JP2013156399A - 定着装置及びそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

定着装置及びそれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】定着ベルトと加圧ローラーとで形成される定着ニップ部における記録媒体の分離性を長期間に亘って維持できる定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト21の内周面に接触する押圧パッド40の摺動面40aは、用紙搬送方向に略平行な平坦部41と、平坦部41よりも用紙搬送方向下流側において加圧ローラー23側に湾曲する円弧状部43とを有している。円弧状部43は、加圧ローラー23の曲率半径R1よりも大きい曲率半径R2を有しており、且つ、円弧状部43の曲率中心O2は用紙搬送方向に対し加圧ローラー23の曲率中心O1よりも上流側に位置している。
【選択図】図4

Description

本発明は、加熱した定着ベルトと加圧部材とで形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像を担持した用紙を挿入して未定着トナーを加熱、溶融し、用紙に定着するベルト定着方式の定着装置、及びそれを備えた電子写真方式を用いる画像形成装置に関する。
電子写真方式を用いた従来の画像形成装置においては、定着ニップ部を形成する定着ローラー対の少なくとも一方のローラーに熱源を内蔵させて加熱ローラーとし、この定着ニップ部に未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによって用紙にトナーを定着する熱ローラー定着方式が広く用いられている。
このような熱ローラー定着方式では、加熱ローラーに内蔵されたハロゲンランプなどの熱源からローラー表面までの熱伝達の効率が低く、熱の損失が大きい。また、ローラー表面まで熱が伝達するのに長い時間が必要である。その結果、加熱効率が悪いために消費電力が多く、ローラー表面が定着可能な温度に達するまでのウォームアップ時間が長くなるなどといった問題があった。
また、加熱ローラーとして金属製の円筒表面にフッ素樹脂をコーティングしたハードローラーを用い、加圧ローラーとしてゴムローラーを用いた場合、ローラー対のニップ部(定着ニップ部)の断面形状が加圧ローラー側に凸の円弧状となる。そのため、加熱により水分が蒸発して加熱ローラー側にカールした用紙がニップ形状によってさらにカールし円筒状になってしまう。逆に、加熱ローラー側にゴムローラーを用い、加圧ローラー側にハードローラーを用いた場合は、用紙の裏面にトナーが存在する両面印字時に加圧ローラー側に用紙が巻き付いてジャムが発生するおそれがあった。一方、加熱ローラー側及び加圧ローラー側の両方にゴムローラーを用いる構成では、定着ニップ部の断面形状は直線状となり用紙のカールは発生し難くなるが、封筒や送り状のように2枚以上の紙が重なった用紙では紙がずれて皺が発生するという問題点があった。
これらの問題点を改善するために、用紙を加熱するための加熱部材を、加熱ローラーに代えて発熱源からの輻射光を吸収して発熱する無端状の定着ベルトとし、定着ベルトとこれに圧接される加圧部材とで形成される定着ニップ部に未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによって用紙にトナーを定着するベルト定着方式が開発されている。このベルト定着方式では、熱ローラー定着方式に比べ熱容量を小さくしてウォームアップ時間を短縮するとともに、消費電力を低減することができる。
定着ベルトの駆動方法としては、無端状の定着ベルトの回転軸方向の両端にフランジ状のエンドキャップ部材を固定し、エンドキャップ部材に形成されたギアを介して定着ベルトを駆動する構成や、無端状の定着ベルトの内側のニップ部下流位置に配置された張架ローラーによって定着ベルトを駆動する構成等が知られている。
しかし、上述したような定着ベルトを直接駆動する方法では、定着ベルトの内側に配置したエンドキャップ部材や張架ローラー等の押圧部材を回転させる必要があるため、ニップ部の形状や幅を自由に設定することが困難であった。
