JP2013087543A - 木造家屋の補強構造および木造家屋 - Google Patents

木造家屋の補強構造および木造家屋 Download PDF

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重徳 西田
Akira Udagawa
亮 宇田川
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Abstract

【課題】地震等により柱にせん断力が作用してもその水平力に抵抗して柱の転倒を防止できる木造家屋の補強構造を提供すること。
【解決手段】柱脚部3aの両側では、それぞれ、下端部6aが基礎1に埋設され上端部6bが土台2から突出したアンカーボルト6が設けられており、そのアンカーボルト6の上端部6bにジョイントナット7を介してタイロッド8を連結する。また、柱頭部3bの両側では、それぞれ、上端部9bが座金92を介してナット91により梁4の上側面に固定されている一方、下端部9aが梁4の下側面から突出した通しボルト9が設けられており、その通しボルト9の下端部9bにターンバックル10を介してタイロッド8を連結して、柱3の両側において土台2と梁4とに連結する。
【選択図】図1

Description

本発明は、木造家屋を構成する基礎や柱、および梁の構造材を補強する木造家屋の補強構造および木造家屋に関する。
従来、木造家屋を構成する基礎や柱、および梁の構造材を補強する木造家屋の補強構造として、柱の片側において土台と梁とを鉄筋や緊締ロッドなどの連結部材により連結することにより、地震など発生した際の柱の転倒を防止する構造が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
実用新案登録第3021652号公報 特開2002−235377号公報
しかし、上述の特許文献1,2に記載された木造家屋の補強構造では、柱の片側でのみ鉄筋や緊締ロッドの連結部材により土台と梁とを連結しているため、図8(a),(b)に示すように、地震等により梁4が基礎1および土台2に対し水平方向にずれ、柱3にせん断力(水平力)が作用して、柱3が片方側へ倒れようとした場合、梁4が撓み、連結部材100に緊張力が作用しなくなり、柱がそのまま転倒する、という問題がある。
本発明は、地震等により柱にせん断力が作用しても、そのせん断力に抵抗して柱の転倒を防止できる木造家屋の補強構造および木造家屋を提供することを目的とする。
前記目的を達成すため、請求項1記載の発明に係る木造家屋の補強構造は、基礎の上に土台、柱および梁を配置した木造家屋の補強構造において、柱の両側に沿って設けた連結部材により柱脚部および柱頭部をそれぞれ相手方部材と連結したことを特徴とする。この構造によると、柱の両側に沿って設けた連結部材により柱を支持するので、地震等により柱にせん断力(水平力)が作用しても、その水平力に抵抗して梁の持ち上がりを防止することにより、柱の転倒を防止できる。
また、請求項2記載の発明に係る木造家屋の補強構造は、請求項1記載の木造家屋の補強構造において、前記連結部材は、基礎と土台を貫通しその上端部が土台の上側面から突出したアンカーボルトと、梁に上端部が固定され梁の下側面からその下端部が突出した通しボルトと、それらアンカーボルトと通しボルト間を、接続金具を介して中継するタイロッドとからなり、柱脚部と柱頭部に跨って設置したことを特徴とする。この構造によると、柱に引き寄せ金物等を設けずに柱の両側において、柱脚部と柱頭部間に鉛直方向に連続して設けられた連結部材により柱を支持できる。また、その連結部材としては、市場で流通している既存のアンカーボルトやタイロッド、それらを接続する接続金具としてのターンバックルやジョイントナット等を組み合わせて使用しているので、経済的である。
また、請求項3記載の発明に係る木造家屋の補強構造は、請求項2記載の木造家屋の補強構造において、前記柱の上端部の両側における梁の上側面からそれぞれ前記通しボルトの上端部が突出しており、それらの上端部に傾斜面同士を対向して当接させ、かつ、中央に前記通しボルトを貫通させる貫通孔が形成された上下一対のテーパー座金を設けてナットにより前記梁の上側面に固定すると共に、両側それぞれの上下一対のテーパー座金のうち一方のテーパー座金を弾性部材が付勢して他方のテーパー座金を鉛直方向に変位させることを特徴とする。この構造によると、地震等により大きなせん断力が柱に作用して、連結部材が降伏し伸びても、例えば、弾性部材が下側のテーパー座金を付勢して上側のテーパー座金を上方へ押し、連結部材の伸びによって生じた隙間を吸収する。この場合、上側のテーパー座金を押して下側のテーパー座金を下方に移動させるようにしてもよい。そのため、連結部材が降伏し伸びても、ナット下面と梁の上側面との間に隙間が空くことがなくなるので、次に到来する地震等のせん断力に対して抵抗できる状態が自動的に確保される。
