内燃機関のエミッション改善の見地から、始動時におけるEGR(排気を吸気系に導入することを意味する)の早期実施が望まれている。
ここで、EGR装置の一種として、排気浄化装置下流側から排気を取り出して吸気系に導入するLPL(Low Pressure Loop)EGR装置が知られている。LPLEGR装置には、導入する排気(これ以降、適宜「EGRガス」と表現する)の温度を低下させるためのEGRクーラが備わる場合が多いが、EGRクーラは、燃焼室及びエキゾーストマニホールドに近いシリンダヘッドや、当該シリンダヘッド下方でシリンダを収容するシリンダブロック等、被冷却体の中でも比較的高温となる部分と較べて始動後の温度変化が緩やかであり、その温度上昇はこれら高温部と較べて緩慢である。
従って、内燃機関の暖機完了以前、特に冷間始動時において、EGRクーラ近傍に導かれる或いは滞留するEGRガスの温度は低下し易い。EGRガスの温度が過度に低下すると、EGRガス中の水分が凝縮することによって凝縮水が発生する場合がある。排気を導くEGR通路は、高耐熱性を得られることから金属材料で構成されることが多く、凝縮水を放置すると、これら配管の腐食劣化を助長しかねない。即ち、EGRを早期に実施するためには、内燃機関の未暖機時におけるEGRクーラの温度管理が必要となる。
然るに、特許文献1に開示される装置では、始動時に冷却水の通水を制限する(好適には停止する)ことによって内燃機関の暖機は促進され得るものの、内燃機関の暖機が進行するのに伴いEGRクーラが昇温した後でなければEGRガスを導入することが出来ない。従って、冷間始動時のエミッションを十分に低減することが難しい。また、特許文献1以外の上記先行技術文献には、吸気を昇温する等して吸気側での凝縮水の発生(実質的には結露と同義である)を防止する技術の開示はあるが、少なくともEGRクーラの昇温については何らの効能も有さない。従って、LPLEGR装置における凝縮水の発生を防止することは困難である。
ところで、EGR装置としては、排気浄化装置の上流側から排気を導入するHPL(High Pressure Loop)EGR装置も知られるところであり、LPLEGR装置とHPLEGR装置とが併用される装置構成も珍しくない。このような構成においては、冷間始動時におけるエミッション低減の見地から言えば、いずれの装置からEGRを導入してもよいが、従来、このような構成において、凝縮水の発生を抑制しつつ可及的早期にEGRを実施しようとする試みはなされていない。
特に、このような構成においては、吸気系における、LPLEGR装置のEGRガス導入位置と、HPLEGR装置のEGRガス導入位置とが異なっており、また、HPLEGR装置がEGRクーラを備えない構成も多い。従って、凝縮水の影響を排除する観点から言って、両者に同一の措置を講じるのは全く合理的でない。即ち、上記先行技術文献を含む、従来の技術には、LPLEGR装置とHPLEGR装置とを併有する構成において、冷間始動時に凝縮水の発生を防止しつつ可及的早期にEGRを実施することが困難であるという技術的問題点がある。
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、LPLEGR装置とHPLEGR装置とを併有する構成において可及的早期にEGRを実施可能な冷却システムの制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る冷却システムの制御装置は、内燃機関と、前記内燃機関の排気を排気浄化装置の下流側からEGRクーラを介して吸気系へ導入可能なLPLEGR装置と、前記排気を前記排気浄化装置の上流側から前記LPLEGR装置よりも下流側において前記吸気系へ導入可能なHPLEGR装置と、前記吸気系に設置された、吸気と冷却水との熱交換を行うための熱交換器と、前記冷却水を循環供給するための冷却システムとを備え、該冷却システムが、前記内燃機関に通水するための機関用通水路、前記EGRクーラに通水するためのEGRクーラ用通水路、前記熱交換器に通水するための熱交換器用通水路及びラジエータに通水するためのラジエータ用通水路を含む通水路部と、前記機関用通水路及び前記熱交換器用通水路を含み且つ前記ラジエータ用通水路を含まない第1通水路並びに前記機関用通水路及び前記EGRクーラ用通水路を含み且つ前記ラジエータ用通水路を含まない第2通水路の各々における前記冷却水の通水量を調整可能な調整手段とを備えてなる車両において前記冷却システムを制御する、冷却システムの制御装置であって、前記内燃機関の冷間始動時に前記通水路部に対する通水制限を行う制限手段と、冷却水温を特定する冷却水温特定手段と、前記通水制限が行われる期間において、(1)前記特定された冷却水温が、前記熱交換器を介した前記冷却水と前記吸気との熱交換により、前記HPLEGR装置を介して前記排気が導入された場合に前記吸気系に凝縮水が発生しない温度まで前記吸気を昇温可能な温度として予め定められてなる第1基準温度以上である場合に、前記第1通水路における前記通水制限に係る制限量を超えた前記冷却水の通水と、前記HPLEGR装置を介した前記排気の導入とを許可し、(2)前記特定された冷却水温が前記第1基準温度よりも高い第2基準温度以上である場合に、前記第2通水路における前記通水制限に係る制限量を超えた前記冷却水の通水と、前記LPLEGR装置を介した前記排気の導入とを許可する許可手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る冷却システムの制御装置によれば、内燃機関の冷間始動時に制限手段により通水制限が行われる。尚、冷間始動の定義は設計事項的側面を有するが、例えば実践的には、外気温が所定温度未満である場合、冷却水温が所定温度未満である場合、所定時間以上の停止期間を経て始動する場合等として定義される。また、広義において冷間始動とは、内燃機関が暖機状態にない場合の始動全般を含んでもよい。
制限手段によりなされる通水制限とは、内燃機関の暖機促進措置であって、好適には冷却水の通水禁止措置を含むが、例えば、通水路部における冷却水温の偏りを緩和すること等を目的として、暖機を過度に阻害しない範囲で通水量を極少量に抑制する措置等を含み得る。係る通水制限により、冷却水が通水路部を循環することによる冷却効果が抑制され、内燃機関の機関暖機は促進される。
一方、冷間始動時、とりわけ外気温又は冷却水温が数℃〜氷点下未満である場合等には、内燃機関の燃焼が不安定となり易く、エミッション低減の観点から吸気系に対する早期の排気導入が望まれる。しかしながら、冷間始動時においては、吸気系に導かれる吸気(即ち、新気)の温度が低いため、導入された排気と当該吸気とが合流した際に、当該排気が冷却され凝縮水が生じる懸念がある。実践的にみれば、この種の懸念に対しては凝縮水が生じない安全側へのガード処理を行う必要があるから、何らの対策も講じられることがなければ、排気浄化装置下流側から排気を導入するLPLEGR装置であれ、排気浄化装置上流側から排気を導入するHPLEGR装置であれ、冷間始動直後〜相応の期間にわたって稼動は禁止されざるを得ない。本発明に係る冷却水ステムの制御装置は、このような問題を解決し、凝縮水の発生を抑制しつつ冷間始動時におけるEGRガスの早期導入を実現したものである。
本発明に係る冷却システムの制御装置によれば、許可手段が、冷却水温特定手段により特定される冷却水温に基づいて、第1通水路及び第2通水路における冷却水の通水と、LPLEGR装置及びHPLEGR装置におけるEGRの実行とを許可する構成となっている。尚、これらが許可された場合に常時通水及びEGRが実行される必要はないが、許可手段に係る許可とは、凝縮水発生の懸念が解消されたことを意味するものであって、冷間始動時のエミッション低減を目的としたEGRの実行に少なくとも実践上の障害が存在しないことを意味する。
