以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。図1〜図2に示すように、射出成形機は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700とを有する。以下、射出成形機の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置10の離接を行うことで、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられる。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(速度の切替位置、型閉完了位置、型締位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、ベルトやプーリなどで構成される回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
尚、回転伝達部185は、ベルトやプーリなどの代わりに、歯車などで構成されてもよい。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設される。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。タイバーは、上下方向に平行とされ、下プラテンを貫通し、上プラテンとトグルサポートとを連結する。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチされ、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)まで後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)まで前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクルの短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(制御装置)
制御装置700は、図1〜図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル」とも呼ぶ。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
操作画面は、射出成形機の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
(型締装置の構成部材の型締力による変形の計測)
制御装置700は、型締装置100を構成する部材(以下、単に「構成部材」とも呼ぶ。)の型締によって生じる変形を計測する変形計測装置としての機能を有する。型締によって生じる変形は、型開閉方向に直交する方向の変位で表される。変形計測対象の構成部材としては、例えば、可動プラテン120やトグルサポート130などが挙げられる。
尚、変形計測対象の構成部材は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在なものであればよい。例えば、上述の如く、トグルサポート130の代わりに固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる場合、変形計測対象の構成部材はトグルサポート130の代わりに固定プラテン110でもよい。
図3は、一実施形態による制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
制御装置700は、型締装置100の構成部材表面の型開閉方向に直交する所定方向における変位を計測する変位計800と接続されている。変位計800は、型締装置100を支持するフレームFrに対し固定され、フレームFrに対する型締装置100の構成部材表面の上記所定方向における変位を計測する。以下、変位計800で変位を計測する構成部材表面を、計測面とも呼ぶ。変位計800としては、例えば図4に示すように、トグルサポート130の計測面の変位を計測するトグルサポート変位計801、可動プラテン120の計測面の変位を計測する可動プラテン変位計802などが用いられる。
