JP2013545436A - 鮭荒節及び鮭削り節の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記鮭を皮付きのフィレ〔以下、皮付きであることが明らかな場合、および皮なしであることが明らかな場合、共に単に「フィレ」と記すことがある。〕とする前処理工程、
前記前処理工程を経たフィレを、20℃以下で凍結していない温度である清水又は塩分濃度が5重量%以下の水に浸漬して、5分間以上、30分間以下の時間維持する水晒し工程〔以下、水晒し工程において断りのない限り、清水又は塩分濃度が5重量%以下の水を単に「水」と記す。〕、
前記水晒し工程を経たフィレを、60℃以上、80℃以下の温度である水中に浸漬して5分間以上、20分間以下の時間維持し、次いで前記フィレが浸漬された水を加熱して30分後〜60分後の間に前記フィレを84℃以上、90℃未満とする煮熟工程、
前記煮熟工程を経たフィレを、80℃以上、85℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する1番火、あん蒸の後、80℃以上、85℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する2番火、あん蒸の後、65℃以上、70℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する3番火、あん蒸の後、60℃以上、65℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する4番火、あん蒸の後、56℃以上、65℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する5番火、あん蒸の後、5番火と同じ雰囲気温度及び時間並びにあん蒸で少なくとも6番火まで行う焙乾工程、
を順次行うことを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、本発明による鮭削り節の製造方法は、上述のような製造方法によって製造された鮭荒節を原料として用いることを特徴とする。
本発明において、“鮭荒節”は、日本古来から知られている鰹を原料とした鰹節のうち鰹黴付け節のような黴付けをしていない“鰹荒節に対応し、鮭を原料としたものである。ここで、“鰹荒節”とは、鰹を茹でて干した後、これを燻製にしたものであり、日本の伝統保存食品の一つである。また、本発明において、“鮭削り節”は、この“鮭荒節”を削り刃で、厚みが5mm未満、一般的には3mm以下の薄片状に削ったものである。なお、鮭黴付け節及び鮭黴付け節を削った鮭削り節は本発明の対象外である。
前処理工程は、採取した原料の鮭を、切り開いてフィレとする工程である。
鮭が冷凍されている場合には、水で解凍して水で洗う。解凍の方法は、限定するものではないが、代表的に水に浸漬あるいは水を散布して解凍する方法であり、経済的であると共に、最終製品の味を損なうことも少なく、好ましい選択である。このとき、解凍時において、腹内が完全に解凍されない程度で、開腹して内蔵を取り出すのがよい。鮭の頭は、冷凍する前に切断されることが多いが、頭が付いているときには頭部を切り落とし、さらに腹身(腹部の肉)、内臓、背鰭を除去した後、フィレ(fillet)にする。原料とする鮭が冷凍されていない場合には、魚体を水洗、断頭、開腹し、腹身、内臓、背鰭を除去した後、フィレにする。ここでフィレは、三枚卸しの卸身、或は、三枚卸しの卸身をさらに背側と腹側に合断ちした卸身である。
鮭は、肉が柔らかく、身崩れ、身割れが生じ易いので、この前処理工程では、皮を剥がさない。
上記したこの一連の加工を一気に行わないときには、それぞれの加工の途中の状態で一時的に冷蔵又は冷凍保存する、また前処理工程を終わったフィレは、次の水晒し工程に移る迄一時的に冷蔵又は冷凍保存するのがよい。
雄鮭では、放精のみであって採卵しないので、通常は(頭部を残すことなく)頭部を切断除去した無頭開腹状態(ドレス)とする。この前処理工程における標準的な歩留り(重量%)は、ドレスを100とした場合、フィレで75である。
