本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、本発明が適用される射出成形機の型締装置について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型開き時の状態を示す側面図である。図2は、本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型閉じ時の状態を示す側面図である。
図1及び図2に示す型締装置10は、射出成形機のフレームFr上に設けられた2本のレールよりなるガイドGd上に支持される。固定プラテン11は、ガイドGd上に載置され、フレームFr及びガイドGdに対して固定されている。固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて電磁石保持部材としてのリヤプラテン13が配設されている。固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、2本だけを示す)が架設される。可動プラテン12は、固定プラテン11と対向した状態でタイバー14に沿って型開閉方向に進退自在(図において左右方向に移動自在)に配設される。そのために、可動プラテン12には、タイバー14が貫通するガイド穴(図示せず)が形成される。
なお、本明細書では、型開閉方向、すなわち可動プラテン12の移動方向を水平方向と称し、可動プラテン12の移動方向に垂直な方向を垂直方向と称する。
タイバー14の前端部(図において右端部)には、第1のねじ部(図示せず)が形成され、タイバー14は、第1のねじ部にナットn1を螺合して締め付けることによって固定プラテン11に固定される。各タイバー14の後端部(図において左端部)には、タイバー14より外径が小さいガイドポスト21が一体に形成されている。ガイドポスト21は、リヤプラテン13の後端面(図において左端面)から後方に向けて突出して延在する。各ガイドポスト21の、リヤプラテン13の後端面の近傍に、第2のねじ部(図示せず)が形成され、固定プラテン11とリヤプラテン13とは、第2のねじ部にナットn2を螺合して締め付けることによって固定される。ガイドポスト21をタイバー14と一体に形成しているが、ガイドポスト21をタイバー14とは別体として形成してもよい。
固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ固定される。固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。可動プラテン12の進退によって可動金型16を固定金型15に対して移動し、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われると、固定金型15と可動金型16との間にキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての樹脂がキャビティ空間に充填される。
可動プラテン12と平行に配設された磁性体としての吸着板22が、リヤプラテン13より後方において各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21が貫通するガイド穴23が形成される。ガイド穴23は、前端面(図において右端面)に開口した大径部24とこれに繋がる小径部25とを含む。大径部24はナットn2を収容する。小径部25は吸着板22の後端面に開口し、ガイドポスト21が摺動する摺動面を有している。
可動プラテン12を進退させるために、型開閉用の駆動部としてリニアモータ28が、可動プラテン12に連結された吸着板22とフレームFrとの間に配設される。リニアモータ28は、フレームFr上に、ガイドGdと平行に、かつ、吸着板22の移動範囲に対応して配置された固定子29と、吸着板22の下端が固定されたスライドベースSbに固定され、固定子29と対向し、かつ、所定の範囲にわたって形成された可動子31とを備える。スライドベースSbは、図1に示すように、その両側においてガイドGd上に支持されており、可動子31を固定子29に沿って移動可能に支持する。スライドベースSbは、可動子31の上面を覆ってガイドGdの延在方向に延在する。そのために、リヤプラテン13の下端には、ガイドベースGb及びスライドベースSbが通過する空間81を形成する脚部13aが両側に設けられる。
可動子31は、固定子29に向けて突出し、かつ、所定のピッチで複数の磁極歯33が形成されたコア34と、各磁極歯33に巻装されたコイル35とを備える。なお、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。固定子29は、コア、及びコア上に延在させて形成された永久磁石(図示せず)を備える。永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に、かつ、磁極歯33と同じピッチで着磁させることによって形成されている。そして、位置センサ75が可動子31と固定子29との間に配置され、可動子31の位置が検出される。