具体的には、許可手段は、冷却水温が第1基準温度以上である場合に、第1通水路における通水制限に係る制限量を超えた通水と、HPLEGR装置を介した排気の導入とを許可する。また、冷却水温が第2基準温度(第2基準温度>第1基準温度)以上である場合に、第2通水路における通水制限に係る制限量を超えた通水と、LPLEGR装置を介した排気の導入とを許可する。即ち、端的には、HPLEGR装置の稼動が、時系列上でLPLEGR装置に先んじて許可される。尚、「制限量を超えた通水」とは、通水制限が通水禁止を意味する場合には、単なる通水そのものと等価である。
ここで、第1通水路は、内燃機関を経由する冷却水を、ラジエータを介することなく吸気系の熱交換器に供給することが可能な通水路である。尚、第1通水路の実践的態様は、通水路及び調整手段の物理的構成に応じて無論一義的でない。第1通水路に冷却水が通水されると、シリンダブロック又はシリンダヘッド等比較的高温の部位から熱供与を受けた冷却水を熱交換器に限定的に或いは優先して供給することが出来る。従って、熱交換器を、吸気を昇温させる手段として利用することが出来る。
ここで特に、HPLEGR装置を介して導入される排気の温度と、LPLEGR装置を介して導入される排気の温度とが相互に異なることは、既に知られるところである。しかしながら、従来、この温度差を冷間始動時のEGR早期実行に関連付けた技術思想は皆無である。HPLEGR装置を介した排気の方が高温であるからと言って、単に機関暖機の進行による冷却水温や吸気温の上昇を待ってEGRを実行したのではEGRの早期実行としては不十分であり、また、HPLEGR装置を介した排気の方が高温であるからと言って、HPLEGR装置をLPLEGR装置よりも時間軸上でどの程度先んじて稼動せしめ得るのかは明らかでない。
その点、本発明に係る冷却システムの制御装置は、第1基準温度なる明確な指針の下に、第1通水路における通水が許可される構成となっている。第1基準温度は、HPLEGR装置を介して導入された排気と合流した際に凝縮水を生じさせない温度(以下、適宜「基準吸気温」とする)まで、熱交換器を通過した吸気の温度を昇温せしめ得る冷却水温であり、予め実験的に、経験的に又は理論的に定められた温度である。一般に、熱交換器の効率は低くはないが、熱交換器に通水される冷却水の温度以上に吸気を昇温させることは出来ない。従って、第1基準温度は、上記基準吸気温よりも若干高温側の値である。
HPLEGR装置から導入される排気の温度は、LPLEGR装置のそれよりも高温である。一般にEGRガス温が高い程凝縮水は生じ難いから、この基準吸気温においてLPLEGR装置の稼動を許可すると、LPLEGR装置側を介して導入された排気から凝縮水が発生する可能性がある。また、これとは別に、LPLEGR装置は、排気浄化装置下流側から排気を導入する構成のため、装置全体としてHPLEGR装置よりも低温環境に置かれる。とりわけEGRクーラは低温であり、LPLEGR装置の場合、排気合流点よりも先ずEGRクーラ付近において凝縮水を生じる可能性がある。
このような問題に対処するには、熱交換器と同様に冷却水の通水によりEGRクーラを暖機することが考えられるが、出願人の研究によれば、第1基準温度の冷却水を第2通水路へ通水しても、EGRクーラを十分に暖機することは出来ない。即ち、第2基準温度とはそのような趣旨に基づいた温度であって、第1基準温度よりも高温側の温度である。本発明は、EGRクーラへ通水することに実践上の意義が生じる温度よりも低温側に、HPLEGR装置を介した排気の早期導入を可能とする第1の基準温度が存在することを見出し、熱交換器への通水による吸気の昇温効果により、LPLEGR装置よりも前にHPLEGR装置を稼動させることを可能としたものである。HPLEGR装置を可及的早期に稼動せしめ得ることから、機関暖機を促進しつつ冷間始動時のエミッションを良好に低減することが可能となるのである。
尚、第1基準温度において第2通水路における通水を許可したところで、HPLEGR装置を介した排気導入に大きな影響はないが、制限手段に係る通水制限を無意味に失効せしめると、内燃機関の機関暖機に影響が及ぶ。具体的には、第1基準温度において第2通水路への通水を許可すると、実際に第2通水路への通水がなされた場合に(LPLEGR装置は非稼動である)、内燃機関の暖機効果が低下して暖機期間が長くなる。従って、内燃機関の早期暖機を実現しつつ、暖機以前の好適なエミッション低減を図り得る点において、本発明に係る通水制御は実践上顕著に有益なのである。
尚、本発明に係る冷却システムの制御装置は、通水制限下において通水及び排気導入を的確に許可する点において進歩的であるが、冷間始動における実際のエミッション低減効果を得る点からは、通水及び排気導入が許可された場合に、調整手段及び各EGR装置の駆動制御を介して実際に冷却水の通水及び排気の導入を実現せしめ得る然るべき制御手段が備わっていてもよい。このような制御手段が備わる場合には、冷却水の通水量及びEGR装置におけるEGR率(新気に対するEGRガスの比率)、EGR量、EGR弁開度等を精細に制御し、更には、吸気温や外気温に基づいたこれらの補正処理を好適に実現し得る。即ち、凝縮水の発生抑制の観点からは実践上有益である。
尚、本発明において、冷却水温特定手段が冷却水温を特定するにあたっての実践的態様は限定されない。例えば、冷却水温特定手段は、水温センサ等の直接的検出手段であってもよいし、この種の直接的検出手段からセンサ値を取得するプロセッサや制御装置の類であってもよい。或いは、冷却水温特定手段は、その時点の内燃機関の動作環境や始動以後の動作条件の変化履歴等から、冷却水温を推定する手段であってもよい。このような冷却水温推定に係る実践的態様は各種公知のものがあるが、冷却水の循環供給がなされない状態においては、冷却水温に局所的な温度差が生じ易く、センサの設置箇所によっては、必ずしもセンサ値が正確な冷却水温を表さない場合がある。このような観点からすれば、内燃機関の動作条件等に基づいて冷却水温を推定する構成は実践上有益である。
尚、調整手段の物理的構成は、第1通水路と第2通水路とにおける通水量の調整が可能である限りにおいて限定されるものではないが、調整手段は、好適な一形態として、例えばCCV(Coolant Control Valve)等の弁装置を含んでいてもよい。より具体的には、調整手段は、例えば、被冷却体に通ずる各通水路に適宜設けられた弁を、機械的又は電気的に駆動することにより、当該通水路の通水路面積を二値的、段階的又は連続的に変化させ得る構成を有していてもよい。また、冷却システムには、通水路内で冷却水を循環させるための各種ポンプ装置が好適に備わる。このポンプ装置は、例えば電動W/P(Water Pump)や内燃機関の機関駆動に連動した機械式W/P等であるが、これらは、本発明に係る調整手段の一部として設けられていてもよいし、冷却システムの他の構成要素として設けられていてもよい。
本発明に係る冷却システムの制御装置の一の態様では、前記制限手段は、前記通水制限として前記通水路部における前記冷却水の通水を禁止する(請求項2)。
この態様によれば、通水制限により最大限の暖機促進効果を得ることが出来る。また、先に述べたように、冷却水の通水禁止をもって通水制限がなされる場合、許可手段に係る許可とは、通水そのものの許可を意味する。
