以下、本発明を詳細に説明する。
(1.本発明の組成物の材料)
本発明の組成物は、酵素分解レシチンで表面処理されたヘスペレチン粒子と、糖転移ヘスペリジンとを含む。本発明の組成物の材料について、以下により詳細に説明する。
(1.1 ヘスペレチン粒子)
ヘスペレチンは、3’,5,7−トリヒドロキシ−4’−メトキシフラバノンとも呼ばれる。ヘスペレチンは、以下の構造を有し、分子量は302.28である:
ヘスペレチンは、ヘスペリジンのアグリコンである。ヘスペレチンは、ヘスペリジンをヘスペリジナーゼまたはナリンギナーゼによって分解することにより入手され得る。ヘスペリジンはフラボノイドの一種であり、柑橘類(例えば、温州みかん、夏みかん、伊予みかん、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジが挙げられる)の果実に含まれており、特に温州みかんに多く含まれている。ヘスペリジンは、未熟期のみかん果実に多量に含まれる。ヘスペリジンは、温州みかん果実の部位の中でも、黄色い外果皮と果肉との間にある、白い中果皮に最も多く含まれている。ヘスペリジンは、柑橘類の果皮、果汁または種子より抽出することができる。例えば、温州みかん果実の搾汁粕からヘスペリジンを抽出する場合は、温州みかん果実の搾汁粕に水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを11.5〜12.5に調整してから撹拌混合し、これを圧搾し、得られた液を遠心分離する。遠心分離により得られた上清に酸を加えてpHを5〜5.5にしてから加温し、この液を遠心分離することによりヘスペリジンを沈澱させ、その後、沈澱しているヘスペリジンを回収する方法が示されている(特開平8−188593号公報を参照のこと)。その後、ヘスペリジン水溶液を調製し、糖部分を(例えば、ナリンギナーゼの作用または酸性条件での加水分解により)除去することにより、ヘスペレチンが得られ得る。柑橘類果実からヘスペリジンを得る方法の詳細は、例えば、King FEおよびRobertson A.,Natural glucosides,Part 3.J.Chem.soc.(II):1704−1709(1931)に記載される。あるいは、市販のヘスペリジンを原料として用いてもよい。ヘスペリジンは、例えば、ハマリ産業株式会社から販売される。ヘスペレチンは、ヘスペリジンのアグリコンである。ヘスペリジンから酸分解によってヘスペレチンを得る方法の詳細は、例えば、Asahina Y.ら,Flavanone glucosides(V):Reduction of flavanone and flavonol derivatives,J.Pharm.Soc−Japan 50:217−223(1931)に記載される。ヘスペレチンは、ヘスペリジンをラムノシダーゼおよびグルコシダーゼによって酵素分解することによっても入手され得る。
ヘスペレチンは無色針状または板状晶であり、その融点は227〜228℃である。本明細書中では、「ヘスペレチン原末」とは、固体ヘスペレチンであって、粒子化処理が施されていないものをいう。針状または板状晶のヘスペレチンは、ヘスペレチン原末である 本明細書中では、「ヘスペレチン粒子」とは、固体ヘスペレチンが粒状に分割されたものをいう。ヘスペレチン粒子の平均粒子径は、好ましくは約10μm以下であり、より好ましくは約5μm以下であり、さらに好ましくは約3μm以下であり、特に好ましくは約2μm以下であり、最も好ましくは約1μm以下である。ヘスペレチン粒子の平均粒子径に特に下限はないが、例えば、約0.01μm以上、約0.02μm以上、約0.03μm以上、約0.04μm以上、約0.05μm以上、約0.1μm以上、約0.2μm以上などであり得る。分散を容易にするためには、ヘスペレチン粒子の平均粒子径は可能な限り小さい方がよい。
ヘスペレチン粒子全体のうち、好ましくは約80体積%以上、より好ましくは約90体積%以上、さらに好ましくは約95体積%以上、最も好ましくは約99体積%以上の粒子の粒径が約1μm以下であることが好ましく、約0.8μm以下であることがより好ましく、約0.5μm以下であることが最も好ましい。ここで、所定の粒径の粒子の割合(%)は、所定の粒径を有する粒子の合計体積を、粒子全体の体積で除算し、100を掛けることによって計算される。例えば、粒子体積の合計が100mLであり、そのうち0.5μm以下の粒径の粒子の合計体積数が60mLである場合、0.5μm以下の粒径を有する粒子の割合は、(60(mL)÷100(体積))×100=60(体積%)である。
このような平均粒子径および粒子径分布を有するヘスペレチン粒子は、ヘスペレチン原末をダイノーミル、レディミル、コボールミルなどの湿式粉砕機、ジェットミルなどの乾式粉砕機を用いた物理的粉砕方法によって粉砕することによって入手され得る。あるいは、このような平均粒子径および粒子径分布を有するヘスペレチン粒子は、対向衝突方式の粉砕方法で粉砕することによって入手され得る。「対向衝突式の粉砕方法」とは、粉砕媒体(メディア)を使用しない方法であって、被粉砕物を含む液体を超高圧に加圧し、該加圧した液体を対向衝突させることにより、被粉砕物を粉砕する方法をいう。対向衝突式粉砕方法で使用される液体の例としては、水および有機溶媒(例えば、アルコール(例えば、エタノール))が挙げられる。対向衝突式粉砕方法で使用される圧力は一般に、約100メガパスカル(MPa)以上であり、好ましくは約200MPa以上であり、最も好ましくは245MPaである。対向衝突式粉砕に使用される装置が耐えられる限り、任意の超高圧力を使用することができる。例えば、約300MPaの圧力を使用することも可能である。対向衝突式の粉砕方法では、超高圧に加圧された被粉砕物含有液どうしの衝突エネルギーを利用して、食品添加物や顔料、電子材料などの被粉砕物を超微粒化、粉砕することが可能であり、また微粒子化された被粉砕物は同時にその液中に分散された状態になるため、被粉砕物の超微粒化、粉砕と同時に、分散および/または乳化することができる。従って、「対向衝突式の粉砕方法」は、分散液または乳化液の製造方法でもある。対向衝突方式の粉砕方法では、粉砕媒体を使用しないため、得られるヘスペレチン粒子に粉砕媒体の破片が入らないという利点がある。対向衝突式の粉砕方法を「高圧分散化処理」ともいう。さらに、対向衝突方式の粉砕方法は、小さな粒径のヘスペレチン粒子が容易にかつ安価に得られるという利点がある。本発明の方法において、対向衝突式の粉砕方法には、任意の対向衝突式の粉砕機が使用可能である。使用可能な粉砕機の具体例については後述する。なお、対向衝突式の粉砕機は、破砕機または微粒化装置などと呼ばれることもある。また、対向衝突式の粉砕機は、分散機または乳化機などと呼ばれることもある。
ヘスペレチン粒子の平均粒径および粒子径分布は、例えば、ベックマン・コールター社の湿式粒度分布計または堀場製作所製のLaser Scattering Particle Size Distribution Analyzer Partica LA−950により測定され得る。
(1.2 糖転移ヘスペリジン)
糖転移ヘスペリジンとは、ヘスペリジンがさらに配糖化されたものをいう。糖転移ヘスペリジンは好ましくはヘスペリジンのルシノース単位中のグルコース残基に、α1→4結合糖により1または複数(2〜20程度)のグルコース残基が結合した化合物である。糖転移ヘスペリジンの例としては、ヘスペリジンモノグルコシド(Hsp−G1;化学式C34H44O20;分子量772.7)、ヘスペリジンジグルコシド(Hsp−G2)、ヘスペリジントリグルコシド(Hsp−G3)およびヘスペリジンテトラグルコシド(Hsp−G4)が挙げられる。糖転移ヘスペリジンは、主にヘスペリジンモノグリコシドからなることが好ましい。
糖転移ヘスペリジンは、市販されており、容易に入手可能である。糖転移ヘスペリジンは、α−グルコシル糖化合物(サイクロデキストリン、澱粉部分分解物など)の共存下で、ヘスペリジンに糖転移酵素(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase, EC 2.4.1.19)などの、ヘスペリジンにグルコース残基を付加する機能を有する酵素)を作用させることにより産生することができる。なお、このような酵素処理により得られるα−グルコシルヘスペリジンは、通常、結合したグルコース残基の個数が異なるもの、すなわちモノグルコシルヘスペリジンおよびそれ以外のα−グルコシルヘスペリジンからなる混合物である。
ヘスペリジンモノグルコシドは、α−1,4−グルコシド結合をグルコース単位で切断するグルコアミラーゼ活性を有する酵素(例えばグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3))をα−グルコシルヘスペリジンの混合物に作用させ、ヘスペリジンに結合したグルコース残基を1つだけ残して切断することにより産生することができる。
糖転移ヘスペリジンの製造方法は、当該分野で公知であり、例えば、特許番号第3060227号「α―グルコシルヘスペリジンとその製造方法ならびに用途」に記載されている。
(1.3 表面処理剤)
本明細書中では、「表面処理剤」とは、ヘスペレチン粒子の表面を処理するために使用される薬剤をいう。表面処理剤は、好ましくは界面活性剤である。表面処理剤はまた、多糖類を含み得る。
本明細書中では、「界面活性剤」とは、分子内に親水基と親油基とを有し、かつ溶液の界面において、または液体と固体との界面において、界面活性を示す物質をいう。本発明で用いられる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される。これらの界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上組合せて用いてもよい。2種以上組合せて用いることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される界面活性剤に加えて、さらに他の一般的な界面活性剤を併用してもよい。このような他の一般的な界面活性剤の例として、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体等の非イオン性界面活性剤;両性界面活性剤;アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、キラヤ抽出物等の天然物由来の界面活性剤が挙げられる。これらの一般的な界面活性剤についても1種で用いてもよく、または2種以上併用してもよい。
本発明の組成物が粉末混合物の場合、本発明で用いられる界面活性剤は、好ましくは酵素分解レシチンである。酵素分解レシチンは、アルギン酸エステルと組み合わせて使用されることが好ましい。酵素分解レシチンをアルギン酸エステルと組み合わせて使用することにより、ヘスペレチン粒子を含む粉末を調製した場合に、粉末同士の結合を防ぐことができる。
酵素分解レシチンは、ヘスペレチン粒子の分散液を作製するために使用されるので、その好ましい配合量は、下記に詳細に記載する、分散液中での好ましい配合量に依存して決定される。
本発明の組成物が液体の場合、好ましくは、本発明で用いられる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステルと酵素分解レシチンとを併用することにより、ヘスペレチン分散液の安定性が増す。
本発明の組成物が液体の場合、より好ましくは、本発明で用いられる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを併用することにより、ヘスペレチン分散液の安定性が極めて顕著に増す。
これら界面活性剤の分散液中での配合量は特に限定されない。配合量が少なすぎると水中での分散状態が不安定になる場合があり、配合量が多すぎると分散液の粘度が高くなり分散液の取り扱いが不便になる場合がある。そのような観点からみると、界面活性剤の配合量の下限は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1重量%以上である。分散液が、そのまま利用される飲料のような、比較的希薄なものである場合、界面活性剤の配合量の下限は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、さらに好ましくは約0.03重量%以上であり、特に好ましくは約0.04重量%以上であり、最も好ましくは約0.05重量%以上である。分散液が、希薄な分散液を作製するためのストック溶液のような、比較的濃いものである場合、界面活性剤の配合量の下限は、意図される濃縮度に応じて、例えば、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1.0重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上などであり得る。
