以下、本発明を図面に基づいて更に説明する。なお、以下に述べる図面において、同じ符号は同様の部材又は部位を示す。
<第一の多室包装袋及びこれを用いた包装体の製造方法>
まず、図1〜図10に基づいて、本発明の第一の多室包装袋の一例と、これを用いた本発明の包装体の製造方法の一例を説明する。
図1は本発明の第一の多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図、図2は本発明の第一の多室包装袋の斜視図、図3は本発明の第一の多室包装袋の拡大横断面図、図4は本発明の第一の多室包装袋を把持具にセットした状態の斜視図、図5は本発明の第一の多室包装袋を用いた第一充填工程の説明図、図6は本発明の第一の多室包装袋を用いた第一シール工程の説明図、図7は本発明の第一の多室包装袋を用いた第二充填工程の説明図、図8は本発明の第一の多室包装袋を用いた第二シール工程の説明図、図9は本発明の第一の多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図、図10は本発明の第一の多室包装袋を用いて製造された包装体の他の例を示す平面図である。
図1及び図2に示されるように、本例の多室包装袋(第一の多室包装袋)4Aは、一方のフィルム1、分割フィルム2及び他方のフィルム3の三枚のフィルムで構成されている。一方のフィルム1と他方のフィルム3は、多室包装袋4Aの表裏に位置するもので、いずれが表面でも裏面でもよいが、説明の便宜上、一方のフィルム1を袋の表面側に位置する表面フィルム、他方のフィルム3を袋の裏面側に位置する裏面フィルムとして説明する(後述する第二〜第四の多室包装袋4B〜4Dについても同じ)。
本例における上記表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3は同形同大となっている。多室包装袋4Aは、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3を、表面フィルム1と裏面フィルム3の間に分割フィルム2を挟み込んで重ね、周縁部の三方を熱融着した袋状をなしている。5、6は袋の三方に形成された熱融着部で、5は側縁融着部、6は底縁融着部である。
分割フィルム2は、上記熱融着が施されていない一縁部に形成された、表面フィルム1と裏面フィルム3間の開口部7を二分しており、分割フィルム2を境にして、表面フィルム1側と裏面フィルム3側とにそれぞれ収納部8a,8bが形成されている。収納部8a,8bは、上記分割フィルム2で二分された開口部7の一方と他方である開口部7a,7bをそれぞれ有するものとなっている。裏面フィルム3の開口部7(7b)側の縁部の中央部には、裏面フィルム3側から分割フィルム2を吸引することができるよう、裏面フィルム3を貫通する吸引孔9が形成されている。
多室包装袋4Aには、表面フィルム1と分割フィルム2間に形成された表面フィルム1側の収納部8aと、裏面フィルム3と分割フィルム2間に形成された裏面フィルム3側の収納部8bとに分けて、2種類の被包装物を充填することができる。被包装物は、表面フィルム1側の収納部8aと、裏面フィルム3側の収納部8bとを別々に開くこと(開口部7aと7bを別々に開くこと)で、充填箇所を誤ることなく自動充填することができる。
図3に示されるように、表面フィルム1は、基材層1aの内面側(収納部8a側)に低融点シーラント層1bを積層したもので、裏面フィルム3は、基材層3aの内面側(収納部8b側)に、低融点シーラント層1bより融点が高い高融点シーラント層3cを積層したものとなっている。また、分割フィルム2は、基材層2aの片面に低融点シーラント層2bを積層し、他面に高融点シーラント層2cを積層したもので、低融点シーラント層2bを表面フィルム1の低融点シーラント層1bと対向させ、高融点シーラント層2cを裏面フィルム3の高融点シーラント層3cと対向させている。側縁融着部5と底縁融着部6(図2参照)は、高融点シーラント層2c,3c同士の熱融着と、低融点シーラント層1b,2b同士の熱融着とにより形成されている。
低融点シーラント層1b,2bと、高融点シーラント層2c,3cとは、それぞれのシール温度領域をずらすことで、後述する第一シール工程において、高融点シーラント層2c,3c同士を熱融着させることなく、低融点シーラント層1b,2b同士を選択的に熱融着可能とするためのものである。このため、高融点シーラント層2c,3cの融点は、低融点シーラント層1b,2bの融点より20℃以上高いことが好ましい。高融点シーラント層2c,3cの融点が低過ぎると、高融点シーラント層2c,3cと低融点シーラント層1b,2bのシール温度領域が接近し、上記選択的な熱融着が行いにくくなる。上限は、一般的なシーラント層の融点や、基材層1a,2a,3a,の融点などから定まる。また、低融点シーラント層1bと2b、並びに、高融点シーラント層2cと3cとしては、一般的には同じ合成樹脂が用いられるが、異なる合成樹脂を用いることもできる。異なる合成樹脂を用いる場合、融点の低い方の高融点シーラント層2c又は3cの融点が、融点の高い方の低融点シーラント層1b又は2bの融点より20℃以上高いことが好ましい。なお、本発明において融点とは、JIS−K−7121に基づいて測定した値をいう。
表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の各基材層1a,2a,3aとしては、合成樹脂の単層又は積層フィルムを用いることができる。積層フィルムとしては、合成樹脂層同士を積層したものの他、合成樹脂層と、金属その他の無機物層や紙層などを積層したものでもよい。また、各基材層1a,2a,3aとしては、それぞれ同じ構成のフィルムでも、異なる構成のフィルムでもよい。
次に、上記多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法の一例について説明する。
上記多室包装袋4Aを用いた包装体の製造は、例えば図4に示されるような把持具10,10で多室包装体4Aを立てた状態で保持して行うことができる。
図4に示されるように、多室包装袋4を、側縁融着部5,5の上部を把持具10,10で把持して吊り下げ、表面フィルム1と裏面フィルム3の外面に向かってそれぞれ進退可能な一対の吸引盤11a,11b間に位置させる。この把持具10,10としては、側縁融着部5,5を挟み付けて保持するクリップ状のものを用いることができる。また、両把持具10,10は、収納部8a,8bを大きく開口させることができるようにすると共に、この開放に伴って多室包装袋4Aに無理な力が加わらないよう、対向方向に弾性的に進退可能としておくことが好ましい。
表面フィルム1側の収納部8a(図2参照)と、裏面フィルム3側の収納部8b(図2参照)の選択的開放は、上記吸引盤11a,11bの進退と吸引によって行われる。吸引盤11a,11bによる吸引位置については後述するが、この吸引位置の調節は、吸引盤11a,11b間における多室包装袋4Aの位置を調節することで行うこともできる。しかし、吸引位置の調節を行いやすくするために、上記吸引盤11a,11bは、対向する表面フィルム1又は裏面フィルム3に沿って上下左右に移動可能としておくことが好ましい。
まず、表面フィルム1側の収納部8aを開放して被包装物を充填する第一の充填工程について説明する。
図5に示されるように、両吸引盤11a,11bを、表面フィルム1と裏面フィルム3とに向かって前進させ、表面フィルム1の開口部7側の縁部の中央部付近と、裏面フィルム3の吸引孔9の部分とにそれぞれ当接させて吸引する。これによって、吸引盤11aに表面フィルム1が吸着される。また、吸引盤11bには吸引孔9を介して分割フィルム2の開口部7側の縁部が吸引されて吸着されると共に、裏面フィルム3の吸引孔9の周囲も吸着される。この状態で吸引盤11a,11bを後退させると、表面フィルム1と、分割フィルム2と一緒に吸引された裏面フィルム3とがそれぞれ外方へ引っ張られて、表面フィルム1側の収納部8aの開口部7aが広げられる。この時、裏面フィルム3側の収納部8b(図2参照)の開口部7bは、裏面フィルム3が分割フィルム2と共に吸引盤11bに吸着されて閉じられているので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム1側の収納部8aに自動充填することができる。
