JP2012224844A - 樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アイオノマー(A)にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(B)およびポリアミド系樹脂(C)を配合してなる樹脂組成物において、ホウ素化合物(D)を樹脂組成物100重量部に対してホウ素換算にて0.0001〜1重量部含有する樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
Description
また、アイオノマーとEVOHの相溶化剤として、ポリアミド系樹脂を使用した場合、EVOHとポリアミド系樹脂の親和性が高いため、溶融混練時等に押出機内で架橋し、かかる架橋物がゲルとなって発生する傾向がある。従って、このような組成物を使用した成形物において、かかるゲルが応力集中箇所となり強度等が低下する傾向がある。
本発明は、アイオノマー(A)にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(B)およびポリアミド系樹脂(C)を配合してなる樹脂組成物において、ホウ素化合物(D)を特定微量にて含有する樹脂組成物に存する。
本発明で用いるアイオノマー(A)は、本発明の樹脂組成物のベース樹脂となるものである。かかる樹脂は公知の樹脂であり、疎水性の高分子主鎖に対し、側鎖にイオン基を有する熱可塑性樹脂である。
かかるアイオノマーとしては、スルホン酸基含有ポリマーのスルホン酸基の一部もしくは全部が金属イオンで中和された構造のスルホン酸系アイオノマーや、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部が金属イオンで中和された構造のカルボン酸系アイオノマー等が挙げられる。
本発明で用いるアイオノマーは、ポリアミド系樹脂との親和性の点から2価金属イオン中和物が好ましく、特に好ましくは亜鉛イオン中和物である。
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーにおける不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステルなどを挙げることができ、これらは単独でも複数を同時に用いることも可能である。中でも特に(メタ)アクリル酸が好ましい。
「サーリン」(デュポン社製)、などの市販品を挙げることができる。
本願で用いるエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(B)について説明する。
本発明で用いるEVOH(B)は、公知の樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。EVOH(B)は、通常、ビニルエステル系モノマー(例えば、脂肪酸ビニルエステル)とエチレンを共重合してエチレン−ビニルエステル系共重合体を得、これをケン化して得られるものである。すなわち、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化後に残存する若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。上記共重合に際しては、溶液重合法など、公知の重合法が採用されうる。
特にヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOH樹脂は、延伸加工や真空・圧空成形などの二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
00重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、多すぎると熱安定性が低下する傾向がある。尚、EVOH(B)に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)を併用する方法が好ましい。
本願で用いるポリアミド系樹脂(C)について説明する。
本発明で用いるポリアミド系樹脂(C)は、アイオノマー(A)におけるEVOH(B)の相溶化剤として用いられる。公知の樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。
本発明は、アイオノマー(A)にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(B)およびポリアミド系樹脂(C)を配合してなる樹脂組成物において、ホウ素化合物(D)を特定微量にて配合することが特徴である。
本発明におけるホウ素化合物(D)とは、ホウ酸およびその金属塩を意味する。
ホウ酸金属塩としては、例えばホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛( 四ホウ酸亜鉛, メタホウ酸亜鉛等) 、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム( メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等) 、ホウ酸カドミウム( オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等) 、ホウ酸カリウム( メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等) 、ホウ酸銀( メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等) 、ホウ酸銅( ホウ酸第2 銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等) 、ホウ酸ナトリウム( メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等) 、ホウ酸鉛( メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等) 、ホウ酸ニッケル( オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等) 、ホウ酸バリウム( オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等) 、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム( オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等) 、ホウ酸マンガン( ホウ酸第1 マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等) 、ホウ酸リチウム( メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等) などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物などが挙げられる。