また、請求項4記載の発明に係る木造家屋の補強構造は、請求項1記載の木造家屋の補強構造において、前記連結部材は、アンカーボルトと、通しボルトと、引き寄せ金物とからなり、柱脚部ではその両側において引き寄せ金物を介し基礎および土台と柱とをアンカーボルトにより連結する一方、柱頭部ではその両側において引き寄せ金物を介し柱と梁とを通しボルトにより連結することにより、柱脚部と柱頭部にそれぞれ個別に設置したことを特徴とする。この構造によると、柱の両側において引き寄せ金物とアンカーボルトおよび通しボルトにより連結部材により柱の転倒を防止でき、また市場で流通している既存の引き寄せ金物やアンカーボルト、通しボルトを使用できるので経済的である。
また、請求項5記載の発明に係る木造家屋の補強構造は、請求項4記載の木造家屋の補強構造において、前記引き寄せ金物と前記アンカーボルトまたは通しボルトとの連結部分に、傾斜面同士が対向して当接し、かつ、前記アンカーボルトまたは通しボルトを貫通させる貫通孔が形成された上下一対のテーパー座金を設け、一方のテーパー座金を弾性部材が付勢して他方のテーパー座金を鉛直方向に変位させることを特徴とする。この構造によると、地震等により大きなせん断力が柱に作用して、アンカーボルトまたは通しボルト材が降伏し伸びても、アンカーボルトまたは通しボルトに螺合していたナットとテーパー座金との間に隙間が空くことがなくなるので、特に補修作業等を施すことなく、次の地震等にそのまま対応できる。
また、請求項6記載の発明に係る木造家屋は、請求項1〜請求項5のいずれか一の請求項に記載の木造家屋の補強構造により土台と柱と梁とを補強したことを特徴とする。この構成によれば、経済的に木造家屋を補強することができる。
本発明の木造家屋の補強構造および木造家屋によれば、柱の両側に沿って設けた連結部材により柱の柱脚部および柱頭部をそれぞれ基礎、土台、梁などの相手方部材に連結したので、柱の両側において柱を強固に支持できる。そのため、地震等により柱にせん断力が作用しても、その水平力に抵抗して梁の持ち上がりを防止し、柱の転倒を防止できる。
本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態1を示す図である。 実施形態1において柱の転倒を防止する挙動を示す図である。 本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態2を示す図である。 実施形態2で使用するテーパー座金等の分解斜視図である。 一対のテーパー座金が存在する場合と存在しない場合の挙動の違いを示す図である。 本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態3を示す図である。 本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態4を示す図である。 従来の木造家屋の補強構造において柱が転倒する際の梁の状態を示す図である。
以下、本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態1〜4を、いわゆる木質(木造)ラーメン構法に適用して説明する。都市部では土地は貴重であり同時に高価で、建物も土地の有効利用を考えざるを得ない。木造家屋の建築構法は、大きく分けて、「在来軸組構法」、「壁式枠組構法(いわゆる2×4構法)」、「伝統構法」、「その他(ログハウス、ラーメン構法)」に分類できる。この中で、現在建築される住宅は、「在来軸組構法」と「壁式枠組構法」がほとんどである。これらの構法は、壁で地震力や風圧力などの外力に抵抗する構造で、大きな壁を建物の中にバランス良く配置する必要がある。一方、最近の都市部では土地が高価であるため、1Fを店舗利用し、2Fや3Fを住居として利用するケースがあるが、1Fの商用スペースに壁が入ってくるため、道路からの間口が狭く、窮屈な印象を与えていた。このような問題を解決する構法として、柱と梁で外力に抵抗する木質ラーメン構法がある。木質ラーメン構法は、柱と梁で外力に抵抗するため大きな壁を必要とせず、間口(開口部)を大きく取ることができると共に、自由な間取りが可能な近代的な構法である。その反面、木質ラーメン構法は大きな間口を有するため、地震等には弱いという弱点があった。そこで、本発明に係る木造家屋の補強構造を木質ラーメン構法に適用して補強したものである。
実施形態1.
