以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に従って詳細に説明する。尚、各図面を通して同一符号は、同一または対応部分を示すものである。
まず始めに、ここで図7を用いて、インクリボンの構成を説明する。インクリボン1は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などの耐熱性の基材シート1aから成り、サーマルヘッドに触れる側が背面層、用紙に触れる側が昇華インク層および溶融インク層となっている。基材シート1a上には、用紙の印画領域を覆ってそのサイズよりも大きい範囲でイエローY、マゼンタM、シアンCの各昇華性インク層とオーバーコートOCの溶融性インク層とが順に所定の長さ(面積)を有する画面で周期的に並べられて形成されている。
1bは各昇華インク層および溶融インク層の先頭位置に設けられた、帯状の遮光マーカーである。遮光マーカー1bは黒色の線であり、光を遮蔽するものである。また遮光マーカー1bの前後は、昇華インク層も溶融インク層も形成されていない領域となっている。基材シート1aは透明なフィルムであり、遮光マーカー1bの前後は光を通過する透明な領域である。イエローY、マゼンタM、シアンCの各昇華インク層とオーバーコートOCの溶融インク層は半透明であり光を透過するものであるが、この透明な領域の存在によって、遮光マーカー1bの検知がより容易となっている。イエローYの先頭位置には遮光マーカー1bが二本設けられており、他の色の先頭位置の遮光マーカー1bが一本であることと区別している。この区別はインクリボン検知センサにおいて識別され、最初に印画するイエローYの二本の遮光マーカー1bが先頭位置として認識される。
次に図8に従って、印刷装置における、溶融インクの転写動作を説明する。2はインクリボンカセットであり、インクリボン1は、供給ロール格納部内の供給ボビン2aおよび巻き取りロール格納部内の巻き取りボビン2bに巻き回されて収納されている。Pは被記録材である用紙であり、本実施形態では、連続した帯状のロール紙を用いている。
3は印画手段であるサーマルヘッドであり、4はインクリボン1とロール紙Pとの剥離の起点となる剥離板である。また5はロール紙Pの搬送経路を挟み、サーマルヘッド3と対向して配置されたプラテンローラである。サーマルヘッド3は複数の発熱素子を有する加熱部を備えており、画像形成情報に応じて発熱素子を選択的に加熱し、基材シート1a上に一様に塗布されたオーバーコートOCをロール紙Pに熱転写する。サーマルヘッド3は、略上下方向に移動可能な取り付けフレームとバネ部材とで略一体的に構成されている。印画時には、取り付けフレームが所定の位置まで移動し、加熱部とプラテンローラ5とを押圧する。こうして、インクリボン1とロール紙Pとを、バネ部材の弾性力によって適当な圧力で圧着させ、印画方向Xへの搬送と同期して熱転写を行う。そしてインクリボン1とロール紙Pとは、互いに密着し一体的に搬送され、その後サーマルヘッド3に固定された剥離板4を起点として剥離される。
1cは遮光マーカー1bが検知された時点での、サーマルヘッド3の位置をインクリボン1上で示したものである。遮光マーカー1bの先頭からサーマルヘッド3の位置1cまでの距離は、インクリボン検知センサ6からサーマルヘッド3の加熱部までの距離に相当する。また301dは、サーマルヘッド3が加熱を開始する書き出しラインである。印刷装置では、印画を開始する直前に遮光マーカー1bの検知を行うのが一般的である。そして、インクリボン検知センサ6が遮光マーカー1bを検知すると、ただちにインクリボン1の搬送を停止し、サーマルヘッド3をプラテンローラ5に圧着させ、加熱してインクの転写を開始する制御となっている。そのため図8では、サーマルヘッド3の加熱部の位置1cと書き出しライン301dとが一致しており、この位置からロール紙Pへの熱転写が開始されることを示している。
