JP2013177654A - 電解硬質金めっき液、めっき方法、及び、金−鉄合金被膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の電解硬質金めっき液は、シアン化金塩と、有機酸伝導塩と、キレート化剤と、鉄イオンと、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも何れかと、を含む。本発明のめっき方法は、本発明の電解硬質金めっき液を用いためっき方法であって、コネクタ素材のめっきが不必要な部分を遮蔽する工程と、部分的に遮蔽された前記コネクタ素材の接点部に前記電解硬質金めっき液を吹き付けて部分的にめっきを行なう工程と、を含む。本発明の金−鉄合金被膜の製造方法は、本発明の電解硬質金めっき液を用いて電解めっきを行なうことによって、めっき対象物に金−鉄合金被膜を析出させるものである。
【選択図】図2
Description
また、特許文献1〜3に記載の電解硬質金めっき液は、クエン酸などの有機酸を含む伝導塩、可溶性金塩(シアン化金塩など)、およびコバルト塩またはニッケル塩などを含むめっき液に、ニトロ安息香酸などのニトロ基含有化合物を加えたものである。この電解硬質金めっき液は、ニトロ基含有化合物を含むことで、選択的なめっき処理を可能とするものである。すなわち、この電解硬質金めっき液によれば、めっき浴中でのニトロ基の酸化還元作用により電流密度が低い箇所では金が析出しにくいという、ニトロ基のバリア特性を利用して、電子部品上の必要な箇所にのみ金めっき被膜を形成し、不要な箇所には金めっきの析出を抑制することができる。
本発明の電解硬質金めっき液においては、前記有機酸伝導塩が、カルボン酸塩であってもよい。
本発明では、弱酸性溶液から、金と鉄との合金被膜を安定にしかも高速で有効な析出効率を得るための電解硬質金めっき液の組成を提供する。また、本発明では、本発明にかかる電解硬質金めっき液を用いて、特にコネクタ等の電子部品の接点材を形成する際に好適な金−鉄合金被膜を形成する方法を提供する。
本発明の電解硬質金めっき液に含まれる鉄イオンは、例えば、可溶性の有機鉄塩を当該めっき液に添加することによって得られる。本発明のめっき液から得られる金−鉄合金被膜における金と鉄との合金割合を安定的に保つためには、鉄イオンは有機鉄塩に由来するものであることが望ましい。この可溶性の有機鉄塩としては、例えば、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、グリコール酸鉄、乳酸鉄、EDTA−鉄、フマル酸鉄、酒石酸鉄が挙げられる。これらの有機鉄塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
本発明の電解硬質金めっき液には、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも何れかが含まれている。本発明のめっき液に、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも何れかを添加することにより、めっき液中ではホウ酸イオンが含まれることになる。本発明の電解硬質金めっき液は、当該めっき液中に含まれる鉄イオン及びホウ酸イオンの電気化学的な作用効果により、低電流密度において金などの析出が抑制される。これにより、必要な箇所に対してのみ金−鉄合金被膜を形成することができる。
本発明の電解硬質金めっき液においては、金イオン源としてシアン化金塩が用いられる。シアン化金塩としては、例えば、シアン化第一金カリウム、シアン化第二金カリウム、シアン化金アンモニウム、シアン化金ナトリウム等が挙げられる。
本発明の電解硬質金めっき液には、有機酸伝導塩が含まれる。有機酸伝導塩とは、導電性を有する有機酸塩であり、例えば、クエン酸(具体的には、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウムなど)、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸(具体的には、コハク酸カリウムなど)等のカルボン酸系の有機酸の塩が挙げられる。なお、本発明のめっき液においては、有機酸伝導塩を、塩の形態でめっき液中に添加してもよいし、有機酸と無機化合物(例えば、アルカリ金属塩、金属水酸化物、無機酸塩など)とをめっき液中に添加し、液中で結果的に伝導塩の状態となるようにしてもよい。