以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
(射出成形システム)
図1は、一実施形態による射出成形システムに備えられる射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形システムに備えられる射出成形機の型締時の状態を示す図である。図1〜図2において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機の幅方向である。
射出成形システムは、射出成形機2と、補正装置800とを備える。射出成形機2は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、成形機制御装置700と、フレームFrとを有する。以下、射出成形機2の各構成要素および補正装置800について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、成形機制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
型厚調整機構180の動作は、成形機制御装置700によって制御される。成形機制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、成形機制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチされ、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、成形機制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、成形機制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、成形機制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンク413から作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、成形機制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。ピストンロッド433が前室435を貫通しているため、前室435の断面積は後室436の断面積より小さい。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
第1リリーフ弁441は、第1流路401内の圧力が設定値を超えた場合に開き、第1流路401内の余分な作動液をタンク413に戻して、第1流路401内の圧力を設定値以下に保つ。
第2リリーフ弁442は、第2流路402内の圧力が設定値を超えた場合に開き、第2流路402内の余分な作動液をタンク413に戻して、第2流路402内の圧力を設定値以下に保つ。
フラッシング弁443は、前室435の断面積と後室436の断面積との差に起因する作動液の循環量の過不足を調整する弁であり、例えば図1および図2に示すように3位置4ポートのスプール弁で構成される。
第1チェック弁451は、第1流路401内の圧力がタンク413内の圧力よりも低い場合に開き、タンク413から第1流路401に作動液を供給する。
第2チェック弁452は、第2流路402内の圧力がタンク413の圧力よりも低い場合に開き、タンク413から第2流路402に作動液を供給する。
電磁切替弁453は、液圧シリンダ430の前室435と液圧ポンプ410の第1ポート411との間の作動液の流れを制御する制御弁である。電磁切替弁453は、例えば第1流路401の途中に設けられ、第1流路401における作動液の流れを制御する。
電磁切替弁453は、例えば図1および図2に示すように2位置2ポートのスプール弁で構成される。スプール弁が第1位置(図1および図2中左側の位置)の場合、前室435と第1ポート411との間の両方向の流れが許容される。一方、スプール弁が第2位置(図1および図2中右側の位置)の場合、前室435から第1ポート411への流れが制限される。この場合、第1ポート411から前室435への流れは制限されないが、制限されてもよい。
第1圧力検出器455は、前室435の液圧を検出する。前室435の液圧によってノズルタッチ圧力が生じるため、第1圧力検出器455を用いてノズルタッチ圧力が検出できる。第1圧力検出器455は、例えば第1流路401の途中に設けられ、電磁切替弁453を基準として前室435側の位置に設けられる。電磁切替弁453の状態に関係なく、ノズルタッチ圧力が検出できる。
第2圧力検出器456は、第1流路401の途中に設けられ、電磁切替弁453を基準として第1ポート411側の位置に設けられる。第2圧力検出器456は、電磁切替弁453と第1ポート411との間における液圧を検出する。電磁切替弁453が第1ポート411と前室435との間の両方向の流れを許容する状態の場合、第1ポート411と電磁切替弁453との間における液圧と、電磁切替弁453と前室435との間における液圧とは等しい。よって、この状態の場合、第2圧力検出器456を用いてノズルタッチ圧力が検出できる。
尚、本実施形態では、第1流路401の途中に設けられる圧力検出器を用いてノズルタッチ圧力を検出するが、例えばノズル320に設けられるロードセルなどを用いてノズルタッチ圧力を検出してもよい。つまり、ノズルタッチ圧力を検出する圧力検出器は、移動装置400、射出装置300のいずれに設けられてもよい。
尚、本実施形態では、移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(成形機制御装置)
成形機制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1〜図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。成形機制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、成形機制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
