JP7203667B2 - コネクター - Google Patents

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本発明は、液晶ポリエステル成形体及びコネクターに関する。
液晶ポリエステルは、溶融流動性に優れ、耐熱性、強度、剛性が高いことから、電気電子部品を製造するための射出成形材料として用いられている。液晶ポリエステルは、このような特性を生かし、電気・電子部品、機械部品などに採用され、用途も拡大されつつある。中でも、高流動性を必要とするコネクターやリレー、ボビン等の電気・電子部品に好適に用いられている。
一方、液晶ポリエステルは、成形時にその分子鎖が流動方向に配向し易いため、成形体に収縮もしくは膨張、又は機械物性の異方性が生じ易いという問題点がある。
このような問題点に対し、異なる結晶構造等を有する2種類の液晶性ポリエステルを混合した液晶性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。この液晶性樹脂組成物を用いることで、成形体の異方性、ウェルド強度の改善が図られる。
特開2010-174114号公報
ところで、近年、電気電子製品の小型化・軽薄化がますます進み、それに用いられるコネクター等の電気・電子部品では、曲げ強度等の機械的性質の更なる向上が求められる。
しかしながら、上述のような従来の液晶性樹脂組成物を用いた成形体においては、製品を構成する部材の強度、特に厚さの薄い超薄肉部(ここでは、0.10mm以下の製品厚さ)の曲げ強度に対する要求がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、製品を構成する部材の超薄肉部の曲げ強度がより高められた液晶ポリエステル成形体、及びこれを利用したコネクターを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、液晶ポリエステル成形体において、高分解能で厚さ方向における局所的な領域の情報が得られる手法、すなわち、大型放射光施設を利用したX線散乱法を採用することにより、成形体中心部の結晶子サイズと、成形体の曲げ強度とが強く相関していることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
本発明の一態様は、液晶ポリエステルの成形体であって、下記[結晶子サイズの測定方法]により求まる結晶子サイズから算出される成形体中心部の結晶子サイズが、120×10-10m以上であることを特徴とする、液晶ポリエステル成形体である。
[結晶子サイズの測定方法]
液晶ポリエステル成形体の結晶子サイズは、波長1×10-10mのX線を用いた広角X線回折法によって測定されたX線回折スペクトルにおける110面の回折ピークに基づいて、下式(1)で表されるScherrerの式より求まる。
D=K・λ/βcosθ ・・・(1)
式中、Dは結晶子サイズであり、λは測定X線波長であり、βは半値幅(ラジアン)であり、θは回折角であり、KはScherrer定数(0.94)である。
本発明の一態様の液晶ポリエステル成形体においては、さらに、前記[結晶子サイズの測定方法]により求まる結晶子サイズから算出される成形体全体の平均結晶子サイズが、100×10-10m以上であるものとしてもよい。
本発明の一態様の液晶ポリエステル成形体においては、前記液晶ポリエステルが、下式(2)で表される繰り返し単位(u1)と、下式(3)で表される繰り返し単位(u2)と、下式(4)で表される繰り返し単位(u3)とを有し、前記の繰り返し単位(u1)~(u3)のうち、2,6-ナフチレン基を含む繰り返し単位の割合が、前記液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計の割合に対して、40モル%以上であるものとしてもよい。
-O-Ar-CO- ・・・(2)
-CO-Ar-CO- ・・・(3)
-X-Ar-Y- ・・・(4)
式中、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。但し、これらのフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基が有する水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(-NH-)を表す。
本発明の一態様の液晶ポリエステル成形体においては、少なくとも成形体の一辺の長さが0.1mmt以下である液晶ポリエステルの成形体であって、5mm×10mm×0.1mmtの成形体の0.1mmtの方向において、前記[結晶子サイズの測定方法]により求まる結晶子サイズから算出される成形体中心部の結晶子サイズが、120×10-10m以上180×10-10m以下であるものとしてもよい。
また、本発明の一態様は、前記液晶ポリエステル成形体からなることを特徴とする、コネクターである。
本発明の一態様によれば、製品を構成する部材の超薄肉部の曲げ強度がより高められた液晶ポリエステル成形体、及びこれを利用したコネクターを提供することができる。
液晶ポリエステル成形体を製造する際に用いた金型(薄肉流動長測定用の金型)を示す斜視図である。 試験例3、試験例5及び試験例6の各液晶ポリエステル成形体に関する、成形体の最表面からの距離と結晶子サイズとの関係を示す図である。 試験例3及び試験例4の各液晶ポリエステル成形体に関する、成形体の最表面からの距離と結晶子サイズとの関係を示す図である。 試験例1及び試験例5の各液晶ポリエステル成形体に関する、成形体の最表面からの距離と結晶子サイズとの関係を示す図である。
(液晶ポリエステル成形体)
本実施形態の液晶ポリエステル成形体は、後述の[結晶子サイズの測定方法]により求まる結晶子サイズから算出される成形体中心部の結晶子サイズが、120×10-10m以上である。
本実施形態の液晶ポリエステル成形体について、成形体中心部の結晶子サイズは、120×10-10m以上であり、130×10-10m以上が好ましく、140×10-10m以上がより好ましい。
また、成形体中心部の結晶子サイズは、上限値として220×10-10m以下であることが好ましく、200×10-10m以下がより好ましく、180×10-10m以下がさらに好ましく、160×10-10m以下が特に好ましい。この成形体中心部の結晶子サイズの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
成形体中心部の結晶子サイズが、前記範囲の下限値以上であれば、部材の超薄肉部の曲げ強度がより高められた液晶ポリエステル成形体が得られる。一方、成形体中心部の結晶子サイズが、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、衝撃に対する強度がより高められた液晶ポリエステル成形体が得られやすくなる。
本実施形態の液晶ポリエステル成形体については、さらに、前記[結晶子サイズの測定方法]により求まる結晶子サイズから算出される成形体全体の平均結晶子サイズが、100×10-10m以上であることが好ましく、110×10-10m以上がより好ましく、120×10-10m以上がさらに好ましい。
また、成形体全体の平均結晶子サイズが、上限値として220×10-10m以下であることが好ましく、200×10-10m以下がより好ましく、180×10-10m以下がさらに好ましく、160×10-10m以下が特に好ましい。この成形体全体の平均結晶子サイズの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
