以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
図1は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型開き時の状態を示す図である。
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム、Gdは、該フレームFr上に敷設されてレールを構成し、型締装置10を支持するとともに、案内する第1の案内部材としての2本のガイド(図においては、2本のガイドGdのうちの1本だけを示す。)、11は、該ガイドGd上に載置され、前記フレームFr及びガイドGdに対して固定された第1の固定部材としての固定プラテンであり、該固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて第2の固定部材としてのリヤプラテン13が配設され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。なお、前記リヤプラテン13は、タイバー14が伸縮するのに伴って、ガイドGdに対してわずかに移動することができるように前記ガイドGd上に載置される。
なお、本実施の形態においては、固定プラテン11はフレームFr及びガイドGdに対して固定され、リヤプラテン13はガイドGdに対してわずかに移動することができるようになっているが、リヤプラテン13をフレームFr及びガイドGdに対して固定し、固定プラテン11をガイドGdに対してわずかに移動することができるようにすることができる。
前記タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて第1の可動部材としての可動プラテン12が型開閉方向に進退自在に配設される。そのために、前記可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。
前記タイバー14の前端部には図示されない第1のねじ部が形成され、前記タイバー14は、前記第1のねじ部とナットn1とを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、前記各タイバー14の後方の所定の部分には、タイバー14より外径が小さい第2の案内部材としてのガイドポスト21が、リヤプラテン13の後端面から後方に向けて突出させて、かつ、タイバー14と一体に形成される。そして、リヤプラテン13の後端面の近傍には図示されない第2のねじ部が形成され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13とは、前記第2のねじ部とナットn2とを螺合させることによって連結される。本実施の形態においては、ガイドポスト21がタイバー14と一体に形成されるようになっているが、ガイドポスト21をタイバー14とは別体に形成することもできる。
また、前記固定プラテン11には第1の金型としての固定金型15が、前記可動プラテン12には第2の金型としての可動金型16がそれぞれ固定され、前記可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充墳される。また、固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
そして、前記可動プラテン12と平行に配設された第2の可動部材としての吸着板22が、リヤプラテン13より後方において前記各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、前記吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21を貫通させるためのガイド穴23が形成される。該ガイド穴23は、前端面に開口させられ、ボールナットn2を収容する大径部24、及び吸着板22の後端面に開口させられ、ガイドポスト21と摺動させられる摺動面を備えた小径部25を備える。本実施の形態において、吸着板22は、ガイドポスト21によって案内されるようになっているが、吸着板22を、ガイドポスト21だけでなく、ガイドGdによって案内することもできる。
ところで、前記可動プラテン12を進退させるために、第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部としてのリニアモータ28が、可動プラテン12とフレームFrとの間に配設される。前記リニアモータ28は、第1の駆動要素としての固定子29、及び第2の駆動要素としての可動子31を備え、前記固定子29は、前記フレームFr上において、前記ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成され、前記可動子31は、可動プラテン12の下端において、前記固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
前記可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、前記コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、前記コイル35は、各磁極歯33に巻装される。なお、前記磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、前記固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に、かつ、前記磁極歯33と同じピッチで着磁させることによって形成される。