前記のように、把持具10,10を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、両吸引盤11a,11bを後退させて表面フィルム1と裏面フィルム3を外方へ引っ張た時に、両把持具10,10が弾性的に対向方向に前進し、多室包装袋4Aに過剰な張力が働くのを防止することができる。また、表面フィルム1側の収納部8aに被包装物を充填した後、両吸引盤10a,10bを前進させると、両把持具10,10は弾性的に後退し、これに伴って収納部8aの開口部7aを閉じた状態に戻すことができる。
次に、被包装物を充填した表面フィルム1側の収納部8aを封止する第一シール工程を施す。
第一シール工程は、上記第一充填工程の後、図6に示されるように、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部を重ねてシールバー12,12で挟み、表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士を熱融着することで行われる。この時、表面フィルム1と分割フィルム2だけではなく、裏面フィルム3もシールバー12,12に挟み込まれる。しかし、図3で説明した高融点シーラント層2c,3cを当該高融点シーラント層2c,3cのシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層1b,2bを当該低融点シーラント層1b,2bのシール温度領域まで加熱することにより、高融点シーラント層2c,3cが対向している裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7側の縁部を熱融着させることなく、低融点シーラント層1b,2bが対向している表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部のみを熱融着させることができる。つまり、裏面フィルム3側の収納部8bを封止することなく、表面フィルム1側の収納部8aのみを封止することができる。
次に、裏面フィルム3側の収納部8bを開放して被包装物を充填する第二の充填工程を施す。
第二充填工程は、上記第一シール工程の後、図7に示されるように、吸引盤11a,11bで表面フィルム1と裏面フィルム3を吸引して外方へ引っ張ることで行われる。図7中13’は上記第一シール工程で形成した上縁融着部(表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士の熱融着部)である。
表面フィルム1に対向する吸引盤11aを、上記上縁融着部13’が形成された、表面フィルム1の開口部7側の縁部中央部付近に当接させ、裏面フィルム3に対向する吸引盤11bを、吸引孔9の位置からずれた、裏面フィルム3の開口部7側の縁部に当接させてそれぞれ吸引する。表面フィルム1と裏面フィルム3とが吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤11a,11bを後退させると、表面フィルム1が上縁融着部13’で接合された分割フィルム2を伴って外方へ引っ張られると共に、裏面フィルム3が外方へ引っ張られて、裏面フィルム3側の収納部8bの開口部7bが開放される。この時、表面フィルム1側の収納部8aの開口部7aは上縁融着部13’で封止されているので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に裏面フィルム3側の収納部8bに自動充填することができる。
なお、把持具10,10を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、この第二充填工程においても、前記第一充填工程と同様に進退して、多室包装袋4Aへ過剰な負荷が加わるのを防止することができる。
更に、被包装物を充填した裏面フィルム3側の収納部8bを封止する第二シール工程を施す。
第二シール工程は、上記第二充填工程の後、上縁融着部13’で接合された表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部と、裏面フィルム3の開口部7側の縁部とを重ね、図8に示されるように、シールバー12,12で挟み、裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士を熱融着することで行われる。この第二シール工程においては、図3で説明した高融点シーラント層2c,3cを当該高融点シーラント層2c,3cのシール温度領域まで加熱する。これにより、高融点シーラント層2c,3cが対向している裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7側の縁部が熱融着され、裏面フィルム3側の収納部8bが封止される。同時に、上記高融点シーラント層2c,3cより融点が低い低融点シーラント層1b,2bもそのシール温度領域まで加熱されることになり、低融点シーラント層1b,2bが対向している表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部はいわば再熱融着されることになる。
上記第二シール工程で、図9に示されるように、吸引孔9を内包する上縁融着部13を形成して開口部7(7a,7b)を封止し、包装体の製造を完了する。図9に示される上縁融着部13は、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部が相互に熱融着された部分である。
ところで、図9に示される包装体は、上縁融着部13に吸引孔9の跡が、裏面フィルム3側のみではあるが、凹部として残る。そこで、図10に示されるように、上記上縁融着部13の形成後、吸引孔9部分を打ち抜いて、吸引孔9を内包する単一の貫通孔を吊り下げ孔14として形成することが好ましい。この吊り下げ孔14は、製造された包装体を店頭で吊り下げ陳列するためのもので、この吊り下げ孔14で吸引孔9の跡を消してしまうことにより、違和感を無くすことができる。吊り下げ孔14は、吸引孔9と同じか吸引孔9より大きい貫通孔として形成されるもので、図示される円形の孔の他、楕円形、ひょうたん形、卵形、おむすび形などとすることもできる。
<第二の多室包装袋及びこれを用いた包装体の製造方法>
次に、図11〜図16に基づいて、本発明の第二の多室包装袋の一例と、これを用いた本発明の包装体の製造方法の一例を説明する。
図11は本発明の第二の多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図、図12は本発明の第二の多室包装袋の斜視図、図13は本発明の第二の多室包装袋を用いた第一充填工程の説明図、図14は本発明の第二の多室包装袋のジッパー開放時の説明図、図15は本発明の第二の多室包装袋を用いた第二充填工程の説明図、図16は本発明の第二の多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図である。
図11及び図12に示されるように、本例の多室包装袋(第二の多室包装袋)4Bは、基本的には図1及び図2で説明した第一の多室包装袋4Aと同様であるが、裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7(7b)側の縁部には、両者間に形成された収納部8bを開閉可能とするジッパー15が取り付けられている。ジッパー7は、凸条を有する雄型15aと、凹条を有する雌型15bとからなるもので、雄型15aと雌型15bを嵌め合わせることで収納部8bを閉鎖し、嵌め合わせを解除することで収納部8bを開放できるものとなっている。また、本例の多室包装袋4Bは、図1及び図2で説明した第一の多室包装袋4Aに設けられている吸引孔9(図2参照)を有さないものとなっている。
