以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、型閉じを行う際の可動側支持部材の移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動側支持部材の移動方向を後方として説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による射出成形機の型締め時の状態を示す図であって、図2のI−I断面図である。図2は、第1実施形態による射出成形機を前方から見た図である。図2において、便宜上、駆動部及び調整部の図示を省略する。図3は、第1実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図である。図4は、第1実施形態による射出成形機において型締めによって生じる回転モーメントの説明図である。図5は、第1実施形態による射出成形機において型開きによって生じる回転モーメントの説明図である。各図において、X方向は射出成形機のベースBa上に敷設されるガイドGdの長手方向と平行な方向、Y方向はガイドGdの幅方向と平行な方向、Z方向はガイドGdの敷設面に対して垂直な方向である。X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交している。また、各図において、図面を見やすくするため、型開閉時にX方向に沿って直線動作を行う部分を灰色で示す。
射出成形機10は、タイバーレスの射出成形機である。射出成形機10は、例えば図1に示すように、固定金型11が取り付けられる固定側取り付け部材20と、固定側取り付け部材20を支持する固定側支持部材30と、可動金型12が取り付けられる可動側取り付け部材40と、可動側取り付け部材40を支持する可動側支持部材50とを備える。可動側支持部材50が固定側支持部材30に対してX方向に進退することによって、可動金型12が固定金型11に対して接離し、型閉じ、型締め、及び型開きが行われる。射出成形機10は、型締め時に固定金型11と可動金型12との間に形成される図示されないキャビティ空間に溶融した樹脂を充填し、固化させることによって成形品を製造する。尚、固定金型11と可動金型12とで金型装置13が構成される。
固定側取り付け部材20は、図示されない案内テーブル(第3実施形態参照)上に載置されている。固定側取り付け部材20は、ピンジョイント22で固定側支持部材30に対して揺動可能に連結されている。固定側支持部材30が型締めや型開きによって変形、揺動するとき、固定側取り付け部材20が揺動し、固定金型11の可動金型12に対する姿勢が保たれる。尚、全てのピンジョイント22、36、42、56の軸方向はY方向となっている。
固定側支持部材30は、図2に示すように、Y方向に対向する一対の固定板31と、一対の固定板31を連結する連結部32とを備える。各固定板31は、図1に示すように所謂Z型フレームであって、本体部33と、本体部33の一端部(図1において右端部)から上方に突出する頭部34と、本体部33の他端部(図1において左端部)から下方に突出する脚部35とを一体的に有している。頭部34と脚部35とは、互いに反対方向に本体部33から突出している。頭部34は固定側取り付け部材20を揺動可能に支持する。脚部35はベースBaに対して進退不能に固定されており、固定側支持部材30はベースBaに対して進退不能である。また、脚部35はピンジョイント36で支持具37に対して揺動可能に連結されており、支持具37はベースBa上に固定されている。これにより、固定側支持部材30はベースBaに対して揺動可能である。
可動側取り付け部材40は、固定側取り付け部材20と略対称な形状であって、略対称な剛性となっている。可動側取り付け部材40と、固定側取り付け部材20とは、型締め時に金型装置13の厚さ方向中心面を基準面Pとして略対称となる。尚、固定金型11の厚さと、可動金型12の厚さとは同一でもよいし、異なってもよい。
可動側取り付け部材40は、固定金型取り付け部材20と同じ案内テーブル上に載置されている。
可動側取り付け部材40は、ピンジョイント42で可動側支持部材50に対して揺動可能に連結されている。可動側支持部材50が型締めや型開きによって変形するとき、可動側取り付け部材40が揺動し、可動金型12の固定金型11に対する姿勢が保たれる。
可動側支持部材50は、図1に示すように固定側支持部材30と略対称な形状であって、略対称な剛性となっている。可動側支持部材50と、固定側支持部材30とは、型締め時に基準面Pに対して略対称となる。
可動側支持部材50は、図2に示すようにY方向に対向する一対の可動板51と、一対の可動板51を連結する連結部52とを備える。一対の可動板51は一対の固定板31の間に配設されている。
各可動板51は、図1に示すように所謂Z型フレームであって、本体部53と、本体部53の一端部(図1において左端部)から上方に突出する頭部54と、本体部53の他端部(図1において右端部)から下方に突出する脚部55とを一体的に有している。頭部54と脚部55とは、互いに反対方向に本体部53から突出している。頭部54は、可動側取り付け部材40を揺動可能に支持する。脚部55はスライダ57と連結されており、スライダ57はベースBa上に敷設されるガイドGd上を進退自在である。これにより、可動側支持部材50はベースBa対して進退自在である。また、脚部55はピンジョイント56でスライダ57に対して揺動可能に連結されており、可動側支持部材50はガイドGdに対して揺動可能である。
射出成形機10は、型締め動作及び型開閉動作を駆動する駆動部60として、型締めモータ61と、型締めモータ61の駆動力を増幅するトグル機構62と、型締めモータ61の回転運動を直線動作に変換してトグル機構62に伝達する伝達機構63とを備える。
型締めモータ61は、固定側支持部材30に対して固定される固定フレーム64で支持されている。型締めモータ61は、例えばサーボモータであって、型締めモータ61の回転量を検出するエンコーダ部を含む。型締めモータ61は、可動側支持部材50の移動量が所定量となるように、エンコーダ部の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
トグル機構62は、トグルアーム62aと、第1トグルレバー62bと、第2トグルレバー62cと、スライダ62dとを含む。トグルアーム62aはアーム支持部65に対して揺動自在に配設され、アーム支持部65は後述の調整部80を介して可動側支持部材50に対して固定されている。トグルアーム62aは、第1トグルレバー62bと揺動自在に連結されている。第1トグルレバー62bはレバー支持部66に対して揺動自在に配設され、レバー支持部66は固定フレーム64で支持されている。第2トグルレバー62cは、第1トグルレバー62bの中間部において第1トグルレバー62bに対して揺動自在に配設され、スライダ62dに対して揺動自在に連結されている。スライダ62dは、固定フレーム64のガイド67によってX方向に案内される。
尚、本実施形態のトグル機構62は、シングルトグルであるが、ダブルトグルであってもよく、トグル機構62の方式は特に限定されない。
伝達機構63は、型締めモータ61の出力軸と共に回転する駆動プーリ63aと、固定フレーム64に対して回転自在な従動プーリ63bと、駆動プーリ63aと従動プーリ63bとの間に張り渡されたタイミングベルト63cとを含む。また、伝達機構63は、従動プーリ63bと共に回転可能なボールネジ軸63dと、ボールネジ軸63dと螺合し、スライダ62dに取り付けられたボールナット63eとを含む。ボールネジ軸63dと、ボールナット63eとで、回転運動を直線動作に変換する運動変換部が構成される。
伝達機構63は、タイミングベルト63cによって型締めモータ61の回転運動をボールネジ軸63dに伝達する。そのため、型締めモータ61とボールネジ軸63dとがボールネジ軸63dの軸方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいるので、型締めモータ61とボールネジ軸63dとが同軸的に直結される場合に比べて、射出成形機10の全長が短くなる。
型締めモータ61が回転すると、ボールネジ軸63dが回転し、ボールナット63eが進退するので、スライダ62dが進退する。図3の状態においてスライダ62dが前進すると、可動側支持部材50が前進し、型閉じが行われる。そして、型締めモータ61の推進力にトグル倍率を乗じた型締力が発生し、図1に示すように型締めが行われる。また、スライダ62dが後退すると、可動側支持部材50が後退し、型開きが行われる。
次に、上記構成の射出成形機10の動作について説明する。射出成形機10の各種動作は、マイクロコンピュータで構成される制御装置19による制御下で行われる。
先ず、制御装置19は型閉じ工程を制御する。制御装置19は、図3の型開き状態において、型締めモータ61を駆動して、可動側支持部材50を前進させ、可動金型12を固定金型11と当接させる。
