JP2013134367A - 導電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents

導電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDF

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Abstract

【課題】イオン導電剤の滲み出しを抑えつつ、低温低湿および高温高湿の両環境下で電気抵抗に起因する画像不良が発生しにくい電子写真用導電部材を提供する。
【解決手段】導電性の軸芯体と、その外周に設けられた導電層とを有する電子写真用導電部材であって、導電層は分子内にイオン交換基としてスルホ基または四級アンモニウム塩基を有するバインダー樹脂と、イオン交換基とは逆極性のイオンとを含み、バインダー樹脂は、導電層にマトリクス・ドメインを生じさせない分子構造を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
電子写真画像形成装置においては、導電性部材が様々な用途、例えば、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラとして使用されている。このような導電性部材は、電気抵抗値が10〜1010Ωの範囲内にあることが好ましい。そのため、導電性部材が具備する導電層は導電剤によって導電性が調整されている。ここで、導電剤は、カーボンブラックに代表される電子導電剤と、四級アンモニウム塩化合物等のイオン導電剤とに大別される。これらの導電剤はそれぞれ、長所と短所を有している。
カーボンブラック等の電子導電剤によって導電化された導電層は、使用環境による電気抵抗値の変化が小さい。また、導電層からの電子導電剤は、導電層の表面にブリードし難いため、かかる導電層を具備する導電性部材が当接する部材、例えば、電子写真感光体(以下、「感光体」という)の表面を汚染する可能性が少ない。しかし、電子導電剤はバインダー樹脂中に均一に分散させることが難しく、導電層中で電子導電剤が凝集しやすい。そのため、導電層に局所的な電気抵抗値のムラが生じる可能性がある。
一方、イオン導電剤によって導電化された導電層は、電子導電剤と比較して、イオン導電剤がバインダー樹脂中に均一に分散されるため、導電層に局所的な抵抗ムラが生じにくい。しかし、イオン導電剤は、イオン伝導性能が使用環境下におけるバインダー樹脂中の水分量の影響を受けやすい。そのため、イオン導電剤により導電化された導電層は、低温低湿環境(温度15℃、相対湿度10%)(以下、「L/L環境」という場合がある)下では電気抵抗値が上昇し、高温高湿環境(温度30℃、相対湿度80%)(以下、「H/H環境」という場合がある)下では、電気抵抗値が低下する。すなわち、電気抵抗値の環境依存性が大きいという課題を有する。さらに、イオン導電剤で導電化された導電層を備えた導電性部材に、長時間に亘って他の部材と当接させて静置しておいた場合、イオン導電剤が導電層の表面に滲み出してくることがある(以下、「ブリードアウト」という場合がある)。
特許文献1には、電気抵抗の電圧依存性および環境依存性を抑えた電子写真機器部材が開示されている。具体的には、分子構造中にスルホン酸基およびスルホン酸金属塩構造の少なくとも一方を有するバインダーポリマーと、分子構造中にスルホン酸基を有する界面活性剤を用いて形成された界面活性剤構造を有する導電性ポリマーとを含む半導電性組成物を用いて電子写真機器部材を形成することが提案されている。
特開2004―184512号公報
特許文献1にかかる電子写真機器部材について、本発明者らが検討したところ、電気抵抗の環境変動依存性の低減には、未だ改善の余地があるものと認識した。
そこで、本発明の目的は、多様な環境の下でも電気抵抗値が変動し難く、かつ、他の部材との長期当接時においても導電剤のブリードアウトが生じ難い電子写真用の導電部材の提供にある。また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成可能な電子写真画像形成装置の提供にある。
本発明は、導電性の基体と、該基体上に設けられた導電層とを有する電子写真用導電部材であって、
該導電層は、分子内にイオン交換基としてスルホ基または四級アンモニウム塩基を有するバインダー樹脂と、該イオン交換基とは逆極性のイオンとを含み、該バインダー樹脂は、式(1)−1〜式(1)−3で示される構造の群から選択される何れかの構造と、式(2)−1及び式(2)−2で示される構造の群から選択される何れかの構造とを有し、かつ、該導電層中に該バインダー樹脂によるマトリクス・ドメイン構造を生じさせない分子構造を有するものであることを特徴とする導電部材である。
Figure 2013134367
式(1)−1中、n1は1以上の整数、式(1)−2中、n2は1以上の整数、式(1)−3中、n3は1以上の整数を示す。
Figure 2013134367
式(2)−1中、m1およびp1は各々独立に1以上の整数を示し、m1およびp1の比m1:p1は、74:26から90:10である。式(2)−2中、m2およびp2は各々独立に1以上の整数を示し、m2およびp2の比m2:p2は、74:26から90:10である。
また本発明によれば、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、前記の何れかの導電部材を具備しているプロセスカートリッジが提供される。更に本発明によれば、前記の何れかの導電部材を具備している電子写真装置が提供される。
本発明によれば、イオン導電剤のブリードアウトを抑えつつ、電気抵抗の環境変動依存性が小さい電子写真用の導電部材を得ることができる。また、本発明によれば、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資するプロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置を得ることができる。
本発明に係る電子写真用導電部材の形態を示す概略断面図である。 本発明に係る電子写真用導電部材を有する電子写真画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 弾性層の電流測定装置の概略構成図である。
以下、本発明に係る電子写真用の導電部材の具体例としてローラ形状の導電性部材(以下、「導電ローラ」という場合がある)によって、本発明を詳細に説明する。
<電子写真用導電部材>
図1は本発明の電子写真用導電部材(以下、単に「導電部材」という場合がある)の形態を示す概略図である。導電部材の構成は図1(a)に示すように、導電性の軸芯体1とその外周に設けられた弾性層2とからなる単層構成であっても良く、図1(b)に示すように、弾性層2の外側に表面層4を配置した2層構成であっても良い。さらに、図1(c)に示すように、弾性層2と表面層4との間に中間層3や接着層を複数層配置した多層構成であっても良い。図1中の弾性層2、表面層4及び中間層3の少なくとも何れかが本発明の導電層である。また、本発明の導電層以外の層が他の手段で導電化されていても良い。ただし、本発明の導電層によって電子写真導電部材の導電性が制御できるように、本発明の導電層以外の層は本発明の導電層より電気抵抗値が低いことが望ましい。
<導電層>
[アルキレンオキサイド構造]
本発明では、低温低湿環境下における導電層の高抵抗化を抑制させる手段として、導電層が分子鎖中にアルキレンオキサイド構造を有するバインダー樹脂を含む。アルキレンオキサイド構造は極性が大きく、水と同様にイオンの解離を促進する効果があるため、バインダー樹脂中の水分量が少ない低温低湿環境下においてもバインダー樹脂を低抵抗化させることができる。アルキレンオキサイド構造は、下記式(1)−1〜式(1)−3で示される構造の群の中から選択される何れかの構造である。
Figure 2013134367
式(1)−1中、n1は1以上の整数、式(1)−2中、n2は1以上の整数、式(1)−3中、n3は1以上の整数を示す。
イオン解離の観点においては、上記アルキレンオキサイド構造の中でも特に式(1)−1で示される構造を有する化合物を用いた場合には、低温低湿環境下でバインダー樹脂をより低抵抗化させることが可能である。なお、式(1)−1で示される構造は、式(1)−2、式(1)−3で示される構造と比較して相対的に親水性が高いため、高温高湿環境下ではバインダー樹脂中の水分量が多くなりやすい。そのため、高温高湿環境下での電気抵抗変動のより一層の低減を図るうえで、式(1)−1で示される構造を含ませる場合には、バインダー樹脂中における式(1)−1で示される構造の含有量を30質量%以下、特には、20質量%以下に抑えることが好ましい。
