JP2013258390A - 超電導マグネット - Google Patents

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Abstract

【課題】残留磁場を抑えることができる超電導マグネットを提供する。
【解決手段】コイル部10は、帯状面を有する酸化物超電導線が巻き回されることによって形成されている。残留磁場抑制部81はコイル部10の中に配置されている。残留磁場抑制部81はコイル部10の軸方向Aaに沿った貫通孔HLを有する。残留磁場抑制部81は磁性体から作られている。
【選択図】図2

Description

本発明は、超電導マグネットに関し、特に、帯状面を有する酸化物超電導線が巻き回されることによって形成されたコイル部を有する超電導マグネットに関する。
超電導マグネットから生じる磁場の強さは、印加電流のみによって決定されるわけではなく、遮蔽電流によって誘起される磁場の影響を受けることが知られている。たとえば非特許文献1:Y. Yanagisawa et al., “Effect of current sweep reversal on the magnetic field stability for a Bi-2223 superconducting solenoid”, Physica C, 469[22] (2009) 1996-1999によれば、テープ状のBi−2223超電導線を用いた超電導ソレノイドにおいて、遮蔽電流によって誘起される磁場について言及されている。
このため、磁場の発生を停止させることを意図して超電導マグネットのコイル部への電流印加が停止されても、遮蔽電流の影響によって超電導マグネットは残留磁場を有する。
そこで、本発明の目的は、残留磁場を抑えることができる超電導マグネットを提供することである。
本発明の超電導マグネットはコイル部および残留磁場抑制部とを有する。コイル部は、帯状面を有する酸化物超電導線が巻き回されることによって形成されている。残留磁場抑制部はコイル部の中に配置されており、コイル部の軸方向に沿った貫通孔を有し、磁性体から作られている。
この超電導マグネットによれば、残留磁場抑制部が設けられることで、コイル部への電流印加が停止された状態における磁場の大きさ、すなわち残留磁場を抑えることができる。
好ましくは磁性体は100以上の最大透磁率を有する。これにより残留磁場抑制部が、残留磁場の抑制に必要な磁気的特性をより十分に有することができる。ここで「最大透磁率」とは、室温付近における磁性体の比透磁率の最大値のことをいう。
好ましくは軸方向における残留磁場抑制部の長さは、酸化物超電導線の帯状面の幅以上である。これによりコイル部内において残留磁場抑制部を酸化物超電導線の単位幅に渡って配置することができる。
軸方向における残留磁場抑制部の長さは、軸方向におけるコイル部の長さの半分以上であってもよい。これにより残留磁場抑制部をコイル部の半分以上に渡って配置することができる。
軸方向における残留磁場抑制部の長さは、軸方向におけるコイル部の長さ以上であってもよい。これにより残留磁場抑制部をコイル部内の全体に渡って配置することができる。
軸方向における残留磁場抑制部の長さは、軸方向におけるコイル部の長さよりも大きくてもよい。これにより残留磁場抑制部をコイル部の全体に渡って配置しつつコイル部から突出させることができる。残留磁場抑制部が突出することで、残留磁場抑制部をより容易に固定することができる。
残留磁場抑制部は、1mm以上の肉厚を有するパイプを含んでもよい。厚さが1mm以上とされることで、残留磁場をより十分に抑えることができる。
残留磁場抑制部は、貫通孔を有する第1の部分と、第1の部分から離れて第1の部分を囲む第2の部分とを有してもよい。これにより、より高い磁場を扱う場合に、より効果的に残留磁場を抑えることができる。
残留磁場抑制部は、コイル部を収める容器の一部を構成していてもよい。残留磁場抑制部が容器の一部を構成しない場合、コイル部の内部に、残留磁場抑制部と、残留磁場抑制部とは独立してその機能を保持し得る容器との両方を設ける必要がある。よってコイル部の内部の体積のうち、残留磁場抑制部および容器によって占められる割合が大きくなる。この結果、コイル部の内部において磁場を実際に利用することができる空間が小さくなるか、あるいはこの空間の大きさを維持するためにコイル部を大きくする必要がある。これに対して残留磁場抑制部が容器の一部を構成する場合、コイル部の内部において残留磁場抑制部が容器の一部としての機能も有する。よってコイル部の内部の体積のうち、残留磁場抑制部および容器に占められる割合が抑えられる。この結果、コイル部の内部において磁場を実際に利用することができる空間を大きくすることができるか、あるいはこの空間の大きさを維持しつつコイル部を小さくすることができる。
