JP7124583B2 - 定着装置、画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、定着装置、及び画像形成装置に関する。
特許文献1には、加熱体と加圧部材との間のニップ部に、未定着顕画像を担持した記録材及び定着フィルムを通過させ、顕画像を加熱定着する定着装置において、加熱体の背面に高熱伝導部材が設けられた定着装置が記載されている。
特開平05-289555号公報
回転し、搬送される記録媒体と外周面で接触する無端ベルトと、無端ベルトの内周面と表面で接触し、無端ベルトの内周面の一部を加熱するために熱が生じる発熱部が形成された発熱板とを備えている定着装置がある。さらに、この定着装置は、記録媒体の搬送方向において発熱部が形成される部分とは異なる部分の発熱板の裏面に接触して、発熱部で生じた熱を軸方向に伝える伝熱部と、伝熱部を発熱板に向けて付勢する付勢部とを備えている。また、この定着装置は、無端ベルトとの間でニップを形成し、無端ベルトの外周面に記録媒体を加圧する加圧部を備えている。
このような定着装置では、加圧部の移動によって、無端ベルトを加熱する加熱モード(立上げモード)のときに、記録媒体に画像を定着する定着モードのときと比して、ニップのニップ幅を狭くすることがある。具体的には、加熱モードのときに、発熱部で生じる熱が加圧部に伝わらないようにニップ幅が狭くされる。
ここで、加熱モードのときに、ニップの範囲に伝熱部の全部が含まれていると、発熱板と伝熱部との間の熱伝達率が高くなり、発熱部で生じた熱が伝熱部へ伝わってしまう。このため、加熱モードのときに、無端ベルトを加熱するのに要する時間が長くなってしまう。換言すれば、加熱モードのときに、発熱板を加熱するのに要する時間が長くなってしまう。
本発明の課題は、加熱モードのときにニップの範囲に含まれている伝熱部の長さと、定着モードのときにニップの範囲に含まれている伝熱部の長さとが同じ場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることである。
本発明の第1態様に係る定着装置は、周方向に回転し、搬送される記録媒体と外周面で接触する無端ベルトと、前記無端ベルトの軸方向に延び熱が生じる発熱部が形成され、前記無端ベルトの内周面と表面で接触して前記軸方向に延びている発熱板と、記録媒体の搬送方向において前記発熱部が形成されている部分とは異なる部分の前記発熱板の裏面に接触し、前記発熱部で生じる熱を前記軸方向に伝える伝熱部と、前記伝熱部を前記発熱板に向けて付勢する付勢部と、前記無端ベルトを挟んで前記発熱板の反対側に配置され、前記無端ベルトとの間でニップを形成し、搬送される記録媒体を前記無端ベルトに加圧する加圧部と、前記加圧部を前記無端ベルトに対して相対移動させて、前記無端ベルトを加熱する加熱モードのときに、記録媒体に画像を定着する定着モードのときと比して、前記ニップのニップ幅を狭くする移動部と、を備え、前記加熱モードのときに、記録媒体の搬送方向において前記ニップの範囲に含まれて熱が生じる前記発熱部の長さをL1とし、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれている前記伝熱部の長さをS1とし、前記定着モードのときに、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれて熱が生じる前記発熱部の長さをL2とし、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれている前記伝熱部の長さをS2とすると下記式(1)を満足していることを特徴とする。
L2-L1<S2-S1・・・・・・(1)
本発明の第2態様に係る定着装置は、第1態様に記載の定着装置において、前記長さL1と前記長さL2とは、同様の値であることを特徴とする。
本発明の第3態様に係る定着装置は、第1又は2態様に記載の定着装置において、前記軸方向の長さが異なる複数の前記発熱部が、前記搬送方向に並べられており、前記加熱モードのときに、前記搬送方向において前記ニップの範囲に、前記軸方向に最も長い前記発熱部が含まれ、前記加熱モードのときに、前記軸方向に最も長い前記発熱部で熱が生じることを特徴とする。
本発明の第4態様に係る定着装置は、第3態様に記載の定着装置において、前記加熱モードのときに、全ての前記発熱部が、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれ、前記加熱モードのときに、全ての前記発熱部で熱が生じることを特徴とする。
本発明の第5態様に係る定着装置は、第4態様に記載の定着装置において、前記軸方向に最も長い前記発熱部は、前記加熱モードのときに、前記搬送方向において前記ニップの中央側の部分に配置されていることを特徴とする。
本発明の第6態様に係る定着装置は、第1又は2態様に記載の定着装置において、前記軸方向の長さが異なる複数の前記発熱部が、前記搬送方向に並べられており、前記加熱モードのときに、前記搬送方向において、前記伝熱部に最も近い前記発熱部で熱が生じておらず、前記伝熱部に最も近い前記発熱部とは異なる前記発熱部で熱が生じることを特徴とする。
本発明の第7態様に係る定着装置は、第6態様に記載の定着装置において、前記加熱モードのときに、前記搬送方向において、前記伝熱部から最も遠い前記発熱部で熱が生じることを特徴とする。
本発明の第8態様に係る定着装置は、第1~7態様の何れか1態様に記載の定着装置において、前記長さS1の長さが無いことを特徴とする。
本発明の第9態様に係る画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する形成部と、記録媒体に形成された画像を記録媒体に定着する請求項1~8の何れか1項に記載された定着装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明の第1態様の定着装置によれば、加熱モードのときにニップの範囲に含まれている伝熱部の長さと、定着モードのときにニップの範囲に含まれている伝熱部の長さとが同じ場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第2態様の定着装置によれば、発熱部の長さL1が発熱部の長さL2に対して短い場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第3態様の定着装置によれば、熱が生じている発熱部が他の発熱部に対して短い場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第4態様の定着装置によれば、加熱モードのときに、熱が生じない発熱部が有る場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第5態様の定着装置によれば、最も長い発熱部が、加熱モードのときに、搬送方向においてニップの端側の部分に配置されている場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第6態様の定着装置によれば、加熱モードのときに、伝熱部から最も近い発熱部だけで熱が生じる場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第7態様の定着装置によれば、加熱モードのときに、伝熱部から最も遠い発熱部とは異なる発熱部だけで熱が生じる場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第8態様の定着装置によれば、加熱モードのときに、長さS1の長さが有る場合と比して、加熱モードのときに、発熱板が規定の温度に達するのに要する時間を短くすることができる。