また、一般的にニップ幅を広くする方法として、大径の加圧ローラーを用いる方法や、加圧ローラー表面のゴム厚を増加させるか、或いはゴム硬度を低下させる方法、加圧ローラーの押圧力を高める方法等が知られている。しかし、加圧ローラーの大径化は定着装置の大型化やコストアップを招き、ゴム厚の増加はウォームアップ時間の延長を招くおそれがあった。また、ゴム硬度の低下は温度による外径変化が大きくなるため搬送性の低下を招き、耐久性も低下する。さらに加圧ローラーの押圧力の上昇は、ローラー表面の撓み量の過多による搬送性の低下や定着フレーム補強によるコストアップに繋がる。
そこで、定着ベルトの内側にベルト支持部材を配置し、定着ベルトの外側からベルト支持部材に加圧ローラーを圧接するとともに、加圧ローラーと定着ベルトの外面との摩擦力によりベルト支持部材と定着ベルトの内面とを摺動させて定着ベルトを回転駆動させる摺動ベルト定着方式が考案されている。摺動ベルト方式では、ベルト支持部材の形状を平面状や曲率の小さいR形状とすることにより、低い押圧力で広いニップ幅を得ることができる。
上述したような摺動ベルト定着方式においては、用紙搬送方向に対しベルト支持部材と加圧ローラーとのニップ部の下流側において用紙を定着ベルトの表面から分離する必要がある。特に、コシの弱い用紙にインク付着量の多いカラー印刷を行う場合は、定着ベルトの表面から用紙を分離し難くなる。
そこで、ベルト支持部材の定着ベルトとの接触面に設けられる押圧パッドの形状や材質が検討されており、例えば特許文献1には、押圧パッドに弾性体を用いることにより、定着ベルトのニップ部分に加圧ローラーの外周に沿った撓みを持たせて定着ニップ部の下流側における定着ベルトの曲率を大きくし、用紙の分離性能を確保するようにした定着装置が開示されている。
また、特許文献2には、押圧パッドを弾性体で形成するとともに、ニップ部内で押圧パッドの曲率を反転させることで用紙分離性を確保した定着装置が開示されている。
特開2002−148983号公報 特開平4−309984号公報
しかしながら、特許文献1、2に用いる押圧パッドは熱及び圧力の加わる部分に使用されるため、加圧ローラーの表面への押圧パッドの食い込みによる定着ニップ部の変形が起こり易い。そのため、定着装置の耐用期間を通じて定着ニップ部の形状を維持するのが困難であり、定着ニップ部の下流側において用紙の分離性を確保できないという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑み、定着ベルトと加圧ローラーとで形成される定着ニップ部における記録媒体の分離性を長期間に亘って維持できる定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、記録媒体の搬送速度と略等速で回動可能な無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを加熱する加熱手段と、前記定着ベルトの外周面に対向配置されるとともに前記定着ベルトに回転駆動力を付与する加圧ローラーと、前記定着ベルトに内接して前記定着ベルトを前記加圧ローラーに所定の圧力で圧接する押圧部材と、該押圧部材の前記定着ベルトとの対向面に設けられ、前記定着ベルトの内周面が摺動する摺動面を有する押圧パッドと、を備え、前記定着ベルトと前記加圧ローラーにより形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通させて記録媒体上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置において、前記摺動面は、記録媒体の搬送方向に略平行な平坦部と、該平坦部よりも記録媒体の搬送方向下流側において前記加圧ローラー側に湾曲する円弧状部と、を有し、前記円弧状部は、前記加圧ローラーの曲率半径R1よりも大きい曲率半径R2と、前記加圧ローラーの曲率中心O1を通り記録媒体の搬送方向に垂直な直線よりも上流側に位置する曲率中心O2を有しており、前記加圧ローラーは、前記定着ベルトを介して前記円弧状部に所定の圧力で当接することにより前記定着ニップ部を形成することを特徴としている。
