JP2008274059A - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、EVOH樹脂を含む積層体のレトルト処理後の衝撃性を改善し、さらにはレトルト処理後に高温低湿度下(53℃、0%RH)で放置された後のフィルムの強度に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)に、炭素数1〜22の炭化水素基で末端が変性されたポリアミド系樹脂(B)、および、該末端変性ポリアミド系樹脂(B)以外の、融点が180℃以上のポリアミド系樹脂(C)を配合してなることを特徴とする樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(以下、EVOH樹脂と略記する)およびポリアミド系樹脂を含有する新規樹脂組成物に関し、詳しくはレトルト処理後に高温低湿度下で保存された後のフィルムの強度に優れた樹脂組成物に関するものである。
従来、EVOH樹脂とポリアミド系樹脂との組成物は、前者に基づくガスバリア性、耐油性、耐溶剤性と後者に基づく耐衝撃性を利用して食品包装用のフィルム、シートをはじめ、種々の用途に使用されている。殊に、この組成物の層を中間層に配してなる共押出積層体は、レトルト殺菌またはボイル殺菌可能な包装材料としての用途が期待できる。しかしながら、このような樹脂組成物から得られたフィルムは、レトルト処理を行なうと樹脂組成物層へ水が浸入し、レトルト後に乾燥した場合、進入した水が除去され空隙となり、これがフィルムの脆化の原因となっていた。
近年、EVOH樹脂と、特殊な末端変性ポリアミド系樹脂とを混合することにより、レトルト用途に供したときに、デラミネーションが生じない積層体を得る樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、本発明者らが検討したところ、かかる技術では、レトルト処理後に耐衝撃性が低下し、取り扱い時や長距離輸送時に破損するといった問題が生じることがあり、特に、レトルト処理後に砂漠地域のような高温かつ乾燥した厳しい環境下(53℃、0%RH)にて保存した場合、耐衝撃性低下の程度が激しく製品の破損も起こりやすくなることが判った。
また、EVOH樹脂に融点が160℃以上のポリアミド系樹脂と、160℃以下のポリアミド系樹脂を配合することにより、耐衝撃性に優れたフィルムを得る技術も提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、かかる衝撃性は、ポリアミドが有する柔軟性により改善されたものであり、常態における耐衝撃性は向上するものの、レトルト処理後の耐衝撃性能については改善が求められるものであった。そして、前述のような高温かつ乾燥した環境下(53℃、0%RH)においては、上述のように耐衝撃性の低下が激しく、さらに改善の余地があった。
特開平7−118469号公報 特開2002−338771号公報
本発明では、EVOH樹脂を含む積層体のレトルト処理後の耐衝撃性を改善し、レトルト処理後に高温低湿度下で放置された後のフィルムの強度に優れた樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本願発明者は上記事情に鑑み、鋭意検討の結果、EVOH樹脂と、末端を変性したポリアミド系樹脂の混合物に、比較的融点の高いポリアミド系樹脂を配合することにより、本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨はEVOH樹脂(A)および末端変性ポリアミド系樹脂(B)および末端変性ポリアミド系樹脂(B)以外の融点が180℃以上であるポリアミド系樹脂(C)を含有することを特徴とする樹脂組成物に存する。
本願発明では、EVOH樹脂と末端変性ポリアミド系樹脂を含む組成物に、さらに比較的融点の高いポリアミド系樹脂を配合することにより、レトルト処理後の衝撃性低下問題に対し、高融点の樹脂を配合することによる耐熱水(レトルト)性向上効果により、耐衝撃性の低下が抑制されるだけでなく、さらにレトルト処理後のフィルムの脆化が防止され、さらに砂漠地域のような高温かつ乾燥した厳しい環境下(53℃、0%RH)においても耐衝撃性の低下が防止されるという効果を有する。
本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは、レトルト後にも耐衝撃性の低下が軽減されるため、長期保存品や長距離輸送を行う食品、薬品類の包装材として特に有用である。
本発明の樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)および末端変性ポリアミド系樹脂(B)および末端変性ポリアミド系樹脂(B)以外の融点が180℃以上であるポリアミド系樹脂(C)を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
本発明でいう融点とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度10℃/min.で測定される融解ピーク温度(℃)を表す。
