JP2013166848A - 液晶ポリエステル組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐ブリスター性に優れた成形体、及び該成形体の製造に用いる液晶ポリエステル組成物の提供。
【解決手段】液晶ポリエステルと、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上の板状充填材と、を含むことを特徴とする液晶ポリエステル組成物;かかる液晶ポリエステル組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
【選択図】なし
【解決手段】液晶ポリエステルと、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上の板状充填材と、を含むことを特徴とする液晶ポリエステル組成物;かかる液晶ポリエステル組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
【選択図】なし
Description
本発明は、液晶ポリエステル組成物、及び該組成物を用いて得られた成形体に関する。
液晶ポリエステル及びタルクを含む液晶ポリエステル組成物から得られた成形体は、成形収縮及び加熱変形量が小さく、表面特性に優れることから、コネクター、リレー部品など、複雑な形状を有し、高い寸法精度が要求される電子部品として用いることが検討されている。
このような液晶ポリエステル組成物としては、液晶ポリエステル99.5〜30重量%と板状粉体0.5〜70重量%とを構成要素とするもの(特許文献1参照)、融点が340℃以上の液晶ポリエステルに、比表面積が5m2/g以上で平均粒径が40μm以下のタルクを、前記液晶ポリエステル及びタルクの合計量に対する比率が5〜60wt%となるように配合して得られたもの(特許文献2参照)がそれぞれ開示されている。
しかし、特許文献1及び2で開示されている液晶ポリエステル組成物から得られた成形体は、加熱時に膨れ(ブリスター)が発生するのを抑制する、いわゆる耐ブリスター性が不十分であるという問題点があった。ブリスターが発生した成形体は、外観が悪化するだけでなく、寸法精度も悪化するため、成形体としての実用性を有しない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐ブリスター性に優れた成形体、及び該成形体の製造に用いる液晶ポリエステル組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、液晶ポリエステルと、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上の板状充填材と、を含むことを特徴とする液晶ポリエステル組成物を提供する。
本発明は、液晶ポリエステルと、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上の板状充填材と、を含むことを特徴とする液晶ポリエステル組成物を提供する。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位を有し、原料モノマーをイミダゾール化合物の存在下で重合させて得られたものであることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記イミダゾール化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記イミダゾール化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールを含む原料モノマーを準備する準備工程と、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基及び前記芳香族ジオールのフェノール性水酸基を、脂肪酸無水物によりアシル化して、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物及び前記芳香族ジオールのアシル化物を得るアシル化工程と、前記イミダゾール化合物の存在下で、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物と、前記芳香族ジカルボン酸と、前記芳香族ジオールのアシル化物と、をエステル交換させて、液晶ポリエステルを得る重合工程と、を有する製造方法で得られたものであることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位、テレフタル酸に由来する繰返し単位及び/又はイソフタル酸に由来する繰返し単位、並びに4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位を有することが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記液晶ポリエステルの流動開始温度が260〜400℃であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位、テレフタル酸に由来する繰返し単位及び/又はイソフタル酸に由来する繰返し単位、並びに4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位を有することが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記液晶ポリエステルの流動開始温度が260〜400℃であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステルを複数種含み、そのうち、最も流動開始温度が高い第1の液晶ポリエステルの流動開始温度が300〜400℃であり、最も流動開始温度が低い第2の液晶ポリエステルの流動開始温度が260〜350℃であり、前記第1の液晶ポリエステル100質量部に対して、前記第2の液晶ポリエステルを10〜150質量部含むことが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記第1の液晶ポリエステルの流動開始温度から、前記第2の液晶ポリエステルの流動開始温度を引いた温度差が、20〜60℃であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステルの総量100質量部に対して、前記板状充填材を15〜100質量部含むことが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記板状充填剤がタルクであることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物は、さらに繊維状充填材を含むことが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記第1の液晶ポリエステルの流動開始温度から、前記第2の液晶ポリエステルの流動開始温度を引いた温度差が、20〜60℃であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステルの総量100質量部に対して、前記板状充填材を15〜100質量部含むことが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物においては、前記板状充填剤がタルクであることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物は、さらに繊維状充填材を含むことが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の液晶ポリエステル組成物を用いてなることを特徴とする成形体を提供する。