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記加圧ローラーは、前記円弧状部に加えて前記平坦部にも前記定着ベルトを介して所定の圧力で当接しており、前記定着ニップ部は、記録媒体の搬送方向に対し上流側から前記平坦部と前記円弧状部とが連続するように形成されることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記円弧状部は、前記曲率半径R2を保持するように、若しくは前記定着ニップ部の上流側における記録媒体の搬送方向に略平行となるように前記定着ニップ部の下流側に延長されることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記定着ニップ部の上流側における記録媒体の搬送方向と、前記定着ニップ部の下流側における記録媒体の搬送方向とのなす角度が8°〜17°であることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記押圧パッドは、液晶ポリマー樹脂で形成されることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の定着装置が搭載された画像形成装置である。
本発明の第1の構成によれば、押圧パッドの摺動面に平坦部と円弧状部とを設けることにより、記録媒体の搬送性を妨げることなく押圧パッドと加圧ローラーとの接触幅(定着ニップ幅)を確保して定着性能を安定させることができる。また、押圧パッドの円弧状部の曲率半径が加圧ローラーの曲率半径よりも大きいため、定着ニップ部の圧接力を記録媒体の搬送方向上流側から下流側に向かって小さくすることができる。従って、定着ベルトの熱や加圧ローラーの圧力に起因する押圧パッドの変形が生じ難くなり、定着ニップ部の下流側端部における記録媒体の分離性を長期間に亘って維持することができる。さらに、円弧状部の曲率中心O2を、加圧ローラーの曲率中心O1を通り記録媒体の搬送方向に垂直な直線よりも上流側に配置することで、定着ニップ部を通過した記録媒体は円弧状部に沿って加圧ローラー側に近づくように搬送される。これにより、片面印刷時における定着ベルトへの記録媒体の巻き付きを抑制することができる。
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の定着装置において、加圧ローラーを押圧部材の円弧状部に加えて平坦部にも定着ベルトを介して所定の圧力で当接させて、記録媒体の搬送方向に対し上流側から平坦部と円弧状部とが連続するように定着ニップ部を形成することにより、記録媒体は、未定着トナーを入口側の平坦部で予めある程度定着させてから円弧状部に挿通される。その結果、記録媒体を定着ニップ部に安定して挿入することができ、円弧状部を通過する際に定着画像の乱れが生じ難くなる。
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の定着装置において、円弧状部は、曲率半径R2を保持するように、若しくは定着ニップ部の上流側における記録媒体の搬送方向に略平行となるように定着ニップ部の下流側に延長されることにより、記録媒体の搬送方向に対し押圧パッドの下流側の端部が加圧ローラーの表面から徐々に離れていくため、加圧ローラーの表面への押圧パッドの下流側端部の食い込みを回避することができ、定着ニップ部の下流側端部における記録媒体の分離性を一層高めることができる。
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の定着装置において、定着ニップ部の上流側における記録媒体の搬送方向と、定着ニップ部の下流側における記録媒体の搬送方向とのなす角度を8°〜17°とすることにより、記録媒体の定着ベルトまたは加圧ローラーへの巻き付きを防止することができる。
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の定着装置において、押圧パッドを耐熱性に優れた液晶ポリマー樹脂で形成することにより、加熱及び加圧による押圧パッドの変形が抑制されるため、定着ニップ部の形状を長期間に亘って一定に維持することができる。
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の定着装置を搭載することにより、定着ベルトと加圧ローラーとで形成される定着ニップ部における記録媒体の分離性を長期間に亘って維持できる画像形成装置となる。
本発明の定着装置16が搭載された画像形成装置100の概略断面図 本発明の一実施形態に係る定着装置16の側面断面図 定着装置16を図2の上方から見た平面図 図3における定着ニップ部N周辺の側面拡大図 本発明の定着装置16に用いられる押圧パッド40の他の形状を示す側面図