<EVOH樹脂(A)の説明>
本発明における、EVOH樹脂(A)としては、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られ樹脂であり、一般的に食品包装用のフィルムなどとして公知のものが挙げられる。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族炭化水素ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族炭化水素ビニルエステル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、経済的な点から、酢酸ビニルが好ましく用いられる。これらは単独で、もしくは複数種を同時に用いてもよい。
EVOH樹脂(A)におけるエチレン構造単位の含有量は、通常10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、特に好ましくは25〜50モル%である。かかる含有量が低すぎた場合は、樹脂組成物をフィルム化した場合の高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎた場合は、樹脂組成物をフィルム化した場合のガスバリア性が低下する傾向がある。
EVOH樹脂(A)におけるビニルエステル成分のけん化度は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。かかるケン化度が低すぎた場合にはガスバリア性、熱安定性、耐高湿性等が低下する傾向がある。
また、該EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは3〜35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、得られる成形物の厚み精度が低下する傾向があり、小さすぎた場合には生産性が低下する傾向がある。
また、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよい。かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
中でも、ケン化後に下記構造単位(1)となるようなモノマーが好ましい。化学式(1)中、R1は水素原子または有機基を表わし、Xはエーテル結合を除く結合鎖を表わし、nは0または1を表し、R2〜R4はそれぞれ水素原子または有機基を表わす。
Figure 2008274059
このとき、上記構造単位(1)のEVOH(A)中の含有量は特に限定するものではなく、通常0.1〜30モル%、好ましくは0.2〜20モル%、特に好ましくは0.3〜10モル%、殊に好ましくは1〜5モル%である。かかる含有量が小さすぎると変性された効果が十分に発揮されず、逆に多すぎるとガスバリア性が低下する傾向にあり好ましくない。
構造単位(1)の結合鎖(X)nのnが1の場合、エーテル結合を除くいずれの結合鎖を適用することも可能で、特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン等の非芳香族炭化水素鎖、フェニレン、ナフチレン等の芳香族炭化水素鎖(これらの炭化水素鎖はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等が挙げられ(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)、その中でも熱溶融安定性の点で非芳香族炭化水素鎖が好ましく、特にはアルキレンが好ましい。かかるアルキレンとしては、耐レトルト性が良好となる点で、炭素数が少ないものが好ましく、炭素数6以下のものが好適に用いられる。
なお、エーテル結合は溶融成形時に分解しやすく、EVOHの熱溶融安定性が低下する点で好ましくない。
構造単位(1)のR1およびR2〜R4が有機基である場合、その有機基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
本発明における最も好ましいEVOH(A)の構造は、構造単位(1)におけるR1、およびR2〜R4がすべて水素原子であり、結合鎖(X)nのnが0すなわち単結合であるものである。すなわち、下記構造式(1a)で示される構造単位を含むものが好ましい。
Figure 2008274059
そして、本発明の共重合体の最も好ましい組成は、上記構造単位(1a)が1〜5モル%、エチレン含有量が20〜50モル%、ビニルアルコール構造単位の含有量は60〜70モル%、および残部が酢酸ビニル由来のビニルアセトキシ構造単位であるものである。
又、本発明に用いるEVOH樹脂(A)は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の後変性反応をしても差し支えない。
