JP2013245206A - ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、ポリアミド樹脂、樹脂組成物、及び、それらの用途 - Google Patents

ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、ポリアミド樹脂、樹脂組成物、及び、それらの用途 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、耐熱性、機械的特性に優れる硬化物を与えることが可能であり、かつ有機溶媒への溶解性に優れる樹脂組成物の原料となる新規の芳香族ジアミンを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のヒドロキシ基含有芳香族ジアミンは、下記式(1)
Figure 2013245206

(式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、aは対応するRの平均置換基数で、0〜4の整数を示す。)で表されることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、ポリアミド樹脂、樹脂組成物、及び、それらの用途に関する。
従来から、プリント基板等の電気・電子部品に用いる絶縁性の樹脂として、ポリアミド樹脂が用いられている。該ポリアミド樹脂を製造する方法として、例えばジアミンと、ジカルボン酸塩化物を重縮合させる方法や、ジアミンとジカルボン酸を芳香族亜リン酸エステル及びピリジンの存在下で重縮合させる方法が挙げられる。しかし、前者の方法を用いると、副生成物として塩化水素が発生し、この塩化水素は、電気・電子部品の腐食の原因となる。後者の方法を用いると、得られたポリアミド樹脂中にリン系の副生成物が残留する。該残留物により電気特性が低下するため、該ポリアミド樹脂は電気的絶縁性が求められる用途への使用が制限されてしまう。
また、近年、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)を用いたポリアミド樹脂の製法が開発された(非特許文献1)。かかる方法は、DMT−MMが安価な非リン系縮合剤であること、副生成物であるヒドロキシジメトキシトリアジン化合物(HO−DMT)が水溶性で後処理が容易であること、該副生物のリサイクルが可能であること等の利点がある。しかし、DMT−MMは有機溶媒中で不安定であり、かつDMT−MM由来の塩素系イオン不純物が、得られたポリアミド樹脂中に残存してしまう等の問題があった。
そこで、本出願人らは、トリアジン系活性ジエステルとジアミン化合物とを重縮合反応することにより得られるポリアミド樹脂を提案した(特許文献1)。該ポリアミド樹脂は、リン系及び塩素系イオン不純物を大幅に低減することに成功しており、電気・電子部品用として優れている。一方で、有機溶媒への溶解性、耐熱性、機械的特性がさらに改良されたポリアミド樹脂が求められている。
特開2011−236155号公報
工藤孝廣、大石好行、オラベッツヤン、森邦夫、高分子論文集、第64巻、231頁(2007年)
本発明は、耐熱性、機械的特性に優れる硬化物を与えることが可能であり、かつ、有機溶媒への溶解性に優れる樹脂組成物の原料となる新規な芳香族ジアミンを提供することを目的とする。また、本発明は該芳香族ジアミンを用いた樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物を用いたフレキシブル配線板及びその構成部材、並びに層間絶縁膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の要旨構成は、以下の通りである。
1.下記式(1):
Figure 2013245206
(式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3アルキル基を示し、aは対応するRの平均置換基数で、0〜4の整数を示す。)で表されるヒドロキシ基含有芳香族ジアミン。
2.下記式(2):
Figure 2013245206
(式(2)中、Arは二価の芳香族残基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3アルキル基を示し、aは対応するRの平均置換基数で、0〜4の整数を示す。)で表される繰り返し単位と、下記式(3):
Figure 2013245206
(式(3)中、Arは二価の芳香族残基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3アルキル基を示し、a、a’はそれぞれ対応するRの平均置換基数で、aは0〜4の整数を示し、a’は0〜5の整数を示す。)で表される繰り返し単位を含むヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
3.前記式(2)で表される繰り返し単位からなるヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
4.前記Arが、下記式(4):
Figure 2013245206
(式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6の置換基を示し、Rは直接結合(単結合)或いは酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−SO−、−N=N−又は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、b、c、dはそれぞれ対応するRの平均置換基数で、b、cはそれぞれ0〜4の整数を示し、dは0〜6の整数を示す。)で表される群から選ばれる2価の芳香族残基である上記2又は3に記載のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
5.式(4)のRが水素原子であり、Rが酸素原子である上記4に記載のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
6.上記2〜5の何れかに記載のポリアミド樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。
7.上記1に記載のジアミン化合物、上記2〜5の何れかに記載のポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの化合物と、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。
8.フィルム状に加工したことを特徴とする上記6又は7に記載の樹脂組成物。
9.上記8に記載の樹脂組成物を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着シート。
10.上記6又は7に記載の樹脂組成物を加熱硬化して得たことを特徴とする樹脂組成物の硬化物。
11.上記9に記載のフレキシブルプリント配線板用接着シートを加熱硬化して得たことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着シートの硬化物。
12.上記8に記載の樹脂組成物の硬化物層を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用補強板。
13.上記8に記載の樹脂組成物の硬化物層を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用カバーレイ。
14.上記8に記載の樹脂組成物の硬化物層の片面または両面が、金属箔層の片面または片面金属張樹脂積層板の樹脂面に接していることを特徴とする金属張樹脂積層板。
15.上記8に記載の樹脂組成物、上記9に記載のフレキシブルプリント配線板用接着シート、上記12に記載のフレキシブルプリント配線板用補強板、上記13に記載のフレキシブルプリント配線板用カバーレイ及び上記14に記載の金属張樹脂積層板からなる群から選ばれる1種以上を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
16.上記6〜8のいずれかに記載の樹脂組成物又は上記10に記載の樹脂組成物の硬化物を用いたことを特徴とする層間絶縁膜。
本発明によれば、耐熱性、機械的特性に優れる硬化物を与えることが可能であり、かつ、有機溶媒への溶解性に優れる樹脂組成物の原料となる新規の芳香族ジアミンを提供することができる。また、該芳香族ジアミンを用いた樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物を用いたフレキシブル配線板及びその構成部材、並びに層間絶縁膜を提供することができる。
