JP6800798B2 - 射出成形機、および射出成形用情報処理装置 - Google Patents

射出成形機、および射出成形用情報処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、射出成形機、および射出成形用情報処理装置に関する。
特許文献1に記載の品質管理装置は、各成形工程における各成形条件と、それに対応した一部若しくは全ての条件の上限及び下限の監視条件を設定し、それらの監視条件データと各検出器からの検出値とを比較し、異常を予測する。
特開昭64−14015号公報
ところで、金型装置が交換されると、制御量の設定値が変更されるため、操作量に関する物理量の実績値も変化する。
そのため、操作量に関する物理量の実績値の比較による、異常の有無の判定が困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、操作量に関する物理量の実績値の比較による、異常の有無の判定を可能にした、射出成形機の提供を主な目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
射出成形に関する情報を処理する射出成形用情報処理装置を有し、
前記射出成形用情報処理装置は、
射出成形機に取付けられる金型装置ごとに、成形条件である制御量の設定値と、前記制御量が前記設定値になるように操作する操作量に関する物理量の実績値とを対応付けた成形情報を記憶する実績値記憶部と、
前記実績値記憶部で記憶される前記成形情報から、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を抽出する実績値抽出部と
前記実績値抽出部によって抽出される、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を比較する実績値比較部と、を有し、
前記実績値比較部は、前記金型装置の交換を挟んで行われる、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を比較する、射出成形機が提供される。
本発明の一態様によれば、操作量に関する物理量の実績値の比較による、異常の有無の判定を可能にした、射出成形機が提供される。
一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。 一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。 一実施形態による制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。 一実施形態による実績値記憶部によって記憶される成形情報を示す図である。 一実施形態による実績値抽出部によって抽出される成形情報を示す図である。 一実施形態による実績値抽出部によって抽出される別の成形情報を示す図である。 一実施形態による実績値抽出部によって抽出されるさらに別の成形情報を示す図である。 一実施形態による実績値比較部によって比較される型締モータのトルクの実績値の波形を示す図である。 一実施形態による実績値比較部の比較結果を一の成形条件について示す図である。 一実施形態による実績値比較部の比較結果を複数の成形条件についてまとめて示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。図1〜図2に示すように、射出成形機は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700とを有する。以下、射出成形機の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(速度の切替位置、型閉完了位置、型締位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチし、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(制御装置)
制御装置700は、図1〜図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
操作画面は、射出成形機の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
(射出成形用情報処理装置)
制御装置700は、射出成形に関する情報を処理する射出成形用情報処理装置を兼ねる。尚、射出成形用情報処理装置は、制御装置700とは別に設けられてもよく、その場合、制御装置700から各種情報を取得できるように、制御装置700とLAN(Local Area Network)またはインターネット回線などのネットワークを介して接続されてよい。その接続は、有線接続、無線接続のいずれでもよい。
図3は、一実施形態による制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
