以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。各図面において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機10の幅方向である。
(射出成形機)
図1は、一実施形態にかかる射出成形機の型開完了時の状態を示す一部断面側面図である。図2は、一実施形態にかかる射出成形機の型締時の状態を示す一部断面側面図である。図3は、一実施形態にかかる型締装置の型開完了時の状態を示す平面図である。図4は、一実施形態にかかる型締装置の型締時の状態を示す平面図である。図5は、一実施形態にかかる型締装置の後面図である。図6は、一実施形態にかかる型締装置の前面図である。図7は、一実施形態にかかる固定アームと可動アームの分解斜視図である。図1~図7に示すように、射出成形機10は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、成形品受取部500と、制御装置700とを有する。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100は、固定金型810に対し可動金型820を水平方向に接近、離間させることにより、固定金型810と可動金型820とで構成される金型装置800の型閉、型締および型開を行う。型締装置100は、例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX負方向)を後方として説明する。
型締装置100は、図1~図4に示すように、固定金型810が取り付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取り付けられる可動プラテン120とを有する。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に、固定金型810が取付けられる。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に、可動金型820が取付けられる。
固定金型810と可動金型820とで金型装置800が構成される。型締時に固定金型810と可動金型820との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。キャビティ空間801に充填された液状の成形材料を冷却固化することにより、成形品が得られる。成形品は型開後に固定金型810と可動金型820との間から落下され、成形品受取部500が成形品受取領域501において成形品を受け取る。成形品受取領域501は、型開後の固定金型810と可動金型820との間に形成される空間の鉛直下方に設けられる。
型締装置100は、一般的な型締装置とは異なり、金型装置800の周辺に型締力に応じて伸びるタイバーを有しないものであり、タイバーレスと呼ばれるタイプのものである。金型装置800の周辺にタイバーが存在しないため、金型装置800を交換するときの金型装置800の搬送経路の自由度が高く、金型装置800の交換作業が容易である。
型締装置100は、固定プラテン110を支持する固定アーム111を有する。固定アーム111は、図7に示すように、Y方向視においてJ字状の板である。固定アーム111は、Y方向視において矩形状の矩形板部112と、矩形板部112の前端部において上方に突き出す台形板部113とを有する。台形板部113の後端面に、固定プラテン110が固定される。
固定アーム111の矩形板部112の上面には、図1および図2等に示すようにガイドレール101が固定される。ガイドレール101に沿って前方スライダ102と後方スライダ103とが独立に型開閉方向に移動可能に設けられる。前方スライダ102には、皿ばねなどの弾性体104を介して固定プラテン110が取り付けられる。型締力によってガイドレール101が撓み変形したときに、固定プラテン110が傾かないように弾性体104が弾性変形する。一方、後方スライダ103には、皿ばねなどの弾性体105を介して可動プラテン120が取り付けられる。型締力によってガイドレール101が撓み変形したときに、可動プラテン120が傾かないように弾性体105が弾性変形する。
固定アーム111は、図5および図7に示すようにY方向に間隔をおいて一対設けられる。一対の固定アーム111の互いに対向する内側面には、X方向視において櫛歯状の凹凸構造114が形成される。凹凸構造114は、矩形板部112に形成される。
凹凸構造114は、Z方向に交互に並ぶ凸条部115と凹条部116とを有する。凸条部115と凹条部116との境界は水平面である。水平面は、下向きのものと、上向きのものとを含む。上向きの水平面は、凸条部115の上面117と凹条部116の下面118とを兼ねる。凸条部115および凹条部116は、それぞれ、X方向に真っ直ぐ延びており、矩形板部112を貫通している。
固定アーム111は、図1~図2に示すように前後方向に間隔をおいて配置される複数の支柱板106、107を介して床ビーム108に固定される。支柱板106、107は鉛直に配置され、床ビーム108は水平に配置される。複数の支柱板106、107と床ビーム108とで型締装置フレーム109が構成される。複数の支柱板106、107の間には、成形品受取部500が設けられる。
成形品受取部500は、例えばベルトコンベアで構成され、成形品受取領域501において受け取った成形品を図3~図4に白抜き矢印で示すように射出成形機10の外部に搬送する。その搬送方向は、本実施形態ではY方向であるが、X方向であってもよい。尚、成形品受取部500は、成形品受取領域501において受け取った成形品を斜め下に落下させるシューターで構成されてもよい。また、成形品受取部500は、成形品を収容する箱で構成されてもよい。
