ところで、近年、個人情報の保護が重視される中、上記のようなプリントシール機においても、この問題が発生している。すなわち、熱転写がなされた後のインクリボンには、印刷に係る情報が残存するため、このインクリボンを不用意に廃棄すると、第三者に個人情報が出回ってしまうという問題がある。このような問題は、プリントシール機に限られず、インクリボンに情報が残る熱転写型のプリンタに共通する問題であり、その解決が要望されている。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、熱転写後のインクリボンに残る情報を使用不能にすることが可能な熱転写型画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明に係る熱転写型画像形成装置は、上記問題を解決するためになされたものであり、インクリボンを介して熱転写による印刷を行う、少なくとも一つの印刷部と、前記印刷部の下流側に設けられ、熱転写後のインクリボンの搬送量を調整するバッファユニットと、熱転写後のインクリボンの染料面同士を接着する処理部と、処理部を通過したインクリボンを巻き取る巻き取りロールとを備えている。
この構成によれば、熱転写後のインクリボンを染料面同士が接着するように処理する処理部を有しているので、熱転写後のインクリボンに残存する情報を読み取れなくすることができる。この際、印刷を行う印刷部と、インクリボンの処理を行う処理部とでは、インクリボンの搬送速度が異なることがある。そのため、印刷部と処理部とでテンションが相違してしまい、印刷に不具合が生じるおそれもある。これに対して、上記のようにバッファユニットを設けると、印刷部と処理部との間でインクリボンの搬送量を調整することができる。その結果、印刷部と処理部とでインクリボンの搬送速度が相違していたとしても、バッファユニットで両者にテンションの相違が影響しないように調整することができ、印刷の不具合が生じないようにすることができる。
バッファユニットは、種々の構成を取ることができるが、例えば、インクリボンを上下面から挟むように配置され、且つ搬送方向に間隔をおいて配置される複数の調整用ローラを設け、各調整用ローラを、インクリボンに対して近接離間する方向に移動可能に構成することができる。この構成によれば、各調整用ローラがインクリボンに対して近接離間する方向に移動することで、バッファユニット内のインクリボンの搬送経路を調整することができる。例えば、各調整用ローラをインクリボンに近接させ、接触した後、さらにインクリボンを引っ張るように移動させると、インクリボンの搬送経路を長くすることができる。
或いは、次のように構成することもできる。つまり、インクリボンを両面から挟持しつつ下流へと搬送する一対の第1の搬送ローラと、第1搬送ローラよりも上流側に配置され、インクリボンを両面から挟持しつつ下流へと搬送する一対の第2の搬送ローラと、を設けることができる。
この構成によれば、バッファユニットに、2つの搬送ローラが配置されているため、両搬送ローラの搬送速度を調整することで、バッファユニットの上流と下流とで、インクリボンの搬送速度を変化させることができる。例えば、第1の搬送ローラの搬送速度を第2の搬送ローラの搬送速度よりも遅くすると、バッファユニットの下流では、印画時の搬送速度より遅く搬送速度でインクリボンを搬送することができ、下流側への搬送量を調整することができる。
処理部の構成も種々のものが考えられるが、例えば、次のようにすることができる。すなわち、処理部は、熱転写後のインクリボンを幅方向に縮めつつ、下流へと導く縮幅部材と、この縮幅部材の下流側に配置され、インクリボンを加熱する加熱手段と、で構成することができる。
この構成によれば、熱転写後のインクリボンを縮幅部材により、インクリボンを幅方向に縮めつつ、下流側へ導いた後、このインクリボンを加熱している。このように、加熱されたインクリボンが幅方向に束ねられると、幅方向に塗布されたインクが互いに接着するため、インクリボンからの情報の読み取りをできないようにすることができる。
或いは、次のように構成することもできる。すなわち、2以上の印刷部を設け、処理部を、各印刷部から搬送される熱転写後のインクリボンを重ね合わせるように構成し、重ね合わされたインクリボンを加熱する加熱手段をさらに備えルように構成することができる。