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の定着装置が搭載された画像形成装置の構成を示す模式断面図である。ここでは画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンターについて示している。カラープリンター100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(マゼンタ、シアン、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳された後、二次転写ローラー9の作用によって記録媒体の一例としての用紙P上に二次転写され、さらに、定着装置13において用紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
トナー像が転写される用紙Pは、カラープリンター100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と後述する中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置5と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング部7a、7b、7c及び7dが設けられている。
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a〜3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a〜4dから各現像装置3a〜3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
そして、一次転写ローラー6a〜6dにより一次転写ローラー6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナー等がクリーニング部7a〜7dにより除去される。
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されており、駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、用紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11とこれに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のフルカラー画像が用紙P上に転写される。トナー像が転写された用紙Pは定着装置13へと搬送される。
定着装置13に搬送された用紙Pは、定着ベルト21及び加圧ローラー23(図2参照)により加熱及び加圧されてトナー像が用紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。用紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
一方、用紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着装置13を通過した用紙Pは一旦排出ローラー対15方向に搬送され、用紙Pの後端が分岐部14を通過した後に排出ローラー対15を逆回転させるとともに分岐部14の搬送方向を切り換えることで、用紙Pの後端から反転搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ニップ部に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラー9により用紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着装置13に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
図2は、本発明の一実施形態に係る定着装置13の側面断面図であり、図3は、定着装置13に用いられる誘導加熱部25の平面図である。図2に示すように、定着装置13は、図2において反時計回り方向に回動する無端状の定着ベルト21と、定着ベルト21に内接する押圧部材22と、押圧部材22の定着ベルト21との対向面に設けられた押圧パッド40と、定着ベルト21及び押圧パッド40を介して押圧部材22に圧接され、図2において時計回り方向に回転する加圧ローラー23と、定着ベルト21を挟んで加圧ローラー23の反対側に配置される誘導加熱部25と、を含む構成である。
