具体的な製剤又は工程パラメータは、当然ながら変化しうるので、本出願がこれらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で用いられる用語法は、具体的な実施形態を説明することだけを目的とするものであり、限定を意図するものではないことも理解されたい。さらに、本発明を実施するには、本明細書で説明される方法及び材料と類似又は同等である、多数の方法及び材料を用いうることも理解される。
本出願に従い、当技術分野の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNAの技法を用いうる。このような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」、I〜III巻[Ausubel,R.M.編(1994)];「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻[J.E.Celis編(1994))];「Current Protocols in Immunology」、I〜III巻[Coligan,J.E.編(1994)];「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編、1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D.Hames及びS.J.Higgins編(1985)];「Transcription And Translation」[B.D.Hames及びS.J.Higgins編(1984)];「Animal Cell Culture」[R.I.Freshney編(1986)];「Immobilized Cells And Enzymes」[IRL Press(1986)];B.Perbal、「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照されたい。
エンドグリンの活性を調節し、これにより、血管新生を阻害し、且つ/又は微小血管の血管拡張を阻害する、エンドグリンに対するマウスモノクローナル抗体(mAb)が作製されている。これらのマウスモノクローナル抗体は、それらが全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第5,928,641号;同第6,200,566号;同第6,190,660号;及び同第7,097,836号において説明されている。加えて、これらの抗体のうちの多数について、ex vivo及びin vivoにおける有効性も裏付けられている;エンドグリンに結合するこれらのモノクローナル抗体は、エンドグリンを調節する化合物として、対象の抗体となる。しかし、これらのマウス抗体の投与は、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)の形態における免疫原性を含め、多数の限界を有するので、これらの治療的使用は実施可能ではない。ヒト化抗体を作製して、これらの反応に対処する。
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化抗体であって、それらの特異性を維持及び/又は改善しながらも、免疫原性を低減する該ヒト化抗体が説明される。加えて、本明細書では、マウス抗体に随伴する問題に対処するため、エンドグリンに結合し、且つ、血管新生を低減及び/又は阻害するヒト化抗体であって、それらの特異性を維持及び/又は改善しながらも、免疫原性を低減する該ヒト化抗体が説明される。これらのヒト化エンドグリン抗体は、多様な状態及び疾患を診断及び治療するほか、エンドグリンを精製及び検出するのにも有用である。
I.抗エンドグリン抗体
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化抗体、並びにそれらの抗原結合断片が提供される。エンドグリンは、既存の血管系を構成し、且つ支持する細胞のほか、新たな血管系の増殖を促進しつつあり、且つその一部となる細胞においても見出されうる。これらの抗体並びに抗原結合断片は、エンドグリンに結合し、これにより、血管新生を阻害し、既存の血管系若しくは既存の血管系の維持を阻害し、且つ/又は微小血管の拡張を阻害することが可能である。本明細書では以後、「抗体(単数又は複数)」という用語への参照を、本明細書で説明される抗原結合断片のうちのいずれかを包含すると考えるものとし、該用語は、必要に応じて互換可能であるものとする。エンドグリンを精製するのにそれらを用いることに加え、これらの抗体は、精製、検出、及び診断する目的のほか、治療する目的にも有用である。本明細書で提供される抗体は、多様な状態及び疾患を治療するための薬物製剤、前記状態及び疾患を治療する方法、並びに検出又は診断の方法に用いることができる。本明細書で用いられる血管新生とは、新たな血管の増殖及び/又は発生(また、新血管形成とも称する)、微小血管の拡張、血管増殖の過剰又は遷延、並びに既存の血管系の維持を包含する。血管新生性状態及び血管新生性疾患とは、血管新生に関連するか、血管新生により引き起こされるか、又は血管新生に随伴する疾患及び状態を指す。このような疾患の非限定的な例には、例えば、血管新生/新血管形成(例えば、黄斑変性、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎障害、慢性炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、骨関節炎、並びに多様な形態のがん(原発性腫瘍及び転移)を特徴とする多様な形態の眼疾患が含まれる。
A.抗体についての用語法
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、天然の場合であれ、部分的又は完全な合成により作製された場合であれ、免疫グロブリン(Ig)を指す。この用語はまた、抗原結合ドメインであるか、又はこれと相同的である結合ドメインを有する任意のポリペプチド又はタンパク質も対象とする。この用語は、以下で説明される用語など、「抗原結合断片」並びに類似の結合断片についての他の互換可能な用語をさらに包含する。また、相補性決定領域(CDR)移植抗体並びに他のヒト化抗体(CDR修飾並びにフレームワーク領域修飾を含めた)も、この用語により意図される。
天然抗体並びに天然免疫グロブリンは通常、2つの同一の軽(L)鎖並びに2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ドルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、共有結合による1つのジスルフィド結合を介して重鎖に連結されることが典型的であるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的な間隔を置いた、鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端部において、可変ドメイン(「VH」ドメイン)に続いて、複数の定常ドメイン(「CH」ドメイン)を有する。各軽鎖は、一方の端部における可変ドメイン(「VL」ドメイン)、並びにその他方の端部における定常ドメイン(「CL」ドメイン)を有するが、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並行し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並行する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとのインターフェースを形成すると考えられている。
本明細書で用いられる「合成ポリヌクレオチド」、「合成遺伝子」、又は「合成ポリペプチド」という用語は、対応するポリヌクレオチド配列若しくはその部分、又はアミノ酸配列若しくはその部分が、同等の天然配列と比較して、新規にデザインされているか、新規に合成されているか、又は修飾されている配列に由来することを意味する。合成ポリヌクレオチド(抗体又は抗原結合断片)又は合成遺伝子は、核酸配列又はアミノ酸配列の化学合成が含まれるがこれらに限定されない、当技術分野で知られている方法により調製することができる。合成遺伝子は、アミノ酸レベル又はポリヌクレオチドレベル(又はこれらの両方のレベル)で天然遺伝子とは異なることが典型的であり、合成の発現制御配列との関連で配置されることが典型的である。例えば、合成遺伝子配列は、例えば、1又は複数のアミノ酸又はヌクレオチドの置換、欠失、又は付加により変化しており、これにより、供給源の配列とは異なる、抗体のアミノ酸配列又は配列をコードするポリヌクレオチドを提供する、アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を包含しうる。合成遺伝子のポリヌクレオチド配列は、天然遺伝子と比較して異なるアミノ酸を伴うタンパク質を必ずしもコードしうるわけではない;例えば、それらはまた、異なるコドンではあるが、同じアミノ酸をコードする(すなわち、ヌクレオチドの変化が、アミノ酸レベルではサイレントの突然変異を表す)コドンを組み込む合成ポリヌクレオチド配列も包含しうる。
抗体に関する「可変ドメイン」という用語は、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性に関して用いられる抗体の可変ドメインを指す。しかし、その可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたり一様に分布しているわけではない。そうではなくて、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインのいずれにおいても、可変性は、超可変領域(また、CDRとしても知られる)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうちのより高度に保存的な部分を、「フレームワーク領域」又は「FR」と称する。修飾されていない重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、大半がβシートの立体構造をとり、且つ、3つずつのCDR(該βシート構造を連結するループ、並びに場合によって、該βシート構造の部分を形成する)を散在させる、4つずつのFR(FR1、FR2、FR3、及びFR4)を含有する。各鎖内のCDRは、FRにより、併せて密接する形で近傍に保持され、他の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)、647〜669ページを参照されたい)。
本明細書で用いられる「超可変領域」及び「CDR」という用語は、抗原結合の一因となる抗体のアミノ酸残基を指す。CDRは、相補的な形で抗原に結合する3つの配列領域に由来するアミノ酸残基を含み、VH鎖及びVL鎖の各々について、CDR1、CDR2、及びCDR3として知られている。Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)によれば、軽鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)、及び89〜97(CDRL3)に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基31〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)、及び95〜102(CDRH3)に対応することが典型的である。異なる抗体のCDRは、挿入を含有する可能性があり、したがって、アミノ酸の番号付けが異なりうることが理解される。Kabatによる番号付けシステムは、特定の残基に対する添え字(例えば、軽鎖では、CDRL1の27A、27B、27C、27D、27E、及び27F)を使用して異なる抗体間における番号付けへの任意の挿入を反映する番号付けスキームで、このような挿入に対処している。代替的に、Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917(1987)によれば、軽鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基26〜32(CDRL1)、50〜52(CDRL2)、及び91〜96(CDRL3)に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基26〜32(CDRH1)、53〜55(CDRH2)、及び96〜101(CDRH3)に対応することが典型的である。
本明細書で用いられる「フレームワーク領域」又は「FR」とは、抗原結合ポケット又は抗原結合グルーブの一部を形成するフレームワークのアミノ酸残基を指す。一部の実施形態では、フレームワーク残基が、抗原結合ポケット又は抗原結合グルーブの一部であるループを形成し、このループ内のアミノ酸残基が、抗原と接触する場合も接触しない場合もある。フレームワーク領域は一般に、CDR間の領域を構成する。Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)によれば、軽鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜23(FRL1)、35〜49(FRL2)、57〜88(FRL3)、及び98〜109に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜30(FRH1)、36〜49(FRH2)、66〜94(FRH3)、及び103〜133に対応することが典型的である。軽鎖のKabatによる番号付けについて上記で論じた通り、重鎖への挿入もまた、同様の形で対処されている(例えば、重鎖では、CDRH1の35A、35B)。代替的に、Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917(1987)によれば、軽鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜25(FRL1)、33〜49(FRL2)、53〜90(FRL3)、及び97〜109(FRL4)に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜25(FRH1)、33〜52(FRH2)、56〜95(FRH3)、及び102〜113(FRH4)に対応することが典型的である。
FRのループアミノ酸は、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖の三次元構造を検討することにより評価及び決定することができる。溶媒に接触可能なアミノ酸位置は、ループを形成し、且つ/又は抗体可変ドメインにおいて抗原を接触させる可能性が高いので、このような位置について三次元構造を解析することができる。溶媒に接触可能な位置のうちのある位置は、アミノ酸の多様性を許容することが可能であり、他の位置(例えば、構造的位置)は一般に、多様性が低度である。抗体可変ドメインの三次元構造は、結晶構造に由来する場合もあり、タンパク質モデリングに由来する場合もある。
抗体の定常ドメイン(Fcドメイン)は、抗体の抗原に対する結合には直接関与せずに、例えば、Fc受容体(FcR)との相互作用を介して、抗体依存性細胞傷害作用への抗体の関与など、各種のエフェクター機能を呈示する。Fcドメインはまた、患者への投与後において循環する抗体のバイオアベイラビリティーも増大させる。
それらの重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。これらは、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、これらのうちのいくつかを、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2へとさらに分割することができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメイン(Fcドメイン)を、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと称する。異なる免疫グロブリンのクラスのサブユニットの構造並びに三次元の立体構造はよく知られている。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(又は「κ」若しくは「K」)及びラムダ(又は「λ」)と称する2つの明確に異なる類型のうちの1つに割り当てることができる。
本明細書では、「抗体の抗原結合部分」、「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗体断片」、又は「抗体の機能的断片」という用語を互換的に用いて、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1又は複数の断片を指す。このような用語の範囲内に包含される抗体断片の非限定的な例には、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含有する二価断片である、F(ab’)2断片;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインを含有するFv断片;(v)VHドメインを含有するdAb断片(Wardら(1989)、Nature 341:544〜546);並びに(vi)単離CDRが含まれるがこれらに限定されない。加えて、この定義には、単一の重鎖並びに単一の軽鎖を含む「半」抗体も包含される。本明細書にはまた、ダイアボディーなど、単鎖抗体の他の形態も包含される。
「F(ab’)2」部分及び「Fab」部分は、Igを、ペプシン及びパパインなどのプロテアーゼで処理することにより作製することができ、2本の重鎖の各々のヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の近傍で免疫グロブリンを消化することにより生成される抗体断片を包含する。例えば、パパインは、2本の重鎖の各々のヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の上流でIgGを切断して、VL及びCL(軽鎖定常領域)からなる軽鎖と、VH及びCHγ1(重鎖定常領域内のγ1領域)からなる重鎖断片とが、ジスルフィド結合を介してそれらのC末端領域で連結されている、2つの相同的な抗体断片を生成させる。これらの2つの相同的な抗体断片の各々を、Fab’と称する。ペプシンもまたIgGを切断するが、2本の重鎖の各々のヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の下流においてであり、上記で言及した2つのFab’をヒンジ領域で連結させた、Fab’断片よりやや大型の抗体断片を生成させる。この抗体断片を、F(ab’)2と称する。
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメイン並びに重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域に由来する1又は複数のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端において、数個の残基が付加されていることにより、Fab断片とは異なる。本明細書では、Fab’−SHを、定常ドメインのシステイン残基(単数又は複数)が、遊離チオール基を保有するFab’の呼称とする。F(ab’)2抗体断片は元来、それらの間にヒンジ領域のシステインを有するFab’断片の対として作製された。また、抗体断片の他の化学的な連結についても知られている。
「Fv」とは、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する抗体断片を指す。この領域は、非共有結合又は共有結合により密に会合する、1つの重鎖可変ドメイン並びに1つの軽鎖可変ドメインによる二量体からなる(当技術分野では、ジスルフィド結合により連結されたFv’が説明されている;Reiterら(1996)、Nature Biotechnology 14:1239〜1245)。各可変ドメインの3つずつのCDRが相互作用してこのVH−VL二量体の表面上における抗原結合部位を規定するのは、この構成においてである。VH鎖及びVL鎖の各々に由来するCDRのうちの1又は複数の組合せにより集合的に、該抗体に抗原結合特異性が付与される。例えば、レシピエント抗体又はその抗原結合断片のVH鎖及びVL鎖へと導入される場合なら、CDRH3及びCDRL3でも、抗体に抗原結合特異性を付与するには十分でありうるであろうし、このCDRの組合せを、本明細書で説明される技法のうちのいずれかを用いて、結合、アフィニティーなどについて調べることができることを理解されたい。第2の可変ドメインと組み合わせた場合より低度のアフィニティーにおいてである可能性が高いが、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRだけを含む、Fvの半分)もなお、抗原を認識し、これに結合する能力を有する。さらに、Fv断片の2つのドメイン(VLドメイン及びVHドメイン)は、個別の遺伝子によりコードされるが、そこにおいてはVL領域及びVH領域が対合して一価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として知られる;Birdら(1988)、Science 242:423〜426;Hustonら(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883;並びにOsbournら(1998)、Nat.Biotechnol.16:778)単一のタンパク質鎖としてこれらを作製することを可能にする、合成リンカーを介する組換え法を用いてこれらを接合することもできる。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内にはまた、このようなscFvも包含されることが意図される。完全なIg(例えば、IgG)分子又は他のアイソタイプをコードする発現ベクターを生成させるためには、特定のscFvのうちの任意のVH配列及びVL配列を、Fc領域のcDNA配列又はゲノム配列に連結することができる。VH配列及びVL配列はまた、タンパク質化学反応法又は組換えDNA法を用いて、Fab、Fv、又は他のIg断片を生成させるのにも用いることができる。
「単鎖Fv」抗体断片又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインを、単一のポリペプチド鎖内に存在させる。一部の実施形態では、Fvポリペプチドが、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、該sFvが、抗原に対する結合に所望される構造を形成することを可能とする。sFvの総説については、例えば、Plueckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」、113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer−Verlag、New York、269〜315ページ(1994)を参照されたい。
「AVIMER(商標)」という用語は、ヒト由来の治療用タンパク質のクラスを指すが、抗体並びに抗体断片とは類縁でなく、Aドメイン(また、クラスAモジュール、補体型の反復配列、又はLDL受容体クラスAドメインとも称する)と称する、複数のモジュール型結合ドメイン並びに再使用可能な結合ドメインからなる。これらは、in vitroにおけるエクソンシャフリング及びファージディスプレイ(Silvermanら、2005、Nat.Biotechnol.23:1493〜1494;Silvermanら、2006、Nat.Biotechnol.24:220)により、ヒト細胞外受容体ドメインから開発された。結果として得られるタンパク質は、単一のエピトープに結合するタンパク質と比較して、アフィニティー(場合によって、ナノモル未満)及び特異性の改善を呈示しうる、複数の個別の結合ドメインを含有しうる。例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0221384号;同第2005/0164301号;同第2005/0053973号;及び同第2005/0089932号;同第2005/0048512号;及び同第2004/0175756号を参照されたい。
既知である217のヒトAドメインの各々は、約35アミノ酸(約4kDa)を含み、これらのドメインは、平均5アミノ酸の長さのリンカーにより隔てられている。天然のAドメインは、主にカルシウム結合並びにジスルフィド結合の形成を介して、迅速且つ効率的に均一で安定的な構造へとフォールドする。この共通の構造に必要とされるのは、わずかに12アミノ酸の保存的な足場モチーフである。この最終結果として、それらの各々が個別の機能を表す複数のドメインを含有する、単一のタンパク質鎖がもたらされる。これらのタンパク質の各ドメインは個別に結合し、各ドメインのエネルギー的な寄与は相加的である。これらのタンパク質は、アビディティー多量体にちなんで「AVIMER(商標)」と命名された。
「ダイアボディー」という用語は、同じポリペプチド鎖(VH−VL鎖)において、軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)に連結された重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含む、2つの抗原結合部位を伴う低分子抗体断片を指す。同じ鎖上の2つのドメイン間における対合を可能とするには短すぎるリンカーを用いることにより、該ドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディーは、例えば、EP404,097;WO93/11161;並びにHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444〜6448(1993)においてより十分に説明されている。
抗原結合ポリペプチドにはまた、例えば、ラクダ及びサメに由来する抗体などの重鎖二量体も含まれる。ラクダ抗体及びサメ抗体は、V様ドメイン及びC様ドメインの2本の鎖(いずれも軽鎖を有さない)によるホモ二量体対を含む。ラクダにおける重鎖二量体であるIgGのVH領域は、軽鎖と疎水性相互作用する必要がないので、通常なら軽鎖に接触する重鎖の領域を、ラクダにおける親水性アミノ酸残基へと変化させることができる。重鎖二量体によるIgGのVHドメインを、VHHドメインと称する。サメのIg−NARは、1つの可変ドメイン(V−NARドメインと称する)と、5つのC様定常ドメイン(C−NARドメイン)によるホモ二量体を含む。ラクダでは、VH領域又はVHH領域内のCDR1、2、及び3により抗体レパートリーの多様性が決定される。ラクダVHH領域内のCDR3は、その比較的長い16アミノ酸の長さを特徴とする(Muyldermansら、1994、Protein Engineering 7(9):1129)。これは、他の多くの種の抗体のCDR3とは対照的である。例えば、マウスVHのCDR3は、平均9アミノ酸である。ラクダ可変領域のin vivoにおける多様性を維持する、ラクダに由来する抗体可変領域のライブラリーは、例えば、米国特許出願第20050037421号で開示される方法により作製することができる。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態には、非ヒトIgに由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体が含まれる。大部分において、ヒト化抗体は、その中のレシピエントCDRのうちの1又は複数が、所望の特異性、アフィニティー、及び結合機能を有する、マウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長動物など、ヒト以外の種の抗体(ドナー抗体)に由来するCDRにより置換されているヒトIg(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒトIgの1又は複数のFRアミノ酸残基も、対応する非ヒトアミノ酸残基により置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含有する場合がある。必要な場合は、これらの修飾を施して、抗体の効能を洗練させることができる。ヒト化抗体は、少なくとも1つであり、場合によっては2つである可変ドメインのうちの実質的に全部を含むことが可能であり、この中の超可変領域のうちの全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、FRのうちの全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリン配列によるFRである。ヒト化抗体は、場合によってまた、免疫グロブリン定常領域(Fc領域)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFc領域のうちの少なくとも一部も包含しうる。詳細については、Jonesら、Nature 321:522〜525(1986);Reichmannら、Nature 332:323〜329(1988);並びにPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596(1992)を参照されたい。
ヒト化抗体はまた、その中の重鎖及び軽鎖のCDRのうちの一部又は全部が、非ヒトモノクローナル抗体に由来し、該可変領域の残りの部分の実質的にすべてが、ヒト可変領域(重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)に由来し、定常領域が、ヒト定常領域に由来する抗体も包含する。一実施形態では、重鎖及び軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域が、非ヒト抗体に由来する。さらに別の実施形態では、重鎖及び軽鎖のうちの少なくとも1つのCDR(例えば、CDR3)が、非ヒト抗体に由来する。CDR1、CDR2、及びCDR3による多様な組合せが非ヒト抗体に由来することが可能であり、本明細書ではこれらが意図されている。非限定的な一例では、重鎖及び軽鎖の各々のCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域のうちの1又は複数が、マウスキメラモノクローナル抗体クローンであるTRC105に由来する。
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、わずかな量で存在しうる可能な天然の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位を指向するので、高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を包含しうる従来の(ポリクローナル)抗体の調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原における単一の決定基を指向する。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるものとしての抗体の特徴を示唆するものであり、何らかの特定の方法による抗体の作製を要請するものとしては見なされないものとする。例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975)により最初に説明されたハイブリドーマ法により作製することもでき、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により作製することもできる。ある実施形態では、例えば、Clacksonら、Nature 352:624〜628(1991);並びにMarksら、J.Mol.Biol.222:581〜597(1991)において説明されている技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーからモノクローナル抗体を単離することもできる。
抗体は、飽和硫酸アンモニウム沈殿、ユーグロビン沈降法、カプロン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAE又はDE52による)、或いは以下でより詳細に説明されるカラムなど、抗Igカラム又はプロテインAカラム、プロテインGカラム、若しくはプロテインLカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーを介して、上記で言及した培養物上清又は腹水から単離及び精製することができる。
本明細書で説明される組成物及び方法において用いられる例示的な抗体は、例えば、ヒト化抗体などの完全免疫グロブリン分子、又はFab、Fab’、F(ab)’、F(ab’)2、Fd、scFv、重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、可変NARドメイン、二重特異性scFv、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、及び単鎖結合ポリペプチド、並びにまた抗原結合断片とも称される他のポリペプチドなど、当技術分野で知られるヒト化Ig分子の部分を含めた、抗原結合部位(すなわち、パラトープ)若しくは単一の重鎖並びに単一の軽鎖を含有するヒト化Ig分子の部分である。免疫グロブリン分子又はその断片を構築する場合は、可変領域又はそれらの部分を、1又は複数の定常領域又はそれらの部分に融合させるか、連結するか、又は他の形で接合して、本明細書で説明される抗体又はそれらの断片のうちのいずれかを作製することができる。これは、分子クローニング法、又は該分子をコードする核酸の直接的な合成が含まれるがこれらに限定されない、当技術分野で知られる各種の方法により達成することができる。また、本明細書で説明される例においても、これらの分子を構築するための、非限定的な例示的方法を見出すことができる。
例示的な一実施形態では、本出願が、エンドグリンに結合し、且つ、場合によって、免疫グロブリンのFc領域を有する重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を有する、単鎖結合ポリペプチドを意図する。例示的な一実施形態では、本出願が、エンドグリンに結合して血管新生を阻害し、且つ、場合によって、免疫グロブリンのFc領域を有する重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を有する、単鎖結合ポリペプチドを意図する。このような分子は、場合によって、免疫グロブリンのFc領域が存在することを介して、エフェクター機能を有するか、又は半減期が延長された、単鎖可変領域断片である。当技術分野では、単鎖結合ポリペプチドを調製する方法が知られている(例えば、米国特許出願第2005/0238646号)。
「生殖細胞系列の遺伝子セグメント」又は「生殖細胞系列の配列」という用語は、生殖細胞系列(生殖細胞系列がそれに由来して形成される配偶子並びにこれらの二倍体細胞)に由来する遺伝子を指す。生殖細胞系列のDNAは、単一のIg重鎖又はIg軽鎖をコードする複数の遺伝子セグメントを含有する。これらの遺伝子セグメントは、胚細胞内に保有されるが、それらが機能的遺伝子へと構成されるまでは、重鎖及び軽鎖へと転写及び翻訳される可能性がない。骨髄においてB細胞が分化するときに、これらの遺伝子セグメントは、108通りを超える特異性を生成させることが可能な動的遺伝子システムにより無作為にシャフリングされる。これらの遺伝子セグメントの大半は、生殖細胞系列のデータベースにより公表及び収集されている。
本明細書で用いられる「免疫反応性」とは、結合剤、抗体又はその断片が、アミノ酸残基の配列(「結合部位」又は「エピトープ」)に特異的であり、さらにまた、他のペプチド/タンパク質と交差反応性であっても、それらをヒトへの投与用に製剤化するレベルでは毒性でないことを指す。「結合」という用語は、例えば、生理学的条件下における共有結合による相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、並びにイオン性相互作用及び/又は水素結合による相互作用に起因する、2つの分子間における直接的な会合を指し、これには、塩架橋及び水架橋などの相互作用、並びに他の任意の従来の結合手段が含まれる。「優先的に結合する」という用語は、結合剤が、非類縁のアミノ酸配列に結合する場合のアフィニティーを超えるアフィニティーで結合部位に結合することを意味する。このようなアフィニティーは、非類縁のアミノ酸配列に対する該結合剤のアフィニティーの少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍であるか、10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍であるか、又は少なくとも1000倍であることが好ましい。本明細書では、「免疫反応性」という用語と、「優先的に結合する」という用語とを互換的に用いる。
本明細書で用いられる「アフィニティー」という用語は、2つの薬剤の可逆的結合についての平衡定数を指し、KDとして表す。抗体のエピトープに対するアフィニティーなど、結合タンパク質のリガンドに対するアフィニティーは、例えば、約100ナノモル(nM)〜約0.1nM、約100nM〜約1ピコモル(pM)、又は約100nM〜約1フェムトモル(fM)でありうる。本明細書で用いられる「アビディティー」という用語は、2つ以上の薬剤の複合体が、希釈後の解離に対して示す抵抗性を指す。みかけのアフィニティーは、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、又は当業者によく知られる他の任意の技法などの方法により決定することができる。アビディティーは、スカチャード解析、又は当業者によく知られる他の任意の技法などの方法により決定することができる。
「エピトープ」とは、抗体の可変領域結合ポケットと結合相互作用を形成することが可能な、抗原又は他の高分子の部分を指す。このような結合相互作用は、1又は複数のCDRの1又は複数のアミノ酸残基との分子間接触として顕在化されうる。抗原の結合は、例えば、VH鎖及びVL鎖のうち、CDR3若しくはCDR3対、又は、場合によって、最大で6つのCDRすべてによる相互作用を伴いうる。エピトープは、直鎖状のペプチド配列(すなわち、「連続」エピトープ)の場合もあり、不連続的なアミノ酸配列(すなわち、「立体構造」エピトープ又は「不連続」エピトープ)の場合もある。抗体は、1又は複数のアミノ酸配列を認識することが可能であり、したがって、エピトープは、複数の異なるアミノ酸配列を規定しうる。抗体により認識されるエピトープは、当業者によく知られるペプチドマッピング法及び配列解析法により決定することができる。結合相互作用は、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸残基との分子間接触として顕在化される。TRC105は、米国特許第5,928,641号;同第6,200,566号;同第6,190,660号;及び同第7,097,836号においてY4−2F1又はSN6jとして説明されたマウス抗体と同じ可変領域のアミノ酸配列を有するキメラ抗体である。Y4−2F1及びSN6jにより認識されるエピトープ、したがって、TRC105によって認識されるエピトープは、既に同定されている。
「特異的な」という用語は、抗体が、それにより認識されるエピトープを含有する抗原以外の分子に対して著明な結合を示さない状況を指す。この用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが、多数の抗原により保有される特定のエピトープに対して特異的である場合にも適用可能であり、この場合、該抗原結合ドメインを保有する抗体又はその抗原結合断片は、該エピトープを保有する多様な抗原に結合することが可能である。「優先的に結合する」又は「特異的に結合する」という用語は、抗体又はそれらの断片が、非類縁のアミノ酸配列に結合する場合のアフィニティーを超えるアフィニティーでエピトープに結合し、且つ、該エピトープを含有する他のポリペプチドと交差反応性の場合であっても、それらをヒトへの投与使に製剤化するレベルでは毒性でないことを意味する。一態様では、このようなアフィニティーが、非類縁のアミノ酸配列に対する該抗体又はその断片のアフィニティーの少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍であるか、10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍であるか、又は少なくとも1000倍であることが好ましい。本明細書では、「免疫反応性」、「結合する」、「優先的に結合する」、並びに「特異的に結合する」という用語を互換的に用いる。「結合」という用語は、例えば、生理学的条件下における共有結合による相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、並びにイオン性相互作用及び/又は水素結合による相互作用に起因する、2つの分子間における直接的な会合を指し、これには、塩架橋及び水架橋などの相互作用、並びに従来の他の結合手段が含まれる。
「保存的アミノ酸置換」という語句は、ある共通の特性に基づくアミノ酸の群分けを指す。個々のアミノ酸間における共通の特性を規定する機能的な方法は、同種生物の対応するタンパク質間におけるアミノ酸変化の標準化頻度を解析することである(Schulz,G.E.及びR.H.Schirmer、「Principles of Protein Structure」、Springer−Verlag)。このような解析によれば、ある群内のアミノ酸が、互いと優先的に交換され、したがって、全体的なタンパク質構造に対するそれらの影響において互いに類似し合うアミノ酸群を規定することができる(Schulz,G.E.及びR.H.Schirmer、「Principles of Protein Structure」、Springer−Verlag)。このような形で規定されるアミノ酸群の例には、
(i)Glu及びAsp、Lys、Arg及びHisからなる帯電基
(ii)Lys、Arg及びHisからなる正帯電基
(iii)Glu及びAspからなる負帯電基
(iv)Phe、Tyr及びTrpからなる芳香環基
(v)His及びTrpからなる窒素環基
(vi)Val、Leu及びIleからなる高分子の脂肪族の非極性基
(vii)Met及びCysからなる弱極性基
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln及びProからなる低分子残基
(ix)Val、Leu、Ile、Met及びCysからなる脂肪族基、並びに
(x)Ser及びThrからなる低分子のヒドロキシル基
が含まれる。
上記で提示された群に加え、各アミノ酸残基は、その固有の群を形成することが可能であり、個々のアミノ酸により形成される群を、上記で説明した通りに当技術分野で一般的に用いられる、このアミノ酸に対する一文字及び/又は三文字の短縮形により簡潔に指し示すことができる。
「保存的残基」とは、ある範囲にわたる類似のタンパク質を通じて比較的不変であるアミノ酸である。保存的残基の変化は、「保存的アミノ酸置換」について上記で説明した類似のアミノ酸による置換だけによる。
本明細書のアミノ酸配列で用いられる「x」又は「xaa」という文字は、別段に具体的に言及しない限り、20の標準的アミノ酸のうちのいずれかをこの位置に配置しうることを示唆する。ペプチド模倣体をデザインする目的では、アミノ酸配列中の「x」又は「xaa」を、標的配列中に存在するアミノ酸の模倣体で置換することもでき、該ペプチド模倣体の活性に干渉しない、本質的に任意の形態のスペーサーで該アミノ酸を置換することもできる。
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」とは、2つのペプチド間における配列類似性、又は2つの核酸分子間における配列類似性を指す。比較を目的として配列決定しうる、各配列内の位置を比較することにより、相同性及び同一性の各々を決定することができる。比較される配列内の同等の位置が、同じ塩基又はアミノ酸で占有されている場合は、該分子がその位置で同一であり、同じアミノ酸残基又は類似のアミノ酸残基(例えば、立体的性質及び/又は電子的性質において類似するアミノ酸残基)により同等の部位が占有されている場合は、該分子がその位置で相同である(類似する)と称することができる。相同性/類似性又は同一性の百分率としての表現は、比較される配列により共有される位置において同一であるか又は類似するアミノ酸の数の関数を指す。「非類縁」又は「非相同」である配列が共有する同一性は40%未満であるが、本発明の配列との同一性は25%未満であることが好ましい。2つの配列を比較するときはまた、残基(アミノ酸又は核酸)が存在しなくても、過剰な残基が存在しても、同一性及び相同性/類似性が低下する。
「相同性」という用語は、類似の機能又はモチーフを伴う遺伝子又はタンパク質を同定するのに用いられる、数学的計算に基づく配列類似性の比較について述べる。本発明の核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド)配列及びアミノ酸(タンパク質)配列は、例えば、他のファミリーメンバー、類縁配列、又は相同体を同定する目的で、公共のデータベースに対する検索を実施するための「探索配列」として用いることができる。このような検索は、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.215:403〜10によるNBLASTプログラム及びXBLASTプログラム(version 2.0)を用いて実施することができる。本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るためには、スコア=100、ワード長=12のNBLASTプログラムにより、BLASTヌクレオチド検索を実施することができる。本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るためには、スコア=50、ワード長=3のXBLASTプログラムにより、BLASTアミノ酸検索を実施することができる。比較を目的として、ギャップを伴う配列決定を行うためには、Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res.25(17):3389〜3402において説明される通りに、Gapped BLASTを使用することができる。BLASTプログラム及びGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTプログラム及びBLASTプログラム)のデフォルトのパラメータを用いることができる(www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。
本明細書で用いられる「同一性」とは、2つ以上の配列を、配列マッチングを最大化するように、すなわち、ギャップ及び挿入を考慮に入れて配列決定するときに、これらの配列の対応する位置において同一なヌクレオチド又はアミノ酸残基の百分率を意味する。同一性は、「Computational Molecular Biology」、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;「Computer Analysis of Sequence Data」、I部、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;「Sequence Analysis in Molecular Biology」、von Heinje,G.、Academic Press、1987;並びに「Sequence Analysis Primer」、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991;並びにCarillo,H.及びLipman,D.,SIAM、J.Applied Math.、48:1073(1988)において説明されている方法が含まれるがこれらに限定されない既知の方法により容易に計算することができる。調べる配列間に最大のマッチを与えるように、同一性を決定する方法をデザインする。さらに、同一性を決定する方法を、一般に入手可能なコンピュータプログラムにより体系化することができる。2つの配列間における同一性を決定するコンピュータプログラムによる方法には、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul,S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403〜410(1990);並びにAltschulら、Nuc.Acids Res.25:3389〜3402(1997))が含まれるがこれらに限定されない。BLAST Xプログラムは、NCBI並びに他の供給源(「BLAST Manual」、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH、Bethesda、Md.20894;Altschul,S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403〜410(1990))から一般に入手可能である。同一性を決定するにはまた、周知のSmith Watermanによるアルゴリズムも用いることができる。
ポリペプチドに対して適用される場合の「単離」(「実質的に純粋」と互換的に用いられる)とは、その由来又は操作により、(i)発現ベクターの部分による発現産物として宿主細胞内に存在するか、又は(ii)天然においてそれが連結されているタンパク質若しくは他の化学的部分以外のタンパク質若しくは他の化学的部分に連結されているか、又は(iii)天然では存在しない、例えば、それが、天然では見出されない形態にあるように、それに少なくとも1つの疎水性部分を添加又は付加することを介して化学的に操作されているタンパク質である、ポリペプチド又はその部分を意味する。「単離」とはさらに、(i)化学的に合成されているタンパク質、又は(ii)宿主細胞内で発現し、且つ、会合及び夾雑するタンパク質から精製されているタンパク質も意味する。該用語は一般に、天然ではそれが共に存在する他のタンパク質及び核酸から分離されているポリペプチドを意味する。ポリペプチドはまた、それを精製する目的で用いられる抗体又はゲルマトリックス(ポリアクリルアミドゲルマトリックス)などの物質からも分離されていることが好ましい。
本明細書で用いられる「血管新生阻害性」、「血管新生阻害」、又は「抗血管新生」という用語は、血管形成を包含し、新血管形成の程度、量、又は速度を低下させる手段を意味することを意図する。組織における内皮細胞の増殖又は遊走の程度、量、又は速度を低下させることは、血管新生を阻害することの具体例である。
「血管新生阻害性組成物」という用語は、内皮細胞の遊走、増殖、管形成など、血管新生を介する過程を阻害し、その後、既存の血管から新たな血管が形成されることを阻害し、結果として、血管新生依存性状態に影響を及ぼす組成物を指す。
本明細書で用いられる「血管新生依存性状態」とは、血管新生又は血管形成の過程が、病理学的状態を持続若しくは増進させるか、又は正常な生理学的過程に有益な影響を及ぼす状態を意味することを意図する。したがって、血管新生が病理学的状態を持続させている血管新生依存性状態を治療すれば、疾患の緩和が結果としてもたらされうるのに対し、血管新生が正常な生理学的過程に有益な影響を及ぼしている血管新生依存性状態を治療すれば、例えば、正常な過程が増強されうるであろう。
血管新生は、既存の毛細血管又は毛細血管発生後の小血管から新たな血管が形成されることである。血管形成は、内皮細胞の前駆体である血管芽細胞から生じる新たな血管の形成の結果としてもたらされる。いずれの過程も、新たな血管の形成を結果としてもたらし、血管形成依存性状態という用語の意味の範囲内に包含される。本明細書で用いられる「血管新生」という用語は、血管形成から生じる血管のほか、既存の血管である毛細血管及び小血管が分枝及び出芽することから生じる血管などが新規に形成されることを包含することを意図する。血管新生はまた、ALK1によるシグナル伝達並びに関連のSmad1/5/8のリン酸化並びに/又はこれによるシグナル伝達の誘導も包含しうる。また、CD105も、ALK1によるシグナル伝達経路に関与することが知られており、したがってまた、血管新生の意味の範囲内に包含される。
「宿主免疫反応の誘導」とは、患者が、疾病の徴候又は症状の緩和又は軽減を経験することを意味し、限定なしに述べれば、具体的に、生存の延長がこれに含まれる。本発明による方法のある好ましい実施形態では、該アンタゴニストを投与された患者において、IFN−γを生成させるCD8+ T細胞が活性化されて、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)による免疫反応が誘導される。本発明による方法のある実施形態では、該組成物を投与された患者において、IFN−γを生成させるCD4+ T細胞が活性化されて、ヘルパーT細胞による免疫反応が誘導される。これらのIFN−γを生成させる活性化CD4+ T細胞(すなわち、ヘルパーT細胞)は、CTLだけでなく、B細胞を介する体液性免疫反応も誘導及び維持するのに必要な免疫的支援(例えば、サイトカインの放出を介する)をもたらす。したがって、本発明による方法のある実施形態では、該組成物を投与された患者において、抗原に対する体液性免疫反応が活性化される。一態様では、該組成物にアジュバントを添加して、免疫反応を増大させることができる。当技術分野ではアジュバントがよく知られている。
CD8+ T細胞及び/又はCD4+ T細胞の活性化とは、サイトカイン(例えば、IFN−γ)を生成させる能力を有するT細胞に、1若しくは複数のサイトカインを実際に生成させるか、又はそれらによる1若しくは複数のサイトカインの生成を増大させることを意味する。「CTL反応の誘導」とは、潜在的な細胞傷害性Tリンパ球に、抗原特異的な細胞傷害作用を呈示させることを意味する。「抗原特異的な細胞傷害作用」とは、がんと関連する抗原を提示する細胞に対する細胞傷害作用が、がんと関連しない抗原を提示する細胞に対する細胞傷害作用より大きいことを意味する。「細胞傷害作用」とは、細胞傷害性Tリンパ球が、標的細胞を死滅させる能力を指す。このような抗原特異的な細胞傷害作用は、がんと関連しない抗原を提示する細胞に対する細胞傷害作用の少なくとも約3倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍以上でありうる。抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)はまた、抗体の結合を介して細胞の殺滅を媒介するナチュラルキラー細胞(「NK細胞」)の活性化も包含する。本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片は、エンドグリンへの結合を介して、NK細胞によるADCCを媒介しうる。
本明細書で用いられる「増殖性障害」及び「増殖性状態」という用語は、異常な増殖又は望ましくない増殖を特徴とする、任意の病理学的状態又は非病理学的な生理学的状態を意味する。「細胞増殖性障害」及び「細胞増殖性状態」という用語は、異常な細胞増殖又は望ましくない細胞増殖を特徴とする、任意の病理学的状態又は非病理学的な生理学的状態を意味するほか、望ましくない細胞増殖若しくは細胞存続又は有害な細胞増殖若しくは細胞存続(例えば、アポトーシスの欠損に起因する)を特徴とする状態、アポトーシスの欠損又は異常を特徴とする状態、並びに異常であるか、又は望ましくないか、又は有害な細胞存続を特徴とする状態も包含する。「分化障害」という用語は、分化の異常又は欠損を特徴とする任意の病理学的状態又は非病理学的な生理学的状態を意味する。
治療に適する増殖性障害又は分化障害は、異常であるか又は望ましくない細胞数、細胞増殖、又は細胞存続を特徴とする、良性及び新生物性の疾患並びに非病理学的な生理学的状態を包含する。したがって、このような障害又は状態が疾患状態を構成し、且つ、すべての種類のがん性増殖若しくは発癌性過程、転移性組織、又は悪性形質転換細胞、悪性形質転換組織、若しくは悪性形質転換器官を包含する場合もあり、非病理学的である、すなわち、正常からの逸脱が見られるが、典型的に疾患を随伴させるわけではない場合もある。本発明に従って治療しうる非病理学的状態の具体例は、瘢痕を結果としてもたらす、創傷修復に由来する組織の再増殖である。
増殖性障害又は分化障害を含む細胞は、細胞塊に凝集する場合もあり、分散する場合もある。「充実性腫瘍」という用語は、一体に凝集し、且つ、集塊を形成することが典型的な新生物又は転移を指す。具体例には、胃がん又は結腸がん、肝腫、腎癌、肺癌、及び脳腫瘍(brain tumor/cancer)などの悪性腫瘍が含まれる。「非充実性腫瘍」とは、それらが充実性の集塊を形成しないことが典型的であるので、リンパ腫、骨髄腫、及び白血病など、造血系の新生物又はびまん性の新生物を指す。白血病の具体例には、例えば、急性リンパ芽球性骨髄腫及び慢性リンパ芽球性骨髄腫、急性骨髄芽球性骨髄腫及び慢性骨髄芽球性骨髄腫、並びに急性多発性骨髄腫及び慢性多発性骨髄腫が含まれる。
このような障害には、事実上任意の細胞型又は組織型が罹患しうる新生物又はがん、例えば、癌腫、肉腫、黒色腫、転移性障害、又は造血系の新生物性障害が含まれる。転移性腫瘍は、乳房、肺、甲状腺、頭頚部、脳、リンパ、消化器(口腔、食道、胃、十二指腸、結腸、直腸)、生殖−泌尿器(子宮、卵巣、子宮頚部、膀胱、精巣、陰茎、前立腺)、腎臓、膵臓癌、肝臓、骨、筋肉、皮膚などの腫瘍が含まれるがこれらに限定されない多数の原発性腫瘍型から生じうる。
癌腫とは、上皮組織又は内分泌組織の悪性腫瘍を指し、これらには、呼吸器系癌、消化器系癌、生殖泌尿器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、及び黒色腫が含まれる。例示的な癌腫には、子宮頚部、肺、前立腺、乳腺、頭頚部、結腸、肝臓、及び卵巣から形成される癌腫が含まれる。癌腫という用語はまた、例えば、癌腫性組織及び肉腫性組織からなる悪性腫瘍を包含する癌肉腫も包含する。腺癌腫には、腺状組織の癌腫、又はその中で腫瘍が腺様構造を形成する癌腫が含まれる。
治療される眼組織は、例えば、糖尿病性網膜症、黄斑変性、又は新血管形成性緑内障を有する患者の網膜組織であり、阻害される血管新生は、網膜組織の新血管形成が見られる、網膜組織血管新生である。
治療されるがん性組織は、例えば、異常なレベルのエンドグリンを発現させる内皮組織である。本明細書で用いられる「形質転換細胞」という用語は、無制限の増殖状態へと自発的に転換された細胞、すなわち、細胞が、培養物中で無際限の数の分裂を介して増殖する能力を獲得した状態を指す。形質転換細胞は、それらが増殖の制御を喪失したことに関する、新生物性、退形成性及び/又は過形成性などの用語により特徴付けることができる。本発明の目的では、「悪性哺乳動物細胞の形質転換表現型」及び「形質転換表現型」という用語が、哺乳動物細胞の細胞形質転換と関連する以下の表現型形質:不死化;形態性の形質転換又は増殖性の形質転換;並びに細胞培養物中の増殖の遷延、半固体培地中の増殖の遷延、又は免疫不全の動物又は同系動物における腫瘍形成性増殖により検出される腫瘍原性のうちのいずれかを包含するが、これらに限定されないことを意図する。
本明細書では、「腫瘍細胞抗原」という用語が、非類縁の腫瘍細胞、正常細胞、又は正常体液中において存在するより、腫瘍細胞又は腫瘍性体液においてより高量で存在する抗原として定義される。抗原の存在は、当業者に知られる任意の数のアッセイにより検査することができ、限定なしに述べれば、これらのアッセイには、ELISAアッセイ、ラジオイムノアッセイ、又はウェスタンブロットなどを介して、抗体を伴う陰性選択及び/又は陽性選択が含まれる。
「アポトーシス」又は「プログラム細胞死」という用語は、発生並びに他の正常な生物学的過程において、有害細胞又は不要細胞を消失させる生理学的過程を指す。アポトーシスは、正常な生理学的条件下で生じる細胞死の方式であり、細胞は、それ自身の消滅(「細胞による自死」)への能動的な関与体である。アポトーシスは、正常な細胞回転並びに組織のホメオスタシス、胚形成、免疫忍容性の誘導及び維持、神経系の発生、並びに内分泌依存性組織萎縮において見出されることが最も多い。アポトーシスを経つつある細胞は、特徴的な形態的特色及び生化学的特色を示す。これらの特色には、クロマチンの凝集;核及び細胞質の凝縮;リボソーム、形態的に完全なミトコンドリア、並びに核内物質を含有する膜結合小胞(アポトーシス小体)への細胞質及び核の断片化が含まれる。in vivoでは、これらのアポトーシス小体が、マクロファージ、樹状細胞、又は隣接する上皮細胞により迅速に認識され、且つ、貪食される。in vivoでは、アポトーシス細胞を除去するためのこのように効率的な機構が存在するために、炎症反応が誘発されることはない。in vitroでは、アポトーシス小体並びに残りの細胞断片が、最終的には腫脹し、ついには溶解する。in vitroにおける細胞死のこの終末相は、「二次的壊死」と呼ばれている。アポトーシスは、DNAの断片化、アネキシンVの曝露量、カスパーゼの活性化、チトクロームcの放出など、当業者に知られている方法により測定することができる。本明細書では、死滅するように誘導された細胞を、「アポトーシス細胞」と称する。
