JP2013060659A - 転炉での溶銑の脱炭精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 酸素ガスを過剰に供給することなく且つ脱炭精錬時間を延長することなく、溶銑の転炉での脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定する。
【解決手段】 転炉1にて溶銑16を脱炭精錬する際に、酸素バランスから求められる不明酸素量に基づいてスラグ中FeO濃度を推定し、推定したFeO濃度の推移に照らし合わせて、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランス2のランス高さ、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量のうちの1種以上を調整し、この調整により、全酸素ガス量の40体積%の酸素ガス量を供給する時点におけるスラグ中のFeO濃度を、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び脱炭精錬終了時の目標温度などから目標値として算出されるFeO濃度の1.0〜3.0倍の値に調整し、その後、溶湯中炭素濃度が所定値となった時点にサブランスを溶湯に投入して溶湯温度を測定し、溶湯温度測定値と終点での溶湯温度目標値とを対比してその後の酸素ガス供給量を決定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、転炉での溶銑の脱炭精錬方法に関し、詳しくは、転炉内スラグのFeO濃度を酸素ガス供給量、排ガスの組成及び流量、溶湯成分などから脱炭精錬中にオンラインで逐次推定し、推定したFeO濃度に基づきスラグ中のFeO濃度が目標範囲になるように操業条件を制御し、更に、排ガスの組成及び流量から算出される溶湯の推定炭素濃度が所定の値となった時点でサブランスを投入して溶湯温度を測定し、これにより、その後の酸素ガス供給量を決定することで、脱炭精錬終了時の溶鋼中燐濃度を安定して低位に維持する脱炭精錬方法に関する。
転炉における溶銑の脱炭精錬において、脱炭精錬終了時(以下、「終点」とも記す)の溶湯(溶鋼)の燐濃度が目標の濃度よりも高くなると(以下、「燐外れ」とも記す)、溶湯成分を再度調整し直す必要があり、追加分の精錬コストを要するのみならず、生産性の低下も招く。また、燐外れを防止するために、吹錬終了後に酸素ガスを余分に供給するなどして酸素を過剰に供給する傾向があるが、溶湯の酸素濃度の増加を招き、その結果、出鋼後の脱酸用Alの使用量が多くなり、溶製コストが増加する。また更に、溶銑の予備脱燐処理によって溶銑の燐濃度を予め低下させることで、転炉での脱炭精錬時間を短縮させる技術もあるが、この技術を活かすためには、転炉脱炭精錬において、処理時間内に溶湯の燐濃度を製品に要求される燐濃度まで低減することが必要である。
つまり、転炉における溶銑の脱炭精錬においては、何れの場合であっても、過剰の酸素ガスを供給することなく、設定した精錬時間内で終点の溶鋼中燐濃度を目標とする範囲に安定して制御する必要がある。尚、転炉における溶銑の脱炭精錬では、脱炭精錬の進行に伴って溶銑の炭素含有量は減少し、溶銑は終点時には炭素含有量の少ない溶鋼に溶製されるが、転炉脱炭精錬において、特に精錬途中において、溶銑と溶鋼とを区別して表示することは極めて困難であるので、本発明では溶銑及び溶鋼をまとめて溶湯と表示する。
ところで、転炉における溶銑の脱炭精錬においては、溶湯とスラグとの間で下記の(1)式に示す脱燐反応が進行する。但し、(1)式において、[P]、[Fe]は溶湯中の成分、(FeO)、(CaO)、(3CaO・P25)はスラグ中の成分を示している。つまり、溶銑中の燐(=P)がFeOによって酸化され、この酸化反応によって生成したP25がCaOと反応してスラグに吸収されるという反応である。
Figure 2013060659
このような脱燐反応において、反応速度をより一層促進させるためには、CaOのスラグ中への滓化・溶融を促す必要があり、また、CaOの滓化促進のためには、FeOの作用を効果的に利用することが必要になる。
溶銑の転炉脱炭精錬におけるスラグ中のFeO量を制御する従来技術の例としては特許文献1がある。特許文献1では、酸素吹錬開始以前に過去実績を参照して鋼種毎に目標とするFeO量の推移を設定し、精錬中、送酸量、投入副原料情報、排ガス情報から実績FeO量を逐次算出し、実績FeO量が目標とする推移に近づくように、上吹きランスの送酸速度、ランス高さ、底吹きガス流量の何れか1つ以上を制御する技術を提案している。しかしながら、特許文献1は、スラグ中のFeO量の推移と脱燐反応との関係については明らかにしていない。
また、特許文献2、特許文献3、特許文献4には、転炉における溶銑の脱炭精錬において、スラグ中のFeO量の推移を制御し、これにより終点の溶湯中燐濃度を制御する技術が提案されている。ところで、脱炭精錬終点の溶湯中燐濃度を低位に安定させるためには、少なくとも終点直前のサブランス投入の時点までに、既に溶湯中燐濃度が下がっている必要があり、そのためには、吹錬開始時から直ちにスラグ中のFeO量の制御を行う必要がある。
この観点から、特許文献2〜4を検証すれば、特許文献2は、終点時のスラグ中FeO量が目標値になるように吹錬条件を制御しており、対応が遅く、終点の溶湯中燐濃度が安定して目標値を達成するとはいいがたい。特許文献3は、中間サブランスによる溶湯中炭素濃度を初期値とし、これ以降のスラグ中FeO量を推定しており、特許文献3も対応が遅く、終点の溶湯中燐濃度が安定して目標値を達成するとはいいがたい。特許文献4は、炉内に供給される酸素量及び炉外に排出される酸素量に加えて、吹錬中のスラグ状況を測定するセンサーの情報を加味してスラグ中のFeO量を算出しており、FeO量を精度良く推定できるものの、スラグ状況測定センサーの設備費やメンテナンス費を要し、経済的に好ましくない。
特許文献5には、脱燐炉及び脱炭炉の2基の転炉を用いる高炭素極低燐鋼の溶製方法において、脱燐炉での脱燐精錬に際し、吹錬中の排ガス組成や流量、酸素ガス流量、副原料投入量及び溶銑成分から酸素バランスを逐次計算することにより求められる蓄積酸素量に基づいて炉内のFeO生成量を推定し、その推定したFeO量に応じて、上吹きランス高さ、酸素ガス流量、底吹きガス流量のうちの少なくとも何れか一つを調整して、処理後の溶湯中燐濃度を0.015質量%以下まで低減する技術が開示されている。しかしながら、この技術は溶銑の予備脱燐処理に関する技術であり、予備脱燐処理では本発明の対象とする脱炭精錬よりも脱炭量が少なく、FeO生成量の制御方法が脱炭精錬とは異なり、特許文献5の技術をそのまま脱炭精錬に適用することはできない。
また、本発明者らは、酸素バランスを逐次計算することにより炉内のFeO生成量を推定し、その推定したFeO量に応じて、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までにスラグ中FeO濃度を5〜30質量%の範囲に調整し、終点燐濃度を低位安定化させる技術(特許文献6)を出願している。しかしながら、吹錬中に投入するサブランスのタイミングについては適正化を行っておらず、サブランスの投入タイミングが遅れ、結果的に酸素ガスを過剰に供給する可能性があり、また、スラグ組成に依存せず、スラグ中FeO濃度を一定の濃度範囲に制御しており、スラグ組成が高塩基度側に設定される場合には、初期においてFeOを過剰に生成させることになり、結果的に鉄歩留まりを低下させる可能性がある。これらの点で特許文献6は改善の余地がある。