界面活性剤の配合量の上限は、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下であり、さらに好ましくは約3重量%以下である。分散液が、そのまま利用される飲料のような、比較的希薄なものである場合、界面活性剤の配合量の上限は、好ましくは約1重量%以下であり、より好ましくは約0.5重量%以下であり、さらに好ましくは約0.4重量%以下であり、さらにより好ましくは約0.3重量%以下であり、特に好ましくは約0.2重量%以下であり、最も好ましくは約0.1重量%以下である。分散液が、希薄な分散液を作製するためのストック溶液のような、比較的濃いものである場合、界面活性剤の配合量の上限は、意図される濃縮度に応じて、例えば、約10重量%以下、約5重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下などであり得る。
(1.3.1 ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明で用いられ得る「ポリグリセリン脂肪酸エステル」とは、グリセリンの縮合物と脂肪酸とをエステル化したものをいう。ポリグリセリンとは、グリセリンを脱水縮合するなどして得られる重合度2以上の化合物をいう。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステルであっても、ジエステルであっても、トリエステルであっても、それ以上エステル化されたものであってもよい。好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルは一般に種々の重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物として市販される。このような市販の混合物は、どのような重合度のものが多いか、どのような脂肪酸のエステルが多いかなどによって種々のグレードのものが存在する。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、一般に、グリセリンの縮合度が2、3、4、5、6または10のものを主成分とするポリグリセリン脂肪酸エステル混合物が市販されており、これらのいずれかを利用することができる。なかでも親水性の高いグリセリン縮合度が5以上のものが好適に利用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、1種類のポリグリセリン脂肪酸エステルからなるものを用いてもよく、複数種類のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物を用いてもよい。特定種類のポリグリセリン脂肪酸エステルの純度がなるべく高いものを使用することが好ましい。
さらに好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたものであり、該ポリグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である。水酸基価とは、油脂およびロウの特性の1つである。「水酸基価」とは、試料油1gから得られるアセチル化物に結合している酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数をいう。試料を過剰のアセチル化剤(例えば、無水酢酸)と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物のケン化価を測定したのち、次の式に従って計算する:
水酸基価={A/(1−0.00075A)}−B
(ただしAはアセチル化後のケン化価であり、Bはアセチル化前のケン化価を表す)。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの形成に使用されるポリグリセリンは、好ましくは、ポリグリセリン中の全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンである。得られるポリグリセリン脂肪酸エステルの可溶化性能および乳化安定性の高さの観点から、1級水酸基の割合が約55%以上のポリグリセリンがより好ましく、1級水酸基の割合が約60%以上のポリグリセリンが最も好ましい。さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの形成に使用されるポリグリセリンの水酸基価は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの親水性疎水性バランス(HLB)の観点から、約1100以下であることがより好ましく、約1000以下であることがさらに好ましく、約950以下であることが特に好ましく、約900以下であることが最も好ましい。作業性および脂肪酸とのエステル化の容易性の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルの形成に使用されるポリグリセリンの水酸基価は、約770以上であることが好ましく、約800以上であることが好ましく、約850以上であることが特に好ましいい。
HLB値とは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)をいい、一般に、20×MH/Mにより計算され、ここで、MH=親水基部分の分子量であり、M=分子全体の分子量である。HLB値は、分子中の親水基の量が0%のとき0であり、100%のとき20である。HLB値は、乳化剤では乳化剤分子を形成する親水性および疎水性の基の大きさと強さを表し、疎水性の高い乳化剤はHLB値が小さく、親水性の高い乳化剤はHLB値が大きい。
全ての水酸基のうちの1級水酸基の割合は、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定する方法を用いて測定される。また、水酸基価は当該分野で公知の方法により測定することができる。炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、以下のようにして測定することができる。ポリグリセリン500mgを重水2.8mlに溶解し、ろ過後ゲートつきデカップリングにより13C−NMR(125MHz)スペクトルを得る。ゲートデカップルド測定手法によりピーク強度は炭素数に比例する。1級水酸基と2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CH2OH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、2種それぞれのシグナル強度の分析により、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出する。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素にさらに隣接するメチレン炭素ピークと重なり、それ自体の積分値を得られないため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH2)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出する。水酸基価が1200以下であり、かつポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、特開2006−111539号公報に記載の方法に従って製造され得る。形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルは、好ましくはデカグリセリンモノオレートである。
本発明の組成物が液体組成物の場合、最も好ましくは、界面活性剤は、デカグリセリンとオレイン酸とがエステル化されることにより形成されたデカグリセリンモノオレートと、クエン酸モノステリアン酸グリセリンと、酵素分解レシチンとを含み、このデカグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつデカグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である。
ポリグリセリンと反応してポリグリセリン脂肪酸エステルを形成するもう一つの構成成分である脂肪酸は、脂肪族モノカルボン酸であっても脂肪族ジカルボン酸であってもよい。好ましくは、脂肪族モノカルボン酸である。
脂肪酸は、天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離してあるいは分離せずに精製することにより入手され得る。脂肪酸はあるいは、石油などを原料にして化学的に合成することによって得られる脂肪酸であってもよい。脂肪酸はまた、これら脂肪酸を水素添加などして還元したもの、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸、あるいは不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸であってもよい。これら脂肪酸の選択に当たっては所望の効果を勘案して適宜決めればよい。
脂肪酸は、炭素数3以上の脂肪酸である。脂肪酸の炭素数は、好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上であり、殊に好ましくは12以上であり、特に好ましくは14以上であり、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは17以上である。脂肪酸の炭素数は好ましくは22以下である。脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。二重結合も三重結合も含まない脂肪酸を飽和脂肪酸という。飽和脂肪酸の例としては、酪酸(C4:0)、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、イソステアリン酸(C18:0)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18:0)、リシノール酸(C18:0)、アラキジン酸(C20:0)、ベヘン酸(C22:0)、リグノセリン酸(C24:0)、セロチン酸(C26:0)、モンタン酸(C28:0)、メリシン酸(C30:0)などが挙げられる。飽和脂肪酸は好ましくは、酪酸(C4:0)、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、アラキジン酸(C20:0)およびベヘン酸(C22:0)からなる群より選択される。二重結合を含む脂肪酸を不飽和脂肪酸という。不飽和脂肪酸の例としては、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトオレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、γ−リノレン酸(C18:3)、エイコセン酸(C20:1)、ジホモ−γ−リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、エルカ酸(C22:1)、ドコサペンタエン酸(C22:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)などが挙げられる。不飽和脂肪酸は好ましくは、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)およびγ−リノレン酸(C18:3)からなる群より選択される。脂肪酸は好ましくはミリスチン酸(C14:0)またはオレイン酸(C18:1)である。