OBBT-ATDA-OHのDMSO−d6中でのH−NMRスペクトルとピークの帰属を示す図である。
以下、本発明についてその実施形態を例示して具体的に説明する。本発明のヒドロキシ基含有芳香族ジアミンは、上記式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
式(1)において、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられ、Rとしては水素原子又はメチル基が好ましい。また、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
式(1)において、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、Rとしては水素原子が好ましい。aは対応するRの平均置換基数であり、0〜4の整数を示し、aの値は0(すなわち無置換体)が好ましい。また、R、及びaの値はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
(ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンの製造方法)
以下、本発明の、上記式(1)のヒドロキシ基含有芳香族ジアミンの製造方法について説明する。該ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンの製造方法は特に限定されないが、例えば、下記式(5)で表されるヒドロキシ基含有トリアジンクロリドと下記式(6)で表される過剰量のフェニレンジアミン誘導体を有機溶媒中、塩基存在下で反応させることによって得られる。
Figure 2013245206
(式(5)中、R、R及びaは、上記式(1)におけるR、R及びaと同じものを示す。)
Figure 2013245206
(式(6)中、R、R及びaは、上記式(1)におけるR、R及びaと同じものを示す。)
また、この反応に用いるフェニレンジアミン誘導体の量は,収率の観点から、ヒドロキシ基含有トリアジンクロリド1molに対して、1を超え20mol以下とすることが好ましい。より好ましくは、1を超え10mol以下、さらに好ましくは1を超え8mol以下である。フェニレンジアミン誘導体の量が、ヒドロキシ基含有トリアジンジクロリド1molに対して1mol(すなわち等当量)以下であると、ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンが得にくく、1molを超え20mol以下であることで、ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンの製造効率が高くなる。
この反応に用いる塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどが好ましい。反応溶媒中に塩基を存在させることで、副生する塩化水素を中和することができる。
この反応に用いる有機溶媒としては、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)などの非プロトン性極性溶媒などが好ましい。
具体的なヒドロキシ基含有芳香族ジアミンの製造方法としては、有機溶媒中で、フェニレンジアミン誘導体、塩基を攪拌溶解させ、その後、ヒドロキシ基含有トリアジンクロリドを添加して反応させた後、再結晶等によりヒドロキシ基含有芳香族ジアミンを製造する方法が挙げられる。反応温度は、通常20〜200℃、好ましくは、30℃〜160℃であり、反応時間は、数十分〜数日間である。該反応終了後、反応混合物を水やメタノールなどの貧溶媒中に投じて生成物を分離した後、再結晶等によって精製を行って副生成物などを除去することにより、ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンを高純度で得ることができる。
なお、ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンの製造に用いる上記式(5)のヒドロキシ基含有トリアジンクロリドは、例えば上述する有機溶媒中で、塩化シアヌル(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン)と下記式(7)のアミン化合物を上述する塩基存在下に反応させることにより、合成可能である。
Figure 2013245206
(式(7)中、R、R及びaは、上記式(1)におけるR、R及びaと同じものを示す。)
上記式(1)で表されるヒドロキシ基含有芳香族ジアミンは、後述するように本発明のポリアミド樹脂の原料となる。また、該ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンは、エポキシ樹脂の硬化剤として使用可能である。該ジアミンを硬化剤として用いたエポキシ樹脂の硬化物は耐熱性、機械的特性に優れ、また、基材への密着性も良好であるため、フレキシブル配線板及びその構成部材、並びに層間絶縁膜に好適に用いられる。
次に、本発明のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂について説明する。本発明のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂は、上記式(2)で表される繰り返し単位と、上記式(3)で表される繰り返し単位を含む。
式(2)、(3)において、Arは二価の芳香族残基を示す。Arは上記式(4)で表される群から選ばれる2価の芳香族残基であることが好ましい。また、上記式(4)中、Rが水素原子であり、Rが酸素原子であることがより好ましい。また、Rが炭素数1〜6の置換基である場合、Rは、O、S、P、F若しくはSiを含んでもよい。
式(2)、(3)中、R、R、及び、aは、上記式(1)と同じものを示し、a’は対応するRの平均置換基数で、0〜5の整数を示す。
更に、本発明のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂は、上記式(2)で表される繰り返し単位からなることが好ましい。
本発明のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂は、上記式(1)で表されるヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、下記式(8)で表される芳香族ジアミンと下記式(9)で表されるトリアジン系活性ジエステルを用いて得られる。
Figure 2013245206
(式(8)中、R、R、及び、a、a’は、上記式(3)と同じものを示す。)
Figure 2013245206
(式(9)中、Arは上記式(2)、(3)と同じものを示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基または、炭素数6〜8の芳香族残基を表す。)
なお、上記式(8)の芳香族ジアミンの製造方法としては、上記式(1)のヒドロキシ基含有芳香族ジアミンと同様の方法が使用可能である。
(トリアジン系活性ジエステルの製造方法)
以下、トリアジン系活性エステルの製造方法について説明する。該トリアジン系活性ジエステルの製造方法は特に限定されないが、例えば、クロロトリアジン化合物とジカルボン酸化合物を3級アミン存在下に有機溶媒中で反応させることによって得られる。
この反応に用いるクロロトリアジン化合物としては、例えば、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジイソプロポキシメトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジブトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。これら中でも2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン等が好ましい。その使用量は、反応に用いるジカルボン酸化合物1molに対して、通常2〜4mol、好ましくは2〜2.6molである。
この反応に用いる3級アミン化合物としては、例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−イソブチルモルホリン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,4−ルチジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデンセン等が挙げられ、中でもトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン等が好ましい。その使用量は、反応に用いるジカルボン酸化合物1molに対して、通常1〜6mol、好ましくは2〜5molである。