特開昭61−159520号公報 特開平2−19415号公報 特開平2−19413号公報 特開平1−242711号公報 特開2006−206930号公報 特願2011−39513号
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、底吹き羽口から攪拌用ガスを吹き込んで溶湯を攪拌しながら、上吹きランスから酸素ガスを供給して転炉内に装入した溶銑を脱炭精錬するにあたり、精錬中のFeOの生成量を推定し、この推定値の推移に基づいて精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに、スラグ中のFeO濃度を目標範囲に制御することで、酸素ガスを過剰に供給することなく且つ脱炭精錬時間を延長することなく、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定することのできる、溶銑の脱炭精錬方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]上吹きランスから酸素ガスを供給するとともに底吹き羽口から攪拌用ガスを吹き込んで溶銑を転炉にて脱炭精錬するにあたり、上吹きランスからの酸素ガス流量、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料投入量及び溶湯成分を用いて酸素バランスを逐次計算することにより求められる不明酸素量に基づいて炉内スラグ中のFeO濃度を推定し、推定したFeO濃度の推移に照らし合わせて、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランスのランス高さ、底吹き羽口からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、この調整により、全酸素ガス供給量の設定量の40体積%の酸素ガス量を供給する時点における炉内スラグ中のFeO濃度を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び脱炭精錬終了時の目標温度から目標値として算出されるFeO濃度の1.0倍〜3.0倍の値に調整し、その後、溶湯中炭素濃度が所定値となった時点にサブランスを溶湯に投入して溶湯温度を測定し、サブランスによる溶湯温度の測定値と終点での溶湯温度の目標値とを対比して、その後の酸素ガス供給量を決定することを特徴とする、転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
[2]前記目標値として算出されるFeO濃度を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び目標温度、並びに、前チャージの吹錬終了から当該チャージの吹錬開始までの非製鋼時間を用いて演算した変数による回帰分析に基づいて算出することを特徴とする、上記[1]に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
[3]前記目標値として算出されるFeO濃度を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び目標温度、並びに、途中サブランス投入時点から吹錬終了までの設定時間を用いて算出される燐分配比に基づいて算出することを特徴とする、上記[1]に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
[4]前記溶湯中炭素濃度が所定値となった時点を、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料の投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量を用いて炭素バランスを逐次計算することにより求められる溶湯中炭素濃度の計算値に基づいて判定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[3]の何れか1項に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
本発明によれば、転炉を用いた、上吹き酸素ガス及び攪拌用底吹き不活性ガスによる溶銑の脱炭精錬において、炉内スラグ中のFeO濃度を推定し、推定したFeO濃度の推移に照らし合わせて、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランスのランス高さ、底吹き羽口からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、この調整により、全酸素ガス供給量の設定量の40体積%の酸素ガス量を供給する時点における炉内スラグ中のFeO濃度を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び脱炭精錬終了時の目標温度を用いて算出されるFeO濃度の目標値の1.0倍〜3.0倍の値に調整し、その後、溶湯中炭素濃度が所定値となった時点でサブランスを溶湯に投入して溶湯温度を測定し、副原料の投入実績量、炉内スラグ中のFeO濃度の推移及びサブランス投入時点の実績溶湯温度から推定される燐濃度を参照しながら、その後の酸素ガス供給量を決定するので、酸素ガスを過剰に供給することなく、また、脱炭精錬時間を延長することなく、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定することが達成される。また、酸素ガスの供給量が過剰にならないので、溶湯の酸素濃度が過度に上昇せず、脱酸用Alの使用量が削減されるという副次的効果も発現し、溶製コストを大幅に低減することが実現される。
本発明を実施する際に用いる転炉設備の概略断面図である。 ガイドライン指示値(=FeO濃度の目標値)に対する精錬進行度が40%の時点でのスラグ中FeO濃度の比と、脱燐指標の到達度Ωとの関係を示す図である。 本発明例1、比較例1、比較例2における途中サブランス投入時期の実績を示す図である。 本発明例1、比較例1、比較例2におけるスラグ中のFeO濃度の推移の例を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明を適用する転炉設備を説明する。図1は、本発明を実施する際に用いる転炉設備の1例の概略断面図である。
図1において、溶銑16を収容した転炉本体1の内部には、上方から上吹きランス2が挿入され、この上吹きランス2から酸素ガスが溶銑16に吹き付けられると同時に、転炉本体1の底部に配置した複数の底吹き羽口3から攪拌用底吹きガスが吹き込まれて溶銑16とスラグ17とが攪拌されながら、溶銑16の脱炭精錬が行われる。溶銑16の脱炭精錬(C+O→CO)によって炉内からCOガスを主体とする排ガスが発生する。
転炉本体1の上方には煙道4が設置され、煙道4の後段には、一次集塵機8、二次集塵機9、排ガス流量計11、誘引送風機12が、この順に設置されている。この排ガス処理設備は、排ガス中のCOガスを、冷却して除塵し未燃焼のまま回収する、非燃焼方式の排ガス処理設備(「OG式排ガス回収設備」ともいう)であり、この排ガス回収設備では、誘引送風機12の下流側に、更に、三方弁、煙突、回収弁、ガスホルダーなどが配置されるが図1では省略している。二次集塵機9として設置したPAベンチュリーには、PAダンパー10が設置されており、PAダンパー10の開度調整により転炉本体1の炉内圧が制御されるようになっている。つまり、脱炭精錬によって転炉本体1の内部で発生する排ガスは、PAダンパー10によって流量制御されながら、電動機(図示せず)により駆動される誘引送風機12で吸引され、ガスホルダーに回収されるようになっている。