本発明によれば、耐ブリスター性に優れた成形体、及び該成形体の製造に用いる液晶ポリエステル組成物が提供される。
<液晶ポリエステル組成物>
本発明に係る液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上の板状充填材と、を含むことを特徴とする。板状充填材として特定の1%重量減少温度を有するものを用いることで、かかる液晶ポリエステル組成物から得られた成形体は、耐ブリスター性に優れたものとなる。
本発明に係る液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上の板状充填材と、を含むことを特徴とする。板状充填材として特定の1%重量減少温度を有するものを用いることで、かかる液晶ポリエステル組成物から得られた成形体は、耐ブリスター性に優れたものとなる。
前記液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特徴を有する。前記液晶ポリエステルは、例えば、イミダゾール化合物の存在下で原料モノマーを重合させることで得られ、前記原料モノマーとして芳香族ヒドロキシカルボン酸を必須としたもの(芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位を有するもの)が好ましい。このような芳香族ヒドロキシカルボン酸を原料モノマーとして用いた液晶ポリエステルの例としては、以下の(P1)〜(P3)が挙げられる。
(P1):芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを組み合わせて原料モノマーとし、これらを重合させて得られたもの。
(P2):異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を原料モノマーとし、これらを重合させて得られたもの。
(P3):ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られたもの。
(P2):異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を原料モノマーとし、これらを重合させて得られたもの。
(P3):ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られたもの。
これらの中でも、前記(P1)、すなわち、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを組み合わせて原料モノマーとして準備し、該原料モノマーを重合させて得られた液晶ポリエステルが好ましい。なお、このような液晶ポリエステルの製造においては、その製造がより容易である点で、該原料モノマーとして使用する芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールの一部又は全部を、予めエステル形成性誘導体にして重合に供することが好ましい。
ここで、分子内にカルボキシル基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の例としては、当該カルボキシル基が、ハロホルミル基やアシルオキシカルボニル基等の高反応性の基に転化したものや、当該カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、アルコール類やエチレングリコール等とエステルを形成したものが挙げられる。
また、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのエステル形成性誘導体の例としては、当該フェノール性水酸基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、低級カルボン酸類とエステルを形成したものが挙げられる。
例示したエステル形成性誘導体の中でも、前記(P1)の液晶ポリエステルの原料モノマーとしては、フェノール性水酸基が低級カルボン酸類とエステルを形成したエステル形成性誘導体、すなわち、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールをアシル化して得られたアシル化物が好ましい。
以下、前記(P1)の液晶ポリエステルを構成する繰返し単位について、具体例を挙げて説明する。
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸(後述の(A1)を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸)、m−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(後述の(A2)を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシジフェニルエーテルや、これらの芳香族ヒドロキシカルボン酸の芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されてなる芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。該芳香族ヒドロキシカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
なお、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位は、その芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されていてもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(後述の(B1)を誘導する芳香族ジカルボン酸)、イソフタル酸(後述の(B2)を誘導する芳香族ジカルボン酸)、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジルボン酸(後述の(B3)を誘導する芳香族ジカルボン酸)、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル−4,4’−ジカルボン酸や、これらの芳香族ジカルボン酸の芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されてなる芳香族ジカルボン酸が挙げられる。該芳香族ジカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
なお、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位は、その芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されていてもよい。
芳香族ジオールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(後述の(C1)を誘導する芳香族ジオール)、ハイドロキノン(後述の(C2)を誘導する芳香族ジオール)、レゾルシン(後述の(C3)を誘導する芳香族ジオール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレンや、これらの芳香族ジオールの芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されてなる芳香族ジオールが挙げられる。該芳香族ジオールは、液晶ポリエステルの製造において、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような芳香族ジオールに由来する繰返し単位としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