本発明に係る冷却システムの制御装置の他の態様では、前記第2基準温度は、前記EGRクーラが前記LPLEGR装置を介して導入される排気の温度を排気露点温度以上に昇温可能な温度として予め定められた温度である(請求項3)。
この態様によれば、LPLEGR装置を介して導入される排気が、このEGRクーラにより排気露点温度以上に昇温される。従って、EGRクーラ付近に滞留する排気からの凝縮水の発生を効果的に抑制することが出来る。
本発明に係る冷却システムの制御装置の他の態様では、前記熱交換器は、前記吸気系における前記LPLEGR装置を介した前記排気の導入位置よりも上流側に設置されたインターウォーマと、前記吸気系における前記HPLEGR装置を介した前記排気の導入位置よりも上流側に設置されたインタークーラとのうち少なくとも一方を含む(請求項4)。
インターウォーマ及びインタークーラは、冷間始動時において夫々該当する通水路に第1基準温度以上の冷却水が通水された場合に吸気を昇温する手段として機能し得る。即ち、これらは本発明に係る熱交換器の好適な態様をなす。尚、インターウォーマは、LPLEGR装置の排気合流点よりも上流側で吸気を昇温する構成であるから、LPLEGR装置及びHPLEGR装置のいずれを経由した排気に対しても有効である。一方、インタークーラは、LPLEGR装置の排気合流点よりも下流側、好適には、過給器のコンプレッサ下流側に設けられることが多く、その点では、LPLEGR装置を経由した排気に対しては有効ではない。然るに、本発明に係る内燃機関の好適な一例としての圧縮自着火式内燃機関においては、過給器が備わる構成が一般的であり、過給器が備わる場合には、吸気の冷却による過給効率の向上を目的としてインタークーラが設けられることが多い。即ち、この場合、インタークーラを水冷式とすれば、過給器に通常備わる構成要素を本発明に係る熱交換器として利用し得る。従って、インターウォーマを別途設ける構成よりコスト面で有利となり得る。
尚、この態様では、前記熱交換器は前記インターウォーマであり、前記調整手段は、前記インターウォーマに対する前記冷却水の通水を調整する補助調整手段を備える(請求項5)。
インターウォーマへ冷却水を供給し続けた場合、吸気が過剰に昇温する可能性がある。この態様によれば、補助調整手段によりインターウォーマに対する通水量を調整することが出来るので、吸気の温度を、例えば上述した基準吸気温近傍で安定ならしめることが可能となる。
尚、本発明に係る調整手段が、CCV等の弁装置として構成される場合、このようなインターウォーマにおける通水量の調整は、調整手段の作用としてなされてもよい。しかしながら、補助調整手段として、例えばサーモスタットや電磁弁等を別途備える構成とすれば、吸気温度の精細な制御が可能である。
熱交換器としてインターウォーマ及びインタークーラのうち少なくとも一方を備えた本発明に係る冷却システムの制御装置の他の態様では、前記熱交換器は前記インターウォーマであり、前記冷却システムの制御装置は、外気温を特定する外気温特定手段と、前記特定された外気温と前記LPLEGR装置及び前記HPLEGR装置におけるEGR率から前記外気温が基準温度である場合における凝縮水の発生量を推定する推定手段と、該推定された発生量に基づいて前記凝縮水が発生しないように前記EGR率を制御するEGR制御手段とを更に具備する(請求項6)。
この態様によれば、外気温特定手段により特定された外気温と各EGR装置のEGR率(尚、EGR率と相関する各種指標、例えば、EGR量やEGR弁開度を含む)から、推定手段により外気温が基準温度以上である場合の凝縮水の発生量が推定される。例えば、外気温が基準温度である場合について凝縮水の発生量が予めマップ化されている場合には、推定手段は、係るマップから該当する値を適宜選択することによって発生量を推定してもよい。
一方、EGR制御手段は、この推定された発生量に基づいて凝縮水が発生しないようにEGR率又はEGR率と相関するEGR量やEGR弁開度を制御する。従って、この態様によれば、基準温度又はそれ以上の外気温領域において、凝縮水を発生させることなくEGRを実行することが出来る。
ここで、このように所定の基準温度を定めて、予め当該基準温度における凝縮水の発生が防止される構成としておけば、外気温が当該基準温度未満である場合についてのみ、通水制限下の第1通水路への通水措置(許可手段により通水が許可されたことに伴う通水措置)が講じられればよくなり、制御プロセスを簡素化し得る。
本発明に係る冷却システムの制御装置の他の態様では、前記調整手段は、前記機関用通水路及び前記ラジエータ用通水路を含む第3通水路における前記冷却水の通水量を調整可能であり、前記冷却システムの制御装置は、前記内燃機関の暖機完了判定以前において、前記吸気又は前記LPLEGR装置を介して導入される排気の温度が所定の温度範囲に維持されるように前記調整手段を介して前記第1、第2及び第3通水路における前記冷却水の通水量を制御する通水量制御手段を更に具備する(請求項7)。
この態様によれば、第1、第2及び第3通水路における通推量を制御することによって、吸気温及びLPLEGR装置を介して導入される排気の温度を所望の温度範囲に維持することが出来る。吸気温や排気温は、内燃機関の燃焼状態を左右し、エミッションも左右する。従って、このように吸気温及び排気温の制御上の自由度が確保された場合には、冷間始動時のEGRに係る好適な効果を継続して得ることが出来る。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
図1のエンジンシステムにおける冷却装置のブロック図である。
図2の冷却装置の動作モードと冷却水温との関係を例示する図である。
図1のエンジンシステムにおける冷却水温と新気温度との関係を例示する図である。
本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
図5のエンジンシステムにおける冷却装置のブロック図である。
図6の冷却装置の動作モードと冷却水温との関係を例示する図である。
図7の動作モードのうち動作モードM2における冷却水の通水経路を説明する図である。
図7の動作モードのうち動作モードM3及びM4における冷却水の通水経路を説明する図である。
図7の動作モードのうち動作モードM5における冷却水の通水経路を説明する図である。
図7の動作モードのうち動作モードM6における冷却水の通水経路を説明する図である。
<発明の実施形態>
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムの構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステムのブロック図である。
図1において、エンジンシステムは、図示せぬ車両に搭載されるシステムであり、ECU(Electronic Control Unit)100、エンジン200、HPLEGR装置300、過給器400及びLPLEGR装置500を備える。尚、エンジンシステムは、図示せぬ冷却装置600も備えるが、冷却装置600の構成については別途図2を参照する形で後述することとする。
図1において、ECU100は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジンシステムの動作全体を制御可能に構成された、本発明に係る「冷却システムの制御装置」の一例たるコンピュータ装置である。