また、制御装置700は、型締装置100の構成部材の型開閉方向における変位を計測する補正用変位計900と接続されている。補正用変位計900は、型締装置100を支持するフレームFrに対し固定され、フレームFrに対する型締装置100の構成部材の型開閉方向における変位を計測する。補正用変位計900としては、例えば図4に示すように、トグルサポート130の型開閉方向変位を計測する型開閉方向変位計901、可動プラテン120の型開閉方向変位を計測する型開閉方向変位計902などが用いられる。
制御装置700は、例えば、型締状態における変位計800の計測値を取得する型締データ取得部711と、複数の金型(例えば固定金型11と可動金型12)が離れている離間状態で変位計800と構成部材との相対位置を型開閉方向に変化させたときの変位計800の計測値の変化を取得する補正用データ取得部712とを有する。型締データ取得部711は計測面の型締による変位データを取得し、補正用データ取得部712は型締データ取得部711で取得する変位データの補正に用いる補正用データを取得する。また、制御装置700は、補正用データ取得部712で取得する補正用データを用いて型締データ取得部711で取得する変位データを補正する型締データ補正部713を有する。さらに、制御装置700は、補正後の変位データなどを出力する出力制御部714を有してもよい。
尚、変形計測装置は、制御装置700とは別に設けられてもよい。その場合、変形計測装置は、型締装置100を作動させることができるように、制御装置700とLAN(Local Area Network)またはインターネット回線などのネットワークを介して接続されてよい。その接続は、有線接続、無線接続のいずれでもよい。
図4は、一実施形態によるトグルサポート変位計と可動プラテン変位計の設置状態を示す図である。図4(a)は型開完了時の状態を、図4(b)は型締時の状態を示す。図4において、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに垂直な方向である。X方向は型開閉方向である。型締装置100が横型である場合、X方向およびY方向が水平方向、Z方向は鉛直方向である。図5は、一実施形態によるトグルサポートを可動プラテン側から見た図である。図6は、一実施形態による可動プラテンをトグルサポート側から見た図である。
トグルサポート130は、図4に示すように、タイバー140や運動変換機構170が取付けられるトグルサポート本体部131と、トグル機構150の第2リンク153の揺動軸155が取付けられるトグルサポートリンク取付部132とを有する。トグルサポート本体部131と、トグルサポートリンク取付部132とは、鋳造などで一体に成形されてよい。
トグルサポート本体部131は、X方向視で略矩形状に形成される板状部を有する。板状部は、運動変換機構170のねじ軸171が挿し通される貫通穴を中央部に有する。尚、トグルサポート本体部131は、板状部の他に、板状部の外周縁部からX方向一方向(前方)に突出する筒状部をさらに有してもよい。筒状部は、X方向視で四角枠状に形成され、クロスヘッド151が移動する空間を内部に形成する。
トグルサポートリンク取付部132は、トグルサポート本体部131における可動プラテン120との対向面(前面)のY方向中央部に、Z方向に間隔をおいて一対設けられる。各トグルサポートリンク取付部132は、Y方向に対し垂直なリンク取付板をY方向に間隔をおいて複数有する。
各リンク取付板は、トグルサポート本体部131における可動プラテン120との対向面(前面)から前方に突出する。各リンク取付板の先端部には、リンク取付板をY方向に貫通する貫通穴が形成される。その貫通穴に揺動軸155が挿通されることで、揺動軸155を介して第2リンク153がトグルサポートリンク取付部132に揺動自在に取付けられる。
可動プラテン120は、図4に示すように、可動金型12が取付けられる可動プラテン本体部121と、トグル機構150の第1リンク152の揺動軸156が取付けられる可動プラテンリンク取付部122とを有する。可動プラテン本体部121と、可動プラテンリンク取付部122とは、鋳造などで一体に成形されてよい。
可動プラテン本体部121は、X方向視で略矩形状に形成される板状部を有する。板状部の4つの隅部には、タイバー140に沿って切欠きが形成されてよい。切欠きの代わりに、タイバー140が挿し通される貫通穴が形成されてもよい。板状部は、エジェクタロッド230が挿し通される貫通穴を中央部に有する。尚、可動プラテン本体部121は、板状部の他に、板状部の外周縁部からX方向一方向(後方)に突出する筒状部をさらに有してもよい。筒状部は、X方向視で四角枠状に形成され、エジェクタ装置200の少なくとも一部を収容する空間を内部に形成する。
