JP2013052604A - 耐熱両面金属積層板、これを用いた耐熱透明フィルム、及び耐熱透明回路基板 - Google Patents

耐熱両面金属積層板、これを用いた耐熱透明フィルム、及び耐熱透明回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリイミドフィルムの両面に金属層を有し、金属との接着性が良好であり、半田による作業時にも寸法変化等がなく、かつ金属層のエッチングを行った場合にも寸法変化の少ない、耐熱両面金属積層板を得ることを目的とする。
【解決手段】金属箔と、特定のブロックポリアミド酸イミド及び溶剤を含有するブロックポリアミド酸イミド溶液を、前記金属箔上に塗布し、加熱乾燥して得られる第1層と、特定のポリアミド酸及び溶剤を含むポリアミド酸溶液を、前記第1層上に塗布し、加熱乾燥させて得られる第2層と、を有する積層体を2枚準備し、前記第2層同士を対向させた後、250〜300℃で加熱圧着することにより得られる、耐熱両面金属積層板とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐熱両面金属積層板、これを用いた耐熱透明フィルム、及び耐熱透明回路基板に関する。詳しくは、シクロヘキサンジアミンユニットを含むポリイミドブロックと他のポリイミドブロックとを含むポリイミドからなる層の両面に、金属箔が積層された耐熱両面金属積層板、これを用いた耐熱透明フィルム、及び耐熱透明回路基板に関する。
ポリイミドは一般的に、他の汎用樹脂やエンジニアリングプラスチックと比べて、優れた耐熱性、機械特性、電気特性を有している。そのため、成形材料、複合材料、電気・電子材料、光学材料などとして、様々な用途で幅広く用いられている。特に、フレキシブルプリント基板などとして用いられる、金属箔とポリイミド層とを有するポリイミド金属積層体は、その反りが低減されている必要がある。
例えば、優れたフィルム透明性を有し、熱膨張係数(CTE)や引張弾性率が良好なポリイミドとして、シクロヘキサンジアミンと他のジアミンとを、ブロック共重合させたブロックポリイミドが開示されている(特許文献1)。
ここで近年、電子機器の小型携帯化に伴い、回路基板材料として部品、素子の高密度実装が可能なポリイミド金属積層板の利用が増大している。そして、さらなる高密度化に対応するため、配線幅が10〜50μmとなる微細パターンの加工に適するポリイミド金属積層板が望まれている。さらに配線の信頼性の観点から、金属とポリイミド間の密着性の指標であるピール強度が高いことが必要とされている。また、微細パターンの加工では、TABやCOF(チップオンフィルム)と呼ばれる部品、素子の実装方式が主流であるが、実装時に金−金接合、金−錫接合と呼ばれる300〜500℃程度の高温接合が必要である。さらに環境面への配慮から、部品、素子の実装を、鉛を含まない半田で行うことが求められている。そのため、実装時の温度や、特にリペアと呼ばれる部品、素子の取り外し作業時の温度がより高温になってきている。このような背景から、ポリイミド金属積層板は微細加工性、回路信頼性(ピール強度や高温時の耐熱性)がますます重要になってきている。また、金属箔とポリイミドとの接着性を高めるため、金属箔を粗化処理すること等も行われているが、この場合、金属のエッチング残りが生じやすく、配線間でショートしやすいという問題がある。
そこで、低粗度の金属箔と高い接着性を有するポリイミドが求められている。例えば低粗度の金属箔と積層するのに好適なポリイミドとして、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ジアミベンゾフェノンからなる群から選ばれた少なくとも一種のジアミンと、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれた少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物からなるポリイミドが開示されている(特許文献2参照)。これらを主成分とした場合のポリイミド金属積層板のピール強度は非常に高く、従来用途には十分利用できる。ただし、高温で部品や素子を実装した際に、変形や剥離といった問題が発生する場合がある。そのため、より高温で部品や素子を実装する用途に適したポリイミド金属積層板の開発が望まれていた。
国際公開第2010/113412号パンフレット 特開2000−052483号公報
本発明の目的は、ポリイミドフィルムの両面に金属箔を有し、金属箔との接着性が良好であり、かつ高温で部品や素子を実装した際や、金属箔のエッチングを行った際に寸法変化が少ない、耐熱両面金属積層板を提供することにある。
本発明は、金属箔と、シクロヘキサンジアミンユニットを含むブロックポリイミド層と、熱可塑性ポリイミド層とをこの順に積層した積層体を2枚作成し、これらの積層体を、熱可塑性ポリイミド層同士を対向させて、所定の温度で加熱圧着して耐熱両面金属積層板とすることで、金属層とブロックポリイミド層との間のピール強度に優れ、さらに高温での寸法安定性や、エッチング後の寸法安定性に優れた耐熱両面金属積層板とし得ることを見出し、完成させたものである。
すなわち、本発明の第一は、以下に示す耐熱両面金属積層板に関する。
[1]金属箔と、下記式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと下記式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含むブロックポリアミド酸イミド及び溶剤を含有するブロックポリアミド酸イミド溶液を、前記金属箔上に塗布し、加熱乾燥して得られる第1層と、ガラス転移温度が150〜250℃であり、かつ下記式(2)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸及び溶剤を含むポリアミド酸溶液を、前記第1層上に塗布し、加熱乾燥して得られる第2層と、を有する積層体を2枚準備し、前記第2層同士を対向させて、250〜300℃で加熱圧着することにより得られる、耐熱両面金属積層板。
Figure 2013052604
(式(1A)または式(1B)において、
mは、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
nは、式(1B)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
かつmの平均値:nの平均値=1:9〜9:1であり、
およびRはそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロへキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
Figure 2013052604
(式(2)において、
は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
[2]前記ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜の加熱乾燥時の環境雰囲気における酸素濃度が1%以下である、[1]に記載の耐熱両面金属積層板。
[3]前記ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜の加熱乾燥時の、150〜300℃の温度範囲における平均昇温速度が、0.25〜50℃/分であることを特徴とする[1]または[2]に記載の耐熱両面金属積層板。
[4]前記金属箔が、表面の10点平均粗さ(Rz)が3μm以下である銅箔である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の耐熱両面金属積層板。
[5]前記金属箔と前記第1層との間のピール強度が0.5kN/m以上であり、260℃の半田に10秒間浴浸した後に形態変化がなく、前記金属箔のエッチング後の寸法変化率が0.2%以下であり、前記金属箔のエッチング後の全光線透過率が80%以上である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の耐熱両面金属積層板。
[6]第1金属箔と、第1ブロックポリイミド層と、熱可塑性ポリイミド層と、第2ブロックポリイミド層と、第2金属箔とがこの順に積層された耐熱両面金属積層板であって、前記第1ブロックポリイミド層及び前記第2ブロックポリイミド層が、下記式(3A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、下記式(3B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含むポリイミドからなり、前記熱可塑性ポリイミド層が、ガラス転移温度が150〜250℃であり、かつ下記式(4)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドからなり、前記金属箔が、表面の10点平均粗さ(Rz)が3μm以下である銅箔であり、前記第1金属箔と前記第1ブロックポリイミド層とのピール強度、及び前記第2金属箔と前記第2ブロックポリイミド層とのピール強度がいずれも0.5kN/m以上である、耐熱両面金属積層板。
Figure 2013052604
(式(3A)または式(3B)において、
mは、式(3A)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
nは、式(3B)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
かつmの平均値:nの平均値=1:9〜9:1であり、
およびRはそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロへキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
Figure 2013052604
(式(4)において、
は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
10はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
本発明の第二は、以下に示す耐熱透明フィルムまたは耐熱透明回路基板に関する。
[7]前述の[1]〜[6]のいずれかに記載の耐熱両面金属積層板をエッチングすることにより得られる耐熱透明フィルム。
[8]前述の[1]〜[6]のいずれかに記載の耐熱両面金属積層板をエッチングすることにより得られる耐熱透明回路基板。
本発明では、シクロヘキサンジアミンユニットを含むブロックポリイミド層と、熱可塑性ポリイミド層とをこの順に積層した積層体を2枚作成し、これらの積層体を、熱可塑性ポリイミド層同士を対向させて、所定の温度で加熱圧着して耐熱両面金属積層板とする。したがって、ブロックポリイミド層と金属箔との密着性を高いものとし得る。さらに、シクロヘキサンジアミンユニットを含むブロックポリイミド層を含むことから、金属箔を除去した後のポリイミドフィルムの光透過率が高く、かつエッチング後や高温で素子を実装する際等にも高い寸法安定性を有する、耐熱両面金属積層板とし得る。
本発明の耐熱両面金属積層板の構造の一例を示す断面図である。
本発明の耐熱両面金属積層板は、特定の方法で製造される。すなわち、金属箔と、特定のブロックポリアミド酸イミドを含むブロックポリアミド酸イミド溶液を塗布・乾燥して得られる第1層と、特定のポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液を塗布・乾燥して得られる第2層とが、この順に積層された積層体を2枚準備し、これらの第2層同士を対向させ、所定の温度で加熱圧着して得られるものである。
(第1層)
第1層は、ブロックポリアミド酸イミド及び溶剤を含有するブロックポリアミド酸イミド溶液を、金属箔上に塗布後、加熱乾燥して得られる。
ブロックポリアミド酸イミド溶液を金属箔上に塗布する方法としては、ブロックポリアミド酸イミド溶液の粘度等に応じて適宜選択され、例えばダイコーター、コンマコーター、ロールコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等の公知の方法が採用できる。
ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜を加熱乾燥する方法としては、通常の加熱乾燥炉を用い得る。乾燥炉の雰囲気としては、空気、イナートガス(窒素、アルゴン)等が利用できるが、環境雰囲気における酸素濃度を1%以下とすることが好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。環境雰囲気中の酸素濃度が高いと、得られる第1層が、着色する等して、全光線透過率が低下する場合がある。
また、ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜の加熱乾燥は、一定温度で行ってもよいが、塗膜の温度を、緩やかに昇温させながら加熱乾燥を行うことが好ましい。急激にブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜を昇温させると、表面に発泡や、イミド化反応に伴う白化が生じたり、得られる耐熱両面金属積層板の寸法安定性が低下する可能性がある。
本発明では、塗膜乾燥時の平均昇温速度を、150℃〜300℃の温度範囲で、0.25〜50℃/分とすることが好ましく、1〜25℃/分がより好ましく、2〜10℃/分がさらに好ましい。上記温度範囲における昇温速度は、一定としてもよく、2段階以上に変えてもよい。2段階以上に変える場合には、各昇温速度を0.25℃/分以上、50℃/分以下とすることが好ましい。ただし、昇温速度の平均値が前記範囲である限り、一時的にこの範囲外としてもよい。さらに、昇温は、連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、連続的とすることが、第1層の外観不良やイミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。なお、塗膜は必ずしも300℃まで加熱する必要はない。昇温終了温度が300℃未満である場合、150℃から、その昇温終了温度までの範囲における平均昇温速度を0.25〜50℃/分とすることが好ましい。
昇温終了温度は、通常230〜300℃が好ましく、より好ましくは250〜270℃である。塗膜の昇温終了温度が高すぎる場合には、金属箔が酸化劣化する可能性がある。一方、昇温終了温度が低すぎる場合には、塗膜の乾燥に時間がかかり、製造効率等の面から好ましくない。
上記平均昇温速度で昇温後、一定温度でさらに塗膜の加熱乾燥を行い、ブロックポリアミド酸イミド中のポリアミド酸をイミド化してもよい。
第1層の厚みは、耐熱両面金属積層板の用途等に応じて適宜選択され、乾燥後の膜厚が1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。
第1層の100〜200℃の範囲での熱膨張係数(CTE)は低いことが好ましい。例えば金属箔として銅箔を用いる場合、20ppm/K以下であることが好ましく、好ましくは17ppm/K以下であることがより好ましい。第1層の熱膨張係数が高いと、耐熱両面金属積層板の高温での反りが大きくなったり、寸法安定性が低下する可能性がある。第1層の熱膨張係数は、ブロックポリアミド酸イミド中のシクロヘキサンジアミンユニットの量を増やすことで低下させることができる。
第1層のガラス転移温度(Tg)は、260〜350℃であることが好ましい。第1層のTgが低いと、耐熱両面金属積層板の耐熱性が不十分となる場合がある。第1層のガラス転移温度は、ブロックポリアミド酸イミド中のシクロヘキサンジアミンユニットの量等で調整し得る。
・ブロックポリアミド酸イミド酸溶液
上述の第1層の形成に使用する上記ブロックポリアミド酸イミド溶液は、ブロックポリアミド酸イミド、及び溶剤を含有する。
(i)ブロックポリアミド酸イミド
ブロックポリアミド酸イミドは、下記式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、下記式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを有する。
Figure 2013052604
式(1A)と式(1B)におけるmとnは、各ブロックにおける繰返し構造単位の繰返し数を示す。mの平均値とnの平均値は、それぞれ独立して2〜1000であることが好ましく、5〜500であることがさらに好ましい。mの平均値とは、ブロックポリアミド酸イミドに含まれる式(1A)で表される繰返し構造単位の総数を、式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックの総数で割った値である。nの平均値とは、ブロックポリアミド酸イミドに含まれる式(1B)で表される繰返し構造単位の総数を、式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックの総数で割った値である。
さらに、mとnの比率は、mの平均値:nの平均値=9:1〜1:9であることが好ましく、mの平均値:nの平均値=8:2〜2:8であることがより好ましい。式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数mの割合が一定以上であると、ブロックポリアミド酸イミドを脱水縮合して得られるブロックポリイミドの熱膨張係数が小さくなる。また、繰返し数mの割合が一定以上であると、ブロックポリイミドの可視光透過率も高まる。一方、シクロヘキサンジアミンは一般的に高価であるため、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数mの割合を小さくすると、低コスト化が図られる。
ブロックポリアミド酸イミドに含まれる、式(1A)で表される繰返し構造単位の総数と、式(1B)で表される繰返し構造単位の総数との比も、(1A):(1B)=9:1〜1:9であることが好ましく、(1A):(1B)=8:2〜2:8であることがより好ましい。
さらに、本発明のブロックポリアミド酸イミドに含まれる、式(1A)で表される全てのブロックにおいて、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数が、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また、ブロックポリアミド酸イミド製造時のポリアミド酸オリゴマーとポリイミドオリゴマーとの相溶性という観点からは、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数は50以下であることが好ましい。ブロックポリイミドに含まれる式(1A)で表されるブロックの全てが、一定数以上の繰返し構造単位を含むことで、そのブロック由来の特性が得られやすくなる。すなわち、式(1A)で表されるブロックの全てが一定数以上の繰返し構造単位を含むことで、上記式(1A)で表される繰返し構造単位がランダムに含まれる場合と比較して、シクロヘキサンジアミン由来の特性、特に低熱膨張係数を発現しやすい。
また式(1A)におけるシクロヘキサン骨格は、式(1A-1)で表されるトランス体と、式(1A-2)で表されるシス体とを有する。