なお、芳香族ジオールに由来する繰返し単位は、その芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されていてもよい。
前記繰返し単位(芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位、芳香族ジオールに由来する繰返し単位)が任意に有していてもよい置換基において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられ、アリール基の例としては、フェニル基が挙げられる。
次に、前記(P1)の中でも、本発明に適用するうえで特に好適な液晶ポリエステルに関し、その繰返し単位の組合せについて、上述の繰返し単位の例示をもとに詳述する。
前記液晶ポリエステルとしては、耐ハンダ性や機械的特性のバランスから、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位として、前記(A1)を有するものが好ましく、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、前記(A1)を30モル%以上有するものがより好ましい。前記(A1)を有する好適な液晶ポリエステルに関して、その繰返し単位の組合せの例としては、以下の(a)〜(h)が挙げられる。
(a):(A1)、(B1)及び(C1)の組合せ。
(b):(A1)、(B1)、(B2)及び(C1)の組合せ。
(c):(A1)、(A2)、(B1)及び(C1)の組合せ。
(d):(A1)、(A2)、(B1)、(B2)及び(C1)の組合せ。
(e):(A1)、(B1)、(B3)及び(C1)の組合せ。
(f):(A1)、(B1)、(B2)、(B3)及び(C1)の組合せ。
(g):(A1)、(B1)、(C1)及び(C3)の組合せ。
(h):(A1)、(B1)、(B2)、(C1)及び(C3)の組合せ。
(b):(A1)、(B1)、(B2)及び(C1)の組合せ。
(c):(A1)、(A2)、(B1)及び(C1)の組合せ。
(d):(A1)、(A2)、(B1)、(B2)及び(C1)の組合せ。
(e):(A1)、(B1)、(B3)及び(C1)の組合せ。
(f):(A1)、(B1)、(B2)、(B3)及び(C1)の組合せ。
(g):(A1)、(B1)、(C1)及び(C3)の組合せ。
(h):(A1)、(B1)、(B2)、(C1)及び(C3)の組合せ。
これらの例示の中でも、(a)、(b)が好ましく、(b)がより好ましい。そして、(b)としては、(A1)に対する(C1)のモル比率(モル比率(C1)/(A1))が0.2〜1.0であり、(C1)に対する(B1)と(B2)との合計のモル比率(モル比率((B1)+(B2))/(C1))が0.9〜1.1であり、(B1)に対する(B2)のモル比率(モル比率(B2)/(B1))が0より大きく1以下であるものが好ましい。このような繰返し単位の組合せ及びモル比率を満たし、これに対応する原料モノマーのイミダゾール化合物の存在下での重合により得られた液晶ポリエステルは、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性をより良好とすることに加え、得られる成形体の耐衝撃性がより良好となる。
前記液晶ポリエステルは、繰返し単位の組合せ(a)、(b)を有するものとして、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位、テレフタル酸に由来する繰返し単位及び/又はイソフタル酸に由来する繰返し単位、並びに4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位を有するものが好ましい。
上述のように、液晶ポリエステルは、その原料モノマーとして芳香族ヒドロキシカルボン酸を必須としたものが好ましいが、このような液晶ポリエステルとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールを含む原料モノマーを準備する準備工程と、芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基及び芳香族ジオールのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化して、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物及び芳香族ジオールのアシル化物を得るアシル化工程と、イミダゾール化合物の存在下で、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオールのアシル化物とを、エステル交換させて、液晶ポリエステルを得る重合工程と、を有する製造方法で得られたものが好ましい。そして、イミダゾール化合物は、該重合工程の反応系中に存在していればよいが、該アシル化工程もイミダゾール化合物の存在下で行われてもよく、該アシル化工程及び該重合工程がともに、イミダゾール化合物の存在下で行われることが好ましい。
まず、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基及び芳香族ジオールのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化して、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物及び芳香族ジオールのアシル化物を得るアシル化工程について説明する。
前記脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2−エチルヘキサン酸、無水モノクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、前記脂肪酸無水物は、価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
前記脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2−エチルヘキサン酸、無水モノクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、前記脂肪酸無水物は、価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
脂肪酸無水物の使用量は、芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基及び芳香族ジオールのフェノール性水酸基の合計に対して、1.0〜1.2モル倍であることが好ましく、1.0〜1.15モル倍であることがより好ましく、1.03〜1.12モル倍であることがさらに好ましく、1.05〜1.1モル倍であることが特に好ましい。該脂肪酸無水物の使用量があまり少ないと、アシル化反応が進行しにくくなって、後の重合工程において未反応の芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジオールが残存しやすくなり、結果として重合が効率よく進行しないことがある。また、このようにアシル化反応が十分進行していないと、アシル化されていない原料モノマー(芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジオール)が昇華して、重合時に使用する分留器が閉塞する場合がある。一方、該脂肪酸無水物の使用量があまり多いと、得られる液晶ポリエステルが着色しやすくなる。
