JP2004151534A - 導電性ローラ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性軸体の外周上に少なくとも導電性弾性層を有する導電性ローラにおいて、該導電性弾性層が、少なくともエピクロルヒドリン系ゴム5〜95質量部及びエチレンオキサイド50〜90モル%/プロピレンオキサイド1〜49モル%/アリルグリシジルエーテル1〜10モル%の共重合比のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体5〜50質量部を含有するゴム成分100質量部に対し、第4級ホスホニウム塩及び第4級アンモニウム塩より選ばれる少なくとも1種0.1〜10質量部を含有するゴム組成物によって形成されていることを特徴とする導電性ローラ。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性ローラに関し、特に電子写真複写機などの感光体まわりの帯電ローラ及び転写ローラなどとして好適な導電性ゴムローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真複写機及び電子写真印刷機などの電子写真装置は、感光体表面上を均一に帯電させ、次に感光体表面上に印刷パターンの静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、これを熱により記録用紙上に転写する方式のものが知られている。この方式の中で、感光体表面上の帯電方法としては一般的にコロナ放電方式が用いられている。しかし、コロナ放電方式は人体に有害なオゾンが多量に発生する他、装置の小型化が難しいという問題を有している。
【0003】
近年、コロナ放電方式よりも小型化が容易で人体に有毒なオゾンを発生させない接触帯電方式が検討され、一部で実用化されている。この接触帯電方式は、感光体表面に導電性を有する弾性ローラを所定の押圧力で当接させるものであり、帯電部材は感光ドラムとの均一密着性が必要なために、適度な弾性が求められる。従って、該帯電部材にはゴム弾性を有する弾性層が使用され、更には該弾性層には非感光体汚染性、耐熱性及び表面平滑性などが要求される。しかし、これを単一の材料、つまり単層のゴムローラで種々の要求特性を同時に満たすことは困難な場合があり、それぞれの機能を導電性弾性層と導電性表面層に分担させた複数の層を組み合せた多層構成ローラを採用して、各種の要求特性を複合的に満たす方法も知られている。
【0004】
帯電部材の重要な特性として、体積固有抵抗が挙げられ、1×105〜1×1010Ω・cmの所定の半導電性領域が必要であり、通常、導電性弾性層と導電性表面層との異なる体積固有抵抗の組み合わせにより該範囲に調整している。また、導電性弾性層を低体積固有抵抗に、導電性表面層を高体積固有抵抗にすることにより、良好な画像が得られることが知られている。従って、導電性弾性層を1×107Ω・cm未満の低体積固有抵抗領域に調整することが望まれる。
【0005】
従来の導電性弾性層を低体積固有抵抗に調整するには、ゴム材料にフィラー系の導電性充填材、一般的には導電性カーボンを添加して体積固有抵抗を調整してきた。
【0006】
しかしながら、このような導電性弾性層を用いた導電性ローラにおいては、カーボンブラックの配合量のわずかな変化やゴムの分散状態によって、材料ロットで体積固有抵抗が大きくばらつき、導電性ローラ内においてもゴム中の微妙な分散状態の違いにより局所的抵抗のバラツキが生じる。更には、印加電圧への依存性も大きく、安定した体積固有抵抗を得ることが困難である。そこで、安定した体積固有抵抗を得る方法としては、帯電部材のゴム組成物にイオン導電系ゴムを用いる方法が知られている。イオン導電系ゴムはゴム中にイオン配位部位となる極性基を有し、かつ柔軟な分子鎖からなり、ゴム自身が導電体となる。従って、混練りによる体積固有抵抗のバラツキが小さく、印加電圧の依存性も小さい長所を有している。イオン導電系ゴムとしては、一般的に極性ゴムであるエピクロルヒドリン系ゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムが有名である。アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムは価格も安いことから導電性ローラの材料として多く用いられている。しかし、体積固有抵抗が1×109〜1×1011Ω・cmであり、上記の半導電性領域の低抵抗側を担うことはできない。エピクロルヒドリン系ゴムはエピクロルヒドリンの単独重合体、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドの共重合体、またエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルの3元共重合体などが知られており、1×107〜1×109Ω・cmの電気抵抗範囲であり、組成中のエチレンオキサイド含有量の増加に伴って、体積固有抵抗は下がる。アクリロニトリル−ブタジエンゴムより体積固有抵抗が低いことから、半導電性領域の中でもアクリロニトリル−ブタジエンゴムで担えない低体積固有抵抗領域をエピクロルヒドリン系ゴムはある程度担うことができる。
