JP2014076049A - 金属ナノ粒子を製造するための方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コロイド金属又は金属化合物を製造する方法の提供。
【解決手段】乳酸桿菌等の細菌を金属又は金属化合物と制御されたpH下で接触させる工程によって前記細菌膜上でコロイド金属又は金属化合物を製造する。細菌は、Ag(I)塩を、細胞表面上のナノAg粒子、コロイドAg(0)として還元、析出させる。コロイド銀又は他の金属ナノ析出物で被覆されたバイオマスは、濾過又は遠心分離によって水相から分離でき、洗浄及びすすぎ洗い、更に加工処理ができるので、(希釈)懸濁液中及び被覆加工された場合の両方において、強力な抗菌特性を備えるコロイド製品を提供する。本発明は、飲用水、表面被覆及びその他の物質において抗菌剤として使用できるプロバイオティクス細菌及びその他の細菌による金属ナノ析出物の製造に関する。Au(III)塩も同様にナノAu粒子,コロイドAu(0)として還元析出することができる。
【選択図】なし
【解決手段】乳酸桿菌等の細菌を金属又は金属化合物と制御されたpH下で接触させる工程によって前記細菌膜上でコロイド金属又は金属化合物を製造する。細菌は、Ag(I)塩を、細胞表面上のナノAg粒子、コロイドAg(0)として還元、析出させる。コロイド銀又は他の金属ナノ析出物で被覆されたバイオマスは、濾過又は遠心分離によって水相から分離でき、洗浄及びすすぎ洗い、更に加工処理ができるので、(希釈)懸濁液中及び被覆加工された場合の両方において、強力な抗菌特性を備えるコロイド製品を提供する。本発明は、飲用水、表面被覆及びその他の物質において抗菌剤として使用できるプロバイオティクス細菌及びその他の細菌による金属ナノ析出物の製造に関する。Au(III)塩も同様にナノAu粒子,コロイドAu(0)として還元析出することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、細菌膜上でのコロイド金属化合物の製造に関する。本発明は、銀もしくは金ナノサイズ粒子を生物学的プロセスによって製造する方法にさらに関する。詳細には、本発明は、金属ナノ析出物、詳細には銀もしくは金ナノ粒子の製造におけるそれらの抗菌効率を改善するための特定条件下での、例えば乳酸桿菌などであるがそれには限定されないプロバイオティクス細菌の使用に関する。本発明は、前記方法によって製造されるコロイドナノ銀もしくはナノ金を含む組成物が含浸された担体を含む殺菌製品にさらに関する。
効果的な殺菌プロセスは、例えば水、詳細には家庭用および工業用循環水、および廃水(例えば食品加工産業において存在する廃水)などの衛生上、操業上もしくは環境上の理由から未処理のままで排出もしくは再使用することのできない、微生物を含有する極めて大量の汚染物質を処理するために必要である。効果的な殺菌プロセスは、施設、装置、容器、空調システムなどの表面を処理するためにもまた必要である。環境に適合する殺菌プロセスは、主として、過酸化水素などの活性酸素化合物、または単量体の第4級アンモニウム化合物の使用に基づいている。
過酸化水素は、殺菌特性を備える、中等度に活性かつマイルドな殺菌剤である。過酸化水素は25mg/Lの濃度で一部の細菌の増殖を阻害することが公知であるが、過酸化水素の濃度がはるかに高い場合でさえ、細菌数を効果的に減少させるには多くの時間がかかる、またはさらに紫外線照射を必要とする。しかし、後者を発生させるには、高額の装置および相当の電気料金の両方を必要とする。このため、例えば下水処理場における水およびそれらの生産物を処理するために、水などの大量の汚染物質を殺菌する場合には、そのような手段は事実上不適切および/または不経済である。このため、当分野ではこれらの欠点を克服するための様々な方法が既に試みられてきた。
当分野においては、銀イオンおよび銀をベースとする化合物は微生物にとって高度に毒性であり、このため大腸菌を含む多数の一般種の細菌において強力な殺菌作用を示することは周知である。さらに、銀ナノ粒子と両親媒性超分岐高分子との混成物は、有効な抗菌表面コーティングを提示することも証明されている。非毒性元素である銀のヒドロゾルの形状にある銀ナノ粒子の安定な水性分散液は、50μg/cm3の濃度で細菌増殖の100%阻害を引き起こすため、大腸菌に対して強度に殺菌性であることが見いだされている。銀ナノ粒子は、細菌膜中に蓄積し、何らかの形で細菌膜の所定の構築要素と相互作用して、それによって構造変化、分解、そして最後には細胞死を引き起こすことが見いだされている。細菌の表面は、概して、膜内の過剰数のカルボン酸基およびその他の基の解離に起因して、生物学的pH値では、負に荷電していると報告されている。膜炭素−マトリックス内に包埋された銀ナノ粒子は、マトリックス内部でのそれらの運動および摩擦に起因して表面電荷を生成するので、このように静電力がナノ粒子と細菌との相互作用の原因となっているのではないかと提唱されている。さらに、銀は、細菌膜だけではなくDNAにも含有されているリンおよび硫黄化合物と反応する、さらに高度の親和性を有する傾向がある。可能性がある第3の作用様式は、銀イオンの放出であり、これは銀ナノ粒子の殺菌作用にさらに寄与する可能性がある。
数種の微生物、例えば乳酸桿菌種、および真菌のフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)は、Ag(I)をそれらの細胞表面に生体吸着させ(biosorb)、還元酵素作用もしくは電子シャトルキノンのいずれかまたは両方によってこのイオンをAg(0)へ還元させることによって解毒すると報告されている。
1〜100nmのサイズ範囲内にある生物学的に安定化した銀ナノ粒子および前記生物学的に安定化した銀ナノ粒子の濃度が1〜6ppmの範囲内にある担体を含む非細胞毒性抗菌調製物は、当分野において既に公知である。
さらに、コロイド銀−生体分子錯体を調製するための方法であって:
−単一溶液中の生体分子、銀塩、およびハロゲン化物イオンの起源の混合物を用意する工程と;
−前記混合物を可視領域内の波長を有する光線で照射する工程とを含み、銀塩およびハロゲン化物イオンの起源は水溶性であり、生体分子、銀塩およびハロゲン化物イオンの起源の量は、照射する工程がコロイド銀−生体分子錯体の生成を生じさせるような量である方法もまた公知である。
−単一溶液中の生体分子、銀塩、およびハロゲン化物イオンの起源の混合物を用意する工程と;
−前記混合物を可視領域内の波長を有する光線で照射する工程とを含み、銀塩およびハロゲン化物イオンの起源は水溶性であり、生体分子、銀塩およびハロゲン化物イオンの起源の量は、照射する工程がコロイド銀−生体分子錯体の生成を生じさせるような量である方法もまた公知である。
さらに、ナノサイズのコロイド金属粒子を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、15〜40℃の範囲内の温度で、2〜120時間に及ぶ期間に渡って湿性真菌もしくは真菌抽出物を金属イオン溶液で処理する工程と、ナノサイズのコロイド金属粒子を得るためにバイオマスを分離する工程とを含むプロセスも開示されている。
銀ナノ粒子を製造するための従来の製造方法は、例えば高額の製造コスト、有意な比率の副産物の産生、または得られるナノ粒子の濃度に対する上限の存在などの多数の欠点を有する。例えば、後者の製造方法は、非常に長い製造時間を必要とし、病原性である可能性がある真菌の使用に基づいている。このため、当分野においては、信頼性が高く、安価で、副産物の生成を減少させる、もしくは回避する銀ナノ粒子を製造するための方法に対するニーズがある。
乳酸桿菌によるAg(I)生体吸着プロセス、2〜6のpH範囲内にあるそのpH依存性および10〜60℃の範囲内の温度依存性、ならびに乳酸桿菌によるAg+からAg0への還元の機序についてもまた研究されている。
さらにまた当分野においては、銀イオン、アンモニアおよび水酸化ナトリウムとの混合物中のアエロモナス種を用いた、2時間にわたる60℃での生体内還元によって銀ナノ粒子を調製するためのプロセスもまた公知である。
上記のプロセスは、必要とされる高い温度、酸性pHおよび/または長いインキュベーション時間、またはその結果として生じる銀ナノ粒子の不十分な殺菌活性のような欠点を有する。
このため当分野においては、これらの欠点を有していない方法によって銀もしくは金ナノ粒子を製造することに対するニーズがある。
さらにまた当分野においては、高い抗菌特性を備える銀もしくは金ナノ粒子を製造するための単純で環境に優しく、そして再現可能な方法に対するニーズがある。
さらに当分野においては、所定の医学的用途において有用であることが公知である金もしくは銀ナノ粒子を製造するための対応する方法に対するニーズがある。
金もしくは銀以外の金属のコロイド形、および前記金属の化合物もまた、貴重な特性および用途を有することが当分野において公知である。例えば、コロイドビスマスサブシトレートは、詳細には約3〜8のpH範囲内では水溶性であり、胃潰瘍および十二指腸潰瘍、ならびにヘリコバクターピロリ菌感染症の治療のために抗生物質と一緒に数十年間にわたり使用されてきた。水銀、無機水銀化合物および金属水銀軟膏のコロイド形は、感染性湿疹もしくはインペチゴの治療(水銀塩)、梅毒の治療(カロメル)、乾癬の治療(酸化水銀もしくは白降汞)を含む様々な治療使用のために局所的に使用されてきた。パラジウムおよび白金のコロイド形は、有機還元、水素化分解などを含む様々な化学反応のための触媒として使用されてきた。コロイド形にある白金ナノ粒子は、抗癌剤としても公知である。任意にサリチル酸を用いてキレート化されたコロイド銅は、強力な抗炎症薬であり、コロイド銅もしくはコロイド亜鉛の舌下剤形は、風邪および流感と戦うために活性であることが公知である。さらに、コロイド亜鉛は、ウイルスに対して特に有効であり得る。これらすべての様々な分野において、それらの関連適用分野における有効性を向上させるために、また別の物理的形状のコロイド金属もしくはコロイド金属化合物を提供することに対する永続的ニーズがある。
極めて広い表現では、本発明は、細菌膜上でコロイド金属化合物を製造するための細菌の使用および被覆された細菌のその後の抗菌剤としての使用に関する。詳細には、本発明は:
・その細菌にその膜上でコロイド金属化合物を作製させる制御されたpH下で、前記細菌と金属塩および他の塩の混合物とを接触させる工程による、コロイド金属化合物を製造するための細菌の使用、および