したがって、コイル35に所定の電流を供給してリニアモータ28を駆動すると、位置センサ75の検出値に基づき、位置フィードバック制御により可動子31が進退させられる。それに伴って、スライドベースSb、スライドベースSbに固定された吸着板22、及びロッド39により吸着板22に連結された可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きが行われる。
なお、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設しているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28を駆動する際にコイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
可動プラテン12が前進(図において右方向に移動)して可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが終了する。型閉じに続いて型締めを行うことができるように、リヤプラテン13と吸着板22との間に、型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。また、可動プラテン12と吸着板22とを連結するロッド39が、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延在する。ロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、吸着板22の進退に連動して可動プラテン12を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生した型締力を可動プラテン12に伝達する。なお、フレームFr、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に配設された電磁石49、及び吸着板22側に配設された吸着部51を有する。リヤプラテン13の後端面の所定の部分、すなわちロッド39よりわずかに上方及び下方に、水平方向に延在した矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45が互いに平行に形成されている。溝45の間には、矩形の断面形状を有するコア46が形成され、リヤプラテンのコア46以外の部分にヨーク47が形成される。コア46にコイル48が巻装される。
また、吸着板22の前端面の所定の部分として、吸着板22においてロッド39を包囲し、電磁石49と対向する部分に、吸着部51が設けられる。なお、リヤプラテン13のコア46及びヨーク47、並びに吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成された電磁積層鋼板により形成される。また、リヤプラテン13とは別に電磁石49が配設され、吸着板22とは別に吸着部51が配設されているが、リヤプラテン13の一部として電磁石を形成し、吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。また、必ずしも電磁積層鋼板を用いなくてもよく、同一部材からなる鉄心を用いてコア46及びヨーク47を形成してもよい。この方が、ギャップ間の距離を精度よく設定することができる。
したがって、電磁石ユニット37において、溝45内のコイル48に電流を供給すると、電磁石49が励磁され、吸着部51が吸着されて型締力が発生する。
ロッド39は、後端部(図において左端部)において吸着板22と連結し、前端部において可動プラテン12と連結している。ロッド39は、型閉じ時に吸着板22が前進することにより前進し、これにより可動プラテン12が前進する。また、ロッド39は、型開き時に吸着板22が後退(図において左方向に移動)することにより後退し、これにより可動プラテン12が後退する。
そのために、リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴41が設けられる。また、吸着板22の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴42が形成される。さらに、穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。また、ロッド39の後端部にねじ43が形成され、吸着板22に対して回転自在に支持された型厚調整機構としてのナット44がねじ43に螺合している。
型閉じが終了した時点で、吸着板22はリヤプラテン13に近接し、リヤプラテン13と吸着板22との間にギャップ(間隙)δが形成される。ギャップδが小さくなりすぎたり、大きくなりすぎたりすると、吸着部51を十分に吸着することができず、型締力が小さくなってしまう。ギャップδの最適な値(距離又は寸法)は、金型装置19の厚さが変化するのに伴って変化する。