本例の多室包装袋4Bは、上記ジッパー7を有し、吸引孔9(図2参照)を有さない点以外は、前記第一の多室包装袋4Aと同様で、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の各層構成も図3で説明した層構成と同様である。
次に、上記多室包装袋4Bを用いた包装体の製造方法の一例を、前記第一の多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法との相違点を中心にして説明する。
表面フィルム1側の収納部8aを開放して被包装物を充填する第一の充填工程は、図13に示されるように、ジッパー15が閉じた状態で行われる。ジッパー15が閉じた状態で、両吸引盤11a,11bをそれぞれ表面フィルム1と裏面フィルム3とに向かって前進させ、両者の開口部7側の縁部中央部付近にそれぞれ当接させて吸引する。表面フィルム1と裏面フィルム3が吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤11a,11bを後退させる。これにより、裏面フィルム3と共に、閉じたジッパー7によって裏面フィルム3と接合状態にある分割フィルム2が外方に引っ張られると共に、表面フィルム1が外方に引っ張られて、表面フィルム1側の収納部8aの開口部7aが開き、収納部8aを開放することができる。この時、裏面フィルム3側の収納部8b(図12参照)の開口部7bはジッパー15によって閉じた状態であるので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム1側の収納部8aに自動充填することができる。
上記第一充填工程の後に行われる第一シール工程は、前記第一の多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法における第一シール工程と同様であるが、図6で説明したシールバー12,12での挟み込み箇所は、ジッパー15より外側部分である。
次に、裏面フィルム3側の収納部8bを開放して被包装物を充填する第二の充填工程は、ジッパー15を開放して行われる。まず、ジッパー15の開放方法について図14で説明する。図14中13’は、上記第一シール工程でジッパー15より外側に形成した上縁融着部(表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士の熱融着部)である。
図14に示されるように、吸引盤11a,11bを、表面フィルム1と裏面フィルム3のジッパー15より外側の開口部7側の縁部中央部付近にそれぞれ当接させて吸引し、表面フィルム1と裏面フィルム3を吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着する。この状態で吸引盤11a,11bを若干後退させると、表面フィルム1と共に、上縁融着部13’によって表面フィルム1と接合されている分割フィルム2が外方に引っ張られると共に、裏面フィルム3が外方に引っ張られて、ジッパー7は閉じた状態ではあるが、表面フィルム1と分割フィルム2のジッパー15より外側の縁部間を広げることができる。この広げられた縁部間にヘラ状又は爪状の解除具16を差し込み、ジッパー15に押し当てて、雄型15aと雌型15bの嵌め合わせを解除することで、容易にジッパー15を開くことができる。
ジッパー15の開放は、表面フィルム1と裏面フィルム3を吸引盤11a,11bで吸着した後、両吸着盤11a,11bを強く後退させることでも行うことが可能である。しかし、上記のように解除具16を使用すると、多室包装袋4Bに無理な力を加えることなく確実に開放できるので好ましい。
上記のようにしてジッパー15を開放することで、裏面フィルム3側の収納部8b(図12参照)を選択的に開放することができるようになる。この裏面フィルム3側の収納部8bを開放する方法について説明する。
ジッパー15の開放後、ジッパー15の開放時の吸着盤11a,11bの吸着位置を維持したまま、さらに吸着盤11a,11bを後退させると、図15に示されるように、裏面フィルム3が外方へ引っ張られると共に、表面フィルム1が上縁融着部13’で接合された分割フィルム2を伴って外方へ引っ張られ、裏面フィルム3側の収納部8bの開口部7bが広げられる。この時、表面フィルム1側の収納部8aは上縁融着部13’によって封止されているので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に裏面フィルム3側の収納部8bへ自動充填することができる。
上記第二充填工程の後に行われる第二シール工程は、前記第一の多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法における第二シール工程と同様であるが、図8に示されるシールバー12,12での挟み込み箇所は、ジッパー15より外側部分で、通常、上縁融着部13’に対応する領域である。この第二シール工程で、図16に示される上縁融着部13(表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部が相互に熱融着された部分)を形成して開口部7(7a,7b)を封止し、包装体の製造を完了する。また、前記第二充填工程において開けられたジッパー15は、第二シール工程における上縁融着部13の形成前又は後若しくは上縁融着部13の形成と同時に、挟持ローラや押え板(図示されていない)間にジッパー15部分を挟み付けることで閉鎖しておくことが好ましい。
<第三の多室包装袋及びこれを用いた包装体の製造方法>
次に、図17〜図22に基づいて、本発明の第三の多室包装袋の一例と、これを用いた本発明の包装体の製造方法の一例を説明する。
図17本発明の第三の多室包装袋の斜視図、図18は本発明の第三の多室包装袋の拡大横断面図、図19は本発明の第三の多室包装袋を用いた第一充填工程の説明図、図20は本発明の第三の多室包装袋の表面フィルム側の収納部を開放する時の作用の説明図、図21は本発明の第三の多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図、図22は本発明の第三の多室包装袋の他の例を示す斜視図である。
図17及び図18に示されるように、本例の多室包装袋(第二の多室包装袋)4Cは、基本的には図1〜図3で説明した第一の多室包装袋4Aと同様であるが、第一の多室包装袋4Aに設けられている吸引孔9(図2参照)を有さないものとなっている。また、前記側縁融着部5,5は、表面フィルム1と分割フィルム2と裏面フィルム3の三者を接合した三層融着部5b,5bと、裏面フィルム3と分割フィルム2の二者を接合した二層融着部5a,5aとで構成されている。そして、本例の多室包装袋4Cは、左右の両側縁融着部5,5において、全長に亘って、二層融着部5a,5aが三層融着部5b,5bより袋の内側に入り込んでいる。その結果、表面フィルム1側の収納部8aの開口幅に比して裏面フィルム3側の収納部8bの開口幅が狭くなっている。このような開口幅とすることで、後述するように、表面フィルム1側の収納部8aを開放する時に、裏面フィルム3側から分割フィルム2を吸引しなくても、裏面フィルム3側の収納部8bを開放させることなく、表面フィルム1側の収納部8aを優先的に開放することができる。
本例においては、左右両側縁融着部5,5共に、三層融着部5b,5bの内側に二層融着部5a,5aが形成したものとなっているが、いずれか一方の側縁融着部5のみを、三層融着部5bの内側に二層融着部5aを形成したものとすることもできる。
本例の多室包装袋4Cは、裏面フィルム3と分割フィルム2を重ね、二層融着部5a,5a部分と、二層融着部5a,5aに隣接する三層融着部5b,5bの一部又は全体に相当する部分とを熱融着した後、更に表面フィルム1を重ねて、三層融着部5b,5bに相当する領域を熱融着することで容易に製造することができる。
次に、上記多室包装袋4Cを用いた包装体の製造方法の一例を、前記第一の多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法との相違点を中心にして説明する。
表面フィルム1側の収納部8aを開放して被包装物を充填する第一の充填工程は、図19に示されるように、吸引盤11a,11bで表面フィルム1及び裏面フィルム3を吸引吸着し、外方へ引っ張って表面フィルム1側の収納部8aを開放することで行われる。
