JP2014051436A - α−アミラーゼ阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】S−アリルシステインスルホキシドまたはその薬理学上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα−アミラーゼ阻害剤、該α−アミラーゼ阻害剤を含有する食後血糖上昇抑制のための組成物、糖尿病等の予防、治療及び/または改善のための組成物。
【選択図】なし
Description
上記のように、従来のα−アミラーゼ阻害物質の殆どが、天然植物由来の有機高分子化合物やポリフェノール類であることから、合成が容易なアミノ酸誘導体のような化合物がα−アミラーゼ阻害作用を有することは全く予想外のことであった。
(1)
S−アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα−アミラーゼ阻害剤。
また、本発明は下記の組成物及び食品及び飼料に関する。
(2)(1)のα−アミラーゼ阻害剤を含む食後血糖上昇抑制のための組成物。
(3)(1)のα−アミラーゼ阻害剤を含む糖尿病の予防、治療及び/または改善のための組成物。
(4)
医薬組成物である(2)または(3)の組成物。
(5) ヒト以外の動物用の医薬組成物である(2)または(3)の組成物。
(6)
食品添加剤である(2)または(3)の組成物。
(7)(1)のα−アミラーゼ阻害剤を含む食品。
(8)(1)のα−アミラーゼ阻害剤を含む飼料。
これらの方法は、ヒト以外の動物に行われる方法であってもよい。従って、本発明は、S−アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの有効量をヒト以外の動物に投与することまたは摂取させることを含む糖尿病、糖尿病合併症及び/または肥満の予防、改善及び/または治療方法にも関する。
上記本発明の組成物は、好ましくはS−アリルシステインスルホキシドとしての有効成分量が1回の投与あたり10mg/kg体重〜1000mg/kg体重、好ましくは100mg/kg体重〜200mg/kg体重である組成物である。
さらに、本発明のS−アリルシステインスルホキシドによる食後血糖上昇抑制は、インスリン分泌促進によるものではないとは考えられるため、広い範囲の病態に対して使用することができる。
また、本発明のα−アミラーゼ阻害剤を含む組成物または食品または飼料を摂取させて食後血糖の上昇を抑制することにより、体重の減量、肥満の予防、改善及び治療を図ることもできる。
本発明のα−アミラーゼ阻害剤は、種々の食品に添加して、食後血糖上昇の抑制を図ることのできる食品添加剤として使用することもできる。本発明は、そのような食品添加剤、またはそのような食品添加剤が添加された食品にも関する。なお、そのような食品添加剤は動物用飼料のためのものであってもよい。
本発明のα−アミラーゼ阻害剤及び該α―アミラーゼ阻害剤を含む組成物及び食品は、糖尿病患者だけでなく、糖尿病には至っていないが血糖値が高く、糖尿病になるおそれのある患者にも用い得る。
本発明に使用されるACSOは塩またはエステルの形態であってもよい。ACSOの塩は、製薬学的に許容される塩であり、例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩;並びにリチウム、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属塩;カルシウム、バリウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等の金属塩が挙げられる。ACSOのエステルは、薬理学的に受け入れられるエステルであれば特に限定はない。
また、本発明のα−アミラーゼ阻害剤において、ACSOまたはその塩もしくはエステルには、これらの化合物の水和物も含まれる。
ACSOは、例えば、システインをハロゲン化アリルと反応させ、S−アリルシステインを合成し、これを酸化することにより合成することができる。より具体的には、システインをエタノール中に添加して攪拌し、これに臭化アリルを水酸化ナトリウム溶液と共に滴下して反応させ、S−アリルシステインとし、その後、反応液を酸性とすることによりS−アリルシステインを析出させ、これを所望により精製した後、水に懸濁させ、過酸化水素等の酸化剤と反応させることによりACSOを合成することができる。しかしながら、本発明で使用されるACSOの合成法は上記方法に限定されない。
抽出は、例えば、ニンニクを、熱処理等により酵素を失活させた後、破砕し、水または水性溶媒、例えば、水、熱水、水−エタノール混合物、水性緩衝液等で抽出することにより行われる。熱処理は、例えばニンニクを熱水中で加熱する、蒸す、マイクロ波加熱する、焼く等の方法で行い得る。熱処理は、好ましくはニンニク破砕物が80〜200℃となる温度で10秒〜30分間行われる。水性緩衝液は、例えばpH4〜9の水性緩衝液、例えばクエン酸緩衝液である。
本発明で使用されるACSOは、上記方法により合成または抽出され、所望により精製されたACSO粉末を乾燥したものでも、該粉末の水溶液を凍結乾燥したものとして使用されても良い。