301eは書き出しライン301dに続くロール紙Pへの転写範囲であり、301fは加熱を終了する後端ラインである。転写範囲301eは、書出しライン301dから後端ライン301fまでの領域に相当する。剥離板4は特に熱転写終了後、この後端ライン301fにおいて、転写済みのオーバーコートOCと未転写のオーバーコートOCとを切断するものである。
続いて図9を用いて、印刷装置における、溶融インクの剥離不良について説明する。オーバーコートOCは厚みを持った溶融インクのコート層である。そのため、熱転写を終了する後端ライン301fにおいて剥離板4での切断に失敗すると、図9(a)に示す状態から更に図9(b)に示す状態へ移行する。そうするとオーバーコートOCが、後端ライン301fに続く下流側の領域で基材シート1aから浮いて剥がれてしまい、インクリボン1から脱落する場合がある。特にこうしたオーバーコートOCの剥離不良は、耐光性を向上させる目的などでコート層の厚みを増加させると、剥離に要する引っ張り力や切断に要する剥離角度が増すなどして発生しやすくなる。一度基材シート1aから剥がれ脱落したオーバーコートOCは、十分に接着されないままロール紙Pに付着したり、剥がれた状態のまま印刷装置内に残ってしまう。
そこで、本発明では。オーバーコートの剥離不良を確実に防止するために以下のような構成を有している。
本発明の特徴を示すのに好適な実施形態の図面を用いて、本発明の印刷装置の構成部品の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態における印刷装置の断面図とそれに対応するインクリボン上の位置関係を示した模式図である。
1dはインクの転写開始位置となる書き出しラインであり、1eは書き出しライン1dに続くロール紙Pへの転写範囲、1fは転写範囲の後端ラインである。転写範囲1eは、書出しライン1dから後端ライン1fまでの領域に相当する。
前述のとおりオーバーコートOCの剥離不良は、図8において後端ライン301fに続く下流側の領域で発生するものである。そこで本発明では、加熱終了位置である後端ライン1fが、オーバーコートOCの塗布範囲の略後端、つまり基材シート1aとの境界と重なるように、加熱開始位置である書き出しライン1dを後端側にずらして熱転写を行う。具体的には、インクリボン検知センサ6が遮光マーカー1bを検知した後、サーマルヘッド3の位置1cから書き出しライン1dまで、熱転写することなくインクリボン1を搬送する。そのため図1では、図8に示す状態とは異なり、サーマルヘッド3の位置1cと書き出しライン1dとが一致しておらず、ロール紙Pへの熱転写は、図8の場合よりも遅れて開始されることを示している。
ここでL1は、書き出しライン1dを後端側にずらすのに追加した搬送量であり、インクリボン検知センサ6が遮光マーカー1bを検知してからサーマルヘッド3が加熱を開始するまでに、追加して搬送する距離に相当する。こうした書き出しライン1dまでの追加搬送量L1を適切に設定することで、オーバーコートOCの塗布範囲の略後端を、転写範囲1eの後端として使い切ることになる。すると、そもそもオーバーコートOCが塗布されていない境界線上で熱転写を終了することになり、それ以上にオーバーコートOCが基材シート1aから剥がれることがない。
転写済みのインクリボン1はその後、巻き取りボビン2bで巻き取られる。巻き取りボビン2bは、不図示のトルクリミッターを介して、紙送りモータによって回転駆動されるものである。インクリボン1はこのトルクリミッターにより、しわや弛みが発生しない程度の張力に調整されている。
途中インクリボン1は、剥離板4とインクリボン検知センサ6との隙間を通過する配置となっている。インクリボン検知センサ6は、インクリボン1を挟んで、サーマルヘッド3に取り付けられた反射板7と対向している。インクリボン検知センサ6は投光部と受光部とで構成されており、投光部により発せられた光は反射板7で反射し、受光部により検知可能なように配置されている。この構成において、インクリボン1の遮光マーカー1bがインクリボン検知センサ6上にある場合、インクリボン検知センサ6の受光部は反射光を検知できない。これに対し、インクリボン1の遮光マーカー1bの前後に設けられた透明な領域がインクリボン検知センサ6上にある場合、インクリボン検知センサ6の受光部は反射光を検知できる。つまり、この反射光の受光レベルの違いにより、インクリボン1の遮光マーカー1bを検知可能である。
