JP2013177113A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】転がり抵抗特性、ウェット性能および耐摩耗性においてバランスよく優れ、かつトレッドグルーブクラックの発生が抑制された空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】キャップトレッドおよびベーストレッドを含む構造のトレッドを有する空気入りタイヤであり、キャップトレッドが、ゴム成分100質量部に対して、BET比表面積が70〜300m2/gのシリカ、ならびにカーボンブラックおよび/または無機フィラーを所定量含有し、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミドおよびアミドエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する離型剤を0.5〜5質量部含有するキャップトレッド用ゴム組成物からなり、ベーストレッドが、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックおよび/またはBET比表面積が70〜300m2/gのシリカを所定量含有するベーストレッド用ゴム組成物からなる空気入りタイヤである。
【選択図】図1

Description

本発明は空気入りタイヤに関する。
近年、空気入りタイヤに要求される特性は多岐にわたり、特に乗用車用タイヤや商用車用タイヤなどには、転がり抵抗特性(低発熱性)、路面摩擦力(ウェット性能、ドライ性能)および耐摩耗性においてバランスよく優れることが要求される。
従来、転がり抵抗特性、路面摩擦力および耐摩耗性においてバランスよく優れた空気入りタイヤを得るために種々の工夫がなされている。例えば、トレッドをキャップトレッド/ベーストレッドの2層構造とし、キャップトレッドとして路面摩擦力(ウェット性能、ドライ性能)および耐摩耗性を有するゴム組成物を採用し、ベーストレッドとして低発熱性を有するゴム組成物を採用することが知られている。
さらに、キャップトレッド用ゴム組成物に充填剤として配合するカーボンブラックをシリカに置き換えることで、微小変形時の路面凹凸追従性が高まり、空気入りタイヤのウェット性能が向上することが知られている。また、キャップトレッド用ゴム組成物に配合するゴム成分としては、路面摩擦力、耐摩耗性、タイヤの用途(使用環境の温度、使用荷重等)を考慮し適切なガラス転移温度(Tg)を付与することができるスチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴムなどのジエン系ゴムが好んで用いられる。
しかしながら、キャップトレッド用ゴム組成物においてシリカを多量に配合した場合、特にシリカをカーボンブラックよりも多く配合した場合などは、シリカの分散性向上剤、シランカップリング剤、プロセスオイル・レジン等の軟化剤、低分子量BR、低分子量SBRなどを配合した場合であっても、トレッド主溝の底部においてインフレートによる初期引張歪み(インフレート歪)が大きくなる、つまりカット口開き試験によるカット口開き量が大きくなるという問題がある。
これは、ゴム組成物に配合するシリカを増やすことで、混練り後のゴム組成物中に、シランカップリング剤と結合できなかったシリカが増加することによる。つまり、シランカップリング剤と反応できなかったシリカが再凝集することで、未加硫トレッドのシュリンクを引き起こす。さらに、この未加硫トレッドを加硫金型にて加硫を行った後も、冷却するに伴い、カーボンブラックのみを充填剤として配合するゴム組成物に比べて大きなシュリンクが生じる。この、加硫後の冷却に伴うシュリンクが、主溝の底部におけるインフレート歪の原因となっている。また、シリカ配合によるシュリンクは、加硫前のシランカップリング剤と未反応のシリカとゴム成分の間の空間、あるいはゴム成分中の揮発性ガスが存在し、これらが、加硫および冷却により消滅することにより増長される。
一方、ベーストレッド用ゴム組成物においては、充填剤の含有量が少なく、ゴム成分の含有量が多いゴム組成物を採用することで、空気入りタイヤの転がり抵抗特性が向上することが知られている。さらに、トレッドにおけるベーストレッドの体積割合を大きくすることで、より転がり抵抗特性を向上させることができることから、ベーストレッドが接地面とならない限界、つまりウェアインジケーターの高さまでベーストレッドを設けるなどが行われている。
なお、ウェアインジケーターとは、空気入りタイヤのトレッドにおける主溝最深部から所定の高さ(乗用車用タイヤは1.6mm)まで設けることが義務付けられた溝の浅い部分であり、タイヤトレッドの摩耗による新品タイヤへの交換の目安とされるものである。
しかしながら、ベーストレッド用ゴム組成物中のゴム成分の含有量が多いほど、またトレッドにおけるベーストレッドの体積割合が大きいほど、加硫前後におけるシュリンクが発生しやすくなり、このシュリンクが溝底でのインフレート歪の原因となっている。
そして、前記のインフレート歪が大きくなると、主溝の底部においてオゾンや、光などの刺激により発生した初期カットの成長が促進され、使用時の繰り返し変形を経て、トレッドグルーブクラック(TGC)の発生に至る。そして、発生したTGCは、その後の使用時の繰り返し変形により、トレッドの内側に埋設したベーストレッドやブレーカー層に達し、さらにはセパレーション、空気漏れ、タイヤのバーストに至るおそれがある。
インフレート歪を小さくする対策としては、タイヤ形状の設計において、インフレートにより主溝が狭くなる形状とすること、つまりはインフレートによるタイヤの膨張により、トレッドショルダー部がサイドウォール側に引っ張られるのではなく、インフレートによりショルダー部がクラウン部より接地方向にせり出す構造に設計することが知られている。
しかしながら、インフレートにより主溝が狭くなる形状のタイヤは、ショルダー部が接地方向にせり出すために、ショルダー部の接地圧力がクラウン部よりも大きくなり、高速耐久性の大幅な低下、クラウン部におけるすべり摩耗量の増加によりタイヤ性能が低下する。
また、理論的にシリカの全表面積を覆う量のシランカップリング剤をキャップトレッド用ゴム組成物において配合することで、シリカの分散性を向上させ、凝集シリカの構成を防ぐことが考えられる。しかしながら、シリカの全表面をシランカップリング剤で覆うことは容易ではなく解決には至っていない。
さらに、加硫条件を低温かつ長時間とし、さらに加硫金型あるいは生トレッド表面に離型剤を頻繁に塗布することでゴム滑りをよくし、インフレート歪みおよびTGCの発生を改善する技術が知られているが、生産性が悪く、実用的でない。また、塗布する離型剤として、シリコーンオイルなどが挙げられるが、シリコーンオイルを塗布したタイヤは、まだらな光沢を生じ、タイヤの外観が損なわれるという問題や、シリコーンオイルがコンポーネントのジョイント界面に入り込んだ場合、ジエン系ゴムの架橋反応を阻害し、界面セパレーションが生じやすくなるという問題があり、好ましくない
特許文献1には、特定のパラフィンワックス、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤および硫黄を特定量配合することで、美観、耐候性および悪路耐久性に優れた空気入りタイヤとすることが記載されている。しかしながら、主溝の底部における歪みを抑えることは考慮されていない。また、特許文献2などには、トレッドをキャップトレッド/ベーストレッドの2層構造とする空気入りタイヤが記載されているが、主溝の底部における歪みを抑えることは考慮されていない。
特開2011−116847号公報 特開2011−1521号公報