図1は、本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態1を示す図である。図1に示す木質ラーメン構法は、基礎1の上に土台2および柱3を固定し、柱の3の上に梁4を固定して構成されるもので、土台2と柱3、および柱3と梁4との間には、それぞれ、ピンまたはボルト形状やプレート形状の鋼製のせん断力保持部材5a,5bが埋設され、せん断力保持部材5a,5bにより柱3に生じるせん断力を受けるように構成されている。土台2と基礎1とは、図示しない複数のアンカーボルトにより固定されている。柱3としては、例えば、120mm×240mm〜400mm程度の無垢の木材または集成材を使用する。そして、実施形態1では、柱3の左右両側または前後両側、すなわち柱3を介し180度の位置において、連結部材を構成するアンカーボルト6、ジョイントナット7(接続金具)、タイロッド8、ターンバックル10(接続金具)および通しボルト9により、土台2と梁4とを連結したことを特徴とする。
つまり、柱脚部3aの両側には、それぞれ、下端部6aが基礎1に埋設され上端部6bが土台2を貫通してその上側面から突出したアンカーボルト6が埋設されており、その上端部6bはジョイントナット7を介してアンカーボルト6とほぼ同径のタイロッド8に連結されている。一方、柱頭部3bの両側には、それぞれ、上端部9bが座金92を介してナット91により梁4の上側面に固定されている一方、下端部9aが梁4を貫通しその下側面から突出した通しボルト9が設けられており、その通しボルト9の下端部9bにターンバックル10を介してタイロッド8を連結している。これにより、図上、柱3の左右両側において、基礎1および土台2と梁4とが連結部材であるアンカーボルト6、ジョイントナット7、タイロッド8、ターンバックル10および通しボルト9により連結される。ここで、ターンバックル10を回転させることにより、アンカーボルト6、通しボルト9およびタイロッド8等の長さを調整して緊張力を付与することができるが、これらの連結部材に緊張力を付与することは必須でなく、連結部材に遊びが生じない程度に長さを調整すれば良い。なお、柱3の両側においてアンカーボルト6、通しボルト9およびタイロッド8等にかける緊張力をかける場合、なるべく同じ力で対称的にかけることが望ましい。このことは次の実施形態2でも同様である。
そのため、地震などが発生して、基礎1および土台2に対し梁4が相対的に水平移動して、柱3にせん断力が作用した場合、まず、せん断力保持部材5a,5bがそのせん断力に抵抗して、柱3の転倒等を防止する。そして、柱3に作用するせん断力が大きくなり、せん断力保持部材5a,5bの抵抗力以上になると、柱3が土台2や梁4の長手方向、例えば、図2に示すように図上右方向に傾く。すると、柱脚部3aの左下端部3a2が基礎1の上側面から浮く一方、柱頭部3bの右上端部3b1が梁4の下側面から離れ、転倒(回転)しようとする。その結果、基礎1には柱3の右下端部3a1が当る一方、梁4には柱3の左上端部3b2が当ることになるので、梁4が上方に持ち上がろうとする。
しかし、実施形態1では、柱3の左右両側において、土台2と梁4とをアンカーボルト6、ジョイントナット7、タイロッド8、ターンバックル10および通しボルト9により柱3を支持するので、梁4の持ち上がりに対して柱3の左右両側(または前後両側)のアンカーボルト6および通しボルト9およびタイロッド8が抵抗する。そのため、梁4の持ち上がりが防止され、柱3の転倒を防止できる。なお、柱3の両側に連結部材であるアンカーボルト6、通しボルト9およびタイロッド8を配置する場合においても、なるべく柱3の近傍に配置した方が、梁4の弾性変形が小さくなり、柱3の転倒抑止効果を向上させることができるので、柱3の近傍に配置する。
また、この構造によれば、連結部材として市場で流通している既存のアンカーボルト6および通しボルト9や、ジョイントナット7、タイロッド8、ターンバックル10を使用しているので、経済的である。
なお、本実施形態1では、アンカーボルト6、通しボルト9とタイロッド8との連結に、それぞれ、接続金具としてのジョイントナット7やターンバックル10を用いて説明したが、ジョイントナット7を用いずターンバックル10を2つ使用して連結しても良いし、またはジョイントナット7やターンバックル10を使用せずに溶接により連結したり、さらにはアンカーボルト6、通しボルト9とタイロッド8とを一本の連結部材により一体的に構成しても良い。以上のことは、実施形態2でも同様である。
実施形態2.