本明細書では、「アポトーシス誘導剤」を、アポトーシス/プログラム細胞死を誘導する薬剤と定義し、これには、例えば、放射線照射、細胞、例えば、腫瘍細胞を、プログラム細胞死を経るように誘導する化学療法剤又は受容体ライゲーション剤が含まれる。例示的なアポトーシス誘導剤については、以下でより詳細に説明する。
アポトーシスは、標準的なアネキシンVアポトーシスアッセイを用いて検査することができる:6ウェルプレート(NUNC)内でNIH:OVCAR−3細胞を増殖させ、放射線照射を施すか、又は4〜48時間にわたりアンタゴニスト(又は別の抗がん薬と組み合わせた)で処理し、洗浄し、1時間にわたりアネキシンV−FITC(BD−Pharmingen)で染色する。フローサイトメトリー(Becton−Dickinson;CellQuest)により細胞を解析し、ヨウ化プロピジウムで対比染色し、フローサイトメトリーにより再度解析する。
B.ヒト化抗エンドグリン抗体を作製し、発現させる方法
エンドグリンに結合するキメラモノクローナル抗体が開発されている。この抗体は、TR105(また、c−SN6jとしても知られている)と命名されている。
一態様では、キメラモノクローナル抗体であるTRC105抗体のVL配列及びVH配列(それぞれ、配列番号1及び39)をヒト化することにより、本明細書で説明される抗体並びにそれらの抗原結合断片を創出した。
ヒト化抗体を含めたヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作により構築されている。既に説明されている大半のヒト化免疫グロブリンは、特定のヒト免疫グロブリン鎖(すなわち、アクセプター又はレシピエント)のフレームワークと同一のフレームワークと、非ヒト(すなわちドナー)免疫グロブリン鎖に由来する3つのCDRとを含んでいる。本明細書で説明される通り、ヒト化はまた、ヒト化免疫グロブリン鎖を含む抗体のアフィニティーを増大させるか又は維持するために、それにより、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワーク内の限定された数のアミノ酸を同定し、アクセプターではなくドナーにおけるこれらの位置のアミノ酸と同じアミノ酸であるようにこれらを選択するための基準も包含しうる。
本発明は、ヒト化抗体を作製する先行手段(例として述べると、マウス抗体をCDRの供給源として用いる手段)において、アフィニティーの喪失に寄与する2つの原因が、(1)マウスCDRをヒトフレームワークと組み合わせると、該フレームワーク内の、CDRに近接するアミノ酸が、マウスアミノ酸ではなく、ヒトアミノ酸となること;理論により拘束されることを意図せずに述べると、これらのアミノ酸の変化は、CDRをわずかながら歪ませる可能性があること(例えば、アミノ酸の変化は、ドナーのマウス抗体における静電相互作用力又は疎水性相互作用力とは異なる静電相互作用力又は疎水性相互作用力を創出する可能性があり、CDRがドナー抗体においてもたらした抗原との接触と同程度に有効な接触を、該歪んだCDRはもたらさない可能性があること)であり;(2)また、CDRに近接するが、その一部ではない(すなわち、やはりフレームワークの一部である)元のマウス抗体内のアミノ酸も抗原と接触し、これがアフィニティーに寄与することである、というモデルに部分的に基づいている。抗体をヒト化すると一般に、フレームワークのアミノ酸がすべてヒトアミノ酸となるため、これらのアミノ酸は失われる。これらの問題を回避し、所望の抗原に対するアフィニティーが極めて強力なヒト化抗体を作製するために、以下の原理のうちの1又は複数を用いて、ヒト化抗体並びにそれらの抗原結合断片を構築することができる。
非限定的な一原理は、例えば、通常とは異なり、ヒト化されるドナー免疫グロブリンと相同である特定のヒト免疫グロブリンに由来するフレームワークをアクセプターとして用いるか、又は多くのヒト抗体に由来するコンセンサスフレームワークをアクセプターとして用いるということである。例えば、マウス重鎖(又は軽鎖)可変領域を、データバンク(例えば、National Biomedical Research Foundation Protein Identification Resource;又はNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のタンパク質配列データベース)内のヒト重鎖(又は軽鎖)可変領域と対比すると、異なるヒト領域に対する相同性の程度は、大幅に、例えば、約40%〜約60%、約70%、約80%以上異なりうることが示される。ドナー免疫グロブリンの重鎖可変領域と最も相同的なヒト重鎖可変領域のうちの1つをアクセプター免疫グロブリンとして選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンへの移行において変化するアミノ酸が減少する。ドナー免疫グロブリンの軽鎖可変領域と最も相同的なヒト軽鎖可変領域のうちの1つをアクセプター免疫グロブリンとして選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンへの移行において変化するアミノ酸が減少する。一般に、このような技法を用いると、CDRのうちの1又は複数に近接するアミノ酸を変化させることによりそれらの立体構造を歪ませる可能性が低減される。さらに、ヒト化免疫グロブリン鎖を含むヒト化抗体全体の正確な形状を、ドナー抗体の形状に、より酷似させることができ、これによってもまた、CDRを歪ませる可能性が低減される。
また、同じヒト抗体に由来する軽鎖及び重鎖をアクセプター配列として用いて、該ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖が互いと好ましい接触をもたらし合う可能性を向上させることもできる。代替的にまた、ヒト生殖細胞系列による異なる抗体配列に由来する軽鎖及び重鎖をアクセプター配列として用いることもでき、このような組合せを用いると、VH及びVLが対象のエピトープに結合するかどうかを、従来のアッセイ(例えば、ELISA)を用いて容易に決定することができる。一例では、軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を併せた全体が、ドナーの軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列と極めて相同的となるヒト抗体を選択する。場合によっては、重鎖配列に、より大きな重みをつける。アクセプター免疫グロブリンをどのようにして選択するかとは関わりなく、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワークにおける少数のアミノ酸を、アクセプターではなくドナーにおけるこれらの位置のアミノ酸と同じアミノ酸となるように選択することにより、場合によっては、より高度なアフィニティーを達成することができる。当技術分野では、アフィニティー成熟の方法が知られている。
ヒト化抗体は一般に、ヒト治療に用いるのに、マウス抗体又はキメラ抗体を上回る、少なくとも3つの潜在的な利点を有する。抗体のエフェクター部分がヒト抗体であるため、ヒト化抗体は、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用する(例えば、補体依存性細胞傷害作用(CDC)又は抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)により、より効率的に標的細胞を破壊する)と考えられる。加えて、ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワーク領域又は定常領域を異物としては認識しないはずであり、したがって、このような注射抗体に対する抗体反応は、完全に異物のマウス抗体又は部分的に異物のキメラ抗体に対する抗体反応より低度なはずである。最後に、マウス抗体のヒト循環における半減期は、ヒト抗体の半減期よりはるかに短いことが知られている。ヒト化抗体の半減期は、天然のヒト抗体の半減期により近似しうると推測され、これにより、施される投与をより少数回であり、且つより低頻度とすることができる。
抗体並びにそれらの抗原結合断片のヒト化は、当技術分野において知られており、本明細書でも説明される各種の方法により達成することができる。同様にまた、ヒト化抗体の作製も、当技術分野において知られており、本明細書でも説明される各種の方法により達成することができる。
フレームワーク領域を修飾する方法は、当技術分野において知られており、本明細書でも意図される。変化に関与する1又は複数のフレームワークアミノ酸の位置の選択は、各種の基準に依存する。変化に関与するフレームワークアミノ酸を選択するための1つの基準は、ドナー分子とアクセプター分子とのアミノ酸フレームワーク残基の相対的な差違でありうる。この手法を用いる、変化に関与するフレームワークの位置の選択は、残基の決定における任意の主観的バイアス、又は該残基によるCDRの結合アフィニティーへの寄与における任意のバイアスを回避する利点を有する。
変化に関与するアミノ酸位置を決定するのに用いられうる別の基準は、例えば、CDRの立体構造にとって重要であるか、又はこれに寄与することが知られているフレームワーク残基の選択でありうる。例えば、カノニカルフレームワーク残基が、CDRの立体構造及び/又は構造にとって重要である。カノニカルフレームワーク残基を変化に関与する位置として標的化することを用いて、それと関連するドナーCDR配列に照らして、より適合性のアミノ酸残基を同定することができる。
特定のフレームワーク位置におけるアミノ酸残基の頻度は、変化に関与するフレームワークのアミノ酸位置を選択するのに用いうる別の基準である。例えば、選択されたフレームワークを、そのサブファミリー内の他のフレームワーク配列と比較することにより、1又は複数の特定の位置において低頻度で生じる残基を明らかにすることができる。存在度が低度である残基を保有する位置も同様に、アクセプター可変領域のフレームワークにおいて変化させる位置としての選択に適用可能である。
変化に関与するアミノ酸位置はまた、例えば、CDRに対する近接性に基づいても選択することができる。ある文脈では、FR残基が、CDRの立体構造並びに/又は抗原との結合に関与する可能性がある。さらに、この基準は同様に、本明細書で説明される他の基準によって選択される関与性の位置を優先するのにも用いることができる。したがって、1又は複数のCDRに対して近位の残基と遠位の残基とを差別化することは、変化に関与する位置の数を低減するための一方法を表す。
変化に関与するフレームワークのアミノ酸位置を選択するための他の基準には、例えば、三次元空間において抗原−CDR間インターフェースに近接して存在することが知られるか又はそのように予測されている残基、又はCDRの活性を調節することが予測されている残基が含まれる。同様に、重(VH)鎖可変領域と軽(VL)鎖可変領域との間のインターフェースにおいて接触を形成することが知られているか、又はそのように予測されているフレームワーク残基も選択することができる。このようなフレームワーク位置は、CDR結合ポケット、抗原(エピトープ)との相互作用、又はVH鎖とVL鎖との相互作用を調節することを介して、CDRの立体構造及び/又はアフィニティーに影響を及ぼしうる。したがって、これらのアミノ酸を選択して、結合活性をスクリーニングするための多様な集団を構築すると、CDRの立体構造に対して有害な作用を及ぼす残基を置換するか、又はフレームワークの他の位置で生じる残基の有害な作用を補正するフレームワークの変化を同定するのにこれを用いることができる。
変化させるのに選択しうる他のフレームワーク残基には、溶媒と接触不可能であるアミノ酸位置が含まれる。このような残基は一般に、可変領域内に包埋されており、したがって、CDRの立体構造又はVH鎖とVL鎖との相互作用に影響を及ぼすことが可能である。溶媒との接触可能性は、例えば、ポリペプチドのアミノ酸側鎖により創出される環境の相対的な疎水性から予測することもでき、且つ/又は既知の三次元構造データを介して予測することもできる。
ドナーCDRにおける関与性のアミノ酸位置、並びに変化が所望されるフレームワーク領域内の任意の関与性のアミノ酸位置を選択した後では、選択された位置のうちの一部又は全部におけるアミノ酸変化を、アクセプターの可変領域フレームワーク並びにドナーのCDRをコードする核酸に組み込むことができる。変化させたフレームワーク配列又はCDR配列は、個別に作製及び検査することもでき、逐次的又は同時的に組み合わせて検査することもできる。
変化させた位置のうちのいずれか又はすべてにおけるばらつきは、20の天然アミノ酸すべて又はこれらの機能的同等物及び類似体を含め、数個から多数個の異なるアミノ酸残基の範囲にわたりうる。場合によってはまた、非天然アミノ酸も考慮することが可能であり、当技術分野ではこれらが知られている。
変化させるアミノ酸位置の数及び配置の選択は柔軟であり、ドナー可変領域と比較して実質的に同じであるかこれを超える結合アフィニティーなど、所望の活性を有する改変可変領域を同定するのに意図される使用並びにこれに所望される効率に依存しうる。この点では、改変可変領域集団に組み込まれる変化の数が増大するほど、所望の活性、例えば、ドナーと実質的に同じであるか又はこれを超える結合アフィニティーを呈示する少なくとも1つの分子種を同定することがより効率的となる。代替的に、あるアミノ酸残基又はアミノ酸位置が、結合アフィニティーに大きく寄与するような経験的データ又は実際的なデータを使用者が有する場合は、これらの同定された残基又は位置の範囲内又はこれらの近傍における変化に焦点を絞る改変可変領域の限定された集団を作製することが望ましい場合がある。
例えば、CDRを移植させた可変領域を所望する場合は、改変可変領域の大規模で多様な集団が、ドナーフレームワークとアクセプターフレームワークとの間の、すべての同一でないフレームワーク領域位置と、すべての単一のCDRアミノ酸位置の変化とを包含しうる。代替的に、多様性が中間的な集団には、例えば、ヒト化抗体又は抗原結合断片のアフィニティーを増大させるすべての単一のCDRアミノ酸位置の変化と併せて組み込まれる、同一でない近位のフレームワーク位置だけのサブセットが含まれうる。例えば、すべてのCDRアミノ酸位置の対様変化を加えて組み入れることにより、上記の集団の多様性をさらに増大させることができる。これに対し、1つのフレームワークのアミノ酸位置並びに/又は1つのCDRのアミノ酸位置という少数の位置において変異体残基を組み込む、所定の残基又は位置に焦点を当てる集団も同様に、改変抗体可変領域をスクリーニング及び同定する目的で構築することができる。上記の集団と同様に、フレームワーク領域及びCDR領域の一方又は両方における他の関与性の位置を包含するように、変化させるのに選択される位置をさらに拡大することにより、このように焦点を絞った集団の多様性をさらに増大させることもできる。数個の変化〜多数個の変化の範囲にわたる多数の他の組合せを、フレームワーク領域及びCDRの一方又は両方でさらに使用することができ、これらのすべてにより、所望の活性、例えば、エンドグリンに対する結合活性を有する、CDRを移植した少なくとも1つの改変可変領域を同定するのにスクリーニングしうる、改変可変領域の集団が結果としてもたらされる。本明細書で示される教示及び指針を踏まえるなら、当業者は、フレームワーク若しくはドナーCDRにおいて選択された残基位置又はそれらのサブセットのうちのいずれを変化させて、本発明の改変抗体をスクリーニング及び同定するための集団を作製しうるかを知るか、又は決定することができる。当技術分野では、アミノ酸をコードするコドンが知られている。
抗体をヒト化する別の方法には、「超ヒト化」と称する方法が含まれる。超ヒト化は、非ヒト成熟抗体遺伝子によりコードされる対象可変領域のペプチド配列を得るステップと、該非ヒト抗体可変領域内の少なくとも2つのCDRについて、カノニカルCDR構造型の第1のセットを同定するステップとを伴う。カノニカルCDR構造型とは、Chothiaにより命名された構造型(CITE)である。Chothiaらは、多くの抗体のCDRの最重要部分が、アミノ酸配列レベルにおける多様性の大きさにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格の立体構造を採用していることを見出した。これにより、Chothiaは、各鎖における各CDRについて、1個又は数個の「カノニカル構造」を定義した。各カノニカル構造は、主に、ループを形成するアミノ酸残基の隣接セグメントについて、ペプチド骨格のねじれ角のセットを指定する。
カノニカルCDR構造型を同定した後ではまた、ヒト抗体のヒト抗体可変領域についてのペプチド配列ライブラリーも得られる。このライブラリーは、ヒト生殖細胞系列の核酸セグメントによりコードされる生殖細胞系列可変領域の配列を含有し、且つ、成熟ヒト抗体配列も包含しうる。いずれの場合にも、該方法は、ヒト可変領域配列のライブラリー内の各配列につき、少なくとも2つずつのCDRのカノニカルCDR構造型(すなわち、カノニカルCDR構造型の第2のセット)を同定するステップを包含する。カノニカルCDR構造型の第1のセットを、カノニカルCDR構造型の第2のセットと比較(すなわち、マウスカノニカルCDR構造型を、ヒトカノニカルCDR構造型と、可変領域内の対応する位置において比較)し、且つ、非ヒト可変領域及びヒト可変領域のそれぞれの内部の対応する位置のCDR配列について、カノニカルCDR構造型の第2のセットが、カノニカルCDR構造型の第1のセットと同じであるヒト配列を選択することにより、このライブラリーから候補配列のサブセットを選択する。該方法は、候補ヒト可変領域配列に由来するフレームワーク領域と組み合わせた、非ヒト可変領域に由来するCDR配列のうちの(例えば、マウスCDRのうちの)少なくとも2つを包含するキメラ分子を構築するための基盤として、これらの候補ヒト可変領域配列を用いる。構築の結果として、該キメラ抗体のフレームワーク配列は、候補ヒトフレームワーク配列と異なるように、可変領域内の対応する位置において、ヒトCDR配列の各々を置換する非ヒトCDR配列の各々を含有する。
各ドメインについて、候補ヒト抗体配列の対象CDRとの類似性を2つのレベルで評価する。第1に、CDRペプチド骨格について同一の三次元立体構造が求められる。実験により決定された対象CDRの原子座標が得られることはまれであり、よって、対象CDRのChothiaによるカノニカル構造型を決定し、且つ、さらなる考察により、異なるカノニカル構造を保有する候補配列を除外することにより、三次元における類似性を近似する。第2に、対象CDRと残りのヒト候補CDRとの残基間相同性を考察し、相同性が最も大きな候補配列を選択する。
最も大きな相同性の選択は、対象の非ヒト可変領域と同じカノニカル構造を有する候補ヒト可変領域をランク付けするのに用いられる各種の基準に基づく。選択されるセットのメンバーをランク付けするための基準は、アミノ酸配列の同一性の場合もあり、アミノ酸の相同性の場合もあり、これらの両方の場合もある。アミノ酸の同一性とは、アミノ酸残基の位置のマッチによる単純な位置のスコアである。アミノ酸の相同性による類似性とは、特徴的な残基構造における位置の類似性による位置のスコアである。相同性は、例えば、Henikoff及びHenikoff(1992)、「Amino acid substitution matrices from protein blocks」、Proc.Natl.Acad.Sci 89:10915〜10919により説明されている表及び手順に従いスコア付けすることもでき、Henikoff及びHenikoff(1996)により説明されているBLOSUMシリーズによりスコア付けすることもできる。そのステップは、以下の通りである。
a)対象抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定する。これらは、従来のcDNAクローニング後におけるそれぞれの遺伝子に対するDNA配列決定;ポリメラーゼ連鎖反応により逆転写物から増幅されたクローニング産物、若しくは対象のハイブリドーマ細胞系のDNAに対するDNA配列決定;又は精製された抗体タンパク質のペプチド配列決定など、複数の方法のうちのいずれかにより決定することができる。
b)Kabatによる番号付けシステム(Kabatら、前出、1991)を、対象非ヒト抗体の重鎖配列及び軽鎖配列に適用する。対象の非ヒト抗体のCDRの各々について、カノニカル構造型を決定する。Chothia及びLesk(1987);Chothiaら(1992);Tomlinsonら(1995);Martin及びThornton(1996);並びにAl−Lazikaniら(1997)において論じられている指針に照らしてペプチド配列を検討することにより、この決定を行う。
CDRの各々についてカノニカル構造を決定することの際立った特色は、以下の通りである。重鎖CDR1については、現在のところ、3つのカノニカル構造型が知られている。各カノニカル構造型の残基数が異なるため、新たな配列の割り当ては単純である。Al−Lazikaniら(1997)において説明されている通り、Kabatによる番号付けを該配列に割り当てる場合、残基31〜35に対する番号付けは、それぞれのカノニカル構造について、以下の通りである。
1型のカノニカル構造:31、32、33、34、35。
2型のカノニカル構造:31、32、33、34、35、35a。
3型のカノニカル構造:31、32、33、34、35、35a、35b。
重鎖CDR2については、現在のところ4つのカノニカル構造型が知られている。いくつかの構造型の残基数は固有であり、位置52〜56に対するそれらの固有のKabatによる番号付けにより容易に識別される、すなわち、
1型のカノニカル構造:52、53、54、55、56。
4型のカノニカル構造:52、52a、52b、52c、53、54、55、56。
重鎖CDR2の2型のカノニカル構造の残基数と、重鎖CDR2の3型のカノニカル構造の残基数とは等しく、よって、Chothiaら(1992)により論じられている通り、それらの配列内の鍵残基により識別しなければならない。これらの鍵残基を含有するセグメントに対するKabatによる番号付けは、52、52a、53、54、55である。2型のカノニカル構造は、52a位においてPro又はSerを有し、55位においてGly又はSerを有し、他の位置においては制約を伴わない。3型のカノニカル構造は、54位においてGly、Ser、Asn、又はAspを有し、他の位置においては制約を伴わない。大半の場合には、適正な割り当てを決定するのにこれらの基準で十分である。加えて、2型のカノニカル構造では、フレームワーク残基71が一般に、Ala、Val、Leu、Ile、又はThrであり、3型のカノニカル構造では、フレームワーク残基71が一般に、Argである。
重鎖CDR3が、CDRすべてのうちで最も多様である。CDR3は、その一部が無作為的な性質である、リンパ球に固有の遺伝子過程により生成される。その結果、CDR3のカノニカル構造は、予測が困難である。いずれの場合においても、ヒト生殖細胞系列のV遺伝子セグメントは、Kabatによる94位で終始するが、CDR3をコードするのは95〜102位であるため、該V遺伝子セグメントは、CDR3のどの部分もコードしない。これらの理由で、CDR3のカノニカル構造は一般に、候補ヒト配列を選択するためには考慮されない。
軽鎖CDR1については、カッパ鎖のCDR1について、現在のところ、6つのカノニカル構造型が知られている。各カノニカル構造型の残基数は異なり、よって、新たな配列に対するカノニカル構造型の割り当ては、残基27〜31位に対するKabatによる番号付けから明らかである。
1型のカノニカル構造:27、29、30、31。
2型のカノニカル構造:27、28、29、30、31。
3型のカノニカル構造:27、27a、27b、27c、27d、27e、27f、28、29、30、31。
4型のカノニカル構造:27、27a、27b、27c、27d、27e、28、29、30、31。
5型のカノニカル構造:27、27a、27b、27c、27d、28、29、30、31。
6型のカノニカル構造:27、27a、28、29、30、31。
軽鎖CDR2については、カッパ鎖のCDR2について知られているカノニカル構造型が1つだけであり、よって、例外的な対象抗体配列を禁じると、割り当ては自動的である。軽鎖CDR3については、カッパ鎖のCDR3について最大6つのカノニカル構造型が説明されているが、これらのうちの3つはまれである。一般的な3つの構造型は、残基91〜97位に対するKabatによる番号付けに反映されているそれらの長さにより識別することができる。
1型のカノニカル構造:91、92、93、94、95、96、97(また、95位において必須のPro、並びに90位において必須のGln、Asn、又はHisも伴う)。
3型のカノニカル構造:91、92、93、94、95、97。
5型のカノニカル構造:91、92、93、94、95、96、96a、97。
対象非ヒト抗体のカノニカルCDR構造型を同定した後では、対象抗体と同じ組合せのカノニカル構造型を有する同じ種類の鎖(重鎖又は軽鎖)のヒト遺伝子を同定して、ヒト配列の候補セットを形成する。これらの遺伝子断片の大半は発見されており、既に、カノニカル構造型に割り当てられている(Chothiaら、1992;Tomlinsonら、1995)。
重鎖では、マウスカノニカル構造型に対するCDR1及びCDR2の適合性が評価され、適合しない遺伝子は除外されている。軽鎖では、先ず、対象抗体のカノニカル構造型に対する各ヒト配列のCDR1及びCDR2の適合性を評価する。候補Vk遺伝子のJ領域との融合体の存在を仮定し、且つ、該融合配列にCDR3のカノニカルCDR構造型を決定するための基準を適用することにより、該遺伝子の残基89〜95が、対象抗体と同じカノニカル構造型のCDR3を形成する可能性を評価し、適合しない配列を除外する。
代替的に、対象抗体の可変ドメインが、ヒトゲノム内では得られないカノニカル構造型である場合は、カノニカル構造型が同一ではないが三次元的に類似するヒト生殖細胞系列のV遺伝子を、比較のために考慮することができる。以下で説明される例のうちの2つを含め、このような状況は、マウス抗体におけるカッパ鎖CDR1について生じることが多い。マウス抗体のこのCDRにおいては、6つの可能なカノニカル構造型のすべてが観察されているが、ヒトゲノムがコードするカノニカル構造は、2、3、4、及び6型だけである。これらの状況では、アミノ酸残基長が、対象非ヒト配列のアミノ酸残基長の2残基以内であるカノニカルCDR構造型を比較のために選択することができる。例えば、対象の抗体において1型のカノニカル構造が見出される場合は、2型のカノニカル構造を伴うヒトVk配列を比較に用いることができる。マウス抗体において5型のカノニカル構造が見出される場合は、3型又は4型のカノニカル構造を伴うヒトVk配列を比較に用いることができる。
成熟し、再構成されたヒト抗体配列も、配列を比較するのに考慮することができる。このような考慮が保証されうるとすればそれは、成熟ヒト配列が、(1)生殖細胞系列と酷似する場合;(2)ヒトにおいて免疫原性でないことが知られる場合;又は(3)ヒト生殖細胞系列においては見出されないが、対象抗体のカノニカル構造型と同一のカノニカル構造型を含有する場合が含まれるがこれらに限定されない多様な状況下においてであろう。
マッチするカノニカル構造型を伴う候補V遺伝子の各々についてはまた、対象配列との残基間の配列同一性及び/又は残基間の配列相同性も評価して、該候補ヒト配列をランク付けする。例えば、評価される残基は、以下の通りである:(1)カッパ(κ)軽鎖CDRのアミノ酸残基位置では、CDR1(26〜32)、CDR2(50〜52)、CDR3(91〜96)が評価され;(2)重鎖CDRのアミノ酸残基位置では、CDR1(31〜35)及びCDR2(50〜60)が評価される。加えてまた、重鎖CDR3のアミノ酸残基95〜102位も考慮されうる。
先ず、対象配列と候補ヒト配列との間で同一のアミノ酸残基数により、残基間の相同性をスコア付けする。その後の転換抗体の構築に用いられるヒト配列は、スコアが最高である25パーセントの候補配列の間から選択する。複数の候補配列の同一性スコアが同等である場合など、適切な場合は、必要に応じて、同一でないアミノ酸残基間における類似性をさらに考慮することができる。スコアには、対象の残基と目的の残基との間における、脂肪族残基対脂肪族残基、芳香族残基対芳香族残基、又は極性残基対極性残基のマッチも加味する。別の例では、Henikoff及びHenikoffによるBLOSUM62マトリックスなどのアミノ酸置換マトリックスを用いて、配列相同性の定量的評価を実施することができる。
CDR3配列のC末端におけるフレームワーク領域の目的配列は、既知のヒト生殖細胞系列のJセグメントのセットから選択することができる。上述の通り、候補V遺伝子を評価する目的で指定されたスコア付けの基準を用いて、CDR3とJセグメントとが重複する配列位置について、各Jセグメントに対する残基間の相同性を評価することにより、Jペプチド配列を選択することができる。その後の転換抗体の構築に用いられるJ遺伝子セグメントのペプチド配列は、スコアが最高である25パーセントの候補配列の間から選択する。
例として述べると、キメラ可変鎖は、対象の非ヒト配列に由来する少なくとも2つのCDRと、候補ヒト配列に由来するフレームワーク配列とを含有する。別の例では、キメラ軽鎖が、対象の非ヒト配列に由来する3つのCDRと、候補ヒト配列に由来するフレームワーク配列とを含有する。さらなる例では、キメラ重鎖が、対象の重鎖による少なくとも2つのCDRと、候補ヒト重鎖によるフレームワーク配列とを含有するか、又はキメラ重鎖が、対象の重鎖に由来するCDRの各々と、候補ヒト重鎖によるフレームワーク配列とを含有する。さらに別の例では、キメラ抗体の重鎖が、対象の非ヒト配列に由来するCDR1及び2と、CDR3の残基50〜60と、候補ヒト重鎖に由来するCDRの残基61〜65を、候補ヒト配列のフレームワーク配列と共に含有する。別の例では、キメラ重鎖配列が、対象の非ヒト配列に由来する各CDRと、対象配列に由来するフレームワーク配列27〜30と、候補配列に由来するフレームワーク配列とを含有する。しかし、いずれの場合においても、キメラ抗体分子がそのフレームワーク配列内に含有する、候補ヒト可変領域のフレームワーク配列内のアミノ酸残基と異なるアミノ酸残基は10以下である。
ヒト化抗体のアフィニティーの増大を所望する場合は、転換抗体のCDR内の残基を、他のアミノ酸によりさらに置換することができる。最大10残基を変化させうる重鎖CDR2を除き、CDR内で変化させるアミノ酸残基は4以下であることが典型的であり、CDR内で変化させる残基は2以下であることが最も典型的である。アフィニティーの変化は、本明細書で説明される方法(例えば、Biacore法)など、従来の方法により測定することができる。
抗体を超ヒト化する方法は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,881,557号においてより詳細に説明されている。
当技術分野で知られている従来の技法を用いて、ヒト化抗体並びに抗原結合断片を構築及び作製することができる。加えて、特に、高レベルの発現ベクターを使用する場合は、組換えにより調製された抗体を大量に作製しうることが多い。
当技術分野において知られる従来の技法を用いて、抗体を配列決定することができる。一態様では、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸配列を、例えば、ヒト抗体(又はその抗原結合断片)の合成配列に挿入して、非ヒト抗体によりヒト患者を治療することの有害な副作用を制限しうるヒト抗体を創出する。また、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸配列を合成配列、例えば、AVIMER(商標)などの結合タンパク質に挿入して、ヒト患者に投与するための構築物を創出することもできる。治療される動物の種に応じて、このような技法を改変することができる。例えば、獣医学的治療に使用する場合は、抗体、抗原結合断片、又は抗原結合タンパク質を、ヒト以外(例えば、霊長動物、ウシ、ウマなど)の治療用に合成することができる。
別の態様では、本明細書で提供され、且つ、本明細書に組み込まれる技法など、当技術分野で認知されている技法を用いて、例えば、組換え法を介して、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸配列をコードするヌクレオチドを、抗体、抗原結合断片、又は抗原結合タンパク質をコードする既存のポリヌクレオチドの制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することができる。
発現させる場合、発現系は、グルタミンシンターゼ遺伝子を選択マーカーとして用いるGSシステム(Lonza)を使用する発現系である。略述すると、グルタミンシンターゼ遺伝子を選択マーカーとして用いるGSシステム(Lonza)を用いる電気穿孔(250V)により、CHO細胞へのトランスフェクションを実施する。2mMのグルタミンと共に10%の透析ウシ胎仔血清(FCS)を含有するDMEM(Sigma)中で、野生型のCHO細胞を増殖させる。電気穿孔により、6×107個のCHO細胞に、直鎖化させたDNA300μgをトランスフェクトする。電気穿孔後、細胞を、グルタミンを伴うDMEM中に再懸濁させ、36×96ウェルプレート(ウェル1個当たり50μl)へと播種し、5%CO2中37℃でインキュベートする。翌日、ウェル1個当たり150μlの選択培地(グルタミンを伴わないDMEM)を添加する。約3週間後、非関与抗体を陰性対照として用いるELISAにより、コロニーをスクリーニングする。>20μg/mlを生成させるすべてのコロニーを24ウェルプレートで増殖させ、次いで、2連のT25フラスコで増殖させる。
高レベルで生成させる場合、最も広く用いられている哺乳動物発現系は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損(「dhfr−」)チャイニーズハムスター卵巣細胞によりもたらされる遺伝子増幅手順を使用する発現系である。この発現系は、当業者によく知られている。この系は、ジヒドロ葉酸のテトラヒドロ葉酸への転換を触媒するDHFR酵素をコードするジヒドロ葉酸レダクターゼ(「dhfr」)遺伝子に基づく。高量の生成を達成するためには、dhfr− CHO細胞に、所望のタンパク質をコードする遺伝子と併せて、機能的なDHFR遺伝子を含有する発現ベクターをトランスフェクトする。この場合、所望のタンパク質は、組換え抗体の重鎖及び/又は軽鎖である。
競合的DHFR阻害剤であるメトトレキサート(MTX)の量を増大させることにより、組換え細胞は、dhfr遺伝子を増幅することを介して耐性を発生させる。標準的な場合には、使用される増幅単位が、dhfr遺伝子のサイズよりはるかに大きく、その結果、抗体重鎖が共増幅される。
抗体鎖などのタンパク質を大スケールで作製することを所望する場合、発現レベル並びに使用される細胞の安定性の両方を考慮する。長期間にわたる培養では、単一の親クローンから派生する場合であっても、増幅するうちに、組換えCHO細胞集団が、それらの特異的抗体生成に関する均一性を失う。
本出願は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片をコードする単離ポリヌクレオチド(核酸)、このようなポリヌクレオチドを含有するベクター、並びにこのようなポリヌクレオチドをポリペプチドへと転写及び翻訳するための宿主細胞及び発現系を提供する。
本出願はまた、少なくとも1つの上記のポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写カセット、又は発現カセットの形態にある構築物も提供する。
本出願はまた、上記の1又は複数の構築物を含む組換え宿主細胞も提供する。本明細書で説明される抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、コード核酸からの発現を含む該方法が本出願の態様を形成するのと同様に、それ自体として提供される、本明細書で説明される任意の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸も、本出願の態様を形成する。該核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、発現を達成することができて簡便である。発現を介する作製の後、任意の適切な技法を用いて抗体又は抗原結合断片を単離及び/又は精製することができ、次いで、必要に応じて用いることができる。
本明細書で説明される特異的抗体、抗原結合断片、並びにコード核酸分子及びベクターは、例えば、実質的な純粋形態又は均一形態で、それらの天然の環境から単離及び/又は精製して、提供することができる。核酸の場合は、必要とされる機能を伴うポリペプチドをコードする配列以外の、元の核酸又は遺伝子を含ませずに、又はこれらを実質的に含ませずに、これを提供することができる。核酸は、DNAを含む場合もあり、RNAを含む場合もあり、且つ、完全に合成の場合もあり、部分的に合成の場合もある。当技術分野では、精製法がよく知られている。
各種の異なる宿主細胞におけるクローニング系及び発現系がよく知られている。適切な宿主細胞系には、細菌、哺乳動物細胞、酵母系、及びバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドを発現させるための、当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、並びに他の多くの細胞系が含まれる。一般的な細菌宿主は、大腸菌(E.coli)である。
当技術分野では、大腸菌などの原核細胞における抗体及び抗体断片の発現が十分に確立されている。総説については、例えば、Plueckthun,A.、Bio/Technology 9:545〜551(1991)を参照されたい。また、培養物中の真核細胞における発現も、本明細書で説明される抗体及び抗原結合断片を作製するための選択肢として当業者に利用可能であり、近年における総説については、例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Raff,M.E.(1993)、Curr.Opinion Biotech.4:573〜576;Trill J.J.ら(1995)、Curr.Opinion Biotech 6:553〜560を参照されたい。
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、並びに必要に応じた他の配列を含めた、適切な制御配列を含有する適切なベクターを選択又は構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミドの場合もあり、例えば、ファージ又はファージミドなど、ウイルス性の場合もある。さらなる詳細については、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」:2版、Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入並びに遺伝子発現、並びにタンパク質解析において核酸を操作するための多くの既知の技法及びプロトコールについては、「Short Protocols in Molecular Biology」、2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992において詳細に説明されている。Sambrookら;及びAusubelらによる方法の開示は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれ、当技術分野においてもよく知られている。
したがって、さらなる態様は、本明細書で開示される核酸を含有する宿主細胞を提供する。またさらなる態様は、このような核酸を宿主細胞へと導入するステップを含む方法を提供する。導入は、任意の利用可能な技法を使用しうる。真核細胞の場合、適切な技法には、例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストラン法、電気穿孔、リポソームを介するトランスフェクション、並びにレトロウイルス又は他のウイルス、例えば牛痘ウイルス、又は昆虫細胞の場合はバキュロウイルスを用いる形質導入が含まれうる。細菌細胞の場合、適切な技法には、例えば、塩化カルシウムによる形質転換、電気穿孔、並びにバクテリオファージを用いるトランスフェクションが含まれうる。
導入に続き、例えば、遺伝子を発現させるための条件下で宿主細胞を培養することにより、核酸からの発現を引き起こすか、又はこれを可能とする。
一実施形態では、核酸を、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に組み込む。組込みは、標準的な技法に従う、ゲノムの組換えを促進する配列を組み入れることにより促進されうる。必要に応じて、Igエンハンサーを上流に組み入れることにより、発現を最大化させることができる。
本出願はまた、上記の通りに抗体又はそれらの抗原結合断片を発現させるために、上記で言及した構築物を発現系内で用いるステップを含む方法も提供する。
本出願はまた、エンドグリンに結合する、本明細書で説明される抗体又は抗原結合配列をコードする、組換えDNA分子若しくはクローニングされた遺伝子、又はそれらの縮重変異体、突然変異体、類似体、又はこれらの断片などの単離核酸にも関する。
一態様では、本出願が、エンドグリンに結合する、本明細書で説明される抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
さらなる実施形態では、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片の組換えDNA分子又はそのクローニングされた遺伝子の完全なDNA配列を、発現制御配列へと作動的に連結し、これを適切な宿主内に導入することができる。したがって、本出願は、抗体のVH鎖及び/若しくはVL鎖、又はこれらの部分をコードするDNA配列を含む、クローニングされた遺伝子又は組換えDNA分子により形質転換された、単細胞宿主へと拡張される。
別の特色は、本明細書で開示されるDNA配列の発現である。当技術分野においてよく知られている通り、DNA配列を適切な発現ベクター内の発現制御配列へと作動的に連結し、且つ、この発現ベクターを使用して適切な単細胞宿主を形質転換することにより、DNA配列を発現させることができる。
DNA配列を発現制御配列へとこのように作動的に連結することは、当然ながら、既に該DNA配列の一部というわけではないにせよ、開始コドンであるATGを、該DNA配列の上流における適正なリーディングフレーム内に施すことを包含する。
ポリヌクレオチド及びベクターは、単離形態及び/又は精製形態(例えば、必要とされる機能を伴うポリペプチドをコードするポリヌクレオチド以外の、元のポリヌクレオチドを含まないか又は実質的に含まない形態)で提供することができる。本明細書で用いられる「実質的に純粋な」並びに「実質的に〜を含まない」とは、例えば、含有する外来物質が約20%以下であるか、含有する外来物質が約10%以下であるか、含有する外来物質が約5%以下であるか、含有する外来物質が約4%以下であるか、含有する外来物質が約3%以下であるか、含有する外来物質が約2%以下であるか、又は含有する外来物質が約1%以下である溶液又は懸濁液を指す。
本発明によるDNA配列を発現させるには、多種多様な宿主/発現ベクターの組合せを使用することができる。例えば、有用な発現ベクターは、染色体のDNA配列のセグメント、染色体以外のDNA配列のセグメント、並びに合成DNA配列のセグメントからなることが可能である。適切なベクターには、SV40ウイルスの派生物;並びに既知の細菌プラスミド、例えば、大腸菌プラスミドであるcol El、Pcr1、Pbr322、Pmb9、並びにこれらの派生物;RP4などのプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージλの多数の派生物、例えば、NM989;並びに他のファージDNA、例えば、M13、並びに繊維状一本鎖ファージDNA;2uプラスミド又はその派生物などの酵母プラスミド;昆虫細胞又は哺乳動物細胞において有用なベクターなど、真核細胞において有用なベクター;ファージDNA又は他の発現制御配列を使用するように修飾されたプラスミドなど、プラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクターなどが含まれるがこれらに限定されない。
本明細書ではまた、1又は複数のポリヌクレオチド構築物を含む組換え宿主細胞も提供される。抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、ポリヌクレオチドからの発現を含む該方法が本出願の態様を形成するのと同様に、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドも、本出願の態様を形成する。例えば、該ポリヌクレオチドを含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、発現を達成することができる。次いで、任意の適切な技法を用いて抗体又は抗原結合断片を単離及び/又は精製することができ、必要に応じて用いることができる。
これらのベクターにおいて、任意の多種多様の発現制御配列(それに作動的に連結されたDNA配列の発現を制御する配列)を用いて、DNA配列を発現させることができる。このような有用な発現制御配列には、例えば、SV40ウイルス、CMVウイルス、牛痘ウイルス、ポリオーマウイルス、又はアデノウイルスの早期プロモーター又は後期プロモーター;lac系;trp系;TAC系;TRC系;LTR系;ファージλの主要なオペレーター領域及びプロモーター領域;fdコートタンパク質の制御領域;3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の糖分解酵素のプロモーター;酸ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5);酵母接合因子のプロモーター;並びに原核細胞若しくは真核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られている他の配列;並びにこれらの各種の組合せが含まれる。
各種の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング系及び発現系がよく知られている。適切な宿主細胞系には、細菌、哺乳動物細胞、酵母系、及びバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドを発現させるための、当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、並びに他の多くの細胞系が含まれる。一般的な細菌宿主は、例えば、大腸菌でありうる。
当技術分野では、大腸菌などの原核細胞における抗体又は抗原結合断片の発現が十分に確立されている。総説については、例えば、Plueckthun,A.、Bio/Technology 9:545〜551(1991)を参照されたい。また、培養物中の真核細胞における発現も、当業者に利用可能である(Raff,M.E.(1993)、Curr.Opinion Biotech.4:573〜576;Trill J.J.ら(1995)、Curr.Opinion Biotech 6:553〜560)。
また、多種多様な単細胞の宿主細胞も、DNA配列を発現させるのに有用である。これらの宿主には、大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属の菌株;酵母などの真菌;並びに組織培養物中のCHO細胞、YB/20細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、R1.1細胞、B−W細胞、及びL−M細胞;アフリカングリーンモンキー腎細胞(例えば、COS 1細胞、COS 7細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、及びBMT10細胞);昆虫細胞(例えば、Sf9細胞);及びヒト細胞などの動物細胞;並びに植物細胞など、よく知られた真核生物宿主及び原核生物宿主が含まれる。
すべてのベクター、発現制御配列、及び宿主がDNA配列を発現させるのに同等に良好に機能するわけではないことが理解されるであろう。すべての宿主が同じ発現系と共に同等に良好に機能するわけでもない。しかし、当業者は、本出願の範囲から逸脱することなく、所望の発現を達成するのに不要な実験を行うことなく、適正なベクター、発現制御配列、及び宿主を選択することができるであろう。例えば、ベクターを選択するときは、その中でベクターが機能しなければならないため、宿主についても考慮しなければならない。また、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、並びに抗生剤マーカーなど、該ベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現についても考慮する。当業者は、本出願の範囲から逸脱することなく、適正なベクター、発現制御配列、及び宿主を選択して、所望の発現を達成することができる。例えば、ベクターを選択するときは、その中でベクターが機能するため、宿主についても考慮する。また、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、並びに抗生剤マーカーなど、該ベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現についても考慮する場合がある。
本出願はまた、少なくとも1つの上記のポリヌクレオチドを含む、本明細書の別の箇所で説明されるプラスミド、ベクター、転写カセット、又は発現カセットの形態にある構築物も提供する。プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択マーカー遺伝子、並びに必要に応じた他の配列を含め、適切な制御配列を含有する適切なベクターを選択又は構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミドの場合もあり、例えば、ファージ、ファージミドなど、ウイルス性の場合もある。さらなる詳細については、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」:2版、Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入並びに遺伝子発現、並びにタンパク質解析において核酸を操作するための多くの既知の技法及びプロトコールについては、「Short Protocols in Molecular Biology」、2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992において詳細に説明されている。Sambrookら;及びAusubelらによる方法の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
発現制御配列を選択するときは通常、各種の因子について考慮する。これらには、例えば、系の相対的な強度、その制御可能性、並びに発現させる特定のDNA配列又は遺伝子とのその適合性、特に、潜在的な二次構造に関するその適合性が含まれる。適切な単細胞宿主は、例えば、選択されるベクターとのそれらの適合性、それらの分泌特徴、タンパク質を適正にフォールドするそれらの能力、並びにそれらの発酵に対する要件のほか、発現させるDNA配列によりコードされる産物の宿主に対する毒性、並びに発現産物を精製する容易さを考慮することにより選択する。
さらなる態様は、本明細書で開示される1又は複数のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を提供する。またさらなる態様は、このような1又は複数のポリヌクレオチドを宿主細胞へと導入する方法である、任意の利用可能な技法を提供する。真核細胞の場合、適切な技法には、例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストラン法、電気穿孔、リポソームを介するトランスフェクション、並びにレトロウイルス又は他のウイルス(例えば牛痘ウイルス)、又は昆虫細胞の場合はバキュロウイルスを用いる形質導入が含まれうる。細菌細胞の場合、適切な技法には、例えば、塩化カルシウムによる形質転換、電気穿孔、並びにバクテリオファージを用いるトランスフェクションが含まれうる。
導入に続き、例えば、1又は複数のポリヌクレオチドから1又は複数のポリペプチドを発現させるための条件下で宿主細胞を培養することにより、1又は複数のポリヌクレオチドからの発現を引き起こすか、又はこれを可能とすることができる。誘導系を使用し、アクチベーターの添加により発現を誘導することができる。
一実施形態では、ポリヌクレオチドを、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に組み込むことができる。組込みは、標準的な技法に従う、ゲノムの組換えを促進する配列を組み入れることにより促進されうる。別の実施形態では、宿主細胞内のエピソームベクター上で核酸を維持する。
本明細書では、特定のポリペプチドを発現させるために、上記で言及した構築物を発現系内で用いるステップを包含する方法が提供される。
これらの因子並びに他の因子を考慮すれば、当業者は、発酵により、又は大スケールの動物培養物中において、DNA配列を発現させる各種のベクター/発現制御配列/宿主の組合せを構築することができるであろう。
抗体、抗原結合断片、又は抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、クローニングに加えて、又はクローニングではなくて、組換え/合成により調製することができる。抗体、抗原結合断片、又は結合タンパク質に適切なコドンにより、ポリヌクレオチドをデザインすることができる。一般に、その配列が発現に用いられる場合は、意図される宿主に好ましいコドンを選択する。標準的な方法により調製される重複オリゴヌクレオチドから完全なポリヌクレオチドを構築し、完全なコード配列へと構築することができる。例えば、Edge、Nature、292:756(1981);Nambairら、Science、223:1299(1984);Jayら、J.Biol.Chem.259:6311(1984)を参照されたい。
タンパク質への非天然アミノ酸の部位特異的な組込みの一般的な方法は、Christopher J.Noren、Spencer J.Anthony−Cahill、Michael C.Griffith、Peter G.Schultz、Science、244:182〜188(1989年4月)において説明されている。この方法を用いて、非天然アミノ酸を伴う類似体を創出することができる。
上述の通り、抗体またその抗原結合断片をコードするDNA配列は、クローニングではなくて、合成により調製することができる。抗体又は抗原結合断片のアミノ酸配列に適切なコドンにより、DNA配列をデザインすることができる。一般に、その配列が発現に用いられる場合は、意図される宿主に好ましいコドンを選択する。標準的な方法により調製される重複オリゴヌクレオチドから完全な配列を構築し、完全なコード配列へと構築することができる。例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれるEdge、Nature、292:756(1981);Nambairら、Science、223:1299(1984);Jayら、J.Biol.Chem.259:6311(1984)を参照されたい。
C.in silicoにおける免疫原性の解析
必要な場合は、本明細書で説明される抗体又はその抗原結合断片を免疫原性について評価し、必要に応じて脱免疫化する(すなわち、1又は複数のT細胞エピトープを変化させることにより、抗体の免疫反応性を低下させる)ことができる。本明細書で説明されるヒト化抗エンドグリン抗体並びに抗原結合断片に存在する免疫原性及びT細胞エピトープについての解析は、ソフトウェア並びに特定のデータベースを用いることにより実施することができる。例示的なソフトウェア及びデータベースには、Cmbridge、EnglandのAntitopeにより開発されたiTope(商標)が含まれる。iTope(商標)は、ヒトMHCクラスIIの対立遺伝子に対するペプチドの結合を解析するための、in silicoにおける技術である。
iTope(商標)ソフトウェアは、ヒトMHCクラスII対立遺伝子に対するペプチドの結合を予測し、これにより、このような「潜在的なT細胞エピトープ」の位置についての最初のスクリーンを提供する。iTope(商標)ソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖と、34のヒトMHCクラスII対立遺伝子による結合グルーブ内の特異的な結合ポケットとの好ましい相互作用を予測する。鍵となる結合残基の位置特定は、被験抗体可変領域配列にわたり、1アミノ酸だけ重複する9merのペプチドをin silicoで生成させることにより達成する。各9merのペプチドは、34のMHCクラスIIアロタイプの各々と対比させて調べることができ、それらのMHCクラスII結合グルーブとの潜在的な「フィット」及び相互作用に基づきスコア付けすることができる。MHCクラスII対立遺伝子のうちの>50%に対して平均結合スコアが高い(iTope(商標)によるスコア付け関数で>0.55)ペプチドを、潜在的なT細胞エピトープと考える。このような領域において、MHCクラスIIグルーブ内部のペプチド結合のコアとなる9アミノ酸による配列を解析して、MHCクラスIIポケット残基(P1、P4、P6、P7、及びP9)、並びにT細胞受容体(TCR)との接触が可能な残基(P−1、P2、P3、P5、P8)を決定する。
任意のT細胞エピトープを同定した後で、アミノ酸残基の変化、置換、付加、及び/又は欠失を導入して、同定されたT細胞エピトープを除去することができる。同定されたエピトープをなお除去しながら、抗体の構造及び機能を保存するように、このような変化をもたらすことができる。例示的な変化には、保存的アミノ酸変化が含まれるがこれらに限定されない。
組換えMHC分子を、合成ペプチドと組み合わせた可溶性複合体を利用する技法が用いられるようになった。これらの試薬及び手順を用いて、ヒト対象又は実験動物対象に由来する末梢血試料から、特定のMHC−ペプチド複合体に結合することが可能であり、多種多様なMHCアロタイプに対する複数の潜在的なエピトープをスクリーニングするのには適合しないT細胞クローンの存在を同定することができる。
T細胞の活性化についての生物学的アッセイは、依然として、被験ペプチド/タンパク質配列が免疫反応を引き起こす能力についてのリーディングをもたらす最も実践的な選択肢である。この種の手法の例には、細菌タンパク質であるスタフィロキナーゼに対してT細胞増殖アッセイを用いた後で、合成ペプチドを用いてT細胞系を刺激するエピトープマッピングを行うことが含まれる。同様に、テタヌス毒素タンパク質による合成ペプチドを用いるT細胞増殖アッセイの結果として、該毒素の免疫優性エピトープ領域が規定されている。一実施形態では、ヒト免疫細胞の単離サブセットを用い、in vitroにおけるそれらの分化を促進し、対象の合成ペプチドの存在下において該細胞を培養し、該培養されたT細胞の増殖が誘導されればそれを測定することにより被験タンパク質内のT細胞エピトープを決定することができる。また、他の技法も用いることができる。このような技法は、細胞単離法、並びに複数のサイトカインサプリメントを伴う細胞培養物を適用して、所望の免疫細胞のサブセット(樹状細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞)を得ることを伴う。別の実施形態では、抗体を、単離されたヒト免疫細胞のサブセットへと添加し、in vitroにおけるそれらの分化を評価し、該培養されたT細胞の増殖が誘導されるとそれを測定することにより、抗体におけるT細胞エピトープの存在を決定することができる。
