JP2014060142A - 電極材料とリチウムイオン電池用電極ペースト及びリチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の電極材料は、オリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物からなる電極活物質粒子と、この電極活物質粒子を被覆しかつ電極活物質粒子間を結合する炭素質材料とを含み、この電極活物質粒子を複数個凝集させることにより、これらの電極活物質粒子及び炭素質材料を含む凝集体とした電極材料であり、この凝集体の平均圧縮強度は0.05kgf/mm2以上かつ2.0kgf/mm2以下である。
【選択図】なし
Description
リチウムイオン電池の正極材料を構成する活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)や鉄リン酸リチウム(LiFePO4)等のリチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するリチウム含有金属酸化物が用いられており、二次電池の正極は、これらの電極活物質粒子と結着剤、導電助剤、溶媒等を混合して得られた正極合剤を集電体と称される金属箔上に塗布・乾燥することによって形成される。
鉄リン酸リチウムのようなオリビン構造の電極活物質は、コバルト酸リチウム等のスピネル構造の電極活物質と比べて安全性に優れていることから車載用途や大型電池用途に有望とされ開発が進められている。しかしながら、このようなオリビン構造の電極活物質は、電子伝導性に劣っていることから、電極活物質粒子を炭素で被覆することで電極活物質粒子全体としての電子伝導性を向上させるとともに、電極活物質粒子の内部での電子移動距離とリチウム拡散距離とを短縮するために粒子自体を微細化する必要があった。
そこで、微細化した電極活物質粒子を使用する際には、比表面積を減少させるために造粒工程を導入して、複数の電極活物質を凝集させて凝集粒子化する方法が取られている。
この技術によれば、微細な微粒子を使用しながら、比表面積を減少させ、かつ、電極活物質粒子同士を炭素を介して接合することによって、良好な電子電導性と結着剤の低減とを実現することができるとされている。また、この技術は、特に車載用のモーター駆動用電源等の用途として好適とされている。
そこで、正極の電極活物質層の密度を調整する方法としては、集電体上に塗布した電極活物質層を乾燥させた後、プレスによって必要な密度に圧密化する方法が採られることが多い。また、造粒により上記の電極活物質粒子を複数個凝集させた凝集粒子とプレス圧とを組み合わせて、電極活物質層の密度を調整する技術も提案されている。
この技術では、1t/cm2で加圧したときの圧縮密度を2.00g/cc以上とすることで、体積当たりの電池容量を高くすることができ、その結果、高い充放電特性を有しているとされている。
また、平均粒子径0.5〜2μmのリチウム複合酸化物微粉末を多数凝集して、平均粒子径5〜15μmの凝集粒状リチウム複合酸化物とした技術が提案されている(特許文献3)。
この技術では、凝集粒状リチウム複合酸化物の圧縮強度を0.1〜1.0gfとすることで、電極にリチウム複合酸化物を塗布する再に凝集粒状リチウム複合酸化物が破壊されて微粉末状となり、電極活物質層(リチウム複合酸化物層)の濃度・厚みを均質にすることができるとされている。
そこで、電極活物質層自体の密度を向上させるためには、正極を形成する際のプレス圧を高めて電極活物質層自体の密度を高める必要があるが、プレス圧を高めると、電極活物質層中に亀裂や剥離が発生し易くなるという問題点があった。
また、電極活物質層におけるオリビン型複合酸化物粒子の充填率を向上させるためには、オリビン型複合酸化物粒子粉末に含まれる炭素量を0.2%以下にする必要があるが、この炭素量では、電極活物質粒子表面へ被覆された炭素質被膜が非常に薄くかつ不均一な縞状構造になり易く、しかも電子伝導性に劣っているので、充填性が向上したとしても電池容量が低下してしまうという問題点があった。
以上述べたように、従来の技術では、電子伝導性を良好に保ちつつ、塗布する際に凝集粒子の形状を保ちつつ塗布することで高容量の正極を形成することができ、過度のプレス圧を必要とせずに、電極活物質層の密度を所望の密度まで十分に高めることができることを目的とした電極材料に関する技術は、まだ十分に確立されていないのが現状である。
前記凝集体の平均粒子径は、0.5μm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
前記凝集体の充填率は、この凝集体を中実とした場合の体積密度を100体積%とした場合、50体積%以上かつ80体積%以下であることが好ましい。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の電極材料は、オリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物からなる電極活物質粒子と、この電極活物質粒子を被覆しかつ前記電極活物質粒子間を結合する炭素質材料とを含んだもので、この電極活物質粒子を複数個凝集させることにより、これらの電極活物質粒子及び前記炭素質材料を含む凝集体とした電極材料であり、この凝集体の平均圧縮強度は0.05kgf/mm2以上かつ2.0kgf/mm2以下である。