この構成によれば、複数の印刷部から搬送される熱転写後のインクリボンを重ね合わせた後、これらを加熱しているので、複数のインクリボンを接着することができる。すなわち、インクリボンの染料層同士が重なり合って剥がせなくすることができるため、インクリボンに残存する画像を読み取り不可能にすることができる。特に、このように複数の印刷部が設けられた装置では、それぞれの印刷部から搬送されるインクリボンの搬送速度が同期していなければ、印画に不具合が生じることがある。したがって、上記のようにバッファユニットを設けると、各印刷部におけるインクリボンの搬送速度が異なっていたとしても、各バッファユニットで、それより下流に搬送されるインクリボンの搬送量を同一にすることができ、特に有利である。
ところで、インクリボンは、常に搬送されているわけではなく、例えば、印画の前後にインクリボンが停止することがある。このとき、加熱手段によって熱にさらされているインクリボンには、過剰な熱が付与され、インクリボンが破断する可能性がある。そこで、加熱手段を、インクリボンに対して近接離間するように構成し、インクリボンの進行が停止したときに、インクリボンから離間するように構成することができる。或いは、加熱手段を、サーマルヘッド等のような低熱量の熱源を有するように構成することもできる。さらに、加熱手段が、マイクロ波のような電磁波を発生するように構成し、インクリボンの染料層のみを加熱し、他の不必要な部分への加熱を行わないようにすることもできる。
本発明の印画方法に用いる熱転写シートは、基材シートの一方の面に染料層を設けたものであるが、この染料層として、少なくとも、イエロー染料層、マゼンタ染料層及びシアン染料層を含む。
上記熱転写シートにおける基材シートとしては、プラスチックフィルム、紙類、セロファン等、従来の熱転写シートに使用されているものと同様の基材シートをそのまま用いることができる。上記基材シートは、特に限定されないが、易接着処理等、各種表面処理を行ったものであってもよい。また、上記基材シートは、上記プラスチックフィルム、紙類及びセロファンのうち2種以上を積層した複合フィルムであってもよい。
上記熱転写シートにおける染料層は、基材シートの一方の面に面順次に設けてなるものであるが、上記イエロー染料層、マゼンタ染料層及びシアン染料層の順序は特に限定されない。上記染料層は、昇華性染料層であってもよいし、熱溶融型色材層であってもよい。
上記昇華性染料層は、昇華性染料を任意のバインダーにより担持してなる層であり、従来公知の方法にて、公知の昇華性染料と公知のバインダー樹脂とから形成することができる。上記昇華性染料としては、熱により、拡散もしくは昇華移行する染料であって、従来公知の昇華転写型熱転写シートに使用されている染料であれば、いずれも本発明に使用可能であり、色相、印字感度、耐光性、保存性、バインダーへの溶解性等を考慮して選択する。上記熱溶融型色材層は、従来公知の方法にて、公知の顔料と公知のワックス等の熱溶融性物質とから形成することができる。
また、巻き取られたインクリボンは、巻き取りロールを回収することで廃棄されるのであるが、連続的に印刷を行う場合には、インクリボンの搬送を停止することなく、巻き取りロールの交換を行う必要がある。そのためには、例えば次のようなインクリボンの処理装置を付加することができる。
すなわち、この装置は、熱転写後のインクリボンを処理する装置であって、熱転写がなされたインクリボンを巻き取る一対の巻き取りロールと、両端に前記巻き取りロールをそれぞれ回転自在に支持するとともに、前記各巻き取りロールを第1及び第2の位置に選択的に配置するように回転自在に支持された位置決め部材と、インクリボンを切断する切断手段と、切断位置より上流側にあるインクリボンを前記第1の位置にある巻き取りロールに巻き取らせるための巻き取り補助手段と、前記両巻き取りロール、位置決め部材、切断手段、及び巻き取り補助手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記位置決め部材を駆動し、前記第1の位置においてインクリボンを巻き取った巻き取りロールを、インクリボンを引き延ばしつつ第2の位置に配置し、前記巻き取り補助手段を駆動し、前記第2の位置から第1の位置へと配置された巻き取りロールに、引き延ばされたインクリボンを当接させ、前記第1及び第2の巻き取りロール間で延びるインクリボンを前記切断手段により切断させ、切断位置より上流側にあるインクリボンを前記第1の位置にある巻き取りロールに巻き取らせる。