したがって、前記コイル35に所定の電流(三相交流電流)を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられ、それに伴って、可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
なお、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
ところで、前記可動プラテン12が前進させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが行われ、続いて、型締めが行われる。そして、型締めを行うために、リヤプラテン13と吸着板22との間に、第2の駆動部としての、かつ、型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。そして、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、かつ、可動プラテン12と吸着板22とを連結する型締力伝達部材としてのロッド39が進退自在に配設される。該ロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた型締力を可動プラテン12に伝達する。
なお、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
また、型締装置10において、型開閉用の駆動部としてのリニアモータ28の動作と型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37と動作とは、制御部60によって制御される。制御部60の詳細については後述する。
前記電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された第1の駆動部材としての電磁石49、及び吸着板22側に形成された第2の駆動部材としての吸着部51から成り、該吸着部51は、前記吸着板22の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22において前記ロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、前記ロッド39よりわずかに上方及び下方に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45が互いに平行に形成され、各溝45間に矩形の形状を有するコア46、及び他の部分にヨーク47が形成される。そして、前記コア46にコイル48が巻装される。
なお、前記コア46及びヨーク47は、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
本実施の形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。
したがって、電磁石ユニット37において、前記コイル48に電流(直流電流)を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、前記型締力を発生させることができる。
そして、前記ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12が前進するのに伴って前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12が後退するのに伴って後退させられて吸着板22を後退させる。
そのために、前記リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴41、及び前記吸着板22の中央部分にロッド39を貫通させるための穴42が形成され、前記穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。また、前記ロッド39の後端部にねじ43が形成され、該ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持された型厚調整機構としてのナット44とが螺合させられる。
前記ナット44の外周面に図示されない大径のギヤが形成され、前記吸着板22に型厚調整用の駆動部としての図示されない型厚調整用モータが配設され、該型厚調整用モータの出力軸に取り付けられた小径のギヤと、前記ナット44の外周面に形成されたギヤとが噛合させられる。
そして、金型装置19の厚さに対応させて、型厚調整用モータを駆動し、前記ナット44をねじ43に対して所定量回転させると、吸着板22に対するロッド39の位置が調整され、固定プラテン11及び可動プラテン12に対する吸着板22の位置が調整されて、ギャップδを最適な値にすることができる。すなわち、可動プラテン12と吸着板22との相対的な位置を変えることによって、型厚の調整が行われる。