煙道4の転炉本体1の炉口との接続側は、スカート5と呼ばれており、上下移動が可能な構造となっており、排ガスを回収する場合には、スカート5と転炉本体1の炉口とは原則的には密着した状態になる。また、煙道4には、生石灰、焼成ドロマイト、鉄鉱石、ミルスケール、マンガン鉱石、コークス及び合金鉄(Fe−Mn、Fe−Siなど)などの副原料を転炉本体1に投入添加するための、ホッパー6及び投入シュート7などからなる副原料投入装置が設置されている。副原料投入装置から炉内に投入される生石灰、焼成ドロマイト、鉄鉱石、ミルスケール、マンガン鉱石などによってスラグ17が形成される。
煙道4には、脱炭精錬によって転炉本体1の内部で発生する排ガスを採取するためのガス採取プローブ13が設置され、ガス採取プローブ13で採取された排ガスは、ガス分析装置14に送られ、ガス分析装置14において、排ガス中のCOガス濃度、CO2ガス濃度、水素ガス濃度及び酸素ガス濃度が測定される。これらの合計値と100質量%との差分が窒素ガスとして求められる。この場合に、底吹き羽口3から攪拌用底吹きガスとしてArガスを吹き込むときには、更にArガス濃度を差し引いて窒素ガス濃度が求められる。そして、測定された排ガス組成は演算装置15に送信されている。また、演算装置15には、上吹きランス2から炉内に供給される酸素ガスの流量、副原料投入装置によって投入される副原料の投入量、及び、排ガス流量計11で測定される排ガスの流量が送信されている。
この演算装置15は、脱炭精錬中の酸素バランスを逐次計算し、計算した酸素バランスから求められる不明酸素量に基づいて、炉内のスラグ17のFeO濃度を推定し、推定したFeO濃度の推移を表示する装置である。また、演算装置15は、脱炭精錬中の炭素バランスを逐次計算し、計算した炭素バランスに基づいて炉内溶湯の炭素濃度を推定し、推定した炭素濃度の推移を表示する装置でもある。
以下、この演算装置15によるスラグ17のFeO濃度の推定方法及び推定値の推移を表示する方法を説明する。演算装置15は、先ず、下記の(2)式を用いて精錬中にオンラインで不明酸素量を逐次算出する。
Figure 2013060659
但し、(2)式において、ΔWO2は、酸素吹錬開始時から時刻ti(秒)までの不明酸素量(Nm3/溶銑t)、Aは、上吹きランス2からの酸素ガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))、Bは、投入副原料中の酸素投入量(Nm3/溶銑t)、Cは、転炉炉口での巻き込み空気中の酸素ガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))、Dは、排ガス中のCOガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))、Eは、排ガス中のCO2ガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))、Fは、溶湯成分の酸化、具体的には、溶湯中の珪素、マンガン、燐の酸化に消費される酸素ガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))、tは時刻(秒)であり、時刻の添え字iは、吹錬開始時からi番目の計算であることを示している。ここで、不明酸素量(ΔWO2)は、炉内に供給される酸素量と炉外に排出される酸素量との差分であることから、炉内に酸化物として蓄積される酸素量を意味している。
尚、溶湯成分(Si、Mn、P)の変化は、予め脱炭精錬中に求めた実績値に基づいて作成したモデル式を利用するものとする。即ち、化学分析により求めた脱炭精錬前の溶銑16の化学組成を初期値とし、脱炭精錬中のSi、Mn、Pの濃度推移を実績値に基づいて設定する。また、投入副原料中の酸素投入流量(B)は、酸化鉄形態の副原料によって炉内に供給される酸素のti時間経過した時点までの積算値を酸素ガスに換算したものであり、例えば、酸化鉄形態の副原料が鉄鉱石の焼結鉱の場合には、「B(Nm3/溶銑t)=焼結鉱投入量(kg/溶銑t)×0.15」、鉄鉱石の場合には、「B(Nm3/溶銑t)=鉄鉱石投入量(kg/溶銑t)×0.20」で求めることができる。つまり、酸素ガス流量(B)は、酸化鉄形態の副原料中の酸素含有量とその添加量とから求めることができる。また、巻き込み空気中の酸素ガス流量(C)は、排ガス中の窒素ガス濃度から求めることができる。つまり、攪拌用底吹きガスが窒素ガスでない場合には、酸素ガス流量(C)は排ガス中の窒素ガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))の1/4とすればよく、攪拌用底吹きガスが窒素ガスの場合には、排ガス中の窒素ガス流量から攪拌用窒素ガス流量を差し引いた値を巻き込み空気中の窒素ガス流量とし、この窒素ガス流量から酸素ガス流量(C)を求めればよい。
(2)式では、不明酸素量(ΔWO2)を求める際に、排ガス中の酸素ガス濃度を考慮していないが、脱炭精錬の最盛期には、酸素効率が高く、排ガス中に酸素ガスがほとんど存在しないので、酸素ガス濃度を考慮することなく、不明酸素量(ΔWO2)を求めることができる。
次いで、演算装置15は、上記のようにして求めた不明酸素量(ΔWO2)に基づき、下記の(3)式を用いて、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに炉内で生成したFeO量を推定する。
Figure 2013060659
但し、(3)式において、FeOiは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに炉内で生成したFeO量(kg/溶銑t)である。尚、(3)式は、「不明酸素量(ΔWO2)は、全てFeOの生成に使用される」という考え方で導出したものである。
ここで、精錬中のスラグ17の質量は、下記の(4)式から求められる。
Figure 2013060659
但し、(4)式において、Wsiは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点での炉内のスラグ量(kg/溶銑t)、T.CaOiは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに投入された副原料中のCaO量(kg/溶銑t)、T.SiO2iは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに投入された副原料中のSiO2量(kg/溶銑t)と、溶湯中の珪素の酸化により生じるSiO2量(kg/溶銑t)との合計値、T.MgOiは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに投入された副原料中のMgO量(kg/溶銑t)、T.Al23iは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに投入された副原料中のAl23量(kg/溶銑t)、T.MnOiは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに投入された副原料中のMnO量(kg/溶銑t)と、溶湯中マンガンの酸化により生じるMnO量(kg/溶銑t)との合計値、T.P25iは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに投入された副原料中のP25量(kg/溶銑t)と、溶湯中の燐の酸化により生じるP25量(kg/溶銑t)との合計値である。
