JP7328485B2 - ウナギ仔魚養殖用飼料および養殖装置 - Google Patents
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Description
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、レプトセファルスからシラスウナギへの成長期間における生存率を向上させ、ウナギの完全養殖の実用化に貢献する技術を提供することである。
かかる養殖用飼料は、水面に浮遊したり、水底に沈殿したりすることなく、飼育水中で分散・滞留した状態が長期間維持される。これによって、飼育水中でマリンスノー態様を再現することができるため、積極的な捕食行動ができないレプトセファルスに適切に飼料を供給することができる。したがって、ここに開示される養殖用飼料によると、栄養不良によるレプトセファルスの死亡を抑制し、シラスウナギへの成長期間における生存率を向上させることができるため、ウナギの完全養殖の実用化に大きく貢献できる。また、かかる養殖用飼料は、水槽の壁面に付着して水質が悪化することを抑制することもできるため、水槽の清掃や水交換の頻度を減らすという観点からも好適である。
一例として、上述した平均粒子径、増粘多糖類、比重の3つの要素を適切に調節にすることによって、少なくとも48時間後に飼育水中で分散・滞留する養殖用飼料を得ることができる。これにより、マリンスノーを適切に再現し、レプトセファルスへ好適に飼料を供給することができる。また、本態様における養殖用飼料は、仔魚の口径(典型的には、100μm程度)を考慮して、平均粒子径が60μm以下の範囲に調節されているため、より適切な摂食行動を促すことができる。
上述の通り、レプトセファルスは、海水域に生息するため、海水を再現した環境で飼育することが求められる。一般的な海水の比重は1.023程度であり、水温や成分によって変動し得るため、養殖用飼料の比重を1.015以上1.03以下の範囲内に調節することによって、水中で分散・滞留状態を長期間維持することができる。
これにより、養殖用飼料が水中へ溶解することを適切に防止し、分散・滞留する状態をより長期間維持することができる。
これによって、好適な栄養を仔魚に供給し、栄養不良による死亡をより好適に抑制することができる。
上記構成の養殖装置では、循環ポンプを稼働させることによって、側面流入口によって形成される横方向の流れと、底面流入口によって形成される縦方向の流れとが混合した複雑な水流が水槽内に形成される。これによって、生息域に似た水流を生じさせ、上述した養殖用飼料をより好適に分散・滞留させ、マリンスノーにより近似した環境を再現することができる。
これによって、横方向と縦方向が混合した複雑な水流をより効果的に生じさせることができる。
これによって、側面流入口からの水流に乗せて水槽内に養殖用飼料を供給できるため、養殖用飼料を水槽内でより好適に分散・滞留させることができる。
これによって、飼料投入部の内部で養殖用飼料を分散させることができるため、養殖用飼料が好適に分散した水流を水槽内に供給できる。
ここに開示される養殖装置では、底面流入口によって、水底から水面に向かう縦方向の水流が生じている。この底面流入口の近傍に流出口を設けることによって、水槽外部へ仔魚が流出することを抑制できる。
これらの水質改善に寄与する装置を流出口から循環ポンプの循環ラインに設けることによって、水槽内の飼育水の水質を好適な状態に維持することが容易になる。
ここに開示されるウナギ仔魚養殖用飼料は、飼育水に投与してから少なくとも48時間後に飼育水中で分散・滞留していることを特徴とする。このように、水面に浮遊したり、水底に沈殿したりすることなく、飼育水中で長期間分散・滞留することによって、マリンスノー態様を再現し、レプトセファルスに適切な摂食行動をとらせることができる。このため、かかる養殖用飼料によると、栄養不良によるレプトセファルスの死亡を抑制し、ウナギの完全養殖の実用化に貢献することができる。