成形機制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、成形機制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
成形機制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を成形機制御装置700に出力する。表示装置760は、成形機制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。操作画面は、射出成形機の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機の設定(設定値の入力を含む)などを行う。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
(補正装置)
補正装置800は、成形機制御装置700と同様に、CPU(Central Processing Unit)801と、メモリなどの記憶媒体802と、入力インターフェース803と、出力インターフェース804とを有する。補正装置800は、記憶媒体802に記憶されたプログラムをCPU801に実行させることにより、各種の処理を行う。また、補正装置800は、入力インターフェース803で外部からの信号を受信し、出力インターフェース804で外部に信号を送信する。補正装置800は、LAN(Local Area Network)またはインターネット回線などのネットワーク900を介して、成形機制御装置700と接続されている。接続は、有線接続、無線接続のいずれでもよい。
図3は、一実施形態による補正装置および成形機制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
成形機制御装置700は、図3に示すように、射出成形機2における電気機器30を制御する電気機器制御部714を有する。電気機器制御部714は、射出成形機2における第1検出器21の検出値が設定値になるように、電気機器30を制御する。電気機器30としては、例えば、型締モータ160、型厚調整モータ183、エジェクタモータ210、加熱器313、計量モータ340、射出モータ350、モータ420、後述のタイバー温調器142等が挙げられる。第1検出器21としては、電気機器30に応じたものが選定される。例えば、詳しくは後述するが、電気機器30がタイバー温調器142である場合、第1検出器21はタイバー温度検出器143である。
補正装置800は、射出成形機2における第2検出器22の検出値と設定値との偏差が小さくなるように、第1検出器21の検出値と比較される設定値の補正値を算出する。補正装置800は、算出した補正値を成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、補正装置800によって算出した補正値を用いて第1検出器21の検出値と比較される設定値を補正する。電気機器制御部714は、第1検出器21の検出値が補正後の設定値になるように電気機器30を制御する。これにより、第2検出器22で検出される検出値と設定値との偏差を小さくすることができる。
尚、本実施形態の電気機器制御部714は、射出成形機2に備えられるが、補正装置800に備えられてもよい。補正装置800は、第1検出器21の検出値が設定値になるように、電気機器30を制御してもよい。複数の電気機器30に対応して、複数の電気機器制御部714が設けられてよい。全ての電気機器制御部714が射出成形機2に備えられてもよいし、全ての電気機器制御部714が補正装置800に備えられてもよい。また、一部の電気機器制御部714が射出成形機2に備えられ、残りの電気機器制御部714が補正装置800に備えられてもよい。
成形機制御装置700は、補正装置800が第2検出器22によって検出値を検出する検出タイミングを調整するため、成形機制御装置700で制御される射出成形機2の駆動部の動作タイミングを規定するタイミング信号を補正装置800に送信する。
尚、成形機制御装置700は、射出成形機2の駆動部の動作タイミングを制御すればよく、射出成形機2の駆動部の動作を制御しなくてもよい。例えば、成形機制御装置700は型締のタイミングを制御すればよく、型締モータ160の制御は補正装置800が行ってもよい。
図3に示すように、補正装置800は、例えば、タイミング信号受信部811と、タイミング設定部812と、検出値取得部813と、目標値受信部814と、補正値算出部815と、補正値送信部816と、判定部817と、判定結果送信部818とを有する。
タイミング信号受信部811は、射出成形機2の成形機制御装置700から、成形機制御装置700で制御される射出成形機2の駆動部の動作タイミングを規定するタイミング信号を受信する。成形機制御装置700は、型閉工程、型締工程、型開工程などの一連の工程を繰り返し行う。また、成形機制御装置700は、型締工程中に、充填工程や保圧工程、計量工程などを行う。成形機制御装置700で制御される駆動部としては、例えば、型締モータ160、計量モータ340、射出モータ350などが挙げられる。尚、成形機制御装置700で制御される駆動部は、電磁石やリニアモータ、油圧シリンダ、油圧ポンプなどでもよい。成形機制御装置700は、成形機制御装置700で制御される駆動部の動作タイミングを補正装置800に知らせるために、補正装置800にタイミング信号を送信するタイミング信号送信部711を有する。成形機制御装置700は、補正装置800に送信するタイミング信号によって規定される動作タイミングで、射出成形機2の駆動部を制御する。
タイミング設定部812は、タイミング信号受信部811で受信されるタイミング信号に基づき、射出成形機2における第2検出器22で第2の物理量の検出値を検出する検出タイミングを設定する。検出タイミングは、第2の物理量の種類に応じて設定される。例えば、第2の物理量が軸力バランスや型締力である場合、タイミング設定部812によって設定する検出タイミングは、型締工程の間である。
タイミング設定部812は、例えば、タイミング信号受信部811でタイミング信号を受信した受信時、または受信時からの経過時間が予め設定された遅延時間に達した時を、検出タイミングとして設定する。遅延時間は、タイミング信号が規定する動作タイミングの種類、第2の物理量の種類に応じて設定される。