この反応に用いるジカルボン酸化合物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸、チオジ安息香酸、ジチオジ安息香酸、カルボニルジ安息香酸、スルホニルジ安息香酸、メチレンジ安息香酸、イソプロピリデンジ安息香酸や、ヘキサフルオロイソプロピリデンジ安息香酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等のジカルボン酸等が挙げられ、中でもイソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、オキシジ安息香酸、カルボニルジ安息香酸、スルホニルジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等が好ましい。
この反応に用い得る有機溶媒としては、ジカルボン酸に対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒として、特に限定されないが、水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルイミダゾリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、N−メチルモルホリン、ピリジン、γ−ブチロラクトンのような非プロトン性極性溶媒、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル系溶媒等、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。
具体的なトリアジン系活性ジエステルの製造方法としては、有機溶媒中で、ジカルボン酸系化合物を攪拌溶解させ、その後トリアジン系化合物、3級アミン化合物を添加して反応させた後、再結晶等によりトリアジン系活性ジエステルを製造する方法が挙げられる。反応温度は、通常−10℃〜80℃、好ましくは0〜30℃であり、反応時間は5分間〜24時間、好ましくは15分間〜3時間である。該反応終了後、反応混合物を水やメタノールなどの貧溶媒中に投じて生成物を分離した後、再結晶等によって精製を行って副生成物などを除去することにより、トリアジン系活性ジエステルを高純度で得ることができる。
(ヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂の合成)
以下、本発明のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミドの製造方法について説明する。本発明のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂は、上記式(1)のヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、上記式(8)の芳香族ジアミンと、上記式(9)のトリアジン系活性ジエステルとを不活性溶媒中で重縮合することにより得られる。
この不活性溶媒は、トリアジン系活性ジエステルと実質的に反応せず、かつ上記ジアミン化合物とを良好に溶解させる性質を有する他、反応生成物であるポリアミドに対して良溶媒であることが望ましい。
このような不活性溶媒として、特に限定はされないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルイミダゾリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、N−メチルモルホリン、ピリジン、γ−ブチロラクトン、スルホランのような非プロトン性極性溶媒、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。これら溶媒の使用量は、使用するヒドロキシ基含有トリアジン系ジアミン0.1molに対して、通常0〜1000mL、好ましくは50〜800mLである。
また、重合度の大きいポリアミド樹脂を得るために、塩化リチウム、塩化カルシウムなどの無機塩類を添加してもよい。これら無機塩類の使用量は、使用溶媒量に対して、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%である。
具体的な本発明のポリアミド樹脂の製造方法としては、例えば、不活性溶媒中に式(1)で表されるヒドロキシ基含有芳香族ジアミンと、式(8)で表される芳香族ジアミンを溶解し、これら芳香族ジアミン1molに対して、前記トリアジン系活性ジエステル成分0.5〜2.2molを添加し、次いで窒素などの不活性雰囲気下で加熱撹拌しながら、反応させることによりポリアミド樹脂を得ることができる。反応温度は通常−10〜80℃、好ましくは10〜60℃である。反応時間は通常5分間〜24時間、好ましくは30分間〜10時間である。該反応終了後、反応混合物を水やメタノールなどの貧溶媒中に投じて重合体を分離した後、再沈殿法等によって精製を行って副生成物や無機塩類などを除去することにより、本発明のポリアミド樹脂を得ることができる。
本発明のポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、900〜300,000の範囲が好ましく、900〜200,000の範囲がより好ましい。
重量平均分子量が上記範囲であることで、高度な耐熱性や耐熱分解特性を示す。ここで重量平均分子量及び数平均分子量(Mn)とは、GPCの測定結果を基にポリスチレン換算で算出した値をいう。
上記重縮合反応の際、芳香族ジアミン化合物をトリアジン系活性ジエステルよりも過剰に使用すれば、両末端にNHR基を有するポリアミド樹脂が得られ、反対にトリアジン系活性ジエステルをジアミン化合物よりも過剰に使用すれば、両末端にカルボキシ基を有するポリアミド樹脂が得られる。この過剰に使用する量は、mol比で通常1%以上であり、その上限値は100%以下、好ましくは10%以下である。
また、上記重縮合反応に使用する式(1)と式(8)の芳香族ジアミン化合物中の、式(1)のヒドロキシ基含有芳香族ジアミンの割合は、特に限定されないが、得られるポリアミド樹脂の有機溶媒への溶解性、該樹脂の硬化物の耐熱性、基材への密着性、機械的特性の観点からmol比で1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。該mol比によって、重縮合反応により得られるポリアミド中の繰り返し単位(2)と、繰り返し単位(3)の比が決定される。そして、該mol比は100%であることが最も好ましい。即ち本発明のポリアミド樹脂は、式(2)で表される繰り返し単位からなるヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂であることが最も好ましい。
本発明のポリアミド樹脂を含む樹脂組成物は、有機溶媒への溶解性に優れ、かつ該樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性、機械的特性に優れ、基材への密着性も良好である。また、本発明のヒドロキシ基含有芳香族ジアミンと同様に、該ポリアミド樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として使用することができる。該ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン及び/又はポリアミド樹脂と、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物(以下、エポキシ樹脂組成物とする)から得られる硬化物も、耐熱性、機械的特性に優れ、基材への密着性も良好である。