成形体全体の平均結晶子サイズが、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、部材の超薄肉部の曲げ強度がより高められた液晶ポリエステル成形体が得られやすくなる。一方、成形体全体の平均結晶子サイズが、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、衝撃に対する強度がより高められた液晶ポリエステル成形体が得られやすくなる。
[結晶子サイズの測定方法]
液晶ポリエステル成形体の結晶子サイズは、波長1×10-10mのX線を用いた広角X線回折法によって測定されたX線回折スペクトルにおける110面の回折ピークに基づいて、下式(1)で表されるScherrerの式より求まる。
D=K・λ/βcosθ ・・・(1)
式中、Dは結晶子サイズであり、λは測定X線波長であり、βは半値幅(ラジアン)であり、θは回折角であり、KはScherrer定数(0.94)である。
尚、上式(1)により、結晶子サイズを決定することは従来から使用されている手法である(例えば「X線構造解析-原子の配列を決める-」2002年4月30日第3版発行、早稲田嘉夫、松原栄一郎著、参照)。
本実施形態においては、広角X線回折法、好ましくは、大型放射光施設(SPring-8)のビームライン(ビームサイズ約1μm)を利用したX線散乱法を用いて、下記の手順(1)~(5)を行うことにより結晶子サイズを求める。
手順(1):まず、試料である成形体に対し、波長1×10-10mのX線を、当該成形体の厚さ方向に2μm間隔で連続的に照射してX線回折測定を行う。成形体にX線が入射した端部である開始点および終了点は、液晶ポリエステル由来の110面の回折ピークが出現した点(開始点)および消失した点(終了点)とそれぞれ定義する。成形体中心部とは、開始点と終了点との中点の位置と定義する。
手順(2):液晶ポリエステル由来の110面の回折ピークを決定する。
手順(3):決定した110面の回折ピークの半値幅(β)を求める。
手順(4):Scherrerの式を用いて結晶子サイズを求める。
手順(5):成形体にX線が入射した開始点から終了点の全測定データに対し、手順(3)及び手順(4)により結晶子サイズを算出する。
液晶ポリエステルにおける「成形体中心部の結晶子サイズ」は、上記手順により得られた、成形体の厚さ方向の中心の結晶子サイズの値とする。
液晶ポリエステルにおける「成形体全体の平均結晶子サイズ」は、上記手順により得られた、成形体の厚さ方向全体の結晶子サイズの平均値とする。
上記[結晶子サイズの測定方法]において、成形体の形状は任意でよく、X線を照射する位置は、成形体の厚さが最も薄くなる方向を適宜選択すればよい。
本実施形態の液晶ポリエステル成形体においては、例えば、液晶ポリエステルの種類、成形体の製造方法を選択することによって、成形体中心部の結晶子サイズ、成形体全体の平均結晶子サイズを制御することができる。
液晶ポリエステルの種類による制御については、液晶ポリエステルを構成する繰り返し単位の種類又はその割合などを適宜選択すればよい。
<液晶ポリエステル>
本実施形態の成形体に用いられる液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示すポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものが好ましい。
本実施形態における液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。本実施形態における液晶ポリエステルは、なかでも、原料モノマーとして芳香族化合物のみを重合している全芳香族液晶ポリエステルが好ましい。
本実施形態の成形体に用いられる液晶ポリエステルとしては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを縮重合(重縮合)させてなる重合体;複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなる重合体;芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなる重合体; ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなる重合体が挙げられる。
なかでも、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを縮重合(重縮合)させてなる重合体が好ましい。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、互いに独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能なエステル形成誘導体であってもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のような、カルボキシ基を有する化合物の重合可能なエステル形成誘導体の例としては、エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物が挙げられる。
エステル形成誘導体の例としてのエステルは、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるものが挙げられる。
前記の酸ハロゲン化物としては、カルボキシ基をハロホルミル基に変換してなるものが挙げられる。
前記の酸無水物としては、カルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるものが挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのような、ヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのような、アミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
例示した重合可能なエステル形成誘導体の中でも、液晶ポリエステルの原料モノマーとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジオールをアシル化して得られるアシル化物が好ましい。
本実施形態に用いられる液晶ポリエステルは、下式(2)で表される繰り返し単位(u1)と、下式(3)で表される繰り返し単位(u2)と、下式(4)で表される繰り返し単位(u3)とを有する樹脂が好ましい。
-O-Ar-CO- ・・・(2)
-CO-Ar-CO- ・・・(3)
-X-Ar-Y- ・・・(4)
式中、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。但し、これらのフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基が有する水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(-NH-)を表す。
水素原子と置換可能な前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
水素原子と置換可能な前記炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、1-プロピル基、イソプロピル基、1-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-オクチル基、1-デシル基等が挙げられる。