本発明の第9態様の画像形成装置によれば、加熱モードのときにニップの範囲に含まれている伝熱部の長さと、定着モードのときにニップの範囲に含まれている伝熱部の長さとが同じ定着装置を備える場合と比して、立上げ後の最初の一枚を出力するために要する時間を短くすることができる。
本発明の第1実施形態に係る定着装置を示し、加熱モードのときの拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置を示し、定着モードのときの拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置の発熱板を示した平面図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置を示し、加熱モードのときの断面図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置を示し、定着モードのときの断面図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置を示し、加熱モードのときの断面図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置の伝熱部材及びスプリングを示した斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置の制御部における制御系を示したブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る定着装置を示した正面図である。 本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。 本発明の第1実施形態に対する比較形態に係る定着装置を示し、加熱モードのときの拡大断面図である。 本発明の第2実施形態に係る定着装置を示し、加熱モードのときの拡大断面図である。 本発明の第3実施形態に係る定着装置の発熱板を示した平面図である。 本発明の第3実施形態に係る定着装置を示し、加熱モードのときの拡大断面図である。 本発明の第3実施形態に係る定着装置を示し、定着モードのときの拡大断面図である。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る定着装置、及び画像形成装置の一例を図1~図11に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
(全体構成)
図10に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置10には、上下方向(矢印H方向)の下方側から上方側へ向けて、記録媒体としてのシート部材Pが収容される収容部14と、収容部14に収容されたシート部材Pを搬送する搬送部16と、収容部14から搬送部16によって搬送されるシート部材Pに画像形成を行う画像形成部20とが、この順で備えられている。
〔収容部14〕
収容部14には、画像形成装置10の装置本体10Aから装置奥行方向の手前側に引き出し可能な収容部材26が備えられており、この収容部材26にシート部材Pが積載されている。さらに、収容部14には、収容部材26に積載されたシート部材Pを、搬送部16を構成する搬送経路28に送り出す送出ロール30が備えられている。
〔搬送部16〕
搬送部16には、予め定められた搬送経路28に沿ってシート部材Pを搬送する複数の搬送ロール32が備えられている。
〔画像形成部20〕
画像形成部20には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成ユニット18Y、18M、18C、18Kが備えられている。なお、以後の説明では、Y,M,C,Kを区別して説明する必要が無い場合は、Y,M,C,Kを省略して記載することがある。
各色の画像形成ユニット18には、像保持体36と、像保持体36の表面を帯電させる帯電ロール38と、帯電した像保持体36に露光光を照射する露光装置42とが備えられている。さらに、画像形成部20には、前述した露光装置42が帯電した像保持体36を露光して形成された静電潜像を現像してトナー画像として可視化する現像装置40が備えられている。画像形成ユニット18は、形成部の一例である。
また、画像形成部20には、図中矢印A方向に周回する無端状の転写ベルト22と、各色の画像形成ユニット18によって形成されたトナー画像を転写ベルト22に転写する一次転写ロール44とが備えられている。さらに、画像形成部20には、転写ベルト22のトナー画像をシート部材Pに転写する二次転写ロール46と、シート部材Pを加熱、加圧してトナー画像をシート部材Pに定着する定着装置50とが備えられている。なお、定着装置50については、詳細を後述する。
(画像形成装置の作用)
画像形成装置10では、次のようにして画像が形成される。
先ず、電圧が印加された各色の帯電ロール38は、各色の像保持体36の表面と接触して像保持体36の表面を予定の電位で一様にマイナス帯電させる。続いて、外部から入力されたデータに基づいて露光装置42は、帯電した各色の像保持体36の表面に露光光を照射して静電潜像を形成する。
これにより、データに対応した静電潜像が各色の像保持体36の表面に形成される。さらに、各色の現像装置40は、この静電潜像を現像し、トナー画像として可視化する。また、各色の像保持体36の表面に形成されたトナー画像は、一次転写ロール44によって転写ベルト22に転写される。
そこで、収容部材26から送出ロール30によって搬送経路28へ送り出されたシート部材Pは、転写ベルト22と二次転写ロール46とが接触する転写位置Tへ送り出される。転写位置Tでは、シート部材Pが転写ベルト22と二次転写ロール46とで挟まれて搬送されることで、転写ベルト22の表面のトナー画像は、シート部材Pに転写される。