検出値取得部813は、タイミング設定部812で設定される検出タイミングで第2検出器22によって検出した第2の物理量の検出値を取得する。第2の物理量は、例えば、成形品の品質管理に用いられる変数である。具体的には、例えば、複数本のタイバー140の軸力バランス、金型装置10の型締力、金型間距離、金型内圧、金型温度、成形品の質量や形状、寸法などが挙げられる。
第2検出器22は、タイミング設定部812で設定された検出タイミング、例えば、タイミング信号受信部811でタイミング信号を受信した受信時、または受信時からの経過時間が予め設定された遅延時間に達した時に、第2の物理量を検出する。第2の物理量を検出するタイミングは、第2の物理量の種類に応じて設定される。例えば、軸力バランスや型締力を検出するタイミングは、型締工程の間に設定される。
第2検出器22の検出値を第2検出器22から検出値取得部813に送信するタイミングは、特に限定されない。第2検出器22は、射出成形機2に属するものでもよいし、補正装置800に属するものでもよい。第2検出器22としては、例えば、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141、金型装置10の温度を検出する温度検出器、金型装置10の振動を検出する振動検出器、成形品の画像を撮像する撮像装置、成形品の質量を検出する質量検出器などが用いられる。撮像装置で撮像された成形品の画像は、成形品の寸法や形状、色などの検出に用いられる。
目標値受信部814は、射出成形機2の成形機制御装置700から、第2検出器22の検出値と比較する目標値を受信する。その目標値は、例えば射出成形機2のユーザによって入力され、成形機制御装置700の記憶媒体702に予め記憶されているものを読み出して用いる。成形機制御装置700は、補正装置800に目標値を送信する目標値送信部712を有する。目標値を送信するタイミングは、特に限定されないが、例えば、タイミング信号を送信するタイミングと同時でもよい。尚、目標値は、補正装置800に予め記憶されていてもよい。
補正値算出部815は、検出値取得部813で取得した第2検出器22の検出値と目標値との比較に基づき、その比較以降に第2検出器22で検出する検出値を変更するために、射出成形機2の設定条件を設定する設定値の補正値を算出する。設定値は、第2の物理量とは異なる第1の物理量の設定値である。第1の物理量は、第2の物理量に影響を与えることで、成形品の品質に間接的に影響を与える変数である。第2の物理量は制御量であり、第1の物理量は操作量である。制御量とは、目標値になるように制御される量である。操作量とは、制御量の検出値が目標値になるように変化される量である。第1の物理量として、具体的には、例えば、タイバー140の設定温度、トグルサポート130の設定位置、クロスヘッド151の設定位置などが挙げられる。
設定値の補正値は、補正後の設定値でもよいし、補正後の設定値と補正前の設定値との差分(例えば補正後の設定値から補正前の設定値を差し引いた値)でもよい。後者の場合、補正前の設定値に補正値を加算した値が、補正後の設定値として用いられる。尚、設定値の補正値は、補正前の設定値から補正後の設定値を差し引いた値でもよい。この場合、補正前の設定値から補正値を減算した値が、補正後の設定値として用いられる。
設定値の補正値は、検出値取得部813で取得した第2検出器22の検出値と目標値との比較以降に第2検出器22で検出する検出値と目標値との偏差が小さくなるように(好ましくはゼロになるように)算出される。補正値の算出には、PI(Proportional Integral)演算やPID(Proportional Integral Derivative)演算、相関分析などが用いられてよい。ここで、比較以降とは、次回以降のショットでもよいし、今回のショットでもよい。
補正値送信部816は、補正値算出部815で算出される補正値を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、補正装置800から送信される補正値を受信する補正値受信部713と、補正値受信部713で受信される補正値を用いて射出成形機2における電気機器30を制御する電気機器制御部714とを有する。電気機器30は、第1の物理量を制御するためのものである。電気機器30としては、例えばタイバー温調器142、型厚調整モータ183、型締モータ160などが挙げられる。第1の物理量の設定値は、補正値受信部713で受信した補正値を用いて補正される。電気機器制御部714は、補正後の設定値に従って電気機器30を制御する。これにより、第2検出器22の検出値を目標値に一致でき、成形品の品質を向上できる。
本実施形態によれば、射出成形機2の外部装置である補正装置800が、補正値を算出する。そのため、成形機制御装置700のCPU701の処理負荷を軽減できる。成形機制御装置700のCPU701の処理速度が補正装置800のCPU801の処理速度よりも遅い場合に、成形機制御装置700のCPU701の処理負荷を軽減することによって、射出成形機2の制御の処理速度を向上できる。従って、旧世代のCPU701が搭載された成形機制御装置700を、新世代のCPU801が搭載された補正装置800によって延命できる。あるいは、経年劣化した後のCPU701が搭載された成形機制御装置700を、経年劣化する前のCPU801が搭載された補正装置800によって延命できる。後者の場合、成形機制御装置700のCPU701と、補正装置800のCPU801とは、同世代のものでもよい。また、本実施形態によれば、補正値を算出したうえで算出結果を送信するので、通信量を抑制できる。さらに、本実施形態によれば、成形機制御装置700のハードウェアやソフトウェアを大幅に改造することなく、成形品の品質を向上できる。
尚、本実施形態の電気機器制御部714は、成形機制御装置700に備えられるが、補正装置800に備えられてもよい。この場合、補正値送信部816や補正値受信部713は不要である。この場合、補正装置800が、算出した補正値を用いて電気機器30を制御するため、成形機制御装置700の処理負荷をより軽減でき、また、通信量を抑制できる。
