JP2018059036A - エチレンービニルエステル系共重合体ケン化物を含む樹脂組成物及び当該組成物を用いた多層構造体 - Google Patents

エチレンービニルエステル系共重合体ケン化物を含む樹脂組成物及び当該組成物を用いた多層構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】 熱水殺菌処理を行った場合であってもガスバリア性に優れ、且つ高湿度下で長期間、放置しても、液体を含むブリスタ状の欠点発生が抑制されるガスバリア層を提供できるEVOH樹脂組成物及び当該組成物をガスバリア層として用いた多層構造体を提供する。【解決手段】 エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)、水和物形成性の金属塩(B)及びポリアルキレンオキサイド(C)を含有することを特徴とする樹脂組成物を用いる。【選択図】 なし

Description

本発明は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(以下、「EVOH樹脂」と称することがある)組成物、およびこれを用いた多層構造体に関するものであり、さらに詳しくは、樹脂組成物層を含む多層構造体が、熱水殺菌処理後のガスバリア性に優れ、かつ高湿度下で放置した場合でも、外観不良の原因となる液体を含むブリスタ状の欠点発生を防止したEVOH樹脂組成物に関する。
EVOH樹脂は、分子鎖に含まれる水酸基が強固に水素結合して結晶部を形成し、かかる結晶部が外部からの酸素の侵入を防止するため、酸素バリア性をはじめとして、優れたガスバリア性を示すことができる。このため、EVOH樹脂層をガスバリア層として用いた多層フィルムが食品等の包装用フィルムとして利用されている。しかしながら、EVOH樹脂フィルム層をガスバリア層として用いた多層フィルムで包装した包装物を、レトルト処理やボイル処理等の熱水殺菌処理、すなわち長時間、熱水にさらされる処理に供すると、ガスバリア性能が低下することが知られている。かかるガスバリア性の低下は、熱水殺菌処理により、多層フィルムの端縁等からEVOH樹脂層内に水分が入り込み、EVOH樹脂の分子間の水素結合が崩れ、外部から酸素分子が侵入しやすくなったためと考えられている。
熱水殺菌処理によるガスバリア性能の低下を抑制する方法としては、EVOH樹脂に、乾燥剤として、水和物形成性のアルカリ土類金属塩を配合することが知られている。例えば、特開2010−59418号公報(特許文献1)には、EVOH樹脂に、カルボン酸塩水和物の部分脱水物または完全脱水物を含有する樹脂組成物が提案されている。かかるカルボン酸塩水和物の部分脱水物または完全脱水物は、水分子を結晶水として取り込む性質を有することから、熱水処理によりEVOH樹脂層に侵入した水分を、結晶水として吸収して、分子間の水素結合の崩れを防止し、これによりガスバリア性能が早期に回復することができると考えられている。
また、国際公開第2011/027741号(特許文献2)には、熱水殺菌処理後のガスバリア性の保持に加えて、さらに溶融混練特性も改善したEVOH樹脂組成物として、EVOH樹脂に、乾燥剤として、多価金属硫酸塩水和物の完全脱水物または部分脱水物を含有することが提案されている。
特許文献1,2に記載の樹脂組成物を中間層として使用し、接着樹脂層を介してポリオレフィン系樹脂層で挟持した多層構造体は、熱水殺菌処理後のガスバリア性に優れている。
特開2010−59418号公報 国際公開第2011/027741号
しかしながら、上記のような多層構造体を熱水殺菌処理した後に高湿度下で放置した場合、樹脂組成物層と接着樹脂層との層間で液体を含むブリスタ状の欠点となり、ひどい場合には、樹脂組成物層と接着樹脂層との層間剥離(デラミネーション)を引き起こす場合がある。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱水殺菌処理を行ってもガスバリア性に優れ、且つ同処理後に高湿度下で長期間、放置しても、液体を含むブリスタ状の欠点発生が抑制されるガスバリア層を提供できるEVOH樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、液体を含むブリスタ状の欠点の原因は、EVOH樹脂と共に乾燥剤として用いた水和物形成性の金属塩が、熱水殺菌処理によって吸湿力以上の過剰な水分を取り込み水溶したり、一旦取り込んだ水分が環境の変化によって放出する等の理由により、樹脂組成物層内で発生する液体にあると推測した。そして、そのような液体が発生した場合に樹脂組成物層内で該液体を吸収すべく、水溶性樹脂を配合することを想起した。さらに鋭意検討の結果、水溶性樹脂の中でもポリアルキレンオキサイドを併用する場合に、上記課題が解決しさらに顕著な効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
なお、一般的にポリアルキレンオキサイドは分解点が150℃程度である。これに対してEVOH樹脂は融点が160〜190℃であり、一般的にEVOHの溶融成型加工を考慮した場合、EVOHの融点以上の環境に晒されることから、EVOH樹脂の配合物としてポリアルキレンオキサイドを採用することは通常考え難いものである。しかしながら本発明者らは、かかるポリアルキレンオキサイドをあえて配合することにより、上記課題が解決することを見出した。
すなわち、本発明のEVOH樹脂組成物は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)、水和物形成性の金属塩(B)及びポリアルキレンオキサイド(C)を含有することを特徴とする樹脂組成物に存する。
また本発明は、上記本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層構造体も提供するものである。
本発明のEVOH樹脂組成物の層を含む多層構造体は、熱水殺菌処理後のガスバリア性に優れ、且つ同処理後、高湿度下で長期間、放置しても、液体を含むブリスタ状の欠点発生が抑制されるという効果を有する。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
<EVOH樹脂組成物>
本発明のEVOH樹脂組成物は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)、水和物形成性の金属塩(B)及びポリアルキレンオキサイド(C)を含有する樹脂組成物である。以下、各成分について、説明する。
[(A)EVOH樹脂]
本発明で用いるEVOH樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン−ビニルエステル系共重合体)をケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。上記ビニルエステル系モノマーとしては、経済的な面から、一般的には酢酸ビニルが用いられる。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
このようにして製造されるEVOH樹脂は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含む。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えばギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
上記エチレン及び上記ビニルエステル系モノマーは、通常はナフサなどの石油由来の原料が用いられているが、シェールガスなど天然ガス由来の原料や、さとうきび、テンサイ、トウモロコシ、ジャガイモなどに含まれる糖、デンプンなどの成分、又はイネ、麦、キビ、草植物等などに含まれるセルロースなどの成分から精製した植物由来の原料からのモノマーを用いてもよい。