アシル化の反応条件は、反応温度が130〜180℃であり、反応時間が30分〜20時間であることが好ましく、反応温度が140〜160℃であり、反応時間が1〜5時間であることがより好ましい。
次に、イミダゾール化合物の存在下で、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオールのアシル化物とを、エステル交換させて、液晶ポリエステルを得る重合工程、すなわち、前記アシル化工程によって得られた芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のアシル基及び/又は前記アシル化工程によって得られた芳香族ジオールのアシル化物のアシル基と、前記アシル化工程によって得られた芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基から水酸基を除いてなる残基に相当するアシル基及び/又は芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基から水酸基を除いてなる残基に相当するアシル基と、を交換させて、液晶ポリエステルを得る重合工程、について説明する。なお、この芳香族ジカルボン酸は、前記アシル化工程の際に、その反応系中に存在させていてもよく、換言すれば、アシル化工程において、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールを同一の反応系中に存在させていてもよい。これは、芳香族ジカルボン酸にあるカルボキシル基及び任意に置換されていてもよい置換基は、通常、脂肪酸無水物によって影響を受けないためである。よって、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールを同一の反応器に仕込んで、脂肪酸無水物によってアシル化反応を実施する形式でもよく、先に、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールを反応器に仕込んで、脂肪酸無水物によってアシル化した後に、芳香族ジカルボン酸を反応器に仕込む形式でもよい。操作上の簡便さから前者の形式がより好ましい。
前記重合工程は、その反応温度を昇温しながら行うことが好ましく、具体的には、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
さらに、前記重合工程における前記エステル交換反応では、その平衡をずらすために、副生する脂肪酸及び未反応の脂肪酸無水物を蒸発させ、分留器等を通じて系外へ留去させることが好ましい。また、留出する脂肪酸の一部を還流させて反応器に戻すことにより、脂肪酸と同伴して蒸発又は昇華する原料モノマーの一部を凝縮又は逆昇華させ、反応器に戻すこともできる。
上述のように、液晶ポリエステルは、前記重合工程、好ましくは前記アシル化工程及び重合工程において、イミダゾール化合物を存在させることにより、好適に得られる。そして、このイミダゾール化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−4−エチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−エチル−2−エチルイミダゾール、1−エチル−2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、4−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−[2−(2−シアノエチルアミノ)エチル]−2−メチルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、1−(2−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−ウンデシル−1−イミダゾリル)エチル]−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−エチル−4−メチル−1−イミダゾリル)エチル]−S−トリアジン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、N,N’−ビス[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、N,N’−ビス[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]アジポアミド、2,4−ジアルキルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、1,3−ジベンジル−2−メチルイミダゾリウムクロライド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ビス(2−シアノエトキシメチル)イミダゾール、2−メチルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−アルキル−4−フォルミルイミダゾール、2,4−ジアルキル−5−フォルミルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、イミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−メチルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−ウンデシルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−ヘプタデシルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、2−フェニルイミダゾール−4−ジチオカルボン酸、4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、4−ジメチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−フェニル−4−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−[2−(2−シアノエチル)アミノエチル]−2−メチルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、N,N’−ビス[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]アジポイルジアミド、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾールが挙げられる。
イミダゾール化合物のうち、前記アシル化工程におけるアシル化反応や前記重合工程におけるエステル交換反応の反応性をより向上させることができる点と、液晶ポリエステル組成物を用いて得られた成形体(例えば、電子部品)の色調をより良好にする点から、好適なものは、前記一般式(1)において、R1が炭素数1〜4のアルキル基であり、R2〜R4がそれぞれ水素原子であるイミダゾール誘導体であり、このイミダゾール誘導体の中でも入手が容易であることから、1−メチルイミダゾール及び/又は1−エチルイミダゾールが特に好ましい。