エンジン200は、軽油を燃料とする、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)である。エンジン200の概略について説明すると、エンジン200は、シリンダブロック201及びシリンダヘッド202からなる本体部に、4本のシリンダ203が直列に配置された構成を有している。そして、各シリンダ内において燃料を含む混合気が圧縮自着火した際に生じる力が、不図示のピストンを紙面と垂直な方向に往復運動させ、更にコネクティングロッドを介してピストンに連結されるクランクシャフト(いずれも不図示)の回転運動に変換される構成となっている。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。
シリンダ203の燃焼室には、筒内直噴型のユニットインジェクタ204の一部が露出しており、燃料たる軽油をシリンダ内に直接噴射可能な構成となっている。噴射された燃料は、各シリンダ内部で、当該吸気と混合され、上述した混合気となる。尚、詳細は省略するが、燃料は、不図示の燃料タンクに貯留されている。この燃料タンクに貯留される燃料は、不図示のフィードポンプの作用により燃料タンクから汲み出され、不図示の低圧配管を介して公知の各種態様を採り得高圧ポンプ(不図示)に圧送される構成となっている。この高圧ポンプは、コモンレール205に対し、燃料を供給可能に構成されている。
コモンレール205は、ECU100と電気的に接続され、上流側(即ち、高圧ポンプ側)から供給される高圧燃料をECU100により設定される目標レール圧まで蓄積することが可能に構成された、高圧貯留手段である。尚、コモンレール205には、レール圧を検出することが可能なレール圧センサ及びレール圧が上限値を超えないように蓄積される燃料量を制限するプレッシャリミッタ等が配設されるが、ここではその図示を省略することとする。前述したユニットインジェクタ204は、シリンダ203毎に搭載されており、夫々が高圧デリバリを介してコモンレール205に接続されている。
ユニットインジェクタ204の構成について補足すると、ユニットインジェクタ204は、ECU100から供給される指令に基づいて作動する電磁弁と、この電磁弁への通電時に燃料を噴射するノズル(いずれも不図示)とを備える。当該電磁弁は、コモンレール205の高圧燃料が印加される圧力室と、当該圧力室に接続された低圧側の低圧通路との間の連通状態を制御することが可能に構成されており、通電時に当該加圧室と低圧通路とを連通させると共に、通電停止時に当該加圧室と低圧通路とを相互に遮断する。一方、ノズルは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁への通電により加圧室と低圧通路とが連通し、圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール205より供給された高圧燃料を噴孔より噴射することが可能である。また、電磁弁への通電停止により加圧室と低圧通路とが相互に遮断されて圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する。
一方、エンジン200において、不図示のエアフィルタを介して外部から吸入された新気(本発明に係る「吸気」の一例)は、吸気管206に導かれる。吸気管206には、インターウォーマ207が設けられている。また吸気管206におけるインターウォーマ207の下流側には、吸入空気量(新気量)Gaを検出するためのエアフローメータ208が設置されている。エアフローメータ208はECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気量Gaは、ECU100により把握される構成となっている。
インターウォーマ207は、内部に吸気管206が貫通すると共に、その外周部に後述するウォータジャケットが張り巡らされた、本発明に係る「熱交換器」の一例である。インターウォーマ207を通過する新気は、このインターウォーマ207を介したウォータジャケット内の冷却水との間接的な熱交換により温められる構成となっている。
吸気管206における、後述するLPLEGR管510との合流部位たるLPL合流部よりも下流側には、後述する過給器400のコンプレッサ420が設置されている。コンプレッサ420の下流側には、空冷インタークーラ209が設けられている。空冷インタークーラ209は、放熱フィンを介してコンプレッサ通過後の吸入ガス(LPLEGRが行われていれば、新気とEGRガスとの混合気であり、LPLEGRが行なわれていなければ新気である)を冷却可能に構成される。また、空冷インタークーラ209の下流側には、当該吸入ガスの温度たる吸気温Tiを検出可能な吸気温センサ210が設置されている。吸気温センサ210はECU100と電気的に接続されており、検出された吸気温Tiは、ECU100により参照される構成となっている。
吸気管206には、吸入ガスの量を調節可能なディーゼルスロットルバルブ211が配設されている。このディーゼルスロットルバルブ211は、ECU100と電気的に接続され且つECU100により上位に制御されるスロットルバルブモータ(不図示)から供給される駆動力により回転可能に構成された回転弁であり、ディーゼルスロットルバルブ211を境にした吸気管206の上流部分と下流部分とをほぼ遮断する全閉位置から、ほぼ全面的に連通させる全開位置まで、その回転位置が連続的に制御される構成となっている。尚、エンジン200は、ディーゼルエンジンであり、その出力は、ガソリン等を燃料とするエンジンにおける空燃比制御(吸入空気量に応じた制御)と異なり、噴射量の増減制御を介してコントロールされる。従って、ディーゼルスロットルバルブ211は、エンジン200の動作期間において、基本的に全開位置に制御される。
吸気管206は、ディーゼルスロットルバルブ211の下流側において、吸気マニホールド212と接続され、その内部において連通している。吸気マニホールド212に導かれる吸入ガスは、吸気マニホールド212の入り口付近に設けられた、後述するHPLEGR管310との合流部位たるHPL合流部において、後述するHPLEGRガスと適宜混合され(HPLEGRの実行時)、吸気ポートとシリンダ内部とを連通可能に構成された不図示の吸気バルブの開弁時にシリンダ203内に吸入される。
尚、燃料は、個々のシリンダ202において、ユニットインジェクタ204を介し、目標噴射量に相当する燃料が、燃焼室内の急激な温度上昇を防止するための、或いは燃料と吸気とを十分に予混合するためのパイロット噴射と、目標噴射量とパイロット噴射量との差分に相当するメイン噴射とに分割して噴射される構成となっている。
上述した混合気は、圧縮行程において自着火して燃焼し、燃焼済みガスとして、或いは一部未燃の混合気として、吸気バルブの開閉に連動して開閉する排気バルブ(不図示)の開弁時に排気ポートを介して排気マニホールド213に導かれる構成となっている。この排気マニホールド213は、排気管214に連通しており、排気の大部分は、この排気管214に導かれる構成となっている。
一方、排気管214には、過給器400のタービン410が設置されている。タービン410は、排気管214に導かれた排気の圧力(即ち、排気圧)により所定の回転軸を中心として回転可能に構成されている。このタービン410の回転軸は、コンプレッサハウジングに収容される形で吸気管206に設置されたコンプレッサ420と共有されており、タービン410が排気圧により回転すると、コンプレッサ420も当該回転軸を中心として回転する構成となっている。
コンプレッサ420は、上述した吸入ガスを、その回転に伴う圧力により上述した吸気マニホールド212へ圧送供給可能に構成されており、このコンプレッサ420による吸入ガスの圧送効果により、所謂過給が実現される構成となっている。即ち、タービン410とコンプレッサ420を含む過給器400は、一種のターボチャージャを構成する。