本実施形態に係る養殖用飼料は、微細な飼料粒からなる粉末状の飼料である。この粉末状飼料の平均粒子径が大きくなり過ぎると分散性が低下して飼料が水底に沈殿しやすくなる。また、レプトセファルスの口の大きさは100μm程度であり、これを超える大きさの飼料を投入しても、適切な摂餌行動をとることが困難になる。一方、平均粒子径が小さくなり過ぎると、水面に浮遊する飼料が生じやすくなる。さらに、平均粒子径が小さくなるに従って飼料と飼育水との接触面積が増加するため、飼育水に飼料が溶解しやすくなる。また、平均粒子径が30μmを下回る養殖用飼料は、作製が難しく、安定的な供給が困難である。本実施形態に係る養殖用飼料は、上述の点を考慮して飼育水中に分散・滞留させるために、平均粒子径が所定の範囲内に調節されている。なお、生産効率を考慮すると、上記養殖用飼料の平均粒子径の下限は、30μm以上が好ましく、35μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましく、45μm以上が特に好ましい。一方、レプトセファルスの食道の径は口よりも小さいため、摂食した飼料が容易に胃まで届くようにするという観点から、養殖用飼料の平均粒子径の上限は、60μm以下が好ましく、55μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書における「平均粒子径」は、顕微鏡観察において対物ミクロメーターと接眼ミクロメーターを用いて、複数の視野の各々において所定の個数の粒子(例えば、10の視野で5個ずつ)の粒子径を測定し、その平均値を算出することによって求めることができる。
本実施形態に係る養殖用飼料は、飼育水に対して不溶性の増粘多糖類を含有する。これによって、水中への養殖用飼料の溶解を防止し、長期間の分散・滞留が可能になる。増粘多糖類は、飼育水の水質を考慮した上で、従来公知の増粘多糖類の中から適宜選択することができる。かかる増粘多糖類の一例として、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、マンナン、メチルセルロース、寒天、ジェランガム、プルラン、澱粉、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩類、アラビアガム、キトサン、デキストリン、可食性水溶性セルロースなどが挙げられる。これらの中でも、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガムは、養殖用飼料が水中へ溶解することを適切に防止し、分散・滞留する状態をより長期間維持することができるため好適である。例えば、図1に示すように、カラギーナンを添加した場合、カラギーナンに飼料粒が被覆されて、寒天状の養殖用飼料を得ることができ、飼育水への溶解が好適に防止されることが確認されている。かかる寒天状の養殖用飼料は、例えば、次の手順に従って作製することができる。先ず、飼料粉末にカラギーナンを添加しながら加熱し、固形化するまで自然冷却する。その後、ゲル状の飼料を真空凍結乾燥機でフリーズドライし、上述した粒子径を有する粉体になるまで粉砕処理を行う。なお、本実施形態に係る養殖用飼料は、上述した増粘多糖類の中から一種のみを選択して使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。
次に、本実施形態に係る養殖用飼料は、飼育水と同程度の比重を有するように比重が調節されている。これによって、投入した飼料が水面に浮遊することや、水底に沈殿することを防止し、長期間の分散・滞留に貢献することができる。この養殖用飼料の比重は、飼育環境に応じて適宜変更される。例えば、ウナギの仔魚(レプトセファルス)は、自然界において海水域に生息するため、海水を再現した環境で飼育することが求められる。そして、一般的な海水の比重は、1.023程度であり、水温や成分によって変動し得る。このため、レプトセファルスを飼育する際には、飼育環境の水質や水温を考慮し、飼料の比重を1.015以上1.03以下の範囲内に調節することが好ましい。これによって、飼料をより好適に分散・滞留させることができる。なお、養殖用飼料の比重は、飼育水の比重と完全に同一である必要はない。すなわち、本明細書における「比重が同程度」とは、短期的な飼育環境の変化や飼料の製造環境の違いなどによって、飼育水の比重と養殖用飼料の比重との間に、本発明の効果に影響しない程度の僅かな誤差が生じた場合を包含する。具体的には、本明細書における「比重が同程度」とは、飼育水の比重と養殖用飼料の比重との誤差が±0.005の範囲内にある場合を包含する。なお、飼育水への分散性・滞留性をより好適に向上させるという観点からは、上記誤差が±0.001の範囲内であることが好ましく、±0.0005の範囲内であることがより好ましい。