ところで本発明では、インクリボン検知センサ6が遮光マーカー1bを検知した後、ただちに搬送を停止して加熱を開始する従来の制御とは異なり、書き出しライン1dまで搬送を継続しなければならず、若干動作が複雑なものとなる。そこで本実施形態では、剥離不良が発生し得る溶融インクから成るオーバーコートOCでのみ本発明の制御を適用し、剥離不良が発生しない昇華インクから成るイエローY、マゼンタM、シアンCでは従来と同じ制御とした。つまりこのように、書き出しライン1dの位置を、昇華インクの場合と溶融インクの場合とで異ならせると、従来の場合からの変更は最小限で済み、より好適である。
次に図2により、印刷装置のその他の主要な構成部品とその役割について説明する。
8はロール紙カセットであり、連続した帯状のロール紙Pをボビン8aに巻き回した状態で内部に保持している。ロール紙カセット8には、ロール紙カセット8内からロール紙Pを引き出せるように、外周面の一部にスリット状の出口が設けられている。また分離部材8bの先端部は、バネ部材の付勢などにより常にロール紙Pに圧接されている。ここで後述する給紙ローラが回転駆動すると、ロール紙Pはボビン1aと共に回転させられ、分離部材1bは回転するロール紙Pの先端をすくい上げて出口へとガイドする。
ロール紙Pにはカードサイズ、Lサイズ、ポストカードサイズ等、複数種のサイズが用意されており、それぞれ専用または兼用のロール紙カセット8に収納されている。ユーザーは印画動作を行う前に、装置内に任意のサイズに対応したロール紙カセット8を装填する。すると、不図示のロック部材がロール紙カセット8をロックし、不図示のロール紙カセット検知センサがロール紙カセット8を検知する。
9はロール紙Pの給紙手段であるところの給紙ローラである。給紙ローラ9は、金属から成る軸部とゴム部とで構成される能動ローラであり、片側の端に不図示のギアが圧入されたユニット状態となっている。給紙ローラ9は、紙送りモータとギア列を介して常時連結されており、給紙方向と収納方向の両方向に回転駆動できる。尚、本実施形態では給紙手段として給紙ローラ9を用いているが、他にもロール紙カセット8自体を回転させる構成や、ロール紙Pの先端を保持して移動する機構などでも良く、その方法を具体的に限定するものではない。
10は搬送手段であるところのキャプスタンローラであり、11はピンチローラである。キャプスタンローラ10は給紙動作後に主となって用紙搬送を行う金属から成る能動ローラである。また従動ローラであるピンチローラ11は、弾性部材でキャプスタンローラ10の軸部の法線方向に弾性的に付勢されている。本実施形態に示す熱転写式の印刷装置においては、軸部の一部に、ロール紙Pの裏面に位相がずれないだけの深さまで刺さる棘状の突起が設けられている。これにより、ローラの滑りや変形によるずれが発生しにくく、複数回往復搬送した場合であっても、ロール紙Pを安定的に搬送できる。
12はカール矯正手段であるところのデカーラーであり、本実施形態では金属のローラで構成されている。デカーラー12は、印画動作中において、ロール紙Pを元々の巻き癖方向とは逆の方向に癖付けする目的で設けられている。
サーマルヘッド3とプラテンローラ5とのニップで形成される搬送経路と、キャプスタンローラ10とピンチローラ11とのニップで形成される搬送経路とは、図1および図2に示すように傾きを持って構成されている。デカーラー12は、その二つの搬送経路に対してほぼ接線上に位置するように配置され、ロール紙Pの屈曲点となっており、図1に示すように、ロール紙Pを元々の巻き癖とは逆の方向に湾曲させた状態で、ロール紙Pの裏面と接触する。この状態のまま、キャプスタンローラ10を回転駆動させ、ロール紙Pを印画方向Xに搬送すると、サーマルヘッド3とプラテンローラ5とのニップによる狭持力がロール紙Pの張力となり、ロール紙Pの裏面がデカーラー12と強く圧接されてしごかれることになる。ここで、二つの搬送経路の傾きの角度と、デカーラー12の半径とを調整することで、印画後のロール紙Pが適正なカール量となるように設定されている。尚、デカーラー12は、搬送経路上の突起のような形状でも代用でき、必ずしも本実施形態に示すローラなどの回転体でなくても良い。またデカーラー12の数は一つに限定されるものではなく、必要に応じて適宜増減しても良い。