図3は、本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態2を示す図である。実施形態1では、柱頭部3bの両側における梁4の上側面から突出する通しボルト9の上端部9bを、座金92を介してナット91により固定していたが、実施形態2では、図3に示すようにその座金92とナット91の間に、上下一対のテーパー座金11a,11bとスプリング12等を設けたことを特徴とする。
つまり、柱頭部3bの両側において通しボルト9の上端部9bを梁4に固定する座金92とナット91との間に、図4に示すように、傾斜面11a1,11b1同士を対向して当接させ、かつ、中央に通しボルト9の上端部9bを貫通させる貫通孔11a2,11b2が形成された上下一対のテーパー座金11a,11bを設ける。上側(ナット91側)のテーパー座金11bは、通しボルト9の軸線方向(長手方向)に沿って上方へ移動できれば十分であるので、その貫通孔11b2は、丸孔である。これに対し、下側(梁4側)のテーパー座金11aは、通しボルト9の軸線方向(長手方向)に対し垂直方向、すなわち梁4の長手方向と平行に移動する必要があるので、その貫通孔11a2は、長孔である。また、左右両側の下側(梁4側)のテーパー座金11aには、それぞれ、梁4の長手方向と平行な貫通孔11a3が形成されており、その貫通孔11a3に1本の案内用ロッド13が通されている。そして、案内用ロッド13の両端部には、それぞれ、外端部を留めた弾性部材としてのスプリング12が設けられ、その内端部がテーパー座金11aに当接しており、スプリング12の弾性力により両テーパー座金11aを柱3の方向に付勢して、上側のテーパー座金11bを上方へ押すように構成している。なお、案内用ロッド13は、柱3の左右両側に独立して設けて良いし、あるいは省略しても良い。要は、柱3の左右両側の下側(梁4側)のテーパー座金11aを梁4の長手方向と平行に移動して、上側(ナット91側)のテーパー座金11bを上方へ移動できれば良い。また、弾性部材も、スプリング12に限らず、板バネ等でも良く、要は、両テーパー座金11aを付勢できれば良い。さらに、上下一対のテーパー座金11a,11bの関係を逆にし、上側のテーパー座金11bをスプリング12で付勢して下側のテーパー座金11aが下方に変位するようにしてもよい。
そのため、図5(a)に示すように、座金92とナット91の間にテーパー座金11a,11bおよびスプリング12を設けていない場合には、柱3に大きなせん断力が作用して傾き、梁4がいったん浮いて戻ると、図5(b)に示すように、柱3の両側においてアンカーボルト6および通しボルト9やタイロッド8が降伏し伸びて、アンカーボルト9の上端部9bを固定していたナット91および座金92が梁4の上側面から浮く虞がある。このようになると、ナット91等と梁4の上側面との間に隙間が空くことになるので、次の地震において、再び柱3が傾いて隙間が無くなるまでは水平力に抵抗できず、その結果、柱3の傾斜が大きくなってしまう。
これに対し、図5(c)に示す実施形態2のように座金92とナット91の間に上下一対のテーパー座金11a,11bおよびスプリング12を設けている場合は、アンカーボルト6および通しボルト9やタイロッド8が降伏し伸びても、図5(d)に示すようにスプリング12が下側(梁4側)のテーパー座金11aを常時付勢しているので、上側(ナット91側)のテーパー座金11bを上方へ移動させる。これにより、アンカーボルト6、通しボルト9やタイロッド8の伸びを吸収するので、ナット91と梁4の上側面との間に隙間が空くことを防止できる。その結果、地震等により大きなせん断力が柱3に作用して、アンカーボルト6や通しボルト9が降伏して伸びた場合でも、ナット91と梁4の上側面との間に隙間が空くことがなくなるので、そのまま次の地震に対応することができる。
実施形態3.