この構成によれば、2つの巻き取りロールを回転自在に支持する位置決め部材を回転させることで、各巻き取りロールが第1及び第2の位置に選択的に配置可能となっている。そして、第1の位置において、一方の巻き取りロールで熱転写後のインクリボンを巻き取った後、インクリボンを引き延ばしつつ、これを位置決め部材によって第2の位置に移動させるとともに、第1の位置に他方の巻き取りロールを配置した上で、インクリボンを切断している。したがって、第1の位置に配置された巻き取りロールでインクリボンを巻き取っていけば、印刷を継続することができる。一方、第2の位置にある巻き取りロールからインクリボンを取り外せば、情報が書き込まれたインクリボンを回収することができ、印刷機内にインクリボンが残るのを防止することができる。その結果、インクリボンが第三者に渡るのを防止することができる。このような装置は、例えば、プリントシール機に適用した場合、印刷した写真とともに、インクリボンもユーザへ返却することができ、個人情報の保護を図ることができる。
本発明に係る熱転写型画像形成装置によれば、熱転写後のインクリボンに残存する情報を使用できないようにすることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る熱転写型画像形成装置を昇華型熱転写プリンタに適用した場合の第一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る熱転写型画像形成装置の概略構成図を示す正面図である。
図1に示すように、この昇華型熱転写プリンタは、受像紙にインクリボンのインクを転写することで印刷を行う2つの印刷部Aを備えている。そして、両印刷部Aから繰り出された熱転写後のインクリボンRは、バッファユニット30を通過して搬送量を調整された後、一対の合流ローラ51の間を通過することで、染料層同士が重ね合わされた状態となる。合流ローラ51の下流には、重ね合わされたインクリボンRを巻き取る巻き取りローラ52が配置されている。また、この巻き取りローラ52と対向するようにインクリボンに接触するヒートローラ53が配置されている。このヒートローラ53によりインクリボンが加熱される。ヒートローラ53は、インクリボンRの染料面側樹脂を軟化させる程度の熱(100℃〜120℃)または、リボン基材も含めて軟化させる熱(150℃〜220℃)をインクリボンに付与するように構成されている。なお、本実施形態における合流ローラ51及びヒートローラ53が、本発明の処理部を構成している。
図2は、印刷部の正面図である。同図に示すように、印刷部Aは、繰り出しローラ1から繰り出されたインクリボンR、及び給紙ロール3から給紙された受像紙Pを、印画ヘッド2とプラテンローラ4との間に配置した後、印画ヘッド2をプラテンローラ4上に押圧することで、インクリボンRのインクを受像紙P上に熱転写し、印画を行うものである。ここで用いられるインクリボンRは、昇華転写用に構成された一般的なものであり、シアンC、マゼンタM、イエローYの染料層が基材の長手方向にこの順で繰り返し塗布されており、受像紙Pには、上記染料が順に印画されて重ね合わされる。その際、受像紙Pは、給紙ロール3により、一つの色が印画されるたびに、初期位置に戻されるようになっており、すべての染料が重ね合わされた後、搬送される。なお、2つの印刷部Aは、それぞれから搬送されるインクリボンの染料層が対向するような向きに配置されている。
図3は、バッファユニットの構成及び動作を説明する図である。図3(a)に示すように、このバッファユニット30は、インクリボンRを上下面から挟むように配置され、且つ搬送方向に間隔をおいて配置される5つの調整用ローラを設けている。ここでは、インクリボンの上面側に3つ、下面側に2つの調整用ローラ31が配置されている。そして、各調整用ローラ31は、インクリボンRに対して近接離間する方向に移動可能に構成されている。例えば、図3(b)及び図3(c)に示すように、中央の3つの調整用ローラ31がインクリボンRに対して近接し、接触したままインクリボンを引っ張るようにさらに移動すると、その移動量によってバッファユニット30内のインクリボンRの経路の長さを調整することができる。これにより、各印刷部AにおけるインクリボンRの搬送速度が異なっていたとしても、各バッファユニット30で、それより下流に搬送されるインクリボンRの搬送量を同一にすることができる。その結果、各インクリボンRの搬送速度が同期した状態で巻き取ることが可能になる。