定着ベルト21は、押圧パッド40に接する最内側に設けられた誘導発熱層や、加圧ローラー23に接する最外側に設けられた離型層を含む複数の層が積層されて成る無端状のベルトである。この定着ベルト21は、押圧部材22及び押圧部材22の反対側(誘導加熱部25と対向する側)において定着ベルト21に内接する断面視アーチ形状の支持部材24に巻き掛けられ、所定の張力が与えられるとともに、押圧部材22(押圧パッド40)に接していない部分が誘導加熱部25と所定の間隔を隔てた円弧形状に保持されている。なお、支持部材24に代えて、定着ハウジング(図示せず)の内面から突出して定着ベルト21の幅方向両端部に内接する円弧状のフランジ部を配置しても良い。
定着ベルト21の誘導発熱層としては、ニッケル等の金属をメッキ、又は圧延処理した金属層が用いられる。離型層としては、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素系樹脂が用いられ、塗料の塗布やチューブを被せることによって形成されている。離型層は、PFAチューブであれば10〜50μm、フッ素樹脂塗料であれば10〜30μm程度の厚さが適当である。
また、誘導発熱層と離型層との間に、弾性層として厚さ100〜1000μm程度のシリコンゴム層を設けても良い。この構成によれば、弾性層が用紙上の未定着トナー像を包み込んで、ソフトに定着できる。その結果、画像の高画質化を図ることが可能となり、高性能な定着装置13を得ることができる。
また、誘導発熱層と離型層との間に蓄熱層を設けて誘導発熱層で発生した熱を逃がさないようにし、且つ定着ベルト21の表面の温度を均一に保持することもできる。その結果、さらに高い加熱効率が得られるとともに、ウォームアップ時間の短縮及び消費電力の低減の効果を高めることが可能となる。
蓄熱層は、シリカやアルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物の粉末をフィラーとして配合して熱伝導率を高めたシリコンゴムや、アルミ、銅、ニッケル等の熱伝導率の高い金属で構成され、これらをチューブ状に成型したものを被覆する、或いはメッキするなどして設けられている。蓄熱層は、シリコンゴムのように弾性がある材料であれば良いが、金属で構成した場合、肉厚を厚くし過ぎるとベルトの硬度が上がり、トナーを溶融するのに必要なニップ量が得られなくなってしまう。したがって、蓄熱層の厚さは、10〜1000μm、望ましくは50〜500μmとする。
本実施形態に用いる定着ベルト21の構成としては、例えば、厚さ30〜50μmのニッケル層、若しくは、銅、銀、アルミニウム等の金属粉を混合した厚さ50〜100μmのポリイミド樹脂層(誘導発熱層)上に厚さ100〜500μmのシリコンゴム層(弾性層)を積層し、厚さ30〜50μmのPFAチューブ(離型層)で被覆した外径20〜50mmの無端状ベルトが挙げられる。また、定着ベルト21の内面の、押圧パッド40が摺動する部分には耐摩耗性に優れたポリイミド層やポリアミド層が配置されている。
また、定着ベルト21の表面に接するようにサーミスター(図示せず)が設けられている。このサーミスターにより定着ベルト21の温度を検知し、誘導加熱部25に流れる電流をON/OFFすることによって定着温度の制御を行う。
また、定着ベルト21の幅方向(図2の紙面と垂直方向)の寸法は、誘導加熱部25の幅方向の寸法よりも狭く、且つ定着ニップ部Nを通過する最大の用紙幅よりも広く設定されている。これにより、誘導加熱部25は定着ベルト21全体を均一に加熱して定着むらの発生を防止するとともに、定着ベルト21は用紙サイズに係わらず用紙全面を覆うことができるため、押圧部材22及び押圧パッド40への未定着トナーの付着を防止できる。
押圧部材22は、一端が支持部材24に支持されており、他端が押圧パッド40及び定着ベルト21を介して加圧ローラー23と当接することで、用紙を挿通させる定着ニップ部Nを形成する。押圧部材22の材質としては、アルミニウム等の金属や耐熱性樹脂等が用いられる。
押圧パッド40は液晶ポリマー樹脂等の耐熱性樹脂やシリコンゴム等の弾性材料で構成されており、定着ベルト21との対向面にはエラストマーを配置する場合もある。また、定着ベルト21との接触面の摺動負荷を低減するために、PTFEシート等のフッ素樹脂系の摺動部材(図示せず)を介在させている。特に、押圧パッド40を耐熱性に優れた液晶ポリマー樹脂で形成することにより、加熱及び加圧による押圧パッド40の変形を抑制して定着ニップ部Nの形状を長期間に亘って一定に維持することができる。
