面側グリッド電極9aと受光面側バス電極9bとからなる櫛形状の受光面側集電極9が透明導電膜層7の上に形成される。また、n型単結晶シリコン基板1の裏面側では、裏面側グリッド電極10aと裏面側バス電極10bとからなる櫛形状の裏面側集電極10が透明導電膜層8上に形成される(図6−3)。
以上の工程を実施することにより、図1−1〜図1−3に示される構造を有する実施の形態1にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池が得られる。
上述したように、実施の形態1においては、単結晶シリコン基板1の表面にアルカリ溶液による異方性エッチングにより微細なピラミッド形状の凹凸を形成した場合に発生する結晶シリコン表面(111)面以外の、主として(100)面からなる結晶面(平坦面11a、平坦面11b)上に良質な薄い化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)を形成することにより、乾燥時における主として(100)面からなる結晶面(平坦面11a、平坦面11b)上への自然酸化膜やウォーターマークの形成を低減し、単結晶シリコン基板1とその上の真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3、および単結晶シリコン基板1とその上の真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5との界面に生じる微結晶や欠陥あるいは界面準位の形成を低減できる。これにより、単結晶シリコン基板1とその上の真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3および真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5との界面に良好な界面構造が形成されるため、該界面における電荷キャリアの再結合が抑制され、高い閾値電圧(開放電圧Voc)特性が得られ、光電変換効率の向上が図られる。
また、化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)は、自然酸化膜に比べて不純物および欠陥の量が大幅に低減された良質な膜であり、化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)の表面は良好な界面構造が形成される。これにより、化学酸化膜(化学酸化膜2a、化学酸化膜2b)上に形成された非晶質シリコン系薄膜(真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層3および真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層5)は下層の膜質の影響を受けずに高い非晶質化率を有し、高い閾値電圧(開放電圧Voc)特性が得られ、光電変換効率の向上が図られる。
したがって、実施の形態1によれば、結晶シリコン基板の表面に形成される微結晶や欠陥あるいは界面準位を低減させ、光電変換効率に優れたヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池が得られる。
なお、上記においては結晶シリコン基板の両面側に化学酸化膜を形成して界面の界面構造を改善する場合について示したが、必ずしも結晶シリコン基板の両面側に化学酸化膜を形成する必要はなく、結晶シリコン基板の一方の面のみに上述した化学酸化膜を形成した場合においても上述した効果が得られる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1の変形例について説明する。図9は、実施の形態2にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の製造方法におけるテクスチャー形成工程からシリコン薄膜形成工程までのフローを示すフローチャートである。
実施の形態2では、実施の形態1の変形例について説明する。図9は、実施の形態2にかかるヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池の製造方法におけるテクスチャー形成工程からシリコン薄膜形成工程までのフローを示すフローチャートである。