ここで、残留磁場抑制部が「容器の一部を構成する」とは、容器の目的を達するための容器の機能を保つ上で不可欠な部分を構成することを意味する。容器の目的は、コイル部が超電導状態に保持されるようにコイル部の温度を低く保持することである。この目的を達する上で、室温より低い温度を有する液体(たとえば液体窒素または液体ヘリウム)を容器が保持する場合、容器の機能は、この液体を、実用上十分な時間、液体状態で保持することである。また上記目的を達する上で、外界とコイル部との間の断熱のための真空を容器が保持する場合、容器としての機能とは、コイル部を真空中に保持することである。逆に言えば、残留磁場抑制部が取り去られても容器がその機能を失わない場合、残留磁場が容器の一部を構成しているとは言えない。たとえば、上記のような機能を既に有する容器に対して残留磁場抑制部が付加されているような場合は、残留磁場が容器の一部を構成しているとは言えない。
好ましくは、コイル部の少なくとも1つの径方向においてコイル部および残留磁場抑制部は共通の中心位置を有する。これにより、コイル部が磁場を発生した際に、径方向においてコイル部と残留磁場抑制部との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
好ましくは、コイル部の軸方向においてコイル部および残留磁場抑制部は共通の中心位置を有する。これにより、コイル部が磁場を発生した際に、軸方向においてコイル部と残留磁場抑制部との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
好ましくは超電導マグネットは、コイル部を収める空洞部を有し磁性体から作られたシールドをさらに含み、コイル部の少なくとも1つの径方向においてコイル部およびシールドは共通の中心位置を有する。これにより、コイル部が磁場を発生した際に、径方向においてコイル部とシールドとの間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
好ましくは超電導マグネットは、コイル部を収める空洞部を有し磁性体から作られたシールドをさらに含み、コイル部の軸方向においてコイル部およびシールドは共通の中心位置を有する。これにより、コイル部が磁場を発生した際に、軸方向においてコイル部とシールドとの間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
上述したように本発明によれば残留磁場を抑えることができる。
本発明の実施の形態1における超電導マグネットの構成を概略的に示す断面図である。 図1の一部拡大図であり、図3の線II−IIに沿う概略断面図である。 図2の概略平面図である。 図1の超電導マグネットに含まれるコイル部が有するダブルパンケーキコイルの構成を概略的に示す斜視図である。 図4の線V−Vに沿う概略断面図である。 図4のダブルパンケーキコイルに用いられている酸化物超電導線の構成を概略的に示す一部斜視図である。 本発明の実施の形態2における超電導マグネットの構成を概略的に示す断面図である。 本発明の実施の形態3における超電導マグネットの構成を概略的に示す断面図である。 本発明の実施の形態4における超電導マグネットが有する残留磁場抑制部の構成を概略的に示す断面図である。 図9の線X−Xに沿う概略断面図である。 残留磁場抑制部の厚さおよび個数の各々と残留磁場との関係を概略的に示すグラフ図である。 実施例1に対する比較例の磁場分布を示す図である。 実施例1において残留磁場抑制部の厚さが0.5mmである場合の磁場分布を示す図である。 実施例1において残留磁場抑制部の厚さが1.0mmである場合の磁場分布を示す図である。 実施例2に対する比較例の磁場分布を示す図である。 実施例2において残留磁場抑制部の厚さが1mmである場合の磁場分布を示す図である。 実施例2において残留磁場抑制部の厚さが10mmである場合の磁場分布を示す図である。 実施例3における、残留磁場抑制部の厚さと、残留磁場および残留磁場低減率の各々との関係を示すグラフ図である。 シミュレーションに用いたSS400の磁化曲線を示すグラフ図である。 本発明の実施の形態5における超電導マグネットの構成を概略的に示す断面図である。 本発明の実施の形態6における超電導マグネットが有する超電導コイルの構成を概略的に示す断面図である。 図21の概略平面図である。 本発明の実施の形態7における超電導マグネットが有する超電導コイルの構成を概略的に示す断面図である。 図23の概略平面図である。 図23の変形例を示す概略断面図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分については同一の参照符号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1を参照して、本実施の形態の超電導マグネット100は、超電導コイル91と、断熱容器111と、冷却装置121と、ホース122と、コンプレッサ123と、ケーブル131と、電源132とを有する。断熱容器111は超電導コイル91を収めている。本実施の形態においては、磁場が印加される試料(図示せず)を収めるための磁場印加領域SCが、断熱容器111を貫くように断熱容器111に設けられている。冷却装置121は冷却ヘッド20を有する。