判定部817は、補正値算出部815で算出される補正値が許容範囲内であるか否かを判定する。この判定は、射出成形機2に関する異常(金型装置10の異常を含む)の有無の判定などに用いられる。例えば、補正値が許容範囲内である場合に異常が無いと判断され、補正値が許容範囲外である場合に異常が有ると判断される。許容範囲は、第1の物理量の種類などに応じて適宜設定される。許容範囲は、予め設定された閾値で規定される。許容範囲を規定する閾値は、上限値および下限値のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。射出成形機2に関する異常の有無の判定は、補正値が許容範囲内であるか否かの判定結果と、他の判定結果とに基づいてなされてもよい。
補正値に基づき異常の有無を判定することで、個々の検出値では分からない異常を検出することができる。例えば、型内圧は正常だが、充填圧や保持圧力の補正値が許容範囲外である場合、スクリュ330が摩耗していると判断できる。また、成形品の質量は正常だが、トグルサポート位置やクロスヘッド位置の補正値が許容範囲外である場合、金型装置10が損傷していると判断できる。
判定結果送信部818は、判定部817の判定結果を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、補正装置800から送信される判定結果を受信する判定結果受信部715と、判定結果受信部715で受信される判定結果の報知制御を行う報知制御部716とを有する。判定部817の判定結果は、画像や音などで報知される。その報知装置としては、例えば表示装置760、警告灯、ブザーなどが用いられる。判定部817の判定結果の報知は、異常が有る場合のみ行われてもよいし、異常が有る場合と異常が無い場合の両方の場合に行われてもよい。
本実施形態によれば、射出成形機2の外部装置である補正装置800が、補正値が許容範囲内であるか否かの判定を行う。そのため、成形機制御装置700の処理負荷を軽減できる。また、判定を行ったうえで判定結果を送信するので、通信量を抑制できる。さらに、成形機制御装置700のハードウェアやソフトウェアを大幅に改造することなく、異常の有無を判定できる。
尚、本実施形態の判定部817は、補正装置800に備えられるが、成形機制御装置700に備えられてもよい。この場合、成形機制御装置700は、補正値受信部713で受信された補正値が許容範囲内であるか否かの判定を行う。
また、本実施形態の報知制御部716は、成形機制御装置700に備えられるが、補正装置800に備えられてもよい。この場合、判定結果送信部818や判定結果受信部715は不要である。この場合、補正装置800が、判定結果の報知制御を行うため、成形機制御装置700の処理負荷をより軽減でき、また、通信量を抑制できる。
以下、補正装置800の処理の具体例について説明する。
(タイバーの設定温度の補正)
図4は、一実施形態による射出成形機に備えられる複数本のタイバーの位置関係を示す図であって、可動プラテン側から固定プラテンを見た図である。射出成形機は、タイバー140を例えば4本有する。4本のタイバー140は、型開閉方向視において、水平線L1を中心に上下対称に配設され、且つ、鉛直線L2を中心に左右対称に配設される。水平線L1よりも上側を天側、水平線L1よりも下側を地側と呼ぶ。また、鉛直線L2よりも操作装置750側を操作側、鉛直線L2よりも操作装置750とは反対側を反操作側と呼ぶ。
型締力は4本のタイバー140に分散してかかり、各タイバー140が伸びる。各タイバー140の伸びに抵抗する力を軸力と呼ぶ。4本のタイバー140の有効長TLに差がある場合、有効長TLの短いタイバー140と、有効長TLの長いタイバー140とでは軸力に差が生じる。ここで、各タイバー140の有効長TLとは、各タイバー140におけるトグルサポート130との締結部位と固定プラテン110との締結部位との間の長さのことであり、各タイバー140に沿って計測される。各タイバー140の有効長TLは、例えば型締力が作用していない状態で計測される。
尚、型締装置が竪型である場合、各タイバー140の有効長TLとは、各タイバー140におけるトグルサポートとの締結部位と上プラテンとの締結部位との間の長さのことであり、各タイバー140に沿って計測される。
タイバー140の有効長TLは、例えば型締時に固定金型11と可動金型12との面圧が目標の分布になるように設定される。目標の分布は、均一分布、不均一分布のいずれでもよく、状況に応じて設定される。成形不良を低減することができる。複数本のタイバー140の有効長TLは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
タイバー140の有効長TLは、タイバー140の温度に応じて変化する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140の有効長TLが長くなる。従って、タイバー140の温度を調節することで、タイバー140の有効長TLを調整でき、軸力バランスを調整できる。ここで、軸力バランスとは、軸力のばらつき具合を意味し、例えば軸力の差で表してよい。軸力の差は、軸力の平均に対する割合(%)で表してよい。軸力バランスは、例えば型締時に固定金型11と可動金型12との面圧が目標の分布になるように設定される。目標の分布は、均一分布、不均一分布のいずれでもよく、状況に応じて設定される。成形不良を低減することができる。
タイバー140の有効長TLを調整するため、各タイバー140には図1および図2に示すようにタイバー温調器142やタイバー温度検出器143が取り付けられる。タイバー温調器142は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。尚、タイバー温調器142は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器142は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。タイバー温調器142は、タイバー温度検出器143によって検出されるタイバー140の検出温度が設定温度になるように制御される。
補正装置800は、例えばタイバー140の有効長TLの調整に用いられ、軸力バランスの調整に用いられる。補正装置800は、射出成形機2の成形機制御装置700から、型締装置100の動作タイミングを規定するタイミング信号と、軸力バランスの目標値とを受信する。軸力バランスの目標値は、例えば、操作画面の操作によって入力される。