イミダゾール化合物の使用量は、前記液晶ポリエステルの原料モノマーである芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールの合計100質量部に対して、0.005〜1質量部であることが好ましく、より良好な色調の成形体が得られる点から0.05〜0.5質量部であることがより好ましい。この使用量があまり多いと、前記アシル化反応や前記エステル交換反応が制御しにくくなる。一方、この使用量があまり少ないと、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が低下し易くなり、得られる成形体(例えば、電子部品)の機械強度も低下し易くなる。なお、イミダゾール化合物は、アシル化工程の前に原料モノマーとともに仕込んでもよく、アシル化工程はイミダゾール化合物を存在させることなく行い、アシル化工程後、重合工程の前にイミダゾール化合物を仕込んでもよい。
前記エステル交換反応をさらに促進して重合速度を増加させる目的で、本発明の目的を損なわない範囲で、他の重合触媒をさらに添加してもよい。前記他の重合触媒としては、例えば、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;シュウ酸第一スズ、酢酸第一スズ、ジアルキルスズ酸化物、ジアリールスズ酸化物等のスズ化合物;二酸化チタン、チタンアルコキシド、アルコキシチタンケイ酸類等のチタン化合物;三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸第一鉄等の有機酸の金属塩;トリフッ化ホウ素、塩化アルミニウム等のルイス酸;アミン;アミド(アミド結合を有する化合物);塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。ただし、液晶ポリエステル組成物をコネクター等の電子部品の製造に使用する場合、液晶ポリエステルは金属不純物が少ない方が好ましいので、金属を含む重合触媒、特に遊離金属イオンが生成し得る重合触媒は、その使用量を極めて少なくするか、実質的に使用しないことが好ましい。
前記アシル化工程及び重合工程は、回分式反応装置により行うこともできるし、連続的反応装置を使用して、アシル化工程と重合工程とを別々の反応器中で行ってもよい。
液晶ポリエステルの流動開始温度は、260〜400℃であることが好ましい。流動開始温度がこのような範囲である場合、液晶ポリエステル組成物を用いて得られた成形体(例えば、電子部品)の耐ハンダ性がより良好となる。また、成形体を得るための溶融成形時に、液晶ポリエステルの熱劣化がより抑制される。
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
好適な流動開始温度の液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位を適宜最適化することで容易に得られる。すなわち、液晶ポリエステルの分子鎖の直線性を向上させるようにすると、その流動開始温度が上がる傾向がある。例えば、前記芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位のうち、(B1)は液晶ポリエステル分子鎖の直線性を向上させ、(B2)は液晶ポリエステル分子鎖の屈曲性を向上させる(直線性を低下させる)ので、この(B1)と(B2)の共重合比を調節することにより、所望の流動開始温度の液晶ポリエステルが得られる。
また、液晶ポリエステルの分子量を大きくすると、一般に流動開始温度は上がる傾向がある。よって、分子量を調節することにより、所望の流動開始温度の液晶ポリエステルが得られる。液晶ポリエステルの分子量を大きくするためには、上述のアシル化工程及び重合工程を含む溶融重合を行った後に、固相重合を行うことが好ましい。
固相重合では、まず、前記溶融重合により得られた液晶ポリエステル(プレポリマー)を取り出して冷却し、冷却後の液晶ポリエステルを粉砕によって粉体状にしたり、粉体状にした液晶ポリエステルを造粒してペレット状とすることが好ましい。そして、得られた固体状態(粉体状又はペレット状)の液晶ポリエステルをさらに加熱処理することで、液晶ポリエステルを高分子量化する。このように固体状態の液晶ポリエステルをさらに加熱することで高分子量化する方法を固相重合という。
固相重合時の加熱処理は、不活性ガス(例えば、窒素ガス等)雰囲気下又は減圧下で行うことが好ましく、加熱時間は1〜20時間とすることが好ましい。また、この加熱処理に使用する装置としては、既知の乾燥機、反応機、イナートオーブン、混合機、電気炉等が挙げられる。固相重合時の条件は、溶融重合で得られた液晶ポリエステル(プレポリマー)の流動開始温度を求めてから、適宜最適化することができる。
本発明において、液晶ポリエステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して(複数種の液晶ポリエステルを混合してなる液晶ポリエステル混合物を用いて)もよい。
複数種の液晶ポリエステルを併用する場合、少なくも1種の液晶ポリエステルは、芳香族ヒドロキシカルボン酸を含む原料モノマーをイミダゾール化合物の存在下で重合させて得られたものであることが好ましく、複数種の液晶ポリエステルの全てが、芳香族ヒドロキシカルボン酸を含む原料モノマーをイミダゾール化合物の存在下で重合させて得られたものであることがより好ましい。
液晶ポリエステル組成物の溶融流動性をより一層良好にして、得られる成形体、特に長尺状コネクターの反りを十分抑制できる点から、互いに異なる流動開始温度の液晶ポリエステルを複数種用いることが好ましい。このような流動開始温度が異なる液晶ポリエステルの組合せとしては、最も流動開始温度が高い第1の液晶ポリエステルの流動開始温度が300〜400℃であり、最も流動開始温度が低い第2の液晶ポリエステルの流動開始温度が260〜350℃である組合せが好ましい。
そして、前記第1の液晶ポリエステルの流動開始温度は310〜360℃であることが好ましく、前記第2の液晶ポリエステルの流動開始温度は270〜320℃であることが好ましい。
また、液晶ポリエステル組成物において、第1の液晶ポリエステル100質量部に対して、第2の液晶ポリエステルの含有量は10〜150質量部であることが好ましく、60〜100質量部であることがより好ましい。
そして、前記第1の液晶ポリエステルの流動開始温度は310〜360℃であることが好ましく、前記第2の液晶ポリエステルの流動開始温度は270〜320℃であることが好ましい。
また、液晶ポリエステル組成物において、第1の液晶ポリエステル100質量部に対して、第2の液晶ポリエステルの含有量は10〜150質量部であることが好ましく、60〜100質量部であることがより好ましい。
第1の液晶ポリエステルの流動開始温度があまり低いと、得られる成形体の耐ハンダ性が不十分となることがあり、あまり高いと、液晶ポリエステル組成物を溶融成形する際、その効率が低下する傾向にあり、液晶ポリエステル組成物の成形加工が困難となることがある。一方、第2の液晶ポリエステルの流動開始温度があまり低いと、得られる成形体の耐ハンダ性が不十分となることがあり、あまり高いと、やはり溶融成形時の成形加工が比較的困難となることがある。
第1の液晶ポリエステルの流動開始温度から、第2の液晶ポリエステルの流動開始温度を引いた温度差([第1の液晶ポリエステルの流動開始温度(℃)]−[第2の液晶ポリエステルの流動開始温度(℃)])は、20〜60℃であることが好ましい。この値(温度差)があまり小さいと、液晶ポリエステル混合物自体の溶融流動性が低下し易くなり、結果として液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が不十分となることがある。一方、この値(温度差)があまり大きいと、成形加工時に、第2の液晶ポリエステルが劣化しやすくなる。