なお、本実施の形態においては、コア46及びヨーク47、並びに吸着板22の全体が電磁積層鋼板によって構成されるようになっているが、リヤプラテン13におけるコア46の周囲及び吸着部51を電磁積層鋼板によって構成するようにしてもよい。本実施の形態においては、リヤプラテン13の後端面に電磁石49が形成され、該電磁石49と対向させて、吸着板22の前端面に吸着部51が進退自在に配設されるようになっているが、リヤプラテン13の後端面に吸着部を、該吸着部と対向させて、吸着板22の前端面に電磁石を進退自在に配設することができる。
ところで、制御部60は、型閉じ動作と型締め動作とについて、両者のタイミングが適切に同期されるよう制御する。すなわち、制御部60は、リニアモータ28(又はリニアモータ28によって駆動される可動プラテン12)が所定の位置に達したときに、適切に型締力が印加されるように制御する。これにより、型開閉用の駆動部と型締め用の駆動部とが分離されることによる不都合が回避される。以下、制御部60について詳しく説明する。
図3は、第一の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。図3において、制御部60は、動作指令部としての上位コントローラ61、パターン生成部としてのサーボカード62、第1のスイッチング操作量生成部としてのドライバカード63、第2のスイッチング操作量生成部としてのドライバカード64、第1のスイッチング部としてのインバータ65、第2のスイッチング部としてのインバータ66、整流器67、及び整流器68等より構成される。第一の実施の形態では、上位コントローラ61、サーボカード62、ドライバカード63、インバータ65、及び整流器67によって型開閉制御手段が構成される。また、上位コントローラ61、サーボカード62、ドライバカード64、インバータ66及び整流器68よって型締め制御手段が構成される。すなわち、上位コントローラ61及びサーボカード62は、型開閉制御手段及び型締め制御手段より共通に用いられる。なお、ドライバカード63、ドライバカード64、インバータ65、インバータ66、整流器67、及び整流器68は、一つの基板81上に配設されている。
上位コントローラ61は、CPUを備え、制御プログラムを当該CPUによって処理することにより、リニアモータ28及び電磁石ユニット37の動作シーケンスを制御する。上位コントローラ61は、リニアモータ28の動作指令(位置又は速度に関する情報)と、電磁石ユニット37の動作指令(型締力(定格型締力)の大きさを示す情報)とをネットワーク等のケーブルを介してサーボカード62に出力する。
サーボカード62は、上位コントローラ61より入力される動作指令に基づいて、リニアモータ28及び電磁石ユニット37の動作パターンを生成する。リニアモータ28の動作パターンは、例えば、時間と位置との関係によって示される。また、電磁石ユニット37の動作パターンは、リニアモータ28の位置と型締力との関係によって示される。このように、同一のサーボカード62によって二つの動作パターンを生成するので同期をとることができる。すなわち、リニアモータ28の動作パターンと、電磁石ユニット37の動作パターンとは、リニアモータ28の位置によって同期がとられており、リニアモータ28が所定の位置に達したタイミングで型締力が発生するように電磁石ユニット37の動作パターンは生成される。
サーボカード62は、リニアモータ28の動作パターンに応じた型開閉用の指令値(リニアモータ28のコイル35に供給する電流値)を時間の経過に応じてドライバカード63に逐次出力する。サーボカード62は、また、電磁石ユニット37の動作パターンに応じた型締め用の指令値(電磁石ユニット37のコイル48に供給する電流値)を時間の経過に応じてドライバカード64に逐次出力する。なお、サーボカード62は、ドライバカード63及びドライバカード64に対して逐次出力される指令値を同時に出力する。すなわち、第一の実施の形態では、サーボカード62によってリニアモータ28と電磁石ユニット37との動作の同期が図られている。元々同期がとられて生成されているリニアモータ28の動作パターンと電磁石ユニット37との動作パターンに応じたそれぞれの指令値が、それぞれのドライバカード(ドライバカード63及びドライバカード64)に同時に出力されることにより、高い精度においてリニアモータ28と電磁石ユニット37との動作の同期が図られる。
ドライバカード63は、サーボカード62より入力される型開閉用の指令値に応じた信号(型開閉用の三相交流の操作量)をインバータ65に出力する。ドライバカード64は、サーボカード62より入力される型締め用の指令値に応じた信号(型締め用の三相交流の操作量)をインバータ66に出力する。
インバータ65には、三相交流電源71より供給される電流が整流器67によって直流に変換されて供給される。インバータ65は、整流器67を介して供給される直流電流を、ドライバカード63より入力される型開閉用の三相交流の操作量に応じた三相交流電流に変換し、リニアモータ28のコイル35に供給する。
インバータ66には、三相交流電源72より供給される電流が整流器68によって直流に変換されて供給される。インバータ66は、整流器68を介して供給される直流電流を、ドライバカード64より入力される型締め用の三相交流の操作量に応じた直流電流に変換し、電磁石ユニット37のコイル48に供給する。
なお、リニアモータ28には、位置検出器としてのエンコーダ70が配設されている。エンコーダ70は、リニアモータ28の位置を検出し、その位置を示す情報(位置情報)はサーボカード62にフィードバック(出力)される。すなわち、サーボカード62は、刻々とフィードバックされる位置情報をも用いて、ドライバカード63に出力する型開閉用の指令値を算出する。また、サーボカード62は、型開閉用の指令値に対応させて(同期がとられるように)、ドライバカード64に出力する型締め用の指令値を算出する。