一方、アルキレンオキサイド構造として式(1)−2、式(1)−3で示される構造を用いた場合は、バインダー樹脂中の含有量が多い場合においても、高温高湿環境下におけるバインダー樹脂の水分量が大きく上昇することはない。また、式(1)−1で示される構造よりは劣るものの、低温低湿環境下における低抵抗化には十分に寄与することから、電気抵抗値の環境依存性の観点からは式(1)−2、または式(1)−3で示される構造が好ましい。
バインダー樹脂中における式(1)−2、および式(1)−3で示される構造の含有量としては、10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。含有量が10質量%以上の場合には、低温低湿環境下において低抵抗化させることできる。含有量が70質量%以下の場合には、高温高湿環境下における過度な低抵抗化を防ぐことができる。
なお、バインダー樹脂中のアルキレンオキサイド構造の種類、および含有量については、導電層からその一部を切り出し、固体13C−NMR測定を用い、ピーク位置と強度比の解析により算出できる。さらに、赤外分光(IR)分析により分子構造の同定を行い、NMR測定の結果と組み合わせることで、アルキレンオキサイド構造の定量はより容易となる。
式(1)−1〜式(1)−3で示される構造をバインダー樹脂に導入するためには、バインダー樹脂を構成する他の原料と反応する官能基を両末端に有するアルキレンオキサイド化合物を原料として用いれば良い。官能基としては、他の原料と反応する限りにおいては制限されるものではないが、以下のものが挙げられる。水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、アルコキシル基、ビニル基、グリシジル基、エポキシ基、イソシアネート基。
原料のアルキレンオキサイド化合物の分子量も、低温低湿環境下の電気抵抗値に影響を与えるので重要である。単位ユニットの連結数を示す式(1)−1〜式(1)−3で示される構造中のn1、n2、n3の値を大きくすれば連結基間の距離が広がり、バインダー樹脂の架橋密度を小さくすることができる。バインダー樹脂の架橋密度が小さくなると、バインダー樹脂の分子運動性が上がるため、解離したイオンの移動度が大きくなり、低温低湿環境下での高抵抗化を抑えるのに好ましい。一方で、n1、n2、n3の値を大きくし過ぎると、アルキレンオキサイド構造の結晶化が起こりやすくなり、特に式(1)−1で示される構造の場合は顕著である。また、架橋反応に寄与する反応性官能基の数が減少するために架橋反応が起こりにくくなり、バインダー樹脂中に含まれる未反応物の量が増加する恐れがある。以上のような理由から式(1)−1〜式(1)−3で示される構造中のn1、n2、n3の値は4〜22であることが好ましい。
[ニトリル基]
アルキレンオキサイド構造の近距離に誘電率が高いニトリル基が存在すると、イオンの解離を促進する効果がそれぞれを単独で用いた場合以上に増幅され、低温低湿環境下でバインダー樹脂をさらに低抵抗化させることができる。このため本発明のバインダー樹脂はその分子鎖中にニトリル基を有することを特徴としている。ニトリル基は下記式(2)−1および式(2)−2で示される構造の群の中から選択される何れかの構造を有する。式(2)−1で示される構造のブタジエン単位の二重結合に水素を付加させた構造である式(2)−2で示される構造は、式(2)−1で示される構造より耐オゾン性や耐摩耗性が向上するため、帯電部材や現像部材に使用する場合には好ましい。
ニトリル基とアルキレンオキサイド構造を分子レベルで近接させるためには、式(1)−1〜式(1)−3で示される構造、および式(2)−1および式(2)−2で示される構造の単位ユニットの連結数は小さく、そして式(1)で示される構造と式(2)で示される構造が交互に結合していることが好ましい。また、式(1)−1〜式(1)−3で示される各構造、および式(2)−1および式(2)−2で示される構造の連結数を小さくすることで、導電層中にバインダー樹脂によるマトリクス・ドメイン構造が形成されることを防ぐことができる。
ここで、本発明における「マトリクス・ドメイン構造」とは、バインダー樹脂を構成する式(1)で示される構造と式(2)で示される構造とがそれぞれ偏在して、いずれか一方の構造を含む相がマトリクスを構成し、他方の構造を含む相が該マトリクス中でドメインを形成している構造を意味する。そして、本発明において、「マトリクス・ドメイン構造を生じさせない」とは、バインダー樹脂自体の分子構造によって導電層中にマトリクス・ドメイン構造が形成されないことを意味する。
Figure 2013134367
式(1)−1中、n1は1以上の整数、式(1)−2中、n2は1以上の整数、式(1)−3中、n3は1以上の整数を示す。
Figure 2013134367
式(2)−1中、m1およびp1は各々独立に1以上の整数を示し、m1およびp1の比m1:p1は、74:26から90:10である。式(2)−2中、m2およびp2は各々独立に1以上の整数を示し、m2およびp2の比m2:p2は、74:26から90:10である。
単位ユニットの連結数を示す式(2)−1および式(2)−2で示される構造中のm1とp1の比[m1:p1]、およびm2とp2の比[m2:p2]は、ともに[74:26]〜[90:10]である。p1およびp2の比を26以下にすることで、極性が高いニトリル基による高温高湿環境下での過剰な吸水を抑えることができ、バインダー樹脂の低抵抗化による過放電の発生を抑制できる。また、p1およびp2の比を10以上にすることで、イオンを解離するのに有効なニトリル基数が確保できるため、低温低湿環境下における低抵抗化の効果を発現できる。
式(2)−1および式(2)−2で示される構造の分子量としては、1400以上3800以下が好ましく、1800以上3500以下がより好ましい。分子量を1400以上にすることで、バインダー樹脂の分子運動性が上がり、解離したイオンの移動度が大きくなるため、低温低湿環境下での高抵抗化を抑えるのに好ましい。分子量を3800以下にすれば、前記したように式(1)で示されるアルキレンオキサイド構造と、式(2)で示されるニトリル基が分子レベルでより近接するので電気抵抗値の環境依存性の低減がより確実に図られることとなる。
なお、バインダー樹脂中の式(1)−1〜式(1)−3で示される構造、および式(2)−1および式(2)−2で示される構造の単位ユニットの連結数は、次のようにして求めることができる。例えば、マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)や、表面支援レーザー脱離イオン化法(SALDI)を用い試料をイオン化した後に、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)を用いた質量分析を行うことで見積もることができる。
式(2)−1および式(2)−2で示される構造をバインダー樹脂に導入するためには、バインダー樹脂を構成する他の原料と反応する官能基を両末端に有する変性液状NBR(ニトリルブタジエンゴム)を原料として用いることが好ましい。官能基としては、他の原料と反応する限りにおいては制限されるものではないが、以下のものが挙げられる。水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、アルコキシル基、ビニル基、グリシジル基、エポキシ基、イソシアネート基。
バインダー樹脂としては、式(1)−1で示される構造を有するエポキシ変性エチレンオキサイドと、式(2)−1で示される構造を有するアミノ変性液状NBRを反応させて得られるエポキシ樹脂が好ましい。アミノ基とエポキシ基の反応が混合、加熱するだけで進むため、簡便に本発明のバインダー樹脂を得ることができる。また、エポキシ変性エチレンオキサイド、アミノ変性液状NBRともに、単位ユニットの連結数や分子量等が異なる原料が数多く市販されており、容易に入手できる。
本発明のバインダー樹脂は、導電層中に該バインダー樹脂によるマトリクス・ドメインを生じさせないような分子構造を有する。バインダー樹脂によるマトリクス・ドメイン構造を導電層中に生じさせないためには、前記したように式(1)および式(2)で示される構造の単位ユニットの連結数を小さくし、または、式(1)で示される構造と式(2)で示される構造を交互に結合させることが有効である。
なお、本発明においては、バインダー樹脂自体によって導電層中にマトリクス・ドメイン構造が形成されていないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で導電層中に添加した他の樹脂や充填剤、粒子等によって該バインダー樹脂からなるマトリクスに対してドメインが形成されているような導電層を何ら排除するものでない。