型締装置100は、可動プラテン120を支持する可動アーム121を有する。可動アーム121は、図7に示すように、Y方向視においてJ字状の板である。可動アーム121は、Y方向視において矩形状の矩形板部122と、矩形板部122の後端部において上方に突き出す台形板部123とを有する。台形板部123の前端面に、可動プラテン120が固定される。
可動アーム121は、図5および図7に示すようにY方向に間隔をおいて一対設けられる。一対の可動アーム121は、一対の固定アーム111の間に配設される。一対の可動アーム121の互いに対向する内側面とは反対側の外側面には、X方向視において櫛歯状の凹凸構造124が形成される。凹凸構造124は、矩形板部122に形成される。
凹凸構造124は、Z方向に交互に並ぶ凸条部125と凹条部126とを有する。凸条部125と凹条部126との境界は水平面である。水平面は、下向きのものと、上向きのものとを含む。下向きの水平面は、凸条部125の下面128と凹条部126の上面127とを兼ねる。凸条部125および凹条部126は、それぞれ、X方向に真っ直ぐ延びており、矩形板部122を貫通している。
固定アーム111と可動アーム121とは互いに噛み合っており、固定アーム111は可動アーム121を型開閉方向に移動可能に支持する。また、固定アーム111と可動アーム121の互いに対向する水平面同士が面接触する。固定アーム111と可動アーム121とが点接触または線接触する場合に比べて、固定アーム111と可動アーム121との接触面積が大きいため、可動アーム121の姿勢を安定化できる。また、荷重の局所的な応力集中を抑制でき、潤滑剤の局所的な膜切れを抑制できる。
固定アーム111の凸条部115には、可動アーム121の凹条部126が配置される。一方、固定アーム111の凹条部116には、可動アーム121の凸条部125が配置される。固定アーム111は、凸条部115の上面117で凹条部126の上面127と面接触することにより、可動アーム121を型開閉方向に移動可能に支持する。言い換えると、固定アーム111は、凹条部116の下面118で凸条部125の下面128と面接触することにより、可動アーム121を型開閉方向に移動可能に支持する。
ところで、図5に示すように、固定アーム111の矩形板部112には凹凸構造114が形成されると共に可動アーム121の矩形板部122には凹凸構造124が形成され、矩形板部112と矩形板部122とが噛み合う。そのため、互いに噛み合ったときの矩形板部112と矩形板部122との合計板厚Tを、矩形板部112が同一の板厚T1で平坦に形成されると共に矩形板部122が同一の板厚T2で平坦に形成される場合の合計板厚(T1+T2)よりも薄くできる。これにより、固定アーム111の軽量化および可動アーム121の軽量化を図ることができる。
可動アーム121の矩形板部122には、可動アーム121の軽量化のための穴129が形成されてよい。穴129は、矩形板部122をX方向に貫通してよい。穴129の数は2つには限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、穴129の貫通方向は、X方向には限定されず、例えばY方向でもよい。
同様に、固定アーム111の矩形板部112には、固定アーム111の軽量化のための穴(不図示)が形成されてもよい。その穴は、矩形板部112をX方向に貫通してよい。その穴の数は特に限定されない。また、その穴の貫通方向は、X方向には限定されず、例えばY方向でもよい。
型締装置100は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる駆動部130を有する。駆動部130は、固定アーム111に対し可動アーム121を型開閉方向に移動させることにより、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。
型開閉方向視(X方向視)において、駆動部130の駆動軸130Xと金型装置800の中心軸800Xとは、型開閉方向に直交する方向にずらして配設される。駆動部130の駆動軸130Xとは、可動プラテン120を型開閉方向に移動させる推進力の中心軸のことであり、例えば型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170の中心軸のことである。
例えば、型開閉方向視において、駆動部130の駆動軸130Xと、金型装置800の中心軸800Xとは、Z方向にずらして配設される。また、駆動部130は、鉛直方向視(Z方向視)において、成形品受取領域501を基準として射出装置300側に配される。従って、図1および図2に示すように駆動部130のX方向位置と射出装置300のX方向位置とが重なるように駆動部130と射出装置300とを配置でき、射出成形機10の全長(X方向寸法)を短縮できる。
尚、本実施形態では型開閉方向視において駆動部130の駆動軸130Xと金型装置800の中心軸800XとはZ方向にずらして配設されるが、Y方向にずらして配設されてもよいし、Z方向およびY方向の両方向にずらして配設されてもよい。いずれにしても、駆動部130のX方向位置と射出装置300のX方向位置とが重なるように駆動部130と射出装置300とを配置できるため、射出成形機10の全長(X方向寸法)を短縮できる。
駆動部130は、上述の如く、鉛直方向視(Z方向視)において、成形品受取領域501を基準として射出装置300側に配設される。つまり、駆動部130は、成形品受取領域501の前方に配設される。そのため、成形品受取部500は、固定金型810と可動金型820との間から落下される成形品を、駆動部130によって邪魔されることなく成形品受取領域501において受け取ることができる。