なお、型締力を発生させない間は、サーボカード62は、ドライバカード64には、型締力を発生させないことを示す指令値を逐次出力する。但し、型締力を発生させるときにのみ、型締め用の指令値が出力されるようにしてもよい。この場合、必ずしも、ドライバカード63とドライバカード64への指令値の出力は同時には行われない。この場合、サーボカード62は、エンコーダ70より入力されるリニアモータ28の位置情報に基づき、リニアモータ28が型締力を発生させるべき位置に達したことが検知されたときにドライバカード64への指令値を出力する。
ところで、一般的に、インバータは、直流電流を交流電流に変換するものである。しかしながら、本実施の形態において、インバータ66は、三相交流の操作量に基づいて擬似的に直流電流を生成及び出力する。電磁石ユニット37のコイル48には直流電流を供給する必要があるからである。
図4は、本発明の実施の形態におけるインバータの構成例を説明するための図である。図4には、三相交流電源72に接続されたコンタクタ73と、コンタクタ73に接続された整流器68と、整流器68の出力側に接続された電解コンデンサ(平滑コンデンサ)74と、インバータ66と、インバータ66より直流電流が供給されるコイル48とが示されている。なお、コンタクタ73及び電解コンデンサ74は、インバータ65に関しても同様に配設されるが、図3では便宜上省略されている。
コンタクタ73は、オン/オフ制御され、三相交流電源72からの三相交流電流を整流器68へ供給し、またその供給を遮断する。整流器68は、例えば、ダイオードブリッジであって、コンタクタ73を介して三相交流電源72から供給される三相交流を整流し、直流を出力する。電解コンデンサ74は、整流器68から出力される直流を平滑化する。
インバータ66は、複数のトランジスタ(パワートランジスタ)75によって構成され、整流器68から供給される平滑化された直流を擬似的な直流に変換してコイル48へ供給する。
すなわち、インバータ66には、電気角が固定され、u相、v相、及びw相の三相について、u=−v、w=0となるような操作量がドライバカード64より供給される。そして、インバータ66とコイル48とは、v相及びu相のみについて結線され、w相については結線されない。これによって、インバータ66は、インバータでありながら擬似的に直流を供給することができる。
したがって、インバータ66は、インバータ65と同じハードウェア(製品)によって構成することができる。これにより部品の共通化が図られ、コストダウンを図ることができる。
また、インバータ65及びインバータ66が同じ回路構成を有することにより、サーボカード62より同期がとられてドライバカード63及び64に対して出力される指令に基づいて、コイル35に対して電流が供給されるタイミングとコイル48に対して電流が供給されるタイミングとのずれが生じる可能性を小さくすることができる。
上述したように、第一の実施の形態によれば、サーボカード62は、同期がとられた動作パターンに基づいて、ドライバカード63とドライバカード64に対して異なる指令値(すなわち、型開閉用又は型締め用の指令値)を出力する。したがって、三相交流によって駆動されるリニアモータ28と、直流によって駆動される電磁石ユニット37といった特性の異なる二つの駆動系の動作について、適切に同期制御を行うことができる。
なお、第一の実施の形態において、リニアモータ28の動作パターンと電磁石ユニット37の動作パターンとは、上位コントローラ61で生成するようにしてもよい。また、エンコーダ70からのリニアモータ28の位置情報が、上位コントローラ61にフィードバックされるようにしてもよい。この場合、上位コントローラ61は、フィードバックされる位置情報に応じて、動作パターンに基づいて、リニアモータ28の動作指令と電磁石ユニット37の動作指令とをサーボカード62に出力する。
次に、前記構成の型締装置10の動作について説明する。
制御部60の型開閉制御手段は、型開閉処理を行い、型閉じ時に、図2の状態において、コイル35に電流を供給する。ここで、型開閉制御手段を構成するサーボカード62は、上位コントローラ61の動作指令に基づいて動作パターンを生成する。サーボカード62は、生成した動作パターンに基づく型開閉用の指令値をドライバカード63に出力する。ドライバカード63からは、型開閉用の指令値に基づくスイッチング信号がインバータ65へ出力される。これにより、インバータ65から型開閉用のスイッチング信号に応じた交流電流がコイル35へ供給される。コイル35へ交流電流が供給されると、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進する。可動プラテン12の前進に伴い、エンコーダ70によってリニアモータ28の位置が逐次検出され、サーボカード62へ位置検出値として入力される。これにより、リニアモータ28は、エンコーダ70による位置検出値に基づいてフィードバック制御を行い、可動プラテン12の正確な型開閉制御を行う。この間もサーボカード62からは、型締め制御手段を構成するドライバカード64へ、型締力を発生させないことを示す型締め用の指令値が出力される。