そこで、ナット44の外周面に大径のギヤ(図示せず)が形成され、吸着板22に型厚調整用の駆動部として型厚調整用モータ(図示せず)が配設され、型厚調整用モータの出力軸に取り付けられた小径のギヤが、ナット44の外周面に形成されたギヤに噛合させられる。
金型装置19の厚さに対応して、型厚調整用モータを駆動し、型厚調整機構としてのナット44をねじ43に対して所定量回転させると、吸着板22に対するロッド39の位置が調整され、固定プラテン11及び可動プラテン12に対する吸着板22の位置が調整されて、ギャップδを最適な値にすることができる。すなわち、可動プラテン12と吸着板22の相対的な位置を変えることによって、型厚の調整が行われる。
なお、型厚調整用モータ、ギヤ、ナット44、ロッド39等によって型厚調整装置が構成される。また、ギヤによって、型厚調整用モータの回転をナット44に伝達する回転伝達部が構成される。そして、ナット44及びねじ43によって運動方向変換部が構成され、運動方向変換部において、ナット44の回転運動がロッド39の直進運動に変換される。
ところで、リヤプラテン13の後端面の所定の位置(図中では、下端)には接点スイッチ71が配設されている。また、吸着板22の前端面において接点スイッチ71に対向する位置には、接点スイッチ71の検出部としてのスイッチ切片71aを操作するための被検出部としての操作片72が配設されている。本実施の形態では接点スイッチ71及び操作片72によって近接検知部が構成される。すなわち、吸着板22が前進し、リヤプラテン13との間隔(ギャップδ)が所定の距離以下になると、操作片72によって接点スイッチ71のスイッチ切片71aが押し上げられ接点スイッチ71はON状態となる(図2参照)。一方、吸着板22とリヤプレテン13との間隔が所定の距離(以下、「間隔L」という。間隔L>δ)を超えると、スイッチ切片71aは操作片72より解放され、接点スイッチ71はOFF状態となる(図1参照)。なお、接点スイッチ71と操作片72の配置位置は逆でもよい。すなわち、接点スイッチ71を吸着板22に配設し、操作片72をリヤプラテン13に配設してもよい。
ここで、間隔Lは、消費電力量の削減の観点より、型締力の発生のための通電を開始するときのリヤプラテン13と吸着板22との間隔(以下、「間隔A」という。間隔A>δ)に一致することが望ましい。間隔Lが間隔Aより大きい場合、型締力を発生させる必要がない状態においてコイル48に電流が供給される可能性があり、その間に消費される電力が無駄となるからである。また、間隔Lが間隔Aより小さい場合、型閉じ完了時に型締力を発生させることができないからである。
したがって、例えば、型閉じ完了後に型締力を発生させる場合は、型閉じ完了時におけるリヤプラテン13と吸着板22との間隔を間隔Lとするとよい。また、型締力の立ち上がり応答性の悪さを考慮して、型閉じ完了前に型締力を発生させる場合は、当該型締力を発生させるときのリヤプラテン13と吸着板22との間隔を間隔Lとするとよい。
接点スイッチ71は電流供給部60に接続されており、そのON/OFF状態は電流供給部60に伝達される。電流供給部60は、コイル48に電流を供給するための装置又は部品の集合であり、少なくとも接点スイッチ71がON状態の間のみコイル48へ電流が供給可能なように構成されている。
図3は、第一の実施の形態における電流供給部の構成例を示す図である。第一の実施の形態では、電流供給部60を電流供給部60aとして説明する。同図において、電流供給部60aは、DC電源(直流電源)61、インバータ62、及び電磁接触器63等を有する。DC電源61にインバータ62の入力側が接続され、インバータ62の出力側に電磁接触器63の入力側が接続される。電磁接触器63の出力側にコイル48が接続される。
DC電源61は、例えば、交流電源、ダイオードブリッジ、及びコンデンサ等より構成され、インバータ62に対して直流電流を供給する。
位置センサ75は、固定子29に対する可動子31の位置を検出し、検出値を制御部90へ送信する。
制御部90は、位置センサ75から送信された検出値により可動子31がコイル48への通電開始位置に到達することを検出すると、コイル48への通電を制御すべくインバータ62へ制御信号を送信する。
インバータ62は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)インバータであり、制御部90より入力される動作指令に応じて、適切な量の電流を電磁接触器63側に出力する。
電磁接触器63は、本実施の形態においてハードスイッチとして機能するいわゆる電磁接触器であり、ON状態のときにインバータ62からの電流をコイル48に通過させ、OFF状態のときにインバータ62からの電流を遮断する。