シート部材Pに転写されたトナー画像は、定着装置50によってシート部材Pに定着される。そして、トナー画像が定着されたシート部材Pは、搬送ロール32によって装置本体10Aの外部へ排出される。
(要部構成)
次に、定着装置50について説明する。
定着装置50は、装置本体10Aに着脱可能とされており、図5に示されるように、加圧ロール52と、加圧ロール52と装置幅方向で対向している加熱部60とを備えている。さらに、定着装置50は、加圧ロール52を回転させるモータ58(図9参照)と、加圧ロール52を移動させる移動部86(図9参照)と、各部を制御する制御部102(図8参照)とを備えている。
〔加圧ロール52〕
加圧ロール52は、図5に示されるように、装置奥行方向に延びている金属製の軸部54と、軸部54が挿入されている円筒状の弾性層56と、弾性層56を被覆する図示せぬ離型層とを有している。加圧ロール52は、加圧部の一例である。
軸部54は、例えば、鉄鋼、ステンレス又はアルミニウム等の金属材料から形成されており、弾性層56は、例えば、ゴム材料等から形成されており、離型層は、例えば、フッ化エチレン- パーフルオロアルコキシエチレンン共重合体(PFA)等から形成されている。
この構成において、加圧ロール52は、接地され、加熱部60側に付勢されている。さらに、加圧ロール52は、モータ58(図9参照)から回転力が伝達され、図中矢印R1方向に回転する。これにより、回転する加圧ロール52は、トナー画像が転写されたシート部材Pを、後述する無端ベルト62の外周面に加圧する。なお、本実施形態では、弾性層56の外周面の周速度が230〔mm/sec〕となるように、加圧ロール52が回転する。
〔加熱部60〕
加熱部60は、図5に示されるように、装置奥行方向に延びている円筒状の無端ベルト62と、無端ベルト62を加熱するために発熱する発熱板64と、発熱板64の熱を装置奥行方向(無端ベルト62の軸方向)に伝える伝熱部材92とを備えている。さらに、加熱部60は、伝熱部材92を発熱板64に向けて付勢する圧縮コイルスプリング84(以下「スプリング84」)と、発熱板64を保持している保持部材90と、保持部材90を支持しているフレーム80とを備えている。また、加熱部60は、発熱板64の温度を検知する検知部材82(図6参照)を備えている。
-無端ベルト62-
無端ベルト62は、図5に示されるように、外周面で加圧ロール52と接触している。このように、無端ベルト62と加圧ロール52とが接触することで、搬送されるシート部材Pを挟み込むニップNF(図2参照)が形成されている。無端ベルト62は、例えば、外周面にフッ素コートが施されたポリイミド樹脂で形成されており、無端ベルト62の厚さは、100〔μm〕とされている。
また、無端ベルト62の長手方向の両端には、無端ベルト62の内周面を支持する円筒形の支持部材(図示省略)が夫々配置されている。さらに、無端ベルト62の内周面には、発熱板64との摩擦抵抗を低減させるため、潤滑油(液体の一例、例えば、シリコンオイル)が塗布されている。
この構成において、無端ベルト62は、円形状を保った状態で、回転する加圧ロール52と従動して図中矢印R2方向(反時計方向)に回転(周回)する。
-保持部材90-
保持部材90は、図5に示されるように、無端ベルト62の内部に配置されている。この保持部材90は、例えば、LCP(液晶ポリマー)等の樹脂材料で形成されており、装置奥行方向に延びている。そして、保持部材90の長手方向に直交する断面は、加圧ロール52側とは反対側が開口したU字状とされている。そして、保持部材90の熱伝導率は、0.56〔W/mK〕とされている。
さらに、保持部材90において、加圧ロール52側を向いた部分には、発熱板64が図示せぬ接着剤等の取付部材で取り付けられている凹状の取付部90aが形成されている。また、取付部90aにおいて、シート部材Pの搬送方向で下流側の部分には、装置幅方向(加圧ロール52と加熱部60とが対向する方向)に保持部材90を貫通して伝熱部材92の一部が配置されている貫通孔90bが形成されている。そして、この取付部90a、及び貫通孔90bは、装置奥行方向に延びている。
さらに、保持部材90には、図6に示されるように、検知部材82が配置されている貫通孔90cが、装置奥行方向に間隔を空けて複数形成されている。
-フレーム80-
フレーム80は、図5に示されるように、無端ベルト62の内部で、保持部材90を挟んで加圧ロール52の反対側に配置されている。このフレーム80は、板金を折り曲げて形成されており、装置奥行方向に延びている。そして、フレーム80において長手方向に直交する断面は、保持部材90側が開口したU字状とされている。
さらに、U字状とされたフレーム80の先端側の部分に、保持部材90の先端側の部分が図示せぬ接着剤等の取付部材によって取り付けられることで、フレーム80は、保持部材90を支持している。これにより、無端ベルト62の内部には、保持部材90とフレーム80とに囲まれた領域94が形成されている。また、フレーム80の長手方向の両端は、無端ベルト62から外部に突出しており、この突出した部分が、図示せぬ骨格部材に固定されている。
-発熱板64-
発熱板64は、図5に示されるように、無端ベルト62を挟んで加圧ロール52の反対側に配置されており、無端ベルト62の内周面と表面で接触している。この発熱板64は、板面が装置幅方向を向く板状の部材で、無端ベルト62の装置奥行方向の一端側から他端側まで延びている。発熱板64の厚さは、一例として、0.7〔mm〕とされている。
板厚方向から見て、発熱板64は、図3に示されるように、装置奥行方向に延びる矩形状とされている。そして、発熱板64は、電気絶縁性の基材66と、耐熱樹脂材料で形成された絶縁膜68と、電圧印加用の3個の電極72a、72b、72cと、この電極72a、72b、72cに電圧が印加されることで電流が流れる導通部74とを有している。この導通部74には、電流が流れることで熱が生じる抵抗発熱部76a、76b(図中斜線部)が形成されている。ここで、絶縁性とは、電気伝導率が1×10 -10 〔S/m〕以下であることを意味する。
基材66は、電気絶縁性のセラミックスであるアルミナの成形体である。そして、基材66の熱伝導率は、41〔W/mK〕とされている。また、電極72a、72b、72c、及び導通部74は、基材66の表面(無端ベルト62の内周面側の面)に形成されている。具体的には、電極72a、72b、72cは、基材66の装置奥行方向の手前側の部分に形成されており、シート部材Pの搬送方向(図中上下方向、以下「シート搬送方向」)の上流側から下流側へこの順番で並んでいる。
導通部74は、絶縁膜68に被覆されており、電極72aから装置奥行方向の奥側へ延びている第一導通部74aと、電極72bから装置奥行方向の奥側へ延びている第二導通部74bと、電極72cから装置奥行方向の奥側へ延びている第三導通部74cとを有している。さらに、導通部74は、第一導通部74aの終端部と、第二導通部74bの終端部と、第三導通部74cの終端部とをシート搬送方向に延びて連結する連結部74dを有している。