演算装置15は、(3)式から求められるFeOiと、(4)式から求められるWsiとから、下記の(5)式を用いて、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点でのスラグ17のFeO濃度を算出する。但し、(5)式において、(質量%FeO)iは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点でのスラグ17のFeO濃度(質量%)である。
Figure 2013060659
即ち、演算装置15は、入力された、上吹きランス2からの酸素ガス流量、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料投入量及び溶湯成分(Si、Mn、P)から、酸素バランスを逐次計算して不明酸素量(ΔWO2)を求め、求めた不明酸素量(ΔWO2)に基づいて炉内のスラグ17のFeO濃度を推定し、推定した値をその都度表示することで、推定したFeO濃度の推移を表示する。
一方、演算装置15は、下記の(6)式を用いて精錬中にオンラインで溶湯中の炭素濃度を逐次算出する。
Figure 2013060659
但し、(6)式において、〔C〕tiは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点での溶湯中の炭素濃度(質量%)、〔C〕Iniは、吹錬開始時の溶湯中の炭素濃度(質量%)、Gは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに投入された炭材中の炭素量(質量%)である。例えば、炭材が土壌黒鉛の場合には、「G(質量%)=土壌黒鉛投入量(kg/溶銑t)×0.83/10」、炭材が山西炭の場合には、「G(質量%)=山西炭投入量(kg/溶銑t)×0.77/10」、炭材が無煙炭の場合には、「G(質量%)=山西炭投入量(kg/溶銑t)×0.77/10」として計算される。Dは、前述した通り、排ガス中のCOガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))、Eは、排ガス中のCO2ガス流量(Nm3/(秒・溶銑t))、dtの単位は「秒」である。また、αは炭材歩留まり、βは補正係数であり、α及びβは、それぞれの転炉設備によって管理されるパラメーターである。
吹錬開始時の溶湯中の炭素濃度〔C〕Iniは、溶銑の装入量と炭素濃度、及び、鉄スクラップの装入量と炭素濃度から、下記の(7)式によって算出される。但し、(7)式において、〔C〕pigは溶銑の炭素濃度(質量%)、Wmは溶銑の装入量(t)、〔C〕Scは鉄スクラップの炭素濃度(質量%)、WScは鉄スクラップの装入量(t)である。
Figure 2013060659
演算装置15によるスラグ中FeO濃度の推定値の精度を確認するべく、精錬中及び精錬終了後にスラグ17を採取し、採取したスラグ17の化学分析値と、演算装置15によるFeO濃度の推定値とを比較した結果、両者は±5質量%以内の精度で一致した。同様に、演算装置15による溶湯中炭素濃度の推定値の精度を確認するべく、吹錬途中にサブランスによる溶湯サンプルを採取し、採取した溶湯サンプルの炭素濃度の化学分析値と、演算装置15による炭素濃度の推定値とを比較した結果、両者は±0.050質量%以内の精度で一致した。
本発明を適用する転炉設備はこのようにして構成されている。
この転炉設備を用い、造滓剤として生石灰及び焼成ドロマイトを、投入シュート7を介して投入し、転炉本体1に収容された溶銑16に、上吹きランス2から酸素ガスを供給するとともに底吹き羽口3から攪拌用ガス(Arガス)を吹き込んで、0.10質量%以上の燐を含有する溶銑16の脱炭精錬を実施し、(6)式により推定される炭素濃度が0.20質量%となった時点でサブランスによる測定を行い、(5)式により算出されるスラグ中FeO濃度の推移と実際の脱燐挙動との関係を調査する試験を行った。以下、(6)式により推定される溶湯中炭素濃度が0.20質量%となった時点でサブランスを投入することを、「途中サブランス投入」とも記す。
その際、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度の目標値は0.015質量%以下とし、溶湯中燐濃度は、上記酸素吹錬途中で溶湯中に投入したサブランスで採取した溶湯サンプル及び酸素吹錬終了時点で溶湯中に投入したサブランスで採取した溶湯サンプルの化学分析によって求めた。試験操業の操業条件を表1に、また、全ての試験における溶湯の化学成分の変化(平均値)を表2に示す。尚、表2の「精錬中」の化学成分は、(6)式により推定される炭素濃度が0.20質量%となった時点で投入したサブランスによって採取した溶湯サンプルの化学成分であり、脱炭精錬終了時の溶湯中炭素濃度の実績値は0.065質量%以下であった。
Figure 2013060659
Figure 2013060659
酸素吹錬途中から吹錬終了時点までの脱燐挙動について調査したところ、脱燐挙動は吹錬終了時点の溶湯温度との間に強い相関があることが分った。吹錬途中から吹錬終了時点までの脱燐挙動について、下記の(8)式で定義される脱燐速度KP(min-1)で評価すると、脱燐速度KPは、表3に示すように、吹錬終了時点の溶湯温度に依存することが分った。但し、(8)式において、〔P〕途中は、途中サブランス投入時点での化学分析による溶湯中燐濃度(質量%)、〔P〕finは、吹錬終了時点での化学分析による溶湯中燐濃度(質量%)、t途中→finは、途中サブランス投入時点から吹錬終了までの時間(min)である。
Figure 2013060659
Figure 2013060659
RH脱ガス精錬などの次工程の二次精錬プロセスでの処理開始温度或いは連続鋳造機における鋳造温度から決定される脱炭吹錬終了時の目標温度と、吹錬終了時の溶湯中燐濃度の目標値とから、表3に示される関係を用いて途中サブランス投入時点での目標燐濃度を求めると、途中サブランス投入時点での目標燐濃度は、下記の(9)式によって決定される。
Figure 2013060659
但し、(9)式において、〔P〕’途中は、途中サブランス投入時点での溶湯中燐濃度の目標値(質量%)、〔P〕’finは、吹錬終了時点での溶湯中燐濃度の目標値(質量%)、t’途中→finは、途中サブランス投入時点から吹錬終了までの設定時間(min)である。t’途中→finは、途中サブランス投入時点から吹錬終了までの送酸速度、途中サブランス投入時点及び吹錬終了時点での目標炭素濃度、及び、経験的に求められる脱炭酸素効率から計算されるものであり、上記の条件では実績として2分程度の値となるので、一律に2分として与えてもよい。
一方、吹錬途中までのスラグ中FeO濃度の推移と実際の脱燐挙動との関係を種々の観点から調査した結果、供給すべき全酸素ガス量(以下、単に「全酸素量」と記す)の40体積%の酸素ガス量(以下、単に「酸素量」と記す)を供給した時点におけるスラグ組成の推定値(スラグ中のFeO濃度、CaO濃度、SiO2濃度など)と、吹錬途中(途中サブランス投入時点)までの脱燐量との間に、強い相関のあることが分った。ここで、供給すべき全酸素量とは、精錬反応における物質収支及び経験的に求められる酸素効率などから、吹錬開始前に設定された値を用いて算出されるものである。