また、治療的関心の対象である複数のタンパク質に対するMHCクラスIIリガンドを規定するin silicoにおける技法も使用することができる。しかし、タンパク質分解性のプロセシング並びにin vivoにおいて免疫原性ペプチドを提示させる他の生理学的段階などのために、コンピュータベースのスキームにより規定可能なペプチドの全レパートリーのサブセットが、最終的な生物学的関与性を有しうる。したがって、ex vivoにおけるヒトT細胞活性化アッセイを用いて、ポリペプチドのタンパク質配列内で、T細胞の活性化を支援することが可能であり、これにより、このタンパク質における免疫原性の問題に最も生物学的に関与性の領域を同定することができる。本明細書で用いられる「T細胞エピトープ」とは、MHCクラスII分子に結合することが可能であり、T細胞を刺激することが可能であり、且つ/又はMHCクラスII分子と複合したT細胞に結合する(測定可能な形での活性化を必ずしも伴わずに)ことも可能であるアミノ酸配列を指す。
本明細書で開示される方法により、合成ペプチド又は全抗体を、それらが、in vitroで培養されるヒトT細胞の増殖反応を引き起こす能力について調べる。T細胞は、よく知られた手段により全血液試料から容易に得られる、末梢血単核細胞(PBMC)層内に存在する。さらに、PBMC調製物は、生理学的比率のT細胞及び抗原提示細胞を含有し、したがって、それにより、in vitroにおけるサロゲートの免疫反応をもたらすのに適する材料の供給源である。このようなアッセイを実施するときは、2.0に近接するか、又はこれを超える刺激指数が、増殖の誘導についての有用な測定値である。しかし、この刺激指数は、抗体又はその抗原結合断片に応じて異なる可能性があり、各抗体又はその抗原結合断片、並びに対応するペプチドライブラリーのベースラインとの関連で確立することができる。このような検査の一例では、被験ペプチドに対して測定された増殖スコア(例えば、3H−チミジンの取込みを用いる場合は、例えば、1分間当たりの放射能カウント)を、被験ペプチドと接触させていない細胞において測定されるスコアで除することにより、刺激指数(SI)を導出することができて簡便である。反応を引き起こさないペプチドは、SI=1.0をもたらしうるが、また、0.8〜1.2の範囲にあるSI値も注意するに及ばない。記録されるスコアの信頼性を保証するためには、多数の技法手順をこのようなアッセイの実施に組み込むことができる。すべての決定を少なくとも3連で行い、平均スコアを計算しうることが典型的である。計算されたSI≧2.0の場合は、三連のうちの個々のスコアを、異常値データの証拠について検証することができる。被験ペプチドを、少なくとも2つの異なる濃度で細胞と接触させるときは、該濃度を、最小で2倍の濃度差の範囲にわたらせることが典型的であろう。このような濃度範囲は、アッセイに反応速度次元のオフセットをもたらし、単一時点における決定を、例えば、7日目に実施する場合に有用でありうる。一部のアッセイでは、時間経過において複数回の決定を行うことも可能であり、これらもまた、最小で2つの異なる濃度で供給されるペプチド免疫原を用いて行うことができる。同様に、それに対してドナーのPBMC試料の大半が反応性であると予測される対照ペプチドを各アッセイプレートに組み入れることも可能である。インフルエンザウイルス赤血球凝集素ペプチド307〜309である配列PKYVKQNTLKLA (配列番号104) 並びにクラミジア(Chlamydia)属HSP 60ペプチドである配列KVVDQIKKISKPVQH (配列番号105)が、このようなアッセイにおいて用いられる対照ペプチドの例である。代替的に、又は加えて、アッセイではまた、それに対してすべてのPBMC試料が2.0を著明に超えるSIを呈示することが予測されるスカシガイに由来するヘモシアニンなど、強力な全タンパク質抗原も用いうるであろう。当技術分野では、このように用いられる他の対照抗原がよく知られているであろう。
本明細書で開示される方法は、抗体又はそれらの抗原結合断片についてのエピトープマップであって、広範なスペクトルにわたる可能なMHCアロタイプに関与する該エピトープマップを提供しうる。マップは、そのタンパク質が投与される可能性が高い患者の大半について、T細胞により駆動される免疫反応をそのタンパク質が引き起こす能力を消失させるか、又は少なくとも緩和させうる修飾のデザイン又は選択を可能とするのに十分な程度に代表的でありうる。緩和とは、非修飾タンパク質と比較した免疫反応の低減(すなわち、免疫原性の低減)(例えば、約1.5分の1、約2分の1、約5分の1、約10分の1、約20分の1、約50分の1、約100分の1、約200分の1、約500分の1若しくはこれを超える低減、又はこれらのうちの任意の範囲の低減)を指す場合がある。代替的に、免疫原性を低減された抗体又はそれらの抗原結合断片とは、非修飾タンパク質と比較して、それが免疫反応を誘発する能力の百分率による低減(例えば、約1%の低減、約2%の低減、約3%の低減、約4%の低減、約5%の低減、約10%の低減、約20%の低減、約50%の低減、約100%の低減、並びにこれらのうちの任意の範囲の低減)を指す場合がある。したがって、スクリーニング工程を実施するときは、ヒト集団内に現存するMHCクラスII分子のレパートリー(HLA−DR)のうちの少なくとも90%を超える試料をもたらすのに十分な免疫学的多様性を有するドナーのプールから、ナイーブドナーによるPBMC由来T細胞を回収する。所与の合成ペプチド(又は抗体)に対するナイーブT細胞の反応を検出する場合は、実際のペプチド(又は抗体)を、複数のドナーに由来する、単離されたPBMC調製物と接触させるが、ドナーの数(又は「ドナープール」のサイズ)は、実際的な目的で、20未満の非類縁個体ではない可能性が高く、該ドナープール内のすべての試料は、それらのMHCクラスIIハプロタイプに従って予め選択することができる。
本明細書で用いられる「ナイーブドナー」という用語は、環境によってであれ、ワクチン接種によってであれ、例えば、輸血など他の手段によってであれ、本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片にいまだ曝露されていない対象を指す。
T細胞エピトープについてスクリーニングする場合、複数の異なる健康なドナーであるが、治療的にタンパク質を施されてはいないドナーに由来する末梢血試料からT細胞を供給することができる。必要な場合は、抗体を用いて1又は複数のポリペプチドの存在又は非存在を同定する、ELISAなどの従来のアッセイを用いて、患者の血液試料を、特定のポリペプチドの存在について調べることができる。アッセイは、当技術分野で知られる従来の手順を用いて、in vitroにおいて培養されたPBMCを用いて実施され、且つ、該PBMCを、抗体など、対象のタンパク質(すなわち、ライブラリー)又は全タンパク質を表す合成ペプチド分子種と接触させるステップと、適切なインキュベーション期間を追跡するステップと、細胞増殖など、T細胞活性化の誘導を測定するステップとを伴う。測定は、任意の適切な手段を介することが可能であり、例えば、実験用計器を用いて細胞物質への3Hの蓄積が容易に測定される3H−チミジンの取込みを用いて実施することができる。PBMC試料と合成ペプチド又は全タンパク質との各混合物についての細胞増殖の程度を、非処理PBMC試料中において見られる細胞増殖の程度と比べて検証することができる。また、それらについて増殖作用が予測されている、1若しくは複数のペプチド又は全タンパク質による処理後において見られる増殖反応も参照することができる。この点では、既知の広範なMHC制限を伴うペプチド又は全タンパク質、並びにとりわけ、DPアイソタイプ又はDQアイソタイプに対するMHC制限を伴うペプチドエピトープを用いることが有利であるが、本発明は、このような制限ペプチド又は制限タンパク質の使用に限定されない。このようなペプチドについては、例えば、インフルエンザウイルス赤血球凝集素ペプチド並びにクラミジア属HSP60ペプチドについて上記で説明した。
非限定的な一例では、T細胞エピトープをマップし、その後、本明細書で説明される方法を用いてこれらを修飾することができる。エピトープマップの構築を容易とするため、合成ペプチドのライブラリーを作製する。ペプチドの各々は15アミノ酸残基の長さであり、各々は、連鎖する次のペプチドと12アミノ酸残基だけ重複する、すなわち、逐次的に連鎖する各ペプチドは、さらなる3アミノ酸を増分として解析に付加する。このようにして、所与の任意の隣接するペプチド対は、18アミノ酸の連続配列としてマップされる。ナイーブT細胞アッセイを用いてT細胞マップを規定する一方法を、以下の実施例で例示する。T細胞マップを規定する方法を介して同定されるペプチドの各々は、MHCクラスII分子に結合し、且つ、アッセイシステムにより検出可能な増殖バーストを引き起こすのに十分なアフィニティーで、少なくとも1つの同族TCRと係合することが可能であることが示唆される。
別の非限定的な例では、抗体がプロセシングされて、MHCクラスII分子に結合し、且つ、アッセイシステムにより検出可能な増殖バーストを引き起こすのに十分なアフィニティーで、少なくとも1つの同族TCRと係合するT細胞エピトープを生成させる可能性を評価する。
本明細書で説明される分子は、組換え法の使用を含めた複数の方法のうちのいずれかにより調製することができる。本明細書で示されるタンパク質の配列及び情報を用いて、アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(DNA)を推測することができる。これは、例えば、DNAstarソフトウェアシリーズ[DNAstar Inc、Madison、Wis.、USA]などのコンピュータソフトウェアツール又はこれに類似するコンピュータソフトウェアツールを用いて達成することができる。本明細書では、ポリペプチド又は重要な相同体、変異体、切断型、延伸型、又はこれらのさらなる改変型をコードする任意のこのようなポリヌクレオチドが意図される。
本明細書では、修飾配列が、ヘルパーT細胞反応の誘導を(部分的に、又は完全に)低減するように、T細胞エピトープをマップ(同定)し、且つ、これらのエピトープを修飾する方法が提供される。修飾には、同様の変化を及ぼす修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドンにもたらされる、アミノ酸の置換、欠失、又は挿入が含まれる。当技術分野では、アミノ酸残基をコードするコドンがよく知られている。組換えDNA法を用いて、標的配列を指向する突然変異誘発を達成することが可能であり、本明細書で説明される多くのこのような技法が利用可能であり、当技術分野では、上記で説明した技法などが知られている。一般に、部位特異的突然変異誘発法がよく知られている。略述すると、オリゴヌクレオチドを指向するPCRによる突然変異誘発のための一本鎖鋳型を生成させるバクテリオファージベクターを使用する。ファージベクター(例えば、M13)は市販されており、当技術分野では、それらの使用が一般によく知られている。部位指向突然変異誘発ではまた、二本鎖プラスミドも同様に日常的に使用され、これにより、対象のポリヌクレオチドをファージからプラスミドへと導入するステップが廃される。所望の突然変異配列を保有する合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、この鋳型からの修飾(所望の突然変異体)DNAのin vitroにおける合成を誘導することができ、且つ、このヘテロ二重鎖DNAを用いて、コンピテントの大腸菌を形質転換し、所望のクローンの増殖による選択及び同定を行うことができる。代替的に、プライマー対を二本鎖ベクター鎖の2つの個別の鎖へとアニールさせて、所望の突然変異(単数又は複数)を伴う、対応する相補鎖の両方を、PCR反応において同時に合成することができる。
一実施形態では、プラスミドDNA鋳型を用いる、Quick Change部位指向突然変異誘発法を使用することができる。対象の挿入標的遺伝子を含有するプラスミド鋳型のPCRによる増幅は、所望の突然変異を含有する2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて達成する。各々がベクターの対向鎖と相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを、突然変異誘発グレードのPfuTurbo DNAポリメラーゼを介して、温度サイクリングにより伸長させる。オリゴヌクレオチドプライマーを組み込むと、スタガードニックを含有する突然変異プラスミドが生成される。増幅された非メチル化産物をDpn Iで処理して、メチル化親DNA鋳型を消化させ、突然変異を含有する新たに合成されたDNAについて選択する。大腸菌株から単離されるDNAは、DAMメチラーゼによりメチル化されており、メチル化DNA及び半メチル化DNAに特異的であるDpn I消化を受け易い。反応生成物を高効率の大腸菌株へと形質転換して、所望の突然変異を含有するプラスミドを得る。当技術分野では、ポリペプチド内にアミノ酸修飾を導入するさらなる方法がよく知られており、これらはまた、本発明でも用いることができる。
タンパク質に適する修飾には、特定の残基又は残基の組合せに対するアミノ酸置換が含まれうる。T細胞エピトープを消失させるためには、該T細胞エピトープの活性の低減若しくは消失を達成することが予測されるアミノ酸配列内の適切な地点又はアミノ酸残基においてアミノ酸置換をもたらす。実際には、適切な地点又はアミノ酸残基が、MHCクラスII結合グルーブ内に備えられるポケットのうちの1つにおいてアミノ酸残基の結合が生じる地点又はアミノ酸残基と一致することが好ましい。このような修飾は、該クレフトの第1ポケット内で生じる結合を、ペプチドのいわゆる「P1」位又は「P1アンカー」位において変化させうる。ペプチドのP1アンカー残基と、MHCクラスII結合グルーブの第1ポケットとの結合相互作用の質が、全ペプチドの全体的な結合アフィニティーの主要な決定因子であると認められている。一般に、ポケット内への収容がそれほど容易でないアミノ酸残基を組み込む置換(例えば、より親水性の残基への置換)が、アミノ酸配列のこの位置においては適切であろう。また、ペプチド内で、MHC結合クレフト内の他のポケット領域における結合位置と一致する位置にあるアミノ酸残基についても考慮し、これらも本発明の範囲内とする。
所与の潜在的なT細胞エピトープにおける単一のアミノ酸修飾は、1又は複数のT細胞エピトープを消失させうる1つの方途を表す。単一のエピトープにおける修飾の組合せを意図することができるが、これらは、個別に規定されるエピトープが互いと重複する場合に適切でありうる。さらに、MHCクラスII結合グルーブとの関連では「ポケット残基」の位置と一致しない位置であるが、該アミノ酸配列内では任意の地点において、アミノ酸の修飾(所与のエピトープ内における単独の修飾、又は単一のエピトープ内における組合せによる修飾)をもたらすこともできる。相同的構造に関して修飾をもたらすこともでき、当技術分野で知られ、且つ、本明細書で説明されるin silicoの技法を用いて実施される構造的方法を、ポリペプチドの既知の構造的特徴に基づいて実施することもできる。変化(修飾)は、変異体分子の構造又は生物学的活性を保存することを意図しうる。このような1又は複数の代償的変化にはまた、ポリペプチドに由来する特定のアミノ酸残基の欠失又は付加(挿入)も含まれうる。加えて、分子の構造を変化させ、且つ/又は分子の生物学的活性を低減し、また、T細胞エピトープも消失させ、これにより、該分子の免疫原性を低減する修飾ももたらすことができる。本明細書では、あらゆる種類の修飾を意図する。
タンパク質分子からエピトープを除去するさらなる手段は、本明細書で概観されるナイーブT細胞活性化アッセイのスキームを、参照によりその全体が本明細書にもまた組み込まれる、WO02/069232において説明されるスキームに従い開発されたin silicoのツールと併せて、協同的に用いることである。該ソフトウェアは、抗原提示の過程を、ポリペプチド−MHCクラスII分子間結合相互作用のレベルでシミュレートして、所与の任意のポリペプチド配列の結合スコアを示す。集団内に現存する主要なMHCクラスIIアロタイプのうちの多くについて、このようなスコアを決定する。このスキームは、任意のポリペプチド配列を調べることが可能なので、ポリペプチドが、MHCクラスII結合グルーブと相互作用する能力に関して、アミノ酸の置換、付加、又は欠失の帰結を予測することができる。結果として、MHCクラスII分子と相互作用し、これにより、免疫原性のT細胞エピトープとして機能することが可能なアミノ酸を、それらの数を低減して含有する新たな配列構成をデザインすることができる。所与の任意の1つのドナー試料を用いる生物学的アッセイでは、評価しうるDRアロタイプへの結合が最大4つであるが、in silicoの過程では、>40のアロタイプを同時に用いて同じポリペプチド配列を調べることができる。実際に、この手法は、複数のMHCアロタイプと相互作用するそれらの能力が変化している新たな配列変異体のデザインを方向づけることが可能である。当業者には明らかである通り、そこにおいて望ましくないエピトープを除去する目的を達成するための、複数の代替的な置換のセットももたらすことができるであろう。しかし、結果としてもたらされる配列は、本明細書で開示され、したがって、本出願の範囲内に収まる、特定の組成物と密接に相同であることが認識されるであろう。
MHCクラスIIリガンドを同定し、且つ、MHCクラスIIリガンドを欠く配列類似体をデザインするためのin silicoのツールを、エピトープマッピング、並びに、場合によって、T細胞活性化についての生物学ベースのアッセイを用いる再検査と協同させて用いる組合せ法が、本出願のさらなる方法及び実施形態である。この実施形態による一般的な方法は、以下のステップ:
i)ナイーブT細胞活性化アッセイ、並びに対象のタンパク質配列を集合的に包含する合成ペプチドを用いて、T細胞を活性化させることが可能なエピトープ領域を同定するステップ、
ii)ペプチドリガンドの、1又は複数のMHCアロタイプとの結合をシミュレートする計算スキームを用いて、ステップ(i)において同定されたエピトープ領域を解析し、これにより、該エピトープ領域内のMHCクラスIIリガンドを同定するステップ、
iii)ペプチドリガンドの、1又は複数のMHCアロタイプとの結合をシミュレートする計算スキームを用いて、MHCクラスII分子にはもはや結合しないか、又は結合するMHCアロタイプがより少数であり、これに伴うアフィニティーもより低度であるエピトープ領域(単数又は複数)内に包含されるMHCリガンドの配列類似体を同定ステップ、並びに、場合によって、
iv)ナイーブT細胞活性化アッセイ、並びに対象のタンパク質において同定されるエピトープ領域を全体的に又は集合的に包含する合成ペプチドを用い、ナイーブT細胞活性化アッセイにおいて野生型(親)配列と並列的に配列類似体を調べるステップを含む。
一実施形態では、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を作製する方法が、抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列内の少なくとも1つのT細胞エピトープを同定するステップと、同定された少なくとも1つのT細胞エピトープ内の少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾するステップとを含む。
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列内の少なくとも1つのT細胞エピトープを同定する工程と、同定された少なくとも1つのT細胞エピトープ内の少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾する工程とを介して、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を作製する。
さらに別の実施形態では、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を選択する方法が、該抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列内の少なくとも1つのT細胞エピトープを同定するステップと、同定された少なくとも1つのT細胞エピトープ内の少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾するステップと、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を選択するステップとを含む。
本明細書で説明されるT細胞エピトープは、そのエピトープ領域によりさらに特徴付けることができる。このような領域は、エピトープコア、N末端、及びC末端を包含する。本明細書で用いられる「エピトープコア」とは、T細胞エピトープのコアとなる9merのアミノ酸配列を指す。該エピトープコアは、N末端及び/又はC末端において、コアとなる9merのアミノ酸配列に隣接する0、1、2、又は3アミノ酸残基をさらに包含しうる。したがって、ある実施形態では、エピトープコアが、約9アミノ酸〜約15アミノ酸の長さの範囲でありうる。
本明細書で用いられる「N末端」とは、エピトープコアのN末端に隣接するアミノ酸を指し、該エピトープコアのN末端に隣接し、且つこれの上流にある、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9アミノ酸を包含する。
本明細書で用いられる「C末端」とは、エピトープコアのC末端に隣接するアミノ酸を指し、該エピトープコアのC末端に隣接し、且つこれの下流にある、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9アミノ酸を包含する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、1又は複数の修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、2つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、3つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、4つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、5つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、6つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、7つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、8つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、9つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、10の修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、20までの修飾を含有する。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号93(VK1AA)として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号89(VH1A2)として示される重鎖可変領域とを含む抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号88、89、90、91、及び92のいずれか1つとして示される重鎖可変領域を含む抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号93、94、95、96、97、100、102、及び103のいずれか1つとして示される軽鎖可変領域を含む抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片であって、アミノ酸配列が配列番号89として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号93として示される軽鎖可変領域とを含み、
(i)重鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)又はセリン(S)による置換;51位におけるアラニン(A)のイソロイシン(I)による置換;52b位におけるリシン(K)のアルギニン(R)又はアスパラギン(Q)による置換;78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含み、且つ、
(ii)軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換;19位におけるアラニン(A)のバリン(V)による置換;22位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;48位におけるアラニン(A)のイソロイシン(I)による置換;51位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含む、該抗体、又はそれらの抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号88、89、90、91及び92として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号93、95、96、97、100、102、又は103として示される軽鎖可変領域とを含む、抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、前述の例及び実施形態に加えて、1又は複数のT細胞エピトープにおいて1又は複数のアミノ酸修飾を伴う修飾抗体又はその抗原結合断片を意図する。本明細書の非限定的な一例では、少なくとも1つのT細胞エピトープにおいて少なくとも1つの修飾を有する抗体又はそれらの抗原結合断片が提供される。本明細書の非限定的な別の例では、本明細書で説明されるT細胞エピトープのうちの1、2、3、4、5、6、又は7つにおいて少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する抗体又はそれらの抗原結合断片が提供される。さらなる非限定的な例は、複数のT細胞エピトープにおいて複数のアミノ酸修飾を有する抗体又はそれらの抗原結合断片を包含する。本明細書では、上記で説明した、任意の数の抗体又はそれらの抗原結合断片、T細胞エピトープにおける任意のアミノ酸修飾の組合せを意図する。
T細胞エピトープ及びアロタイプの頻度
抗原内に見出される個々のエピトープは、特定のMHCクラスIIアロタイプにより優先的に提示される可能性があり、且つ同様に、同じ抗原内の他の特異的なエピトープは、MHCクラスII分子上に提示されない可能性もある。特定のエピトープが、特定のMCHクラスII分子とこのように会合することは、個体のMHCクラスIIアロタイプに依存することが示されている。また、T細胞エピトープを除去するために、抗体又はそれらの抗原結合断片を修飾するときにも、特定のエピトープの、特定のアロタイプとの会合を考慮する場合がある。このような考慮により、特定のアロタイプ(例えば、あるMHCクラスIIアロタイプを有する特定の対象集団)に対して高度に特異的な修飾を、抗体又はその抗原結合断片に対してもたらすことが可能となりうる。1又は複数の対象のMHCクラスIIアロタイプは、当技術分野において知られる遺伝子型決定法により容易に決定することができ、これにより、このアロタイプに合わせて抗体又はそれらの抗原結合断片を修飾するときに考慮される、T細胞エピトープの、所与のアロタイプとの会合を容易に同定することができる。T細胞エピトープとMHCクラスIIアロタイプとの会合を同定することについては、以下の実施例でより詳細に説明される。本明細書では、所与のエピトープについて同定されたMHCクラスIIとの会合に合わせてT細胞エピトープを修飾した修飾抗体又はそれらの抗原結合断片が意図される。
D.抗エンドグリン抗体
FR及び/又はCDRをコードする核酸のすべて、並びに選択されたアミノ酸位置の変化のすべてを同時的に組み込むことは、例えば、組換え及び化学合成を含めた、当業者に知られる各種の方法により達成することができる。例えば、同時的な組込みは、例えば、アクセプター可変領域のヌクレオチド配列を、ドナーCDRをコードする核酸と併せて融合させる形で化学合成し、且つ、変化可能なアミノ酸残基を保有させるために選択した位置に複数の対応するアミノ酸コドンを組み込むことにより達成することができる。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体並びにそれらの抗原結合断片が提供される。また、エンドグリンに結合し、血管新生/新血管形成、微小血管の拡張、並びに/又は過剰な血管新生に随伴する疾患を(部分的に又は完全に)阻害するか、又は(部分的に又は完全に)管理/治療する抗体並びにそれらの抗原結合断片も提供される。同様にまた、エンドグリン機能(例えば、シグナル伝達機能、結合機能、活性化機能など)の阻害も、エンドグリン結合の阻害という意味の範囲内に包含される。さらに別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片が、エンドグリンへの結合を介して血管新生を阻害する。本出願はまた、該抗体を作製するのに用いられうる細胞系、該細胞系を作製する方法、抗体又はそれらの抗原結合断片を発現させ、且つ、これらを精製する方法も提供する。
本明細書で説明される方法を用いて生成される、エンドグリンに特異的に結合する抗体並びにそれらの抗原結合断片を、ELISAが含まれるがこれに限定されない従来の方法を用いる、本明細書で提供されるか、又は当技術分野において知られているアッセイを用いて、エンドグリンに結合する能力について調べることができる。また、本明細書で説明される抗体のアフィニティーも、Biacore又は表面プラズモン共鳴が含まれるがこれらに限定されない従来の方法を用いて決定することができる。
本明細書で説明される抗体並びにそれらの抗原結合断片は、TRC105抗体のVH配列及びVL配列をヒト化することにより構築した。このヒト化を達成するために、TRC105のVH鎖及びVL鎖の三次元モデルを創出及び解析した。次いで、VH鎖及びVL鎖を、TRC105のVH鎖及びVL鎖とのそれらの相同性に基づいてそこからヒトVH鎖及びVL鎖を選択したヒト生殖細胞系列の配列データベースと個別に比較した。ヒト化するのに選択されたヒトVL配列は、O2/O12(VK1−39)(配列番号2)であった。O2/O12は、TRC105との配列同一性が65%であり、その遺伝子はヒト生殖細胞系列のレパートリーにおいて高度に発現している。ヒト化するのに選択されたヒトVH配列は、VH3−15(配列番号40)であった。VH3−15は、TRC105との配列同一性が70%であり、ヒト生殖細胞系列のレパートリーにおいてかなりの頻度で発現している。TRC105とヒト配列との間で異なっていたアミノ酸位置を、TRC105の3Dモデルにおいて検討し、修飾する場合にどの置換を考慮するかを決定した。3Dモデル解析に基づくアミノ酸の選択基準には、例えば、アミノ酸と関連する立体効果、アミノ酸の相対電荷、並びに可変重鎖及び/又は可変軽鎖内のアミノ酸の位置が含まれるがこれらに限定されない。ヒトフレームワーク領域について同定及び提起される置換を、O2及びVH3−15のヒトフレームワーク領域に組み込み、TRC105のCDRを、対応するO2及びVH3−15のヒトフレームワーク領域に移植する結果として、多数のヒト化抗体又は抗原結合断片が得られる。加えて、軽鎖のFR−4は、ヒト生殖細胞系列Jセグメントの配列であるJk4から派生させる。同様に、重鎖のFR−4は、ヒト生殖細胞系列Jセグメントの配列であるJH4から派生させる。
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化抗体並びに抗原結合断片が説明される。また、エンドグリンに結合し、血管新生を阻害するヒト化抗体並びに抗原結合断片も説明される。本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片は、上記で説明した通りに生成させた。
抗体並びにそれらの抗原結合断片は、可変重(VH)鎖、可変軽(VL)鎖、これらの両方、又はこれらの結合部分を有しうる。一実施形態では、VH鎖が、配列番号41〜43のうちのいずれかとして示されるアミノ酸配列、又はこれらの結合部分を有する。このようなVH鎖は、フレームワーク領域配列が配列番号44〜62のうちのいずれかとして示されうる。別の実施形態では、VL鎖が、配列番号3〜5のうちのいずれかとして示されるアミノ酸配列、又はこれらの結合部分を有する。このようなVL鎖のフレームワーク領域配列は、配列番号6〜38のうちのいずれかとして示されうる。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域とを含む、抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、抗体、又はその抗原結合断片であって、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域とを有し;重鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換;76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換;77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換;78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換;82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換;89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)又はロイシン(L)による置換;94位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)又はグリシン(G)による置換;108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換;109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換;並びに113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含み;且つ、該軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換;3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換;4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換;5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;46位におけるロイシン(L)のプロリン(P)による置換;47位におけるロイシン(L)のトリプトファン(W)による置換;60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換;70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換;71位におけるフェニルアラニン(F)のチロシン(Y)による置換;100位におけるグルタミン(G)のアラニン(A)による置換;並びに106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号41、42、又は43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号3、4又は5として示される重鎖可変領域とを含む、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片が提供される。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号5として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号5として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番3として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号5として示される軽鎖可変領域とを含みうる。このような抗体は、エンドグリンに結合し、血管新生を阻害しうる。
このような実施形態のうちのいずれかでは、重鎖可変領域が、76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換;77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換;82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換;89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)又はロイシン(L)による置換;94位におけるトレオニン(T)のグリシン(G)による置換;108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換;109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換;並びに113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含むことが可能であり、且つ、該軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換;3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換;5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換;70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換;100位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換;並びに106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含みうる。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有し、
前記重鎖可変領域が、
(i)配列番号66のCDR1、配列番号67のCDR2、並びに配列番号68のCDR3;
(ii)配列番号44のアミノ酸配列、又は1若しくは複数の保存的置換を除き、配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖FR1;
(iii)配列番号45のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換を除き、配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖FR2;
(iv)配列番号47のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換と;
(b)77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換と;
(c)78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換と;
(d)82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換と;
(e)89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)若しくはロイシン(L)による置換と;
(f)94位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)若しくはグリシン(G)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号47のアミノ酸配列を有する重鎖FR3;並びに
(v)配列番号56のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換と;
(b)109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換と;
(c)113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖FR4を含み;
且つ、前記軽鎖可変領域が、
(i)配列番号63のCDR1、配列番号64のCDR2、並びに配列番号65のCDR3;
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換と;
(b)3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換と;
(c)4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換と;
(d)5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖FR1;
(iii)配列番号20のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換と;
(b)46位におけるロイシン(L)のプロリン(P)による置換と;
(c)47位におけるロイシン(L)のトリプトファン(W)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖FR2;
(iv)配列番号28のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換と;
(b)70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換と;
(b)71位におけるフェニルアラニン(F)のチロシン(Y)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖FR3;並びに
(v)配列番号35のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)100位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換と;
(b)106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖FR4;
を含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号66として示される重鎖可変領域CDR1、アミノ酸配列が配列番号67として示される重鎖可変領域CDR2、アミノ酸配列が配列番号68として示される重鎖可変領域CDR3、アミノ酸配列が配列番号63として示される軽鎖可変領域CDR1、アミノ酸配列が配列番号64として示される軽鎖可変領域CDR2、アミノ酸配列が配列番号65として示される軽鎖可変領域CDR3を含みうる。
一実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、はアミノ酸配列が配列番号44として示される重鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号45として示される重鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号47として示される重鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号56として示される重鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、アミノ酸配列が配列番号44として示される重鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号46として示される重鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号48として示される重鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号56として示される重鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片が、アミノ酸配列が配列番号6として示される軽鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号20として示される軽鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号28として示される軽鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号35として示される軽鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、アミノ酸配列が配列番号6として示される軽鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号21として示される軽鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号29として示される軽鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号35として示される軽鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、アミノ酸配列が配列番号7として示される軽鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号21として示される軽鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号29として示される軽鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号35として示される軽鎖可変領域FR4とを含む。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含む抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片であって、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域とを有し;前記重鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換;76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換;77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換;78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換;82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換;89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)又はロイシン(L)による置換;94位におけるアルギニン(R)のトレオニン(T)又はグリシン(G)による置換;108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換;109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換;並びに113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含み;且つ、該軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換;3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換;4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換;5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;46位におけるプロリン(P)のロイシン(L)による置換;47位におけるトリプトファン(W)のロイシン(L)による置換;60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換;70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換;71位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;100位におけるグルタミン(G)のアラニン(A)による置換;並びに106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、
(i)配列番号66のCDR1、配列番号67のCDR2、並びに配列番号68のCDR3;
(ii)配列番号44のアミノ酸配列、又は1若しくは複数の保存的置換を除き、配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖FR1;
(iii)配列番号45のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換を除き、配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖FR2;
(iv)配列番号47のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換と;
(b)77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換と;
(c)78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換と;
(d)82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換と;
(e)89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)若しくはロイシン(L)による置換と;
(f)94位におけるアルギニン(R)のトレオニン(T)若しくはグリシン(G)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号47のアミノ酸配列を有する重鎖FR3;並びに
(v)配列番号56のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換と;
(b)109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換と;
(c)113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖FR4を含み;
且つ、前記軽鎖可変領域が、
(i)配列番号63のCDR1、配列番号64のCDR2、並びに配列番号65のCDR3;
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換と;
(b)3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換と;
(c)4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換と;
(d)5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖FR1;
(iii)配列番号21のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換と;
(b)46位におけるプロリン(P)のロイシン(L)による置換と;
(c)47位におけるトリプトファン(W)のロイシン(L)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖FR2;
(iv)配列番号29のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換と;
(b)70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換と;
(b)71位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖FR3;並びに
(v)配列番号35のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)100位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換と;
(b)106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖FR4;
を含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
可変ドメインのうちの実質的部分は、それらに介在するフレームワーク領域と併せて、3つのCDR領域を包含する。また、該部分は、第1のフレームワーク領域並びに第4のフレームワーク領域の一方又は両方のうちの少なくとも約50%ずつも包含し、この50%は、該第1のフレームワーク領域のC末端側の50%、並びに該第4のフレームワーク領域のN末端側の50%である。可変ドメインの実質的部分のN末端又はC末端におけるさらなる残基は、天然の可変ドメイン領域とは通常関連しない残基でありうる。例えば、組換えDNA法により作製される、本明細書で説明されるヒト化エンドグリン抗体並びに抗原結合断片の構築は、クローニングステップ又は他の操作ステップを容易にする目的で導入されるリンカーによりコードされるN末端残基又はC末端残基の導入を結果としてもたらしうる。他の操作ステップには、可変ドメインを、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えば、ダイアボディーを作製する場合)、又は以下でさらに詳細に論じられるタンパク質標識を含めたさらなるタンパク質配列へと接合するためのリンカーの導入が含まれる。
アミノ酸配列が、本明細書で説明される抗体のCDR3領域として実質的に示されるヒト化エンドグリンCD3領域は、エンドグリンに対する該CDR3領域の結合を可能とする構造内に保有される。CDR3を保有する構造とは、該CDR3領域が、再構成された免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然のVH抗体可変ドメイン及びVL抗体可変ドメインのCDR3領域に対応する位置に配置される、抗体の重鎖配列若しくは軽鎖配列又はこれらの実質的部分の構造でありうる。
本発明の非限定的な一例では、アミノ酸配列が配列番号68として示されるCDR3を有する可変重鎖、並びに/又はアミノ酸配列が配列番号65として示されるCDR3を有する可変軽鎖を含有する抗体又はそれらの抗原結合断片が提供される。一実施形態では、可変重鎖のアミノ酸配列が、配列番号68として示されるCDR3のアミノ酸配列によるCDR3の置換を除き、配列番号40として示される。別の実施形態では、可変軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号65として示されるCDR3のアミノ酸配列によるCDR3の置換を除き、配列番号2として示される。加えて、このようなCDR3を含有する可変領域/鎖は、例えば、上記で説明した通りに示される1又は複数のFRアミノ酸配列(又は1若しくは複数のさらなる修飾を含有するこのようなFR)を含むことが可能であり、この場合、抗体又は抗原結合断片は、VH領域及びVL領域の各々において3つずつのCDR並びに4つずつのFRを有し、エンドグリンに特異的な結合活性を有し、且つ、血管新生を阻害することが可能である。加えてまた、多様な抗体Jセグメントも、これらの可変領域内で置換し、可変領域内のさらなる変化をもたらすことができる。
一態様ではまた、FR4配列をさらに置換することによって、本明細書で説明される可変重鎖及び可変軽鎖を創出することもできる。一実施形態では、重鎖FR4配列を、以下の配列うちの1つで置換することができる。
一実施形態では、軽鎖FR4配列を、以下の配列うちの1つで置換することができる。
さらに本明細書では、代替的に、「超ヒト化」抗エンドグリン抗体又はそれらの抗原結合断片とも称する、抗エンドグリン抗体のヒト化形も提供される。このような超ヒト化抗体又はそれらの抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号71又は72として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号75として示される重鎖可変領域とを含みうる。
別の態様では、本出願が、そのVH配列及びVL配列を有する抗体のうちの少なくとも5%が、このような抗体との競合によりエンドグリンとの結合を遮断される条件下にあるELISAアッセイにおいて、本明細書で説明されるヒト化抗エンドグリン抗体又は抗原結合断片と競合することが可能なヒト化抗体を提供する。
本明細書では、エンドグリンに結合し、且つ、エンドグリンの活性を調節する中和抗体又は抗原結合断片が提供される。該中和抗体は、エンドグリンに結合することにより、例えば、血管新生を阻害する。
ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片による血管新生の阻害百分率(%)が、陰性対照の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍であるか、10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍以上である場合は、抗体又はその抗原結合断片が血管新生を阻害することを示唆する。ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片による血管新生阻害百分率(%)が、陰性対照の2倍未満である場合は、抗体又はその抗原結合断片が血管新生を阻害しないことを示唆する。
エンドグリンに対する抗体又は抗原結合断片の結合は、血管新生を部分的に(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又はこれらのうちの任意の数)阻害する場合もあり、完全に阻害する場合もある。抗体又は抗原結合断片の中和活性又は阻害活性は、in vitroアッセイを用いて決定することもでき、且つ/又は本明細書で説明されるか、若しくは当技術分野において別の形で知られるアッセイなど、当技術分野において認知されているアッセイを用いて、in vivoにおいて決定することもできる。
一態様では、上記で説明したヒト化抗体のうちのいずれか1つの抗原結合断片が、本明細書で説明されるFab断片、Fab’断片、Fd断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、単鎖結合ポリペプチド(例えば、Fc部分を伴うscFv)、又はこれらの他の任意の機能的断片である。
本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片は、以下でより詳細に説明される検出適用又は診断適用において有用である。本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片は、エンドグリンへの結合に有用であり、これにより、本明細書で説明される血管新生を阻害しうる。
本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片は、必要な場合、所望の機能性を保持しながら、該抗体の特異的な特性を変化させるようにさらに修飾することができる。例えば、一実施形態では、化合物を修飾して、in vivoにおける安定性、可溶性、バイオアベイラビリティー、又は半減期など、該化合物の薬物動態特性を変化させることができる。本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片は、診断適用及び/又は治療適用で用いられる、治療用部分、検出可能部分、又はこれらの両方をさらに含みうる。