第一導通部74aには抵抗発熱部76aが形成されており、抵抗発熱部76aは、搬送される最も大きいサイズのシート部材P(図中P1)が通る範囲を装置奥行方向(シート部材P1の幅方向)で含むように形成されている。第二導通部74bには抵抗発熱部76bが形成されており、抵抗発熱部76bは、搬送される最も小さいサイズのシート部材P(図中P2)が通る範囲を装置奥行方向で含むように形成されている。そして、抵抗発熱部76aは、抵抗発熱部76bと比して長くなっている。また、抵抗発熱部76aの幅(シート搬送方向の長さ)と、抵抗発熱部76bの幅(シート搬送方向の長さ)とは、同様とされている。抵抗発熱部76a、76bは発熱部の一例である。
なお、画像形成装置10では、シート部材Pを幅方向の両側から支持し、幅方向中央を基準として位置を揃えるセンターレジ方式が採用されている。
この構成において、トナー画像をシート部材Pに定着させるために、無端ベルト62を加熱する加熱モード(立上げモード)のときに、制御部102(図8参照)は、図示せぬ電源スイッチをオンして、シート部材Pのサイズに係わらず、電極72aと電極72cとに電圧を印加する。これにより、加熱モードのときに、第一導通部74aに形成された抵抗発熱部76aで熱が生じ、第二導通部74bに形成された抵抗発熱部76bで熱が生じない。換言すれば、加熱モードのときに、シート搬送方向において、伝熱部材92から最も遠い抵抗発熱部76aで熱が生じ、シート搬送方向において、伝熱部材92から最も近い抵抗発熱部76bで熱が生じない。
-伝熱部材92-
伝熱部材92は、図5に示されるように、保持部材90とフレーム80とに囲まれた領域94に配置されており、装置奥行方向から見て装置幅方向に延びる長方形状とされている。さらに、伝熱部材92の発熱板64側の部分は、保持部材90の貫通孔90cに挿入されている。伝熱部材92は、伝熱部の一例である。
そして、伝熱部材92において発熱板64側の端面は、発熱板64の裏面においてシート搬送方向(図中上下方向)の下流側の部分に接触している。具体的には、伝熱部材92の端面は、図2に示されるように、シート搬送方向において 抵抗発熱部76a、及び抵抗発熱部76bが形成されている部分とは異なる部分の発熱板64の裏面と接触している。換言すれば、伝熱部材92の端面は、シート搬送方向において 熱が生じる部分とは異なる部分の発熱板64の裏面と接触している。
この伝熱部材92は、直方体状の本体部92aと、本体部92aの発熱板64側の端面に重ねられたシリコンのシート材92bとを備えている。本体部92aは、銅によって形成されており、本体部92aの熱伝導率は403〔W/mK〕とされている。このように、本体部92aの熱伝導率は、発熱板64の基材66の熱伝導率と比して高くされている。
ここで、前述したように、シート搬送方向において、伝熱部材92と抵抗発熱部76a、76bとは異なる位置に配置されている。これにより、抵抗発熱部76a、76bで生じた熱は、基材66をシート搬送方向の下流側へ流れてから伝熱部材92に伝わる。そして、伝熱部材92は、熱を装置奥行方向に伝える。このように、伝熱部材92には、基材66をシート搬送方向の下流側へ流れた熱が伝えられるようになっている。
-検知部材82-
検知部材82は、装置奥行方向に間隔を空けて複数設けられており、図6に示されるように、保持部材90に形成された貫通孔90cに一部が配置されている。そして、検知部材82は、発熱板64の裏面においてシート搬送方向(図中上下方向)の上流側の部分に接触している。具体的には、検知部材82は、シート搬送方向において 抵抗発熱部76a、76b(図3参照)が形成されている部分の発熱板64の裏面に接触している。
この構成において、検知部材82は、発熱板64の温度を検知する。そして、検知部材82によって検知される発熱板64の温度が予め決められた範囲に入るように、制御部102(図8参照)は、図示せぬ電源スイッチのオンオフを制御して、電極72a、72b、72c(図3参照)への電圧の印加、又は印加を停止させるようになっている。
-スプリング84-
スプリング84は、図5に示されるように、伝熱部材92を挟んで発熱板64の反対側で、装置幅方向に延びている。そして、スプリング84は、フレーム80と伝熱部材92との間に挟まれて配置されている。さらに、スプリング84は、図7に示されるように、装置奥行方向に間隔を空けて複数設けられている。
この構成において、複数のスプリング84は、伝熱部材92を発熱板64へ向けて付勢している。スプリング84は、付勢部の一例である。
〔移動部86〕
移動部86は、図9に示されるように、加圧ロール52の装置奥行方向の両側に配置されており、既知の機械要素を組み合わせて構成されている。
そして、移動部86は、加圧ロール52を装置幅方向及び装置上下方向へ移動させて、ニップNF(図1、図2参照)のニップ幅を変化させるようになっている。具体的には、移動部86は、加圧ロール52と無端ベルト62との間でシート部材Pを挟み込んでトナー画像をシート部材Pに定着させる場合のニップ幅とする第一の位置(図2参照)と、第一の位置と比してニップ幅が狭くされた第二の位置(図1参照)とに加圧ロール52を移動させる。このように、移動部86は、ニップNFのニップ幅を変化させるニップ幅変化手段として機能している。
具体的には、トナー画像をシート部材Pに定着させるために、無端ベルト62を加熱する加熱モード(立上げモード)のときに、制御部102は、移動部86を制御して、加圧ロール52を第二の位置へ移動させる。これに対して、トナー画像が形成されたシート部材Pを加熱、加圧してトナー画像を定着させる定着モードのときに、制御部102は、移動部86を制御して、加圧ロール52を第一の位置へ移動させる。
図1に示されるように、加熱モードで加圧ロール52が第二の位置に配置された状態で、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さをL1とする。なお、前述したように、加熱モードのときに、第一導通部74aに形成された抵抗発熱部76aで熱が生じる。また、この状態で、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さをS1とする。具体的には、加熱モードで加圧ロール52が第二の位置に配置された状態で、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、抵抗発熱部76aの一部、及び伝熱部材92の一部が含まれている。また、ニップNFの範囲については、圧力を検出可能な素子がマトリックス状に配置されたシート材をニップNFに挟み込み、閾値以上の電圧が発生した部位がニップNFと判定される。