・膜上の金属化合物で被覆された上記の細菌の、抗菌剤としての使用
とに関する。
・その細菌にその膜上でコロイド金属化合物を作製させる制御されたpH下で、前記細菌と金属塩および他の塩の混合物とを接触させる工程による、コロイド金属化合物を製造するための細菌の使用、および
・膜上の金属化合物で被覆された上記の細菌の、抗菌剤としての使用
とに関する。
1つの実施形態では、本発明は、飲用水、表面コーティングおよびその他の物質において抗菌剤として使用できるプロバイオティクス細菌およびその他の細菌による金属ナノ析出物の製造に関する。
より詳細には、一部の細菌は、Ag(I)塩を、細胞表面上のナノAg粒子として析出させるコロイドAg(0)へ還元させることができる。コロイド銀もしくは他の金属ナノ析出物で被覆されたバイオマスは、濾過もしくは遠心分離によって水相から容易に採取することができ、洗浄およびすすぎ洗いし、さらに加工処理することができるので、(希釈)懸濁液中およびコーティングに加工された場合の両方において、強力な抗菌特性を備えるコロイド製品を提供する。
興味深いことに、一連のプロバイオティクス細菌、即ちそれらがヒトの消化管系内に存在するとヒトの健康に有益な作用を及ぼすために工業生産されている細菌は、それらの細胞表面上でAgナノ析出物を生成する能力を示している。これらの細菌には、プロバイオティクス発酵乳酸桿菌の菌株が含まれるが、それらに限定されない。
塩(AgNO3、NH4Cl、NaOHその他)の特定の組み合わせを細菌の濃縮細胞培養物に添加し、pHを制御することによって、強力な抗菌特性を備えるコロイド銀製品が形成される。所定の細菌菌株と結合した他の金属塩も類似の特性を備えるナノ析出物を生じさせるため、これも同様に本発明の一部である。
「銀の質量」対「生物学的細胞の質量」の比率(Ag:CDW、このときCDW=細胞乾燥重量である)を調整することによって、最終コロイド銀製品の反応性および特性は、コロイド粒径、コロイド粒子分布およびその他の特性に関して、変化させることができる。
細菌の表面上で生成されたコロイド銀化合物は、水殺菌、洗浄製品中の殺菌剤としての使用、洗浄剤として、抗菌コーティング剤中の調製物、医学的用途、人間の消費、繊維製品中の使用、軟膏剤および潤滑剤における適用、触媒としてなどからなるがそれらに限定されない、極めて広範囲の用途を有する。
製造プロセスは、単純でコスト効率が高く、高い収量を示し、容易に大規模生産することができ、粒子のサイズおよび分布を制御することができ、製造されるナノ銀の抗菌反応性は極めて低濃度(ppb)で他のコロイド銀製品より優れている。さらに、製品は様々な形態の下で加工処理することができる:乾燥させて、懸濁化形で、もしくは「湿性」ペレットとして、様々な用途に調製することができる。浄水を用いると活性を損失させずに洗い流すことができるため、最終製品中に化学試薬の残留物は全く存在しない。
プロバイオティクス細菌の使用は、ヘルスケア産業および食品産業における数多くの用途に広がっている。Ag被覆細菌製品は、特に以下の用途に適合するであろう:
・殺菌洗浄製品中の調製物(病院、実験室、動物生産用地その他)、
・飲用水および水泳プール水の両方、動物生産用水、水産養殖用水、任意のその他の多数における水殺菌のためのセラミックフィルタもしくは他のフィルタにおける用途、
・殺菌コーティングにおける用途:ポリマー、織物繊維、金属、
・皮膚殺菌用軟膏、潤滑剤などにおける調製物のために適合する、
・飲用水を殺菌するための用途:新興国、バックパッカー、航空機、およびその他多数(easy−drop法)、および
・効果のある病原体:レジオネラ菌、クリプトスポリジウム菌、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、シュードモナス菌、ブドウ球菌などの様々なタイプの細菌、真菌およびウイルス。
・殺菌洗浄製品中の調製物(病院、実験室、動物生産用地その他)、
・飲用水および水泳プール水の両方、動物生産用水、水産養殖用水、任意のその他の多数における水殺菌のためのセラミックフィルタもしくは他のフィルタにおける用途、
・殺菌コーティングにおける用途:ポリマー、織物繊維、金属、
・皮膚殺菌用軟膏、潤滑剤などにおける調製物のために適合する、
・飲用水を殺菌するための用途:新興国、バックパッカー、航空機、およびその他多数(easy−drop法)、および
・効果のある病原体:レジオネラ菌、クリプトスポリジウム菌、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、シュードモナス菌、ブドウ球菌などの様々なタイプの細菌、真菌およびウイルス。
本発明の1つの目的は、優れた品質の金もしくは銀ナノ粒子を提供することである。本発明の第1態様は、コロイド銀もしくは金ナノ粒子を含む組成物を製造するための改良された生物学的方法であって、プロバイオティクス細菌、詳細には発酵乳酸桿菌などの乳酸桿菌種の使用、および前記バイオマスを銀(I)塩もしくは金(III)塩の水溶液と接触させる工程を含む方法を提供することである。本発明は、生体内還元により銀もしくは金ナノ粒子を製造するための所定の特異的プロセスパラメータが、結果として生じるナノ粒子の生産効率および特性に大きな影響を及ぼすという予想外の発見に基づいている。詳細には、本発明の特異的方法は、結果として生じる銀ナノ粒子を含む組成物の抗菌活性に大きな影響を及ぼす。
本発明のまた別の態様は、これらの特定条件下で生体内還元によって得られた銀もしくは金ナノ粒子組成物が、それらの活性もしくは保管期間を通しての安定性などの他の関連特性を維持またはさらに改善しながら、さらに加工処理できる、例えばバイオマスから分離できることである。または、例えばこれらの特定条件下で生体内還元により得られた金もしくは銀ナノ粒子組成物の、例えば過酸化物もしくは過酸基塩などの酸化種による化学的後処理は、結果として生じるナノ粒子組成物の特性を一層増強し得る。
さらに本発明のプロセスの利点は、結果として生じる銀もしくは金ナノ粒子のサイズおよび分布を再現可能な方法で制御することができることである。
本発明のさらなる利点は、潜在的に毒性および/または高価な化学薬品の必要を減少させることによって、前記方法が有意に短期間内に高度に信頼できる結果を低コストおよび環境に優しい方法で達成することでもある。本発明の方法の結果として生じる組成物中には化学試薬の有害な残留物は大方の場合に残っていないが、それは使用されるバイオマスが無害の、例えばプロバイオティクス微生物に由来するためである。このために本発明の利点は、本方法が真核生物へ適用された場合に、そのような生物へ実質的に影響を及ぼさない組成物を提供することである。特定の実施形態では、本発明は、実質的に真核生物に影響を及ぼさずに、海洋病原体に対しても作用する高度の抗菌活性を備える組成物を提供する。本発明のさらなる利点は、本発明が、それ自体が高濃度のナノ銀もしくはナノ金を含む、および実質的にそれらの金属状態にある実質的に銀もしくは金によって構成されるナノ銀もしくはナノ金を含む、例えば各々全銀含量の約95%を超えるAg0または全金含量の約95%を超えるAu0を含む組成物の製造を可能にすることである。
本発明のまた別の利点は、結果として生じる生成物もしくは組成物は、その活性を維持または改善さえしながら容易かつ安全に加工処理できることである。本組成物は、乾燥させる、または懸濁化形もしくは湿性ペレットとして維持することができ、さらにナノ銀粒子の安定性に起因する抗菌活性に影響を及ぼさずに、例えばエアロゾル調製物もしくは担体への含浸などの様々な形態で調製することができる。
さらにまた別の実施形態では、本発明は、上記の方法によって製造されたコロイド銀組成物の殺藻剤もしくは除草剤としての使用に関する。
用語の定義
本明細書で本発明のために使用する用語「ナノ銀」もしくは「ナノAg」は、金属銀(Ag0)のナノ粒子を意味する。本発明の範囲内では、前記ナノ粒子は、バイオマス上に沈着させられてもさせられなくてもよい。これらのナノ粒子は、サイズが約0.1nm〜約100nm、例えば約0.5nm〜約5nmの範囲内で変動してよい。これらのナノ粒子は、サイズ分布においてもそれらの平均サイズ前後で変動してよい。
本明細書で本発明のために使用する用語「ナノ銀」もしくは「ナノAg」は、金属銀(Ag0)のナノ粒子を意味する。本発明の範囲内では、前記ナノ粒子は、バイオマス上に沈着させられてもさせられなくてもよい。これらのナノ粒子は、サイズが約0.1nm〜約100nm、例えば約0.5nm〜約5nmの範囲内で変動してよい。これらのナノ粒子は、サイズ分布においてもそれらの平均サイズ前後で変動してよい。
本明細書で本発明のために使用する用語「ナノ金」もしくは「ナノAu」は、金属金(Au0)のナノ粒子を意味する。本発明の範囲内では、前記ナノ粒子は、バイオマス上に沈着させられてもさせられなくてもよい。これらのナノ粒子は、サイズが約0.1nm〜約100nm、例えば約0.5〜約5nmの範囲内で変動してよい。
本明細書で本発明のために使用する用語「バイオマス」は、「ナノ銀」もしくは「ナノ金」を製造するために使用される細菌種からなる、またはそれらに由来する有機物質を意味する。
本明細書で本発明のために使用する用語「プロバイオティクス細菌」は、適切な量で例えば哺乳動物、海産種(例えば、魚)もしくは人間などの宿主へ投与された場合に、前記宿主の健康に有益な作用を与える細菌を意味する。
本明細書で本発明のために使用する用語「銀(I)」もしくは「Ag(I)」は、1価の正に荷電した銀イオンもしくはAg+を意味する。
本明細書で本発明のために使用する用語「金(I)」および「金(III)」は、1価および3価の正に荷電した金イオン各々を意味する。
本発明の第1態様は、コロイドナノ銀もしくはナノ金を含む組成物を製造するための単純な方法であって、プロバイオティクス細菌を少なくとも4mMの銀塩もしくは金塩を含む水溶液とともにインキュベートする工程を含む方法を提供することである。