分散安定性の観点から、脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、縮合リシノール酸が好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸がより好ましい。
ポリグリセリン酸脂肪酸エステルのエステル化度については特に限定されないが、モノエステル含有量の高い、低エステル化度のものが好ましい。
(1.3.2 酵素分解レシチン)
本発明で用いられ得る「酵素分解レシチン」とは、レシチンを主成分として含むリン脂質混合物の脂肪酸エステル部分のみをホスホリパーゼによって限定的に加水分解することによって得られるものをいう。酵素分解レシチンを本発明において使用する際に、レシチンのホスホリパーゼ分解物のみからなる酵素分解レシチンを使用してもよく、レシチンのホスホリパーゼ分解物だけでなく、種々のリン脂質のホスホリパーゼ分解物をも含む混合物を使用してもよい。酵素分解レシチンは、ホスホリパーゼによる分解後に任意の精製方法によって精製されたものであってもよい。酵素分解レシチンはまた、既存添加物名簿に記載される酵素分解レシチン、すなわち、植物レシチンまたは卵黄レシチンから得られた、ホスファチジン酸およびリゾレシチンを主成分とするものであってもよい。既存添加物名簿では、「植物レシチン」とは、アブラナまたはダイズの種子から得られた、レシチンを主成分とするものをいう。既存添加物名簿では、「卵黄レシチン」とは、卵黄から得られた、レシチンを主成分とするものをいう。
狭義の「レシチン」とは、加水分解により、脂肪酸2分子とグリセロリン酸1分子とコリン1分子とを生じるリン脂質、すなわち、ホスファチジルコリンをいう。レシチンはまた、グリセリン骨格に脂肪酸残基とリン酸基、それに結合した塩基性化合物または糖からなっていてもよい。本発明においてレシチンを使用しようとする場合、純粋なレシチンを
使用してもよく、レシチンを主成分とする混合物を使用してもよい。本明細書中では、「主成分とする」とは、その成分が、組成の好ましくは約5重量%以上、より好ましくは約10重量%以上、さらに好ましくは約15重量%以上、最も好ましくは約20重量%以上を占めることをいう。
酵素分解レシチンは、いずれもその親水基部分にリン酸基を有している。そのため、酵素分解レシチンは、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤と比較して、ヘスペレチンのような植物ステロール等の水難溶性有機化合物表面への吸着被覆力が著しく強い。そのため、酵素分解レシチンを用いると、ヘスペレチン表面に安定な吸着界面層が形成され、加熱処理を施した際にも剥離することなく、効果的に2次凝集を抑制することが可能となり、その結果として良好な分散性が得られる。
本発明で用いられ得る酵素分解レシチンとしては、一般的にはダイズ、ナタネなどの植物由来のレシチンから製造されたもの、ならびに鶏卵のような動物由来のレシチンから製造されたものが利用され得る。
本発明で用いられ得る酵素分解レシチンの例としては、植物レシチンまたは卵黄レシチンをホスホリパーゼAまたはホスホリパーゼDによって加水分解することで得られるものが挙げられる。このような酵素分解レシチンの例としては、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルイノシートルおよびリゾホスファチジルセリンを主成分とするモノアシルグリセロリン脂質混合物、ならびにホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールおよびリゾホスファチジルグリセロールが挙げられる。それらの中では、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンおよびリゾホスファチジルセリンが好ましく、リゾホスファチジルコリンがより好ましい。
レシチンの酵素分解に用いられ得るホスホリパーゼは、ホスホリパーゼAおよび/またはD活性を有するものであればよい。ホスホリパーゼは、ホスホリパーゼ活性を有すれば、ブタの膵臓などの動物起源、キャベツなどの植物起源、カビ類などの微生物起源などの任意のものに由来し得る。
酵素分解レシチンの分解率は、特に限定されない。分解率は、使用する目的に応じて適切に調整され得る。ヘスペレチンの2次凝集を抑える目的から、酵素分解レシチンの分解率は約20%〜約95%であることが好ましく、約30%〜約80%であることがより好ましい。酵素分解レシチンの分解率は、当該分野で公知の任意の方法によって測定され得る。例えば、分解率は、ホスファチジルコリンとリゾホスファチジルコリンとの比率をHPLCなどで測定することにより求められ得る。
本明細書では、「酵素分解レシチンの分解率」とは、酵素分解レシチン中のグリセリン骨格上の遊離水酸基のモル数の合計を、グリセリン骨格の総モル数の3倍で除算して100を乗ずることにより計算される。
(1.3.3 グリセリン脂肪酸有機酸エステル)
本発明で用いられ得る「グリセリン脂肪酸有機酸エステル」とは、グリセリン骨格に脂肪酸と脂肪酸以外の有機酸とがエステル結合したものをいう。グリセリン脂肪酸有機酸エステルは通常、有機酸と脂肪酸モノグリセリドのエステル反応によって得られる。グリセリン脂肪酸有機酸エステルの形成に使用され得る有機酸の例としては、酢酸、乳酸、ジアセチル酒石酸、クエン酸、コハク酸等が挙げられる。ヘスペレチンの水溶液中での安定性の観点から、クエン酸およびコハク酸が好ましい。
グリセリン脂肪酸有機酸エステルの形成に使用される脂肪酸としては、上記「1.3.1 ポリグリセリン脂肪酸エステル」において詳述した炭素数6〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が利用可能である。
(1.3.4 多糖類)
本発明の組成物が分散液の場合、本発明の分散液は、さらに多糖類を含むと、より一層安定性の高い分散液となる。このような目的で使用される多糖類の例としては、アルギン酸、アルギン酸エステル、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガムおよびペクチンが挙げられる。多糖類は、好ましくはアルギン酸エステルである。本発明の組成物が粉末混合物の場合、本発明の組成物は、アルギン酸エステルを含むことが好ましい。多糖類は、単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。多糖類の中でも、アルギン酸およびアルギン酸の誘導体であるアルギン酸エステルは、本発明の分散液の安定化に特に好適に利用でき、さらにはアルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したものは本発明の分散液に最も好適に利用できる。アルギン酸エステルのエステル化度は好ましくは約75%以上であり、最も好ましくは約80%以上である。
この多糖類の分散液への配合割合は特に限定されない。配合量が少なすぎると、分散液の分散安定性が低下する場合があり、配合量が多すぎると分散液の粘度が著しく高くなるため取り扱いに支障を来たす場合がある。分散液中での多糖類の配合量は、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上である。分散液中での多糖類の配合量は、好ましくは約5重量%以下であり、より好ましくは約1重量%以下である。本発明の組成物が粉末混合物の場合、アルギン酸エステルの配合量は、粉末を製造するための分散液への配合量として規定されるため、同様に好適な範囲が設定され得る。
(1.4 溶媒)
ヘスペレチン分散液に用いられる溶媒は、任意の溶媒であり得る。溶媒は好ましくは、水または水と混和性の任意の有機溶媒であり、より好ましくは水またはエタノールであり、最も好ましくは水である。水と有機溶媒とを混合して用いてもよい。
水と有機溶媒とを混合する場合、溶媒全体のうちの水の割合は、約50容積%以上であることが好ましく、約60容積%以上であることが好ましく、約70容積%以上であることが好ましく、約80容積%以上であることが好ましく、約90容積%以上であることが好ましく、約95容積%以上であることが最も好ましい。水と混合される有機溶媒は、1種類であっても2種類以上であってもよい。環境への影響および人体への影響などを考慮すると、溶媒は水であるかまたは主に水からなることが好ましい。用語「主に水からなる」とは、溶媒の約80容積%以上が水であることをいう。
本発明で作製される分散液は、取り扱いを容易にする程度に粘度が低いことが好ましい。
(1.5 ヘスペレチン粒子を製造する際に用いられる分散媒)
本発明のヘスペレチン分散液は、その製造時において、後述するように湿式粉砕装置を使用することが望ましい。湿式粉砕装置による処理を行うためには、上述した原料を分散させる分散媒が必要となる。分散媒は、任意の分散媒であり得る。分散媒は好ましくは、水または水と混和性の任意の有機溶媒であり、より好ましくは水またはエタノールであり、最も好ましくは水である。水と有機溶媒とを混合して用いてもよい。
水と有機溶媒とを混合する場合、分散媒全体のうちの水の割合は、約50容積%以上であることが好ましく、約60容積%以上であることが好ましく、約70容積%以上であることが好ましく、約80容積%以上であることが好ましく、約90容積%以上であることが好ましく、約95容積%以上であることが最も好ましい。水と混合される有機溶媒は、1種類であっても2種類以上であってもよい。環境への影響および人体への影響などを考
慮すると、分散媒は水であるかまたは主に水からなることが好ましい。
これらの分散媒は、ヘスペレチン粒子の製造後、ヘスペレチン分散液の製造前に蒸発させてもよく、あるいは、そのままヘスペレチン分散液の溶媒として利用されてもよい。
産業上の安全性を考慮すると、菌の繁殖を防止できる多価アルコールまたは液糖を防腐剤として分散媒に添加することが望ましい。この目的で使用できる防腐剤の例としては、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖水飴、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、およびこれらの水溶液が挙げられる。これらの防腐剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの防腐剤の中でも、ヘスペレチン分散液の調製のしやすさおよび安定性の観点から、グリセリン、還元澱粉糖水飴および果糖ブドウ糖液糖が好適に使用され得る。
(1.6 他の材料)
分散液は、必要に応じて、本発明のさらなる価値向上のために、上述の材料の作用を阻害しない範囲で、他の材料を含み得る。本発明で作製される分散液の品質の安定化のために、チャ抽出物、カテキン、トコフェロールといった抗酸化剤を含んでもよい。
(2.本発明の組成物を製造する方法)
(2.1 本発明の組成物が液体の場合)
本発明の組成物が液体の場合、本発明の組成物は、例えば、以下の方法によって製造され得る:(i)ヘスペレチン粒子の分散液と糖転移ヘスペリジンの溶液とを混合する方法;(ii)ヘスペレチン粒子の分散液に糖転移ヘスペリジンを添加する方法、(iii)ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンを分散媒に添加し、分散液を製造する方法。(i)または(ii)の方法が好ましい。ヘスペレチン粒子の分散液は、以下の方法に従って製造され得る。なお、本明細書中では、ヘスペレチン粒子の分散液をヘスペレチン分散液または分散ヘスペレチンともいう。
(2.1.1.ヘスペレチン粒子の分散液を製造する方法)
本発明のヘスペレチン粒子の分散液の調製方法は特に限定されないが、好ましくは、ヘスペレチン粒子の分散液は、ヘスペレチン原末と表面処理剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程;および該混合物を粉砕処理することにより該混合物中の該ヘスペレチン原末を粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程を包含する、方法により製造される。