第1の液晶ポリエステルを構成する繰返し単位の組合せは、上述の(a)、(b)が好ましく、(b)がより好ましい。そして、(b)としては、(A1)に対する(C1)のモル比率(モル比率(C1)/(A1))が0.2〜1.0であり、(C1)に対する(B1)と(B2)との合計のモル比率(モル比率((B1)+(B2))/(C1))が0.9〜1.1であり、(B1)に対する(B2)のモル比率(モル比率(B2)/(B1))が0より大きく1以下であるものが好ましい。このような繰返し単位の組合せ及びモル比率を満たし、これに対応する原料モノマーのイミダゾール化合物の存在下での重合により得られた液晶ポリエステルは、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性をより良好とすることに加え、得られる成形体の耐ハンダ性及び耐衝撃性がより良好となる。
一方、第2の液晶ポリエステルを構成する繰返し単位の組合せも、上述の(a)、(b)が好ましく、(b)がより好ましい。そして、(b)としては、(A1)に対する(C1)のモル比率(モル比率(C1)/(A1))が0.2〜1.0であり、(C1)に対する(B1)と(B2)との合計のモル比率(モル比率((B1)+(B2))/(C1))が0.9〜1.1であり、(B1)に対する(B2)のモル比率(モル比率(B2)/(B1))が0より大きく1以下であるものが好ましい。このような第2の液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位の種類が、上述の好適な第1の液晶ポリエステルと同じであるので、このような2種の液晶ポリエステルを併用(混合)したときに、その相溶性が極めて良好になる傾向がある。これら第1の液晶ポリエステル及び第2の液晶ポリエステルを構成する繰返し単位の種類及びモル比率は、上述の流動開始温度を満たすようにして適宜選択する。
また、上述のように液晶ポリエステルの分子鎖の直線性を調節することで互いに異なる流動開始温度の液晶ポリエステルを各々製造できる点で、(B1)及び(B2)の繰返し単位の共重合比を最適化することが好ましい。具体的には、第1の液晶ポリエステルのモル比率(B2)/(B1)をαとし、第2の液晶ポリエステルのモル比率(B2)/(B1)をβとしたとき、後者に対する前者の比率(α/β)を0.1〜0.6とすることが好ましく、0.3〜0.6とすることがより好ましい。
前記液晶ポリエステル混合物は、第1の液晶ポリエステル及び第2の液晶ポリエステルを含んでいればよく、その他の液晶ポリエステルを含んでいてもよいが、実質的に第1の液晶ポリエステル及び第2の液晶ポリエステルからなるものが好適である。
本発明において、板状充填材は、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上のものである。1%重量減少温度が550℃未満であると、液晶ポリエステル組成物から得られた成形体は、耐ブリスター性が不十分となる。
前記板状充填材は、無機充填材であることが好ましく、その例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、好ましくはタルク、マイカであり、より好ましくはタルクである。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
前記板状充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記板状充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶ポリエステル組成物の前記板状充填材の含有量は、液晶ポリエステル(液晶ポリエステルを複数種用いる場合には、これらの総量)100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは15〜100質量部、さらに好ましくは20〜70質量部である。板状充填材の含有量が少な過ぎると、成形体に反りが生じ易くなり、多過ぎると、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が不十分になる。
液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステル及び板状充填材以外に必要に応じて、さらに前記板状充填材以外の充填材、添加剤、前記液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでいてもよい。
そして、液晶ポリエステル組成物の、前記液晶ポリエステル及び板状充填材の総含有量は、液晶ポリエステル組成物100質量部中、好ましくは80質量部以上、より好ましくは90質量部以上であり、100質量部であってもよい。
そして、液晶ポリエステル組成物の、前記液晶ポリエステル及び板状充填材の総含有量は、液晶ポリエステル組成物100質量部中、好ましくは80質量部以上、より好ましくは90質量部以上であり、100質量部であってもよい。
前記板状充填材以外の充填材の例としては、繊維状充填材、粒状充填材が挙げられ、繊維状充填材が好ましい。
前記繊維状充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維が挙げられ、ガラス繊維が好ましい。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維が挙げられ、ガラス繊維が好ましい。
繊維状充填材の数平均繊維径は、好ましくは5〜20μmであり、繊維状充填材の数平均繊維長は、好ましくは100〜500μmであり、繊維状充填材の数平均アスペクト比(数平均繊維長/数平均繊維径)は、好ましくは10〜100である。繊維状充填材の数平均繊維径及び数平均繊維長は、電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
液晶ポリエステル組成物の繊維状充填材の含有量は、液晶ポリエステル(液晶ポリエステルを複数種用いる場合には、これらの総量)100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
前記粒状充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム等の球状又はその他の形状の粒状充填材が挙げられる。
液晶ポリエステル組成物の粒状充填材の含有量は、液晶ポリエステル組成物100質量部中、好ましくは0〜10質量部である。
液晶ポリエステル組成物の粒状充填材の含有量は、液晶ポリエステル組成物100質量部中、好ましくは0〜10質量部である。
前記添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の光安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤、顔料、染料が挙げられる。
液晶ポリエステル組成物の添加剤の含有量は、液晶ポリエステル組成物100質量部中、好ましくは0〜3質量部である。
液晶ポリエステル組成物の添加剤の含有量は、液晶ポリエステル組成物100質量部中、好ましくは0〜3質量部である。
前記液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
液晶ポリエステル組成物の前記樹脂の含有量は、液晶ポリエステル(液晶ポリエステルを複数種用いる場合には、これらの総量)100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
