JP4575588B2 - 悪酔い・二日酔い予防剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、桑科植物の含有成分を有効成分とする新規用途に関するものである。さらに詳しく説明すると、本発明は、桑科植物の葉、実あるいは桑科植物から製した桑茶、乾燥粉砕物あるいは抽出物等からなる悪酔い・二日酔い予防剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲酒などで経口摂取されたアルコールは、胃や小腸などの消化管で吸収される。吸収されたアルコールは血液によって運ばれ大部分は肝臓で代謝される。アルコールは、先ずアルコールデヒドロゲナーゼ(アルコール脱水素酵素)により、アセトアルデヒドになる。次いでアセトアルデヒド脱水素酵素によりアセトアルデヒドが酢酸になり、さらにアセチルCoAとなってクエン酸回路(TCA Cycle)に入り、最後は炭酸ガスと水にまで分解されるのが、正常な代謝である。大量飲酒によって引き起こされる悪酔い、二日酔いは、この代謝が正常に機能しなくなった結果として発生するものである。
【0003】
健康な成人の肝臓が代謝できるアルコールの量は、体重1kg当たり純アルコール換算で0.1g/時間程度である。すなわち、体重65kgの健康な成人の一日に代謝できるアルコールの総量はおおよそ160gとなる。翌朝までに8時間の睡眠を取ることを想定すると、睡眠時間でアルコールを完全に分解できる晩酌量はその3分の1となる。ビールならば大瓶2本、日本酒では2合、ウィスキー/ブランディーならばダブル2杯までが、肝臓にとって比較的安全な晩酌量といえる。この量以上のアルコールを飲酒すると、肝臓における代謝が追いつかず、翌日、アルコール感が残ることとなる。このことは、翌日になっても肝臓はアルコールを代謝し続けることになり、肝臓は疲弊して酵素の活性が低下する。これは取りも直さずアルコール及び酢酸生成の中間体であるアセトアルデヒドが血液中に放出されることとなる。すなわち、悪酔い・二日酔いが発生すると考えられる。
【0004】
適度な飲酒は、食欲増進、ストレス解消などの効果があるが、過剰の飲酒は、顔面紅潮、頭痛、眠気、吐気などの悪酔い、二日酔いの症状が現れるばかりではなく、肝臓障害、膵臓炎などの弊害を引き起こす。これらの症状を抑える方法としていくつかの方法が提案されている。すなわち、血液中のアルコール濃度を低下させる物質(特開平5―170659号、特開平5−246873号、特開平6−256201号、特開平11−228428号、特開平11−2726116号公報)、アセトアルデヒドの毒性を軽減する物質(特開平6−40901号公報)などが開示されている。しかしながら、これらは、飲酒に伴う悪酔い・二日酔いを予防する上で、未だ十分満足するものではなく、翌日においても顔面紅潮、頭痛、眠気、吐気などの悪酔い、二日酔い症状を十分に防止しうるものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ストレス解消、食欲増進などの効果を期待する上で、アルコール飲料を健康的に嗜むためには、悪酔い・二日酔いなどの好ましからざる副次作用を予防することが望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、桑茶を摂取することで悪酔い、二日酔いなどの症状を予防し軽減することを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、桑科植物含有成分を有効成分とする悪酔い、二日酔い予防剤である。尚、従来は、桑科植物に悪酔い・二日酔いの予防効果があることは全く知られていないことであった。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明で使用する原料としては、桑科植物であれば特に限定されるものではないが、ヤマグワMorus bombycis Koidzumi、マグワMorus alba L.、シマグワMorus australis Poir、ロソウMorus latifolia Poir.、モウコグワMorus mongolica Schneid、クロミグワMorus nigra L.、アカミグワMorus rubra L.、オガサワラグワMorus boninensis Koidzumi.などを用いることができ、またこれらの交配種や変種を用いることもできる。使用する部位はなんら限定されるものではなく、実、葉、枝条、若枝、樹皮、幹、根、根皮、桑椹などを使用することができる。
【0008】