続いて、制御装置19は型締め工程を制御する。制御装置19は、型締めモータ61の推進力にトグル倍率を乗じた型締力を可動金型12と固定金型11との間に生じさせる。この間、固定金型11と可動金型12との間に形成される図示されないキャビティ空間に溶融した樹脂が充填され、冷却固化される。
その後、制御装置19は型開き工程を制御する。制御装置19は、図1の型締め状態において、型締めモータ61を駆動して、可動側支持部材50を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。型開き工程が完了すると、金型装置13から成形品が取り出される。射出成形機10がタイバーレスであるので、成形品の取り出しが容易である。
本実施形態では、駆動部60と、固定金型11及び可動金型12とは、型開閉方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいる。そのため、駆動部60と、固定金型11及び可動金型12とがX方向に対して縦に(一列に)並ぶ従来の場合に比べて、射出成形機10の全長が短くなり、射出成形機10の小型化、軽量化を図ることができる。
駆動部60と、固定金型11及び可動金型12とが型開閉方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいるので、図4に示すように型締めによって回転モーメントが生じる。例えば可動側支持部材50において、型締め時に駆動部60からX方向と平行な力F1が加わる力点部(調整部80に含まれるナットホルダ84との連結部)は、型締め時に可動側取り付け部材40からX方向と平行な反力F2が作用する作用点部(可動側取り付け部材40との連結部)を通る直線であって型開閉方向と平行な直線に対して横にずれているので、回転モーメントM50が生じる。同様に、固定側支持部材30において、型締め時に駆動部60からX方向と平行な力F1が加わる力点部(レバー支持部66との連結部)は、型締め時に固定側取り付け部材20からX方向と平行な反力が作用する作用点部(固定側取り付け部材20との連結部)を通る直線であって型開閉方向と平行な直線に対して横にずれているので、回転モーメントM30が生じる。回転モーメントM30、M50の中心線はY方向となっている。回転モーメントM30の作用方向(図4において時計回り方向)と、回転モーメントM50の作用方向(図4において反時計回り方向)とは逆向きになる。
射出成形機10には、回転モーメントM30、M50を固定側支持部材30と可動側支持部材50との間で伝達する第1の回転モーメント伝達部70が設けられている。第1の回転モーメント伝達部70は、例えば固定ロッド71、可動ロッド72、固定ロッド挿入孔73、及び可動ロッド挿入孔74等で構成される。
固定ロッド71は、固定側支持部材30で支持される。例えば、固定ロッド71は、固定側支持部材30に形成される貫通孔に挿通され、貫通孔の壁面で回転自在に支持される。尚、固定ロッド71は、固定側支持部材30と一体に形成されてもよい。固定ロッド71の軸方向は、Y方向となっている。
可動ロッド72は、可動側支持部材50で支持される。例えば、可動ロッド72は、可動側支持部材50に形成される貫通孔に挿通され、貫通孔の壁面で回転自在に支持される。尚、可動ロッド72は、可動側支持部材50と一体に形成されてもよい。可動ロッド72の軸方向は、Y方向となっている。
固定ロッド挿入孔73は、可動側支持部材50に形成され、X方向に長い長孔状となっている。固定ロッド挿入孔73には固定ロッド71が挿入される。固定ロッド71は、固定ロッド挿入孔73内をX方向に摺動自在な固定ロッド用摺動部75に挿入されている。
可動ロッド挿入孔74は、固定側支持部材30に形成され、X方向に長い長孔状となっている。可動ロッド挿入孔74には可動ロッド72が挿入される。可動ロッド72は、可動ロッド挿入孔74内をX方向に摺動自在な可動ロッド用摺動部76に挿入されている。
固定ロッド71、可動ロッド72、固定ロッド挿入孔73、及び可動ロッド挿入孔74は、回転モーメントM30、M50を固定側支持部材30と可動側支持部材50との間で伝達する。例えば回転モーメントM30は、固定ロッド71及び可動ロッド72で力f1、f2に変換されて可動側支持部材50に伝達し、回転モーメントM50を減殺する。
回転モーメントM30、M50同士が互いを減殺するので、回転モーメントM30、M50による曲げ変形が低減される。よって、射出成形機10(詳細には、固定側支持部材30や可動側支持部材50)の曲げ剛性を下げ、軽量化を図ることができる。
固定ロッド71と可動ロッド72とは、型締め時に基準面Pに対して略対称に配置されてよい。固定ロッド71及び可動ロッド72で変換される力f1、f2が略均等になり、応力が偏りにくいので、固定側支持部材30の変形や可動側支持部材50の変形が低減される。
固定ロッド71、可動ロッド72、及び固定ロッド挿入孔73、可動ロッド挿入孔74によって、可動側支持部材50が固定側支持部材30に対してX方向に案内される。よって、型開閉動作が安定化する。
尚、固定ロッド71及び可動ロッド72は、固定ロッド挿入孔73及び可動ロッド挿入孔74内をX方向に摺動自在な固定ロッド用摺動部75及び可動ロッド用摺動部76に挿入されているが、固定ロッド挿入孔73及び可動ロッド挿入孔74の内壁面と摺動自在に接触していてもよい。
型締め時の他に、型開き開始時にも図5に示すように回転モーメントが生じる。型開き開始時には、金型装置13内で形成された樹脂が固定金型11と可動金型12とを接着しているので、型開力に抗して反力が生じ、型開力とその反力とで回転モーメントが生じる。例えば可動側支持部材50において、力点部には型締め時と逆方向の駆動力F5が加わり、作用点部には型締め時と逆方向の反力F6が加わるので、型締め時と逆方向の回転モーメントM51が生じる。同様に、固定側支持部材30において、型締め時と逆方向の回転モーメントM31が生じる。回転モーメントM31、M51の中心線はY方向となっている。回転モーメントM31の作用方向と、回転モーメントM51の作用方向とは逆向きである。
固定ロッド71、可動ロッド72、固定ロッド挿入孔73、及び可動ロッド挿入孔74は、回転モーメントM31、51を固定側支持部材30と可動側支持部材50との間で伝達する。例えば回転モーメントM31は、固定ロッド71及び可動ロッド72で力f5、f6に変換されて可動側支持部材50に伝達され、回転モーメントM51を減殺する。これにより、直線動作である型開き動作が安定化する。
固定側支持部材30と可動側支持部材50とは、略対称な形状である。型締めによって固定側支持部材30で生じる回転モーメントM30の大きさと、型締めによって可動側支持部材50で生じる回転モーメントM50の大きさとが略同じになるので、回転モーメントM30、M50が釣り合い、相殺される。また、型開きによって固定側支持部材30で生じる回転モーメントM31の大きさと、型開きによって可動側支持部材50で生じる回転モーメントM51の大きさとが略同じになるので、回転モーメントM31、M51が釣り合い、相殺される。
可動側支持部材50はガイドGdに対して揺動可能である。可動側支持部材50が型締めや型開きによって変形するとき、可動側支持部材50が揺動し、可動側支持部材50からガイドGdへの応力伝達が低減され、ガイドGdの変形が低減される。
また、固定側支持部材30はベースBaに対して揺動可能である。固定側支持部材30が型締めや型開きによって変形するとき、固定側支持部材30が可動側支持部材50と同程度に揺動し、固定側支持部材30の挙動と可動側支持部材50の挙動とが基準面Pに対して略対称になる。そのため、回転モーメントM30、M50、M31、M51が効率的に減殺される。
本実施形態の射出成形機10は、タイバーレスであるので、金型装置13の交換が容易である。金型装置13が交換されると、金型装置13の厚さ(即ち、固定金型11の厚さと可動金型12の厚さとの合計)が変わる。金型装置13の厚さは、金型装置13の温度変化によっても変わる。
そこで、射出成形機10は、金型装置13の厚さに応じて、適切な型締力が得られるように、型締め時における固定側支持部材30と可動側支持部材50との相対位置を調整する調整部80を有する。調整部80による調整は、型閉じ、型締め、及び型開きのいずれの状態で行われてもよい。
図6は、第1実施形態による射出成形機の調整部の動作を説明する図である。図6は図1に示す金型装置13を新たな金型装置13Aと交換し、新たな金型装置13Aの厚さに応じて調整部80による調整を行った後の型締め時の状態を示す。
調整部80は、アーム支持部65と連結される調整ロッド81と、調整ロッド81の外周面に形成されるネジ部82と螺合される調整ナット83と、調整ナット83を回転自在に支持するナットホルダ84とを含む。調整ロッド81に形成されるネジ部82と調整ナット83とで、回転運動を直線動作に変換する運動変換部が構成される。ナットホルダ84は可動側支持部材50に対して固定されており、可動側支持部材50に対して調整ナット83をX方向に移動不能に支持している。調整部80は、調整ナット83と共に回転可能な大径の平歯車85と、大径の平歯車85に噛合される小径の平歯車86と、小径の平歯車86を回転させる調整モータ87とをさらに含む。大径の平歯車85と小径の平歯車86とで、回転トルクを増幅する減速部が構成される。調整モータ87は可動側支持部材50に対して固定されている。調整モータ87は、例えばサーボモータであって、調整モータ87の回転量を検出するエンコーダ部を含む。