本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片はまた、免疫コンジュゲートとしても用いることができる。明細書及び特許請求の範囲を目的として本明細書で用いられる免疫コンジュゲートとは、本発明によるヒト化抗エンドグリン抗体又はそれらの断片と、少なくとも1つの治療標識とからなるコンジュゲートを指す。治療標識には、抗腫瘍剤及び抗血管新生阻害剤が含まれる。当技術分野では、このような抗腫瘍剤が知られており、これらには、毒素、薬物、酵素、サイトカイン、放射性核種、光力学療法剤、及び血管新生阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。毒素には、リシンA鎖、突然変異体のシュードモナス属外毒素、ジフテリアトキソイド、ストレプトニグリン、ボアマイシン、サポリン、ゲロニン、並びにブタクサの抗ウイルス性タンパク質が含まれるがこれらに限定されない。薬物には、ダウノルビシン、メトトレキサート、及びカリケアマイシンが含まれる。放射性核種には、放射性金属が含まれる。サイトカインには、形質転換増殖因子(TGF)β、インターロイキン、インターフェロン、及び腫瘍壊死因子が含まれるがこれらに限定されない。光力学療法剤には、ポルフィリン並びにそれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。当技術分野では、さらなる治療用標識が知られており、本明細書でもまた、これらが意図されている。当業者には、抗エンドグリンmAb又はそれらの断片を、少なくとも1つの抗腫瘍剤と共に複合体化する方法が知られている(すなわち、Ghetieら、1994、Pharmacol.Ther.63:209〜34により総説されている抗体コンジュゲート)。このような方法は、分子を結合させるか又は連結するのに用いられる、複数の利用可能なヘテロ二官能性試薬のうちの1つを使用しうる。本明細書ではさらに、治療用標識及び診断用標識などの連結分子についてのさらなる方法と共に、さらなる放射性核種も説明されている。
抗体又はそれらの抗原結合断片は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することによるなど、当技術分野において各種の目的について知られる技法を用いて修飾することができる。PEG修飾(PEG化)は、循環時間の改善、可溶性の改善、タンパク質分解に対する耐性の改善、抗原性及び免疫原性の低減、バイオアベイラビリティーの改善、毒性の低減、安定性の改善、並びに製剤化の容易さのうちの1又は複数をもたらしうる(総説については、Francisら、International Journal of Hematology 68:1〜18、1998を参照されたい)。
Fc部分を含有しない抗原結合断片の場合、該断片にFc部分を付加(例えば、組換えにより)して、例えば、患者に投与された場合の血液循環中における抗原結合断片の半減期を延長することができる。当技術分野では、適切なFc領域の選択、並びにこのような断片を組み込む方法について知られている。その循環における半減期を延長するように、しかし、その生物学的活性は失わないように、対象のポリペプチドにIgGのFc領域を組み込むことは、例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる米国特許第6,096,871号において説明されている技法など、当技術分野で知られている従来の技法を用いて達成することができる。患者に投与されたとき、血液循環中における抗原結合断片の半減期を延長させるように、抗体のFc部分をさらに修飾することができる。修飾は、例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる米国特許第7,217,798号において説明されている手段など、当技術分野における従来の手段を用いて決定することができる。
また、例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,091,321号及び同第6,737,056号において説明される方法など、循環における抗体ベースの融合タンパク質の半減期を改善する他の方法も知られている。加えて、それらの複合体のN−グリコシド結合型糖鎖にフコースが含有されないように、抗体並びにそれらの抗原結合断片を作製するか又は発現させることもできる。複合体のN−グリコシド結合型糖鎖からフコースを除去することは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)が含まれるがこれらに限定されない、抗体並びにそれらの抗原結合断片のエフェクター機能を増大させることが知られている。同様に、エンドグリンに結合しうる抗体又はそれらの抗原結合断片を、それらのC末端において、任意の抗体アイソタイプ、例えば、IgG、IgA、IgE、IgD、及びIgM、並びに該アイソタイプのサブクラス、特に、IgG1、IgG2b、IgG2a、IgG3、及びIgG4に由来する免疫グロブリン重鎖の全部又は一部に結合させることができる。
加えて、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片はまた、それらが血液脳関門を越えることが可能となるように修飾することもできる。本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片に対するこのような修飾は、多形性神経膠芽細胞腫(GBM)などの脳疾患を治療することを可能とする。抗体又は抗原結合断片などのタンパク質が、血液脳関門を越えることを可能とする例示的な修飾については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0082380号において説明されている。
免疫グロブリンのグリコシル化は、それらのエフェクター機能、構造的安定性、並びに抗体生成細胞からの分泌速度に対して著明な効果を及ぼすことが示されている(Leatherbarrowら、Mol.Immunol.22:407(1985))。これらの特性の一因となる炭水化物基は一般に、抗体の定常(C)領域に結合する。例えば、CH2ドメインのアスパラギン297におけるIgGのグリコシル化はIgGが、補体依存性細胞傷害作用の古典的経路を活性化させる能力を十全化するのに必要とされる(Tao及びMorrison、J.Immunol.143:2595(1989))。CH3ドメインのアスパラギン402におけるIgMのグリコシル化は、抗体の適正な構築並びに細胞溶解活性に必要である(Muraoka及びShulman、J.Immunol.142:695(1989))。IgA抗体のCH1ドメイン及びCH3ドメインにおける162位及び419位などのグリコシル化部位を除去すると、細胞内分解並びに少なくとも90%の分泌阻害がもたらされる(Taylor及びWall、Mol.Cell.Biol.8:4197(1988))。加えて、それらの複合体のN−グリコシド結合型糖鎖にフコースが含有されないように、抗体並びにそれらの抗原結合断片を作製するか又は発現させることもできる。複合体のN−グリコシド結合型糖鎖からフコースを除去することは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)が含まれるがこれらに限定されない、抗体並びに抗原結合断片のエフェクター機能を増大させることが知られている。これらの「脱フコース化」抗体並びに抗原結合断片は、複合体のN−グリコシド結合型糖鎖にフコースが組み入れられるのに必要な酵素経路及び生化学経路をそれらがもはや含有しないように遺伝子操作されたトランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は細胞系(また、フコシルトランスフェラーゼノックアウト動物、フコシルトランスフェラーゼノックアウト植物、フコシルトランスフェラーゼノックアウト細胞としても知られる)が含まれるがこれらに限定されない、当技術分野において知られている分子クローニング法を使用する各種の系を介して作製することができる。フコシルトランスフェラーゼノックアウト細胞となるように操作されうる細胞の非限定的な例には、CHO細胞、SP2/0細胞、NS0細胞、及びYB2/0細胞が含まれる。
また、可変(V)領域における免疫グロブリンのグリコシル化も観察されている。Sox及びHoodは、ヒト抗体のうちの約20%が、V領域においてグリコシル化されていることを報告している(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 66:975(1970))。Vドメインのグリコシル化は、V領域配列において、N結合型グリコシル化シグナルであるAsn−Xaa−Ser/Thrが偶然に発生することから生じると考えられているが、当技術分野では、免疫グロブリンの機能において役割を果たすと認識されていない。
可変ドメインのフレームワーク残基におけるグリコシル化は、抗体による抗原との結合相互作用を変化させうる。本発明は、抗体のアフィニティーを増大させる目的で、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワーク又はCDRにおける限定された数のアミノ酸を選択して突然変異させる(例えば、残基の置換、欠失、又は付加により)ための基準を包含する。
一般に、1又は複数の突然変異を、V領域のフレームワーク、典型的には、1若しくは複数のCDR領域に隣接する領域、並びに/又は1若しくは複数のフレームワーク領域に導入することにより、所定のポリペプチド抗原に対する結合アフィニティーを調節することができる。このような突然変異は、該ポリペプチドのグリコシル化部位の配列を破壊又は創出するが、疎水性構造特性には実質的に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換の導入を伴うことが典型的である。プロリン残基を導入する突然変異は回避することが典型的である。抗体並びにそれらの抗原結合断片のグリコシル化については、グリコシル化に関する参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,350,861号においてさらに説明されている。
抗体又はそれらの抗原結合断片は、短期送達用に製剤化することもでき、持続(長期)送達用に製剤化することもできる。
以下でより詳細に説明される通り、抗体又はそれらの抗原結合断片はまた、エンドグリンを精製するのにも用いることができ、且つ/又は試料若しくは患者におけるエンドグリンレベルを検出して、エンドグリンと関連する疾患若しくは障害を検出若しくは診断するのにも用いることができる。
このような方法を用いて生成される、エンドグリンに結合するヒト化抗体、抗原結合断片、及び抗原結合タンパク質は、それらの結合アフィニティー、アビディティー、及び中和能のうちの1又は複数について調べることができる。有用なヒト化抗体、抗原結合断片、及び抗原結合タンパク質は、患者に投与して、血管新生に随伴する状態、疾患、又は障害を予防、阻害、管理、又は治療するのに用いることができる。
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化抗体又はそれらの抗原結合断片を同定する方法が提供される。抗体並びに抗原結合断片は、結合アフィニティー、会合速度、解離速度、及びアビディティーのうちの1又は複数について評価することができる。一態様では、抗体を、それらがエンドグリン又はその中にエンドグリン結合配列が存在するポリペプチドの活性を中和する能力について評価することができる。結合アフィニティー、会合速度、解離速度、及びアビディティーの測定は、ELISA(酵素結合免疫測定アッセイ)、スカチャード解析、BIACORE解析などのほか、一般的に用いられ、且つ、当業者に知られている他のアッセイが含まれるがこれらに限定されない、当技術分野で認知されているアッセイ(表面プラズモン共鳴法)を用いて達成することができる。
エンドグリンに対する抗体の結合、並びに/又は抗体並びにそれらの抗原結合断片が、例えば、血管新生を阻害する能力の測定は、例えば、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、競合的結合アッセイ、ELISPOTアッセイ、又は当技術分野において知られる他の任意の有用なアッセイを用いて決定することができる。これらのアッセイは一般に用いられており、当業者によく知られている。
非限定的な一実施形態では、ELISAアッセイを用いて、エンドグリンに結合する特異的な抗体又はそれらの抗原結合断片の結合能を測定することができる。
ELISAなどのアッセイはまた、他の抗体又はそれらの抗原結合断片と比較して、エンドグリンに対する特異性の増大を呈示する抗体又はそれらの抗原結合断片を同定するのにも用いることができる。ELISAなどのアッセイはまた、1又は複数のポリペプチドにわたるエピトープ、並びに1又は複数のエンドグリン分子種にわたるエピトープに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片を同定するのにも用いることができる。個別のアッセイチャンバーにおいて同時に、被験抗体又はそれらの抗原結合断片を、エンドグリンのエピトープを含有するポリペプチドの異なる分子種における1又は複数のエピトープに結合する能力についてスクリーニングして、エンドグリンに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片を同定する並列的ELISAを行うことにより、特異性アッセイを実施することができる。当業者によく知られる、みかけの結合アフィニティーを測定する別の技法は、表面プラズモン共鳴法(BIACORE 2000システムにより解析する)(Liljebladら、Glyco.J.2000、17:323〜329)である。標準的な測定並びに従来の結合アッセイについては、Heeley,R.P.、Endocr.Res.2002、28:217〜229により説明されている。
エンドグリンに対するヒト化抗体はまた、それらが、血管新生に随伴する多様な疾患及び状態、例えば、血管新生/新血管形成(例えば、黄斑変性、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎障害、慢性炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、骨関節炎、並びに多様な形態のがん(原発性腫瘍及び転移)を特徴とする多様な形態の眼疾患を治療する能力についてアッセイすることもできる。当業者に知られている任意の適切なアッセイを用いて、このような効果をモニタリングすることができる。本明細書では、このような技法のうちのいくつかが説明されている。一例では、本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片を、エンドグリンに結合するそれらの能力についてアッセイする。別の例では、表面プラズモン共鳴(SPR)により、本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片のアフィニティー定数を決定する。さらに別の例では、本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片を、血管新生の阻害に対するそれらの効果についてアッセイする。
II.組成物
本明細書で説明される化合物の各々は、許容される担体又は賦形剤と共に組み合わせて、組成物として用いることができる。このような組成物は、in vitro若しくはin vivoにおいて解析するか、又はin vivo若しくはex vivoにおいて対象に投与して、開示される化合物により対象を治療するのに有用である。
したがって、医薬組成物は、有効成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤、又は当業者によく知られる他の物質を包含しうる。このような物質は非毒性であるものとし、有効成分の有効性に干渉しないものとする。担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路に依存する。
本明細書で説明される方法により同定される対象のタンパク質、例えば、抗体又は抗原結合断片を含む医薬製剤は、乾燥凍結製剤又は水溶液の形態で、所望の純度を有する該タンパク質を、生理学的に許容される任意選択の担体、賦形剤、又は安定化剤(「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、16版、Osol,A.編(1980))と混合することにより、調製して保存することができる。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、且つ、リン酸、クエン酸、並びに他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール、又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含めた、単糖、二糖、並びに他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなどの糖;ナトリウムイオンなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);並びに/又はTWEEN(登録商標)、PLURNICS(登録商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる担体、賦形剤、又は安定化剤である。
許容される担体は、投与される患者に対して生理学的に許容可能であり、それらと共に/それらにより投与される化合物の治療特性を保持する。許容される担体並びにそれらの製剤は一般に、例えば、「Remington’s pharmaceutical Sciences」(18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990)において説明されている。例示的な1つの担体は、生理学的食塩液である。本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という語句は、対象化合物を、1つの器官若しくは体内の1つの部分の投与部位から、別の器官若しくは体内の別の部分へと、又はin vitroのアッセイシステムにおいて保有又は移動させることに関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料など、薬学的に許容される物質、組成物、又は媒体を意味する。各担体は、製剤の他の成分に適合的であり、且つ、それが投与される対象に対して傷害性でないという意味において許容可能である。また、許容される担体は、対象化合物の特異的な活性を変化させることもないものとする。
本発明の一態様では、医薬投与に適合的な溶媒(水性溶媒又は非水性溶媒)、溶液、エマルジョン、分散媒体、コーティング、等張剤並びに吸収促進剤又は吸収遅延剤を含めた、薬学的に許容される組成物又は生理学的に許容される組成物が提供される。したがって、医薬組成物又は医薬製剤とは、対象における医薬使用に適する組成物を指す。医薬組成物及び医薬製剤は、本明細書で説明される量の化合物と、薬学的に許容される担体又は生理学的に許容される担体を包含する。
組成物は、特定の投与経路(すなわち、全身投与経路又は局所投与経路)に適合するように製剤化することができる。したがって、組成物は、各種の経路を介して投与するのに適する担体、希釈剤、又は賦形剤を包含する。
別の実施形態では、組成物中の化合物の安定性を改善するために、且つ/又は組成物の放出速度を制御するために、必要な場合は、該組成物が、許容される添加剤をさらに含みうる。許容される添加剤は、対象化合物の特異的な活性を変化させない。例示的な、許容される添加剤には、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ラクトースなどの糖、並びにこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。許容される添加剤は、デキストロースなど、許容される担体及び/又は賦形剤と組み合わせることができる。代替的に、例示的な、許容される添加剤には、ペプチドとの安定性を増大させ、且つ、溶液のゲル化を減少させる、ポリソルベート20又はポリソルベート80などの界面活性剤が含まれるがこれらに限定されない。界面活性剤は、溶液の0.01%〜5%の量で組成物に添加することができる。許容されるこのような添加剤の添加は、保管時における組成物の安定性を増大させ、且つ、保管寿命を延長する。
医薬組成物は、例えば、皮下注射、皮下注射、硝子体内注射、皮内注射、静脈内注射、動脈内注射、腹腔内注射、又は筋肉内注射が含まれるがこれらに限定されない注射を介して投与することができる。本明細書では、各種の注射用の組成物製剤において用いられる賦形剤及び担体が意図される。以下の説明は、例だけを目的とするものであり、組成物の範囲を限定することを意図しない。注射用組成物には、水性溶液(水に可溶性である場合)又は分散液、並びに滅菌注射溶液又は滅菌注射分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与に適する担体には、生理的食塩液、静菌水であるCremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩液(PBS)が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、並びにこれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒体でありうる。例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより、分散液の場合には必要とされる粒子サイズを維持することにより、並びに界面活性剤を用いることにより、流体性を維持することができる。抗菌剤及び抗真菌剤には、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールが含まれる。等張剤、例えば、糖;マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール;並びに塩化ナトリウムを、組成物中に組み入れることができる。結果として得られる溶液は、そのままで用いるようにパッケージ化することもでき、乾燥凍結することもできる;乾燥凍結調製物は、その後の投与前に滅菌溶液と混合することができる。静脈内注射又は罹患部位における注射では、有効成分が、発熱物質を含まず、且つ、pH、等張性、及び安定性が適切である、非経口投与に許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性媒体を用いて、適切な溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、並びに/又は他の添加剤も組み入れることができる。必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又はこれらの組合せを伴う適切な溶媒中に必要量で有効成分を組み込み、次いで濾過滅菌することにより、滅菌注射溶液を調製することができる。一般に、基盤となる分散媒体、並びに上記で列挙した成分のうちで必要とされる他の成分を含有する滅菌媒体に有効成分を組み込むことにより、分散液を調製することができる。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、有効成分に、既に滅菌濾過されたその溶液に由来する、任意のさらなる所望の成分を加えた粉末をもたらす真空乾燥及び凍結乾燥である。
組成物は、従来通り、硝子体内投与することもでき、皮下投与することもでき、硝子体内インプラントを介して投与することもできる。
組成物は、従来通り、例えば、単位用量を注射することによるなど、静脈内投与することができる。注射では、有効成分が、発熱物質を実質的に含まず、且つ、pH、等張性、及び安定性が適切である、非経口投与に許容される水性溶液の形態でありうる。例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性媒体を用いて、適切な溶液を調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、並びに/又は他の添加剤も組み入れることができる。加えて、組成物は、エアゾール化を介して投与することもできる(Lahnら、「Aerosolized Anti−T−cell−Receptor Antibodies Are Effective against Airway Inflammation and Hyperreactivity」、Int.Arch.Allegery Immuno.、134:49〜55(2004))。
一実施形態では、組成物を乾燥凍結して、例えば、保存時の保管寿命を延長する。組成物を、薬物又は本明細書で示される方法のうちのいずれかにおいて用いることを考慮する場合、それが、ヒト患者に投与された場合に、炎症反応又は安全でないアレルギー反応を引き起こさないように、該組成物が発熱物質を実質的に含まないことが可能であることを意図する。組成物を発熱物質について検査し、発熱物質を実質的に含まない組成物を調製することは、当業者に十分に理解されており、市販のキットを用いてこれを達成することが可能である。
許容される担体は、吸収又はクリアランスを安定化させるか、増大させるか、又は遅延させる化合物を含有しうる。このような化合物には、例えば、グルコース、スクロース、又はデキストランなどの炭水化物;低分子量のタンパク質;ペプチドのクリアランス若しくは加水分解を低減する組成物;又は賦形剤若しくは他の安定化剤及び/若しくは緩衝剤が含まれる。吸収を遅延させる薬剤には、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンが含まれる。また、洗浄剤も用いて、リポソーム担体を含めた医薬組成物を安定化させることもでき、その吸収を増大又は減少させることもできる。消化から保護するために、化合物を組成物と複合体化させて、それを、酸及び酵素による加水分解に対して耐性とすることもでき、該化合物を、リポソームなど、適切な形で耐性の担体中に複合体化させることもできる。当技術分野では、化合物を消化から保護する手段が知られている(例えば、治療的作用剤の経口送達用液体組成物について記載している、Fix(1996)、Pharm Res.13:1760〜1764;Samanen(1996)、J.Pharm.Pharmacol.48:119〜135;並びに米国特許第5,391,377号を参照されたい)。
「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与されたときに、生理的に忍容され、且つ、急性胃蠕動、めまいなどのアレルギー反応又は同様の望ましくない反応をもたらさないことが典型的である分子的実体及び組成物を指す。
治療用組成物との関連で用いられる「単位用量」という用語は、各単位が、必要とされる希釈剤、すなわち、担体又は媒体と共に所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質を含有する、ヒトに対する単位用量として適切な、物理的に個別の単位を指す。
組成物は、用量製剤と適合する形で、且つ、治療有効量で投与することができる。投与される量は、治療される対象、対象の免疫系が有効成分を使用する能力、並びに所望の結合能の程度に依存する。投与されるのに必要とされる有効成分の正確な量は、医師の判断に依存し、各個人に固有である。また、初回投与及び追加投与に適するレジメンも変化しうるが、初回投与の後、後続の注射又は他の投与を介して、1時間又は複数時間の間隔で反復投与を行うことが典型的である。代替的に、血中濃度を維持するのに十分な持続的静脈内注入も意図される。
一実施形態は、本明細書で説明される組成物を用いて、本明細書で説明される状態、疾患、又は障害を治療するための薬物を作製することを意図する。薬物は、治療を必要とする患者/対象の身体的特徴に基づき製剤化することができ、且つ、状態、疾患、又は障害の病期に基づき、単一の製剤に製剤化することもでき、複数の製剤に製剤化することもできる。薬物は、病院及び診療所への販売に適切な表示であって、本明細書で説明される疾患を有する対象の治療適応についての該表示を伴う、適切な医薬パッケージにパッケージングすることができる。薬物は、単一のユニットとしてパッケージングすることもでき、複数のユニットとしてパッケージングすることもできる。以下で説明される通り、組成物の用量及び投与についての指示書は、パッケージ内に組み入れることができる。本発明は、本明細書の上記で説明したヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片、並びに薬学的に許容される担体による薬物をさらに対象とする。
本明細書では、エンドグリンに結合し、本明細書の別の箇所で説明した物質などの物質を包含するヒト化抗体並びにそれらの抗原結合断片による組成物が提供される。本明細書で説明される、エンドグリンに結合するヒト化抗体並びにそれらの抗原結合断片を用いて、血管新生/新血管形成(例えば、黄斑変性、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎障害、慢性炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、骨関節炎、並びに多様な形態のがん(原発性腫瘍及び転移)を特徴とする多様な形態の眼疾患を治療することができる。
組成物(本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片)は、単独で投与することもでき、治療される状態に応じて、第2の組成物と組み合わせて同時に投与することもでき、逐次的に投与することもできる。一実施形態では、第2の治療処置が、血管新生阻害剤(本明細書で説明される)である。2つ以上の組成物を投与する場合、組成物は、組合せで(逐次的に又は同時的に)投与することができる。組成物は、単回投与で投与することもでき、複数回投与で投与することもできる。
本発明の一実施形態では、それらがヒト患者への投与について許容されるように、発熱物質を含まないように組成物を製剤化する。組成物を発熱物質について検査し、発熱物質を含まない医薬組成物を調製することは、当業者に十分に理解されている。
本発明の一実施形態は、本発明の組成物のうちのいずれかを用いて、本発明による、障害を治療するための薬物を作製することを意図する。薬物は、治療を必要とする患者/対象の身体的特徴に基づき製剤化することができ、且つ、障害に基づき、単一の製剤に製剤化することもでき、複数の製剤に製剤化することもできる。本発明の薬物は、病院及び診療所への販売に適切な表示であって、対象における、本明細書で説明される障害の治療適応についての該表示を伴う、適切な医薬パッケージにパッケージングすることができる。薬物は、単一のユニットとしてパッケージングすることもでき、複数のユニットとしてパッケージングすることもできる。本発明の医薬組成物の用量及び投与についての指示書は、医薬パッケージ内に組み入れることができる。
III.使用方法
本明細書では、患者(ヒト又は非ヒト)に、エンドグリンに優先的に結合する抗体又はその抗原結合断片の組成物を投与することによって患者における応答を誘導する方法が提供される。抗体が結合する結合部位は、連続的であってよい、又はコンフォメーション/不連続なエピトープであってよい。
本発明の有効な応答は、患者が疾病の徴候又は症状の部分的な又は完全な軽減又は低下を経験する場合に実現され、詳細には、これらに限定することなく、生存及び/又は視力の延長が挙げられる。予測無増悪生存時間は、再発数、疾患の病期、及び他の因子を含めた予後因子に応じて、数カ月から数年の単位で測定することができる。生存の延長は、これらに限定することなく少なくとも1カ月(mo)、少なくとも約2mos、少なくとも約3mos、少なくとも約4mos、少なくとも約6mos、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年などの期間が挙げられる。全生存も、数カ月から数年の単位で測定することができる。或いは、有効な応答は、患者の症状に変化がないままであることであってよい。適応症の治療の別の指標は、以下でより詳細に記載されている。
本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片の組成物は、非治療的作用剤として(例えば、親和性精製剤として)使用することができる。一般に、そのような実施形態の1つでは、対象のタンパク質を、セファデックス(Sephadex)樹脂又は濾紙などの当技術分野で公知の従来の方法を使用して固相上に固定化する。固定化したタンパク質を、精製される対象の標的(又はその断片)を含有する試料と接触させ、その後、支持体を、固定化された抗体に結合している標的タンパク質を除く試料中の材料の実質的にすべてを除去する適切な溶媒で洗浄する。最終的に、支持体を、グリシン緩衝液、pH5.0などの標的タンパク質を放出する別の適切な溶媒で洗浄する。組成物は、精製に加えて、エンドグリン及び血管新生を伴う疾患及び障害の検出、診断及び療法ために使用することができる。
本明細書で使用される用語「接触させること」は、化合物の溶液又は組成物と生物体に由来するポリペプチド、細胞、組織又は器官が入っている液体培地を加え合わせることを指す。或いは、「接触させること」は、化合物の溶液又は組成物を、生物体から得られた血液、血清、又は血漿などの液体と混ぜ合わせることを指す。in vitroでの適用に関して、組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの別の構成成分も含んでよい。DMSOは、化合物の取込み又は化合物の溶解を容易にする。試験化合物を含む溶液を、細胞、組織又は器官が入っている培地に加えることができる、又は、ピペットベースのデバイス又はシリンジベースのデバイスなどの送達装置を利用することによって、血液などの別の液体と混合することができる。in vivoでの適用に関して、接触は、例えば、組成物を任意の適切な手段によって患者に投与することによって起こりうる;薬学的に許容される賦形剤及び担体を伴う組成物は、上でより詳細に記載されている。
本出願の一実施形態による「患者」(例えば、哺乳動物、例えばヒト又は霊長類、げっ歯類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどの非ヒト動物など)は、本明細書に記載の疾患又は障害の1又は複数の臨床的な顕在化及び/又は症状を示す哺乳動物である。ある特定の状況では、患者は無症候性でありうるが、それでも疾患又は障害の臨床的な顕在化を有する。抗体又はその抗原結合断片は、治療的部分とコンジュゲートすることができる、又は治療的部分を含有する融合タンパク質であってよい。抗体又はその抗原結合断片は、検出可能部分とコンジュゲートすることができる、又は検出可能部分を含有する融合タンパク質であってよい。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、治療的部分及び検出可能部分の両方とコンジュゲートすることができる。抗体又はその抗原結合断片は、アフィニティータグ(例えば、精製タグ)とコンジュゲートすることができる、又はそれを用いて組換え操作することができる。例えば、His6タグ(配列番号85)などのアフィニティータグは、当技術分野で慣習的なものである。
本明細書において提供される抗体又はその抗原結合断片は、治療的部分及び/又は画像化部分若しくは検出可能部分及び/又はアフィニティータグとコンジュゲート又は連結することができるものである。ポリペプチドをコンジュゲート又は連結するための方法は当技術分野で周知である。化合物と標識との間を結びつけること(結合させること)は、これらに限定されないが、共有結合性の相互作用及び非共有結合性の相互作用、化学的なコンジュゲーション並びに組換え技法を含めた、当技術分野で公知の任意の手段を含む。
A.エンドグリンの結合及び血管新生
エンドグリン(CD105)は、細胞表面で180kDaのホモ二量体膜貫通タンパク質として発現される。外部ドメインは、TGF−β1アイソフォーム及びTGF−β−3アイソフォームに高い親和性(50nM)で結合し、CD105の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインは、ベータグリカンと71%の配列類似性を共有する。ヒトCD105遺伝子は、9q34染色体に位置することが蛍光in situハイブリダイゼーションを使用して同定され、コード領域は、14個のエクソンを含有し、TGF−βに結合する能力を持つCD105の2つの異なるアイソフォーム(L及びS)が特徴付けられている。細胞質尾部に14アミノ酸を有する600アミノ酸残基からなるS−CD105とは対照的に、L−CD105は、細胞質尾部に47アミノ酸残基を有する633アミノ酸残基からなる。しかし、L−CD105が優性型である。CD105は、内皮細胞において、主にセリン残基及びトレオニン残基で構成的にリン酸化されており、このリン酸化は、細胞内の構成的に活性なTGF−β RIIによるものである。TGF−βがCD105に結合することにより、リン酸化が下方制御され、これはプロテインキナーゼC阻害剤で見られる効果と同様である。ヒトCD105のアミノ酸配列は、細胞外ドメインの露出した領域に位置するアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)のトリペプチドを含有する。RGDペプチドは、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フォンヴィルブランド因子(vWF)、I型コラーゲン、及びフィブリノーゲンなどのECMタンパク質において見出される重要な認識構造であり、細胞表面インテグリンによって認識される。インテグリン接着は、内皮が決定的な役割を果たすプロセスである鬱血、血栓症、血管新生及び炎症に関係づけられている(Duffら、FASEB J.,17:984〜992(2003))。
CD105は、増殖している内皮細胞によって発現されるTGF−β受容体ファミリーのメンバーである。内皮細胞の増殖のために正常なレベルのCD105が必要である。CD105の発現は、細胞低酸素症により、低酸素誘導因子−1−α(HIF−1−α)が産生されことによって増加し、低酸素の細胞をアポトーシスから保護する。CD105のいくつかの機能は、TGF−βシグナル伝達と関連する。TGF−βは、セリンキナーゼ、受容体I型(RI)及び受容体II型(RII)からなるヘテロ二量体受容体を通じてシグナル伝達する。TGF−βが受容体の外部ドメインに結合することにより、TGF−β RIをリン酸化する細胞質のRIIキナーゼ活性が表に現れ、次いでそれがSmadタンパク質などの下流のシグナル伝達物質(signaler)と相互作用しうる。CD105は、TGF−β受容体複合体の一部を形成するが、細胞表面に独立して存在する場合もある。in vitroでは、多くの細胞において、CD105によってTGF−βシグナル伝達が抑制される。
CD105は、アクチビンA並びに骨形態形成タンパク質(BMP)−10、BMP−9、BMP−7及びBMP−2などの他の増殖因子にも結合する。TGF−β又は他の増殖因子リガンドのCD105への結合には、少なくとも受容体RIIが存在することが必要であり、単独ではリガンドに結合することができない。CD105が受容体に結びつくことによって、リガンド自体に対するそれらの親和性は変化しない。結びついたら、CD105の細胞質ドメインがTGF−β RI及びTGF−β RIIによってリン酸化される;次に、TGF−β RIキナーゼが受容体複合体から解離するが、TGF−β RIIキナーゼは解離しない。
CD105の発現により、TGF−β RIIのリン酸化のレベルが阻害されるが、TGF−β RIのリン酸化のレベルは増加し、その結果、Smad2のリン酸化が増加するが、Smad3のリン酸化は増加しない。Smad2は種々の転写因子、コアクチベーター、及び抑制因子と相互作用しうるので、リン酸化されたSmad2は、多数のシグナルのインテグレーターとしての機能を果たして遺伝子の転写を調節しうる。したがって、CD105によりTGF−β RIとTGF−β RIIが相互作用することによってTGF−βの機能が調節され、下流のSmadタンパク質のリン酸化が修飾される。
CD105は、TGF−β受容体(TGF−βR)、アクチビン受容体様キナーゼ(ALK)及びアクチビン受容体を含めた、TGF−βスーパーファミリーの多数のキナーゼ受容体複合体のシグナル伝達を調節するように作用する。CD105がないと、TGF−β受容体が活性化されることによって、内皮細胞の成長を阻害するSMADタンパク質(SMAD2及びSMAD3)がリン酸化される。しかし、TGF−βによってCD105が活性化されることにより、SMADタンパク質のリン酸化(SMAD1、SMAD5及びSMAD8のリン酸化を含む)が調節される。最終結果は、TGF−β受容体の活性化による内皮細胞に対する成長阻害性の効果が放出されることである(図3参照)。驚くことではないが、抗CD105抗体又はアンチセンスオリゴヌクレオチドによってCD105の活性化を阻止することは、TGF−βと相乗的に作用して、内皮細胞の成長を抑制する。
CD105プロモーターは、長さ2.6kbであるが、TATA転写開始ボックス又はCAAT転写開始ボックスを含有しない。しかし、CD105プロモーターは、2つのGCリッチ領域、Sp1に対するコンセンサスモチーフ、ets、GATA、AP−2、NGF−β、及びMad、並びにTGF−β反応エレメントを有する。それにもかかわらず、CD105は、比較的限られた細胞分布を有する。基礎レベルの転写には、−68位のets部位及びSp1部位が必要であると思われるが、例えば、内皮細胞に対する発現の相対的な制限には、多数の制御領域、具体的には、−1294〜−932における制御領域、及び転写開始部位に非常に近い別の制御領域が関与すると思われる。CD105は、TGF−βによって上方制御され、これにより、−37〜−29におけるSp1部位が必要であることが示されており、1又は複数の並置された上流のSBE部位結合性Smad3及び/又はSmad4(TGF−βシグナル伝達によって活性化される)も関与している。低酸素症は、虚血組織及び腫瘍の一般的な特徴であり、血管内皮細胞(EC)におけるCD105の遺伝子発現に対する強力な刺激因子である。そのような効果は、TGF−β1と相まって強化される。上方制御されたCD105は、ECにおいて、低酸素ストレス下で自己防御的役割を発揮しうる。
血管ECは、CD105の主要な供給源である。血管の平滑筋細胞、線維芽細胞、マクロファージ、プレB起源の白血病細胞、骨髄単球起源の白血病細胞、及び赤血球前駆体を含めた他の細胞型は、CD105を、より少ない程度に発現する。
CD105は、血管新生に関与する。アンチセンス実験により、HUVECにおいてCD105の発現を抑制することにより、TGF−β1と相まってin vitroの血管新生が顕著に阻害され、それによってCD105が内皮細胞における血管新生促進性の構成成分であることが示されたことが実証された。血管新生におけるCD105の重要な役割の別の証拠は、CD105ノックアウトマウスによってもたらされる。CD105ヌルマウスは、胚形成期の初期での死亡につながる多数の血管の欠陥及び心臓の欠陥を示す。CD105ヌルマウスにおいて観察された重篤な血管の機能障害により、CD105が、胚体外脈管構造における成熟血管の形成のために必要であることが示され、血管形成におけるエンドグリンの直接的な役割がさらに確認されている。
とりわけまた、CD105又はedg−1としても知られるエンドグリンは、増殖しつつある血管内皮細胞において高レベルで発現する、ホモ二量体のI型膜糖タンパク質である。したがって、エンドグリンは、第1に、活性の血管新生を経つつある内皮細胞についての増殖関連マーカーである。しかし、正常組織の血管内皮細胞によりエンドグリンの発現は制限されうる。ヒトエンドグリンは、形質転換増殖因子β(TGF−β)に特異的に結合することが知られており、エンドグリンについて推測されるアミノ酸配列は、TGF−β受容体の一種であるβ−グリカンに対する強い相同性を示す。
エンドグリン(EDG)は、内皮細胞及び白血病細胞における増殖関連抗原であるので、腫瘍血管系を減殺する抗体ベースの方法において標的とされている。EDGの発現は、腫瘍に関連する血管内皮において上方制御され、EDGは、血管新生に不可欠である。血管新生は、新血管形成をもたらす新たな毛細血管の形成のほか、既存の血管系の維持も包含する。血管新生は、内皮細胞を介する血管基底膜及び間質マトリックスの分解、内皮細胞の遊走、内皮細胞の増殖、並びに内皮細胞による毛細血管ループの形成を含めた、一連の逐次的段階を包含する複雑な過程である。
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化抗体が提供される。エンドグリンは、現存する脈管構造を含み、それを支持する細胞並びに新しい脈管構造の成長を促進し、その一部になっている細胞において見出すことができる。抗体をエンドグリンに結合させ、それによって血管新生を阻害すること、現存する脈管構造又は現存する脈管構造の維持を阻害すること、及び/又は小血管の拡張を阻害することができる。エンドグリンを精製するためのそれらの使用に加えて、これらの抗体は、精製、検出及び診断的な目的並びに治療目的のために有用である。本明細書において提供される抗体は、種々の状態及び疾患を治療するための医薬品の製剤化、前記状態及び疾患を治療するための方法、並びに検出又は診断の方法に使用することができる。
エンドグリンの活性を調節し、これにより、血管新生を阻害し、且つ/又は微小血管の血管拡張を阻害する、エンドグリンに対するマウスモノクローナル抗体(mAb)が作製されている。これらのマウスモノクローナル抗体は、それらの各々が全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第5,928,641号;同第6,200,566号;同第6,190,660号;及び同第7,097,836号において説明されている。加えて、これらの抗体のうちの多数について、ex vivo及びin vivoにおける有効性も裏付けられている;エンドグリンに結合するモノクローナル抗体は、エンドグリンを調節する化合物として、対象の抗体となる。しかし、マウス抗体の投与は、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)の形態における免疫原性を含め、多数の限界を有するので、マウス抗体の治療的使用は実施可能ではない。
「血管新生」は、本明細書では、血管の維持及び発生のすべての態様を包含するために使用される。したがって、血管新生は、新血管形成につながる新しい毛細血管の形成並びに現存する脈管構造及び小血管の維持及び調節を包含する。血管新生は、血管基底膜及び間質マトリックスの、内皮細胞に媒介される分解、内皮細胞の遊走、内皮細胞の増殖、及び内皮細胞による毛細管のループの形成を含めた一連の逐次的なステップを含む複雑なプロセスである。血管新生は、新しい血管の成長及び/又は発生(新血管形成とも称される)、小血管の拡張、過剰な又は延長された血管の成長、及び現存する脈管構造の維持を含む。エンドグリンは、血管新生の制御に関与することが公知であり、血管新生の誘導に関連する多数の生化学的な経路に関与すると考えられている。(Duffら、FASEB J.,17:984〜992(2003);Bernabeuら、J.Cell.Biochem.,102(6):1375〜1388(2007))。
本明細書で使用される用語「血管新生阻害」、「血管新生を阻害すること」又は「抗血管新生」は、脈管形成を阻害することを包含し、新血管形成の程度、量、又は速度の減少に影響を及ぼすことを意味するものとする。組織における内皮細胞の増殖又は遊走の程度、量、又は速度を減少させる効果は、血管新生を阻害することの特定の例である。
用語「血管新生阻害性組成物」は、内皮細胞の遊走、増殖、管形成などの血管新生に媒介されるプロセスを阻害し、その後、現存する血管から新しい血管が生成することを阻害し、したがって血管新生依存性の状態に影響を及ぼす組成物を指す。
用語「血管新生を伴う疾患」は、本明細書では、本明細書及び特許請求の範囲の目的に関して、血管新生が異常に延長されているヒトにおけるある特定の病理学的なプロセスを意味するために使用される。これは、さらに、血管新生に関連する、それによって引き起こされる、又はそれを伴う疾患及び状態などの血管新生の状態及び疾患を包含する。そのような疾患の非限定的な例としては、血管新生/新血管形成を特徴とする様々な形態の眼疾患(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎症、慢性の炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、変形性関節症、並びに、様々な形態のがん及び転移が挙げられる。本明細書に記載の抗体及びその抗原結合断片を使用して、エンドグリンに結合させ、血管新生を阻害することによって、血管新生を伴う疾患を治療することができる。
用語「抗血管新生療法」は、本明細書では、本明細書及び特許請求の範囲の目的に関して、エンドグリンを発現している(静止状態の脈管構造と比較して、増殖している脈管構造においてより高いレベルで発現される)細胞及び/又は脈管構造を標的とする療法を意味するために使用される;これは、さらに、血管新生(すなわち、新血管形成につながる新しい毛細血管の形成)を対象とする療法、現存する脈管構造及び/又は過剰な血管化又は血管成長を対象とする療法、小血管の拡張を対象とする療法、並びに疾患又は状態を対象とする療法(例えば、血管ターゲティング療法)を包含する。本発明の範囲内で考えられている例示的な疾患又は状態としては、これらに限定されないが、血管新生/新血管形成を特徴とする様々な形態の眼疾患(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎症、慢性の炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、変形性関節症、並びに、様々な形態のがん、充実性腫瘍及び転移が挙げられる。
「新血管形成を特徴とする眼疾患」は、本明細書では、本明細書及び特許請求の範囲の目的に関して、網膜、角膜、瞳孔、虹彩、硝子体液又は房水を含めた眼の任意の部分内での血管新生の増加によって引き起こされる、又はその結果として生じる任意の眼疾患を意味するために使用される。そのような疾患としては、例えば、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、非糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)及び網膜下新血管形成(SRN又はSRNV)及び眼の新生物が挙げられる。
B.診断への適用
ヒト化抗エンドグリン抗体及びその断片は、in vivoで、及びin vitroで検出、診断及び/又はモニターするために使用することができる。エンドグリンは、下でさらに記載されている通り、多数の疾患及び障害に関与すると考えられている。エンドグリン関連疾患及び状態の治療は、一部において、それらの診断に左右され、本明細書に記載の抗体及びその抗原結合断片は、過剰なエンドグリンを診断するため、又はエンドグリン活性を伴う疾患及び状態を診断するために有用である。
本明細書では、試料又は対象におけるエンドグリンのレベルを検出する方法であって、(i)本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片を試料又は対象と接触させるステップと、(ii)抗体又はその抗原結合断片とエンドグリンの複合体を検出するステップとを含む上記方法が提供される。
本明細書では、血管新生又は血管新生依存性の疾患又は障害を画像化又は診断する方法であって、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片の組成物を試料と接触させるステップを含む上記方法が提供される。試料は、例えば、血液、血清、血漿、血小板、生検液、脊髄穿刺液、髄膜及び尿であってよい。画像化又は診断の方法は、in vitroアッセイにおいて起こりうる。或いは、接触させるステップが、組成物を患者に投与することによる場合、血管新生又は血管新生依存性の疾患又は障害は、in vivoで画像化又は診断される。
一実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、検出可能部分をさらに含む。検出は、in vitro、in vivo又はex vivoで起こりうる。抗体又はその抗原結合断片を用いてエンドグリンを検出及び/又は決定(数量化、定性化など)するためのin vitroアッセイとしては、これらに限らないが、例えば、ELISA、RIA及びウェスタンブロットが挙げられる。エンドグリンのin vitroで検出、診断又はモニターすることは、患者から試料(例えば、血液試料)を得、試料を、例えば、標準のELISAアッセイにおいて試験することによって起こりうる。例えば、96ウェルマイクロタイタープレートを本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片でコーティングし、洗浄し、PBS−Tween/BSAでコーティングして非特異的な結合を阻害することができる。血液試料を段階的に希釈し、ウェルに2連で置き、エンドグリンの段階的に希釈した検量線と比較することができる。ウェルをインキュベートし、洗浄した後、ビオチンで標識された抗エンドグリン抗体を加え、その後ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼを加えることができる。ウェルを洗浄し、基質(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を加えてプレートを展開した。プレートは、従来のプレートリーダー及びソフトウェアを使用して読み取ることができる。
検出がin vivoで起こる場合、接触は、本明細書の他の箇所に記載のものなどの任意の従来の手段を使用して抗体又は抗原結合断片を投与することによって起こる。そのような方法では、試料又は対象におけるエンドグリンの検出を使用して、本明細書に記載の疾患及び障害などのエンドグリンの活性に付随する、又はそれと相関する疾患又は障害を診断することができる。
エンドグリンをin vivoで検出、診断又はモニターすることにおいて、患者に、検出可能部分と結合させた、エンドグリンに結合する抗体又は抗原結合断片を投与する。検出可能部分は、当技術分野で認められている方法、例えば、これらに限定されないが、例えば、それぞれが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,096,289号、米国特許第7,115,716号、米国特許第7,112,412号、米国特許出願第20030003048号及び米国特許出願第20060147379号に記載の、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光、放射性イメージング、内視鏡、腹腔鏡、又は血管内カテーテルから供給される光源(すなわち、光活動性作用剤を検出することによる)、フォトスキャニング、陽電子放出断層撮影法(PET)走査、全身核磁気共鳴(NMR)、ラジオシンチグラフィー、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、標的化近赤外領域(NIR)走査、X線、超音波などを使用して可視化することができる。そのような方法を使用して化合物を検出するための標識も当技術分野で公知であり、そのような特許及び出願に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。検出可能部分を可視化することにより、エンドグリン及び/又は血管新生に付随する状態又は疾患を検出、診断、及び/又はモニターすることが可能になりうる。
所望の標的タンパク質、すなわち、エンドグリンに特異的な抗体を利用する追加的な診断アッセイが当技術分野で公知であり、本明細書においても考えられている。
これらの方法に対して考えられる非限定的な状態、疾患及び障害としては、これらに限定されないが、血管新生に付随する状態、疾患及び障害、例えば、血管新生/新血管形成を特徴とする様々な形態の眼疾患(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎症、慢性の炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、変形性関節症、並びに、様々な形態のがん(原発腫瘍及び転移)などが挙げられる。そのような疾患を検出、診断又はモニターすることにおいて、対象患者に、検出可能部分とコンジュゲートした本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片の組成物を投与する。部分は、例えば上記のものなどの当技術分野で認められている方法を使用して可視化することができる。検出可能部分を可視化することにより、そのような状態及び疾患を検出、診断、及び/又はモニターすることが可能になりうる。
in vitroでの検出方法のために、患者から得る試料としては、これらに限定されないが、血液、組織生検試料及びそれから得られる体液が挙げられる。
したがって、本発明は、治療的な治療の必要性が潜在的に示されている疾患又は障害に関連づけられるエンドグリンのレベルを検出又は診断するために有用な、エンドグリンに対するヒト化抗体及びその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、抗体は、本明細書に記載のヒト化抗エンドグリン抗体を含む。他の実施形態では、抗体は、第2の作用剤をさらに含む。そのような作用剤は、例えば、レポーター分子又は検出可能な標識などの分子又は部分であってよい。そのような検出方法のための検出可能な標識/部分が当技術分野で公知であり、以下に、より詳細に記載されている。レポーター分子は、アッセイを使用して検出することができる任意の部分であってよい。ポリペプチドとコンジュゲートしているレポーター分子の非限定的な例としては、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、光親和性分子、有色粒子又はビオチンなどのリガンドが挙げられる。検出可能な標識としては、それらの特異的な機能的性質、及び/又は化学的特性によって検出することができる化合物及び/又はエレメントが挙げられ、それを使用することにより、それが付着しているポリペプチドを検出すること、及び/又は、望ましい場合には、さらに数量化することが可能になる。多くの適切な検出可能な(画像化)作用剤が当技術分野で公知であり、同様にそれらをポリペプチドに付着させるための方法も当技術分野で公知である(例えば、そのそれぞれが、これによって参照により組み込まれる、米国特許第5,021,236号;同第4,938,948号;及び同第4,472,509号を参照されたい)。
抗体などのポリペプチドと検出可能な部分をつなぐ方法は当技術分野で公知であり、それらとしては、例えば、融合タンパク質を形成するための組換えDNA技術及びコンジュゲーション(例えば、化学的なコンジュゲーション)が挙げられる。化学的なコンジュゲーション又は組換え操作によって融合タンパク質を調製するための方法は、当技術分野で周知である。構成成分を共有結合的に連結する方法及び非共有結合的に連結する方法も当技術分野で公知である。例えば、Williams(1995)Biochemistry 34:1787〜1797;Dobeli(1998)Protein Expr.Purif.12:404〜414;及びKroll(1993)DNA Cell.Biol.12:441〜453を参照されたい。
ある場合には、標識又は部分と本明細書に記載の抗体、抗原結合断片又は結合性タンパク質の1又は複数の部分との間に構造化されていないポリペプチドリンカー領域を導入することが必要でありうる。リンカーにより、柔軟性を増強すること、及び/又は任意の2つの断片間の立体的な障害を低下させることを容易にすることができる。リンカーにより、各断片の適切な折りたたみが生じることも容易にすることができる。リンカーは、タンパク質の2つのドメイン間のランダムコイルに存在することが決定された配列などの天然起源のものであってよい。1つのリンカー配列は、RNAポリメラーゼサブユニットのC末端ドメインとN末端ドメインとの間に見出されるリンカーである。天然に存在するリンカーの他の例としては、1CIタンパク質及びLexAタンパク質に見出されるリンカーが挙げられる。