本発明は、転がり抵抗特性、ウェット性能および耐摩耗性においてバランスよく優れ、TGCの発生が抑制された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、キャップトレッドおよびベーストレッドを含む構造のトレッドを有する空気入りタイヤであり、キャップトレッドが、ゴム成分100質量部に対して、(A)BET比表面積が70〜300m2/gのシリカを40〜115質量部、(B)カーボンブラックおよび/または無機フィラーを3〜40質量部含有し、前記(A)および(B)の合計含有量が50〜120質量部であり、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミドおよびアミドエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する離型剤を0.5〜5質量部含有するキャップトレッド用ゴム組成物からなり、ベーストレッドが、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックおよび/またはBET比表面積が70〜300m2/gのシリカを30〜55質量部含有するベーストレッド用ゴム組成物からなり、有効接地幅内におけるトレッド全体積に占めるベーストレッドの体積が15〜50%である空気入りタイヤに関する。
ベーストレッドの接地面側端部が主溝最深部より2.0mm以上タイヤ接地面側であることが好ましい。
さらに、キャップトレッド用ゴム組成物が、ジフェニルグアニジンを0〜1.0質量部、下記式(1)で表される化合物、および/または、式(2)で表される化合物を0.1〜4質量部含有することが好ましい。
Figure 2013177113
(式(1)中のR1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
Figure 2013177113
(式(2)中のxは1以上の数であり、R5〜R8はそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
本発明によれば、キャップトレッドおよびベーストレッドを含む構造のトレッドを有する空気入りタイヤにおいて、ゴム成分に所定の充填剤および離型剤を所定量含有するキャップトレッド用ゴム組成物からなるキャップトレッドとし、カーボンブラックおよび/または所定のシリカを所定量含有するベーストレッド用ゴム組成物からなるベーストレッドとすることにより、転がり抵抗特性、ウェット性能および耐摩耗性においてバランスよく優れ、かつTGCの発生が抑制された空気入りタイヤを提供することができる。
本発明の一実施形態による加硫金型およびタイヤの一部断面を示した概略図である。 本発明の一実施形態によるタイヤの一部断面を示した概略図である。 未加硫タイヤのトレッド部の断面を示した概略図である。 本発明の一実施形態による加硫金型およびトレッド部の断面を示した概略図である。 本発明の一実施形態による加硫金型およびトレッド部の断面を示した概略図である。 本発明の一実施形態による加硫金型およびトレッド部の断面を示した概略図である。
本発明の空気入りタイヤは、所定のキャップトレッド用ゴム組成物からなるキャップトレッドおよび所定のベーストレッド用ゴム組成物からなるベーストレッドを含む構造のトレッドを有する。
まず、本発明の空気入りタイヤのトレッドを構成するキャップトレッドについて説明する。
前記キャップトレッドはキャップトレッド用ゴム組成物からなる。該キャップトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分に所定の充填剤および離型剤を所定量含有し、路面摩擦力(ウェット性能、ドライ性能)および耐摩耗性を有するゴム組成物である。
前記ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、NR中に含まれるリン脂質を低減、除去した改質天然ゴム(HPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、グリップ性能および耐摩耗性がバランスよく得られるという理由からNR、ENR、BR、SBRを使用することが好ましく、より優れたグリップ性能が得られるという理由からSBRを使用することがより好ましい。
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。また、末端を変性したS−SBR(変性S−SBR)またはE−SBR(変性E−SBR)を使用することもできる。変性S−SBRおよび変性E−SBRとしては、例えば、アミノ基を有するアルコキシ基などのアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物で変性したものや、アミノ基のみで変性したものが挙げられる。
SBRのスチレン含有率は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。SBRのスチレン含有率が20質量%未満の場合は、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、SBRのスチレン含有率は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。SBRのスチレン含有率が60質量%を超える場合は、耐摩耗性が低下する傾向、混練りにおけるポリマー分散が悪化する傾向、さらにはSBRの生ゴム粘度が高いため製造が困難になる傾向がある。
ジエン系ゴム成分としてSBRを含有する場合の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。20質量%未満であると、充分な耐熱性およびグリップ性能が得られない傾向がある。また、SBRの含有量は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。SBRの含有量が90質量%を超える場合は、発熱性および耐亀裂成長性が悪化する傾向がある。
BRとしては、ハイシス1,4−ポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)、希土類系BRなどが挙げられ、これらの各種BRを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ハイシスBRとは、シス1,4結合含有率が90質量%以上のブタジエンゴムである。
前記SPB含有BRは、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を、単にBR中に分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散していることが耐亀裂成長性において優れるという点から好ましい。
1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。融点が180℃未満の場合は、タイヤの加硫中に結晶が溶融し、硬度が低下する傾向がある。また、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましい。融点が220℃を超える場合は、BRの分子量が大きくなるため、ゴム組成物中において分散性が悪化し、押出し加工性が悪化する傾向がある。
SPB含有BR中において、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は、2.5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。含有量が2.5質量%未満の場合は、ゴム組成物の充分な硬さが得られない傾向がある。また、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましい。含有量が22質量%を超える場合は、BR自体の粘度が高く、ゴム組成物中におけるBRおよび充填剤の分散性が悪化する傾向がある。ここで、沸騰n−ヘキサン不溶物とは、SPB含有BR中における1,2−シンジオタクチックポリブタジエンを示す。
SPB含有BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は、2.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。含有量が2.5質量%未満の場合は、ゴム硬さが不充分となる傾向がある。また、BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。含有量が20質量%を超える場合は、BRがゴム組成物中に分散し難く、加工性が悪化する傾向がある。