排気管214には、CCO(酸化触媒)215及びDPF(Diesel Particulate Filter)216が設置されている。これらは本発明に係る「排気浄化装置」の一例である。
CCO215は、アルミナ等の多孔質塩基性担体に白金等の貴金属を担持してなり、排気中のCO、HC(主としてSOF)及びNO等を酸化することが可能に構成された触媒である。
DPF216は、排気中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕捉可能に構成されたフィルタである。DPF216は、金属製の筐体にコージェライトやSiC等のセラミック担体によって構成されたフィルタが収容された構造を有する。このフィルタは、排気の流れる方向に伸長し且つ排気の流れる方向と垂直な断面がハニカム状をなす複数の排気通路を形成している。この排気通路は、排気の入口側と出口側とのうち一方が、相互に隣接しないように互い違いに目封じされており、DPF216は、所謂セラミックウォールフロー型のフィルタ構造を有している。
尚、ここでは図示を省略するが、エンジン200には、CCO215及びDPF216に加えて、NSR触媒が設けられていてもよい。NSR触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属等のNOx吸蔵材と貴金属をアルミナ等の多孔質担体に担持してなるNOx吸蔵還元型触媒である。NSR触媒は、リーン雰囲気中で排気中のNOを貴金属上でNOxに酸化し、塩基性物質であるNOx吸蔵材がNOxと中和反応して硝酸塩や亜硝酸塩を形成することによりNOxを吸蔵可能に構成されており、また燃料リッチ雰囲気中で、吸蔵されていた硝酸塩や亜硝酸塩が分解しNOxが放出されると共に、貴金属の触媒作用によりHCやCO等の還元剤と反応してN2に浄化される構成となっている。
排気管214におけるDPF216の下流側には、排気絞り弁217が設置される。排気絞り弁217は、背圧を一時的に高めて一種のエンジンブレーキ効果を得るための弁装置であり、ECU100により適宜その弁開度が制御される構成となっている。
HPLEGR装置300は、排気の一部をHPLEGRガスとして吸気系に導入可能に構成された排気再循環装置であり、本発明に係る「HPLEGR装置」の一例である。HPLEGR装置300は、HPLEGR管310及びHPLEGR弁320を備える。
HPLEGR管310は、排気マニホールド213から分岐すると共に、排気マニホールド213と吸気管206とを連通させる金属製且つ中空の管状部材であり、上述した吸気マニホールド212入口付近のHPL合流部において吸気管206と連通する構成となっている。HPLEGR管310を介して導入された排気は、HPLEGRガスとして、係るHPL合流部に導入される。
HPLEGR弁320は、HPLEGR管310に設置された開閉可能な弁と、当該弁を駆動する駆動装置を含むバルブ機構である。HPLEGR弁320の弁は、当該駆動装置により開閉状態が連続的に変化するように構成されており、当該開閉状態に応じて、HPLEGR管310を流れるHPLEGRガスの流量、即ち、HPLEGR量を制御可能に構成されている。HPLEGR弁320の駆動装置は、ECU100と電気的に接続されており、HPLEGR弁320の弁の開閉状態は、ECU100により上位に制御される構成となっている。
LPLEGR装置500は、排気の一部をLPLEGRガスとして吸気系に導入可能に構成された排気再循環装置であり、本発明に係る「LPLEGR装置」の一例である。LPLEGR装置500は、LPLEGR管510、LPLEGRクーラ520及びLPLEGR弁530を備える。
LPLEGR管510は、DPF216の下流側且つ排気絞り弁217の上流側の分岐位置において排気管214から分岐する金属製且つ中空の管状部材であり、上述した、コンプレッサ420上流側に設けられたLPL合流部において上述した吸気管206に連通する構成となっている。LPLEGR管510に導かれた排気は、LPLEGRガスとして、係るLPL合流部に導入される。
LPLEGRクーラ520は、LPLEGR管510に設けられた冷却装置である。LPLEGRクーラ520は、外周部に、後述する冷却装置600の通水路部の一部であるEGRクーラ用通水路が張り巡らされた金属製且つ中空の管状部材であり、LPLEGR管510に導かれるLPLEGRガスは、このEGRクーラ用通水路に流れる冷却水との間接的な熱交換により冷却され、下流側(即ち、吸気管206側)へ導かれる構成となっている。
LPLEGR弁530は、LPLEGRクーラ520下流側においてLPLEGR管510に設置された開閉可能な弁と、当該弁を駆動する駆動装置を含むバルブ機構である。LPLEGR弁530の弁は、当該駆動装置により開閉状態が連続的に変化するように構成されており、当該開閉状態に応じて、LPLEGR管510を流れるLPLEGRガスの流量、即ち、LPLEGR量を制御可能に構成されている。LPLEGR弁530の駆動装置は、ECU100と電気的に接続されており、LPLEGR弁530の弁の開閉状態は、ECU100により上位に制御される構成となっている。
尚、図示は省略するが、エンジンシステムには外気温Toを検出可能な外気温センサが備わる。外気温センサはECU100と電気的に接続されており、ECU100は、常時外気温Toを参照可能である。
図1において図示せぬ冷却装置600は、通水路部に封入された冷却水(例えば、LLC)を、後述するCC620の作用により適宜選択される経路内で循環供給することによってエンジンシステムを冷却する、本発明に係る「冷却システム」の一例である。ここで、図2を参照し、冷却装置600の構成について説明する。ここに、図2は冷却装置600のブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、冷却装置600は、電動ウォータポンプ(以下、適宜「電動W/P」と表記する)610、CCV620、冷却水温センサ630、ラジエータ640、サーモスタット650及び図示実線で示された通水路(CCVi、CCVo1、CCVo2、CCVo3、RGi、RGo、RGo1、RGo2、EGRi、EGRo、IWi、IWo、WPi及びWPo)を備える。
通水路CCViは、シリンダブロック201及びシリンダヘッド202を順次経由する不図示のウォータジャケットを含む通水路であり、本発明に係る「機関用通水路」の一例である。通水路CCViは、CCV620の入力ポートに接続される。
通水路CCVo1は、CCV620の第1出力ポートに接続された通水路である。通水路CCVo1は、合流点P4において、通水路IWi及びRGo2に接続されている。通水路CCVo1は、本発明に係る「熱交換器用通水路」の一例をなしている。
通水路CCVo2は、CCV620の第2出力ポートに接続された通水路である。通水路CCVo2は、合流点P3において、通水路EGRi及びRGo1に接続されている。通水路CCVo2は、本発明に係る「EGRクーラ用通水路」の一例をなしている。
通水路CCVo3は、CCV620の第3出力ポートに接続された通水路である。通水路CCVo3は、ラジエータ640の入力ポートに接続された通水路RGiに接続されている。
通水路RGoは、ラジエータ640の出力ポートに接続された通水路である。通水路RGoは、合流点P2において、通水路RGo1及びRGo2に分岐する。通水路CCVo3、RGi、RGo、RGo1及びRGo2は、本発明に係る「ラジエータ用通水路」の一例をなしている。