粉砕処理を行う際には、ヘスペレチンのような有機物粒子を粉砕する方法として公知の任意の方法を使用することができる。粉砕処理に使用する粉砕機としても、ヘスペレチンのような有機物粒子を粉砕できる装置として公知の任意の装置を使用することができる。好ましい実施形態において、粉砕処理は、例えば、湿式粉砕機、乾式粉砕機などの磨砕機を用いた物理的粉砕方法によって行われ得る。湿式粉砕機の例としては、湿式磨砕機および対向衝突式粉砕機が挙げられる。
また、ヘスペレチン原末を粉砕してヘスペレチン分散液を得る工程においては、ヘスペレチン原末の粉砕と粉砕された微粉末の分散媒中への分散を、別々に行ってもよく、同時に粉砕と分散を行ってもよい。例えば、粉砕機において原末の粉砕を行った後に、粉砕機から粉末を取り出して、取り出した粉末を分散媒中に分散する作業を別途行ってもよい。すなわち、粉砕機として、分散を行うことができず粉砕のみを行う装置を用いて、分散については別の装置を用いて分散液を製造してもよい。また、粉砕および分散の両方を同時に行える装置を用いて、同時に粉砕および分散の両方を行ってもよい。製造の効率の点から、粉砕および分散の両方を同時に行える装置を用いて、粉砕および分散の両方を同時に行うことが好ましい。
ヘスペレチン原末の粉砕と分散を別々に行う場合、その分散を行う際には、ヘスペレチンのような有機物粒子を分散する方法として公知の任意の方法を使用することができる。分散に使用する装置としては、ヘスペレチンのような有機物粒子を分散できる装置として公知の任意の装置(例えば、分散機またはホモジナイザー)を使用することができる。
ヘスペレチン分散液が多糖類を含む場合、ヘスペレチン分散液は、例えば次のような工程で調製できる。まず、溶媒および必要に応じて防腐剤(例えば、グリセリン、液糖類など)に表面処理剤を添加し、約70℃以上に加熱してよく分散させる。次いで、予め粉体混合したヘスペレチン原末と多糖類とを、この表面処理剤分散液に加えて混合物を得る。この混合物を湿式粉砕機(例えば、湿式磨砕機または対向衝突式粉砕機)によって粉砕し、ヘスペレチン分散液を得る。この工程において、ヘスペレチン原末が湿式粉砕機でせん断力を受けた際、ヘスペレチンの表面に新たに現出する露出面に速やかに表面処理剤が吸着することが、ヘスペレチン粒子同士の凝集を阻害するために望ましい。そのため、湿式磨砕の工程では、ヘスペレチンと表面処理剤とが共存することが好ましい。このように、ヘスペレチン粒子と表面処理剤とを含む混合物を湿式粉砕機で処理することにより、ヘスペレチン粒子の表面が表面処理剤で表面処理される。
ヘスペレチン分散液の製造に用いる機器は特に限定されない。ヘスペレチンを微細な粒子とするためには、湿式磨砕機または対向衝突式粉砕機を使用することが望ましい。
湿式磨砕機とは、粉砕媒体としてガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ等を用い、粉砕室(ベッセル容器)中でディスクまたはローターを回転させることにより粉砕媒体同士を衝突させ、この粉砕室中に供給される被粉砕物スラリーに対してせん断力を生じさせ、スラリー中の固形分を粉砕する機械である。本発明で好適に用いられる粉砕媒体の例としては、アルミナビーズ、ジルコニアビーズおよびチタニアビーズが挙げられる。
粉砕媒体の粒径は特に限定されない。粉砕媒体の粒径は、好ましくは約1mm以下であり、より好ましくは約0.8mm以下であり、さらに好ましくは約0.5mm以下である。粉砕室における粉砕媒体の充填率は特に限定されない。粉砕媒体の充填率は、通常、粉砕室の有効容積に対して約50%以上であり、磨砕効率から好ましくは約70%以上であり、さらに好ましくは約80%以上である。
本発明で用いられる湿式磨砕機は特に限定されない。湿式磨砕機の例としては、一般的にコボールミル、ダイノーミル、サンドミル、レディミルなどと呼称されているものが挙げられる。本発明で用いられる湿式磨砕機は、縦型、横型、バッチ式、連続式などのいずれのタイプでも差し支えない。生産効率の観点から、連続式湿式磨砕機が推奨される。磨砕室の材質は任意の材質であり得るが、余分な異物が混入しないよう、金属製ではなくセラミック製であることが望ましい。
上記のように、湿式粉砕機は、対向衝突式粉砕機であってもよい。対向衝突式粉砕機とは、被粉砕物を含む混合液どうしを対向方向から衝突させることによって被粉砕物を粉砕してその粒径を小さくする粉砕機である。10回程度の粉砕で所望の粒径になる場合、産業的にコスト効率が高いが、それよりも多くの粉砕操作を行う必要がある場合、コスト的に見合わないことが多い。対向衝突式粉砕機で粉砕を行う場合には、酵素処理レシチンおよびアルギン酸エステルを使用し、他の表面処理剤を使用しないことが好ましい。
対向衝突式粉砕機としては、具体的には、例えば、株式会社スギノマシンの湿式微粒化装置アルティマイザーシステムなどが市販されている。アルティマイザーシステムは、対向衝突式乳化機とも呼ばれる。対向衝突式粉砕機とは、粉砕媒体(メディア)を使用せずに、被粉砕物を含む液体を超高圧に加圧し、該加圧した液体の流路を2つに分岐させ、その2つの流路を対向方向から合流させてその合流位置において被粉砕物を含む液体どうしを衝突させることにより、被粉砕物を粉砕する装置をいう。対向衝突式粉砕機は湿式微粉化装置である。超高圧下における被粉砕物を含む混合液どうしの衝突エネルギーを利用して、食品添加物や顔料、電子材料などを超微粒化、粉砕、分散および/または乳化することができる。その使用方法としては、例えば、以下のとおりである。被粉砕物(例えば、ヘスペレチン原末)を含む液体(例えば、水)を含む混合物を、対向衝突式粉砕機に投入する。粉砕機内では、この混合物を超高圧まで加圧する。加圧された混合物が2つの分岐流に分けられ、左右の流入口に設けられたノズルより中央部に向けてこの分岐流が噴出され、中央部で対向衝突する。この対向衝突の結果、被粉砕物が微粉化される。対向衝突式粉砕機で対向衝突処理を1回行うことをパス1回という。パスの回数は任意に設定され得るが、数回のパスで十分に微粉化が達成されること、およびパスの回数を増やすと工業的な効率が落ちることから、パスの回数は約10回以下であることが好ましい。パスの回数の下限は例えば、5回、6回、7回、8回または9回であり得る。パスの上限は例えば、20回、15回、14回、13回、12回または11回であり得る。
(2.2 本発明の組成物が粉末混合物の場合)
本発明の組成物が粉末混合物の場合、本発明の組成物は、例えば、以下の方法によって製造され得る:(i)ヘスペレチン粒子の分散液から作製したヘスペレチン粒子粉末と、糖転移ヘスペリジン粉末とを混合する方法;(ii)ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンを含む分散液を乾燥して、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンを含む粉末を得る方法。
ヘスペレチン粒子の分散液から粉末を作製する方法は、当該分野で公知の任意の乾燥方法であり得る。乾燥方法の例としては、スプレードライ、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥などが挙げられるが、好ましくは凍結乾燥方法である。凍結乾燥方法を使用すると、二次粒子の生成が少ないという利点がある。凍結乾燥は、当該分野で公知の凍結乾燥方法に従って行われ得る。
1つの実施形態では、本発明の粉末組成物を製造する方法は、好ましくは、以下の工程を包含し得る:対向衝突式乳化機でヘスペレチン粒子および酵素分解レシチンを含むヘスペレチン分散液を作製する工程;該ヘスペレチン分散液を凍結乾燥することにより、酵素分解レシチンで表面処理されたヘスペレチン粉末を得る工程;および該ヘスペレチン粉末と、糖転移ヘスペリジン粉末とを混合して、粉末組成物を得る工程。
別の実施形態では、本発明の粉末組成物を製造する方法は、例えば、以下の工程を包含し得る:対向衝突式乳化機でヘスペレチン粒子および酵素分解レシチンを含むヘスペレチン分散液を作製する工程;該ヘスペレチン分散液と糖転移ヘスペリジンとを混合して混合液を得る工程;および該混合液を凍結乾燥して、粉末組成物を得る工程。
(3.本発明の組成物)
本発明の組成物は、食品用または医薬用の組成物である。本明細書中では、「食品用組成物」とは、食品の原料として使用されるかまたは食品として使用されるための組成物をいう。本明細書中では、「医薬用組成物」とは、医薬品もしくは医薬部外品の原料として使用されるかまたは医薬品もしくは医薬部外品として使用されるための組成物をいう。
(3.1 本発明の組成物が液体の場合)
本発明の組成物が液体の場合、本発明の液体組成物は、表面処理剤によって処理されたヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンと溶媒とを含む。本発明の液体組成物は、ヘスペレチンを水に容易に安定的に分散させることができ、糖転移ヘスペリジンを溶解しており、かつ取り扱いが容易なように設計されている。本発明の液体組成物に用いられる表面処理剤、ヘスペレチン粒子、糖転移ヘスペリジンおよび溶媒については、上記1で説明したとおりである。本発明の液体組成物は、好ましくは、上記「2.1 本発明の組成物が液体の場合」に従って製造された液体組成物である。本発明の液体組成物は、本発明の粉末状組成物を溶媒(例えば、水)に再度分散させることによって調製された分散液であってもよい。
本発明の液体組成物中には、ヘスペレチンが安定して分散しているとともに糖転移ヘスペリジンが溶解している。「ヘスペレチンが安定して分散している」とは、ヘスペレチン分散液を室温(好ましくは約20℃)に少なくとも24時間放置した場合に、ヘスペレチンによる沈澱が実質的に観察されないことをいう。
本発明の液体組成物は、24時間静置後に沈澱が実質的に観察されない。本発明の液体組成物は、好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、なおさらに好ましくは5日間静置後に、ひときわ好ましくは6日間静置後に、いっそう好ましくは7日間静置後に、よりいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に沈澱が実質的に観察されない。
好ましくは、本発明の液体組成物は、90℃の熱水中で10分間加熱殺菌してから24時間静置後に沈澱が実質的に観察されず、さらに好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、ひときわ好ましくは5日間静置後に、いっそう好ましくは6日間静置後に、よりいっそう好ましくは7日間静置後に、さらにいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に沈澱が実質的に観察されない。
「沈澱が実質的に観察されない」とは、沈澱がまったく観察されないか、または肉眼ではほとんど観察されないか、または観察されたとしてもごくわずかであることをいう。沈澱の量は、好ましくは、ヘスペレチン分散液中に含まれるヘスペレチンの量の約10重量%以下であり、より好ましくは約1重量%以下であり、さらに好ましくは約0.1重量%
以下であり、特に好ましくは約0.05重量%以下であり、最も好ましくは約0.01重量%以下である。
本発明の液体組成物は、着色物質などを特に添加しなければ、淡い黄色〜茶色を帯びた乳白色を呈する。淡い黄色〜茶色を帯びた乳白色を呈する液体組成物においては、分散が不十分な液体組成物では、長時間静置すると、上部にある液体組成物の呈色が薄くなり、ひどい場合には透明になり、底部にある分散液の呈色が濃くなる。これに対して、本発明の液体組成物は安定しているので、長時間静置しても、液体組成物全体の呈色が実質的に均質なままである。本発明の液体組成物は、24時間静置後に、好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、なおさらに好ましくは5日間静置後に、ひときわ好ましくは6日間静置後に、いっそう好ましくは7日間静置後に、よりいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に観察しても呈色が実質的に均質である。