まず、両吸引盤11a,11bを、表面フィルム1と裏面フィルム3とに向かって前進させ、表面フィルム1と裏面フィルム3の開口部7側の縁部の中央部付近ににそれぞれ当接させて吸引する。表面フィルム1と裏面フィルム3とが吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤11a,11bを後退させる。これにより、表面フィルム1と裏面フィルム3は外方へ引っ張られ、それぞれ外方に凸に湾曲される。
ところで、前述のように、表面フィルム1側の収納部8aの方が、裏面フィルム3側の収納部8bに比して開口幅が広く、開放されやすくなっていることから、表面フィルム1は分割フィルム2から離れて外方へ凸に湾曲して表面フィルム1側の収納部8aが開放される。また、裏面フィルム3側の収納部8bの方が、表面フィルム1側の収納部8aに比して開口幅が狭く、開放されにくくなっていることから、表面フィルム1側の収納部8aが開放されても、裏面フィルム3側の収納部8b(図17参照)は開放されずに閉じた状態を維持する。したがって、表面フィルム1側の収納部8aだけが開放され、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム1側の収納部8aに自動充填することができる。
更に説明すると、側縁融着部5,5において、二層融着部5a,5aが三層融着部5b,5bより袋の内側に入り込んでいると、図20に示されるように、裏面フィルム3を外方へ引っ張ることにより、二層融着部5a,5aの内側端部において、分割フィルム2を裏面フィルム3と同じ方向へ引っ張る力Fが作用する。このため、分割フィルム2は裏面フィルム3に追従して裏面フィルム3側に凸に湾曲し、裏面フィルム3側の収納部8b(図2参照)は閉じた状態のままとなる。一方、表面フィルム1は、裏面フィルム3と分割フィルム2とは逆方向へ引っ張られて湾曲されることから、表面フィルム1側の収納部8aが開口される。
三層融着部5b,5bより二層融着部5a,5aが袋の内側に入り込む量は、収納部8a,8b間の開放させやすさに差をもたせると共に、上記力Fを作用させやすくするために、1mm以上であることが好ましく、特に2〜5mmであることが好ましい。上限は袋の大きさなどによって相違するが、一般的には20mmまでである。
上記第一充填工程の後に順次行われる第一シール工程、第二充填工程及び第二シール工程は、本例の多室包装袋4Cが吸引孔9(図2参照)を有さない点を除いて、前記第一の多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法における第一シール工程、第二充填工程及び第二シール工程と同様である。第一充填工程に続いて第一シール工程と第二充填工程を施した後、第二シール工程で、図21に示される上縁融着部13(表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部が相互に熱融着された部分)を形成して開口部7(7a,7b)を封止し、包装体の製造を完了する。
次に、図22に基づいて、本発明の第三の多室包装袋4Cの他の例について説明する。
図22に示されるように、本例の多室包装袋4Cは、基本的には図17に示される多室包装袋4Cと同様であるが、三層融着部5b,5bよりも袋の内側に入り込んでいる二層融着部5a,5aが、側縁融着部5、5の全長に亘るものではなく、側縁融着部5,5の開口部7側の一部のみとなっている。特に三層融着部5b,5bよりもはみ出した二層融着部5a,5aを、図21に示される上縁融着部13が形成される範囲内に設けておくと、上縁融着部13の形成後はこの二層融着部5a,5aの存在が分からなくなる。また、本例の多室包装袋4Cの収納部8a,8bを開放するに際しては、裏面フィルム3側の吸引盤11b(図19参照)は、図20で説明した力Fを作用させやすくするために、裏面フィルム3の二層融着部5a,5aで挟まれた領域を吸引することが好ましい。
なお、本例においては、左右の側縁融着部5,5の両者に二層融着部5a,5aが形成されているが、いずれか一方の側縁融着部5にのみに形成することもできる。また、本例における二層融着部5a,5aと、裏面フィル3の開口部7(7b)側の端縁との間には間隔があけられているが、この間隔をあけずに、裏面フィルム3の開口部7(7b)側の端縁から連続する二層融着部5a,5aとし、上記吸引盤11aで吸引することが好ましい領域を広げることもできる。
次に、表面フィルム1側の収納部8aの開口幅を、裏面フィルム3側の収納部8bの開口幅より大きくすることで、表面フィルム1側の収納部8aを選択的に開放することができるようになることを確認するための実験例を説明する。
実験例1−1
LLDPE(40μm)/PET(12μm)/Al(9μm)/LLDPE(40μm)の層構成の積層フィルムで、50mm×100mmの大きさのフィルムを2枚横長にして重ね合わせ、左右の短辺側縁部を幅10mmでヒートシールした後、もう1枚の同じフィルムをやはり横長にして重ね合わせ、左右の短辺側縁部を幅9mmでヒートシールし、筒状の模擬多室包装袋を作成した。つまり、側縁融着部における二層融着部が1mmだけ三層融着部より袋の内側に入り込んだ模擬多室包装袋を作成した。なお、LLDPEは直鎖状低密度ポリエチレン、PETはポリエチレンテレフタレート、Alはアルミニウムである。
上記模擬多室包装袋を、未シール縁部を上下方向にして、一対の吸引盤間に手で位置させ、両吸引盤を前進させてそれぞれ表面と裏面に吸着させた。吸引盤による吸着位置は、両吸引盤共に、上方の未シール縁部の左右ほぼ中央部で、上縁から約5mm下がった位置とした。
模擬多室包装袋吸引盤に吸着させた後手を離し、両吸引盤を後退させて、収納部の開孔状態を観察する作業を5回繰り返した。結果を表1に示す。なお、表1においては、三層融着部からの二層融着部のはみ出し量を「シール幅差」、開口幅の大きい収納部(表面フィルム側の収納部に相当)を「第1室」、開口幅の小さい収納部(裏面フィルム側の収納部に相当)を「第2室」とする。
実験例1−2
実験例1−1と同じ2枚のフィルムを横長にして重ね、左右の短辺側縁部を幅20mmでヒートシールした後、もう1枚の同じフィルムをやはり横長にして重ね合わせ、左右の短辺側縁部を幅10mmでヒートシールし、筒状の模擬多室包装袋を作成した。つまり、側縁融着部における二層融着部が10mmだけ三層融着部より袋の内側に入り込んだ模擬多室包装袋を作成した。
上記模擬多重袋について、実験例1−1と同様にして収納部の開孔状態を観察した。結果を表1に示す。
比較実験例1−1
実験例1−1と同じフィルムを横長にして3枚重ね、左右の短辺側縁部を幅10mmでヒートシールして筒状の模擬多室包装袋を作成した。つまり、側縁融着部における三層融着部より袋の内側にはみ出した二層融着部が存在しない模擬多室包装袋を作成した。
上記模擬多重袋について、実験例1−1と同様にして収納部の開孔状態を観察した。結果を表1に示す。
<第四の多室包装袋及びこれを用いた包装体の製造方法>
次に、図23〜図27に基づいて、本発明の第四の多室包装袋の一例と、これを用いた本発明の包装体の製造方法の一例を説明する。
図23本発明の第四の多室包装袋の斜視図、図24は本発明の第四の多室包装袋を用いた第一充填工程の説明図、図25は本発明の第四の多室包装袋の表面フィルム側の収納部を開放する時の作用の説明図、図26は本発明の第四の多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図、図27は剛度の測定装置及び測定方法の説明図である。
図17及び図18に示されるように、本例の多室包装袋(第二の多室包装袋)4Dは、基本的には図1〜図3で説明した第一の多室包装袋4Aと同様であるが、第一の多室包装袋4Aに設けられている吸引孔9(図2参照)を有さないものとなっている。また、本例の多室包装袋4Dを構成する裏面フィルム3の剛度が表面フィルム1の剛度の2.5倍以上で、しかも裏面フィルム3と分割フィルム2の剛度がほぼ同等となっている。