本発明によると、適切なプロバイオティクス細菌には、例えば乳酸桿菌属、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)、エシェリキア属(Escherichia)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)およびバシラス属(Bacillus)などが含まれるが、それらに限定されない。制限なく、プロバイオティクス細菌は、以下の種:ラクトバシラス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバシラス・アシドフィルス(acidophilus)、ラクトバシラス・カゼイ(casei)、ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバシラス・デルブリュキイの亜種ブルガリア菌(delbrueckii subspecies bulgaricus)、発酵乳酸桿菌、ラクトバシラス・ガッセリ(gasseri)、ラクトバシラス・ジョンソニイ(johnsonii)、ラクトバシラス・パラカゼイ(paracasei)、ラクトバシラス・プランタルム(plantarum)、ラクトバシラス・ロイテリ(reuteri)、ラクトバシラス・ラムノーサス(rhamnosus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(infantis)、ビフィドバクテリウム・ロングム(longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(lactis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(adolescentis)、大腸菌小体(Nissle)、サッカロミセス・ブーラルディ(Saccharomyces boulardii)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、バシラス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・セレウス(cereus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・メガテリウム(megaterium)、バシラス・アシドフィルス(acidophilus)、バシラス・プミルス(pumilus)、バシラス・ポリフェルメンティクス(polyfermenticus)、バシラス・クラウジイ(clausii)、バシラス・ラテロスポールス(laterosporus)、バシラス・スポロゲネス(sporogenes)、バシラス・コアグラス(coagulas)、およびバシラス・ポリミクサ(polymyxa)の1つまたは複数に属していてよい。
本発明の方法の様々な実施形態のためには、任意の水溶性銀塩を使用できる。本明細書で使用する用語「銀塩」は、そのような銀塩の水和物およびその他の溶媒和物も含んでいる。典型的には、水溶性銀塩は、本明細書では例えば室温のような本発明の方法の実施温度で少なくとも0.1g/Lの水溶性を備える銀塩であると定義できる。制限なく、銀塩は、酢酸銀、塩化銀、過塩素酸銀、塩素酸銀、臭化銀、フッ化銀、乳酸銀、硝酸銀、硫酸銀もしくは酒石酸銀などであるがそれらに限定されない無機銀塩もしくは有機銀塩であってよい。
本発明の方法の様々な実施形態のためには、任意の水溶性金塩を使用できる。本明細書で使用する用語「金塩」は、そのような金塩の水和物およびその他の溶媒和物も含んでいる。典型的には、水溶性金塩は、本明細書では例えば室温のような本発明の方法の実施温度で少なくとも0.1g/Lの水溶性を備える金塩である。制限なく、金塩は、1価もしくは3価であってよい。制限なく、金塩は例えば塩化金(III)、金チオリンゴ酸ナトリウム1水和物、臭化金(III)、ヨウ化金(III)および硝酸金(III)などを含むがそれらに限定されない無機金塩もしくは有機金塩もしくは混合金塩であってよい。
本発明の1つの実施形態によると、インキュベートすべき水溶液中の銀塩もしくは金塩の初期濃度は少なくとも4mM、例えば少なくとも10mM、または特別の例では少なくとも50mMでなければならない。
本発明のまた別の実施形態によると、前記水溶液は挙動に影響を及ぼしやすい、詳細には結果として生じる組成物の特性を改善するさらなる成分をさらに含んでいてよい。これに関連して、ナノ銀が望ましい本発明の1つの実施形態では、本方法は、プロバイオティクス細菌(例えば先に定義した細菌)を、少なくとも4mMの銀塩を含み、さらにアンモニアおよび/またはアンモニウム塩を含む水溶液とともにインキュベートする工程を含んでいてよい。この実施形態のために適合するアンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムおよび臭化アンモニウムなどであるが、それらに限定されない。本発明のこの実施形態において使用されるアンモニアおよび/またはアンモニウム塩の量は、好ましくは相当量の銀−アンモニア、または例えばAg(NH2)+および/または{Ag(NH3)2}+の形態の下にある銀(I)−アンモニア錯体などであるがそれには限定されない銀−アンモニア錯体の形成を可能にするために十分な量でなければならない。本発明のこの実施形態のまた別の変形によると、インキュベートすべき水溶液は、適切な量の例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどであるがそれらに限定されないアルカリ金属水酸化物をさらに含んでいてよい。そのような適切な量は、本明細書中以下に説明するように、達成すべき適切なpH範囲を参照することによって規定できる。
本発明のまた別の実施形態によると、本方法は、プロバイオティクス細菌(例えば、本明細書で先に定義した細菌)を、少なくとも4mMの金塩を含み、適切な量の例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどであるがそれらに限定されないアルカリ金属水酸化物をさらに含む水溶液と、アンモニアおよび/またはアンモニウム塩の不存在下でインキュベートする工程を含んでいる。
例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどであるがそれらに限定されない適切なアルカリ金属水酸化物は、インキュベーション中の水溶液へ約1Mまでの濃度で加えることができる。好ましくは、インキュベーションは、pHが少なくとも8である、例えば約8〜約12の範囲内にある、またはより特定の実施形態では約8.5〜約11の範囲内にあるような条件下で実施される。
本発明の1つの実施形態によると、銀重量もしくは金重量対プロバイオティクス細菌の細胞乾燥重量(以下、CDWと略記する)の比率は、少なくとも約0.01、例えば少なくとも約0.05もしくは少なくとも約0.1である。本発明のまた別の実施形態によると、Ag:CDWもしくはAu/CDW重量比は約20を超えない、好ましくは約10未満、例えば5未満である。
本発明の1つの実施形態によると、本方法のインキュベーション工程は、約5℃〜約45℃の温度で、好ましくは約15℃〜約35℃の温度で、例えば室温で実施される。
本発明のまた別の実施形態として、本方法のインキュベーション工程は、約1秒間〜約30分間、例えば約5秒間〜約20分間の期間にわたり実施されてよい。当業者であれば、限定された実験を用いてインキュベーションのために最も適切な期間を、例えば銀塩もしくは金塩の濃度、インキュベーション温度、Ag:CDWもしくはAu/CDW重量比、アンモニアおよび/またはアンモニウム塩の存在もしくは不存在などを含むがそれらに限定されない他のプロセスパラメータによって決定することができる。当分野において通常のことであるが、インキュベーションは、インキュベーション期間の少なくとも一部の間には攪拌しながら実施することができる。
本発明の方法は、結果として生じるコロイド銀もしくは金ナノ粒子を含む組成物をさらに加工処理する工程をも含むことができる。前記のさらに加工処理する工程は、例えば、バイオマスの少なくとも一部を銀もしくは金ナノ粒子から除去する工程または例えば超音波処理による機械的、酵素的および/または物理化学的処理によってバイオマスを分別する工程などであるがそれらに限定されない1つまたは複数の工程を含むことができる。そのようなバイオマス除去もしくは分別方法の各々は、当業者には周知である。代替的に、もしくは前記に加えて、前記加工処理する工程は、結果として生じるコロイド銀もしくは金ナノ粒子を含む組成物の所定の所望の特性を安定化もしくは改善さえするための化学処理工程を含むことができる。そのような化学的加工処理の特定の実施形態として、本発明による金もしくは銀ナノ粒子組成物は、インキュベーション後、および任意にバイオマスの除去後に、改良された安定性および/または(ナノ銀に関して)より高度の抗菌活性を備える銀もしくは金ナノ粒子析出物を生成するために、例えば過酸化物もしくは過酸基塩などの酸化剤を用いて処理することができる。本発明のこの実施形態の範囲内では、適切な有機および無機過酸化物には、過酸化水素、過酢酸などが含まれるが、それらに限定されない。本発明のこの実施形態において使用するために適切な過酸基塩には、解離すると過酸化水素を形成することのできるアルカリ性水溶性塩、例えばそのような塩が水に溶解させられると過酸化物イオンが遊離するアルカリ性水溶性塩が含まれるが、それには限定されない。それらの適切な例には、例えばアルカリ金属などのカチオンと結合している過炭酸塩、過ホウ酸塩、過ケイ酸塩および過リン酸塩が含まれる。特に好ましいのは、実験式2Na2CO3,3H2O2を有する過炭酸ナトリウムである。本発明のこの実施形態を支持して、当業者には:
−そのような過酸基塩は殺菌能力に関して過酸化水素より優れている可能性があり、
−過酸化水素は弱い殺菌剤で細菌内への透過性が乏しく、
−過酸基塩が水に溶解させられ過酸化水素を遊離すると、アルカリ塩は遊離した過酸化水素からプロトンを引き出してヒドロペルオキシドイオンを形成するが、これは過酸化水素とは対照的に強力な殺菌剤であり、細菌内へ容易に透過可能である
ことが公知である。
−そのような過酸基塩は殺菌能力に関して過酸化水素より優れている可能性があり、
−過酸化水素は弱い殺菌剤で細菌内への透過性が乏しく、
−過酸基塩が水に溶解させられ過酸化水素を遊離すると、アルカリ塩は遊離した過酸化水素からプロトンを引き出してヒドロペルオキシドイオンを形成するが、これは過酸化水素とは対照的に強力な殺菌剤であり、細菌内へ容易に透過可能である
ことが公知である。
本発明のプロセスの任意の時点に、コロイドナノ銀もしくはナノ金を含む固体部分は、当業者には周知である任意の方法で液体部分から分離することができる。例えば、固体部分は遠心分離およびその後の液体画分のデカンテーション、または濾過によって分離することができる。