次に、ここに開示されるウナギ仔魚養殖用飼料を使用した種苗生産に好適な養殖装置について説明する。図3は本実施形態に係る養殖装置を模式的に示す斜視図である。図4は本実施形態に係る養殖装置の底面流出口近傍を模式的に示す平面図である。図5は本実施形態に係る養殖装置の側面流出口近傍を模式的に示す側面図である。図6は本実施形態に係る養殖装置を模式的に示すブロック図である。なお、図3~図5中の符号Xは「幅方向」を示し、符号Yは「奥行方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。但し、これらの方向は、説明の便宜上定めたものであり、本実施形態に係る養殖装置1の設置方向を限定することを意図したものではない。
図3に示すように、本実施形態に係る養殖装置1は、水槽10と、流出口20と、流入口30、40と、循環ポンプ50とを備えている。以下、各構造について説明する。
本実施形態における水槽10は、奥行方向Yの寸法よりも幅方向Xの寸法の方が長い楕円形の略ドーナツ状水槽である。具体的には、この水槽10は、底面12と、楕円形状の外壁14と、底面から上方に向かって立設する楕円形の中心部16とを備えている。このような形状の水槽10は、楕円形の水槽10内部を循環する横方向の水流F1を容易に生じさせることができるため好ましい。また、かかる略ドーナツ状水槽は、残餌や排出物等の廃棄物を水槽の底面の中央付近に集積させやすく、水質の悪化を好適に抑制できるという観点からも好ましい。
詳しくは後述するが、本実施形態に係る養殖装置1は、流出口20と流入口30、40を備えている。そして、これらの流出口20と流入口30、40には、送液管52が接続されており、各々の送液管52が循環ポンプ50と接続されている。これによって、循環ポンプ50を稼働させた際に、流出口20から流出した飼育水を流入口30、40へ移送し、水槽10内の飼育水を循環させることができる。一例として、水槽10の容量が100L~200Lの範囲内の場合には、循環ポンプ50の送液量を100L/h~200L/h(一例として、水槽10の容量が100Lの場合には100L/h)に設定することによって、側面流入口30と底面流入口40の各々から適切な水流を生じさせ、水槽10内でマリンスノーをより容易に再現することができる。なお、循環ポンプ50は、公知の送液ポンプを特に制限なく使用することができ、ここに開示される技術を制限するものではないため、詳細な説明を省略する。
流出口20は、水槽10の外部へ飼育水を流出させるために設けられている。流出口は、水槽内の水流等を考慮した所望の位置に形成することができる。図3~図5に示すように、本実施形態では、水槽10の底面12に形成された底面流入口40の近傍と、側面に形成された側面流入口30の近傍の各々に流出口20が設けられている。このように水流を生じさせる流入口(ここでは、側面流入口30と底面流入口40)の近傍に流出口20を設けることによって、仔魚が流出口20に吸い込まれて死亡することを抑制することができる。また、本実施形態のように、側面流入口30と底面流入口40の各々の近傍に流出口20を設けた場合、水槽10の上層~下層の全域に亘って好適に飼育水を循環することができる。さらに、図3に示すように、本実施形態では、底面側と側面側の各々において複数の流出口20が形成されている。そして、各々の流出口20と送液管52との間には、四角柱状の容器である合流部22が形成されている。すなわち、本実施形態に係る養殖装置1は、各々の流出口20から水槽10の外部に流出した飼育水を合流部22で合流させた後に、送液管52を介して循環ポンプ50に移送するように構成されている。