前記変性BRとしては、スズでカップリングされた末端変性BR、アルコキシシリル基および/またはアミノ基を有する末端変性BRが挙げられる。なかでも、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合をおこなったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されているものが好ましい。
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウムおよび有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物や、リチウム金属などがあげられる。前記リチウム開始剤を変性BRの開始剤とすることで、高ビニル、低シス含有量の変性BRを作製できる。
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどがあげられ、これらのスズ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性BR中のスズ原子の含有率は50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましい。スズ原子の含有率が50ppm未満の場合は、変性BR中のカーボンブラックの分散を促進する効果が小さく、tanδが増大する傾向がある。また、スズ原子の含有率は3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、250ppm以下がさらに好ましい。スズ原子の含有率が3000ppmを超える場合は、混練り物のまとまりが悪く、エッジが整わないため、押出し加工性が悪化する傾向がある。
変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。変性BRのMw/Mnが2.0を超える場合は、カーボンブラックの分散性が悪化し、tanδが増大する傾向がある。なお、本発明において、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
変性BRのビニル結合量は5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。変性BRのビニル結合量が5質量%未満の場合は、変性BRを重合(製造)することは困難な傾向がある。また、変性BRのビニル結合量は50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。変性BRのビニル結合量が50質量%を超える場合は、カーボンブラックの分散性が悪化し、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
前記希土類系BRは、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、シス含量が高く、かつビニル含量が低いという特徴を有している。希土類系BRとしては、タイヤ製造において一般的に使用されているものを使用することができる。
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものが使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられ、これらのなかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前記Nd系触媒が、高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、AlRabc(式中、Ra、Rb、Rcは、同一若しくは異なって、水素または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で表されるものを使用できる。アルミノキサンとしては、鎖状アルミノキサン、環状アルミノキサンが挙げられる。ハロゲン含有化合物としては、AlXkd 3-k(式中、Xはハロゲン、Rdは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアラルキル基、kは1、1.5、2または3を表す。)で表されるハロゲン化アルミニウム;Me3SrCl、Me2SrCl2、MeSrHCl2、MeSrCl3などのストロンチウムハライド;四塩化ケイ素、四塩化錫、四塩化チタン等の金属ハロゲン化物が挙げられる。ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯体化するのに用いられ、アセチルアセトン、ケトン、アルコール等が好適に用いられる。
希土類元素系触媒は、ブタジエンの重合の際に、有機溶媒(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等)に溶解した状態で用いても、シリカ、マグネシア、塩化マグネシウム等の適当な担体上に担持させて用いてもよい。重合条件としては、溶液重合または塊状重合のいずれでもよく、好ましい重合温度は−30〜150℃であり、重合圧力は他の条件に依存して任意に選択してもよい。
希土類系BRは、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が35以上であることが好ましくは、40以上であることがより好ましい。35未満の場合は、未加硫ゴム組成物の粘度が低く、加硫後に適正な厚みを確保できなくなる傾向がある。また、該ムーニー粘度が55以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。55を超える場合は、未加硫ゴム組成物が硬くなりすぎて、スムースなエッジで押出すことが困難になる傾向がある。なお、ムーニー粘度は、ISO289、JIS K6300に準じて測定される。
希土類系BRは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。1.2未満の場合は、加工性の悪化が顕著になる傾向がある。また、該Mw/Mnは、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。5を超える場合は、発熱性において劣る傾向がある。
希土類系BRのMwは、30万以上であることが好ましく、32万以上であることがより好ましい。また、該Mwは150万以下であることが好ましく、130万以下であることがより好ましい。更に、上記希土類系BRのMnは、10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましい。また、該Mnは100万以下であることが好ましく、80万以下であることがより好ましい。MwやMnが下限未満である場合は、発熱性および破断伸びにおいて劣る傾向がある。また、上限を超える場合は、加工性の悪化が懸念される。なお、本発明において、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
希土類系BRのシス1,4結合含有率は、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。90質量%未満である場合は、破断伸びおよび耐摩耗性において劣る傾向がある。
希土類系BRのビニル含量は、1.8質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以下であることが特に好ましい。1.8質量%を超える場合は、破断伸びおよび耐摩耗性において劣る傾向がある。なお、本発明において、ハイシスBR、変性BR、希土類系BRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)およびシス1,4結合含有率は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
これらの各種BRの中でも、特に耐摩耗性および発熱性において優れるという点から、希土類系BRを用いることが好ましい。なかでも、耐摩耗性および発熱性においてより優れるという点から、Nd系触媒を用いて合成したBRを用いることが好ましい。