可動プラテンリンク取付部122は、可動プラテン本体部121におけるトグルサポート130との対向面(後面)のY方向中央部に、Z方向に間隔をおいて一対設けられる。各可動プラテンリンク取付部122は、Y方向に対し垂直なリンク取付板をY方向に間隔をおいて複数有する。
各リンク取付板は、可動プラテン本体部121におけるトグルサポート130との対向面(後面)から後方に突出する。各リンク取付板の先端部には、リンク取付板をY方向に貫通する貫通穴が形成される。その貫通穴に揺動軸156が挿通されることで、揺動軸156を介して第1リンク152が可動プラテンリンク取付部122に揺動自在に取付けられる。
トグルサポート変位計801は、トグルサポート130の計測面811のZ方向変位を計測する。トグルサポート変位計801は、例えば非接触式のレーザ変位計などで構成される。レーザ変位計は、例えば計測面811に向けて光線を投射する投光素子と、計測面811で反射した光線を受光する受光素子とを含む。レーザ変位計は、計測面811とのZ方向における距離を計測することで、計測面811のZ方向における変位を計測する。尚、トグルサポート変位計801は、接触式のダイヤルゲージなどで構成されてもよい。
トグルサポート変位計801の計測面は、特に限定されず、図4および図5の少なくともいずれかに示す計測面811〜824のうちの1個以上の計測面を含んでよい。複数の計測面の組合せは特に限定されない。複数の計測面の変位は、複数のトグルサポート変位計801で計測されてよい。
2つの計測面811、812は、Z方向視でトグルサポートリンク取付部132の第2リンク153との連結部位(例えば第2リンク153の揺動軸155)と重なるように設定される。これらの計測面811、812のZ方向変位を計測すれば、揺動軸155によるトグルサポートリンク取付部132のZ方向の変形を計測できる。
4つの計測面813〜816は、Z方向視でトグルサポート本体部131のタイバー140との連結部位(例えばタイバー140に形成されるねじ軸181とねじナット182の連結部位)と重なるように設定される。これらの4つの計測面813〜816のZ方向における変位を計測すれば、4本のタイバー140によるトグルサポート本体部131のZ方向の変形を計測できる。
4つの計測面817〜820は、Y方向視でトグルサポート本体部131のタイバー140との連結部位と重なるように設定される。これらの4つの計測面817〜820における変位を計測すれば、4本のタイバー140によるトグルサポート本体部131のY方向の変形を計測できる。
2つの計測面821、822は、Z方向視でトグルサポート本体部131の運動変換機構170との連結部位(例えば運動変換機構170のねじ軸171の軸受173)と重なるように設定される。これらの計測面821、822のZ方向における変位を計測すれば、運動変換機構170によるトグルサポート本体部131のZ方向の変形を計測できる。
2つの計測面823、824は、Y方向視でトグルサポート本体部131の運動変換機構170との連結部位と重なるように設定される。これらの計測面823、824のY方向における変位を計測すれば、運動変換機構170によるトグルサポート本体部131のY方向の変形を計測できる。
次に、図7を参照して、計測面811の変位データの補正について説明する。その他の計測面812〜822の変位データの補正は、同様であるので説明を省略する。図7は、一実施形態によるトグルサポートの計測面の型締によって生じる変位を示す図である。図7において、実線は計測面811の型開完了時の位置、破線は計測面811を型開完了時の位置から後方に移動させた位置、二点鎖線は計測面811の型締時の位置を示す。また、図7において、一点鎖線はトグルサポート変位計801の中心線を示す。
型締データ取得部711は、トグルサポート変位計801によって計測面811の型締による変位データΔZを取得する。
計測面811は、Z方向に対し完全に垂直な面に対し傾いていることがある。計測面811は、図7では前方に向かうほど上方に傾斜している。尚、計測面811は、前方に向かうほど下方に傾斜していることもある。Y方向視で計測面811とZ方向に対し完全に垂直な面とのなす角αを、計測面811の傾斜角αとも呼ぶ。
計測面811は、型締によって、例えば図7に実線で示す位置から図7に二点鎖線で示す位置に変位する。トグルサポート130の計測面811のZ方向における変位ΔZは、トグルサポート130の変形を表す。
ところで、トグルサポート130は、フレームFrに対し進退自在とされるため、型締時に後方に押されて後退する。トグルサポート130の型締によって生じる後退量ΔXは、タイバー140の型締によって生じる伸び量に相当する。