図2および図3を参照して、超電導コイル91は、コイル部10と、パイプ部81(残留磁場抑制部)と、取付部71とを有する。
コイル部10はダブルパンケーキコイル11および伝熱板31を有する。ダブルパンケーキコイル11はコイル部10の軸方向Aaに沿って積層されている。径方向Arは軸方向Aaに垂直な方向に対応している。冷却装置121の冷却ヘッド20は、ダブルパンケーキコイル11を冷却することができるように、伝熱板31によってダブルパンケーキコイル11につながっている。伝熱板31の材料は、非磁性体であり、具体的には100未満の最大透磁率を有するものである。また伝熱板31の材料は、熱伝導率および可撓性が大きい材料が好ましい。伝熱板31の材料は、たとえばアルミニウム(Al)または銅(Cu)である。AlまたはCuの純度は99.9%以上が好ましい。冷却されたダブルパンケーキコイル11に超電導電流が流れることで磁束MFが発生する。
パイプ部81は、コイル部10の軸方向Aaに沿った貫通孔HLを有する。好ましくはパイプ部81は、1mm以上の肉厚を有するパイプを含む。パイプ部81はコイル部10の中に配置されている。好ましくはパイプ部81は、パイプ部81の中心がコイル部10の中心CPと一致するように配置されている。
パイプ部81は、磁性体から作られており、具体的には100以上の最大透磁率を有する。パイプ部81をなす磁性体は、たとえば、鉄、電磁軟鉄、電磁鋼、パーマロイ合金、またはアモルファス磁性合金である。なお鉄の最大透磁率は一般に5000程度である。
軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、酸化物超電導線14の帯状面SFの幅(図2における各ダブルパンケーキコイル11の高さの半分)以上である。好ましくは軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、各ダブルパンケーキコイル11の高さ以上である。軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、軸方向Aaにおけるコイル部10の長さの半分以上であってもよい。より好ましくは、軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、軸方向Aaにおけるコイル部10の長さ以上である。さらに好ましくは、図2に示すように、軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、軸方向Aaにおけるコイル部10の長さよりも大きい。
パイプ部81は取付部71によってコイル部10に取り付けられている。本実施の形態においては、パイプ部81のうちコイル部10から突出した部分が取付部71によってコイル部10に固定されている。好ましくは取付部71の材料は、非磁性体であり、具体的には100未満の最大透磁率を有するものである。
さらに図4および図5を参照して、コイル部10を構成しているダブルパンケーキコイル11の各々はパンケーキコイル12aおよび12bを有する。パンケーキコイル12aおよび12bは互いに積層されている。パンケーキコイル12aおよび12bの各々は、酸化物超電導線14が巻き回されることによって形成されている。
さらに図6を参照して、酸化物超電導線14はテープ状、言い換えれば帯状の形状を有しており、よって帯状面SFを有する。帯状面SFは、軸方向Aaに沿った幅Dwと、幅Dwよりも小さい厚さDtとを有する。たとえば、厚さDtは0.2mm程度、幅Dwは4mm程度である。たとえば、酸化物超電導線14は、その延在方向に延びるBi系超電導体と、この超電導体を被覆するシースとを有する。シースは、たとえば銀や銀合金よりなっている。酸化物超電導線14は、帯状面SFに垂直な磁場(垂直磁場)が印加されるほど交流損失が増大するような特性を有する。