Figure 2013052604
式(1A)におけるシクロヘキサン骨格のトランス体とシス体との比率は、トランス体:シス体=10:0〜5:5であることが好ましく、トランス体:シス体=10:0〜7:3であることがより好ましい。
式(1A)におけるRは4価の基を示す。Rは、炭素数4〜27であることが好ましい。さらにRは、脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか;環式脂肪族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか;または芳香族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。
式(1A)におけるRは、テトラカルボン酸二無水物から誘導される基であり、テトラカルボン酸二無水物は、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物または脂環族テトラカルボン酸二無水物でありうる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4'-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、4,4'-イソフタロイルジフタリックアンハイドライドジアゾジフェニルメタン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、ジアゾジフェニルメタン-2,2',3,3'-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-チオキサントンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラキノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-キサントンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
脂環族テトラカルボン酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸-6-酢酸二無水物、1-メチル-3-エチルシクロヘキサ-1-エン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ-1,4,5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-テトラリン-1,2-ジカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
テトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、芳香環上の水素原子の一部もしくは全ては、フルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロメトキシ基などから選ばれる基で置換されていてもよい。また、テトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、目的に応じて、エチニル基、ベンゾシクロブテン-4'-イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、ニトリロ基、及びイソプロペニル基などから選ばれる架橋点となる基を有していてもよい。テトラカルボン酸二無水物には、好ましくは成形加工性を損なわない範囲内で、ビニレン基、ビニリデン基、およびエチニリデン基などの架橋点となる基を、主鎖骨格中に組み込まれていてもよい。
なお、テトラカルボン酸二無水物の一部は、ヘキサカルボン酸三無水物類、オクタカルボン酸四無水物類であってもよい。ポリアミドまたはポリイミドに分岐を導入するためである。
これらテトラカルボン酸二無水物は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(1B)におけるRは1,4−シクロヘキシレン基以外の2価の基を示す。Rの炭素数は4〜51であることが好ましい。さらにRは、脂肪族基、単環式脂肪族基(ただし、1,4−シクロヘキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか;環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか;または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。
式(1B)におけるRは、ジアミンから誘導される基であり、ジアミンはポリアミド酸やポリイミドを製造できる限り特に制限されない。
ジアミンの第一の例は、ベンゼン環を有するジアミンである。ベンゼン環を有するジアミンの例には、
<1>p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミンなどのベンゼン環を1つ有するジアミン;
<2>3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタンなどのベンゼン環を2つ有するジアミン;
<3>1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジンなどのベンゼン環を3つ有するジアミン;
<4>4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン環を4つ有するジアミン;
<5>1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼンなどのベンゼン環を5つ有するジアミン;
<6>4,4'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホンなどのベンゼン環を6つ有するジアミンが含まれる。
ジアミンの第二の例には、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノンなどの芳香族置換基を有するジアミンが含まれる。
ジアミンの第三の例には、6,6'-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダン、6,6'-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダンなどのスピロビインダン環を有するジアミンが含まれる。
ジアミンの第四の例には、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサンなどのシロキサンジアミン類が含まれる。
ジアミンの第五の例には、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス[2-(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2-ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテルなどのエチレングリコールジアミン類が含まれる。
ジアミンの第六の例には、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンなどのアルキレンジアミン類が含まれる。
ジアミンの第七の例には、シクロブタンジアミン、ジ(アミノメチル)シクロヘキサン〔トランス-1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを含むビス(アミノメチル)シクロヘキサン〕、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン(ノルボルナンジアミンなどのノルボルナンジアミン類を含む)、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン(オキサノルボルナンジアミンを含む)、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン〔またはメチレンビス(シクロヘキシルアミン)〕、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデンなどの脂環族ジアミン類などが含まれる。
式(1B)におけるRは4価の基であり、テトラカルボン酸二無水物由来の基である。Rの例には、式(1A)におけるRと同様の基が含まれる。
(ii)ブロックポリアミド酸イミドの製造方法
ブロックポリアミド酸イミドは、前記式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸(ポリアミド酸オリゴマー)と、前記式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミド(ポリイミドオリゴマー)とを反応させることによって得ることができる。当該反応は、溶媒中で行うことが好ましく、非プロトン性の極性溶媒中で行うことがより好ましい。非プロトン性の極性溶媒に、(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸オリゴマーは通常溶解し得る。そこで、式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドが非プロトン性極性溶媒に溶解できれば、これらを均一に混合することができ、容易にブロックポリアミド酸イミドを得ることができる。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば非プロトン性アミド系溶媒が挙げられ;非プロトン性アミド系溶媒の例には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2−ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミドなどが含まれ;これらアミド系溶媒の中でも、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンである。溶解するとは、溶解量が10g/l以上であり、好ましくは100g/l以上であることを意味する。