駆動部130は、射出装置300の鉛直下方に配設されてよい。駆動部130が射出装置300の鉛直上方に配設される場合に比べて、射出成形機10の高さ(Z方向寸法)を短縮できる。また、駆動部130のY方向位置と射出装置300のY方向位置とが重なるように駆動部130と射出装置300とを配置できるため、射出成形機10の幅(Y方向寸法)を短縮できる。
駆動部130は、射出装置300が搭載される射出装置フレーム301の内部に配設されてよい。射出装置フレーム301は、床板302と、床板302の外縁部に立設される複数本の支持柱303と、複数本の支持柱303によって水平に支持される天板304とを有する。天板304の上面にはガイドレール305が配設され、ガイドレール305に沿って移動するスライドベース306に射出装置300が搭載される。
尚、射出装置フレーム301の内部には、駆動部130の他に、制御装置700などが配設される。制御装置700は、駆動部130の鉛直下方に配設されてよい。射出装置フレーム301は、図1および図2では型締装置フレーム109とは離間しており連結されていないが、型締装置フレーム109と連結されてもよい。
駆動部130は、図3および図4に示すように、可動プラテン120に連結される後プラテン131と、後プラテン131と型開閉方向に間隔をおいて配設される前プラテン132と、後プラテン131と前プラテン132とを連結する連結ロッド133とを有する。後プラテン131は、可動アーム121の矩形板部122の前端面に固定され、可動アーム121を介して可動プラテン120に連結される。本実施形態では後プラテン131が特許請求の範囲に記載の第1可動部材であり、前プラテン132が特許請求の範囲に記載の第2可動部材である。
連結ロッド133は、後プラテン131と前プラテン132とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。連結ロッド133の後端部にはねじ軸が形成され、当該ねじ軸に螺合されるねじナット134が後プラテン131に固定される。同様に、連結ロッド133の前端部にはねじ軸が形成され、当該ねじ軸に螺合されるねじナット135が前プラテン132に回転自在に且つ進退不能に取り付けられる。
連結ロッド133は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各連結ロッド133は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本の連結ロッド133には、連結ロッド133の歪を検出する歪検出器136(図1および図2参照)が設けられてよい。歪検出器136は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。歪検出器136の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、歪検出器136が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置も連結ロッド133に限定されない。
駆動部130は、後プラテン131と前プラテン132との間に配設されると共に固定プラテン110に連結される中間プラテン140を有する。本実施形態では中間プラテン140が特許請求の範囲に記載の固定部材である。中間プラテン140の前方において、前プラテン132が型開閉方向に移動自在とされる。また、中間プラテン140の後方において、後プラテン131が型開閉方向に移動自在とされる。後プラテン131は、固定金型810と可動金型820との間からの成形品の落下を妨げないように、成形品受取領域501の前方において型開閉方向に移動自在とされる。
駆動部130は、アクチュエータとしての型締モータ160を有する。型締モータ160は、中間プラテン140に取り付けられ、中間プラテン140に対し前プラテン132を型開閉方向に移動させることにより、後プラテン131を型開閉方向に移動させる。後プラテン131は可動アーム121を介して可動プラテン120に連結されているため、可動プラテン120が型開閉方向に移動される。
型締モータ160は、中間プラテン140から後方に突出する。中間プラテン140と後プラテン131との型開閉方向における間隔を短縮し、駆動部130の全長を短縮するため、図5に示すように、後プラテン131の中央部には貫通穴137が形成され、貫通穴137の内部に型締モータ160が配される。
駆動部130は、図3および図4に示すように、型締モータ160の推進力を増幅するトグル機構150を有してよい。トグル機構150は、前プラテン132と中間プラテン140との間に配設され、中間プラテン140に対し前プラテン132を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。
第1リンク152と第2リンク153とを屈伸自在に連結するピンの軸方向は、鉛直方向とされる。そのため、第1リンク152と第2リンク153とは、水平面内で屈伸自在とされる。第1リンク152と第2リンク153との屈伸によってトグル機構150の鉛直方向寸法が変化しないため、トグル機構150の鉛直方向寸法を短縮でき、トグル機構150を射出装置フレーム301の内部に配置しやすい。