【0007】
また、半導電性領域へ体積固有抵抗を制御するために、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及び/またはエピクロルヒドリンゴムにエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を配合する方法が提案されている(例えば特許文献1〜2参照)。この方法の場合、1×107〜1×109Ω・cmの体積固有抵抗範囲において、汎用ゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムなどのゴムにエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を配合することで、イオン配位部位を有しないゴム中にイオン配位部位が得られるので抵抗低減効果があり、エピクロルヒドリン系ゴム単体と同様の体積固有抵抗に制御できる。しかしながら、このエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体自身の体積固有抵抗が5×106Ω・cm〜1×107Ω・cm程度なので、ゴム成分中にエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体含有量を増加させても、エピクロルヒドリン系ゴムの体積固有抵抗より低体積固有抵抗領域の1×107Ω・cm未満に低減することは困難である。また、ゴム成分中にエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を多量に含有すると体積固有抵抗の環境変動が大きくなる問題がある。
【0008】
ゴムマトリックス中のイオンキャリアー濃度を増加させ電気抵抗を下げる方法としては、ゴム中にイオン導電付与剤を添加する方法が挙げられる。そこで、これまでにLi塩などの有機金属塩をイオン導電付与剤として極性ゴムに含有する方法も検討されてきた。この場合、半導電性ゴムとしての抵抗値は低下するが、体積固有抵抗の環境変動の増加、また、該有機金属塩は極性ゴムとの相溶性が悪く、多量添加するとブルームが発生し、感光体を汚染したり通電耐久性が悪化したりする問題がある。この問題を解決するために、ゴム組成物に第4級アンモニウム塩(例えば特許文献3〜5参照)または第4級ホスホニウム塩(例えば特許文献6)をイオン導電付与剤として含有する方法も提案されている。この方法の場合、体積固有抵抗の環境条件による変化が小さく、かつゴム成分100質量部に対し10質量部以上添加すると1×107Ω・cm未満の体積固有抵抗が得られが、ローラ表面にブリードアウトし、感光体汚染を起こす問題は解決されていない。ブリードアウトを防止するために導電性ローラ上に導電性表面層を形成する方法があるが、この場合、導電性表面層に第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩が移行し、ローラの導電性が低下することもある。
【0009】
また、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムとエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体からなるゴム成分に非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を添加する方法も提案されている(例えば特許文献7)。この方法の場合、圧縮永久ひずみを低減でき、かつ体積固有抵抗を108Ω・cm〜109Ω・cm程度に制御できる。しかしながら、1×107Ω・cm未満の低抵抗領域に調整することは困難である。
【0010】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−115005公報(第8〜9頁 表2〜3)
【特許文献2】
特開2002−121376公報(第7〜8頁 表1〜2)
【特許文献3】
特開平7−28301号公報(第7頁 表2)
【特許文献4】
特開平4−232980号公報(第3〜4頁)
【特許文献5】
特開平11−209633号公報(第7頁 表1)
【特許文献6】
特開平9−101652号公報(第4頁 [0029]〜[0033])
【特許文献7】