トグルサポート130の計測面811がZ方向に対し完全な垂直面に対し傾いている場合、トグルサポート変位計801で計測される変位ΔZは計測面811の後退によって生じる変位ΔZ1を含む。その変位ΔZ1は、トグルサポート130の後退によって生じるものであり、トグルサポート130の変形によって生じるものではない。従って、その変位ΔZ1は誤差である。
そこで、補正用データ取得部712は、固定金型11と可動金型12とが離れている離間状態でトグルサポート変位計801とトグルサポート130との相対位置をX方向に変化させたときのトグルサポート変位計801の計測値の変化を取得する。離間状態は、型締力が生じていない状態である。離間状態では、可動プラテン120は停止していてもよいし移動していてもよく、その移動方向は型閉方向でも型開方向でもよい。離間状態は、型開状態でよい。
尚、金型装置10は固定金型11と可動金型12の間に中間金型をさらに有してもよい。この場合、離間状態とは、固定金型11と中間金型とが離れており、且つ中間金型と可動金型12とが離れている状態であってよい。金型装置10を構成する金型の数は2つ以上であればよい。
尚、トグルサポート変位計801とトグルサポート130との相対位置をX方向に変化させるため、本実施形態では後述するようにトグルサポート130をX方向に移動させるが、トグルサポート変位計801をX方向に移動させてもよい。
補正用データ取得部712は、離間状態でトグルサポート変位計801とトグルサポート130との相対位置をX方向に変化させるため、型厚調整機構180を作動させてトグルサポート130をX方向に移動させる。
本実施形態によれば、型締装置100に標準で搭載される型厚調整機構180を用いてトグルサポート変位計801とトグルサポート130の相対位置をX方向に変化させることができる。
計測面811が予め加工された平坦面である場合、トグルサポート130のX方向の移動の大きさや向きは特に制限されない。移動の大きさや向きに関係なく、トグルサポート130のX方向の移動量と、トグルサポート変位計801の計測値の変化量とに基づき、計測面811の傾斜角αを算出できる。
補正用データ取得部712は、計測面811の傾斜角αを算出する場合、トグルサポート変位計801の計測値を、トグルサポート130の移動前と移動後の2回のみ取得してもよい。尚、トグルサポート変位計801の計測値は、トグルサポート130のX方向位置を変えて3回以上取得されてもよい。
補正用データ取得部712は、計測面811の傾斜角αの代わりに、または計測面811の傾斜角αに加えて、計測面811の表面プロファイルを取得してもよい。この場合、トグルサポート変位計801の計測値の取得と、トグルサポート130のX方向位置の変更とが繰り返し行われる。計測面811が凹凸を有する場合にも対応できる。
トグルサポート130のX方向の移動量は、型厚調整モータエンコーダ184や専用の型開閉方向変位計901によって計測する。型開閉方向変位計901は、トグルサポート変位計801と同様に構成されてよい。
尚、詳しくは後述するが、型開閉方向変位計901は、トグルサポート130の型締によって生じる後退量ΔX(図7参照)の計測にも使用可能である。後退量ΔXは、タイバー140の伸び量に相当するため、タイバー歪検出器141で計測することも可能である。
補正用データ取得部712は、補正用データとして、トグルサポート130の型締によって生じる後退量ΔX(図7参照)を取得してもよい。後退量ΔXと、計測面811の傾斜角αとから誤差ΔZ1を算出可能である。また、後退量ΔXと、計測面811の表面プロファイルとから誤差ΔXを算出可能である。
補正用データ取得部712は、トグルサポート130の型締によって後退する位置が判明している場合、その位置でのトグルサポート変位計801の計測値を補正用データとして取得してもよい。
ここで、トグルサポート130の型締によって後退する位置は、予測位置でも、実際の位置でもよい。補正用データ取得部712による補正用データの取得と、型締データ取得部711による計測面811の型締による変位データの取得とは、どちらが先でもよい。
型締データ補正部713は、型締データ取得部711で取得される変位ΔZを、補正用データ取得部712で取得される補正用データ(例えば、傾斜角αや後退量ΔX)で補正する。具体的には、型締データ補正部713は、変位ΔZから誤差ΔZ1を差し引く。変位ΔZから誤差ΔZ1を差し引いた変位ΔZ2がトグルサポート130の変形を表すものとされる。よって、計測面811の傾斜角αの影響を排除でき、トグルサポート130の変形を精度良く計測できる。