以下、途中サブランス投入時点までの脱燐量の指標として、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、及び、途中サブランス投入時点の溶湯中燐濃度から算出される燐分配比、即ち下記の(10)式で定義されるLPを用いて、脱燐挙動を検討した場合について説明する。
Figure 2013060659
但し、(10)式において、〔P〕Iniは、吹錬開始時の溶湯中燐濃度(質量%)、Wsは、途中サブランス投入時点のスラグ量(kg/溶銑t)、〔P〕途中は、前述したように、途中サブランス投入時点での化学分析による溶湯中燐濃度(質量%)である。吹錬開始時の溶湯中燐濃度〔P〕Iniは、溶銑の装入量と燐濃度、及び、鉄スクラップの装入量と燐濃度から下記の(11)式によって算出される。
Figure 2013060659
但し、(11)式において、〔P〕pigは溶銑の燐濃度(質量%)、Wmは溶銑装入量(t)、〔P〕Scは鉄スクラップの燐濃度(質量%)、WScは鉄スクラップの装入量(t)である。
上記の途中サブランス投入時点での脱燐量の指標Lは、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点における計算スラグ組成、スラグの計算塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))及び途中サブランス投入時点における実績溶湯温度を用いて下記の(12)式で表される。
Figure 2013060659
但し、(12)式において、(%CaO)40%は、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるスラグの計算CaO濃度(質量%)、(%FeO)40%は、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるスラグの計算FeO濃度(質量%)、[C/S]40%は、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるスラグの計算塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))、T途中は、途中サブランス投入時点における溶湯の実績温度(℃)であり、γ、δ、ε、η、κは、それぞれフィッティングパラメーターであり、それぞれの転炉設備によって値が管理される。
この(12)式を変形して、近似、簡略化することで、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるスラグ中FeO濃度の目標値、つまり、サブランス投入時点での溶湯中燐濃度〔P〕途中を目標値〔P〕’途中に一致させるためのスラグ中FeO濃度の目標値が、下記の(13)式によって計算される。この(13)式による計算値が、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるガイドライン指示値(以下、単に「ガイドライン指示値」とも記す)として表示される。
Figure 2013060659
但し、(13)式において、(%FeO)’40%は、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるスラグ中FeO濃度の目標値(ガイドライン指示値)、T.CaOは、スラグ中のCaO質量、つまり、途中サブランス投入時点までに投入される副原料中のCaO量(kg/溶銑t)の設定値、T.SiO2は、スラグ中のSiO2質量、つまり、途中サブランス投入時点までに投入される副原料中のSiO2量と、溶湯中及び副原料中の珪素の酸化により生じるSiO2量との合計値(kg/溶銑t)の設定値、T’finは、脱炭精錬終了時点での溶湯温度の目標値(℃)であり、その他の記号は、前述した(9)式、(10)式、(12)式に準じる。
本発明では、上記のように、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるスラグ中FeO濃度の目標値(ガイドライン指示値)を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び脱炭精錬終了時の目標温度を用いて規定される脱燐特性の目標とする条件から算出しているので、精錬途中の脱燐挙動を正確に把握し且つ推定することができる。
尚、上記説明は、FeO濃度のガイドライン指示値を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び目標温度、及び、途中サブランス投入時点から吹錬終了までの設定時間を用いて算出される燐分配比に基づいて算出した場合の例であるが、本発明はこれに限定されず、別の方法を用いてFeO濃度のガイドライン指示値を算出することもできる。
例えば、FeO濃度のガイドライン指示値を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び目標温度、及び、前チャージの吹錬終了から当該チャージの吹錬開始までの非製鋼時間を用いて演算した変数による回帰分析に基づいて、以下のように算出しても、精錬途中の脱燐挙動を精度良く把握し、推定することができる。即ち、FeO濃度のガイドライン指示値を、下記の(14)式によって計算してもよい。
Figure 2013060659
但し、(14)式において、T.CaO脱炭滓は、途中サブランス投入時点までに投入される転炉脱炭精錬スラグ中のCaO量(kg/溶銑t)の設定値、SiCは、途中サブランス投入時点までに投入される炭化珪素量(kg/溶銑t)の設定値、t非製鋼時間は、前チャージの吹錬終了後から当該チャージ開始までの時間(min)、RHMは、全装入量に占める溶銑の割合、即ち銑配合率(質量%)であり、その他の記号は、前述した(9)式、(11)式、(12)式、(13)式に準じる。a〜nは、それぞれフィッティングパラメーターであり、(14)式中の(%FeO)’40%を(%FeO)40%の実績データとし、〔P〕’途中を〔P〕途中の実績データとし、またその他の変数をそれぞれの実績データとして、(14)式を変形した式の重回帰分析を行った結果に基づいて算出されるものであり、それぞれの転炉設備によって値が管理される。
尚、本発明では、脱炭精錬の進行程度を酸素ガスの供給量に比例して管理しており、酸素ガスの供給開始時点を精錬進行度=0%とし、供給すべき全酸素量の100体積%の酸素量を供給した時点を精錬進行度=100%と定義する。従って、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点は、精錬進行度が40%の時点となる。
図2に、(13)式から算出される、精錬進行度が40%の時点でのスラグ中FeO濃度のガイドライン指示値に対する精錬進行度が40%の時点でのスラグ中FeO濃度の比と、途中サブランス投入時点までの脱燐との関係を示す(符号○印のチャージ)。図2では、途中サブランス投入時点までの脱燐の指標として、下記の(15)式で表される到達度Ωを用いている。
Figure 2013060659
但し、(15)式において、〔P〕途中は、途中サブランス投入時点での化学分析による溶湯中燐濃度(質量%)、〔P〕’finは、吹錬終了時点での溶湯中燐濃度の目標値(質量%)、KPは、(8)式で定義される脱燐速度、t’途中→finは、途中サブランス投入時点から吹錬終了までの設定時間(min)である。