これによって、飼育水の流出速度と流出圧を低減させ、仔魚の流出をより適切に防止することができる。なお、複数の流出口と合流部を形成する場合、仔魚の流出をより好適に防止するという観点から、隣接する流出口と流入口の数を同数にし、流入口一個に流出口を一個対応させるとより好ましい。なお、仔魚が水槽10の外部に流出することをさらに好適に防止するために、流出口20には、メッシュ(典型的にはステンレス製のメッシュ)が取り付けられていると好ましい。かかるメッシュの口径は、150μm未満が好適である。また、流出口20は、水槽10から流出する飼育水の量を換水率に応じて調節できる構造を有していることが好ましい。例えば、上述した循環ポンプ50の送液量を100L/hに設定した場合には、流出口20にバルブを設けて、水槽からの流出量を100L/hに調節することが好ましい。
流入口30、40は、流出口20から流出した飼育水を水槽10の内部へ再び流入させるために設けられている。ここで、本実施形態に係る養殖装置1は、側面流入口30と、底面流入口40の2種類の流入口を備えている。
側面流入口30は、水槽10の側面から飼育水を流入させるために設けられている。この側面流入口30によって、水槽10内に横方向の水流F1を生じさせることができる。また、本実施形態に係る養殖装置1では、水槽10の外壁14に、複数の側面流入口30が水槽10の高さ方向Zに沿って連続して形成されている。これによって、水槽10内の高さ方向Zにおいて均一な横方向の水流F1を安定して生じさせることができる。
次に、底面流入口40は、水槽10の底面12から飼育水を流入させるために設けられている。この底面流入口40によって、水槽10内に縦方向の水流F2を生じさせることができる。また、本実施形態に係る養殖装置1では、水槽10の底面12に、複数の底面流入口40が水槽10の奥行方向Yに連続して並ぶように形成されている。これによって、奥行方向Yにおいて均一な縦方向の水流F2を安定して生じさせることができる。
本実施形態に係る養殖装置1では、循環ポンプ50を稼働させた際に、側面流入口30によって形成される横方向の水流F1と、底面流入口40によって形成される縦方向の水流F2とが混合した複雑な水流が水槽10の内部に形成される。これによって、自然界に似た水流を生じさせることができるため、上述した実施形態に係る養殖用飼料によるマリンスノー再現効果をより好適に発揮させることができる。
また、上述した構造の養殖装置1を使用する場合、水槽10内の飼育水を排出する排水口60を底面中央部近傍に設けることが好ましい。この排水口60は、通常の稼働中は封止されているが、飼育水の交換などを行う際に開かれる。このとき、底面流入口40から縦方向の水流F2を生じさせながら排水を行うことによって、排水口60から仔魚が流出することを抑制できる。また、横方向の水流F1によって、仔魚の排泄物や残餌が排水口60の周囲に集められるため、これらの廃棄物を容易に回収することもできる。なお、排水口60の上部には、仔魚の流出を防ぐという観点から、目の細かなステンレスメッシュが取り付けられていることが好ましい。
10 水槽
12 底面
14 外壁
16 中心部
20 流出口
22 合流部
30 側面流入口(流入口)
32 飼料投入部
32a 傾斜面
34 給餌口
36 仕切り板
36a 開口部
40 底面流入口(流入口)
42 保持部
42a 傾斜面
50 循環ポンプ
52 送液管
60 排水口
70 泡沫分離装置
80 ろ過装置
90 脱窒装置
Claims (2)
- 平均粒子径が30μm~60μmの粉末状飼料であり、
飼育水に対して不溶性の増粘多糖類であるカラギーナンを含み、
比重が1.015以上1.03以下であり、
表面が前記カラギーナンに被覆された寒天状の飼料粒を含み、
飼育水に投与してから少なくとも48時間後に、前記飼料粒が前記飼育水中で分散・滞留していることを特徴とする、ウナギ仔魚養殖用飼料。 - 魚油をさらに含む、請求項1に記載のウナギ仔魚養殖用飼料。
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