電極活物質粒子としては、オリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物粒子が好ましく、このオリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム及びLixAyDzPO4(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)の群から選択される1種を主成分とすることが好ましい。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
炭素質材料としては、オリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物からなる電極活物質粒子を被覆しかつ、これら電極活物質粒子間を結合することのできるものであればよく、例えば、アモルファスカーボン等の非晶質炭素、アセチレンブラックやカーボンブラック等の微粉炭素等が挙げられる。
この凝集体は、オリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物からなる電極活物質粒子を複数個凝集させることにより、これらの電極活物質粒子及び、この電極活物質粒子を被覆しかつ前記電極活物質粒子間を結合する炭素質材料を含む凝集体である。
ここで、この凝集体の平均圧縮強度を上記の範囲に限定した理由は、この範囲が、凝集体がプレス圧によって容易に圧縮され、凝集体間に存在する空隙を縮めることで電極活物質層の密度を向上させることができる範囲だからである。
このようにして測定した細孔の平均細孔径は50nm以上かつ500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上かつ230nm以下、さらに好ましくは120nm以上かつ200nm以下である。
ここで、凝集体の平均粒子径が0.5μm未満であると、凝集体の粒子径が小さすぎて、この凝集体を充填した際の充填率が過剰に大きくなり易くなり、よって凝集体の圧縮強度が高くなり過ぎてしまい、その結果、凝集体中の細孔がプレス圧縮によって狭まり過ぎることとなり、凝集体内部へ電解質が浸透し難くなるので好ましくなく、一方、凝集体の平均粒子径が100μmを超えると、この凝集体の充填率が低下することとなり、電極活物質層の密度も低下してしまう虞があるので好ましくない。
凝集体は、電極活物質粒子と炭素前駆体と溶媒とを混合したスラリーを、スプレードライヤー等の造粒機を用いて造粒し、得られた造粒体を窒素(N2)やアルゴン(Ar)等の不活性ガス中で焼成することにより製造される。ここで、凝集体の充填率を50体積%以上かつ80体積%以下とすることにより、焼成時に炭素前駆体が分解して発生する炭素質ガスが凝集体の内部に留まり、電極活物質の表面における炭素質被膜の形成が容易に進み、得られた炭素質被膜の膜厚が均一になり易くなる。また、電極活物質粒子間を炭素質被膜で結合することにより、電子伝導性に優れた電極(正極)材料となる。
ここで、凝集体における炭素含有率を別の角度で求めると、凝集体の好ましい比表面積は1m2/g以上、より好ましくは5m2/g以上であるから、電極活物質粒子の表面全体をナノメートルサイズの厚みの炭素質被膜で被覆すると、凝集体に対して必要な炭素含有率は0.6質量%以上かつ10質量%以下となる。
本実施形態の電極材料の製造方法は、電極活物質または電極活物質の前駆体と有機化合物とを含み、かつ電極活物質または電極活物質の前駆体の粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)の累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)に対する比(D90/D10)が5以上かつ30以下のスラリーを乾燥し、次いで、得られた乾燥物を500℃以上かつ1000℃以下の非酸化性雰囲気下にて焼成する方法である。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
この化合物(LixAyDzPO4粒子)としては、例えば、酢酸リチウム(LiCH3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩、あるいは水酸化リチウム(LiOH)からなる群から選択されたLi源と、塩化鉄(II)(FeCl2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2)、硫酸鉄(II)(FeSO4)等の2価の鉄塩と、リン酸(H3PO4)、リン酸2水素アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)等のリン酸化合物と、水とを混合して得られるスラリー状の混合物を、耐圧密閉容器を用いて水熱合成し、得られた沈殿物を水洗してケーキ状の前駆体物質を生成し、このケーキ状の前駆体物質を焼成して得られた化合物(LixAyDzPO4粒子)を好適に用いることができる。
ここで、電極活物質の1次粒子の平均粒子径を上記の範囲に限定した理由は、1次粒子の平均粒子径が0.01μm未満では、1次粒子の表面を薄膜状の炭素で充分に被覆することが困難となり、高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、その結果、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるので、好ましくなく、一方、1次粒子の平均粒子径が20μmを超えると、1次粒子の内部抵抗が大きくなり、したがって、高速充放電レートにおける放電容量が不充分となるので、好ましくない。
