以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
図1は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型開き時の状態を示す図である。
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム、Gdは、該フレームFr上に敷設されてレールを構成し、型締装置10を支持するとともに、案内する第1の案内部材としての2本のガイド(図においては、2本のガイドGdのうちの1本だけを示す。)、11は、該ガイドGd上に載置され、前記フレームFr及びガイドGdに対して固定された第1の固定部材としての固定プラテンであり、該固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて第2の固定部材としてのリヤプラテン13が配設され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。なお、前記リヤプラテン13は、タイバー14が伸縮するのに伴って、ガイドGdに対してわずかに移動することができるように前記ガイドGd上に載置される。
なお、本実施の形態においては、固定プラテン11はフレームFr及びガイドGdに対して固定され、リヤプラテン13はガイドGdに対してわずかに移動することができるようになっているが、リヤプラテン13をフレームFr及びガイドGdに対して固定し、固定プラテン11をガイドGdに対してわずかに移動することができるようにすることができる。
そして、前記タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて第1の可動部材としての可動プラテン12が型開閉方向に進退自在に配設される。そのために、前記可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。
前記タイバー14の前端部には図示されない第1のねじ部が形成され、前記タイバー14は、前記第1のねじ部とナットn1とを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、前記各タイバー14の後方の所定の部分には、タイバー14より外径が小さい第2の案内部材としてのガイドポスト21が、リヤプラテン13の後端面から後方に向けて突出させて、かつ、タイバー14と一体に形成される。そして、リヤプラテン13の後端面の近傍には図示されない第2のねじ部が形成され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13とは、前記第2のねじ部とナットn2とを螺合させることによって連結される。本実施の形態においては、ガイドポスト21がタイバー14と一体に形成されるようになっているが、ガイドポスト21をタイバー14とは別体に形成することもできる。
また、前記固定プラテン11には第1の金型としての固定金型15が、前記可動プラテン12には第2の金型としての可動金型16がそれぞれ固定され、前記可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充墳される。また、固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
そして、前記可動プラテン12と平行に配設された第2の可動部材としての吸着板22が、リヤプラテン13より後方において前記各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、前記吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21を貫通させるためのガイド穴23が形成される。該ガイド穴23は、前端面に開口させられ、ボールナットn2を収容する大径部24、及び吸着板22の後端面に開口させられ、ガイドポスト21と摺動させられる摺動面を備えた小径部25を備える。本実施の形態において、吸着板22は、ガイドポスト21によって案内されるようになっているが、吸着板22を、ガイドポスト21だけでなく、ガイドGdによって案内することもできる。
ところで、前記可動プラテン12を進退させるために、第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部(型開閉駆動部)としてのリニアモータ28が、可動プラテン12とフレームFrとの間に配設される。前記リニアモータ28は、第1の駆動要素としての固定子29、及び第2の駆動要素としての可動子31を備え、前記固定子29は、前記フレームFr上において、前記ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成され、前記可動子31は、可動プラテン12の下端において、前記固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
前記可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、前記コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、前記コイル35は、各磁極歯33に巻装される。なお、前記磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、前記固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に、かつ、前記磁極歯33と同じピッチで着磁させることによって形成される。
したがって、前記コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられ、それに伴って、可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
なお、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
可動プラテン12が前進させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが行われ、続いて、型締めが行われる。そして、型締めを行うために、リヤプラテン13と吸着板22との間に、第2の駆動部としての、かつ、型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。そして、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、かつ、可動プラテン12と吸着板22とを連結する型締力伝達部材としてのロッド39が進退自在に配設される。該ロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた型締力を可動プラテン12に伝達する。