第1リンク152は前プラテン132に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153は中間プラテン140に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。中間プラテン140に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、中間プラテン140に対し前プラテン132が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図3~図4に示す構成に限定されない。例えば本実施形態では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、中間プラテン140に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、中間プラテン140に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、中間プラテン140に対し前プラテン132を進退させる。これにより、後プラテン131および可動プラテン120が進退される。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、脱圧工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。型閉工程の途中で、クロスヘッド151を一時停止させることにより、可動プラテン120を一時停止させてもよい。可動金型820が一時停止された状態で、インサート材を可動金型820または固定金型810に設置できる。
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間801の数は、1つでもよいが、図2に示すように複数であってよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
型閉工程および昇圧工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、後プラテン131と前プラテン132との間隔Lを調整する。
駆動部130は、後プラテン131と前プラテン132との間隔L(図3および図4参照)を調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、例えば前プラテン132に回転自在に且つ進退不能に取り付けられるねじナット135を回転させる型厚調整モータ183を有する。
ねじナット135は、連結ロッド133ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット135に伝達されてよい。複数のねじナット135を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット135を個別に回転することも可能である。
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、図6に示すように、各ねじナット135の外周に受動歯車186が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車187が取付けられ、複数の受動歯車186および駆動歯車187と噛み合う中間歯車188が前プラテン132の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット135を回転させることで、ねじナット135を回転自在に保持する前プラテン132の連結ロッド133に対する位置を調整し、後プラテン131と前プラテン132との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態の型厚調整モータ183は、前プラテン132に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット135を回転させるが、本発明はこれに限定されない。例えば、型厚調整モータ183は、後プラテン131に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット134を回転させてもよい。或いは、型厚調整モータ183は、後プラテン131に固定されるねじナット134、および/または前プラテン132に固定されるねじナット135に対し、連結ロッド133を回転させてもよい。いずれにしても、間隔Lを調整できる。複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、型厚調整モータ183を有するが、本発明はこれに限定されない。例えば、型厚調整機構180は、連結ロッド133の温度を調節する連結ロッド温調器を有してもよい。
連結ロッド温調器は、各連結ロッド133に取付けられ、複数本の連結ロッド133の温度を連携して調整する。連結ロッド133の温度が高いほど、連結ロッド133は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本の連結ロッド133の温度は独立に調整することも可能である。
連結ロッド温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によって連結ロッド133の温度を調節する。連結ロッド温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によって連結ロッド133の温度を調節してもよい。連結ロッド温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、アクチュエータとして、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
図8は、変形例にかかる射出成形機の型開完了時の状態を示す一部断面側面図である。図9は、変形例にかかる射出成形機の型締時の状態を示す一部断面側面図である。図10は、変形例にかかる型締装置の型開完了時の状態を示す平面図である。図11は、変形例にかかる型締装置の型締時の状態を示す平面図である。本変形例の射出成形機10Aは、上記実施形態の型締装置100に代えて、型締装置100Aを有する。以下、本変形例の型締装置100Aと上記実施形態の型締装置100との相違点について主に説明する。