図6は、本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態3を示す図である。実施形態3では、土台2および梁4に固定されたアンカーボルト6および通しボルト9を、ジョイントナット7やタイロッド8およびターンバックル10を使用せずに、それぞれ引き寄せ金物14を使用して、柱3の柱脚部3aおよび柱頭部3bの両側において土台2と梁4に連結したことを特徴とする。つまり、実施形態3では、図6に示すように、柱1本当り、4つの引き寄せ金物14を使用し、柱脚部3aではその両側において引き寄せ金物14を介し基礎1および土台2と柱3とをアンカーボルト6により連結する一方、柱頭部3bではその両側において引き寄せ金物14を介し柱3と梁4とを通しボルト9により連結する。
そのため、地震などが発生して、基礎1および土台2に対し梁4が相対的に水平移動し、せん断力保持部材5a,5bの抵抗力以上のせん断力が柱3に作用しても、柱3の柱脚部3aおよび柱頭部3bの両側において引き寄せ金物14およびアンカーボルト6および通しボルト9が抵抗するため、実施形態1と同様に梁4の持ち上がりを防止して、柱3の転倒を防止できる。
なお、本実施形態3では、上下階の同じ位置で,上下階別の柱3を、梁4を介さずに接合する場合、上下階の柱3それぞれに引き寄せ金物14を取り付け、上下階別の柱3同士を2つの引き寄せ金物14と1本の通しボルト9により直接連結することも可能である。なお、このことは、引き寄せ金物14を使用する次の実施形態4でも同様である。
実施形態4.
図7は、本発明に係る木造家屋の補強構造および木造家屋の実施形態4を示す図である。実施形態4では、図6に示す実施形態3の木造家屋の補強構造に対し、柱3の柱脚部3aおよび柱頭部3bの左右両側(または前後両側)の引き寄せ金物14に、一対のテーパー座金11a,11bと、スプリング12とを追加したことを特徴とする。
つまり、この実施形態4では、図7に示すように、柱3の柱脚部3aおよび柱頭部3bの両側に固定した引き寄せ金物14のナット91と座金92との間に、図4に示すような実施形態2のものと同様の上下一対のテーパー座金11a,11bおよびスプリング12を設ける。そして、各テーパー座金11a,11bのうち、柱脚部3aでは下側(土台2側)のテーパー座金11aをスプリング12により柱3の方向に付勢するとともに、柱頭部3bでは上側(梁4側)のテーパー座金11aをスプリング12により柱3の方向に付勢して、テーパー座金11bをナット91側へ押すようにする。なお、柱脚部3aおよび柱頭部3bの両側に固定した引き寄せ金物14において、上下一対のテーパー座金11a,11bの関係は、上記実施形態2と同様に逆にしてもよい。
すなわち、実施形態3のように引き寄せ金物14のナット91と座金92との間にテーパー座金11a,11bおよびスプリング12を設けていない場合には、地震等により大きなせん断力が柱3に作用して、アンカーボルト6および通しボルト9が降伏し伸びたとき、ナット91と引き寄せ金物14との間に隙間が空き、次の地震において、柱3の傾きがより大きくなってしまう。これに対し、実施形態4のように柱3の柱脚部3aおよび柱頭部3bにおける両側の各引き寄せ金物14において座金92とナット91の間にテーパー座金11a,11bおよびスプリング12を設けている場合には、アンカーボルト6または通しボルト9が降伏し伸びても、スプリング12がテーパー座金11aを常時付勢しているので、アンカーボルト6または通しボルト9の伸びを吸収する。その結果、再度の地震等により大きなせん断力が柱3に作用した場合には、直ちに水平力に抵抗するので、柱3の傾きを小さくすることができる。