好ましくは、本発明の液体組成物は、90℃の熱水中で10分間加熱殺菌してから24時間静置後に観察しても呈色が実質的に均一であり、さらに好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、ひときわ好ましくは5日間静置後に、いっそう好ましくは6日間静置後に、よりいっそう好ましくは7日間静置後に、さらにいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に観察しても呈色が実質的に均質である。
「呈色が実質的に均質である」とは、液体組成物の上部の呈色と底部の呈色とが肉眼で区別がつかないことをいう。
液体組成物中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上である。液体組成物が、より希薄なヘスペレチン分散液を製造するための原液として製造される場合、この濃厚なヘスペレチン分散液中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであり得る。
液体組成物中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。例えば、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
液体組成物中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となるように、ヘスペレチン粒子の含有量に基づいて設定される。液体組成物中のヘスペレチン粒子:糖転移ヘスペリジンは、アグリコンであるヘスペレチンのモル比に換算して、好ましくは1:0.5〜1:3である。この比の下限は、例えば約1:1、1:1.5、1:2、1:2.5などであってもよい。この比の上限は、例えば約1:2.5、1:2.7、1:3などであってもよい。従って、液体組成物中の糖転移ヘスペリジンの量の下限は、例えば、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってもよく、液体組成物中の糖転移ヘスペリジンの量の上限は、例えば、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであってもよい。
液体組成物中の水の量は、好ましくは約90重量%以下であり、より好ましくは約80重量%以下であり、さらに好ましくは約70重量%以下であり、特に好ましくは約60重量%以下であり、最も好ましくは約50重量%以下である。液体組成物が、より希薄なヘスペレチン分散液を製造するための原液として製造される場合、この濃厚なヘスペレチン分散液中の水の量は、例えば、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
液体組成物中の水の量に特に下限はない。例えば、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約50重量%以上などであり得る。
本発明の液体組成物は、固形分量が低い場合、液体状を呈する。本発明の液体組成物は、固形分量が多い場合、スラリー状を呈する。スラリー状の本発明の液体組成物を水などの溶媒で薄めた場合もまた、安定したヘスペレチン分散液を得ることができる。
本発明の液体組成物中に含まれるヘスペレチンは非常に微細な粒子となっている。ヘスペレチン粒子の粒子径は微細であるほど分散安定性が高い。本発明の液体組成物は非常に濃厚でそのままでは粒度が測定できないことがあるので、そのような場合には、本発明の液体組成物を水で薄めて、より希薄な分散液を作製し、その希薄な分散液中の粒径を測定する。例えば、本発明の液体組成物を水で希釈し、例えばベックマン・コールター社の湿式粒度分布計で水中での粒度を測定した場合、平均粒子径が10μm以下であり、好ましくは1μm以下であることが望ましい。
本発明の液体組成物においては、微細なヘスペレチン粉末の周囲に表面処理剤(界面活性剤(例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステル、酵素分解レシチンなど)および安定剤(例えば、多糖類))の膜が形成されることにより、安定した分散状態が保持されていると考えられる。このようなヘスペレチン製剤の分散モデル図を図1に示す。図1の左側に、通常のヘスペレチン分散液を模式的に示す。図1の右側に、本発明の液体組成物(「分散ヘスペレチン」と示す)を模式的に示す。さらに、本発明の粉末、飲食物、医薬部外品、医薬品、皮膚外用剤、入浴剤、ペットフード、繊維、衣類などにおいても、このヘスペレチンの周囲に膜が形成された構造が保持されていると考えられる。そのため、これらにおいても、従来のヘスペレチンよりも優れた効果が発揮されると考えられる。
本発明の液体組成物は、そのまま飲食物として用いられてもよく、あるいは、より希薄なヘスペレチン分散液、飲食物などを製造するための原液として用いられてもよい。
(3.2 本発明の組成物が粉末状の場合)
本発明の組成物が粉末状の場合、本発明の粉末状組成物は、表面処理剤で処理されたヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンを含む。本発明の粉末状組成物に用いられるヘスペレチン粒子、糖転移ヘスペリジンおよび表面処理剤については、上記1で説明したとおりである。さらに、本発明の粉末は、上記1で説明したとおりの多糖類、抗酸化剤などの他の物質も含み得る。
本発明の粉末状組成物中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは、約30重量%以上であり、より好ましくは約40重量%以上であり、さらに好ましくは約50重量%以上である。本発明の粉末状組成物中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。例えば、約95重量%以下、約90重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下などであり得る。
粉末状組成物中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となるように、ヘスペレチン粒子の含有量に基づいて設定される。従って、粉末状組成物中の糖転移ヘスペリジンの量の下限は、例えば、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約50重量%以上などであってもよく、粉末状組成物中の糖転移ヘスペリジンの量の上限は、例えば、約95重量%以下、約90重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下などであってもよい。
本発明の粉末状組成物を水に添加して混合することにより、ヘスペレチン粒子が安定して分散しており、かつ糖転移ヘスペリジンが溶解している分散液を容易に得ることができる。本発明の粉末状組成物においては、水に添加して混合した場合に生成される分散液中のヘスペレチン粒子の大部分の粒径が約1μm以下である。例えば、粒度計で粒度を測定した場合に粒径が1μm以下である粒子の割合は、粒径が1μm以下である粒子の合計体積として、好ましくは約60体積%以上であり、より好ましくは約70体積%以上であり、さらに好ましくは約80体積%以上であり、特に好ましくは約90体積%以上である。特定の実施形態では、粒度計で粒度を測定した場合に粒径が0.5μm以下である粒子の割合は、粒径が0.5μm以下である粒子の合計体積として、好ましくは約60体積%以上であり、より好ましくは約70体積%以上であり、さらに好ましくは約80体積%以上であり、特に好ましくは約90体積%以上である。
粒径が1μm以下である粒子の合計体積、および粒径が0.5μm以下である粒子の合計体積は、粒度計で粒度を測定した場合に積算体積として計算されるデータから容易に算出され得る。
本発明の組成物は微粒子状のヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンを含むので、摂取した場合、1時間以内という早期にヘスペレチンの効果が発揮されるとともに、その効果が約24時間という長時間にわたって持続するという顕著に優れた効能を発揮する。
(4.本発明の組成物を含む飲食物)
本発明の飲食物は、本発明の組成物を含む。従って、本発明の飲食物は、表面処理剤で処理したヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンを含む。本発明の飲食物に用いられる表面処理剤で処理されたヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンについては、上記1で説明したとおりである。さらに、本発明の飲食物は、上記1で説明したとおりの抗酸化剤などの他の物質も含み得る。
本発明の飲食物は、任意の飲食物であり得る。飲食物は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよい。特定の実施形態では、好ましくは固体または液体である。飲食物は、好ましくは、健康食品であり、より好ましくはカプセル形態の健康食品または健康飲料であるが、これらに限定されない。健康食品は、その健康食品に含まれるヘスペレチンと同じ通常の用途に用いられ得る。健康食品の用途・効能の例としては、血流改善および冷え性改善用、肌状態改善用、コレステロール低下用、アレルギー症状改善用、ならびに抗炎症用が挙げられる。本発明の飲食物がこのような効能を有することは当該分野で公知の方法に従って確認され得る。本発明の飲食物は、摂取された場合、従来のヘスペレチン含有飲食物よりも顕著に優れた効能を発揮する。
飲食物の例としては、例えば、以下が挙げられる:即席食品(例えば、即席麺、カップ麺、レトルト食品、調理済み食品、調理済み缶詰、電子レンジ用食品、即席スープ、即席シチュー、即席みそ汁、即席吸い物、スープ缶詰、フリーズドライ食品);嗜好飲料類(例えば、炭酸飲料(サイダー、ラムネ等)、天然果汁、果汁飲料、清涼飲料、果汁入り清涼飲料水、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、薬味飲料);小麦粉食品(例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉、ギョーザの皮、春巻の皮);小麦粉食品以外の麺類(例えば、そば);菓子類(例えば、洋菓子(例えば、キャラメル、キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、カステラ、パイ、スナック、クラッカー)、和菓子(例えば、ねりきり、あんこ、羊羹、饅頭)、米菓子(例えば、煎餅、あられ、餅)、豆菓子、デザート菓子(例えば、杏仁豆腐、ゼリー、寒天)、錠菓);冷菓(例えば、アイスミルク、氷菓);基礎調味料(例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料、魚醤、ニョクマム);複合調味料(例えば、風味調味料、調理ミックス、カレーの素、たれ類、ドレッシング、麺つゆ、スパイス);油脂食品(例えば、バター、マーガリン、マヨネーズ);乳および乳製品(例えば、牛乳、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム、アイスクリーム、調製粉乳、クリーム);冷凍食品(例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品);水産加工品(例えば、水産缶詰、ペースト類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、水産練り製品(例えば、蒲鉾、ちくわ)、水産珍味類、水産乾物類、佃煮);畜産加工品(例えば、畜産缶詰、畜産ペースト類、畜肉ハム、畜産ソーセージ、畜産珍味類);農産加工品(例えば、農産缶詰、果実缶詰、ジャム、マーマレード、果実ソース、漬物、煮豆、農産乾物類、シリアル);ベビーフード、離乳食;ふりかけ、お茶漬けのり;サプリメント、ドリンク剤。
本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。
本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重
量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