図5は、一実施形態による射出成形機の操作画面を示す図である。操作画面は、軸力バランス表示部762を有する。軸力バランス表示部762は、軸力のバランスを表示する。よって、各軸力を個別に表示する場合よりも、固定金型11と可動金型12との面圧分布をユーザが把握しやすく調整しやすい。ここで、軸力のバランスとは、軸力のばらつき具合を意味し、例えば軸力の差で表してよい。軸力の差は、軸力の平均に対する割合(%)で表してよい。
尚、操作画面は、各軸力を個別に表示する軸力表示部をさらに有してもよい。
軸力バランス表示部762は、水平軸力バランス表示部763と、鉛直軸力バランス表示部766とを有する。水平軸力バランス表示部763と、鉛直軸力バランス表示部766とは、操作画面に同時に表示されてよい。2方向のバランスが視認できる。
水平軸力バランス表示部763は、水平方向における軸力のバランス(以下、水平軸力バランスともいう)を表示する。水平軸力バランスは、例えば操作側の2本のタイバー140A、140Bの軸力の和と、反操作側の2本のタイバー140C、140Dの軸力の和との差で表される。この差は、全ての軸力の平均値に対する割合(%)で表されてよい。割合の場合、型締力の大小による変動がない。
水平軸力バランスの数値をNh(%)とすると、操作側の軸力の和は100+Nh/2(%)、反操作側の軸力の和は100−Nh/2(%)となる。水平軸力バランスの数値Nhが正であることは、操作側の軸力の和が反操作側の軸力の和よりも大きいことを意味する。一方、水平軸力バランスの数値Nhが負であることは、操作側の軸力の和が反操作側の軸力の和よりも小さいことを意味する。
尚、水平軸力バランスの数値の正負と、操作側の軸力と反操作側の軸力の大小との関係は逆でもよい。操作側の2本のタイバー140A、140Bの軸力の和の代わりに、操作側の2本のタイバー140A、140Bの軸力の平均値が用いられると共に、反操作側の2本のタイバー140C、140Dの歪の和の代わりに、反操作側の2本のタイバー140C、140Dの歪の平均値が用いられてもよい。
水平軸力バランス表示部763は、目標値表示部764と、検出値表示部765とを有する。目標値表示部764は、水平軸力バランスの目標値を表示する。検出値表示部765は、水平軸力バランスの検出値を表示する。目標値表示部764と、検出値表示部765とは、操作画面に同時に表示されてよい。目標値と検出値とのずれが視認できる。
ユーザは、操作画面を見ながら、操作装置750を操作することで、水平軸力バランスの目標値を目標値表示部764に入力する。
鉛直軸力バランス表示部766は、鉛直方向における軸力のバランス(以下、鉛直軸力バランスともいう)を表示する。鉛直軸力バランスは、例えば天側の2本のタイバー140A、140Cの軸力の和と、地側の2本のタイバー140B、140Dの軸力の和との差で表される。この差は、全ての軸力の平均値に対する割合(%)で表されてよい。割合の場合、型締力の大小による変動がない。
鉛直軸力バランスの数値をNv(%)とすると、天側の軸力の和は100+Nv/2(%)、地側の軸力の和は100−Nv/2(%)となる。鉛直軸力バランスの数値Nvが正であることは、天側の軸力の和が地側の軸力の和よりも大きいことを意味する。一方、鉛直軸力バランスの数値Nvが負であることは、天側の軸力の和が地側の軸力の和よりも小さいことを意味する。
尚、鉛直軸力バランスの数値の正負と、天側の軸力と地側の軸力の大小との関係は逆でもよい。天側の2本のタイバー140A、140Cの軸力の和の代わりに、天側の2本のタイバー140A、140Cの軸力の平均値が用いられると共に、地側の2本のタイバー140B、140Dの軸力の和の代わりに、地側の2本のタイバー140B、140Dの軸力の平均値が用いられてもよい。
鉛直軸力バランス表示部766は、目標値表示部767と、検出値表示部768とを有する。目標値表示部767は、鉛直軸力バランスの目標値を表示する。検出値表示部768は、鉛直軸力バランスの検出値を表示する。目標値表示部767と、検出値表示部768とは、操作画面に同時に表示されてよい。目標値と検出値とのずれが視認できる。
ユーザは、操作画面を見ながら、操作装置750を操作することで、鉛直軸力バランスの目標値を目標値表示部767に入力する。
検出値取得部813は、タイミング設定部812で設定される検出タイミングで検出した軸力バランスの検出値を取得する。軸力は、型開工程を行うタイミングや型閉工程を行うタイミングでは検出することができないため、型締工程を行うタイミングで検出する。軸力は、例えばタイバー歪検出器141によって検出する。タイバー歪検出器141は、各タイバー140に取付けられている。
補正値算出部815は、検出値取得部813で取得した軸力バランスの検出値と目標値との比較に基づき、その比較以降に軸力バランスの検出値を変更するために、各タイバー140の設定温度の補正値を算出する。補正値は、その比較以降に軸力バランスの検出値とその目標値との偏差が小さくなるように(好ましくはゼロになるように)算出される。
図6は、一実施形態による目標値受信部、検出値取得部および補正値算出部を示す図である。
目標値受信部814は、射出成形機2の成形機制御装置700から、目標値表示部764、767に入力された軸力バランスの目標値を受信する。例えば、目標値受信部814は、水平軸力バランスの目標値、および鉛直軸力バランスの目標値を受信する。軸力のバランスは、軸力のばらつき具合、例えば軸力の差で表してよい。軸力の差は、軸力の平均に対する割合(%)で表してよい。割合の場合、型締力の大小による変動がない。
検出値取得部813は、タイミング設定部812で設定される検出タイミングで検出した軸力バランスの検出値を取得する。例えば、目標値受信部814は、水平軸力バランスの検出値、および鉛直軸力バランスの検出値を取得する。軸力は、例えばタイバー歪検出器141によって検出する。タイバー歪検出器141は、各タイバー140に取付けられている。
補正値算出部815は、鉛直軸力バランスの目標値と鉛直軸力バランスの検出値との差分を算出する減算器821、水平軸力バランスの目標値と水平軸力バランスの検出値との差分を算出する減算器822と、減算器821、822の算出結果に基づき各タイバー140の設定温度を算出する温度設定部824とを有する。