可動プラテン変位計802は、可動プラテン120の計測面831のZ方向変位を計測する。可動プラテン変位計802は、トグルサポート変位計801と同様に、例えば非接触式のレーザ変位計などで構成される。尚、可動プラテン変位計802は、接触式のダイヤルゲージなどで構成されてもよい。
可動プラテン変位計802の計測面は、特に限定されず、図4および図6の少なくともいずれかに示す計測面831〜836のうちの1個以上の計測面を含んでよい。複数の計測面の組合せは特に限定されない。複数の計測面の変位は、複数の可動プラテン変位計802で計測されてよい。
2つの計測面831、832は、Z方向視で可動プラテンリンク取付部122の第1リンク152との連結部位(例えば第1リンク152の揺動軸156)と重なるように設定される。これらの計測面831、832のZ方向変位を計測すれば、揺動軸156による可動プラテンリンク取付部122のZ方向の変形を計測できる。
2つの計測面833〜834は、Z方向視で可動プラテン本体部121の中心と重なるように設定される。これらの2つの計測面833〜834のZ方向における変位を計測すれば、可動プラテン本体部121の中心のZ方向の変形を計測できる。
2つの計測面835〜836は、Y方向視で可動プラテン本体部121の中心と重なるように設定される。これらの2つの計測面835〜836のY方向における変位を計測すれば、可動プラテン本体部121の中心のY方向の変形を計測できる。
次に、図8を参照して、計測面831の変位データの補正について説明する。その他の計測面832〜836の変位データの補正は、同様であるので説明を省略する。図8は、一実施形態による可動プラテンの計測面の型締によって生じる変位を示す図である。図8において、実線は計測面831の型開完了時の位置、破線は計測面831を型開完了時の位置から前方に移動させた位置、二点鎖線は計測面831の型締時の位置を示す。また、図8において、一点鎖線は可動プラテン変位計802の中心線を示す。
型締データ取得部711は、可動プラテン変位計802によって計測面831の型締による変位データΔZを取得する。
計測面831は、Z方向に対し完全に垂直な面に対し傾いていることがある。計測面831は、図8では前方に向かうほど下方に傾斜している。尚、計測面831は、前方に向かうほど上方に傾斜していることもある。Y方向視で計測面831とZ方向に対し完全に垂直な面とのなす角βを、計測面831の傾斜角βとも呼ぶ。
計測面831は、型締によって、例えば図8に実線で示す位置から図8に二点鎖線で示す位置に変位する。可動プラテン120の計測面831のZ方向における変位ΔZは、可動プラテン120の変形を表す。
ところで、可動プラテン120は、フレームFrに対し進退自在とされるため、型締時に前方に押されて前進する。可動プラテン120の型締によって生じる前進量ΔXは、金型装置10の型締による縮み量に相当する。
可動プラテン120の計測面831がZ方向に対し完全な垂直面に対し傾いている場合、可動プラテン変位計802で計測される変位ΔZは計測面831の前進によって生じる変位ΔZ1を含む。その変位ΔZ1は、可動プラテン120の前進によって生じるものであり、可動プラテン120の変形によって生じるものではない。従って、その変位ΔZ1は誤差である。
そこで、補正用データ取得部712は、離間状態で可動プラテン変位計802と可動プラテン120との相対位置をX方向に変化させたときの可動プラテン変位計802の計測値の変化を取得する。
尚、可動プラテン変位計802と可動プラテン120との相対位置をX方向に変化させるため、本実施形態では後述するように可動プラテン120をX方向に移動させるが、可動プラテン変位計802をX方向に移動させてもよい。
補正用データ取得部712は、離間状態で可動プラテン変位計802と可動プラテン120との相対位置をX方向に変化させるため、トグル機構150を作動させて可動プラテン120をX方向に移動させる。
本実施形態によれば、型締装置100に標準で搭載されるトグル機構150を用いて可動プラテン変位計802と可動プラテン120の相対位置をX方向に変化させることができる。尚、トグル機構150の代わりに、型厚調整機構180を用いてもよい。
計測面831が予め加工された平坦面である場合、可動プラテン120のX方向の移動の大きさや向きは特に制限されない。移動の大きさや向きに関係なく、可動プラテン120のX方向の移動量と、可動プラテン変位計802の計測値の変化量とに基づき、計測面831の傾斜角βを算出できる。