さらに、図2に示されるように、定着モードで加圧ロール52が第一の位置に配置された状態で、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さをL2とする。なお、定着モードのときに、第一導通部74aに形成された抵抗発熱部76aで熱が生じると仮定する。また、この状態で、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さをS2とする。具体的には、定着モードで加圧ロール52が第一の位置に配置された状態で、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、抵抗発熱部76aの全部、及び伝熱部材92の全部が含まれている。そうすると、下記式(1)が成り立つように、加圧ロール52の第二の位置と、加圧ロール52の第一の位置とが決められている。
L2-L1<S2-S1・・・・・・(1)
この式(1)より、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さが変化することが分かる。つまり、移動部86は、ニップNFの範囲に含まれている伝熱部材の長さを変化させるニップ内伝熱長さ変化手段として機能している。
具体的には、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS1(図1参照)は、定着モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS2(図2参照)と比して短くなっている。
このため、加熱モードにおける発熱板64と伝熱部材92との圧接力は、定着モードにおける発熱板64と伝熱部材92との圧接力と比して小さくなっている。つまり、移動部86は、伝熱部材92と発熱板64との圧接力を変化させる圧接力変化手段として機能している。
また、加熱モードにおける発熱板64と伝熱部材92との圧接力は、定着モードにおける発熱板64と伝熱部材92との圧接力と比して小さくなっている。そうすると、加熱モードにおける発熱板64と伝熱部材92との間の熱伝達率は、定着モードにおける発熱板64と伝熱部材92との間の熱伝達率と比して低くなっている。換言すれば、定着モードにおける発熱板64と伝熱部材92との間の熱伝達率は、加熱モードにおける発熱板64と伝熱部材92との間の熱伝達率と比して高くなっている。つまり、移動部86は、伝熱部材92と発熱板64との間の熱伝達率を変化させる伝達率変化手段として機能している。
また、式(1)より、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さが変化する。つまり、移動部86は、ニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部の長さを変化させるニップ内発熱部長さ変化手段として機能している。
〔制御部102〕
制御部102は、図8に示されるように、検知部材82の検知結果に基づいて、図示せぬ電源スイッチのオンオフを制御して、電極72a、72b、72cへの電圧の印加を制御するようになっている。なお、制御部102による各部の制御については、後述する作用と共に説明する。
(作用)
次に、定着装置50の作用について、比較形態に係る定着装置550と比較しつつ説明する。先ず、比較形態に係る定着装置550の構成について、定着装置50と異なる部分を主に説明する。また、定着装置550の作用については、定着装置50と異なる部分を主に説明する。なお、定着装置50、550の作用については、最も大きいサイズのシート部材P1にトナー画像を定着する場合について説明する。
-定着装置550の構成-
定着装置550は、定着装置50の構成に対して移動部を備えていない。定着装置550は、移動部を備えていない点を除いて、定着装置50と同様である。
そして、定着装置550では、図11に示されるように、加熱モードと定着モードとでニップNFのニップ幅は、変化しないようになっている。具体的には、定着装置550では、常に、加圧ロール52は第一の位置に配置されている。つまり、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、抵抗発熱部76aの全部、及び伝熱部材92の全部が含まれている。
換言すれば、定着装置550では、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さから、定着モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さを減じた値は、ゼロである。さらに換言すれば、加熱モードのときにニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さと、定着モードのときにニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さとが同じである。
-定着装置50、550の作用-
図4に示す定着装置50が稼動する前の状態では、電極72a、72b、72c(図3参照)への電圧の印加は停止されており、さらに、加圧ロール52は、第二の位置に配置され、加圧ロール52の回転は、停止している。
一方、図11に示す定着装置550が稼動する前の状態では、電極72a、72b、72c(図3参照)への電圧の印加は停止されており、さらに、加圧ロール52は、第一の位置に配置され、加圧ロール52の回転は、停止している。
シート部材Pに転写されたトナー画像をシート部材Pに定着する場合には、制御部102(図8参照)は、定着装置50、550を加熱モードに移行させる。具体的には、制御部102は、モータ58を制御して加圧ロール52へ回転力を伝達させる。そして、図4、図11に示す加圧ロール52が、図中矢印R1方向に回転する。これにより、加圧ロール52と接触する無端ベルト62は、回転する加圧ロール52と従動して図中矢印R2方向に回転する。
無端ベルト62が回転すると、制御部102は、図示せぬ電源スイッチをオンして、電極72a、72c(図3参照)への電圧の印加を開始する。これにより、抵抗発熱部76aで熱が生じて、発熱板64が発熱する。そして、発熱板64は、回転している無端ベルト62を内周面から加熱する。
ここで、図11に示す定着装置550では、常に、加圧ロール52は第一の位置に配置されている。このため、定着装置550の加熱モードでのニップ幅は、定着装置50の加熱モードでのニップ幅と比して広くなっている。
定着装置550の加熱モードでのニップ幅が広くなっているため、発熱板64から無端ベルト62を介して加圧ロール52へ伝達される熱量が増えてしまう。このため、定着装置550では、定着装置50を用いる場合と比して、発熱板64が規定の温度に達するのに時間を要してしまう。