調整モータ87が回転すると、調整ナット83が回転しながら調整ロッド81に対して進退し、可動側支持部材50が固定側支持部材30に対して進退する。調整モータ87は、調整ナット83の回転量が所定量となるように、エンコーダ部の検出結果に基づいてフィードバック制御される。調整ロッド81の移動量及び移動方向は、交換前の金型装置13の厚さと、交換後の金型装置13Aの厚さとの差に基づいて決定される。
例えば、金型交換によって金型装置の厚さが厚くなる場合、調整ロッド81に対して調整ナット83を図1の状態から図6の状態に後退させ、可動側支持部材50の脚部55と、固定側支持部材30の脚部35との間隔を狭め、可動側支持部材50の頭部54と、固定側支持部材30の頭部34との間隔を広げる。型締め状態で、トグルアーム62aと、第1トグルレバー62bとのなす角が所定値(例えば略180°)となるので、適切な型締力が得られる。
一方、金型交換によって金型装置の厚さが薄くなる場合、調整ロッド81に対して調整ナット83を図6の状態から図1の状態に前進させ、可動側支持部材50の脚部55と、固定側支持部材30の脚部35との間隔を広げ、可動側支持部材50の頭部54と、固定側支持部材30の頭部34との間隔を狭める。型締め状態で、トグルアーム62aと、第1トグルレバー62bとのなす角が所定値(例えば略180°)となるので、適切な型締力が得られる。
金型装置の交換によって可動金型の厚さや固定金型の厚さが変わり、基準面Pの位置が変わるとき、固定側支持部材30と可動側支持部材50とは型締め時に基準面Pに対して略対称のままとなる。従って、固定ロッド71と可動ロッド72とは型締め時に基準面Pに対して略対称のままとなる。よって、金型装置の交換後も、固定ロッド71及び可動ロッド72で変換される力f1、f2が略均等になり、応力が偏りにくいので、固定側支持部材30の変形や可動側支持部材50の変形が低減される。
尚、固定ロッド71と可動ロッド72とは、その相対位置を変更できるように、相対移動可能となっていてよい。
固定側支持部材30及び可動側支持部材50の一方に調整モータ87が取り付けられ、他方に型締めモータ61が取り付けられているので、略対称な形状の固定側支持部材30及び可動側支持部材50の小型化を図ることができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態の射出成形機10は、型締め動作及び型開閉動作をトグル機構62によって駆動する。これに対し、本実施形態の射出成形機は、型締め動作を電磁石で、型開閉動作をリニアモータで駆動する。
図7は、本発明の第2実施形態による射出成形機の型締め時の状態を示す図である。図8は第2実施形態による固定側支持部材を前方から見た図である。図9は、第2実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図である。図10は、第2実施形態による射出成形機において型締めによって生じる回転モーメントの説明図である。図11は、第2実施形態による射出成形機において型開きによって生じる回転モーメントの説明図である。各図において、X方向は射出成形機のベースBa上に敷設されるガイドGdの長手方向と平行な方向、Y方向はガイドGdの幅方向と平行な方向、Z方向はガイドGdの敷設面に対して垂直な方向である。X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交している。また、各図において、図面を見やすくするため、型開閉時にX方向に沿って直線動作を行う部分を灰色で示す。
射出成形機110は、タイバーレスの射出成形機である。射出成形機110は、例えば図7に示すように、固定金型111が取り付けられる固定側取り付け部材120と、固定側取り付け部材120を支持する固定側支持部材130と、可動金型112が取り付けられる可動側取り付け部材140と、可動側取り付け部材140を支持する可動側支持部材150とを備える。可動側支持部材150が固定側支持部材130に対してX方向に進退することによって、可動金型112が固定金型111に対して接離し、型閉じ、型締め、及び型開きが行われる。射出成形機110は、型締め時に固定金型111と可動金型112との間に形成される図示されないキャビティ空間に溶融した樹脂を充填し、固化させることによって成形品を製造する。尚、固定金型111と可動金型112とで金型装置113が構成される。
固定側取り付け部材120は、図示されない案内テーブル(第3実施形態参照)上に載置されている。固定側取り付け部材120は、ピンジョイント122で固定側支持部材130に対して揺動可能に連結されている。固定側支持部材130が型締めや型開きによって変形、揺動するとき、固定側取り付け部材120が揺動し、固定金型111の可動金型112に対する姿勢が保たれる。尚、全てのピンジョイント122、134、135、142、156、157の軸方向はY方向となっている。
固定側支持部材130は、ベースBaに対して進退不能に固定されている。固定側支持部材130は、ピンジョイント134で支持具136に対して揺動可能に連結されており、支持具136はベースBa上に固定されている。これにより、固定側支持部材130は、ベースBaに対して揺動可能である。
固定側支持部材130と所定の間隔をおいて、固定部材132が配設される。固定部材132は、固定部材132と固定側支持部材130との間隔を可変とするため、スライダ137と連結されており、スライダ137はベースBa上に敷設されるガイドGd上を移動可能である。固定部材132は、ピンジョイント135でスライダ137に対して揺動可能に連結されており、ガイドGdに対して揺動可能である。
固定側支持部材130と、固定部材132とは、複数(例えば4本)の固定ロッド133で連結されている。各固定ロッド133は、可動側支持部材150及び可動側支持部材150と所定の間隔をおいて配設される可動部材152を貫通している。
可動側取り付け部材140は、固定側取り付け部材120と略対称な形状であって、略対称な剛性となっている。可動側取り付け部材140と、固定側取り付け部材120とは、型締め時に金型装置113の厚さ方向中心面を基準面P100として略対称となる。尚、固定金型111の厚さと、可動金型112の厚さとは同一でもよいし、異なってもよい。
可動側取り付け部材140は、固定金型取り付け部材120と同じ案内テーブル上に載置されている。
可動側取り付け部材140は、ピンジョイント142で可動側支持部材150に対して揺動可能に連結されている。可動側支持部材150が型締めや型開きによって変形するとき、可動側取り付け部材140が揺動し、可動金型112の固定金型111に対する姿勢が保たれる。
可動側支持部材150は、固定側支持部材130と略対称な形状であって、略対称な剛性となっている。可動側支持部材150と、固定側支持部材130とは、型締め時に基準面P100に対して略対称となる。
可動側支持部材150はスライダ154に連結され、スライダ154はガイドGd上を移動自在である。これにより、可動側支持部材150はベースBaに対して進退自在である。可動側支持部材150は、ピンジョイント156でスライダ154に対して揺動可能に連結されており、ガイドGdに対して揺動可能である。可動側支持部材150と所定の間隔をおいて、可動部材152が配設される。
可動部材152は、可動部材152と可動側支持部材150との間隔を可変とするため、可動側支持部材150とは別のスライダ155に連結され、スライダ155はガイドGd上を移動可能である。これにより、可動部材152はベースBaに対して進退自在である。可動部材152は、ピンジョイント157でスライダ155に対して揺動可能に連結されており、ガイドGdに対して揺動可能である。
可動側支持部材150と、可動部材152とは、複数(例えば4本)の可動ロッド153で連結されている。各可動ロッド153は、固定側支持部材130及び固定側支持部材130と所定の間隔をおいて配設される固定部材132を貫通している。
固定側支持部材130、可動部材152、固定部材132、及び可動側支持部材150は、この順でX方向に間隔をおいて並んでいる。可動側支持部材150、可動部材152及び可動ロッド153は、型開閉時に一体的に進退する。
射出成形機110は、型開閉動作を駆動する型開閉駆動部としてのリニアモータ190を備えている。リニアモータ190は、可動側支持部材150とベースBaとの間に配設される。尚、リニアモータ190は、可動部材152とベースBaとの間に配設されてもよい。