温度設定部824は、軸力バランスの目標値と軸力バランスの検出値との差に基づいて、各タイバー140の設定温度を算出する。この算出が軸力バランスではなく各軸力に基づいて行われる場合に比べて、一のタイバー140の設定温度の変更が他のタイバー140の軸力に対し与える影響が扱いやすく、各タイバー140の設定温度の算出が容易である。
温度設定部824は、例えば、
操作側かつ天側のタイバー140Aの温度をT0+Th+Tv、
操作側かつ地側のタイバー140Bの温度をT0+Th−Tv、
反操作側かつ天側のタイバー140C温度をT0−Th+Tv、
反操作側かつ地側のタイバー140Dの温度をT0−Th−Tv
とし、T0(℃)、Th(℃)、Tv(℃)を設定してよい。T0は全てのタイバー140の温度の平均値(℃)、Thは水平方向における温度のバランス(差)、Tvは鉛直方向における温度のバランス(差)をそれぞれ表す。
温度設定部824は、タイバー140の設定温度の変更が軸力のバランスに対し与える影響に基づいて、各タイバー140の設定温度を算出してもよい。一のタイバー140の設定温度の変更が他のタイバー140の軸力に対し与える影響を考慮することができる。上記影響は、実験やシミュレーションによって予め求められ、記憶媒体802に格納されたものを読み出して用いる。上記影響は、式や表などの形態で記憶媒体802に格納されてよい。
温度設定部824は、各タイバー140の設定温度の補正値として、変更後の設定温度を算出する。温度設定部824は、各タイバー140の設定温度の補正値として、変更後の設定温度と変更前の設定温度の差分を算出してもよい。
軸力バランスの目標値は、許容範囲を有してよい。許容範囲は、予め設定された閾値で規定される。許容範囲を規定する閾値は、上限値および下限値のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。軸力バランスの検出値が許容範囲内に収まるまで、補正値算出部815による補正値の算出と、検出値取得部813による軸力バランスの取得とが繰り返し行われてもよい。タイバー140の設定温度の補正値の算出には、PI演算などが用いられる。
補正値送信部816は、補正値算出部815で算出するタイバー140の設定温度の補正値を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、補正値算出部815で算出する補正値を用いて、タイバー温調器142を制御することにより、タイバー140の温度を制御する。これにより、所望の軸力バランスが得られる。尚、タイバー140の温度制御は、補正装置800によって行われてもよい。
判定部817は、補正値算出部815で算出されるタイバー140の設定温度の補正値が許容範囲内であるか否かを判定する。この判定は、射出成形機2に関する異常の有無の判定などに用いられる。例えば、補正値が許容範囲内である場合に異常が無いと判断され、補正値が許容範囲外である場合に異常が有ると判断される。許容範囲は、例えば、想定される固定金型11と可動金型12との面圧分布の変動幅などに応じて設定される。許容範囲は、予め設定された閾値で規定される。許容範囲を規定する閾値は、上限値および下限値のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。射出成形機2に関する異常の有無の判定は、補正値が許容範囲内であるか否かの判定結果と、他の判定結果とに基づいてなされてもよい。
判定結果送信部818は、判定部817の判定結果を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、判定部817の判定結果の報知制御を行う。尚、判定結果の報知制御は、補正装置800によって行われてもよい。
尚、本実施形態では、タイバー140の有効長TLを調整するため、タイバー温調器142によってタイバー140の温度を調整するが、型厚調整機構180によってねじナット182の回転量を調整してもよい。この場合、型厚調整機構180は、複数のねじナット182を個別に回転する。
(トグルサポートの位置の補正)
型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが設定角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締工程では、型締モータ160を駆動してトグルサポート130に対しクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。トグル倍率に応じた型締力が得られる。
ところで、型厚調整の後で、室温の変化などによってタイバー140の温度が変わると、タイバー140の有効長TLが変わるため、型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度からずれ、型締力が変動することがある。型締力が小さくなり過ぎると、成形材料の充填圧などによって金型装置10が開き、バリなどが生じうる。また、型締力が大きくなり過ぎると、ガス抜き不良などが生じうる。
そこで、補正装置800は、射出成形機2の成形機制御装置700から、型締装置100の動作タイミングを規定するタイミング信号と、型締力の目標値とを受信する。型締力の目標値は、例えば、操作画面の操作によって入力される。
検出値取得部813は、タイミング設定部812で設定される検出タイミングで検出した型締力の検出値を取得する。型締力は、型開工程を行うタイミングや型閉工程を行うタイミングでは検出することができないため、型締工程を行うタイミングで検出する。型締力は、例えばタイバー歪検出器141によって検出する。
補正値算出部815は、検出値取得部813で取得した型締力の検出値とその目標値との比較に基づき、その比較以降に型締力の検出値を変更するために、トグルサポート130の設定位置の補正値を算出する。補正値は、その比較以降に型締力の検出値とその目標値との偏差が小さくなるように(好ましくは、ゼロになるように)算出される。タイバー140の有効長TLが短くなり、トグルサポート130の位置が前方に変位すると、型締力が大きくなる。また、タイバー140の有効長TLが長くなり、トグルサポート130の位置が後方に変位すると、型締力が小さくなる。