次に、上記のように構成された熱転写プリンタの動作について説明する。図1に示すように、各印刷部Aにおいて、印画がなされると、それに伴って熱転写後のインクリボンRは、下流へと搬送される。そして、各バッファユニット30において、下流側へのインクリボンRの搬送量が調整され、搬送速度が同期した状態で、合流ローラ51へと搬送される。そして、各インクリボンRは、一対の合流ローラ51の間を通過するときに染料面同士が重ね合わされた状態で下流へと搬送される。そして、重ね合わされた2つのインクリボンRは、巻き取りローラ52によって巻き取られる。このとき、インクリボンRはヒートローラ53に接触するため、加熱されて染料面同士が接着された状態で巻き取りローラ52によって巻き取られる。
以上のように、本実施形態によれば、複数の印刷部Aから搬送される熱転写後のインクリボンRを重ね合わせた後、これらを加熱しているので、染料面同士が接着し、2つのインクリボンRを接着することができる。その結果、インクリボンRに残存する画像を読み取り不可能にすることができる。
特に、上記装置においては、バッファユニット30により印刷部Aとその下流側の合流ローラ51との間でインクリボンの搬送量を調整することができるため、各印刷部A間でインクリボンRの搬送速度が相違していたとしても、バッファユニット30でこれを調整できるため、印刷の不具合が生じないようにすることができる。
バッファユニット30は、次のように構成することもできる。すなわち、図4に示すように、インクリボンRを両面から挟持しつつ下流へと搬送する一対の下流側搬送ローラ41と、この下流側搬送ローラ41よりも上流側に配置され、インクリボンRを両面から挟持しつつ下流へと搬送する一対の上流側搬送ローラ42と、を設けることができる。この構成によれば、両搬送ローラ41,42の搬送速度を調整することで、バッファユニット30の上流と下流とで、インクリボンRの搬送速度を変化させることができる。例えば、下流側搬送ローラ41の搬送速度を上流側搬送ローラ42の搬送速度よりも遅くすると、バッファユニット30の下流では、印画時の搬送速度より遅い搬送速度でインクリボンRを搬送することができ、合流ローラ51への搬送量を調整することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る熱転写型画像形成装置を昇華型熱転写プリンタに適用した第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態に係る画像形成装置の正面図であり、図6は図5の平面図、図7は印刷の動作説明図である。
図5に示すように、この画像形成装置は、印刷部B、バッファユニット30、及びインクリボンRの処理をする処理部Dがこの順で上流から下流へ向かって配置されている。印刷部Bは、繰り出しローラ71から繰り出されたインクリボンR、及び給紙ロール73から給紙された受像紙Pを、印画ヘッド72とプラテンローラ74との間に配置した後、印画ヘッド72をプラテンローラ74上に押圧することで、インクリボンRのインクを受像紙P上に熱転写し、印画を行うものである。図2に示す印刷部Aとは、印刷ヘッド72による印刷の方向が相違する。
すなわち、インクリボンRは、図7に示すように、上流から下流へ(図の左から右へ)搬送されながら、イエローY、マゼンタM、シアンCの順に受像紙に印画されるのであるが、例えば、イエローYを印画する場合には、まず、図7(a)に示すように、印画ヘッド72をイエローYの上流側の端部に位置決めする。次に、インクリボンRを印画ヘッド72とプラテンローラ74との間で押圧つつ、繰り出しロール71によりインクリボンRを巻き戻しながら、イエローYの印画を行う。そして、図7(b)に示すように、印画ヘッド72がイエローYの下流側の端部上に配置されると、イエローYの印画が完了する。すなわち、一つのインクの印画には、インクリボンRが距離Aだけ巻き戻され、この間にインクが受像紙P上に印刷される。こうして、イエローYの印画が完了すると、インクリボンRは下流側へ所定距離Bだけ搬送される。そして、図7(c)に示すように、印画ヘッド72がマゼンタMの上流側の端部に位置決めされ、マゼンタMの印画の準備を行う。これを繰り返しながら、受像紙P上にイエローY、マゼンタM、シアンCを順に重ねて画像を形成する。