リニアモータ190は、固定子191及び可動子192を備える。固定子191は、ベースBa上に固定され、可動子192の移動範囲に対応させて形成される。可動子192は、例えば可動側支持部材150と連結されるスライダ154に固定され、固定子191と対向させて、且つ所定の範囲にわたって形成される。
固定子191は、X方向に間隔をおいて配列される図示されない複数の永久磁石を備える。複数の永久磁石は、可動子192側の磁極がN極とS極とに交互に着磁されている。可動子192は、X方向に間隔をおいて配列される複数の磁極歯193を備え、各磁極歯193にはコイル194が巻装される。可動子192の位置は、ベースBaに対して固定される位置センサ195で検出される。
コイル194に所定の電流を供給することによってリニアモータ190を駆動すると、可動子192が進退させられる。それに伴って、可動側支持部材150が進退させられ、型開閉動作が行われる。リニアモータ190は、可動子192の位置が目標位置になるように、位置センサ195の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
尚、本実施形態では、固定子191に永久磁石を、可動子192にコイル194を配設するが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ190が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
また、型開閉動作を駆動する駆動部として、リニアモータ190の代わりに、回転モータ及びボールネジ機構を含む駆動ユニット、又は油圧シリンダ若しくは空気圧シリンダなどの流体圧シリンダなどが用いられてもよい。
射出成形機110は、型締め動作を駆動する型締め駆動部160を備え、型締め駆動部160は電磁石ユニット161、162を含んでいる。電磁石ユニット161は、固定側支持部材130に形成される電磁石161aと、可動部材152に形成される吸着部161bとで構成される。また、電磁石ユニット162は、固定部材132に形成される電磁石162aと、可動側支持部材150に形成される吸着部162bとで構成される。吸着部161b、162bは、磁性材で構成され、例えば積層鋼板で構成される。
尚、本実施形態では、固定側支持部材130及び固定部材132とは別に電磁石161a、162aが、可動側支持部材150及び可動部材152とは別に吸着部161b、162bが形成されるが、固定側支持部材130及び固定部材132の一部として電磁石を、可動側支持部材150及び可動部材152の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は逆であってもよい。例えば、固定側支持部材及び固定部材側に吸着部が形成され、可動板及び可動部材側に電磁石が形成されてもよい。
電磁石ユニット161、162において、電磁石161a、162aに電流を供給して電磁石161a、162aを駆動すると、電磁石161a、162aが対向する吸着部161b、162bを吸着し、型締力を発生させることができる。型締め駆動部160は、電磁石ユニット161、162、固定部材132、固定ロッド133、可動部材152、及び可動ロッド153等で構成される。
次に、上記構成の射出成形機110の動作について説明する。射出成形機110の各種動作は、マイクロコンピュータで構成される制御装置119による制御下で行われる。
先ず、制御装置119は型閉じ工程を制御する。制御装置119は、図9の型開き状態において、リニアモータ190のコイル194に電流を供給して、可動子192を前進させる。そうすると、可動側支持部材150が前進して、可動金型112が固定金型111と接触する。このとき、互いに対向する電磁石161aと吸着部161bとの間にギャップδ1が形成され、互いに対向する電磁石162aと吸着部162bとの間にギャップδ2が形成される。
続いて、制御装置119は型締め工程を制御する。制御装置119は、電磁石161a、162aに電流を供給して、電磁石161a、162aで吸着部161b、162bを吸着する。この吸着力によって、固定金型111と可動金型112との間に型締力が生じる。この間、固定金型111と可動金型112との間に形成される図示されないキャビティ空間に溶融した樹脂が充填される。キャビティ空間内の樹脂が冷却固化すると、制御装置119は電磁石161a、161bへの電流供給を停止する。
その後、制御装置119は型開き工程を制御する。制御装置119は、図7の型締め状態において、リニアモータ190のコイル194に電流を供給して、可動子192を後退させる。そうすると、可動側支持部材150が後退して、可動金型112が固定金型111から離間する。型開き工程が完了すると、金型装置113から成形品が取り出される。射出成形機110がタイバーレスであるので、成形品の取り出しが容易である。
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、型締め駆動部160と、固定金型111及び可動金型112とは、型開閉方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいる。そのため、従来に比べて、射出成形機110の全長が短くなり、射出成形機110の小型化、軽量化を図ることができる。
型締め駆動部160と、固定金型111及び可動金型112とが型開閉方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいるので、図10に示すように型締めによって回転モーメントが生じる。例えば可動側支持部材150及び可動部材152において、型締め時に型締め駆動部160からX方向と平行な方向な力F101a、F101bが加わる力点部は、型締め時に可動側取り付け部材140からX方向と平行な反力F102が作用する作用点部を通る直線であってX方向と平行な直線に対して横にずれているので、回転モーメントM150が生じる。同様に、固定側支持部材130及び固定部材132において、型締め時に型締め駆動部160からX方向と平行な方向な力が加わる力点部は、型締め時に固定側取り付け部材120からX方向と平行な反力が作用する作用点部を通る直線であってX方向と平行な直線に対して横にずれているので、回転モーメントM130が生じる。回転モーメントM130、M150の中心線はY方向となっている。回転モーメントM130の作用方向(図10において時計回り)と、回転モーメントM150の作用方向(図10において反時計回り方向)は逆向きになる。
射出成形機110には、回転モーメントM130、M150を、固定側支持部材130及び固定部材132と、可動側支持部材150及び可動部材152との間で伝達する第1の回転モーメント伝達部170が設けられる。第1の回転モーメント伝達部170は、複数の固定ロッド133、複数の可動ロッド153、可動ロッド挿入孔138、139、及び固定ロッド挿入孔158、159等で構成される。
固定側支持部材130に形成される可動ロッド挿入孔138、及び固定部材132に形成される可動ロッド挿入孔139には、それぞれ、可動ロッド153が軸方向に進退自在に挿入される。可動側支持部材150に形成される固定ロッド挿入孔158、及び可動部材152に形成される固定ロッド挿入孔159には、それぞれ固定ロッド133が軸方向に進退自在に挿入される。固定ロッド133、可動ロッド153、可動ロッド挿入孔138、139、及び固定ロッド挿入孔158、159によって、可動側支持部材150が固定側支持部材130に対してX方向に案内される。よって、型開閉動作が安定化する。
固定ロッド133、可動ロッド153、可動ロッド挿入孔138、139、及び固定ロッド挿入孔158、159は、回転モーメントM130、M150を固定側支持部材130及び固定部材132と可動側支持部材150及び可動部材152との間で伝達する。例えば回転モーメントM130は、固定ロッド133及び可動ロッド153で力f101a〜f101d、f102a〜f102bに変換されて可動側支持部材150及び可動部材152に伝達され、回転モーメントM150を減殺する。
回転モーメントM130、M150同士が互いを減殺するので、回転モーメントM130、M150による曲げ変形が低減される。よって、射出成形機110(詳細には、固定側支持部材130や可動側支持部材150)の曲げ剛性を下げ、軽量化を図ることができる。
固定ロッド133の軸方向、及び可動ロッド153の軸方向は、第1実施形態と異なり、X方向となっている。型開閉時に、固定ロッド133及び可動ロッド153が他の部品と干渉し難い。そのため、固定ロッド133及び可動ロッド153の数を増やし、回転モーメント130、150の伝達経路を増やすことができるので、応力が偏りにくく、固定側支持部材130や可動側支持部材150の変形が低減される。