ジエン系ゴム成分としてBRを含有する場合の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。BRの含有量が10質量%未満である場合は、耐摩耗性および耐亀裂成長性が不充分となる傾向がある。また、BRの含有量は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。BRの含有量が80質量%を超える場合は、グリップ性能が不充分となる傾向がある。なお、2種以上のBRを併用する場合は、併用するBRの合計量をBRの含有量とする。
前記NRとしては特に限定されず、タイヤ製造において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20などが挙げられる。
ジエン系ゴム成分としてNRを含有する場合の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。NRの含有量が10質量%未満である場合は、破断伸びおよび破断抗力が不充分となる傾向がある。また、NRの含有量は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。NRの含有量が60質量%を超える場合は、耐亀裂成長性および耐リバージョン性が不充分となる傾向がある。
前記ENRとしては特に限定されず、市販のENR(ENR25、ENR50(MRB社(マレーシア)製)など)を用いてもよいし、NRをエポキシ化して用いてもよい。
ジエン系ゴム成分としてENRを含有する場合の含有量は、シリカとの相互作用により、ウェット性能および転がり抵抗特性が向上するという点から2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、ENRの含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ENRの含有量が50質量%を超える場合は、ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)が高くなり過ぎ、低燃費性および耐摩耗性が悪化する傾向がある。
前記充填剤として(A)所定のBET比表面積を有するシリカ、ならびに、(B)カーボンブラックおよび/または無機フィラーを含有する。
前記(A)シリカを増量することでキャップトレッドのウェット性能を向上させることができる。一方、加硫後の冷却に伴ってゴム組成物がシュリンクし、これに起因してTGCが発生する傾向がある。これに対し、本発明の空気入りタイヤは、キャップトレッド用ゴム組成物に後述する離型剤を含有することで、(A)シリカを含有するキャップトレッド用ゴム組成物からなるキャップトレッドを有するにも関わらず、路面摩擦力(特に、ウェット性能)および耐摩耗性に優れ、かつTGCの発生が抑制されたキャップトレッドとすることができる。
前記(A)シリカとしては、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカとすることが好ましい。
前記(A)シリカのBET比表面積は、70〜300m2/gであり、80〜280m2/gであることが好ましく、90〜250m2/gであることがより好ましい。BET比表面積が70m2/g未満である場合は、耐摩耗性が不充分となる傾向がある。また、BET比表面積が300m2/gを超える場合は、加工性が悪化する傾向、加硫後の冷却に伴うシュリンクが極めて大きくなる傾向がある。
前記(A)シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、40質量部以上であり、50質量部以上であることが好ましい。シリカの含有量が40質量部未満である場合は、シリカ含有によるウェット性能の向上効果が得られ難くなる傾向がある。また、シリカの含有量は、115質量部以下であり、110質量部以下であることが好ましく、105質量部以下であることがより好ましい。シリカの含有量が115質量部を超える場合は、加工性が悪化する傾向、加硫後の冷却に伴うシュリンクが極めて大きくなる傾向がある。
前記(B)におけるカーボンブラックとしては、タイヤ製造において一般的に用いられるSAF、ISAF、HAF、FF、FEF、GPFなどが挙げられ、これらのカーボンブラックを単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記(B)における無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルク、瀝青炭粉末などが挙げられ、これらのカーボンブラックを単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、本発明における無機フィラーには(A)シリカおよびカーボンブラックは含まない。
前記(B)カーボンブラックおよび/または無機フィラーのゴム成分100質量部に対する含有量は、3質量部以上であり、5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましい。(B)カーボンブラックおよび/または無機フィラーの含有量が3質量部未満である場合は、紫外線劣化によるポリマー鎖の破壊、破壊特性の低下が顕著となる傾向がある。また、(B)カーボンブラックおよび/または無機フィラーの含有量は、40質量部以下であり、38質量部以下であることが好ましく、36質量部以下であることがより好ましい。カーボンブラックおよび/または無機フィラーの含有量が40質量部を超える場合は、ウェット性能が低下する傾向がある。
また、前記(A)シリカならびに(B)カーボンブラックおよび/または無機フィラーのゴム成分100質量部に対する合計含有量は、50質量部以上であり、52質量部以上であることが好ましく、54質量部以上であることがより好ましい。(A)および(B)の合計含有量が50質量部未満である場合は、ウェット性能が不充分となる傾向がある。また、(A)および(B)の合計含有量は、120質量部以下であり、118質量部以下であることが好ましく、115質量部以下であることがより好ましい。(A)および(B)の合計含有量が120質量部を超える場合は、ゴム組成物中のゴム成分量が少なくなり破断抗力が低下する傾向がある。
前記離型剤は、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミドおよびアミドエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。該離型剤をキャップトレッド用ゴム組成物に含有することで、加硫工程において、加硫金型内面に設けられた凸部に押圧されたトレッド用ゴム組成物の滑り性を改善することができる。この滑り性を改善することにより、トレッドに形成された溝底部でのゴム歪み、インフレート歪を改善することができ、その結果、TGCの発生を抑制することができる。
前記脂肪酸金属塩における金属としては、カルシウム、亜鉛、カリウム、ナトリウムなどが挙げられる。なかでも、安価であり、環境汚染の原因とならず、さらに加硫速度に影響を与えないという点から、脂肪酸カルシウム塩とすることが好ましい。
前記離型剤としては、例えば、脂肪酸カルシウム塩と脂肪酸アミドとの混合物であるストラクトール社製のWB16、脂肪酸カルシウム塩とアミドエステルの混合物であるラインケミー社製のAflux16、アミドエステルを含有するラインケミー社製のAflux37などが挙げられる。
前記離型剤のゴム成分100質量部に対する合計含有量は、0.5質量部以上であり、1.0質量部以上であることが好ましく、1.2質量部以上であることがより好ましい。離型剤の含有量が0.5質量部未満である場合は、加硫工程におけるゴム組成物の滑り性が不充分となる傾向、加工性が悪化する傾向がある。また、離型剤の含有量は、5.0質量部以下であり、4.5質量部以下であることが好ましい。離型剤の含有量が5.0質量部を超える場合は、成型粘着性が悪化する傾向、加工性が悪化し(特に前記(A)および(B)の合計含有量が60質量部以下の場合は粘度が低くなりすぎ)、変形や、はく離のない生カバー(未加硫タイヤ)を成型することが困難となる場合がある。
前記キャップトレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸を含有することが好ましい。ステアリン酸を含有することで、加硫速度を適度に確保することができる。また、後述の酸化亜鉛と結合したステアリン酸亜鉛がゴム表面にブルームすることによる滑り性の向上、酸化亜鉛の分散性の向上、前記の離型剤と併用することによる加硫金型との滑り性の向上という効果を得ることができる。