パンケーキコイル12aにおける酸化物超電導線14の巻き回し方向Waと、パンケーキコイル12bにおける酸化物超電導線14の巻き回し方向Wbとは互いに逆である。パンケーキコイル12aの内周側に位置する酸化物超電導線14の端部ECiと、パンケーキコイル12bの内周側に位置する酸化物超電導線の端部ECiとは、互いに電気的に接続されている。これにより、パンケーキコイル12aの外周側に位置する酸化物超電導線14の端部ECoと、パンケーキコイル12bの外周側に位置する酸化物超電導線14の端部ECoとの間で、パンケーキコイル12aおよび12bは互いに直列に接続されている。またダブルパンケーキコイル11のうち互いに隣り合うもの(図2において縦方向に隣り合うもの)の各々の端部ECoは互いに電気的に接続されている。これにより、ダブルパンケーキコイル11は互いに直列に接続されている。
本実施の形態によれば、パイプ部81(図2)が設けられることで、コイル部10への電流印加が停止された状態における磁場の大きさ、すなわち残留磁場を抑えることができる。好ましくは磁性体は100以上の最大透磁率を有する。これによりパイプ部81が、残留磁場の抑制に必要な磁気的特性をより十分に有することができる。なお残留磁場の抑制の実施例については後述する。
好ましくは軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さ(図2における縦方向の長さ)は、酸化物超電導線14の帯状面SFの幅Dw(図5)以上である。これによりコイル部10内においてパイプ部81を酸化物超電導線14の幅Dwに渡って配置することができる。軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、軸方向Aaにおけるコイル部10の長さの半分以上であってもよい。これによりパイプ部81をコイル部10の半分以上に渡って配置することができる。軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、軸方向Aaにおけるコイル部10の長さ以上であってもよい。これによりパイプ部81をコイル部10内の全体に渡って配置することができる。
軸方向Aaにおけるパイプ部81の長さは、軸方向Aaにおけるコイル部10の長さよりも大きくてもよい。これによりパイプ部81をコイル部10の全体に渡って配置しつつコイル部10から突出させることができる。パイプ部81が突出することで取付部71(図2)を用いてパイプ部81をより容易に固定することができる。
パイプ部81は、1mm以上の肉厚TS(図3)を有するパイプを含んでもよい。肉厚TSが1mm以上とされることで、残留磁場をより十分に抑えることができる。
(実施の形態2)
図7を参照して、本実施の形態の超電導マグネット100Aは超電導コイル91Aおよびパイプ部81を有する。超電導コイル91Aは、超電導コイル91(図2)のパイプ部81が省略された構成を有する。パイプ部81は、断熱容器111の外部において磁場印加領域SCの側壁に沿って配置されている。本実施の形態においては、パイプ部81の端が磁場印加領域SCから突出している。またパイプ部81の端は取付部71によって断熱容器111に取り付けられている。
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
(実施の形態3)
図8を参照して、本実施の形態の超電導マグネット100Dは超電導コイル91Dおよび断熱容器111Dを有する。超電導コイル91Dは、超電導コイル91の伝熱板31が省略された構成を有する。断熱容器111Dは、液体窒素などの冷媒が注入され得るように構成されている。この冷媒により超電導コイル91Dが冷却される。すなわち本実施の形態においてはコイル部10が冷却装置121(図2)によってではなく冷媒によって直接冷却され得る。なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
(実施の形態4)
図9および図10を参照して、本実施の形態の超電導マグネットは、前述したパイプ部81の代わりにパイプ部81Mを有する。パイプ部81Mは内周パイプ81a(第1の部分)および外周パイプ81b(第2の部分)を有する。内周パイプ81aは貫通孔HLを有する。外周パイプ81bは内周パイプ81aから離れて内周パイプ81aを囲んでいる。内周パイプ81aの外面と外周パイプ81bの内面との間には隙間GPが設けられている。言い換えれば、パイプ部81Mは、最外面と最内面との間において厚さTH(図10)を有し、かつこの厚さTHの部分の内部に隙間GPが設けられている。なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1〜3のいずれかの構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