同図に示されるように、第一の実施の形態において、接点スイッチ71は、電磁接触器63に接続される。接点スイッチ71がON状態のとき電磁接触器63はON状態となり、接点スイッチ71がOFF状態のとき電磁接触器63はOFF状態となる。
以下、第一の実施の形態の型締装置10の動作を説明する。
まず、型閉じ時に、図1に示す状態において、コイル35に電流を供給する。それにより、リニアモータ28が駆動され、吸着板22と共に可動プラテン12が前進させられる。この段階において、接点スイッチ71はOFF状態である。したがって、電磁接触器63もOFF状態であり、仮に、インバータ62より電流が出力されたとしても、コイル48への電流の供給は電磁接触器63によって遮断される。
続いて、図2に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、シムを用いて吸着板22の位置を微調整した結果、目標型締力Fが得られるような最適なギャップ(間隙)δ(ここで、間隔A>δ)が形成される。なお、型閉じに必要とされる力は型締力と比較して十分に小さい。
また、遅くとも可動金型16が固定金型15に当接させられるまでに、吸着板22の前進に伴って操作片72によってスイッチ切片71aが押し上げられ、接点スイッチ71がON状態となる。接点スイッチ71がON状態となることにより、電流供給部60の電磁接触器63はON状態となる。
続いて、位置センサ75の検出値に基づいて、制御部90よりインバータ62に対して動作指令が出力されると、DC電源61からの電流がインバータ62より電磁接触器63に出力される。このとき、電磁接触器63はON状態であるため、当該電流はそのままコイル48へと供給される。
コイル48に電流が供給されることにより、磁性体である吸着板22の吸着部51は電磁石49の吸着力によって吸着される。それにより、吸着板22及びロッド39を介して吸着力が型締力として可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
また、型締力が目標設定値になるようにコイル48に供給する電流の値が決定され、電流がコイル48に供給されて型締めが行われる。型締めが行われている間、射出装置17において溶融した樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充填される。
そして、キャビティ空間内の樹脂が固化すると、図2に示す状態において、制御部90によりインバータ62に対して停止命令が出力される。停止命令に応じ、インバータ62は、電流の出力を停止する。したがって、電磁接触器63がON状態であってもコイル48への電流供給は停止される。続いて、コイル35に逆方向の電流が供給される。それにより、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図1に示されるように、可動金型16が後退限位置に移動し、型開きが行われる。
なお、可動プラテン12(吸着板22)の後退の過程において、スイッチ切片71aは操作片72より解放され、接点スイッチ71はOFF状態となる。その結果、電磁接触器63はOFF状態となり、仮に、インバータ62より電流が出力されたとしても、コイル48への電流の供給は電磁接触器63によって遮断される。
上述したように、第一の実施の形態における型締装置10によれば、コイル48に電流を供給可能な期間を、少なくとも接点スイッチ71がON状態のとき、すなわち、接点スイッチ71によって吸着板22とリヤプラテン13との近接が検知されている間に限定することができる。ここで、接点スイッチ71のON/OFF状態は、制御部90とは無関係にハード的(メカ的)に操作される。したがって、仮に、制御部90におけるソフト的な誤動作(例えば、リニアモータ28の位置制御の誤動作)により、型開き状態においてインバータ62に対して動作指令が入力されたとしても、インバータ62より出力される電流をOFF状態の接点スイッチ71に接続された電磁接触器63によって遮断することができる。その結果、コイル48への電流の供給を遮断することができる。よって、従来と比較して、コイル48への電流の供給のタイミングをより確実に制限することができる。
次に、第二の実施の形態について説明する。図4は、第二の実施の形態における電流供給部の構成例を示す図である。第二の実施の形態では、電流供給部60を電流供給部60bとして説明する。また、図4中、図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図3と比較して図4では、電磁接触器63とインバータ62との位置が入れ替わっている。すなわち、DC電源61に電磁接触器63の入力側が接続され、電磁接触器63の出力側にインバータ62の入力側が接続される。インバータ62の出力側にコイル48が接続される。
なお、接点スイッチ71は、図3と同様、電磁接触器63に接続される。したがって、接点スイッチ71がON状態のとき電磁接触器63はON状態となり、接点スイッチ71がOFF状態のとき電磁接触器63はOFF状態となる。