水晒し工程は、前処理工程で得られたフィレを水晒しする工程である。ここで、“水晒し”とは、前処理工程で得られたフィレを水に浸漬する操作であり、鮭荒節或は鮭削り節とした製品における不快臭を抑えることを主な目的としている。
上述の不快臭は、鮭節に特異的に発生するものであり、他の魚種から製造された鰹節、鯖節、鮪節、鰯節、鰺節では、人が感知できる程には発生しない。例えば、鰹節、鰹荒節の製造においては、製品である鰹節、鰹荒節に香味の低下を招いたり、削り節の色調が白っぽくなることから、本実施形態にあるような水晒し工程は実施しないのが常識である。従って、水晒し工程は、後述する他の工程条件とも関連して、本発明の鮭荒節や鮭削り節の製造方法において、製品品質上重要な、かつ特異な点である。
静水浸漬方式における水温の好ましい範囲は、5℃を超え、8℃未満であり、フィレの浸漬時間の好ましい範囲は、10分間以上、15分未満である。このとき、容器内の水を間欠的、例えば、1乃至5分間隔で3回程度攪拌したり、浸漬途中で一部または全部の水を新しい(未使用の)水に換える(換水)こともでき、これにより不快臭発生抑制の効果が向上したり、最終的に得られる鮭荒節、鮭削り節の香味品質を向上させ、さらに製品間の品質差を小さくすることができる。攪拌や換水に際しては、フィレの身崩れに注意して行なう必要があるのは、いうまでもないことである。
水を流す方式は、特に限定するものではないが、一般的には容器の一方の側壁に水の導入口を、他方の側壁に排出口を設ける。このとき、導入口は、一方側の側壁面の底から水面の間の中央位置、或は中央位置より底部側位置とするのがよく、中央位置より底部側位置が好ましく、底部内面に近接する位置がより好ましい。排出口は、送水方向の延長線が交差する位置に設けることが好ましいが、排水口を設けずに他方側壁側からオーバーフローさせても良い。水晒し容器の深さ方向における送水方向は、上流側から下流側に向けて水平方向としてもよく、導入口位置を底近くに設けたときには、送水方向の延長線が水面と交差しない範囲で上向きに傾けてもよい。また、予定した水晒し時間の途中で、水晒し容器における導入口と排出口を逆にして送水方向を反対方向に変更しても良い。
皮引き工程は、フィレの皮を剥がす工程である。皮引き工程は、本発明による鮭荒節の製造方法において必須ではないが、皮を除かないと、満足のいく香味品質を得るために後段の焙乾工程において焙乾数を増やす必要が出てくることがあり、さらに皮が付いた鮭荒節を削り節としたときに皮が混入して見た目に悪く、商品価値を下げることがある。
煮熟工程は、フィレを湯中に浸漬する工程である。
上述の水晒し工程を行なった皮付きのフィレ、又は水晒し工程に続いて皮引き工程により皮を除いたフィレは、湯(熱水)中に浸漬されて生肉の蛋白質を変性させる。
蛋白質の変性は、蒸煮によってもできるが、得られた鮭削り節に不快臭が生ずることがあり、水晒し工程に続いて煮熟することでこの不快臭を抑えることができる。従って、本発明の鮭荒節製造方法にとって、この煮熟工程は、水晒し工程と共に重要な必須工程である。
焙乾工程は、煮熟工程を経たフィレを、焙乾、あん蒸(非加熱)を繰り返して鮭荒節とする工程である。ここで、焙乾とは、フィレを薪などを燃やして得られた煙を含む熱気流で乾燥すると共に燻煙特有の香味を付与させることであり、あん蒸は、焙乾の加熱を止めて寝かせ、フィレ内部の水分を表面部分に移動させて、表面部分のみ乾燥が進行してしまう上乾きを防ぎ、フィレ内部を均一に乾燥させるものである。焙乾とあん蒸は、これを組合わせて1サイクルとし、サイクルを繰り返していく。ここで、最初のサイクルの焙乾を「1番火」、2番目のサイクルの焙乾を「2番火」、3番目のサイクルの焙乾を「3番火」・・と呼んでいる。
本実施形態における焙乾工程では、フィレの厚みが鰹の場合と比較すると概して薄く、肉質も異なり水分が抜け易く、また、煮熟後のフィレが85℃を超える雰囲気温度で加熱した場合に、焦げ易いことから、鰹の場合とは異なる焙乾条件で行なうことが必要である。燻材は、ナラ、クヌギを用いても良いが、甘い燻煙臭が鮭荒節、鮭削り節に相性が良い点で、サクラが好適である。間歇焙乾は、少なくとも6番火まで行なうことが好ましい。