図2に示すように、精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中FeO濃度が、精錬進行度が40%の時点でのガイドライン指示値以上であれば、到達度Ω=1.0以下、即ち、途中サブランス投入時点の目標燐濃度以下まで溶湯中燐濃度を低減できることが分った。一方、精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中FeO濃度が、ガイドライン指示値に対して過剰に高くなると、スロッピング(酸素吹錬時の炉口からのスラグの噴出)が起こることから(図2中の「黒三角印」のチャージ)、精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中FeO濃度をガイドライン指示値の3.0倍以下にする必要のあることが分った。図2から明らかなように、精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中FeO濃度がガイドライン指示値の2.5以上になると、それ以上にスラグ中FeO濃度を高くしても到達度Ωは低下しないことから、精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中FeO濃度をガイドライン指示値の3.0倍以下にすることは、脱燐反応の観点から何ら問題とならない。
本発明は、これらの知見に基づきなされたもので、上吹きランス2から酸素ガスを供給するとともに底吹き羽口3から攪拌用ガスを吹き込んで溶銑16を転炉にて脱炭精錬するにあたり、(2)式から求められる不明酸素量(ΔWO2)に基づいて炉内スラグ中のFeO濃度を推定し、推定したFeO濃度の推移に照らし合わせて、上吹きランス2からの酸素ガス流量、上吹きランス2のランス高さ、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、この調整により、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点における炉内のスラグ17のFeO濃度をガイドライン指示値の1.0倍〜3.0倍の値に調整し、その後、サブランスを溶湯に投入して溶湯温度を測定し、サブランスによる溶湯温度の測定値と終点での溶湯温度の目標値とを対比して、その後の酸素ガス供給量を決定することを特徴とし、副原料の投入実績量、炉内スラグ中のFeO濃度の推移及びサブランス投入時点の実績溶湯温度から推定される燐濃度を参照しながら脱炭精錬を終了する。
上吹きランス2からの酸素ガス流量を増加すると所謂「ハードブロー」になり、供給する酸素ガスは溶湯中炭素との反応に費やされてFeOの生成が少なくなるのみならず、溶湯とスラグ17との攪拌が強くなることから溶湯とスラグ17との反応が起こってスラグ17のFeOが還元され、これらにより、スラグ17のFeOは低下する或いは増加せずに維持される。逆に、上吹きランス2からの酸素ガス流量を低下すると所謂「ソフトブロー」になり、供給する酸素ガスと溶湯自体(鉄)との反応が起こりスラグ中のFeO濃度は上昇する。
上吹きランス2のランス高さ(ランス先端と静止時の炉内溶湯湯面との距離)を小さくすると、ハードブローになり、上記の理由でスラグ17のFeO濃度が低下する或いは増加せずに維持される。逆に、上吹きランス2のランス高さを大きくすると、ソフトブローになり、スラグ中のFeO濃度は上昇する。
また、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を増加すれば、溶湯とスラグ17との攪拌が強くなることから溶湯とスラグ17との反応が起こってスラグ17のFeOが還元され、スラグ17のFeOは低下する或いは増加せずに維持される。逆に、攪拌用ガス流量を減少すれば、溶湯とスラグ17との攪拌が弱くなることから溶湯とスラグ17との反応は抑制され、スラグ17のFeOは増加する。
このように、上吹きランス2からの酸素ガス流量、上吹きランス2のランス高さ、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量の何れか1つを変更することによって、スラグ17のFeO濃度を調整可能であり、従って、本発明においては、脱炭精錬中に演算装置15を用いてスラグ中FeO濃度を逐次推定し、スラグ中FeO濃度の推定値の推移から、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるスラグ中FeO濃度の推定値が、吹錬進行度が40%時点でのガイドライン指示値未満になると予測される場合には、上吹きランス2からの酸素ガス流量を低下する、上吹きランス2のランス高さを大きくする、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を低下する、のうちの少なくとも1種以上を実施してスラグ中のFeO濃度を増加させ、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるスラグ中FeO濃度を、ガイドライン指示値以上に調整する。
逆に、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるスラグ中FeO濃度の推定値が、吹錬進行度が40%時点でのガイドライン指示値の3.0倍を超える値になると予測される場合には、上吹きランス2からの酸素ガス流量を増加する、上吹きランス2のランス高さを小さくする、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を増加する、のうちの少なくとも1種以上を実施してスラグ中のFeO濃度を減少させ、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるスラグ中FeO濃度を、ガイドライン指示値の3.0倍以下に調整する。
この場合、上吹きランス2からの酸素ガス流量、ランス高さ、底吹きガス流量の変動範囲は、表1に示す範囲で十分であるが、表1の範囲を外れて変化させても全く問題ない。但し、ソフトブロー化するべく、上吹きランス2からの酸素ガス流量を低下させると脱炭精錬時間の増大を引き起こし、生産性の低下を招くことから、これを回避するために、上吹きランス2からの酸素ガス流量を増加させ且つ上吹きランス2のランス高さを大きくしてスラグ17のFeO量を増加させることが好ましい。また、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を減少させると、溶湯とスラグ17との攪拌力の低下により脱燐反応が抑制されるので、脱燐反応を確保するためには、底吹き羽口3からの攪拌ガス流量は極力一定にして上吹きランス2のランス高さを大きくしてFeO量を増加させることが好ましい。
精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点における炉内のスラグ17のFeO濃度を、吹錬進行度が40%時点でのガイドライン指示値の1.0倍から3.0倍の範囲に調整したならば、それ以降は、スラグ中のFeO濃度がガイドライン指示値未満にならないように制御して精錬を終了することが好ましい。精錬進行度が40%の時点以降に、スラグ中のFeO濃度がガイドライン指示値未満になると、脱燐反応が滞り、終点での溶湯中燐濃度が目標値を達成しない可能性がある。また、精錬進行度が40%の時点以降におけるスラグ中のFeO濃度の上限値は特に規定する必要はないが、過剰に高くなるとスロッピングの恐れがあるので、ガイドライン指示値の3.0倍%以下の範囲に維持することが好ましい。つまり、精錬進行度が40%の時点以降も、炉内のスラグ17のFeO濃度をガイドライン指示値の1.0倍から3.0倍の範囲に維持して精錬を終了することが好ましい。