飲食物中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となるように、ヘスペレチン粒子の含有量に基づいて設定される。従って、飲食物中の糖転移ヘスペリジンの量の下限は、例えば、約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の飲食物中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってもよく、飲食物中の糖転移ヘスペリジンの量の上限は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであってもよい。
1日当たりのヘスペレチン摂取量が、目的の効果を得るのに充分な量となり、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となるのであれば、飲食物中のヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンの含有量および1日当たりの飲食物の摂取量は適宜設定され得る。1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約0.1mg/kg(体重)以上であり、より好ましくは約0.5mg/kg(体重)以上であり、さらに好ましくは約1mg/kg(体重)以上であり、最も好ましくは約5mg/kg(体重)以上である。特定の実施形態では、例えば、10mg/kg(体重)以上、20mg/kg(体重)以上、30mg/kg(体重)以上、40mg/kg(体重)以上または50mg/kg(体重)以上であってもよい。1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約200mg/kg(体重)以下であり、より好ましくは約150mg/kg(体重)以下であり、さらに好ましくは約100mg/kg(体重)以下であり、最も好ましくは約50mg/kg(体重)以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg/kg(体重)以下、30mg/kg(体重)以下、20mg/kg(体重)以下、10mg/kg(体重)以下または5mg/kg(体重)以下であってもよい。ここで、ヘスペレチン摂取量は、ヘスペレチン粒子として摂取される量と糖転移ヘスペリジンとして摂取される量の合計から算出される。
本発明の飲食物を製造するには特別な工程を必要とせず、飲食物の製造工程の初期において本発明の組成物を飲食物の原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。本発明の組成物を使用して本発明の飲食物を製造することが好ましい。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を飲食物の種類および性状に応じて選択する。本発明の飲食物は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
飲食物に本発明の組成物を配合することにより、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などの予防および治療に有効な飲食物が得られる。本発明の飲食物はまた、肌の保湿を高め、乾燥肌、肌荒れ、アレルギー、アトピー性皮膚炎等の症状改善にも有効である。本発明の飲食物はまた、肌のはりを向上させるためにも有効である。本発明の飲食物はまた、血流を促進することにより体温を回復させる作用を発揮し得る。本発明の飲食物はまた、肝臓での中性脂肪の合成を抑え、また、分解を促進することで、血中の中性脂肪を低下させる作用を発揮し得る。
(5.本発明の組成物の用途)
本発明の組成物は、飲食物、医薬部外品、医薬品、皮膚外用剤、入浴剤、飼料、ペットフード、繊維、衣類等に幅広く利用できる。本発明の組成物は好ましくは食品用または医薬用組成物である。本発明の組成物の用途はこれらに限定されない。
本発明の組成物を利用し得る飲食物の好ましい具体例は、例えば、上記「4.本発明の組成物を含む飲食物」に記載の飲食物である。
本発明の組成物は特に、長期間保存される飲食物への用途に適している。本発明の組成物が使用される飲食物の保存期間は好ましくは約1週間以上であり、より好ましくは約2週間以上であり、さらに好ましくは約1ヶ月以上であり、特に好ましくは約3ヶ月以上であり、最も好ましくは約6ヶ月以上である。本発明の組成物が使用される飲食物の保存期間に特に上限はなく、例えば、約5年以下、約3年以下、約2年以下、約1年以下、約6ヶ月以下、約3ヶ月以下などであり得る。
本発明の粉末は特に、分散液を作製した後短期間保存されて、その後摂取することが想定される用途(例えば、粉末飲料)、消費期限が比較的短い製品への用途(例えば、乳飲料などのチルド品)に適している。本発明の粉末が使用される飲食物の保存期間に特に下
限はなく、例えば、約12時間以上、約1日以上、約2日以上、約3日以上、約4日以上、約5日以上などであり得る。本発明の粉末が使用される飲食物の保存期間は、好ましくは約2週間以下であり、より好ましくは約10日間以下であり、さらに好ましくは約1週間以下である。
(5.1 医薬部外品および医薬品)
本発明の組成物は好ましくは医薬用組成物である。本発明の医薬用組成物を利用し得る医薬部外品および医薬品は、任意の医薬部外品および医薬品であり得る。本発明の医薬部外品および医薬品は、表面処理剤で表面処理されたヘスペレチン粒子と、糖転移ヘスペリジンとを含む。本発明の医薬部外品および医薬品に用いられるヘスペレチン粒子、糖転移ヘスペリジンおよび表面処理剤については、上記1で説明したとおりである。さらに、本発明の医薬部外品および医薬品は、上記1で説明したとおりの多糖類、抗酸化剤などの他の物質も含み得る。本発明の医薬部外品および医薬品においては、ヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンは、有効成分として配合されることが好ましい。
本発明の医薬部外品および医薬品は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよい。本発明の医薬部外品および医薬品は、好ましくは液体である。
本発明の医薬部外品および医薬品は、経口投与または非経口投与(例えば、血管内投与および経皮投与)によって投与され得る、本発明の医薬部外品および医薬品の剤形の例としては、散剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤などが挙げられる。
本発明の医薬部外品および医薬品が経口投与用のものである場合、本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約5
0重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
経口投与用の医薬品または医薬部外品中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となるように、ヘスペレチン粒子の含有量に基づいて設定される。従って、経口投与用の医薬品または医薬部外品中の糖転移ヘスペリジンの量の下限は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の経口投与用の医薬部外品および医薬品中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。本発明の経口投与用の医薬部外品および医薬品中の糖転移ヘスペリジンの含有量に特に上限はない。本発明の経口投与用の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
本発明の医薬部外品および医薬品が経皮投与用のものである場合、本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の経皮投与用の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。本発明の経皮投与用の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の経皮投与用の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
経皮投与用の医薬品または医薬部外品中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となるように、ヘスペレチン粒子の含有量に基づいて設定される。従って、経皮投与用の医薬品または医薬部外品中の糖転移ヘスペリジンの量の下限は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の経皮投与用の医薬部外品および医薬品中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。本発明の医薬部外品および医薬品中の糖転移ヘスペリジンの含有量に特に上限はない。本発明の経皮投与用の医薬部外品および医薬品中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
1日当たりのヘスペレチン摂取量が、目的の効果を得るのに充分な量であり、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となる限り、本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンの含有量および1日当たりの医薬部外品および医薬品の摂取量は適宜設定され得る。
医薬部外品および医薬品に本発明の組成物を配合することにより、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などの予防および治療に有効な医薬部外品および医薬品が得られる。本発明の医薬部外品および医薬品はまた、肌の保湿を高め、乾燥肌、肌荒れ、アレルギー、アトピー性皮膚炎等の症状改善にも有効である。本発明の医薬部外品および医薬品はまた、肌のはりを向上させるためにも有効である。本発明の医薬部外品および医薬品はまた、血流を促進することにより体温を回復させる作用を発揮し得る。本発明の医薬部外品および医薬品はまた、肝臓での中性脂肪の合成を抑え、また、分解を促進することで、血中の中性脂肪を低下させる作用を発揮し得る。
医薬部外品および医薬品が経口投与されるものである場合、1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約0.1mg/kg(体重)以上であり、より好ましくは約0.5mg/kg(体重)以上であり、さらに好ましくは約1mg/kg(体重)以上であり、最も好ましくは約5mg/kg(体重)以上である。特定の実施形態では、例えば、10mg/kg(体重)以上、20mg/kg(体重)以上、30mg/kg(体重)以上、40mg/kg(体重)以上、または50mg/kg(体重)以上であってもよい。1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約200mg/kg(体重)以下であり、より好ましくは約100mg/kg(体重)以下であり、さらに好ましくは約150mg/kg(体重)以下であり、最も好ましくは約50mg/kg(体重)以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg/kg(体重)以下、30mg/kg(体重)以下、20mg/kg(体重)以下、10mg/kg(体重)以下または5mg/kg(体重)以下であってもよい。ここで、ヘスペレチン摂取量は、ヘスペレチン粒子として摂取される量と糖転移ヘスペリジンとして摂取される量の合計から算出される。