尚、離間状態で可動プラテン120をX方向に移動させるとき、型締力が発生しないように、可動プラテン120を後退させてよい。金型装置10が型締装置100に取付けられていない状態の場合、可動プラテン120を前進させてもよい。
補正用データ取得部712は、計測面831の傾斜角βを算出する場合、可動プラテン変位計802の計測値を、可動プラテン120の移動前と移動後の2回のみ取得してもよい。尚、可動プラテン変位計802の計測値は、可動プラテン120のX方向位置を変えて3回以上取得されてもよい。
補正用データ取得部712は、計測面831の傾斜角βの代わりに、または計測面831の傾斜角βに加えて、計測面831の表面プロファイルを取得してもよい。この場合、可動プラテン変位計802の計測値の取得と、可動プラテン120のX方向位置の変更とが繰り返し行われる。計測面831が凹凸を有する場合にも対応できる。
可動プラテン120のX方向の移動量は、型締モータエンコーダ161(トグル機構150を作動させる代わりに、型厚調整機構180を作動させる場合には、型厚調整モータエンコーダ184)や専用の型開閉方向変位計902によって計測する。型開閉方向変位計902は、可動プラテン変位計802と同様に構成されてよい。
尚、詳しくは後述するが、型開閉方向変位計902は、可動プラテン120の型締によって生じる前進量ΔX(図8参照)の計測にも使用可能である。
補正用データ取得部712は、補正用データとして、可動プラテン120の型締によって生じる前進量ΔX(図8参照)を取得してもよい。前進量ΔXと、計測面831の傾斜角βとから誤差ΔZ1を算出可能である。また、前進量ΔXと、計測面831の表面プロファイルとから誤差ΔXを算出可能である。
補正用データ取得部712は、可動プラテン120の型締によって前進する位置が判明している場合、その位置での可動プラテン変位計802の計測値を補正用データとして取得してもよい。
ここで、可動プラテン120の型締によって前進する位置は、予測位置でも、実際の位置でもよい。補正用データ取得部712による補正用データの取得と、型締データ取得部711による計測面831の型締による変位データの取得とは、どちらが先でもよい。
型締データ補正部713は、型締データ取得部711で取得される変位ΔZを、補正用データ取得部712で取得される補正用データ(例えば、傾斜角βや前進量ΔX)で補正する。具体的には、型締データ補正部713は、変位ΔZから誤差ΔZ1を差し引く。変位ΔZから誤差ΔZ1を差し引いた変位ΔZ2が可動プラテン120の変形を表すものとされる。よって、計測面831の傾斜角βの影響を排除でき、可動プラテン120の変形を精度良く計測できる。
出力制御部714は、型締データ補正部713で補正された変位データなどを出力する。その出力は画像や音などの形態で行われ、その出力装置としては表示装置760、警告灯、ブザーなどが用いられる。ユーザの利便性を向上できる。
出力制御部714は、補正後の変位データが許容範囲を外れる場合、警報を出力してもよい。警報の出力によってユーザの注意を喚起でき、ユーザに射出成形機の修理を促すことができる。警報の種類は複数種類用意されてもよい。
(変形および改良)
以上、射出成形機および射出成形方法の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
例えば、制御装置700は、トグルサポート130や可動プラテン120などの計測対象物の各計測点の変位に基づき、計測対象物の応力分布を検知する応力分布検知部を有してもよい。各計測点の変位が等方的であると、応力分布が等方的であるとの判断がなされる。また、一の計測点の変位が他の計測点の変位に比べて大きいと、変位が大きい計測点の位置に応力が集中しているとの判断がなされる。
また、制御装置700は、計測対象物の各計測点の変位に基づき、計測対象物の劣化度を検知する劣化度検知部を有してもよい。計測対象物の劣化が進むと、各計測点の変位のバランスが崩れやすくなる。そのため、各計測点の変位のバランスから計測対象物の劣化度が推定できる。
また、制御装置700は、計測対象物の各計測点の変位に基づき、機械寿命を判定する機械寿命判定部を有してもよい。機械寿命判定部は、劣化度検知部で検知される劣化度に基づき機械寿命を判定できる。劣化度検知部で検知される劣化度が大きいほど、つまり、計測対象物の劣化が進むほど、機械寿命が短いとの判断がなされる。