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましい。ステアリン酸の含有量が0.5質量部未満である場合は、加工性が悪化する傾向、耐摩耗性が劣る傾向がある。また、ステアリン酸の含有量は、4.0質量部以下であることが好ましく、3.5質量部以下であることがより好ましい。ステアリン酸の含有量が4.0質量部を超える場合は、成型粘着性が悪化する傾向がある。
前記キャップトレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸亜鉛を含有することができる。ステアリン酸亜鉛は、密着防止剤としてタイヤ成型機上で使用されることもあり、ゴム表面にブルームすることで滑り性を向上させることができる。
ステアリン酸亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましい。ステアリン酸亜鉛の含有量が0.5質量部未満である場合は、加硫工程におけるゴム組成物の滑り性の向上効果が不充分となる傾向がある。また、ステアリン酸亜鉛の含有量は、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。ステアリン酸亜鉛の含有量が2.0質量部を超える場合は、成型粘着性および耐摩耗性が悪化する傾向がある。
前記キャップトレッド用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有することが好ましい。酸化亜鉛を含有することで加工性、耐リバージョン性を向上させることができる。また、ステアリン酸と併用することで、加硫工程での加熱により反応が起こりステアリン酸亜鉛を生成し、このステアリン酸亜鉛がトレッド用ゴム組成物の滑り性をより向上させる効果を得ることができる。
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.3質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましい。酸化亜鉛の含有量が0.3質量部未満である場合は、とくにNRを含有する場合に硬度が不充分となり、加硫速度が遅くなる場合がある。また、粘度が高くなる傾向がある。酸化亜鉛含有量は、2.5質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましい。酸化亜鉛の含有量が2.5質量部を超える場合は、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
前記シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT−Z100、NXT−Z45、NXTなどのメルカプト系(メルカプト基を有するシランカップリング剤)、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系がシリカとの結合力が強く、発熱性において優れるという点から好ましい。また、メルカプト系を使用すると、低燃費性および耐摩耗性を好適に向上できるという点からより好ましい。
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、4.0質量部以上であることが好ましく、6.0質量部以上であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量が4.0質量部未満の場合は、フィラー分散性の改善や、粘度低減等の効果が十分に得られない傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量が12質量部を超える場合は、充分なカップリング効果、シリカ分散効果が得られず、補強性が低下する傾向がある。
前記キャップトレッド用ゴム組成物は、前記の成分以外にも、従来タイヤ製造で使用される配合剤、例えば、他の補強用充填剤、老化防止剤、オイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、架橋助剤等を適宜配合することができる。
ここで、架橋助剤としてジフェニルグアニジン(DPG)を用いることにより、混練り中や加硫中にシリカとシランカップリング剤との反応を促進できることが一般的に知られている。しかしながら、このDPGは加硫中に熱分解し、揮発性の高いアニリンを生成する。そして、このアニリンが加硫後にゴム組成物中から揮発することも、ゴム組成物のシュリンクの一因となっている。そこで、本発明においては、アニリンのような揮発性の高い物質を生成するDPGの一部または全部に替えて、下記の一般式(1)で表される化合物、および/または、一般式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
Figure 2013177113
一般式(1)中のR1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または炭素数5〜12のシクロアルキル基である。
Figure 2013177113
一般式(2)中のxは1以上の数であり、R5〜R8はそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または炭素数5〜12のシクロアルキル基である。
一般式(1)および/または一般式(2)で表される化合物を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.1〜4.0質量部であることが好ましく、0.5〜3.0質量部であることがより好ましい。この化合物の含有量が0.1質量部未満である場合は、加硫促進効果が不充分となる傾向がある。また、この化合物の含有量が4.0質量部を超える場合は、架橋密度が高くなり過ぎ、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、DPGを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0〜1.0質量部であることが好ましく、0〜0.8質量部であることがより好ましく、含有しないことがさらに好ましい。DPGの含有量が1.0質量部を超える場合は、ゴム組成物のシュリンクが大きくなる傾向がある。
キャップトレッド用ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記ゴム成分、および必要に応じてその他の配合剤を混練りすることで未加硫キャップトレッド用ゴム組成物とし、その後加硫することにより、キャップトレッド用ゴム組成物を製造することができる。
本発明の空気入りタイヤのトレッドを構成するベーストレッドについて説明する。
前記ベーストレッドはベーストレッド用ゴム組成物から構成される。該ベーストレッド用ゴム組成物は、ゴム成分にカーボンブラックおよび/または所定のシリカを所定量含有し、転がり抵抗特性を有するゴム組成物である。また、耐亀裂成長性および破断時伸びに優れるゴム組成物とすることで、仮にキャップトレッドにおいてTGCが発生し、ブレーカー方向に成長した場合でも、ベーストレッドでTGCの成長が抑えられ、セパレーション、空気漏れ、タイヤのバーストを防ぐことができる。
前記ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、NR中に含まれるリン脂質を低減、除去した改質天然ゴム(HPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、転がり抵抗特性、耐亀裂成長性および破断時伸びにおいて優れるという理由からBRを使用することが好ましく、破断時伸びに優れるという点からNR/IRを使用することが好ましい。また、転がり抵抗特性、耐亀裂成長性および破断時伸びにおいてさらに優れるという点からBRおよびNR/IRを併用することがより好ましい。
前記BRとしては、キャップトレッド用ゴム組成物の説明で挙げた各種BRを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、転がり抵抗特性において優れるという点からハイシスBR、変性BRまたは希土類系BRとすることがより好ましい。