図11を参照して、パイプ部を設けることによる残留磁場の低減率RTを、隙間GPが設けられた場合(実線)と、隙間GPが設けられない場合(破線)とのそれぞれについて示す。厚さTHが十分に大きい場合、本実施の形態のように隙間GPが設けられた場合の方が、残留磁場を低減する効果をより大きくし得る。より高い磁場を扱う場合には、パイプ部が磁気的に飽和することを避ける観点で厚さTHが十分に大きくされることが好ましく、この場合に本実施の形態のように隙間GPを設けることが好ましい。これにより、より高い磁場を扱う場合に、より効果的に残留磁場を抑えることができる。
なお本実施の形態においては内周パイプ81aおよび外周パイプ81bによる二重構造を有するパイプ部81Mについて説明したが、3つ以上のパイプによる多重構造が用いられてもよい。この場合、より高い磁場を扱う場合に、より効果的に残留磁場を抑えることができる。
また隙間GPを充填する、非磁性体からなる充填部(図示せず)が設けられてもよい。これにより内周パイプ81aおよび外周パイプ81bを互いに固定することができる。また強磁場下における内周パイプ81aおよび外周パイプ81bの変位によって両者が接触してしまうことを防止することができる。また取付部71(図2または図7)とほぼ同様の部材によって内周パイプ81aおよび外周パイプ81bの各々が固定されてもよい。この場合、上記充填部は設けられなくてもよい。
(実施の形態5)
図20を参照して、本実施の形態の超電導マグネット100Bは、超電導コイル91Aのコイル部10を収める断熱容器111B(容器)を有する。断熱容器111Bは、容器本体部111Aおよびパイプ部81によって構成されている。よってパイプ部81が断熱容器111Bの一部を構成している。
ここで、「パイプ部81が断熱容器111Bの一部を構成している」とは、断熱容器111Bの目的を達するための断熱容器111Bの機能を保つ上で不可欠な部分をパイプ部81が構成していることを意味する。断熱容器111Bの目的は、コイル部10が超電導状態に保持されるようにコイル部10の温度を低く保持することである。この目的を達する上で、外界とコイル部10との間の断熱のための真空が保持されるようにコイル部10を真空中に保持することが、断熱容器111Bの機能である。図20においては、外界に通じた磁場印加領域SCと断熱容器111Bの内部とが少なくとも部分的にパイプ部81のみによって隔てられている。よって仮にパイプ部81が取り去られると、断熱容器111Bの真空が破れてしまうので、断熱容器111Bの真空容器としての機能が失われれる。
実施の形態2(図7)のようにパイプ部81が断熱容器111の一部を構成しない場合、コイル部10の内部に、パイプ部81と、パイプ部81とは独立してその機能を保持し得る断熱容器111との両方を設ける必要がある。よって超電導コイル91Aの内部の体積のうち、パイプ部81および断熱容器111によって占められる割合が大きくなる。この結果、超電導コイル91Aの内部において磁場を実際に利用することができる空間(磁場印加領域SCに対応)が小さくなるか、あるいはこの空間の大きさを維持するために超電導コイル91Aを大きくする必要がある。
これに対して本実施の形態によれば、超電導コイル91Aの内部においてパイプ部81が断熱容器111Bの一部としての機能も有する。よって超電導コイル91Aの内部の体積のうち断熱容器111Bに占められる割合が抑えられる。この結果、磁場印加領域SCを大きくすることができるか、あるいは磁場印加領域SCの大きさを維持しつつ超電導コイル91Aを小さくすることができる。
なお断熱容器111Bは、パイプ部81を容器本体部111Aに取り付けるための取付部72を有してもよい。取付部72は、断熱容器111Bの機密性を維持するために、容器本体部111Aに接するOリングを有してもよい。
また本実施の形態においては、真空容器としての機能を有する断熱容器111Bが用いられるが、容器は真空容器に限定されるものではなく、コイル部10が超電導状態に保持されるようにコイル部10の温度を低く保持するという目的を達するものであればよい。たとえば、室温より低い温度を有する液体(たとえば液体窒素または液体ヘリウム)を保持する容器が用いられてもよい。このような容器は、この液体を、実用上十分な時間、液体状態で保持することできればよい。
(実施の形態6)
本実施の形態の超電導マグネットは、実施の形態1の超電導マグネット100(図1)とほぼ同様の構成を有し、さらにコイル部10とパイプ部81とが相対的に特定の位置関係にある。以下、この位置関係について説明する。
図21を参照して、コイル部10の軸方向Aaにおいてコイル部10およびパイプ部81は共通の中心位置Caを有する。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、軸方向Aaにおいてコイル部10とパイプ部81との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