13は、カット手段であるところのカッターユニットである。通常、連続した帯状のロール紙Pを用いた印刷装置には、ロール紙Pを任意の長さに切り分けるため、本実施形態で示したようなカッターユニット13が不可欠である。13aは一部を鋭利に加工したカッター可動刃であり、13bはカッター可動刃13aとロール紙Pの搬送経路を挟んで対向して配置されたカッター固定刃である。13cは不図示のカッターモータと連結したカムギアである。カッターモータによって回転駆動されたカムギア13cは、カッター可動刃13aを用紙の面に対して鉛直方向(上下方向)に往復させる。このとき、カッター可動刃13aとカッター固定刃13bとが、はさみ状に上下の刃を擦りあわせることによって、ロール紙Pを切断する。カッターユニットとしては他にも、ロール紙Pの幅方向(横方向)に往復するロータリーカッターなどが知られており、本発明はロール紙Pの切断手段を限定するものではない。
14と15は、それぞれロール紙Pの搬送経路を挟み略下面と略上面に対向して配置された排紙ローラと従動ローラである。切断動作において、ロール紙Pにたるみやばたつきがあると、切断されたロール紙Pの長さがばらついたり、切断断面の品位が低下する場合がある。そこで排紙ローラ14と従動ローラ15とで構成されるローラ対は、切断したロール紙Pを排出するだけでなく、たるみやばたつきを抑える役割を果たす。
以上、印刷装置の構成について説明してきたが、以下本発明の特徴である、同一のインクリボンカセット1から異なるサイズの印画物を得る場合の制御について、詳細に説明する。図3(a)は、中程度の印画サイズに対応した場合のインクリボン上の位置関係を示した模式図である。これに対して図3(b)は、小程度の印画サイズに対応した場合のインクリボン上の位置関係を示した模式図である。
用紙としてカット紙ではなくロール紙Pを用いた場合、任意の長さで切り分けることにより、同一のインクリボン2とロール紙カセット8との組み合わせから、異なるサイズの印画物を出力できるというメリットがある。印画物の印画サイズ、つまり転写範囲の決定は、ユーザが操作部30を操作することにより任意の大きさの印画サイズで印刷可能としてよい。つまり、インクリボンの塗布範囲で転写可能な範囲内であれば、使用するロール紙の長さを印画サイズとして設定できるようにしてもよい。この場合、設定されたサイズに対応する長さでロール紙がカットして出力することができる。また、ロール紙の長さをユーザが設定せずに、選択された画像のアスペクト比に応じて、選択された画像がロール紙の幅に合わせて印刷されるように、メインコントローラ16が自動的に印画サイズを設定するようにしてもよい。メインコントローラは、設定された印画サイズから、転写範囲を算出することができる。また、印画サイズとしてロール紙の長さを設定するばあいは、その長さが転写範囲の長さとなる。
図1に示す転写範囲1eは、本実施形態における最大の印画サイズに対応したものであるのに対し、図3(a)に示す転写範囲101eはそれよりもやや小さく、中程度の印画サイズとなっている。また図3(b)に示す転写範囲201eは更に小さい、小程度の印画サイズである。こうした印画サイズの違いは、図3に示す書き出しライン101dおよび書き出しライン201dが、図1に示す書き出しライン1dよりも後端側であり、加熱開始の位置が遅いことによるものである。