導電層中における、バインダー樹脂によるマトリクス・ドメイン構造の存在は、透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)で確認することができる。具体的には、導電層から切り出したサンプルを常温硬化性のエポキシ樹脂中に包埋、硬化させた後、ミクロトームを用いて厚さ100〜300nmの薄片状にして観察用試料を作製する。次に、TEMを用いて観察用試料を倍率100000倍で写真撮影し、得られた写真に連続相が形成されている部分をマーキングする。続いて、SEM−EDXで観察用試料の元素分析を行い、上記マーキング部分が本発明のバインダー樹脂であることが確認できれば良い。
[連結基]
式(1)−1〜式(1)−3で示される構造の群から選択される何れかの構造と、式(2)−1および式(2)−2で示される構造の群から選択される何れかの構造は、下記式(3)−1〜式(3)−8で示される構造からなる群から選択される少なくとも1つの連結基で連結されていることが好ましい。式(3)−1〜式(3)−8で示される構造からなる群から選択される連結基を介して連結されている場合は、連結基中の極性基がイオンの解離を促進するため、低温低湿環境下におけるバインダー樹脂の高抵抗化をさらに抑制することができる。
Figure 2013134367
[イオン交換基]
本発明のバインダー樹脂は分子内にイオン交換基としてイオン解離性能の高いスルホ基または四級アンモニウム塩基を有することを特徴としている。このイオン交換基は、バインダー樹脂と共有結合で結合している。イオン交換基がバインダー樹脂に化学結合していることからイオン交換基の導電層内での移動が抑制されるので、バインダー樹脂と化学結合していないイオン導電剤を用いた導電層と較べると、イオン成分の滲み出しが少なく、長時間の直流電流の通電によっても電気抵抗の変動が生じにくい。
イオン交換基をバインダー樹脂に導入するためには、上記のイオン交換反応で使用するイオン導電剤がバインダー樹脂と反応する官能基を有していることが必要である。官能基としては、原料としてのバインダー樹脂と反応する限り限定されず、以下のものが挙げられる。フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素等のハロゲン原子、カルボキシル基、酸無水物等の酸基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、アルコキシル基、ビニル基、グリシジル基、エポキシ基、ニトリル基、カルバモイル基。
イオン交換基は、バインダー樹脂の主鎖中に導入しても、分子末端に導入しても構わない。バインダー樹脂の主鎖中にイオン交換基を導入する場合においては、下記式(4)で示される構造の連結基で連結されていることが好ましい。
Figure 2013134367
式(4)中、Aは2価の有機基を示し、Xはイオン交換基を示す。
また、バインダー樹脂の分子末端に導入する場合においては、下記式(5)−1〜式(5)−7で示される構造の群から選択される少なくとも1つの連結基で連結されていることが好ましい。
Figure 2013134367
式(5)−1〜(5)−7中、A〜Aは2価の有機基を示し、X〜Xはイオン交換基を示す。
イオン交換基が、式(4)で示される構造や式(5)−1〜式(5)−7で示される構造の群から選択される何れかの連結基を介して導入された場合は、連結基中の極性基がイオンの解離を促進するため、低温低湿環境下におけるバインダー樹脂の高抵抗化をさらに抑制することができる。
イオン交換基がバインダー樹脂に導入されているか否かは、次のようにして検証することができる。導電部材から切り出したバインダー樹脂を、ソックスレー抽出器を使ってトルエンで抽出し、抽出後のバインダー樹脂を固体NMRや赤外分光(IR)分析で測定すれば、分子構造を同定することができる。
イオン導電剤の添加量は適宜設定することができるが、原料としてのバインダー樹脂100質量部に対してイオン導電剤を0.5質量部以上20質量部以下の割合で配合することが好ましい。配合量が0.5質量部以上の場合には、イオン導電剤の添加による導電性の付与効果を得ることができる。また、20質量部以下の場合には、電気抵抗値の環境依存性を低減させることができる。
[カウンターイオン]
また、本発明の導電層は、前記イオン交換基とは逆極性のイオン(以下「カウンターイオン」という)を含んでいる。イオン交換基がスルホ基の場合、カウンターイオンとしては以下のものが挙げられる。プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、イミダゾリウム化合物イオン、ピロリジニウム化合物イオン、四級アンモニウム化合物イオン。イオン交換基が四級アンモニウム基の場合、カウンターイオンとしては以下のものが挙げられる。フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン、過塩素酸イオン、スルホン酸化合物イオン、リン酸化合物イオン、ホウ酸化合物イオン、スルホニルイミドイオン。
上記のイオン交換基とカウンターイオンの組み合わせとしては、四級アンモニウム塩基とスルホニルイミドイオンの組み合わせが好ましい。この組み合わせはカウンターイオンが解離しやすく、低温低湿環境下におけるバインダー樹脂の高抵抗化をより改善できる点で好適である。
スルホニルイミドイオンとしては、特に制限されないが、以下のものが挙げられる。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、シクロ−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド。
カウンターイオンは、イオン交換反応を利用した抽出実験により検証できる。導電部材から切り出したバインダー樹脂を塩酸または水酸化ナトリウムの希薄水溶液中で撹拌し、バインダー樹脂中のイオンを水溶液中に抽出する。抽出後の水溶液を乾燥し、抽出物を回収後、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)にて質量分析を行うことでイオンの同定が可能である。さらに、抽出物の誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により元素分析を行い、質量分析の結果と組み合わせることで、イオンの同定はより容易となる。
本発明で用いられるイオン交換基とカウンターイオンは、スルホ基または四級アンモニウム塩基を有するイオン導電剤と、所望の化学構造を有するイオンの塩のイオン交換反応を利用して製造することができる。例えば、イオンの塩としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、イオン導電剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを用いる場合、まず、それぞれを精製水に溶解させる。これらの2つの水溶液を混合撹拌すると、イオン交換反応により、イオン交換性の高い塩素イオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンと置換される。生成したグリシジルトリメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは疎水性を示すイオン液体のため、副生成物である水溶性のリチウムクロライドは容易に除去できる。この方法で得られたイオン導電剤が親水性の場合においても、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、メチルイソブチルケトン等の溶剤を選択することにより副生成物を容易に除去できる。
本発明の導電層を中間層や表面層として用いた場合、導電層の膜厚は2μm以上100μm以下であることが好ましい。膜厚を2μm以上にすることで、弾性層の電気抵抗値が低くても導電部材の電気抵抗値を導電層によって調整することができる。また、膜厚を100μm以下にすることで、低温低湿環境下でも導電部材の電気抵抗値が過剰に上がることがなくなる。
<導電性の軸芯体>
導電性の軸芯体は、軸芯体を介して帯電ローラや現像ローラ等の導電部材の表面に給電するために導電性を有する。
<弾性層>
本発明の導電層が図1(b)に示すような中間層または表面層として用いられた場合、弾性層は以下の材料で構成することができる。弾性層を形成するゴム成分としては、帯電ローラや現像ローラと感光体ドラムとの間で十分なニップを確保できれば特に制限はなく、以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、あるいはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)。これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