上記エポキシ樹脂は、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環のような芳香族環を有し、1分子中にエポキシ基を2個以上有する樹脂である限り、特に制限されない。上記エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン又は1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類並びにアルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、上記ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンと上記ポリアミド樹脂の他に、他の硬化剤を配合しても良い。配合し得る他の硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物(アミン、アミド化合物);無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン又は1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類;イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物が他の硬化剤を含有する場合、上記ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、上記ポリアミド樹脂、及び、他の硬化剤の合計に占める上記ヒドロキシ基含有芳香族ジアミンと上記ポリアミド樹脂の割合の合計は、通常20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上である。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる硬化剤においては、上記ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、上記ポリアミド樹脂、及び、他の硬化剤の全活性水素当量が、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2であることが好ましい。該全活性水素当量がエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し0.7〜1.2であることで、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化が十分となり、良好な硬化物性が得られる。なお、本発明のポリアミド樹脂の活性水素当量は、反応時に仕込んだ芳香族ジアミンとトリアジン系活性ジエステルの使用量から算出することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に、さらに硬化促進剤を配合してもよい。配合し得る硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールや1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましい。
本発明の樹脂組成物は必要によりその他の添加剤を含有する。本発明の樹脂組成物に配合し得る添加剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、タルク、カオリン、クレーや金属粉末、ガラス短繊維、ガラスビーズ等の無機充填材及びそれらの表面処理剤、各種樹脂ビーズや短繊維等の有機充填材及びそれらの表面処理剤、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系等のレベリング剤や消泡剤、分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を混合することにより得られる。また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、上記樹脂組成物を公知の方法により硬化して容易に得ることができる。具体的には、上記各成分を必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合し樹脂組成物を得、その樹脂組成物を溶融注型法、トランスファー成型法、インジェクション成型法、圧縮成型法等の方法により成型し、更に80〜200℃で2〜10時間加熱することにより、本発明の樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
また、本発明の樹脂組成物をフィルム状に加工したフィルム及びその硬化物は、本発明の樹脂組成物を有機溶媒に溶解したワニスにより得られる。ここで、ワニスに用いる有機溶媒としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤等が挙げられる。また、ワニス中の固形分濃度(有機溶媒以外の成分濃度)は通常20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。なお、本発明の樹脂組成物をフィルム状に加工したフィルムの硬化物は、本発明の樹脂組成物の硬化物層として使用することができる。
更に、本発明の樹脂組成物をフィルム状に加工したフィルムは、上記ワニスを、公知のグラビアコート法、スクリーン印刷、メタルマスク法、スピンコート法などの各種塗工方法により、例えば平面状支持体上に塗布し、乾燥して得られる。ここで、乾燥後のフィルムの厚さは、例えば5〜500μmであることが好ましい。また、塗工方法は、基材の種類、形状、大きさ、塗膜の膜厚により適宜選択される。基材としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらの共重合体等から作製されるフィルム、或いは銅箔等の金属箔が挙げられ、これらの中でも、銅箔、ポリイミド、ポリアミドが好ましい。このフィルムを更に加熱することにより硬化物を得ることができる。本発明の樹脂組成物のフィルム(本発明の樹脂組成物の硬化物層を含む)としての好適な用途としては、フレキシブルプリント配線板用接着シート、フレキシブルプリント配線板用補強板、フレキシブルプリント配線板用カバーレイ、片面または両面金属張樹脂積層板(以下、これらを合わせてフレキシブルプリント配線板用材料という)が挙げられ、本発明の樹脂組成物は、これらを構成するフレキシブルプリント配線板用材料の接着剤または樹脂層として作用する。かかる用途においては、上記平面状支持体が剥離フィルムとしての機能することが好ましい。なお、上記金属張樹脂積層板は、本発明の樹脂組成物の硬化物層の片面又は両面が、金属箔層の片面又は片面金属張樹脂積層板の樹脂面に接していることを特徴とする。また、本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記したフレキシブルプリント配線板用材料の内の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする。更に、本発明の樹脂組成物及びその硬化物は、基材への密着性及び電気特性に優れるためビルドアップ基板等の半導体用基板の熱硬化型層間絶縁膜としても使用できる。
また、上記ワニスを、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の樹脂組成物の硬化物を得ることもできる。なお、この際の有機溶媒の使用量は、本発明の樹脂組成物と該有機溶媒の混合物中で通常10〜70質量%であり、好ましくは15〜70質量%である。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例、比較例において、得られる化合物の組成・構造の同定等は、次の手法により行った。
H−NMR>
Bruker製核磁気共鳴装置 AC400(400MHz)を用いて測定し、CDCl−d又はDMSO−d6を溶媒とし、内部標準のTMSからのケミカルシフトδ(ppm)を示した。なお、H−NMR測定において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、Jは結合定数を表す。
13C−NMR>
Bruker製核磁気共鳴装置 AC400(101MHz)を用いて測定し、CDCl−d又はDMSO−d6を溶媒とし、内部標準のTMSからのケミカルシフトδ(ppm)を示した。
<FT−IR>
日本分光製フーリエ変換赤外分光光度計 FT-IR4200を用いて、KBr錠剤法又はフィルム法により測定した。
<元素分析>
PerkinElmer製元素分析装置 2400を用いて、炭素、水素及び窒素元素の構成比率を測定した。
<分子量測定>
東ソー製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー HLC−8220GPCを用い、キャリア溶媒としては、NMPにLiBrを0.01モル濃度で溶解したものを使用し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)をポリスチレンを標準物質として測定した。
<対数粘度ηinh
0.5g/dLのNMP溶液を調製した後、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<融点測定>
島津製作所製示差走査熱量計 DSC-60を用いて、昇温速度5℃/分で測定した。
(トリアジンジクロリドの合成1)