液晶ポリエステル組成物の前記樹脂の含有量は、液晶ポリエステル(液晶ポリエステルを複数種用いる場合には、これらの総量)100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル、板状充填材、及び必要に応じて用いられる他の成分(以下、まとめて「原料成分」という。)を配合することで製造できるが、押出機を用いて前記原料成分を溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより製造することが好ましい。
前記押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリューと、シリンダーに1箇所以上設けられた供給口と、を有するものが好ましく、さらにシリンダーに1箇所以上ベント部が設けられたものがより好ましい。
前記押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリューと、シリンダーに1箇所以上設けられた供給口と、を有するものが好ましく、さらにシリンダーに1箇所以上ベント部が設けられたものがより好ましい。
<成形体>
本発明に係る成形体は、上述の液晶ポリエステル組成物を用いてなることを特徴とし、公知の成形法で液晶ポリエステル組成物を成形することで製造できる。
前記成形体は、耐ブリスター性に優れ、外観等が極めて良好であり、高い寸法精度を有する。
本発明に係る成形体は、上述の液晶ポリエステル組成物を用いてなることを特徴とし、公知の成形法で液晶ポリエステル組成物を成形することで製造できる。
前記成形体は、耐ブリスター性に優れ、外観等が極めて良好であり、高い寸法精度を有する。
液晶ポリエステル組成物の成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法、プレス成形法が挙げられ、射出成形法が好ましい。
前記成形体は、各種製品又は部品として用いるのに好適であり、その例としては、光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度、及びタルクの1%重量減少温度は、以下の方法で測定した。
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
フローテスター(島津製作所社製「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
(タルクの1%重量減少温度の測定)
熱分析装置「DPG−60」(島津製作所社製)を用いて、空気中で10℃/分の昇温速度で測定した。
熱分析装置「DPG−60」(島津製作所社製)を用いて、空気中で10℃/分の昇温速度で測定した。
<液晶ポリエステルの製造>
[製造例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内を窒素ガスで十分に置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で撹拌しながら、30分かけて室温から150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して30分間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて150℃から320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出した。
次いで、このようにして得られた内容物(固形分)を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、窒素ガス雰囲気下で、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、さらに250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、さらに295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。
次いで、これを冷却することにより、粉末状の液晶ポリエステル(LCP1)を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は327℃であった。
[製造例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内を窒素ガスで十分に置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で撹拌しながら、30分かけて室温から150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して30分間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて150℃から320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出した。
次いで、このようにして得られた内容物(固形分)を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、窒素ガス雰囲気下で、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、さらに250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、さらに295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。
次いで、これを冷却することにより、粉末状の液晶ポリエステル(LCP1)を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は327℃であった。
[製造例2]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内を窒素ガスで十分に置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で撹拌しながら、30分かけて室温から150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して30分間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて150℃から320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出した。
次いで、このようにして得られた内容物(固形分)を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、窒素ガス雰囲気下で、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、さらに220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、さらに240℃で10時間保持することにより、固相重合を行った。
次いで、これを冷却することにより、粉末状の液晶ポリエステル(LCP2)を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は286℃であった。
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内を窒素ガスで十分に置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で撹拌しながら、30分かけて室温から150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して30分間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて150℃から320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出した。