また、EVOH樹脂(A)として、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能である。このとき、2種間のエチレン含有量差は通常5モル%以上、好ましくは5〜25モル%、特に好ましくは8〜20モル%であり、及び/又はけん化度差が通常1モル%以上、好ましくは1〜15モル%、特に好ましくは2〜10モル%であり、及び/又はMFRの比が2以上、好ましくは3〜20、特に好ましくは4〜15であるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリア性を保持したまま、更に柔軟性、熱成形性、製膜安定性等が向上するので有用である。異なる2種以上のEVOH(ブレンド物)の製造方法は特に限定されず、例えばケン化前のエチレン−ビニルエステル共重合体の各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後の各EVOHのアルコールまたは水とアルコールの混合溶液を混合する方法、各EVOHを混合後溶融混練する方法などが挙げられる。
<末端変性ポリアミド系樹脂(B)の説明>
末端変性ポリアミド系樹脂(B)としては、ポリアミドの末端が例えば炭素数1〜22の炭化水素基で変性された末端変性ポリアミド系樹脂であり、これも公知の市販のものを使用することができる。
末端変性の具体例を説明すれば、例えば末端COOH基の数[X]と末端CONRR’基(但し、Rは炭素数1〜22の炭化水素基、R’は水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基)の数[Y]が、
100×Y/(X+Y)≧5
を満足するように変性してなる末端変性ポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。
すなわち、通常の未変性ポリアミド系樹脂を、末端調整剤によりN−置換アミド変性したものであり、変性されたカルボキシル基の割合が、変性前のポリアミド系樹脂が含有していたカルボキシル基の総数に対して5%以上であるポリアミド系樹脂が用いられる。
かかる変性量が少なすぎると、ポリアミド系樹脂中のカルボキシル基が多く存在することとなり、かかるカルボキシル基が溶融成形時にEVOH樹脂と反応してゲルなどを発生し、得られたフィルムの外観が不良となりやすい傾向がある。かかる末端変性ポリアミド系樹脂(B)は、例えば特公平8−19302に記載の方法にて製造することができる。
上記末端調整剤とは、ポリアミド系樹脂中のカルボキシル基量を減少させるため、カルボキシル基と反応することが可能なアミンが用いられ、かかるアミンとは、HNRR’で表わされるモノ置換アミン(R’が水素原子)またはジ置換アミンである。
Rおよび/またはR’が炭化水素基の場合、カルボキシル基を有さない炭化水素基であればよく、本発明の趣旨を阻害しない範囲において水酸基、アミノ基、カルボニル基等、他の官能基を有していても構わないが、好ましくは脂肪族炭化水素基である。
RおよびR’の構造は同じであっても異なっていても良く、炭素数1〜22の炭化水素基であり、好ましくは炭素数5〜20の炭化水素基である。
末端変性ポリアミド系樹脂(B)の変性されていない末端のカルボキシル基の含有量は、少ないことが好ましい。ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液にて滴定して算出した値(ポリマー1gに対するモル当量)で通常0〜50μeq/ポリマー1gであり、好ましくは0〜30μeq/ポリマー1gであり、特に好ましくは0〜25μeq/ポリマー1gである。かかる値が大きすぎた場合、製膜時にゲルなどを発生し外観不良となりやすく、レトルト性が低下する傾向にある。
かかる値が小さすぎた場合、物性の面からは不都合はないが、生産性が低下する傾向があるためある程度は残存していても構わない。この場合、通常5〜50μeq/ポリマー1g、さらには10〜30μeq/ポリマー1g、特には15〜25μeq/ポリマー1gであることが望ましい。
末端変性ポリアミド系樹脂(B)の融点は、通常200〜250℃、好ましくは200〜230℃である。
末端変性ポリアミド系樹脂(B)の含有量は、EVOH樹脂(A)に対して通常0.1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは10〜15重量%である。かかる値が該上記の重量比よりも少ない場合においては耐レトルト性が充分とならない傾向があり、また、多い場合にはガスバリア性が低下する傾向がある。
<ポリアミド(C)の説明>
本発明ではEVOH(A)および末端変性ポリアミド系樹脂(B)と共に、末端変性ポリアミド系樹脂(B)を除く、融点が180℃以上であるポリアミド系樹脂(C)を配合することを特徴とするものである。成分(C)は上記で示したような末端変性ポリアミド系樹脂(B)以外のポリアミド系樹脂であり、かつ融点が180℃以上のポリアミド系樹脂をいう。
上記融点とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温温度10℃/minで測定される融解ピーク温度(℃)を表わす。