このように同一種類のインクリボン1から異なる印画サイズを得る場合においても、後端ライン101fおよび後端ライン201fを確実にオーバーコートOCの塗布範囲の略後端、つまり基材シート1aとの境界と重なるように制御しなければならない。そのため中程度の印画サイズの場合には、インクリボン検知センサ6が遮光マーカー1bを検知した後の追加搬送の量を、図3(a)に示す追加搬送量L2とする必要がある。同様に、小程度の印画サイズの場合には、追加搬送の量を図3(b)に示す追加搬送量L3とすればよい。こうした追加搬送量L1や追加搬送量L2や追加搬送量L3は、予め印刷装置に記憶されており、インクリボン検知センサ6がオーバーコートOCの遮光マーカー1bを検知した後、印画サイズに応じて選択的に切り換えられるものである。
また、101gは、オーバーコートの塗布範囲に続くリンクリボンで、インクが塗布されていない範囲である。このように、オーバーコートの塗布範囲の後端のとなりの領域に、インクを塗布しない領域を設けることで、オーバーコートの塗布範囲の後端が綺麗に剥離しやすくなる。インクを塗布しない領域を設けることが難しい場合は、オーバーコートの後端部に、次のイエローインクのマーカーが隣接せれるようにインクリボンを構成しても同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、転写範囲の後端ライン1fが、オーバーコートOCの塗布範囲の後端に重なるように制御したが、搬送誤差等を考慮し、塗布範囲の数ライン前に、転写範囲の後端ライン1fがくるようにしてもよい。例えば、転写範囲の後端から2ライン目の位置に、オーバーコートOCの塗布範囲の後端がくるように、転写範囲の先端(転写開始の書き出しの位置)を決定してもよい。
図4(a)は、本発明の実施形態におけるオーバーコートOCの遮光マーカー1bの検知動作について、概略構成の一部を拡大して示す断面図である。一方図4(b)は、検知動作終了後に続いて行う転写開始位置までの追加搬送について、概略構成の一部を拡大して示す断面図である。尚図4(a)と図4(b)とは、特に印画部周辺に注目したものであるため、他の構成部品については省略し不図示とした。
本実施形態では、構造が簡単で安価な印刷装置を提供することを目的として、ロール紙Pの搬送手段とインクリボン1の搬送手段とが同一の駆動源で制御されており、遮光マーカー1bの検知動作においては、それぞれを独立に駆動することはできない。そのため、インクリボン1のみを空送りすることはできず、その都度ロール紙Pと一体的に搬送する構成となっている。
ところが巻き取りボビン2bは、転写済みのインクリボン1を巻き取るにつれて、インクリボンカセット2の巻き取りロール格納部内で徐々に太くなる。こうなると印画を重ねるほどに、一回転する間に巻き取るインクリボン1の量が多くなり、例えば、一枚目と数十枚目とではその搬送量が変化してしまう。これに対してロール紙Pの搬送は、キャプスタンローラ10によって常に一定して行われるため、インクリボン1とロール紙Pとの搬送量は必ずしも一致しない。
そこで本実施形態では、オーバーコートOCの遮光マーカー1bを検知した後、加熱開始位置までサーマルヘッド3とプラテンローラ5とを圧着した状態として、インクリボン1とロール紙Pとを一体的に搬送する制御となっている。サーマルヘッド3とプラテンローラ5とを圧着した状態であれば、不図示のトルクリミッターを介して搬送されるインクリボン1はロール紙Pの搬送量と一致し、巻き取りボビン2bの巻き径の影響を受けずに比較的正確に搬送することができる。またこのとき、インクリボン1とロール紙Pとの搬送速度が、通常の熱転写時の搬送速度よりも速いと、所要時間の短縮となり好適である。
ここではインクリボン1とロール紙Pとの搬送量と一致させる構成について説明したが、他の実施形態として、インクリボン1の残量を検知し、その検知結果に応じて追加の搬送量を補正する構成であってもよい。この場合は、印画を重ねるにつれて徐々に多くなるインクリボン1の量を見込んで追加搬送量を変更するものであって、予めインクリボン1の残量に対応した補正量を装置内に記憶しておき、検知結果に応じて前述の追加搬送量を短くするなどして調整するものである。
図5は、本発明の実施形態における、印刷装置の機能構成を示すブロック図である。