弾性層の電気抵抗値は、温度23℃/相対湿度50%環境下で測定して、1×10Ω以上1×10Ω以下であることが好ましい。弾性層には導電性を付与する目的で導電剤を添加することができ、導電剤としては電子導電剤またはイオン導電剤を用いることができる。
電子導電剤としては特に限定されるものではなく、以下のものが挙げられる。カーボンブラック;グラファイト;酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;銅、アルミニウム、ニッケル等の金属粉;導電性の繊維等。これらの内、カーボンブラックは容易に入手できるので好適である。カーボンブラックの種類は、特に限定されず、以下のものが挙げられる。ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック。
イオン導電剤としては特に限定されるものではなく、以下のものが挙げられる。過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム等の無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート等の陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタイン等の両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩。これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
弾性層には絶縁性粒子や、硬度を調整するために軟化油、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。可塑剤としては高分子タイプのものを用いることがより好ましく、その分子量は好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。さらに、弾性層には、種々な機能を付与する材料を適宜含有させてもよく、これらの例として老化防止剤、充填剤等を挙げることができる。
弾性層は、弾性層用の材料を予め所定の膜厚に形成して得たシートあるいはチューブを軸芯体に接着、または被覆することによって形成することができる。また、クロスヘッドを備えた押出し機を用いて、軸芯体と弾性層用の材料を一体的に押出して作製することもできる。
<中間層、表面層>
本発明の導電層が弾性層として用いられた場合、中間層または表面層は、樹脂、天然ゴムや合成ゴム等で構成することができる。樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が使用できる。特に塗料の粘度の制御が容易な点で、樹脂としてはフッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂が好ましい。これらは、単独または2種以上を組み合わせて混合して用いてもよく、また共重合体であっても良い。
中間層や表面層には、導電部材の電気抵抗値を調整するために導電剤を配合することができる。中間層や表面層の体積抵抗率は、イオン導電剤や電子導電剤により調整することができる。
イオン導電剤としては、前記弾性層の場合と同様のものが挙げられる。
電子導電剤としては以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の微粒子や繊維;酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;前記金属系微粒子、繊維や金属酸化物の表面を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子;及び、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉。
中間層や表面層には、本発明の効果を損なわない範囲で他の粒子を含有させることができる。他の粒子としては、絶縁性粒子を挙げることができる。絶縁性粒子としては以下のものが挙げられる。ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、これらの共重合体や変性物、誘導体等の樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴム等のゴム、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー。特に、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
これらの中間層や表面層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、またはパールミルのビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、液中に分散させることができる。得られた分散液を塗工する方法は特に限定されないが、操作が簡便なことからディッピング法が好適である。
<電子写真装置及びプロセスカートリッジ>
本発明に係る導電部材は、例えば、感光体等の被帯電部材に当接して当該被帯電体を帯電させるための帯電部材として好適に用い得る。また、被帯電部材と、当該被帯電部材に接触し電圧の印加により前記被帯電部材を帯電する帯電部材とを有し、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されてなるプロセスカートリッジにおいて、当該帯電部材として、本発明に係る導電性部材を好適に用い得る。
なお、本発明に係る導電性部材は、帯電ローラ等の帯電部材以外に、現像部材、転写部材、除電部材や、給紙ローラ等の搬送部材としても使用可能である。
本発明の導電部材を有する電子写真画像形成装置の一例を、図2を用いて説明する。図2に示す電子写真画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの画像を形成する電子写真プロセスカートリッジ5が各々1個、タンデム方式で設けられている。
現像装置は、感光体ドラム6と対向設置された現像ローラ7とトナー8、そしてトナーを汲み上げる撹拌羽9を収容した現像容器10を備えている。さらに、現像ローラにトナーを供給すると共に現像に使用されずに現像ローラに残っているトナーを掻き取るためのトナー供給ローラ11と、現像ローラ上のトナーの担持量を規制すると共に摩擦帯電するための現像ブレード12が設けられている。
帯電ローラ13は感光体ドラムに対して所定の押圧力で当接しており、感光体ドラムの回転に従動している。そして、電源から直流電圧を帯電ローラに印加することによって、感光体ドラムが所定の極性、電位に一様に帯電される。ビーム14として画像情報が感光体ドラムの表面に照射されると、静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ上にコートされたトナーが、現像ローラから静電潜像上に供給され、感光体ドラムの表面にトナー像が形成される。
中間転写ベルト15は、駆動ローラ16、テンションローラ17で張架され、転写搬送ベルトの内側には感光体ドラムと対向した位置に転写ローラ18が設置されている。そして、転写材19が転写位置まで搬送されると、トナー像とは逆極性のバイアスが転写ローラ20に印加される。これによって、転写材にトナー像が転写される。
トナー像が転写された転写材は、定着装置21に送られ、トナー像が転写材に定着されて、画像形成が完了する。一方、トナー像の転写が終わった感光体ドラムはさらに回転し、クリーニングブレード22により感光体ドラムの表面がクリーニングされる。
本発明の導電部材は、上記の電子写真画像形成装置における帯電ローラや現像ローラとして使用することができる。また、本発明の導電部材は、上記の直流電圧のみを印加するDC帯電方式の電子写真画像形成装置の他に、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加するAC帯電方式の電子写真画像形成装置にも使うことができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。尚、実施例53は図1(c)で示される軸芯体の外周に弾性層、中間層(本発明の導電層)及び表面層がこの順に設けられた構成の導電部材に関し、実施例50および70は図1(a)で示される軸芯体の外周に本発明の導電層が設けられた構成の導電部材に関する。これら以外の実施例及び比較例は、図1(b)で示される軸芯体の外周に弾性層と表面層(本発明の導電層)がこの順に設けられた導電部材に関する。
先ず、実施例で使用される弾性ローラA〜Cの作製、並びに、イオン導電剤a〜hの作製・準備について説明する。
〔1−1.弾性ローラAの作製〕