リンカー内で、アミノ酸配列は、経験的に決定された、又はモデリングによって明らかになったリンカーの特性に基づいて変動してよい。リンカーの選択において考慮すべき事柄としては、リンカーの柔軟性、リンカーの電荷及び天然に存在するサブユニットにおけるリンカーのいくつかのアミノ酸の存在が挙げられる。リンカーは、リンカー内の残基がデオキシリボース核酸(DNA)と接触し、それによって結合親和性又は特異性に影響を及ぼすように、又は他のタンパク質と相互作用するように設計することもできる。ある場合、例えばサブユニット間でより長い距離にわたることが必要である場合、又はドメインが特定の立体配置に保持されなければならない場合などでは、リンカーは、場合によって、追加的な折りたたまれたドメインを含有してよい。一部の実施形態では、リンカーの設計は、リンカーが比較的短い距離、例えば、約10オングストローム(Å)未満にわたることを必要とするドメインの配置が必要とされうる。しかし、ある特定の実施形態では、リンカーは、最大で約50オングストロームの距離にわたる。
リンカー内で、アミノ酸配列は、経験的に決定された、又はモデリングによって明らかになったリンカーの特性に基づいて変動してよい。リンカーの選択において考慮すべき事柄としては、リンカーの柔軟性、リンカーの電荷及び天然に存在するサブユニットにおけるリンカーのいくつかのアミノ酸の存在が挙げられる。リンカーは、リンカー内の残基がDNAと接触し、それによって結合親和性又は特異性に影響を及ぼすように、又は他のタンパク質と相互作用するように設計することもできる。ある場合、サブユニット間でより長い距離にわたることが必要である場合、又はドメインが特定の立体配置に保持されなければならない場合などでは、リンカーは、場合によって、追加的な折りたたまれたドメインを含有してよい。
ポリペプチド(遊離の又は細胞に結合した)とビーズをカップリングさせるための方法が当技術分野で公知である。カップリングされたポリペプチド又はポリペプチドを提示している細胞を選択するための方法も当技術分野で公知である。簡単に述べると、ペプチドを、官能基で修飾された、又は、例えば、アビジン、ストレプトアビジン又はビオチンなどの様々な抗体又はリガンドでコーティングされた微小粒子の表面とカップリングさせる常磁性のポリスチレン微小粒子が市販されている(Spherotech、Inc.、Libertyville、IL;Invitrogen、Carlsbad、CA)。
微小粒子が常磁性であることにより、磁石を使用してそれらを溶液から分離することが可能になる。微小粒子は、磁石から除去したら、容易に再懸濁させることができる。ポリペプチドを、チューブ内で、ポリウレタン層でコーティングされた常磁性のポリスチレン微小粒子にカップリングすることができる。微小粒子の表面上のヒドロキシ基は、p−トルエンスルホニルクロリドとの反応によって活性化される(Nilsson K及びMosbach K.「p−Toluenesulfonyl chloride as an activating agent of agarose for the preparation of immobilized affinity ligands and proteins.」Eur.J.Biochem.1980:112:397〜402)。或いは、表面にカルボン酸を含有する常磁性のポリスチレン微小粒子は、カルボジイミドを用いて活性化し、その後ポリペプチドとカップリングし、ポリペプチドの第一級アミノ基と微小粒子の表面上のカルボン酸基との間の安定なアミド結合をもたらすことができる(Nakajima N及びIkade Y,Mechanism of amide formation by carbodiimide for bioconjugation in aqueous media,Bioconjugate Chem.1995,6(1):123〜130;Gilles MA,Hudson AQ及びBorders CL Jr,Stability of water−soluble carbodiimides in aqueous solution,Anal Biochem.1990 Feb 1;184(2):244〜248;Sehgal D及びVijay IK,a method for the high efficiency of water−soluble carbodiimide−mediated amidation,Anal Biochem.1994 Apr;218(1):87〜91;Szajani Bら,Effects of carbodiimide structure on the immobilization of enzymes,Appl Biochem Biotechnol.1991 Aug;30(2):225〜231)。別の選択肢は、ビオチン化したポリペプチドを、表面にストレプトアビジンの単分子膜が共有結合している常磁性のポリスチレン微粒子とカップリングすることである。(Argarana CE,Kuntz ID,Birken S,Axel R,Cantor CR.Molecular cloning and nucleotide sequence of the streptavidin gene.Nucleic Acids Res.1986;14(4):1871〜82;Pahler A,Hendrickson WA,Gawinowicz Kolks MA,Aragana CE,Cantor CR.Characterization and crystallization of core streptavidin.J Biol Chem 1987:262(29):13933〜13937)。
ポリペプチドは、フルオレセイン、R−フィコエリトリン及びビオチンなどの多種多様な蛍光色素、クエンチャー及びハプテンとコンジュゲートすることができる。コンジュゲーションは、ポリペプチド合成の間に、又はポリペプチドが合成され、精製された後のいずれかで起こりうる。ビオチンは、アビジンタンパク質及びストレプトアビジンタンパク質に高い親和性で結合する小さな(244キロダルトン)ビタミンであり、大部分のペプチドと、それらの生物活性を変化させることなくコンジュゲートすることができる。ビオチン標識されたポリペプチドは、固定化したストレプトアビジン及びアビジンアフィニティーゲルを使用して、並びにビオチン化したポリペプチドを検出するために使用することができるストレプトアビジン又はアビジンをコンジュゲートしたプローブを使用して、例えば、ELISA、ドットブロット又はウェスタンブロットの適用において、標識されていないポリペプチドから容易に精製される。ビオチンのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、最も一般的に使用される種類のビオチン化剤である。N−ヒドロキシスクシンイミドによって活性化されたビオチンは、生理的緩衝液中の第一級アミノ基と効率的に反応して安定なアミド結合を形成する。ポリペプチドはN末端に第一級アミンを有し、N−ヒドロキシスクシンイミドで活性化されたビオチン試薬を用いて標識するための標的として利用可能なリシン残基の側鎖にもいくつかの第一級アミンを有してよい。様々な性質及びスペーサーアームの長さを有するいくつかの異なるビオチンのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが入手可能である(Pierce,Rockford,IL)。スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル試薬は水溶性であり、それにより、有機溶媒を用いずに反応を行うことが可能である。
ビオチンとポリペプチドのモル間の比率は、当技術分野で認められている技法を使用して、2−(4’−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸)アッセイを使用して推定することができる(Green,NM,(1975)「Avidin.In Advances in Protein Chemistry.」Academic Press,New York.29,85〜133;Green,NM,(1971)「The use of bifunctional biotinyl compounds to determine the arrangement of subunits in avidin.」Biochem J.125,781〜791;Green,NM.,(1965)「A spectrophotometric assay for avidin and biotin based on binding of dyes by avidin.」Biochem.J.94:23c−24c)。いくつかのビオチン分子は、ポリペプチドとコンジュゲートすることができ、各ビオチン分子をアビジンの分子1つに結合させることができる。ビオチン−アビジン結合の形成は非常に急速であり、有機溶媒、極度のpH及び変性試薬において安定である。ビオチン化を定量化するために、ビオチン化したポリペプチドを含有する溶液を、2−(4’−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸)及びアビジンの混合物に加える。ビオチンは、アビジンに対する高い親和性を有するので、2−(4’−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸)に取って代わり、500ナノメートルにおける吸収が比例して減少する。溶液中のビオチンの量は、単一のキュベットにおいて、ビオチンを含有するペプチドを加える前、及び加えた後に2−(4’−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸)−アビジン溶液の吸収を測定することによって定量化することができる。吸収の変化を、2−(4’−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸)−アビジン複合体の吸光計数によって試料中のビオチンの量に関連づける。
或いは、蛍光部分(例えば、R−フィコエリトリン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)など)を有する蛍光部分コンジュゲートポリペプチドとコンジュゲートすることができる抗体、抗原結合断片又は結合性タンパク質は、例えば、Glazer,AN及びStryer L.(1984).Trends Biochem.Sci.9:423〜7;Kronick,MN及びGrossman,PD(1983)Clin.Chem.29:1582〜6;Lanier,LL及びLoken,MR(1984)J.Immunol.,132:151〜156;Parks,DRら(1984)Cytometry 5:159〜68;Hardy,RRら(1983)Nature 306:270〜2;Hardy RRら(1984)J.Exp.Med.159:1169〜88;Kronick,MN(1986)J.Immuno.Meth.92:1〜13;Der−Balian G,Kameda,N及びRowley,G.(1988)Anal.Biochem.173:59〜63に記載の当技術分野で認められた技法を使用して実現することができる。
1つの非限定的な実施形態では、抗体の抗原結合断片は、抗体のエンドグリンへの結合をin vitro及び/又はin vivoで可視化するために使用することができる、放射性核種、鉄関連化合物、色素、画像化剤又はエンドグリンを免疫検出するための蛍光剤などの検出可能な標識と結びつける(コンジュゲートする)ことができる。
放射標識の非限定的な例としては、例えば、32P、33P、43K、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb、121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi及び213Biが挙げられる。放射標識は、抗体画像化の技術分野で公知の従来の化学作用を使用して化合物に付着させることができる。放射標識された化合物は、in vitro診断技法及びin vivo放射線画像法(radioimaging)の技法及び放射免疫療法において有用である。例えば、in vivo画像化の例では、抗体及びその抗原結合断片は、放射性同位元素(単数又は複数)ではなく、これらに限定されないが、磁気共鳴画像強調剤を含めた画像化剤とコンジュゲートすることができ、ここでは例えばキレート化基によって抗体分子に多数の常磁性イオンが負荷される。キレート化基の例としては、EDTA、ポルフィリン、ポリアミンクラウンエーテル及びポリオキシム(polyoxime)が挙げられる。常磁性イオンの例としては、ガドリニウム、鉄、マンガン、レニウム、ユウロピウム、ランタン、ホルミウム及びフェルビウム(ferbium)が挙げられる。そのような検出可能な部分としては、金属;金属キレート化剤;ランタニド;ランタニドキレート化剤;放射性金属(radiometal);放射性金属キレート化剤(radiometal chelator);陽電子放出核;微小気泡(超音波用);リポソーム;リポソーム又はナノスフェア中にマイクロカプセル化された分子;単結晶の酸化鉄ナノ化合物;磁気共鳴画像法用造影剤;光吸収剤、光反射剤及び/又は光散乱剤;コロイド粒子;近赤外フルオロフォアなどのフルオロフォアも挙げられる。多くの実施形態では、そのような副次的な機能基/部分は比較的大きい、例えば、サイズが少なくとも25amuであり、多くの場合サイズが少なくとも50amu、100amu又は250amuであってよい。ある特定の実施形態では、副次的な機能基は金属をキレート化するためのキレート部分、例えば、放射性金属(radiometal)のためのキレート化剤又は常磁性イオンである。複数の実施形態において、副次的な機能基は、照射療法又は画像化の手順のために有用な放射性核種のためのキレート化剤である。
本発明のアンタゴニストは、組織における血管新生を調節するそれらの能力についてもアッセイすることができる。当業者に公知の任意の適切なアッセイを使用して、そのような効果をモニターすることができる。いくつかのそのような技法は、本明細書に記載されている。
血管新生の1つの尺度は、in vivoウサギの眼モデルであり、これはウサギの眼アッセイと称される。ウサギの眼アッセイは他者によって詳細に記載されており、さらに、サリドマイドなどの血管新生の阻害剤の存在下で血管新生及び新血管形成を測定するために使用されている。D’Amatoら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.91:4082〜4085を参照されたい。
ウサギの眼アッセイは、角膜の縁から角膜内に成長しているウサギの血管によって例証される新血管形成プロセスが、天然に透明な眼の角膜を通して容易に可視化されるので、in vivoでの血管新生についてのよく認識されたアッセイモデルである。さらに、新血管形成の刺激若しくは阻害又は新血管形成の退縮の程度及び量の両方を、ある期間にわたって容易にモニターすることができる。
最後に、ウサギを任意の試験試薬に曝露させ、その結果、ウサギの健康を試験試薬の毒性の指標にする。
別のアッセイでは、キメラマウス:ヒトのマウスモデルにおける血管新生を測定し、これは、キメラマウスアッセイと称される。血管新生、新血管形成及び腫瘍組織の退縮を測定するためのアッセイは、他者によって詳細に記載されており、さらに本明細書に記載されている。Yan,ら(1993)J.Clin.Invest.91:986〜996を参照されたい。
キメラマウスアッセイは、移植された皮膚グラフトが正常なヒトの皮膚と組織学的によく似ており、実際のヒトの血管が、グラフティングされたヒトの皮膚から、グラフティングされたヒトの皮膚の表面上のヒトの腫瘍組織内に成長しているところで全組織の新血管形成が起こるので、in vivo血管新生に対する有用なアッセイモデルである。ヒトグラフトへの新血管形成の起点は、新脈管構造(neovasculature)をヒト特異的な内皮細胞マーカーで免疫組織化学的染色することによって実証することができる。
キメラマウスアッセイにより、新しい血管の成長の退縮の量及び程度の両方に基づいて新血管形成の退縮が実証される。さらに、腫瘍組織などの、グラフティングされた皮膚に移植された任意の組織の成長に対する影響をモニターすることが容易である。最後に、アッセイシステムにおいて毒性についての内部標準があるので、アッセイは有用である。キメラマウスを任意の試験試薬に曝露させ、その結果マウスの健康を毒性の指標にする。本明細書に記載の、及び当技術分野で公知の他の動物モデルも、本明細書に記載の方法において利用することができる。
C.ヒト化エンドグリン抗体を用いた治療
本明細書では、血管新生/新血管形成、過剰な血管化、又は小血管の拡張に付随する1又は複数の疾患又は障害を予防又は治療する方法であって、疾患又は障害に関連づけられるエンドグリンに結合する本明細書に記載のヒト化抗体又は抗原結合断片を含む組成物を投与するステップと、血管新生を妨げ、それによって疾患又はその重症度を予防する、治療する、寛解させる、又は緩和するステップとを含む上記方法が提供される。
本明細書では、1又は複数の血管新生/新血管形成を伴う疾患又は障害を予防又は治療する方法であって、疾患又は障害に関連づけられるエンドグリンに結合し、血管新生を減少させる又は過剰な血管新生を妨げる本明細書に記載のヒト化抗体又は抗原結合断片を含む組成物を投与するステップを含む上記方法が提供される。
本明細書で使用される、「予防」は、予防法、症状の発症を予防すること、血管新生に付随する、又はエンドグリン活性と相関する疾患又は障害の進行を予防することを指す。本明細書で使用される「阻害」、「治療」及び「治療すること」は互換的に使用され、例えば、症状の停滞、生存の延長、部分的な又は完全な症状の寛解、及び血管新生に付随する、又はエンドグリン活性と相関する状態、疾患又は障害の部分的な又は完全な根絶を指す。
組成物は、エンドグリンと関連づけることができる本明細書に記載の疾患又は障害を阻害することによっていくつかの所望の治療効果をもたらすために有効な治療有効量で、任意の医学的処置に適用可能な妥当なリスク対効果比で患者に投与することができる。本組成物をヒト患者に投与するために、組成物を当業者に公知の方法体系によって製剤化することができる。治療有効量は、器官又は組織において所望の治療効果又は予防効果を少なくとも部分的に実現する量である。疾患又は障害の予防及び/又は治療的な治療をもたらすために必要なヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の量は、それ自体は固定されていない。投与されるヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の量は、疾患の種類、疾患の広範さ及び疾患又は障害に罹患している哺乳動物のサイズに伴って変動してよい。一実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗エンドグリン抗体の2種以上を組み合わせて患者に投与する。組合せは、抗体に随伴して投与すること、又は抗体の後に投与することを含む。
「投与すること」は、本明細書では、組成物を、結果として組成物が患者の体内に存在するように患者に提供する手段と定義される。そのような投与は、これらに限定することなく、皮下投与、硝子体内投与、皮内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は筋肉内投与(例えば、注入)による局所的、局部的又は全身的な投与を含めた任意の経路によってよい。「同時発生的な投与」は、互いの投与から比較的短い期間内に投与することを意味する;そのような期間は、2週間未満、7日未満、1日未満であってよく、同時にさえ投与してよい。
組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物、及び投与形態について、患者に対して有毒になることなく所望の治療反応を実現するために有効なある量の活性成分を得るために変動してよい。選択された投薬レベルは、使用する特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療の持続時間、使用する特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康及び以前の病歴、同様に医学の分野で周知の因子を含めた種々の因子に左右される。本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片は、様々な投薬量で、様々な時間枠にわたって対象に投与することができる。非限定的な用量は、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約125mg/kg、約150mg/kg、約175mg/kg、約200mg/kg、又はその間の任意の整数を含む。さらに、抗体又は抗原結合断片の用量(単数又は複数)は、週2回、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、6週間ごと、8週間ごと、12週間ごと、又はその中の週の任意の組合せで投与することができる。例えば、抗体又はその抗原結合断片を4週間にわたって、週1回又は週2回投与し、その後2週間は療法なし、などの投薬サイクルも考えられている。追加的な投薬サイクルとしては、例えば、本明細書に記載の用量及び週ごとのサイクルの異なる組合せも、本発明の範囲内で考えられている。
「接触させること」は、本明細書では、本明細書において提供される組成物を、本明細書に記載の細胞、器官、組織又は体液に物理的に近接させる手段と定義される。接触させることは、本明細書において提供される組成物のいずれかを全身的に、又は局所的に投与することを包含し、これらに限定することなく、in vitro、in vivo及び/又はex vivoでの手順及び方法を包含する。「混ぜ合わせること」及び「接触させること」は本明細書では互換的に使用され、同じように定義されるものとする。
応答は、患者が疾病の徴候又は症状の部分的な又は完全な軽減、又は低下、及び詳細には、これに限定することなく、生存の延長を経験する場合に実現される。予測無増悪生存時間は、再発数、疾患の病期、及び他の因子を含めた予後因子に応じて数カ月から数年の単位で測定することができる。生存の延長としては、これらに限定することなく、少なくとも1カ月(mo)、少なくとも約2カ月(mos.)、少なくとも約3mos.、少なくとも約4mos.、少なくとも約6mos.、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、又はそれ以上の時間が挙げられる。全生存も、数カ月から数年の単位で測定することができる。患者の症状は、変化がないままであってよい、又は減少してよい。
当技術分野における通常の技術を有する医師又は獣医師は、必要な組成物の有効量(ED50)を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、組成物中に使用する化合物の用量を、所望の治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始することができ、所望の効果が実現されるまで徐々に投与量を増加させることができる。或いは、用量を一定に保つことができる。
組成物は、例えば上記のものなどの任意の都合のよい経路によって患者に投与することができる。選択された投与経路にかかわらず、適切な水和物の形態で、及び/又は組成物で使用することができる本発明の化合物を、下記のように又は当業者に公知の他の従来の方法によって、許容できる剤形に製剤化する。
抗体は、例えば、化学的なコンジュゲーション、共有結合若しくは非共有結合、又は下でより詳細に記載されているようなコンジュゲート若しくは融合タンパク質を創出するための組換え技法などの当技術分野で公知の方法を使用して、治療的部分又は検出可能な(画像化)部分と組み合わせることができる。或いは、抗体及び/又は他の作用剤は、組み合わせて、同時に又は逐次的に投与するための別々の組成物にすることができる。
そのような成分の毒性及び治療効果を、細胞培養物又は実験動物において、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための標準の薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、比率LD50/ED50として表すことができる。毒性の副作用を示す化合物を使用することができるが、健康な細胞に対する潜在的な損傷を最小限にし、それによって、副作用を低下させるために、そのような化合物を、患部組織の部位にターゲティングする送達系を設計するように注意を払うべきである。
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを、ヒトにおいて使用するための様々な投与量の策定において使用することができる。そのような化合物の投与量は、毒性がほとんどなく、又は毒性なく、ED50を含む様々な循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、使用する剤形及び利用する投与経路に応じて、この範囲内で変動してよい。本発明の方法において使用する任意の化合物について、最初に細胞培養アッセイから治療有効量を推定することができる。用量は、動物モデルにおいて、細胞培養物において決定されたIC50(すなわち、最大半量の阻害が実現される試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度アレンジが実現されるように策定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
エンドグリンの血管新生促進性の役割は、内皮細胞培養モデル及びノックアウトマウスモデルを含めた多くのモデルにおいて確立されている。内皮細胞及び関連する細胞がエンドグリン(CD105)を発現することが周知であり、一般に、血管新生におけるエンドグリンの役割、並びに心臓の発達が、多数の研究、培養モデル及び動物モデルにおいて確認されている。(Duffら、FASEB J.,17:984〜992(2003);Bernabeuら、J.Cell.Biochem.,102(6):1375〜1388(2007);米国特許第7,097,836号)。
したがって、疾患組織における血管新生を阻害する方法は、疾患の症状を改善し、疾患によっては疾患のケアに寄与しうる。一実施形態では、本発明では、組織における血管新生を阻害することが考えられている。組織における血管新生の程度、したがって本方法によって実現される阻害の程度は、本明細書に記載されているような種々の方法によって評価することができる。
エンドグリン上のエピトープを認識し(例えば、それに結合し)、血管新生を阻害する抗体の独特の特異性により、本明細書に記載のような血管新生(新血管形成)、小血管の拡張、及び/又は過剰な血管化を特徴とする疾患に対する診断的使用及び治療的使用が提供される。ヒト化抗エンドグリン抗体及びその断片を、医学的障害、例えば、血管新生/新血管形成を特徴とする様々な形態の眼疾患(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎症、慢性の炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、変形性関節症、並びに、様々な形態のがん(原発腫瘍及び転移)に罹患している哺乳動物(例えば、ヒト)などの対象に投与することができる。本明細書では、血管新生を特徴とする眼疾患を有する対象を、エンドグリンに結合し、血管新生を阻害する本明細書に記載のヒト化抗体又はその断片を投与することによって治療するための方法が提供される。本明細書では、慢性の炎症性疾患を有する対象を、エンドグリンに結合し、血管新生を阻害する本明細書に記載のヒト化抗体又はその断片を投与することによって治療するための方法も提供される。そのような慢性の炎症性疾患の例としては、これらに限定されないが、クローン病及び潰瘍性大腸炎が挙げられる。さらに、本明細書では、糖尿病性腎症を有する対象を、本明細書に記載のヒト化抗体又はその断片を投与することによって治療するための方法が提供される。本明細書では、関節リウマチ又は変形性関節症を有する対象を、本明細書に記載のヒト化抗体又はその断片を投与することによって治療するための方法が提供される。
血管新生を治療するために抗エンドグリン抗体が有効でありうることが理解されると思われ、本明細書では、対象を、1又は複数の追加的な血管新生阻害剤を用いて治療することもできることが考えられている。
用語「血管新生阻害剤」は、本明細書では、本明細書及び特許請求の範囲の目的に関して、これらに限定されないが、血管新生を阻害するように機能するペプチド、タンパク質、酵素、多糖、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、組換えベクター及び薬物を含めた化合物又は分子を意味するために使用される。血管新生阻害剤は、当技術分野で公知であり、本明細書ではすべての種類が考えられている。化合物及び分子の非限定的な例としては、天然の生体分子及び合成の生体分子、例えば、パクリタキセル、O−(クロロアセチル−カルボミル)フマギロール(「TNP−470」又は「AGM1470」)、トロンボスポンジン−1、トロンボスポンジン−2、アンジオスタチン、ヒト軟骨細胞に由来する血管新生阻害剤(「hCHIAMP」)、軟骨に由来する血管新生阻害剤、血小板因子−4、gro−ベータ、ヒトインターフェロン誘導性タンパク質10(「IP10」)、インターロイキン12、Ro318220、トリシクロデカン−9−イルキサンテート(「D609」)、イルソグラジン、8,9−ジヒドロキシ−7−メチル−ベンゾ[b]キノリニジウムブロミド(「GPA1734」)、メドロキシプロゲステロン、ヘパリン及びコルチゾンの組合せ、グルコシダーゼ阻害剤、ゲニステイン、サリドマイド、ジアミノ−アントラキノン、ハービマイシン、ウルソール酸及びオレアノール酸が挙げられる。抗体の非限定的な例としては、VEGF、VEGF受容体、又はエンドグリンの別のエピトープなどの分子を対象とする抗体が挙げられる。さらに、VEGF受容体の小分子阻害剤が公知であり、本明細書において考えられている。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis)、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(Sutent)、ソラフェニブ(Nexavar)、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。
本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片は、本明細書に記載の血管新生に関連する任意の状態又は疾患の併用療法のためにVEGF受容体阻害剤と組み合わせて投与することができる。1つの非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、ベバシズマブである。ベバシズマブについての例示的な投与量は、2週間ごと又は3週間ごとに約7.5mg/kg、約10mg/kg、又は約15mg/kgの投与である。
1つの非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、ラニビズマブである。ラニビズマブについての例示的な眼の投与量としては、月に1回、硝子体内に約0.5mgの投与が挙げられる。1つの非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、アフリバーセプト(VEGF−Trap)である。VEGF−Trapについての例示的な投与量としては、2週間ごと又は3週間ごとに約0.5〜約10mg/kgの投与が挙げられる。VEGF−Trapについての例示的な投与量としては、月に1回又は年に4回、硝子体内に約0.5〜約2.0mgの投与が挙げられる。
別の非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、スニチニブである。スニチニブについての例示的なレジメンとしては、約50mgを4週間投与し、その後2週間は薬物を投与しないものが挙げられる。治療レジメンは、周期的ベース又は非周期的ベースで繰り返すことができる。
別の非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、ソラフェニブである。ソラフェニブについての例示的な投与量としては、毎日約400mgの投与が挙げられる。
別の非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、アキシチニブである。アキシチニブについての例示的な投与量としては、1日2回、約3mg、約5mg、又は約10mgの投与が挙げられる。
別の非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、ペガプタニブである。ペガプタニブについての例示的な投与量としては、6週間ごとに硝子体内に約0.3〜約3mgの投与が挙げられる。
さらに別の非限定的な実施形態では、VEGF受容体阻害剤は、パゾパニブである。パゾパニブについての例示的な投与量としては、毎日約200〜約1000mgの投与が挙げられる。
これらのVEGF受容体阻害剤の多数の組合せを、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片と一緒に投与することができる。一実施形態では、組み合わせることにより、本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片、VEGF受容体阻害剤、又はその両方を、より低い用量で使用することができる。そのような投薬における変化は、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤を組み合わせることの相乗効果に起因しうる。
血管新生を伴う眼の状態
黄斑変性症の状態及び糖尿病性網膜症
一態様では、本発明は、患者における糖尿病性網膜症、黄斑変性症、脈絡膜血管新生又は血管新生緑内障を、患者に、治療有効量の本明細書において提供される任意の組成物を投与することによって治療するための方法を提供する。
エンドグリンは、血管新生及び細胞外マトリックスに関連づけられる受容体である。黄斑変性症(AMD)は、高視力に関与する、黄斑と称される中心の網膜の部分内の光受容体が喪失するものである。黄斑の変性は、細胞外マトリックスの構成成分及び他の壊死組織片が、網膜色素上皮と血管の多い脈絡膜との間の膜内に異常に沈着することを伴う。この壊死組織片様物質はドルーゼンと称される。ドルーゼンは、眼底検査で観察される。正常な眼は、ドルーゼンを含まない黄斑を有しうるが、ドルーゼンは網膜の周辺において豊富でありうる。いかなる黄斑視覚の喪失もなく黄斑に柔らかいドルーゼンが存在することは、AMDの初期と見なされる。黄斑変性症は、網膜の網膜色素上皮(RPE)層の真下に異常な血管が発生する脈絡膜血管新生(CNV)を特徴とする。これらの血管がブルッフ膜を突き破り、網膜色素がある上皮が破壊され、出血し、最終的に黄斑の瘢痕が引き起こされ、それにより中心視覚が極めて大きく喪失される(円盤状瘢痕)。
脈絡膜血管新生(CNV)は、他の眼障害に加えて、黄斑変性症において一般に起こり、脈絡膜内皮細胞の増殖、細胞外マトリックスの過剰産生及び血管結合組織性網膜下膜の形成を伴う。網膜色素上皮細胞の増殖及び血管新生因子の産生は、脈絡膜血管新生に影響を及ぼすと思われる。
糖尿病性網膜症(DR)は、糖尿病において、毛細管の基底膜の肥厚及び毛細血管の周皮細胞と内皮細胞の接触の欠乏に起因して発生する、過剰な血管新生を特徴とする眼障害である。周皮細胞が喪失することにより、毛細血管の漏出が増加し、血液網膜関門の崩壊に至る。糖尿病性網膜症は、網膜微小血管が変化した結果である。高血圧に誘導される周皮細胞死及び基底膜の肥厚は、血管壁の機能不全につながる。これらの損傷により、血液網膜関門の形成が変化し、また、網膜血管の浸透性が増す。眼内のものなどの小血管は、特に不十分な血糖(血中ブドウ糖)調節を受け易い。グルコース及び/又はフルクトースが過剰に集積することにより、網膜内のごく小さな血管が損傷を受ける。損傷を受けた血管から体液及び脂質が黄斑に漏出する場合、黄斑浮腫も発生する恐れがある。これらの体液により、視覚をぼやけさせる黄斑の腫れが生じる。この損傷により、網膜における酸素の欠乏も生じる。
疾患が進行するにつれて、網膜内の酸素の不足により、網膜に沿って、及び眼の内側を満たす透明なゲル様の硝子体液内で血管新生が刺激される。時を得た治療なしでは、これらの新しい血管は出血し、視覚をくもらせ、網膜を破壊する恐れがある。血管結合組織の増殖により、牽引性網膜剥離も引き起こされる可能性がある。新しい血管は、前側の眼房の角度にも成長し、血管新生緑内障を引き起こす可能性がある。
増殖性の硝子体網膜症は、硝子体膜内及び網膜の表面上の細胞膜及び線維性膜の細胞増殖を伴う。網膜色素上皮細胞の増殖及び遊走は、この眼障害に共通している。増殖性の硝子体網膜症に関連する膜は、I型コラーゲン、II型コラーゲン及びIV型コラーゲン及びフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスの構成成分を含有し、次第に線維性になる。
加齢黄斑変性(AMD)及び糖尿病性網膜症は、先進国における失明の2つの主な原因である。巨大分子LUCENTIS(登録商標)、AVASTIN(登録商標)及びMACUGEN(登録商標)が最近認可されたことにより、AMD患者に対して利用可能な治療の選択肢が改善された。LUCENTIS(登録商標)は、Fabであり、AVASTIN(登録商標)は、モノクローナル抗体である。これらはどちらも、血管内皮増殖因子(VEGF)に結合し、現在まで、AMDを治療する最も印象的な結果が実証されている;しかし、治療された患者のうちの少数のみが、視力の有意な改善を経験している。VEGF以外の標的に焦点を合わせている抗血管新生療法により、VEGF経路を標的とする作用剤に伴う限界のいくつかが克服されうる。
本明細書に記載の、エンドグリンに結合するヒト化抗体及び抗原結合断片を使用して、黄斑変性症、CNV、糖尿病性網膜症、又は増殖性の硝子体網膜症を治療又は予防することができる。黄斑変性症、CNV、糖尿病性網膜症、又は増殖性の硝子体網膜症を、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片を投与することによって治療又は予防する方法が本明細書に記載されている。本明細書に記載の、エンドグリンに結合するヒト化抗体及び抗原結合断片により、血管を縮小し、眼疾患に伴う内皮細胞の増殖を阻害し、出血の症状を消し、視覚のくもりを治療し、視力喪失の停滞をもたらし、且つ/又は、血管の漏出妨げることもできる。本明細書に記載のヒト化抗体及び抗原結合断片は、黄斑変性症、CNV、糖尿病性網膜症又は増殖性の硝子体網膜症を治療するための医薬品にも使用することができる。
さらに、本明細書に記載のヒト化抗体及び抗原結合断片は、黄斑変性症、CNV、糖尿病性網膜症又は増殖性の硝子体網膜症を治療するための公知の療法及び/又は化合物と組み合わせて使用することもできる。そのような化合物の例としては、これらに限定されないが、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ、パゾパニブ又はMACUGEN(登録商標)が挙げられる。本明細書に記載の投与形式に加えて、ヒト化抗エンドグリン抗体及び抗原結合断片は、硝子体内経路によって投与することができる。硝子体内への投与形式の非限定的な例としては、硝子体内への注入及び硝子体内へのインプラントの使用が挙げられる。
患者を、改善及び治療への応答性について評価することができる。治療としては、これらに限定されないが、黄斑浮腫を減少させること、CNVの領域を減少させること、及び視力を増加させることが挙げられる。症状の測定は当技術分野で公知の通りであり、下記の実施例にさらに記載されている。
慢性の炎症性疾患
血管新生の刺激で血管が浸潤する可能性がある皮膚、筋肉、腸、結合組織、関節、骨などの組織を含めた、組織化された組織で構成される種々の組織又は器官のいずれによっても、疾患状態において血管新生が支持されうる。したがって、一実施形態では、治療される組織は、炎症組織であり、阻害される血管新生は、炎症組織の新血管形成がある炎症組織の血管新生である。
炎症性腸疾患
血管新生は、炎症性腸疾患(IBD)において重要な役割を果たす。IBDは、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含めた、腸及び腸の疾患又は状態のセットについての包括的な用語である。クローン病は、一般には小腸及び大腸の炎症を特徴とし、一方、潰瘍性大腸炎は、一般には、結腸に局在している。異常な、又は病理学的な血管新生はクローン病及び潰瘍性大腸炎の両方の中核をなす。どちらの疾患も、微小血管密度の増加及び微小血管の機能障害を伴い、この血管新生は、どちらの疾患にも見られる組織病理及び炎症性サイクルと時間的に関連する。エンドグリンは、これらの組織において発現されること、及びIBDの間の血管新生の調節不全において役割を果たすことが公知である。(Chidlowら、Am.J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.,293:5〜18(2007))。
本明細書に記載の、エンドグリンに結合するヒト化抗体及び抗原結合断片を使用して、IBDを治療することができる。さらに、エンドグリンに結合するヒト化抗体及び抗原結合断片は、クローン病又は潰瘍性大腸炎を治療するために使用することができる。ヒト化抗エンドグリン抗体及び抗原結合断片は、IBD、クローン病又は潰瘍性大腸炎に対する外科手術及び/又は公知の療法と組み合わせて使用することもできる。そのような公知の療法の例としては、これらに限定されないが、アミノサリチル酸(例えば、Mesalamine)、コルチコステロイド(例えば、ブデソニド、プレドニゾンなど)、抗生物質(例えば、メトロニジゾール(metronidizole)など)、免疫抑制薬(例えば、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、タクロリムス(Tacrolimus)及びシクロスポリンなど)及びタンパク質及び抗体などの生物学的製剤(例えば、インフリキシマブなど)が挙げられる。
IBDの治療は、炎症組織の血管化の減少によって評価することができる。治療は、IBDを特徴付ける潰瘍性病変の停滞、消散、及び/又は治癒によっても評価することができる。
糖尿病性腎症&腎移植虚血
糖尿病性腎症は、1型糖尿病患者及び2型糖尿病患者の両方の罹患率及び死亡率の主要な原因である。糖尿病性腎症は、世界的に、末期の腎疾患の主な原因である。糖尿病性腎症は、血管新生促進性因子の合成が増加することによって糸球体微小血管が傷害を受けることを特徴とする。これらの血管新生促進性因子により、内皮細胞の増殖の増加及びその後の血管新生が引き起こされ、また、慢性の腎疾患ではエンドグリンが上方制御されていることが公知である。この血管新生により、糸球体が破壊され、最終的に腎不全になる(Zentら、Seminars in Nephrology,27(2):161〜171(2007);Roy−Chaudhuryら、Exp.Nephrol.,5:55〜60(1997))。
同様の影響が、腎移植において見られ、それにより、移植された器官の虚血及び不全が生じる。エンドグリンが上方制御されることにより、腎臓における血管新生及び炎症が上方制御される。逆に、エンドグリンヌルマウスを用いた試験により、移植/虚血後に腎臓の損傷の有意な低下及び器官の生存の増加が示された。(Dochertyら、Nephol.Dial.Transplant.,21:2106〜2119(2006))。
本明細書に記載の、エンドグリンに結合するヒト化抗体及び抗原結合断片を使用して、糖尿病性腎症、移植後の腎不全及び/又は移植後の虚血性の腎臓の傷害を治療又は予防することができる。
本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片を投与することによって、糖尿病性腎症、移植後の腎不全及び/又は移植後の虚血性の腎臓の傷害を治療又は予防する方法が本明細書に記載されている。本明細書に記載のヒト化抗体及び抗原結合断片は、糖尿病性腎症、移植後の腎不全及び/又は移植後の虚血性の腎臓の傷害を治療するための医薬品に使用することもできる。さらに、本明細書に記載のヒト化抗体及び抗原結合断片は、糖尿病性腎症、移植後の腎不全及び/又は移植後の虚血性の腎臓の傷害を治療するための公知の療法及び/又は化合物と組み合わせて使用することもできる。
患者を、治療の効力について、例えば、腎機能における改善によって評価することができる。
関節リウマチ&変形性関節症
関節リウマチは、過剰な血管新生を特徴とし、この点についてはよく理解されている。滑液おいて見出される炎症及び破壊は、滑液組織の周囲及び滑液組織内に見出される血管新生の増加に直接関連する。多数の血管新生促進性因子が、関節リウマチ患者の患部組織内に存在する(Koch及びDistler,Arthritis Res.&Ther.,9(付録2):S3,1〜9(2007)。
変形性関節症は、滑液関節に影響を及ぼす慢性の不能状態のグループである。血管新生及び炎症は、疾患の病態生理において不可欠なプロセスであり、これらは、これらに限定されないが、MMP産生及び軟骨内骨化の刺激を含めた種々の機構を通じて関節の損傷に寄与する。さらに、変形性関節症における血管新生により、さらなる神経支配が誘導され、それが、それぞれが他のものを刺激し続けるフィードバックループに発展する(Bonnet&Walsh,Rheumatology,44:7〜16(2005))。
本明細書に記載の、エンドグリンに結合するヒト化抗体及び抗原結合断片を使用して、関節リウマチ及び変形性関節症を治療又は予防することができる。本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片を投与することによって、関節リウマチ及び変形性関節症を治療又は予防する方法が本明細書に記載されている。本明細書に記載のヒト化抗体及び抗原結合断片は、関節リウマチ及び変形性関節症を治療するための医薬品に使用することもできる。
2つの広く認められている、治験におけるRAの改善の複合尺度は、Paulus Criteria及び米国リウマチ学会の基準(American College of Rheumatology Criteria(ACR))である。Paulus Criteriaは、以下のうち4つにおける改善と定義される:圧痛関節数、腫脹関節数、朝のこわばり、患者による疾患活動性の評価、医師による疾患活動性及び赤血球沈降速度(ESR)の範囲の評価。改善のレベルは、これらの変数のそれぞれの改善の百分率として設定される、すなわちPaulus20の分類は、6つのパラメータのうち4つにおいて20%の改善が示された応答者を示す。
関節リウマチは、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology(ACR))スコアリングを使用して評価することもできる。簡単に述べると、関節リウマチにおける臨床的な寛解を決定するためのACR分類基準(ACR Classification Critera for Determining Clinical Remission in Rheumatoid Arthritis)は、少なくとも以下の因子のうち5つ以上が2カ月間連続して存在することによって評価される:
a.朝のこわばり<15分間であること;
b.疲労感がないこと;
c.関節痛がないこと;
d.関節圧痛又は運動時痛がないこと;
e.関節又は腱鞘に軟組織の腫脹がないこと;及び
f.ESR(Westergren法)女性で<30mm/時間、男性で20mm/時間であること。
除外が生じ得、それは、活動性の血管炎の臨床症状である心膜炎、胸膜炎又は筋炎及び原因不明の最近の体重減少、又は関節リウマチに起因しうる発熱がある場合は完全な臨床的寛解としてはならないことを含む(Pinals RSら:Arthritis Rheum 24:1308,1981)。さらに、関節リウマチの機能状態のACR分類基準(ACR classification Criteria of Functional Status in Rheumatoid Arthritis)は、以下の患者の能力に基づいた分類を含む:
クラスI:日常生活動作を完全にこなせる(日常の自分の身の回りの世話、職場での機能性、趣味・スポーツなどの活動性);
クラスII:日常の自分の身の回りの世話及び職場での機能性は果たせるが、趣味・スポーツなどの活動性は限定される;
クラスIII:日常の自分の身の回りの世話はできるが、職場での機能性、趣味・スポーツなどの活動性は限定される;及び
クラスIV:日常の自分の身の回りの世話、職場での機能性、趣味・スポーツなどの活動性が限定される。
変形性関節症は、ACRスコアリングを使用して評価することもできる。変形性股関節症のACRの臨床的分類基準(ACR Clinical Classification Criteria for Osteoarthritis of the hip)は、患者の病歴、理学的検査及び検査所見を利用して評価する:患者は、股関節痛及び以下のうち1つについて評価される:
(1)股関節の内旋が15度未満且つESRが45度mm/時以下、若しくは、ESRが入手できない場合は股関節屈曲が115度以下;又は
(2)股関節の内旋が15度未満、股関節の内旋に伴う痛み、股関節の朝のこわばりが60分以下、且つ患者が50歳を超えている。
病歴、理学的検査、検査所見及びX線検査所見を使用して、伝統的な形式は、股関節痛及び以下の指標のうちの2つである:ESRが20mm/時未満、X線検査による大腿の骨棘及び/若しくは臼蓋の骨棘、又はX線検査による関節腔の狭小化(上位の、軸方向の、及び/又は内側の)。分類木は以下の通りである:(1)X線検査による大腿の骨棘及び/若しくは臼蓋の骨棘又は(2)ESRが20mm/時以下且つX線検査による軸方向の関節腔の狭小化と合併した股関節痛(Altman,Rら:Arthritis Rheum 34:505,1991)。
変形性膝関節症のACRの臨床的分類基準(ACR Clinical Classification Criteria for Osteoarthritis of the knee)
変形性膝関節症のACRの臨床的分類基準は、病歴及び理学的検査を使用して、以下の判断基準を利用して評価する:以下のうち3つを伴う膝の痛み:
(1)患者が50歳を超えている;
(2)30分未満の朝のこわばり;
(3)活発な運動時の捻髪音;
(4)骨圧痛;
(5)骨肥大;及び
(6)触知できる滑膜の熱感なし。
患者の病歴、理学的検査及びX線検査の所見を使用して、以下の患者の特性のうち1つを伴う膝の痛みを評価することができる:(1)患者が50歳を超えている;(2)30分未満の朝のこわばり;及び(3)活発な運動時の捻髪音及び骨棘。病歴、理学的検査及び検査所見を使用して、以下の特性のうち5つを伴う膝の痛みを評価することができる:
(1)患者が50歳を超えている;
(2)30分未満の朝のこわばり;
(3)活発な運動時の捻髪音;
(4)骨圧痛;
(5)骨肥大;
(6)触知できる滑膜の熱感なし;
(7)ESFが40mm/時未満である;
(8)リウマチ因子(RF)がの1:40未満である;及び
(9)変形性関節症の滑液(SF)の徴候。
例えば、Altman,Rら:Arthritis Rheum 29:1039,1986を参照されたい。
変形性手関節症のACRの臨床的分類基準(ACR Clinical Classification Criteria for Osteoarthritis of the hand)は、以下の通り評価することができる:以下のうち3つを伴う手の痛み、うずく痛み又は凝り:(1)以下の関節のうち2つ以上の、硬組織の肥大(両手の第2遠位指節間関節、第3遠位指節間関節、第2近位指節間関節、第3近位指節間関節、及び第1手根中手骨関節;(2)2つ以上の遠位指節間関節の硬組織の肥大;(3)3つ未満の腫脹したMCP関節及び(4)上の(1)において列挙されている関節の少なくとも1つの変形。
がん
CD105は、腫瘍血管新生と関連し、様々な腫瘍組織の内皮において、正常組織の内皮と比較して強力に上方制御されている。CD105は、例えば、結腸、乳、脳、肺、前立腺、子宮内膜、腎臓、肝臓、胃、頭頚部及び子宮頚部のがんを含めた広範囲の腫瘍の内皮において上方制御されている。さらに、CD105が、腫瘍の内皮において、対応する正常組織よりも強力に発現されていることが公知である。(Duffら、FASEB J.,17:984〜992(2003);Bernabeuら、J.Cell.Biochem.,102(6):1375〜1388(2007);米国特許第7,097,836号)。したがって、抗エンドグリンヒト化抗体を用いて血管新生を阻害することは、がん性腫瘍に対する治療の選択肢になる。本明細書に記載の、エンドグリンに結合するヒト化抗体及び抗原結合断片を使用して、がん性腫瘍を治療することができる。本明細書に記載のヒト化抗体及び抗原結合断片は、がん性腫瘍を治療するための医薬品に使用することもできる。
用語「腫瘍」は、本明細書では、エンドグリンを発現しているがん性組織(同じ種類の正常な組織による発現と比較して)を指すために使用される。腫瘍は、充実性腫瘍及び半充実性腫瘍を含んでよい。腫瘍の非限定的な例としては、非T細胞型(非T)急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄単球性白血病を含めたヒト白血病;並びに、血管肉腫、乳癌、胃がん、結腸癌、ホジキンリンパ腫、リンパ腫、多形神経膠芽腫(GBM)、肺癌、黒色腫、骨髄腫、リンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、耳下腺腫瘍、咽頭癌、前立腺癌、肝細胞癌、腎癌及び直腸S字結腸癌を含めた、その周囲の脈管構造でエンドグリンが中〜高レベルで発現されている(同じ種類の正常な組織による発現と比較して)ヒト充実性腫瘍及び半充実性腫瘍が挙げられる。
治療されるがん性組織は、例えば、異常なレベルのエンドグリンを発現している内皮組織である。
腫瘍組織の新血管形成がされないと、腫瘍組織は必要な栄養分を得られず、成長が遅くなり、さらなる成長が止まり、退行し、最終的に壊死性になり、その結果、腫瘍が死滅する。本発明は、本方法に従って腫瘍血管新生を阻害することによって腫瘍の新血管形成を阻害する方法を提供する。同様に、本発明は、血管新生を阻害する方法を実施することによって腫瘍の成長を阻害する方法を提供する。
この方法は、転移の形成に対しても、それらの形成には、転移性のがん細胞が原発腫瘍に存在することができるように原発腫瘍が血管化することが必要であり、且つ続発性の部位において転移性のがん細胞が確立されるには、転移の成長を支持するために新血管形成が必要であるので、特に有効である。
本発明の「がん/転移に罹患している患者」は、突然変異タンパク質(腫瘍関連抗原)又は突然変異遺伝子を発現していながら、まだ疾患の症状が出ていない可能性があることが理解されよう。がんが結腸がん(突然変異K−Rasタンパク質と関連する)である1つの非限定的な例では、結腸のいくつかの細胞において突然変異K−Rasタンパク質を有する患者は、たとえその患者に、まだ結腸がんの症状が出ていない可能性があっても、本発明による患者である。「疾病の徴候又は症状」は、臨床的に認識される疾患の顕在化又は表示である。
がんに罹患している患者を「治療すること」は、本発明に従って治療した後、患者の症状が部分的に又は完全に緩和された、又は変化がないままであることを意味する。治療されている患者は、症状及び/又は腫瘍の負荷の部分的な又は完全な軽減を示す可能性がある。治療することは、予防法、療法及びケアを包含するものとする。1つの非限定的な例では、高転移性のがん(例えば、乳がん)に罹患している患者は、追加的な転移が起こらないか、又はその数が治療を受けない患者と比較して低下する場合に、治療されている。別の非限定的な例では、患者は、治療を受けない患者と比較して、患者の充実性がんのサイズが低下するか、又はサイズが増加しない場合に、治療されている。さらに別の非限定的な例では、治療される患者におけるがん細胞の数は、治療を受けない患者におけるがん細胞の数と比較して増加しないか、又は低下する。改善は、例えば、治療されている患者の細胞増殖の減少、細胞数の減少、アポトーシスの増加、及び/又は生存の増加として定義することもできる。
本明細書においてさらに使用されるように、がんの治療は、がん性増殖物又は腫瘍の停滞、部分的な消失又は完全な消失を含む。治療又は部分的な消失は、例えば、増殖物又は腫瘍のサイズ及び/又は体積が何分の1か低下すること、例えば約2分の1、約3分の1、約4分の1、約5分の1、約10分の1、約20分の1、約50分の1、又は、その間の任意の数分の1低下することを含む。同様に、治療又は部分的な消失は、増殖物又は腫瘍のサイズ及び/又は体積の約1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はその間の任意の百分率が低下する、百分率の低下を含んでよい。
本明細書に記載の方法において治療される腫瘍又はがんとしては、これらに限定されないが、肺がん、婦人科悪性腫瘍、黒色腫、乳がん、脳腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫、「GBM」)、膵がん、卵巣がん、子宮がん、結腸直腸がん、前立腺がん、腎がん、頭部がん、肝がん(肝細胞がん)、子宮がん、頚部がん、腎がん(腎細胞がん)、肉腫、骨髄腫及びリンパ腫が挙げられる。一実施形態では、治療される腫瘍は、充実性腫瘍又は半充実性腫瘍である。別の実施形態では、治療される腫瘍は、原発腫瘍である。別の実施形態では、治療される腫瘍は、転移性腫瘍である。一実施形態では、治療される腫瘍又はがんは上皮起源である。別の実施形態では、治療されるがんは骨髄腫である。別の実施形態では、治療されるがんは卵巣がんである。別の実施形態では、治療されるがんは腎がん(kidney/renal cancer)である。さらに別の実施形態では、治療されるがんは肝細胞がん/肝がんである。
肺がん
一態様では、本明細書において、肺がんを治療する方法が提供される。大部分の一般的な種類の肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)であり、それは肺がんのおよそ80〜85%を占め、扁平上皮癌、腺癌及び大細胞未分化癌に分けられる。小細胞肺がんは、肺がんの15〜20%を占める。
肺がんの病期分類は、がんの、その最初の源からの拡散の度合いの評価である。これは、肺がんの予後及び潜在的な治療に影響を及ぼす重要な因子である。非小細胞肺癌は、IA(「1A」;最良の予後)からIV(「4」;最悪の予後)までに病期分類される。小細胞肺癌は、それが胸部の片方に限局されている場合、限局期に分類され、単独の照射療法の領域の範囲内である;そうでなければ、それは進展期である。
非小細胞肺がんは、EUS(超音波内視鏡検査)又はCTスキャン若しくはMRIスキャンを使用して、又は外科手術時に病期分類して、TNM系に従って疾患の程度を分類することができる。これらの対象は、予後及び治療の考察のプロセスの一部として病期分類を受ける。AJCCは、TNM病期分類の後にさらにグループ分けすることを推奨している。
原発腫瘍(T):TX:原発腫瘍の評価が不可能、又は喀痰若しくは気管支肺胞の洗浄液中に悪性細胞があるが画像化又は気管支鏡検査ではそれが見られない;Tis:上皮内癌。T0:原発腫瘍を認めない。T1:腫瘍の最大径が3cm未満であり、肺又は臓側胸膜で囲まれている、且つ気管支鏡検査上、主気管支への浸潤がない。T2:以下のいずれかを有する腫瘍:3cmを超える最大径;主気管支への進展(しかし、気管分岐部より2cm離れている)及び閉塞性肺臓炎(しかし肺全体に及ばない)。T3:以下のいずれかを有する腫瘍:胸壁、横隔膜、縦隔胸膜、又は壁側心膜への浸潤;気管分岐部の2cm以内であるが気管分岐部に及ばない、主気管支への進展;及び肺全体の閉塞性肺臓炎。T4:以下のいずれかを有する腫瘍:縦隔、心臓、大血管、気管、食道、椎骨、又は気管分岐部への浸潤;同一の肺葉内の別の腫瘍小結節;及び悪性胸水。リンパ節(N):NX:リンパ節の評価が不可能;N0:リンパ節に及んでいない;N1:同側気管支周囲リンパ節又は同側肺門リンパ節への転移;N2:同側縦隔リンパ節又は気管支分岐部リンパ節への転移;及びN3:以下のいずれかへの転移:同側鎖骨上リンパ節;同側斜角筋リンパ節;及び対側リンパ節。遠隔転移(M):MX:遠隔転移の評価が不可能;M0:遠隔転移なし;及びM1:遠隔転移が存在する。
子宮がん/婦人科悪性腫瘍
子宮がんは、子宮において生じるいくつかの異なる種類のがん、すなわち:子宮肉腫(例えば、子宮筋又は子宮筋層の肉腫が最も一般的な平滑筋肉腫である);子宮体がん;及び子宮頚がんのいずれかを指しうる。
別の態様では、本明細書において、子宮内膜がんを治療する方法が提供される。子宮体がんは、子宮の内壁である子宮内膜から出発するがんである。子宮がん及び子宮内膜がんの例のいくつかとしては、これらに限定されないが、腺癌、腺棘細胞腫、腺扁平上皮癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞腺癌、子宮肉腫、間質肉腫、悪性混合中胚葉腫瘍及び平滑筋肉腫が挙げられる。