型締め時の他に、型開き開始時にも図11に示すように回転モーメントが生じる。型開き開始時には、金型装置113内で形成された樹脂が固定金型111と可動金型112とを接着しているので、型開力に抗して反力が生じ、型開力とその反力とで回転モーメントが生じる。例えば可動側支持部材150において、力点部には型締め時と逆方向の駆動力F105が加わり、作用点部には型締め時と逆方向の反力F106が加わるので、型締め時と逆方向の回転モーメントM151が生じる。同様に、固定側支持部材130において、型締め時と逆方向の回転モーメントM131が生じる。回転モーメントM131、M151の中心線はY方向となっている。回転モーメントM131の作用方向と、回転モーメントM151の作用方向とは逆向きである。
固定ロッド133、可動ロッド153可動ロッド挿入孔138、139、及び固定ロッド挿入孔158、159は、固定側支持部材130及び固定部材132と、可動側支持部材150及び可動部材152との間で回転モーメントM131、M151を伝達する。例えば回転モーメントM131は、固定ロッド133及び可動ロッド153で力f105a〜f105d、f106a〜f106dに変換されて可動側支持部材150及び可動部材152に伝達され、回転モーメントM151を減殺する。そのため、直線動作である型開き動作が安定化する。
固定側支持部材130と可動側支持部材150とは略対称な形状であり、固定部材132と可動部材152とは略対称な形状である。そのため、型締めによって固定側支持部材130及び固定部材132で生じる回転モーメントM130の大きさと、型締めによって可動側支持部材150及び可動部材152で生じる回転モーメントM150の大きさとが略同じになり、回転モーメントM130、M150同士が釣り合い、相殺される。また、型開きによって固定側支持部材130及び固定部材132で生じる回転モーメントM131の大きさと、型開きによって可動側支持部材150及び可動部材152で生じる回転モーメントM151の大きさとが略同じになるので、回転モーメントM131、M151同士が釣り合い、相殺される。
可動側支持部材150はガイドGdに対して揺動可能である。可動側支持部材150が型締めや型開きによって変形するとき、可動側支持部材150が揺動し、可動側支持部材150からガイドGdへの応力伝達が低減され、ガイドGdの変形が低減される。
また、固定側支持部材130はベースBaに対して揺動可能である。固定側支持部材130が型締めや型開きによって変形するとき、固定側支持部材130が可動側支持部材150と同程度に揺動し、固定側支持部材130の挙動と可動側支持部材150の挙動とが基準面P100に対して略対称になる。そのため、回転モーメントM130、M150、M131、M151が効率的に減殺される。
本実施形態の射出成形機110は、タイバーレスであるので、金型装置113の交換が容易である。金型装置113が交換されると、金型装置113の厚さ(即ち、固定金型111の厚さと可動金型112の厚さとの合計)が変わる。金型装置113の厚さは、金型装置113の温度変化によっても変わる。
そこで、射出成形機110は、金型装置113の厚さに応じて、適切な型締力が得られるように、型締め時における固定側支持部材130と可動側支持部材150との相対位置を調整する調整部180を有する。調整部180による調整は、型閉じ、型締め、及び型開きのいずれの状態で行われてもよい。
図12は、第2実施形態による射出成形機の調整部の動作を説明する図である。図12は図7に示す金型装置113を新たな金型装置113Aと交換し、新たな金型装置113Aの厚さに応じて調整部180による調整を行った後の型締め時の状態を示す。
調整部180は、金型装置113、113Aの厚さに応じて、固定側支持部材130と固定部材132との間隔L、及び可動部材152と可動側支持部材150との間隔Wを調整することで、固定側支持部材130と可動側支持部材150との間の距離を調整する。
調整部180は、固定側支持部材130と固定部材132との間隔Lの調整のため、固定ロッド133の端部と固定され、固定ロッド133と共に回転自在なスリーブ181を含む。スリーブ181は、固定側支持部材130の前面に回転自在に支持されており、固定側支持部材130に対してX方向に移動不能に取り付けられている。スリーブ181は、固定ロッド133と同軸的に配設され、複数の固定ロッド133に対応して複数設けられている。調整部180は、間隔Lの調整のため、固定ロッド133の固定部材132を貫通する部分に形成されるネジ軸部182aをさらに含む。ネジ軸部182aは、固定部材132の厚さよりも長く、固定部材132に形成されるネジ孔182bに螺合されている。ネジ軸部182aとネジ孔182bとで回転運動を直線動作に変換する運動変換部182が構成される。この調整部180では、スリーブ181が所定量回転すると、固定ロッド133に形成されるネジ軸部182aが回転し、ネジ軸部182aに螺合される固定部材132が進退するので、間隔Lの調整が可能である。
尚、運動変換部182の構成は、多種多様であってよく、例えば、固定部材132に回転自在に支持されるボールネジナット、及び固定ロッド133の固定部材132を貫通する部分に形成されるボールネジ軸部で構成されるボールネジ機構であってもよい。ボールネジナットが回転すると、ボールネジナットが螺合するボールネジ軸部と、固定部材132との位置関係が代わり、固定部材132が進退する。
調整部180は、可動部材152と可動側支持部材150との間隔Wの調整のため、また、型開閉時の可動ロッド153の進退を許容するため、可動ロッド153の端部に形成されるスプライン軸部183と、スプライン軸部183をX方向に移動自在に支持するスプラインナット184とを含む。スプラインナット184は、固定側支持部材130の前面に回転自在に支持されており、固定側支持部材130に対してX方向に移動不能に取り付けられている。スプラインナット184は、複数の可動ロッド153に対応して複数設けられている。調整部180は、間隔Wの調整のため、可動ロッド153の可動側支持部材150を貫通する部分に形成されるネジ軸部185aをさらに含む。ネジ軸部185aは、可動側支持部材150の厚さよりも長く、可動側支持部材150に形成されるネジ孔185bに螺合されている。ネジ軸部185aとネジ孔185bとで回転運動を直線動作に変換する運動変換部185が構成される。この調整部180では、複数のスプラインナット184が所定量回転すると、スプライン軸部183及びネジ軸部185aが回転し、ネジ軸部185aに螺合される可動側支持部材150が固定側支持部材130に対して進退するので、間隔Wの調整が可能である。尚、型開閉時に可動側支持部材150、可動部材152、及び可動ロッド153を一体的に進退させる目的で、可動ロッド153は、可動部材152に対して回転自在に、且つ、可動部材152に対してX方向に移動不能に連結されている。
尚、運動変換部185の構成は、多種多様であってよく、例えば、可動側支持部材150に回転自在に支持されるボールネジナット、及び可動ロッド153の可動側支持部材150を貫通する部分に形成されるボールネジ軸部で構成されるボールネジ機構であってもよい。ボールネジナットが回転すると、ボールネジナットが螺合するボールネジ軸部と、可動側支持部材150との位置関係が代わり、可動側支持部材150が進退する。
さらに、調整部180は、間隔Lと間隔Wの両方を同時に調整するため、図8に示すように、各スリーブ181の外周に形成される図示されない平歯車部と、各スプラインナット184の外周に形成される図示されない平歯車部との両方に噛合される大径の平歯車186を備える。大径の平歯車186は、複数のスリーブ181と、複数のスプラインナット184の両方に噛合されている。この調整部180は、大径の平歯車186に噛合される小径の平歯車187と、小径の平歯車187を回転させる調整モータ188とをさらに含む。大径の平歯車186と小径の平歯車187とで、回転トルクを増幅する減速部が構成される。調整モータ188は固定側支持部材130に対して固定されている。調整モータ188は、例えばサーボモータであって、調整モータ188の回転量を検出するエンコーダ部を含む。
調整モータ188が回転すると、各スリーブ181、及び各スプラインナット184が回転し、固定側支持部材130に対して固定部材132及び可動側支持部材150が進退する。固定部材132及び可動側支持部材150が一体的に進退するように、複数のスリーブ181の平歯車部、及び複数のスプラインナット184の平歯車部は同じモジュール(ピッチ円直径/歯数)、同じピッチ円直径を有している。また、同じ目的で、複数の固定ロッド133に形成されるネジ軸部182aと、複数の可動ロッド153に形成されるネジ軸部185aとは同じピッチ、同じ外径を有している。
調整モータ188は、固定部材132及び可動側支持部材150の進退量が所定量となるように、エンコーダ部の検出結果に基づいてフィードバック制御される。固定部材132及び可動側支持部材150の移動量及び移動方向は、交換前の金型装置113の厚さと、交換後の金型装置113Aの厚さとの差に基づいて決定される。
例えば、金型交換によって金型装置の厚さが厚くなる場合、固定側支持部材130に対して固定部材132及び可動側支持部材150を図7の状態から図12の状態に後退させて、間隔L及び間隔Wを広げる。型締め状態で、電磁石161a、162aと吸着部161b、162bとのギャップδ1、δ2が所定値となるので、適切な吸着力が得られ、適切な型締力が得られる。