以下、第二の実施の形態の型締装置10の動作を説明する。
まず、型閉じ時に、図1に示す状態において、コイル35に電流を供給する。それにより、リニアモータ28が駆動され、吸着板22と共に可動プラテン12が前進させられる。この段階において、接点スイッチ71はOFF状態である。したがって、電磁接触器63もOFF状態であり、DC電源61からインバータ62への電流は電磁接触器63によって遮断される。したがって、仮に、制御部90よりインバータ62に対して動作指令が入力されたとしても、コイル48へ電流は供給されない。
続いて、図2に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。遅くとも可動金型16が固定金型15に当接させられるまでに、吸着板22の前進に伴って操作片72によってスイッチ切片71aが押し上げられ、接点スイッチ71がON状態となる。接点スイッチ71がON状態となることにより、電流供給部60の電磁接触器63はON状態となる。したがって、DC電源61からの電流は、電磁接触器63よりインバータ62へ出力される。
続いて、位置センサ75の検出値に基づいて、制御部90よりインバータ62に対して動作指令が出力されると、インバータ62よりコイル48へ電流が供給される。
コイル48に電流が供給されることにより、磁性体である吸着板22の吸着部51は電磁石49の吸着力によって吸着される。それにより、吸着板22及びロッド39を介して吸着力が型締力として可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
なお、型締め中の動作については第一の実施の形態と同じでよいため、ここでの説明は省略する。
その後、可動プラテン12(吸着板22)の後退の過程において、スイッチ切片71aは操作片72より解放され、接点スイッチ71はOFF状態となる。その結果、電磁接触器63もOFF状態となる。したがって、仮に、制御部90よりインバータ62に対して動作指令が入力されたとしても、インバータ62への電流は電磁接触器63によって遮断されるため、コイル48へ電流は供給されない。
上述したように、第二の実施の形態における型締装置10によれば、第一の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、コイル48に電流を供給可能な期間を、少なくとも接点スイッチ71がON状態のとき、すなわち、接点スイッチ71によって吸着板22とリヤプラテン13との近接が検知されている間に限定することができる。したがって、仮に、制御部90におけるソフト的な誤動作(例えば、リニアモータ28の位置制御の誤動作)により、型開き状態においてインバータ62に対して動作指令が入力されたとしても、OFF状態の接点スイッチ71に接続された電磁接触器63によってインバータ62への電流の供給を遮断することができる。その結果、コイル48への電流の供給を遮断することができる。よって、従来と比較して、コイル48への電流の供給のタイミングをより確実に制限することができる。
次に、第三の実施の形態について説明する。図5は、第三の実施の形態における電流供給部の構成例を示す図である。第三の実施の形態では、電流供給部60を電流供給部60cとして説明する。また、図5中、図3又は図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図5において、電流供給部60cは、電磁接触器63を有していない。第三の実施の形態では、接点スイッチ71は、制御部90に接続されるからである。なお、同図では、制御部90の構成例が示されている。制御部90は、CPU91、ROM92、及びRAM93等を備える。第三の実施の形態では、制御部90によるインバータ62への動作指令又は停止指令の出力の可否又は出力のタイミングは、接点スイッチ71のON/OFF状態に基づいて判断される。
図6は、第三の実施の形態における制御部による処理手順を説明するためのフローチャートである。同図の処理手順は、ROM92に記録され、RAM93にロードされたプログラムに基づいて、CPU91が実行するものである。
ステップS101において、接点スイッチ71の状態をチェックする。なお、接点スイッチ71の状態は、制御部90がポーリング等により能動的にチェックしてもよいし、接点スイッチ71からの割り込みによって、制御部90が受動的に検知してもよい。
接点スイッチがON状態の場合(S102でON)、インバータ62への動作指令を出力可能な状態とする(S103)。インバータ62への動作指令を出力可能な状態とは、インバータ62への動作指令が必要な場合には、当該動作指令の出力が可能な状態をいう。したがって、必ずしも、接点スイッチ71のON状態の検知に応じて直ちに動作指令が出力されるとは限らない。なお、インバータ62への動作指令を出力可能な状態とするための具体的な処理内容は、例えば、RAM93内において当該状態を示すフラグ変数の値をONにすることをいう。すなわち、制御部90は、当該フラグ変数の値がOFFのときは、動作指令が必要であっても動作指令の出力は行わない。