更に、本発明では、(6)式から逐次計算される溶湯の推定炭素濃度が所定の値となった時点でサブランスを溶湯中に投入し、溶湯温度及び溶湯中炭素濃度を測定することが、サブランス投入時点での溶湯中炭素濃度を的中させて、吹錬制御の精度を向上させるうえで望ましい。但し、途中サブランスを投入するタイミングを決定する方法はこれに限定されず、例えば経験的に得られた方法によって物質収支と酸素の反応効率とを推定し、途中サブランスを投入するタイミングを決定してもよい。また、途中サブランスを投入するタイミングは、溶湯中炭素濃度が0.18〜0.30質量%の範囲の所定値となる時点を目標とすることが、吹錬制御の精度や制御性の観点から望ましい。サブランス投入時の溶湯中炭素濃度が0.18質量%未満では、その後の吹錬終了までの時間が短すぎて、終点の溶湯温度や炭素濃度、燐濃度を調整し難くなる問題があり、一方、サブランス投入時の溶湯中炭素濃度が0.30質量%より大きいと、終点の溶湯温度や炭素濃度、燐濃度の制御精度が低下するという問題がある。尚、途中サブランスを投入するタイミングの溶湯中炭素濃度の設定値を大きく変更する場合は、(9)式におけるt’途中→finの計算値或いは設定値もこれに伴って変更されるとともに、(8)式によって計算され、表3に示したKPの値(T’finの関数)も実績に合わせて修正することが望ましい。
その後、サブランス投入時点での溶湯温度及び溶湯中炭素濃度の測定値と、終点での溶湯温度の目標値及び終点での目標炭素濃度とを対比して、途中サブランス投入時点から吹錬終点までの投入酸素量及び酸化鉄などの冷却材または昇熱材の投入量を決定し、決定した量の酸素及び冷却材または昇熱材を投入して精錬を終了する。更に、副原料の投入実績量、炉内スラグ中のFeO濃度の推移、及び、サブランス投入時点の実績溶湯温度を用いて推定される溶湯中の燐濃度を参照して吹錬終了までの吹錬時間を調整することが望ましい。
尚、本発明の脱炭精錬を実施するにあたり、鉄源として溶銑以外に鉄スクラップを装入しても構わず、生石灰や焼成ドロマイトなどの造滓剤、鉄鉱石や焼結鉱などの冷却材或いはコークスなどの昇熱材は通常の操業条件に準じて行うものとする。
このように、酸素バランスからスラグ中FeO濃度を推定して制御することにより、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定化することが可能となる。更に、好ましくは、炭素バランスから推定される炭素濃度が0.18〜0.30質量%の範囲内となった時点でサブランスを投入して溶銑16を脱炭精錬することで、酸素ガスを過剰に供給することなく、また、脱炭精錬時間を延長することなく、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定することが実現され、脱酸剤の使用量削減や鉄歩留りの向上が可能となる。
図1に示す転炉設備を用いて、本発明に係る溶銑の脱炭精錬(本発明例1,2)と、スラグ中のFeO濃度を調整しない従来法による脱炭精錬(比較例1、2、3)と、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるFeO濃度を調整しないで、途中サブランス以降のFeO濃度の制御を行った従来法の脱炭精錬(比較例4)とを、それぞれ100チャージずつ実施した。精錬終了時の溶湯中燐濃度の上限値は0.015質量%であり、この値を超えた場合には、燐外れとなる。
本発明例1においては、(6)式のα、β及び(12)式のγ、δ、ε、η、κは、以下のとおりの値を用いた。βは、炭材を使用しなかった50チャージについて、(6)式から計算される途中サブランス投入時点の推定炭素濃度と実績炭素濃度とが一致するように、β=1.02とした。αについては、炭材を使用した50チャージについて、β=1.02を用いて(6)式から計算される途中サブランス投入時点の推定炭素濃度と実績炭素濃度とが一致するように、α=0.75とした。また、(12)式のγ、δ、ε、η、κは、それぞれγ=1.2、δ=2.5、ε=1.3、η=18200、κ=-16.3として、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点における炉内スラグのFeO濃度のガイドライン指示値を算出した。これらの値は以下のようにして決定した。即ち、別途行った吹錬100チャージに関して、(12)式から計算される途中サブランス時点の推定Lと(10)式から決定される実績Lとが一致するように予め定めた値を用いた。
また、本発明例2においては、α、βに関しては本発明例1と同じ値を用い、(14)式のa〜nのパラメーターには、(%FeO)40%、〔P〕途中及びその他の変数の実績データを用いた重回帰分析結果に基づいて算出した以下の値を用いて、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点における炉内スラグのFeO濃度のガイドライン指示値(%FeO)’40%を算出した。
即ち、a=1524、b=0.8059、c=540.7、d=0.008194、e=0.0002552、 f=1.493、 g=19.27、h=0.003267、i=−0.004291、j=0.149、k=0.0001309、l=−0.0002498、m=−0.9214、n=−0.001430とした。
本発明例1、2では、スラグ中のFeO濃度を逐次推定し、推定したスラグ中のFeO濃度に照らし合わせ、表1の範囲内で、上吹き酸素ガス流量、ランス高さ、底吹きガス流量のうちの少なくとも何れか1つまたは2以上を調整して、酸素吹錬開始時から精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中のFeO濃度を、吹錬進行度が40%時点でのガイドライン指示値の1.0倍から3.0倍の範囲に調整し、吹錬進行度が80%の時点までは、ガイドライン指示値の1.0倍から3.0倍の範囲に制御した。また、排ガスの情報を用いた炭素バランスに基づいて、溶湯中炭素濃度が0.20質量%となったと推定された時点で、サブランスを投入して溶湯温度及び溶湯中炭素濃度を測定した。
比較例1は、スラグ中のFeO濃度を考慮することなく操業した結果、精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中のFeO濃度がガイドライン指示値の3.0倍を超え、且つ、精錬進行度が40%の時点から精錬進行度が100%の時点までの大半でスラグ中のFeO濃度がガイドライン指示値の3.0倍を超えた操業の群である。
比較例2は、スラグ中のFeO濃度を考慮することなく操業した結果、精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中のFeO濃度はガイドライン指示値未満であったが、精錬進行度が40%を超えた以降から精錬進行度が約90%の時点まで、スラグ中のFeO濃度がガイドライン指示値の1.0倍から3.0倍の範囲内となった操業の群である。
図3に、本発明例1の一例、比較例1の一例、比較例2の一例における途中サブランス投入の時期を「下向き矢印」で示す。本発明例1では溶湯中炭素濃度がほぼ0.20質量%の時点でサブランスが投入されているが、炭素バランスに基づかずにサブランスを投入した比較例1、比較例2では、溶湯中炭素濃度が0.20質量%の時点でサブランスを投入する予定であったが、実際には溶湯中炭素濃度が0.20質量%の時点よりも外れた時点で投入されていた。