加圧ローラー23は、例えば芯金23aの外側に弾性層23bが設けられている。芯金23aには加圧ローラー23の圧力を調整する圧調整機構(図示せず)が配置されている。本実施形態では、直径20mmのアルミニウム製の芯金23aの外側に、弾性層を構成する厚さ7.5mmのシリコンゴム層23bが設けられた外径35mmの加圧ローラー23を用いている。加圧ローラー23は図示しない駆動モーターにより時計回りに回転駆動される。なお、加圧ローラー23の表面はPFAチューブ等の離型層で被覆されていても良い。
誘導加熱部25は、電磁誘導により定着ベルト21を加熱するものであり、コイルボビン27、コイル29、及びセンターコア30a、アーチコア30b、サイドコア30cからなるコア部等で構成され、定着ベルト21の円弧状の外面の一部を囲うように対向して配設される。
コイルボビン27は、定着ベルト21の外面に沿う断面円弧状に成形されている。コイルボビン27の材質は、耐熱性樹脂(例えばPPS:ポリフェニレンサルファイド樹脂、PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂、LCP:液晶ポリマー樹脂)であることが好ましい。
コイルボビン27上には、細線を束ねたリッツ線28を誘導加熱部25の長手方向(図2の紙面と垂直方向)に複数回(ここでは8回)巻回したコイル29が配置されている。コイル29は、図示しない電源に接続されている。また、コイル29のコイルボビン27への固定は、例えば耐熱性接着剤(例えばシリコン系接着剤)を用いて行う。
センターコア30aは、コイル29の中央に配置される断面矩形状をなすフェライト製のコアである。センターコア30aの両側には一対のアーチコア30b及びサイドコア30cが配置されている。両側のアーチコア30bは、センターコア30aを挟んで互いに対称な形状を有し、その断面形状がアーチ形に成形されたフェライト製コアである。各アーチコア30bの全長はコイル29が配置された領域よりも長い。また、両側のサイドコア30cは、ブロック形状に成形されたフェライト製のコアである。サイドコア30cは各アーチコア30bの一端(図2では上下端)に連結して設けられている。各サイドコア30cは、それぞれコイル29が配置された領域の外側を覆っている。
アーチコア30bは、例えば誘導加熱部25の長手方向に間隔をおいて複数箇所に配置されている。本実施形態では、隣り合うアーチコア30b同士の間隔は10mm程度としている。また、アーチコア30bの配置密度は、高ければ高いほど磁束の誘導性能が良くなる。しかしながら、ある程度アーチコア30bの配置密度を減らしても磁束の誘導性能の低下は少ないので、充分な性能を発揮できる範囲で高いコストパフォーマンスが得られるようにアーチコア30bの配置密度を設定することが好ましい。また、定着ベルト21の幅方向の温度分布を調整する場合、アーチコア30bの配置密度を調整することで対応可能である。
また、サイドコア30cは、誘導加熱部25の長手方向において複数に分割されており、その1つの長さが30〜60mm程度である。複数のサイドコア30cは誘導加熱部25の長手方向に間隔をあけずに連続して配置されている。サイドコア30cを配置する範囲の全長はコイル29が配置された領域の長さに対応している。このようにサイドコア30cを連続して複数配置することで、アーチコア30bの配置による温度分布の振れ幅を均す効果がある。なお、各アーチコア30b、サイドコア30cの配置は、例えばコイル29の磁束密度(磁界強度)分布に合わせて決定されている。アーチコア30bがある程度の間隔をおいて配置されている分、アーチコア30bが抜けた箇所でサイドコア30cが磁束の集束効果を補い、長手方向での磁束密度分布(温度分布)を均している。
誘導加熱部25は、コイル29に高周波電流を供給することにより、センターコア30a及び両側のアーチコア30b及びサイドコア30cを通じて磁束を発生させる。誘導加熱部25から発せられる磁束は定着ベルト21の誘導発熱層に作用する。その結果、誘導発熱層の磁束の周りに渦電流が生じるため、誘導発熱層内の電気抵抗によってジュール熱が発生して定着ベルト21が発熱することになる。
コイル29に流れる電流は、サーミスターによって定着ベルト21が所定の温度となるように制御されている。そして、誘導加熱部25により定着ベルト21が加熱されて所定の温度に昇温すると、定着ニップ部Nで挟持された用紙P(図1参照)が加熱されるとともに、加圧ローラー23にて加圧されることにより、用紙P上の粉体状態のトナーが溶融定着される。