特開2002−212413公報(第7〜8頁 表1〜2)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、弾性層の体積固有抵抗が1×107Ω・cm未満であり、かつ感光体汚染を生じない導電性ローラを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性軸体の外周上に少なくとも導電性弾性層を有する導電性ローラにおいて、該導電性弾性層が、少なくともエピクロルヒドリン系ゴム5〜95質量部及びエチレンオキサイド50〜90モル%/プロピレンオキサイド1〜49モル%/アリルグリシジルエーテル1〜10モル%の共重合比のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体5〜50質量部を含有するゴム成分100質量部に対し、第4級ホスホニウム塩及び第4級アンモニウム塩より選ばれる少なくとも1種0.1〜10質量部を含有するゴム組成物によって形成されていることを特徴とする導電性ローラである。
【0014】
該ゴム組成物中には、第4級ホスホニウム塩及び第4級アンモニウム塩より選ばれる少なくとも1種のみを含有させてもよいし、他の導電付与剤と混合して含有させてもよい。
【0015】
該ゴム組成物に電気抵抗の低減補助効果があるエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を含有させることで、ゴムマトリックス中にイオンの配位部位が増加し、多くのイオンキャリアーを含有させることが可能になり、多量の第4級ホスホニウム塩及び第4級アンモニウム塩より選ばれる少なくとも1種のイオン導電付与剤をゴムマトリックス中に含有させることができ、1×107Ω・cm未満へ体積固有抵抗を低減することが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0017】
エピクロルヒドリン系ゴムはエチレンオキサイド結合量の違いにより多くの種類があるが、それらはいずれも本発明において使用することができる。しかしながら、エチレンオキサイド結合量が25モル%〜60モル%のものを使用することにより、107Ω・cm程度の低体積固有抵抗を得ることができ好ましい。これは、エピクロルヒドリン系ゴムの1成分であるエチレンオキサイドが25モル%〜60モル%の範囲では、イオンが配位するための部位を適度に保有し、同時にゴムの分子運動性も活発であり、多量のイオンを活発に移動させることができるためであると考えられる。25モル%未満の場合、イオンの配位部位が少なく、体積固有抵抗が高く、また、中ニトリル結合量のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムの体積固有抵抗と同等であり、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムより価格が高いことから、エピクロルヒドリン系ゴムを用いる有用性はなく好ましくない。また、56モル%を超えるとエピクロルヒドリン系ゴムのエチレンオキサイド部位の局所的な結晶化が起こるため分子運動性が悪くなり、満足する低体積固有抵抗が得られず好ましくない。
【0018】
エピクロルヒドリン系ゴムのゴム成分中の含有量は5〜95質量部である。5質量部未満では、体積固有抵抗が高くなり過ぎ、95質量部を超えると、ゴム成分中にエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を5質量部未満しか添加できず、体積固有抵抗の低減補助効果が得られない。
【0019】
エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテル単位の共重合比により体積固有抵抗が異なり、エチレンオキサイド単位の比率が大きく、プロピレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテル単位の比率が少ないとエチレンオキサイドの結晶化が起こり、硬度が上昇し、ゴム弾性も失われ、電気抵抗の低減効果を損ねる。また、プロピレンオキサイド部位の比率が大きい場合、プロピレンオキサイドはエチレンオキサイドより分子運動性が劣るため、電気抵抗の低減効果を損ねる。該3元共重合体の共重合比は、エチレンオキサイド50〜90モル%/プロピレンオキサイド1〜49モル%/アリルグリシジルエーテル1〜10モル%の範囲であると、このような不都合が起きない。該3元共重合体をゴム成分中に5〜50質量部含有させる。5質量部未満では、体積固有抵抗の低減効果が得られず、50質量部を超えると、ゴム弾性の損失、ローラ抵抗の環境変動が増加する。なお、ゴム成分中の、エピクロルヒドリン系ゴムと該3元共重合体の合計が100質量部に満たない場合、残りのゴム成分としてアクリロニトリル−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム及びアクリルゴムなどが挙げられ、それらはいずれも本発明で使用することができる。