また、定着装置550では、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、伝熱部材92の全部が含まれている。このため、定着装置550では、加熱モードにおける発熱板64と伝熱部材92との間の熱伝達率は、定着装置50の加熱モードにおける発熱板64と伝熱部材92との間の熱伝達率と比して高くなっている。
また、定着装置550では、加熱モードにおける発熱板64と伝熱部材92との間の熱伝達率が高くなっているため、定着装置50を用いる場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64から伝熱部材92へ伝達される熱量が増える。換言すれば、定着装置50では、定着装置550を用いる場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64から伝熱部材92へ伝達される熱量が減る。
一方、定着装置50では、前述した式(1)が成り立っている。つまり、定着モードにおいてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS2から加熱モードにおいてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS1を減じた値を「S2-S1」とする。また、定着モードにおいてニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さL2から加熱モードにおいてニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さL1を減じた値を「L2-L1」とする。そうすると、「S2-S1」は、「L2-L1」と比して大きくなっている。
すなわち、ニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さが少なくなる影響が、ニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さが少なくなる影響と比して大きくなっている。
以上より、定着装置50では、定着装置550を用いる場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
そして、全ての検知部材82(図6参照)によって検知された温度が、200〔℃〕(規定の温度の一例)に達すると、無端ベルト62を加熱する加熱モード(立上げモード)から、トナー画像をシート部材Pに定着する定着モードへ移行する。
具体的には、定着装置50では、制御部102が、移動部86を制御して、加圧ロール52を第一の位置へ移動させる。さらに、最も大きいサイズのシート部材P1にトナー画像を定着するため、定着モードへ移行すると、制御部102は、電極72a、72cへの電圧の印加を継続する。
そして、加熱部60と加圧ロール52とが、トナー画像が転写されたシート部材Pを挟み込んで搬送することで、トナー画像がシート部材Pに定着される。また、加熱部60と加圧ロール52とがトナー画像が転写されたシート部材Pを挟み込んで搬送することで、シート部材Pが通過する部分の発熱板64の熱がシート部材Pに奪われる。これにより、発熱板64の温度が低下する。そこで、制御部102は、一例として、発熱板64の温度が190〔℃〕以上230〔℃〕以下になるように、図示せぬ電源スイッチのオンオフを制御する。
そして、シート部材Pへのトナー画像を形成する一連の動作が終了し、定着装置50、550の稼動が停止されると、制御部102は、図示せぬ電源スイッチをオフして、電極72a、72c(図3参照)への電圧の印加を停止させる。さらに、制御部102は、モータ58を制御し、加圧ロール52の回転を停止させる。また、定着装置50では、制御部102は、移動部86を制御し、加圧ロール52を第二の位置へ移動させる。
なお、最も小さいサイズのシート部材P2にトナー画像を定着する場合には、定着モードへ移行すると、制御部102は、図示せぬ電源スイッチのオンオフを制御して、電極72a、72cへの電圧の印加を停止し、電極72b、72cへの電圧の印加を開始する。これにより、抵抗発熱部76bで熱が生じる。
また、最も小さいサイズのシート部材P2より大きいサイズのシート部材Pの場合には、定着モードへ移行すると、制御部102は、電極72a、72cへの電圧の印加を継続する。
(まとめ)
以上説明したように、定着装置50では、前述した式(1)を満たしているため、定着装置550を用いる場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
また、定着装置50では、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、最も長い抵抗発熱部76aの少なくとも一部が含まれている。そして、加熱モードのときに、抵抗発熱部76aで熱が生じている。このため、加熱モードのときに、熱が生じる抵抗発熱部が他の抵抗発熱部に対して短い場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
また、定着装置50では、加熱モードのときに、シート搬送方向において、伝熱部材92に最も近い抵抗発熱部76bとは異なる抵抗発熱部76aで熱が生じている。換言すれば、シート搬送方向において、伝熱部材92から最も近い抵抗発熱部76bだけで熱が生じていない。このため、加熱モードのときに、伝熱部材92から最も近い抵抗発熱部だけで熱が生じている場合と比して、加熱モードのときに、抵抗発熱部から伝熱部材へ伝わる熱量が減るため、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
また、定着装置50では、加熱モードのときに、シート搬送方向において、伝熱部材92から最も遠い抵抗発熱部76aで熱が生じる。このため、加熱モードのときに、伝熱部材92から最も遠い抵抗発熱部とは異なる抵抗発熱部だけで熱が生じる場合と比して、加熱モードのときに、抵抗発熱部から伝熱部材へ伝わる熱量が減るため、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
また、画像形成装置10では、定着装置550を備える場合と比して、立上げ後の最初の一枚を出力するために要する時間が短くなる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る定着装置、及び画像形成装置の一例を図12に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。第2実施形態に係る定着装置150においては、加圧ロール52が第二の位置に配置された状態のみ、第1実施形態に係る定着装置50と異なる。