ここで、電極活物質の形状が球状であることが好ましい理由は、電極活物質と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して正電極用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができると共に、この正電極用ペーストの集電体への塗工も容易となるからである。
さらに、電極活物質が最密充填し易いので、単位体積あたりの正極材料の充填量が多くなり、よって、電極密度を高くすることができ、その結果、リチウムイオン電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
ここで、有機化合物の炭素量換算の配合比が0.6質量部未満では、炭素質被膜の被覆率が80%を下回ることとなり、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となる。一方、有機化合物の炭素量換算の配合比が10質量部を超えると、相対的に電極活物質の配合比が低くなり、電池を形成した場合に電池の容量が低くなるとともに、炭素質被膜の過剰な担持により電極活物質が嵩高くなり、したがって、電極密度が低くなり、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量の低下が無視できなくなる。
電極活物質と有機化合物とを水に溶解あるいは分散させる方法としては、電極活物質が分散し、有機化合物が溶解または分散する方法であれば、特に限定しないが、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の媒体粒子を高速で攪拌する媒体攪拌型分散装置を用いる方法が好ましい。
また、スラリー中の電極活物質あるいは電極活物質の前駆体の粒度分布においては、この粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)の累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)に対する比(D90/D10)が5以上かつ30以下となるように、スラリーの分散条件、例えば、スラリー中の電極活物質及び有機化合物の濃度、撹拌速度、撹拌時間等を適宜調整するとよい。これにより、このスラリーを噴霧・乾燥して得られる凝集体のタップ密度が1.0g/cm3以上となる。
この噴霧の際の液滴の平均粒子径は、0.05μm以上かつ100μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上かつ20μm以下である。
噴霧の際の液滴の平均粒子径を上記の範囲とすることで、平均粒子径が0.5μm以上かつ100μm以下、好ましくは1μm以上かつ20μm以下の略球形の乾燥物が得られる。
この非酸化性雰囲気としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H2)等の還元性ガスを1〜5体積%含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機成分を除去する目的で、必要に応じて酸素(O2)等の支燃性及び可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入することとしてもよい。
特に、保持時間と凝集体の粒度分布及び凝集体の充填率の制御との間には相関関係があるので、保持時間を調整することにより、凝集体の粒度分布及び凝集体の充填率を制御することができる。
ここで、保持時間は、長時間であればあるほど結晶性の高い炭素質被膜が形成されるが、一方、圧縮に対しては強硬で形状が変化し難い凝集体となり、加えて電極プレス工程の際に炭素質被膜が破壊されてしまう虞がある。
逆に、保持時間が短時間であると、炭素質被膜の結晶性が低くなり、電極活物質に十分な電子伝導性を付与出来なくなる虞がある。
この凝集体が、本実施形態における電極材料となる。
本実施形態のリチウムイオン電池用電極ペーストは、上記の電極材料と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを含有してなるペーストである。
この電極材料は、上述した様に、オリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物からなる電極活物質粒子と、この電極活物質粒子を被覆しかつ前記電極活物質粒子間を結合する炭素質材料とを含み、この電極活物質粒子を複数個凝集させることにより、これらの電極活物質粒子及び前記炭素質材料を含む凝集体とした電極材料である。
ここで、この電極材料の含有量が85質量%未満では、この電極ペーストを用いて形成されたリチウムイオン電池用電極の電極活物質層中に占める電極材料の量が相対的に減少し、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量が低下するので好ましくない。
導電助剤としては、例えば、微粉炭素、繊維状炭素等が挙げられる。
微粉炭素としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。また、繊維状炭素としては、例えば、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
これらの微粉炭素や繊維状炭素は、上述した材料群から1種のみを選択して用いてもよく、2種以上を選択し混合して用いてもよい。