通水路EGRoは、LPLEGRクーラ530の出力ポートに接続されており、通水路WPiに接続されている。通水路EGRoは、通水路EGRiと共に、本発明に係る「EGRクーラ用通水路」の一例を構成している。
通水路IWoは、インターウォーマ207の出力ポートに接続されており、通水路WPiに接続されている。通水路IWoは、通水路IWiと共に、本発明に係る「熱交換器用通水路」の一例を構成している。
通水路WPiは、電動W/P610の入力ポートに接続された通水路である。
通水路WPoは、電動W/P620の出力ポートに接続された通水路である。通水路WPoは、機関用通水路の一部である上述したウォータジャケット(図ではシリンダブロック201の入り口部分)に接続されている。
電動W/P610は、公知の電気駆動型渦巻き式ポンプである。電動W/P610は、入力ポートを介して通水路WPiから入力される冷却水を不図示モータの回転力によって吸引し、モータ回転速度Nwpに応じた量の冷却水を、出力ポートを介して通水路WPoに吐出可能に構成されている。このモータは、不図示の電力供給源(例えば、車載用12Vバッテリ、或いは他のバッテリ)等から電力の供給を受ける構成となっており、その回転速度たるポンプ回転速度Nwpは、不図示のモータ駆動系を介して供給される制御電圧(又は制御電流)のデューティ比DTYに応じて増減制御される構成となっている。また、このモータ駆動系は、ECU100と電気的に接続された状態にあり、ECU100によって上述したデューティ比DTYを含む動作状態が制御される構成となっている。即ち、電動W/P610は、ECU100によってその動作状態が制御される構成となっている。
CCV620は、実際に冷却水を循環供給するための通水路(言わば、アクティブな通水路)を、冷却装置600の後述する各動作モードに応じて切り替え可能な、電磁制御弁装置であり、本発明に係る「調整手段」の一例である。CCV620では、冷却水の入力側インターフェイスである入力ポートが、上述した通水路CCViに接続されており、三つある出力側インターフェイスとしての出力ポートのうち第1出力ポートが通水路CCVo1に、第2出力ポートが通水路CCVo2に、第3出力ポートが通水路CCVo3に夫々接続されている。
CCV620は、入力ポートを介して入力される冷却水を、各出力ポートに分配することが出来る。より具体的には、CCV620は、励磁電流により電磁力を生じる公知のソレノイドと、当該励磁電流を付与する駆動装置と、各出力ポートに配設された、当該電磁力により弁開度が連続的に変化する弁とを有し、各弁について独立に開度を変化させることが出来る。弁開度は、各出力ポートの通水路面積に比例しており、弁開度が100(%)である場合が全開状態に、弁開度が0(%)である場合が全閉状態に夫々対応する。即ち、CCV620は、冷却水の通水路を選択する機能に加えて、選択された通水路における冷却水の通水量(循環量)を実質的に自由に制御することが出来る。尚、上記駆動装置は、ECU100と電気的に接続されており、CCV620の動作は実質的にECU100により制御される。
冷却水温センサ630は、冷却水の温度たる冷却水温Tclを検出可能に構成されたセンサである。冷却水温センサ630は、上述した通水路CCViにおける計測点P1に設置されており、通水路CCVi1における冷却水温Tclを検出可能である。また、冷却水温センサ630は、ECU100と電気的に接続されており、検出された冷却水温Tclは、ECU100により常時参照される。
ラジエータ640は、入力ポート及び出力ポートに連通する複数のウォータパイプが配列してなると共に、当該ウォータパイプの外周に多数の波板状のフィンを備えた公知の冷却装置である。ラジエータ640は、通水路RGiを介して入力ポートから流入した冷却水を当該ウォータパイプに導くと共に、当該ウォータパイプを流れる過程において当該フィンを介した大気との熱交換により冷却水から熱を奪う構成となっている。熱を奪われることによって相対的に冷却された冷却水は、出力ポートを介して通水路RGoに排出される構成となっている。
サーモスタット650は、予め設定されたサーモ閉弁温度において閉弁するように構成された公知の温度調整弁である。サーモスタット650は、通水路IWiに設置されており、本実施形態において、通水路IWiは、サーモ閉弁温度において閉鎖される。尚、サーモスタット650は、本発明に係る「補助調整手段」の一例である。
冷却装置600においては、通水路WPo、CCVi、CCVo1、IWi、IWo及びWPiにより、本発明に係る「第1通水路」の一例たる第1通水路が構成される。また、通水路WPo、CCVi、CCVo2、EGRi、EGRo及びWPiにより、本発明に係る「第2通水路」の一例たる第2通水路が構成される。更に、通水路WPo、CCVi、CCVo3、RGi、RGo、RGo1、EGRi、EGRo、RGo2、IWi、IWo及びWPiにより、本発明に係る「第3通水路」の一例たる第3通水路が構成される。但し、このような構成例は、本発明に係る冷却システムが採り得る実践的態様の一つに過ぎない。
<実施形態の動作>
次に、実施形態の動作として、適宜図面を参照し、冷却装置600の動作について説明する。
冷却装置600は、動作モードM1、M2、M3及びM4の四種類の動作モードを備えており、選択される動作モードに応じて冷却水の通水路が変化する構成となっている。この動作モードの選択は、本発明に係る「制限手段」、「冷却水温特定手段」、「許可手段」、「外気温特定手段」、「推定手段」及び「EGR制御手段」の一例として機能するECU100が、冷却水温センサ630により検出される冷却水温Tclに基づいて実行する構成となっている。
ここで、図3を参照し、冷却装置600の動作モードと冷却水温Tclとの関係について説明する。ここに、図3は、冷却装置600の動作モードと冷却水温Tclとの関係を例示する図である。尚、図3において、縦軸が動作モードに、横軸が冷却水温Tclに夫々対応している。
図3において、冷却水温Tclが温度値b未満である場合(尚、図では温度値aが示されるが、温度値aは想定され得る下限温度値であり、例えば氷点下数十℃であるとする)、ECU100は、冷却装置600の動作モードとして動作モードM1を選択する。動作モードM1は、CCV620の三つの出力ポートが上述した弁開度の制御により閉塞状態に維持されるモードである。動作モードM1では、CCV620の全ての出力ポートが閉塞状態となるため、冷却水は各通水路に封入されたまま循環することなく滞留する。即ち、動作モードM1では、本発明に係る「冷却水の通水制限」の一例が実現される。
冷却水温Tclが温度値bに到達すると、ECU100は、CCV620の第1出力ポートにおける弁開度を徐々に増大させ、通水路CCVo1の通水路面積を徐々に増大させる。尚、この際、弁開度は、冷却水温Tclに応じて連続的に可変とされる。この通水路CCVo1の通水路面積の拡大措置は、冷却水温Tclが温度値c(c>b)となるまで継続される。冷却水温Tclが温度値bから温度値cに至るまでの期間は、動作モードが動作モードM1からM2へと変化する一種の過渡的期間である。
冷却水温Tclが温度値cに到達すると、冷却水温Tclが温度値d(d>c)に達するまでの暫時の期間について、冷却装置600の動作モードが動作モードM2となる。本実施形態において、動作モードM2では、通水路CCVo1における通水路面積が最大となり(即ち、全開)、その時点の最大流量で冷却水が通水される。