本発明の方法では、銀塩もしくは金塩は、例えばpH、インキュベーション温度、塩のタイプおよび塩濃度などであるがそれらに限定されない反応作業条件の1つまたは複数を注意深く調整しながら、少なくとも部分的に銅塩と置換することができる。本発明の方法では、プロバイオティクス細菌種は、例えばpH、インキュベーション温度、塩のタイプ、および(金もしくは銀)塩濃度などであるがそれらに限定されない反応作業条件の1つまたは複数を注意深く調整しながら、少なくとも部分的に別の微生物もしくは細菌と置換することができる。そのような別の細菌は、環境にとって安全であると一般に見なされる細菌、より詳細には生体内還元能力を有することが公知である細菌からなる群から選択することができる。
本発明の方法を主として本明細書では銀および金に関して記載してきたが、それらには限定されず、その極めて広範な表現において言及されるように、本方法は、例えばpH、インキュベーション温度、塩のタイプ、および塩濃度などであるがそれらに限定されない1つまたは複数の反応作業条件が適切に適応させられることを前提に、他の金属もしくは金属化合物にも適用できる。そのような適応は、本明細書に組み込まれた一般的教示を前提に、当業者の日常的実験の範囲内に含まれる。本発明の範囲内にある特に重要な金属には、亜鉛、水銀、銅、パラジウム、白金、およびビスマスが含まれる。
本発明の第2態様は、上述した方法によって製造されたナノ銀組成物の抗菌使用であるが、これはそのようなナノ銀組成物の抗菌処理における有効濃度は、標的細菌によって、約0.5ppm以下、例えば約0.05ppm以下と格別に低い可能性があるという予想外の観察所見、および望ましくない細菌の量の実質的減少が限定された期間内、例えば約5時間以下の間に観察できるという観察所見に基づいている。本発明のこの態様のために適切な細菌標的には、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(例えば、CMCM−2−22菌株)、シュードモナス・セパシア(cepacia)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・アグロメランス(agglomerans)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(例えば、ATCC−10031菌株)、大腸菌、糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)(例えば、ATCC−10541菌株)、スタフィロコッカス・コーニィ(Staphylococcus cohnii)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(例えば、IP52154もしくはATCC−6538菌株)、枯草菌(ATCC−19659菌株)(全部が院内細菌株として一般的である)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus facium)、腸内連鎖球菌(Enterococcus hirae)、鉄酸化球菌(Thiobacillus ferrooxidans)(例えば、ATCC13661菌株)、乳酸桿菌、高温性バシラス(Thermophilic bacilli)、トリコフィトン・インタージギターレ(Trychophyton interdigitale)(例えば、ATCC−640菌株)、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC−3584菌株)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(perfringens)(ATCC−13124菌株)、ネズミチフス菌、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)などの広範囲のグラム陽性およびグラム陰性菌が含まれるが、それらに限定されない。本発明のナノ銀組成物は、さらにまた例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(例えば、APCC−2091菌株)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)(例えば、IP7326菌株)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(例えば、218IP菌株)、ペニシリウム・ベルコサム(Penicillium verrucosum)などを含む真菌に対しても活性である可能性があり、さらに例えばビルハルツ住血吸虫、マンソン住血吸虫などに対する抗寄生虫活性も有する可能性がある。
抗菌(または抗真菌もしくは抗寄生虫もしくは抗ウイルス)使用は、本発明の特定の実施形態によると、液体殺菌組成物の形状にあってよいが、このとき上述した方法によって製造されるナノ銀組成物は、第2抗菌剤もしくはそのような物質の混合物と組み合わせることができる。第2抗菌剤の適切な例には、過酸化水素、第4級アンモニウム塩、過酢酸、過酸基塩(後者は本明細書において本発明の第1態様に関連して記載されている)、および任意の公知の比率でのそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。詳細には、前記組み合わせは、抗菌活性における相乗作用を提供することができる。特定の実施形態では、前記第2抗菌剤は、例えば二酸化塩素、モノクロラミン、次亜塩素酸塩、過マンガン酸カリウム、ヨウ素もしくは塩素などであるがそれらに限定されない酸化抗菌剤であってよい。本発明のこの実施形態による液体殺菌組成物は、例えば、リン酸、硝酸、硫酸、臭化水素酸もしくはホウ酸またはそれらの混合物などの1つまたは複数の安定剤を、つまり組成物のpHを取り扱いおよび使用のために適切な範囲内に調整する目的でさらに含むことができる。無機酸安定剤の中では、リン酸が特に好ましい。実際に、前記酸安定剤は、一般に既に市販されている等級の過酸化水素には適切な量で組み込まれている可能性がある。本発明において任意に使用される安定剤は、さらに酒石酸、クエン酸(もしくはその水和物)、安息香酸、ピコリン酸、ニコチン酸およびイソニコチン酸などの有機カルボン酸であってよい。無機酸および有機酸の混合物も、この目的に適合すると見なすことができる。前記安定剤は、存在する場合は、好ましくは液体殺菌組成物のpH調整および/または長期間の保存安定性のために有効な量である。本発明のこれらの液体殺菌組成物は、界面活性剤、腐食阻害剤およびフラグランス(香料)からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことができる。
本発明の殺菌組成物において使用するために適切な界面活性剤には、好ましくは適切な用量で食料品もしくは飲用水と接触するために適合する、例えばカチオン性、非イオン性、両親媒性および両性イオン性界面活性化合物、ならびにそのような化合物の混合物が含まれるが、それらに限定されない。極めて様々な非イオン性界面活性剤が、本明細書で有用な可能性がある。アニオン性界面活性剤の非限定的な例には、例えば、ポリエトキシル化および/またはポリプロポキシル化グリコール、C8−C20脂肪酸モノエステル、ソルビタンモノパルミテートなどからなる群から選択される活性剤が含まれる。適切な両親媒性界面活性剤の特定の例には、3−ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、3−ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、N−アルキルタウリンおよびベタインが含まれる。
本発明の方法によって得られるナノ銀を含む殺菌組成物は、バイオマトリックス中で安定化させることができ、処理、洗浄もしくは汚染除去すべき環境において直接的に、または上記に開示したようにまた別の加工処理後に適用することができる。例えば、ナノ銀粒子は、任意の好適な手段もしくは適用方法によって細菌が除去されるべき場所またはその場所の周囲に分散させることができる。本組成物のナノ銀成分は、細菌の細胞成分と相互作用することができ、それによってそれらを効果的に破壊し、総細菌数を許容レベルへ減少させることができる。
上述したようなナノ銀含有液体組成物の使用は、固体表面または大量の気体もしくは液体を洗浄する、汚染物質を除去する、殺菌もしくは滅菌するためであってよい。本発明による前記液体組成物が(例えば、液体もしくは気体内への分散によって)殺菌もしくは滅菌組成物として使用される場合は、典型的には、当業者であれば殺菌および滅菌の分野における標準知識から容易に決定できる濃度および適用時間を含む適切な条件において適用される。
本発明の液体殺菌ナノ銀含有組成物が固体表面に適用される場合は、安全規制のために、適切な量の濃縮組成物を水と混合する工程によって得られる直ちに使用できる希釈調製物を使用し、次に前記固体表面をそのような時間中に得られる希釈調製物で固体表面の完全湿潤が達成されるまで湿潤させる(これは、当業者には公知であるように、表面多孔性に左右される可能性がある)ことが好ましい。
当業者には理解されるように、ナノ銀含有殺菌液体組成物の好ましい使用量は、処理すべき固体表面上、または液体もしくは気体内に存在する微生物のタイプおよび量に伴って広範囲に変動するであろう。
本発明によるナノ銀含有液体組成物の上記の殺菌剤としての使用に関しては、より特別には下記の適用方法が推奨されている:
−前記ナノ銀含有組成物中への処理すべき製品の浸漬、
−処理すべき固体表面上への殺菌組成物の噴霧、および
−処理すべき水(特別には水泳プール水、工業用プロセス水、廃水など)の中への(希釈もしくは濃縮した)殺菌組成物の組み込み。
−前記ナノ銀含有組成物中への処理すべき製品の浸漬、
−処理すべき固体表面上への殺菌組成物の噴霧、および
−処理すべき水(特別には水泳プール水、工業用プロセス水、廃水など)の中への(希釈もしくは濃縮した)殺菌組成物の組み込み。
このために、本発明によるナノ銀含有殺菌液体組成物は、特別には:
(a)病院および研究室施設、工業施設(牛乳製造所、チーズ製造所、麦芽製造所、醸造所、ミネラルウォータ、ワイン、蒸留酒、フルーツジュースおよび野菜ジュースを製造するための施設;温室;牛舎、鶏小屋および馬小屋;食料品、飲料もしくは医薬品の包装ライン;航空機および汽船の内部)および前記施設の内容物、詳細には前記施設内の装置もしくは機器の殺菌および衛生;