有機酸伝導塩は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の電解硬質金めっき液には、キレート化剤が含まれている。キレート化剤としては、例えば、クエン酸、EDTA、酢酸、リンゴ酸などのカルボキシル基含有の化合物、エチレンジアミン、トリエタノールアミンなどのアミン塩が挙げられる。また、これらのキレート化剤を2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明の電解硬質金めっき液には、上記した各成分以外に金属塩が含まれていてもよい。この金属塩としては、例えば、コバルト塩、ニッケル塩、及び、銀塩が挙げられ、これらの金属塩を、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
本発明の電解硬質金めっき液中に含まれる銀塩は、銀換算で0.05g/L〜5g/Lの範囲の濃度で含まれていることが望ましい。本発明のめっき液において、より好ましい銀の濃度は、0.1g/L〜1g/Lである。
続いて、本発明のめっき方法について説明する。本発明にかかるめっき方法は、上述した本発明の電解硬質金めっき液を用いためっき方法である。本発明のめっき方法は、コネクタ素材のめっきが不必要な部分を遮蔽する工程と、部分的に遮蔽された前記コネクタ素材の接点部に前記電解硬質金めっき液を吹き付けて部分的にめっきを行なう工程と、を含んでいる。具体的には、このめっき方法は、噴射式装置(スパージャー等)を用いてコネクタ素材のめっきが不必要な部分を機械的に押さえることによってめっきが不必要な部分を遮蔽する方式により行なわれる。この方式は、例えば特許文献1に記載されているように、コネクタ素材に対して必要な部分にのみめっき被膜を形成する部分的なめっき処理の手法として公知のものである。特許文献1に示すニッケルバリアめっき技術においては、金めっきを施したくない部分にシリコンゴム部材を押し付けて、ジェット噴流式金めっき法で電解硬質金めっき被膜を部分的に形成している。
続いて、本発明の金−鉄合金被膜の製造方法について説明する。本発明にかかる金−鉄合金被膜の製造方法は、上記した本発明の電解硬質金めっき液を用いて電解めっきを行なうことによって、めっき対象物に金−鉄合金被膜を析出させるというものである。
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、本発明の電解硬質金めっき液を用いて電解めっき処理を行って金−鉄合金被膜を形成し、得られた被膜の特性を調査した。その結果について、以下に説明する。
実施例Aでは、本発明の電解硬質金めっき液における鉄イオンとホウ酸の作用効果を、ハルセル試験により確認した。本実施例Aで使用した硬質電解金めっき液の組成は以下の通りである。
(1)シアン化第一金カリウム 12g/L(金換算で8g/L)
(2)クエン酸第二鉄アンモニウム 24g/L(鉄換算で4g/L)
(3)クエン酸 180g/L
(4)水酸化カリウム 16g/L
(5)ホウ酸 20g/L
上記の組成Aにおいて、(3)のクエン酸が本発明の電解硬質金めっき液におけるキレート剤に相当する。また、(3)のクエン酸および(4)の水酸化カリウムをめっき液中に投与して得られる塩が、本発明の電解硬質金めっき液における有機酸伝導塩に相当する。
(めっき処理の条件)
pH3.5
液温度 50℃
また、本実施例Aにおいて行なったハルセル試験の方法は以下の通りである。
市販のハルセル試験器(株式会社山本鍍金試験器社製)を用い、めっき対象基材は、真鍮製ハルセル試験板(縦70mm、横100mm、厚さ0.3mm)にニッケルめっき(厚み3μm)を両面に施したものを使用した。めっき条件はめっき液を約300rpmで攪拌し、陽極にPt−Ti電極を用いてめっき時間35秒、通電電流2Aとした。
実施例Bでは、硬質電解金めっき液の組成を以下に示す組成Bとした以外は、実施例Aと同様の方法にて、電解硬質金めっき液における鉄イオンとホウ酸の作用効果を、ハルセル試験により確認した。
(1)シアン化第一金カリウム 11.8g/L(金換算で8g/L)
(2)硫酸コバルト・7水和物 0.95g/L(コバルト換算で0.2g/L)
(3)クエン酸鉄(III)アンモニウム 23.5g/L(鉄換算で4g/L)
(4)グリコール酸 100g/L
(5)クエン酸二アンモニウム 50g/L
(6)ホウ酸 20g/L