なお、上記ポリアミド酸(ポリアミド酸オリゴマー)と上記ポリイミド(ポリイミドオリゴマー)との反応に際して、式(1A)で表されるポリアミド酸オリゴマーの末端を、酸無水物末端としたり;式(1B)で表されるポリイミドオリゴマーの末端を、アミン末端としたりすると、加熱イミド化反応においてゲル化しやすい。ゲル化の原因は明確ではないが、過剰なアミン部分や酸無水物構造が、イミド結合以外の余剰な結合を形成し、架橋構造が形成されるからであると推定される。したがって、下記式(1A’)で表されるアミン末端のポリアミド酸オリゴマーと、下記式(1B’)で表される酸無水物末端のポリイミドオリゴマーとを反応させて、ポリアミド酸イミドとすることが好ましい。
Figure 2013052604
式(1A’)におけるRは、前記式(1A)におけるRと同様に定義される4価の基である。また式(1B’)におけるR及びRは、それぞれ前記式(1B)におけるR及びRと同様に定義される2価の基または4価の基である。
上記式(1A’)で表されるポリアミド酸オリゴマーは、下記式(5)で示される1,4-シクロヘキサンジアミンと、下記式(6)で示されるテトラカルボン酸二無水物との脱水重縮合反応により得られる。ここで、脱水重縮合反応させる式(5)のジアミンのモル数に対する、式(6)のテトラカルボン酸二無水物のモル数の比率(式(6)のテトラカルボン酸二無水物/式(5)のジアミン)は、0.5以上であって1.0未満であることが好ましく、0.7以上であって1未満であることがより好ましい。分子量が適切に制御されたアミン末端ポリアミド酸オリゴマーを得るためである。
Figure 2013052604
式(6)におけるRは、前記式(1A)におけるRと同様に定義される4価の基である。
上記式(1B’)で表されるポリイミドオリゴマーは、下記式(7)で示されるジアミンと、下記式(8)で示されるテトラカルボン酸二無水物との脱水縮合反応およびイミド化反応により得られる。ここで脱水縮合反応させる式(8)のテトラカルボン酸二無水物のモル数に対する、式(7)のジアミンのモル数の比率(式(7)のジアミン/式(8)のテトラカルボン酸二無水物)は、0.5以上であって1.0未満であることが好ましく、0.7以上であって1未満であることがより好ましい。分子量が適切に制御された酸無水物末端のポリイミドオリゴマーを得るためである。
Figure 2013052604
式(7)及び(8)におけるR及びRは、それぞれ前記式(1B)におけるR及びRと同様に定義される2価の基または4価の基である。
ジアミンと、テトラカルボン酸二無水物との脱水縮合反応は、反応溶媒中で行うことが好ましく;反応溶媒は、非プロトン性極性溶媒または水溶性アルコール系溶媒などでありうるが、好ましくは非プロトン性極性溶媒である。非プロトン性極性溶媒の例には、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等;エーテル系化合物である、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが含まれる。水溶性アルコール系溶媒の例には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ジアセトンアルコールなどが含まれる。
脱水縮合反応の溶媒は、これらの溶剤を単独、もしくは二種以上を混合して用いることができる。なかでも、溶媒の好ましい例には、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンもしくはこれらの組み合わせが含まれる。
式(1A)で構成されるポリアミド酸オリゴマー(好ましくは式(1A’)で示される)と、式(1B)で構成されるポリイミドオリゴマー(好ましくは式(1B’)で示される)とを、非プロトン性極性溶媒中で混合して、ブロックポリアミド酸イミドを得る。非プロトン性極性溶媒は、式(1B)で構成されるポリイミドオリゴマーを溶解させればよく特に限定されず、前述のジアミンと、テトラカルボン酸二無水物との脱水縮合反応に用いる溶媒が挙げられ、例えばN-メチル-2-ピロリドンなどでありうる。混合方法には、例えば、スリーワンモータ、ホモミキサ、プラネタリミキサ、ホモジナイザ、高粘度材料撹拌脱泡ミキサなどによる混合があり、10〜150℃の範囲で加温しながら混練してもよい。
(iii)溶剤
ブロックポリアミド酸イミド溶液に用いる溶剤は、上述のポリアミド酸イミドを製造する際に使用する溶媒、すなわち非プロトン性極性溶媒等を用い得る。
ブロックポリアミド酸イミド溶液の固形分濃度は、粘度等に応じて適宜選択される。ブロックポリアミド酸イミド溶液の固形分濃度は5〜70重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。
また、ブロックポリアミド酸イミド溶液の粘度は、金属箔への塗布性を考慮して、0.1〜100Pa・sが好ましく、より好ましくは0.5〜50Pa・sである。上記粘度は、25℃におけるE型粘度により測定される粘度であり、上記溶剤量等で調整し得る。
・金属箔
本発明に用いる金属箔の金属種は特に限定はないが、例として銅及び銅合金、ステンレス鋼及びその合金、ニッケル及びニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられる。好ましくは銅及び銅合金である。また、これらの金属表面に防錆層や耐熱層(例えば、クロム、亜鉛などのメッキ処理)などを形成したもの、もしくはシランカップリング剤処理を施したものも利用できる。好ましくは銅および/または、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、コバルト、モリブテン、タングステン、バナジウム、ベリリウム、チタン、スズ、マンガン、アルミニウム、燐、珪素等のうち、少なくとも1種以上の成分と銅を含む銅合金である。特に望ましい金属箔としては圧延または電解メッキ法によって形成された銅箔であり、その好ましい厚さは3〜150μm、更に好ましくは3〜35μm、より好ましくは3〜12μmである。
該金属箔は両面共に如何なる粗化処理も施されていないものであっても、片面若しくは両面に粗化処理が施されていても良いが、好ましくは低粗度または無粗化処理箔が好ましく、具体的に使用可能な市販品の例として、F1−WS、F0−WS(古河電気工業社製 商品名)、BHY、NK120(JX日鉱日石金属社製 商品名)、SLP、USLP(日本電解社製 商品名)、TQ−VLP、SQ-VLP、FQ-VLP、NA−DFF(三井金属鉱業社製 商品名)、C7025、B52(オーリン社製 商品名)等が挙げられる。
また、ポリイミド層に接する金属箔の表面の10点平均粗さ(Rz)が、3μm未満であることが好ましく、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下であり、その裏面が3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下であることが望まれる。
表面の10点平均粗さ(Rz)は、JIS B-0601に規定される方法であり、カットオフ値0.25mm、測定長さ2.5mmとし、金属箔の幅方向に向かって測定を行う方法である。
更に金属箔のポリイミド層に接する面の表面に、ニッケルが0.05〜1.0mg/dm、好ましくは0.1〜0.4mg/dm、亜鉛が0.5mg/dm以下、好ましくは0mg/dm以上0.3mg/dm以下、より好ましくは0mg/dm2以上0.2mg/dm以下、クロムが0.2mg/dm以下、好ましくは0mg/dm以上0.1mg/dm以下、珪素が0.2mg/dm以下、好ましくは0mg/dm以上0.1mg/dm以下それぞれ付着していることが、回路の信頼性の面で望ましい。また、ポリイミド層に接しない面にも、ニッケルや亜鉛メッキ、更にクロメート処理が施されていることが好ましい。
ここで珪素はポリイミドとの密着を高める目的で施されるシランカップリング剤由来のものである。このシランカップリング剤は、金属箔表面処理の最表層にアルコールや水に溶解させたものを均一に塗布し、その後50〜150℃程度で乾燥し形成させることが一般的で、その種類も、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、β-(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系などが代表的であるが、これらに限定されるものではない。
(第2層)
第2層は、前述の第1層上に、特定のポリアミド酸及び溶剤を含むポリアミド酸溶液を塗布し、加熱乾燥して作製し得る。
ポリアミド酸溶液を第1層上に塗布する方法としては、ポリアミド酸溶液の粘度等に応じて適宜選択され、第1層の形成時と同様の、公知の方法が採用できる。
また塗布したポリアミド酸溶液の加熱乾燥方法としては、通常の加熱乾燥炉を用い得る。乾燥炉の雰囲気としては、空気、イナートガス(窒素、アルゴン)等が利用できる。第2層の加熱乾燥時にも、酸素濃度を1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。酸素濃度が高いと、得られる第2層が、着色する等、全光線透過率が低下することがある。