(b)早産動物もしくは成長中の無菌動物のための培養器などの無菌囲いの滅菌;
(c)空調システム内のレジオネラ菌の処理;
(d)保存容器(詳細にはサイロ)および例えば食料品(砂糖、茶、コーヒー、シリアル、飲料)および動物用飼料などの液体もしくは固体製品を輸送するためのパイプラインの殺菌および衛生;
(e)水泳プールおよびその他の鉱泉療法設備の殺菌および衛生(この場合には、組成物は好ましくは界面活性剤非含有であろう);
(f)飲用水(例えば、井戸もしくは貯蔵容器内)を製造、輸送および貯蔵するためのシステムの殺菌(この場合には組成物は、好ましくは界面活性剤非含有であろう);および
(g)その殺菌、殺真菌、抗ウイルスおよび抗寄生虫特性による、屋外作物(例えば、シリアル、トマト、バナナ園、例えばチコリー、種子、塊根を含む水耕栽培など)の保護のために有用である。
(a)病院および研究室施設、工業施設(牛乳製造所、チーズ製造所、麦芽製造所、醸造所、ミネラルウォータ、ワイン、蒸留酒、フルーツジュースおよび野菜ジュースを製造するための施設;温室;牛舎、鶏小屋および馬小屋;食料品、飲料もしくは医薬品の包装ライン;航空機および汽船の内部)および前記施設の内容物、詳細には前記施設内の装置もしくは機器の殺菌および衛生;
(b)早産動物もしくは成長中の無菌動物のための培養器などの無菌囲いの滅菌;
(c)空調システム内のレジオネラ菌の処理;
(d)保存容器(詳細にはサイロ)および例えば食料品(砂糖、茶、コーヒー、シリアル、飲料)および動物用飼料などの液体もしくは固体製品を輸送するためのパイプラインの殺菌および衛生;
(e)水泳プールおよびその他の鉱泉療法設備の殺菌および衛生(この場合には、組成物は好ましくは界面活性剤非含有であろう);
(f)飲用水(例えば、井戸もしくは貯蔵容器内)を製造、輸送および貯蔵するためのシステムの殺菌(この場合には組成物は、好ましくは界面活性剤非含有であろう);および
(g)その殺菌、殺真菌、抗ウイルスおよび抗寄生虫特性による、屋外作物(例えば、シリアル、トマト、バナナ園、例えばチコリー、種子、塊根を含む水耕栽培など)の保護のために有用である。
本発明の方法によって得られるナノ銀組成物の高度の選択的な抗菌活性は、例えば医学的用途またはヒトもしくは動物が消費するための栄養もしくはその他の物質の加工処理において使用するため(特に真核細胞もしくは微生物への作用の不存在もしくは最小限の作用に起因して)、繊維製品の抗菌保護において使用するため、例えばクリーム剤、軟膏剤もしくはローション剤などであるがそれらに限定されない曝露させた組織の感染性もしくは微生物汚染を防止するための局所用医学的製剤において使用するため、または化学的もしくはその他の変換プロセスにおける触媒として使用するための、水の殺菌、水中の藻の繁殖の処理、洗浄製品、および抗菌コーティングの調製物などであるがそれらに限定されない広範囲の家庭用途ならびに工業用途を有する。上述した使用各々は、懸濁液中のナノ銀によって、ならびにポリマーおよび/または他のタイプのコーティング内にナノ銀を組み込むことによって達成できる。
本発明の第3態様は、驚くべきことに飲用水中、水族館もしくは池もしくは水泳プールの水中、または淡水もしくは海水を含む他の貯水容器中、ポリマーおよび塗料中、軟質ファウリング(審美的外観)もしくは硬質ファウリング(物質の劣化)に対して保護するための表面コーティング中および他の材料中において殺藻剤として使用できる、プロバイオティクス細菌およびその他の細菌による金属ナノ析出物の製造に関する。本発明の第4態様は、水中の希釈形において、または機械的、酵素的および/または生化学的手段によってさらに加工処理された場合の両方において、驚くべきことに所定の双子葉植物もしくは単子葉植物に対する除草作用、または苔のような様々なタイプの下等植物に対する作用を有する可能性があるプロバイオティクス細菌およびその他の細菌による金属ナノ析出物の製造に関する。このための関連植物の選択は、本発明の臨界的パラメータではない。このために適切な植物には、特に、例えばタバコ(Nicotiana tabacum)、ウキクサ(Lamna種)、ダイズ(Glycine max)、リンゴ、テンサイ、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アルファルファ、ペチュニア、ワタ、ニンジン、セロリ、キャベツ、キュウリ、コショウ、カノーラ、トマト、ジャガイモ、レンズマメ、アマ、ブロッコリ、マメ、レタス、アブラナ、カリフラワー、ホウレンソウ、芽キャベツ、アーティチョーク、エンドウ、オクラ、カボチャ、ケール、カラードグリーン、茶、コーヒーおよびセラギネラ・レピドフィラ(Selaginella lepidophylla)などの双子葉植物が含まれる。それらはさらに、コメであるオリザ・サティバ(Oryza sativa)、コーン、オオムギ、トウモロコシ、ヒマワリ(Helianthus annuus)、コムギ、オート麦、キビ、ソルガム、アマランス、タマネギ、アスパラガスおよびサトウキビなどの単子葉植物も含んでいる。
本発明の上記の態様は、特に以下の分野において有用である:
−水族館の水、動物およびヒトのための飲用水配水システム、園芸用の配水システム、池、水泳プール、池もしくは水泳プールからの水を処理するための濾過システム、および様々なタイプの散水システムにおける藻類増殖の阻止;
−船殻などの水と接触する表面を含む、表面上の藻類増殖の阻止;
−藻類、および植物のような高等生物の表面上での藻類増殖を含む藻類に対する表面処理のための塗料、ポリマーもしくはコーティングにおける使用;
−葉、幹、花もしくは根茎のコロイド銀への、例えば上述した製造方法によってプロバイオティクス細菌によって生成されてその上に析出したコロイド銀への曝露による、苔または他の望ましくない植物(双子葉植物もしくは単子葉植物両方)の増殖の阻害;および
−これらの表面をコロイド銀へ、例えば上述した製造方法によって細菌により生成されてその上に析出したコロイド銀へ曝露させることによる、表面上の所定の植物もしくは雑草の増殖の阻害。
−水族館の水、動物およびヒトのための飲用水配水システム、園芸用の配水システム、池、水泳プール、池もしくは水泳プールからの水を処理するための濾過システム、および様々なタイプの散水システムにおける藻類増殖の阻止;
−船殻などの水と接触する表面を含む、表面上の藻類増殖の阻止;
−藻類、および植物のような高等生物の表面上での藻類増殖を含む藻類に対する表面処理のための塗料、ポリマーもしくはコーティングにおける使用;
−葉、幹、花もしくは根茎のコロイド銀への、例えば上述した製造方法によってプロバイオティクス細菌によって生成されてその上に析出したコロイド銀への曝露による、苔または他の望ましくない植物(双子葉植物もしくは単子葉植物両方)の増殖の阻害;および
−これらの表面をコロイド銀へ、例えば上述した製造方法によって細菌により生成されてその上に析出したコロイド銀へ曝露させることによる、表面上の所定の植物もしくは雑草の増殖の阻害。
以下の実施例は、何ら限定的意図なく、本発明による方法および殺菌組成物の所定の実施形態の例示として提供されている。
実施例1−ナノ銀の調製
発酵乳酸桿菌の培養物Beijerinck 1901 AL(ATCC11976、LMG8900、生後8日の母乳栄養児の腸由来)を15時間にわたり37℃の微好気性条件下で、MRSブロス(Oxoid社(英国ベイジングストーク)から市販されている)中で増殖させた。細胞は、MRSから15℃で10分間にわたる3,000gでの遠心分離によって採取し、次にmilliQ水を用いて2回洗浄し、600nmで1.5の最終光学密度(OD600)までmilliQ水中に再懸濁させた。NaOHの最終濃度が各々0.05Nおよび0.10Nに達するように、細胞懸濁液に1NのNaOHストック溶液からの水酸化ナトリウムを加えた。
発酵乳酸桿菌の培養物Beijerinck 1901 AL(ATCC11976、LMG8900、生後8日の母乳栄養児の腸由来)を15時間にわたり37℃の微好気性条件下で、MRSブロス(Oxoid社(英国ベイジングストーク)から市販されている)中で増殖させた。細胞は、MRSから15℃で10分間にわたる3,000gでの遠心分離によって採取し、次にmilliQ水を用いて2回洗浄し、600nmで1.5の最終光学密度(OD600)までmilliQ水中に再懸濁させた。NaOHの最終濃度が各々0.05Nおよび0.10Nに達するように、細胞懸濁液に1NのNaOHストック溶液からの水酸化ナトリウムを加えた。
50mLのmilliQ水中に425mgのAgNO3および225mgのNH4Clを含むAg(I)ストック溶液を調製した。1容積のこのAg(I)ストック溶液を、各々0.05および0.10NのNaOHを含む10容積の細胞懸濁液に加えた。これらの混合液は、30分間にわたり軽度の攪拌条件(シェーカ上で100回転/分)下で、25℃の可視光線下でインキュベートさせた。発酵乳酸桿菌バイオマス上に沈着させた、本明細書では「ナノ銀」もしくは「ナノAg」と呼ぶ5.0mMのAg(0)(535mg/LのAg(0))の最終溶液を得た。被覆された発酵乳酸桿菌細胞は、繰り返し遠心分離し、デカンテーションし、本組成物を新しいmilliQ水中に再懸濁させることによって、増殖培地残留物および他の添加物を除去するために、遠心分離し、milliQ水で3回洗浄した。その結果として最終ナノAg濃度が調整された。本組成物を次にmilliQ水で希釈し、または3,000gでの遠心分離によって濃縮し、そしてエンドユーザーのニーズに応じてmilliQ水中に再懸濁させた。
実施例2−ナノ銀のXRD分析
実施例1において得て、さらに30℃で乾燥させた銀粒子を備えるバイオマスについてのX線回折(XRD)分析は、Bragg−Brentano光学素子を備えるSiemens回折計D5000(Siemens社(ドイツ国ミュンヘン)から市販されている)を用いて実施した。X線は、出力1.6kW(40kV、40mA)を備える銅X線管によって発生させた。測定は、1.6秒のステップ時間および0.02度のステップサイズを用いて25〜90度の2θの間で実施した。結果として生じるスペクトル(図示していない)は、銀金属と酸化ナトリウムのX線回折パターンの存在を示している。後者は、ナノ銀の調製において使用された水酸化ナトリウムの残留物である。