【0020】
第4級ホスホニウム塩及び/または第4級アンモニウム塩は構成するカチオンとアニオンにはそれぞれ多くの種類があり、それらの組み合わせにより多数の塩が得られる。それらはいずれも本発明において使用することができる。
【0021】
第4級ホスホニウム塩及び/または第4級アンモニウム塩の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部である。0.1質量部未満では、イオン導電性付与効果が得られず、10質量部を超えても、これ以上の導電性の効果は望めず、かつ、ローラ表面上にブリードアウトし、感光体に付着し、実用可の画像が得られない。
【0022】
第4級ホスホニウム塩としては、次のカチオン及びアニオンの一方または両方の条件を満足する場合が好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
一般式[1]中、燐原子に結合した官能基R1〜R4の少なくとも1つがフェニル基であること、特には少なくとも3つがフェニル基であること。X−が一価のアニオンであること、特には4フッ化ホウ素、4フェニルホウ素及び6フッ化燐からなる群から選ばれた1種であること。これらの塩は少量の添加で低体積固有抵抗を実現でき、該ゴム組成物に溶解して均一な複合体を形成する。
【0025】
カチオンが燐原子に結合した少なくとも3つのフェニル基を有する第4級ホスホニウム塩としは、テトラフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、プロピルトリフェニルホスホニウム塩及びブチルトリフェニルホスホニウム塩などが挙げられる。
【0026】
一般式[1]中、X−で示される一価のアニオンとしては、4フッ化ホウ素、4フェニルホウ素及び6フッ化燐が挙げられる。該カチオンとアニオンの一方または両方の条件を満足する第4ホスホニウムとして、例えばテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、メチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、プロピルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、ブチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、オクチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート及びテトラブチルホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェートなどが挙げられる。該第4級ホスホニウム塩の少なくとも1種または2種以上の混合物を本発明において使用することができる。
【0027】
次に、第4級アンモニウム塩を構成するカチオンとアニオンにはそれぞれ多くの種類があり、それらの組み合わせにより多数の塩が得られる。それらはいずれも本発明において使用することができるが、次のカチオン及びアニオンの一方または両方の条件を満足する場合が好ましい。窒素原子に結合した官能基の少なくとも1つがエチレンオキサイド鎖であること。X−が一価のアニオンであること。これらの塩は少量の添加で低体積固有抵抗を実現でき、該ゴム組成物に溶解して均一な複合体を形成する。
【0028】
【化2】
【0029】
一般式[2]中、カチオンにおける窒素原子に結合した官能基R5〜R8の少なくとも1つが、エチレンオキサイド鎖であり、残余官能基としてはアルキル基、アルケニル基及びアルキレン基が挙げられ、アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基及びオクタデシル基などが挙げられる。アルケニル基としては例えばビニル基、アリル基及びオレイル基が挙げられる。アルキレン基としては例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基及び1,6−ヘキシレン基が挙げられる。
【0030】
一般式[2]中、Y−で示される一価のアニオンとしては、例えばF−、Cl−、Br−及びI−などのハロゲンイオンや、ClO4 −、BF4 −、HSO4 −、CH3SO4 −、C2H5SO4 −及びCOOH−などからなる群から選ばれた1種で、該カチオン及びアニオンの一方または両方の条件を満足する第4級アンモニウム塩の少なくとも1種または2種以上の混合物を本発明において好ましく使用することができる。