例えば、桑葉抽出物を得るには、桑葉の乾燥物に水又は含水エタノールなどのアルコール類を加えて抽出する。この原料に使用する桑葉の乾燥物は、何ら限定されるものではなく、乾燥物そのままを使用する以外に焙煎機で焙煎した桑葉を使用することもできる。またこれらの乾燥物を粉砕機で粉砕した粉末を使用することもできる。この抽出液を遠心分離器にかけて不溶物を除去し、減圧濃縮した後、凍結乾燥することで桑葉抽出物を得ることができる。
【0009】
桑科植物の含有成分を有効成分とする悪酔い・二日酔い予防剤は、水溶性高分子化合物、例えばデキストリン、CMC、アラビアガム、ゼラチンなどの賦形剤とともに噴霧乾燥して得られる粉末状あるいは顆粒状に成型しても好適に使用できるが、タブレット状あるいはカプセル状にしても使用できる。
【0010】
しかしながら、このことに制約されるものではなく桑茶、粉末あるいは抽出物を添加した飲食物を摂取することでも効果的にこの作用を発現させることができる。
【0011】
例えば、飲酒の際に高濃度なアルコール飲料を桑茶で割って飲むことでこれらの作用を発現することもできる。
【0012】
本発明の桑科植物を悪酔い、二日酔いの予防として用いるには、後述の実施例を考慮して、桑葉抽出物として0.25mg/kg体重以上、桑葉乾燥粉砕物ならば1mg/kg体重以上を摂取すればよい。摂取量の上限は存在しない。
【0013】
本発明の悪酔い・二日酔い予防剤がその効果を十分に発揮させるためには、例えば、桑葉抽出物を利用するならば、1回あたり0.01〜4gを含有することが望ましい。
【0014】
本発明の悪酔い・二日酔い予防剤を効果的に発現するためには、アルコール飲料の飲酒前、飲酒中または飲酒直後に摂取することが望ましい。
【0015】
本発明の悪酔い・二日酔い予防剤は、特に食品群を指定するものではないが、例えば、パン、マカロニ、スパゲティ、めん類などに代表される小麦粉製品、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物などに代表される即席食品、ジャム、マーマレード、煮豆、シリアル(穀物加工品)などに代表される農産加工品、佃煮、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品などに代表される水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ、ペーストなどに代表される畜肉加工品、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、粉乳類、アイスクリーム、クリームなどに代表される乳製品、醤油、味噌、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、などに代表される基礎・複合調味料、キャラメル・キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子などに代表される菓子類、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養・健康飲料、アルコール飲料などに代表される嗜好飲料、アイスキャンディ、シャーベットなどに代表される氷菓子、蜂蜜、メープルシロップ、砂糖などに代表される甘味料、ふりかけ、お茶漬けのり、各種健康食品などに使用することができる。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(調製例1)
乾燥した桑葉(一の瀬)345kgをハンマーミル、さらには振動ミルにて微粉砕した後、殺菌して325kgの桑葉乾燥粉砕物を調製した。この粉砕物の化学分析結果は、下記のとおりである。
水分 5.4 %
たんぱく質 20.7 %
脂質 3.7 %
繊維 11.7 %
灰分 13.2 %
糖質 46.7 %
鉄 101 mg/100g
カルシウム 2.33 %
ナトリウム 3.42 mg/100g
カリウム 2.79 %
マグネシウム 362 mg/100g
亜鉛 60.8 ppm
総ビタミンC 28 mg/100g
レチノール(V.A) 670 IU
カロチン 7440 μg
ビタミンA効力 4130 IU
ビタミンB1 0.59 mg
ビタミンB2 1.35 mg
ナイアシン 4.0 mg
ビタミンC 31.6 mg
(調製例2)
桑葉(一ノ瀬)を約1cmの幅に裁断し、伊達式製茶機を用いて乾燥桑葉を調製した。調製条件は次のとおりである。桑葉を蒸機で蒸し、粗揉機で75℃、40分間、中揉機で60〜70℃、30分間、それぞれ処理した後、透気式乾燥機で60〜70℃、25分間乾燥した。このようにして製した乾燥桑葉を焙煎機にて焙煎して、桑茶を調製した。