ここで、導電助剤の含有量が0.1質量%未満では、この電極ペーストを用いて形成されたリチウムイオン電池用電極の電極活物質層における電子伝導性が十分ではなく、電池容量及び充放電レートが低下する虞があるので好ましくない。一方、含有量が7質量%を超えると、この電極ペーストを用いて形成されたリチウムイオン電池用電極の電極活物質層中に占める電極材料の量が相対的に減少し、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量が低下する虞があるので好ましくない。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
この結着剤は、上述した材料群から1種のみを選択して用いてもよく、2種以上を選択し混合して用いてもよい。
ここで、結着剤の含有量が0.5質量%未満では、この電極ペーストを用いて形成されたリチウムイオン電池用電極の電極活物質層と集電体との結着性が十分ではなく、電極を圧延により形成する際等に電極活物質層に割れや脱落が生じるので好ましくない。また、電池の充放電過程においては、電極活物質層が集電体から剥離し、電池容量や充放電レートが低下するので好ましくない。一方、含有量が10質量%を超えると、電極活物質層の内部抵抗が増大し、高速充放電レートにおける電池容量が低下するので好ましくない。
溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
この溶媒は、上述した材料群から1種のみを選択して用いてもよく、2種以上を選択し混合して用いてもよい。
特に、結着剤との相溶性及びペーストの塗布性等を考慮すると、N−メチル−2−ピロリジノンが好ましい。
この電極ペースト中の固形分の含有量としては、30質量%以上かつ70質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以上かつ60質量%以下である。
ここで、固形分が30質量%未満では、この電極ペーストの粘度が著しく低下し、この電極ペーストを集電体に塗布、乾燥する際に、この電極ペーストにより形成された電極活物質層にクラックや斑が発生し易くなり、膜厚の均一性が低下すると共に、電池性能の低下を生じさせるので好ましくない。一方、固形分が70質量%を超えると、結着剤が析出し易くなると共に、ペーストの流動性が低下し、塗布性に優れるペーストの調製が困難となるので好ましくない。
本実施形態のリチウムイオン電池用電極ペーストは、上記の電極材料と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを、それぞれ所定量、混練機を用いて所定時間混練することにより、作製することができる。
混練機としては、ボールミル、サンドミル、プラネタリー(遊星式)ミキサー、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、ロールミル等が挙げられる。
混錬方法としては、上記の混練機から1種類を選択して混練してもよく、2種類以上の混練機を選択して併用してもよい。
本実施形態のリチウムイオン電池用電極は、本実施形態の電極材料を含有してなる電極である。
本実施形態のリチウムイオン電池用電極の製造方法は、本実施形態の電極材料を用いて集電体の一方の面に電極を形成できる方法であれば特に限定されない。
例えば、本実施形態のリチウムイオン電池用電極ペーストを、集電体の一方の面に塗布して塗膜とし、この塗膜を乾燥し、次いで、加圧圧着することにより、集電体の一方の面に電極が形成された電極板を得ることができる。
本実施形態のリチウムイオン電池は、本実施形態の電極からなる正極と、負極と、セパレーターと、電解液と、を備えている。
このリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。
負極としては、例えば、金属Li、炭素材料、Li合金、Li4Ti5O12等の負極材料を用いることができる。
また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
セパレーターとしては、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
このリチウムイオン電池は、本実施形態の電極板を正極として用いたので、高容量かつ高エネルギー密度である。
例えば、本実施例では、電極材料自体の挙動をデータに反映させるため、負極に金属Liを用いたが、炭素材料、Li合金、Li4Ti5O12等の負極材料を用いてもかまわない。また電解液とセパレータの代わりに固体電解質を用いても良い。
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO4)、2molのリン酸(H3PO4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、120℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
次いで、得られたスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、凝集体の平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて30分間(0.5hr)保持して焼成し、平均粒子径が6μmの鉄リン酸リチウム(LiFePO4)及びアセチレンブラックを主成分とする凝集体を得、この凝集体を実施例1の電極材料とした。
この電極材料の凝集体の平均圧縮強度、充填率、細孔径分布(D50)及び平均粒子径それぞれの評価を行った。
評価方法は下記のとおりである。
(1)平均圧縮強度