温度計、攪拌器、塩化カルシウム管及び滴下ロートを取り付けたフラスコに、塩化シアヌル(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン)3.50g(19.0
mmol)とTHF(テトラヒドロフラン)100mLを加え、攪拌しながら溶解させた後に、氷浴で0〜5℃に冷却した。2.12g(19.4mmol)のp-アミノフェノールを80mLのTHFに溶かした溶液を温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間攪拌した。
次に、1.03g(9.74mmol)の炭酸ナトリウムを50mLの蒸留水に溶かした水溶液を、温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物を飽和食塩水で洗浄し、有機層を回収した。有機層を無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液からTHFを留去することにより、下記式(10)で表される6−(p−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリドの粗生成物を得た。
Figure 2013245206
これをTHF/n−へキサンの混合溶媒により再結晶した後、60℃で6時間減圧乾燥し白色の粉末状結晶を得た(収率49%)。融点は214〜215℃であった。該生成物の構造はH−NMR測定(溶媒:DMSO−d613C−NMR測定(溶媒:DMSO−d6)で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ6.78(d,2H,Ar−H),7.33(d,2H,Ar−H),9.49(s,1H,OH),10.9(s,1H,NH)
(2)13C−NMR(ppm) δ169.5(C=N),168.4(C=N),163.4(C=N),154.9(C=C),127.9(C=C),123.5(C=C),115.2(C=C)
(トリアジンジクロリドの合成2)
温度計、攪拌器、塩化カルシウム管及び滴下ロートを取り付けたフラスコに、塩化シアヌル23.23g(126mmol)とTHF90mLを加え、攪拌しながら溶解させた後に、氷浴で0〜5℃に冷却した。16.50g(134mmol)のp-(メチルアミノ)フェノールを80mLのTHFに溶かした溶液を温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間攪拌した。
次に、6.63g(62.5mmol)の炭酸ナトリウムを60mLの蒸留水に溶かした水溶液を、温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物を飽和食塩水で洗浄し、有機層を回収した。有機層を無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液からTHFを留去することにより、下記式(11)で表される6−(N−メチル−p−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリドの粗生成物を得た。
Figure 2013245206
これをTHF/n−へキサンの混合溶媒により再結晶した後、80℃で6時間減圧乾燥し、白色の粉末状結晶を得た(収率53%)。融点は164〜165℃であった。化合物の構造はH−NMR測定(溶媒:CDCl−d)、13C−NMR測定(溶媒:CDCl−d)で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ3.50(s,3H,CH),6.84(d,2H,Ar−H),7.06(d,2H,Ar−H),7.40(s,1H,OH)
(2)13C−NMR(ppm) δ170.1(C=N),169.8(C=N),165.1(C=N),155.9(C=C),134.1(C=C),127.1(C=C),116.3(C=C),39.5(CH
(トリアジンジクロリドの合成3)
温度計、攪拌器、塩化カルシウム管及び滴下ロートを取り付けたフラスコに、塩化シアヌル56.1g(0.30mol)とTHF150mLを加え、攪拌しながら溶解させた後に、氷浴で0〜5℃に冷却した。28.3g(0.30mol)のアニリンを80mLのTHFに溶かした溶液を温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間攪拌した。
次に、19.5g(0.18mol)の炭酸ナトリウムを90mLの蒸留水に溶かした水溶液を、温度上昇に注意しながらゆっくりと滴下し、0〜5℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物を飽和食塩水で洗浄し、有機層を回収した。有機層を無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液からTHFを留去することにより、下記式(12)で表される6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリドの粗生成物を得た。
Figure 2013245206
これをトルエン/n−へキサンの混合溶媒により再結晶した後、80℃で9時間減圧乾燥し、白色の針状結晶を得た(収率60%)。融点は134〜135℃であった。化合物の構造はH−NMR測定(溶媒:CDCl−d)13C−NMR測定(溶媒:CDCl−d)で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ7.22(t,1H,p−Ar−H),7.40(t,2H,m−Ar−H),7.53(d,2H,o−Ar−H),7.86(s,1H,NH)
(2)13C−NMR(ppm) δ171.3(C=N),170.1(C=N),164.0(C=N),135.6(C=C),129.2(C=C),125.8(C=C),121.0(C=C)
上記の操作により得られた三種のトリアジンジクロリドを原料として、トリアジン系ジアミンを以下の手法により製造した。
(トリアジン系ジアミンの合成1)
マグネット攪拌子、窒素導入管、冷却管、及び滴下ロートを取り付けたフラスコに、75mLの1,4‐ジオキサン、0.98g(9.2mmol)の炭酸ナトリウム及び12.1g(0.112mol)のp‐フェニレンジアミンを加え、還流温度で攪拌し溶解させた。そこに、2.4g(9.2mmol)の6‐(p‐ヒドロキシアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジクロリドを50mLの1,4‐ジオキサンに溶かした溶液をゆっくりと滴下した。その後、還流温度のまま一晩攪拌した。反応混合物を600mLの熱水に投入し、生成物を析出させた。
これを熱水で4回、蒸留水で1回洗浄した。ろ過により回収した析出物をアセトンに溶解し、活性炭で処理した。ろ液からアセトンを留去することにより、下記式(13)で表される2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−(4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン(ATDA-OH)の粗生成物を得た。
Figure 2013245206
この粗生成物を、1,4‐ジオキサンにより2回再結晶を行い、200℃で8時間減圧乾燥し、茶色の粉末状結晶を得た(収率47%)。融点は273〜274℃であった。該生成物の構造はH−NMR測定(溶媒:DMSO−d6)、13C−NMR測定(溶媒:DMSO−d6)、FT−IR、元素分析で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ4.76(s,4H,NH),6.50(d,4H,Ar−H),6.65(d,2H,Ar−H),7.32(s,4H,Ar−H),7.49(d,2H,Ar−H),8.52(s,2H,NH),8.64(s,1H,NH),9.01(s,1H,OH)
(2)13C−NMR(ppm) δ164.5(C=N),152.8(C=C),144.4(C=C),132.3(C=C),130.0(C=C),122.9(C=C),122.5(C=C),115.2(C=C),114.2(C=C)
(3)FT−IR(cm−1) 3387(O−H),3327(N−H),3022(C−H),1565(C=N),1518(C=C)
(4)元素分析(C2120O)
計算値:C 62.99% H 5.03% N 27.98%
測定値:C 62.88% H 5.12% N 27.80%
(トリアジン系ジアミンの合成2)