上記の中でも好ましくはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)であり、特に好ましくはホウ酸である。
本発明の樹脂組成物は、上記(A)〜(D)を含有するものであり、その状態としては、アイオノマー(A)マトリックス中にEVOH(B)が分散し、相溶化剤としてポリアミド系樹脂(C)を配合した樹脂組成物において、ホウ素化合物(D)を特定微量含有するものである。特定微量の(D)成分が存在することで、熱安定性、強度および引張伸び性に優れるという、顕著な効果が得られる。
かかるホウ素化合物(D)の含有量は、樹脂組成物100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)した値(重量基準)にて0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.03重量部、より好ましくは0.001〜0.01重量部、さらに好ましくは0.002〜0.005重量部である。ホウ素化合物(D)が多すぎる場合、樹脂組成物の強度および引張伸び性が低下するという傾向があり、少なすぎる場合、熱安定性が低下するという傾向がある。
また、ホウ素化合物(D)がEVOH(B)に予め含有されている場合、その量を含む総量が上記範囲内であることが好ましい。なお、かかるホウ素化合物(D)が予めEVOH(B)に含有されている場合、ホウ素化合物添加処理工程削減の点で好ましい。
好適には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の炭素数2〜7の低級脂肪族カルボン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の炭素数8〜22の高級脂肪族カルボン酸塩、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム等の燐酸塩があげられる。さらに好ましくは、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の炭素数8〜22の高級脂肪族カルボン酸塩であり、特に好ましくは炭素数8〜22の高級脂肪族カルボン酸のカリウム塩が用いられる。
なお、かかるアルカリ金属塩(E)が前述したようにEVOH(B)に予め含有されている場合、その量を含む総量が上記範囲内であることが好ましい。なお、かかるアルカリ金属塩(E)が予めEVOH(B)に含有されている場合、アルカリ金属塩添加処理工程削減の点で好ましい。
アイオノマー(A)とEVOH(B)、ポリアミド系樹脂(C)、ホウ素化合物(D)(および他の添加剤)とを混合する方法としては、公知の方法を採用することが出来る。例えば、全ての成分をドライブレンドして溶融混合する方法、予め溶融させたアイオノマー(A)等の樹脂成分に他の成分を配合する方法等の、溶融混合法や、アイオノマー(A)を溶媒に溶解し、かかる溶液に他の成分を配合し、アイオノマー(A)の貧溶媒を用いて析出させる方法等がある。
本発明の樹脂組成物は、押出機内で溶融混合後、押し出す際に各種成形物へ成形してもよいし、一旦樹脂組成物ペレットを作製し、別途公知の加工方法で各種成形物を成形してもよい。樹脂組成物の流通や取り扱い性の点から、後者の方法が好ましい。
また、ペレットにする場合、その形は通常球形、円柱形、立方体形、直方体形等が上げられ、円柱形ペレットが好ましく、その直径は通常1〜5mm、長さは通常1〜5mmである。
上記樹脂組成物層および他の熱可塑性樹脂層は、さらに樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層との間に接着樹脂層が介在していてもよい。
また、かかる多層構造体は、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、樹脂組成物とEVOH以外の熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層を設けることが可能である。かかるリサイクル層をRとするとき、多層構造体の層構成は、例えばβ/α/R、R/β/α、β/R/α/β、β/R/α/R/β、β/α/R/α/β、β/R/α/R/α/R/β等が挙げられる。
特にリサイクル層を設けることは、成形時に発生する多量のスクラップを有効に活用できる点で工業上好ましい。
他の熱可塑性樹脂層は通常100〜6000μm、好ましくは200〜4000μm、特に好ましくは1000〜2000μmである。他の熱可塑性樹脂層が薄すぎる場合、機械的強度が低下する傾向があり、他の熱可塑性樹脂層が厚すぎる場合、加工性が低下する傾向がある。
接着性樹脂層は通常2〜100μm、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。
また、各層の厚み比は、樹脂組成物層/他の熱可塑性樹脂層の厚み比=通常0.002〜1未満、好ましくは0.005〜1未満、特に好ましくは0.04〜0.2であり、樹脂組成物層/接着性樹脂層の厚み比=通常1〜250、好ましくは1〜60、特に好ましくは1〜10である。
なお、延伸については、公知の延伸方法でよく、例えば、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は、多層構造体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常100〜300℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸倍率は、面積比にて、通常2〜50倍、好ましくは2〜20倍である。