水素原子と置換可能な前記炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、オルトトリル基、メタトリル基、パラトリル基等のような単環式芳香族基;1-ナフチル基、2-ナフチル基等のような縮環式芳香族基が挙げられる。
Ar、Ar又はArで表されるフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基において、1個以上の水素原子が、上述した置換基で置換されている場合、当該置換基の数は、Ar、Ar又はArで表される基毎に、互いに独立に、1個又は2個であることが好ましい。また、当該置換基の数は、Ar、Ar又はArで表される基毎に、1個であることがより好ましい。
繰り返し単位(u1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位である。
尚、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4’-カルボキシジフェニルエーテル、又はこれらの芳香族ヒドロキシカルボン酸の芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されてなる芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繰り返し単位(u1)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位)、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位)が好ましい。これらの中でも、繰り返し単位(u1)としては、結晶子の成長が促進しやすくなる観点から、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位)がより好ましい。
繰り返し単位(u2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位である。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル-4,4’-ジカルボン酸、又はこれらの芳香族ジカルボン酸の芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されてなる芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繰り返し単位(u2)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(例えば、テレフタル酸に由来する繰り返し単位)、Arが1,3-フェニレン基であるもの(例えば、イソフタル酸に由来する繰り返し単位)、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰り返し単位)、Arがジフェニルエーテル-4,4’-ジイル基であるもの(例えば、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸に由来する繰り返し単位)が好ましい。これらの中でも、繰り返し単位(u2)としては、結晶子の成長が促進しやすくなる観点から、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰り返し単位)がより好ましい。
繰り返し単位(u3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰り返し単位である。
芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、4-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニルが挙げられる。
前記芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンは、液晶ポリエステルの製造において、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繰り返し単位(u3)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(例えば、ヒドロキノン、4-アミノフェノール又は1,4-フェニレンジアミンに由来する繰り返し単位)、Arが4,4’-ビフェニリレン基であるもの(例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル又は4,4’-ジアミノビフェニルに由来する繰り返し単位)が好ましい。
尚、本実施形態の液晶ポリエステルから得られる成形体が、特に良好な耐熱性や熱安定性が要求される場合には、繰り返し単位(u1)~(u3)が有する置換基の数は少ない方が好ましい。また、本実施形態の液晶ポリエステルから得られる成形体が、特に良好な耐熱性や熱安定性が要求される場合には、熱に弱い置換基(例えば、アルキル基)は有しないことが好ましい。
本実施形態において成形体の耐熱性とは、成形体の形成材料である樹脂が軟化しにくい性質をいう。本実施形態において、成形体の耐熱性は、樹脂の荷重たわみ温度を測定することにより明らかにすることができる。本実施形態における荷重たわみ温度は、ASTM D648に準拠し、1.82MPaの荷重下にて測定される。このようにして測定される樹脂の荷重たわみ温度が高いほど、成形体の耐熱性が高いといえる。
また、本実施形態において成形体の熱安定性とは、樹脂を成形加工する温度(溶融温度)で成形体を保持した際に、樹脂の分解や劣化が生じにくい性質をいう。
本実施形態に用いる好ましい液晶ポリエステルの具体例としては、例えば、下記のモノマー構成単位の組合せからなる重合体が挙げられる。
(a)2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/ハイドロキノン/2,6-ナフタレンジカルボン酸/テレフタル酸共重合体
(b)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/テレフタル酸共重合体
(c)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸共重合体
(d)2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン共重合体
(e)2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル共重合体
(f)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン共重合体
(g)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル共重合体
(h)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル共重合体
(i)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体
(j)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体
(k)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体
(l)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル共重合体
(m)2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール共重合体