下記表1の材料を6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、株式会社トーシン製)を用いて、充填率70体積%、ブレード回転数35rpmで16分間混合して「未加硫ゴム組成物1」を得た。
Figure 2013134367
次いで、この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてテトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名:パーカシットTBzTD、フレキシス株式会社製)4.5質量部、加硫剤として硫黄1.2質量部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、「弾性層用の混練物1」を得た。
次に、表面をニッケルメッキ加工した直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の軸芯体を準備し、軸芯体の軸方向幅231mmの領域に熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、株式会社東洋化学研究所製)を塗布した。次いで温度80℃で30分間加熱した後、さらに120℃で1時間加熱して、熱硬化性接着剤を加熱硬化させた。
上記の軸芯体と共に混練物をクロスヘッド付き押出成形機にて押し出し、軸芯体の外周を前記混練物で被覆し、外径8.75〜8.90mmの「未加硫のゴムローラ」を得た。クロスヘッド付きの押出成形機は、シリンダー径70mm、L/D=20であり、ヘッドの温度を90℃、シリンダーの温度を90℃、スクリューの温度を90℃とした。
次いでこのゴムローラを異なる温度設定にした2つのゾーンを有する連続加熱炉を用いて加硫した。温度80℃に設定した第1のゾーンを30分で通過させ、続いて温度160℃に設定した第2のゾーンを30分で通過させることで、「加硫された弾性層」を得た。
弾性層の両端を切断し、弾性層の軸方向の長さを232mmとした。その後、弾性層の表面を回転砥石で研磨することで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状の「弾性ローラA」を得た。
[評価1:弾性層の電流測定]
図3に弾性層の電流を測定する装置の概略構成を示す。軸芯体上に設けられた弾性層2は、軸芯体の両端部を不図示の押圧手段で直径30mmの円柱状のアルミドラム31に圧接されており、アルミドラム31の回転駆動に伴って従動回転する。押圧は片端500gf(両端で1000gf)である。アルミドラム31を30rpmで回転させながら、外部電源を用いて軸芯体に直流電圧(200V)を印加し、アルミドラムと直列に接続した基準抵抗(1000Ω)にかかる電圧値を測定する。弾性層31の電流値は、基準抵抗の抵抗値と、基準抵抗にかかる電圧値から算出することができる。測定環境は、温度15℃/相対湿度10%環境(以下、「L/L環境」という場合がある)、および温度30℃/相対湿度80%環境(以下、「H/H環境」という場合がある)の2環境下で測定した。電流値の測定結果を表7−1に示す。
〔1−2.弾性ローラBの作製〕
下記表2の材料を温度100℃に温度調節した加圧ニーダーを用いて、10分間混合して未加硫ゴム組成物2を得た。
Figure 2013134367
次いで、この未加硫ゴム組成物165質量部に対して、加硫促進剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(商品名:ノクセラーTRA、大内新興化学工業株式会社製)2質量部、加硫剤として硫黄0.5質量部を加えた。更に、弾性ローラAの場合と同様にして、混練物を得、軸芯体の表面処理を行った。また、押出成形機のヘッドの温度、シリンダーの温度、及びスクリューの温度を70℃としたこと以外は、弾性ローラAの場合と同様にして、未加硫のゴムローラを得た。
次いでこのゴムローラを温度160℃で30分間、加硫して弾性層を得た。弾性層の両端を切断し、弾性層の軸方向の長さを232mmとした。その後、弾性層の表面を回転砥石で研磨することで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状の「弾性ローラB」を得た。電流値の測定結果を表7−1に示す。
〔1−3.弾性ローラCの作製〕
下記表3の材料を2リットルプラネタリーミキサー(製品名:PLM−2、株式会社井上製作所製)を用いて3時間混練し、未加硫ゴム組成物3を得た。
Figure 2013134367
次いで、この未加硫ゴム組成物114質量部に対して、触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(商品名:SIP6830.3、アヅマックス株式会社製)3質量部、硬化遅延剤として2−メチル−3−ブチン−2−オール3質量部を加えた。そして、再び2リットルプラネタリーミキサーで10分間混練し、弾性層用の混練物を得た。
次に、表面をニッケルメッキ加工した直径6mm、長さ275mmの円柱形の鋼製の軸芯体に、軸芯体の軸方向幅236mmの領域に熱硬化性接着剤(商品名:XP81−405、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を塗布した。次いで温度150℃で30分間熱処理して、熱硬化性接着剤を加熱硬化させた。
上記の軸芯体を円筒形金型の中心部に配置し、温度110℃で5分間、軸芯体と円筒形金型を予熱した。円筒金型の注入口から混練物を注入し、温度110℃で5分間、加熱硬化させた。円筒形金型を冷却後、弾性層が形成された軸芯体を円筒形金型から取り出し、弾性層中の反応残渣および未反応低分子を除去する目的で、温度200℃の熱風で2時間加熱した。再び冷却後、弾性層の両端を切断することで、厚みが3mm、軸方向の長さが236mmの「弾性ローラC」を得た。電流値の測定結果を表7−1に示す。
[2−1.イオン導電剤aの作製]
グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド8.56g(56.5mmol)、およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム16.22g(56.5mmol)をそれぞれ精製水50mlに溶解させた。これら2つの水溶液を混合し2時間撹拌した後、一晩静置したところ、リチウムクロライドが溶解した水層と、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)からなる油層の2層に分離した。分液漏斗を用いて回収した油層を精製水で2回洗浄し、油層に少量残存していたリチウムクロライドを除去することで、反応性官能基としてグリシジル基を有するイオン導電剤aを得た。尚、このイオン導電剤aは、イオン交換基として四級アンモニウム塩基を、カウンターイオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)イオンを有する。
[2−2.イオン導電剤bの準備]
グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドをイオン導電剤bとして使用した。
[2−3.イオン導電剤cの作製]
グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド8.56g(56.5mmol)、および過塩素酸ナトリウム7.03g(56.5mmol)をそれぞれ精製水50mlに溶解させた。これら2つの水溶液を混合し2時間撹拌した後、一晩静置したところ、ナトリウムクロライドが溶解した水層と、グリシジルトリメチルアンモニウムパークロレートからなる油層の2層に分離した。分液漏斗を用いて回収した油層を精製水で2回洗浄し、油層に少量残存していたナトリウムクロライドを除去することで、グリシジル基を有するイオン導電剤cを得た。尚、このイオン導電剤は、イオン交換基として四級アンモニウム塩基を、カウンターイオンとして過塩素酸イオンを有する。
[2−4.イオン導電剤dの作製]
グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド8.56g(56.5mmol)、およびビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム33.17g(56.5mmol)をそれぞれ精製水50mlに溶解させた。これら2つの水溶液を混合し2時間撹拌した後、一晩静置したところ、リチウムクロライドが溶解した水層と、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニルイミド)からなる油層の2層に分離した。分液漏斗を用いて回収した油層を精製水で2回洗浄し、油層に少量残存していたリチウムクロライドを除去することで、グリシジル基を有するイオン導電剤dを得た。尚、このイオン導電剤は、イオン交換基として四級アンモニウム塩基を、カウンターイオンとしてビス(ノナフルオロブタンスルホニルイミド)イオンを有する。