かかるポリアミド系樹脂(C)は、ポリアミド系樹脂(B)以外の、融点が180℃以上、好ましくは180〜250℃、特に好ましくは190〜230℃である。
ポリアミド系樹脂の種類は、例えば具体的には、6ナイロン(融点225℃)、11ナイロン(融点192℃)等の開環重合ポリアミド樹脂や、6,6ナイロン(融点265℃)、6,10ナイロン(融点222℃)、6,12ナイロン(融点224℃、180℃以上のものは共重合組成が6/12=80/20〜100未満/0超(重量比)のものである)、6,6/6ナイロン等の共重合ポリアミド樹脂がある。共重合ポリアミドは、通常、公知の方法でモノマーの共重合比を調節することにより融点を180℃以上に設定する。ポリアミド系樹脂(C)として好ましくは共重合ポリアミド樹脂であり、耐衝撃性に優れるという観点から特に好ましくは6,12ナイロンである。
ポリアミド(C)の含有量は、EVOH樹脂(A)に対して通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。配合割合が該上記の重量比よりも少ない場合においては、耐衝撃性が十分改善されない傾向があり、逆に多い場合には、(A+B)の有する酸素バリア性が損なわれる傾向がある。
また、成分(B)と成分(C)の比はどちらが多くても少なくても良いが、成分(B)が多いほうが望ましく、具体的には重量比で通常(B)/(C)=0.1〜15であり、好ましくは(B)/(C)=0.5〜10、特に好ましくは(B)/(C)=1.1〜5である。かかる値が大きすぎた場合には、耐衝撃性が十分改善されない傾向があり、小さすぎた場合には、溶融成形時にゲルなどを生じやすくなる傾向がある。
<混合方法>
上記の成分(A)、(B)および(C)をブレンドするにあたっては特に限定されず、3つの成分を同時に混合したり、任意の2つの樹脂を予めブレンドした後、残り1つの樹脂をブレンドしてもかまわない。また、混合方法はバンバリーミキサー等でドライブレンドする方法や単軸またはニ軸の押出機等で溶融混練し、ペレット化して乾燥させる方法等任意のブレンド方法が採用され得る。
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を阻害しない範囲において、上記以外に可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤を適宜配合することができる。
また、本発明の樹脂組成物は、そのままフィルム、シート、カップやボトルなどに成形し、各種用途に用いてもよいが、さらに強度を上げたり他の機能を付与するために他の基材と積層して多層フィルムとすることが好ましい。
かかる他の基材としては熱可塑性樹脂が有用である。熱可塑性樹脂としては例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィン類、これらポリオレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したグラフト化ポリオレフィン類、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類、更には他のEVOH等が挙げられるが、積層体の物性(特に強度)等の実用性の点から、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂やポリアミド系樹脂が好ましく、特にはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体等のポリオレフィン類、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。
これら基材樹脂には、本発明の趣旨を阻害しない範囲において、従来知られているような酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいても良い。
本発明の樹脂組成物を他の基材と積層するときの積層方法は公知の方法にて行うことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に該樹脂を溶融押出ラミネートする方法、該樹脂と他の基材とを共押出する方法、該樹脂(層)と他の基材(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、他の基材上に該樹脂の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等が挙げられる。
これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出しする方法が好ましい。
かかる共押出法としては、具体的には、マルチマニーホールドダイ法、フィードブロック法、マルチスロットダイ法、ダイ外接着法、インフレーション法等の公知の方法を採用することができる。ダイスの形状としてはTダイス、丸ダイス等を使用することができる。溶融押出時の溶融成形温度は特に制限するものではなく、通常150〜300℃である。