次いで、このようにして得られた内容物(固形分)を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、窒素ガス雰囲気下で、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、さらに220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、さらに240℃で10時間保持することにより、固相重合を行った。
次いで、これを冷却することにより、粉末状の液晶ポリエステル(LCP2)を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は286℃であった。
<液晶ポリエステル組成物及び成形体の製造>
[実施例1〜2、比較例1〜2]
(液晶ポリエステル組成物の製造)
表1に示す比率で、LCP1、LCP2及びタルクを配合し、2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度を340℃として造粒することにより、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。なお、表1中、「タルク1」、「タルク2」、「タルク3」はそれぞれ以下のものである。また、「LCP」は液晶ポリエステルを意味する。
タルク1:林化成社製「GHL−10」
タルク2:林化成社製「MW#5000A」
タルク3:林化成社製「PK−C」
[実施例1〜2、比較例1〜2]
(液晶ポリエステル組成物の製造)
表1に示す比率で、LCP1、LCP2及びタルクを配合し、2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度を340℃として造粒することにより、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。なお、表1中、「タルク1」、「タルク2」、「タルク3」はそれぞれ以下のものである。また、「LCP」は液晶ポリエステルを意味する。
タルク1:林化成社製「GHL−10」
タルク2:林化成社製「MW#5000A」
タルク3:林化成社製「PK−C」
(成形体の製造)
射出成形機(日精樹脂工業社製「PS40E1ASE」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度60%で、得られた液晶ポリエステル組成物をJIS K7113(1/2)号ダンベル試験片(厚さ1.2mm)に成形した。
射出成形機(日精樹脂工業社製「PS40E1ASE」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度60%で、得られた液晶ポリエステル組成物をJIS K7113(1/2)号ダンベル試験片(厚さ1.2mm)に成形した。
<成形体の評価>
得られた試験片10本を、280℃に加熱したハンダ浴に60秒間浸漬して、取り出し後、試験片表面におけるブリスター(膨れ)の発生の有無を観察して、ブリスターが発生した試験片の本数を確認し、ブリスターの発生確率(([ブリスターが発生した試験片の本数]/10)×100)を算出した。結果を表1に示す。
得られた試験片10本を、280℃に加熱したハンダ浴に60秒間浸漬して、取り出し後、試験片表面におけるブリスター(膨れ)の発生の有無を観察して、ブリスターが発生した試験片の本数を確認し、ブリスターの発生確率(([ブリスターが発生した試験片の本数]/10)×100)を算出した。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1及び2の成形体は、ブリスターが発生せず、耐ブリスター性に優れていた。これに対して、実施例1からタルクの種類を変えた比較例1及び2の成形体は、耐ブリスター性が劣っていた。
本発明は、各種製品又は部品等の成形体の製造に利用可能であり、特に、コネクター、リレー部品等の、複雑な形状を有し、高い寸法精度が要求される電子部品の製造への利用に好適である。
Claims (12)
- 液晶ポリエステルと、熱重量測定法による1%重量減少温度が550℃以上の板状充填材と、を含むことを特徴とする液晶ポリエステル組成物。
- 前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位を有し、原料モノマーをイミダゾール化合物の存在下で重合させて得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記液晶ポリエステルが、
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールを含む原料モノマーを準備する準備工程と、
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基及び前記芳香族ジオールのフェノール性水酸基を、脂肪酸無水物によりアシル化して、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物及び前記芳香族ジオールのアシル化物を得るアシル化工程と、
前記イミダゾール化合物の存在下で、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物と、前記芳香族ジカルボン酸と、前記芳香族ジオールのアシル化物と、をエステル交換させて、液晶ポリエステルを得る重合工程と、
を有する製造方法で得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。 - 前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位、テレフタル酸に由来する繰返し単位及び/又はイソフタル酸に由来する繰返し単位、並びに4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記液晶ポリエステルの流動開始温度が260〜400℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記液晶ポリエステルを複数種含み、そのうち、最も流動開始温度が高い第1の液晶ポリエステルの流動開始温度が300〜400℃であり、最も流動開始温度が低い第2の液晶ポリエステルの流動開始温度が260〜350℃であり、前記第1の液晶ポリエステル100質量部に対して、前記第2の液晶ポリエステルを10〜150質量部含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記第1の液晶ポリエステルの流動開始温度から、前記第2の液晶ポリエステルの流動開始温度を引いた温度差が、20〜60℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記液晶ポリエステルの総量100質量部に対して、前記板状充填材を15〜100質量部含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記板状充填剤がタルクであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
- さらに繊維状充填材を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
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