図3に示すように、制御装置700は、射出成形機に取付けられる金型装置10ごとに、成形条件である制御量の設定値と、制御量が設定値になるように操作する操作量に関する物理量の実績値とを対応付けて記憶する実績値記憶部711を有する。
図4は、一実施形態による実績値記憶部によって記憶される成形情報を示す図である。図4に示すように、実績値記憶部711は、金型装置10と、金型装置10の内部で成形される成形品の成形条件である制御量の設定値と、制御量が設定値になるように操作する操作量に関する物理量の実績値とを対応付けて記憶する。
制御量としては、例えば可動部材の移動位置(または移動位置を表す移動距離)、可動部材の移動時間、可動部材の移動速度、可動部材に作用する力や圧力などが挙げられる。例えば型閉工程、型締工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動位置や移動速度、保圧工程における成形材料の保持圧力やその保持時間、計量工程におけるスクリュ330の背圧、突き出し工程におけるエジェクタモータ210のトルクなどが挙げられる。
制御量の設定値は、金型装置10ごとに設定される。制御量の設定値は、金型装置10ごとに1つずつ設定されてよい。制御量の設定値は、操作装置750などにおいて入力され、記憶媒体702に記憶される。
操作量としては、例えば可動部材を駆動するモータの供給電流などが挙げられる。可動部材とモータの組合せとしては、例えば、クロスヘッド151と型締モータ160の組合せ、エジェクタロッド230とエジェクタモータ210の組合せ、スクリュ330と射出モータ350の組合せ、スクリュ330と計量モータ340の組合せなどが挙げられる。
操作量に関する物理量とは、操作量の他、操作量に応じて変動する物理量を意味する。操作量がモータの供給電流である場合、操作量に応じて変動する物理量としてはモータのトルクやモータの温度が挙げられる。モータのトルクやモータの発熱量は、モータの供給電流に比例する。これらの実績値は、電流検出器やトルク検出器、温度検出器などの検出器によって検出される。モータのトルクの実績値は、モータに電流を供給するインバータの制御指令値から求めてもよい。
操作量に関する物理量の種類は、操作画面において選択可能であってもよい。また、操作量に関する物理量の実績値は、波形でも、ピーク値でも、可動部材が特定の位置に存在するときの値でもよく、操作画面において選択可能であってもよい。
実績値記憶部711は、射出成形機が成形動作を行う間、操作量に関する物理量の実績値を監視し、その監視結果を制御量の設定値と対応付けて記憶する。その記憶は、操作画面において所定のモードが選択されている間のみ行われてもよい。所定のモードを選択するユーザは、射出成形機の納品先の使用者でもよいし、射出成形機の製造元の保守管理者でもよい。後者の場合、保守管理者は、射出成形機の定期検査などにおいて、射出成形機の異常の有無を判定するために、所定のモードを選択する。
尚、本実施形態の制御量は可動部材の物理量であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御量は、金型装置10の温度やシリンダ310の温度などでもよい。制御量がシリンダ310の温度である場合、操作量は加熱器313の供給電流である。
ところで、射出成形機や金型装置10の劣化による異常の有無は、操作量に関する物理量(以下、単に「特徴量」とも呼ぶ。)の実績値の経時的な変化で判定できる。例えば、型締装置100の劣化が進むほど、クロスヘッド151の位置制御に要するエネルギーの損失が大きくなるので、型締モータ160のトルクが大きくなる。
射出成形機や金型装置10の劣化は緩やかに進むので、特徴量の実績値の変化も緩やかに進む。そのため、劣化による異常の有無の判定では、時間的に隔たりのある、複数のショット間での特徴量の実績値を比較することになる。
図4に示すように、金型装置10が交換されると、成形条件が変更されるため、特徴量の実績値も変化する。特徴量の実績値の変化は、成形条件の変更に起因するものと、射出成形機や金型装置10の劣化に起因するものとの両方を含む。
そこで、図3に示すように、制御装置700は、実績値記憶部711で記憶される成形情報から、同一の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出する実績値抽出部712を有する。
図5は、一実施形態による実績値抽出部によって抽出される成形情報を示す図である。図5に示すように、実績値抽出部712は、実績値記憶部711で記憶される成形情報(図4に示す成形情報)から、同一の成形条件Aで行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出してよい。
図6は、一実施形態による実績値抽出部によって抽出される別の成形情報を示す図である。図6に示すように、実績値抽出部712は、実績値記憶部711で記憶される成形情報(図4に示す成形情報)から、同一の成形条件Bで行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出してよい。