16は印刷装置全体を制御するメインコントローラである。17はインクリボンカセット2の有無を検知するインクリボンカセットセンサであり、18はロール紙カセット8の有無を検知するロール紙カセット検知センサである。誤作動防止のため本実施形態では、インクリボンカセット17とロール紙カセット検知センサ18とが共にON状態であるときにのみ、印刷装置が印画開始動作に移行する。
19はロール紙検知センサであり、用紙搬送経路上のキャプスタンローラ10とデカーラー12との略中間位置に配置され、用紙搬送時に、ロール紙カセット8から引き出されたロール紙Pの先端部がキャプスタンローラ10の後方を通過したことを検知する。インクリボン検知センサ6は前述のとおり、インクリボン1の各色の先端部に塗布された遮光マーカー1bを検知するものである。
20はインクリボン1の残量検知手段であるところの残量検知センサであり、本実施形態では巻き上げボビン2bに連結された不図示のエンコーダーの回転数を信号の周波数としてカウントし、残量を演算するものである。残量検知手段としては他にも、インクリボンカセット2に内蔵された集積回路に順次印画枚数を記録させていく通信手段などがあるが、本発明はこれらを限定するものではない。
21はカッター検知センサである。カッター検知センサ21は、カッター可動刃13aが待機位置にあるのか切断位置にあるのかを検知する。
22は紙送りモータ23を駆動するための紙送りモータドライバである。紙送りモータ23は回転機構を介して、給紙ローラ9とキャプスタンローラ10と排紙ローラ14とに連結されている。更にインクリボンカセット2が装置内に挿入されると、巻き取りボビン2bが不図示のトルクリミッターを介して回転機構と連結される。ここで紙送りモータ23よるインクリボン1の巻き上げ動作は、インクリボン検知センサ6の検知結果に基づいて制御される。
24はサーマルヘッド移動モータドライバである。このドライバ24がサーマルヘッド3の昇降を行うサーマルヘッド移動モータ25の回転を制御することで、サーマルヘッド3を印画位置と退避位置との間で動作させる。26はカッターモータドライバである。カッターモータドライバ26が、カッター可動刃13aを駆動するカッターモータ27を制御してロール紙Pの切断を行う。
28はLCD等の表示画面から構成される表示部29を制御する表示制御部である。表示部29は、印画される画像データを表示したり、印画に必要な設定データを入力するためにメニューを表示したりする。30は操作部であり、印刷装置の電源のON/OFFを指示する電源スイッチや、表示部29に表示された各種メニューを選択するための選択スイッチなどを備える。
図6は、本発明の実施形態における、一連の処理動作の概略を示すフローチャートである。既に説明した動作も含め、印画開始から印画終了までの一連の処理動作について順に説明する。
ユーザーが、インクリボンカセット2およびロール紙カセット8を装置本体に装着した状態で操作部30の選択ボタンを押下するなどして印画開始(ステップS1)を選択すると、まず始めに給紙動作(ステップS2)を行う。給紙ローラ9をロール紙カセット8内のロール紙Pと圧接した状態で給紙方向へ回転駆動させると、ボビン8aに巻き回されているロール紙Pの先端はロール紙カセット8の内周面に沿って進む。この後ロール紙Pの先端は、分離部材8bですくい上げられ、ここで更に給紙ローラ9を給紙方向に回転駆動すると、ロール紙Pの先端は分離部材8bにガイドされてカセットの出口へ導かれる。
給紙されたロール紙Pは、給紙ローラ9によって更に搬送され、互いに対向して配置されたキャプスタンローラ10とピンチローラ11とで構成されたローラ対に狭持される。このとき給紙ローラ9は、キャプスタンローラ10の回転動作と同期しているため、引き続きロール紙Pをロール紙カセット8から給紙方向に送り出していく。その後、ロール紙Pの先端の検知センサ19の検知情報に基づいて、一枚の画像を印画するのに必要なロール紙Pをロール紙カセット8から送り出し、最初に印画するイエローYの遮光マーカー1bの検知を開始する位置まで搬送して停止する。