なお、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
前記電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された第1の駆動部材としての電磁石49、及び吸着板22側に形成された第2の駆動部材としての吸着部51から成り、該吸着部51は、前記吸着板22の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22において前記ロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、前記ロッド39よりわずかに上方及び下方に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45が互いに平行に形成され、各溝45間に矩形の形状を有するコア46、及び他の部分にヨーク47が形成される。そして、前記コア46にコイル48が巻装される。
なお、前記コア46及びヨーク47は、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
本実施の形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。
したがって、電磁石ユニット37において、前記コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、前記型締力を発生させることができる。
そして、前記ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12が前進するのに伴って前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12が後退するのに伴って後退させられて吸着板22を後退させる。
そのために、前記リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴41、及び前記吸着板22の中央部分にロッド39を貫通させるための穴42が形成され、前記穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。また、前記ロッド39の後端部にねじ43が形成され、該ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持された型厚調整機構としてのナット44とが螺合させられる。
ところで、型閉じが終了した時点で、吸着板22はリヤプラテン13に近接させられ、リヤプラテン13と吸着板22との間にギャップδが形成されるが、該ギャップδが小さくなりすぎたり、大きくなりすぎたりすると、吸着部51を十分に吸着することができず、型締力が小さくなってしまう。そして、最適なギャップδは、金型装置19の厚さが変化するのに伴って変化する。
そこで、前記ナット44の外周面に図示されない大径のギヤが形成され、前記吸着板22に型厚調整用の駆動部としての図示されない型厚調整用モータが配設され、該型厚調整用モータの出力軸に取り付けられた小径のギヤと、前記ナット44の外周面に形成されたギヤとが噛合させられる。
そして、金型装置19の厚さに対応させて、型厚調整用モータを駆動し、前記ナット44をねじ43に対して所定量回転させると、吸着板22に対するロッド39の位置が調整され、固定プラテン11及び可動プラテン12に対する吸着板22の位置が調整されて、ギャップδを最適な値にすることができる。すなわち、可動プラテン12と吸着板22との相対的な位置を変えることによって、型厚の調整が行われる。
なお、前記型厚調整用モータ、ギヤ、ナット44、ロッド39等によって型厚調整装置が構成される。また、ギヤによって、型厚調整用モータの回転をナット44に伝達する回転伝達部が構成される。そして、ナット44及びねじ43によって運動方向変換部が構成され、該運動方向変換部において、ナット44の回転運動がロッド39の直進運動に変換される。この場合、ナット44によって第1の変換要素が、ねじ43によって第2の変換要素が構成される。
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPU及びメモリ等を備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給するための回路も備える。制御部60には、また、荷重検出器55が接続される。荷重検出器55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。図中では、上下二本のタイバー14に荷重検出器55が設置された例が示されている。荷重検出器55は、例えば、タイバー14の伸び量を検出するセンサによって構成される。荷重検出器55によって検出された荷重は、制御部60に送られる。なお、制御部60は、図2においては便宜上省略されている。
以下、前記構成の型締装置10の動作について説明する。
制御部60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。図2の状態(型開き時の状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、図1に示されるように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
続いて、制御部60の型締処理部62は、型締工程を制御する。型締処理部62は、前記コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。かかる構造の下、本実施の形態では、型締め開始時等、型締力を変化させる際に、型締処理部62は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力型締力(以下、かかる型締力を「定常型締力」という。)を発生させるために必要な定常的な電流(以下、かかる電流を「定格電流」という。)の値をコイル48に供給するように制御している。