ジエン系ゴム成分としてBRを含有する場合の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。BRの含有量が10質量%未満である場合は、耐亀裂成長性が不充分となる傾向がある。また、BRの含有量は40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。BRの含有量が40質量%を超える場合は、破断時伸びが不充分となる傾向がある。なお、2種以上のBRを併用する場合は、併用するBRの合計量をBRの含有量とする。
前記NRとしては特に限定されず、タイヤ製造において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20などが挙げられる。
ジエン系ゴム成分としてNRを含有する場合の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。NRの含有量が60質量%未満である場合は、破断時伸びが不充分となる傾向がある。また、NRの含有量は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。NRの含有量が90質量%を超える場合は、耐亀裂成長性および耐リバージョン性が不充分となる傾向がある。
前記ENRとしては特に限定されず、市販のENR(ENR25、ENR50(MRB社(マレーシア)製)など)を用いてもよいし、NRをエポキシ化して用いてもよい。
ジエン系ゴム成分としてENRを含有する場合の含有量は、シリカとの相互作用により、転がり抵抗特性が向上するという点から2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、ENRの含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ENRの含有量が50質量%を超える場合は、ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)が高くなり過ぎ、低燃費性および耐摩耗性が悪化する傾向がある。
前記カーボンブラックとしては、キャップトレッド用ゴム組成物の説明で挙げたSAF、ISAF、HAF、FF、FEF、GPFなどが挙げられ、これらのカーボンブラックを単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記シリカとしても同様に、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカとすることが好ましい。
前記シリカのBET比表面積は、70〜300m2/gであり、80〜280m2/gであることが好ましく、90〜250m2/gであることがより好ましい。BET比表面積が70m2/g未満である場合は、耐摩耗性、破断時伸びが低下する傾向がある。また、BET比表面積が300m2/gを超える場合は、発熱性、分散性が悪化する傾向がある。
カーボンブラックおよび/または所定のシリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、30質量部以上であり、32質量部以上であることが好ましく、34質量部以上であることがより好ましい。含有量が30質量部未満である場合は、分散性が悪化する傾向、高温での破断時伸びが低下し、高速耐久性が悪化する傾向がある。また、カーボンブラックおよび/または所定のシリカの含有量は、55質量部以下であり、52質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。含有量が55質量部を超える場合は、発熱性が高くなり、転がり抵抗特性や高速耐久性が悪化する傾向がある。
前記ベーストレッド用ゴム組成物は、前記の成分以外にも、従来タイヤ製造で使用される配合剤、例えば、他の補強用充填剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、オイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、架橋助剤等を適宜配合することができる。
ベーストレッド用ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記ゴム成分、および必要に応じてその他の配合剤を混練りすることで未加硫ベーストレッド用ゴム組成物とし、その後加硫することにより、キャップトレッド用ゴム組成物を製造することができる。
次に、本発明の空気入りタイヤについて説明する。
本発明の空気入りタイヤは、キャップトレッドおよびベーストレッドを含む多層構造のトレッドを有する。前記トレッドはキャップトレッドおよびベーストレッドからなる2層構造のトレッドであることが好ましい。
本発明の空気入りタイヤは、未加硫キャップトレッド用ゴム組成物および未加硫ベーストレッド用ゴム組成物を、それぞれキャップトレッドおよびベーストレッドの形状に押出し成型し、他のタイヤ部材用未加硫ゴム組成物と張り合わせて未加硫タイヤを得る成型工程、得られた未加硫タイヤを加硫金型内で加硫する加硫工程を経て製造される。
本発明の空気入りタイヤのトレッドについて添付の図面を参照して説明するが、この態様に限定されるものではない。
図1は、ケース15のタイヤ半径方向外側にブレーカー14およびバンド13を有し、さらにバンド13のタイヤ半径方向外側に、ベーストレッド12およびキャップトレッド11からなるトレッドを有するタイヤ10の加硫金型20内における断面図を示す。ここで、Cはトレッド部の中心を通る直線、Seはショルダーエッジを通る直線を示す。なお、図1ではトレッドショルダー部外面の仮想延長線およびサイドウォール外面の仮想延長線の交点をショルダーエッジとした。
図1に示すように、未加硫タイヤを加硫金型内で加硫することで、生カバーキャップトレッド11が加硫金型20内面に設けられた主溝凸部Qに押圧され、主溝Pが形成される。つまり、加硫金型の主溝凸部Qが、生トレッド(生カバーキャップトレッド)に押圧され、次に主溝凸部Qから熱伝導が生じ、主溝P部の表面から架橋反応が始まり、続いて主溝P部表面から生トレッド内部に架橋反応が進行することで、生トレッドの加硫および溝Pの形成が行われる。ここで、主溝P部の表面の滑り性が低い、あるいは滑り量が多い場合、インフレート歪みの原因となる。しかしながら、本願発明においては、所定のキャップトレッド用ゴム組成物からなるキャップトレッドとすることで、主溝凸部に押圧される箇所のゴム滑りがスムースになり、ゴム組成物が歪むことなく加硫金型の主溝凸部のプロファイルを形成することができ、その結果、インフレート歪みが改善され、TGCを抑制することができる。
前記加硫金型の主溝凸部とは、その高さが4mm以上の凸部であって、タイヤ周方向に連続して設けられた凸部をいう。つまり、本発明の空気入りタイヤにおける主溝は、その高さが4mm以上の加硫金型の凸部により形成される溝であり、タイヤ周方向に連続して設けられた溝である。なお、加硫金型の主溝凸部の高さは、乗用車用タイヤ、商用車用タイヤの場合は10mm以下とすることが好ましい。
前記主溝のうち、加硫金型におけるトレッド部の中心CからSe(ショルダーエッジ)までの距離を1とした場合に、ショルダー主溝凸部のトレッド表面における中央Qcが中心Cから1/2〜7/8の間(図1のq1−q2間)に配設されている主溝をショルダー主溝という。特に、ショルダー主溝ではTGCが発生しやすい傾向があることから、本発明の空気入りタイヤを、該ショルダー主溝を有する空気入りタイヤとすることで、本願発明の効果をより効果的に発揮することができる。
また、図2は図1における加硫金型20を除いたタイヤ10の斜視模式図であり、ウェアインジケーター16およびウェアインジケーター位置表示マーク17を示す。
本発明の空気入りタイヤのトレッドは、有効接地幅内におけるトレッド全体積に占めるベーストレッドの体積が15%以上であり、18%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。ベーストレッドの体積が15%未満の場合は、ベーストレッドによる転がり抵抗特性の改善効果が不充分となる傾向がある。また、該ベーストレッドの体積は50%以下であり、40%以下であることが好ましく、38%以下であることがより好ましい。ベーストレッドの体積が50%を超える場合は、カット口開き量が大きくなる傾向、摩耗によりウェアインジケーターが露出するより先にベーストレッドが露出しやすくなる傾向がある。