マグネット攪拌子、窒素導入管、冷却管、及び滴下ロートを取り付けたフラスコに300mLの1,4‐ジオキサン、7.0g(66mmol)の炭酸ナトリウム及び115g(1.06mol)のp‐フェニレンジアミンを加え、還流温度で攪拌し溶解させた。そこに、18g(66mmol)の6−(N−メチル−p‐ヒドロキシアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジクロリドを300mLの1,4‐ジオキサンに溶かした溶液をゆっくりと滴下した。その後、還流温度のまま一晩攪拌した。反応混合物を3000mLの熱水に投入し、生成物を析出させた。
これを熱水で4回、蒸留水で1回洗浄した。ろ過により回収した析出物をアセトンに溶解し、活性炭で処理した。ろ液からアセトンを留去することにより、下記式(14)で表される2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−(N−メチル−p−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン(MTDA-OH)の粗生成物を得た。
Figure 2013245206
この粗生成物を、1,4‐ジオキサンにより2回再結晶を行い、180℃で8時間減圧乾燥し、白色の粉末状結晶を得た(収率65%)。融点は260〜261℃であった。該生成物の構造はH−NMR測定(溶媒:DMSO−d6)、13C−NMR測定(溶媒:DMSO−d6)、FT−IR、元素分析で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ3.35(s,3H,CH),4.71(s,4H,N−H),6.42(s,4H,Ar−H),6.77(d,2H,Ar−H),7.10(d,2H,Ar−H),7.28(s,4H,Ar−H),8.48(s,2H,N−H),9.37(s,1H,−OH)
(2)13C−NMR(ppm) δ166.5(C=N),163.7(C=N),155.1(C=C),136.4(C=C),129.6(C=C),128.1(C=C),115.1(C=C),113.7(C=C),39.5(CH
(3)FT−IR(cm−1) 3465(O−H),3388(N−H)
(4)元素分析(C2222O)
計算値:C 63.75% H 5.35% N 27.04%
測定値:C 63.86% H 5.58% N 26.58%
(トリアジン系ジアミンの合成3)
マグネット攪拌子、窒素導入管、冷却管、及び滴下ロートを取り付けたフラスコに、65mLの1,4‐ジオキサン、8.9g(84mmol)の炭酸ナトリウム及び34.6g(0.32mol)のp‐フェニレンジアミンを加え、還流温度で攪拌し溶解させた。そこに、10.1g(42mmol)の6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリドを80mLの1,4−ジオキサンに溶かした溶液をゆっくりと滴下した。その後、還流温度のまま一晩攪拌した。反応混合物を500mLの熱水に投入し、生成物を析出させた。
これを熱水で4回、蒸留水で1回洗浄した。ろ過により回収した析出物をアセトンに溶解し、活性炭で処理した。ろ液からアセトンを留去することにより、下記式(15)で表される2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)の粗生成物を得た。
Figure 2013245206
この粗生成物を用いて1,4−ジオキサン/n−ヘキサンの混合溶媒により2回再結晶を行い、190℃で6時間減圧乾燥し、薄茶色の粉末状結晶を得た(収率58%)。融点は224〜225℃であった。該生成物の構造はH−NMR測定(溶媒:DMSO−d6)、13C−NMR測定(溶媒:DMSO−d6)、FT−IR、元素分析で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ4.78(s,4H,Ar−NH),6.53(d,4H,NH−o−Ar−H),6.94(t,1H,p−Ar−H),7.23(t,2H,m−Ar−H),7.34(d,4H,NH−m−Ar−H),7.79(d,2H,o−Ar−H),8.64(s,2H,Ar−NH−Ar),8.95(s,1H,Ar−NH)
(2)13C−NMR(ppm) δ164.1(C=N),164.0(C=N),144.1(C=C),140.4(C=C),129.0(C=C),128.2(C=C),122.6(C=C),121.4(C=C),119.9(C=C),113.8(C=C)
(3)FT−IR(cm−1) 3387(N−H),1618(C=C),1578(C=N)
(4)元素分析(C2120
計算値:C 65.61% H 5.24% N 29.15%
測定値:C 65.88% H 5.36% N 29.07%
本発明のヒドロキシル基含有芳香族ポリアミド樹脂の合成に用いる二種のトリアジン系活性エステル(OBBT、IPBT)を以下の手法で製造した。
(トリアジン系活性エステルの合成1)
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、オキシジ安息香酸(ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸)6.45g(25mmol)、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン9.69g(55mmol)及びN−メチル−2−ピロリドン100mLを加え0℃に冷却した。その後、N−メチルモルホリン7.6g(75mmol)を攪拌下で滴下し、15分間反応させ、下記式(16)で表されるビス(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)4,4’−オキシビスベンゾエート(OBBT)の反応液を得た。
Figure 2013245206
この反応液を500mLの蒸留水に投入し、析出した生成物を濾別した。酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒で再結晶を行い、室温で減圧乾燥を行った。OBBTの無色の粉末状結晶を得た(収率48%)。融点は131〜132℃であった。該生成物の構造はH−NMR測定(溶媒:CDCl−d)、13C−NMR測定(溶媒:CDCl−d)、FT−IR、元素分析で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ4.09(s,12H,OCH),7.15(d,4H,Ar−H),8.20(d,4H,Ar−H)
(2)13C−NMR(ppm) δ174.3(C=N),170.9(C=N),161.8(C=O),161.0(C=C),133.2(C=C),123.8(C=C),119.0(C=C),55.9(CH
(3)FT−IR(cm−1) 2957(C−H),1752(C=O),1594(C=N),1364(C−N),1231(Ph−O),1040(Ar−O−Ar)
(4)元素分析(C2420
計算値:C 53.73% H 3.76% N 15.67%
測定値:C 53.67% H 3.86% N 15.56%
(トリアジン系活性エステルの合成2)
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、イソフタル酸2.08g(12.5mmol)、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン4.83g(27.5mmol)及びN−メチル−2−ピロリドン50mLを加え0℃に冷却した。その後、N−メチルモルホリン3.79g(37.5mmol)を攪拌下で滴下し、15分間反応させ、下記式(17)で表されるビス(4,6ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)イソフタレート(IPBT)の反応液を得た。
Figure 2013245206
この反応液を500mLの蒸留水に投入し、析出した生成物を濾別した。酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒で再結晶を行い、室温で減圧乾燥を行った。IPBTの無色の粉末状結晶を得た(収率34%)。融点は144〜145℃であった。該生成物の構造はH−NMR測定(溶媒:CDCl−d)、13C−NMR測定(溶媒:CDCl−d)、FT−IR、元素分析で確認した。分析結果を以下に示す。
(1)H−NMR(ppm) δ4.11(s,12H,OCH),7.72(t,1H,Ar),8.47(d,2H,Ar),8.98(s,1H,Ar)
(2)13C−NMR(ppm) δ174.2(C=N),170.5(C=N),161.4(C=O),136.0(C=C),132.6(C=C),129.4(C=C),129.1(C=C),56.0(CH
(3)FT−IR(cm−1) 2955(C−H),1753(C=O),1594(C=N),1377(C−N)