多層フィルムの層構成は、EVOH樹脂組成物含有層をa(a1、a2、・・・)、熱可塑性樹脂含有層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。また、少なくとも該EVOH樹脂組成物と熱可塑性樹脂の混合物からなるリグラインド層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
なお、上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができ、かかる接着性樹脂としては、公知ものを使用すればよい。かかる接着性樹脂はbの樹脂の種類によって異なるため、適宜選択すればよいが、代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等であり、これらから選ばれた1種または2種以上の混合物が好ましい。またこれらの接着性樹脂には、EVOH組成物や他のEVOH、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、さらにはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
上記の如き多層フィルム(積層体)は、次いで(加熱)延伸処理が施され分けであるが、かかる(加熱)延伸処理とは熱的に均一に加熱されたフィルム、シート状の積層体をチャック、プラグ、真空力、圧空力、ブローなどにより、チューブ、フィルム状に均一に成形する操作を意味し、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。
延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は通常40〜170℃、好ましくは60〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎた場合は延伸性が不良となり、高すぎた場合は安定した延伸状態を維持することが困難となる。
なお、延伸倍率は高倍率であるほど物性が向上する傾向にあり、面積比で通常4〜80倍、好ましくは9〜80倍、特に好ましくは20〜80倍である。
なお、得られた多層延伸フィルムに寸法安定性を付与することを目的として、延伸が終了した後、次いで熱固定を行ってもよい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら通常80〜180℃、好ましくは100〜165℃で通常2〜600秒間程度熱処理を行う。
また、本発明の多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行う。
多層延伸フィルムの熱可塑性樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、熱可塑性樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、熱可塑性樹脂層は通常1〜200μm、好ましくは2〜50μm、接着性樹脂層は0.1〜30μm、好ましくは0.2〜10μm程度の範囲から選択される。
また、EVOH樹脂組成物含有層の厚みは要求されるガスバリア性などによって異なるが、通常は0.5〜30μmであり、好ましくは0.8〜10μm、特に好ましくは1〜5μmであり、かかる厚みが薄すぎると十分なガスバリア性が得られない傾向があり、逆に厚すぎるとフィルムの柔軟性が不足する傾向にある。
得られた多層フィルムに、さらに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、かかる基材としては前記の熱可塑性樹脂以外にも任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシートおよびその無機化合物蒸着物、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
本発明の樹脂組成物は、長期的な加工においても安定した粘度挙動を示し、かつレトルト処理後に、砂漠のような高温かつ低湿度下で保存した場合にも耐衝撃性の低下が抑制されるため、長期保存品や長距離輸送を行う食品、薬品類の包装材として特に有用である。
実施例1
EVOH樹脂(A)(エチレン含有量29モル%、ケン化度99.7モル%、MFR5.0g/10分(210℃、荷重2160g))とポリアミド系樹脂(B)として炭化水素基末端変性ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、融点225℃、相対粘度4.3、末端カルボキシル基含有量22μeq/ポリマー1g(ポリマー1gに対するモル当量))およびポリアミド系樹脂(C)として6,12−ナイロン(宇部興産(株)製、PA−6/12 7024B、融点200℃)を用い、配合比が(B)を(A)に対して11重量%[(A)/(B)=90/10]として、かつ(C)を(A)に対して6重量%[{(A)+(B)}/(C)=95/5]となるように、単軸押出機(Φ40mm、L/D=28)、ダイ、冷却水槽、カッターからなるペレット化装置を用いて溶融混合(押出機設定温度:C1/C2/C3/C4/H/D=190/220/230/230/220/220℃)して、目的とする樹脂組成物(ア)のペレットを得た。