印刷部Bの下流のバッファユニットは図3で示したものと同じ構成である。また、処理部Dは、次のように構成されている。図5に示すように、バッファユニット30の下流には、インクリボンRを幅方向に束ねるリング(縮幅部材)77、インクリボンRを加熱するヒータ(加熱手段)78、及び巻き取りロール109がこの順で配置されている。リング77は、インクリボンRの幅よりも小さい内径を有し、上流及び下流側に開口している。これにより、バッファユニット30から搬送されたインクリボンRは、リング77によって幅方向に狭められて束ねられつつ、下流側のヒータ78へ導かれる。ヒータ78は、インクリボンRの染料面側樹脂を軟化させる程度の熱(100℃〜120℃)または、リボン基材も含めて軟化させる熱(150℃〜220℃)をインクリボンに付与するように構成されている。ヒータ78はヒートローラのように直接インクリボンに接触する構造でも良い。また、巻き取りロール79は、軸方向に往復動可能であり、軸方向に往復動しながら幅が狭められたインクリボンRを巻き取るように構成されている。
以上の構成によれば、熱転写後のインクリボンRを加熱した後、リング78により、インクリボンRを幅方向に縮めて束ねつつ、下流側へ導いている。このように、加熱されたインクリボンRが幅方向に束ねられると、幅方向に塗布されたインクが互いに接着するため、元の幅に戻らなくなり、インクリボンRからの情報の読み取りをできないようにすることができる。
また、この例では、印刷時にインクリボンが一時的に搬送方向とは反対方向に移動するが、上記のようにバッファユニット30が設けられているため、反対方向への移動がバッファユニット30の下流に影響を及ぼすのを防止することができ、反対方向への移動中もバッファユニット30の下流では、インクリボンを順方向に搬送させることができる。より詳細には、次の通りである。図4に示すように、調整用ローラ31を図3(c)の位置から図3(b)の位置に戻すと、この過程において、インクリボンRの経路が短くなるため、短くなった長さの一部を逆方向への搬送にあてることができる。短くなった経路の残りの長さは順方向に搬送すれば、バッファユニット30の前後でインクリボンを反対方向に移動させることが可能になる。したがって、上記のような処理部Dに連続的なインクリボンの搬送が可能になり、印刷及び処理に不具合が生じるのを防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、第1実施形態では、インクリボンRを加熱する手段として、ヒートローラを挙げたが、例えば、第2実施形態で示したような遠赤外線ランプを用いたヒータ78のようにインクリボンRから離して加熱する構造とすることもできる。
ところで、インクリボンは、常に搬送されているわけではなく、例えば、印画の前後にインクリボンが停止する瞬間がある。このとき、ヒートローラ53または赤外線ランプ78によって熱にさらされているインクリボンRには、過剰な熱が付与され、インクリボンRが破断する可能性がある。そこで、図8に示すように、インクリボンRに対して赤外線ランプ60が近接離間するように構成し、インクリボンRの進行が停止したときに、ヒータ7がインクリボンRから上下方向に離間するように構成することができる(矢印X)。また、図1のヒートローラ53がインクリボンから近接離間するように構成することもできる。この他、ヒータ7を、サーマルヘッド等のような低熱量の熱源を有するように構成し、過剰な熱が付与されないようにすることもできる。さらに、ヒータ7が、マイクロ波のような電磁波を発生するように構成することで、インクリボンの染料層のみを加熱し、他の不必要な部分への加熱を行わないようにすることもできる。
上記の例では、リングによってインクリボンの幅を狭めたが、図9に示すように、インクリボンを折りたたむことも可能である。同図に示すように、この例では、バッファユニットの下流側搬送ローラ41の下流に折りたたみ機構(縮幅部材)、ヒートローラ20、及び巻き取りロール79をこの順で備えている。折りたたみ機構は、インクリボンRの下面を支持する2つの折りたたみ板、つまり上流側から下流へ並ぶ第1,及び第2折りたたみ板21,22によって構成されている。第1折りたたみ板21は、垂直方向に延び、その上端は、緩やかな頂角(約120度)を有する山型に形成されている。また、第2折りたたみ板22も垂直方向に延び、その上端が第1折りたたみ板21よりも鋭い頂角(約45度)を有する山型に形成されている。また、一対の加熱ローラ20及び巻き取りロール9は、下流側搬送ローラ41と直交するように垂直に延びるように配置されている。
インクリボンRは、第1折りたたみ板21の上端の山型に沿うようにやや折り曲げられ、下方へ下りながら下流へと搬送され、第2折りたたみ板22によってさらに折り曲げられる。そして、最終的に2つ折りにされながら、一対の加熱ローラ20間に狭持されつつ、巻き取りロール79によって巻き取られる。このとき、2つに折りたたまれて重なってインクリボン同士は、加熱ローラ20によって加熱されるため、画像が重なり、さらに広げることができなくなるため、読み取り不可能になる。