用紙搬送方向(図2の下から上方向)に対し定着ニップ部Nの下流側には、定着ベルト21から用紙を分離する分離板35と、分離板35を支持する分離板ホルダー37とが配置されている。本実施形態では、厚さ0.1mmのステンレス板の表面にフッ素樹脂コーティングを施した長さ336mmの分離板35を、厚さ1.2mmのステンレス製の分離板ホルダー37に取り付けている。
図4は、図3における定着ニップ部N周辺の側面拡大図である。図4を用いて、本発明の定着装置13に用いられる押圧パッド40の構成について詳述する。図4に示すように、定着ベルト21の内面に接触する押圧パッド40の摺動面(対向面)40aは、定着ニップ部Nの上流側における用紙搬送方向(図の矢印A方向)に略平行な平坦部41と、平坦部41よりも用紙搬送方向下流側において加圧ローラー23側に湾曲する円弧状部43とを有している。定着ベルト21を介して加圧ローラー23が円弧状部43に圧接されることで、定着ニップ部Nが形成されている。上記の構成により、用紙の搬送性を妨げることなく押圧パッド40と加圧ローラー23との接触幅(定着ニップ幅)を確保して定着性能を安定させることができる。
また、円弧状部43は、加圧ローラー23の曲率半径R1よりも大きい曲率半径R2を有するため、定着ニップ部Nの圧接力を用紙搬送方向上流側から下流側に向かって小さくすることができる。従って、定着ベルト21の熱や加圧ローラー23の圧力に起因する押圧パッド40の変形が生じ難くなり、定着ニップ部Nの下流側端部における用紙の分離性を長期間に亘って維持することができる。
さらに、円弧状部43の曲率中心O2は、加圧ローラー23の曲率中心O1を通り用紙搬送方向に垂直な直線Lよりも上流側に配置されているため、定着ニップ部Nを通過した用紙は円弧状部43に沿って加圧ローラー23側に近づく方向(矢印B方向)に搬送される。これにより、片面印刷時における定着ベルト21への用紙の巻き付きを抑制することができる。
また、加圧ローラー23は、定着ベルト21を介して平坦部41の一部にも所定の圧力で押圧されていても良い。この構成によれば、用紙搬送方向に対し上流側から平坦部41、円弧状部43がこの順で連続する定着ニップ部Nが形成されるため、定着ニップ部Nに進入した用紙は、先ず平坦部41を通過した後、円弧状部43を通過することになる。従って、用紙を平坦部41から定着ニップ部Nに安定して挿入することができる。また、円弧状部43を通過する際には用紙上のトナーがある程度溶融定着されているため、ニップ圧のばらつき易い円弧状部43を通過する際の定着画像の乱れも生じ難くなる。
そして、円弧状部43は、定着ニップ部Nの下流端から曲率半径R2を保持しながら、さらに用紙搬送方向下流側へ向かって延長されている。これにより、押圧パッド40の用紙搬送方向下流側の端部が加圧ローラー23の表面から徐々に離れていくため、加圧ローラー23の表面への押圧パッド40の用紙搬送方向下流側の端部の食い込みを確実に回避することができ、定着ニップ部Nの下流側端部における用紙の分離性を一層高めることができる。
なお、ここでは円弧状部43の曲率半径R2を保持しながら用紙搬送方向下流側へ向かって延長したが、図5に示すように、円弧状部43を定着ニップ部Nの下流端から平坦部41(定着ニップ部Nの上流側の用紙搬送方向)と略平行に用紙搬送方向下流側へ向かって延長しても良い。
また、定着ニップ部Nを通過した用紙は、押圧パッド40の円弧状部43に沿って定着ニップ部Nの上流側における用紙搬送方向に対し所定の角度で搬送される。定着ニップ部Nの上流側における用紙搬送方向(矢印A方向)に対する下流側における用紙搬送方向(矢印B方向)の角度θと用紙の分離性との関係を表1に示す。表1において、用紙の分離性が良好である場合を○、分離性がやや低下するものの実用上問題のない範囲である場合を△、用紙が定着ベルト21または加圧ローラー23に巻き付く場合を×で示す。
Figure 2013156399
表1に示すように、角度θが5°以下の場合、片面印刷時に定着ニップ部Nを通過した用紙の定着ベルト21側への巻き付きが発生した。一方、角度θが20°以上の場合、両面印刷時に定着ニップ部Nを通過した用紙の加圧ローラー23側への巻き付きが発生した。これに対し、角度θが8°〜17°である場合は実用上問題のない分離性が得られ、特に10°〜15°である場合に良好な分離性が得られた。以上の結果より、角度θを8°〜17°の範囲に設定しておくことが好ましく、10°〜15°の範囲に設定しておくことがより好ましい。
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、押圧部材22を支持部材24に固定支持しているが、押圧部材22を支持部材24と分離して設け、定着ハウジング等に支持しても良い。