本発明におけるトレッド全体積に占めるベーストレッドの体積は、タイヤの有効接地幅内における体積から算出する。タイヤの有効接地幅内とは、車両走行時に接地するトレッド幅である有効接地幅の両端からバンドにおろした垂線により挟まれる範囲内であるが、図1に示すショルダーエッジSeから他方のショルダーエッジまでの領域として算出してもよい。
また、本発明におけるトレッド全体積に占めるベーストレッドの体積は、図3に示す未加硫タイヤにおけるトレッドの総厚a、キャップトレッドの厚さb、ベーストレッドの厚さcから算出すればよい。加硫金型20には主溝凸部などキャップトレッドの接地面にトレッドパターンを付与するための凸部が設けられており、加硫金型内における加硫によりキャップトレッドおよびベーストレッドの厚さが変化するため、加硫後のトレッドからトレッド全体積およびベーストレッドの体積を算出することは困難となる。
図4は加硫金型においてタイヤの主溝凸部Qに押圧された箇所の断面図である。キャップトレッド11およびベーストレッド12からなるトレッドは主溝凸部Qにより押圧されることで主溝が形成される。主溝凸部Qの押圧によりキャップトレッド11のみでなく、ベーストレッド12の厚さによってはベーストレッド12も波打つように変形する。ここで、dは主溝凸部Qの高さを、eはベーストレッド12の接地面側端部と主溝凸部Qの底(主溝最深部)との距離を、fは主溝凸部Qの底(主溝最深部)とベーストレッド12の内腔側端部との距離を、そしてgは主溝凸部Qの底(主溝最深部)とバンドコードとの距離を示す。
図5は、図4に示すトレッドに比べトレッド全体積に占めるベーストレッドの体積が大きい場合を示す。図4に示す場合に比べベーストレッド12の波打つような変形が大きくなり、その結果eの距離が大きくなることがわかる。
一方、図6は、図4に示すトレッドに比べトレッド全体積に占めるベーストレッドの体積が小さい場合を示す。ベーストレッド12の厚さが小さいためにベーストレッドが変形せず、ベーストレッド12の接地面側端部が主溝凸部Qの底(主溝最深部)よりタイヤ接地面側に存在しないことがわかる。なお、この場合のeの距離はマイナスで示す。
前記のベーストレッド12の接地面側端部と主溝凸部Qの底(主溝最深部)との距離eは、2.0mm以上であることが、転がり抵抗特性において優れるという点からは好ましい。また、距離eは、3.0mm以下であることが、ウェアインジケーターが露出するより先に、ベーストレッドが露出しにくくなるという点から好ましい。
本発明の空気入りタイヤは、転がり抵抗特性、ウェット性能および耐摩耗性においてバランスよく優れ、さらにTGCの発生が抑制された空気入りタイヤであることから乗用車用タイヤ、商用車用タイヤなどに好適に用いることができる。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
以下に実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
ハイシスBR:ランクセス社製のCB25(Nd触媒ハイシスBR、ムーニー粘度ML1+4:44、Mw/Mn:1.78、Mw:50万、Mn:28万、シス1,4結合含有率:96.2質量%、トランス1,4結合含有率:3.1質量%、ビニル量:0.7質量%)
変性BR:日本ゼオン(株)製のBR1250H(開始剤としてリチウムを用いて重合、ビニル結合量:10〜13質量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
SPB含有BR:宇部興産(株)製のVCR617(シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶分散体、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量:15〜18質量%、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量:17質量%)
変性S−SBR:JSR(株)製のHPR355(結合スチレン量28質量%、ビニル量56質量%)
NR:TSR20
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N220、BET:114m2/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351H(N351、BET:69m2/g)
シリカ1:エボニックデグサ社製のULTRASIL U360(BET:50m2/g)
シリカ2:ローディア社製のZ1085Gr(BET:90m2/g)
シリカ3:エボニックデグサ社製のULTRASIL VN3(BET:175m2/g)
シリカ4:エボニックデグサ社製のULTRASIL U9000Gr(BET:235m2/g)
石油系C5レジン:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂、軟化点:102℃)
芳香族ビニル重合体:Arizona Chemical社製のSYLVARES SA85(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Mw:1000)
オイル:H&R(株)製のVIVATEC500(TDAEオイル)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース355
老化防止剤6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤TMQ:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
シランカップリング剤1:エボニックデグサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT(メルカプト系)
シランカップリング剤3:Momentive社製のNXT−Z100(メルカプト系)
硫黄:細井化学工業(株)製のHK200−5(5%オイル含有粉末硫黄)
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
架橋助剤SDT−50:ラインケミー社製のSDT−50(一般式(2)で表される化合物、x:1以上、R5〜R8:2−エチルヘキシル基、有効成分の含有量:50質量%)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸 椿
離型剤1:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム塩と脂肪酸アミドとの混合物)
離型剤2:ラインケミー社製のAflux37(アミドエステル含有)
ステアリン酸亜鉛:日本油脂(株)製のステアリン酸亜鉛
製造例A1〜A28(キャップトレッド用ゴム組成物)
表1〜3に示す各種薬品を用いて、ゴム成分、カーボンブラック全量およびシリカ半量を混練りするX練り工程(排出温度150℃、4分間)、X練り工程で得られたものに加硫剤(硫黄、加硫促進剤、架橋助剤)以外のその他の薬品を配合し混練するY練り工程(排出温度150℃、3分間)、さらに加硫剤を配合し混練するF練り工程(排出温度100℃、3分間)を行い、未加硫キャップトレッド用ゴム組成物を得た。なお、メルカプト系のシランカップリング剤(シランカップリング剤2および3)を用いた場合は、X練り工程およびY練り工程における排出温度を、ゴム焼けの発生を防止するために140℃とした。
製造例B1〜B6(ベーストレッド用ゴム組成物)
表4に示す各種薬品を用いて、加硫剤(硫黄、加硫促進剤、架橋助剤)以外のその他の薬品を混練りするX練り工程(排出温度150℃、4分間)、さらに加硫剤を配合し混練するF練り工程(排出温度100℃、3分間)を行い、未加硫ベーストレッド用ゴム組成物を得た。
実施例1〜28および比較例1〜22