1〜4番火では、水分含量が高めであり、水分が表面に戻りやすいことから、あん蒸の時間は、5番火以降よりも短期間となっている。1〜4番火で放置期間を長くしてしまうと、表面に戻った水分により、外気温度が10〜20℃を超えた場合には、微生物の増殖による品質低下が問題となることがある。このような微生物の増殖による品質低下が懸念されるときには、例えば10℃以下の冷蔵庫に放置することができ、この場合には、放置期間を長くすることも可能である。また5番火以降では水分が十分低いことから、常温で放置した場合でも、21日まで放置期間を長くすることは可能である。
鮭削り節は、鮭荒節を削って製造される。本発明においては、焙乾工程で製造された鮭削り節を、2〜3日以上天日干しを含めて室温に放置して熟成させてから鮭削り節の製造に入るのが好ましい。
鮭削り節は、[1]鮭荒節の表面を洗浄、加熱殺菌する工程と、[2]加熱殺菌された鮭荒節を削って削片を得る工程と、[3]この削片をガスバリア性の袋体内に充填、[4]不活性ガスで置換して封入する工程を経て商品化するのが一般的である。
鮭荒節を削るには、鰹節を削るに使用されると同様の削り機を使用することが可能であり、0.01mm〜0.2mm厚の薄削り削片、0.21mm〜1mm厚の厚削り削片など、任意の厚さとすることができる。
A:川を遡上した採卵又は産卵後の雌のシロザケを鮭原料として用い、実施形態の記載に準じて皮付きのフィレを作製した。ここに用いた鮭原料は、ドレス状態で冷凍されたものであり、フィレ作製の前日に、水解凍した。翌朝、解凍タンク内で水洗して表面の汚れを落とし、鰭、かまの部分を切除した後、三枚に卸した。得られた皮付きのフィレの重量は、皮付きフィレ1枚当たり490g〜607gであった。皮付きフィレの水分含量は73〜77重量%、脂質含有率は2.0〜3.0重量%であった(鮭原料についての測定値も同等)。水分含量は、食品衛生検査指針・理化学編(日本食品衛生協会、2005年、東京)、常圧加熱乾燥法により測定し、脂質含有率は、食品衛生検査指針・理化学編、エーテル抽出法に従い、ジエチルエーテル、ソックスレー抽出器を用い測定した(以下、水分含量、脂質含有率の試験方法は特記しない限り共通である)。
上述の1.前処理工程の検討A(雌のシロザケ)で得られた皮付きフィレ10枚〜70枚(各条件毎)を使用して、静水(止水)浸漬方式、及び流水方式(連続流動換水方式)により水晒し工程の条件検討を行なった。
水晒し容器(平底角型、容量30L〜50L)、及び清水として水道水の他、海水(塩分濃度3.3w/v%)、北海道羅臼沖海洋深層水(塩分濃度3.3w/v%)、食塩水(塩分濃度3、5、7w/v%)を用い、皮付きフィレを浸漬する条件の検討を行なった。浸漬検討条件は、浸漬静置液量、間歇攪拌、換水回数、浸漬温度、浸漬時間とした。皮付きフィレの性状変化(外観、色、臭い)を観察し、生臭さが残ったり、身伸びや肉質が軟化するようなフィレの鮮度低下の有無、鮮度低下の程度を試験した。フィレの鮮度低下が確認された一部の条件の皮付きフィレ検体を除き、各条件による水晒し後の皮付きフィレ検体につき、以下に示す各工程の条件により、鮭荒節、鮭削り節包装品サンプルを調製し、鮭節特異的な不快臭の発生有無を含む香味を経時的に試験した。
皮付きのフィレ1kg当たり1.1L以上の水道水に静水状態で5分間以上浸漬した場合には、浸漬水温0℃(0℃±1℃)条件の包装品サンプルで6箇月後に僅かに不快臭を感じるものが現れたが、静水浸漬方式による不快臭の発生抑制効果が確認された。表1〜表13に示した検討結果より、浸漬水温が20℃を超えるとフィレの鮮度低下が認められた。浸漬時間や浸漬液量にも関係するが、フィレの鮮度低下を防ぐためには凍結しない温度範囲であればできるだけ低い水温とすべきであることが確認され、20℃以下の水温とし、5分間以上、30分間以下、皮付きフィレを清水に浸漬することによって、少なくとも6箇月は不快臭発生を抑制できることが判った。
水晒し容器(平底角型タンク、容量40L、流水断面積:送水側及び排水側の側壁部面積1800cm2)に、所定温度に調整した水を満たし皮付きフィレを浸漬すると共に、一側から水晒し容器に入り、皮付きフィレの表面上を流れて反対側から排出する水の流れを作って、水晒し効果を検討した。