また、上記実施形態で示した定着ベルト21、加圧ローラー23の構成は好ましい一例であり、本発明の目的を達成可能な他の構成を採用することもできる。また、誘導加熱部25に代えてハロゲンランプ等の他の加熱手段を設けても良い。
また、本発明の定着装置は図1に示したタンデム式のカラープリンターに限らず、デジタル複合機やカラー複写機、アナログ方式のモノクロ複写機、或いはモノクロプリンターやファクシミリ等の、電子写真プロセスを用いた種々の画像形成装置に適用できる。
本発明は、定着ベルトと、定着ベルトに所定の圧力で当接する加圧ローラーにより形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通させて記録媒体上に担持された未定着トナー像を定着するベルト定着方式の定着装置に利用可能である。本発明の利用により、定着ベルトを押圧する押圧パッドの変形を抑制して定着ベルトと加圧ローラーとの定着ニップ部の形状を長期間に亘って維持可能であり、且つ、定着時における記録媒体の良好な分離性も確保できる定着装置を提供することができる。
13 定着装置
21 定着ベルト
22 押圧部材
23 加圧ローラー
24 支持部材
25 誘導加熱部(加熱手段)
35 分離板
37 分離板ホルダー
40 押圧パッド
40a 摺動面
45 用紙分離部(記録媒体分離部)
100 カラープリンター
N 定着ニップ部
P 用紙(記録媒体)
R1 (加圧ローラー23の)曲率半径
R2 (摺動面40aの)曲率半径
O1 (加圧ローラー23の)曲率中心
O2 (摺動面40aの)曲率中心

Claims (6)

  1. 記録媒体の搬送速度と略等速で回動可能な無端状の定着ベルトと、
    該定着ベルトを加熱する加熱手段と、
    前記定着ベルトの外周面に対向配置されるとともに前記定着ベルトに回転駆動力を付与する加圧ローラーと、
    前記定着ベルトに内接して前記定着ベルトを前記加圧ローラーに所定の圧力で圧接する押圧部材と、
    該押圧部材の前記定着ベルトとの対向面に設けられ、前記定着ベルトの内周面が摺動する摺動面を有する押圧パッドと、
    を備え、前記定着ベルトと前記加圧ローラーにより形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通させて記録媒体上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置において、
    前記摺動面は、記録媒体の搬送方向に略平行な平坦部と、該平坦部よりも記録媒体の搬送方向下流側において前記加圧ローラー側に湾曲する円弧状部と、を有し、
    前記円弧状部は、前記加圧ローラーの曲率半径R1よりも大きい曲率半径R2と、前記加圧ローラーの曲率中心O1を通り記録媒体の搬送方向に垂直な直線よりも上流側に位置する曲率中心O2を有しており、前記加圧ローラーは、前記定着ベルトを介して前記円弧状部に所定の圧力で当接することにより前記定着ニップ部を形成することを特徴とする定着装置。
  2. 前記加圧ローラーは、前記円弧状部に加えて前記平坦部にも前記定着ベルトを介して所定の圧力で当接しており、前記定着ニップ部は、記録媒体の搬送方向に対し上流側から前記平坦部と前記円弧状部とが連続するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記円弧状部は、前記曲率半径R2を保持するように、若しくは前記定着ニップ部の上流側における記録媒体の搬送方向に略平行となるように前記定着ニップ部の下流側に延長されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記定着ニップ部の上流側における記録媒体の搬送方向と、前記定着ニップ部の下流側における記録媒体の搬送方向とのなす角度が8°〜17°であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の定着装置。
  5. 前記押圧パッドは、液晶ポリマー樹脂で形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の定着装置。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
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