遮光マーカー1bの検知を開始する位置までの搬送が終了すると、次にマーカー検知動作(ステップS3)を行う。具体的には、インクリボン1を、紙送りモータ23並びに該モータに接続された不図示のギア列を介してロール紙Pと同期して巻き上げる過程で、イエローYの先頭位置合わせを行う。マーカー検知動作(ステップS3)は、インクリボン1に設けられた遮光マーカー1bの位置を判定するものであり、詳しくは前述したとおりである。
マーカー検知動作によりインクの先頭位置を検出した(ステップS3)後、インクリボンは搬送せずに停止させ、ロール紙Pを印画開始位置まで折り返し搬送(ステップS4)する。そしてこの位置から、イエローY、マゼンタM、シアンCの昇華インクの各画面について印画動作(ステップS5)を行う。印画動作(ステップS5)は、印画開始位置から印画終了位置まで、ロール紙Pとインクリボン1とを印画方向Xに搬送する間に行われる。まず、サーマルヘッド移動モータ25の制御によってサーマルヘッド3の取り付けフレームを圧接位置まで移動し、加熱部をプラテンローラ5に押圧する。その後ロール紙Pと同時に、インクリボン1を巻き取りボビン2bに巻きつけて、弛みを取り除きながら搬送する。このときの印画終了位置は、ロール紙Pの印画領域が対向したサーマルヘッド3とプラテンローラ5との間を通過して、ロール紙カセット8側に移動した位置である。
シアンCの印画が終了したことを判定(ステップS6)するまでは、印画終了位置から更に次の遮光マーカー1bの検知を開始する位置まで、ロール紙Pを搬送(ステップS7)する。このときは、サーマルヘッド移動モータ25を再び駆動し、サーマルヘッド3の取り付けフレームを所定の退避位置に退避させる。ロール紙Pを遮光マーカー1bの検知を開始する位置まで搬送(ステップS7)する。その後、そこから残りの画面についてもここまでの動作と同様に、マーカー検知動作(ステップS3)から印画動作(ステップS5)までの動作を繰り返しながらロール紙P上の印画領域に順次インクを重ねて所望の印画像を熱転写する。
シアンCの印画動作が終了した後、他の色と同様にサーマルヘッド3を退避させた状態で、オーバーコートOCの遮光マーカー1bの検知を開始する位置までロール紙Pを搬送(ステップS8)する。ただし、この場合のロール紙の搬送量は、前述の追加搬送量L1やL2やL3を見込んだものでなければならない。
S9では、追加搬送量を見込んで昇華インクの場合(S4)よりも多めに搬送し、その後、オーバーコートOCの遮光マーカー1bを検知(ステップS9)する。そして、遮光マーカーを検出後、更に、インクリボンの追加搬送(ステップS10)を実施する。本実施形態では図4(b)に示したように、オーバーコートOCの転写開始位置まで、サーマルヘッド3とプラテンローラ5とを圧着した状態で、インクリボン1とロール紙Pとを一体的に搬送する。これによって、インクリボン1とロール紙Pとの搬送量が一致し、巻き取りボビン2bの巻き径の影響を受けずに比較的正確に搬送することが可能である。このように、溶融インクであるオーバーコートOCを印画する場合は、遮光マーカー1bの検知を開始する位置と、検知動作(ステップS9)後に転写開始位置まで追加搬送(ステップS10)する点とが昇華インクの場合と異なる。またこのとき、インクリボン1とロール紙Pとの搬送速度が、通常の熱転写時の搬送速度よりも速いと、所要時間の短縮となり更に好適である。また、追加搬送の後、S4と同様にロール紙を印画開始位置に搬送する。
最後にオーバーコートOCの印画(ステップS11)を終了した後、ロール紙Pを印画物の切断位置まで搬送(ステップS12)して印画物の切断動作(ステップS13)に移る。切断位置まで搬送(ステップS12)される途中、ロール紙Pは排紙ローラ14と従動ローラ15とで構成されるローラ対に挟持され、更に排紙方向へ搬送される。印画物の切断位置としての停止位置は、印画の完了した印画領域と未印画領域との境界がカッターユニット13の切断位置と合致する位置である。