ところで、上記のようにして巻き取られたインクリボンは、巻き取りロール52,79を回収することで廃棄されるのであるが、連続的に印刷を行う場合には、インクリボンの搬送を停止することなく、巻き取りロール52,79の交換を行う必要がある。そのためには、例えば次のようなインクリボンの処理装置を付加することができる。以下、図10〜図16を参照しつつ、この処理装置について説明する。
図10に示すように、処理部の下流には、インクリボンRを下から支持する支持ローラ105が設けられており、この支持ローラ105の下流に処理装置が配置されている。この処理装置は、上記巻き取りロール52、79に代わって配置されるものであり、印刷が施されたインクリボンRを巻き取る一対の巻き取りロール106,107と、これら巻き取りロール106,107を回転自在に支持する位置決め部材108とを備えている。位置決め部材108は、棒状に形成され、長手方向の中央に設けられた軸部109を中心に回転自在に支持されている。そして、その両端には上述した巻き取りロール106,107がそれぞれ配置されている。この構成により、位置決め部材108が軸部109を中心に180度回転すると、巻き取りロール106,107は、印刷が施されたインクリボンRを巻き取る第1の位置と、後述するインクリボンRの処理を行う第2の位置とを選択的にとり得るように配置される。図10では、水平に配置された位置決め部材108の左側が第1の位置を示し、右側が第2の位置を示しており、第1の位置に第1の巻き取りロール106が配置され、第2の位置に第2の巻き取りロール107が配置されている。
図10に示すように、第1の位置にある巻き取りロール106の下方には、上下動可能に支持され、この巻き取りロール106に当接可能な当接ロール(巻き取り補助手段)110及びインクリボンを切断するカッター(切断手段)111が配置されている。また、位置決め部材108を挟むように、その上下には、二対の従動ローラ121,122が設けられている。ここでは、第1の巻き取りロールに近い方から第1,第2従動ロール121,122とそれぞれ称することとする。これら第1,第2従動ローラ121,122は、位置決め部材108と平行に並んでおり、軸部109を中心に位置決め部材108とともに回転するように構成されている。なお、この装置は、図示を省略する制御装置(制御手段)によってその動作が制御されている。
次に、その動作について説明する。図11に示すように、位置決め部材108が反時計回りに回転を始めるとインクリボンRが引き延ばされ、これに伴って4つの従動ローラ121,122も軸部109を中心に回転する。そして、さらに回転が進むと、図12に示すように、位置決め部材108の上方に配置されていた第1の従動ロール121がインクリボンRに架け渡される。この状態からさらに回転すると、第2の従動ロール122にもインクリボンRが架け渡され、図13の状態になる。すなわち、位置決め部材8が180度回転する間に、インクリボンRが2つの従動ロール121,122に架け渡されて経路が延びる。
この状態で、図14に示すように、当接ロール110を上昇させ、インクリボンRを第2の巻き取りロール107と当接ロール110とで狭持する。これに続いて、図15に示すように、カッター111を上昇させ、第2の巻き取りロール107と第2従動ローラ122との間に架け渡されたインクリボンRを切断する。その後、第1の位置にある巻き取りロール107では、熱転写後のインクリボンRを巻き取るとともに、当接ロール10及びカッター11を下降させる。一方、図16に示すように、第2の位置では、インクリボンRが巻き取られた巻き取りロール106を位置決め部材108から取り外し、新たな巻き取りロールに交換する。こうして、位置決め部材108を連続的に回転しつつ、第1の位置でのインクリボンRの巻き取りと、第2の位置での巻き取りロールの回収とを繰り返すことで、印刷を停止することなく、巻き取りロールの連続的な回収が可能となる。なお、第2の位置に配置される新しい巻き取りロールの表面に、両面テープなどの粘着剤を塗布しておけば、図14に示すように、当接ロール110が当接したときに、インクリボンRが巻き取りロール107に接着されるため、インクリボンRの巻き取り開始をスムーズに行うことができる。
また、上記各実施形態では、本発明を昇華型熱転写プリンタに適用したが、溶融型熱転写プリンタに適用することも可能である。