(4)元素分析(C1816
計算値:C 48.65% H 3.63% N 18.91%
測定値:C 48.69% H 3.59% N 18.71%
(芳香族ポリアミド樹脂の合成)
上記の操作により得られたトリアジン系活性ジエステルと、芳香族ジアミンを以下の表1の組み合わせで重縮合して、実施例1〜4のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂と、比較例1〜4の芳香族ポリアミドを樹脂以下の手法により製造した。
Figure 2013245206
なお、表1中ODAは4,4’−オキシジアニリンであり、下記式(18)により表される。
Figure 2013245206
(実施例1)OBBT‐ATDA‐OHの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、ATDA‐OHを0.400g(1.00mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2mLを攪拌溶解し、上記で得られたOBBTの粉末を0.536g(1.00mmol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて実施例1のOBBT‐ATDA‐OHのフレークを得た(収率99%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。また、図1に、得られたOBBT‐ATDA‐OHのDMSO−d6中でのNMRスペクトルと、各ピークの帰属を示す。
(実施例2)OBBT‐MTDA‐OHの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、MTDA‐OHを0.415g(1.00mmol)、NMP2mLを攪拌溶解し、上記で得られたOBBTの粉末を0.536g(1.00mol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて実施例2のOBBT‐MTDA‐OHのフレークを得た(収率99%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。
(実施例3)IPBT‐ATDA‐OHの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、ATDA−OHを0.400g(1.00mmol)、NMP2mLを攪拌溶解し、上記で得られたIPBTの粉末を0.444g(1.00mmol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて実施例3のIPBT‐ATDA‐OHのフレークを得た(収率98%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。
(実施例4)IPBT‐MTDA‐OHの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、MTDA−OHを0.415g(1.00mmol)、NMP2mLを攪拌溶解し、上記で得られたIPBTの粉末を0.444g(1.00mmol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて実施例4のIPBT‐MTDA‐OHのフレークを得た(収率99%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。
(比較例1)OBBT‐ATDAの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、ATDAを0.384g(1.00mmol)、NMP2mLを攪拌溶解し、上記で得られたOBBTの粉末を0.536g(1.00mmol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて比較例1のOBBT‐ATDAの粉末を得た(収率99%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。
(比較例2)OBBT‐ODAの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、ODAを0.200g(1.00mmol)、NMP(5wt%LiCl)2mLを攪拌溶解し、上記で得られたOBBTの粉末を0.536g(1.00mmol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて比較例2のOBBT‐ODAのフレークを得た(収率99%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。
(比較例3)IPBT‐ATDAの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、ATDAを0.384g(1.00mmol)、NMP2mLを攪拌溶解し、上記で得られたIPBTの粉末を0.444g(1.00mmol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて比較例3のIPBT‐ATDAのフレークを得た(収率97%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。
(比較例4)IPBT‐ODAの合成
温度計、窒素導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、ODAを0.200g(1.00mmol)、NMP2mLを攪拌溶解し、上記で得られたIPBTの粉末を0.444g(1.00mmol)加え、室温で6時間反応させ、ポリアミド樹脂の反応液を得た。メタノール200mLに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール100mLで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を室温で乾燥させて比較例4のIPBT‐ODAのフレークを得た(収率99%)。対数粘度及びGPCの測定結果を表2に示す。
Figure 2013245206
(芳香族ポリアミド樹脂の有機溶媒への溶解性)
実施例1〜4、比較例1〜4の芳香族ポリアミド樹脂10mgを、ジメチルアセトアミド(DMAc)、NMP、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、3mLにそれぞれ投入し、目視で該芳香族ポリアミド樹脂の溶解性を確認した。評価は以下の4段階で行った。(++…室温で可溶 +…加熱後に可溶 ±…加熱後に部分的に可溶 −…不溶)結果を表3に示す。
Figure 2013245206
実施例1〜4のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂は、DMAc、NMP、DMSOに室温で可溶であり、THFにも加熱すれば可溶である一方、比較例1、4の芳香族ポリアミド樹脂は、THFに不溶であり、比較例2の芳香族ポリアミド樹脂に至っては、本検討で用いた全ての溶媒に不溶であった。
(芳香族ポリアミド樹脂の耐熱性)
実施例1〜4、比較例1、3のポリアミド樹脂をNMPに溶解し,ガラス板上に流涎して150℃で減圧乾燥してキャストフィルムを作製し、耐熱性を以下の方法で測定した。測定結果を表4に示す。
<ガラス転移温度:T(℃)>
ガラス転移温度は、島津製作所製示差走査熱量分析装置(DSC−60)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/分で測定した。
<10%重量減少温度:Td10(℃)>
セイコー製熱重量分析装置(TG/DTA320)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、実施例1〜4、比較例1、3のポリアミド樹脂から得られたフィルムの初期重量が10%減少した時の温度を測定した。この値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
Figure 2013245206
実施例1のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂は、ヒドロキシ基を有さない点以外は同じ繰り返し構造を有する比較例1の芳香族ポリアミド樹脂に比して、T(ガラス転移温度)、Td10(10%重量減少温度)について優れた値を示した。同様に、実施例3は、比較例3に比してT、Td10について優れた値を示した。
(芳香族ポリアミド樹脂の機械的特性)