なお、上記実施形態1〜4において、柱3の柱脚部3aおよび柱頭部3bと土台2または梁4との当接部分を鉄板などで補強することにより、柱3の回転に伴う圧縮変形(めり込み)をさらに少なくするようにしても良い。また、上記実施形態1〜4では、本発明に係る木造家屋の補強構造を木質ラーメン構法に適用して説明したが、本発明では、木質ラーメン構法に限定されず、在来軸組構法等、土台と柱と梁とを使用する木造家屋の建築構法であれば適用可能である。
1…基礎、2…土台、3…柱、3a…柱脚部、3b…柱頭部、4…梁、5a,5b…せん断力保持部材、6…アンカーボルト(連結部材)、7…ジョイントナット(連結部材・接続金具)、8…タイロッド(連結部材)、9…通しボルト(連結部材)、91…ナット、92…座金、10…ターンバックル(連結部材・接続金具)、11a,11b…テーパー座金、11a1,11b1…傾斜面、11a2,11b2…貫通孔、12…スプリング(弾性部材)、13…案内用ロッド、14…引き寄せ金物(連結部材)。

Claims (6)

  1. 基礎の上に土台、柱および梁を配置した木造家屋の補強構造において、柱の両側に沿って設けた連結部材により柱脚部および柱頭部をそれぞれ相手方部材と連結したことを特徴とする木造家屋の補強構造。
  2. 請求項1記載の木造家屋の補強構造において、
    前記連結部材は、基礎と土台を貫通しその上端部が土台の上側面から突出したアンカーボルトと、梁に上端部が固定され梁の下側面からその下端部が突出した通しボルトと、それらアンカーボルトと通しボルト間を、接続金具を介して中継するタイロッドとからなり、柱脚部と柱頭部に跨って設置したことを特徴とする木造家屋の補強構造。
  3. 請求項2記載の木造家屋の補強構造において、
    前記柱の上端部の両側における梁の上側面からそれぞれ前記通しボルトの上端部が突出しており、それらの上端部に傾斜面同士を対向して当接させ、かつ、中央に前記通しボルトを貫通させる貫通孔が形成された上下一対のテーパー座金を設けてナットにより前記梁の上側面に固定すると共に、両側それぞれの上下一対のテーパー座金のうち一方のテーパー座金を弾性部材が付勢して他方のテーパー座金を鉛直方向に変位させることを特徴とする木造家屋の補強構造。
  4. 請求項1記載の木造家屋の補強構造において、
    前記連結部材は、アンカーボルトと、通しボルトと、引き寄せ金物とからなり、柱脚部ではその両側において引き寄せ金物を介し基礎および土台と柱とをアンカーボルトにより連結する一方、柱頭部ではその両側において引き寄せ金物を介し柱と梁とを通しボルトにより連結することにより、柱脚部と柱頭部にそれぞれ個別に設置したことを特徴とする木造家屋の補強構造。
  5. 請求項4記載の木造家屋の補強構造において、
    前記引き寄せ金物と前記アンカーボルトまたは通しボルトとの連結部分に、傾斜面同士が対向して当接し、かつ、前記アンカーボルトまたは通しボルトを貫通させる貫通孔が形成された上下一対のテーパー座金を設け、一方のテーパー座金を弾性部材が付勢して他方のテーパー座金を鉛直方向に変位させることを特徴とする木造家屋の補強構造。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一の請求項に記載の木造家屋の補強構造により土台と柱と梁とを補強したことを特徴とする木造家屋。
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