ここでは、入口側側壁部における導入口は、導入口の下端が水晒し容器の底部上面に接する位置とし、出口側側壁部における排出口は、上端位置とした。水は、別途設けた恒温水槽(トーマス科学器械社製、TRL−101FL型)から送水ポンプ(トーマス科学器械社製、TRL140型)及び、送水ポンプ(トーマス科学器械社製、CP808型)の2つのポンプを用いて水晒し容器の入水部に送った。
前処理工程の検討におけるA(雌のシロザケ)で得た皮付きフィレを使用し、流水方式で水温5℃(±1℃)、浸漬水量1.2L/フィレ1kg、流水時間5分、線速度5.6cm/分の条件にて水晒しを行ない得た皮付きフィレについて、スキナー(マーヤ社製スキンナー、ESM435型、EVM437型、東亜交易株式会社販売)を用いて皮を除去したフィレを用い、煮熟工程の条件検討を行なった。
〔1.前処理工程の検討〕におけるA(雌のシロザケ)で調製した皮付きフィレを用い、〔2−2.流水方式〕に準じ、水晒し容器(平底角型タンク、容量40L、流水断面積:1800cm2)に水温5℃(±1℃)の水道水を満たし、皮付きフィレ1kg当たり浸漬水量1.2Lとなるように皮付きフィレを投入し、水晒し容器内の線速度5.6cm/分で5分間、水温5℃(±1℃)の水道水を流して水晒し工程を行なった。水晒し工程の後、水切りした皮付きフィレを、スキナー(マーヤ社製スキンナー、ESM435型、EVM437型、東亜交易株式会社販売)を用いて皮を除去する皮引き工程を行なった。続いて上述の〔3.煮熟工程の検討〕に準じ、皮引き工程で得たフィレを73℃の水温とした湯中(煮熟釜:ボイラー加熱、釜内の湯温制御精度±2℃)に投入し、フィレ投入後ボイラーを止めて10分間非昇温状態に維持した後、湯温69℃で加熱昇温を開始し、加温上限湯温89℃にて昇温開始から37分後にフィレを達温で87℃として湯中から取り出す煮熟工程を行なった。煮熟工程を経た各フィレにつき、急造庫及び燻材にサクラチップを用い6番火まで間歇焙乾を行ない鮭荒節を得た。焙乾温度は、1番火及び2番火は80℃〜85℃の雰囲気温度とし、3番火は65℃〜70℃の雰囲気温度とし、4番火は60℃〜65℃の雰囲気温度とし、5番火及び6番火は56℃〜65℃の雰囲気温度とした。焙乾時間は、1番火乃至6番火共通で5時間とし、あん蒸は、夫々焙乾の後に常温(成りゆき温度:15℃〜30℃)に放冷し、続いて所定時間放置した。あん蒸の時間は、放冷後の放置時間を1番火の後では12時間とし、2番火の後では放冷後の放置時間を24時間とし、3番火の後では放冷及び放置時間を含めて3日とし、4番火の後では放冷及び放置時間を含めて5日とし、5番火及び6番火では放冷及び放置時間を含めて7日とした。得られた鮭荒節を水道水で洗浄後、蒸気殺菌(条件:蒸気温度95℃±3℃、20分間)により加熱殺菌、5℃±3℃、3時間保管し、加熱殺菌後の鮭荒節を削り機で厚さ0.1〜0.2mmに削り、鮭削り節包装品を得た。
上述の〔2−1.静水浸漬方式〕に準じ、海水(5℃±1℃)、1.4L/皮付きフィレ1kgの浸漬液量、総浸漬時間10分(浸漬5分後換水1回)とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
上述の〔2−2.流水方式〕に準じ、海水(7℃±1℃)、線速度2.0cm/分、流水時間10分とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
煮熟工程の前段で皮引き工程を実施する替りに、実施形態の3)皮引き工程に準じ、煮熟工程の後段(煮熟放冷後)で手作業により皮引きを行なった以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
煮熟工程の前段で皮引き工程を実施する替りに、実施形態の3)皮引き工程に準じ、焙乾工程、1番火の後段(あん蒸後)で手作業により、フィレ1枚あたり2〜7分間の時間をかけて皮引きを行なった以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった(フィレ1枚あたり2〜7分)。
煮熟工程の前段で皮引き工程を実施する替りに、実施形態の3)皮引き工程に準じ、焙乾工程、2番火の後段(あん蒸後)で手作業により、フィレ1枚あたり5〜10分間の時間をかけて皮引きを行なった以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