【0031】
本発明のゴム組成物には、加硫剤及び必要に応じて加硫促進剤やカーボンブラックなどの充填剤、本発明記載以外のイオン導電剤、界面活性剤、可塑剤、難燃剤、老化防止剤、発泡剤及びシランカップリング剤などを適宜配合することができる。
【0032】
本発明の導電性ローラは、例えば次のように製造される。帯電部材に用いられるゴム組成物を構成する各成分を所定量配合し、混練りしてゴム組成物を製造した後、ゴムを円柱状に押出し成形し、次いで加硫する。加硫方法は蒸気加硫、オーブン加熱加硫、熱風加熱及びプレス加硫などが使用可能であり、その他の加硫方法であってもよい。加硫条件は使用する原料ゴムや各成分に応じて適宜選択し、通常、加硫温度は120℃〜180℃で5分以上分程度で行うのが好ましいが特に制限されるものではない。加硫後、芯部材を圧入し、研削して製造されるのが一般的であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
各実施例及び比較例について:
<ゴム組成物、シート及びローラの作成>
(シート):表1に示すゴム組成物を加硫プレスの型に入れ、160℃で30分加硫して、2mm厚のシートを作成した。
(ローラ):表1に示すゴム組成物をチューブ状に押出した。その成形物を160℃で30分間蒸気加硫した後、芯金を圧入し、砥石GC80、回転速度2000rpm及び送り速度500m/分の条件で、外径15mm、長さ250mmに表面研磨を行い、弾性層を作成した。
【0035】
上記の弾性層周面上に、下記の塗布液を塗布して表面層を形成した。
【0036】
アクリルポリオール溶液(有効成分70wt%) 100質量部
イソホロンジイソシアネート(IPDI)(有効成分60wt%) 40質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(有効成分80wt%) 30質量部
導電性酸化錫 90質量部
シリカ微粒子 3質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK)溶剤 340質量部
をミキサーを用いて攪拌し混合溶液を調製した。次いで、その混合溶液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理を行い、ディッピング用塗料を調製した。このディッピング用塗料を前記弾性層の上にディッピング法にて表面層厚が25μmになるように塗布して、10分間の風乾後に、加熱型乾燥機により160℃で1時間乾燥させて、表面層を被覆形成し、ローラを得た。
【0037】
また、表1に示す体積固有抵抗、ローラ抵抗、抵抗ムラ、環境変動幅及び感光体汚染は、以下の方法で測定した。また、以下の方法で画像評価を行った。
【0038】
<体積固有抵抗>
体積固有抵抗測定は、N/N環境(23℃/50%RH)下において、2mm厚の加硫ゴムシートをガイドリング付き電極に挟んで、直流10Vの電圧を印加して電気抵抗を測定した。
【0039】
<ローラ抵抗及び抵抗ムラ>
ローラ抵抗測定は、L/L環境(15℃/10%RH)、N/N環境(23℃/50%RH)及びH/H環境(32.5℃/80%RH)の3環境下において、ゴムローラ試験片を両端部に荷重500gを加え、芯金端部より200Vの直流電圧を印加し、回転速度30rpmにおいて1分間のローラ抵抗値を測定し、抵抗値の最大値と最小値の平均値をローラ抵抗とした。また、N/N環境下でのローラ抵抗の最大値と最小値の抵抗差を周ムラとした。
【0040】
<ローラ抵抗値の環境変動幅>
ローラ抵抗の環境変動幅は、L/L環境15℃/10%におけるローラ抵抗(T1)及び高温高湿環境32.5℃/80%ローラ抵抗(T2)の対数の差とし、式:log10(T1)−log10(T2)で算出した。
【0041】
<感光体(感光ドラム)汚染性>
ゴムローラをヒューレットパッカード製のレーザープリンターレーザージェット4000Nに使用される感光体に接触させ、両端に1000gの荷重を加え、40℃で95%RHの環境下に一日放置した。放置後、荷重を外し、顕微鏡により感光体の付着物を調べた後、使用した感光体を該カートリッジに組み込み、ベタ黒で30枚印字し、得られた画像を目視にて評価した。感光体に付着物が無く、得られた画像も良好なものを○、感光体に付着物があり、得られた画像が実用不可のものを×とした。
【0042】
<画像評価>
N/N環境(23℃/50%RH)環境下において、ヒューレットパッカード製のレーザープリンターレーザージェット4000Nにゴムローラを組み込み、ベタ黒で30枚印字し、帯電ローラに帯電濃度ムラ及び画像不良についての画像評価を行った。得られた画像において、帯電ローラに起因した画像濃度ムラ及び画像不良が全く無いものを○、画像濃度ムラ及び画像不良があり、実用不可のものを×とした。