本発明は、ACSOを有効成分とするα−アミラーゼ阻害剤、並びに該アミラーゼ阻害剤を含む食後血糖上昇抑制のための医薬組成物及び糖尿病の予防及び/治療のための医薬組成物に関する。また、本発明は医薬品として使用されるACSOに関する。医薬組成物は食後血糖上昇抑制剤または血糖降下剤であり得る。
本発明のα−アミラーゼ阻害剤、並びに該アミラーゼ阻害剤を含む医薬組成物、医薬として使用されるACSOは、糖尿病、糖尿病には至っていないが血糖値が高く血糖値のコントロールが必要な病態、糖尿病合併症、肥満等の予防または治療に使用することができる。なお、糖尿病には、1型糖尿病及び2型糖尿病が含まれる。
上記本発明のα−アミラーゼ阻害剤、医薬組成物は、ACSOに、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等の薬理学的に許容される補助剤を配合し、製剤技術分野で一般的な方法により製剤化することができる。
本発明のα−アミラーゼ阻害剤を含有する組成物及び食品は、たとえば糖尿病、糖尿病合併症、糖尿病関連疾患、肥満、体重の減量等の予防または改善に使用することができる。
本発明の食品は健康食品、例えばサプリメント製剤のようなα−アミラーゼ阻害剤を含有する製剤化された組成物の形態、機能性食品の形態、代替食品の形態であり得る。
組成物の形態の健康食品は、上記で経口投与用の医薬組成物等について記載したような錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態のサプリメントとして提供され得る。その場合、本発明の健康食品は、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを上記で例示した補助剤と配合して一般的な製剤方法により製剤化したものであり得る。また、本発明の健康食品はACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα−アミラーゼ阻害剤に加えて、健康増進のための他の成分を含んでいてもよい。
例えば、ACSO、液糖、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ビタミンCを混合し、水を加えてドリンク剤の形態の本発明の健康食品を製造することができる。
例えば、茶飲料の形態の本発明の健康食品を下記の方法により製造することができる:穀物茶、ウーロン茶、緑茶、紅茶等の茶葉を単独で又は混合して抽出液を得る。抽出液に、ACSOと、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウムを添加してpH約6.0〜6.5に調製し、純水を加えて茶飲料とする。
また、ACSO、グラニュー糖、ゼラチン、オレンジ果汁を加熱して溶解し、冷却してゼリーの形態の本発明の健康食品を製造することができる。
ダイエットまたは肥満治療目的の代替食品は、一定の範囲のカロリー含有量、例えば好ましくは50〜1000カロリー、より好ましくは100〜700カロリー、最も好ましくは200〜500カロリーのカロリー含有量を有する。
本発明のα−アミラーゼ阻害剤、該α−アミラーゼ阻害剤を含む組成物及び食品はヒト以外の動物用のものであってもよい。従って、本発明は上記α−アミラーゼ阻害剤を含む飼料や動物用サプリメントにも関する。
飼料または動物用サプリメントも、上記健康食品の製造方法に準じて製造され得る。
飼料または動物用サプリメントにおいて、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの添加量は、例えば1食当たり10mg/kg体重〜1000mg/kg体重、好ましくは100mg/kg体重〜200mg/kg体重となる量である。
飼料として製造される場合、通常の飼料の原料にACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを配合して製造することができる。
サプリメントとして製造される場合、そのまま、または飼料に混ぜて摂取するための粉末、顆粒、細粒、液体、錠剤などの形態で製造することができる。
本発明のα−アミラーゼ阻害剤を含有する食品添加剤は、たとえばα−アミラーゼ阻害剤としてのACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの粉末または水溶液の凍結乾燥品を所望により他の成分と共に含み、食品加工における食品添加物、特に食後血糖上昇抑制作用を付与するための食品添加物として使用することができる。
本発明によるACSOの有効量を投与することまたは摂取させることを含む糖尿病、糖尿病合併症及び/または肥満の予防、改善及び/または治療方法、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの有効量を投与することまたは摂取させることを含む食後血糖の上昇を抑制する方法において、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの投与量は、患者の年齢、体重、症状及び投与経路によるが、例えば成人に経口的に投与する場合の投与量は、一日に例えば1〜5回、一回当り有効成分量がACSOの量として例えば0.5g〜50g、好ましくは1.0g〜10gとなる量である。また、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルは、例えば食前、食直前または食後に投与され得る。