[2−5.イオン導電剤eの作製]
タウリン7.07g(56.5mmol)、および水酸化ナトリウム2.26g(56.5mmol)をそれぞれ精製水50mlに溶解させた。これら2つの水溶液を混合し2時間撹拌した。撹拌後、水を減圧留去することで、反応性官能基としてアミノ基を有するイオン導電剤eを得た。尚、このイオン導電剤は、イオン交換基としてスルホ基を、カウンターイオンとしてナトリウムイオンを有する。
[2−6.イオン導電剤fの作製]
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド2.45g(14mmol)を無水エタノール50mlに溶解させた。この溶液にタウリンナトリウム2.05g(14mmol)を加え、一晩撹拌した。撹拌後、溶液を濾過し、得られた濾液から溶媒を減圧留去することで、アミノ基を有するイオン導電剤fを得た。尚、このイオン導電剤は、イオン交換基としてスルホ基を、カウンターイオンとして1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオンを有する。
[2−7.イオン導電剤gの作製]
コリンクロリド7.90g(56.5mmol)、およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム16.22g(56.5mmol)をそれぞれメタノール50mlに溶解させた。これら2つの溶液を混合し、2時間撹拌した後、メタノールを減圧留去した。残留物を50mlのメチルエチルケトンで抽出して濾過し、得られた濾液から溶媒を減圧留去することで、水酸基を有するイオン導電剤gを得た。尚、このイオン導電剤は、イオン交換基として四級アンモニウム塩基を、カウンターイオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)イオンを有する。
[2−8.イオン導電剤hの準備]
テトラエチルアンモニウムクロリドをイオン導電剤hとして使用した。
〔実施例1〕
[1.導電層用塗工液の調製]
式(1)−1で示される構造を有する化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(質量平均分子量:744)0.735g(0.988mmol)とエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル0.057g(0.384mmol)、式(2)−1で示される構造を有する化合物として末端アミン変性NBR(商品名:ATBN1300X35、宇部興産株式会社製)1.169g(0.835mmol)、そしてイオン導電剤a:0.039g(バインダー樹脂100質量部に対して2質量部)をイソプロピルアルコール(IPA)に溶解し、固形分が27質量%の「塗工液1」を調製した。なお、式(1)−1のn1は13、式(2)−1の[m1:p1]は74:26であった。
[2.導電層用塗工液の塗工]
弾性ローラAを、その長手方向を鉛直方向にして塗工液1中に浸漬してディッピング法で塗工した。浸漬時間は9秒、引き上げ速度は初期速度が20mm/s、最終速度は2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させた。得られた塗工物を常温で30分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて温度90℃で1時間加熱し、さらに熱風循環乾燥機にて温度160℃で3時間加熱した。このようにして弾性層の外周に本発明の導電層(表面層)が形成された「導電ローラ1」を得た。
導電層のバインダー樹脂は、式(3)−1及び式(3)−2で示される構造を有する連結基と式(5)−1及び式(5)−2で示される構造を有する分子末端を含み、式(1)−1で示される構造の含有量は30質量%、導電層の膜厚は10μmであった。また、バインダー樹脂は導電層にマトリクス・ドメイン構造を生じさせていなかった。
[評価2:導電層の電気抵抗率の測定、及び、電気抵抗率の環境依存性の評価]
導電層の電気抵抗率は、四端子法による交流インピーダンス測定を行って算出した。測定環境は、L/L環境とH/H環境の2環境とした。測定前に導電部材1を各環境下に48時間以上放置し、電気抵抗率の測定は電圧振幅5mV、周波数1Hzから1MHzで行った。また、電気抵抗率の環境依存性の評価として、L/L環境下における電気抵抗率R1とH/H環境下における電気抵抗率R2との比(R1/R2)の対数を算出した。電気抵抗率の測定結果と、環境依存性の評価結果を表7−1に示す。
[評価3:ブリードアウトの評価]
本実施例の導電部材を軸芯体の両端部に片端500gf(両端で1000gf)の押圧でポリエチレンテレフタラートシート(PET)に圧接させ、温度40℃/相対湿度95%環境下で2週間放置した。放置後、PETシート表面を光学顕微鏡(10倍)で観察し、導電部材からのブリードアウトを以下の基準で評価した。評価結果を表7−1に示す。
A:PETシート表面にブリードアウトの付着物が確認できない。
B:PETシート表面の一部に軽微なブリードアウトの付着物が確認できる。
C:PETシート表面の全面にブリードアウトの付着物が確認できる。
[評価4:低温低湿環境下での帯電ローラの画像評価]
低温低湿環境下での画像評価は、次のように実施した。カラーレーザープリンター(商品名:Color LaserJet CP3525n、HP製)と、そのマゼンタの電子写真プロセスカートリッジを用意し、本実施例の導電部材を帯電ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。カラーレーザープリンターと電子写真プロセスカートリッジをL/L環境に24時間放置後、そのままL/L環境にてハーフトーン画像(感光体ドラムの回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を1枚出力した。低温低湿環境下で帯電ローラが高抵抗化すると、スジ状画像となりやすい。得られたハーフトーン画像から、スジ状画像を以下の基準で評価した。評価結果を表7−1に示す。
A:スジ状画像がない。
B:一部に軽微なスジ状画像が確認できる。
C:全面に軽微なスジ状画像が確認できる。
D:全面に重度のスジ状画像が確認できる。
[評価5:高温高湿環境下での帯電ローラの画像評価]
高温高湿環境下での画像評価は、次のようにして実施した。カラーレーザープリンター(商品名:Color LaserJet CP3525n、HP製)と、そのマゼンタの電子写真プロセスカートリッジを用意した。電子写真プロセスカートリッジから感光体ドラムを取り出し、感光体ドラムの表面の電荷輸送層のみに直径20μmのピンホールを穿った。ピンホールを有する感光体ドラムと、本実施例の導電部材を帯電ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。カラーレーザープリンターと電子写真プロセスカートリッジをH/H環境に24時間放置後、そのままH/H環境にてハーフトーン画像を10枚出力した。高温高湿環境下で帯電ローラが低抵抗化すると、感光体ドラム上のピンホールの位置でスジ状画像となりやすい。得られたハーフトーン画像から、スジ状画像を以下の基準で評価した。評価結果を表7−1に示す。
A:10枚全てのハーフトーン画像にスジ状画像がない。
B:10枚のハーフトーン画像のうち、1〜3枚にスジ状画像が確認できる。
C:10枚のハーフトーン画像のうち、4枚以上にスジ状画像が確認できる。
〔実施例2〜47〕
導電層の原料として、表4に示す材料を用いたこと及び各材料の使用量を表5−1〜表5−4に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電ローラ2〜47を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−1〜表7−5に示す。
〔実施例48〕
弾性ローラAを弾性ローラBに変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電部材48を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−5に示す。
〔実施例49〕
弾性ローラAを弾性ローラCに変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電部材49を作製し、現像ローラとして評価した。評価結果を表7−5に示す。
[評価6:低温低湿環境下での現像ローラの画像評価]