(n)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール共重合体
(o)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/エチレングリコール共重合体
(p)4-ヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール共重合体
(q)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル共重合体
前記の例示の中でも、(a)、(b)、(c)、(e)が好ましく、(a)、(b)がより好ましい。
液晶ポリエステル中の繰り返し単位(u1)の含有率は、液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計量(100モル%)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは35モル%以上70モル%以下、特に好ましくは40モル%以上65モル%以下である。
液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計量は、液晶ポリエステルを構成する各繰り返し単位の質量をその各繰り返し単位の式量で割ることにより、各繰り返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値である。
液晶ポリエステル中の繰り返し単位(u1)の含有率が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、本実施形態の液晶ポリエステル成形体の曲げ強度を高められやすい。一方、繰り返し単位(u1)の含有率が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、溶融粘度を容易に低くすることができる。そのため、液晶ポリエステルの成形に必要な温度が低くなりやすい。
液晶ポリエステル中の繰り返し単位(u2)の含有率は、液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計量(100モル%)に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上35モル%以下、特に好ましくは17.5モル%以上30モル%以下である。
液晶ポリエステル中の繰り返し単位(u2)の含有率が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、本実施形態の液晶ポリエステル成形体の曲げ強度を高められやすい。一方、繰り返し単位(u2)の含有率が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、溶融粘度を容易に低くすることができる。そのため、液晶ポリエステルの成形に必要な温度が低くなりやすい。
液晶ポリエステル中の繰り返し単位(u3)の含有率は、液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計量(100モル%)に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上35モル%以下、特に好ましくは17.5モル%以上30モル%以下である。
液晶ポリエステルにおいては、繰り返し単位(u2)の含有率と繰り返し単位(u3)の含有率との割合(モル比)が、[繰り返し単位(u2)の含有率]/[繰り返し単位(u3)の含有率]で表して、好ましくは0.9/1~1/0.9、より好ましくは0.95/1~1/0.95、さらに好ましくは0.98/1~1/0.98である。
液晶ポリエステルにおいては、前記の繰り返し単位(u1)~(u3)のうち、2,6-ナフチレン基を含む繰り返し単位の割合が、前記液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計の割合に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは45モル%以上75モル%以下である。
液晶ポリエステル中の2,6-ナフチレン基を含む繰り返し単位の割合が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、本実施形態の液晶ポリエステル成形体の曲げ強度を高められやすい。一方、2,6-ナフチレン基を含む繰り返し単位の割合が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、溶融粘度を容易に低くすることができる。
なお、前記液晶ポリエステルは、繰り返し単位(u1)~(u3)を、互いに独立に、1種のみ有してもよいし、2種以上有してもよい。
また、液晶ポリエステルは、繰り返し単位(u1)~(u3)以外の繰り返し単位を1種又は2種以上有してもよいが、その含有率は、全繰り返し単位の合計量に対して、好ましく10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
液晶ポリエステル成形体の結晶子サイズに影響する因子としては、例えば以下に例示する因子(I)、因子(II)、因子(III)が推測される。
因子(I):芳香環同士のスタッキング性の点から、主骨格が1,4-フェニレン基である繰り返し単位よりも、主骨格が2,6-ナフチレン基である繰り返し単位の方が、結晶子の成長が促進しやすい。
因子(II):繰り返し単位[-O-(2,6-ナフチレン基)-CO-]と、繰り返し単位[-CO-(2,6-ナフチレン基)-CO-]とを併有する場合、後者の存在によって前者同士のスタッキングが一部阻害されやすい。
因子(III):繰り返し単位[-O-(2,6-ナフチレン基)-CO-]と、繰り返し単位[-CO-(2,6-ナフチレン基)-CO-]とを併有する場合、加熱処理(アニール)を施すことにより、後者による前者同士のスタッキング阻害が緩和されて、最安定な状態を取りやすい(すなわち、結晶子サイズが大きくなりやすい)。
液晶ポリエステルの流動開始温度は、好ましくは270℃以上、より好ましくは270~400℃、さらに好ましくは280~380℃である。流動開始温度が前記のような範囲である液晶ポリエステルを使用すると、本実施形態の液晶ポリエステル成形体の耐熱性や硬度の向上が期待できる。また、液晶ポリエステル成形体を得る際の溶融成形において、液晶ポリエステルの熱安定性が向上し、熱劣化が抑制されやすくなる。
尚、流動開始温度は、毛細管レオメーターを用い、9.8MPaの荷重下、液晶ポリエステルを4℃/分の速度で昇温しながら溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示すときの温度である。
流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(例えば、小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、95-105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
液晶ポリエステルは、例えば、これを構成する繰り返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより製造することができる。
液晶ポリエステルの製造方法:
次に、本実施形態における液晶ポリエステルの製造方法の一例について説明する。
本実施形態における液晶ポリエステルは、以下のアシル化工程および重合工程によって製造することが好ましい。