煮熟工程において、フィレ投入温度を60℃(±2℃)、非昇温状態維持時間を20分間、昇温開始65分後にフィレ達温で86℃とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
煮熟工程において、フィレ投入温度を75℃(±2℃)、非昇温状態維持時間を20分間、昇温上限温度90℃、昇温開始60分後にフィレの温度(達温)を90℃とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
煮熟工程を行なう替りに、皮引き工程で得た皮除去フィレにつき、90℃〜95℃の雰囲気温度にて蒸煮処理を行なった以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
焙乾工程において、燻材にナラチップを用いた以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
焙乾工程において、焼津式乾燥機を用い、焙乾時間を各焙乾段階共通で6時間とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
焙乾工程において、スモークジェネレータを用い、焙乾時間を各焙乾段階共通で4時間とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
焙乾工程において、手火山を用い、焙乾時間を各焙乾段階共通で2時間とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
焙乾工程において、間歇焙乾を5番火迄とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
焙乾工程において、1番火及び2番火の焙乾温度を86℃〜90℃とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
焙乾工程において、間歇焙乾を8番火迄(7番火及び8番火の焙乾条件:56℃〜65℃の雰囲気温度で4時間、あん蒸8日及び10日)とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
上述の〔1.前処理工程の検討〕におけるB(雄のシロザケ)で調製した皮付きフィレを用いた以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
上述の〔1.前処理工程の検討〕におけるB(雄のシロザケ)の内、脂質含有率が4重量%を超える(4.5〜4.7重量%)鮭原料を使用し、煮熟工程を経た各フィレにつき焙乾工程の前段において、手作業により脱脂を行なった以外は実験例17と同様に各工程の処理を行なった。脱脂処理は、フィレを1本ずつステンレス製の網に巻いて一段に並べ、並べたフィレ巻き網上面をステンレス板で覆い、ステンレス板上に10〜15分間隔で錘を追加しながら(0.5〜5kg/cm2の圧力範囲となるように)載置して、55〜65分間の時間をかけて行なった。
水晒し工程を実施しなかった以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
水晒し工程を実施せず、焙乾工程において、間歇焙乾を8番火迄(7番火及び8番火の焙乾条件:56℃〜65℃の雰囲気温度で4時間、あん蒸8日及び10日)とした以外は、実験例1と同様に各工程の処理を行なった。
他社、鮭節(鮭削り節包装)市販品を入手し、賞味期限前、1週間〜1箇月にて使用した。
鰹荒節、削り節(株式会社 にんべん市販製品、製造後3箇月)を用いた。
各実験例及び比較例の製造条件により製造した鮭荒節及び鮭削り節、鮭削り節包装品検体につき、[1]性状観察(外観:身割れ、隙、身伸び、身崩れ等、臭い:不快臭、生臭さ、アンモニア臭及び他の異臭、香味官能検査)、及び[2]歩留まり、粉末含有率、水分、塩分含有率、脂質含有率、エキス分、遊離アミノ酸、イノシン酸含量、イノシン含量、ヒポキサンチン含量の測定を行なった。水分、塩分含有率、脂質含有率については、水晒し工程後のフィレ、煮熟工程後のフィレ、焙乾工程各段階毎においても測定を行なった。性状、水分、塩分含有率、脂質含有率の試験方法は、上述のとおりであり、他の試験項目については、以下に示す試験方法とした。粉末含有率、水分、塩分含有率、脂質含有率、エキス分、遊離アミノ酸、イノシン酸含量、イノシン含量、ヒポキサンチン含量について削り節の試験は、包装前の各鮭削り節検体を使用した。鮭削り節の包装、保存条件は、〔2.水晒し工程の検討〕の場合と同様とし、保存期間は包装後2箇月毎として性状(不快臭を含む香味官能検査)を試験した。なお、ガス検知管(ガステック社製)、ガスクロマトグラフ−MS(質量分析)などにより、不快臭の原因物質の解明を試みたが、同定できなかった。