低温低湿環境下での画像評価は、次のように実施した。カラーレーザープリンター(商品名:Color LaserJet CP3525n、HP製)と、そのマゼンタの電子写真プロセスカートリッジを用意し、本実施例の導電部材を現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。カラーレーザープリンターと電子写真プロセスカートリッジをL/L環境に24時間放置後、そのままL/L環境にて2%印字画像を10000枚出力し、最後にグロス紙にベタ白画像を1枚出力した。低温低湿環境下で現像ローラが高抵抗化すると、かぶり画像となる。出力したベタ白画像の反射濃度を16点(グロス紙を均等に縦に4分割、横に4分割してできた16マスの各中心点)測定した平均値をDs(%)、ベタ白画像の出力前のグロス紙の反射濃度を16点測定した平均値をDr(%)としたときのDs−Drを「かぶり量」とした。なお、反射濃度は反射濃度計(商品名:白色光度計TC−6DS/A、東京電色社製)を用いて測定した。かぶり画像を以下の基準で評価した。評価結果を表7−5に示す。
A:かぶり量が0.5%未満である。
B:かぶり量が0.5%以上2%未満である。
C:かぶり量が2%以上5%未満である。
D:かぶり量が5%以上である。
[評価7:高温高湿環境下での現像ローラの画像評価]
本実施例の導電部材を帯電ローラとしてではなく現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込んだこと以外は、[評価5]と同様にして評価した。評価結果を表7−5に示す。
〔実施例50〕
この実施例は、図1(a)で示される、軸芯体の外周に本発明の導電層が設けられた導電部材に関する。塗工液1を直径8mmの軸芯体上に直接塗工したこと以外は実施例1と同様にして導電部材50を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−5に示す。
〔実施例51〕
導電層の膜厚を2μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして導電部材51を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−6に示す。
〔実施例52〕
導電層の膜厚を100μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして導電部材52を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−6に示す。
〔実施例53〕
この実施例は、図1(c)で示される、軸芯体の外周に弾性層、中間層(本発明の導電層)及び表面層がこの順に設けられた導電ローラに関する。
[1.表面層用塗工液の調製]
ε−カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液(商品名:プラクセルDC2016、ダイセル化学工業社製)にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加え、固形分が19質量%となるように希釈した。この希釈溶液526.3質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学株式会社製)45質量部、変性ジメチルシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)0.08質量部、ブロックイソシアネート混合物80.14質量部を混合した。なお、ブロックイソシアネート混合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業株式会社製)とイソホロンジイソシアネート(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス社製)の7:3混合物である。上記混合溶液200gを、分散メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に容積450mLのガラス瓶に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて100時間分散した。分散後、ガラスビーズを除去して表面層用の「塗工液2」を得た。
[2.表面層用の塗工液の塗工]
実施例1と同様にして得られた導電部材の外周に上記塗工液を、実施例1と同様にしてディッピング法で塗工した。得られた塗工物を、常温で30分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて温度80℃で1時間加熱し、さらに熱風循環乾燥機にて温度160℃で1時間加熱して、導電ローラ1の外周に表面層を形成した。
こうして、実施例1に係る導電ローラ1の表面に、表面層を具備してなる導電ローラ53を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−6に示す。
〔実施例54〕
実施例1と同様にして導電ローラ54を作製し、これを転写ローラとして評価した。
[評価8:転写ローラの画像評価]
画像評価は、次のように実施した。カラーレーザープリンター(商品名:Color LaserJet CP3525n、HP製)と、そのマゼンタの電子写真プロセスカートリッジを用意し、本実施例の導電部材を転写ローラとしてカラーレーザープリンターに改造して組み込み、画像出力を行った。カラーレーザープリンターと電子写真プロセスカートリッジをL/L環境に24時間放置後、そのままL/L環境にて2%印字画像を10000枚出力し、最後にハーフトーン画像を1枚出力した。ハーフトーン画像を以下の基準で評価した。評価結果を表7−4に示す。L/L環境の場合と同様にしてH/H環境においても画像評価を行った。評価結果を表7−6に示す。
A:問題なく良好なハーフトーン画像である。
B:トナーの一部が中間転写ベルトに転写せず、ハーフトーン画像の一部が欠けている。
C:トナーが中間転写ベルトに全く転写せず、ハーフトーン画像が出力されない。
〔実施例55及び56〕
導電層の原料を、表4に示す材料としかつ各材料の使用量を表5−5に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電ローラ55及び56を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−6に示す。
〔実施例57〕
式(1)−1で示される構造を有する化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(質量平均分子量:744)0.209g(0.281mmol)と、式(2)−1で示される構造を有する化合物として末端カルボキシ変性NBR(商品名:CTBN1300X13、宇部興産株式会社製)0.983g(0.281mmol)、そしてトリフェニルホスフィン0.012gを混合し、温度120℃で2時間加熱撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液に式(1)−1で示される構造を有する化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(質量平均分子量:744)0.572g(0.768mmol)と、イオン導電剤a:0.039g(バインダー樹脂100質量部に対して2質量部)と、酸無水物系硬化剤(商品名:リカシッドTMEG−500、新日本理化株式会社製)0.198g(0.477mmol)、そして硬化促進剤として1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(商品名:キュアゾール1B2MZ、四国化成工業株式会社製)0.04gをトルエンに溶解し、固形分が27質量%の「塗工液3」を調製した。なお、式(1)−1のn1は13、式(2)−1のm1:p1は74:26であった。
塗工液の塗工以降の作業は、実施例1と同様にして導電ローラ57を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−6に示す。
〔実施例58〕
導電層の原料を、表4に示す材料としかつ各材料の使用量を表5−5に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電ローラ58を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−6に示す。
〔実施例59〕
式(1)−2で示される構造を有する化合物としてポリエーテルアミン(商品名:JEFAMIN T−403、HUNTSMAN製)0.506g(1.150mmol)と、式(2)−1で示される構造を有する化合物として末端アミノ変性NBR(商品名:ATBN1300X35、宇部興産株式会社製)0.586g(0.418mmol)を混合した。さらに、イオン導電剤a:0.039g(バインダー樹脂100質量部に対して2質量部)と、酸無水物系硬化剤(商品名:リカシッドTMEG−500、新日本理化株式会社製)0.869g(2.095mmol)、トルエンを加え、固形分が27質量%の「塗工液4」を調製した。なお、式(1)−1のn1は13、式(2)−1のm1:p1は74:26であった。