アシル化工程とは、原料のモノマーが有するフェノール性のヒドロキシ基を、脂肪酸無水物(例えば無水酢酸等)によってアシル化することにより、アシル化物を得る工程である。
重合工程では、アシル化工程で得られたアシル化物のアシル基と、芳香族ジカルボン酸および芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシ基とを、エステル交換を起こすように重合することにより、液晶ポリエステルを得るとよい。
前記のアシル化工程および重合工程は、下記一般式(b1)で表されたような複素環状有機塩基化合物の存在下で行ってもよい。
Figure 0007203667000001
上記式(b1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、アルキル基の炭素数が1~4であるシアノアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1~4であるシアノアルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、炭素数1~4のアミノアルキル基、炭素数1~4のアミノアルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、フェニルプロピル基またはフォルミル基を表している。
上記式(b1)で表される複素環状有機塩基化合物としては、Rが炭素数1~4のアルキル基であり、R~Rがそれぞれ水素原子であるイミダゾール誘導体であることが好ましい。これにより、前記アシル化工程におけるアシル化反応や、前記重合工程におけるエステル交換反応の反応性をより向上できる。また、本実施形態の液晶ポリエステル組成物を用いて得られる成形体の色調をより良好にすることができる。
かかる複素環状有機塩基化合物の中でも、入手が容易であることから、1-メチルイミダゾールと1-エチルイミダゾールとのいずれか一方または両方が特に好ましい。
また、かかる複素環状有機塩基化合物の使用量は、液晶ポリエステルの原料モノマー(すなわち、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸)の総量を100質量部としたときに、0.005~1質量部となるようにすることが好ましい。また、成形体の色調や生産性の観点からは、原料モノマー100質量部に対して0.05~0.5質量部とすることがより好ましい。
かかる複素環状有機塩基化合物は、アシル化反応およびエステル交換反応の際の一時期に存在していればよく、その添加時期は、アシル化反応開始の直前であってもよいし、アシル化反応の途中であってもよいし、アシル化反応とエステル交換反応の間であってもよい。このようにして得られる液晶ポリエステルは、溶融流動性が非常に高く、かつ、熱安定性に優れる。
脂肪酸無水物(例えば無水酢酸等)の使用量は、原料モノマーである芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の使用量を考慮して決定することができる。具体的には、これら原料モノマーに含まれるフェノール性ヒドロキシ基の合計に対して、1.0倍当量以上1.2倍当量以下とすることが好ましく、1.0倍当量以上1.15倍当量以下とすることがより好ましく、1.03倍当量以上1.12倍当量以下とすることがさらに好ましく、1.05倍当量以上1.1倍当量以下とすることが特に好ましい。
原料モノマーに含まれるフェノール性ヒドロキシ基の合計に対して、脂肪酸無水物の使用量が1.0倍当量以上であると、アシル化反応が進行しやすく、後の重合工程において未反応の原料モノマーが残存しにくく、結果として重合が効率良く進行する。また、このようにアシル化反応が十分に進行すると、アシル化されていない原料モノマーが昇華して、重合時に使用する分留器が閉塞する可能性が少ない。一方、前記脂肪酸無水物の使用量が1.2倍当量以下であると、得られる液晶ポリエステルが着色しにくい。
上述のアシル化工程におけるアシル化反応は、130~180℃の温度範囲で30分から20時間行うことが好ましく、140~160℃で1~5時間行うことがより好ましい。
上述の重合工程で使用する芳香族ジカルボン酸は、アシル化工程の際に反応系中に存在させておいてもよい。すなわち、アシル化工程において、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を、同一の反応系中に存在させておいてもよい。これは、芳香族ジカルボン酸にあるカルボキシ基および任意に置換されてもよい置換基は、いずれも、脂肪酸無水物によって何ら影響を受けないからである。
従って、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を反応器に仕込んだ後でアシル化工程および重合工程を順次行う方法でもよいし、芳香族ジオールおよび芳香族ジカルボン酸を反応器に仕込んでアシル化工程を行った後で、芳香族ジカルボン酸をさらに反応器に仕込んで重合工程を行う方法でもよい。製造工程を簡便化するという観点からは、前者の方法が好ましい。
上述の重合工程におけるエステル交換反応は、昇温速度0.1~50℃/分で130℃から400℃まで昇温しながら行うことが好ましく、昇温速度0.3~5℃/分で150℃から350℃まで昇温しながら行うことがより好ましい。
また、重合工程のエステル交換反応を行う際には、平衡をずらすために、副生する脂肪酸(例えば酢酸等)および未反応の脂肪酸無水物(例えば無水酢酸等)を、蒸発させて系外に留去させることが好ましい。このとき、留出する脂肪酸の一部を還流させて反応器に戻すことにより、脂肪酸と同伴して蒸発または昇華する原料モノマー等を凝縮または逆昇華させて反応器に戻すこともできる。
アシル化工程のアシル化反応および重合工程のエステル交換反応では、反応器として、回分装置を用いてもよいし、連続装置を用いてもよい。いずれの反応装置を用いても、本実施形態に使用することが可能な液晶ポリエステルを得られる。
上述した重合工程の後に、この重合工程で得られた液晶ポリエステルを高分子量化するための工程を行ってもよい。例えば、重合工程で得られた液晶ポリエステルを冷却した後で粉砕することによって粉体状の液晶ポリエステルを作製し、さらに、この粉体を加熱することとすれば、液晶ポリエステルの高分子量化が可能である。
また、冷却および粉砕で得た粉体状液晶ポリエステルを造粒することによってペレット状の液晶ポリエステルを作製し、その後でこのペレット状液晶ポリエステルを加熱することにより、液晶ポリエステルの高分子量化を行ってもよい。これらの方法を用いた高分子量化は、当該技術分野では固相重合と称されている。
固相重合は、液晶ポリエステルを高分子量化する方法としては、特に有効である。液晶ポリエステルを高分子量化することにより、後述するような好適な流動開始温度を有する液晶ポリエステルを得ることが容易になる。
固相重合の反応条件としては、固体状態の樹脂を不活性気体雰囲気下または減圧下に、反応温度265~325℃、好ましくは270~320℃で、1~20時間熱処理することが好ましい。
なお、室温から反応温度までは3~20時間かけて昇温することが好ましく、昇温は多段階で行ってもよい。該熱処理に使用される装置としては、例えば、既知の乾燥機、反応機、イナートオーブン、電気炉が挙げられる。
本実施形態の液晶ポリエステル成形体は、液晶ポリエステルに加え、必要に応じて、さらに充填材、液晶ポリエステル以外の樹脂、その他添加剤等の他の成分が配合され、組成物とされてもよい。この添加剤としては、通常、樹脂組成物に用いられる成分が挙げられ、例えば安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、滑剤などが挙げられる。前記他の成分は一種でもよいし、二種以上でもよい。