図7は、一実施形態による実績値抽出部によって抽出されるさらに別の成形情報を示す図である。図7に示すように、実績値抽出部712は、実績値記憶部711で記憶される成形情報(図4に示す成形情報)から、同一の成形条件Cで行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出してよい。
図5〜図7に示すように、同一の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出することで、特徴量の実績値の変化から、成形条件の変更に起因するものを排除できる。そのため、特徴量の実績値の比較による異常の有無の判定が可能になる。
尚、本実施形態の実績値抽出部712は、同一の成形条件で行われる複数のショットの実績値を抽出するが、類似の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出してもよい。例えば、実績値の比較による異常の有無の判定が可能な程度に時間の隔たりのある、成形条件が同一のショットが存在しない場合、実績値抽出部712は類似の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出してもよい。実績値抽出部712は、同一の成形条件および類似の成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を抽出すればよい。
成形条件が類似であるか否かは、例えば、制御量の設定値が許容範囲内にあるか否か、成形動作の管理に用いられる物理量の実績値(所謂、ロギングデータ)が許容範囲内にあるか否かに基づき判定できる。成形動作の管理に用いられる物理量としては、例えば成形サイクル時間、型閉時間、型開時間、充填時間、計量時間などの時間の他、位置、圧力、力、温度などが挙げられる。成形条件の類似性の判定に用いられる物理量は、操作画面において選択可能であってもよい。
図3に示すように、制御装置700は、実績値抽出部712によって抽出される、同一の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を比較する実績値比較部713を有してよい。実績値比較部713は、例えば同一の成形条件で行われる、基準のショットにおける特徴量の実績値と、その他のショットにおける特徴量の実績値とを比較する。実績値の比較は、例えば実績値の差の大きさを求めることで行われる。特徴量の実績値の比較によって、異常の有無の判定が可能になる。異常の有無の判定に、基準のショットにおける特徴量の実績値を用いるので、基準のデータをシミュレーションや経験などに基づき作成する手間を省略できる。
基準のショットは、比較される他のショットよりも過去のショットであればよく、操作画面において選択できてよい。基準のショットは、射出成形機の製造元での出荷検査時のものでもよいし、射出成形機の納品先での射出成形時のものでもよい。後者の場合、基準のショットは、射出成形機の納入からできるだけ早い時期のものであることが好ましい。時間的に隔たりのある特徴量の実績値を比較できるので、異常の有無を判定しやすい。
図8は、一実施形態による実績値比較部によって比較される型締モータのトルクの実績値の波形を示す図である。図8において、縦軸は型締モータ160のトルクの実績値を表し、横軸は型閉開始からの経過時間を表す。図8において、型締モータ160のトルクの実績値が正であることは、型締モータ160に電流を供給するインバータから型締モータ160に電流が流れることを意味する。また、型締モータ160のトルクの実績値が負であることは、型締モータ160の減速によって型締モータ160からインバータに電流が逆流することを意味する。
図8において、二点鎖線は基準のショットにおける型締モータ160のトルクの波形を表し、実線は他のショットにおける型締モータ160のトルクの波形を表す。型締装置100の劣化が進むと、クロスヘッド151の位置制御に要するエネルギーの損失が大きくなるので、型締モータ160のトルクが大きくなり、その波形は例えば図8に二点鎖線で示す波形から図8に実線で示す波形になる。
実績値比較部713は、金型装置10の交換を挟んで行われる、同一の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を比較してよい。例えば、実績値比較部713が同一の成形条件Aで行われるショットNo.0001とショットNo.6000とを比較する場合、その間には、図4に示すように金型装置Aから金型装置Bへの金型交換、金型装置Bから金型装置Cへの交換、金型装置Cから金型装置Aへの交換、金型装置Aから金型装置Cへの交換、および金型装置Cから金型装置Aへの交換が行われる。時間的に隔たりのある特徴量の実績値を比較できるので、異常の有無を判定しやすい。