【0043】
各実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
【0044】
導電性弾性層において、エピクロルヒドリン系ゴム1には日本ゼオン(株)製「ゼクロンG−3106」(エチレンオキサイド結合量56モル%)を、エピクロルヒドリン系ゴム2には日本ゼオン(株)製「ゼクロンG−3100」(エチレンオキサイド結合量25モル%)を、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム1には、日本ゼオン(株)製「ニポールDN401L」(アクリロニトリル結合量18質量%)を、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテルには日本ゼオン(株)製「ゼオスパン8030」を、酸化亜鉛にはハイテック(株)製「酸化亜鉛2種」を、ステアリン酸には花王(株)製「ステアリン酸S」を、炭酸カルシウムには白石カルシウム(株)製「シルバーW」を使用した。第4級ホスホニウム塩1には日本化学工業(株)製「ヒシコーリンETPP−FB(エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート」を、第4級ホスホニウム塩2には日本化学工業(株)製「テトラメチルホスホニウムブロマイド」を、第4級アンモニウム塩1には花王(株)製「KS−555(EO付加型第4級アンモニウム塩)」を、第4級アンモニウム塩2には東京化成(株)製「テトラメチルアンモニウムブロマイド」を、過塩素酸リチウムには東京化成(株)製を、加硫促進剤であるMDB、TETD、DPTTには大内新興化学工業(株)製の「ノクセラーMDB」、「ノクセラーTET」、「ノクセラーTRA」を使用した。
【0045】
表面層において、アクリルポリオールにはダイセル化学(株)製「DC2009」を、イソホロンジイソシアネート(IPDI)にはデグザ・ジャパン(株)製「B1370」を、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)には旭化成(株)製「TPA−B80E」を、導電性酸化錫には石原産業(株)「ST−103F」を、シリカ微粒子には日本エアロジル(株)「RXY−200」、メチルイソブチルケトンには三洋化成(株)「MIBK」を使用した。
【0046】
表1の結果から、エピクロルヒドリン系ゴムを5〜95質量部とエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体が5〜50質量部を含有するゴム成分中に、第4級ホスホニウム塩及び/または第4級アンモニウム塩を0.1〜10質量部添加した実施例1〜9は、1×107Ω未満の低ローラ抵抗であり、実用可の高画質な画像が得られているのに対し、該ゴム組成物中にエピクロルヒドリン系ゴム及び/またはエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル及び/またはイオン導電付与剤を前記範囲で含まない比較例1〜7は、体積固有抵抗が1×107Ω以上または感光体汚染のため、実用可の画像が得られていない。
【0047】
具体的には、比較例1は、ゴム成分中にエピクロルヒドリン系ゴムが含有されておらず、エピクロルヒドリン系ゴムより高電気抵抗であるアクリロニトリル−ブタジエンゴムが含有されているために、良好な画像を得るのに必要な低抵抗領域への体積固有抵抗の制御ができず、実用可の画像が得られていない。
【0048】
比較例2は、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル及びイオン導電付与剤を全く含有されていないため、良好な画像を得るのに必要な低抵抗領域への体積固有抵抗の制御ができず、実用可の画像が得られていない。
【0049】
比較例3は、該ゴム成分中に含有するエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体の含有量が5質量部未満であり、電気抵抗の低減効果が得られず、体積固有抵抗が高くなり、実用可の画像が得られない。また、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体の含有量が50質量部を超える比較例4は、ゴム弾性が失われ、また、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテルは吸湿性が高いために、ローラ抵抗の環境変動が大きくなる。従って、ゴム成分中のエピクロルヒドリン系ゴムの含有量が95質量部以下であることと、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体の含有量が5〜50質量部であることが必要なことが分かる。