本実施形態の液晶ポリエステル成形体の製造方法としては、例えば溶融成形法が好適に挙げられる。この溶融成形法の例としては、射出成形法、Tダイ法、インフレーション法等の押出成形法;圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法、プレス成形が挙げられ、これらのなかでも射出成形法が好ましい。
射出成形法の場合、液晶ポリエステルの結晶子の成長を目的とし、例えば以下に例示する条件で実施するのが好ましい。
成形時の好ましい温度条件は、ノズル側(C1)とシリンダー後部(C5)との温度差が、例えば40~80℃、好ましくは50~75℃である。
成形時の各部の温度差が上記範囲の場合、結晶核となり得る結晶子が成形機のシリンダー内で溶融せずに保持されるため、結晶成長の観点から好ましい。
成形時の好ましい射出速度条件は、150mm/秒以上、好ましくは200mm/秒以上であることが好ましい。射出速度が上記範囲の場合、製品を構成する部材の超薄肉部への充填性に加え、液晶ポリエステルの結晶子の配向性の観点から好ましい。
金型の温度は、溶融状態からの冷却工程における結晶成長を促進させるために、100℃以上であることが好ましい。
また、上述のように、液晶ポリエステルの結晶子の成長を目的として、成形材料を金型に充填して成形した後に加熱処理を施してもよい。
前記の加熱処理は、通常公知の方法を採用することができる。例えば、成形体に熱風をあてることにより加熱する方式や、遠赤外線を照射することにより加熱する方法が挙げられ、遠赤外線を照射する方法が好ましい。成形体の熱処理を遠赤外線の照射により行った場合、遠赤外線は成形体の内部にまで達する。この場合、成形体の表面のみならず内部からも熱処理を行うことができるため、成形体は表面と内部とで同程度に熱処理が施されたものとなる。加えて、遠赤外線による熱処理の場合、成形体を短時間のうちに所望の熱処理温度に加熱することができる。この場合には、短い処理時間で熱処理を終えることができるため、高い生産性を実現することができる。
熱処理温度は、成形体の融点(Tm)より20℃低い温度(Tm-20℃)以上、成形体の融点未満の温度範囲内であることが好ましい。このような温度条件で熱処理することにより、仮成形体の融点未満で熱処理するにもかかわらず、成形体の結晶子サイズの成長が高められた成形体が得られる。
なお、熱処理温度は、Tm-20℃以上、成形体の融点未満の温度範囲内であれば、熱処理中に一定であってもよく、変化させてもよい。
本実施形態の液晶ポリエステル成形体である製品又は部品の例としては、電気・電子部品、光学部品が挙げられる。その具体例としては、IMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター、ソケット、リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品、光ピックアップボビン、トランスボビン等のコイルボビン、発振子、プリント配線板、回路基板、半導体パッケージ、コンピュータ関連部品、カメラ鏡筒、光学センサー筐体、コンパクトカメラモジュール筐体(パッケージ、鏡筒)、プロジェクター光学エンジン構成部材、ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、LEDリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品等が挙げられる。
本実施形態の液晶ポリエステル成形体は、曲げ強度がより高められている。この特性を活かし、本実施形態の液晶ポリエステル成形体は、特に厚さの薄い超薄肉部を有する部品に好ましく用いることができる。なかでも、本実施形態の液晶ポリエステル成形体は、コネクター用として好ましく用いることができる。
上述したように、本実施形態の液晶ポリエステル成形体は、成形体中心部の結晶子サイズが従来よりも大きく、120×10-10m以上である。このような液晶ポリエステル成形体によれば、製品を構成する部材の超薄肉部の曲げ強度がより高められ、コネクター等の部材における機械的性質の更なる向上を図ることができる。
以下、具体的な実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<液晶ポリエステル成形体の製造>
以下に示す、液晶ポリエステル(1)、液晶ポリエステル(2)、液晶ポリエステル(3)をそれぞれ用いた。
Figure 0007203667000002
液晶ポリエステル(1)の製造:
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1034.99g、5.5モル)と、2,6-ナフタレンジカルボン酸(378.33g、1.75モル)と、テレフタル酸(83.07g、0.5モル)と、ヒドロキノン(272.52g、2.475モル、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸の合計量に対して0.225モル過剰)と、無水酢酸(1226.87g、12モル)とを仕込んだ。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾール0.17gを添加し、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温から145℃まで15分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。
次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3.5時間かけて昇温し、310℃で3時間保持した後、内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粒径約0.1~1mmに粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から310℃まで10時間かけて昇温し、310℃で5時間保持することにより、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、液晶ポリエステル(1)を得た。
液晶ポリエステル(1)は、分子中にArが2,6-ナフチレン基である繰り返し単位(u11)と、Arが2,6-ナフチレン基である繰り返し単位(u21)と、Arが1,4-フェニレン基である繰り返し単位(u22)と、Arが1,4-フェニレン基である繰り返し単位(u31)とを有し、その流動開始温度は324℃であった。
液晶ポリエステル(1)を、120℃で5時間乾燥後、真空ベント付き2軸押出機(池貝鉄工(株)社製「PCM-30」)にて、水封式真空ポンプ神港精機(株)社製「SW-25S」を用い、真空ベントで脱気しながら、シリンダー温度340℃、およびスクリュウ回転数150rpmの条件で溶融混練して、直径3mmの円形ノズル(吐出口)を経由してストランド状に吐出した。次いで、この吐出した混練物を、水温30℃の水浴に1.5秒くぐらせた後、ストランドカッター(田辺プラスチック機械(株)社製)にてペレタイズして、液晶ポリエステル(1)をペレット状で得た。
Figure 0007203667000003
液晶ポリエステル(2)の製造:
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸(994.5g、7.20モル)と、テレフタル酸(272.1g、1.64モル)と、イソフタル酸(126.6g、0.76モル)と、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(446.9g、2.40モル)と、無水酢酸1347.6g(13.20モル)とを仕込んだ。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾール0.18gを添加し、窒素ガス気流下で撹拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分間還流させた。
次いで、1-メチルイミダゾール2.40gを添加した後、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で反応終了とし、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却した。次いで、粉砕機を用いてこのプレポリマーを粉砕し、得られた粉砕物を窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から280℃まで5時間かけて昇温し、280℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、液晶ポリエステル(2)を得た。
液晶ポリエステル(2)は、分子中にArが1,4-フェニレン基である繰返し単位(u12)と、Arが1,4-フェニレン基である繰返し単位(u22)と、Arが1,3-フェニレン基である繰返し単位(u23)と、Arが4,4’-ビフェニリレン基である繰返し単位(u32)とを有し、その流動開始温度は312℃であった。
液晶ポリエステル(2)を、120℃で5時間乾燥後、真空ベント付き2軸押出機(池貝鉄工(株)社製「PCM-30」)にて、水封式真空ポンプ神港精機(株)社製「SW-25S」を用い、真空ベントで脱気しながら、シリンダー温度340℃、およびスクリュウ回転数150rpmの条件で溶融混練して、直径3mmの円形ノズル(吐出口)を経由してストランド状に吐出した。次いで、この吐出した混練物を、水温30℃の水浴に1.5秒くぐらせた後、ストランドカッター(田辺プラスチック機械(株)社製)にてペレタイズして、液晶ポリエステル(2)をペレット状で得た。
Figure 0007203667000004
液晶ポリエステル(3)の製造:
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸(33.15g、0.24モル)と、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(1083.92g、5.76モル)と、テレフタル酸(498.39g、3.00モル)と、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(558.63g、3.00モル)と、無水酢酸(1347.59g、13.20モル)とを仕込んだ。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾール0.22gを添加し、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で1時間還流させた。
次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から335℃まで4.5時間かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で反応終了とし、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粒径約0.1~1mmに粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、液晶ポリエステル(3)を得た。
液晶ポリエステル(3)は、分子中にArが1,4-フェニレン基である繰返し単位(u12)と、Arが2,6-ナフチレン基である繰返し単位(u11)と、Arが1,4-フェニレン基である繰返し単位(u22)と、Arが4,4’-ビフェニリレン基である繰返し単位(u32)とを有し、その流動開始温度は338℃であった。
液晶ポリエステル(3)を、120℃で5時間乾燥後、真空ベント付き2軸押出機(池貝鉄工(株)社製「PCM-30」)にて、水封式真空ポンプ神港精機(株)社製「SW-25S」を用い、真空ベントで脱気しながら、シリンダー温度350℃、およびスクリュウ回転数150rpmの条件で溶融混練して、直径3mmの円形ノズル(吐出口)を経由してストランド状に吐出した。次いで、この吐出した混練物を、水温30℃の水浴に1.5秒くぐらせた後、ストランドカッター(田辺プラスチック機械(株)社製)にてペレタイズして、液晶ポリエステル(3)をペレット状で得た。
図1は、液晶ポリエステル成形体を製造する際に用いた金型(薄肉流動長測定用の金型)を示す斜視図である。図1中の数値の単位はmmである。
液晶ポリエステル成形体を製造する際、図1に示す金型と同一形態である、厚さXmm(X=0.08、0.10)の金型を用いた。
また、成形機として、射出成形機(ファナック株式会社製、Roboshot S2000i-30B)を用いた。液晶ポリエステル成形体を製造する際の射出成形条件を以下のように設定した。
[射出成形条件]
ノズル側の温度をC1と表記し、ノズル側からホッパー下までのシリンダー温度をC1/C2/C3/C4/C5/HPと表記する。
シリンダー温度:C1/C2/C3/C4/C5/HP=350/350/330/310/280/80℃(液晶ポリエステル(1)、液晶ポリエステル(2)の場合)
シリンダー温度:C1/C2/C3/C4/C5/HP=370/370/350/330/310/80℃(液晶ポリエステル(3)の場合)
金型温度:120℃
計量値:20mm
射出速度:200mm/秒(試験例1、2、4~9)、300mm/秒(試験例3)
VP切り替え:150MPaにて圧力切り替え
保圧:20MPa
(試験例1)
前記[射出成形条件]で、射出成形機から、図1に示すものと同一形態である金型のゲートより金型内に、溶融状態の液晶ポリエステル(1)を供給した。
次いで、金型内で固化した液晶ポリエステル(1)を取り出し、無酸化雰囲気恒温器(イナートオーブンIPHH-201(エスペック社))内で、窒素雰囲気下にて、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から310℃まで6時間かけて昇温し、310℃で5時間の加熱処理を行い、厚さ0.08mmtの液晶ポリエステル成形体(1)を得た。
(試験例2)
金型の厚さを変更した以外は、試験例1と同様にして、厚さ0.10mmtの液晶ポリエステル成形体(2)を得た。
(試験例3)
前記[射出成形条件]で、射出成形機から、図1に示すものと同一形態である金型のゲートより金型内に、溶融状態の液晶ポリエステル(3)を供給し固化させて、厚さ0.08mmtの液晶ポリエステル成形体(3)を得た。
(試験例4)
金型の厚さを変更した以外は、試験例3と同様にして、厚さ0.10mmtの液晶ポリエステル成形体(4)を得た。
(試験例5)
液晶ポリエステル(3)を液晶ポリエステル(1)に変更した以外は、試験例3と同様にして、厚さ0.08mmtの液晶ポリエステル成形体(5)を得た。
(試験例6)
液晶ポリエステル(1)を液晶ポリエステル(2)に変更した以外は、試験例5と同様にして、厚さ0.08mmtの液晶ポリエステル成形体(6)を得た。
(試験例7)
液晶ポリエステル(1)を液晶ポリエステル(2)に変更した以外は、試験例1と同様にして、厚さ0.08mmtの液晶ポリエステル成形体(7)を得た。