実施の形態2では、上述した実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法において、第1洗浄工程のオゾン水洗浄をSPM洗浄(硫酸過酸化水素:H2SO4+H2O2)およびHPM洗浄(塩酸過酸化水素:HCl+H2O2+H2O)に変更した以外は、実施の形態1と同様の手順でヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池を作製する。
すなわち、第1洗浄工程では、ステップS201においてSPM洗浄(硫酸過酸化水素:H2SO4+H2O2+H2O)を実施し、ステップS202において純水リンス洗浄を実施し、ステップS203において希フッ酸洗浄を実施し、ステップS204において純水リンス洗浄を実施し、ステップS205においてHPM洗浄(塩酸過酸化水素:HCl+H2O2+H2O)を実施し、ステップS206において純水リンス洗浄を実施する。
ここで、SPM洗浄液としては、たとえば硫酸(H2SO4)80wt%+過酸化水素水(H2O2)5wt%+H2Oの組成の混合液を用いることができる。また、HPM洗浄液としては、たとえば塩酸(HCl)10wt%+過酸化水素(H2O2)5wt%+H2O)の組成の混合液を用いることができる。
一方、第2洗浄工程では、実施例1の場合と同様に、ステップS105において希フッ酸洗浄を実施し、ステップS106においてオゾン水洗浄によりn型単結晶シリコン基板1の表面に化学酸化膜を形成した。各洗浄工程における洗浄条件を図10に併せて示す。
上述したように、実施の形態2においては、実施の形態1の場合と同様に、単結晶シリコン基板の表面にアルカリ溶液による異方性エッチングにより微細なピラミッド形状の凹凸を形成した場合に発生する結晶シリコン表面(111)面以外の、主として(100)面からなる結晶面(平坦面)上に良質な薄い化学酸化膜を形成することにより、自然酸化膜やウォーターマークの形成を低減し、単結晶シリコン基板とその上の非晶質シリコン薄膜との界面に生じる微結晶や欠陥あるいは界面準位の形成を低減できる。これにより、単結晶シリコン基板とその上の非晶質シリコン薄膜との界面に良好な界面構造が形成されるため、該界面におけるキャリアの再結合が抑制され、高い閾値電圧(開放電圧Voc)特性が得られ、光電変換効率の向上が図られる。
また、化学酸化膜は、自然酸化膜に比べて不純物および欠陥の量が大幅に低減された良質な膜であり、化学酸化膜の表面は良好な界面構造が形成される。これにより、化学酸化膜上に形成された非晶質シリコン系薄膜は、下層の膜質の影響を受けずに高い非晶質化率を有し、高い閾値電圧(開放電圧Voc)特性が得られ、光電変換効率の向上が図られる。
したがって、実施の形態2によれば、実施の形態1の場合と同様に、ウォーターマークの発生に起因して結晶シリコン基板の表面に形成される微結晶や欠陥あるいは界面準位を低減させ、光電変換効率に優れたヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池が得られる。
つぎに、具体的な実施例に基づいて本発明を説明する。上記の実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法に従ってヘテロ接合結晶シリコン系太陽電池(以下、太陽電池と呼ぶ場合がある)を作製した(実施例1)。各洗浄工程における洗浄条件を図10に示す。図10は、実施例および比較例にかかる太陽電池の製造における洗浄方法の処理条件を洗浄工程ごとに示す図である。
つぎに、上記の実施の形態2にかかる太陽電池の製造方法に従って太陽電池を作製した(実施例2)。各洗浄工程における洗浄条件を図10に示す。
また、比較のため、第2洗浄工程においてステップS106のオゾン水洗浄を、ステップS301の純水リンス洗浄に変更したこと以外は、実施の形態1と同様にして図11に示す手順で太陽電池を作製した(比較例1)。図11は、比較例1にかかる太陽電池の製造方法におけるテクスチャー形成工程からシリコン薄膜形成工程までのフローを示すフローチャートである。各洗浄工程における洗浄条件を図10に併せて示す。
また、比較のため、第2洗浄工程においてステップS106のオゾン水洗浄を、ステップS401の純水リンス洗浄に変更したこと以外は、実施例2と同様にして図12に示す手順で太陽電池を作製した(比較例2)。図12は、比較例2にかかる太陽電池の製造方法におけるテクスチャー形成工程からシリコン薄膜形成工程までのフローを示すフローチャートである。各洗浄工程における洗浄条件を図10に併せて示す。