さらに図22を参照して、コイル部10の径方向Ar(図21)の1つである径方向Ar1(少なくとも1つの径方向)において、コイル部10およびパイプ部81は共通の中心位置Cr1を有する。径方向Ar1に沿い中心位置Cr1を通る仮想軸(図22において破線で示されている)はコイル部10およびパイプ部81の各々の対称軸である。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、径方向Ar1においてコイル部10とパイプ部81との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。またコイル部10の径方向Ar(図21)の1つである径方向Ar2(少なくとも1つの径方向)において、コイル部10およびパイプ部81は共通の中心位置Cr2を有する。径方向Ar2に沿い中心位置Cr2を通る仮想軸(図22において破線で示されている)はコイル部10およびパイプ部81の各々の対称軸である。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、径方向Ar2においてコイル部10とパイプ部81との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
2つの対称軸(図22の2つの破線)が交差する位置が中心点Crである。図示されているように、平面視においてコイル部10およびパイプ部81は共通の中心点Crを有する。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、一般的な径方向Arにおいてコイル部10とパイプ部81との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
なおコイル部10およびパイプ部81が、中心位置Ca、Cr1およびCr2のすべてではなくこれらのうち1つまたは2つのみを共有する構成が用いられてもよい。
また、ある方向においてコイル部10およびパイプ部81が共通の中心位置を有するというときに、両者の位置ずれによる磁気回路の対称性の乱れが問題とならない程度の誤差は許容される。具体的には、その方向におけるコイル部の寸法の誤差は、好ましくは10%程度以下であり、より好ましくは5%程度以下である。
(実施の形態7)
図23を参照して、本実施の形態の超電導マグネット100Cは、超電導マグネット100A(図7)の構成に加えてさらに、パッシブシールド99(シールド)を有する。パッシブシールド99は、超電導マグネット100Cの外部への不必要な磁場の漏洩を防止するためのものである。パッシブシールド99はコイル部10を収める空洞部を有し、たとえば筒状の形状を有する。パッシブシールド99は磁性体から作られている。磁性体は100以上の最大透磁率を有することが好ましい。パッシブシールド99は断熱容器111に固定されている。この固定は、たとえば取付部73によって行い得る。
コイル部10の軸方向Aaにおいてコイル部10およびパッシブシールド99は共通の中心位置Caを有する。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、軸方向Aaにおいてコイル部10とパッシブシールド99との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
さらに図24を参照して、コイル部10の径方向Ar(図23)の1つである径方向Ar1(少なくとも1つの径方向)において、コイル部10およびパッシブシールド99は共通の中心位置Cr1を有する。径方向Ar1に沿い中心位置Cr1を通る仮想軸(図24において破線で示されている)はコイル部10およびパッシブシールド99の各々の対称軸である。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、径方向Ar1においてコイル部10とパッシブシールド99との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。またコイル部10の径方向Ar(図23)の1つである径方向Ar2(少なくとも1つの径方向)において、コイル部10およびパッシブシールド99は共通の中心位置Cr2を有する。径方向Ar2に沿い中心位置Cr2を通る仮想軸(図24において破線で示されている)はコイル部10およびパッシブシールド99の各々の対称軸である。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、径方向Ar2においてコイル部10とパッシブシールド99との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