具体的には、図12に示されるように、加圧ロール52が第二の位置に配置された状態で、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、抵抗発熱部76aの全部が含まれている。つまり、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さをL1と、定着モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている抵抗発熱部76aの長さをL2とは、同様の値である。なお、同様の値とは、組付けばらつき、及び移動ばらつき等を考慮して、一方の値が他方の値の90〔%〕以上110〔%〕以下になることである。
これにより、定着装置150では、抵抗発熱部76aの長さL1に対して抵抗発熱部76aの長さL2が短い場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る定着装置、及び画像形成装置の一例を図13~図15に従って説明する。なお、第3実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
第3実施形態に係る定着装置250に備えられた発熱板264は、図13に示されるように、装置奥行方向に延びる矩形状とされている。そして、発熱板264は、電気絶縁性の基材66と、耐熱樹脂材料で形成された絶縁膜68と、電圧印加用の4個の電極272a、272b、272c、272dと、この電極272に電圧が印加されることで電流が流れる導通部274とを有している。この導通部274には、電流が流れることで熱が生じる抵抗発熱部276a、276b、276c、(図中斜線部)が形成されている。
電極272a、電極272b、電極272c、及び電極272dは、シート搬送方向の上流側から下流側へこの順番で並んでいる。
導通部74は、絶縁膜68に被覆されており、電極272aから装置奥行方向の奥側へ延びている第一導通部274aと、電極272bから装置奥行方向の奥側へ延びている第二導通部274bと、電極272cから装置奥行方向の奥側へ延びている第三導通部274cとを有している。さらに、導通部74は、電極272dから装置奥行方向の奥側へ延びている第四導通部274dと、第一導通部274aの終端部、第二導通部274bの終端部、第三導通部274cの終端部、及び第四導通部274dの終端部をシート搬送方向に延びて連結する連結部274eを有している。
第一導通部274aには、抵抗発熱部276aが形成されており、抵抗発熱部276aは、画像形成装置10に最も多く用いられるサイズのシート部材P(図中P3)が通る範囲を装置奥行方向(シート部材P3の幅方向)で含むように形成されている。また、第二導通部274bには、抵抗発熱部276bが形成されており、抵抗発熱部276bは、最も大きいサイズのシート部材P1が通る範囲を装置奥行方向で含むように形成されている。さらに、第三導通部274cには、抵抗発熱部276cが形成されており、抵抗発熱部276cは、最も小さいサイズのシート部材P2が通る範囲を装置奥行方向で含むように形成されている。
つまり、抵抗発熱部276b、抵抗発熱部276a、及び抵抗発熱部276cは、この順番で長さが短くなっている。さらに、抵抗発熱部276aの幅(シート搬送方向の長さ)と、抵抗発熱部276bの幅(シート搬送方向の長さ)と、抵抗発熱部276cの幅(シート搬送方向の長さ)とは、同様とされている。抵抗発熱部276a、276b、276cは発熱部の一例である。
また、図15に示されるように、シート搬送方向において、抵抗発熱部276a、276b、276cは、伝熱部材92の上流側に配置されている。
この構成において、定着モードで加圧ロール52が第一の位置に配置された状態では、図15に示されるように、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、抵抗発熱部276a、276b、276cの全部が含まれている。さらに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、伝熱部材92の全部が含まれている。
そして、最も大きいサイズのシート部材P1に画像を定着する場合には、定着モードのときに、電極272bと電極272dとに電圧が印加され、抵抗発熱部276bで熱が生じる。また、最も小さいサイズのシート部材P2に画像を定着する場合には、定着モードのときに、電極272cと電極272dとに電圧が印加され、抵抗発熱部276cで熱が生じる。さらに、最も多く用いられるサイズのシート部材P3に画像を定着する場合には、定着モードのときに、電極272aと電極272dとに電圧が印加され、抵抗発熱部276aで熱が生じる。また、それ以外のサイズのシート部材Pの場合には、装置奥行方向(シート部材Pの幅方向)でそのサイズのシート部材Pを含み、かつ、最も短い抵抗発熱部276で熱が生じる。
一方、加熱モードで加圧ロール52が第二の位置に配置された状態では、図14に示されるように、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、抵抗発熱部276a、276b、276cの全部が含まれている。また、装置奥行方向で最も長い抵抗発熱部276bは、シート搬送方向においてニップNFの中央側の部分に配置されている。ここで、シート搬送方向においてニップNFの中央側の部分とは、シート搬送方向にニップNFを三等分した場合に中央側の部分である。
さらに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、伝熱部材92の全部が含まれていない。換言すれば、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS1は、ゼロである。さらに換言すれば、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS1が無い。
そして、加熱モードのときに、全ての電極272a、272b、272c、272dに電圧が印加され、全ての抵抗発熱部276a、276b、276cで熱が生じる。つまり、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれて熱が生じる抵抗発熱部の長さL1は、図に示す抵抗発熱部276aの長さL1-1、抵抗発熱部276bの長さL1-2、及び抵抗発熱部276cの長さL1-3を足した値である。同様に、定着モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれて熱が生じる抵抗発熱部の長さL2は、抵抗発熱部276aで熱が生じている場合は図15に示すL2-1で、抵抗発熱部276bで熱が生じている場合は図15に示すL2-2である。さらに、抵抗発熱部276cで熱が生じている場合は図15に示すL2-3である。