動作モードM2では、冷却水がインターウォーマ207に供給され、新気の昇温が促進される。ここで、動作モードM2への移行が開始される温度値bは、上述した基準吸気温の一種であり、HPLEGRガスと混合されても凝縮水が生じない外気温である。一方、インターウォーマ207の熱交換効率は100%ではないため、インターウォーマ207を介した熱供与により新気の温度を当該温度値bまで昇温せしめ得る冷却水温Tclの値は、温度値bよりも高くなる。このインターウォーマ207での温度伝達特性を考慮して設定された温度値が、即ち温度値cである。冷却水温Tclが温度値c以上である冷却水を、上述した第1通水路を介してインターウォーマ207に供給すると、このインターウォーマ207との熱交換により新気の温度は温度値b以上に昇温する。その結果、HPLEGR装置300を介したHPLEGRガスの導入が可能となるのである。
ここで、ECU100は、予めROMに、新気の温度(即ち、外気温)が温度値bである場合における、EGR率と凝縮水量との関係を表してなるマップを保持しており、係るマップを参照することによって、凝縮水の生じないEGR率を的確に決定することが出来る。凝縮水が発生しない範囲で目標EGR率を決定すると、ECU100は、その時点の排気圧と吸気圧との差である圧力偏差と、吸入空気量Gaとに基づいて、目標EGR率を実現するためのHPLEGR弁320の開度を決定し、HPLEGR弁320を制御する。その結果、エンジン200の冷間始動時において、可及的早期にHPLEGRガスを導入することが出来、冷間始動時におけるエミッションを好適に低減することが出来る。
補足すると、当該マップは、予め凝縮水の発生が懸念される箇所全てにおいて、夫々凝縮水が発生しないEGR率を求める(EGR量のマップであれば、EGR量を求める)ことにより、当該箇所全てにおいて凝縮水が生じないEGR率を、エンジン200の機関回転速度や燃料噴射量をパラメータとして決定することにより作成される。このように、基準吸気温としての温度値bにおいて凝縮水量を推定可能な構成とすることにより、外気温Toが温度値b未満であり且つ冷却水温Tclが温度値c以上である場合に冷却装置600の動作モードとして動作モードM2を選択すればよいことになり、外気温に応じたEGR率の補正等、煩雑な制御プロセスを不要とすることが出来る。
図3において、冷却水温Tclが温度値dに達すると、ECU100は、CCV620の第2出力ポートにおける弁開度を徐々に増大させ、通水路CCVo2の通水路面積を徐々に増大させる。尚、この際、弁開度は、冷却水温Tclに応じて連続的に可変とされる。この通水路CCVo2の通水路面積の拡大措置は、冷却水温Tclが温度値e(e>d)となるまで継続される。冷却水温Tclが温度値dから温度値eに至るまでの期間は、動作モードが動作モードM2からM3へと変化する一種の過渡的期間である。冷却水温Tclが温度値eに到達すると、冷却水温Tclが温度値f(f>e)に達するまでの暫時の期間について、冷却装置600の動作モードが動作モードM3となる。本実施形態において、動作モードM3では、通水路CCVo2における通水路面積が最大となり(即ち、全開)、その時点の最大流量で冷却水が通水される。
動作モードM3では、冷却水がLPLEGRクーラ530に供給され、LPLEGRクーラ530の暖機が促進される。ここで、温度値eは、それ未満の温度領域でLPLEGRガスから凝縮水が発生するものとして予め決定された、排気露点温度である。この排気露点温度は、厳密な物性値でなくてもよく、このような趣旨に鑑みて実験的に、経験的に又は理論的に得られた値であってよい。
動作モードM3によれば、LPLEGR管510で凝縮水を発生させることが回避されるため、LPLEGR装置500を介してLPLEGRガスを吸気管206に導入することが出来る。この際、上述した外気温bにおける凝縮水の発生量を規定したマップは、HPLEGR装置300及びLPLEGR装置500の双方に対応するものとなっており、LPLEGR装置500を利用したEGR制御に適用することが出来る。
尚、動作モードM3が選択された場合に、上述した第1通水路を介した通水は維持されてもよいし、CCV620の制御により通水路CCVo1が閉塞されることにより、インターウォーマ207への通水が停止されてもよい。即ち、冷間始動時のエミッション低減の観点からは、EGRガスの早期導入が重要であり、いずれのEGR装置からEGRガスが導入されてもエミッション低減に係る効果を得ることが出来るからである。
但し、HPLEGR装置300は、高温である分、排気浄化プロセスを経ない排気を吸気系に導入する構成であるから、LPLEGR装置500を稼動させ得る状況においてはLPLEGR装置500が優先されてもよい。この場合、通水路CCVo1を閉鎖或いは通水路面積を減少させる等して、LPLEGR装置500からの排気導入を優先してもよい。
図3において、冷却水温Tclが温度値fに達すると、ECU100は、CCV620の第3出力ポートにおける弁開度を徐々に増大させ、通水路CCVo3の通水路面積を徐々に増大させる。尚、この際、弁開度は、冷却水温Tclに応じて連続的に可変とされる。この通水路CCVo3の通水路面積の拡大措置は、冷却水温Tclが温度値g(g>f)となるまで継続される。冷却水温Tclが温度値fから温度値gに至るまでの期間は、動作モードが動作モードM3からM4へと変化する一種の過渡的期間である。冷却水温Tclが温度値gに到達すると、冷却水温Tclが温度値h(h>g)に達するまでの暫時の期間について、冷却装置600の動作モードが動作モードM4となる。本実施形態において、動作モードM4では、通水路CCVo3における通水路面積が最大となり(即ち、全開)、その時点の最大流量で冷却水が通水される。
動作モードM4では、冷却水がラジエータ640に供給され、冷却水の過剰昇温が防止される。即ち、温度値gとは、エンジン200の暖機判定に関連付けられた温度値であり、暖機完了判定温度(例えば、90℃)よりも若干低温側の値である。即ち、本実施形態では、上記温度値hが暖機完了判定温度である。このように暖機完了判定温度よりも低温側でラジエータ640を稼動させる構成とすれば、所謂オーバヒートの懸念をより好適に払拭することが出来る。
尚、図3における温度値iは、先に述べたサーモスタット650のサーモ閉弁温度である。即ち、本実施形態では、CCV620側の弁駆動状態によらず、冷却水温Tclが温度値iに達した時点でインターウォーマ207に対する冷却水の通水は遮断される。
ここで、このようなサーモスタット650の効果について、図4を参照して説明する。ここに、図4は、冷却水温と新気温度との関係を例示する図である。
図4において、実線L1で示されるプロファイルが、本実施形態に係るサーモスタット650の閉弁措置が講じられた場合の新気温度のプロファイルである。図示の通り、サーモ閉弁温度にてサーモスタット650を閉弁することによって、インターウォーマ207を通過した新気の過剰昇温が防止される。その結果、新気温度は、凝縮水発生温度以上の温度領域で安定する。
一方、図示破線Lcmpとして、インターウォーマ207への通水を停止しない場合の新気温度のプロファイルが示される。図示するとおり、インターウォーマ207への通水を継続すると、新気温度が過剰に上昇して、例えばノッキングや過早着火等を生じさせる要因となる。このような事態を防止し得る点において、サーモスタット650による通水遮断措置は効果的である。
尚、同様の効果は、サーモスタット650の代わりに公知の各種電磁制御弁等を利用すること等によっても得ることが出来る。また、既に述べたように、CCV620側での通水路の選択により、インターウォーマ207への通水がなされる第1通水路を閉鎖することも出来、その場合も同様の効果を得ることが出来る。この場合、第3通水路が選択された場合には、インターウォーマ207への通水がなされるが、第3通水路はラジエータ640を経由する通水路であるところ、このような新気の過剰昇温が生じる懸念は少なくて済む。