一方、金型交換によって金型装置の厚さが薄くなる場合、固定側支持部材130に対して固定部材132及び可動側支持部材150を図12の状態から図7の状態に前進させて、間隔L及び間隔Wを狭める。型締め状態で、電磁石161a、162aと吸着部161b、162bとのギャップδ1、δ2が所定値となるので、適切な吸着力が得られ、適切な型締力が得られる。
尚、本実施形態では、複数のスリーブ181と、複数のスプラインナット184とを1つの調整モータ188で回転させるが、複数のモータで回転させてもよい。例えば、間隔Lと間隔Wとを別々に調整するため、複数のスリーブ181を1つのモータで回転させ、複数のスプラインナット184を別の1つのモータで回転させてもよい。また、電磁石161a、162aと吸着部161b、162bとの対向面同士の平行度を調整する目的で、複数のスリーブ181に対応して複数のモータが用いられ、複数のスプラインナット184に対応して複数のモータが用いられてもよい。
また、本実施形態では、複数のスリーブ181及び複数のスプラインナット184が固定側支持部材130に取り付けられているが、例えば可動側支持部材150に取り付けられてもよいし、複数のスリーブ181が固定部材132に、複数のスプラインナット184が可動部材152にそれぞれに取り付けられてもよく、取り付け位置に制限はない。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、固定側支持部材30及び可動側支持部材50の一方で支持されるロッド、及び他方に形成されるロッド挿入孔等で第1の回転モーメント伝達部70が構成される。
これに対し、本実施形態の第1の回転モーメント伝達部は、固定側支持部材及び可動側支持部材の一方の端面、及び他方に設けられ型締め時に上記端面と接触する接触部等で構成される点で相違する。接触部は型締め時に上記端面と接触すればよく、型開き時に上記端面と接触しなくてもよい。
図13は、本発明の第3実施形態による射出成形機の型締め時の状態を示す図であって、図15のXIII−XIII断面図である。図14は、第3実施形態による射出成形機を後方から見た図である。図15は、第3実施形態による射出成形機を前方から見た図である。図14及び図15において、便宜上、駆動部及び調整部の図示を省略する。図16は、第3実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図である。図13及び図16において、図面を見やすくするため、案内テーブルの一部のみを図示する。図17は、第3実施形態による射出成形機において型締めによって生じる回転モーメントの説明図である。図17において、便宜上、第2の回転モーメント伝達部の図示を省略する。図18は、第3実施形態による射出成形機において型開きによって生じる回転モーメントの説明図である。各図において、X方向は射出成形機のベース上に敷設されるガイドの長手方向と平行な方向、Y方向はガイドの幅方向と平行な方向、Z方向はガイドの敷設面に対して垂直な方向である。X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交している。また、各図において、図面を見やすくするため、型開閉時にX方向に沿って直線動作を行う部分を灰色で示す。
射出成形機210は、タイバーレスの射出成形機である。射出成形機210は、例えば図13に示すように、固定金型211が取り付けられる固定側取り付け部材220と、固定側取り付け部材220を支持する固定側支持部材230と、可動金型212が取り付けられる可動側取り付け部材240と、可動側取り付け部材240を支持する可動側支持部材250とを備える。可動側支持部材250が固定側支持部材230に対してX方向に進退することによって、可動金型212が固定金型211に対して接離し、型閉じ、型締め、及び型開きが行われる。射出成形機210は、型締め時に固定金型211と可動金型212との間に形成される図示されないキャビティ空間に溶融した樹脂を充填し、固化させることによって成形品を製造する。尚、固定金型211と可動金型212とで金型装置213が構成される。
固定側取り付け部材220は、案内テーブル216で支持されている。案内テーブル216は、図14及び図15に示すように固定側支持部材230及び可動側支持部材250から離間して、ベースBaに対して固定される。固定側支持部材230及び可動側支持部材250が型締めや型開きによって変形、揺動するとき、案内テーブル216は変形しないので、固定金型211と可動金型212との平行度が保たれる。
固定側取り付け部材220は、ピンジョイント222で固定側支持部材230に対して揺動可能に連結されている。固定側支持部材230が型締めや型開きによって変形、揺動するとき、固定側取り付け部材220が揺動し、固定金型211の可動金型212に対する姿勢が保たれる。尚、全てのピンジョイント222、236、242、256の軸方向はY方向となっている。
固定側支持部材230は、図14及び図15に示すようにY方向に対向する一対の固定板231と、一対の固定板231を連結する連結部232とを備える。
各固定板231は、所謂Z型フレームであって、本体部233と、本体部233の一端部(図13において右端部)から上方に突出する頭部234と、本体部233の他端部(図13において左端部)から下方に突出する脚部235とを一体的に有している。頭部234と脚部235とは、互いに反対方向に本体部233から突出している。頭部234は固定側取り付け部材220を揺動可能に支持する。脚部235はベースBaに対して進退不能に固定されており、固定側支持部材230はベースBaに対して進退不能である。また、脚部235はピンジョイント236で支持具237に対して揺動可能に連結されており、支持具237はベースBa上に固定されている。これにより、固定側支持部材230はベースBaに対して揺動可能である。
可動側取り付け部材240は、図13に示すように固定側取り付け部材220と略対称な形状であって、略対称な剛性となっている。可動側取り付け部材240と、固定側取り付け部材220とは、型締め時に金型装置213の厚さ方向中心面を基準面P200として略対称となる。尚、固定金型211の厚さと、可動金型212の厚さとは同一でもよいし、異なってもよい。
可動側取り付け部材240は、可動金型212の進退を許容するため、案内テーブル216のガイド217上をX方向に移動可能である。
可動側取り付け部材240は、ピンジョイント242で可動側支持部材250に対して揺動可能に連結されている。可動側支持部材250が型締めや型開きによって変形するとき、可動側取り付け部材240が揺動し、可動金型212の固定金型211に対する姿勢が保たれる。
可動側支持部材250は、図13に示すように固定側支持部材230と略対称な形状であって、略対称な剛性となっている。可動側支持部材250と、固定側支持部材230とは、型締め時に基準面P200に対して略対称となる。
可動側支持部材250は、図14及び図15に示すようにY方向に対向する一対の可動板251と、一対の可動板251を連結する連結部252とを備える。一対の可動板251と、一対の固定板231とは、Y方向に同じ位置に配設されている。
各可動板251は、図13に示すように所謂Z型フレームであって、本体部253と、本体部253の一端部(図13において左端部)から上方に突出する頭部254と、本体部253の他端部(図13において右端部)から下方に突出する脚部255とを一体的に有している。頭部254と脚部255とは、互いに反対方向に本体部253から突出している。頭部254は、可動側取り付け部材240を揺動可能に支持する。脚部255はスライダ257と連結されており、スライダ257はベースBa上に敷設されるガイド214上を進退自在である。これにより、可動側支持部材250はベースBa対して進退自在である。また、脚部255はピンジョイント256でスライダ257に対して揺動可能に連結されており、可動側支持部材250はガイド214に対して揺動可能である。
射出成形機210は、型締め動作及び型開閉動作を駆動する駆動部260として、第1実施形態と同様に、型締めモータ261と、型締めモータ261の駆動力を増幅するトグル機構262と、型締めモータ261の回転運動を直線動作に変換してトグル機構262に伝達する伝達機構263とを備える。
型締めモータ261は、固定側支持部材230に取り付けられる固定フレーム264で支持されている。型締めモータ261は、例えばサーボモータであって、型締めモータ261の回転量を検出するエンコーダ部を含む。型締めモータ261は、可動側支持部材250の移動量が所定量となるように、エンコーダ部の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