表5〜7に示す未加硫キャップトレッド用ゴム組成物(キャップトレッド配合)および未加硫ベーストレッド用ゴム組成物(ベーストレッド配合)の組み合わせでトレッドを作成し、タイヤ成型機上で他の部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを製造した。未加硫タイヤ(図3)におけるトレッド総厚a、キャップトレッド厚さbおよびベーストレッド厚さc、トレッド全体積に占めるベーストレッドの体積(ベーストレッド体積率)、ならびにベーストレッドの接地面側端部と主溝凸部の底との距離e(図4〜6)を合わせて表5に示す。表7における比較例7、11〜17はキャップトレッド配合のみでトレッドを作成し、比較例18〜22はベーストレッド配合のみでトレッドを作成した。
そして、未加硫タイヤを一般的なプレス加硫により加熱加硫することで試験用タイヤ(乗用車用ラジアルタイヤ、サイズ:195/65R15)を作製した。いずれの試験用タイヤも、使用した加硫金型の主溝凸部の高さ(図4〜6のd)は8mmであり、主溝凸部Qの底とベーストレッド12の内腔側端部との距離(図4〜6のf)は1.9mm、主溝凸部Qの底とバンドコードとの距離(図4〜6のg)は2.0mmとなるように作製した。
上記の試験用タイヤを用いて下記の試験を行った。なお、比較例11では、試験用タイヤの製造が困難であったため、成型粘着性試験以外の試験は行わなかった。また、ベーストレッド配合のみでトレッドを作製した比較例18〜22についてはカット口開き試験および転がり抵抗特性試験のみを行った。
<カット口開き試験>
インフレート前の上記試験用タイヤにおけるショルダー主溝の底中央部に、剃刀(ブレード厚み0.25mm)により、タイヤ周方向に沿って長さ8mm、深さ2mmのカット溝を入れ、規定最大内圧までタイヤ内圧を高めたときの切り口の開きの最大巾を測定した。切り口の開きの測定は、カット溝付近にチョークの白粉を振りかけ、透明粘着テープにカット溝の形状を写取り、溝形状の幅を測定した。また、カット溝は同一タイヤの周上4箇所に設けて測定し、その平均値をカット口開き量とした。カット口開き量が少ない程、インフレート歪が少なく良好であることを示す。なお、カット口開き量は0.180mm以下を性能目標値とし、0.150mm以下の場合はインフレート歪みが特に少ないことを示す。
<成型粘着性試験>
キャップトレッド形状未加硫ゴム組成物およびベーストレッド形状未加硫ゴム組成物を貼り合わせたトレッド形状未加硫ゴム組成物を成型機上で、ブレーカー部材に貼り付ける際に、ブレーカートッピングゴム組成物との粘着性を評価した。この粘着性が不足すると、トレッドとブレーカーとの間に隙間ができ、エアーインおよび加硫接着不良が発生する。粘着性はトレッド形状未加硫ゴム組成物の表面にステアリン酸亜鉛が生成すれば粘着性が低下するが、石油系C5レジン等を配合することで改善される。この粘着性を5点満点で評価した。点数が高いほどジョイントレスバンドやブレーカーを構成するゴム組成物との密着性に優れることを示す。なお、成型粘着性は3点以上を性能目標値とする。
<転がり抵抗特性試験>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例7を100とした時の指数で表示した。指数が大きい方が、低燃費性に優れている。なお、転がり抵抗特性指数は95以上を性能目標指数とし、103以上の場合は転がり抵抗特性において特に優れることを示す。
<ウェットグリップ性能試験>
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して湿潤アスファルト路面において、速度100km/hでブレーキをかけた地点からの制動距離を測定した。そして、比較例7の制動距離を100とし、下記計算式により、各配合のウェットグリップ性能を指数表示した。ウェットグリップ性能指数が大きいほどウェットグリップ性能が優れることを示す。なお、ウェットグリップ性能指数は90以上を性能目標指数とする。
(ウェットグリップ性能指数)=
(比較例7の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
<耐摩耗性試験>
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着してテストコースを実車走行させ、約30000km走行した後のパターン溝深さの減少量を求めた。そして、比較例7の減少量を100とし、下記計算式により指数表示した。耐摩耗性指数が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。なお、耐摩耗性指数は90以上を性能目標指数とする。
(耐摩耗性指数)=(比較例7の減少量)/(各配合の減少量)×100
<3性能平均>
転がり抵抗特性指数、ウェットグリップ性能指数および耐摩耗性指数の平均値を示した。3性能平均が高いほど、転がり抵抗特性、路面摩擦力(ウェット性能)および耐摩耗性においてバランスよく優れることを示す。なお、3性能平均は103以上を性能目標指数とする。
Figure 2013177113
Figure 2013177113
Figure 2013177113
Figure 2013177113
Figure 2013177113
Figure 2013177113
Figure 2013177113
表5〜7に示すように、所定のキャップトレッド用ゴム組成物からなるキャップトレッドおよび所定のベーストレッド用ゴム組成物からなるベーストレッドを含む構造のトレッドを有する空気入りタイヤであり、トレッド全体積に占めるベーストレッドの体積を所定の範囲とすることで、転がり抵抗特性、ウェット性能および耐摩耗性においてバランスよく優れ、TGCの発生が抑制された空気入りタイヤが得られることがわかる。
10 タイヤ
11 キャップトレッド
12 ベーストレッド
13 バンド
131 バンドコード
14 ブレーカー
15 ケース
16 ウェアインジケーター
20 加硫金型
P 主溝
Q 主溝凸部

Claims (3)

  1. キャップトレッドおよびベーストレッドを含む構造のトレッドを有する空気入りタイヤであり、
    キャップトレッドが、
    ゴム成分100質量部に対して、
    (A)BET比表面積が70〜300m2/gのシリカを40〜115質量部、
    (B)カーボンブラックおよび/または無機フィラーを3〜40質量部含有し、
    前記(A)および(B)の合計含有量が50〜120質量部であり、
    脂肪酸金属塩、脂肪酸アミドおよびアミドエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する離型剤を0.5〜5質量部含有するキャップトレッド用ゴム組成物からなり、
    ベーストレッドが、
    ゴム成分100質量部に対して、
    カーボンブラックおよび/またはBET比表面積が70〜300m2/gのシリカを30〜55質量部含有するベーストレッド用ゴム組成物からなり、
    有効接地幅内におけるトレッド全体積に占めるベーストレッドの体積が15〜50%である空気入りタイヤ。
  2. ベーストレッドの接地面側端部が主溝最深部より2.0mm以上タイヤ接地面側である請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. さらに、キャップトレッド用ゴム組成物が、
    ジフェニルグアニジンを0〜1.0質量部、
    下記式(1)で表される化合物、および/または、式(2)で表される化合物を0.1〜4質量部含有する請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
    Figure 2013177113
    (式(1)中のR1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
    Figure 2013177113
    (式(2)中のxは1以上の数であり、R5〜R8はそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または炭素数5〜12のシクロアルキル基を表す。)
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