可動プラテン12が所定の位置に到達すると、サーボカード62からは、予め設定された型締力を出力させるように型締め用の指令値がドライバカード64へ出力される。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成されている。そして、ドライバカード64からは、型締め用の指令値に基づくスイッチング信号がインバータ66へ出力される。これにより、インバータ66から型締め用のスイッチング信号に応じた直流電流がコイル48へ供給される。
このように、型閉じ工程中でも、サーボカード62からはドライバカード64へ型締め用の指令値が出力されているので、正確なタイミングで電磁石49のコイル48へ電流を流すことができる。特に、型閉じが完了する前に射出動作が行われる口開け成形でも、本実施の形態を用いることで、正確なタイミングで型締力を印加することができるので、可動金型16と固定金型15との間からの樹脂漏れを防止することができる。
続いて、型締工程においては、制御部60の型締め制御手段は、前記コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。かかる構造の下、本実施の形態では、型締め開始時等、型締力を変化させる際に、制御部60の型締め制御手段は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力型締力(以下、かかる型締力を「定常型締力」という。)を発生させるために必要な定常的な電流(以下、かかる電流を「定格電流」という。)の値をコイル48に供給するように制御している。
また、前記型締力は図示されない荷重検出器によって検出され、検出された型締力は制御部60の型締め制御手段に送られ、型締め制御手段において、型締力が設定値になるようにコイル48に供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。なお、前記荷重検出器として、ロッド39上に配設されたロードセル、タイバー14の伸び量を検出するセンサ等を使用することができる。
そして、各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、前記型開閉制御手段は、型開き時に、図1の状態において、前記コイル48に電流を供給するのを停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図2に示されるように、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
次に、第二の実施の形態について説明する。図5は、第二の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。図5中、図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
第二の実施の形態において、制御部60aは、異なる基板上に配設されている二つのサーボカードを備えている。基板82上のサーボカード62aは、型開閉駆動用のサーボカードであり、基板83上のサーボカード62bは、型締め駆動用のサーボカードである。すなわち、第二の実施の形態では、上位コントローラ61、サーボカード62a、ドライバカード63、インバータ65、及び整流器67によって型開閉制御手段が構成される。また、上位コントローラ61、サーボカード62b、ドライバカード64、インバータ66及び整流器68よって型締め制御手段が構成される。
上位コントローラ61aは、CPUを備え、制御プログラムを当該CPUによって処理することにより、リニアモータ28及び電磁石ユニット37の動作シーケンスを制御する。上位コントローラ61は、リニアモータ28の動作指令(位置又は速度に関する情報)をサーボカード62aに出力し、電磁石ユニット37の動作指令(型締力(定格型締力)の大きさを示す情報)をサーボカード62bに出力する。
サーボカード62aは、上位コントローラ61より入力される動作指令に基づいてリニアモータ28の動作パターン(時間と位置との関係)を生成する。サーボカード62aは、エンコーダ70からのリニアモータ28の位置情報のフィードバックに基づき、リニアモータ28の動作パターンに応じた型開閉用の指令値(リニアモータ28のコイル35に供給する電流値)を時間の経過に応じてドライバカード63に逐次出力する。
サーボカード62bは、上位コントローラ61より入力される動作指令に基づいて電磁石ユニット37の動作パターンを生成する。電磁石ユニット37の動作パターンは、リニアモータ28の位置と型締力との関係によって示される。
サーボカード62bは、リニアモータ28の位置情報に基づき、電磁石ユニット37の動作パターンに応じた型締め用の指令値(電磁石ユニット37のコイル48に供給する電流値)を時間の経過に応じてドライバカード64に逐次出力する。なお、リニアモータ28の位置情報は、サーボカード62aより入力される。
図5では、サーボカード62aとサーボカード62bとは異なる基板上に配設されている。そこで、位置情報の伝達の遅延を少なくし、同期制御をより効率的にするために、サーボカード62aとサーボカード62bとの間は、光ケーブルL1によって接続される。斯かる構成により、サーボカード62aからサーボカード62bへは光通信によって位置情報が伝達される。このように、光ケーブルを用いることで即値性(リアルタイム性)を達成することができる。