また、ポリアミド酸溶液の塗膜の加熱乾燥は、一定温度で行ってもよく、段階(逐次的)に昇温させてもよく、また連続的に昇温させてもよい。当該加熱乾燥によってポリアミド酸をイミド化してもよい。
第2層の厚みは、耐熱両面金属積層板の用途等に応じて適宜選択され、乾燥後の膜厚が0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。
第2層のガラス転移温度は、150〜250℃であり、好ましくは180〜230℃、より好ましくは200〜225℃である。ガラス転移温度が高いと、後述するように、金属箔、第1層、及び第2層をこの順に有する積層体を2枚作製し、これらの第2層同士を対向させて加熱圧着する際の温度を高温にする必要が生じる。またガラス転移温度が低過ぎる場合には、耐熱両面金属積層板の耐熱性が不十分となる可能性がある。
・ポリアミド酸溶液
上述の第2層の形成に使用する上記ポリアミド酸溶液は、ポリアミド酸、及び溶剤を含有する。
(i)ポリアミド酸
上記ポリアミド酸溶液に含まれるポリアミド酸は、下記式(2)で表される繰返し構造単位で構成される。
Figure 2013052604
式(2)におけるRは、ジアミンから誘導される基であり、ジアミンはポリアミド酸やポリイミドを製造できる限り特に制限されない。
ジアミンは、ベンゼン環を有するジアミンや、芳香族置換基を有するジアミン、スピロビインダン環を有するジアミン、シロキサンジアミン類、エチレングリコールジアミン類、アルキレンジアミン類、脂環族ジアミン類等が含まれる。これらのジアミンは、第1層の式(1B)におけるジアミンと同様とし得る。ただし、上記の中でも、その透明性等が優れることから、脂環族ジアミン類が好ましい。
式(2)におけるRは4価の基であり、テトラカルボン酸二無水物由来の基である。Rの例には、第1層の式(1A)におけるRと同様の基が含まれる。
(ii)溶剤
ポリアミド酸溶液に配合する溶剤は、上記ポリアミド酸を溶解可能なものであれば特に制限はなく、例えば上述のブロックポリアミド酸イミド溶液に配合する非プロトン性極性溶媒等と同様とし得る。
溶剤の添加量は、ポリアミド酸溶液の粘度等に応じて適宜選択される。ポリアミド酸溶液の固形分濃度は、5〜30重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。
また、ポリアミド酸溶液の粘度は、第1層への塗布性を考慮して、0.05〜5Pa・sが好ましく、より好ましくは0.1〜1Pa・sである。上記粘度は、25℃におけるE型粘度により測定される粘度であり、上記溶剤量等で調整し得る。
(積層体の加熱圧着)
本発明では、上述のようにして得られた金属箔、第1層、及び第2層が積層された積層体を2枚準備する。この2枚の積層体を、第2層同士を対向させ、250〜300℃で加熱圧着する。加熱圧着は例えば、公知のプレス機等で行い得る。
加熱圧着時の温度は、より好ましくは250〜300℃であり、さらに好ましくは250〜270℃である。加熱圧着時の温度が低いと、金属箔と第1層とのピール強度が十分とならない場合がある。一方、加熱圧着時の温度が高いと、第1層または第2層の全光線透過率が低下する場合があり、さらに第1層または第2層に発泡が生じる場合がある。
加熱圧着時の圧力は1〜20MPaが好ましく、より好ましくは1〜10MPaが好ましい。圧力を上記範囲とすることで、2枚の積層体の第2層同士を十分に接着することが可能となる。
加熱圧着時間は特に制限はなく、通常10分〜10時間、好ましくは1〜3時間とし得る。上記時間加熱圧着を行うことで、第2層同士を十分に接着し得る。
(耐熱両面金属積層板について)
前述の方法で得られる本発明の体熱両面金属積層板は、例えば図1に示すように、第1金属箔1、第1ブロックポリイミド層2、熱可塑性ポリイミド層3、第2ブロックポリイミド層2’、及び第2金属箔1’が積層された構造となる。なお、第1金属箔1及び第2金属箔1’は、それぞれ前述の金属箔からなり、第1金属箔1と第2金属箔1’とは異なっていてもよい。
また、第1ブロックポリイミド層2及び前記第2ブロックポリイミド層2’は、前記第1層の作製に用いたブロックポリアミド酸イミドにおけるアミド酸がイミド化した層であり、下記式(3A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、下記式(3B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含むブロックポリイミドからなる層である。
Figure 2013052604
上記式(3A)におけるRは、前記式(1A)におけるRと同様の4価の基である。また上記式(3B)におけるR及びRは、それぞれ前記式(1B)におけるR及びRと同様の2価の基または4価の基である。また、m及びnについても前記式(1A)及び(1B)で特定する値と同様である。
なお、第1ブロックポリイミド層2と第2ブロックポリイミド層2’とは異なっていてもよい。
また、熱可塑性ポリイミド層3は、前述の第2層が2層積層されて形成された層であり、第2の層の作製に用いたアミド酸がイミド化した層である。すなわち、下記式(4)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドからなる層である。
Figure 2013052604
上記式(4)におけるR及びR10は、それぞれ前記式(2)におけるR及びRと同様の2価の基または4価の基である。なお、熱可塑性ポリイミド層3は、異なる第2層同士が積層されて一層となったものであってもよい。
この耐熱両面金属積層板における、第1金属箔と第1ブロックポリイミド層とのピール強度、及び第2金属箔と第2ブロックポリイミド層とのピール強度は、それぞれ0.5kN/m以上であることが好ましく、より好ましくは0.7kN/m以上、さらに好ましくは1.0kN/m以上である。ピール強度を上記値以上とすることで、耐熱両面金属積層板を回路基板とした際の回路の信頼性につながる。上記ピール強度は、積層体の加熱圧着時の温度や圧力、ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜を加熱乾燥する際の昇温速度等で調整し得る。
また、耐熱両面金属積層板は、半田作業時に表面状態に変化がないことが好ましく、260℃の半田浴に10秒間浴浸した後に、その形態に変化がないことが好ましい。形態の変化は目視で観察し得る。上記形状安定性は、ブロックポリイミド層中のシクロヘキサンジアミンユニット量等で調整し得る。
さらに、耐熱両面金属積層板の金属箔をエッチングした後の寸法変化率が、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。金属箔のエッチング後の寸法変化率を上記値以下とすることで、その微細加工性等が良好となり、耐熱両面金属積層板を各種配線板等に適用することが可能となる。上記形状安定性は、ブロックポリイミド層中のシクロヘキサンジアミンユニット量等で調整し得る。なお、上記寸法安定性は、下記の方法により測定される値とする。
所定の大きさ(10cm×10cm)の耐熱両面金属積層板を準備し、この基材の四方(四隅)に孔を空ける。その後、両面の金属箔を全てエッチング除去し、湿度50%、23℃の雰囲気にて24時間放置する。その後、形成した孔の孔間距離変化率を測定する。耐熱透明フィルムの各辺に平行な方向、すなわち4方向について、それぞれ孔間距離を測定し、これらの変化率の平均値から、寸法変化率を算出する。
さらに、耐熱両面金属積層は、金属箔をエッチングした後の全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記値以上であれば、透明性が必要とされる各種用途にも、耐熱両面金属積層板を用い得る。全光線透過率は、ブロックポリイミド層中のシクロヘキサンジアミンユニット量を増やしたり、熱可塑性ポリイミド層を構成するジアミンユニットの種類等で調整し得る。また、金属箔、第1層、及び第2層からなる2枚の積層体を加熱圧着する際の温度を調整することでも、全光線透過率を向上し得る。さらに、全光線透過率は、ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜を加熱乾燥するときの環境雰囲気における酸素濃度を低減することで高めうる。
(用途)
本発明の耐熱両面金属積層板は、金属箔とブロックポリイミド層とのピール強度が高く、また金属箔のエッチング後の寸法安定性や透明性に優れる。したがって、各種耐熱透明回路基板等として用いることが可能であり、エッチング、孔あけ等を行っり、微細加工を行っても電気的信頼性に優れるものとし得る。また、上記金属箔をエッチングし、耐熱透明フィルムとして用いることも可能である。
なお、エッチングは、従来公知の方法で行うことができ、またエッチングに使用するエッチング液等も金属箔の種類に応じて適宜選択し得る。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれによって何ら制限を受けない。
実施例および比較例で用いた化合物の略称は、以下の通りである。
[ジアミン]
CHDA:1,4-ジアミノシクロヘキサン
NBDA:ノルボルナンジアミン
14BAC:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
13BAC:1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
APB:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