またに、第2洗浄工程のステップS106のオゾン水洗浄におけるオゾン水濃度を10ppmに変更した以外は、実施例1と同様にして太陽電池を作製した(比較例3)。各洗浄工程における洗浄条件を図10に併せて示す。
またに、第2洗浄工程のステップS106のオゾン水洗浄におけるオゾン水濃度を20ppmに変更した以外は、実施例1と同様にして太陽電池を作製した(比較例4)。各洗浄工程における洗浄条件を図10に併せて示す。
実施例1、2および比較例1〜4の太陽電池の作製において、第1洗浄工程および第2洗浄工程の実施後に非晶質シリコン薄膜を形成したシリコン基板のライフタイムを測定した。図13は、実施例1、2および比較例1〜4のシリコン基板のライフタイムを示す特性図である。図13においては、比較例1、2のシリコン基板のライフタイムを基準(=1)として規格化した規格化ライフタイムを示している。
図13から分かるように、実施例1、2のシリコン基板の場合は比較例1、2のシリコン基板よりもライフタイムが長く、電荷キャリアの再結合抑制効果が得られている。これは、上述した平坦部11a、11bに化学酸化膜2a、2bが形成されることにより、平坦部11a、11bにおいてウォーターマークや自然酸化膜の発生が抑制され、ウォーターマークや自然酸化膜に起因して結晶シリコン基板の表面に形成される微結晶や欠陥あるいは界面準位が低減し、結晶シリコン基板と非晶質シリコン薄膜との界面構造が良好となっていることに因ると考えられる。
すなわち、テクスチャー(凹凸)を形成した場合に発生する結晶シリコン表面(111)面以外の(100)面が一部露出した平坦部に化学酸化膜を形成することにより、自然酸化膜やウォーターマークの形成を低減し、単結晶シリコン基板と非晶質シリコン薄膜との界面における上述した微結晶や欠陥あるいは界面準位の形成を顕著に低減できると考えられる。
実施例1、2および比較例1、2のシリコン基板では、第2洗浄工程の完了時の洗浄液からの引上げ直後において、シリコン基板の表面が全体的に見て撥水状態である。すなわち、テクスチャーが形成された実施例1、2のシリコン基板の表面においては、大半の領域を(111)面が占めている。そして、第2洗浄工程の完了時の洗浄液からの引上げ直後において(111)面には親水性を示す化学酸化膜が形成されておらず、疎水性を示すシリコン表面が露出している。したがって、実施例1、2のシリコン基板の表面は、全体的に見て撥水状態となる。
また、テクスチャーが形成された比較例1、2のシリコン基板の表面においては、第2洗浄工程の完了時の洗浄液からの引上げ直後において(111)面には親水性を示す化学酸化膜が形成されておらず、疎水性を示すSi表面がシリコン基板の表面全体に露出している。したがって、比較例1、2のシリコン基板の表面は、全体的に見て撥水状態となる。
そして、シリコン基板の表面の水分は、乾燥工程において乾燥されるまで、重力に伴って上部から乾燥していく。
ここで、実施例1、2では、シリコン基板の表面において、テクスチャー(凹凸)を形成した場合に発生する結晶シリコン表面である(111)面以外の、(100)面が一部露出した平坦部に化学酸化膜を形成することにより、該平坦部における自然酸化膜やウォーターマークの形成が抑制される。これにより、シリコン基板と非晶質シリコン薄膜との界面に良好な界面構造が形成されるため、該界面におけるキャリアの再結合が顕著に低減され、ライフタイムが向上する。
一方、比較例1、2では、シリコン基板の表面において、テクスチャー(凹凸)を形成した場合に発生する結晶シリコン表面である(111)面以外の、(100)面が一部露出した平坦部に化学酸化膜が形成されていないため、該平坦部に自然酸化膜やウォーターマークが形成される。これにより、シリコン基板と非晶質シリコン薄膜との界面に微結晶や欠陥あるいは界面準位が形成され、該界面におけるキャリアの再結合が増加し、ライフタイムが低下する。
また、実施例1、2と比較例3、4とを比較すると、同様の方法でテクスチャー構造の平坦部に化学酸化膜を形成しているにもかかわらず、比較例3、4ではライフタイムが比較例1、2よりも低くなっている。実施例1、2と比較例3、4とでは、第2洗浄工程のステップS106のオゾン水洗浄における処理時間は同じ条件であるが、オゾン水濃度が異なる。比較例3、4では実施例1、2よりもオゾン濃度が高く、比較例3、4の化学酸化膜は実施例1、2の化学酸化膜の膜厚よりも厚く形成されている。