実施例1において得て、さらに30℃で乾燥させた銀粒子を備えるバイオマスについてのX線回折(XRD)分析は、Bragg−Brentano光学素子を備えるSiemens回折計D5000(Siemens社(ドイツ国ミュンヘン)から市販されている)を用いて実施した。X線は、出力1.6kW(40kV、40mA)を備える銅X線管によって発生させた。測定は、1.6秒のステップ時間および0.02度のステップサイズを用いて25〜90度の2θの間で実施した。結果として生じるスペクトル(図示していない)は、銀金属と酸化ナトリウムのX線回折パターンの存在を示している。後者は、ナノ銀の調製において使用された水酸化ナトリウムの残留物である。
実施例3−ナノ銀のEDX分析
実施例1において得て、さらに30℃で乾燥させたナノ銀を備える乾燥バイオマスのエネルギー分散X線(EDX)分析は、20.0keVの入射エネルギーに対応する分解能を備えるEDX検出器(JEOL USA社から入手可能)とともにJSM6100走査型電子顕微鏡を用いて実施した。分析結果は表1に列挙されており(重量%および原子%の両方)、主として有機物質(高含量の炭素および酸素に起因する)および銀の存在を明らかに証明しており、それらの組み合わせは総計で乾燥物質の約91重量%である。乾燥した生成物の残りは、ほとんどは乾燥した生物学的マトリックス由来の鉱物残留物に起因する微量元素Ca、Mg、Si、P、SおよびClから構成された。
実施例1において得て、さらに30℃で乾燥させたナノ銀を備える乾燥バイオマスのエネルギー分散X線(EDX)分析は、20.0keVの入射エネルギーに対応する分解能を備えるEDX検出器(JEOL USA社から入手可能)とともにJSM6100走査型電子顕微鏡を用いて実施した。分析結果は表1に列挙されており(重量%および原子%の両方)、主として有機物質(高含量の炭素および酸素に起因する)および銀の存在を明らかに証明しており、それらの組み合わせは総計で乾燥物質の約91重量%である。乾燥した生成物の残りは、ほとんどは乾燥した生物学的マトリックス由来の鉱物残留物に起因する微量元素Ca、Mg、Si、P、SおよびClから構成された。
実施例4−大腸菌についての固体増殖培地上のナノ銀の抗菌活性
実施例1において得た発酵乳酸桿菌バイオマス上に沈着させたナノ銀の形状にある、5mMのAg濃度を備える100mLの銀懸濁液を、大腸菌を培養するための固化増殖培地(Luria Bertani寒天)上にプレーティングした。コントロールとして0.1NのNaOHを含む無菌milliQ水中の5mMのAgNO3の溶液100mLを同一増殖培地上にプレーティングした。この設定は、1枚の寒天プレート当たり0.05mgのAg、または総表面積1m2当たり11mgのAgの総量と一致していた。この実験は、後者の濃度の2倍、即ち寒天プレート1枚当たり0.11mgのAgまたは総表面積1m2当たり22mgのAgを用いて繰り返した。
実施例1において得た発酵乳酸桿菌バイオマス上に沈着させたナノ銀の形状にある、5mMのAg濃度を備える100mLの銀懸濁液を、大腸菌を培養するための固化増殖培地(Luria Bertani寒天)上にプレーティングした。コントロールとして0.1NのNaOHを含む無菌milliQ水中の5mMのAgNO3の溶液100mLを同一増殖培地上にプレーティングした。この設定は、1枚の寒天プレート当たり0.05mgのAg、または総表面積1m2当たり11mgのAgの総量と一致していた。この実験は、後者の濃度の2倍、即ち寒天プレート1枚当たり0.11mgのAgまたは総表面積1m2当たり22mgのAgを用いて繰り返した。
これらの銀懸濁液をプレーティングすることによって、Ag(I)NO3、またはナノAg各々の均質層を固化増殖培地上に塗布した。
この方法で固化した増殖培地を前処理した後、生理溶液(8.5g/LのNaCl/無菌水)中の100μLの2×106CFU/mLの大腸菌懸濁液を前処理した寒天プレート上にプレーティングした。プレートを次に30℃で24時間にわたりインキュベートし、コロニーを計数した。計数の結果は、図1に示されている。11mg/m2のAgおよび22mg/m2のAgのナノAg濃度では、処理された固体増殖培地上で大腸菌の生存細胞を検出することはできなかった(<検出限界(D.L.)=1×101CFU/mL)。このように、これらの濃度でのナノAg処理は、2×106CFU/mLから1×101CFU/mL(D.L.)未満への大腸菌細胞の減少を生じさせた。11mg/m2のAgおよび22mg/m2のAgを含むAg(I)NO3濃度では、2×106CFU/mLから各々4×102CFU/mLおよび1×102CFU/mLへの有意な大腸菌細胞減少が見られた。
コントロールとして、濃度が2×106CFU/mLの大腸菌懸濁液を未処理、即ちAgを含まない増殖培地上、およびナノAgを含まないがナノAg処理と同一濃度で発酵乳酸桿菌ATCC11976だけを含む100μLの無菌mQ水を用いて処理した同一増殖培地上へプレーティングした。これらの細菌の総数では阻害作用は観察されなかった。この結果として、ナノAgおよびAg(I)について観察された阻害作用はAg処理に帰することができ、この実験で使用した処理方法もしくは乳酸桿菌菌株のいずれにも帰することはできない。
実施例5−様々な病原細菌についての懸濁液中の抗菌活性
実施例1で得た様々な濃度(0mg/L、0.10mg/L、1.0mg/L、10mg/Lおよび50mg/L)のナノAg組成物を含有する生理溶液中に希釈した病原性大腸菌、ネズミチフス菌、黄色ブドウ球菌およびリステリア・モノサイトゲネス培養菌の生存率を試験した。ナノAgは、上述した病原細菌の1つの生きた培養菌を含有する生理溶液中に適用した。生理溶液は、水1L当たり8.5gのNaClを含んでおり、細菌細胞に向かって中性の浸透ポテンシャルを有するように調製されており、したがって浸透ストレスに起因してそれらを殺滅しない。コントロール処理は、ナノAgの不存在下での生理溶液中の細菌培養から構成した。
実施例1で得た様々な濃度(0mg/L、0.10mg/L、1.0mg/L、10mg/Lおよび50mg/L)のナノAg組成物を含有する生理溶液中に希釈した病原性大腸菌、ネズミチフス菌、黄色ブドウ球菌およびリステリア・モノサイトゲネス培養菌の生存率を試験した。ナノAgは、上述した病原細菌の1つの生きた培養菌を含有する生理溶液中に適用した。生理溶液は、水1L当たり8.5gのNaClを含んでおり、細菌細胞に向かって中性の浸透ポテンシャルを有するように調製されており、したがって浸透ストレスに起因してそれらを殺滅しない。コントロール処理は、ナノAgの不存在下での生理溶液中の細菌培養から構成した。
100mg/LのナノAg/mQ水のストック溶液を調製し、表2に示した最終ナノAg濃度を達成するために適合する量で生理溶液中に希釈した細菌培養物に加えた。
処理は、上述した各病原細菌種について独立して繰り返したが、「細菌培養物」は生理溶液中で104〜105CFU/mLの最終細胞濃度へ希釈した、指数的増殖期にある細菌種を含む希釈した液体ブロスを表している。各処理は、2回ずつ実施した。全インキュベーションは、37℃で72時間にわたって振とうしながらインキュベートした無菌のキャップ付き試験管内で実施した。インキュベーション後、100μLの各試験管はトリプチカーゼソイ寒天(TSA)固体増殖培地上にプレーティングし、コロニーを計数した。これらの計数の結果は、試験した様々な病原体について表2に示されている。
表2は、実施例1で得たナノAgの1mg/Lの濃度が、72時間以内に大腸菌、黄色ブドウ球菌およびネズミチフス菌の生存細胞数を<10CFU/mL(即ち、検出限界未満)の細胞濃度へ減少させるために十分であったことを示す。有意な細胞死は、0.10mg/Lの濃度で既に観察された。リステリア菌に関しては、生存細胞の濃度の検出限界未満への減少は、10mg/LのナノAgで得られた。そこで本発明者らは、実施例1で得たナノAgが、液体細胞懸濁液中での1.0mg/L以下の濃度で、液体から生存病原性細菌を有意かつ効果的に排除する強力な抗菌剤として作用すると結論づける。
実施例6−アルテミア・フランシスカーナ(Artemia franciscana)と組み合わせた懸濁液中のナノAgの抗菌活性
無菌人工海水(Aquarium Systems USA社から入手可能なInstant Ocean(登録商標))は、オートクレーブ滅菌処理によりmilliQ水中で調製した。全処理は、50mLのFalconチューブ中の無菌人工海水の20mLアリコート中で構成した。各処理(3回ずつ実施した)は、105CFU/mL(コロニー形成単位)のビブリオ・カンベリイ(Vibrio campbellii)LMG21363および/または表3に示した最終濃度で実施例1において得たナノAgの組み合わせが補給された、20mLの人工海水中の20例の無菌アルテミア・ナウプリウス(Artemia nauplius)から構成した。そこで病原性細菌であるV.カンベリイをその宿主生物であるアルテミア・フランシスカーナと一緒にインキュベートした。
無菌人工海水(Aquarium Systems USA社から入手可能なInstant Ocean(登録商標))は、オートクレーブ滅菌処理によりmilliQ水中で調製した。全処理は、50mLのFalconチューブ中の無菌人工海水の20mLアリコート中で構成した。各処理(3回ずつ実施した)は、105CFU/mL(コロニー形成単位)のビブリオ・カンベリイ(Vibrio campbellii)LMG21363および/または表3に示した最終濃度で実施例1において得たナノAgの組み合わせが補給された、20mLの人工海水中の20例の無菌アルテミア・ナウプリウス(Artemia nauplius)から構成した。そこで病原性細菌であるV.カンベリイをその宿主生物であるアルテミア・フランシスカーナと一緒にインキュベートした。
以下の試験を構成した:
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+100mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+10mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+1.0mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+0.1mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+0.10mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+100mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+10mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+1.0mg/LのナノAg、および