歩留まり:各検体重量の3枚卸し身(皮付きフィレ)重量に対する割合を歩留りとした。
粉末含有率:「削り節の日本農林規格」に従って測定した。試料の削り節を日本工業規格Z8801−1に規定する850μmのふるい目の試験用篩を通し、通過した粉末の重量を、篩を通す前の削り節重量に対する割合で示した。
エキス分:削り節の日本農林規格のエキス分の測定方法により、固形物重量から食塩分を差し引き、試料(削り節)の水分を15%に換算して得た値をエキス分とした。すなわち、削り節の熱水抽出液を、一定量、蒸発皿に採り、湯浴(ウォーターバス)上で蒸発乾固させた後の“固形物”から、総エキス分(可溶性固形分) を求め、総エキス分から別に測定して求めた食塩分を差し引き、エキス分(無塩可溶性固形分)を求めた。削り節の水分は略13〜21重量%に分布しており、試料の水分を平均的な15重量%(固形物85重量%)に換算した。
遊離アミノ酸:食品衛生検査指針・理化学編に従いアミノ酸分析計(日立製作所製、L−8500)により、遊離のグルタミン酸、アンモニアを含む各種アミノ酸量を測定し、試料の水分を15%として換算した。
イノシン酸含量:高速液体クロマトグラフ(島津製作所製、LC−10A)によりイノシン酸を測定した。ただし、カラムはSTR ODS−II(島津テクノリサーチ製)、移動層は0.018Mクエン酸−0.025M N,Nジエチルエタノールアミン(pH4.4)を用い、流速は0.9mL/min.で行った。溶出液は254nmでモニターした。なお、標品としてはIMP・Na2・n水和物を使用し、IMP(イノシン一リン酸:C10H13N4O8P)として算出し、試料の水分を15%として換算して得た値を各検体のイノシン酸含量とした。
イノシン含量:イノシン酸含量と同一条件にて、測定した。ただし、標品としてイノシンを使用し、試料の水分を15%として換算して得た値を各検体のイノシン含量とした。
ヒポキサンチン含量:イノシン酸含量と同一条件にて、測定した。ただし、標品としてヒポキサンチンを使用し、試料の水分を15%として換算して得た値を各検体のヒポキサンチン含量とした。
試験結果を表22乃至表27に示す。表26における「−」は、当該遊離アミノ酸量が測定限界以下であったことを示す。以下、試験結果で得られた特記事項を挙げる。
* 実験例2、3で得られた鮭削り節は、実験例1の鮭削り節に比して甘みが強く感じられた。これは、水晒し工程で海水を用いたことにより、海水由来の塩分により鮭削り節が適度な塩味(塩分含有率:0.5%〜0.6%)となって、人の味覚として甘く感じたためと推測される。
* 実験例2、3の試験結果から、流水7℃±1℃、10分とすれば線速度2cm/分の水晒しであっても、12箇月後まで不快臭の発生が抑制でき、且つ良好な品質、香味を有する鮭削り節が得られることが確認された。
* 実験例4、5の試験結果から、皮引き工程を煮熟後、又は焙乾工程の1番火後とすると歩留まりが低下、粉末含有率が増えてしまうことが認められ、また、焙乾工程の2番火後とする場合には皮引きの作業性が悪く、皮引き工程は煮熟前に行なうべきであることが確認された。
* 実験例7乃至9の試験結果から、煮熟に替えて蒸煮を行なった場合には、好適条件で他の工程を実施しても鮭節特有の不快臭の発生が認められ、また、煮熟時に90℃まで湯温を上げると、フィレに僅かな身の捻れや身割れが発生し、削り節に小さな隙が認められ、やや旨味に乏しいものとなってしまう場合があり、昇温上限湯温は90℃未満が好適であることが確認された。さらに、総煮熟時間が80分を超えると、フィレの身伸び、削り節の旨味が低下し(エキス分やグルタミン酸含量低下)、投入後非昇温維持時間20分未満、昇温開始後煮熟終了までの時間は60分以内とすべきことなど、鮭原料に適した煮熟が必須であることが確認された。