日本工業規格:JIS R 1639-5「ファインセラミックス−顆粒特性の測定方法−第5部:単一顆粒圧壊強さ」、日本工業規格:JIS Z 8841「造粒物−強度試験方法」に準拠し、微小圧縮試験機 MCTM((株)島津製作所社製)を用いて測定した。
水銀ポロシメーターを用いて測定した。
(3)充填率
水銀ポロシメーターを用いて測定した凝集体の細孔容積と、鉄リン酸リチウム(LiFePO4)の1g当りの体積(LiFePO4の真密度(理論密度)の逆数)との合計量に対する凝集体の細孔容積が占める割合を、凝集体の充填率として算出した。
(4)平均粒子径
光透過式粒度分布測定装置を用いて測定した。
評価結果を表1に示す。
上記の電極材料90質量部に対して、アセチレンブラック(導電助剤)を5質量部加え、プラネタリーミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合粉体に、結着剤として予めN−メチル−2−ピロリジノンに溶解させたポリフッ化ビニリデン5質量部(固形分換算)を加え、さらにペースト中の固形分が40質量%となるようにN−メチル−2−ピロリジノンを加え、プラネタリーミキサーを用いて混合し、電極ペーストを作製した。
上記の電極ペーストを厚み15μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布し、この塗布膜120℃にて10時間減圧乾燥した。その後、200kgf/cm2の圧力にて加圧し、所定のサイズに打ち抜き、実施例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
このリチウムイオン電池の正極と、リチウム金属からなる負極を、ステンレス製の収納容器に多孔質ポリプロピレンからなるセパレータを介して配置した。
一方、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で1:1の割合で混合して混合溶媒を調製し、この混合溶媒に電解質として1mol/LのLiPF6溶液を加え、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液を作製した。
次いで、この電解質溶液を上記の収納容器内に投入して、上記の正極、負極及びセパレータを電解質溶液に十分に浸漬し、この収納容器をガスケット付きの封口体にて密閉し、実施例1のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の充放電特性、内部抵抗それぞれの評価を行った。
評価方法は下記のとおりである。
上記のリチウムイオン電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.2V、充放電レート0.1Cの定電流(10時間充電の後、10時間放電)下にて実施した。初期放電容量を表2に、充放電特性を図1に、それぞれ示す。
図1に示す放電曲線においては、放電末期に認められる電圧降下が、炭素質被膜によって被覆されていない電極活物質の存在を示している。そこで、電圧降下が顕著に認められる試料を、内部抵抗が高い試料と判断した。
ここでは、電圧降下が認められないか、電圧降下が小さい試料を「○」、電圧降下が顕著に認められる試料を「×」と評価した。
評価結果を表2に示す。
スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布のD90/D10が10となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
なお、実施例2においても、実施例1と同様の放電末期の電圧降下の抑制が認められた。
スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布のD90/D10が20となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
なお、実施例3においても、実施例1と同様の放電末期の電圧降下の抑制が認められた。
スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布のD90/D10が25となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
なお、実施例4においても、実施例1と同様の放電末期の電圧降下の抑制が認められた。
焼成温度を700℃から800℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
なお、実施例5においても、実施例1と同様の放電末期の電圧降下の抑制が認められた。
(電極材料の作製)
2molの硫酸鉄(II)(FeSO4)の替わりに2molの硫酸マンガン(II)(MnSO4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、粒子径が0.02μm(20nm)のマンガンリン酸リチウム(LiMnPO4)及びアセチレンブラックを主成分とする凝集体を得、この凝集体を実施例6の電極材料とした。
そして、この実施例6の電極材料の評価を、実施例1と同様にして行った。評価結果を表1に示す。
ここでは、このリチウムイオン電池の充放電特性の評価を次のようにして行った。
(1)充放電特性
上記のリチウムイオン電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.3V、充放電レートは、充電を0.1Cの定電流一定電圧(10時間定電流充電の後、所定電圧で電流値が0.01Cになるまで充電)後、放電を0.1C定電流(10時間放電)下にて行った。評価結果を表2に示す。
スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布のD90/D10が3となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1及び表2に、放電曲線を図1に、それぞれ示す。
スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布のD90/D10が3となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、さらに、焼成時間を30分間(0.5hr)から1時間(1hr)に変更した以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布のD90/D10が40となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、さらに、焼成時間を30分間(0.5hr)から1時間(1hr)に変更した以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
2molの硫酸鉄(II)(FeSO4)の替わりに2molの硫酸マンガン(II)(MnSO4)を用い、さらに、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布のD90/D10が3となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した以外は、実施例1と同様にして、電極材料を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
ここでは、このリチウムイオン電池の充放電特性の評価を、実施例6と同様にして行った。評価結果を表2に示す。
また、図1によれば、実施例1の電極材料は、比較例1の電極材料と比べて放電容量が高く、放電特性に優れていることが分かった。
電極ペースト中の電極材料を92質量%、アセチレンブラックを3質量%とした以外は、実施例1と同様にして、電極材料を作製し評価を行った。電極材料の評価結果を表3に示す。
このリチウムイオン電池については、充放電特性及びハイレート特性の評価を行った。
評価方法は下記の通りである。
(1)充放電特性
リチウムイオン電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.2V、充放電レート0.1Cの定電流(10時間充電の後、10時間放電)下にて実施した。初期放電容量を表4に示す。
リチウムイオン電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.2V、充電レート0.2Cの定電流(5時間充電)下にて充電後、放電レート3Cの定電流(20分放電)下にて実施し、0.1C(初期放電容量)と3Cの放電容量比を下記の式(1)により算出した。
放電容量比(%)=(3C放電容量/0.1C放電容量)×100 ……(1)
このリチウムイオン電池の放電容量比を表4に、充放電特性を図2に、それぞれ示す。
電極ペースト中の電極材料を94質量%、アセチレンブラックを1質量%とした以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。電極材料の評価結果を表3に、リチウムイオン電池の放電容量比を表4に、充放電特性を図2に、それぞれ示す。
電極ペースト中の電極材料を92質量%、アセチレンブラックを3質量%とした以外は、実施例1と同様にして、電極材料及びリチウムイオン電池の正極並びにリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。電極材料の評価結果を表3に、リチウムイオン電池の放電容量比を表4に、充放電特性を図2に、それぞれ示す。
Claims (7)
- オリビン構造の遷移金属リン酸リチウム化合物からなる電極活物質粒子と、この電極活物質粒子を被覆しかつ前記電極活物質粒子間を結合する炭素質材料とを含み、前記電極活物質粒子を複数個凝集させることにより、これらの電極活物質粒子及び前記炭素質材料を含む凝集体とした電極材料であって、
前記凝集体の平均圧縮強度が0.05kgf/mm2以上かつ2.0kgf/mm2以下であることを特徴とする電極材料。 - 前記炭素質材料により被覆された電極活物質粒子の間に生じた細孔の平均細孔径は50nm以上かつ500nm以下であることを特徴とする請求項1記載の電極材料。
- 前記凝集体の平均粒子径は、0.5μm以上かつ100μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の電極材料。
- 前記凝集体の充填率は、この凝集体を中実とした場合の体積密度を100体積%とした場合、50体積%以上かつ80体積%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の電極材料。
- 請求項1ないし4のいずれか1項記載の電極材料と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを含有してなることを特徴とするリチウムイオン電池用電極ペースト。
- 請求項1ないし4のいずれか1項記載の電極材料を含有してなることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
- 請求項6記載のリチウムイオン電池用電極を正極に備えたことを特徴とするリチウムイオン電池。
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