比較例3、4では、シリコン基板の表面において、テクスチャー(凹凸)を形成した場合に発生する(100)面が一部露出した平坦部に化学酸化膜が形成されているが、結晶シリコン表面である(111)面にも化学酸化膜が形成されている。すなわち、比較例3、4のシリコン基板の表面は、全体的に見て親水状態となり、完全に濡れた状態で一様に水の膜が形成される。このため、シリコン基板の表面の水分は、乾燥工程において乾燥されるまで、シリコン基板の表面全体において重力に伴って上部から乾燥していく。この場合は平坦部における自然酸化膜やウォーターマークの形成は抑制されるが、化学酸化膜の膜厚が厚いために該化学酸化膜内における電荷キャリアの再結合が増加して、ライフタイムが向上しない。
ここで、化学酸化膜の膜厚は、オゾン濃度と処理時間との積に対応すると考えられる。 図14は、第2洗浄工程のステップS106のオゾン水洗浄におけるオゾン水濃度と処理時間を変化させた場合の処理時間と規格化ライフタイムとの関係を示す特性図である。図14では、実施例1と同様の工程により非晶質シリコン薄膜を形成した単結晶シリコン基板のライフタイムを示している。図14において、規格化ライフタイムは図13の場合と同じ条件で規格化している。オゾン濃度は、5ppm、10ppm、20ppmの3条件とし、処理時間は30秒、60秒、120秒、180秒、300秒の5条件とした。
図14から、第2洗浄工程のステップS106のオゾン水洗浄におけるオゾン濃度は、5ppm〜10ppmが好ましい。さらに、第2洗浄工程のステップS106におけるオゾン濃度Xppmと処理時間T秒との積の好ましい範囲は、150ppm・sec(5ppm×30sec)〜1200ppm・sec(10ppm×120sec)である。
つぎに、上記の実施例1と比較例1の太陽電池を各10個(サンプル1〜サンプル10)ずつ作製し、ソーラーシミュレータにより出力を測定した。図15は、実施例1および比較例1の各サンプル1〜サンプル10の太陽電池についてIV測定を実施して求めた規格化出力を示す特性図である。図15において、規格化出力は比較例1のサンプル1を基準(=1)として規格化している。
図15から、実施例1のサンプルは、比較例1のサンプルに比べて全体的に出力特性が向上し、各サンプルの個体差が少なく、出力特性が安定していることが分かる。すなわち、上述した実施の形態1によれば、安定して高い出力特性を有する太陽電池を高い歩留まりで作製することが可能となり、光電変換効率および歩留りの向上に対して有効であることが分かった。なお、比較例1のサンプル3、9では、理想的なピラミッド形状のテクスチャーが形成されているために高い出力が得られていると考えられる。
更に、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。たとえば、上記実施の形態1、2のそれぞれに示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。更に、上記実施の形態1、2にわたる構成要件を適宜組み合わせてもよい。
また、上記の実施の形態で説明した構成を有する薄膜太陽電池を複数形成し、隣接する薄膜太陽電池同士を電気的に直列または並列に接続することにより、良好な光閉じ込め効果を有し、光電変換効率に優れた太陽電池モジュールが実現できる。この場合は、隣接する薄膜太陽電池の一方の受光面側集電極と他方の裏面側集電極とを電気的に接続すればよい。
以上のように、本発明にかかる太陽電池は、光電変換効率の高いヘテロ接合太陽電池の実現に有用である。
1 n型単結晶シリコン基板、2a,2b 化学酸化膜、3 真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層、4 p型非晶質シリコン系薄膜層、5 真性(i型)非晶質シリコン系薄膜層、6 n型非晶質シリコン系薄膜層、7 透明導電膜層、8 透明導電膜層、9 受光面側集電極、9a 受光面側グリッド電極、9b 受光面側バス電極、10 裏面側集電極、10a 裏面側グリッド電極、10b 裏面側バス電極、11a 平坦部、11b 平坦部、12a 再付着物、12b 再付着物。
Claims (16)
- 結晶系半導体基板において凹凸構造が形成された主面上に、非晶質半導体薄膜層と集電極とがこの順で積層され、