ロール紙Pを印画物の切断位置まで搬送(ステップS12)した後、印画領域と未印画領域との境界で切断するため、切断動作(ステップS13)を行う。切断動作(ステップS13)として、カッターモータ27を回転駆動し、カッター可動刃13aを切断位置へ移動させる。このとき前述のように、カッター可動刃13aとカッター固定刃13bとが、はさみ状に上下の刃を擦りあわせることによって、ロール紙Pを切断する。ロール紙Pを切断した状態においてカッター可動刃13aは、非切断位置である最上点から切断位置である最下点へ移動している。ここからカッター検知センサ21の検知情報を基に、カッター可動刃13aを再び切断前の非切断位置である最上点へ戻し待機状態とする。このとき、切断された印画物は、排紙ローラ14と従動ローラ15とで構成されたローラ対により挟持された状態にある。
印画物の切断動作(ステップS13)の後、切り離された印画物をユーザーが拾い上げやすい位置に排紙するため、排紙動作(ステップS14)を行う。印画物の排紙(ステップS14)時には、切断位置から更に排紙方向に、排紙ローラ14と従動ローラ15とで構成されたローラ対の保持力のみで搬送する状態となる。排紙ローラ14は紙送りモータ23からの駆動力が不図示のギア列によって伝達されており、キャプスタンローラ10と同期して排紙ローラ14による排紙動作(ステップS14)を行う。そのため排紙動作(ステップS14)時には、未印画領域も排紙時の搬送動作に伴って排紙方向に前進する。この結果、切断された印画物は排紙ローラ14により排紙方向に送られた後、上流側から来た未印画領域の先端に押し出され装置外に出る。このようにして排出された印画物は、例えば排紙ケース上などに整然と積載され、排紙動作(ステップS14)は終了である。
排紙動作(ステップS14)終了後、未印画のロール紙Pはロール紙カセット8から引き出された状態になっている。連続して次の印画を行わない場合は、未印画のロール紙Pがロール紙カセット8内に収納されて、ロール紙カセット8が着脱可能である待機状態になっていなければならない。そのため排紙動作(ステップS14)の後、ロール紙Pを収納位置へ搬送(ステップS15)する必要がある。収納位置までの搬送(ステップS15)の途中で、給紙動作(ステップS8)とは逆に、ロール紙Pの先端はキャプスタンローラ10とピンチローラ11とで構成されたローラ対から離れ、給紙ローラ9のみで搬送される状態となる。更に給紙ローラ9は回転駆動を続け、ロール紙Pをロール紙カセット8内に収納し、ロール紙Pの先端が出口から十分に引き込んだ位置まで搬送して停止し、待機状態に至る。このようにして、印画開始(ステップS1)から印画終了(ステップS16)までの一連の処理動作は終了である。
(その他の実施形態)
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、インクリボンが収納されたインクリボンカセットを装着して、インクリボンカセットのインクをロール紙上に転写する印刷装置について説明したが、ロール紙ではなくカット紙を使用する印刷装置でも本発明を適応可能である。また、複数の異なるサイズのインクリボンが収納されたインクリボンカセットを装着可能な印刷装置においても適応可能である。その場合、例えば、インクリボンカセットセンサ17により、印刷装置に装着されたインクリボンカセットに収納されているインクリボンのサイズを検出する。そして、インクの塗布範囲を判断し、判断されたインクの塗布範囲とインクの転写範囲とから、転写範囲の後端がオーバーコートの塗布範囲の後端と略一致するようにインクリボンの追加搬送の搬送距離を算出するとよい。
また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。
また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。
また、実施例ではタッチパネル形態のLCD表示装置を例に挙げているが、マウスを使った操作や、LCD以外の表示装置を使ったものでも適用可能である。