2つの対称軸(図24の2つの破線)が交差する位置が中心点Crである。図示されているように、平面視においてコイル部10およびパッシブシールド99は共通の中心点Crを有する。これにより、コイル部10が磁場を発生した際に、一般的な径方向Arにおいてコイル部10とパッシブシールド99との間で相対変位が生じるような力が両者の間で発生することを避けることができる。
なおコイル部10およびパッシブシールド99が、中心位置Ca、Cr1およびCr2のすべてではなくこれらのうち1つまたは2つのみを共有する構成が用いられてもよい。
また実施の形態6の超電導マグネットに対して上述したようにパッシブシールド99が配置される場合、磁気回路としての対称性がより高められる。これにより、コイル部10、パイプ部81およびパッシブシールド99の間で相対変位が生じるような力がこれらの間で発生することをより避けることができる。
また、ある方向においてコイル部10およびパッシブシールド99が共通の中心位置を有するというときに、両者の位置ずれによる磁気回路の対称性の乱れが問題とならない程度の誤差は許容される。具体的には、その方向におけるコイル部の寸法の誤差は、好ましくは10%程度以下であり、より好ましくは5%程度以下である。
なおパッシブシールド99を固定するための取付部は、超電導マグネット100C(図23)における取付部73のように断熱容器111の上面および下面(軸方向Aaに交差する面)に配置されるものに限定されるわけではない。超電導マグネット100E(図25)における取付部74のように、断熱容器111Bとパッシブシールド99との間に配置された取付部74が用いられてもよい。
実施の形態3に対応する実施例(図2のパイプ部81を有するもの)と、それに対する比較例(パイプ81部が省略されたもの)との各々についての残留磁場の、有限要素法によるシミュレーション結果について説明する。本シミュレーションにおいて、ダブルパンケーキコイル11(図4)の内径は130mm、外径は210mm、高さは9mm、巻数は280とされた。またコイル部10(図2)におけるダブルパンケーキコイル11の積層数は10とされた。パイプ部81の材料としては、図19に示す磁化曲線を有するSS400(JIS規格)を用いることが想定された。また冷媒として液体窒素を用いることを想定して断熱容器111D内の温度は77Kが想定され、オン状態における電流は25Aとされた。オン状態における磁場は0.5Tとされた。
図12〜図14のそれぞれは、比較例(パイプが省略されたもの)、実施例であってパイプ部81の肉厚が0.5mmのもの、および、実施例であってパイプ部の肉厚が1mmのものに対応する残留磁場(T)の分布を示す。この結果から、比較例に比して実施例の方が残留磁場が低減されることが見出された。またパイプ部81の肉厚が0.5mmの場合にも効果が得られ、肉厚が1mmの場合にはより大きな効果が得られることも見出された。
実施の形態2に対応する実施例(図7のパイプ81部を有するもの)と、それに対する比較例(パイプ81部が省略されたもの)との各々についての残留磁場の、有限要素法によるシミュレーション結果について説明する。本シミュレーションにおいて、ダブルパンケーキコイル11(図4)の内径は200mm、外径は280mm、高さは10mm、巻数は290とされた。またコイル部10(図2)におけるダブルパンケーキコイル11の積層数は20とされた。また伝熱板31の厚さは1mmとされた。パイプ部81の材料としてはSS400(JIS規格)を用いることが想定された。またパイプ部81の外径は150mm、長さは480mmとされた。また冷却装置121(図1)によりコイル部10が20Kの温度まで冷却されることが想定され、オン状態における電流は225Aが想定された。オン状態における磁場は5Tとされた。
図15〜図17のそれぞれは、比較例(パイプが省略されたもの)、実施例であってパイプ部81の肉厚が1mmのもの、および、実施例であってパイプ部の肉厚が10mmのものに対応する残留磁場(T)の分布を示す。この結果から、比較例に比して実施例の方が残留磁場が低減されることが見出された。またパイプ部81の肉厚が1mmの場合にも効果が得られ、肉厚が10mmの場合により大きな効果が得られることも見出された。
図18を参照して、実施の形態2に対応する実施例において、残留磁場の大きさ(左側の縦軸)およびパイプ部81による残留磁場の低減率(右側の縦軸)の各々と、パイプ部81の厚さ(横軸)との関係について、有限要素法によるシミュレーションを行った。グラフ中のP1〜P3は、図7の位置P1〜P3に対応している。すなわち位置P1はコイル中心位置、位置P2は超電導コイル91Aの端の位置、位置P3はパイプ部81の端の位置である。この結果から、位置P1〜P3のいずれの位置においても残留磁場が低減されることが見出された。また本実施例においては、たとえば厚さが1mm以上であれば、低減率10%以上の有意な低減効果が得られた。また本実施例においてはパイプ部81の厚さが10mm程度以上では残留磁場の低減率がおおよそ飽和していた。