前記凹凸構造における平坦な凹部領域上のみに、化学反応を用いて前記平坦な凹部領域を人工的に酸化して形成された化学酸化膜を有し、
前記化学酸化膜上に前記非晶質半導体薄膜層が当接していること、
を特徴とする太陽電池。 - 前記結晶系半導体基板は、単結晶シリコン基板であり、
前記非晶質半導体薄膜層は、非晶質シリコン系薄膜層であること、
を特徴とする請求項1に記載の太陽電池。 - 前記化学酸化膜は、希フッ酸溶液によるエッチングレートが希フッ酸溶液による自然酸化膜のエッチングレートの1/2以下であること、
を特徴とする請求項2に記載の太陽電池。 - 前記化学酸化膜は、前記平坦な凹部領域の(100)面上に形成されていること、
を特徴とする請求項3に記載の太陽電池。 - 前記結晶系半導体基板が第1導電型を有し、
前記非晶質半導体薄膜層が第2導電型を有すること、
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の太陽電池。 - 前記結晶系半導体基板および前記非晶質半導体薄膜層が第1導電型を有すること、
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の太陽電池。 - 前記非晶質半導体薄膜層は、前記主面側から真性非晶質半導体薄膜層と導電型非晶質半導体薄膜層とがこの順で積層されていること、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の太陽電池。 - 結晶系半導体基板の主面に異方性エッチングにより凹凸構造を形成する第1工程と、
前記結晶系半導体基板における前記凹凸構造が形成された主面を酸化剤を含んだ薬液で処理して前記凹凸構造が形成された主面の全体に酸化膜を形成する第2工程と、
前記酸化膜をフッ化水素を含む薬液により除去して前記結晶系半導体基板の表面を露出させる第3工程と、
前記酸化膜が除去されて露出した前記結晶系半導体基板の表面を酸化剤を含んだ薬液で処理して前記凹凸構造における平坦な凹部領域のみに化学酸化膜を形成する第4工程と、
前記化学酸化膜が形成された前記結晶系半導体基板の表面に残存する水分を乾燥除去する第5工程と、
前記化学酸化膜が形成された前記結晶系半導体基板上に非晶質半導体薄膜層を形成する第6工程と、
を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。 - 前記結晶系半導体基板は、主面が(100)面である単結晶シリコン基板であり、
前記非晶質半導体薄膜層は、非晶質シリコン系薄膜層であり、
前記第1工程では、アルカリ溶液を用いて前記結晶系半導体基板の主面を異方性エッチングすることよりピラミッド形状の凸部を有する前記凹凸構造を形成すること、
を特徴とする請求項8に記載の太陽電池の製造方法。 - 前記化学酸化膜は、希フッ酸溶液によるエッチングレートが希フッ酸溶液による自然酸化膜のエッチングレートの1/2以下であること、
を特徴とする請求項9に記載の太陽電池の製造方法。 - 前記酸化剤を含んだ薬液は、オゾンを含む薬液であること、
を特徴とする請求項8〜10のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。 - 前記オゾンを含む薬液は、二酸化炭素を含有すること、
を特徴とする請求項11に記載の太陽電池の製造方法。 - 前記結晶系半導体基板が第1導電型を有し、
前記非晶質半導体薄膜層が第2導電型を有すること、
を特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。 - 前記結晶系半導体基板および前記非晶質半導体薄膜層が第1導電型を有すること、
を特徴とする請求項8〜13のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。 - 前記第6工程では、前記結晶系半導体基板上に真性非晶質半導体薄膜層と導電型非晶質半導体薄膜層とをこの順で積層すること、
を特徴とする請求項8〜14のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。 - 請求項1〜7のいずれか1つに記載の太陽電池の少なくとも2つ以上が電気的に直列または並列に接続されてなること、
を特徴とする太陽電池モジュール。
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