−アルテミア・フランシスカーナ+0.10mg/LのナノAg
48時間のインキュベーション後、アルテミア・フランシスカーナを含む無菌人工海水中のV.カンベリイの濃度を、特異的ビブリオ菌増殖培地上でのプレート計数によって決定した。平均的処理結果は、以下の表3に示されている(このとき、D.L.は検出限界を意味する)。
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+100mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+10mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+1.0mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+105CFU/mLのビブリオ・カンベリイ+0.1mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+0.10mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+100mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+10mg/LのナノAg
−アルテミア・フランシスカーナ+1.0mg/LのナノAg、および
−アルテミア・フランシスカーナ+0.10mg/LのナノAg
48時間のインキュベーション後、アルテミア・フランシスカーナを含む無菌人工海水中のV.カンベリイの濃度を、特異的ビブリオ菌増殖培地上でのプレート計数によって決定した。平均的処理結果は、以下の表3に示されている(このとき、D.L.は検出限界を意味する)。
さらにその上、0.10および1.0mg/LのナノAgの濃度では、未処理コントロールに比較してアルテミア・フランシスカーナの生存率(80%)に対する有意な作用は生じなかった。これは、実施例1によって生成されたナノAgが、高等生物にはこれらの濃度では毒性もしくは阻害作用を有していないことを示している。
実施例7−抗菌活性のための有効な接触時間の決定
本試験の目的は、各々0.1および1mg/Lの濃度のAgで有効な抗菌活性を得るために、実施例1のナノAg組成物と生理溶液中に希釈した病原性細菌培養物である大腸菌、ネズミチフス菌、黄色ブドウ球菌もしくはリステリア・モノサイトゲネスとの適切な接触時間を決定することであった。
本試験の目的は、各々0.1および1mg/Lの濃度のAgで有効な抗菌活性を得るために、実施例1のナノAg組成物と生理溶液中に希釈した病原性細菌培養物である大腸菌、ネズミチフス菌、黄色ブドウ球菌もしくはリステリア・モノサイトゲネスとの適切な接触時間を決定することであった。
これらのナノAg濃度を、細菌細胞に対して中性であり、したがって浸透ストレスに起因してそれらを殺滅しない浸透ポテンシャルを有するように調製された生理溶液(8.5g/LのNaCl/水)中の細菌培養物に適用した。コントロール処理は、ナノAg組成物を含まない生理溶液中の細菌培養から構成した。
100mg/LのナノAg/mQ水のストック溶液を調製し、所望の最終ナノAg濃度を提供するために適切な量で生理溶液中の細菌培養物(実施例5と同一の意味)へ加えた。
インキュベーション(2回ずつ実施した)は、37℃で振とうすることによって無菌のキャップ付き試験管内で実施し、その後に様々な接触時間での細胞数を決定した(サンプリング事象)。各サンプリング事象時に、各処理物の100μLをトリプチカーゼソイ寒天(TSA)固体増殖培地上にプレーティングし、コロニーを計数した。15時間後、16時間後、17時間後、18時間後および40時間後各々に得られた結果は、以下の表4に示されている(このとき、NDは検出不可能、即ち検出限界未満であることを意味している)。
実施例8−様々な銀重量対バイオマス細胞乾燥重量比でのナノ銀組成物の調製
銀(I)のストック溶液は、AgNO3の最終濃度が425g/L(=50mMのAgNO3)である液体アンモニア(水中で28容量%のNH3)中で調製した。発酵乳酸桿菌の培養物は、次に実施例1と同様に調製した。
銀(I)のストック溶液は、AgNO3の最終濃度が425g/L(=50mMのAgNO3)である液体アンモニア(水中で28容量%のNH3)中で調製した。発酵乳酸桿菌の培養物は、次に実施例1と同様に調製した。
遠心分離した2.8g(湿重量)の細胞ペレットを、各々A、BおよびCと呼ばれる反応混合液を得るために3つの異なる量(50mL、100mLおよび1L)のmilliQ水中に再懸濁させた。
上述した懸濁液中の0.10NのNaOHの規定度を得るために、NaOHはmilliQ水中の1NのNaOHストック溶液から各試験管に加えた。
結果として、銀(I)ストック溶液を以下のように加えた:
−反応混合液A:Agの1.30g/L(もしくは12mM)の最終濃度を得るために、0.24mLの銀(I)ストック溶液を加えた。56g/Lのバイオマス(湿重量)上でほぼ即時の析出反応(赤みがかった褐色の析出物)が発生した。遠心分離したバイオマスの平均乾燥重量比が10〜30%であると仮定すると、1:4〜1:12の銀対細胞乾燥重量比が得られた。
−反応混合液A:Agの1.30g/L(もしくは12mM)の最終濃度を得るために、0.24mLの銀(I)ストック溶液を加えた。56g/Lのバイオマス(湿重量)上でほぼ即時の析出反応(赤みがかった褐色の析出物)が発生した。遠心分離したバイオマスの平均乾燥重量比が10〜30%であると仮定すると、1:4〜1:12の銀対細胞乾燥重量比が得られた。
−反応混合液B:Agの5.78g/L(55mM)の最終濃度を得るために、2.4mLの銀(I)ストック溶液を加えた。28g/Lのバイオマス(湿重量)上でほぼ即時の析出反応(赤みがかった褐色の析出物)が発生した。遠心分離したバイオマスの乾燥重量は平均して10〜30%であるので、2:1〜0.7:1の銀対細胞乾燥重量比が得られた。この反応中のpHは11.6であった。
−反応混合液C:Agの5.78g/L(55mM)の最終濃度を得るために、24mLの銀(I)ストック溶液を加えた。2.8g/Lのバイオマス(湿重量)上でほぼ即時の析出反応が発生した。遠心分離したバイオマスの乾燥重量は平均して10〜30%であるので、20:1〜7:1の銀対細胞乾燥重量比が得られた。
反応混合液を30分間にわたり放置し、その後に形成されたナノAg組成物を採取した。
結果として生じるナノAg析出物は15℃で10分間にわたり3,000gでバイオマスと一緒に遠沈させ、次に製造プロセスからすべての残留アンモニアおよびその他の水溶性成分を除去するためにmilliQ水を用いて2回洗浄した。ナノAg精製ペレット生成物を次に分析した(実施例9)、またはさらにその後の試験のためにmilliQ水中で適切な濃度のナノAgへ希釈した。
実施例9−0.7:1の銀対バイオマス細胞乾燥重量比で生成されたナノAgのXRD分析
実施例8による0.7:1の銀対バイオマス細胞乾燥重量比を備えて生成され、次に24時間にわたり100℃のオーブンで乾燥させたナノ銀粒子を含むバイオマスのXRD分析は、実施例2で説明したように実施した。このXRDスペクトルでは、銀金属のX線回折パターンしか検出できなかった。乾燥生成物中の5重量%未満の結晶状微量元素はXRDによって検出することはできないと確実に推定できるので、大まかにはこのXRD分析によって検出された銀の少なくとも95%はAg(0)状態にあると推定できる。
実施例8による0.7:1の銀対バイオマス細胞乾燥重量比を備えて生成され、次に24時間にわたり100℃のオーブンで乾燥させたナノ銀粒子を含むバイオマスのXRD分析は、実施例2で説明したように実施した。このXRDスペクトルでは、銀金属のX線回折パターンしか検出できなかった。乾燥生成物中の5重量%未満の結晶状微量元素はXRDによって検出することはできないと確実に推定できるので、大まかにはこのXRD分析によって検出された銀の少なくとも95%はAg(0)状態にあると推定できる。
実施例10−H2O2を用いたナノ銀の後処理
実施例1もしくは実施例8によって得て洗浄したナノAgペレットは、30容量%のH2O2水溶液を用いて後処理した。この作用のために、ペレットをH2O2中にAg/H2O2が6g/L(30%)までの濃度で懸濁させた。より安定な析出物が得られた。得られた析出物の懸濁液を次にmilliQ水中に希釈させると、その後の試験のために適切な濃度のナノAgが得られた。
実施例1もしくは実施例8によって得て洗浄したナノAgペレットは、30容量%のH2O2水溶液を用いて後処理した。この作用のために、ペレットをH2O2中にAg/H2O2が6g/L(30%)までの濃度で懸濁させた。より安定な析出物が得られた。得られた析出物の懸濁液を次にmilliQ水中に希釈させると、その後の試験のために適切な濃度のナノAgが得られた。
実施例11−H2O2後処理を行わない、またはH2O2後処理後のナノAgの抗菌特性
ナノAg調製物は、実施例8に記載したように、7:1、1:10および0.7:1の各々の様々な銀対バイオマス細胞乾燥重量比で調製した(本明細書でサンプルを各々A、BおよびCと呼ぶ)。さらに、0.7:1の銀対バイオマス細胞乾燥重量比で得たナノAg調製物は、さらに実施例10に記載したようにH2O2で処理すると、それによりDと呼ぶ第4サンプルが産生した。
ナノAg調製物は、実施例8に記載したように、7:1、1:10および0.7:1の各々の様々な銀対バイオマス細胞乾燥重量比で調製した(本明細書でサンプルを各々A、BおよびCと呼ぶ)。さらに、0.7:1の銀対バイオマス細胞乾燥重量比で得たナノAg調製物は、さらに実施例10に記載したようにH2O2で処理すると、それによりDと呼ぶ第4サンプルが産生した。