得られた樹脂組成物(ア)、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社”NovatecHD HY540”)(イ)、接着性樹脂(三菱化学(株)製、”Modic−AP H503”)(ウ)を上向き空冷式5種5層ブローン成形機を用いて、層構成および厚みが(イ)/(ウ)/(ア)/(ウ)/(イ)=30μm/5μm/10μm/5μm/30μmの層形成を有する折幅300mmの積層フィルムをインフレーション成形法により成形した。このとき、得られた積層フィルムは筒状であり、かかる筒状積層フィルムから10cm×10cmの大きさでフィルムを切り出し、フィルム片(I)を2枚得た。
得られたフィルム片(I)2枚を、筒状時に筒の内側であった(イ)層同士が接するように重ねあわせ、その3辺をインパルスシーラー(富士インパルス(株)製、FA−300−10形)を用いてヒートシールした。次いで、未シール開口部より蒸留水150mlを入れた後に該部位を同様にヒートシールして密封し、15cm×15cmのパウチを作成した。
このパウチを熱水浸漬式滅菌装置(株式会社日阪製作所製)を用いて120℃、90分間レトルト処理した。前期装置から取り出した直後に内容物を完全に取り除き、かかるパウチを53℃、0%RHにて2日間熱風処理した。かかるパウチから10cm×10cmの大きさでフィルムを切り出し、フィルム片(II)を得た。
<評価>
[ロングラン性]
得られたペレット55gをプラスチコーダー(ブラベンダー社製、50mm径の二軸ニーダー)にて50rpmで230℃、2時間混練した後の樹脂の状態を目視観察して以下のように評価した。結果を表1に示す。
○・・・溶融状態
△・・・ゴム状
×・・・砂状
[耐衝撃強度]
得られたフィルム片(I)および(II)をフィルムインパクトテスター(株式会社安田精機製作所製、先端:φ25mmプラスチック球、1.36kg)にて23℃、50%RH条件下にてn=8で測定し、最大値と最小値を除いたn=6の平均値(kgf/フィルム1枚)を耐衝撃性の値とした。なお、先端と接触する面はパウチの外側とした。レトルト後の耐衝撃性を以下のように評価した。条件を表1、結果を表2に示す。
比較例1
実施例1において、ポリアミド系樹脂(C)を用いず、EVOH(A)に対して末端変性ポリアミド系樹脂(B)の配合量を11重量%((A)/(B)=90/10)とした以外は同様に行って積層体を得、同様に評価を行った。条件を表1、結果を表2に示す。
比較例2
実施例1において、ポリアミド系樹脂(C)として〔宇部興産(株)製、PA−6/12 7128B、融点132℃〕を用いた以外は同様に行って積層体を得、同様に評価を行った。条件を表1、結果を表2に示す。
[表1]条件
Figure 2008274059
[表2]評価
Figure 2008274059
比較例1より、(A)成分と(B)成分のみの組成物では、レトルト処理後の耐衝撃性が41%低下するところ(比較例1参照)、(A)成分と(B)成分に加え、(C)成分を配合する樹脂組成物を用いた実施例1では、耐衝撃性は28%しか低下しない。これより、本願発明の効果は(B)成分と(C)成分それぞれが共存することによる効果であることが判る。
かかる結果より、本願発明の樹脂組成物を用いた場合、強度が充分なフィルムが得られることが判る。

Claims (6)

  1. エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)に、炭素数1〜22の炭化水素基で末端が変性されたポリアミド系樹脂(B)、および、該末端変性ポリアミド系樹脂(B)以外の、融点が180℃以上のポリアミド系樹脂(C)を配合してなることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 末端変性ポリアミド系樹脂(B)と、該末端変性ポリアミド系樹脂(B)以外の、融点が180℃以上のポリアミド系樹脂(C)の比が、重量比で(B)/(C)=0.1〜15であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 炭素数1〜22の炭化水素基で末端が変性されたポリアミド系樹脂(B)の融点が、200〜250℃であることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の樹脂組成物。
  4. 融点が180℃以上のポリアミド系樹脂(C)が、6,12ナイロンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物層からなる単層フィルム。
  6. 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する積層フィルム。
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