以上説明したように、本実施形態によれば、インターウォーマ207への通水により、LPLEGRガスよりも早期にHPLEGRガスを導入可能である点を見出したことによって、冷間始動時においてEGRガスのより早期の導入が可能となっている。従って、冷間始動時のエミッション低減をより好適に促進することが出来る。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
始めに、第2実施形態に係るエンジンシステムの構成について、図5を参照して説明する。ここに、図5は、第2実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図5において、第2実施形態に係るエンジンシステムは、本発明に係る熱交換器としてインターウォーマ207に替えて水冷インタークーラ218を備える点において、第1実施形態に係るエンジンシステムと相違する。水冷インタークーラ218は、第1実施形態に係る空冷インタークーラ209と異なり、冷却水との熱交換によりコンプレッサ420下流の吸気ガスを冷却可能に構成される。
また、第2実施形態に係るエンジンシステムは、冷却装置600の替わりに冷却装置700を備える。ここで、図6を参照し、第2実施形態に係る冷却装置700の構成について説明する。ここに、図6は冷却装置700のブロック図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、冷却装置700は、通水路部の構成が冷却装置500と異なっている。具体的には、冷却装置700は、通水路IWi及びIWoに替えて、通水路ICi及びICoを備える。通水路ICiは水冷I/C218における冷却水の入力ポートに接続されており、通水路ICoは、同じく冷却水の出力ポートに接続されている。
次に、第2実施形態の動作について、図7を参照して説明する。ここに、図7は、冷却装置700の動作モードと冷却水温Tclとの関係を例示する図である。尚、図7において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図7において、冷却装置700では、冷却水温Tclが温度値a〜bの期間において動作モードM1が、同様に温度値b〜cの期間において動作モードM2が、同様に温度値c〜dの期間において動作モードM3が、同様に温度値d〜fの期間(温度値d〜eについて過渡的期間)において動作モードM4が、同様に温度値f〜gの期間において動作モードM5が、そして温度値g以上の期間において動作モードM6が夫々選択される。
ここで、冷却装置700の採り得る各動作モードについて、図8乃至図11を参照して説明する。ここに、図8は、動作モードM2及びM3における冷却水の通水経路を説明する図である。また、図9は、動作モードM4における冷却水の通水経路を説明する図である。また、図10は、動作モードM5における冷却水の通水経路を説明する図である。また、図11は、動作モードM6における冷却水の通水経路を説明する図である。これら各図において、図6と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、動作モードM2が選択された場合、冷却水の通水経路は、通水路WPo→CCVi→CCVo1→ICi→ICo→WPiとなり、本発明に係る「第1通水路」の一例たる第1通水路が実現される。動作モードM2では、第1実施形態に係る動作モードM2と同様に、水冷インタークーラ218を吸気ガスの昇温手段として利用することにより、HPLEGRの早期導入を実現することが出来る。一方、動作モードM3では、水冷インタークーラ218を通過した吸気ガスの温度たる吸気温Tiに応じて、CCV620における通水路CCVo1に対応する第1出力ポートを遮断する。第1出力ポートが遮断された状態では、吸気ガスの昇温効果は得られないため、吸気温Tiは低下する。従って、動作モードM3では、吸気温Tiを所望の温度範囲に維持することができ、EGR導入に最適な吸気温を実現することが出来る。
図9において、動作モードM4が選択された場合、冷却水の通水経路は、通水路WPo→CCVi→CCVo1→ICi→ICo→WPiを経由する上記第1通水路と、通水路WPo→CCVi→CCVo2→EGRi→EGRo→WPiを経由する、本発明に係る「第2通水路」の一例たる第2通水路との両方になる。動作モードM4では、上記動作モードM3による吸気温制御に加え、LPLEGRクーラ530への通水によりLPLEGR装置500の稼動が許可される。尚、吸気温Tiが所定以上に低い場合には、LPLEGR装置500は非稼動とされる。これは、水冷インタークーラ218による吸気ガスの昇温は、LPLEGRガスにおける凝縮水の発生防止に寄与しないからである。即ち、動作モードM4では、その都度、適切なEGR装置及びEGR率が選択され、エミッションの低減が図られる。
図10において、動作モードM5が選択された場合、冷却水の通水経路として、通水路WPo→CCVi→CCVo1→ICi→ICo→WPiを経由する上記第1通水路と、通水路WPo→CCVi→CCVo2→EGRi→EGRo→WPiを経由する上記第2通水路とに加え、通水路WPo→CCVi→CCVo3→RGi→RGo→RGo1→EGRi→EGRo→WPiを経由する通水路及び通水路WPo→CCVi→CCVo3→RGi→RGo→RGo2→ICi→ICo→WPiを経由する通水路からなる、本発明に係る「第3通水路」の一例たる第3通水路が実現される。
ここで、図示破線で示されるように、動作モードM5では、第1、第2及び第3通水路の夫々における通水量が、LPLEGRガスの温度及び吸気温Tiが所望の温度範囲に維持されるように調整される。即ち、LPLEGRクーラ530及び水冷インタークーラ218が所望の性能を発揮し得るように、各通水路の通水量が調整される。
図11において、動作モードM6が選択された場合、上記第1通水路と第2通水路とが通水経路から除外され、上記第3通水路のみで冷却水が通水される。即ち、この状態では、ラジエータ640を積極的に使用して、水冷インタークーラ218及びLPLEGRクーラ530の冷却性能が最大化される。
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態と較べてより精細に冷却水の通水路及び通水量を制御することにより、エンジン200の吸気ガス(新気+LPLEGRガス+HPLEGRガス)の温度を最適に維持することが出来る。従って、冷間始動時のエミッション低減に顕著に効果的である。
尚、上記第1及び第2実施形態においては、一貫して冷却水温センサ630による冷却水温Tclの検出値が利用されているが、エンジン始動時において冷却水は循環しないため、冷却水温の偏りが懸念される。その点に鑑みれば、センサによる実測に代えて或いは加えて、エンジン200の動作条件に基づいた冷却水温Tclの推定がなされてもよい。冷却水温を推定するにあたっては、例えばエンジン200の燃料噴射量に基づいた発熱量の推定結果と、エンジン各部からの放熱量の推定結果とを参照してもよい。このような冷却水温の推定手法としては公知の各種手法を適用可能であることは言うまでもない。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う冷却システムの制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。