また、位置情報は、上位コントローラ61a、信号経路L2及びL3を介してサーボカード62aからサーボカード62bに伝達されてもよい。この場合もやはり上位コントローラ61aとサーボカード62a及び62bとの間は光ケーブルによって接続するとよい。
また、上位コントローラ61aにおいて、サーボコントローラ62aより位置情報の通知を受けた際に、割り込みを発生させ、その割り込み処理において、信号経路L4を介してサーボカード62aへの位置情報の通知を実行し、信号経路L3を介してサーボカード62bへの位置情報の通知を実行するようにするとよい。そうすることにより、上位コントローラ61aにおいて実行されている他の処理に優先させて位置情報の伝達が行われ、サーボカード62aからサーボカード62bへの位置情報の伝達の遅延を低減させることができる。割り込みによって位置情報を伝達する場合、必ずしも光ケーブルを用いなくてもよいため、光ケーブルを用いない場合にコストダウンを図ることができる。
上述したように、第二の実施の形態では、型開閉用の動作指令値と型締め用の動作指令値とが異なるサーボカード(サーボカード62a、サーボカード62b)より出力される。ここで、二つのサーボカードは、予め同期がとられた動作パターンに基づいて動作指令値を出力する。また、エンコーダ70からフィードバックされるリニアモータ28の位置情報に関しても、光通信や割り込み等を用いることによって、要求される性能に対して大きな遅延が生じにくい状態でサーボカード62aからサーボカード62bに伝達される。したがって、第二の実施の形態においても、三相交流によって駆動されるリニアモータ28と、直流によって駆動される電磁石ユニット37といった特性の異なる二つの駆動系の動作について、適切に同期制御を行うことができる。
次に、第三の実施の形態について説明する。図6は、第三の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。図6中、図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
第三の実施の形態において、制御部60aは、異なる基板上に配設されている二つのサーボカードを備えている。サーボカード62cは、型開閉駆動用のサーボカードであり、サーボカード62dは、型締め駆動用のサーボカードである。すなわち、第三の実施の形態では、上位コントローラ61、サーボカード62c、ドライバカード63、インバータ65、及び整流器67によって型開閉制御手段が構成される。また、上位コントローラ61、サーボカード62d、ドライバカード64、インバータ66及び整流器68よって型締め制御手段が構成される。
また、第三の実施の形態では、エンコーダ70からのリニアモータ28の位置情報のフィードバックは、サーボカード62c及びサーボカード62dの双方に入力される。
上位コントローラ61bは、CPUを備え、制御プログラムを当該CPUによって処理することにより、リニアモータ28及び電磁石ユニット37の動作シーケンスを制御する。上位コントローラ61は、リニアモータ28の動作指令(位置又は速度に関する情報)をサーボカード62cに出力し、電磁石ユニット37の動作指令(型締力(定格型締力)の大きさを示す情報)をサーボカード62dに出力する。
サーボカード62cは、上位コントローラ61より入力される動作指令に基づいてリニアモータ28の動作パターン(時間と位置との関係)を生成する。サーボカード62cは、エンコーダ70からのリニアモータ28の位置情報のフィードバックに基づき、リニアモータ28の動作パターンに応じた型開閉用の指令値(リニアモータ28のコイル35に供給する電流値)を時間の経過に応じてドライバカード63に逐次出力する。
サーボカード62dは、上位コントローラ61より入力される動作指令に基づいて電磁石ユニット37の動作パターンを生成する。電磁石ユニット37の動作パターンは、リニアモータ28の位置と型締力との関係によって示される。
サーボカード62dは、エンコーダ70からのリニアモータ28の位置情報のフィードバック基づき、電磁石ユニット37の動作パターンに応じた型締め用の指令値(電磁石ユニット37のコイル48に供給する電流値)を時間の経過に応じてドライバカード64に逐次出力する。
上述したように、第三の実施の形態では、型開閉用の動作指令値と型締め用の動作指令値とが異なるサーボカード(サーボカード62c、サーボカード62d)より出力される。ここで、二つのサーボカードは、予め同期がとられた動作パターンに基づいて動作指令値を出力する。また、エンコーダ70からフィードバックされるリニアモータ28の位置情報は、双方のサーボカードに対して直接入力される。すなわち、それぞれのサーボカードに対して位置情報が入力されるタイミングは、ほぼ同時であるといえる。したがって、第三の実施の形態においても、三相交流によって駆動されるリニアモータ28と、直流によって駆動される電磁石ユニット37といった特性の異なる二つの駆動系の動作について、適切に同期制御を行うことができる。
なお、本実施の形態では、型開閉駆動部の一例としてリニアモータを適用した例について説明したが、本願発明は、回転型モータとボールねじ機構との組み合わせによって型開閉駆動部が構成される場合であっても有効に適用することができる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。