型締力の目標値は、許容範囲を有してよい。許容範囲は、予め設定された閾値で規定される。許容範囲を規定する閾値は、上限値および下限値のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。型締力の検出値が許容範囲内に収まるまで、補正値算出部815による補正値の算出と、検出値取得部813による型締力の取得とが繰り返し行われてもよい。トグルサポート130の設定位置の補正値の算出には、PI演算などが用いられる。
補正値送信部816は、補正値算出部815で算出するトグルサポート130の設定位置の補正値を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、補正値算出部815で算出する補正値を用いて、電気機器30(例えば、タイバー温調器142および型厚調整モータ183の少なくとも一方)を制御することにより、トグルサポート130の位置を制御する。これにより、所定の型締力が得られる。尚、トグルサポート130の位置制御は、補正装置800によって行われてもよい。
判定部817は、補正値算出部815で算出されるトグルサポート130の設定位置の補正値が許容範囲内であるか否かを判定する。この判定は、射出成形機2に関する異常の有無の判定などに用いられる。例えば、補正値が許容範囲内である場合に異常が無いと判断され、補正値が許容範囲外である場合に異常が有ると判断される。許容範囲は、例えば想定される気温の温度変化幅、タイバー140の線膨張係数などに応じて設定される。許容範囲は、予め設定された閾値で規定される。許容範囲を規定する閾値は、上限値および下限値のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。射出成形機2に関する異常の有無の判定は、補正値が許容範囲内であるか否かの判定結果と、他の判定結果とに基づいてなされてもよい。
判定結果送信部818は、判定部817の判定結果を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、判定部817の判定結果の報知制御を行う。尚、判定結果の報知制御は、補正装置800によって行われてもよい。
尚、補正装置800は、トグルサポート130の位置を補正する代わりに、クロスヘッド151の型締位置を補正してもよい。この場合、検出値取得部813は、タイミング設定部812で設定される検出タイミングで検出した型締力の検出値を取得する。そうして、補正値算出部815は、検出値取得部813で取得した型締力の検出値とその目標値との比較に基づき、その比較以降に型締力の検出値を変更するため、クロスヘッド151の型締位置の補正値を算出する。補正値は、その比較以降に型締力の検出値とその目標値との偏差が小さくなるように(好ましくは、ゼロになるように)算出される。クロスヘッド151の型締位置が前方に変位すると、型締力が大きくなる。また、クロスヘッド151の型締位置が後方に変位すると、型締力が小さくなる。
(クロスヘッドの設定位置の補正)
図7は、変形例による金型装置の型締時の状態を示す図である。金型装置10は、固定金型11および可動金型12を含む。可動金型12は、金型本体部16、枠状部17、およびバネ部18を有する。枠状部17は、金型本体部16の凸部を囲み、バネ部18を介して金型本体部16と連結される。
型閉工程では、図1などに示す型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させる。これにより、可動金型12の枠状部17が固定金型11に押し付けられ、可動金型12のバネ部18が縮み、可動金型12の金型本体部16と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成される。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を成形機制御装置700に送る。
充填工程および保圧工程では、クロスヘッド151の位置を制御する。クロスヘッド151の位置は、例えば充填工程開始からの経過時間などに応じて変更される。クロスヘッド151を前進させ可動プラテン120を前進させると、可動金型12の金型本体部16が前進し、キャビティ空間14が小さくなるので、キャビティ空間14に充填されている成形材料が圧縮される。
射出成形機2のユーザは、操作画面を見ながら、操作装置750を操作することで、充填工程および保圧工程における可動プラテン120の目標位置を表す値を入力する。可動プラテン120の目標位置は、例えば、可動金型12の金型本体部16と固定金型11とのギャップGで表される。ギャップGの目標値は、クロスヘッド151の設定位置を表す値と同様に、例えば充填工程開始からの経過時間などに応じて変更される。
ところで、射出成形機2の成形機制御装置700は、上述の如く、充填工程および保圧工程において、クロスヘッド151の位置を制御する。クロスヘッド151の位置が設定位置であるときに、ギャップGが目標値からずれていることがある。その原因としては、例えば、クロスヘッド151と可動プラテン120との位置関係を表す式が誤差を含むこと、または、式の代わりに経験や勘などに基づいてクロスヘッド151の位置が設定されていることなどが挙げられる。
そこで、検出値取得部813は、タイミング設定部812で設定される検出タイミングで検出したギャップGを取得する。ギャップGは、例えばクロスヘッド151の位置が設定位置に到達するタイミングで、ギャップ検出器19によって検出する。ギャップ検出器19としては、距離センサなどが用いられる。
補正値算出部815は、検出値取得部813で取得したギャップGの検出値とその目標値との比較に基づき、その比較以降にギャップGの検出値を変更するため、クロスヘッド151の設定位置の補正値を算出する。補正値は、その比較以降にギャップGの検出値とその目標値との偏差が小さくなるように(好ましくは、ゼロになるように)算出される。クロスヘッド151の位置が前方に変位すると、ギャップGが小さくなる。また、クロスヘッド151の位置が後方に変位すると、ギャップGが大きくなる。