別の態様では、この方法により、子宮頚がん、好ましくは子宮頚部上皮腺癌を治療する。このがんには2つの主要な種類、扁平上皮癌及び腺癌が存在する。前者は、全子宮頚がんの約80〜90%を構成し、子宮頚外部(ectocervix)(膣に最も近い部分)及び子宮頚内膜(子宮に最も近い部分)がつながる場所で発生する。後者は、子宮頚内膜の粘液産生腺細胞で発生する。いくつかの子宮頚がんは、これらの両方の特性を有し、腺扁平上皮癌又は混合癌と称される。
卵巣がん
別の態様では、本明細書において、上皮性卵巣腫瘍を含めた卵巣がんを治療する方法が提供される。
卵巣がんは、病理報告で得られた腫瘍の組織学的検査所見によって分類される。表層上皮性・間質性腫瘍、は上皮性卵巣がんとしても公知であり、最も典型的な種類の卵巣がんである。これは、漿液性腫瘍、類内膜腫瘍及び粘液性嚢胞腺癌を含む。エストロゲンを産生する顆粒膜細胞腫及び男性化作用のあるセルトリライディッヒ細胞腫又は男化腫瘍を含めた性索間質腫瘍は、卵巣がんの8%を占める。胚細胞性腫瘍は、卵巣腫瘍のおよそ30%を占めるが、大部分の胚細胞性腫瘍が奇形腫であり、大部分の奇形腫が良性であるので、卵巣がんに占める割合はわずか5%である。胚細胞性腫瘍は、若い女性及び少女において生じる傾向がある。予後は、胚細胞性腫瘍の特定の組織学的検査所見に左右されるが、全体的に順調である。混合腫瘍は、上記の腫瘍組織学的検査所見のクラスの2つ以上のエレメントを含有する。
卵巣がんは、体内の他の場所の原発がんから転移した結果の二次がんであってもよい。一般的な原発がんは乳がん及び胃腸がんである(その場合、卵巣がんは、クルーケンベルクがんである)。表層上皮性・間質性腫瘍は、腹膜(腹腔の内壁)において生じ得、その場合、卵巣がんは原発性腹膜がんに続発するが、治療は、腹膜に及ぶ原発性表層上皮性・間質性腫瘍に対するものと基本的に同じである。
卵巣がんの病期分類は、FIGO病期分類系によるものであり、且つ腹式子宮全摘術、両方の卵巣及び卵管の除去、細胞診のための網及び骨盤(腹膜)洗液を含んでよい外科的処置後に得られた情報を使用する。AJCC病期は、FIGO病期と同じである。
I期は、卵巣の片方又は両方に限定されている卵巣がんを指す:IA−片方の卵巣に及ぶ;被膜が損なわれていない;卵巣表面の腫瘍なし;腹水又は腹膜洗液中に悪性細胞なし;IB−両方の卵巣に及ぶ;被膜が損なわれていない;卵巣表面の腫瘍なし;洗液陰性;及びIC−以下のいずれかを有する卵巣に限定されている腫瘍:被膜破綻、卵巣表面の腫瘍、洗液陽性。
II期は、骨盤内への進展又は移植性転移(implant)を指す:IIA−子宮又は卵管への進展又は移植性転移(implant);洗液陰性;IIB−他の骨盤内構造への進展又は移植性転移(implant);洗液陰性;及びIIC−腹膜洗液陽性を伴う骨盤内への進展又は移植性転移(implant)
III期は、顕微鏡レベルで骨盤外の腹膜移植性転移(implant)があること;又は骨盤に限定されているが、小腸又は大綱への進展を伴うことを指す:IIIA−顕微鏡レベルの骨盤を越えた腹膜転移;IIIB−サイズが2cm未満の肉眼で見える骨盤を越えた腹膜転移;及びIIIC−>2cmの骨盤を越えた腹膜転移、又はリンパ節転移。
IV期は、肝臓又は腹膜腔の外側への遠隔転移を指す。
傍大動脈リンパ節転移は、所属リンパ節(III期C)と見なされる。
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法により、以下から選択される卵巣がんを治療する:卵巣内の腺癌及び卵巣から腹腔内に移動した腺癌。
悪性黒色腫
黒色腫は、主に皮膚において見出されるが、腸及び眼(ぶどう膜黒色腫)においても見出されるメラニン形成細胞の悪性腫瘍である。黒色腫は珍しい種類の皮膚がんの1つであるが、大多数の皮膚がんに関連した死亡を引き起こす。悪性黒色腫は、メラニン形成細胞と称される色素細胞の制御されない成長によって引き起こされる重篤な種類の皮膚がんである。黒色腫としては、これらに限定されないが、脈絡膜黒色腫、悪性黒色腫、皮膚黒色腫及び眼内黒色腫も挙げられる。
黒色腫は、以下の種類に分けることができる:悪性黒子、悪性黒子黒色腫、表在拡大型黒色腫、末端黒子型黒色腫、粘膜黒色腫、結節性黒色腫、ポリープ状黒色腫、線維形成性黒色腫、無色素性黒色腫、軟組織黒色腫及びぶどう膜黒色腫。黒色腫の病期は、以下の通りである:
0期−上皮内黒色腫(ClarkレベルI)。
I/II期−侵襲的な黒色腫:T1a:1.00mm未満、原発性、潰瘍なし、ClarkレベルII〜III;T1b:1.00mm未満、原発性、潰瘍あり、又はClarkレベルIV〜V;及びT2a:1.00〜2.00mm、原発性、潰瘍なし。
II期−危険性が高い黒色腫:T2b:1.00〜2.00mm、原発性、潰瘍あり;T3a:2.00〜4.00mm、原発性、潰瘍なし;T3b:2.00〜4.00mm、原発性、潰瘍あり;T4a:4.00mm以上、原発性、潰瘍なし;及びT4b:4.00mm以上、原発性、潰瘍あり。
III期−領域転移:N1:単一のリンパ節陽性;N2:2〜3個のリンパ節陽性又は局部の皮膚/in−transit転移;及びN3:4個のリンパ節陽性又はリンパ節及び局部の皮膚/in transit転移。
IV期−遠隔転移:M1a:皮膚への遠隔転移、LDH正常;M1b:肺転移、LDH正常;及びM1c:他の遠隔転移又はLDHの上昇を伴う任意の遠隔転移。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、黒色腫を治療する。
結腸がん及び結腸直腸がん
結腸直腸がん(結腸がん又は大腸がんとも称される)は、結腸、直腸(肛門)及び虫垂におけるがん性増殖物を含む。結腸直腸がんは、世界で1年当たり655,000件の死亡を伴う、西欧諸国において3番目に多いがんの形態であり、がんに関連した死亡の第2の主な原因である。多くの結腸直腸がんは、結腸内の腺腫性ポリープから生じると考えられている。これらのキノコ様の成長は通常は良性であるが、そのいくつかは、ある期間にわたってがんに発展する可能性がある。
別の実施形態では、デュークス分類(Dukes分類)を使用して、結腸直腸がんをA〜D期に基づいて分類することができる。A期は、粘膜に限定されている(言い換えると、腸壁を通って浸潤していない)結腸直腸がんを指す。B1期は、固有筋層に進展しているが、それを貫通していない(言い換えると、リンパ節に浸潤していない)ことを指す;一方、B2期のがんは、固有筋層を貫通しているが、それを貫通していない(言い換えると、リンパ節に浸潤していない)。C1期は、固有筋層に進展するが、それを貫通していない(言い換えると、リンパ節に及んでいる)がんを指す;一方、C2期は、固有筋層に進展し、それを貫通している(言い換えると、リンパ節に及んでいる)がんを指す。D期は、遠隔転移拡散を指す。当技術分野で公知の従来の手段に従って、TNM系を使用して結腸直腸がんを病期分類することもできる。
乳がん
乳がんには本明細書に記載の方法によって治療することができるいくつかの種類がある。非浸潤性小葉癌及び非浸潤性乳管癌は、それぞれ小葉及び管において発生した乳がんであるが、乳房を取り囲む脂肪組織又は体の他の領域に拡散していない。侵入性の(浸潤性の)小葉癌及び腺管癌は、それぞれ小葉及び管において発生したがんであり、乳房の脂肪組織及び/又は体の他の部分に拡散している。一態様では、本明細書において、乳腺内の管組織における腺管癌、Her2−及び/又はER−及び/又はPR−である乳がんなどの乳がんを治療する方法が提供される。この方法によって治療することが有効であると思われる他の乳がんは、髄様癌、膠様癌、管状癌及び炎症性乳がんである。
一実施形態では、乳がんは、TNM系に従って病期分類される。予後は、病期分類の結果に密接に関連づけられ、病期分類は、患者を、臨床試験及び臨床診察の両方における治療に割り当てるためにも使用する。
簡単に述べると、病期分類のための情報は以下の通りである:TX:原発腫瘍の評価が不可能。T0:腫瘍を認めない。Tis:上皮内癌、浸潤なし;T1:腫瘍が2cm以下である;T2:腫瘍が2cmを超えるが5cm以下である;T3:腫瘍が5cmを超える;T4:任意のサイズの腫瘍が胸壁又は皮膚に成長している、又は炎症性乳がん。NX:近くのリンパ節の評価が不可能であるN0:がんが所属リンパ節に拡散していない。N1:がんが1〜3個の上顎リンパ節又は1つの内胸リンパ節に拡散している;N2:がんが4〜9個の上顎リンパ節又は多数の内胸リンパ節に拡散している;N3:以下のうち1つがあてはまる:がんが10個以上の上顎リンパ節に拡散している、又はがんが鎖骨(clavicle)(鎖骨(collar bone))下のリンパ節に拡散している、又はがんが鎖骨(clavicle)上のリンパ節に拡散している、又はがんが上顎リンパ節に及び、内胸リンパ節に拡大している、又はがんが4個以上の上顎リンパ節に及び、ごく少量のがんがセンチネルリンパ節生検材料の内胸リンパ節に見られる。MX:遠隔拡散(転移)の存在の評価が不可能である。M0:遠隔拡散なし。M1:遠隔臓器(鎖骨上リンパ節を含まない)への拡散が生じている。
膵がん
別の態様では、本明細書において、以下から選択される膵がんを治療する方法が提供される:膵管組織上皮癌及び膵管腺癌。大部分の一般的な種類の膵がんは、膵管の内壁において生じる腺癌である。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、膵がんを治療する。
前立腺がん
1つの他の態様では、本明細書において、以下から選択される前立腺がんを治療する方法が提供される:腺癌又は骨に移動した腺癌。男性の尿道基部を取り囲む前立腺器官において生じた前立腺がん。前立腺は、いくつかの細胞型を有するが、腫瘍の99%は、精液の生成に関与する腺細胞において発生する腺癌である。
前立腺がんを病期分類するために一般に使用される2つのスキームがある。最も一般的なものは腫瘍のサイズ、リンパ節に及んだ程度及び任意の転移(遠隔拡散)を評価するTNM系である。多くの他のがんと同様に、これらは多くの場合、4つの病期(I〜IV)にグループ分けされる。一般的ではないが使用される別のスキームは、Whitmore−Jewett病期分類である。
簡単に述べると、I期の疾患は、良性の前立腺肥大などの他の理由で前立腺組織を取り出した際に試料のごく一部において偶発的に見出されるがんであり、細胞は通常の細胞とよく似ており、腺は、検査している指には正常に感じられる。II期では、より多くの前立腺に及び、腺内にしこりが感じられうる。III期では、腫瘍が前立腺被膜に拡散し、腺の表面にしこりが感じられうる。IV期の疾患では、腫瘍は近くの構造に浸潤している、又は、リンパ節又は他の器官に拡散している。等級付けは、破壊的な潜在的な、及び最終の疾患の予後の推定値を提供する生検材料(Gleason)に由来する細胞内含有量及び組織構造に基づく。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、前立腺がんを治療する。
頭頚部がん
頭頚部がん(例えば、口腔がん、喉頭がん、鼻咽頭がん、食道がんなど)は、唇、口腔(口)、鼻腔、副鼻腔、咽頭及び喉頭を含めた上気道消化管に由来する生物学的に類似したがんのグループを指す。大部分の頭頚部がんは、これらの領域の粘膜の内壁(上皮)に由来する扁平上皮癌である。頭頚部がんは、多くの場合、頚部リンパ節に拡散し、これは多くの場合、診断時の疾患の最初の(及び時には唯一の)顕在化である。頭頚部がんは、タバコ喫煙、アルコールの消費及びある特定の系統の性感染するヒトパピローマウイルスを含めた、ある特定の環境危険因子及び生活習慣の危険因子と強力に関連づけられる。頭頚部がんの患者の管理は手ごわい課題のままである。下咽頭がん、喉頭がん、鼻咽頭がん、中咽頭がんなどのがんは、本明細書に記載の化合物を使用して治療することができる。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、頭部がん又は頚部がんを治療する。
腎がん
別の態様では、本明細書において、腎がんを治療する方法が提供される。腎がん(腎細胞がん、腎細胞癌、腎腺癌及び副腎腫とも称される)は、悪性細胞が腎臓の細管の内壁に見出される疾患である。腎細胞癌は、近位尿細管から生じる腎がんの最も一般的な形態である。これは、最も一般的な種類の腎がんであり、成人において、症例のおよそ80%の原因である。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、腎がんを治療する。
肝がん
別の態様では、本明細書において、原発性の肝がん(肝臓で発生するがん)を治療する方法が提供される。原発性肝がんは、成人及び小児のどちらにおいても生じうる。肝がんは、悪性肝腫瘍−肝臓の表面又は内部の腫瘍又は増殖物が存在することを特徴とする。これらは、医用画像において発見されうる(がん自体とは異なる理由であっても)、又は患者に、腹部腫瘤、腹痛、黄疸、又はいくつかの他の肝機能障害として現れる可能性がある。肝がんにはいくつかの種類がある。
血管腫:これらは最も一般的な種類の良性の肝腫瘍である。これらは血管から出発する。これらの腫瘍の大部分は症状を引き起こさず、これらに治療は必要ない。いくつかは、出血する場合があり、軽度〜重篤である場合、除去する必要がある。
肝腺腫:これらの良性の肝上皮腫瘍は、肝臓において発生する。肝腺腫は、ほとんどの場合、肝右葉に位置し、頻繁に孤立して見られる。腺腫のサイズは1〜30cmにわたる。肝腺腫に伴う症状はすべて、激しい腹痛を引き起こす恐れがある大きな病変を伴う。
限局性結節性過形成:限局性結節性過形成(FNH)は、2番目に多い肝臓の腫瘍である。この腫瘍は、先天性動静脈奇形の肝細胞の応答の結果である。このプロセスでは、正常な肝臓の構成物がすべて存在するが、それらが存在するパターンが異常である。これらの状態が存在するにもかかわらず、肝臓はなお正常な範囲で機能すると思われる。
肝細胞がん:肝細胞がん(HCC)は、最も一般的な肝臓のがんである。肝細胞がんは、アルコールの乱用及びB型肝炎への感染に伴い、特にアジアで流行している。大多数のHCCは、検出される時には外科的切除によるケアが不可能である;切除不可能なHCCを全身的に治療することには、1年未満の生存が伴う。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、肝がんを治療する。
リンパ腫
リンパ腫は、免疫系のリンパ球において生じる種類のがんである。リンパ腫は、多くの場合、リンパ節に生じ、節の肥大(腫瘍)として存在している。リンパ腫は、同様にリンパ球において生じるが、一般には循環血液及び骨髄(造血と称されるプロセスで血液細胞が生成される場所)にのみ及び、通常腫瘍を形成しないリンパ性白血病と密接に関連する。リンパ腫には多くの種類があり、同様に、リンパ腫は血液腫瘍と称される疾患の広範なグループの一部である。リンパ腫のいくつかの形態は無痛性であり(例えば小リンパ球性リンパ腫)、治療なしでさえも長寿命に適合するが、一方他の形態は攻撃的であり(例えばバーキットリンパ腫)、急速な悪化及び死亡を引き起こす。
2001年に公開され、2008年に更新されたWHO分類;http://en.wikipedia.org/wiki/Lymphoma−cite_note−isbn92−832−2411−6−2#cite_note−isbn92−832−2411−6−2が最新のリンパ腫の分類であり、「Revised Europeanan−American Lymphomama classificationon(REAL)」に提示されている基礎に基づく。このシステムでは、リンパ腫を細胞型によってグループ分けし(すなわち、腫瘍に最も似ている正常細胞型)、表現型、分子特性又は細胞遺伝学的特性を定義している。B細胞腫瘍、T細胞腫瘍及び天然のキラー細胞腫瘍の3つの大きなグループがある。他のあまり一般的でないグループも認識されている。ホジキンリンパ腫は、WHO(及び前述の)分類では別に考えられていたが、現在は、たとえ著しく異常であっても、成熟B細胞系列のリンパ球の腫瘍であると認識されている。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、リンパ腫を治療する。
肉腫
肉腫は、中胚葉の増殖を生じさせる結合組織(骨、軟骨、脂肪)のがんである。
これは、上皮起源(乳房、結腸、膵臓、及びその他)である癌腫とは対照的である。しかし、組織起源の理解が引き出されることにより、用語「肉腫」は、時には上皮組織から生じることが現在公知である腫瘍に適用される。用語、軟部肉腫は、結合組織内にあるが、それ由来ではないエレメントを含む軟組織(筋肉及び血管など)の腫瘍を説明するために使用される。
肉腫には、それらが生じる組織の種類に基づいて、いくつもの異なる名称が与えられている。例えば、骨から生じる骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨から生じる軟骨肉腫及び平滑筋から生じる平滑筋肉腫。肉腫はすべての年齢層の人を襲うが、これらは非常にまれであり、がんの全症例に占める割合は1%のみである。GISTは、肉腫の最も一般的な形態であり、米国において1年当たりおよそ3000〜3500件の症例がある。これは、北アメリカにおいて1年当たりおよそ200,000件の症例を有する乳がんと比較するべきである。
骨肉腫(bone sarcoma)のおよそ50%及び軟部肉腫の20%は、35歳未満の人において診断される。平滑筋肉腫、軟骨肉腫及び消化管間質腫瘍(GIST)などのいくつかの肉腫は、小児よりも成人において一般的である。ユーイング肉腫及び骨肉腫(osteosarcoma)を含めた最も悪性度が高い骨肉腫(bone sarcoma)は、小児及び若年成人においてはるかに一般的である。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、肉腫を治療する。
癌腫
癌腫は、上皮細胞から生じる任意の悪性のがんである。癌腫は、周囲の組織及び器官に浸潤し、リンパ節及び他の部位に転移又は拡散する可能性がある。
癌腫は、すべての新形成と同様に、その病理組織学的外観によって分類される。腫瘍についての2つの一般的な記述的な用語である腺癌及び扁平上皮癌は、これらの細胞が、それぞれ腺細胞又は扁平上皮細胞の外観を有しうるという事実を反映している。したがって極度の退形成腫瘍は、別個の組織学的外観を有さない未分化の状態でありうる(未分化癌)。
時には、腫瘍は原発性の仮定器官(例えば、前立腺癌)又は起源である推定上の細胞(肝細胞癌、腎細胞癌)によって称される。
腺癌は、腺組織の上皮細胞に由来する悪性腫瘍であり、腺構造を形成している。腺癌は、肺において一般的である(全肺癌の30〜40%を構成している)。腺癌は、末梢性に見出され、杯細胞又はII型肺胞細胞から生じている。
扁平上皮癌は、扁平上皮化生から生じる。これは、肺腫瘍の20〜30パーセントを占め、通常、門部起源である。
小細胞癌は、ほぼ確実に喫煙に起因する。これらは初期に転移し、ADHを分泌しうる(患者のナトリウム濃度を低減させる)。
大細胞未分化癌は、肺新生物の10〜15パーセントを占める。これらは攻撃的であり、未分化の性質であるので、認識することが難しい。これらは最も一般的に肺の中心に位置する。
副鼻腔未分化癌
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、癌腫を治療する。
骨髄腫
多発性骨髄腫(MM、骨髄腫、形質細胞骨髄腫として、又はOtto Kahlerにちなんでカーラー病としても公知である)は、血漿細胞のがんである。これらの免疫細胞は、骨髄において形成され、リンパ管に多発し、抗体を産生する。骨髄腫は、不治であると見なされているが、ステロイド、化学療法、サリドマイド及び幹細胞移植を用いて寛解を誘導することができる。骨髄腫は血液悪性腫瘍と称される疾患の広範なグループの一部である。
多発性骨髄腫は、胚中心後のBリンパ球において発生する。免疫グロブリン重鎖遺伝子(第14染色体、遺伝子座14q32上)と癌遺伝子(多くの場合、11q13、4p16.3、6p21、16q23及び20q11)との間の染色体移行は、多発性骨髄腫の患者において頻繁に観察される。この突然変異により、骨髄腫の発病において重要な最初の事象であると考えられている癌遺伝子の調節不全が生じる。その結果、血漿細胞クローンが増殖し、ゲノムが不安定性になり、それにより、さらなる突然変異及び移行が生じる。第14染色体の異常が、骨髄腫の全症例の約50%において観察される。第13染色体の(一部の)欠失も、症例の約50%において観察される。
血漿細胞によってサイトカイン(特にIL−6)が産生されることにより、骨粗鬆症などのそれらの局所的な損傷の大半が引き起こされ、悪性細胞がよく育つ微小環境が創出される。血管新生(新しい血管が誘引されること)が増加する。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、骨髄腫を治療する。
胃がん
胃がん(Stomach or gastric cancer)は、胃の任意の一部分において発生する可能性があり、胃全体にわたって、及び他の器官、特に、食道、肺及び肝臓に拡散する恐れがある。胃がんにより、世界で1年当たり約800.000件の死亡が引き起こされている。
胃がんの個体の80〜90%において転移が生じ、初期に診断された胃がんの個体の6カ月生存率は65%であり、後期に診断された胃がんの個体の6カ月生存率は15%未満である。
胃がんは、多くの場合、無症候性である、又はその初期に非特異的な症状のみを引き起こす。症状が生じる時には、がんは一般に体の他の部分に転移しており、それがその予後不良の主要な理由の1つである。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、胃がんを治療する。
甲状腺がん
甲状腺腫又は甲状腺がんは、通常は、4種類の甲状腺の悪性腫瘍:乳頭腫瘍、濾胞腫瘍、髄様腫瘍又は未分化腫瘍のいずれかを指す。乳頭腫瘍及び濾胞腫瘍が最も一般的である。これらは、ゆっくりと成長し、再発する可能性があるが、一般に45歳未満の患者では致死的なものではない。髄様腫瘍は、甲状腺に限られている場合、良好な予後を有し、転移が起こる場合、不良な予後を有する。退形成腫瘍は、成長が早く、療法に対する応答が不十分である。
甲状腺がんは、通常、甲状腺機能正常の患者に見出されるが、甲状腺機能亢進症又は甲状腺機能低下症の症状は、大きな、又は転移性の高分化腫瘍に伴う可能性がある。これらが20歳未満で見出される場合、小結節が特に懸念される。この年齢において良性の小結節が現れる可能性は低く、したがって、悪性腫瘍の潜在性がはるかに大きい。
甲状腺がんは、それらの病理学的特性に従って分類することができる。以下の変異体を区別することができる(様々な亜型にわたる分布により、局部的な変動が示されうる):甲状腺乳頭がん(最大75%);甲状腺濾胞がん(最大15%);甲状腺髄様がん(最大8%);及び甲状腺未分化がん(5%未満)。濾胞性型及び乳頭型はともに「分化型甲状腺がん」に分類することができる。これらの型は、髄質型及び未分化型よりも好都合な予後を有する。甲状腺腺腫は、甲状腺の良性の新生物である。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、甲状腺がんを治療する。
膀胱がん
膀胱がんは、いくつかの種類の膀胱の悪性増殖物のいずれかを指す。膀胱がんは、膀胱において異常な細胞が制御されずに繁殖する疾患である。膀胱は、尿を蓄積する、中空の筋肉の器官である;膀胱は、骨盤に位置する。最も一般的な種類の膀胱がんは、膀胱の内側の細胞内壁から始まり、移行上皮癌(時には尿路上皮細胞癌)と称される。
膀胱がんの90%が移行上皮癌である。他の10%は扁平上皮癌、腺癌、肉腫、小細胞癌及び体内の他の場所のがんに由来する二次的な沈着物である。
以下の病期分類を使用して、場所、サイズ及びがんの拡散を、TNM(腫瘍、リンパ節及び転移)病期分類系に従って分類する:0期:がん細胞が膀胱の内壁においてのみ見出される。I期:がん細胞が膀胱の内壁を越えて層にまで増殖しているが、膀胱の筋肉までは増殖していない。II期:がん細胞が膀胱壁の筋肉にまで増殖しているが、膀胱を取り囲む脂肪組織までは増殖していない。III期:がん細胞が膀胱を取り囲む脂肪組織にまで増殖している、且つ前立腺、膣、又は子宮にまで増殖しているが、リンパ節又は他の器官までは増殖していない。IV期:がん細胞がリンパ節、骨盤内又は腹壁、及び/又は他の器官にまで増殖している。再発:治療された後に、がんが膀胱において、又は別の近くの器官において再発している。
膀胱TCCは、1997TNM系に従って病期分類される:Ta 非浸潤的な乳頭の腫瘍;T1 浸潤しているが、筋肉の膀胱層までは浸潤しない;T2 筋層まで浸潤している;T3 筋肉を越えて膀胱の外側の脂肪まで浸潤している;及びT4 前立腺、子宮又は骨盤壁のような周囲の構造まで浸潤している。
一実施形態では、本明細書に記載の方法により、膀胱がんを治療する。
本発明に従って、ヒト化エンドグリン抗体又はその断片は、単独で、又は活性な作用剤又は不活性な作用剤と組み合わせて投与することができる。組合せを使用する場合、本発明では、ヒト化エンドグリン抗体又は抗原結合断片及び活性な作用剤又は不活性な作用剤を同時に又は逐次的に投与することが考えられている。
本発明の化合物は、必要に応じて、これらに限定されないが、アドリアマイシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ペメトレキセド、テモゾロミド、オキサリプラチン、ベバシズマブ、アービタックス、ベクチビックス、ソラフェニブ、スニチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、5−フルオロウラシル(5−FU)イリノテカン、トポテカン、ロイコボリン、VELCADE(登録商標)、レナリドマイド、サリドマイド、ゼローダ、タキソテレ及び本明細書に記載の多くの他の従来のがん療法を含めた1又は複数の治療的な治療と組み合わせて投与することができる。以下に列挙されている治療レジメンの一覧表は従来の療法を表すが、本発明は、本明細書に詳細には開示されていない他の公知の治療レジメンを包含することが理解されよう。
本明細書で使用される「放射線」は、例えば、マイクロ波、紫外線(UV)、赤外線(IR)、又はアルファ線、ベータ線若しくはガンマ線を指す。放射線は、従来の技法を使用して、標的放射線を、全身に照射することなく、1又は複数の腫瘍部位に「集中させる」又は局所的に送達することができる。
一実施形態では、がんは卵巣がんであり、1又は複数の治療的な治療は外科手術、化学療法(例えば、ドキソルビシン、ドキシル、ゲムシタビン、Rubitecan並びにシスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンなどの白金ベースの化学療法)、メルファラン、パクリタキセル、トポテカン及びイリノテカンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、タキサンベースの療法、ホルモン、放射線療法、全身体温低下、フェノクソディオールなどのイソフラボン誘導体、エポチロンなどの細胞毒性マクロライド、ベバシズマブなどの血管新生阻害剤、トラスツズマブなどのシグナルトランスダクション阻害剤、遺伝子療法、RNAi療法、免疫療法、モノクローナル抗体、ラパマイシンなどのホスファチジルイノシトール様キナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組合せである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とドキシルである。別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とトポテカンである。さらに別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片と卵巣がん療法の併用療法によっても、療法の同時発生的な投与による相乗効果に起因して、いずれかの療法、又はその両方をより低い用量にすることができる。
一実施形態では、がんは腎がん(renal/kidney cancer)であり、1又は複数の治療的な治療は、外科手術、化学療法、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、AVASTIN(登録商標)、インターフェロン−アルファ、又はIL−2である。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とソラフェニブである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とスニチニブである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とAVASTIN(登録商標)である。さらに別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片と腎がん療法の併用療法によっても、療法の同時発生的な投与による相乗効果に起因して、いずれかの療法、又はその両方をより低い用量にすることができる。
一実施形態では、がんは骨髄腫であり、1又は複数の治療的な治療は、外科手術、照射療法、VELCADE(登録商標)、レナリドマイド、又はサリドマイドである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVELCADE(登録商標)である。任意のこれらの療法の投与量は、当技術分野で公知であり、併用療法を用いて、適宜調整することができる。
一実施形態では、がんは前立腺がんであり、1又は複数の治療的な治療は外科手術、照射療法(例えば、外照射又は密封小線源治療)、ホルモン欠乏(アンドロゲン抑制)、熱ショックタンパク質90(HSP90)阻害剤、化学療法(例えば、ドセタキセル、白金ベースの化学療法、例えばシスプラチン、カルボプラチン、サトラプラチン及びオキサリプラチン、タキサン、エストラムスチンなど)、プレドニゾン又はプレドニゾロン、コレステロース降下薬、例えばスタチンなど、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、RNAi療法、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(GVAXとしても公知)を分泌するように遺伝子改変された全腫瘍細胞、又はそれらの任意の組合せである。さらに別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。
一実施形態では、がんは肺がんであり、1又は複数の治療的な治療は外科手術、照射療法(例えば、荷電した粒子を用いた胸部照射療法、放射線療法、ウラシル−テガフール及び白金ベースの化学療法(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)及びビノレルビン、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、抗上皮増殖因子受容体抗体(例えば、セツキシマブ)、抗血管内皮増殖因子抗体(例えば、ベバシズマブ)、チロシンキナーゼの小分子阻害剤、肺がん細胞の増殖に関与するタンパク質の直接阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、レーザー誘起温熱療法、RNAi療法、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(GVAXとしても公知)を分泌するように遺伝子改変された全腫瘍細胞、又はそれらの任意の組合せである。追加的な治療的な治療としては、タキソール及びペメトレキセドが挙げられる。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とエルロチニブである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とゲフィチニブである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とペメトレキセドである。さらに別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。任意のこれらの療法の投与量は、当技術分野で公知であり、併用療法を用いて、適宜調整することができる。
一実施形態では、がんは乳がんであり、1又は複数の治療的な治療は、外科手術、モノクローナル抗体(例えば、Her−2抗体、ハーセプチン)、アジュバント化学療法、例えば単剤化学療法又は併用化学療法(例えば、アントラサイクリンベースの多剤化学療法及びタキサンベースの多剤化学療法、タキソール、又はPMRTを伴う、又は伴わない、内分泌操作を伴う、又は伴わない標的特異的なトラスツズマブ、ビノレルビン)など、アドリアマイシン、シクロホスファミド、ゼローダ、タキソテレ、タモキシフェン及びラロキシフェンなどの選択的なエストロゲン受容体モジュレーター、トリロスタンなどのアロステリックなエストロゲン受容体モジュレーター、放射線(例えば、組織内密封小線源治療、Mammositeデバイス、3次元等角外照射及び術中照射)、全身合成を抑制するアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン及びレトロゾール)、RNAi療法、免疫抑制性且つ抗増殖性であるラパマイシンの静脈内類似体、例えばテムシロリムス(CCI779)など、又はそれらの任意の組合せである。乳がんの3次元in vitro組織培養物モデルを行うための方法についての総説は、Kimら、Breast Cancer Research Treatment 85(3):281〜91(2004)に記載されている。がんを試験するための他のin vivoモデル及びin vitroモデルが公知であり、本明細書に記載の抗エンドグリン抗体を試験するために使用することができる。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片、タキソール及びAVASTIN(登録商標)である。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とアドリアマイシンである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とゼローダである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とタキソテレである。さらに別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。任意のこれらの療法の投与量は、当技術分野で公知であり、併用療法を用いて、適宜調整することができる。
一実施形態では、がんは結腸がんであり、1又は複数の治療的な治療は、外科手術、放射線療法及び化学療法(例えば、5−フルオロウラシル、レバミソール、ロイコボリン又はセムスチン(メチルCCNU))、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリジン−4−カルボキサミド及び他の関連するカルボキサミド抗がん薬;非トポイソメラーゼII阻害剤、イリノテカン、リポソームトポテカン、タキサンクラスの抗がん剤(例えば、パクリタキセル又はドセタキセル)、キサンテノン酢酸クラスの化合物(例えば、5,6−ジメチルアンテノン(dimethylanthenone)−4−酢酸PMAA)、ラミナリン、部位選択的なサイクリックAMP類似体(例えば、8−クロロアデノシン3’,5’−サイクリックホスフェート)、Cox−2のピラノインドール阻害剤、Cox−2のカルバゾール阻害剤、Cox−2のテトラヒドロカルバゾール阻害剤、Cox−2のインデン阻害剤、NSAIDSの局在型の阻害剤(例えば、アンスラニル酸、アスピリン(5−アセチルサリチル酸)、アゾジサールナトリウム(azodisal sodium)、カルボ複素環酸(carboheterocyclic acid)、カルプロフェン、クロラムブシル、ジクロフェナク、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、フルプロフェン、フロセミド、金チオリンゴ酸ナトリウム、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロナゾラク、ロキソプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メルファラン、ナプロキセン、ペニシラミン、フェニル酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、サラゾスルファピリジン、スリンダク、トルメチン、ピラゾロンブタゾンプロパゾンNSAID、メロキシカム、オキシカム、ピロキシカム、フェルデン、ピロキシカムベータシクロデキストラン、テノキシカム、エトドラク及びオキサプロジン)、HER−2/neuの阻害剤、RNAi療法、GM−CSF、モノクローナル抗体(例えば、抗Her−2/neu抗体、抗CEA抗体、A33(HB8779)、100〜210(HB11764)及び100〜310(HB11028))、アービタックス、ベクチビックス、ホルモン療法、ピリミジンアミン、カンプトテシン誘導体(例えば、CPT−11)、フォリン酸(FA)、ゲムシタビン、Ara−C、白金ベースの化学療法、例えばシスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンなど、cGMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組合せである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片と5−FU、ロイコボリン及びオキサリプラチン(FOLFOX)の組合せである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片と5−FU、イリノテカン及びロイコボリン(IFL)の組合せである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とアービタックスである。一実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とベクチビックスである。さらに別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。任意のこれらの療法の投与量は、当技術分野で公知であり、併用療法を用いて、適宜調整することができる。
一実施形態では、がんは膵がんであり、1又は複数の治療的な治療は、外科手術、放射線療法(RT)、フルオロウラシル(5−FU)及びRT、全身性の療法、ステント挿入、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ゲムシタビン及びRT、セツキシマブ、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、化学放射線、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、又はそれらの任意の組合せである。さらに別の実施形態では、組合せは、ヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片とVEGF受容体阻害剤である。VEGF受容体阻害剤の非限定的な例としては、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、アフリバーセプト(VEGF−Trap)、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アキシチニブ、ペガプタニブ及びパゾパニブが挙げられる。
治療レジメンの前、その間、及びその後を含めた1又は複数の多数の時点で症状について患者を評価することができる。治療の結果、対象の状態が改善される可能性があり、それを、以下の因子の1又は複数が生じているかどうかを決定することによって評価することができる:腫瘍サイズの減少、細胞増殖の減少、細胞数の減少、新血管形成の減少、アポトーシスの増加、又は細胞増殖性障害を含む細胞の少なくとも一部分の生存の減少。これらの1又は複数が出現することにより、ある場合では、がんの部分的な又は完全な消失及び患者の生存の延長がもたらされる可能性がある。或いは、末期がんについては、治療により、疾患の停滞、より良い生活の質及び/又は生存の延長がもたらされる可能性がある。
バイオマーカーの評価
ある特定の遺伝子は、がんにおいてその発現レベルが増加又は減少している可能性がある。がんにおける遺伝子の発現レベルの変化は、がんの療法又は治療に対する耐性又は感受性を示す可能性がある。
本明細書では、それらの発現が血管新生阻害剤に対する感受性又は耐性と相関している遺伝子のパネルから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を検出するための診断方法であって、少なくとも1つの遺伝子が:VEGF、VEGF受容体、HIF−1α、胎盤細胞増殖因子受容体又はエンドグリン(CD105)である上記方法が提供される。この方法は、患者試料において検出される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、血管新生阻害剤に対する感受性又は耐性と相関している少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと比較するステップをさらに含んでよい。1つの非限定的な実施形態では、血管新生阻害剤は、ヒト化抗エンドグリン抗体である。別の実施形態では、血管新生阻害剤は、VEGF受容体阻害剤又はVEGF阻害剤である。
本明細書で使用される用語「発現」は、遺伝子の発現を検出することに関して使用される場合、遺伝子の転写を検出すること、及び/又は遺伝子の翻訳を検出することを指しうる。遺伝子の発現を検出することは、遺伝子が発現しているか否かを積極的に決定する行為を指す。これは、遺伝子発現が、対照と比較して上方制御されているかどうか、対照と比較し下方制御されているかどうか、又は対照と比較して変化していないかどうかを決定することを含んでよい。したがって、発現を検出するステップは、遺伝子の発現が実際に上方制御又は下方制御されていることを必要とせず、それよりも、遺伝子の発現が変化していないことを検出すること(すなわち、遺伝子の発現又は遺伝子の発現の変化が検出されないこと)を含んでもよい。
本発明に関連して評価されるバイオマーカーとしては、VEGF受容体、胎盤細胞増殖因子、HIF−1α及びエンドグリン(CD105)が挙げられる。
本明細書に記載され、当技術分野でさらに公知の方法において、バイオマーカーの発現を評価するために、内皮組織、腫瘍細胞、又は腫瘍細胞によって産生されるタンパク質若しくは核酸を含有する患者試料を使用することができる。簡単に述べると、バイオマーカーの発現レベルを、試料、例えば、患者から得た腫瘍の生検材料、又は腫瘍に由来する材料を含有する他の患者試料(例えば、本明細書において上記されている血液、血清、尿、又は他の体液又は排泄物)におけるマーカーの量(例えば、絶対量又は濃度)を評価することによって評価することができる。細胞試料は当然、試料中のマーカーの量を評価する前に種々の周知の採取後調製技法及び貯蔵技法(例えば、核酸及び/又はタンパク質の抽出、固定、貯蔵、凍結、限外濾過、濃度、蒸発、遠心分離など)に供す。同様に、腫瘍生検材料も、採取後調製技法及び貯蔵技法、例えば、固定に供すことができる。
それを発現する細胞の表面に提示される少なくとも1つの部分を有するバイオマーカータンパク質の発現を検出することができる。マーカータンパク質又はその部分が細胞表面に露出しているかどうかを決定することができる。例えば、免疫学的方法を使用して、細胞全体のそのようなタンパク質を検出することができる、又は周知のコンピュータベースの配列解析方法を使用して、少なくとも1つの細胞外ドメイン(すなわち、分泌タンパク質及び少なくとも1つの細胞表面ドメインを有するタンパク質の両方を含む)の存在を予測することができる。それを発現する細胞の表面に提示される少なくとも1つの部分を有するマーカータンパク質の発現は、必ずしも腫瘍細胞を溶解することなく(例えば、タンパク質の細胞表面ドメインに特異的に結合する標識された抗体を使用して)検出することができる。
バイオマーカーの発現は、転写された核酸又はタンパク質の発現を検出するための多種多様な周知の方法のいずれかによって評価することができる。そのような方法の非限定的な例としては、例えば、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質、又は核タンパク質を検出するための免疫学的方法、タンパク質の精製方法、タンパク質の機能アッセイ又は活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション方法、核酸の逆転写方法及び核酸の増幅方法又は当技術分野で公知の任意の他の方法が挙げられる。
試料から得られた、転写されたポリヌクレオチドの混合物を、バイオマーカー核酸の少なくとも一部分(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500、又はそれ以上のヌクレオチド残基)と相補的又は相同的なポリヌクレオチドを固定した基材と接触させることができる。相補的又は相同的であるポリヌクレオチドを基材上で示差的に検出することが可能である場合(例えば、異なる発色団又はフルオロフォアを使用して検出可能である、又は異なる選択された位置に固定される)、単一の基材(例えば、選択された位置に固定されたポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を使用して複数のバイオマーカーの発現レベルを同時に評価することができる。1つの核酸と別の核酸のハイブリダイゼーションを伴う、バイオマーカーの発現を評価する方法を使用する場合、ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で実施することができる。
本発明の方法において本発明の複数のバイオマーカーを使用する場合、患者試料中の各バイオマーカーの発現レベルを、同じ種類の非がん性試料中の複数のバイオマーカーのそれぞれの発現の正常なレベルと、単一反応混合物において(すなわち、各バイオマーカーに対する異なる蛍光プローブなどの試薬を使用して)、又はバイオマーカーの1又は複数に対応する個々の反応混合物において比較することができる。
正常な(すなわち、非がん性の)ヒト組織におけるバイオマーカーの発現レベルは、種々のやり方で評価することができる。この正常なレベルの発現は、非がん性であると思われる細胞の一部におけるバイオマーカーの発現レベルを評価し、次いで発現の正常なレベルを腫瘍細胞の一部における発現レベルと比較することによって評価することができる。本明細書に記載の方法をルーチン的に実施することによって、さらなる情報が利用可能になるので、バイオマーカーの正常な発現の集団平均値を使用することができる。或いは、バイオマーカーの発現の正常なレベルは、がんを患っていない患者から得た患者試料、患者における疑わしいがんが発症する前に患者から得た患者試料、保管されている患者試料、などにおけるバイオマーカーの発現を評価することによって決定することができる。
生体試料中のバイオマーカータンパク質又は核酸の存在又は非存在を検出するための典型的な方法は、試験対象から生体試料を得るステップと、生体試料をポリペプチド又は核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA、又はcDNA)を検出することができる化合物又は作用剤と接触させるステップとを含む。したがって、この検出方法を使用して、例えば、in vitro並びにin vivoで生体試料中のmRNA、タンパク質、cDNA、又はゲノムDNAを検出することができる。in vitroでmRNAを検出するための技法としては、例えば、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR;例えば、Mullis、1987、米国特許第4,683,202号に記載の実験的な実施形態)、ノーザンハイブリダイゼーション及びin situハイブリダイゼーションが挙げられる。in vitroでバイオマーカータンパク質を検出するための技法としては、これらに限定されないが、酵素連結免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降及び免疫蛍光法が挙げられる。in vitroでゲノムDNAを検出するための技法としては、例えば、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。in vivoでmRNAを検出するための技法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的PCR、ノーザンハイブリダイゼーション及びin situハイブリダイゼーションが挙げられる。さらに、in vivoでバイオマーカータンパク質を検出するための技法としては、タンパク質又はその断片を対象とする標識された抗体を対象に導入することが挙げられる。例えば、抗体は、対象におけるその存在及び場所を、標準の画像化技法によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
そのような診断アッセイ及び予後判定アッセイの一般的な原理は、バイオマーカーを含有する可能性がある試料又は反応混合物及びプローブを適切な条件下で、反応混合物中でバイオマーカーとプローブが相互作用し、結合し、したがって、取り出し、且つ/又は検出することができる複合体を形成することを可能にするために十分な時間調製することを含む。これらのアッセイは、種々の方法を使用して、様々なやり方で行うことができる。
バイオマーカー/プローブ複合体の形成は、構成成分(バイオマーカー又はプローブ)のいずれもさらに操作又は標識することなく、例えば蛍光エネルギー転移(すなわち、FET、例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号;及びStavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号を参照されたい)の技法を利用することによって直接検出することも可能である。
別の実施形態では、バイオマーカーを認識するプローブの能力の決定を、アッセイの構成成分(プローブ又はバイオマーカー)のいずれも標識化せずに、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA;例えば、Sjolander,S.及びUrbaniczky,C.,1991,Anal.Chem.63:2338〜2345及びSzaboら、1995,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699〜705を参照されたい)などの技術を利用することによって実現することができる。本明細書で使用される「BIA」又は「表面プラズモン共鳴」は、生体特異的な相互作用をリアルタイムで、相互作用物のいずれも標識化せずに試験するための技術を指す(例えば、BIAcore)。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)により、表面近くの光の屈折率が変化し(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、それにより、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用することができる検出可能なシグナルがもたらされる。
バイオマーカーの絶対的な発現レベルに基づいて決定する代わりに、決定は、バイオマーカーの正規化された発現レベルに基づいてよい。発現レベルは、バイオマーカーの絶対的な発現レベルについて、その発現をバイオマーカーではない遺伝子、例えば、構成的に発現されているハウスキーピング遺伝子の発現と比較することによって補正することによって正規化する。正規化するために適した遺伝子としては、アクチン遺伝子、又は上皮細胞特異的な遺伝子などのハウスキーピング遺伝子が挙げられる。この正規化により、1つの試料、例えば患者試料と別の試料、例えば非腫瘍試料において、又は種々の供給源の試料間で発現レベルを比較することが可能になる。
或いは、発現レベルは、相対的な発現レベルとしてもたらされうる。バイオマーカー(例えば、VEGF受容体、胎盤細胞増殖因子、Hif−1α及びエンドグリン(CD105))の相対的な発現レベルを決定するために、問題の試料の発現レベルを決定する前に、正常な細胞単離物とがん細胞単離物を対照させて10以上の、20以上の、30以上の、40以上の、又は50以上の試料のバイオマーカーの発現レベルを決定する。より大きな数の試料においてアッセイした遺伝子のそれぞれの発現レベルの平均を決定し、これをバイオマーカーの発現レベルの基線として使用する。次いで、試験試料について決定されたバイオマーカーの発現レベル(発現の絶対的なレベル)をバイオマーカーについて得られた平均発現値で割る。これにより、相対的な発現レベルがもたらされる。
本発明の別の実施形態では、バイオマーカータンパク質を検出する。バイオマーカータンパク質を検出するための本発明の作用剤の1種類は、例えば、検出可能に標識された抗体などの、そのようなタンパク質又はその断片に結合することができる抗体である。抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってよい。インタクトな抗体又はその抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、一本鎖ポリペプチド)を使用することができる。用語「標識された」は、プローブ又は抗体に関しては、検出可能な物質をプローブ又は抗体にカップリングすること(すなわち、物理的に連結すること)によってプローブ又は抗体を直接標識すること、並びに直接標識された別の試薬との反応性によってプローブ又は抗体を間接的に標識することを包含するものとする。間接的に標識することの例としては、蛍光標識された二次抗体を使用して一次抗体を検出すること、及びDNAプローブを、蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができるように、ビオチンで末端標識することが挙げられる。試料が、所与の抗体に結合するタンパク質を含有するかどうかを決定するために様々な形式を使用することができる。そのような形式の例としては、これらに限定されないが、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ウェスタンブロット分析及び酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)が挙げられる。当業者は、腫瘍細胞が本発明のバイオマーカーを発現するかどうかを決定することにおいて使用するために、公知のタンパク質/抗体の検出方法を容易に適応させることができる。バイオマーカーを検出するための2種以上アッセイの組合せ(非限定的な例としては上記のアッセイが挙げられる)を使用して1又は複数のバイオマーカーを評価することもできる。
本明細書では、血管新生阻害剤を用いて治療するためにがん患者を選択する方法も提供される。この方法は、患者に由来するがん試料を準備するステップと、それらの発現が血管新生阻害剤に対する感受性又は耐性と相関している1又は複数の遺伝子の発現を検出するステップと、患者試料において検出される遺伝子(単数又は複数)の発現レベルを、血管新生阻害剤に対する感受性又は耐性と相関している遺伝子(単数又は複数)の発現レベルと比較するステップとを含む。血管新生阻害剤に対する感受性又は耐性と相関している遺伝子の非限定的な例としては、VEGF、VEGF受容体、HIF−1α、胎盤細胞増殖因子受容体及びエンドグリン(CD105)が挙げられる。別の実施形態では、遺伝子(単数又は複数)の発現が、血管新生阻害剤に対する感受性と相関している遺伝子(単数又は複数)の発現と同様である場合に、血管新生阻害剤を投与することが有効であることが予測されているとして患者を選択する。1つの非限定的な実施形態では、対象又は対象のがんを受性又は耐性について試験する血管新生阻害剤は、エンドグリン(CD105)阻害剤(例えば、ヒト化抗エンドグリン抗体)である。別の実施形態では、対象又は対象のがんを感受性又は耐性について試験する血管新生阻害剤は、VEGF受容体阻害剤又はVEGF阻害剤である。
IV.機能アッセイ
抗体及びその抗原結合断片は、当技術分野で公知の方法及び本明細書に記載される方法を含むが、これらに限定されない様々なin vitro及びin vivo方法を使用して様々な機能について試験することが可能である。
CD105シグナル伝達及び機能をアッセイする方法
CD105(エンドグリン)は、増殖している内皮細胞により発現されるTGF−β受容体ファミリーのメンバーであり、内皮細胞増殖には正常レベルのCD105が必要である。CD105発現は、低酸素誘導因子−1−α(HIF−1−α)の産生を通じて細胞低酸素症により増加し、低酸素細胞をアポトーシスから保護する。CD105は、TGF−β受容体(TGF−βR)、アクチビン受容体様キナーゼ(ALK)及びアクチビン受容体を含む、TGF−βスーパーファミリーの複数のキナーゼ受容体複合体のシグナル伝達を調節する働きをする。CD105の非存在下では、TGF−β受容体の活性化によりSMADタンパク質がリン酸化され、内皮細胞増殖を阻害する。しかし、TGF−βによるCD105の活性化によりSMADタンパク質リン酸化は調節される。その最終結果は、内皮細胞に対するTGF−β受容体活性化の増殖阻害効果の放出である。抗CD105抗体によるCD105活性化の防止はTGF−βと相乗的に作用して、内皮細胞増殖を抑制する。TGF−βは、内皮細胞において正反対の効果を有する2つの異なるI型受容体/SMADシグナル伝達経路を刺激することが可能である。TGF−β/ALK5シグナル伝達経路(A)は細胞増殖及び遊走を阻害し、TGF−β/ALK1経路(B)は内皮細胞増殖及び遊走を誘導する。アクセサリーTGF−β受容体であるCD105は、血管新生中に高度に発現されるが、ALK1シグナル伝達には不可欠である。CD105の非存在下では、TGF−β/ALK5シグナル伝達が優勢であり、静止状態の内皮を維持する。高CD105発現はALK1経路を刺激しALK5シグナル伝達を間接的に阻害し、したがって血管新生の活性化状態を促進する。
一非限定的実施形態では、本明細書に提供される抗体及び抗原結合断片は、TGF−β/ALK1シグナル伝達経路をブロックすることにより血管新生をブロックする。別の実施形態では、本明細書に提供される抗体及び抗原結合断片は、Smad1/5/8リン酸化及び/又はシグナル伝達を妨げることにより血管新生をブロックする。CD105は、TGF−β/ALK1のシグナル伝達を通じて血管新生の促進に関与し、TGF−β/ALK1のシグナル伝達は今度はSmad2/3タンパク質のリン酸化の減少及び/又は遮断を伴う。さらに別の実施形態では、本明細書に提供される抗体及び抗原結合断片は、Smad2/3リン酸化及び/又はシグナル伝達を増強することにより血管新生をブロックする。TGF−β/ALK1シグナル伝達経路及び/又はSmad1/5のリン酸化に対する本明細書に提供される抗体及び抗原結合断片のブロッキング又は阻害効果をアッセイする方法及び技法には、公知の分子技法が含まれるが、これらに限定されない。例として、TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路におけるタンパク質のうちのいずれかに特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティングを使用して、TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路に対する本明細書で開示された抗体及び抗原結合断片の阻害及び/又は刺激効果を判定することが可能である。同様に、TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路に関与するタンパク質のmRNAの検出又は前記mRNAの調節を使用して、本明細書で開示された抗体及び抗原結合断片の阻害及び/又は刺激効果をアッセイすることが可能である。TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路の細胞シグナル伝達をアッセイするための追加の方法は当技術分野では公知であり、本明細書で企図されている。