本例の多室包装袋4Dを用いた包装体の製造方法の一例を、前記第一の多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法との相違点を中心にして説明すると共に、上記剛度についても更に説明する。
図24に示されるように、両吸引盤11a,11bを、表面フィルム1と裏面フィルム3とに向かって前進させ、表面フィルム1と裏面フィルム3の開口部7側の縁部の中央部付近にそれぞれ当接させて吸引する。表面フィルム1と裏面フィルム3とが吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤11a,11bを後退させる。これにより、表面フィルム1と裏面フィルム3は、外方へ引っ張られ、それぞれ外方に凸に湾曲されるが、本例の多室包装袋4Dではこれと同時に分割フィルム2を裏面フィルム3に追従して裏面フィルム3側に凸に湾曲させることができる。その結果、裏面フィルム3側の収納部8b(図23参照)は閉じた状態となり、表面フィルム1側の収納部8aだけが開放されるので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム1側の収納部8aに自動充填することができる。
上記のように分割フィルム2を裏面フィルム3に追従して同方向に湾曲させることができるのは、次のような力が作用することによると考えられる。
両吸引盤11a,11bを同じ距離だけ後退させて、表面フィルム1と裏面フィルム3を外方へ引っ張って湾曲させた時に、裏面フィルム3は表面フィルム1に比して剛度が高いことから、裏面フィルム3側に表面フィルム1側より大きな張力が作用する。このため、図25(a)に示されるように、把持具10,10が側縁融着部5,5の内縁部を余して把持している場合、内側にはみ出している側縁融着部5,5の内縁部が、裏面フィルム3側に引っ張る力F1で裏面フィルム3側に屈曲されることが生じる。また、図25(b)に示されるように、把持具10,10が側縁融着部5,5の上端部を余して把持している場合、把持具10,10より上方に突出している側縁融着部5,5が、表面フィルム1側内向きに捻る力F2で捻られる。これらの力F1,F2は、分割フィルム2を裏面フィルム3側へ凸に湾曲させようとする力として作用する。そして、分割フィルム2が適度な剛度を有している場合、上記力F1,F2によって無理なく裏面フィルム3に追従して同方向へ湾曲することになる。
把持具10,10を用いる場合、上記力F1,F2の両者を作用させることが好ましいが、いずれか一方を作用させることでも分割フィルム2を裏面フィルム3に追従して湾曲させることが可能である。また、把持具10,10を用いず、吸引盤11a,11bに表面フィルム1と裏面フィルム3の開口部7側の縁部をそれぞれ吸引保持させただけで外方へ引っ張ることでも、分割フィルム2を裏面フィルム3に追従して外方へ湾曲させることができる。この場合、吸引盤10,10で引っ張り力を加えた箇所を中心に、主に上記F2に相当する力が作用して、分割フィルム2は裏面フィルム3に追従して外方へ湾曲することになる。
上記のように分割フィルム2を裏面フィルム3に追従して湾曲させ、表面フィルム1側の収納部8aの開放時に裏面フィルム3側の収納部8b閉じた状態を維持しやすくするために、裏面フィルム3の剛度は表面フィルム1の剛度の2.5倍以上となっている。また、裏面フィルム3の剛度は表面フィルム1の剛度の3倍以上であることがさらに好ましい。表面フィルム1と裏面フィルム3の剛度の差が小さすぎると、分割フィルム2を湾曲させようとする力が小さくなり、裏面フィルム3に追従した確実な分割フィルム2の湾曲が得にくくなる。具体的な表面フィルム1と裏面フィルム3の剛度は、袋としての実用性を加味して定められるが、一般的には、表面フィルム1が0.1〜12g、裏面フィルム3が0.25〜30g程度である。この剛度の範囲内で、表面フィルム1の剛度が裏面フィルム3の剛度の2.5倍以上、好ましくは3倍以上となる組み合わせを選択する。
分割フィルム2は、裏面フィルム3とほぼ同等の剛度を持たせることで、裏面フィルム3に追従して同方向に湾曲させやすくなる。分割フィルム2の剛度が低すぎても高過ぎても、分割フィルム2を裏面フィルム3に追従して同方向に湾曲させにくくなる。ここで、裏面フィルム3とほぼ同等の剛度とは、(裏面フィルム3の剛度)±(裏面フィルム3の剛度の10%の剛度)をいう。
上記第一充填工程の後に順次行われる第一シール工程、第二充填工程及び第二シール工程は、本例の多室包装袋4Dが吸引孔9(図2参照)を有さない点を除いて、前記第一の多室包装袋4Aを用いた包装体の製造方法における第一シール工程、第二充填工程及び第二シール工程と同様である。第一充填工程に続いて第一シール工程と第二充填工程を施した後、第二シール工程で、図26に示される上縁融着部13(表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部が相互に熱融着された部分)を形成して開口部7(7a,7b)を封止し、包装体の製造を完了する。
次に、剛度の測定装置及び測定方法について説明する。
剛度は、実公平3−25156号に記載の測定装置及び方法を用いて測定されるもので、これを図27に基づいて説明する。
まず、図27(a)に示されるように、使用するフィルムから切り出した試験片17の長さ方向両端部を左右一対のクランプ18,18にそれぞれ挟み込んで固定する。試験片17の大きさは、幅25mm、長さ200mmである。
左右のクランプ18,18は、下側の受けブロック18a,18aと、上側の押さえブロック18b,18bとを備えており、受けブロック18a,18aと押さえブロック18b,18bとの間に、試験片17の長さ方向両端部を挟み込む。クランプ位置は、図示されるように、両クランプ18,18間に露出する試験片17の長さが100mm+2hとなる位置である。h(mm)は押さえブロックの高さである。
左右のクランプ18,18は、対向方向に水平にスライド移動可能で、両押さえブロック18b,18bが試験片17の一部を挟み込んだ状態となるまで両クランプ18,18を近付け、図27(b)に示されるように、試験片17の長さ100mm部分でループを形成する。左右のクランプ18,18を近付ける際には、試験片17の中央部分に下側から空気を吹き付け、押さえブロック18b,18b側に正しくループが形成できるようにする。
次いで、ループを形成した試験片17をクランプ18,18ごと90°回転させて、ループの中心軸が垂直方向を向いた状態に寝かせ、図25(c)に示されるように、ループの頂部に荷重を加えて、押さえブロック18b,18bの表面からループの頂部までの間隔が20mmとなるまで押し潰し、その時の荷重fをロードセルで測定する。その測定値(単位はg)が剛度である。
本発明における剛度は、同じフィルムから切り出した10本の試験片17についてそれぞれ常温下で上記測定を行い、得られた10の測定値から求めた平均値をいう。市販の剛度の測定機としては、株式会社東洋精機製作所製の「Loop Stiffness Tester No.581」がある。
次に、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の剛度を調整することで、表面フィルム1側の収納部8aを選択的に開放することができるようになることを確認するための実験例を説明する。
実験例2−1〜2−6、比較実験例2−1、2−2
本実験例及び比較実験例で用いたフィルムを表2に示す。なお、表2における層構成における符号の意味は以下の通りである。また、剛度は、株式会社東洋精機製作所製の「Loop Stiffness Tester No.581」を用い、図27に基づく説明に沿って測定し算出した値である。
AL9:厚さ9μmのアルミニウム箔(住友軽金属製)
PET12:厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡製「E5200」)
LLDPE20:厚さ20μmの直鎖状低密度ポリエチレン(フタムラ化学製「LL−XMTN」)
LLDPE30:厚さ30μmの直鎖状低密度ポリエチレン(アイセロ化学製「L−105」)