図3に示すチャージと同一チャージの本発明例1、比較例1及び比較例2におけるスラグ中のFeO濃度の推移の例を図4に示す。尚、図4は、本発明例1、比較例1及び比較例2ともに、吹錬進行度が40%時点でのFeO濃度のガイドライン指示値が7.4質量%で等しい場合を抽出して示したものであり、終点におけるスラグ中FeO濃度が30質量%になった例である。また、図4において、スラグ中のFeO濃度は折れ線で示されるが、これは、スラグ中のFeO濃度を或る時間間隔で推定し、それぞれの推定値を直線で結んだことによる。図4に示す比較例1は、精錬中にスロッピングが発生した例で、比較例2は、終点時に燐外れとなった例である。
比較例3では、スラグ中のFeO濃度を考慮することなく従来の操業を行った。副原料中のCaO原単位は、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び目標温度などに応じて経験的に設定したが、平均値としては本発明例1、2の場合と同程度であった。途中サブランスは、経験的に得られている酸素の反応効率などから炭素の物質収支を推定して、溶湯中炭素濃度が0.20質量%となると予想される時点で投入し、溶湯温度及び溶湯中炭素濃度を測定した。測定された溶湯温度、炭素濃度と、終点の目標温度、目標燐濃度に応じて、サブランス投入から脱炭精錬終了までに脱燐のために必要な酸素量を、経験的に把握されている関係から求め、更に溶湯温度の調節が必要な場合は、冷却材または昇熱材の投入量を決定し、決定した量の酸素及び冷却材または昇熱材を投入して精錬を終了した。
比較例4では、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるFeO濃度については調整を行わず、本発明例1、2と同様にして算出されるガイドライン指示値よりも低く推移させた後、排ガスとの炭素の物質収支から推定される溶湯中炭素濃度が0.20質量%の時点を目標に投入される途中サブランス以降において、(5)式によって逐次推定されるスラグ中のFeO濃度を15〜30質量%に調整するように、ランス高さ及び底吹きガス流量を調整した。途中サブランスで測定された溶湯温度、炭素濃度と、終点の目標温度、目標燐濃度に応じて、サブランス投入から脱炭精錬終了までに脱燐のために必要な酸素量を、比較例4の方法において経験的に把握されている関係から求め、更に溶湯温度の調節が必要な場合は、冷却材または昇熱材の投入量を決定し、決定した量の酸素及び冷却材または昇熱材を投入して精錬を終了した。
本発明例1、2及び比較例3、4における操業結果の平均値を表4に示す。表4に示す「燐濃度の外れ率」とは、燐外れの発生したチャージの比率を示している。尚、表4に示す比較例3は、比較例1及び比較例2を含むものである。
Figure 2013060659
表4に示すように、比較例4では途中サブランス以降のFeO濃度の制御を行ったことにより、FeO濃度の制御を行わない比較例3に比べて終点燐濃度のバラツキ及び外れ率が低減するが、完全なものではなかった。途中サブランス投入時点での溶湯中燐濃度が本発明例1、2に比べて高くバラツキも大きいため、脱燐のために途中サブランス投入後に供給する酸素量を低減することができず、結果的に終点炭素濃度が比較例3と同程度に低減し、脱酸剤などの溶製コストを削減することはできなかった。
本発明を適用することにより、脱炭精錬における燐外れが回避され、且つ、途中サブランス投入時点の溶湯中燐濃度を低位に制御することができ、また途中サブランスを一定の炭素濃度のタイミングで投入可能であることから、酸素を過剰に供給することなく終点の溶湯中炭素濃度を比較的高位に制御でき、更に、終点での溶湯中燐濃度も安定的に低減できることが確認できた。
1 転炉本体
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 煙道
5 スカート
6 ホッパー
7 投入シュート
8 一次集塵機
9 二次集塵機
10 PAダンパー
11 排ガス流量計
12 誘引送風機
13 ガス採取プローブ
14 ガス分析装置
15 演算装置
16 溶銑
17 スラグ

Claims (4)

  1. 上吹きランスから酸素ガスを供給するとともに底吹き羽口から攪拌用ガスを吹き込んで溶銑を転炉にて脱炭精錬するにあたり、
    上吹きランスからの酸素ガス流量、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料投入量及び溶湯成分を用いて酸素バランスを逐次計算することにより求められる不明酸素量に基づいて炉内スラグ中のFeO濃度を推定し、
    推定したFeO濃度の推移に照らし合わせて、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランスのランス高さ、底吹き羽口からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、
    この調整により、全酸素ガス供給量の設定量の40体積%の酸素ガス量を供給する時点における炉内スラグ中のFeO濃度を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び脱炭精錬終了時の目標温度から目標値として算出されるFeO濃度の1.0倍〜3.0倍の値に調整し、
    その後、溶湯中炭素濃度が所定値となった時点にサブランスを溶湯に投入して溶湯温度を測定し、
    サブランスによる溶湯温度の測定値と終点での溶湯温度の目標値とを対比して、その後の酸素ガス供給量を決定することを特徴とする、転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
  2. 前記目標値として算出されるFeO濃度を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び目標温度、並びに、前チャージの吹錬終了から当該チャージの吹錬開始までの非製鋼時間を用いて演算した変数による回帰分析に基づいて算出することを特徴とする、請求項1に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
  3. 前記目標値として算出されるFeO濃度を、副原料の設定投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量、脱炭精錬終了時の目標燐濃度及び目標温度、並びに、途中サブランス投入時点から吹錬終了までの設定時間を用いて算出される燐分配比に基づいて算出することを特徴とする、請求項1に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
  4. 前記溶湯中炭素濃度が所定値となった時点を、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料の投入量及び成分、装入溶銑及び装入鉄スクラップの成分、溶銑及び鉄スクラップの装入量を用いて炭素バランスを逐次計算することにより求められる溶湯中炭素濃度の計算値に基づいて判定することを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
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