* 実験例10乃至16の試験結果から、焙乾工程には鰹節など他の魚節製造に用いられる焙乾装置が使用できるが、鮭原料に適した特異的間歇焙乾条件で行なうことが良好な品質、香味の鮭荒節、鮭削り節を得るために必要であることが確認された。燻材はサクラ材が好適であり、焙乾温度は鰹節などの他の魚節の場合より5℃程低い温度域とし、6番火以上、8番火以下とすることが好適であることが判明した。
* 実験例17、18の試験結果から、脂質含有率が4重量%以上の鮭原料を使用する場合には、圧搾により脱脂処理を施すことができること、脱脂処理により鮭荒節、鮭削り節の脂質含有率は低下し香味は問題ないものの、削り節に割れが認められるなど品質が落ちることが認められ、4重量%以下の脂質含有率の鮭原料を用いて製造することがより好ましいことが確認された(表25、実験例18における「煮熟後」欄の脂質含有率は、煮熟後に脱脂処理を施したときの数値を示している)。
* 比較例1、2の試験結果から、水晒し工程を施さないと鮭特有の不快臭の発生抑制ができないこと、渋みも強く良好な香味のものが得られず、また、間歇焙乾を8番火まで行なっても不快臭の発生抑制ができないことが確認された。
* 比較例3の鮭削り節は、不快臭が強く、粉末含有率、削り節片の弾力性、エキス分、遊離アミノ酸量比、イノシン酸含量、イノシン含量、ヒポキサンチン含量など殆んど全ての試験項目において実験例とは顕著な差を認め、仮に実験例と同様の鮭原料を使用していたとしても、製造方法、品質が全く異なるものであることが確認された。
Claims (5)
- 川を遡上する前の鮭、川を遡上して採卵又は産卵前後の鮭、川を遡上して放精前後の鮭から選ばれる一種以上の鮭を使用した鮭荒節の製造方法であって、
(a)前記鮭を皮付きのフィレとする前処理工程、
(b)前記前処理工程を経たフィレを、20℃以下で凍結していない温度である清水又は塩分濃度が5重量%以下の水に、5分間以上、30分間以下の時間浸漬させる水晒し工程、
(c)前記水晒し工程を経たフィレを、60℃以上、80℃以下の温度である水中に浸漬して5分間以上、20分間以下の時間維持し、次いで前記フィレが浸漬された水を加熱して30分後〜60分後の間に前記フィレを84℃以上、90℃未満とする煮熟工程、
(d)前記煮熟工程を経たフィレを、80℃以上、85℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する1番火、あん蒸の後、80℃以上、85℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する2番火、あん蒸の後、65℃以上、70℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する3番火、あん蒸の後、60℃以上、65℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する4番火、あん蒸の後、56℃以上、65℃以下の雰囲気温度で、1時間以上、9時間以下焙乾する5番火、あん蒸の後、5番火と同じ雰囲気温度及び時間並びにあん蒸で少なくとも6番火まで行う焙乾工程、
を順次行うことを特徴とする鮭荒節の製造方法。 - フィレの皮を除く皮引き工程を、前記水晒し工程と煮熟工程との間で行なうことを特徴とする請求項1に記載の鮭荒節の製造方法。
- 前記水晒し工程は、温度が5℃以上、8℃以下の清水又は塩分濃度5重量%以下の水に、皮付きのフィレを7分間以上、14分間以下の時間浸漬することを特徴とする請求項1に記載の鮭荒節の製造方法。
- 前記水晒し工程は、水晒し容器中で清水又は塩分濃度5重量%以下の水に皮付きのフィレを浸漬すると共に、前記水晒し容器中の皮付きのフィレ表面上を線速度3cm/分以上、10cm/分以下で清水又は塩分濃度5重量%以下の水を流すことを特徴とする請求項1に記載の鮭荒節の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載された鮭荒節の製造方法によって製造された鮭荒節を原料として用いることを特徴とする鮭削り節の製造方法。
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