[テトラカルボン酸二無水物]
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
ODPA:ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物
BTDA:3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
[溶媒]
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
以下の方法により、下記合成例1〜6で作製したワニスから得られたポリイミドの熱膨張率係数及びガラス転移温度、ならびにワニスを塗布成膜したときの塗工面の確認を行った。
・熱膨張率係数(CTE)およびガラス転移温度(Tg)
金属箔にブロックポリアミド酸イミド溶液(もしくはブロックポリアミド酸溶液)を塗工・乾燥した単層金属積層板を、エッチングした。得られた耐熱透明フィルムの、熱膨張係数(CTE)及びガラス転移温度(Tg)を、島津製作所製TMA−50型を用い、昇温速度5℃/分、単位断面積あたりの荷重14g/mmで測定した。CTEは100〜200℃の範囲での平均膨張率、Tgは変曲点の接線交点について各々評価した。
・塗工面状態の確認
金属箔にブロックポリアミド酸イミド溶液(もしくはブロックポリアミド酸溶液)を塗工・乾燥した単層金属積層板の塗工面の状態を目視で観察した。表面にシワや発泡が観察されなかったものを良好(○)とし、表面に発泡等が観察されたものを不良(×)と判断した。
以下の方法で、合成例7〜9で作製したワニスから得られたポリイミドのガラス転移温度を測定した。
・ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス板にブロックアミド酸溶液を塗布した。これについて、島津製作所製TMA−50型を用い、昇温速度5℃/分、単位断面積あたりの荷重14g/mmで測定し、変曲点の接線交点について各々評価し、Tgを算出した。
[第1層用ブロックポリアミド酸イミドの合成1(合成例1)]
・アミド酸オリゴマーワニスの合成1
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、CHDA 11.4g(0.100モル)と、溶媒のNMP 116gとを加え攪拌した。透明溶液としたところへ、BPDA 27.1g(0.092モル)を粉状のまま装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後しばらくして塩が析出したが、その後、塩は溶解し均一系となって粘度が増大した。オイルバスを外してから、更に18時間室温で攪拌し、末端にCHDA由来のアミノ基を有するアミド酸オリゴマーワニスを得た。
・イミドオリゴマーワニスの合成1
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、NBDA 11.1g(0.072モル)と、NMP 94.5gとを加えて攪拌した。透明溶液としたところへ、BPDA 29.4g(0.100モル)を粉状のまま装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後、一時的に塩が析出したが、すぐに粘度増大を伴いながら再溶解し均一透明溶液となることを確認した。
該セパラブルフラスコに冷却管とディーンスターク型濃縮器を取付けて、キシレン 80.0gを反応溶液に追加し、脱水熱イミド化反応を180℃で4時間攪拌しながら行った。キシレン留去後、末端にBPDA由来の酸無水物構造を有するイミドオリゴマーワニスを得た。
・ブロックポリアミド酸イミドワニスの合成1
アミド酸オリゴマーワニスの合成1で得られたアミド酸オリゴマーワニス 40.0gと、イミドオリゴマーワニスの合成1で得られたイミドオリゴマーワニス 9.99gとを混合し、高粘度材料撹拌脱泡ミキサ(株式会社ジャパンユニックス社製,製品名:UM−118)を用いて合計10分間攪拌して、ブロックポリアミド酸イミドワニスを得た。
[第1層用ブロックポリアミド酸イミドの合成2(合成例2)]
・アミド酸オリゴマーワニスの合成2
アミド酸オリゴマーワニスの合成1に対して、CHDA 11.4g(0.100モル)、NMP 113g、BPDA 25.9g(0.088モル)に変更した以外は同様の操作を行い、末端にCHDA由来のアミノ基を有するアミド酸オリゴマーワニスを得た。
・イミドオリゴマーワニスの合成2
イミドオリゴマーワニスの合成1に対して、NBDA 11.8g(0.077モル)、NMP 96.1g、BPDA 29.4g(0.100モル)、およびキシレン 80.0gに変更した以外は同様の操作を行い、末端にBPDA由来の酸無水物構造を有するイミドオリゴマーワニスを得た。
・ブロックポリアミド酸イミドワニスの合成2
アミド酸オリゴマーワニスの合成2で得られたアミド酸オリゴマーワニス 40.0gと、イミドオリゴマーワニスの合成2で得られたイミドオリゴマーワニス 19.1gとを混合し、高粘度材料撹拌脱泡ミキサ(株式会社ジャパンユニックス社製,製品名:UM−118)を用いて合計10分間攪拌して、ブロックポリアミド酸イミドワニスを得た。
[第1層用ポリアミド酸ワニスの合成3(合成例3)]
温度計、攪拌機、窒素導入管、滴下ロートを備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、14BAC 15.7g(0.110モル)と、DMAc 192gとを加えて撹拌した。
ここに、粉状のBPDA 32.4g(0.110モル)を装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後、約3分で塩の析出が生じた。その後、速やかに再溶解していく様子を確認した。オイルバスを外してから、さらに18時間室温で攪拌し、ポリアミド酸ワニスを得た。
[第1層用ポリアミド酸ワニスの合成4(合成例4)]
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、PMDA 39.7g(0.180モル)と、DMAc 130gとを加えて攪拌しスラリー溶液とした。ここへ、NBDA 27.8g(0.180モル)とDMAc 27.8gの混合溶液を、発熱が生じないように120分間かけて徐々に滴下した。その後50℃で5時間攪拌し、ポリアミド酸ワニスを得た。
[第1層用ポリアミド酸ワニスの合成5(合成例5)]
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、ODPA 46.5g(0.150モル)と、DMAc 139gとを加えて攪拌しスラリー溶液とした。ここへ、NBDA 23.1g(0.150モル)とDMAc 23.1gの混合溶液を、発熱が生じないように120分間かけて徐々に滴下した。その後50℃で5時間攪拌し、ポリアミド酸ワニスを得た。
[第1層用ポリアミド酸ワニスの合成6(合成例6)]
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、ODA 10.0g(0.050モル)と、DMAc 119gとを加えて攪拌し均一溶液とした。ここへ、PMDA 10.9g(0.050モル)を粉状のまま、発熱が生じないように装入した。その後50℃で5時間攪拌し、ポリアミド酸ワニスを得た。
[第2層用ポリアミド酸ワニスの合成7(合成例7)]
合成例5と同様にして得られたポリアミド酸ワニスにDMAc 232gを加えて希釈を行い、希薄ポリアミド酸ワニスを得た。
[第2層用ポリアミド酸ワニスの合成8(合成例8)]
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、ODPA 46.5g(0.150モル)と、DMAc 137gとを加えて攪拌しスラリー溶液とした。ここへ、13BAC 21.3g(0.150モル)とDMAc 21.3gの混合溶液を、発熱が生じないように120分間かけて徐々に滴下した。その後50℃で5時間攪拌し、ポリアミド酸ワニスを得た後、更にDMAc 226gを加えて希釈を行い、希薄ポリアミド酸ワニスを得た。
[第2層用ポリアミド酸ワニスの合成9(合成例9)]
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、APB 11.7g(0.040モル)と、DMAc 139gとを加えて攪拌し均一溶液とした。ここへ、BTDA 12.9g(0.040モル)を粉状のまま、発熱が生じないように装入した。その後50℃で5時間攪拌し、希薄ポリアミド酸ワニスを得た。
以下の方法により、下記実施例1〜7及び比較例1〜7で作製した耐熱両面金属積層板について、ピール強度、半田耐性、寸法変化率、全光線透過率を測定した。
・ピール強度
長さ50mm、幅3.5mmの導体を、耐熱両面金属積層板をエッチングすることにより形成し、JIS C−6471に規定される方法に従い、短辺の端から導体側をポリイミド層から剥離角度を90°、剥離速度を50mm/分にて剥離し、その応力を測定した(島津製作所引張試験機EZ−S、粘着テープ引きはがし試験装置を使用)。
・半田耐性
半田耐性は、半田耐熱温度:IPC―TM―650(The institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits) No.2.4.13に準拠して測定した。具体的には、耐熱両面金属積層板を、260℃の半田浴に10秒間フロートした。その後、膨れの有無を目視で確認し、膨れが観察なかった場合を良好(○)、膨れが観察された場合を不良(×)とした。
・寸法変化率