製造実施例1:S−アリル−L−システインスルホキシドの合成
(1)S−アリル−L−システイン(ACS)の合成
L−システイン塩酸塩−水和物50g(0.28mol)を95%エタノール330mlに加え1時間攪拌後、1.9NのNaOH溶液330ml(0.66mol)と臭化アリル28.9ml(0.34 mol)を同時にゆっくりと滴下した。滴下終了後、濃塩酸により反応液のpHを4付近に調整し、4℃で1晩放置することによりS−アリル−L−システイン(ACS)の結晶を析出させた。ここで得られた粗結晶をろ紙で吸引ろ過後、真空乾燥(室温)し、その乾燥粉末を1%酢酸含有沸騰水にて溶解させた。この溶液を15倍量の沸騰水エタノールに加え再結晶化させた。得られた結晶をろ紙で吸引ろ過後、真空乾燥(室温)し、S−アリル−L−システイン(ACS)を得た。
(1)で合成したS−アリル−L−システイン8.061g(0.05mol)を蒸留水65mlに懸濁させ、S−アリル−L−システイン1molに対して過酸化水素が2molとなるよう、30%過酸化水素11.2ml(0.1mol)をゆっくりと加え、室温で24時間攪拌した。この反応液をろ紙にてろ過後、そのろ過液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、1%酢酸含有沸騰水にて溶解させた。この溶液を15倍量の沸騰水エタノールに加え再結晶化させた。得られた結晶をろ紙で吸引ろ過後、真空乾燥(室温)し、S−アリル−L−システインスルホキシドを得た。
6週齢Wistar系ラット(n=7群)を予備飼育後、S−アリル−L−システインスルホキシドを0.5もしくは1.0mmol/kg体重となるように7日間経口胃内投与(コントロール群には蒸留水を胃内投与)し、投与7日目に絶食後、可溶性デンプンを1g/kg体重となるように無麻酔下で経口胃内投与した。サンプル群は、ACSOを0.5、1.0mmol/kg体重となるようデンプン溶液に添加し、経口胃内投与した。コントロール群は蒸留水を経口胃内投与した。投与後、0、15、30、45、90分後に尾静脈採血し、血中グルコース濃度を血糖値自動測定装置(バイエル)を用いて測定し、さらに血中インスリン濃度を測定した。
また、血中インスリン濃度の測定結果及びAUCを各々図3及び図4のグラフに示す。グラフに示されるように、本発明の血糖値上昇抑制効果はインスリン放出促進によるものではないと考えられる。
S−アリル−L−システインスルホキシドを0〜80mg/mlになるように50mMNaCl、3mMCaCl2含有20mMHEPES緩衝液に溶解し、pH4〜7におけるα-アミラーゼ阻害活性を測定した。S−アリル−L−システインスルホキシドの類縁化合物であるS−メチル−L−システインスルホキシド(MCSO)、S−エチル−L−システインスルホキシド(ECSO)、S−アリル−L−システイン(ACS)を用い、80mg/mlにおけるα-アミラーゼ阻害活性をpH4〜8の範囲で測定した。
その結果、pH6以下で、S−アリル−L−システインスルホキシドはα-アミラーゼを濃度依存的に阻害した(図5)。特に、pH5〜6において阻害活性が強くみられ、60〜80mg/mlS−アリル−L−システインスルホキシドはα-アミラーゼ活性を80%以上阻害した。一方、S−アリル−L−システインスルホキシドの類縁化合物であるMCSO、ECSO、ACSにはα-アミラーゼ阻害活性がほとんどみられず(図6)、S−アリル−L−システインスルホキシドのα-アミラーゼ阻害活性には、構造中のアリル基およびスルホキシドの構造が必要であることが示唆された。
ニンニク鱗茎1粒(約3g)当たり20秒電子レンジ(960W)で加熱後、等量の水を加え、ミキサーで約30秒間破砕した。このホモジネートをガーゼでろ過後、凍結乾燥をし、ニンニク粗抽出物を得た。このニンニク粗抽出物1gに対し25mlの水を加えて溶解後、エタノールを70〜99.5%となるように添加した。10分間撹拌後、遠心分離(17,000g,20分,4℃)を行い、上清を得た。この上清をエバポレータにより30℃で濃縮し、エタノール除去を行い、得られた濃縮物を凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物中のS−アリル−L−システインスルホキシドの純度をFmoc誘導体化法により測定した。結果を図7のグラフに示す。グラフに示されるように、90%以上のエタノール濃度では、純度約14%のS−アリル−L−システインスルホキシド粗抽出物が得られた。
Claims (8)
- S−アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα−アミラーゼ阻害剤。
- 請求項1記載のα−アミラーゼ阻害剤を含む食後血糖上昇抑制のための組成物。
- 請求項1記載のα−アミラーゼ阻害剤を含む糖尿病の予防、治療及び/または改善のための組成物。
- 医薬組成物である請求項2または3記載の組成物。
- ヒト以外の動物用の医薬組成物である請求項2または3記載の組成物。
- 食品添加剤である請求項2または3記載の組成物。
- 請求項1記載のα−アミラーゼ阻害剤を含む食品。
- 請求項1記載のα−アミラーゼ阻害剤を含む飼料。
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