下記の表1を参照して、実施の形態2に対応するものであって、冷却装置121によりコイル運転温度を77Kとして比較的低い磁場を発生させるのに適した場合の実施例と、冷却装置121によりコイル運転温度を20Kとして比較的高い磁場を発生させるのに適した場合の実施例との各々のシミュレーション結果を示す。なお表中の「比較例」はパイプ部81が設けられない場合の結果を示す。
この結果から、残留磁場の大部分を除去するのに必要なパイプ部81の厚さは、オン状態において超電導マグネット100A(図7)が発生する磁場(オン磁場)の大きさに顕著に依存することがわかった。具体的には、オン磁場1T未満では厚さは1mm程度で、オン磁場5T以上では10mm程度で残留磁場の大部分が除かれることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 コイル部、11 ダブルパンケーキコイル、12a,12b パンケーキコイル、14 酸化物超電導線、20 冷却ヘッド、31 伝熱板、81 パイプ部(残留磁場抑制部)、81a 内周パイプ(第1の部分)、81b 外周パイプ(第2の部分)、91,91A 超電導コイル、100,100A〜100E 超電導マグネット、111,111D 断熱容器、121 冷却装置、123 コンプレッサ、132 電源、SC 磁場印加領域、SF 帯状面。

Claims (13)

  1. 帯状面を有する酸化物超電導線が巻き回されることによって形成されたコイル部と、
    前記コイル部の中に配置され、前記コイル部の軸方向に沿った貫通孔を有し、磁性体から作られた残留磁場抑制部とを備える、超電導マグネット。
  2. 前記磁性体は100以上の最大透磁率を有する、請求項1に記載の超電導マグネット。
  3. 前記軸方向における前記残留磁場抑制部の長さは、前記酸化物超電導線の前記帯状面の幅以上である、請求項1または2に記載の超電導マグネット。
  4. 前記軸方向における前記残留磁場抑制部の長さは、前記軸方向における前記コイル部の長さの半分以上である、請求項1または2に記載の超電導マグネット。
  5. 前記軸方向における前記残留磁場抑制部の長さは、前記軸方向における前記コイル部の長さ以上である、請求項1または2に記載の超電導マグネット。
  6. 前記軸方向における前記残留磁場抑制部の長さは、前記軸方向における前記コイル部の長さよりも大きい、請求項1または2に記載の超電導マグネット。
  7. 前記残留磁場抑制部は、1mm以上の肉厚を有するパイプを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の超電導マグネット。
  8. 前記残留磁場抑制部は、前記貫通孔を有する第1の部分と、前記第1の部分から離れて前記第1の部分を囲む第2の部分とを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の超電導マグネット。
  9. 前記残留磁場抑制部は、前記コイル部を収める容器の一部を構成している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の超電導マグネット。
  10. 前記コイル部の少なくとも1つの径方向において前記コイル部および前記残留磁場抑制部は共通の中心位置を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の超電導マグネット。
  11. 前記コイル部の軸方向において前記コイル部および前記残留磁場抑制部は共通の中心位置を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の超電導マグネット。
  12. 前記コイル部を収める空洞部を有し磁性体から作られたシールドをさらに備え、
    前記コイル部の少なくとも1つの径方向において前記コイル部および前記シールドは共通の中心位置を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の超電導マグネット。
  13. 前記コイル部を収める空洞部を有し磁性体から作られたシールドをさらに備え、
    前記コイル部の軸方向において前記コイル部および前記シールドは共通の中心位置を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の超電導マグネット。
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