LLDPE40:厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(アイセロ化学製「L−185」)
LLDPE60:厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレン(アイセロ化学製「L−185」)
表2に示されるフィルムを、65mm×110mmの大きさに切断し、重ね合わせて短辺側だけを幅10mmでヒートシールし、実験用の底なしの模擬多室包装袋を作成した。
作成した模擬多室包装袋を、未シール側を上下方向にして、一対の吸引盤間に手で位置させ、両吸引盤を前進させて吸着させた。吸引盤による吸引位置は、表面側フィルムと裏面側フィルム共に、上方の未シール側の縁部のほぼ中央で、上端縁から5mm下がった位置とした。
模擬多室包装袋を吸引盤に吸着させた後手を離し、その後両吸引盤を後退させて、収納部の開開口態を観察した。同じことを5回繰り返し、裏面フィルム側の収納部が単独又は表面フィルム側の収納部と共に開口された回数と、表面フィルム側の収納部のみが開口された回数をカウントした。
各実験例及び比較実験例における模擬多室包装袋のフィルムの組み合わせと、(裏面フィルムの剛度)÷(表面フィルムの剛度)の値と、上記カウント結果を表3に示す。なお、表3において、「第1室」は表面フィルム側の収納部、「第2室」は裏面フィルム側の収納部を意味し、「裏面÷表面」は(裏面フィルムの剛度)÷(表面フィルムの剛度)を意味する。また、表3の「フィルムNo.」は表1の「フィルムNo.」に対応する。
以上の説明では、多室包装袋4A〜4Dはいずれも四方シール袋を構成するものとなっているが、三方シール袋を形成するものとしたり、ガゼットタイプや自立型の袋を構成するものとすることもできる。また、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3は同形同大としたが、表面フィルム1と裏面フィルム3の一方を他方に比して上下方向長さが短いものとし、収納部8a,8bの一方の深さを他方より浅くして、被包装物の収納量の相違に対応することもできる。
また、把持具10,10を用いた方法を説明したが、把持具10,10を用いずに行うこともできる。例えば、表面フィルム1側の吸引盤11aを一定位置に固定しておき、この吸引盤11aに表面フィルム1の開口部7側の縁部を吸着させて多室包装袋4A〜4Dを立てて保持し、裏面フィルム3側の吸引盤11bを必要に応じて吸引位置を変えて進退させることでも包装体を製造することができる。
以下、本発明を図面に基づいて更に説明する。なお、以下に述べる図面において、同じ符号は同様の部材又は部位を示す。
<参考多室包装袋及びこれを用いた参考例の包装体の製造方法>
まず、図1〜図10に基づいて、参考多室包装袋と、これを用いた参考例の包装体の製造方法を説明する。
図1は参考多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図、図2は参考多室包装袋の斜視図、図3は参考多室包装袋の拡大横断面図、図4は参考多室包装袋を把持具にセットした状態の斜視図、図5は参考多室包装袋を用いた第一充填工程の説明図、図6は参考多室包装袋を用いた第一シール工程の説明図、図7は参考多室包装袋を用いた第二充填工程の説明図、図8は参考多室包装袋を用いた第二シール工程の説明図、図9は参考多室包装袋を用いて製造された包装体の一参考例を示す平面図、図10は参考多室包装袋を用いて製造された包装体の他の参考例を示す平面図である。
図1及び図2に示されるように、参考多室包装袋4Aは、一方のフィルム1、分割フィルム2及び他方のフィルム3の三枚のフィルムで構成されている。一方のフィルム1と他方のフィルム3は、参考多室包装袋4Aの表裏に位置するもので、いずれが表面でも裏面でもよいが、説明の便宜上、一方のフィルム1を袋の表面側に位置する表面フィルム、他方のフィルム3を袋の裏面側に位置する裏面フィルムとして説明する(後述する本発明の多室包装袋4Bについても同じ)。
本参考例における上記表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3は同形同大となっている。多室包装袋4Aは、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3を、表面フィルム1と裏面フィルム3の間に分割フィルム2を挟み込んで重ね、周縁部の三方を熱融着した袋状をなしている。5、6は袋の三方に形成された熱融着部で、5は側縁融着部、6は底縁融着部である。
分割フィルム2は、上記熱融着が施されていない一縁部に形成された、表面フィルム1と裏面フィルム3間の開口部7を二分しており、分割フィルム2を境にして、表面フィルム1側と裏面フィルム3側とにそれぞれ収納部8a,8bが形成されている。収納部8a,8bは、上記分割フィルム2で二分された開口部7の一方と他方である開口部7a,7bをそれぞれ有するものとなっている。裏面フィルム3の開口部7(7b)側の縁部の中央部には、裏面フィルム3側から分割フィルム2を吸引することができるよう、裏面フィルム3を貫通する吸引孔9が形成されている。
参考多室包装袋4Aには、表面フィルム1と分割フィルム2間に形成された表面フィルム1側の収納部8aと、裏面フィルム3と分割フィルム2間に形成された裏面フィルム3側の収納部8bとに分けて、2種類の被包装物を充填することができる。被包装物は、表面フィルム1側の収納部8aと、裏面フィルム3側の収納部8bとを別々に開くこと(開口部7aと7bを別々に開くこと)で、充填箇所を誤ることなく自動充填することができる。
図3に示されるように、表面フィルム1は、基材層1aの内面側(収納部8a側)に低融点シーラント層1bを積層したもので、裏面フィルム3は、基材層3aの内面側(収納部8b側)に、低融点シーラント層1bより融点が高い高融点シーラント層3bを積層したものとなっている。また、分割フィルム2は、基材層2aの片面に低融点シーラント層2bを積層し、他面に高融点シーラント層2cを積層したもので、低融点シーラント層2bを表面フィルム1の低融点シーラント層1bと対向させ、高融点シーラント層2cを裏面フィルム3の高融点シーラント層3bと対向させている。側縁融着部5と底縁融着部6(図2参照)は、高融点シーラント層2c,3b同士の熱融着と、低融点シーラント層1b,2b同士の熱融着とにより形成されている。
低融点シーラント層1b,2bと、高融点シーラント層2c,3bとは、それぞれのシール温度領域をずらすことで、後述する第一シール工程において、高融点シーラント層2c,3b同士を熱融着させることなく、低融点シーラント層1b,2b同士を選択的に熱融着可能とするためのものである。このため、高融点シーラント層2c,3bの融点は、低融点シーラント層1b,2bの融点より20℃以上高くなっている。高融点シーラント層2c,3bの融点が低過ぎると、高融点シーラント層2c,3bと低融点シーラント層1b,2bのシール温度領域が接近し、上記選択的な熱融着が行いにくくなる。上限は、一般的なシーラント層の融点や、基材層1a,2a,3a,の融点などから定まる。また、低融点シーラント層1bと2b、並びに、高融点シーラント層2cと3bとしては、一般的には同じ合成樹脂が用いられるが、異なる合成樹脂を用いることもできる。異なる合成樹脂を用いる場合、融点の低い方の高融点シーラント層2c又は3bの融点を、融点の高い方の低融点シーラント層1b又は2bの融点より20℃以上高くする。なお、本発明において融点とは、JIS−K−7121に基づいて測定した値をいう。
表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の各基材層1a,2a,3aとしては、合成樹脂の単層又は積層フィルムを用いることができる。積層フィルムとしては、合成樹脂層同士を積層したものの他、合成樹脂層と、金属その他の無機物層や紙層などを積層したものでもよい。また、各基材層1a,2a,3aとしては、それぞれ同じ構成のフィルムでも、異なる構成のフィルムでもよい。