塗工液の塗工以降の作業は、実施例1と同様にして導電ローラ59を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−6に示す。
〔実施例60〕
[1.導電層用塗工液の調製]
式(1)−1で示される構造を有する化合物としてポリエチレングリコール(質量平均分子量:744)0.621g(1.137mmol)、式(2)−1で示される構造を有する化合物として末端アミン変性NBR(商品名:ATBN1300X35、宇部興産株式会社製)1.013g(0.724mmol)、イオン導電剤g:0.039g(バインダー樹脂100質量部に対して2質量部)、そして多官能型イソシアネート(商品名:ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)0.327gをメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、固形分が35質量%の「塗工液5」を調製した。なお、式(1)−1のn1は12、式(2)−1のm1:p1は74:26であった。
[2.導電層用塗工液の塗工]
弾性ローラAの外周に上記塗工液を実施例1と同様にしてディッピング法で塗工した。得られた塗工物を常温で30分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて温度140℃で2時間加熱して、弾性ローラAの外周に導電層を形成し、導電ローラ60を得た。
導電層のバインダー樹脂は、式(3)−6、式(3)−8で示される構造を有する化合物の連結基と式(5)−6で示される構造を有する化合物の分子末端を含み、式(1)−1で示される構造を有する化合物の含有量は30質量%、導電層の膜厚は10μmであった。また、バインダー樹脂は導電層にマトリクス・ドメイン構造を生じさせていなかった。この導電ローラ60を帯電ローラとして評価した結果を表7−6に示す。
〔実施例61〜68〕
弾性層および導電層の原料を、表4に示す弾性層と材料を表5−6に示す使用量に変更したこと以外は、実施例54と同様にして導電ローラ61〜68を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−7に示す。
〔実施例69〕
弾性層および導電層の原料を、表4に示す弾性層と材料を表5−6に示す使用量に変更したこと以外は、実施例54と同様にして導電ローラ69を作製し、現像ローラとして評価した。評価結果を表7−7に示す。
〔実施例70〕
この実施例は、図1(a)で示される、軸芯体の外周に本発明の導電層が設けられた導電部材に関する。塗工液を直径8mmの軸芯体に直接塗工したこと以外は、実施例54と同様にして導電ローラ70を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表7−7に示す。
〔比較例1〜3〕
導電層の原料を、表4に示す材料と表8に示す使用量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして導電ローラC1〜C3を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表8に示す。
〔比較例4〕
式(2)−1で示される構造を有する化合物として末端アミノ変性NBR(商品名:ATBN1300X35、宇部興産株式会社製)0.451g(0.322mmol)と末端カルボキシ変性NBR(商品名:CTBN1300X13、宇部興産株式会社製)1.223g(0.322mmol)をトルエンに溶解させ、温度120℃で2時間加熱撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液に式(1)−1で示される構造を有する化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(質量平均分子量:744)0.239g(0.322mmol)とエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル0.048g(0.322mmol)、イオン導電剤a:0.039g(バインダー樹脂100質量部に対して2質量部)を混合し、固形分が27質量%になるようにトルエンを加え、「塗工液6」を調製した。なお、式(1)−1のn1は2、13、式(2)−1のm1:p1は74:26であった。
塗工液の塗工以降の手順は、実施例1と同様にして導電ローラC4を作製し、帯電ローラとして評価した。評価結果を表8に示す。
Figure 2013134367
Figure 2013134367
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Figure 2013134367
Figure 2013134367
Figure 2013134367
Figure 2013134367
1‥‥軸芯体
2‥‥弾性層
3‥‥中間層
4‥‥表面層

Claims (9)

  1. 導電性の軸芯体と、その外周に設けられた導電層とを有する電子写真用の導電部材であって、該導電層は、分子内にイオン交換基としてスルホ基または四級アンモニウム塩基を有するバインダー樹脂と、該イオン交換基とは逆極性のイオンとを含み、該バインダー樹脂は、式(1)−1〜式(1)−3で示される構造の群から選択される何れかの構造と、式(2)−1および式(2)−2で示される構造の群から選択される何れかの構造とを有し、かつ、マトリクス・ドメイン構造を該導電層に生じさせない分子構造を有するものであることを特徴とする導電部材:
    Figure 2013134367
    [[式(1)−1中、n1は1以上の整数、式(1)−2中、n2は1以上の整数、式(1)−3中、n3は1以上の整数を示す。]、
    Figure 2013134367
    [式(2)−1中、m1およびp1は各々独立に1以上の整数を示し、m1およびp1の比m1:p1は、74:26から90:10である。式(2)−2中、m2およびp2は各々独立に1以上の整数を示し、m2およびp2の比m2:p2は、74:26から90:10である。]]。
  2. 前記バインダー樹脂が、前記式(1)−1〜式(1)−3で示される構造の群から選択される何れかの構造と、前記式(2)−1および式(2)−2で示される構造の群から選択される何れかの構造とが、下記式(3)−1〜式(3)−8で示される構造の群から選択される少なくとも1つの連結基で連結されてなる構造を含む請求項1に記載の導電部材:
    Figure 2013134367
  3. 前記バインダー樹脂が、前記式(1)−1〜式(1)−3で示される構造の群から選択される何れかの構造と、前記式(2)−1および式(2)−2で示される構造の群から選択される何れかの構造とが、下記式(4)の連結基で連結されてなる構造を含む請求項1に記載の導電部材:
    Figure 2013134367
    [式(4)中、Aは2価の有機基を示し、Xはイオン交換基を示す。]。
  4. 前記バインダー樹脂の分子末端が、下記式(5)−1〜式(5)−7で示される構造の群から選択される少なくとも1つの構造を含む請求項1に記載の導電部材:
    Figure 2013134367
    [式(5)−1〜式(5)−7中、A〜Aは2価の有機基を示し、X〜Xはイオン交換基を示す。]。
  5. 前記式(1)−1で示される構造の含有量が、前記バインダー樹脂の30質量%以下である請求項1から4の何れかの一項に記載の導電部材。
  6. 前記バインダー樹脂が、アミノ変性液状NBRとエポキシ変性エチレンオキサイドとを反応することにより得られたエポキシ樹脂である請求項1から5の何れかの一項に記載の導電部材。
  7. 前記イオン交換基が四級アンモニウム塩基であり、かつ、前記逆極性のイオンがスルホニルイミドである請求項1から6の何れかの一項に記載の導電部材。
  8. 電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、請求項1〜7の何れかの一項に記載の導電部材を具備していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  9. 請求項1〜7の何れかの一項に記載の導電部材を具備していることを特徴とする電子写真装置。
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