尚、本実施形態の実績値比較部713は、同一の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を比較するが、類似の成形条件で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を比較してもよい。例えば、実績値の比較による異常の有無の判定が可能な程度に時間の隔たりのある、同一の成形条件で行われたショットが存在しない場合、類似の成形条件で行われたショットを基準のショットとしてもよい。実績値比較部713は、同一の成形条件および類似の成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットにおける特徴量の実績値を比較すればよい。
図9は、一実施形態による実績値比較部の比較結果を一の成形条件について示す図である。図9において、横軸は同一の成形条件で行われるショットの累積数を表し、縦軸は各ショットにおける型閉開始からの経過時間を表す。また、図9において、白と黒の諧調は基準のショットにおける特徴量の実績値と他のショットにおける特徴量の実績値との差の大きさを表し、色調が白から黒に向かうほど基準のショットにおける特徴量の実績値と他のショットにおける特徴量の実績値との差が大きいことを表す。
図9に示すように、実績値比較部713の比較結果は、同一の成形条件で行われる、基準のショットにおける特徴量の実績値と他のショットにおける特徴量の実績値との差の大きさで表されてよい。図9に示す比較結果は表示装置760において表示されてよい。その表示を見た射出成形機のユーザは、複数のショット間における特徴量の実績値の差の大きさが大きいショット番号や型閉開始からの経過時間などを知ることができ、劣化の原因の推定に役立つ情報を得ることができる。
図10は、一実施形態による実績値比較部の比較結果を複数の成形条件についてまとめて示す図である。図10では、図4などに示す成形条件ごとに実績値比較部713によって特徴量の実績値の差の大きさが閾値を超える時期を求め、その時期を黒い太線で示したものである。閾値は、射出成形機の劣化による異常の有無の判定と、金型装置の劣化による異常の有無の判定とに共通のものであってよい。閾値は、成形条件ごとに用意されてよい。
図10に示す比較結果は表示装置760において表示されてよい。その表示を見た射出成形機のユーザは、射出成形機の劣化による異常が有る時期や金型装置の劣化による異常が有る時期を知ることができ、劣化の原因の推定に役立つ情報を得ることができる。
図3に示すように、制御装置700は、実績値比較部713の比較結果に基づき、射出成形機の劣化による異常の有無を判定する射出成形機異常判定部714を有してよい。射出成形機異常判定部714は、例えば図10に示す比較結果に基づき、射出成形機の劣化による異常の有無を判定する。
射出成形機の劣化による異常が有ると判定される場合としては、金型装置10の交換の直前と直後の両方において、上記差の大きさが閾値を超える場合が挙げられる。例えば、図10ではショットNo.6000とショットNo.6001との間で金型装置10の交換が行われ、その交換の直前と直後の両方において、上記差の大きさが閾値を超える。この場合、射出成形機の劣化による異常が有ると判定される。同時に複数の金型装置10の劣化による異常が生じる確率は、非常に小さいためである。
射出成形機異常判定部714は、上記差の大きさが閾値以下である場合、射出成形機の劣化による異常が無いと判定してよい。
射出成形機異常判定部714は、現在の射出成形機の劣化による異常の有無を判定してもよい。実績値抽出部712は射出成形で使用される成形条件と同一または類似の成形条件で行われた過去の実績値を抽出し、射出成形機異常判定部714は実績値抽出部712によって抽出した実績値を基準データとして射出成形中に射出成形機の劣化による異常の有無を判定してもよい。
図3に示すように、制御装置700は、実績値比較部713の比較結果に基づき、金型装置10の劣化による異常の有無を判定する金型装置異常判定部715を有してよい。金型装置異常判定部715は、例えば、図10に示す比較結果に基づき、金型装置10の劣化による異常の有無を判定する。
金型装置10の劣化による異常が有ると判定される場合としては、金型装置10の交換の直前に上記差の大きさが閾値を超えるが、金型装置10の交換の直後に上記差の大きさが閾値以下になる場合が挙げられる。例えば、図10ではショットNo.5000とショットNo.5001との間で金型装置10の交換が行われ、その交換の直前では上記差の大きさが閾値を超えるが、その交換の直後には上記差の大きさが閾値以下となる。この場合、交換直前の金型装置Cに異常が有ると判定される。交換の間に、射出成形機の劣化が急激に進む確率は非常に小さいためである。
また、金型装置10の劣化による異常が有ると判定される場合としては、金型装置10の交換の直前に上記差の大きさが閾値以下であるが、金型装置10の交換の直後に上記差の大きさが閾値を超える場合が挙げられる。この場合、交換の直後の金型装置に異常が有ると判定される。交換の間に、射出成形機の劣化が急激に進む確率は非常に小さいためである。
金型装置異常判定部715は、上記差の大きさが閾値以下である場合、金型装置10の劣化による異常が無いと判定してよい。