一非限定的実施形態では、前記抗体は、血管新生及び内皮細胞増殖を阻害することに関して評価することが可能である。抗エンドグリン抗体がHUVECに結合しても、それに続くTGF−βのHUVECへの結合が妨げられることはない。したがって、抗エンドグリン抗体による内皮細胞増殖の直接抑制は、抗血管新生及び腫瘍抑制効果がin vivoで観察される根底にある機序の1つを表す。別の実施形態では、前記抗体は、Smad1/5/8リン酸化及び/又はシグナル伝達を妨げることにより血管新生をブロックすることに関して評価することが可能である。CD105は、TGF−β/ALK1のシグナル伝達を通じて血管新生の促進に関与し、TGF−β/ALK1のシグナル伝達は今度はSmad2/3タンパク質のリン酸化の減少及び/又は遮断を伴う。さらに別の実施形態では、前記抗体は、Smad2/3リン酸化及び/又はシグナル伝達を増強することにより血管新生をブロックすることに関して評価することが可能である。
TGF−β/ALK1シグナル伝達経路及び/又はSmad1/5のリン酸化に対する本明細書に提供される抗体のブロッキング又は阻害効果をアッセイする方法及び技法には、公知の分子技法が含まれるが、これらに限定されない。例として、TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路におけるタンパク質のうちのいずれかに特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティングを使用して、TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路に対する本明細書で開示された抗エンドグリン抗体の阻害及び/又は刺激効果を判定することが可能である。同様に、TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路に関与するタンパク質のmRNAの検出又は前記mRNAの調節を使用して、本明細書で開示された抗体の阻害及び/又は刺激効果をアッセイすることが可能である。TGF−β/ALK5又はTGF−β/ALK1経路の細胞シグナル伝達をアッセイするための追加の方法は当技術分野では公知であり、本明細書で企図されている。
本明細書に開示される抗エンドグリン抗体の活性は、例えば、下にさらに詳細に記載されるELISA、競合ELISA、表面プラズモン共鳴及びHUVEC細胞に対する効果などの結合アッセイによる当技術分野で承認されているアッセイを使用して評価することが可能である。
細胞接着をアッセイする方法
細胞接着は、当業者には公知である方法により測定することが可能である。アッセイは、例えば、Lebrinら、J.Clin.Invest1997、99:1390〜1398により既に記載されている。手短に言えば、細胞は被膜されたウェル上の基質(すなわち、ECM成分)に接着させることが可能である。非付着細胞は洗浄することにより取り除かれ、非特異的結合部位は、BSAと一緒にインキュベートすることによりブロックされる。付着した細胞はクリスタルバイオレットを用いて染色され、付着した細胞から溶出したクリスタルバイオレットの光学密度を波長600nmで測定することにより細胞接着は定量される。
細胞遊走をアッセイする方法
細胞遊走のアッセイは、例えば、Brooksら、J.Clin.Invest 1997、99:1390〜1398により文献に既に記載されており、細胞遊走を測定するための方法は当業者には公知である。本明細書に記載される細胞遊走を測定するための一方法では、トランスウェル遊走チャンバーからの膜は基質で被膜され、トランスウェルは洗浄され、非特異的結合部位はBSAでブロックされる。サブコンフルエント培養液由来の腫瘍細胞は収穫され、洗浄され、アッセイ抗体の存在下又は非存在下で遊走緩衝液に再懸濁される。腫瘍細胞を被膜されたトランスウェル膜の下面に遊走させた後、膜の天面上に残っている細胞を取り除き、下面に遊走する細胞はクリスタルバイオレットを用いて染色する。次に、細胞遊走は、顕微鏡視野あたりの直接細胞計数により定量される。
SCID/ヌードマウス
腫瘍増殖をアッセイするための一方法は以下の通りにSCIDマウスを使用する。サブコンフルエントヒトM21メラノーマ細胞は収穫され、洗浄され、無菌PBS中に再懸濁される(mLあたり20×106)。SCIDマウスは100μLのM21ヒトメラノーマ細胞(2×106)懸濁液を皮下に注射される。腫瘍細胞注射の3日後、マウスは未処置のまま又は1若しくは複数の対照若しくは試験組成物を静脈内に若しくは腹腔内に(例えば、100μg/マウス)処置される。前記マウスは24日間毎日処置される。腫瘍サイズはキャリパーを用いて測定され、体積は式V=(L×W2)/2(Vはその体積に等しく、Lはその長さに等しく、Wはその幅に等しい)を使用して推定される。
腫瘍増殖をアッセイするための一方法は以下の通りにヌードマウスを使用する。50μl PBS中のMDA−MB−435腫瘍細胞(0.4×106細胞/マウス)は、メスヌードマウス(生後5〜6週間)の乳房脂肪体に同所性に移植される。腫瘍が約50〜80mm3の平均体積に到達すると、マウスはランダム化され(少なくとも10/群)、用量あたり1μg(0.05mg/kg)、10μg(0.5mg/kg)、100μg(5mg/kg)若しくは200μg(10mg/kg)の1若しくは複数の抗体、又は100μlのPBS若しくは溶媒PBS100μl中100μg対照抗体を用いた週あたり2回の静脈内又は腹腔内処置が開始され、一部の研究では、未処置群も評価することが可能である。腫瘍サイズはキャリパーを用いて測定され、体積は式V=(L×W2)/2(Vはその体積に等しく、Lはその長さに等しく、Wはその幅に等しい)を使用して推定される。
BALB/c同系マウスモデル
代わりに、BALB/c同系マウスモデルを利用して、腫瘍増殖及び本明細書に記載される抗体による又は、例えば、Tsujieら、Int.J.Oncology、29:1087〜1094(2006)により例証される抗体によるその阻害を評価することも可能である。
キメラマウス
別のアッセイはキメラマウス、すなわちヒトマウスモデルにおいて血管新生を測定し、キメラマウスアッセイと呼ばれる。腫瘍組織の血管新生、新血管形成及び後退を測定するアッセイは他の者により詳細に記載されており、本明細書でさらに記載されている。Yanら、(1993)J.Clin.Invest、91:986〜996を参照されたい。
キメラマウスアッセイはin vivo血管新生のための有用なアッセイモデルである。なぜならば、移植された皮膚移植片は組織学的に正常なヒト皮膚によく似ており、全組織の新血管形成は実際のヒト血管が移植されたヒト皮膚の表面で移植されたヒト皮膚からヒト腫瘍組織中に成長しているところで起きているからである。ヒト移植片への新血管形成の起源は、ヒト特異的内皮細胞マーカーを用いて新血管形成を免疫組織学化学的に染色することにより示すことが可能である。
キメラマウスアッセイは、新しい血管成長の量と後退の程度の両方に基づいて新血管形成の後退を示す。さらに、腫瘍組織などの移植された皮膚上に移植された任意の組織の増殖に対する効果をモニターするのは容易である。最後に、前記アッセイシステムには毒性についての内部標準が存在するので前記アッセイは有用である。キメラマウスは任意の試薬に曝露され、したがって、マウスの健康が毒性の指標になる。本明細書に記載され当技術分野で公知の他の動物モデルも本明細書に記載される方法において利用することが可能である。
ウサギの眼アッセイ
血管新生のもう1つの尺度は、in vivoウサギの眼モデルであり、ウサギの眼アッセイと呼ばれる。ウサギの眼アッセイは他の者により詳細に記載されており、D’Amatoら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91(9):4082〜4085により例示されているように、血管新生阻害剤の存在下で血管新生と新血管形成の両方を測定するのに使用されてきた。
ウサギの眼アッセイは、in vivo血管新生の承認されたアッセイモデルである。なぜならば、新血管形成プロセスは、角膜の縁から角膜内へのウサギ血管の成長により例証されるが、目の天然では透明な角膜を通じて容易に可視化されるからである。さらに、新血管形成の刺激若しくは阻害の程度も量も又は新血管形成の後退の程度も量も、長い時間をかけて容易にモニターすることが可能である。
最後に、ウサギは任意の試薬に曝露され、したがって、ウサギの健康は前記試薬の毒性の指標となる。
手短に言えば、ニワトリ漿尿膜(CAM)アッセイが実施され、1若しくは複数の対照又は試験化合物を含有する0.5%カルボキシルメチルセルロースペレットの移植後48時間で発生中の脈管構造に対する効果が記録される。角膜新血管形成は、スクラルファート(ショ糖硫酸アルミニウム;Bukh Meditec、Copenhagen)に結合している650ngの強力な血管新生タンパク質塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含有するポリ(ヒドロキシエチルメタクリル酸)(Hydron;Interferon Sciences、New Brunswick、NJ)の移植されたペレットにより誘導される。前記ペレットにスクラルファートを添加すると、bFGFを分解から保護しその徐放を提供し、したがって、bFGF/Hydron単独により誘導される血管新生よりも明白である一貫した活動的な血管新生を生じる。スクラルファート/Hydronを含有するペレットからのbFGFの放出は、Hydron単独を用いたペレットのわずか1日と比べて、ペレットが形成された後の最大4日間in vitroで検出することが可能である。ペレットは、12μgの組換えbFGF(Takeda、Osaka)を含有する110μlの生理食塩水を40mgのスクラルファートと混合することにより作製され;この懸濁液はエタノール中12%(wt/vol)Hydronの80μlに添加される。次に、この混合液のアリコット(10μl)をピペットでTeflonペッグ上に移し、乾燥させて約17のペレットを作製する。
ペレットは、麻酔をかけられたメスニュージーランドホワイトウサギの各眼の縁から2mmの角膜マイクロポケットに移植され、続いて角膜の表面にエリスロマイシン軟膏を単回局所投与する。連日の組織学的検査により、ペレットに向かう角膜への進行的な血管成長が示され、炎症細胞が見られるのはごくまれである。この血管新生応答は、全身照射を用いた重度の免疫抑制によって変わることはなく、スクラルファート単独を用いたペレットは血管新生を誘導しない。新しい血管は、炎症によってではなくむしろ主にbFGFにより誘導される。前記動物は、0.5%カルボキシメチルセルロースに懸濁された1若しくは複数の化合物又は溶媒単独を用いた胃洗浄による移植の2日後から毎日餌を与えられる。免疫抑制された動物は、前記ペレットの移植直前6分間6Gyの全身照射を受ける。この放射線量により、著しい白血球減少が生じ、白血球数は2日までに>80%減少、3日目までに>90%減少し、これは以前の報告と一致する結果であった。
動物は、同一の角膜専門家(M.S.L.)により一日おきにマスクされた形で細隙灯を用いて検査される。角膜新血管形成の面積は、縁からの血管長(L)及び関与する縁の実働時間数(C)を、レチクルを用いて測定することにより決定される。式:C/12×3.1416[r2−(r−L)2](r=6mm、ウサギ角膜の測定された半径)を使用して円形帯の部分の面積を決定する。前記ペレットに隣接する新血管形成の均一な連続帯が測定され、したがって、新血管形成の全阻害を評価することが可能になる。
マウスマトリゲルプラグ血管新生アッセイ
血管新生に対する組成物の効果を確認するためには、マウスマトリゲルプラグ血管新生アッセイを使用することが可能である。様々な増殖因子(例えば、IGF−1、bFGF又はVEGF)(250ng)及びヘパリン(0.0025ユニットper/mL)を既に記載されている増殖因子減少マトリゲルと混ぜ合わせる(Montesanoら、J.Cell Biol.1983、97:1648〜1652;Stefanssonら、J.Biol.Chem.2000、276:8135〜8141)。本明細書に記載される組成物又は対照抗体は、1又は複数の動物用量群を利用するマトリゲル調製物に含めることが可能である。対照実験では、マトリゲルは増殖因子の非存在下で調製される。マウスは、0.5mLのマトリゲル調製物を皮下に注射され、1週間インキュベートさせる。インキュベーション期間に続いて、前記マウスは屠殺され重合したマトリゲルプラグは外科的に取り除かれる。マトリゲルプラグ内の血管新生は、免疫組織化学的解析及びヘモグロビン含量を含む2つの確立した方法により定量される(Furstenbergerら、Lancet.2002、3:298〜302;Volpertら、Cancer Cell 2002、2(6):473〜83;及びSuら、Cancer Res.2003、63:3585〜3592)。免疫組織化学的解析では、マトリゲルプラグはOCTに包埋され、スナップ凍結され、4μm切片が調製される。凍結切片はメタノール/アセトン(1対1)中で固定される。凍結切片は、CD31に向けられたポリクローナル抗体で染色される。血管新生は、20高出力(200×)顕微鏡視野内の微小血管密度計数により定量される。
ヘモグロビン含量は既に記載されている通りに定量することが可能である(Schnaperら、J.Cell Physiol.1993、256:235〜246;Montesanoら、J.Cell Biol.1983、97:1648〜1652;Stefanssonら、J.Biol.Chem.2000、276:8135〜8141;及びGigliら、J.Immunol.1986、100:1154〜1164)。マトリゲル移植片はドライアイス上でスナップ凍結され、一晩凍結乾燥される。乾燥移植片は0.4mLの1.0%サポニン(Calbiochem)に1時間再懸濁され、勢いよくピペッティングすることにより破壊される。前記調製物は14,000×gで15分間遠心分離されて、いかなる微粒子も取り除かれる。次に上清中のヘモグロビンの濃度は、405nmで吸光度を測定することにより直接決定され、精製されたヘモグロビンの標準濃度と比較される。
腫瘍増殖をアッセイする方法
腫瘍増殖は、当業者に公知である方法、例えば、SCIDマウスモデル、ヌードマウスモデル及び同系腫瘍を有するBALB/cマウスによりアッセイすることが可能である。腫瘍増殖のSCIDマウスモデルは以下の通りに実施される。サブコンフルエントヒトM21メラノーマ細胞(又は任意の所望の腫瘍細胞型)は収穫され、洗浄され、無菌PBSに再懸濁される(mLあたり20×106)。SCIDマウスは100μLのM21ヒトメラノーマ細胞(2×106)懸濁液を皮下に注射される。腫瘍細胞注入の3日後、マウスは未処置のまま又はアンタゴニストを所望の用量範囲で腹腔内に処置される。前記マウスは24日間毎日処置される。腫瘍サイズはキャリパーを用いて測定され、体積は式V=(L×W2)/2(Vはその体積に等しく、Lはその長さに等しく、Wはその幅に等しい)を使用して推定される。
代わりに、ヌードマウスモデル、SCIDマウスモデル及び/又はBALB/c同系マウスモデルを利用して、腫瘍増殖及び本明細書に記載されるヒト化抗エンドグリン抗体による又は抗原結合断片よるその阻害を評価することも可能である(Tsujieら、Int.J.Oncology、29:1087〜1094(2006))。
細胞増殖をアッセイする方法
細胞増殖は当業者に公知である方法によりアッセイすることが可能である。本明細書に記載されるように、サブコンフルエントヒト内皮細胞(HUVEC)は、ECV又はECVL細胞由来のCM(25μL)の存在又は非存在下で低(5.0%)血清を含有する増殖緩衝液に再懸濁し、内皮細胞を24時間増殖させることが可能である。増殖は、市販のWST−1アッセイキット(Chemicon)を使用してミトコンドリアデハイドロゲナーゼ活性を測定することにより定量することが可能である。本明細書に記載されるように、増殖は、標準法を使用して3H取込みを測定することにより定量することも可能である(Sheら、J.Cancer、108:251〜257(2004))。
細胞増殖を評価する他の方法は当技術分野では公知であり、本明細書で企図されている。追加の非限定的例は実施例においてさらに詳細に記載されている。
CDC、ADCC及びオプソニン化を誘導する方法
様々な療法が、形質転換された細胞に対する身体の自然免疫応答を増強することに向けられてきた。従来のエフェクター法には、補体依存性細胞溶解(「CDC」)、抗体依存性細胞傷害(「ADCC」)及び食作用(標的細胞に免疫グロブリンが被膜された後の細網内皮系による排除)が含まれる。抗体の存在下では、抗体のFc領域に対する表面結合受容体を有するリンパ球細胞などのある種のエフェクター細胞が、標的細胞に対して抗体依存性細胞傷害(「ADCC」)反応を媒介することは公知である。ADCCによって、これらのエフェクター細胞は、そのような標的細胞に対して細胞溶解活性を発揮する。
in vitroでは2種類のADCC反応が実証されている。古典的ADCC反応では、エフェクター細胞は抗体被膜標的細胞に付着し、続いて標的細胞の細胞溶解を引き起こす(A.H.Greenbergら、「抗体被膜標的細胞に対して細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞の特徴(Characteristics Of The Effector Cells Mediating Cytotoxicity Against Antibody−Coated Target Cells)」I.、Immunology、21、p.719(1975))。エフェクターと標的細胞間のこの付着は、標的細胞を被膜する抗体のFc領域とエフェクター細胞のFc受容体の相互作用から生じる。この種類のADCC反応の1つの不利な点は、この反応が、エフェクター細胞のFc受容体を巡って標的細胞結合抗体と競合する様々な疾患を伴うことが多い循環する抗原抗体複合体により妨げられうることである(I.C.M.MacLennan、「細胞傷害性リンパ球上での免疫グロブリンの受容体を巡る競合(Competition For Receptors For Immunoglobulin On Cytotoxic Lymphocytes)」、Clin.Exp.Immunol.、10、p.275(1972))。古典的ADCCのこのような欠点のせいで、第二の種類のADCC反応、すなわち、抗体指向ADCCが提唱されてきた。抗体指向ADCCでは、標的特異的抗体は先ずエフェクター細胞に付着し、次に得られた複合体が、前記抗体を介して、標的細胞表面上のその特異的抗原に「向けられる」。有利には、抗体指向ADCCは、宿主系において循環している抗原抗体複合体の存在により影響されない可能性がある。Fc領域/Fc受容体付着を介した抗体とエフェクター細胞の相互作用は、通常は弱い。さらに、一部の例では、抗体は、標的細胞の溶解を許すのに十分な期間エフェクター細胞に会合したままではいない。この潜在的な問題を考慮して、抗体は、ポリエチレングリコール及びフタル酸油の混合物を用いた前処理を使用してエフェクター細胞に付着されてきた(J.F.Jones and D.M.Segal、「抗体被膜エフェクターを用いた抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC):抗体結合及び細胞溶解を増強するための新しい方法(Antibody−Dependent Cell Mediated Cytolysis(ADCC) With Antibody−Coated Effectors:New Methods For Enhancing Antibody Binding And Cytolysis)」、J.Immunol.、125、pp.926〜33(1980))。しかし、in vivo治療のためのこの方法の適用性は、抗体エフェクター細胞複合体上のいかなるポリエチレングリコール及びフタル酸油残渣でも身体に対して及ぼしうるその毒性効果により減少する可能性がある。
代わりに、細胞傷害性薬物を用いたアジュバンド化学療法により抗体指向ADCCを増強するための方法が提唱されてきた(I.R.Mackayら、「乳がんにおけるメルファランを含むアジュバンド細胞傷害性化学療法のナチュラルキラー及び抗体依存性細胞傷害に対する効果(Effect On Natural Killer and Antibody−Dependent Cellular Cytotoxicity Of Adjuvant Cytotoxic Chemotherapy Including Melphalan In Breast Cance)」、Cancer Immunol.Immunother.、16、pp.98〜100(1983))。ADCCについて試験するためのアッセイは、例えば、米国特許第5,756,097号など、当技術分野では周知である。
したがって、本発明は、新血管形成又は血管新生において役割を有する細胞に結合することができる抗体で、前記細胞の食作用及び死滅を増強しそれによってin vivoで保護を増強することができる抗体(例えば、ヒト化抗エンドグリン抗体)を提供する。そのような抗体が結合することができ同じ効果を有する結合部位又はエピトープと免疫反応する、すなわち、特異的に結合する又は優先的に結合する他の抗体及びその機能的断片も提供される。
本発明の抗体は、新血管形成又は血管新生において役割を有する細胞(例えば、内皮細胞)に対してオプソニンである又はオプソニン活性を示すことも可能である。当業者であれば認識しているように、「オプソニン活性」とは、抗原又は細胞受容体に結合して、食細胞への前記抗原又は細胞受容体の付着を促進しそれによって食作用を増強するオプソニン(一般に、抗体又は血清因子C3bのどちらか)の能力のことである。ある種の細胞は、オプソニン抗体で被膜されると好中球及びマクロファージなどの食細胞にとり極めて誘引性になり、血流からのその排除速度は著しく増強される。オプソニン活性は、例えば、米国特許第6,610,293号に記載されているいかなる従来の方法でも測定しうる。
別の非限定的実施形態では、新血管障害又は血管新生依存性障害を有する患者は、血管新生から抗原/ペプチド(例えば、エンドグリン)を流す。これらの抗原/ペプチドは「腫瘍関連抗原」でありうる。そのような患者は、抗原/ペプチド(例えば、エンドグリン)に対する抗体を全身投与されることが可能であり、CDC、ADCC、オプソニン化又は細胞媒介死滅の他の任意の形態を誘導するために本明細書に記載される経路のうちのいずれでも開始することが可能である。
V.パッケージ及びキット
さらに追加の実施形態では、本出願は、上記の化合物を用いる使用のためのキットに関する。エンドグリンに結合するヒト化抗体又は抗原結合断片をキットで提供することが可能である。したがって、前記キットは、適切な容器手段で、エンドグリンに結合する抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を含むことになる。前記キットは、適切な容器手段でエンドグリンに結合する抗体又はその抗原結合断片を含みうる。
前記キットの容器手段は、少なくとも1つのポリペプチドを入れる、及び/又は好ましくは適切にアリコットすることが可能な少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ビン、注射器及び/又は他の容器手段を一般に含むことになる。前記キットは、少なくとも1つの融合タンパク質、検出可能成分、レポーター分子及び/又は市販用に密封された他の任意の試薬容器を含有するための手段を含むことが可能である。そのような容器は、注射及び/又は所望のバイアルが保持されるブロー成形プラスチック容器を含みうる。キットは、前記キット中の材料の使用のための印刷物も含むことが可能である。
パッケージ及びキットは、さらに緩衝剤、保存剤及び/又は安定化剤を医薬製剤中に含むことが可能である。前記キットの各成分は個々の容器内に封入されることが可能であり、様々な容器のすべてが単一パッケージ内に存在することが可能である。発明キットは冷温貯蔵又は室温貯蔵用に設計することが可能である。
さらに、前記調製物はキットの有効期間を増加させ、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む安定化剤を含有することが可能である。組成物が凍結乾燥される場合は、キットは凍結乾燥調製物を再構成するための溶液の調製物をさらに含有することが可能である。許容可能な再構成溶液は当技術分野では周知であり、例えば、薬学的に許容されるリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。
さらに、本明細書に提供されるパッケージ又はキットは、例えば、1若しくは複数のレポーター分子及び/又は1若しくは複数の検出可能成分/作用物質などの本明細書に提供されるその他の成分のいずれでもさらに含むことが可能である。
パッケージ及びキットは、例えば、ELISAアッセイなどのアッセイのための1又は複数の成分をさらに含むことが可能である。本出願において試験される試料には、例えば、血液、血漿及び組織切片並びに分泌物、尿、リンパ液及びその生成物が含まれる。パッケージ及びキットは、試料を収集するための1又は複数の成分(例えば、注射器、カップ、スワブ等)をさらに含むことが可能である。
パッケージ及びキットは、例えば、製品説明、投与様式及び/又は治療の指示を明記するラベルをさらに含むことが可能である。本明細書に提供されるパッケージは、本明細書に記載される組成物のうちのいずれでも含むことが可能である。前記パッケージは、血管新生/新血管形成により特徴付けられる眼疾患(例えば、黄斑変性、CNV、糖尿病性網膜症)、糖尿病性腎障害、慢性炎症性疾患(例えば、IBD)、関節リウマチ、変形性関節症、がんの一種及びがん転移を治療するためのラベルをさらに含むことが可能である。
用語「包装材料」とは、キットの成分を収納する物理的構造体のことである。包装材料は成分を無菌で維持することが可能であり、そのような目的に一般に使用されている材料(例えば、紙、段ボール線維、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル等)で作製することが可能である。ラベル又は添付文書は適切に書かれた使用説明書を含むことが可能である。したがって、キットは、本発明のいかなる方法においてもキット成分を使用するためのラベル又は使用説明書をさらに含むことが可能である。キットは、パックされた又はディスペンサー内の化合物を、本明細書に記載される方法で前記化合物を投与するための使用説明書と一緒に含むことが可能である。
本発明は、本明細書に記載される診断法及びアッセイを利用するキットをさらに提供する。いくつかの実施形態では、本発明に従ったキットは、その発現レベルが患者由来のがん細胞の試料中の血管新生阻害剤に対する感受性又は耐性と相関していた遺伝子(単数又は複数)を検出するために試薬を含む。いくつかの実施形態では、前記遺伝子(単数又は複数)は、VEGF、VEGF受容体、HIF−1α、胎盤細胞増殖因子受容体及びCD105から選択される。いくつかの実施形態では、前記キットはVEGFを含む。いくつかの実施形態では、前記キットはVEGF受容体を含む。いくつかの実施形態では、前記キットはHIF−1αを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは胎盤細胞増殖因子受容体を含む。いくつかの実施形態では、前記キットはCD105を含む。いくつかの実施形態では、前記キットはVEGF、VEGF受容体、HIF−1α、胎盤細胞増殖因子受容体及びCD105のうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、血管新生阻害剤に対する感受性と相関していた少なくとも2つの遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、血管新生阻害剤に対する耐性と相関していた少なくとも2つの遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、血管新生阻害剤に対する感受性と相関していた少なくとも1つの遺伝子及び血管新生阻害剤に対する耐性と相関していた1つの遺伝子を含む。
さらに追加の実施形態では、本発明に従ったキットは、治療される患者由来の腫瘍細胞の試料中においてVEGF、VEGF受容体、HIF−1α、胎盤細胞増殖因子受容体及びCD105発現レベルを検出するための試薬、並びに本明細書に記載されるヒト化抗エンドグリン抗体又は抗原結合断片を含むがこれらに限定されない阻害剤の用量(単数又は複数)を、カプセル、カプレット、ジェルカップ、懸濁用の粉末等などの種々の剤形で含む。治療される患者由来の腫瘍細胞の試料中においてVEGF、VEGF受容体、HIF−1α、胎盤細胞増殖因子受容体及びCD105発現レベルを検出するための試薬を含むキットは、少なくとも1つの追加の血管新生阻害剤の同時投与のためのキットの前述の実施形態のうちのいずれかをさらに含むことになることは本発明内においてさらに企図されている。
使用説明書は、治療法を含む本明細書に記載される方法のうちのいずれかを実行するための指示書を含むことが可能である。使用説明書は、十分な臨床エンドポイント又は起こりうるどんな有害な症状も又はヒト対象に使用するための食品医薬品局などの規制当局により要求される追加の情報の表示をさらに含むことが可能である。
前記使用説明書は、「印刷物」上、例えば、キット内の若しくはキットに添付された紙若しくは厚紙上に、或いはキット若しくは包装材料に添付された、又はキットの成分を含有するバイアル若しくはチューブに貼り付けられたラベル上にあってもよい。使用説明書は、ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク又はハードディスク)、CD−若しくはDVD−ROM/RAMなどの光学CD、磁気テープ、RAM及びROMなどの電気記憶媒体、ICチップ並びに磁気/光学記憶媒体などのこれらのハイブリッドなどのコンピュータ読み取り可能媒体上にさらに含まれていてもよい。
本出願の化合物及び方法の実施形態は、説明的であることを目的とし限定するものではない。当業者であれば、上記教唆、特に記載された改変物を取り囲むエンドグリンに結合する抗体又は抗原結合断片の改変に関連する可能性がある教唆に照らして、エンドグリンの結合に関して天然に近い機能性を維持しつつ改変及び変動を加えることができる。したがって、記載されていることの範囲内にある開示された特定の実施形態において変化を加えうることは理解されるべきである。
本出願は以下の非限定的実施例を参照することによりさらによく理解されうるものであり、これら実施例は本出願の例となる実施形態として提供されている。以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに完全に説明するために提供されるものであるが、決して本出願の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本出願のある種の実施形態が本明細書に示され記載されてきたが、そのような実施形態は例としてのみ提供されることは明白である。本発明から逸脱することなく当業者は数多くの変動、変化及び置換物を思い付くことがある。本明細書に記載される実施形態の様々な代替物を本明細書に記載される方法を実行する際に用いうることは理解されるべきである。
(例1)
抗CD105ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗体の作製及び結合
抗体の構築、発現及び精製
変性され、ライゲートされ、PCR増幅されて完全長合成V領域を与える一連の重複オリゴヌクレオチドを使用して、ヒト化及びヒト化/脱免疫化VH及びVK領域遺伝子はすべて合成された。次に、組み立てられたバリアントは、IgG1重鎖及びカッパ軽鎖のためのAntitope社製pANT発現ベクターシステムに直接クローニングされた。
ヒト化重及び軽鎖の組合せ(すなわち、計4対合)並びにヒト化/脱免疫化重及び軽鎖の組合せ(すなわち、計24対合)すべてが、エレクトロポレーションを介してNS0細胞に安定的にトランスフェクトされ、200nMメトトレキサート(Sigma、カタログ番号M8407)を使用して選択された。構築物ごとのメトトレキサート耐性コロニーは、IgG1 ELISAを使用してIgG発現レベルについて試験された。最もよく発現している系統が選択され、液体窒素下で凍結された。成功したトランスフェクション及びクローン選択はすべてのバリアントについて達成され、飽和静置培養物中のヒト化及びヒト化/脱免疫化抗体バリアントの発現レベルは表1に示されている。
したがって、24のIgG1バリアントは、プロテインAセファロースカラム(GE Healthcare、カタログ番号110034−93)上でNS0細胞培養上清から精製され、予想されるアミノ酸配列に基づいて、消衰係数、Ec(0.1%)=1.62を使用してOD280nmにより定量された。約500μgの各抗体バリアントが精製され、主なバリアントは還元SDS−PAGEにより解析された。手短に言えば、クーマシーブルーが主な抗体バリアントの還元SDS−PAGEゲルを染色した。1μgの各試料はNuPage 4〜12%Bis−Trisゲル(Invitrogen、カタログ番号NP0322BOX)上に充填され200Vで30分間流された。マーカーはBio−Rad Precision Plus(カタログ番号161−073)であった。予想されるサイズの重及び軽鎖に対応するバンドが観察され、どのレーンでもどんな汚染の証拠もなかった(データは示されていない)。
ELISA法
ELISAを使用して、ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体のエンドグリンへの結合をアッセイした。手短に言えば、ELISAは、以下のステップに従って実施された。
1.Nunc MaxisorpプレートをPBS中1500ng/mlのMAB9811−01(ポリクローナル抗エンドグリン抗体)を用いて100μl/ウェルで被膜する。プレートをシール材で覆い、4℃で一晩(16〜24時間)インキュベートする。
2.プレートを200μlのPBS(Tweenなし)で2回洗浄する。
3.200μl/ウェルのBSAブロッキング溶液(1%BSA)を添加し、室温で60分間インキュベートする。
4.BioTekプレートウォッシャーを使用してTween(PBS−T)を含有するPBSを用いてプレートを3回洗浄する。
5.0.1%BSAを有するPBS−T中100ng/mlのCD105(R&D Systems、カタログ番号1097−EN)を100μl/ウェルで添加し、室温で60分インキュベートする。
6.BioTekプレートウォッシャーを使用してPBS−Tを用いてプレートを3回洗浄する。
7.試験ウェルでは、20、10、4、2、1、0.5及び0.2ng/ml(0.1%BSAを有するPBS−T中に希釈される)の抗エンドグリン抗体を100μl/ウェルで添加し、室温で60分インキュベートする。陰性対照ウェルでは、アイソタイプ適合対照抗体を100μl/ウェルで添加する。
8.BioTekプレートウォッシャーを使用してPBS−Tを用いてプレートを3回洗浄する。
9.0.1%BSAを有するPBS−T中1対10000に希釈されたHRP(Jackson Immunoresearch)にコンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgGを100μl/ウェルですべてのウェルに添加し、室温で30〜60分インキュベートする。
10.BioTekプレートウォッシャーを使用してPBS−Tを用いてプレートを5回洗浄する。
11.TMB基質溶液の100μl/ウェルを添加し、暗所で15分間覆いなしでインキュベートする。
12.TMB停止溶液の100μl/ウェルを添加することにより反応を停止する。
試料は3通り流され、光学密度を読み取って標準曲線を構築し結合定数を決定する。統計的解析は、スチューデントt−検定又は他の標準検定を使用して行われる。
競合ELISA
抗体は、競合ELISAにおいてビオチン化キメラ抗CD105に対するCD105への結合について試験された。手短に言えば、キメラ抗CD105は、製造業者の使用説明書に従ってマイクロビオチン化キット(Sigma、カタログ番号BTAG−1KT)を使用してビオチン化された。Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底マイクロタイタープレートは、リン酸緩衝食塩水(PBS)中1.5μg/mLのマウス抗ヒトCD105(Southern Biotechnologies、カタログ番号9811−01)を用いて4℃で一晩被膜された。次の日、PBS/2%BSA中100ng/mlヒトCD105(R&D Systems、カタログ番号1097−EN)は、前被膜されたプレートに添加され、室温で1時間インキュベートされた。変化する濃度のキメラ、ヒト化又はヒト化/脱免疫化抗CD105抗体のいずれか(3倍希釈液中4μg/mLから0.0018μg/mL)は、固定された濃度のビオチン化キメラ抗CD105抗体(6.25ng/ml)と混合され、プレートに添加された。ビオチン化キメラ抗体の結合は、ストレプトアビジンHRP(Sigma、カタログ番号S5512)及びTMB基質(Sigma、カタログ番号T0440)を介して検出された。OD450nm値は、Dyner MRX TCIIプレート読取り機上で測定された。競合解析の結果は図7及び8に図示されている。曲線は、対数試料濃度に対するそれぞれの吸光度プロットの直線部分を通してフィットされ、前記直線の方程式を使用して、ビオチン化キメラ抗体のCD105への結合を50%阻害するのに必要なヒト化又はヒト化/脱免疫化抗体の濃度(IC50)を計算した。実験内及び実験間の比較を可能にするために、ヒト化又はヒト化/脱免疫化バリアントのIC50値は、倍差の値を与えるために各プレート上に含まれた基準抗体に対して正規化された。IC50値はキメラ抗CD105に相対的であり3つの実験を代表している。要約ELISAデータは表1に示されており、飽和静置培養においてアッセイされた抗体発現レベル(μg/ml)を含む。
(例2)
ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体結合のBIAcore(表面プラズモン共鳴:SPR)解析
抗体のアフィニティーは、例えば、標準プロトコールを使用するBIAcore解析を使用して評価することが可能である。手短に言えば、プロテインAはBIAcore CM5チップに化学的にカップリングされ、約2000RUに対応する量のプロテインAが固定化される。その後のステップは、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%TWEEN、pH=7.4のランニング緩衝液において25℃で10Hzデータ収集速度を使用して実施される。抗エンドグリン抗体(10nM)は、BIAcoreチップ上の固定化されたプロテインAにより10μL/分の流速で捕捉され、典型的には、20、40及び80秒の捕捉時間で、それぞれ130RU、330RU及び570RUに相当する抗体密度の捕捉が可能になる。起動サイクルは、流速40μL/分、接触時間90秒及び解離時間90秒でランニング緩衝液を使用して実施される。試料サイクルは、0から40nMの範囲の濃度で組換えエンドグリンを使用して実施される。エンドグリンは、流速40μL/分、接触時間525秒及び解離時間2500秒で捕捉された抗体を含有するBIAcoreチップ全体を通される。8試料サイクルは、典型的には各抗体捕捉密度で実施される。前記チップの再生は、10mMグリシン pH=1.7を使用して実現される。データ解析は、BIAcore T100評価ソフトウェアv1.1を使用して実施される。捕捉抗体密度が異なるBIAcoreチップを使用して生じるシグナルは比較され、組換えエンドグリン非存在下で生じるデータを使用してアッセイ内ブランクシグナルについて調整する。データのフィッティングでは、R
maxは、各サイクルにおける各抗体の捕捉レベルの変動を説明するために浮遊させる。各捕捉密度からのデータは、各抗体の解析中に同時にフィットさせる。BIAcoreデータは、K
a(1/Ms)、K
d(1/s)、K
D(M)及びChi
2(RU
2)を含むキメラ、ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体について表2に示されている。
(例3)
エンドグリン発現細胞上の利用可能なエピトープの抗体結合活性及び数
エンドグリン発現細胞上の利用可能なエピトープの抗体結合活性及び数は、標準プロトコールを使用するScatchardプロット解析を利用して評価することが可能である。
手短に言えば、放射性標識されたヒト化抗エンドグリン抗体の、エンドグリン発現KM−3白血病細胞及びサブコンフルエント増殖HUVECへの直接結合のScatchardプロット解析が実施される。精製された抗エンドグリン抗体は、Iodo−Genを使用し当業者には公知の標準法に従って125Iで個々に放射標識される。放射標識されたヒト化抗エンドグリン抗体は、IgG分子あたりのヨウ素原子の平均数についてアッセイされる。一定量(0.1μg)の各125I標識mAb及びエンドグリン発現HUVEC細胞の2倍連続増加を使用して滴定実験は実施されて、抗原結合活性を決定する。結合データのScatchardプロットの解析は、公知の方法に従って実施される。mAb結合細胞の平衡定数及び平均最大数はこの解析により推定される。
(例4)
抗エンドグリン抗体活性のウェスタンブロットアッセイ
CD105を発現する増殖している内皮細胞において細胞内シグナル伝達を改変するヒト化抗エンドグリン抗体の能力は、CD105シグナル伝達経路に関与しているタンパク質のリン酸化を検出するウェスタンブロットを介してアッセイすることが可能である。
非トランスフェクト内皮細胞における公知のウェスタンブロッティング法に従って、リン酸化されたSmad1/5/8又はSmad2/3を同定するウェスタンブロット解析が実施される。リン酸化されたSmad1、Smad2、Smad5、Idl(Santa Cruz)及びエンドグリンに対する一次抗体を利用して試料中の分子を検出する。検出は増強された化学発光(ECL)により実施される。
(例5)
HUVEC増殖の阻害及び3Hチミジン取込みアッセイ
細胞増殖の阻害を評価するためにはいくつかのアッセイが利用可能である。
一例では、HUVEC細胞系E6/E7 P3−17が、5%ウシ胎児血清を含有するサプリメントを有するEBM2培地(Lonza−Clonetics)において培養された。細胞は、サブコンフルエント条件下、CO
2インキュベーター中37℃、75cm
2フラスコ(Falcon、Becton−Dickinson、Franklin Lakes、NJ)内で培養された。細胞は、25mM HEPES緩衝液中15mM EDTA、pH=7.3を有するハンクス平衡塩類溶液と一緒に、37℃で15分間インキュベートすることにより剥離される。氷冷PBSで2回洗浄後、細胞は、内皮細胞増殖培養液に濃度25,000細胞/mLで再懸濁される。追加実験では、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)はFBS及びウシ脳抽出物のない内皮細胞増殖培養液に懸濁され培養される。2,500細胞を含有する細胞懸濁液の200μlアリコットは、96ウェル培養プレートの各ウェルに播種される。細胞はCO
2インキュベーター中37℃で一晩培養され、その後100μg/mLのヒト化抗エンドグリン抗体VK1AAVH1A2又は対照IgG又はPBSが3通りに添加される。培養プレートはインキュベーター中に72時間置かれ、その間新鮮な培養液及びヒト化抗エンドグリン抗体、対照IgG又はPBSは24時間ごとに取り換えられる。
3Hチミジン(1μCi)は各ウェルに添加され、プレートは20時間インキュベートされる。細胞はPBSで洗浄され、続いて37℃で15分間、100μl/ウェルトリプシン−EDTA(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA)を用いて処置される。細胞は、Harvester96(TOMTEC、Hamden、CT)を使用してガラス繊維フィルター(Wallac Printed FiltermatA)上に収穫され、
3H放射活性は、Trilux1540MicroBeta液体シンチレーション及び発光カウンター(Wallac、Turku、Finland)において決定される。第二の例では、使用された細胞は、HUVEC細胞の初代培養物、HUVEC2517Cであり、ヒト化TRC105抗体は、抗体対照及びPBSと比べて、HUVEC細胞系E6/E7及び単一ドナー由来の初代HUVEC培養物、HUVEC2517Cの増殖を阻害した(表3)。
(例6)
抗エンドグリン抗体による細胞遊走の阻害のアッセイ
細胞増殖及び活性化の尺度としての遊走(ケモキネシス)は、Boydenチャンバーを使用して測定される。
手短に言えば、細胞遊走は次の通りに評価される。Costarヌクレオポアフィルター(8mmポア)は4℃で一晩、フィブロネクチンで被膜される。チャンバーはリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄され、下部チャンバーは、血清と一緒に又はなしで及びTGF−β3と一緒に又はなしで、DMEMで満たされた。細胞はトリプシン処理され、抗エンドグリン抗体を有するDMEM中50,000細胞/mlの最終濃度で懸濁される。細胞懸濁液の150μlアリコットは上部チャンバーに添加され、37℃でインキュベートされる。16時間後、細胞は洗浄され上面は拭かれて非遊走細胞は取り除かれる。膜はメタノール中で固定され、水で洗浄され、染色され下面に存在する細胞の数が計数される。
(例7)
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体のADCCアッセイ
本明細書に記載される抗エンドグリン抗体は、IL−2活性化されたナチュラルキラー(NK)細胞に結合し、HUVECの抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を誘導するその能力に関して、例えば、以下のプロトコールを使用して評価することが可能である。
NK単離及びIL−2活性化されたNK細胞の作製
PBMCは単離され、10%FBSを有するRPMI中4℃で24時間静止させる。次に、PBMCは2%FBSを有するRPMI中に置かれ(全容積=50mL)、10mLの細胞懸濁液はペトリ皿に蒔かれる。PBMCは37℃で2時間インキュベートされ、非付着細胞は収集される。NK細胞は1000U/mL IL−2と一緒に48時間、8×106/mLで培養され、ADCCアッセイにおいて使用する前に5〜8日間通常培養される。
細胞傷害及びADCCアッセイ
NK細胞は培養物からこすり取られ、50mL円錐管に収集される。細胞はRPMI完全培地で1度洗浄され、1200rpmで10分間回転させる。次に、NK細胞は5mL RPMI完全培地に再懸濁され計数される。前記アッセイを実施するに先立って、NK細胞計数は、10対1のエフェクター対標的比に正規化される。正規化されたNK細胞は蒔かれ、10μLの抗エンドグリン抗体は指定されたウェルに添加され、37℃で30分間インキュベートされる。対照試料には、非処置又は対照抗体処置された細胞集団が含まれる。試料及び対照はすべて5通りに試験される。
対象の標的細胞は収集され(HUVEC細胞)、洗浄され、1200rpmで10分間回転され、5mL RPMI完全培地に再懸濁される。標的細胞は再び洗浄され、最終濃度1×106細胞/mLまで無血清RPMIに再懸濁される。次に、標的細胞は、最終濃度5μg/mLのCalcein AMを用いて37℃で1時間標識され、続いてRPMI完全培地で2度洗浄される。その後、標的細胞は再懸濁され、NK細胞ウェルに添加される。標的細胞/NK細胞組合せは37℃で4時間インキュベートされる。インキュベーション後、プレートは1200rpmで5分間回転され、細胞は洗浄されDPBSに再懸濁される。蛍光は、450/530nmの励起/発光を使用して読み取られ、発光は抗体により媒介される細胞死滅の尺度である。平均蛍光強度及び標準偏差が計算され、これを使用して以下の式に従って%ADCCが計算される。
%ADCC=100%*[(fsample−fmedia)−(fisotype control−fTriton)]、
fsample=抗エンドグリン抗体を含有するウェル中の平均蛍光
fmedia=抗体のない培地を含有するウェル中の平均蛍光
fisotype control=アイソタイプ対照IgGを含有するウェル中の平均蛍光
fTriton=Triton洗浄剤(標的細胞を溶解するため)を含有するウェル中の平均蛍光
ヒト化/脱免疫化抗体VK1AAVH1A2は、アイソタイプ対照抗体よりも著しく大きなHUVECの用量依存性ADCCを実証した(表4A及び4B)。表4A及び4Bに要約されている実験は別々のドナー由来のNK細胞を用いて実施されたことに注目されたい。
(例8)
脈絡膜血管新生のマウスモデルに対するヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の効果
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の効果は、脈絡膜血管新生のマウスモデルにおいて評価することが可能である。
手短に言えば、生後4から5週間のC57BL/6マウスは塩酸ケタミン(100mg/kg)で麻酔され、瞳孔は1%トロピカミド(Alcon Laboratories、Inc Fort Worth、TX)で散大される。532nmダイオードレーザー光凝固(75pmスポットサイズ、01秒間、120mW)の3つの火傷が、光凝固装置のスリットランプ送達システム(OcuLight;Iridex、Mountain view、CA)及びコンタクトレンズとしての手で支えられたカバースリップを使用して各網膜に送達される。火傷は、網膜の後極の9、12及び3時の位置で実施される。レーザー処置時間のバブル生成は、ブルッフ膜の断裂を示しているが、脈絡膜血管新生(CNV)を得るのに重要な要因であり、したがって、バブルが生成される火傷のみが研究に含まれる。
ブルッフ膜の断裂後0日目の眼球内注射の効果を調べるために4つの独立した実験が実施される。群1のマウスは、1つの眼に1μLのPBS中約0.5から約5μgの抗エンドグリン抗体又は抗原結合断片の、他眼には1μLのPBSの眼球内注射を与えられる。群2マウスは、1つの眼に1μLのPBS中約1.5から約10μgの抗エンドグリン抗体又は抗原結合断片の、他眼には1μLのPBSの眼球内注射を与えられる。群3マウスは、1つの眼に約5から約25μgの抗エンドグリン抗体又は抗原結合断片の、他眼には1μLのPBSの眼球内注射を与えられる。群4は両眼にPBSを受ける。
14日後、マウスは麻酔され、蛍光標識デキストラン(2×106平均分子量、Sigma−Aldrich)を用いて灌流され、脈絡膜フラットマウントが調製される。手短に言えば、眼球が取り除かれ、10%リン酸緩衝ホルマリン中で1時間固定され、角膜及び水晶体が取り除かれる。全網膜は眼杯から慎重に解体され、正目が4つの四分円すべてにおいて眼杯の縁から赤道まで作製され、網膜は水性封入剤(Aquamount;BDH、Poole、UK)中でフラットマウントされる。フラットマウントは蛍光顕微鏡(Axioskop;Carl Zeiss Meditec、Thornwood、NY)により調査され、画像は、3電荷結合素子(CCD)カラービデオカメラ(IK−TU40A、Toshiba、Tokyo,Japan)を用いてデジタル化される。フレームグラバー画像解析ソフトウェアを使用して、各CNV病変の面積を測定する。複数の比較のためのダネット補正を有するANOVAを使用して統計的比較が行われる。
(例9)
SCIDマウスに移植されたヒト皮膚における前もって形作られたヒト乳がん腫瘍の抗血管新生療法
本明細書に記載されるヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の効果は、SCIDマウスに移植されたヒト皮膚において増殖した前もって形作られたヒト乳がん腫瘍に対するその抗血管新生効果に関して評価することが可能である。
手短に言えば、MCF−7細胞(0.1ml PBS中8×106細胞)は、移植片が炎症、収縮又は拒絶反応の兆候を全く示さないときに、SCIDマウスに移植されたヒト全層皮膚の皮内に移植される。マウスは、明確な触知可能な腫瘍(大半の場合に径3から6mm)が現れるまで未処置にしておく。明確な腫瘍を有するマウスは、治療研究のために群に分けられる。ヒト化/脱免疫化抗エンドグリンモノクローナル抗体(mAb)及びアイソタイプ適合対照IgGは、マウス血清アルブミン(0.05%最終濃度)を含有する無菌PBSを用いて希釈される。抗体療法では、1から20mg/kg抗エンドグリン抗体又は対照IgGがマウスの尾静脈を介して静脈内(i.v.)に投与される。前記投与は2日から3日ごとに与えられる。
処置中、マウスは腫瘍サイズ及び病的状態について毎日モニターされる。マウスは電子天秤(OHAUS(商標)Model GT210)を使用して週2回体重を測られる。腫瘍サイズは、OptoDemo(商標)ソフトウェア(Fowler Co.)を使用するコンピュータに接続された電子キャリパー(PRO−MAX6インチキャリパー;Fowler Co.、Newton、Mass.)を使用して週3回測定される。測定された腫瘍径は、次の式:V=長さ×幅×高さ×pi/6を使用して腫瘍体積に変換される。マウスの異なる群の比較のためのデータの統計的解析は、スチューデントt−検定を使用して実施される。
(例10)
卵巣がんのマウスモデル
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の卵巣がんを治療する能力を判定するために、卵巣がん細胞系を、SCID又はヌードマウスにおいて使用することが可能である。
手短に言えば、卵巣がん細胞はSCID又はヌードマウスに移植されて、卵巣腫瘍を発生させる。確立した腫瘍を坦持するマウスの群は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又は対照IgGの漸増用量(1.8mg/kg体重で開始する)を静脈内投与することにより処置される。処置は週あたり2又は3回実施される。VEGF阻害剤及び/又は他の抗がん剤は、一部の又はすべての群において使用してもよい。マウスはモニターされ、腫瘍増殖は週あたり2又は3回測定される。
(例11)
結腸直腸がんのマウスモデル
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の結腸直腸がんを治療する能力を判定するために、結腸直腸がん細胞系を、SCID、ヌード又は免疫適格性マウスにおいて使用することが可能である。
手短に言えば、結腸直腸がん細胞はSCID、ヌード又は免疫適格性マウスに移植されて、結腸直腸腫瘍を発生させる。確立した腫瘍を坦持するマウスの群は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又は対照IgGの漸増用量(1.8mg/kg体重で開始する)を静脈内投与することにより処置される。処置は週あたり2又は3回実施される。VEGF阻害剤及び/又は他の抗がん剤は、一部の又はすべての群において使用してもよい。マウスはモニターされ、腫瘍増殖は週あたり2又は3回測定される。腫瘍は、PET及び超音波を含む標準画像検査により撮像しうる。処置された腫瘍は、免疫組織化学により細胞内シグナル伝達経路又は血管分布状態を評価するために外植されうる。
(例12)
腎がんのマウスモデル
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の腎がんを治療する能力を判定するために、腎がん細胞系を、SCID又はヌードマウスにおいて使用する。
手短に言えば、腎がん細胞はSCID又はヌードマウスに移植されて、腎腫瘍を発生させる。確立した腫瘍を坦持するマウスの群は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又は対照IgGの漸増用量(1.8μg/g体重で開始する)を静脈内投与することにより処置される。処置は、最初の3回の注射は3日間の間隔で、第4回の注射は7日間の間隔で実施される。VEGF阻害剤及び/又は他の抗がん剤は、一部の又はすべての群において使用してもよい。マウスはモニターされ、腫瘍増殖は週1回の頻度で動物の屠殺を介して測定される。
(例13)
骨髄腫のマウスモデル
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の骨髄腫を治療する能力を判定するために、骨髄腫細胞系を、SCID又はヌードマウスにおいて使用する。
手短に言えば、骨髄がん細胞はSCID又はヌードマウスに移植されて、骨髄腫を発生させる。確立した腫瘍を坦持するマウスの群は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又は対照IgGの漸増用量(1.8mg/kg体重で開始する)を静脈内投与することにより処置される。処置は週あたり2又は3回実施される。VEGF阻害剤及び/又は他の抗がん剤は、一部の又はすべての群において使用してもよい。マウスはモニターされ、腫瘍増殖は週あたり2又は3回測定される。
(例14)
肉腫のマウスモデル
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の肉腫を治療する能力を判定するために、肉腫細胞系を、SCID又はヌードマウスにおいて使用する。
手短に言えば、肉腫細胞はSCID又はヌードマウスに移植されて、肉腫を発生させる。確立した腫瘍を坦持するマウスの群は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又は対照IgGの漸増用量(1.8mg/kg体重で開始する)を静脈内投与することにより処置される。処置は週あたり2又は3回実施される。VEGF阻害剤及び/又は他の抗がん剤は、一部の又はすべての群において使用してもよい。マウスはモニターされ、腫瘍増殖は週あたり2又は3回測定される。
(例15)
乳がんのマウスモデル
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の乳がんを治療する能力を判定するために、乳がん細胞系を、SCID又はヌードマウスにおいて使用する。
手短に言えば、乳がん細胞はSCID又はヌードマウスに移植されて、乳房腫瘍を発生させる。確立した腫瘍を坦持するマウスの群は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の漸増用量(1.8mg/kg体重で開始する)を静脈内投与することにより処置される。対照動物は対照IgGを投与される。処置は週あたり2又は3回実施される。VEGF阻害剤及び/又は他の抗がん剤は、一部の又はすべての群において使用してもよい。マウスはモニターされ、腫瘍増殖は週あたり2又は3回測定される。
(例16)
結腸直腸がんに対する組合せ療法の臨床試験
本実施例は、結腸直腸がん患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の安全性及び有効性の予備評価を提供する目的の無作為化、盲検、プラセボ対照、多施設、第二相試験を説明する。約100〜約800患者が登録され、約50〜約400患者が治療群に割り当てられ、約50〜約400患者がプラセボ群に割り当てられる。治験は、6〜10サイクルで毎週、隔週又は3週間ごとの約0.1〜約20mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はプラセボの静脈内反復用量の投与からなる。VEGF阻害剤及び/又は他の抗がん剤は、すべての群において使用してもよい。研究の時間枠は、約6カ月から約5年で評価され、最初の研究の終了時に示されるレスポンダーでは治療が続行される。追加の評価項目は以下の通りである。
主要な評価項目:奏効率。研究の1つの目標は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体を用いて無憎悪生存率の35%の増加を実証することである。
評価することが可能な二次評価項目には、奏効率、応答の持続時間、全生存、重篤及び非重篤有害事象が含まれる。例えば、治療が疾患の進行を妨げることがあり(すなわち、停滞)、又は好転をもたらすことがある。代わりに、又はさらに、以下の:腫瘍量の減少、血管分布の減少、副作用の減少、有害反応の減少及び/又は患者コンプライアンスの増加のうちの1又は複数に関して他の目標を測定することが可能である。
(例17)
骨髄腫に対する組合せ療法の臨床試験
本実施例は、骨髄腫患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体とボルテゾミブを組み合わせた安全性及び有効性の予備評価を提供する目的の無作為化、盲検、プラセボ対照、多施設、第二相試験を説明する。約100〜約800患者が登録され、約50〜約400患者が治療群に割り当てられ、約50〜約400患者がプラセボ群に割り当てられる。治験は、毎週約1.3mg/kgのボルテゾミブと組み合わせた、毎週、隔週又は3週間ごとの約1〜約20mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はプラセボの静脈内反復用量の投与からなる。研究の時間枠は、約6カ月から約5年で評価され、最初の研究の終了時に示されるレスポンダーでは治療が続行される。追加の評価項目は以下の通りである。