銀対バイオマス細胞乾燥重量比がナノAg製品の抗菌活性に及ぼす作用を評価するために、1×104CFU/mLのネズミチフス菌の細胞懸濁液を無菌生理溶液中で作製し、様々な試験管に分配した。これらの試験管に、各試験管中で0.05mg/L(もしくは50ppb)のナノAgの最終濃度が得られるまでサンプルA、B、CおよびDを加えた。コントロールとして、細菌培養物を0.05ppmのAgNO3と、銀を使用せずにインキュベートした。試験管にキャップを嵌め、2回ずつ37℃で振とうしながらインキュベートした。4時間半のインキュベーション後、サンプルを取り出し、生理溶液中で一連の希釈液を作製し、TSA培地上でプレーティングし、その後に全ネズミチフス菌数を決定できるように37℃で一晩プレートをインキュベートした。これらの計数の結果は、2回の独立した計数についての平均細胞数と標準偏差の形で図3に示されている。細菌数の実質的減少は、実施例8の方法によって得られた0.05ppmのナノAgの存在下での4時間半のインキュベーション後に観察されている。図3は、銀対細胞乾燥重量比が高いほど、結果として生じる抗菌活性に対するナノAgの反応性が低くなることを証明している。さらに、H2O2を用いたナノAg製品の処理はその抗菌活性を大きく増加させた。
実施例12−透過型電子顕微鏡法によるナノ銀の粒径の決定
TEMによる分析のための薄片を作製するために、細菌のペレットは2.5%グルタールアルデヒドおよび2%ホルムアルデヒドを含有する0.1Mのカコジル酸バッファ(pH7.4)中で固定し、3%低融点アガロース(Difco Laboratories製、米国ミシガン州デトロイト)中に包埋した。これらのサンプルは、1%四酸化オスミウム中で後固定した。固定工程の間および後には、サンプルを蒸留水で洗浄した。その後、サンプルはエタノール中で濃度を増加させながら、そして最後には無水酸化プロピレン中で脱水した。Epon−Spurr培地中に包埋した後、標本ブロックをTM60トリミング装置(Reichert−Jung社、オーストリア国ウィーン)を用いてトリミングして0.5×1mm2−1×2mm2のすくい面を得て、さらに銀干渉色範囲をつや消しにするために金内の超薄切片はUltracutマイクロトーム(Reichert−Jung社、オーストリア国ウィーン)を用いて切削した。切片をピオロフォーム(pioloform)および炭素被覆銅グリッド(200メッシュ)上に載せた。これを実施したら、薄片を2%酢酸ウラニル、次にクエン酸鉛で染色して細胞の超微細構造を決定した。化学薬品およびグリッドは、Agar Scientific社(英国スタンステッド)から得た。イメージングは、80kVで作動させたEM208S透過型電子顕微鏡(FEI社、オランダ国アイントホーフェン)を用いて実施した。
TEMによる分析のための薄片を作製するために、細菌のペレットは2.5%グルタールアルデヒドおよび2%ホルムアルデヒドを含有する0.1Mのカコジル酸バッファ(pH7.4)中で固定し、3%低融点アガロース(Difco Laboratories製、米国ミシガン州デトロイト)中に包埋した。これらのサンプルは、1%四酸化オスミウム中で後固定した。固定工程の間および後には、サンプルを蒸留水で洗浄した。その後、サンプルはエタノール中で濃度を増加させながら、そして最後には無水酸化プロピレン中で脱水した。Epon−Spurr培地中に包埋した後、標本ブロックをTM60トリミング装置(Reichert−Jung社、オーストリア国ウィーン)を用いてトリミングして0.5×1mm2−1×2mm2のすくい面を得て、さらに銀干渉色範囲をつや消しにするために金内の超薄切片はUltracutマイクロトーム(Reichert−Jung社、オーストリア国ウィーン)を用いて切削した。切片をピオロフォーム(pioloform)および炭素被覆銅グリッド(200メッシュ)上に載せた。これを実施したら、薄片を2%酢酸ウラニル、次にクエン酸鉛で染色して細胞の超微細構造を決定した。化学薬品およびグリッドは、Agar Scientific社(英国スタンステッド)から得た。イメージングは、80kVで作動させたEM208S透過型電子顕微鏡(FEI社、オランダ国アイントホーフェン)を用いて実施した。
TEM画像(図示していない)は、実施例8に記載した反応混合液A、BおよびCから結果として生じたナノ銀粒子について得られた。これらの画像は、細菌細胞表面上の析出物の形状にある組成物およびバイオマス間の懸濁液中において球状ナノ銀粒子が得られたことを確証している。
−反応混合液A(比率1:10)から結果として生じたナノAgについての粒径:測定された35個のナノ粒子については、直径の範囲は3.3nm〜72nmに及んで平均は14nmであり、粒子表面積の範囲は6.4〜2,996nm2に及び、このため空電性の範囲は0.14〜0.97に及んだ;
−反応混合液B(比率1:1)から結果として生じたナノAgについての粒径:測定された202個のナノ粒子については、直径の範囲は3nm〜116nmに及んで平均は15nmであり、粒子表面積の範囲は6〜4,805nm2に及び、このため空電性の範囲は0.12〜0.96に及んだ;
−反応混合液C(比率10:1)から結果として生じたナノAgについての粒径:測定された56個のナノ粒子については、直径の範囲は3.3nm〜56nmに及んで平均は16nmであり、粒子表面積の範囲は6.4〜1,841nm2に及び、このため空電性の範囲は0.15〜0.95に及んだ。
−反応混合液B(比率1:1)から結果として生じたナノAgについての粒径:測定された202個のナノ粒子については、直径の範囲は3nm〜116nmに及んで平均は15nmであり、粒子表面積の範囲は6〜4,805nm2に及び、このため空電性の範囲は0.12〜0.96に及んだ;
−反応混合液C(比率10:1)から結果として生じたナノAgについての粒径:測定された56個のナノ粒子については、直径の範囲は3.3nm〜56nmに及んで平均は16nmであり、粒子表面積の範囲は6.4〜1,841nm2に及び、このため空電性の範囲は0.15〜0.95に及んだ。
実施例13−コロイドナノ金の調製
金(III)のストック溶液は、AuCl3の最終濃度が7.5g/LとなるようにmilliQ水中で調製した。発酵乳酸桿菌の培養物は、実施例1にしたがって得た。
金(III)のストック溶液は、AuCl3の最終濃度が7.5g/LとなるようにmilliQ水中で調製した。発酵乳酸桿菌の培養物は、実施例1にしたがって得た。
湿重量2.5gを備える遠心分離した細胞ペレットを100mLのmilliQ水中へ加えた。
上述した懸濁液中の0.10NのNaOHの規定度を得るために、NaOHはmilliQ水中の1NのNaOHストック溶液から加えた。
結果としてこの懸濁液に、AuCl3−Au(3.8mMのAu)の形状にあるAu(III)の75mg/100mLの最終濃度を得るために10mLの金(III)ストック溶液を加えた。2.5g/100mLのバイオマス(湿重量)上へのAu(0)の析出は、4時間以内に完了した。遠心分離したバイオマスの乾燥重量は平均して10〜30%であるので、1:3〜1:10の金対細胞乾燥重量比が得られた。
反応を4時間にわたり持続させ、その後ナノ金粒子を採取した。この紫色析出物は15℃で10分間にわたり3,000gで遠沈させ、milliQ水を用いて2回洗浄し、製造プロセスから水溶性成分を除去した。
実施例14−ナノ金のXRD分析
実施例13からの、24時間にわたり100℃のオーブン中で乾燥させた金粒子を備えるバイオマスのXRD分析は、実施例2において説明したようにBragg−Brentano光学素子を備えたSiemens回折計D5000を用いて実施した。結果として生じるスペクトルは図4に示されており、Au0のX線回折ピークの存在だけを示している。
実施例13からの、24時間にわたり100℃のオーブン中で乾燥させた金粒子を備えるバイオマスのXRD分析は、実施例2において説明したようにBragg−Brentano光学素子を備えたSiemens回折計D5000を用いて実施した。結果として生じるスペクトルは図4に示されており、Au0のX線回折ピークの存在だけを示している。
実施例15−様々な銀対バイオマス細胞乾燥重量比でのバイオマスについての生体内析出効率および回収率
Ag(I)からAg(0)ナノ粒子への生体内還元にバイオマスが及ぼす影響を評価するために、様々なAg:CDW比での生体内還元後のバイオマス上および溶液中の回収率を決定した。
Ag(I)からAg(0)ナノ粒子への生体内還元にバイオマスが及ぼす影響を評価するために、様々なAg:CDW比での生体内還元後のバイオマス上および溶液中の回収率を決定した。
様々なAg:CDW比でのナノ銀調製物は、実施例8に記載したように調製した。銀回収率は、バイオマスとAg(I)とのインキュベーションの4時間後ならびに10分間にわたる7,000gでの遠心分離による可溶相(溶液中)および析出物相(バイオマス上)間の分別後に決定した。調査の結果は、下記の表5に示されている。
これらの結果から、バイオマス結合粒子としての銀の回収率は、Ag:CDW比が低い場合に高いことは明白である。例えば、1:10のAg:CDW比は、生体内還元によって溶液中のAg(I)からの許容できるAg0の回収率(約95%)を提供する。
実施例16−過酸化水素後処理を行っていないナノ銀調製物の殺藻特性
ナノ銀調製物は、1:4の銀対バイオマス細胞乾燥重量比で実施例8に記載したように調製した。
ナノ銀調製物は、1:4の銀対バイオマス細胞乾燥重量比で実施例8に記載したように調製した。
この調製物の殺藻特性を評価するために、10mLのBG11培地(StanierらによってBacteriol.Rev.(1971)35:171−205に記載されている)を含有する試験管にクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)が活発に増殖している0.5mLの液体BG11培養物を接種し、20℃で65%相対湿度および1,000ルクス(16時間/日)でインキュベートした。増殖は、分光光度測定によって2週間後に評価した。Agが20mg/L〜0.01mg/Lの範囲に及ぶ様々な濃度のナノ銀調製物を試験管へ投与することによって試験した。MIC値は、微生物増殖の完全阻害が観察された最低試験濃度である。クロレラ・ブルガリスに対するこのナノ銀調製物のMIC値は、0.125mg/LのAgであると決定された。
Claims (2)
- 細菌を金属もしくは金属化合物と制御されたpH下で接触させる工程によって前記細菌膜上でコロイド金属もしくは金属化合物を製造するための細菌の使用。
- 前記金属もしくは金属化合物の金属は、銀、金、亜鉛、水銀、銅、パラジウム、白金、およびビスマスからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
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