なお、型締力は荷重検出器55によって検出される。検出された型締力は制御部60に送られ、制御部60において、型締力が設定値になるようにコイル48に供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。
各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締処理部62は、図1の状態において、前記コイル48への電流の供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図2に示されるように、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
型閉じ工程及び型締工程について更に詳しく説明する。図3は、第一の実施の形態における型閉じ工程及び型締工程における型締装置の動作を説明するための図である。図3に示されるグラフには、4つの折れ線又は曲線が示されている。グラフの横軸は、各折れ線又は曲線に対して共通であり時間(経過時間)を示す。グラフの縦軸は各折れ線又は曲線に応じて異なる。
折れ線aは、制御部60の型開閉処理部61より出力されるリニアモータ28のトルク出力リミット(制限値)を示す。折れ線aについて、縦軸はトルク値を示す。曲線bは、リニアモータ28によって移動させられる可動プラテン12の位置を示す。曲線bについて、縦軸は位置を示す。折れ線cは、制御部60の型締処理部62より出力される型締力の指令値を示す。曲線dは、荷重検出器55によって検出される型締力の実績値を示す。折れ線c及び曲線dについて、縦軸は型締力の大きさを示す。
図3のグラフにおいて、時間t1〜t2の間は、型閉じ工程に相当する。すなわち、型締装置10は、時間t1において図2に示される状態にあり、時間t2において図1に示される状態になる。
図3において、型閉じ工程は、走行区間と低圧区間とより構成される。時間t1において、型開閉処理部61の制御に基づいてコイル35に電流が供給されると走行区間が開始される。走行区間では、折れ線aに示されるように、トルク出力リミットを開放する(最大とする)旨の指令が型開閉処理部61よりリニアモータ28に入力される。その結果、曲線bに示されるように可動プラテン12は高速に前方(金型タッチ位置の方向)に移動する。それに合わせて、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップδも、リニアモータ28の前進量の分だけ小さくなる。走行期間において可動プラテン12を高速に移動させることで、成形サイクルを短縮することができ、生産性を向上させることができる。
型開閉処理部61は、可動プラテン12の位置が予め設定された低圧開始位置(低圧区間の開始位置)に到達したことを検知すると、トルク出力リミットを予め設定されたトルク値(低圧トルク)に絞る(低下させる)旨の指令をリニアモータ28に入力する。なお、リニアモータ28には、非図示のエンコーダ等の位置検出器が設置されており、当該位置検出器よりリニアモータ28の位置(すなわち、可動プラテン12の位置)を示す情報が制御部60に入力されている。
トルク出力リミットが絞られることにより、異物を金型間に挟んだ場合の破損の防止がなされている。これに合わせて、曲線bに示されるように可動プラテン12は減速させられる(前進速度が遅くなる)。可動プラテン12(リニアモータ28)は、金型装置19等を破損させない程度に十分減速された状態で、型タッチ位置(型締開始位置)で停止するように位置制御される。ここで、本実施の形態において「金型タッチ位置」とは、金型の当接の有無を問わず、型締工程が開始されるべき可動プラテン12の位置をいう。曲線aに示されるように、型開閉制御部61は、可動プラテン12が金型タッチ位置に到達した時点t2で、型締力が発生する以前(発生と同時又は発生前)にリニアモータ28を可変に制御する。具体的には、リニアモータ28の位置制御を解除する。位置制御の解除は、型開閉処理部61内の図示しない駆動停止処理部にてリニアモータ28のコイル35への電流の供給が停止されることにより行われる。また、駆動停止処理部にてトルク出力リミットを0とする旨の指令がリニアモータ28に出力されることにより行われてもよい。
時間t2以降は、型締工程に相当する。折れ線cに示されるように、金型タッチ位置(時間t2)において、型締処理部62は、定常型締力を発生させるための指令を出力する。当該指令に応じ、電磁石49のコイル48には定格電流が供給され、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップδに電磁力が発生する。それにより、曲線dに示されるように、電磁石49によって発生させられる電磁力は増加し、合わせて金型装置19間に生じる型締力も増加する。曲線dに示されるように、型締力はその後も増加し続け、時間t3において定常型締力に到達し、その後、型締工程中は定常型締力が維持される。このt2からt3までの型締力が定格型締力に到達するまでの区間が、型締工程中における昇圧工程となる。
上述したように、第一の実施の形態によれば、型締工程が開始される時点においてリニアモータ28の位置制御は解除される。したがって、型締装置10は、リニアモータ28の位置制御による影響を受けることなく、効率的に型締力を発生させることができる。また、リニアモータ28の発熱を防止することもできる。更に、型締力や、可動プラテン12の平行度への悪影響の発生を防止することもできる。ここで、金型装置19を型締開始位置で必ずしも当接させる必要はなく、固定金型15と可動金型16とが当接する5ミリ(mm)〜0.1ミリ手前の位置においてリニアモータ28を停止させ、電磁力をギャップδ間に印加して型締めを開始させてもよい。この場合、型締開始位置においてリニアモータ28への電流供給が解除されているため、リニアモータ28には駆動力が発生していない状態となる。この状態でギャップδ間に電磁力を発生させることで、可動金型16は型締開始位置から型タッチ位置まで前進し、固定金型15に当接される。
次に、第二の実施の形態について説明する。図4は、第二の実施の形態における型閉じ工程及び型締工程における型締装置の動作を説明するための図である。図4中、図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。また、特に明記しない点については、第一の実施の形態と同様でよい。
図4では、折れ線c1が、制御部60の型締処理部62より出力される型締力の指令値を示す。また、曲線d1が、荷重検出器55によって検出される型締力の実績値を示す。