医薬部外品および医薬品が経皮投与されるものである場合、1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約2μg以上であり、より好ましくは約3μg以上であり、さらに好ましくは約5μg(体重)以上であり、最も好ましくは約10μg以上である。1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約200mg以下であり、より好ましくは約150mg以下であり、さらに好ましくは約100mg以下であり、最も好ましくは約50mg以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg以下、30mg以下、20mg以下、10mg以下または5mg以下であってもよい。ここで、ヘスペレチン摂取量は、ヘスペレチン粒子として摂取される量と糖転移ヘスペリジンとして摂取される量の合計から算出される。
(5.2 皮膚外用剤)
本発明の組成物は、好ましくは、皮膚外用剤に用いられる。
本明細書において、用語「皮膚外用剤」とは皮膚に接触させることにより、所望の効果を達成する、皮膚に対して使用する製剤をいう。特に長時間継続的に皮膚に接触させる用途(例えば、1時間以上継続的に皮膚に接触させる用途、または5時間以上継続的に皮膚に接触させる用途)に本発明は有効である。
(5.2.1 皮膚外用剤の種類)
皮膚外用剤の好ましい例は、化粧料である。化粧料の好ましい例としては、スキンケア化粧料が挙げられる。化粧料の具体的な例としては、スキンケア化粧料(例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、ジェル、パック剤(例えば、フェイスパック)、ハンドクリーム、レッグクリーム、ネッククリーム、ボディローションなど)、化粧品(例えば、ファンデーション、メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム、アイカラー、チークカラー、アイシャドウ、口紅、リップクリーム、頬紅など)、頭髪化粧料(養毛剤、育毛剤、ヘアーリキッド、ヘアートニック、パーマネントウェーブ剤、ヘアカラー、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パックなど)、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、洗顔料、シェービングクリーム、グロス、リップクリーム、ケーキなどが挙げられる。特に、保湿効果が望まれる用途に本発明は有効である。例えば、スキンケア化粧料に本発明は有効である。本発明は、長時間皮膚に接触させる用途に特に有効であるが、洗顔料やシャンプーなどのように、短時間で使用した後に洗い流してしまうような用途においても本発明は有効である。
上述したとおり、化粧品も化粧料に含まれる。化粧品としては、清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品、メークアップ化粧品、芳香化粧品、日焼け用化粧品、日焼け止め用化粧品、爪化粧品、アイライナー化粧品、アイシャドウ化粧品、チーク、口唇化粧品、口腔化粧品などに分類され、そのいずれの用途にも本発明は有効である。
皮膚外用剤に本発明の組成物を配合することにより、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などの予防および治療に有効な皮膚外用剤が得られる。本発明の皮膚外用剤はまた、肌の保湿を高め、乾燥肌、肌荒れ、アレルギー、アトピー性皮膚炎等の症状改善にも有効である。本発明の皮膚外用剤はまた、肌のはりを向上させるためにも有効である。本発明の皮膚外用剤はまた、血流を促進することにより体温を回復させる作用を発揮し得る。本発明の皮膚外用剤はまた、肝臓での中性脂肪の合成を抑え、また、分解を促進することで、血中の中性脂肪を低下させる作用を発揮し得る。
本発明の皮膚外用剤の剤形の例としては、軟膏、増粘ゲル系、ローション、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、固形状、シート状、パウダー状、ジェル状、ムース状およびスプレー状が挙げられる。メーク落としパックなどのように、皮膚外用剤を布等に含浸させた形態の製品としてもよい。
皮膚外用剤の剤形をローション、乳液、増粘ゲル系などとする場合、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ)抽出物、褐藻粉末などの植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、ブルランなどの微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンなどの動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシデンプンなどのデンプン類、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリルイミドなどのアクリル系高分子、グリチルリチン酸やアルギン酸などの有機系増粘剤、ベントナイト、ヘクトライト、ラボナイト、珪酸アルミニウムマグネシウム、無水珪酸などの無機系増粘剤などからなる水溶性増粘剤と、アルコールのうち、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールとを配合することが効果を増大させる点で好ましい。
(5.2.2.補助成分)
本発明の皮膚外用剤は、本発明の組成物に加えて、補助成分を含み得る。本発明の組成物と少なくとも1種類の補助成分とを併用することにより、皮膚外用剤における肌の保湿効果を高めたり、乾燥肌および肌荒れを改善したり、肌の弾力およびハリを改善したり、美白効果を改善することができる。以下に本発明に用いる補助成分について説明する。
これらの補助成分は下記の効果の他に、薬剤としての安定性や安全性を高める効果を兼ねているものもある。いずれの補助成分も、下記の配合量の範囲であれば、本発明の組成物と併用した場合、皮膚外用剤中のヘスペレチンおよび糖転移ヘスペリジンに影響を及ぼすことがなく、経時安定性も良好で、高い保湿効果や美白効果を発揮することができる。期待される効果の程度によっては、増減することもできる。なお、下記の補助成分は、少なくとも一種、すなわち一種又は2種以上の物質を組み合わせて用いることができる。
補助成分は、好ましくは、保湿成分、美白成分、紫外線吸収剤、抗炎症剤、細胞賦活化剤および酸化防止剤からなる群より選択される。
(5.2.2.1 保湿成分)
本明細書では、用語「保湿成分」とは、皮膚、毛髪などに水分を与え乾燥を防止する目的で用いる吸収性の高い物質、もしくは、コラーゲン誘導効果を有する化合物をいう。
保湿成分の例としては、以下が挙げられる:アスコルビン酸及びその誘導体、アスコルビン酸以外のビタミン類、ピリドキシンの誘導体、α−トコフェロールの誘導体、パントテン酸誘導体、糖及び糖誘導体、アミノ酸類及びその誘導体、多価アルコール、フェノール及びその誘導体、コラーゲン類、ヒドロキシカルボン酸及びその塩、ハイドロキシサリチル酸配糖体、ハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルの配糖体、ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体、カフェイン酸及びその誘導体、生薬エキス類、天然エキス類、胎盤抽出物、油溶性甘草抽出物、セラミド類、セラミド類似構造物、粗糖抽出物、糖蜜抽出物、菌糸体培養物及びその抽出物、尿素、ヒノキチオール、イオウ、アゼライン及びその誘導体、ビタミンE−ニコチネートとジイソプロピルアミンジクロロアセテート、海洋深層水、ならびにアルカリ単純温泉水。
(5.2.2.2 美白成分)
本明細書では、用語「美白成分」とは、メラニン色素の増加した皮膚部位に使用することにより、安全にメラニン色素の減少を誘導できる成分をいう。
美白成分の例としては、以下が挙げられる:チロシナーゼ阻害剤、エンドセリン拮抗剤、α−MSH阻害剤、α−アルブチン、アルブチン及びその塩およびその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、エラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩、コウジ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、ノルジヒドログアイアレチン酸、テプレノン、アラントイン、アミノエチル化合物、アルキレンジアミンカルボン酸誘導体、ベタイン誘導体、アシルメチルタウリン、ヘデラコサイド、ギムネマサポニン、ビートサポニン、γ−ピロン配糖体、ビフェニル化合物、亜硫酸水素ナトリウム、フィブロネクチン、植物抽出液類ならびにフェノール及びその誘導体。
(5.2.2.3 紫外線吸収剤)
本明細書では、用語「紫外線吸収剤」とは、有機紫外線吸収剤とも言い、紫外線を吸収し、人体に影響の少ない赤外線、可視光線等に変換して放出する化合物をいう。
紫外線吸収剤は従来の皮膚外用剤に汎用されている任意の紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは0.5重量%以上である。紫外線吸収剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約10重量%以下であり、好ましくは約8重量%以下である。
紫外線吸収剤の例としては、以下が挙げられる:安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、およびその他の紫外線吸収剤からなる群より選択される。
(5.2.2.4 抗炎症剤)
本明細書では、用語「抗炎症剤」とは、ある特定局部の炎症過程を抑えるという特性がある化合物をいう。
抗炎症剤の配合量は、抗炎症剤の種類により異なり、一律に決められないが、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、好ましくは約1重量%以下である。
抗炎症剤の例としては、以下が挙げられる:酸化亜鉛、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムなどのグリチルリチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、β−グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウムなどのグリチルレチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、トラネキサム酸、コンドロイチン硫酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ならびに各種微生物及び動植物の抽出物。
(5.2.2.5 細胞賦活化剤)
本明細書では、用語「細胞賦活化剤」とは、細胞の増殖を促進する作用を有する物質をいう。細胞賦活化剤の配合量は細胞賦活化剤の種類により異なるが、通常、皮膚外用剤に対して0.01〜5重量%である。
細胞賦活化剤の例としては、以下が挙げられる:CoQ10デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、サイクリックAMP、サイクリックGMP、フラビンアデニンヌクレオチド、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、キサンチン及びそれらの誘導体、カフェイン、テオフェリンおよびその塩、レチノール及びパルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等のレチノール誘導体、レチナール及びデヒドロレチナール等のレチナール誘導体、カロテンなどのカロテノイド及びビタミンA類、チアミンおよびチアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩等のチアミン塩類、リボフラビンおよび酢酸リボフラビンなどのリボフラビン塩類、ピリドキシンおよび塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン塩類、フラビンアデニンヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸およびニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸誘導体、コリン類などのビタミンB類、γ−リノレン酸およびその誘導体、エイコサペンタエン酸及びその誘導体、エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩、グリコール酸、コハク酸、乳酸、サリチル酸などの有機酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩。