所定の大きさ(10cm×10cm)の耐熱両面金属積層板を用意し、この基材の四方(四隅)に孔を空けた後、両面の金属箔をエッチング除去した。得られた耐熱透明フィルムを、湿度50%、23℃の雰囲気にて24時間放置した。その後、形成した孔の孔間距離変化率を測定した。耐熱透明フィルムの各辺に平行な方向、すなわち4方向について、それぞれ孔間距離を測定し、これらの変化率の平均値から、寸法変化率を算出した。
・全光線透過率
耐熱両面金属積層板の金属箔をエッチング除去して得られた耐熱透明フィルムをスガ試験機株式会社製HZ−2(TMダブルビーム方式)を用いて測定した。開口径:Φ20mm、光源:D65とした。
・実施例1
合成例1で合成したブロックポリアミド酸イミドワニスを、ドクターブレードを用いて、銅箔1(JX日鉱日石金属株式会社製;BHY−22BT、厚さ18μm、マット面Rz0.8μm)上に乾燥後の厚さで10μmとなるように塗工した。その後、イナートオーブンを用いて層内の酸素濃度を0.5%に制御し、30℃から270℃まで120分かけて昇温(昇温速度2℃/分)し、更に270℃で1時間保持して、金属箔と第1層とからなる単層金属積層板を得た。得られた単層金属積層板を、塩化第2鉄溶液によりエッチングして得られた単層耐熱透明フィルムのCTEは16ppm/K、Tgは286℃であった。
上記単層金属積層板上に、合成例7で合成した希薄ポリアミド酸ワニスを、ドクターブレードを用いて、乾燥後の厚さで2μmとなるように塗工した。上記第1層と同様に乾燥を行い、金属箔、第1層、及び第2層がこの順に積層された積層体を得た。
上記積層体を10cm×10cmに2枚切り出し、第2層同士を合わせた。これを熱プレスにより270℃、3MPaで1時間加圧圧着し、耐熱両面金属積層板を得た。得られた耐熱両面金属積層板のピール強度は1.00kN/m、寸法変化率は−0.04%、全光線透過率は83%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。
・実施例2
30℃から270℃まで30分かけて昇温(昇温速度8℃/分)したこと以外は実施例1と同様にして各種サンプルを作製した。単層耐熱透明フィルムのCTEは17ppm/K、Tgは283℃であった。耐熱両面金属積層板のピール強度は0.78kN/m、寸法変化率は0.03%、全光線透過率は82%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。
・実施例3
第1層に合成例2で合成したブロックポリアミド酸イミドワニスを使用したこと以外は実施例1と同様にして各種サンプルを作製した。単層耐熱透明フィルムのCTEは17ppm/K、Tgは277℃であった。耐熱両面金属積層板のピール強度は1.02kN/m、寸法変化率は−0.05%、全光線透過率は83%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。
・実施例4
第2層に合成例8で合成した希薄ポリアミド酸ワニスを使用したこと以外は実施例1と同様にして耐熱両面金属積層板を作製した。耐熱両面金属積層板のピール強度は0.81kN/m、寸法変化率は−0.04%、全光線透過率は83%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。
・実施例5
銅箔を、銅箔2(三井金属鉱業社製;NA−DFF、厚さ12μm、マット面Rz0.4μm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして各種サンプルを作製した。単層耐熱透明フィルムのCTEは17ppm/K、Tgは285℃であった。耐熱両面金属積層板のピール強度は0.60kN/m、寸法変化率は−0.05%、全光線透過率は85%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。
・比較例1
ポリアミド酸イミドワニス加熱乾燥時の環境雰囲気における酸素濃度を15.5%としたこと以外は実施例1と同様にして単層耐熱透明フィルムを作製した。得られた単層耐熱透明フィルムのCTEは19ppm/K、Tgは277℃であった。また、得られた単層金属積層板上に合成例7で合成した希薄ポリアミド酸ワニスを塗工したところ、大部分をはじいてしまい、第2層の積層が困難であった。積層が出来た部分を用いて実施例1と同様にして耐熱両面金属積層板を作製し、全光線透過率を測定したところ、74%であり、着色が確認された(ピール強度、寸法変化率、半田耐性は評価出来なかった)。
・比較例2
熱プレス温度を220℃にしたこと以外は実施例1と同様にして耐熱両面金属積層板を作製した。寸法変化率は−0.01%、全光線透過率は83%であった。しかしながら、ピール強度は0.07kN/mと低く、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れを確認した。
・比較例3
熱プレス温度を320℃にしたこと以外は実施例1と同様にして耐熱両面金属積層板を作製した。得られた耐熱両面金属積層板には発泡、着色(全光線透過率は79%)が見られた。耐熱両面金属積層板のピール強度は0.75kN/m、寸法変化率は0.02%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れを確認した。
・比較例4
第1層に合成例3で合成したポリアミド酸ワニスを使用したこと以外は実施例1と同様にして各種サンプルを作製した。単層耐熱透明フィルムのCTEは48ppm/K、Tgは260℃であった。耐熱両面金属積層板のピール強度は0.78kN/m、全光線透過率は85%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。しかしながら、寸法変化率は0.35%と高めであった。
・比較例5
第1層に合成例4で合成したポリアミド酸ワニスを使用したこと以外は実施例1と同様にして各種サンプルを作製した。単層耐熱透明フィルムのCTEは50ppm/K、Tgは290℃であった。耐熱両面金属積層板のピール強度は0.56kN/m、全光線透過率は86%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。しかしながら、寸法変化率は0.37%と高めであった。
・比較例6
第1層に合成例5で合成したポリアミド酸ワニスを使用したこと以外は実施例1と同様にして各種サンプルを作製した。単層耐熱透明フィルムのCTEは55ppm/K、Tgは221℃であった。耐熱両面金属積層板のピール強度は1.65kN/m、全光線透過率は89%であった。しかしながら、寸法変化率は−0.43%であり、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れ及びフィルム自体のシワを確認した。
・比較例7
第1層に合成例6で合成したポリアミド酸ワニスを使用したこと以外は実施例1と同様にして各種サンプルを作製した。単層耐熱透明フィルムのCTEは22ppm/K、Tgは289℃であった。耐熱両面金属積層板の寸法変化率は−0.18%であった。しかしながら、ピール強度は0.32kN/mと低く、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れを確認した。また、全光線透過率は71%であり、着色も確認された。
・実施例6
第2層に合成例9で合成した希薄ポリアミド酸ワニスを使用したこと以外は実施例1と同様にして耐熱両面金属積層板を作製した。ピール強度は1.22kN/m、寸法変化率は−0.02%であった。また、260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに、膨れは確認されなかった。しかしながら、全光線透過率は78%であり、着色していることを確認した。
・実施例7
270℃に昇温したイナートオーブン中に第1層を塗工したサンプルを装入し、短時間(2分)での昇温(昇温速度120℃/分相当)したこと以外は実施例1と同様にして単層耐熱透明フィルムを作製した。得られた単層耐熱透明フィルムのCTEは26ppm/K、Tgは263℃であった。また、得られた単層金属積層板の表面はゆず肌、白化が見られ、表面状態は不良であった。
また、実施例1と同様にして得られた耐熱両面金属積層板はゆず肌、白化が残存しており、全光線透過率は77%であった。耐熱両面基板積層板のピール強度は0.10kN/mと低く、寸法変化率は−0.38%と高めであった。また260℃、10秒の半田浴フロート後のサンプルに膨れを確認した。
Figure 2013052604
[評価]
シクロヘキサンジアミンユニットを含むブロックポリアミド酸イミドワニスを用いて第1層を作製した場合には、金属層とブロックポリイミド層とのピール強度が高く、金属層をエッチングした後の寸法変化が少ないという結果が得られた(実施例1〜5)。これに対し、シクロヘキサンジアミンユニットを含まないブロックポリアミド酸ワニスを用いて第1層を作製した場合には、寸法変化が大きかった(比較例4〜6)。
また、2枚の積層体の加熱圧着時の温度が低過ぎる場合には、ピール強度が十分とならず(比較例2)、加熱圧着時の温度が高過ぎる場合には、ピール強度は十分であったものの、半田耐熱性や、面状態が悪化した(比較例3)。
また、脂環族族ジアミンユニットを含むポリアミド酸を用いて第2層を作製した場合(実施例1〜5)、芳香族ジアミンユニットを含むポリアミド酸を用いて第2層を作製した場合(実施例6)と比較して、全光線透過率が向上した。
また、第1層の形成時、ポリアミド酸イミドの塗膜の乾燥温度を急激に上昇させた場合には、面状態が悪く、寸法安定性に欠け、さらにピール強度も低下した(実施例7)。また第1層の形成時、酸素濃度が非常に高い場合には、第2層の形成が困難であり、さらに全光線透過率も低かった(比較例1)。