実施例1〜4、比較例1〜4のポリアミド樹脂をNMPに溶解し,ガラス板上に流涎し150℃で減圧乾燥してキャストフィルムを作製し、機械的特性を以下の方法で測定した。測定結果を表5に示す。
<破断強度、破断伸び、引張弾性率>
島津製作所製引張試験機(オートグラフAGS−D)を用いて、実施例1〜4、比較例1〜4の芳香族ポリアミド樹脂から得られたフィルムの試験片(5mm×50mm)について引張試験(引張速度:10mm/分)を実施し、フィルムが破断した時の応力及び伸び率からそれぞれ破断強度(MPa)と破断伸び(%)を、応力−歪曲線の初期の勾配から引張弾性率(GPa)を求めた。それぞれ値が大きいほど、機械的特性に優れていることを示す。
Figure 2013245206
実施例1のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂は、ヒドロキシ基を有さない点以外は同じ繰り返し構造を有する比較例1の芳香族ポリアミド樹脂に比して、破断強度、破断伸び、引張弾性率の全てにおいて優れており、特に引張弾性率において著しく優れていた。同様に実施例3は、比較例3に比して破断強度、破断伸び、引張弾性率の全てにおいて優れていた。比較例4は、実施例1〜4に比して破断強度、破断伸び、引張弾性率の全てにおいて劣っていた。なお、比較例2は、有機溶媒に不溶であり、フィルム状に成形することができなかった。
(ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン、ヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物の耐熱性)
エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EP1 EOCN−1020−65 日本化薬株式会社製)を使用し、硬化剤として、ヒドロキシ基含有芳香族ジアミン(ATDA−OH)、ヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂(OBBT−ATDA−OH)、フェノールノボラック(PN1、H−1、明和化成工業株式会社製)を使用し、硬化促進剤としてイミダゾール系化合物(C1 2E4MZ 四国化成工業株式会社製)、及び溶剤としてDMF、シクロペンタノンを使用して、下記表6に示す配合比で組成物を調製した(実施例5、実施例6、比較例5)。該組成物を、テフロン(登録商標)板状に塗布し、80℃で1時間乾燥した後、120℃で1時間、160℃2時間、200℃で4時間かけて硬化させた。得られた硬化物について以下の方法を用いて5%重量減少温度を測定した。測定結果を表6に示す。
<5%重量減少温度:Td5(℃)>
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、実施例5、6、及び比較例5の得られた硬化物の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。この値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。なお、硬化物はサイクロミルで粉砕後、200メッシュの金網を通過し、100メッシュの金網に乗った硬化物のみを用いて行った。測定に用いたサンプル量は大凡いずれも10mgである。
Figure 2013245206
実施例5のヒドロキシ基含有芳香族ジアミン(ATDA−OH)を硬化剤として含む樹脂組成物の硬化物、実施例6のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂(OBBT−ATDA−OH)を硬化剤として含む樹脂組成物の硬化物は、従来の硬化剤のみを用いた比較例5の硬化物に比して、高い5%重量減少温度(Td5)を有しており、熱安定性、即ち耐熱性に優れていることがわかった。

Claims (16)

  1. 下記式(1):
    Figure 2013245206
    (式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、aは対応するRの平均置換基数で、0〜4の整数を示す。)で表されるヒドロキシ基含有芳香族ジアミン。
  2. 下記式(2):
    Figure 2013245206
    (式(2)中、Arは二価の芳香族残基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3アルキル基を示し、aは対応するRの平均置換基数で、0〜4の整数を示す。)で表される繰り返し単位と、下記式(3):
    Figure 2013245206
    (式(3)中、Arは二価の芳香族残基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜3アルキル基を示し、a、a’はそれぞれ対応するRの平均置換基数で、aは0〜4の整数を示し、a’は0〜5の整数を示す。)で表される繰り返し単位を含むヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
  3. 前記式(2)で表される繰り返し単位からなるヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
  4. 前記Arが、下記式(4):
    Figure 2013245206
    (式(4)中、Rは水素原子又炭素数1〜6の置換基を示し、Rは直接結合(単結合)或いは酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−SO−、−N=N−又は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、b、c、dはそれぞれ対応するRの平均置換基数で、b、cはそれぞれ0〜4の整数を示し、dは0〜6の整数を示す。)で表される群から選ばれる2価の芳香族残基である請求項2又は3に記載のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
  5. 式(4)のRが水素原子であり、Rが酸素原子である請求項4に記載のヒドロキシ基含有芳香族ポリアミド樹脂。
  6. 請求項2〜5の何れか一項に記載のポリアミド樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。
  7. 請求項1に記載のジアミン化合物、請求項2〜5の何れか一項に記載のポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの化合物と、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。
  8. フィルム状に加工したことを特徴とする請求項6又は7に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項8に記載の樹脂組成物を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着シート。
  10. 請求項6又は7に記載の樹脂組成物を加熱硬化して得たことを特徴とする樹脂組成物の硬化物。
  11. 請求項9に記載のフレキシブルプリント配線板用接着シートを加熱硬化して得たことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着シートの硬化物。
  12. 請求項8に記載の樹脂組成物の硬化物層を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用補強板。
  13. 請求項8に記載の樹脂組成物の硬化物層を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用カバーレイ。
  14. 請求項8に記載の樹脂組成物の硬化物層の片面または両面が、金属箔層の片面または片面金属張樹脂積層板の樹脂面に接していることを特徴とする金属張樹脂積層板。
  15. 請求項8に記載の樹脂組成物、請求項9に記載のフレキシブルプリント配線板用接着シート、請求項12に記載のフレキシブルプリント配線板用補強板、請求項13に記載のフレキシブルプリント配線板用カバーレイ及び請求項14に記載の金属張樹脂積層板からなる群から選ばれる1種以上を用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
  16. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物又は請求項10に記載の樹脂組成物の硬化物を用いたことを特徴とする層間絶縁膜。
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