主要な評価項目:奏効率。研究の1つの目標は、ボルテゾミブとプラセボを用いた約40%からボルテゾミブとヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体を用いた約60%(又はそれ以上)への奏効率の増加を実証することである。
評価することが可能な二次評価項目には、応答の持続時間、無憎悪生存率、全生存、重篤及び非重篤有害事象が含まれる。例えば、治療が疾患の進行を妨げることがあり(すなわち、停滞)、又は好転をもたらすことがある。代わりに、又はさらに、以下の:腫瘍量の減少、血管分布の減少、副作用の減少、有害反応の減少及び/又は患者コンプライアンスの増加のうちの1又は複数に関して他の目標を測定することが可能である。
(例18)
腎がんに対する組合せ療法の臨床試験
本実施例は、腎細胞がん(腎がん)患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体とスニチニブ(Sutent(登録商標))を組み合わせた安全性及び有効性の予備評価を提供する目的の無作為化、盲検、プラセボ対照、多施設、第二相試験を説明する。約100〜約800患者が登録され、約50〜約400患者が治療群に割り当てられ、約50〜約400患者がプラセボ群に割り当てられる。治験は、4週間の投与サイクルを繰り返すのに先立って2週間オフにして4週間毎日投与される約5〜約50mgのスニチニブと組み合わせた、毎週、隔週又は3週間ごとの約0.1〜約20mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はプラセボの静脈内反復用量の投与からなる。研究の時間枠は、約6カ月から約5年で評価され、最初の研究の終了時に示されるレスポンダーでは治療が続行される。追加の評価項目は以下の通りである。
主要な評価項目:無憎悪生存率。研究の1つの目標は、スニチニブとプラセボ群における約9〜13カ月からスニチニブとヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体群における約14〜18カ月(又はそれ以上)までの無憎悪生存率の増加を実証することである。
評価することが可能な二次評価項目には、奏効率、応答の持続時間、腫瘍進行までの時間、全生存、重篤及び非重篤有害事象が含まれる。例えば、治療が疾患の進行を妨げることがあり(すなわち、停滞)、又は好転をもたらすことがある。代わりに、又はさらに、以下の:腫瘍量の減少、血管分布の減少、副作用の減少、有害反応の減少及び/又は患者コンプライアンスの増加のうちの1又は複数に関して他の目標を測定することが可能である。
(例19)
肝細胞がんに対する組合せ療法の臨床試験
本実施例は、肝細胞がん(肝がん)患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体とソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))を組み合わせた安全性及び有効性の予備評価を提供する目的の無作為化、盲検、プラセボ対照、多施設、第二相試験を説明する。約100〜約800患者が登録され、約50〜約400患者が治療群に割り当てられ、約50〜約400患者がプラセボ群に割り当てられる。治験は、3〜6サイクルで又は進行まで毎日約400mgのソラフェニブと組み合わせた、毎週、隔週又は3週間ごとの約0.1〜約20mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はプラセボの静脈内反復用量の投与からなる。研究の時間枠は、約6カ月から約5年で評価され、最初の研究の終了時に示されるレスポンダーでは治療が続行される。追加の評価項目は以下の通りである。
主要な評価項目:無憎悪生存率。研究の1つの目標は、ソラフェニブとプラセボ群における約3〜9カ月からソラフェニブとヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体群における約6〜12カ月(又はそれ以上)までの無憎悪生存率の増加を実証することである。
評価することが可能な二次評価項目には、応答の持続時間、腫瘍進行までの時間、全生存、重篤及び非重篤有害事象が含まれる。例えば、治療が疾患の進行を妨げることがあり(すなわち、停滞)、又は好転をもたらすことがある。代わりに、又はさらに、以下の:腫瘍量の減少、血管分布の減少、副作用の減少、有害反応の減少及び/又は患者コンプライアンスの増加のうちの1又は複数に関して他の目標を測定することが可能である。
(例20)
腎がんに対する組合せ療法の臨床試験
本実施例は、腎細胞がん(腎がん)患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体とベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))を組み合わせた安全性及び有効性の予備評価を提供する目的の無作為化、盲検、プラセボ対照、多施設、第二相試験を説明する。約100〜約800患者が登録され、約50〜約400患者が治療群に割り当てられ、約50〜約400患者がプラセボ群に割り当てられる。治験は、隔週で静脈内に投与される約7.5、約10又は約15mg/kgのベバシズマブと組み合わせた、毎週、隔週又は3週間ごとの約0.1〜約20mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はプラセボの静脈内反復用量の投与からなる。研究の時間枠は、約6カ月から約5年で評価され、最初の研究の終了時に示される陽性レスポンダーでは治療が続行される。追加の評価項目は以下の通りである。
主要な評価項目:無憎悪生存率。研究の1つの目標は、ベバシズマブとプラセボ群における約8〜12カ月からベバシズマブとヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体群における約13〜18カ月(又はそれ以上)までの無憎悪生存率の増加を実証することである。
評価することが可能な二次評価項目には、奏効率、応答の持続時間、腫瘍進行までの時間、全生存、重篤及び非重篤有害事象が含まれる。例えば、治療が疾患の進行を妨げることがあり(すなわち、停滞)、又は好転をもたらすことがある。代わりに、又はさらに、以下の:腫瘍量の減少、血管分布の減少、副作用の減少、有害反応の減少及び/又は患者コンプライアンスの増加のうちの1又は複数に関して他の目標を測定することが可能である。
(例21)
卵巣がんに対する組合せ療法の臨床試験
本実施例は、卵巣がん患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体とDoxil(登録商標)を組み合わせた安全性及び有効性の予備評価を提供する目的の無作為化、盲検、プラセボ対照、多施設、第二相試験を説明する。約100〜約800患者が登録され、約50〜約400患者が治療群に割り当てられ、約50〜約400患者がプラセボ群に割り当てられる。治験は、4週間ごとに1回投与される約5から約50mg/m2のドキシルと組み合わせた、毎週、隔週又は4週間ごとの約0.1〜約20mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はプラセボの静脈内反復用量の投与からなる。研究の時間枠は、6カ月から約5年で評価され、最初の研究の終了時に示されるレスポンダーでは治療が続行される。追加の評価項目は以下の通りである。
主要な評価項目:無憎悪生存率。研究の1つの目標は、Doxil(登録商標)とプラセボ群における約3〜6カ月からDoxil(登録商標)とヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体群における約4〜12カ月(又はそれ以上)までの無憎悪生存率の増加を実証することである。
評価することが可能な二次評価項目には、応答の持続時間、腫瘍進行までの時間、全生存、重篤及び非重篤有害事象が含まれる。例えば、治療が疾患の進行を妨げることがあり(すなわち、停滞)、又は好転をもたらすことがある。代わりに、又はさらに、以下の:腫瘍量の減少、血管分布の減少、副作用の減少、有害反応の減少及び/又は患者コンプライアンスの増加のうちの1又は複数に関して他の目標を測定することが可能である。
(例22)
卵巣がんに対する白金ベースの組合せ療法の臨床試験
本実施例は、卵巣がん患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体と白金ベースの化学療法を組み合わせた安全性及び有効性の予備評価を提供する目的の無作為化、盲検、プラセボ対照、多施設、第二相試験を説明する。約100〜約800患者が登録され、約50〜約400患者が治療群に割り当てられ、約50〜約400患者がプラセボ群に割り当てられる。治験は、研究中ずっと過程が繰り返される、静脈内注入による白金ベースの化学療法計画(例えば、カルボプラチン及びパクリタキセル)と組み合わせた、毎週、隔週又は3週間ごとの約0.1〜約20mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はプラセボの静脈内反復用量の投与からなる。研究の時間枠は、約6カ月から約5年で評価され、最初の研究の終了時に示されるレスポンダーでは治療が続行される。追加の評価項目は以下の通りである。
主要な評価項目:無憎悪生存率。研究の1つの目標は、トポテカンとプラセボ群における約12〜18カ月から白金ベースの化学療法とヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体群における約12〜24カ月(又はそれ以上)までの無憎悪生存率の増加を実証することである。
評価することが可能な二次評価項目には、応答の持続時間、腫瘍進行までの時間、全生存、重篤及び非重篤有害事象が含まれる。例えば、治療が疾患の進行を妨げることがあり(すなわち、停滞)、又は好転をもたらすことがある。代わりに、又はさらに、以下の:腫瘍量の減少、血管分布の減少、副作用の減少、有害反応の減少及び/又は患者コンプライアンスの増加のうちの1又は複数に関して他の目標を測定することが可能である。
(例23)
糖尿病性網膜症の治療のための抗エンドグリン抗体の使用
研究設計
施設関与の臨床的に重大な糖尿病黄斑浮腫(DME)の患者においてヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の複数硝子体内注射の生物学的活性を評価するために、及び関連するいかなる有害事象をも報告するために、単一施設、非盲検、用量漸増予備研究が開始される。20/40と20/400の間の研究眼における網膜黄斑の中心及び最高矯正視力(BCVA)を伴うDMEの患者が登録される。
試験治療
好適な患者は、毎月投与されるヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体(各注射あたり約0.25から2.5mg)の3回の硝子体内注射を受けるよう1対1の比で無作為に割り当てられ、観察は月24まで続行される。主要エンドポイントは眼球及び全身有害事象の頻度及び重症度である。二次エンドポイントは、1)2mの開始試験距離で標準化された屈折及び試験プロトコールを使用する、早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)チャートを用いて評価される最高補正視覚評価、並びに2)光干渉断層撮影による網膜厚の測定である。評価する医師は患者の試験治療割付を知らず、注射を施す医師はヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はシャム処置に関して患者の試験治療割付は知っているが、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の用量は知らない。各研究場所の他の職員(注射を手伝う職員を除く)、患者及び中央リーディング施設の職員は患者の試験治療割付を知らない。
有効性及び安全性解析
有効性解析は、欠失データに最終観察引き延ばし補完法(last−observation−carried−forward method)を使用してすべての患者間で治療企図に基づいて実施される。すべてのペアワイズ比較では、統計的モデルは、視力に対するベースラインスコア(<55文字対≧55文字)に合わせて調整される。二分エンドポイントについての群間比較は、コクランカイ二乗検定を使用して実施される。ベースライン視力からの変化は、分散分析モデルを使用して解析される。病変特徴についてのエンドポイントでは、ベースライン値に合わせて調整する分散分析モデルが使用される。ホッホバーグ−ボンフェローニ多重比較法を使用して、主要エンドポイントについて2つのペアワイズ治療比較を調整する。安全性解析には治療を受けた全患者が含まれる。
結論
ヒト化抗エンドグリン抗体は、DMEの患者には十分耐容性の療法になる。この予備実験は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体療法が、施設関与の臨床的に重大なDMEの患者において最高矯正視力を維持する又は改善し、網膜厚を減少する可能性を有することを実証している。
(例24)
抗エンドグリン抗体及び加齢性黄斑変性の臨床試験
研究設計
合衆国の複数の場所で、加齢性黄斑変性に伴う脈絡膜血管新生の患者間でのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の反復硝子体内注射の安全性及び有効性についての2年、前向き、無作為化、二重盲検、シャム対照研究に患者は登録される。主要有効性解析は12カ月で実施される。主要有効性エンドポイントは、2mの開始試験距離で標準化された屈折及び試験プロトコールを使用して、早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)チャートを用いて評価されるベースライン視力から15文字未満(約3行)を失った患者の割合である。病変の適格性は、標準化された基準及び患者の治療割付を知らない訓練されたグレーダーを使用して、独立した中央リーディング施設により確かめられる。患者は、彼らの完全な適格性を決定する前に書面によるインフォームドコンセントを提出する。スクリーニングは、28日間も続くことがある。
研究に含まれるためには、患者は少なくとも50歳であり;20/40から20/320の最高矯正視力を有し(ETDRSチャートを使用して決定されたスネレン等価視力);中心窩に関連して、加齢性黄斑変性に伴う原発性又は再発性脈絡膜血管新生を有する;蛍光眼底撮影法及び眼底撮影法を使用して、最小限古典的又は古典的脈絡膜血管新生のない潜在的として評価されたことのあるような類の病変を有する;12視神経乳頭面積の最大病変サイズ(1視神経径1.8mmに基づいて1視神経乳頭面積は2.54mm2に等しい)を有し、新血管形成が全病変の50%又はそれ以上をなす;並びに観察可能な血液により証拠だてられる推定される疾患の最近の進行、最近の視力喪失又は病変最大線径の10%若しくはそれ以上の最近の増加を有しなければならない。既存の心血管、脳血管又は末梢血管状態に関して除外基準は存在しない。
第一研究
50から500のAMD患者(50から500の眼球)が複数の場所で研究に参加することになる。適格患者は、1つの目で2年間(24注射)毎月(23日から37日以内)約0.25mgから2.5mgの用量のヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はシャム注射を受けるように1対1対1比で無作為に割り付けられる。評価する医師は患者の試験治療割付を知らず、注射を施す医師はヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はシャム処置に関する患者の試験治療割付は知っているが、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の用量は知らない。各研究場所の他の職員(注射を手伝う職員を除く)、患者及び中央リーディング施設の職員は患者の試験治療割付を知らない。研究眼における脈絡膜血管新生が優勢に古典的である場合は、介入療法(例えば、ベルテポルフィン光線力学的療法)が与えられる。
治療の第一ステップとして、患者は完全な眼科検査を受けて眼の健康のベースラインを確立することになる。眼科検査には、倒像眼底検査、細隙灯顕微鏡検査、周辺部網膜検査、眼内圧検査、視力(助力なし及び最高補正)症状学、眼底撮影、蛍光眼底撮影、光干渉断層撮影、網膜電図検査並びにAスキャン検査が含まれる。
予備検査に続いて、上記の硝子体内注射は、AMDを示している患者の患眼に与えられる。両眼が冒されている場合には、別々に治療されうる。治療される眼には、点眼液を注入される。
処置後、患者の眼は、1日目(1)、2日目(2)、7日目(7)、15日目(15)、30日目(30)及び60日目(60)及びその後2年間毎月検査を受けることになる。再発の可能性があるために、患者はその後毎月定期検査のために戻ってくるほうがよい。各検査日に、患者は硝子体液化についてモニターされる。さらに、患者は、強膜圧迫法を用いる倒像眼底検査を使用して後部硝子体剥離についてモニターされる。最後に、患者が示すAMDの程度は、定期的網膜検査、光干渉断層撮影及び蛍光血管造影を通じて絶えずモニターされて、網膜下液、血液、滲出液、RPE剥離、嚢胞性網膜変化の存在又は灰色がかった緑色網膜下新生血管膜の存在についてモニターする。再発新血管形成の兆候が観察される場合は、追加の処置が必要になることがある。追加の処置は、週1回又は月1回与えられうる。好ましい実施形態では、最初の処置に続いて、1〜6カ月間離れてそれに続く処置が行われる。
有効性解析は、欠失データに最終観察引き延ばし補完法を使用してすべての患者間で治療企図に基づいて実施される。すべてのペアワイズ比較では、統計的モデルは、視力に対するベースラインスコア(<55文字対≧55文字)及び脈絡膜血管新生のサブタイプ(最小限古典的対古典的疾患のない潜在的)に合わせて調整される。二分エンドポイントについての群間比較は、コクランカイ二乗検定を使用して実施される。ベースライン視力からの変化は、分散分析モデルを使用して解析される。病変特徴についてのエンドポイントでは、ベースライン値に合わせて調整する分散分析モデルが使用される。ホッホバーグ−ボンフェローニ多重比較法を使用して、主要エンドポイントについて2つのペアワイズ治療比較を調整する。安全性解析には治療を受けた全患者が含まれる。
第二研究
加齢性黄斑変性を示している患者は、新血管形成、黄斑疾患及び網膜障害の発生を減少する若しくは予防するために、第一研究(上記参照)の方法に従って、(1)ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体単独、(2)ラニビズマブ単独、(3)同じ組成で若しくは異なる組成で、ラニビズマブと組み合わせたヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体、又は(4)対照抗体の硝子体内注射を用いて治療される。
結論
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体は、AMDの患者には十分耐容性の療法になる。この臨床試験は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体療法が、AMD患者において最高矯正視力を維持する又は改善し、脈絡膜血管新生を減少する可能性を有することを実証している。さらに、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体は、ラニビズマブと比べて優れた活性を示すことになり、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体とラニビズマブ療法を組み合わせれば、どちらかの抗体単独に対して活性が増加することを示すことになる。
(例25)
カニクイザルにおける全身毒性
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の全身毒性に取り組みための研究においてカニクイザルが利用される。
手短に言えば、サルは、10.0mg/kg、30.0mg/kg又は100.0mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体を3週間毎週投与される。プラセボ動物は、抗体の非存在の適切な溶液を用いて同じスケジュールで投与される。前記用量は30から60分かけて静脈内ボーラスとして投与され、少なくとも6匹の動物は各用量レベルで投与される。毒性は、以下の指標:体重測定、基本的生理学的臨床測定、シリアル血清化学、血液学的評価及び病理組織学的評価のうちの1又は複数を介して評価される。
(例26)
カニクイザルにおけるベバシズマブとの組合せにおける全身毒性
ベバシズマブ(LUCENTIS(登録商標))との組み合わせたヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の全身毒性に取り組みための研究においてカニクイザルが利用される。
手短に言えば、サルは、約10mg/kgから100mg/kgのベバシズマブと組み合わせた10.0mg/kg、30.0mg/kg又は100.0mg/kgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体を3週間毎週投与される。他の動物は、ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又はベバシズマブどちらかを単独で受ける。プラセボ動物は、抗体の非存在の適切な溶液を用いて同じスケジュールで投与される。前記用量は30から60分かけて静脈内ボーラスとして投与され、少なくとも6匹の動物は各用量レベルで投与される。毒性は、以下の指標:体重測定、基本的生理学的臨床測定、シリアル血清化学、血液学的評価及び病理組織学的評価のうちの1又は複数を介して評価される。
(例27)
カニクイザルにおける局所的毒性研究
ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の局所的毒性に取り組みための研究においてカニクイザルが利用される。
手短に言えば、サルは、0.25、1.25及び2.5mgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体を6週間毎週硝子体内注射により投与される。プラセボ動物は、抗体の非存在の適切な溶液を用いて同じスケジュールで投与される。前記用量は硝子体内注射として投与され、少なくとも6匹の動物は各用量レベルで投与される。毒性は、以下の指標:体重測定、基本的生理学的臨床測定、シリアル血清化学、血液学的評価及び病理組織学的評価のうちの1又は複数を介して評価される。
組合せ局所的毒性研究
硝子体内注射により与えられた場合のラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))と組み合わせたヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体の毒性に取り組むための研究においてカニクイザルが利用される。
手短に言えば、サルは、0.25、1.25及び2.5mgのヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体並びに0.5mgのラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))を6週間毎週硝子体内注射により投与される。他の動物は、同じ用量及びスケジュールでいずれかの抗体を単独で受ける。プラセボ動物は、抗体の非存在の適切な溶液を用いて同じスケジュールで投与される。前記用量は硝子体内注射として投与され、少なくとも6匹の動物は各用量レベルで投与される。毒性は、以下の指標:体重測定、基本的生理学的臨床測定、シリアル血清化学、血液学的評価及び病理組織学的評価のうちの1又は複数を介して評価される。
(例28)
出芽アッセイ
血管新生は出芽の三次元in vitroモデルにおいて試験することが可能である。HUVECは、臍帯から単離され、10%牛胎仔血清(FBS)(GIBCO、Carlsbad、CA)及び内皮細胞増殖サプリメント(ECGS)(BD Biosciences、Bedford、MA)を補充されたM199において3℃、5%CO2で増殖され、継代2から4のHUVECがすべての実験では使用される(継代0は初代培養物である)。肺線維芽細胞(LF)は10%FBSを補充されたDMEM(GIBCO、Carlsbad、CA)において37℃、5%CO2で規定通りに増殖され、P10とP15の間で使用される。ATCCから得られる他の線維芽細胞系も使用することが可能である。
細胞を調製する
HUVEC及び線維芽細胞は、ビーディングの1から2日前にM199/10%FBS/Pen−Strep(1対100)中で展開させる。HUVECでは、ビーディングの前日に培地をEGM−2(Clonetics、Walkersville、MD)に交換する。ビーディングには、ビーズあたり約400HUVECが必要である。線維芽細胞は、24ウェルプレートではウェルあたり20,000細胞で使用される。96ウェルプレートも、それに従って量をスケール変更して使用することが可能である。
Cytodex3ビーズ調製
例えば、Cytodex3マイクロキャリアビーズをアッセイにおいて使用することが可能である(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)。
乾燥ビーズ(0.5g)は、50mlチューブ中室温(RT)で少なくとも3時間50ml PBS(pH=7.4)中で水和され膨潤され、ロッカーの上に置かれる。
ビーズは沈降させる(約15分)。上清は破棄され、ビーズは新鮮なPBS(50ml)中で数分間洗浄される。
洗浄PBSは破棄され、新鮮なPBSで置き換えられる。
ビーズ懸濁液はシリコン処理されたガラス瓶(例えば、Windshield Wiper又はSigmacote製)に入れられる。ビーズは115℃で15分間加圧減菌することにより減菌され、次に4℃で保存される。
試薬
フィブリノーゲン溶液
フィブリノーゲン溶液は、37℃水浴中DPBS中に2mg/mlフィブリノーゲンを溶解することにより作製される。次に、溶液はボルテックスするのではなくチューブを反転させて混合させる。凝固可能なタンパク質の割合を決定し、それに従って調整することが可能である。次に、溶液は0.22μmフィルターを通して無菌化する。
アプロチニン
凍結乾燥させたアプロチニンは、DI水中4U/mlで再構成し、無菌濾過することが可能である。1mlのアリコットはそれぞれ作製し、−20℃で保存される。
トロンビン
トロンビンは、減菌水中50U/mlで再構成される。0.5mlのアリコットが作製され、−20℃で保存される。
ビーズをHUVECで被膜する(1日目)
HUVECはトリプシン処理される。ビーズは沈降させ(遠心分離しない)、上清は吸引され、ビーズは1mlの温かいEGM−2培養液中で手短に洗浄される。ビーズ(2500)は、FACSチューブにおいて1.5mlの温かいEGM−2培養液中で1×106HUVECと混合され、インキュベーター中に垂直に置かれる。(約10ウェルにはこれで十分である。必要であればスケールアップする)。
前記混合物は37℃で4時間インキュベートされ、チューブは20分ごとに反転させ混合する。(ビーディング後、ビーズは微小なゴルフボールのように見えるはずであり、それは出芽のための被膜が十分であることを示している)。
4時間後、被膜されたビーズはT25組織培養フラスコ(Falcon、Bedford、MA)に移され、37℃、5%CO2で5mlのEGM−2培養液中一晩インキュベートされる。
被膜されたビーズをフィブリンゲルに包埋する(0日目)
2.0mg/mlフィブリノーゲン溶液は上記の通りに調製され、0.15ユニット/mlのアプロチニンがフィブリノーゲン溶液に添加される。
被膜されたビーズは15mLの円錐管に移され、ビーズは沈降させる。
ビーズは1mlのEGM−2培養液に再懸濁され、1.5mlの遠心管に移される。ビーズは1mlのEGM−2培養液を用いて3回洗浄され、P1000ピペットを用いて上下にゆっくりピペッティングすることにより混合させる。ビーズはカバーガラス上で計数し、500ビーズ/mlの濃度でフィブリノーゲン溶液に再懸濁される。
トロンビン(0.625ユニット/ml)は、24ウェルプレートの各ウェルに添加される。フィブリノーゲン/ビーズ懸濁液(0.5ml)は、ウェルごとにピペットチップを交換して各ウェルに添加される。
前記トロンビンと前記フィブリノーゲン/ビーズは、約4から5回上下にゆっくりとピペッティングすることにより混合させ、フィブリンゲル中に泡ができるのを避ける。対照試料は抗体又は1若しくは複数の対照抗体の非存在下で処置される。試験試料は、抗エンドグリン抗体単独、抗VEGF抗体単独、又はその組み合わせを用いて処置される。複数の濃度の作用物質を試験することが可能である。フィブリノーゲン/ビーズ溶液は室温で5分間、次に37℃/5%CO2で15分間凝固させる。出芽を減少することがあるので、フィブリンを剪断するのを最小限に抑えるために最初の5分間はプレートを乱さないことが重要である。
EGM−2(1mL)は、液滴の形で各ウェルに添加される。肺線維芽細胞は、20,000細胞/ウェルの濃度で前記血塊の上に播種される。所望の増殖が達成されるまで隔日で培養液を新鮮なEGM−2培養液と交換する。
フィブリンゲルが形成されると、ゲル中に微小泡が存在することがある。この微小泡は3から4日で消滅する。出芽は2日目と4日目の間で明らかになるはずである。管腔形成が4日目から5日目あたりで始まり、芽は伸長し続ける。新たに形成された管は4日目から6日目あたりで分枝し始める。6日目から7日目までに、微小血管様構造物が隣接する管と吻合し始め、ウェルあたりのビーズの数を増やすと吻合はそれだけ早くなる。出芽距離は標準法により測定される。
(例29)
in vitroでの血管新生出芽の免疫細胞化学
内皮細胞(EC)核染色では、フィブリンゲルは1×PBSで2回洗浄され、次に、2%パラホルムアルデヒド中で一晩固定される。1×PBSでさらに2回洗浄後、次に、ゲルは、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)(Sigma、St.Louis、MO)を用いて染色される。
免疫染色では、肺線維芽細胞(LF)は、先ず10×トリプシンを用いたゲルの手短な処置を通して取り除かれる。消化は、線維芽細胞がすべて取り除かれるとすぐに血清を用いて停止される。次に、ゲルはHBSS、1×(Cellgro、Herndon、VA)を用いて広範に洗浄される。次に、培養物は10%ホルマリン中で10分間固定され、0.5%Triton X−100を用いて5分間透過処理される。非特異的結合は、PBS中5%BSAの溶液を用いて2時間ブロックされる。
一次抗体は、ブロッキング緩衝液中1/100希釈で使用され、4℃で一晩インキュベートされる。広範な洗浄後、結合している抗体は、1/1000希釈の種特異的Alexa Fluor488−コンジュゲートされた又はAlexa Fluor568−コンジュゲートされた二次抗体(Molecular Probes、Carlsbad、CA)により検出される。アイソタイプ特異的非結合抗体は対照として使用される。高バックグラウンドが生じた場合、一次又は二次抗体の濃度は下げることが可能であり、必要であれば、インキュベーション及び/又は洗浄時間を増やすことが可能である。F−アクチンは、0.2μMの濃度のTRITC−ファロイジン(Sigma、St.Louis、MO)を用いて染色される。
位相差及び蛍光画像は、デジタルカメラと連結したIX70 Olympus顕微鏡上で捕捉される。蛍光Zシリーズ画像スタックは、2光子Carl Zeiss MicroImaging LSM510Meta顕微鏡上で捕捉され、Metamorphソフトウェアを用いて三次元レンダリングに編集される(Universal Imaging Corporation、Downingtown PA)。このように、様々なマーカーの発現は容易に検出することが可能である。
培養物のz軸方向の蛍光光学画像スタックを捕捉して、血管の3D表示を作製することが可能である。核はDAPI(緑色)により染色され、血管壁はビメンチン(オレンジ色)に染色される。広い中空管腔が、内皮細胞の単一層に取り囲まれてはっきりと見える。これらの画像により、in vitroアッセイ中に存在する管腔が細胞間スリットであり、マトリゲルアッセイにおいて見られることが多い細胞内スリットではないことが確証される。さらに、HUVECは、管腔に向かい合っている頂端膜並びにコラーゲンIVリッチ基底膜及びフィブリンゲルに並置している基底膜を有しているので、分極していることを確証することが可能である。
(例30)
カニクイザルにおける脈絡膜血管新生の抑制
レーザー誘導脈絡膜血管新生に対する本明細書に記載される組成物の効果が、成獣カニクイザルにおいて評価される。
この実験では、(1)ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体単独、(2)抗VEGF抗体単独、(3)同じ組成若しくは異なる組成で抗VEGF抗体と組み合わせたヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又は(4)対照抗体が、静脈内若しくは硝子体内注射により投与される。各動物は各網膜に9から10のレーザー火傷を受け、活発な脈絡膜血管新生病変の成長が、処置の開始前に一度及びレーザー処置の15、20及び29日後に蛍光眼底撮影により評価される。組成物は、レーザー損傷の1週間前に始まって、週あたり1回静脈内に投与される。硝子体内注射は、レーザーの1週間前に始まって2週間ごとに1回、又はレーザーに続く2週間に1回行われ、その時点で活発なCNV病変は既に形成されている。対照動物は、レーザーの1週間前に始まって、プラセボの毎週の静脈内又は隔週の硝子体内注射を受ける。
CNV病変は、蛍光眼底撮影により可視化され、標準法に従って類別される。
(例31)
損傷誘導角膜血管新生の阻害
角膜血管新生は、3ナイロン縫合糸の基質内配置により、又は角膜上皮の化学的損傷(NaOH)及び機械的デブリドマンにより、オスC57BL/6マウスに誘導される。(1)ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体単独、(2)抗VEGF抗体単独、(3)同じ組成若しくは異なる組成で抗VEGF抗体と組み合わせたヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体又は(4)対照抗体が、損傷直前又は直後に1回又は複数の時点で腹腔内に投与される複数の実験が行われる。
角膜新生血管の成長は、細隙灯顕微鏡検査及び組織学的評価により評価される。脈管構造は内皮細胞特異的蛍光コンジュゲートレクチンで標識され、新血管形成は、PECAM免疫組織化学を使用して角膜フラットマウントの他にも断面において評価される。細隙灯顕微鏡検査を使用して角膜浮腫の存在が評価され、角膜厚みは断面において測定され、角膜の厚みの増加は浮腫の量を反映する。多核白血球(PMN)及びマクロファージの数は、それぞれ断面をHEMA−3又はラット抗マウスF4/80モノクローナル抗体で染色することにより決定される。
(例32)
ヒト化抗エンドグリン抗体におけるT細胞エピトープの同定
ヒト化可変領域の配列が、iTope(商標)解析により試験された。ヒト化可変領域配列は重複する9〜15merペプチドに分割された。可変領域配列は、コンピュータ分析によるMHCクラスIIに対するペプチドのアフィニティーを決定するin silico解析ツールであるiTope(商標)を使用してヒトMHCクラスII(潜在的T細胞エピトープ)への乱雑な高アフィニティー結合について解析された。iTope(商標)解析からの潜在的T細胞エピトープの頻度が最も低い配列は、ヒト化抗体の作製のためのリードとして同定される。選択されたヒト化可変領域配列は、潜在的T細胞エピトープを取り除くために変異の包含を通じて再設計されうる。変異は、MHCクラスII結合を減少する又は除去するためにiTope(商標)を使用して設計される。代わりに、生殖系列ヒト配列は、潜在的T細胞エピトープの部位で置換することが可能であり、又は代わりの配列が置換されうる。
図19〜23は、図4に記述される軽鎖HuVK_v0と重鎖HuVH_v0を含有するヒト化抗エンドグリン抗体について9merペプチドの予想される結合を表している。
(例33)
抗CD105ヒト化/脱免疫化抗体の設計
本例は、減少した免疫原性を示すヒトCD105を標的にする治療モノクローナルヒト化脱免疫化抗体の設計を説明する。
iTope(商標)を使用して同定された乱雑な高アフィニティーMHCクラスII結合配列(例31参照)は、ペプチドのMHCクラスIIへの結合を減少する又は除去すると考えられるキーとなるMHCクラスIIポケット位置でのアミノ酸置換を同定するためにiTope(商標)によりさらに解析された。すべての配列がCDRに重なっていたために、変化(潜在的抗原接触残基)のCDR位置並びに元の及び置換アミノ酸の物理化学的特徴も検討された。TCR接触並びにペプチド/MHCクラスII−TCR相互作用の安定化に関与する主要結合グルーブの外側の残基も置換について検討された。
VHV1では、完全にCDR内部にあり残基51で開始する9−merペプチドは、乱雑な高アフィニティーMHCクラスII結合ペプチドとして同定された。MHCクラスII結合の除去の最も成功した方法は、疎水性側鎖を除去する又は親水性側鎖で置換するとMHCクラスII結合が取り除かれる9−merの最初のアミノ酸(ポケット1又はp1位)を標的にすることである。しかし、この種の根本的なアミノ酸置換は抗体アフィニティーを保持するのに必ずしも成功しないことがあり、したがって、二次ポケット位置(p4、p6、p7又はp9)も、単独で又は組み合わせて評価された。iTope(商標)解析により、K52bをQ又はRに変えることによりこのペプチドのp4位を標的にすると、MHCクラスII結合が著しく減少すると予想され、p1でI51をAで置き換えると結合を完全に取り除くと予想されることが明らかになった(表5)。
抗体/抗原複合体の結晶構造は、I51は抗原とまれに接触しうるが、この位置でのIからAへの根本的変化(p1アンカー位を破壊するための置換)はCDRの全体的立体構造に影響を与える可能性があることを示唆している。したがって、この残基が溶媒曝露であり抗原と接触しないことがあるために、K52b(p4アンカー位)での比較的保存された変化も含まれた。最後に、CDRの外側にある追加の変異も、ペプチド/MHCクラスII/TCR相互作用に対する不安定化効果を評価するために設計された(G49からA又はS)。表6は、構築されたヒト化及びヒト化/脱免疫化バリアントVH領域を収載している。対応するヌクレオチド及びアミノ酸配列の配列番号は、構築物の隣に示されている。
2つの乱雑な高アフィニティーMHCクラスII結合ペプチドがVKV2及びVKV1において同定された。第一のV19にp1アンカーを有するペプチドはCDR1に部分的に重なっており、第二のI48にp1アンカーを有するペプチドはCDR2に重なっている。両p1アンカーはCDRの外側にあり、Aへの変異によって標的にされており、この変異はMHCクラスII結合を完全に取り除きうる(表7)。しかし、これらの残基は両方ともCDR1及び2の立体構造の維持に関与している可能性があり、したがって、MHCクラスII結合を著しく減少させる追加の変異が設計された(表7)。どちらの場合も、p4残基は、TのSへの変異により標的にされた。T22SもCDRの外側にあり、V19AよりもCDR立体構造に影響を与える可能性は少ない。T51はCDR2の内側にあるが、抗原と複合体化している抗体の結晶構造からの証拠によれば、この残基は抗原とはめったに接触しないことが示唆される。表6は、構築されたヒト化及びヒト化/脱免疫化VK領域を収載している。
(例34)
この例は、T細胞エピトープを求めて抗エンドグリン抗体をスクリーニングする方法を説明している。MHC、ポリペプチド及びT細胞受容体(TCR)間の相互作用は、T細胞認識の抗原特異性に構造基盤を与える。T細胞増殖アッセイは、抗体からプロセッシングされるポリペプチドのMHCへの結合及びTCRによるMHC/ポリペプチド複合体の認識を試験する。本例のin vitro T細胞増殖アッセイでは、抗原提示細胞(APC)及びT細胞を含有する末梢血単核球(PBMC)を刺激する。刺激は、無傷の抗エンドグリン抗体を使用してin vitroで行われる。刺激されたT細胞増殖は3Hチミジン(3H−Thy)を使用して測定され、取り込まれた3H−Thyの存在は洗浄され固定された細胞のシンチレーション測定を使用して評価される。
ヒト化及びヒト化/脱免疫化VH及びVK領域遺伝子のすべては、アニールされ、ライゲートされ、PCR増幅されて完全長合成V領域を与える一連の重複するオリゴヌクレオチドを使用して合成された。次に、組み立てられたバリアントは、IgG重鎖及びカッパ軽鎖のためのAntitope社のpANT発現ベクターシステムに直接クローニングされた。
抗体の精製
抗エンドグリン抗体は、プロテインAクロマトグラフィーにより、哺乳動物培養物の上清から精製された。緩衝液交換及びタンパク質濃度は、PBS pH=7.4を使用して行われた。抗エンドグリン抗体は、Sephacryl S200カラム(GE Healthcare、AMersham、UK)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製された。主要ピークは収集され、フィルター減菌され、Endosafe−PTS(Charles River、Margate、UK)を使用して内毒素レベル<5EU/mgを有することが明らかにされた。精製された抗体は4℃で保存される。最終濃度は、計算されたモル吸光係数を使用してUV吸収により決定され、A280 1.0=1.62mg/mLであった。次に、各抗体はAIMV培養液で100μg/mLまで希釈された。
ドナーPBMCの調製及び選択
末梢血単核球(PBMC)は、Addenbrooke病院地域研究倫理委員会により与えられた認可に従って英国国立輸血サービス(Addenbrook病院、Cambridge、UK)から得られる健康なコミュニティードナーバフィーコート(24時間以内の採血由来)から単離される。PBMCは、Lymphoprep(Axis−shield、Dundee、Scotland)密度遠心分離によりバフィーコートから単離され、CD8+T細胞はCD8+RossetteSep(商標)(StemCell Technologies、Inc.)を使用して枯渇される。ドナーは、Biotest HLA SSP−PCRベースの組織分類キット(Biotest、Landsteinerstraβe、Denmark)を使用してHLA−DRハプロタイプを同定することにより特徴付けられる。対照抗原のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Pierce、Rockford、IL、USA)に対するT細胞応答が、陽性対照について判定される。次に、PBMCは凍結され必要となるまで液体窒素中で保存された。使用するのに必要になると、細胞は37℃の水浴中で急速に解凍され、その後10mlの予め温められたAIM V培地に移される。
世界人口に現れるHLA−DRアロタイプの数及び頻度を最もよく代表する20ドナーのコホートが選択される。世界人口に現れるアロタイプに対するコホートに現れるアロタイプの解析により、>80%のカバレッジが達成されており、主要HLA−DR対立遺伝子はすべて(>5%の頻度で世界人口に現れる個々のアロタイプ)が十分代表されていることが明らかにされた。ドナーハプロタイプの要約は図23に与えられており、本研究で使用されるドナーアロタイプ対世界人口に存在するアロタイプの頻度の比較が行われる。
各ドナー由来のPBMCは解凍され、計数され、生存率評価される。細胞は生き返らせ、4〜6×106PBMC/mLまでAIMV培養液に再懸濁させた。ドナーごとに、合計で1mL増殖細胞保存液が24ウェルプレートに添加されるバルク培養液が確立された。合計で1mLの各希釈試験試料は、抗体試料あたり50μg/mLの最終濃度になるまでPBMCに添加された。ドナーごとに、陽性対照(100μg/mL KLHと一緒にインキュベートされた細胞)及び陰性対照(培養液のみと一緒にインキュベートされた細胞)も含まれた。最初の4ドナーでは、試験試料によるT細胞応答の調節について試験するために追加の対照が含まれ、ここでは試験試料及びKLHがPBMCに添加された。これらの試料とKLH単独との比較を使用して、増殖に対する試験試料の効果を評価することが可能である。培養物は、37℃で合計8日間5%CO2と一緒にインキュベートされた。5、6、7及び8日目、各ウェル中の細胞はゆっくりと再懸濁され、3つの100μLアリコットは丸底96ウェルプレートの個別のウェルに移される。培養物は100μL AIMV培養液中1μCi3[H]−Thy(Perkin Elmer、Waltham、MA)と一緒にパルスされ、さらに18時間インキュベートされて、その後TomTec MachIII細胞収穫器を使用してフィルターマット上に収穫される。ウェルごとの分あたり計数(cpm)は、パラルクス低バックグラウンド計数モードのMicroplate Beta Counter(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)上での、Meltilex(商標)(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)シンチレーション計数により決定される。
結果は、刺激指数として表され、刺激指数(SI)は、試験抗エンドグリン抗体に合わせて測定された増殖スコア(例えば、分あたりの放射能のカウント)を、試験抗エンドグリン抗体を接触させなかった細胞で測定されたスコアで割ることにより導かれる。対照ウェルの全基本cpmは、150cpmのアッセイの最小閾値より上である。
増殖アッセイでは、2に等しい又はよりも大きい刺激指数(SI)(SI≧2)の経験的閾値は既に確立されており、それによりこの閾値より上の増殖応答を誘導する試料は陽性と見なされる(ここでは、ボーダーラインSI≧1.90は強調されている、が含まれている)。広範なアッセイ開発及び既往研究により、これは多数の偽陽性応答を検出せずに最大感度を可能にするノイズ閾値の最小シグナルであることが明らかにされている。陽性応答は、以下の統計的経験的閾値により定義される。
1.不対2試料スチューデントt−検定を使用してメディアム対照ウェルに対して試験ウェルのcpmを比較することによる応答の有意性(p<0.05)。
2.2より大きな刺激指数(SI≧2)、SI=試験ウェルの平均(cpm)/平均メディア対照ウェル(cpm)。
さらに、アッセイ内変動は、同型培養物からの生データの変異係数及び標準偏差(SD)を計算することにより評価される。
抗エンドグリン抗体を用いるEpiScreen時間経過増殖アッセイの結果は図24に示されており、表形式で要約されている(表8)。キメラ抗体は20ドナーのうちの4ドナー(研究コホートの20%)において応答を刺激し、ドナー応答のうちの2つはボーダーラインであったが(ドナー11及び17でそれぞれ1.92及び1.95)、バックグラウンドとは有意に異なっていた(p<0.05)。ヒト化抗体VK1VH1は、バックグラウンドとは有意に異なっている(p<0.05)1つのボーダーライン応答(ドナー20で1.91)を含む20ドナーのうちの2ドナー(研究コホートの10%)において応答を刺激した。ドナー11及び20がこれらの抗体の両方に応答し、共有されたT細胞エピトープが存在しうることを示唆していることは注目に値する。これとは対照的に、研究コホート中のドナーは一人も脱免疫化抗エンドグリン抗体VK1AAVH1A2に陽性応答しなかった。対照抗原KLHを用いた結果は、陽性結果と陰性結果の間には良好な相関関係が存在していたことを明らかにしており、アッセイにおける高レベルの再現性を示している。
(例35)
EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピング
EpiScreen(商標)は、全抗体におけるT細胞エピトープの測定のための又は下により詳細に記載されているようなT細胞エピトープの配列位置をマッピングするためのex vivo技術である。
EpiScreenドナー選択
末梢血単核球(PBMC)は、Addenbrooke病院地域研究倫理委員会により与えられた認可に従って英国国立輸血サービス(Addenbrook病院、Cambridge、UK)から得られる健康なコミュニティードナーバフィーコート(24時間以内の採血由来)から単離される。PBMCは、Lymphoprep(Axis−shield、Dundee、Scotland)密度遠心分離によりバフィーコートから単離され、CD8+T細胞はCD8+RossetteSep(商標)(StemCell Technologies、Inc.)を使用して枯渇される。ドナーは、Biotest HLA SSP−PCRベースの組織分類キット(Biotest、Landsteinerstraβe、Denmark)を使用してHLA−DRハプロタイプを同定することにより特徴付けられる。対照抗原、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Pierce、Rockford、USA)に対するT細胞応答も陽性対照について判定される。世界人口に現れるHLA−DRアロタイプの数及び頻度を最もよく代表する54ドナーのコホートが選択される。世界人口に現れるアロタイプに対するコホートに現れるアロタイプの解析により、>80%のカバレッジが達成されており、主要HLA−DR対立遺伝子はすべて(>5%の頻度で世界人口に現れる個々のアロタイプ)が十分代表されていることが明らかにされた。ドナーハプロタイプの要約が提供されており、本研究で使用されるドナーアロタイプ対世界人口に存在するアロタイプの頻度の比較が行われる。
ドナー詳細及びハプロタイプ。KLHに対するドナー応答(SI)は2つの独立した実験において試験される。試験1は新たに単離されたPBMCで実施され、抗体は現試験では再試験である。両方の試験において同じ結果(すなわち、陽性又は陰性)を生まない応答は強調されている。基礎cpmが非常に低い(<150cpm)ドナーは解析から除外される。
EpiScreen解析:増殖アッセイ
EpiScreen(商標)を使用して、キメラ、ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗体の配列由来の重複ペプチドを試験する。重複ペプチドは設計される。12アミノ酸重なっている一連の128×15merペプチドは、1×14mer及び1×11merと一緒に合成され、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して51人の健康なドナーのコホート由来の末梢血単核球細胞(PBMC)を刺激するのに使用される。個々のペプチドは同型培養物において試験され、応答はT細胞増殖アッセイを使用して評価され、エピトープの正確な位置を同定する。各ドナー由来のPBMCは解凍され、計数され、生存率について評価される。細胞は室温のAIM V培養液(Invitrogen、Carlsbad、California)中で生き返らせ、その後細胞密度を2.5×106PBMC/ml(増殖細胞保存液)に調整する。ペプチドは最終濃度10mMまでDMSO(Sigma−Aldrich、St Louis、MO、USA)中に溶解させる。次に、ペプチド培養保存液は、最終濃度5μMまでAIM V培養液に希釈することにより調製される。ペプチドごとに及びドナーごとに、平底96ウェルプレートにおいて100μlのペプチド培養保存液を100μlの増殖細胞保存液に添加することにより、6通りの培養物が確立される。陽性対照培養物も陰性対照培養物も6通りに確立する。ドナーごとに合計で9×96ウェルプレートが使用され、各プレートで1つの陰性対照(担体のみ)を用いて15ペプチドを6通りに試験するのに十分である。最後のプレート上では、陽性対照が添加される。
培養物は合計で6日間インキュベートされ、その後0.5μCi3[H]−チミジン(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)が各ウェルに添加される。培養物はさらに18時間インキュベートされ、その後TomTec MachIII細胞収穫器を使用してフィルターマット上に収穫される。ウェルごとの分あたりの計数(cpm)は、パラルクス低バックグラウンド計数モードのMicroplate Beta Counter(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)上での、Meltilex(商標)(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)シンチレーション計数により決定される。
増殖アッセイでは、2に等しい又はよりも大きい刺激指数(SI)(SI≧2)の経験的閾値は既に確立されており、それによりこの閾値より上の増殖応答を誘導する試料は陽性と見なされる(ここでは、ボーダーラインSI≧1.90は強調されている、が含まれている)。広範なアッセイ開発及び既往研究により、これは多数の偽陽性応答を検出せずに最大感度を可能にするノイズ閾値の最小シグナルであることが明らかにされている。陽性応答は、以下の統計的経験的閾値により定義される。
1.不対2試料スチューデントt−検定を使用してメディアム対照ウェルに対する試験ウェルのcpmを比較することによる応答の有意性(p<0.05)。
2.2より大きな刺激指数(SI≧2)、SI=試験ウェルの平均(cpm)/平均メディア対照ウェル(cpm)。
さらに、アッセイ内変動は、同型培養物からの生データの変異係数及び標準偏差(SD)を計算することにより評価される。
増殖アッセイは6通りの培養物において開始される(「調整されていないデータ」)。アッセイ内可変性が低いことを確かめるために、データは最大及び最小cpm値(「調整されたデータ」)を除いた後も解析され、ドナー応答のSIは両方のデータセットを使用して比較される。調整されたデータセットと非調整データセット両方由来のドナーSIの詳細が作成される。T細胞エピトープは、本研究におけるすべてのペプチドに対する応答の平均頻度+2×SD(バックグラウンド応答速度)を計算することにより同定される。この閾値より上の増殖を誘導するどんなペプチド(単数又は複数)もT細胞エピトープを含有すると見なされる。
ペプチドのin silico iTope(商標)解析
増殖アッセイで陽性であるペプチドの配列は、Antitope社の予測iTope(商標)ソフトウェアを使用して解析される。このソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖とMHCクラスII結合グルーブ内の特異的結合ポケット間の有利な相互作用を予測する。キーとなる結合残基の位置は、1つのアミノ酸が重なり長いペプチド配列にまたがる10merペプチドを作製することにより決定される。各10merは、MHCクラスIIアロタイプのAntitope社のデータベースに対して試験され、MHCクラスII分子とのそのフィット及び相互作用に基づいてスコア化される。多数の対立遺伝子に対して高結合スコアを生じたペプチドはコア9merを含有すると見なされる。
T細胞エピトープの同定
上記のEpiScreen(商標)解析を使用して同定されるペプチドはすべて、51人の健康なドナーに対して試験するために首尾よく合成される(54人のドナーが最初に選択される;ドナーは、低基礎cpm、すなわち、150cpmのカットオフ値よりも下であるために解析から除外されうる)。陽性応答は任意のペプチドに対してSI≧2の有意な(p<0.05)応答を生じたドナーにより定義される。ボーダーライン応答(SI≧1.90の有意な(p<0.05)応答)も含まれる。非調整及び調整されたデータ解析からの出力は、アッセイ内可変性が低いこと及び陽性応答は個々のウェルの偽増殖の結果ではないことを確かめるために比較される。各解析からの結果は方法間でほとんど差を示さず、したがって、T細胞エピトープマップは調整されたデータ解析を使用して編集される。非調整と調整された解析の両方からのドナー刺激指数が作成される。T細胞エピトープは、本研究におけるすべてのペプチドに対する応答の平均頻度及び標準偏差の2倍(「バックグラウンド応答速度」と呼ばれる)を計算することにより同定される。これは5.6%であると計算され、3人又はそれ以上のドナーにおいて陽性応答を誘導する等価物である。この閾値より上の増殖応答を誘導するペプチドは、T細胞エピトープを含有すると見なされる。
EpiScreen(商標)を使用するリードバリアントの免疫原性試験
リードバリアントは精製され、EpiScreen(商標)時間経過T細胞アッセイを使用して野生型ポリペプチドに対して比較される。HLAアロタイプの発現に従って世界人口を代表する多数の健康なドナーは、上記の通りにドナーライブラリーから選択される。ドナーは、2〜4×106CD8+T細胞枯渇PBMCを含有する別々のバルク培養物において各タンパク質を用いて刺激される。同型培養物(T芽球の)は5〜8日目にバルク培養物から取り除かれ、IL−2分泌(ELISPOT)と一緒の増殖が評価される。野生型とバリアント間の評価をさらに検証するために、研究コホートは、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピング研究由来の応答ドナーを補充される(提供された十分な数のCD8+T細胞枯渇PBMCが残っている)。
リードバリアントにおける免疫原性の消失を確認するために、EpiScreen(商標)時間経過T細胞アッセイによるT細胞免疫原性の解析が以下の通りに着手される。
(i)健康なドナー由来のバフィーコート(世界人口に対して>80%DRBIアロタイプカバレッジを有する)を使用して、生理学的レベルのAPC及びCD4+T細胞を含有するPBMCを単離する;
(ii)各ドナーは、キーホールリンペットヘモシアニン(強力なネオ抗原)を含む陽性対照抗原に対して試験される;
(iii)CD8+T細胞は、MHCクラスI制限T細胞応答の検出を排除するために枯渇される;
(iv)リードバリアント及び野生型ポリペプチドは、T細胞CD4+T細胞を活性化する相対的能力を評価するために互いに対して比較される;
(v)データは、統計的及び頻度解析を含む追加の情報により支持されるSI>2の陽性応答を有する既に確認されたアッセイパラメータを使用して解析される;
(vi)EpiScreen(商標)時間経過T細胞アッセイからのデータは、個々の分子に対するT細胞応答の大きさ及び速度論に関する情報を提供する;
(vii)陽性応答を生じるドナー由来のどんな残っているPBMCも記録され、繰返し試験研究において使用するために利用可能である;
(viii)ドナーアロタイプと野生型ポリペプチドに対する応答及びバリアントリードに対する任意の応答間の関連について評価が行われる。
本発明の態様は、その精神又は本質的特徴から逸脱することなく、他の形で具体化される又は他の方法で実施されうる。したがって、本開示は、すべての態様において例示的であり限定的ではないと見なされるべきであり、等価である意味及び範囲内に入る変化はすべてその中に包含されることが意図されている。
(例36)
抗エンドグリン抗体の交差反応性
抗エンドグリン抗体は、ヒト及びマウス由来の内皮細胞と交差反応性であることが実証されている(Matsunoら、1999)。ヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体は、Harutaら、1986の方法に従って放射免疫アッセイ(RIA)により、ヒト及びマウス内皮に結合するその能力について試験される。手短に言えば、精製された抗エンドグリン抗体は、Indo−Genを使用し、当業者に公知の標準法に従って125Iで個別に放射標識される。放射標識されたヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体は、IgG分子あたりのヨード原子の平均数についてアッセイされる。分あたりの計数は、ヒト及びマウス内皮細胞の培養物上で抗エンドグリン抗体又はアイソタイプ適合対照IgGを試験することにより比較される。サブコンフルエントマウス及びヒト内皮細胞への結合も、Matsunoら、1999の方法に従ってFITC標識抗エンドグリン抗体を使用して実証され、平均蛍光強度を比較するBecton Dickinson FACScanにより分析もされうる。マウス内皮への結合も、同系腫瘍を坦持するマウスにおいて放射標識された抗エンドグリン抗体の体内分布を画像化することにより実証しうる。手短に言えば、免疫適格性マウスは、同系4T1乳癌を移植させる。腫瘍は触知可能なサイズにまで増殖させ、動物は、64Cuなどの放射性同位体にキレート化させた抗体を用いて処置される。オートラジオグラフィー又はPETスキャニングによる腫瘍坦持BALB/cマウスにおける標識された抗エンドグリン抗体の分布は、類似の標識されたアイソタイプ対照抗体の分布と比較される。標識された抗体の腫瘍取込みは固形臓器及び血液中の取込みに関連することが報告されている。