本変形例の型締装置100Aは、上記実施形態の型締装置100と同様に、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる駆動部130Aを有する。駆動部130Aは、固定アーム111に対し可動アーム121を型開閉方向に移動させることにより、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。
本変形例の駆動部130Aは、上記実施形態の駆動部130と同様に、後プラテン131と、前プラテン132と、連結ロッド133と、中間プラテン140とを有する。本変形例の駆動部130Aは、上記実施形態の駆動部130とは異なり、アクチュエータとして、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダ190を有する。油圧シリンダ190の中心軸が駆動部130Aの駆動軸130AXである。
油圧シリンダ190は、中間プラテン140に取り付けられ、中間プラテン140に対し前プラテン132を型開閉方向に移動させることにより、後プラテン131を型開閉方向に移動させる。後プラテン131は可動アーム121を介して可動プラテン120に連結されているため、可動プラテン120が型開閉方向に移動される。
本変形例によれば、中間プラテン140の前方に前プラテン132が配設されているため、中間プラテン140に固定される油圧シリンダ190は前プラテン132を前方に押すことで型締を実施できる。型締時に油圧シリンダ190と前プラテン132との連結部に圧縮応力が作用するため、連結部の破損を抑制できる。仮に中間プラテン140の前方に前プラテン132が配設されていない場合、中間プラテン140に固定される油圧シリンダ190は後プラテン131を前方に引張ることで型締を行うことになる。この場合、型締時に油圧シリンダ190と後プラテン131との連結部に引張応力が作用する。一般的に、部材の材料、寸法および形状が同じ場合、圧縮応力に対する耐久性は引張応力に対する耐久性よりも強い。本変形例によれば、型締時に油圧シリンダ190と前プラテン132との連結部に圧縮応力が作用するため、連結部の破損を抑制できる。
油圧シリンダ190は、シリンダ本体191と、シリンダ本体191の内部を前室と後室とに区画するピストンと、ピストンと共に移動するピストンロッド192とを有する。シリンダ本体191は、中間プラテン140に固定される。ピストンロッド192は、シリンダ本体191の前室を貫通してシリンダ本体191の外部に突出し、先端部において前プラテン132に固定される。ピストンロッド192のシリンダ本体191からの突出長を伸縮することにより、中間プラテン140に対し前プラテン132が型開閉方向に移動される。
油圧シリンダ190のシリンダ本体191は、中間プラテン140から後方に突出する。中間プラテン140と後プラテン131との型開閉方向における間隔を短縮し、駆動部130Aの全長を短縮するため、後プラテン131の中央部には貫通穴137(図5参照)が形成され、貫通穴137の内部にシリンダ本体191が配される。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX負方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配設される可動部材830と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定移動速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX正方向)を後方として説明する。
射出装置300は、スライドベース306に設置され、金型装置800に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、圧力検出器360によって検出される。圧力検出器360の検出値が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、圧力検出器360の検出値が設定圧力を超える場合、金型保護のため、圧力検出器360の検出値が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX正方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を前室と後室とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
液圧シリンダ430の前室は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1~図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、昇圧工程の開始から脱圧工程の終了までの間に行われる。脱圧工程の終了は型開工程の開始と一致する。
尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、昇圧工程の開始から脱圧工程の終了までの間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を低減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた表示画面を表示する。
表示画面は、射出成形機10の設定などに用いられる。表示画面は、複数用意され、切換えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される表示画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。