トグル機構262は、第1実施形態のトグル機構62と同様に、トグルアーム262aと、第1トグルレバー262bと、第2トグルレバー262cと、スライダ262dとを含む。トグルアーム262aはアーム支持部265に対して揺動自在に配設され、アーム支持部265は後述の調整部280を介して可動側支持部材250に対して固定されている。トグルアーム262aは、第1トグルレバー262bと揺動自在に連結されている。第1トグルレバー262bはレバー支持部266に対して揺動自在に配設され、レバー支持部266は固定フレーム264で支持されている。第2トグルレバー262cは、第1トグルレバー262bの中間部において第1トグルレバー262bに対して揺動自在に配設され、スライダ262dに対して揺動自在に連結されている。スライダ262dは、固定フレーム264のガイド267によってX方向に案内される。
尚、本実施形態のトグル機構262は、シングルトグルであるが、ダブルトグルであってもよく、トグル機構262の方式は特に限定されない。
伝達機構263は、第1実施形態の伝達機構63と同様に、型締めモータ261の出力軸と共に回転する駆動プーリ263aと、固定フレーム264に対して回転自在な従動プーリ263bと、駆動プーリ263aと従動プーリ263bとの間に張り渡されたタイミングベルト263cとを含む。また、伝達機構263は、従動プーリ263bと共に回転可能なボールネジ軸263dと、ボールネジ軸263dと螺合し、スライダ262dに取り付けられたボールナット263eとを含む。ボールネジ軸263dと、ボールナット263eとで、回転運動を直線動作に変換する運動変換部が構成される。
伝達機構263は、タイミングベルト263cによって型締めモータ261の回転運動をボールネジ軸263dに伝達する。そのため、型締めモータ261とボールネジ軸263dとがボールネジ軸263dの軸方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいるので、型締めモータ261とボールネジ軸263dとが同軸的に直結される場合に比べて、射出成形機210の全長が短くなる。
型締めモータ261が回転すると、ボールネジ軸263dが回転し、ボールナット263eが進退するので、スライダ262dが進退する。図16の状態においてスライダ262dが前進すると、可動側支持部材250が前進し、型閉じが行われる。そして、型締めモータ261の推進力にトグル倍率を乗じた型締力が発生し、図13に示すように型締めが行われる。また、スライダ262dが後退すると、可動側支持部材250が後退し、型開きが行われる。
次に、上記構成の射出成形機210の動作について説明する。射出成形機210の各種動作は、マイクロコンピュータで構成される制御装置219による制御下で行われる。
先ず、制御装置219は型閉じ工程を制御する。制御装置219は、図16の型開き状態において、型締めモータ261を駆動して、可動側支持部材250を前進させ、可動金型212を固定金型211と当接させる。
続いて、制御装置219は型締め工程を制御する。制御装置219は、型締めモータ261の推進力にトグル倍率を乗じた型締力を可動金型212と固定金型211との間に生じさせる。この間、固定金型211と可動金型212との間に形成される図示されないキャビティ空間に溶融した樹脂が充填され、冷却固化される。
その後、制御装置219は型開き工程を制御する。制御装置219は、図13の型締め状態において、型締めモータ261を駆動して、可動側支持部材250を後退させ、可動金型212を固定金型211から離間させる。型開き工程が完了すると、金型装置213から成形品が取り出される。射出成形機210がタイバーレスであるので、成形品の取り出しが容易である。
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、駆動部260と、固定金型211及び可動金型212とは、型開閉方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいる。そのため、従来に比べて、射出成形機210の全長が短くなり、射出成形機210の小型化、軽量化を図ることができる。
駆動部260と、固定金型211及び可動金型212とが型開閉方向(X方向)に対して横方向(Z方向)に並んでいるので、図17に示すように型締めによって回転モーメントが生じる。例えば可動側支持部材250において、型締め時に駆動部260からX方向と平行な力F201が加わる力点部(後述のナットホルダ284との連結部)は、型締め時に可動側取り付け部材240からX方向と平行な反力F202が作用する作用点部(可動側取り付け部材240との連結部)を通る直線であってX方向と平行な直線に対して横にずれているので、回転モーメントM250が生じる。同様に、固定側支持部材230において、型締め時に駆動部260からX方向と平行な力が加わる力点部(固定側支持部材230の連結部232)は、型締め時に固定側取り付け部材220からX方向と平行な反力が作用する作用点部(固定側取り付け部材220との連結部)を通る直線であってX方向と平行な直線に対して横にずれているので、回転モーメントM230が生じる。回転モーメントM230、M250の中心線はY方向となっている。回転モーメントM230の作用方向(図17において時計回り方向)と、回転モーメントM250の作用方向(図17において反時計回り方向)は逆向きになる。
射出成形機210には、回転モーメントM230、M250を固定側支持部材230と可動側支持部材250との間で伝達する第1の回転モーメント伝達部270が設けられている。
例えば、第1の回転モーメント伝達部270は、可動板251の端面275L〜276R、及び固定板231に形成され、型締め時に可動板251の端面275L〜276Rと接触する接触部271L〜272R等で構成される。接触部271L〜272Rは、図14及び図15に示すように、一対の固定板231に左右対称に形成される。接触部271L〜272Rは、例えば固定板231に形成される段差面で構成され、型締め時に可動板251の本体部253のZ方向両端面275L〜276Rと接触する。尚、本実施形態の接触部271L〜272Rは、固定板231の一部として形成されているが、固定板231と別に形成されてもよい。
また、第1の回転モーメント伝達部270は、固定板231の端面277L〜278R、及び可動板251に形成され、型締め時に固定板231の端面277L〜278Rと接触する接触部273L〜274Rを含む。接触部273L〜274Rは、図14及び図15に示すように、一対の固定板231に左右対称に形成される。接触部273L〜274Rは、例えば可動板251に形成される段差面で構成され、型締め時に固定板231の本体部233のZ方向両端面277L〜278Rと接触する。尚、本実施形態の接触部273L〜274Rは、可動板251の一部として形成されているが、可動板251と別に形成されてもよい。
接触部271L〜272R、端面275L〜276R、接触部273L〜274R、及び端面277L〜278Rは、例えば図17に示すように固定側支持部材230で生じる回転モーメントM230を力f101a〜f102bに変換して可動側支持部材250に伝達し、可動側支持部材250で生じる回転モーメントM250を減殺する。
回転モーメントM230、M250同士が互いを減殺するので、回転モーメントM230、M250による曲げ変形が低減される。よって、射出成形機210(詳細には、固定側支持部材230や可動側支持部材250)の曲げ剛性を下げ、軽量化を図ることができる。
固定板231Lに形成される接触部271L〜272Rと、可動板251Lに形成される接触部273L〜274Rとは、型締め時に基準面P200に対して略対称に配置されてよい。接触部271〜274で変換される力が略均等になり、応力が偏りにくいので、固定側支持部材230の変形や可動側支持部材250の変形が低減される。
固定板231に形成される接触部271L〜272R、可動板251の端面275L〜276R、可動板251に形成される接触部273L〜274R、及び固定板231の端面277L〜278Rで、可動側支持部材250が固定側支持部材230に対してX方向に案内される。
図14、図15及び図17に示すように、可動板251の端面275L〜276Rは平坦面であって、固定板231に形成される接触部271L〜272Rは端面275L〜276Rに向けて凸の円弧面であってよい。円弧面の中心線はY方向となっている。固定側支持部材230が型締めによって揺動するとき、可動板251の端面275L〜276Rと、固定板231に形成される接触部271L〜272Rとの接触面積が一定に保たれ、回転モーメントの伝達が安定化する。尚、固定板231に形成される接触部271L〜272Rが平坦面であって、可動板251の端面275L〜276Rが接触部271L〜272Rに向けて凸の円弧面であってもよい。