(7)水酸化カリウム 4g/L
(8)スルファミン酸アンモニウム 50g/L
(9)EDTA・2Na 10g/L
上記の組成Bにおいて、(2)の硫酸コバルト・7水和物が本発明の電解硬質金めっき液におけるコバルト塩に相当する。また、(9)のEDTA・2Naが本発明の電解硬質金めっき液におけるキレート剤に相当する。また、(5)のクエン酸二アンモニウムが、本発明の電解硬質金めっき液における有機酸伝導塩に相当する。また、(4)のグリコール酸および(7)の水酸化カリウムをめっき液中に投与して得られる塩も、本発明の電解硬質金めっき液における有機酸伝導塩に相当する。
(めっき処理の条件)
pH3.5
液温度 50℃
〔比較例C〕
比較例Cでは、実施例Bの組成中からバリア効果の成分である、クエン酸鉄(III)アンモニウム及びホウ酸を加えない以下の組成Cとした。電解硬質金めっき液の組成を変更した以外は、実施例Bと同様の条件にてハルセル試験を行なった。
(1)シアン化第一金カリウム 11.8g/L(金換算で8g/L)
(2)硫酸コバルト・7水和物 0.95g/L(コバルト換算で0.2g/L)
(3)グリコール酸 100g/L
(4)クエン酸二アンモニウム 50g/L
(5)水酸化カリウム 4g/L
(6)スルファミン酸アンモニウム 50g/L
(7)EDTA・2Na 10g/L
比較例Cにおけるめっき処理の条件は以下の通りである。
pH3.5
液温度 50℃
〔結果〕
表1には、実施例A,B、比較例Cにおいて、ハルセル試験板の各測定点の膜厚を測定した結果を示す。表1に示すA〜Cおよび数字は、それぞれ以下のものを意味する。
A:実施例Aの組成
B:実施例Bの組成
C:比較例Cの組成
1〜9:測定ポイントN0.1〜9
Claims (11)
- シアン化金塩と、
有機酸伝導塩と、
キレート化剤と、
鉄イオンと、
ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも何れかと、
を含む、電解硬質金めっき液。 - 前記鉄イオンは、
有機鉄塩を添加して生じたものである、請求項1に記載の電解硬質金めっき液。 - 前記有機鉄塩が、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、グリコール酸鉄、乳酸鉄、EDTA−鉄、フマル酸鉄、及び、酒石酸鉄からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項2に記載の電解硬質金めっき液。
- 前記鉄イオンは、鉄換算で、0.2g/L〜10g/Lの濃度で含まれている、請求項1から3の何れか1項に記載の電解硬質金めっき液。
- 前記ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも何れかは、ホウ酸として3g/L〜50g/Lの濃度で添加されている、請求項1から4の何れか1項に記載の電解硬質金めっき液。
- コバルト塩、ニッケル塩、及び、銀塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの金属塩をさらに含む請求項1から5の何れか1項に記載の電解硬質金めっき液。
- 前記有機酸伝導塩が、カルボン酸塩である、請求項1から6の何れか1項に記載の電解硬質金めっき液。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載の電解硬質金めっき液を用いためっき方法であって、
コネクタ素材のめっきが不必要な部分を遮蔽する工程と、部分的に遮蔽された前記コネクタ素材の接点部に前記電解硬質金めっき液を吹き付けて部分的にめっきを行なう工程と、を含むめっき方法。 - 請求項1から7の何れか1項に記載の電解硬質金めっき液を用いて電解めっきを行なうことによって、めっき対象物に金−鉄合金被膜を析出させる、金−鉄合金被膜の製造方法。
- 請求項9に記載の金−鉄合金被膜の製造方法であって、
ニッケル被膜、パラジウム被膜、及び、パラジウム合金被膜の少なくとも何れかの上に電解めっきを行うことにより、前記金−鉄合金被膜を析出させる、金−鉄合金被膜の製造方法。 - 請求項9または10に記載の金−鉄合金被膜の製造方法であって、該合金被膜中に0.01〜3.0%の含有量で鉄が含まれる、金−鉄合金被膜の製造方法。
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