以上説明したように、定着装置250では、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に、抵抗発熱部276a、276b、276cの全部が含まれている。さらに、加熱モードのときに、全ての抵抗発熱部276a、276b、276cで熱が生じる。このため、加熱モードのときに、熱が生じていない抵抗発熱部が有る場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
また、定着装置250では、加熱モードのときに、最も長い抵抗発熱部276bは、シート搬送方向においてニップNFの中央側の部分に配置されている。このため、抵抗発熱部276bがニップNFの端側の部分に配置されている場合と比して、加熱モードのときに、加圧ロール52と無端ベルト62との相対位置がばらついても、最も長い抵抗発熱部276bがニップNFの範囲から外れるのが抑制される。これにより、抵抗発熱部276bがニップNFの端側の部分に配置されている場合と比して、加熱モードのときに、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
また、定着装置250では、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS1が無い(長さがゼロである)。このため、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS1がある場合(ゼロより大きい場合)と比して、発熱板64から伝熱部材92へ伝達される熱量が減る。これにより、加熱モードのときに、シート搬送方向においてニップNFの範囲に含まれている伝熱部材92の長さS1がある場合(ゼロより大きい場合)と比して、加熱モードのときに、発熱板64が規定の温度に達するのに要する時間が短くなる。
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、伝熱部材92は、発熱板64側の端面にシリコンのシート材92bを備えたが、このシート材については特に備えていなくてもよい。
また、上記実施形態では、シート搬送方向において、上流側から抵抗発熱部76、276と伝熱部材92とがこの順番に並んでいたが、シート搬送方向において、上流側から伝熱部材と抵抗発熱部とがこの順番で並んでもよい。
また、上記実施形態では、加圧ロール52が移動することで、ニップ幅が変化したが、加熱部60及び加圧ロール52の少なくとも一方が移動することでニップ幅が変化すればよい。
また、上記実施形態では、付勢部としてスプリング84を用いたが、伝熱部材92を発熱板64に向けて付勢する部材であれば、弾性パット等の他の弾性部材を用いてもよい。
また、上記実施形態では、センターレジ方式を例にとって説明したが、シート部材Pの幅方向の一端を基準とするサイドレジ方式であってもよい。
10 画像形成装置
18 画像形成ユニット(形成部の一例)
50 定着装置
52 加圧ロール(加圧部の一例)
62 無端ベルト
64 発熱板
76a 抵抗発熱部(発熱部の一例)
76b 抵抗発熱部(発熱部の一例)
84 スプリング(付勢部の一例)
86 移動部
92 伝熱部材(伝熱部の一例)
150 定着装置
250 定着装置
264 発熱板
276a 抵抗発熱部(発熱部の一例)
276b 抵抗発熱部(発熱部の一例)
276c 抵抗発熱部(発熱部の一例)
NF ニップ
P シート部材
P1 シート部材
P2 シート部材
P3 シート部材

Claims (9)

  1. 周方向に回転し、搬送される記録媒体と外周面で接触する無端ベルトと、
    前記無端ベルトの軸方向に延び熱が生じる発熱部が形成され、前記無端ベルトの内周面と表面で接触して前記軸方向に延びている発熱板と、
    記録媒体の搬送方向において前記発熱部が形成されている部分とは異なる部分の前記発熱板の裏面に接触し、前記発熱部で生じる熱を前記軸方向に伝える伝熱部と、
    前記伝熱部を前記発熱板に向けて付勢する付勢部と、
    前記無端ベルトを挟んで前記発熱板の反対側に配置され、前記無端ベルトとの間でニップを形成し、搬送される記録媒体を前記無端ベルトに加圧する加圧部と、
    前記加圧部を前記無端ベルトに対して相対移動させて、前記無端ベルトを加熱する加熱モードのときに、記録媒体に画像を定着する定着モードのときと比して、前記ニップのニップ幅を狭くする移動部と、を備え、
    前記加熱モードのときに、記録媒体の搬送方向において前記ニップの範囲に含まれて熱が生じる前記発熱部の長さをL1とし、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれている前記伝熱部の長さをS1とし、
    前記定着モードのときに、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれて熱が生じる前記発熱部の長さをL2とし、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれている前記伝熱部の長さをS2とすると下記式(1)を満足している定着装置。
    L2-L1<S2-S1・・・・・・(1)
  2. 前記長さL1と前記長さL2とは、同様の値である請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記軸方向の長さが異なる複数の前記発熱部が、前記搬送方向に並べられており、
    前記加熱モードのときに、前記搬送方向において前記ニップの範囲に、前記軸方向に最も長い前記発熱部が含まれ、前記加熱モードのときに、前記軸方向に最も長い前記発熱部で熱が生じる請求項1又は2に記載の定着装置。
  4. 前記加熱モードのときに、全ての前記発熱部が、前記搬送方向において前記ニップの範囲に含まれ、前記加熱モードのときに、全ての前記発熱部で熱が生じる請求項3に記載の定着装置。
  5. 前記軸方向に最も長い前記発熱部は、前記加熱モードのときに、前記搬送方向において前記ニップの中央側の部分に配置されている請求項4に記載の定着装置。
  6. 前記軸方向の長さが異なる複数の前記発熱部が、前記搬送方向に並べられており、
    前記加熱モードのときに、前記搬送方向において、前記伝熱部に最も近い前記発熱部で熱が生じておらず、前記伝熱部に最も近い前記発熱部とは異なる前記発熱部で熱が生じる請求項1又は2に記載の定着装置。
  7. 前記加熱モードのときに、前記搬送方向において、前記伝熱部から最も遠い前記発熱部で熱が生じる請求項6に記載の定着装置。
  8. 前記長さS1の長さが無い請求項1~7の何れか1項に記載の定着装置。
  9. 記録媒体に画像を形成する形成部と、
    記録媒体に形成された画像を記録媒体に定着する請求項1~8の何れか1項に記載された定着装置と、
    を備えた画像形成装置。
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