折れ線c1によって示されるように、第二の実施の形態では、金型タッチ位置に到達した時間(t2)から所定時間経過後の時間t3において、型締処理部62は、定常型締力を発生させるための指令を出力する。当該指令に応じ、電磁石49のコイル48には定格電流が供給され、曲線d1に示されるように、電磁石49によって発生させられる型締力は増加する。ここで、型締工程は金型タッチ位置に到達した時点t2から開始されるが、金型へ型締力が加わるのはt3からであるため、t3から昇圧工程は開始することとなる。したがって、時間t3より型締工程が開始される。
上述したように、第二の実施の形態によれば、金型へ電磁石による型磁力が発生する以前に、型締工程が開始される時点においてリニアモータ28の位置制御は可変に制御され、既に解除されている。したがって、第一の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図4において、時間t2から時間t3の間の所定時間は特定の値に限定されない。生産性を考慮すれば短い方が望ましい。すなわち、第二の実施の形態は、リニアモータ28の位置制御の解除と、昇圧工程の開始とは必ずしも同時でなくてもよいことを示している。このように、金型タッチ位置に到達してから型締力を発生させるまでの間に所定の時間を設けることで、確実にリニアモータ28の位置制御と電磁石49による型締力の制御とを切り離すことができる。これにより、リニアモータ28の発熱を確実に防止することができる。
次に、第三の実施の形態について説明する。図5は、第三の実施の形態における型閉じ工程及び型締工程における型締装置の動作を説明するための図である。図5中、図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。また、特に明記しない点については、第一の実施の形態と同様でよい。
図5では、折れ線c2が、制御部60の型締処理部62より出力される型締力の指令値を示す。また、曲線d2が、荷重検出器55によって検出される型締力の実績値を示す。
折れ線c2によって示されるように、第三の実施の形態では、プリ昇圧が行われる。すなわち、型締処理部62は、金型がタッチする時点(t2)よりも前の時点(t4)において、電磁石49のコイル48への電流の供給を開始する。一方、曲線d2によって示されるように、型締力は型タッチ後に発生する。したがって、第三の実施の形態において、型締工程は時間t2より開始される。但し、型締力が発生する前にコイル48へは電流が供給されているため(プリ昇圧が行われているため)、型タッチ位置よりも手前の位置で、吸着板22とリヤプラテン13との間には既に磁界が発生している。そして、リニアモータ28が型タッチ位置に近付くにつれて、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップδも小さくなる。したがって、ギャップδ間に発生する磁束密度が同じであっても、ギャップδ間に発生する電磁力は型タッチ位置に近付くに従い大きくなる。そして、型タッチ位置にリニアモータ28が到達した際には、ギャップδ間には既に電磁力が発生している。その結果、型タッチ後に金型に発生する型締力の立ち上がりを速くすることができ、定常型締力に到達するまでの時間が短縮される。すなわち、曲線d2の傾きが、参考までに図示されている曲線dの傾きよりも大きくなる。よってサイクル時間を短縮することができる。
ところで、リニアモータ28の位置制御は、金型タッチ位置に到達した時点(t2)において解除される。すなわち、型締工程が開始される時点においてリニアモータ28を可変に制御する。具体的には、リニアモータ28の位置制御は解除される。したがって、第三の実施の形態においても型締力が発生する以前にリニアモータ28を可変に制御することで、第一の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
本実施の形態においては、リヤプラテン13の後端面に電磁石49が形成され、該電磁石49と対向させて、吸着板22の前端面に吸着部51が進退自在に配設されるようになっているが、リヤプラテン13の後端面に吸着部を、該吸着部と対向させて、吸着板22の前端面に電磁石を進退自在に配設することができる。
なお、本実施の形態における型締装置の制御方法は、型開閉動作をリニアモータ28の駆動によって行う型締装置でなくても良い。特にリニアモータ28の場合には、磁石がフレーム表面に露出するために粉塵等が付着する虞がある。このため、型開閉駆動部としてリニアモータ28を用いずに、モータ枠で磁界の発生領域を閉鎖した回転型モータを適用した本願の変形例を図6に示す。
第2の駆動部としての電磁石ユニットの説明は、図1及び図2と同様のため、説明を省略する。第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部(型開閉駆動部)としての型開閉用モータ74が、フレームに固定されたモータサポート73に移動不能に取り付けられている。ここで、型開閉モータ74には、モータ枠で磁界の発生領域を閉鎖した回転型モータが適用される。回転型モータからは図示しないモータ軸が突出し、モータ軸はボールねじ軸72に連結している。ボールねじ軸72はボールねじナット71と螺合することで、回転型モータで発生した回転運動を直進運動へ変換する運動方向変換装置を構成している。そして、ボールねじナット71は可動プラテン12の下部より突出した可動プラテンフランジ部12aに回転不能に配設される。これにより、型開閉モータ74が回転することにより、可動プラテン12は前後し、可動金型16の型開閉動作を行うことができる。
さらに、型開閉モータ74の後端には位置検出器75が取り付けられ、型開閉モータ74の回転角度を読み込んで、可動プラテン12の位置を把握することができる。これにより、型開閉処理部61は型開閉モータ74を制御する。
本構成では、電磁石によって金型装置19への型締力の発生中、より具体的には昇圧が開始された後において、金型の位置ずれの発生の虞がなくなると、型開閉処理部61は、型開閉モータ74への電流の供給を可変に制御する。具体的には、電流の供給を停止させる。これにより、型開閉モータ74が位置制御されることによる型締力への影響がなくなる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本国際出願は、2007年5月23日に出願した日本国特許出願2007−136510号に基づく優先権を主張するものであり、2007−136510号の全内容を本国際出願に援用する。