(調製例3)
調製例1で得た粉砕物10kgに蒸留水20kgを加えて加温しながら撹拌抽出した。この抽出液にエタノール16kgを加えて一晩放置し、生じた沈殿物を遠心分離により除去した後、減圧濃縮した。この濃縮物を凍結乾燥することによって、1.9kgの桑葉抽出物を得た。
(調製例4)
調製例3で得た桑葉抽出物(1.9kg)に調製例1で得た桑葉乾燥粉砕物(2.6kg)とデキストリン(0.5kg)を加えて高速ニーダーで混合し、さらにオシレーター造粒機で造粒した。これを打錠機にて250mgのタブレットを調製した。
実施例1(アセトアルデヒド急性致死抑制試験)
CDF1雄性マウス(7週齢:日本チャールズリバー)を1週間予備飼育後実験に供した。室温23±1〜2℃、湿度55±5%、換気回数12から5回/時間(オールフレッシュエアー方式)、照明時間(12時間/日)に飼育条件を設定した飼育室に6匹ずつ飼育した。固形飼料CE−2(日本クレア)及び飲料水は自由摂取とした。
【0017】
アセトアルデヒドは、蒸留水にて希釈して投与量が11mmol/kgとなるように調製した。
【0018】
調製例3で得られた抽出物を、投与量が10mg/kg、100mg/kgとなるように蒸留水に溶解して試験に供した。すべての摂取量を10cc/kgとした。
【0019】
マウスは1群15匹とし、コントロールとして蒸留水をそして定量の試験サンプルを腹腔腔内に投与して、30分後にアセトアルデヒドを腹腔腔内に投与した。アセトアルデヒド投与後2時間及び2週間経過した生存率を観察し、X2検定を行った。
【0020】
結果は、表1に掲げるようにコントロール群の2時間後及び2週間後の生存率がそれぞれ20%であったのに対して、調製例3で得られた抽出物を10mg/kg投与群の生存率はそれぞれ53.3%、46.7%であり、100mg/kg投与群においてはそれぞれ93.3%、86.7%であり、危険率5%以下で有意差を認めた。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例2
ウィスター系雄性ラット(8〜10週齢:日本SLC)を24時間絶食させた後、実験に供した。調製例3で得られた抽出物6を、投与量が10mg/kg、100mg/kgとなるように蒸留水に溶解して試験に供した。
【0023】
試験サンプルを10cc/kg経口投与した。30分後に30%(w/v)のエタノールを経口投与した。エタノール投与後、0、30、60、90、120、180分後に無麻酔下で尾静脈からヘマトリットチューブを使用して約100μl採血し、1200rpmで5分間遠心分離した。得られた血漿20μlに0.33ml/Lの過塩素酸580μlを添加して混和した。3000rpmで5分間遠心分離した後、上澄液のエタノール濃度をエタノール測定キット(ベーリンガー/インゲルハイム山之内)を使用して測定した。
【0024】
結果は、表2に掲げるようにきわめて顕著な血液中のアルコール濃度の減少を示した。
【0025】
【表2】
【0026】
実施例3
健康な男性20名(30〜60才)に飲酒前に調製例4で得られたタブレット6粒を食させた。日本酒3合、ビール大瓶1本宛を、食事をしながら3時間で飲酒した。飲酒時の排尿の状態、悪酔い、二日酔いの状態を翌朝に申告した。結果は、表3に示すように、タブレットを摂取しない場合(コントロール)は、20名全員が悪酔い、二日酔いを感じ、排尿時に二日酔い特有の匂いを感じたと申告者が18名いた。タブレットを摂取したときには、いつもの飲酒時に比較して排尿の回数、量が増えたと申告した者が17名であった。また悪酔い、二日酔いがなく、目覚めもよく、また排尿時の匂いも感ずることなかったのでタブレットを摂取した効果が有効であったと申告者は15名であり、顕著な有効性が認められた。
【0027】
【表3】
【0028】
A:いつもの飲酒時と回数、量、匂いとも変わらない
B:いつもの飲酒時に比較して回数、量が増え、二日酔い特有の匂いがしない
実施例4
桑葉乾燥粉砕物あるいは抽出物を配合した下記するビスケット、チューインガム、チョコレート、キャンディー、マルベリー飲料、およびホワイトマルベリーアルコール飲料を常法によって製造した。いずれの飲食物も異味等は感じられなかった。
Claims (2)
- 摂取量が1日当たり1mg/kg体重以上である、桑科植物の乾燥粉砕物からなることを特徴とする悪酔い・二日酔い予防剤。
- 摂取量が1日当たり0.25mg/kg体重以上である、桑科植物の抽出物からなることを特徴とする悪酔い・二日酔い予防剤。
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