一方、接点スイッチがOFF状態の場合(S102でOFF)、インバータへ停止指令を出力する(S104)。この際、インバータ62への動作指令を出力不可能な状態とする。すなわち、上記フラグ変数の値をOFFとする。なお、ステップS101からS104は、繰り返し実行されている。
制御部90の斯かる処理手順をふまえて、第三の実施の形態の型締装置10の動作を説明する。
まず、型閉じ時に、図1に示す状態において、コイル35に電流を供給する。それにより、リニアモータ28が駆動され、吸着板22と共に可動プラテン12が前進させられる。この段階において、接点スイッチ71はOFF状態である。したがって、制御部90からインバータ62へは停止指示が入力される。よって、コイル48へ電流は供給されない。
続いて、図2に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。遅くとも可動金型16が固定金型15に当接させられるまでに、吸着板22の前進に伴って操作片72によってスイッチ切片71aが押し上げられ、接点スイッチ71がON状態となる。接点スイッチ71がON状態となることにより、制御部90は、インバータ62への動作指令を出力可能な状態とする。
続いて、リニアモータ28の位置制御に基づいて、制御部90は、インバータ62への動作指令の出力が必要であると判断する。ここで、制御部90は、当該動作指令を出力可能な状態であるため、当該動作指令をインバータ62へ出力する。それにより、インバータ62よりコイル48へ電流が供給される。
コイル48に電流が供給されることにより、磁性体である吸着板22の吸着部51は電磁石49の吸着力によって吸着される。それにより、吸着板22及びロッド39を介して吸着力が型締力として可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
なお、型締め中の動作については第一の実施の形態と同じでよいため、ここでの説明は省略する。
その後、可動プラテン12(吸着板22)の後退の過程において、スイッチ切片71aは操作片72より解放され、接点スイッチ71はOFF状態となる。それに応じ、制御部90は、停止指令をインバータ62へ出力すると共に動作指令を出力不可能な状態とする。なお、コイル48への電流の供給は、型締工程において既に停止されているため、ここでの停止指令によってコイル48への電流の供給が初めて停止されるわけではない。
上述したように、第三の実施の形態における型締装置10によれば、コイル48に電流を供給可能な期間を、少なくとも接点スイッチ71がON状態のとき、すなわち、接点スイッチ71によって吸着板22とリヤプラテン13との近接が検知されている間に限定することができる。したがって、仮に、制御部90において、リニアモータ28の位置制御の誤動作により、型開き状態においてインバータ62に対する動作指令が必要であると判断されても、接点スイッチ71のOFF状態の検知に基づいて、当該動作指令の出力は回避される。その結果、コイル48への電流の供給を遮断することができる。よって、従来と比較して、コイル48への電流の供給のタイミングをより確実に制限することができる。
なお、上記においては、近接検知部として接点スイッチ71及び操作片72を用いた例を説明したが、各種のセンサによって近接検知部を構成してもよい。例えば、型開閉に応じて移動する部材(可動プラテン12、吸着板22、リニアモータ28の可動子31に対して配設される位置センサ(リニアスケール)を用いてもよい。この場合、型開閉に応じて移動する部材に対してリニアセンサの可動子を配設し、型開閉に対して固定されている部材に対してリニアセンサの固定子を配設すればよい。そして、リニアセンサを図3〜図5に示されるような形態で電流供給部60に接続すればよい。
また、図7に示されるように、電磁石保持部材(電磁石49)と吸着部材(吸着部51)との配置位置は、本実施の形態における配置位置と逆であってもよい。図7では、22aで示される部材が電磁石保持部材として機能し、13aで示される部材が吸着部材として機能する例が示されている。同図において、電磁石保持部材22aは、ロッド39により可動プラテン12に連結され、可動プラテン12と共に進退する。
また、本実施の形態では型開閉用の駆動部としてリニアモータを用いた例を示したが、図8に示されるように回転型モータ85とボールねじ装置86とを組み合わせた直動装置を型開閉用の駆動部として用いてもよい。この場合、回転型モータ85に取り付けられた回転検出器87が、本実施の形態における位置センサ75として機能する。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。