本発明の耐熱両面金属積層板は、ブロックポリイミド層の両面に金属箔が積層されており、その金属箔とブロックポリイミドとのピール強度が高い。また金属箔をエッチングした後の透明性が高く、さらに寸法安定性にも優れる。したがって、本発明の耐熱両面金属積層板は、各種配線基板や各種基板フィルム等の用途に非常に有用である。
10 耐熱両面金属積層板
1 第1金属箔
1’ 第2金属箔
2 第1ブロックポリイミド層
2’ 第2ブロックポリイミド層
3 熱可塑性ポリイミド層
すなわち、本発明の第一は、以下に示す耐熱両面金属積層板に関する。
[1]金属箔と、下記式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと下記式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含むブロックポリアミド酸イミド及び溶剤を含有するブロックポリアミド酸イミド溶液を、前記金属箔上に塗布し、加熱乾燥して得られる第1層と、ガラス転移温度が150〜250℃であり、かつ下記式(2)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸及び溶剤を含むポリアミド酸溶液を、前記第1層上に塗布し、加熱乾燥して得られる第2層と、を有する積層体を2枚準備し、前記第2層同士を対向させて、250〜300℃で加熱圧着することにより得られる、耐熱両面金属積層板。
Figure 2013052604
(式(1A)または式(1B)において、
mは、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
nは、式(1B)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
かつmの平均値:nの平均値=1:9〜9:1であり、
およびRはそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロへキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
Figure 2013052604
(式(2)において、
は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
・ブロックポリアミド酸イミド酸溶液
上述の第1層の形成に使用する上記ブロックポリアミド酸イミド溶液は、ブロックポリアミド酸イミド、及び溶剤を含有する。
(i)ブロックポリアミド酸イミド
ブロックポリアミド酸イミドは、下記式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、下記式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを有する。
Figure 2013052604
なお、上記ポリアミド酸(ポリアミド酸オリゴマー)と上記ポリイミド(ポリイミドオリゴマー)との反応に際して、式(1A)で表されるポリアミド酸オリゴマーの末端を、酸無水物末端としたり;式(1B)で表されるポリイミドオリゴマーの末端を、アミン末端としたりすると、加熱イミド化反応においてゲル化しやすい。ゲル化の原因は明確ではないが、過剰なアミン部分や酸無水物構造が、イミド結合以外の余剰な結合を形成し、架橋構造が形成されるからであると推定される。したがって、下記式(1A’)で表されるアミン末端のポリアミド酸オリゴマーと、下記式(1B’)で表される酸無水物末端のポリイミドオリゴマーとを反応させて、ポリアミド酸イミドとすることが好ましい。
Figure 2013052604
(i)ポリアミド酸
上記ポリアミド酸溶液に含まれるポリアミド酸は、下記式(2)で表される繰返し構造単位で構成される。
Figure 2013052604

Claims (8)

  1. 金属箔と、
    下記式(1A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと下記式(1B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含むブロックポリアミド酸イミド及び溶剤を含有するブロックポリアミド酸イミド溶液を、前記金属箔上に塗布し、加熱乾燥して得られる第1層と、
    ガラス転移温度が150〜250℃であり、かつ下記式(2)で表される繰返し構造単位で構成されるポリアミド酸及び溶剤を含むポリアミド酸溶液を、前記第1層上に塗布し、加熱乾燥して得られる第2層と、を有する積層体を2枚準備し、
    前記第2層同士を対向させて、250〜300℃で加熱圧着することにより得られる、耐熱両面金属積層板。
    Figure 2013052604
    (式(1A)または式(1B)において、
    mは、式(1A)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
    nは、式(1B)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
    かつmの平均値:nの平均値=1:9〜9:1であり、
    およびRはそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
    は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロへキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
    Figure 2013052604
    (式(2)において、
    は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
    はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
  2. 前記ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜の加熱乾燥時の環境雰囲気における酸素濃度が1%以下である、請求項1に記載の耐熱両面金属積層板。
  3. 前記ブロックポリアミド酸イミド溶液の塗膜の加熱乾燥時の、150〜300℃の温度範囲における平均昇温速度が、0.25〜50℃/分である、請求項1または2に記載の耐熱両面金属積層板。
  4. 前記金属箔が、表面の10点平均粗さ(Rz)が3μm以下の銅箔である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱両面金属積層板。
  5. 前記金属箔と前記第1層との間のピール強度が0.5kN/m以上であり、
    260℃の半田に10秒間浴浸した後に形態変化がなく、
    前記金属箔のエッチング後の寸法変化率が0.2%以下であり、
    前記金属箔のエッチング後の全光線透過率が80%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐熱両面金属積層板。
  6. 第1金属箔と、第1ブロックポリイミド層と、熱可塑性ポリイミド層と、第2ブロックポリイミド層と、第2金属箔とがこの順に積層された耐熱両面金属積層板であって、
    前記第1ブロックポリイミド層及び前記第2ブロックポリイミド層が、下記式(3A)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックと、下記式(3B)で表される繰返し構造単位で構成されるブロックとを含むポリイミドからなり、
    前記熱可塑性ポリイミド層が、ガラス転移温度が150〜250℃であり、かつ下記式(4)で表される繰返し構造単位で構成されるポリイミドからなり、
    前記金属箔が、表面の10点平均粗さ(Rz)が3μm以下の銅箔であり、
    前記第1金属箔と前記第1ブロックポリイミド層とのピール強度、及び前記第2金属箔と前記第2ブロックポリイミド層とのピール強度がいずれも0.5kN/m以上である、耐熱両面金属積層板。
    Figure 2013052604
    (式(3A)または式(3B)において、
    mは、式(3A)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
    nは、式(3B)で表される繰返し構造単位の繰返し数を示し、
    かつmの平均値:nの平均値=1:9〜9:1であり、
    およびRはそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
    は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロへキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
    Figure 2013052604
    (式(4)において、
    は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、
    10はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐熱両面金属積層板をエッチングすることにより得られる耐熱透明フィルム。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐熱両面金属積層板をエッチングすることにより得られる耐熱透明回路基板。
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