【0050】
比較例5は、ゴム組成物中に添加する第4級ホスホニウム塩が0.1質量部未満であり、ゴム組成物中にイオンキャリヤーを増加させることができず、良好な画像を得るのに必要な低抵抗領域の体積固有抵抗が得られていない。また、第4級ホスホニウム塩の添加量が10質量部を超える比較例6は、ローラ表面上に多量にブリードアウトして、感光体に付着し、良好な画像が得られない。従って、第4級ホスホニウム塩及び/または第4級アンモニウム塩の添加量を0.1〜10質量部にすることにより、ローラの低体積固有抵抗に制御でき、かつローラ表面上のブリードアウトも無く、良好な画像が得られることが分かる。
【0051】
比較例7は、ゴム組成物中に過塩素酸リチウムを5質量部添加しており、ゴム組成物中に第4級ホスホニウム塩及び/または第4級アンモニウム塩を5質量部添加した実施例1〜3及び7〜9と比較して、体積固有抵抗は同程度であるが、ローラ抵抗の環境変動が大きく、また、ローラ表面にブリードアウトして、感光体を汚染し、良好な画像が得られない。従って、感光体を汚染させないためには、イオン導電付与剤は第4級ホスホニウム塩及び/または第4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。
【0052】
R1〜R4がフェニル基を含まない第4級ホスホニウム塩を用いた実施例7は、R1〜R4の少なくとも1つがフェニル基である実施例3と比較して、ローラ抵抗が若干高いが、実用可の画像が得られる。しかし、R1〜R4の少なくとも1つがフェニル基である第4級ホスホニウム塩の方が低体積固有抵抗であり、より良好な画像が得られるため好ましい。
【0053】
R5〜R8がエチレンオキサイド鎖を含まない第4級アンモニウム塩を用いた実施例9は、R5〜R8の少なくとも1つがエチレンオキサイド鎖である実施例8と比較して、ローラ抵抗が若干高いが、実用可の画像が得られている。しかし、R5〜R8がエチレンオキサイド鎖でない第4級アンモニウム塩の方が低体積固有抵抗であり、より良好な画像が得られるため好ましい。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明の好適な実施の態様を以下のとおり列挙する。
【0057】
[実施態様1]
導電性軸体の外周上に少なくとも導電性弾性層を有する導電性ローラにおいて、該導電性弾性層が、少なくともエピクロルヒドリン系ゴム5〜95質量部及びエチレンオキサイド50〜90モル%/プロピレンオキサイド1〜49モル%/アリルグリシジルエーテル1〜10モル%の共重合比のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体5〜50質量部を含有するゴム成分100質量部に対し、第4級ホスホニウム塩及び第4級アンモニウム塩より選ばれる少なくとも1種0.1〜10質量部を含有するゴム組成物によって形成されていることを特徴とする導電性ローラ。
【0058】
[実施態様2]
該エピクロルヒドリン系ゴムのエチレンオキサイド結合量が25モル%〜60モル%である実施態様1に記載の導電性ローラ。
【0059】
[実施態様3]
該第4級ホスホニウム塩が下記式[1]で表され、R1〜R4の少なくとも1つがフェニル基であり、X−が一価のアニオンである実施態様1〜2のいずれかに記載の導電性ローラ。
【0060】
【化3】
【0061】
[実施態様4]
該第4級アンモニウム塩が下記式[2]で表され、R5〜R8の少なくとも1つがエチレンオキサイド鎖であり、Y−が一価のアニオンである実施態様1〜2のいずれかに記載の導電性ローラ。
【0062】
【化4】
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、感光体などの被帯電部材への汚染がなく、均一な低体積固有抵抗を有する導電性ローラが可能になった。
Claims (1)
- 導電性軸体の外周上に少なくとも導電性弾性層を有する導電性ローラにおいて、該導電性弾性層が、少なくともエピクロルヒドリン系ゴム5〜95質量部及びエチレンオキサイド50〜90モル%/プロピレンオキサイド1〜49モル%/アリルグリシジルエーテル1〜10モル%の共重合比のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体5〜50質量部を含有するゴム成分100質量部に対し、第4級ホスホニウム塩及び第4級アンモニウム塩より選ばれる少なくとも1種0.1〜10質量部を含有するゴム組成物によって形成されていることを特徴とする導電性ローラ。
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