(5.2.2.6 酸化防止剤)
本明細書では、用語「酸化防止剤」とは、製品中の成分の酸化を抑制するために添加される成分をいう。
酸化防止剤の含有量は、酸化防止剤の成分の種類により異なり、一律に決められないが、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、好ましくは約10重量%以下である。植物抽出物等を抽出液のまま用いる場合は乾燥固形分換算の量である。
(5.2.3.他の成分)
本発明の皮膚外用剤には上記した成分の他に、通常化粧品や医薬品などの皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば必要に応じて通常皮膚外用剤に配合される添加成分、例えば低級アルコール類、シリコーン類、油脂類、エステル油剤、ステロール類及びその誘導体、炭化水素類等の油性成分、油分、酸化防止剤、界面活性剤、保湿剤、湿潤材、香料、水、色剤、粉末、薬剤、キレート剤、pH調整剤、乳化剤、可溶化剤、増粘剤、ゲル化剤、防腐剤、殺菌剤、酸およびアルカリ、紫外線吸収剤、抗炎症剤、美白剤、溶剤、角質剥離および溶解剤、消炎剤、清涼剤、収瞼剤、高分子粉体、ヒドロキシ酸、ビタミン類及びその誘導体、糖類及びその誘導体、有機酸類、酵素類、無機粉体類、などを必要に応じて適宜配合することができるが、これらは本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で使用されなければならない。
このように、乳液、化粧水、クリーム、美容液、ファンデーション、マスク、シャンプー、洗顔料などの化粧品、医薬部外品や医薬品などの皮膚外用剤に本発明の組成物を配合することにより、保湿効果やコラーゲン産生促進効果を高める皮膚外用剤が実現される。また、本発明の組成物と他の保湿成分やコラーゲン産生促進効果を有する成分とを併用するとさらに効果的である。
本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。
本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
本発明の皮膚外用剤中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、ヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとの量比が好適な範囲となるように、ヘスペレチン粒子の含有量に基づいて設定される。従って、皮膚外用剤中の糖転移ヘスペリジンの量の下限は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の皮膚外用剤中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。本発明の皮膚外用剤中の糖転移ヘスペリジンの含有量に特に上限はない。本発明の皮膚外用剤中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
本発明の皮膚外用剤の1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約2μg以上であり、より好ましくは約3μg以上であり、さらに好ましくは約5μg(体重)以上であり、最も好ましくは約10μg以上である。1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約200mg以下であり、より好ましくは約150mg以下であり、さらに好ましくは約100mg以下であり、最も好ましくは約50mg以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg以下、30mg以下、20mg以下、10mg以下または5mg以下であってもよい。ここで、ヘスペレチン塗布量は、ヘスペレチン粒子として塗布される量と糖転移ヘスペリジンとして塗布される量の合計から算出される。
(5.3 繊維または衣類)
本発明の組成物はまた、本発明の組成物を繊維材料に混合したり、繊維に含浸させたり、または布帛の表面に塗布したりすることにより、その繊維または布帛から製造した衣類(例えば、肌着など)と皮膚とが接触したときにヘスペレチンおよび糖転移ヘスペリジンが経皮吸収されるような利用方法におけるヘスペレチンおよび糖転移ヘスペリジンを含む衣類の製造にも用いられ得る。
本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。
本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
本発明の繊維または衣類中の糖転移ヘスペリジンの含有量は、ヘスペレチン粒子の含有量に基づいて設定される。従って、本発明の繊維または衣類中の糖転移ヘスペリジンの量の下限は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってもよく、本発明の繊維または衣類中の糖転移ヘスペリジンの量の上限は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであってもよい。
本発明の組成物を含むこれらのものは、身体に利用した場合、従来のヘスペレチンを含むものよりも顕著に優れた効能を発揮する。
(5.4 飼料)
本発明の飼料は、本発明の組成物を含む。従って、本発明の飼料は、表面処理剤で処理したヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンを含む。本発明の飼料に用いられる表面処理剤で処理されたヘスペレチン粒子および糖転移ヘスペリジンについては、上記1で説明したとおりである。さらに、本発明の飼料は、上記1で説明したとおりの抗酸化剤などの他の物質も含み得る。
本発明の飼料は、任意の飼料であり得る。飼料は、家畜飼料であってもよく、ペットフードであってもよい。飼料は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよい。
(6.本発明の組成物の吸収性の確認方法)
本発明の組成物は、微粒子状のヘスペレチン粒子と糖転移ヘスペリジンとを好適に調整された比率で含むため、体内に摂取した場合に、単なるヘスペレチン粉末、安定でない従来のヘスペレチン分散液などと比較して顕著に吸収性が向上しており、さらに、ヘスペレチン代謝物を長時間血中に保つことができる。
本発明の組成物の吸収性は、当該分野に公知の方法を用いて確認され得る。本発明の組成物の吸収性は、例えば、以下のようにして測定される。組成物を経口摂取後、経時的に採血し、血清を分離する。次いで、血清に対し、スルファターゼ、グルクロニダーゼを含む溶液を添加して反応させた後、アセトニトリル/水(50:50)を添加して遠心分離し、上清を濃縮遠心により乾固する。これをアセトニトリル/水(50:50、v/v)で溶解し、攪拌した後、ソニケーションし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけて電気化学検出器で検出することにより、得られた血清中のヘスペレチン誘導体量を定量する。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(製造実施例1:分散ヘスペレチン粉末の製造)
水79kgに、市販のヘスペレチン原末(平均粒径36μm程度の粉末;純度90重量%)19kg(分散液の合計重量の19重量%)、界面活性剤である酵素分解レシチン(太陽化学株式会社製;商品名サンレシチンA−1;酵素分解レシチンの含有量33.3%;ホスホリパーゼA2により分解;分解率50%以上)0.5kg(分散液の合計重量の0.5重量%)およびアルギン酸エステル(株式会社キミカ製;商品名キミロイドNLS−K;アルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したもの;エステル化度80%)1.0kg(分散液の合計重量の1.0重量%)を添加し、80℃で均一に攪拌した。得られた約100kgの混合液を対向衝突式乳化機であるアルティマイザー(株式会社スギノマシン製)に投入し、245MPaの条件下で、混合液の流路を2流路に分岐させ、混合液のおよそ半分ずつをそれぞれの流路に流し、その2つの流路を対向方向(すなわち、180度の方向)から再度合流させて、その合流する部分で混合液どうしを対向衝突させた。合流した混合液のおよそ半分ずつを再度、2つの流路のそれぞれに流し、その2つの流路を対向方向(すなわち、180度の方向)から再度合流させて混合液どうしを対向衝突させる工程を繰り返した。この高圧下で約50kgの混合液と約50kgの混合液とを対向衝突させる工程を10回繰り返して(すなわち、パス10回)、ヘスペレチン分散液を得た。このヘスペレチン分散液を凍結乾燥法により乾燥して、分散ヘスペレチン粉末を得た。
この分散ヘスペレチン粉末を測定時に水で適宜希釈して堀場製作所製のLaser Scattering Particle Size Distribution Analyzer Partica LA−950にて粒度を測定した。結果を図2および表1に示す。
この結果、分散液中の粒子の平均粒子径は約0.48μmであり、粒径が0.510μm以下の粒子の割合が約70体積%であった。
(製造実施例2:本発明のカプセル剤の製造)
製造実施例1で製造した分散ヘスペレチン粉末と市販の糖転移ヘスペリジン(商品名:αGヘスペリジンPA;江崎グリコ株式会社製;ヘスペリジンモノグルコシド約90重量%と糖転移されていないヘスペリジン約10重量%を含む;粉末状)と、賦形剤として澱粉、微粒酸化ケイ素、および流動性向上剤としてのシュガーエステルとを混合し、カプセルに入れることにより、1カプセルあたり320mgのカプセル剤(内容物260mg;カプセルの重量60mg)を製造した。このカプセル剤は、1カプセルあたり、分散ヘスペレチン粉末73mg(ヘスペレチン68mg)と糖転移ヘスペリジン140mgとを含んでいた。
(評価例1:ヒトでのヘスペレチンの吸収性試験)
糖転移ヘスペリジンと分散ヘスペレチンは、いずれも腸管で吸収される際には、ヘスペレチンとなり、血中ではグルクロン酸や硫酸で抱合されることが明らかになっている。糖転移ヘスペリジンを摂取した場合と分散ヘスペレチンを摂取した場合とで血中に得られるヘスペレチン代謝物の構造は同じであるが、血中吸収動態は異なる。微粒子化した分散ヘスペレチンは、摂取30分後〜1時間後に血中濃度が最大となる(図3(A)を参照)のに対し、糖転移ヘスペリジンは摂取8時間後に血中濃度が最大になる(図3(B)を参照)。分散ヘスペレチンと糖転移ヘスペリジンの量を調整して摂取することにより、摂取してから短時間で効果が発揮され、しかもその効果が長期にわたって持続することを期待して実験を行った。
実際に摂取した場合の血中ヘスペレチン代謝物の濃度およびその効果について調べた。
製造実施例2で製造したカプセル剤1粒を、健常者3名に経口単回摂取させた。摂取前、摂取30分後、1、4、6、8、10、12、14、20、および24時間後に採血し、遠心分離により血漿を分離した。採取した血漿試料中のヘスペレチン誘導体量を定量するために、グルクロニダーゼとサルファターゼを反応させ、アセトニトリル/水(50:50 v/v)メタノールで抽出後、乾固して固体を得た。この固体を少量のアセトニトリル/水(50:50 v/v)で溶解し、HPLCにかけ分析を行った。それぞれの血漿試料中のヘスペレチン濃度を、ヘスペレチンを標準として換算し、グラフの0時間〜24時間の曲線下面積(AUC)を計算した。結果を図4に示す。
このように、糖転移ヘスペリジン140mgと分散ヘスペレチン(ヘスペレチン68mgを含む)が入ったカプセルを摂取して、ヘスペレチン代謝物の血中濃度を測定することにより、ヘスペレチン代謝物の血中濃度が長時間維持されていることを確認した。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。