次に、上記参考多室包装袋4Aを用いた参考例の包装体の製造方法の一例について説明する。
上記参考多室包装袋4Aを用いた参考例の包装体の製造は、例えば図4に示されるような把持具10,10で参考多室包装体4Aを立てた状態で保持して行うことができる。
図4に示されるように、参考多室包装袋4Aを、側縁融着部5,5の上部を把持具10,10で把持して吊り下げ、表面フィルム1と裏面フィルム3の外面に向かってそれぞれ進退可能な一対の吸引盤11a,11b間に位置させる。この把持具10,10としては、側縁融着部5,5を挟み付けて保持するクリップ状のものを用いることができる。また、両把持具10,10は、収納部8a,8bを大きく開口させることができるようにすると共に、この開放に伴って参考多室包装袋4Aに無理な力が加わらないよう、対向方向に弾性的に進退可能としておくことが好ましい。
表面フィルム1側の収納部8a(図2参照)と、裏面フィルム3側の収納部8b(図2参照)の選択的開放は、上記吸引盤11a,11bの進退と吸引によって行われる。吸引盤11a,11bによる吸引位置については後述するが、この吸引位置の調節は、吸引盤11a,11b間における参考多室包装袋4Aの位置を調節することで行うこともできる。しかし、吸引位置の調節を行いやすくするために、上記吸引盤11a,11bは、対向する表面フィルム1又は裏面フィルム3に沿って上下左右に移動可能としておくことが好ましい。
まず、表面フィルム1側の収納部8aを開放して被包装物を充填する第一の充填工程について説明する。
図5に示されるように、両吸引盤11a,11bを、表面フィルム1と裏面フィルム3とに向かって前進させ、表面フィルム1の開口部7側の縁部の中央部付近と、裏面フィルム3の吸引孔9の部分とにそれぞれ当接させて吸引する。これによって、吸引盤11aに表面フィルム1が吸着される。また、吸引盤11bには吸引孔9を介して分割フィルム2の開口部7側の縁部が吸引されて吸着されると共に、裏面フィルム3の吸引孔9の周囲も吸着される。この状態で吸引盤11a,11bを後退させると、表面フィルム1と、分割フィルム2と一緒に吸引された裏面フィルム3とがそれぞれ外方へ引っ張られて、表面フィルム1側の収納部8aの開口部7aが広げられる。この時、裏面フィルム3側の収納部8b(図2参照)の開口部7bは、裏面フィルム3が分割フィルム2と共に吸引盤11bに吸着されて閉じられているので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム1側の収納部8aに自動充填することができる。
前記のように、把持具10,10を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、両吸引盤11a,11bを後退させて表面フィルム1と裏面フィルム3を外方へ引っ張った時に、両把持具10,10が弾性的に対向方向に前進し、参考多室包装袋4Aに過剰な張力が働くのを防止することができる。また、表面フィルム1側の収納部8aに被包装物を充填した後、両吸引盤10a,10bを前進させると、両把持具10,10は弾性的に後退し、これに伴って収納部8aの開口部7aを閉じた状態に戻すことができる。
次に、被包装物を充填した表面フィルム1側の収納部8aを封止する第一シール工程を施す。
第一シール工程は、上記第一充填工程の後、図6に示されるように、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部を重ねてシールバー12,12で挟み、表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士を熱融着することで行われる。この時、表面フィルム1と分割フィルム2だけではなく、裏面フィルム3もシールバー12,12に挟み込まれる。しかし、図3で説明した高融点シーラント層2c,3bを当該高融点シーラント層2c,3bのシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層1b,2bを当該低融点シーラント層1b,2bのシール温度領域まで加熱することにより、高融点シーラント層2c,3bが対向している裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7側の縁部を熱融着させることなく、低融点シーラント層1b,2bが対向している表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部のみを熱融着させることができる。つまり、裏面フィルム3側の収納部8bを封止することなく、表面フィルム1側の収納部8aのみを封止することができる。
次に、裏面フィルム3側の収納部8bを開放して被包装物を充填する第二の充填工程を施す。
第二充填工程は、上記第一シール工程の後、図7に示されるように、吸引盤11a,11bで表面フィルム1と裏面フィルム3を吸引して外方へ引っ張ることで行われる。図7中13’は上記第一シール工程で形成した上縁融着部(表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士の熱融着部)である。
表面フィルム1に対向する吸引盤11aを、上記上縁融着部13’が形成された、表面フィルム1の開口部7側の縁部中央部付近に当接させ、裏面フィルム3に対向する吸引盤11bを、吸引孔9の位置からずれた、裏面フィルム3の開口部7側の縁部に当接させてそれぞれ吸引する。表面フィルム1と裏面フィルム3とが吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤11a,11bを後退させると、表面フィルム1が上縁融着部13’で接合された分割フィルム2を伴って外方へ引っ張られると共に、裏面フィルム3が外方へ引っ張られて、裏面フィルム3側の収納部8bの開口部7bが開放される。この時、表面フィルム1側の収納部8aの開口部7aは上縁融着部13’で封止されているので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に裏面フィルム3側の収納部8bに自動充填することができる。
なお、把持具10,10を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、この第二充填工程においても、前記第一充填工程と同様に進退して、参考多室包装袋4Aへ過剰な負荷が加わるのを防止することができる。
更に、被包装物を充填した裏面フィルム3側の収納部8bを封止する第二シール工程を施す。
第二シール工程は、上記第二充填工程の後、上縁融着部13’で接合された表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部と、裏面フィルム3の開口部7側の縁部とを重ね、図8に示されるように、シールバー12,12で挟み、裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士を熱融着することで行われる。この第二シール工程においては、図3で説明した高融点シーラント層2c,3bを当該高融点シーラント層2c,3bのシール温度領域まで加熱する。これにより、高融点シーラント層2c,3bが対向している裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7側の縁部が熱融着され、裏面フィルム3側の収納部8bが封止される。同時に、上記高融点シーラント層2c,3bより融点が低い低融点シーラント層1b,2bもそのシール温度領域まで加熱されることになり、低融点シーラント層1b,2bが対向している表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部はいわば再熱融着されることになる。
上記第二シール工程で、図9に示されるように、吸引孔9を内包する上縁融着部13を形成して開口部7(7a,7b)を封止し、包装体の製造を完了する。図9に示される上縁融着部13は、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部が相互に熱融着された部分である。