また、図14、図15及び図17に示すように、固定板231の端面277L〜278Rは平坦面であって、可動板251に形成される接触部273L〜274Rは端面277L〜278Rに向けて凸の円弧面であってよい。円弧面の中心線はY方向となっている。可動側支持部材250が型締めによって揺動するとき、固定板231の端面277L〜278Rと、可動板251に形成される接触部273L〜274Rとの接触面積が一定に保たれ、回転モーメントの伝達が安定化する。尚、可動板251に形成される接触部273L〜274Rが平坦面であって、固定板231の端面277L〜278Rが接触部273L〜274Rに向けて凸の円弧面であってもよい。
また、型締め時の他に、型開き開始時にも図18に示すように回転モーメントが生じる。型開き開始時には、金型装置213内で形成された樹脂が固定金型211と可動金型212とを接着しているので、型開力に抗して反力が生じ、型開力とその反力とで回転モーメントが生じる。例えば可動側支持部材250において、力点部には型締め時と逆方向の駆動力F205が加わり、作用点部には型締め時と逆方向の反力F206が加わるので、型締め時と逆方向の回転モーメントM251が生じる。同様に、固定側支持部材230には型締め時とは逆方向の回転モーメントが生じる。回転モーメントM231、M251の中心線はY方向となっている。回転モーメントM231の作用方向と、回転モーメントM251の作用方向とは逆向きである。
そこで、射出成形機210には、回転モーメントM231、M251を固定側支持部材230と可動側支持部材250との間で伝達する第2の回転モーメント伝達部290が設けられている。
例えば、第2の回転モーメント伝達部290は、図15及び図18に示すように、固定板231に設けられるストッパ部291L、291Rと、可動板251に設けられる挿入部293L、293Rとを含む。図15に示すようにストッパ部291L、291Rは一対の固定板231に左右対称に形成され、挿入部293L、293Rは一対の可動板251に左右対称に形成される。型開き開始時に、ストッパ部291L、291Rに形成される溝295L、295R内に挿入部293L、293Rが挿入されており、ストッパ部291L、291Rは挿入部293L、293RのZ方向両端面と接触して挿入部293L、293Rを受け止める。尚、ストッパ部291L、291Rは固定板231と別に形成されているが、固定板231の一部として形成されてもよい。また、挿入部293L、293Rは可動板251と別に形成されているが、可動板251の一部として形成されてもよい。
また、第2の回転モーメント伝達部290は、図14及び図18に示すように、可動板251に設けられるストッパ部292L、292Rと、固定板231に設けられる挿入部294L、294Rとを備える。図14に示すようにストッパ部292L、292Rは一対の可動板251に左右対称に形成され、挿入部294L、294Rは一対の固定板231に左右対称に形成される。型開き開始時に、ストッパ部292L、292Rに形成される溝296L、296R内に挿入部294L、294Rが挿入されており、ストッパ部292L、292Rは挿入部294L、294RのZ方向両端面と接触して挿入部294L、294Rを受け止める。尚、ストッパ部292L、292Rは可動板251と別に形成されているが、可動板251の一部として形成されてもよい。また、挿入部294L、294Rは固定板231と別に形成されているが、固定板231の一部として形成されてもよい。
ストッパ部291L〜292R、及び挿入部293L〜294Rは、例えば図18に示すように固定側支持部材230で生じる回転モーメントM231を力f205、f206に変換して可動側支持部材250に伝達し、可動側支持部材250で生じる回転モーメントM251を減殺する。そのため、直線動作である型開き動作が安定化する。
固定板231に固定されるストッパ部291L、291Rに形成される溝295L、295Rと、該溝295L、295Rに挿入される挿入部293L、293Rとで、可動側支持部材250が固定側支持部材230に対してX方向に案内される。挿入部293L、293Rは、型開き終了時にストッパ部291L、291Rから抜け出ていてもよい。
また、可動板251に固定されるストッパ部292L、292Rに形成される溝296L、296Rと、該溝296L、296Rに挿入される挿入部294L、294Rとで、可動側支持部材250が固定側支持部材230に対してX方向に案内される。挿入部294L、294Rは、型開き終了時にストッパ部292L、292Rから抜け出ていてもよい。
ストッパ部291L〜292Rと、挿入部293L〜294Rとの接触面同士は、一方が平坦面であって、他方が円弧面であってよい。円弧面は接触する平坦面に向けて凸の曲面となっており、円弧面の中心線はY方向となっている。固定側支持部材230や可動側支持部材250が型開きによって揺動するとき、ストッパ部291L〜292Rと、挿入部293L〜294Rとの接触面積が一定に保たれ、回転モーメントの伝達が安定化する。
固定側支持部材230と可動側支持部材250とは、略対称な形状である。型締めによって固定側支持部材230で生じる回転モーメントM230の大きさと、型締めによって可動側支持部材250で生じる回転モーメントM250の大きさとが略同じになるので、回転モーメントM230、M250が釣り合い、相殺される。また、型開きによって固定側支持部材230で生じる回転モーメントM231の大きさと、型開きによって可動側支持部材250で生じる回転モーメントM251の大きさとが略同じになるので、回転モーメントM231、M251が釣り合い、相殺される。
可動側支持部材250はガイド214に対して揺動可能である。可動側支持部材250が型締めや型開きによって変形するとき、可動側支持部材250が揺動し、可動側支持部材250からガイド214への応力伝達が低減され、ガイド214の変形が低減される。
また、固定側支持部材230はベースBaに対して揺動可能である。固定側支持部材230が型締めや型開きによって変形するとき、固定側支持部材230が可動側支持部材250と同程度に揺動し、固定側支持部材230の挙動と可動側支持部材250の挙動とが基準面P200に対して略対称になる。そのため、回転モーメントM230、M250、M231、M251が効率的に減殺される。
本実施形態の射出成形機210は、タイバーレスであるので、金型装置213の交換が容易である。金型装置213が交換されると、金型装置213の厚さ(即ち、固定金型211の厚さと可動金型212の厚さとの合計)が変わる。金型装置213の厚さは、金型装置213の温度変化によっても変わる。
そこで、射出成形機210は、金型装置213の厚さに応じて、適切な型締力が得られるように、型締め時における固定側支持部材230と可動側支持部材250との相対位置を調整する調整部280を有する。調整部280による調整は、型閉じ、型締め、及び型開きのいずれの状態で行われてもよい。
図19は、第3実施形態による射出成形機の調整部の動作を説明する図である。図19は図13に示す金型装置213を新たな金型装置213Aと交換し、新たな金型装置213Aの厚さに応じて調整部280による調整を行った後の型締め時の状態を示す。
調整部280は、第1実施形態の調整部80と同様の構成であって、アーム支持部265と連結される調整ロッド281と、調整ロッド281の外周面に形成されるネジ部282と螺合される調整ナット283と、調整ナット283を回転自在に支持するナットホルダ284とを含む。調整ロッド281に形成されるネジ部282と調整ナット283とで、回転運動を直線動作に変換する運動変換部が構成される。ナットホルダ284は可動側支持部材250の連結部252に形成されており、可動側支持部材250に対して調整ナット283をX方向に移動不能に支持している。調整部280は、調整ナット283と共に回転可能な大径の平歯車285と、大径の平歯車285に噛合される小径の平歯車286と、小径の平歯車286を回転させる調整モータ287とをさらに含む。大径の平歯車285と小径の平歯車286とで、回転トルクを増幅する減速部が構成される。調整モータ287は可動側支持部材250に対して固定されている。調整モータ287は、例えばサーボモータであって、調整モータ287の回転量を検出するエンコーダ部を含む。
調整モータ287が回転すると、調整ナット283が回転しながら調整ロッド281に対して進退し、可動側支持部材250が固定側支持部材230に対して進退する。調整モータ287は、調整ナット283の回転量が所定量となるように、エンコーダ部の検出結果に基づいてフィードバック制御される。調整ロッド281の移動量及び移動方向は、交換前の金型装置213の厚さと、交換後の金型装置213Aの厚さとの差に基づいて決定される。型締め状態で、トグルアーム262aと、第1トグルレバー262bとのなす角が所定値(例えば略180°)となるので、適切な型締力が得られる。
固定側支持部材230及び可動側支持部材250の一方に調整モータ287が取り付けられ、他方に型締めモータ261が取り付けられているので、略対称な形状の固定側支持部材230及び可動側支持部材250の小型化を図ることができる。
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に種々の変形や置換を加えることができる。