(試験例8)
液晶ポリエステル(3)を液晶ポリエステル(2)に変更した以外は、試験例4と同様にして、厚さ0.10mmtの液晶ポリエステル成形体(8)を得た。
(試験例9)
液晶ポリエステル(1)を液晶ポリエステル(2)に変更した以外は、試験例2と同様にして、厚さ0.10mmtの液晶ポリエステル成形体(9)を得た。
尚、試験例1~9のうち、試験例1の液晶ポリエステル成形体(1)、試験例2の液晶ポリエステル成形体(2)、試験例3の液晶ポリエステル成形体(3)及び試験例4の液晶ポリエステル成形体(4)が、本発明を適用した実施例に該当する。
<評価>
各例の液晶ポリエステル成形体(1)~(9)について、以下に示す方法により、成形体中心部の結晶子サイズの測定、成形体全体の平均結晶子サイズの測定、曲げ強度の評価及びハンダ耐熱性の評価をそれぞれ行った。
[成形体中心部の結晶子サイズ、成形体全体の平均結晶子サイズの測定]
各例の液晶ポリエステル成形体に対するX線回折測定を、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL03XU(FSBL第2ハッチ、ビームサイズ1μm、検出器Pilatus)を用いて行った。
得られた各例の液晶ポリエステル成形体から、厚さ80μmの試験片及び厚さ100μmの試験片をそれぞれ切り出し、測定用試料を調製した。
手順(1):試料である試験片に対し、波長1×10-10mのX線を、当該試験片の厚さ方向(成形体の最表面からの距離0~80μm、距離0~100μm)に2μm間隔で連続的に照射した。
手順(2):液晶ポリエステル由来の110面の回折ピークを決定した。
手順(3):決定した110面の回折ピークの半値幅(β)を求めた。
手順(4):次いで、下式(1)で表されるScherrerの式より、結晶子サイズを求めた。 D=K・λ/βcosθ ・・・(1) 式中、Dは結晶子サイズであり、λは測定X線波長であり、βは半値幅(ラジアン)であり、θは回折角であり、KはScherrer定数(0.94)である。
手順(5):次いで、当該試験片の厚さ方向の結晶子サイズ分布を算出した。当該試験片の厚さ方向の中心の結晶子サイズの値を「成形体中心部の結晶子サイズ」とした。当該試験片の厚さ方向全体の結晶子サイズの平均値を算出することにより「成形体全体の平均結晶子サイズ」とした。これらの結果を表1に示した。
図2は、試験例3、試験例5及び試験例6の各液晶ポリエステル成形体(厚さ0.08mmt)に関する、成形体の最表面からの距離と結晶子サイズとの関係(液晶ポリエステルの種類の違い)を示す図である。
図3は、試験例3の液晶ポリエステル成形体(厚さ0.08mmt)及び試験例4の液晶ポリエステル成形体(厚さ0.10mmt)に関する、成形体の最表面からの距離と結晶子サイズとの関係(成形体の厚さの違い)を示す図である。成形体の厚さによる違いはほとんど無いことが確認できる。
図4は、試験例1及び試験例5の各液晶ポリエステル成形体(厚さ0.08mmt)に関する、成形体の最表面からの距離と結晶子サイズとの関係(加熱処理の有無の違い)を示す図である。
[曲げ強度の評価]
得られた各例の液晶ポリエステル成形体から、幅5mm×長さ10mmの試験片を切り出した。
この試験片について、精密荷重測定器(アイコーエンジニアリング株式会社製、MODEL-1605 II VL)を用い、試験速度を10mm/分、支点間距離を「試験片の厚さの16倍(厚さ0.08mmtの場合には1.3mm、厚さ0.10mmtの場合には1.6mm)」、圧子の幅1mmにて、3点曲げ試験を5回行い、その平均値を曲げ強度とした。この結果を表1に示した。
[ハンダ耐熱性の評価]
得られた各例の液晶ポリエステル成形体から、幅5mm×長さ5mmの試験片を切り出した。この試験片を、280℃に加熱したハンダ浴に10秒間浸漬した。そして、かかる浸漬後の試験片をハンダ浴から取り出し、試験片における変形の有無を確認して、ハンダ耐熱性を評価した。
試験片に変形が確認されなかったものを「○」、試験片に変形が確認されたものを「×」と表記した。この結果を表1に示した。
Figure 0007203667000005
成形体の厚さが0.08mmtの場合:
試験例3と試験例5との対比、試験例3と試験例6との対比から、液晶ポリエステル(3)を用いた成形体の方が、液晶ポリエステル(1)、(2)を用いた成形体に比べて、成形体中心部の結晶子サイズが大きく、曲げ強度が高いことが確認できる(図2参照)。
また、試験例1と試験例5との対比、試験例6と試験例7との対比から、液晶ポリエステル(1)を用いることで、加熱処理により結晶子が成長して、曲げ強度がより高められることが確認できる(図4参照)。
成形体の厚さが0.10mmtの場合:
試験例4と試験例8との対比から、液晶ポリエステル(3)を用いた成形体の方が、液晶ポリエステル(2)を用いた成形体に比べて、成形体中心部の結晶子サイズが大きく、曲げ強度が高いことが確認できる。

Claims (3)

  1. 液晶ポリエステルの成形体からなるコネクターであって、
    前記成形体は、下記[結晶子サイズの測定方法]により求まる結晶子サイズから算出される成形体中心部の結晶子サイズが120×10-10m以上であり、
    前記液晶ポリエステルは、下式(2)で表される繰り返し単位(u1)と、下式(3)で表される繰り返し単位(u2)と、下式(4)で表される繰り返し単位(u3)とを有する、コネクター
    -O-Ar -CO- ・・・(2)
    -CO-Ar -CO- ・・・(3)
    -X-Ar -Y- ・・・(4)
    式中、Ar 及びAr は、それぞれ、2,6-ナフチレン基を表し、Ar は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。但し、これらのフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基が有する水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(-NH-)を表す。
    [結晶子サイズの測定方法]
    液晶ポリエステル成形体の結晶子サイズは、波長1×10-10mのX線を用いた広角X線回折法によって測定されたX線回折スペクトルにおける110面の回折ピークに基づいて、下式(1)で表されるScherrerの式より求まる。
    D=K・λ/βcosθ ・・・(1)
    式中、Dは結晶子サイズであり、λは測定X線波長であり、βは半値幅(ラジアン)であり、θは回折角であり、KはScherrer定数(0.94)である。
    液晶ポリエステルの成形体にX線が入射して、液晶ポリエステル由来の110面の回折ピークが出現した成形体端部を開始点、および液晶ポリエステル由来の110面の回折ピークが消失した成形体端部を終了点とそれぞれ定義する。成形体中心部とは、前記開始点と前記終了点との中点の位置と定義する。X線を照射する位置は、成形体の厚さが最も薄くなる方向とする。
  2. さらに、前記[結晶子サイズの測定方法]により求まる結晶子サイズから算出される成形体全体の平均結晶子サイズが、100×10-10m以上である、請求項1に記載のコネクター
  3. 記の繰り返し単位(u1)~(u3)のうち、2,6-ナフチレン基を含む繰り返し単位の割合が、前記液晶ポリエステルを構成する全繰り返し単位の合計の割合に対して、40モル%以上である、請求項1又は2に記載のコネクター
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