かかる用途としては、スープ、デザート、一般的な食品の他、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌、食酢等の発酵食品、サラダ油等の油脂品、清酒、ビール、みりん、ウィスキー、焼酎、ワイン等の酒類、炭酸飲料、ジュース、スポーツドリンク、牛乳、コーヒー飲料、ウーロン茶、紅茶、ミネラルウォーター等の清涼飲料水、ペットフード、化粧品、医薬品、洗剤、香粧品、工業薬品、農薬等各種の容器として有用である。
アイオノマー(A)として、エチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の亜鉛中和物(a1)商品名ハイミラン1706(三井・デュポンポリケミカル製、融点88℃、MFR0.9g/10分(190℃、荷重2160g))を用いた。
EVOH(B)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)(エチレン含有量44モル%,ケン化度99.7モル%,MFR3.5g/10分(210℃、荷重2160g)、)を用いた。かかるEVOH(B)は、EVOH100重量部に対して、ホウ素化合物(D)としてホウ酸(d1)をホウ素換算した値(重量基準)にて0.0127重量部、アルカリ金属塩(E)として酢酸ナトリウム(e1)をナトリウム金属換算した値(重量基準)にて0.0190重量部含有する。
ポリアミド系樹脂(C)としてナイロン6(c1)商品名UBEナイロン1022B(宇部興産社製、MFR6g/10分(230℃、荷重2160g)、融点215〜225℃)を用いた。
すなわち、(A/B)の重量比は68/32であり、EVOH(B)100重量部に対する(C)の配合量は17重量部である。また、アイオノマー(A)100重量部に対する(C)の配合量は7.7重量部であり、樹脂組成物100重量部に対するホウ素化合物(D)の配合量は、ホウ素換算した値(重量基準)にて0.0038重量部である。樹脂組成物100重量部に対するアルカリ金属塩(E)の配合量はナトリウム金属換算した値(重量基準)0.0057重量部である。
上記のフィルムを用いて、(試料形状:長さ150mm×巾15mmにカットしたもの)応力−ひずみ曲線(JIS K7127準拠:標線間距離40mm、試験速度500mm/min、23℃、50%RH)の測定を行なった。
実施例1において、ダイス温度を250℃に変更して製膜した以外は、同様にして、同様の評価を行った。
実施例2において、(a1/b1/c1)の重量比を、63/30/7の割合で配合した以外は、同様にして、同様の評価を行った。
実施例2において、(a1/b1/c1)の重量比を、60/30/10の割合で配合した以外は、同様にして、同様の評価を行った。
実施例2において、(a1/b1/c1)の重量比を、58/30/12の割合で配合した以外は、同様にして、同様の評価を行った。
実施例1において、EVOH(B)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b2)(エチレン含有量44モル%,ケン化度99.6モル%,MFR12g/10分(210℃、荷重2160g)、)を用いた以外は同様にして、同様の評価を行なった。
かかるEVOH(B)はホウ素化合物(D)を含有せず、アルカリ金属塩(E)として酢酸ナトリウム(e1)をEVOH100重量部に対してナトリウム金属換算した値(重量基準)にて0.022重量部含有する。
樹脂組成物100重量部に対するアルカリ金属塩(E)の配合量は、ナトリウム金属換算した値(重量基準)にて0.0066重量部である。
条件と評価結果を表1に示す。
実施例1において、EVOH(B)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b3)(エチレン含有量44モル%,ケン化度99.6モル%,MFR12g/10分(210℃、荷重2160g)、)を用いた以外は同様にして、同様の評価を行なった。
かかるEVOH(B)はホウ素化合物(D)およびアルカリ金属塩(E)を含有しない。
したがって、応力−歪み曲線の破断点応力値が高い値を示し、かつ破断点歪み値が大きい値を示す樹脂組成物は、強くかつ引張伸び性に優れる樹脂組成物であるといえる。
温度250℃に設定されたトルク検出型レオメータ(ブラベンダー社製「プラストグラフ」、ローラーミキサー:W50EHT)に、上記で調製した樹脂組成物ペレット55gを投入し、5分間予熱した後、回転数50rpmで溶融混練した時のトルク値(Nm)を溶融混練開始の5分後、30分後に測定した。溶融混練開始5分後に対する30分後の粘度(30分/5分)を算出した。上式で算出される粘度変動度が小さいほど、粘度増加が少なく成形性に優れることを意味し、大きいほどには粘度増加が大きく成形性に乏しいことを意味する。
Claims (8)
- アイオノマー(A)にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(B)およびポリアミド系樹脂(C)を配合してなる樹脂組成物において、ホウ素化合物(D)を樹脂組成物100重量部に対してホウ素換算にて0.0001〜1重量部含有することを特徴とする樹脂組成物。
- アイオノマー(A)とエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(B)との重量比(A/B)は、50/50〜99/1である請求項1に記載の樹脂組成物。
- ポリアミド系樹脂(C)の配合量が、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(B)100重量部に対して、1〜100重量部である請求項1または2いずれかに記載の樹脂組成物。
- ポリアミド系樹脂(C)の含有量が、アイオノマー(A)100重量部に対して、0.5〜30重量部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- アルカリ金属塩(E)を樹脂組成物100重量部に対して金属換算にて0.001〜0.03重量部含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- アイオノマー(A)の中和金属イオンが、2価の金属イオンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層構造体。
- 総厚みが、20〜10000μmであることを特徴とする請求項7記載の多層構造体。
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