ところで、図9に示される包装体は、上縁融着部13に吸引孔9の跡が、裏面フィルム3側のみではあるが、凹部として残る。そこで、図10に示されるように、上記上縁融着部13の形成後、吸引孔9部分を打ち抜いて、吸引孔9を内包する単一の貫通孔を吊り下げ孔14として形成することが好ましい。この吊り下げ孔14は、製造された包装体を店頭で吊り下げ陳列するためのもので、この吊り下げ孔14で吸引孔9の跡を消してしまうことにより、違和感を無くすことができる。吊り下げ孔14は、吸引孔9と同じか吸引孔9より大きい貫通孔として形成されるもので、図示される円形の孔の他、楕円形、ひょうたん形、卵形、おむすび形などとすることもできる。
<本発明の多室包装袋及びこれを用いた本発明の包装体の製造方法>
次に、図11〜図16に基づいて、本発明の多室包装袋の一例と、これを用いた本発明の包装体の製造方法の一例を説明する。
図11は本発明の多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図、図12は本発明の多室包装袋の斜視図、図13は本発明の多室包装袋を用いた第一充填工程の説明図、図14は本発明の第二の多室包装袋のジッパー開放時の説明図、図15は本発明の多室包装袋を用いた第二充填工程の説明図、図16は本発明の多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図である。
図11及び図12に示されるように、本発明の多室包装袋4Bは、基本的には図1及び図2で説明した参考多室包装袋4Aと同様であるが、裏面フィルム3と分割フィルム2の開口部7(7b)側の縁部には、両者間に形成された収納部8bを開閉可能とするジッパー15が取り付けられている。ジッパー7は、凸条を有する雄型15aと、凹条を有する雌型15bとからなるもので、雄型15aと雌型15bを嵌め合わせることで収納部8bを閉鎖し、嵌め合わせを解除することで収納部8bを開放できるものとなっている。また、本発明の多室包装袋4Bは、図1及び図2で説明した参考多室包装袋4Aに設けられている吸引孔9(図2参照)を有さないものとなっている。
本発明の多室包装袋4Bは、上記ジッパー7を有し、吸引孔9(図2参照)を有さない点以外は、前記参考多室包装袋4Aと同様で、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の各層構成も図3で説明した層構成と同様である。
次に、上記多室包装袋4Bを用いた包装体の製造方法の一例を、前記参考多室包装袋4Aを用いた参考例の包装体の製造方法との相違点を中心にして説明する。
表面フィルム1側の収納部8aを開放して被包装物を充填する第一の充填工程は、図13に示されるように、ジッパー15が閉じた状態で行われる。ジッパー15が閉じた状態で、両吸引盤11a,11bをそれぞれ表面フィルム1と裏面フィルム3とに向かって前進させ、両者の開口部7側の縁部中央部付近にそれぞれ当接させて吸引する。表面フィルム1と裏面フィルム3が吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤11a,11bを後退させる。これにより、裏面フィルム3と共に、閉じたジッパー7によって裏面フィルム3と接合状態にある分割フィルム2が外方に引っ張られると共に、表面フィルム1が外方に引っ張られて、表面フィルム1側の収納部8aの開口部7aが開き、収納部8aを開放することができる。この時、裏面フィルム3側の収納部8b(図12参照)の開口部7bはジッパー15によって閉じた状態であるので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム1側の収納部8aに自動充填することができる。
上記第一充填工程の後に行われる第一シール工程は、前記参考多室包装袋4Aを用いた参考例の包装体の製造方法における第一シール工程と同様であるが、図6で説明したシールバー12,12での挟み込み箇所は、ジッパー15より外側部分である。
次に、裏面フィルム3側の収納部8bを開放して被包装物を充填する第二の充填工程は、ジッパー15を開放して行われる。まず、ジッパー15の開放方法について図14で説明する。図14中13’は、上記第一シール工程でジッパー15より外側に形成した上縁融着部(表面フィルム1と分割フィルム2の開口部7側の縁部同士の熱融着部)である。
図14に示されるように、吸引盤11a,11bを、表面フィルム1と裏面フィルム3のジッパー15より外側の開口部7側の縁部中央部付近にそれぞれ当接させて吸引し、表面フィルム1と裏面フィルム3を吸引盤11a,11bにそれぞれ吸着する。この状態で吸引盤11a,11bを若干後退させると、表面フィルム1と共に、上縁融着部13’によって表面フィルム1と接合されている分割フィルム2が外方に引っ張られると共に、裏面フィルム3が外方に引っ張られて、ジッパー7は閉じた状態ではあるが、表面フィルム1と分割フィルム2のジッパー15より外側の縁部間を広げることができる。この広げられた縁部間にヘラ状又は爪状の解除具16を差し込み、ジッパー15に押し当てて、雄型15aと雌型15bの嵌め合わせを解除することで、容易にジッパー15を開くことができる。
ジッパー15の開放は、表面フィルム1と裏面フィルム3を吸引盤11a,11bで吸着した後、両吸着盤11a,11bを強く後退させることでも行うことが可能である。しかし、上記のように解除具16を使用すると、多室包装袋4Bに無理な力を加えることなく確実に開放できるので好ましい。
上記のようにしてジッパー15を開放することで、裏面フィルム3側の収納部8b(図12参照)を選択的に開放することができるようになる。この裏面フィルム3側の収納部8bを開放する方法について説明する。
ジッパー15の開放後、ジッパー15の開放時の吸着盤11a,11bの吸着位置を維持したまま、さらに吸着盤11a,11bを後退させると、図15に示されるように、裏面フィルム3が外方へ引っ張られると共に、表面フィルム1が上縁融着部13’で接合された分割フィルム2を伴って外方へ引っ張られ、裏面フィルム3側の収納部8bの開口部7bが広げられる。この時、表面フィルム1側の収納部8aは上縁融着部13’によって封止されているので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に裏面フィルム3側の収納部8bへ自動充填することができる。
上記第二充填工程の後に行われる第二シール工程は、前記参考多室包装袋4Aを用いた参考例の包装体の製造方法における第二シール工程と同様であるが、図8に示されるシールバー12,12での挟み込み箇所は、ジッパー15より外側部分で、通常、上縁融着部13’に対応する領域である。この第二シール工程で、図16に示される上縁融着部13(表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3の開口部7側の縁部が相互に熱融着された部分)を形成して開口部7(7a,7b)を封止し、包装体の製造を完了する。また、前記第二充填工程において開けられたジッパー15は、第二シール工程における上縁融着部13の形成前又は後若しくは上縁融着部13の形成と同時に、挟持ローラや押え板(図示されていない)間にジッパー15部分を挟み付けることで閉鎖しておくことが好ましい。
以上の説明では、本発明の多室包装袋4Bは四方シール袋を構成するものとなっているが、三方シール袋を形成するものとしたり、ガゼットタイプや自立型の袋を構成するものとすることもできる。また、表面フィルム1、分割フィルム2及び裏面フィルム3は同形同大としたが、表面フィルム1と裏面フィルム3の一方を他方に比して上下方向長さが短いものとし、収納部8a,8bの一方の深さを他方より浅くして、被包装物の収納量の相違に対応することもできる。
また、把持具10,10を用いた方法を説明したが、把持具10,10を用いずに行うこともできる。例えば、表面フィルム1側の吸引盤11aを一定位置に固定しておき、この吸引盤11aに表面フィルム1の開口部7側の縁部を吸着させて本発明の多室包装袋4Bを立てて保持し、裏面フィルム3側の吸引盤11bを必要に応じて吸引位置を変えて進退させることでも包装体を製造することができる。