ギャップGの目標値は、許容範囲を有してよい。許容範囲は、予め設定された閾値で規定される。許容範囲を規定する閾値は、上限値および下限値のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。ギャップGの検出値が許容範囲内に収まるまで、補正値算出部815による補正値の算出と、検出値取得部813によるギャップGの取得とが繰り返し行われてもよい。クロスヘッド151の設定位置の補正値の算出には、PI演算などが用いられる。
補正値送信部816は、補正値算出部815で算出するクロスヘッド151の設定位置の補正値を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、補正値算出部815で算出する補正値を用いて、電気機器30(例えば、型締モータ160)を制御することにより、クロスヘッド151の位置を制御する。これにより、充填工程や保圧工程においてキャビティ空間14の大きさを精度良く制御できる。尚、クロスヘッド151の位置制御は、補正装置800によって行われてもよい。
判定部817は、補正値算出部815で算出されるクロスヘッド151の設定位置の補正値が許容範囲内であるか否かを判定する。この判定は、射出成形機2に関する異常の有無の判定などに用いられる。例えば、補正値が許容範囲内である場合に異常が無いと判断され、補正値が許容範囲外である場合に異常が有ると判断される。許容範囲は、例えばクロスヘッド151と可動プラテン120との位置関係を表す式の誤差の程度などに応じて設定される。許容範囲は、予め設定された閾値で規定される。許容範囲を規定する閾値は、上限値および下限値のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。射出成形機2に関する異常の有無の判定は、補正値が許容範囲内であるか否かの判定結果と、他の判定結果とに基づいてなされてもよい。
判定結果送信部818は、判定部817の判定結果を射出成形機2の成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、判定部817の判定結果の報知制御を行う。尚、判定結果の報知制御は、補正装置800によって行われてもよい。
尚、本実施形態では可動金型12が金型本体部、枠状部、およびバネ部を有するが、固定金型11が金型本体部、枠状部、およびバネ部を有してもよい。また、金型本体部と枠状部との間に配設される部材として、バネ部に代えて、油圧シリンダが用いられてもよい。また、金型装置10は、インロー型などでもよい。
(変形および改良)
以上、補正装置の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
図8は、変形例による成形機制御装置と、補正装置と、上位コンピュータとの関係を示す図である。上位コンピュータ910は、成形機制御装置700および補正装置800と同様に、コンピュータで構成される。上位コンピュータ910は、LAN(Local Area Network)またはインターネット回線などのネットワークを介して、成形機制御装置700および補正装置800の両方に接続され、両方から異なるデータを受信し、受信したデータを記憶する。よって、成形機制御装置700および補正装置800のうち成形機制御装置700のみに記憶されたデータと、成形機制御装置700および補正装置800のうち補正装置800のみに記憶されたデータとを、上位コンピュータ910によって一元管理できる。
成形機制御装置700および補正装置800は、それぞれ、1つの射出成形機2につき1つずつ設けられてよい。1つの射出成形機2には、複数(例えば9つ)の検出器51〜59が設けられる。これらの検出器51〜59は、成形機制御装置700に検出値を送信するグループと、補正装置800に検出値を送信するグループとに分けられる。
1つのグループに属する検出器51〜56は、それぞれ、検出値を成形機制御装置700に送信する。成形機制御装置700は、検出器51〜56の検出値を記憶し、記憶した検出値を上位コンピュータ910に送信する。
残りの1つのグループに属する検出器57〜59は、それぞれ、検出値を補正装置800に送信する。補正装置800は、検出器57〜59の検出値を記憶し、記憶した検出値を上位コンピュータ910に送信する。
本変形例によれば、射出成形機2に新しい検出器を取り付ける場合に、新しい検出器の検出値を補正装置800で受信でき、受信の負荷を分散できる。そのため、成形機制御装置700のCPU701の処理負荷を軽減できる。
尚、成形機制御装置700は、検出器51〜56の検出値を補正装置800に送信しなくてもよいし、送信してもよい。成形機制御装置700から補正装置800へのデータ送信は、成形機制御装置700のCPU701の処理負荷が低い時間帯に行われてよい。
同様に、補正装置800は、検出器57〜59の検出値を成形機制御装置700に送信しなくてもよいし、送信してもよい。補正装置800から成形機制御装置700へのデータ送信は、成形機制御装置700のCPU701の処理負荷が低い時間帯に行われてよい。
補正装置800が上位コンピュータ910に送信するデータとしては、検出器57〜59の検出値の他に、射出成形機2の成形条件を設定する設定値の補正値が挙げられる。検出器57〜59のうちの少なくとも1つは、タイミング設定部812で設定される検出タイミングで検出値を検出する第2検出器22であってよい。
上位コンピュータ910は、複数の成形機制御装置700に接続されてもよい。成形機制御装置700は、射出成形機2毎に設けられる。複数の射出成形機2のデータを、1つの上位コンピュータ910で一元管理できる。
同様に、上位コンピュータ910は、複数の補正装置800に接続されてもよい。補正装置800は、射出成形機2毎に設けられる。複数の補正装置800のデータを、1つの上位コンピュータ910で一元管理できる。
尚、本変形例の補正装置800は射出成形機2毎に設けられるが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の射出成形機2につき、1つの補正装置800が設けられてもよい。1つの補正装置800は、複数の射出成形機2のそれぞれの成形条件を設定する設定値の補正値を算出してよい。
本出願は、2017年2月28日に日本国特許庁に出願した特願2017−037770号に基づく優先権を主張するものであり、特願2017−037770号の全内容を本出願に援用する。