金型装置異常判定部715は、現在の金型装置10の劣化による異常の有無を判定してもよい。実績値抽出部712は射出成形で使用される成形条件と同一または類似の成形条件で行われた過去の実績値を抽出し、金型装置異常判定部715は実績値抽出部712によって抽出した実績値を基準データとして射出成形中に金型装置10の劣化による異常の有無を判定してもよい。
尚、本実施形態では、射出成形機の劣化による異常が有ると判定される閾値と、金型装置の劣化による異常が有ると判定される閾値とが、共通のものであるが、別々に用意されてもよい。また、閾値は、異常の程度を判定できるように、複数用意されてもよい。
射出成形機異常判定部714は、射出成形機の劣化による異常の程度を判定してもよい。射出成形機の劣化による異常の程度は特徴量の実績値の差の大きさから求められ、特徴量の実績値の差の大きさが大きいほど、射出成形機の劣化による異常の程度が大きいとされる。射出成形機の劣化による異常の程度は、数値などで表されてよい。
同様に、金型装置異常判定部715は、金型装置10の劣化による異常の程度を判定してもよい。金型装置10の劣化による異常の程度は特徴量の実績値の差の大きさから求められ、特徴量の実績値の差の大きさが大きいほど、金型装置10の劣化による異常の程度が大きいとされる。金型装置10の劣化による異常の程度は、数値などで表されてよい。
図3に示すように、制御装置700は、実績値比較部713の比較結果を表示する表示処理部716を有してよい。表示処理部716は、例えば図9に示す比較結果や図10に示す比較結果を表示装置760に表示させる。表示装置760を見たユーザは、射出成形機や金型装置の劣化による異常の有無を判定できる。尚、表示処理部716は、射出成形機異常判定部714の判定結果を表示してもよい。また、表示処理部716は、金型装置異常判定部715の判定結果を表示してもよい。
(変形および改良)
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
10 金型装置
160 型締モータ
700 制御装置
711 実績値記憶部
712 実績値抽出部
713 実績値比較部
714 射出成形機異常判定部
715 金型装置異常判定部
716 表示処理部
760 表示装置

Claims (5)

  1. 射出成形に関する情報を処理する射出成形用情報処理装置を有し、
    前記射出成形用情報処理装置は、
    射出成形機に取付けられる金型装置ごとに、成形条件である制御量の設定値と、前記制御量が前記設定値になるように操作する操作量に関する物理量の実績値とを対応付けた成形情報を記憶する実績値記憶部と、
    前記実績値記憶部で記憶される前記成形情報から、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を抽出する実績値抽出部と
    前記実績値抽出部によって抽出される、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を比較する実績値比較部と、を有し、
    前記実績値比較部は、前記金型装置の交換を挟んで行われる、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を比較する、射出成形機。
  2. 前記実績値比較部の比較結果に基づき、前記射出成形機の劣化による異常の有無を判定する射出成形機異常判定部を有する、請求項に記載の射出成形機。
  3. 前記実績値比較部の比較結果に基づき、前記金型装置の劣化による異常の有無を判定する金型装置異常判定部を有する、請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
  4. 前記実績値比較部の比較結果を表示する表示処理部を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
  5. 射出成形に関する情報を処理する射出成形用情報処理装置であって、
    射出成形機に取付けられる金型装置ごとに、成形条件である制御量の設定値と、前記制御量が前記設定値になるように操作する操作量に関する物理量の実績値とを対応付けた成形情報を記憶する実績値記憶部と、
    前記実績値記憶部で記憶される前記成形情報から、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を抽出する実績値抽出部と
    前記実績値抽出部によって抽出される、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を比較する実績値比較部と、を有し、
    前記実績値比較部は、前記金型装置の交換を挟んで行われる、同一の前記成形条件および類似の前記成形条件の少なくとも一方で行われる複数のショットの前記実績値を比較する、射出成形用情報処理装置。
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