EVOH樹脂におけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値で、通常20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、特に好ましくは25〜35モル%である。かかる含有量が低すぎる場合は、高湿下のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が不足する傾向がある。
EVOH樹脂におけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
また、該EVOH樹脂のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは3〜35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、製膜性が不安定となる傾向があり、小さすぎる場合には粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
本発明で用いられるEVOH樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
前記コモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−1,2−ジオール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物である、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル等のグリセリンモノ不飽和アルキルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類;アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類;トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーが挙げられる。
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変
性」されたEVOH系樹脂を用いることもできる。
特に、ヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOH樹脂は、二次成型性が
良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好まし
い。
かかる1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂は、側鎖に1,2−ジオール構造
単位を含むものである。かかる1,2−ジオール構造単位とは、具体的には下記構造単位
(1)で示される構造単位である。
Figure 2018059036
(1)式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、X
は単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有
機基を示す。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における有機基としては、特に
限定されず、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル
基、イソブチル基、tert−ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等
の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基
、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
1〜R3は、通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の飽
和炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4〜R6は、通常炭
素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原
子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素であるものが最も
好ましい。
また、一般式(1)で表わされる構造単位中のXは、代表的には単結合である。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖と
しては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナ
フチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換
されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2)m−、−(CH2O)mCH
2−等のエーテル結合部位を含む構造;−CO−、−COCO−、−CO(CH2)mCO−
、−CO(C64)CO−等のカルボニル基を含む構造;−S−、−CS−、−SO−、−
SO2−等の硫黄原子を含む構造;−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR
−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造;−HPO4−等のリン原子を
含む構造などのヘテロ原子を含む構造;−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi
(OR)2O−等の珪素原子を含む構造;−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(
OR)2O−等のチタン原子を含む構造;−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(
OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる。
なお、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またm
は自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である
。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で−CH2OCH2−、および炭素数1〜
10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であ
ることが好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、
1〜R6がすべて水素原子であり、Xが単結合であるものである。すなわち、下記構造式
(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
Figure 2018059036
上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を含有する場合、その含有量
は通常0.1〜20モル%、さらには0.1〜15モル%、特には0.1〜10モル%の
ものが好ましい。
また、本発明で使用されるEVOH樹脂は、異なる他のEVOH樹脂との混合物であっ
てもよく、かかる他のEVOH樹脂としては、一般式(1)で表わされる1,2−ジオー
ル構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、重合度が異なるもの、他の共
重合成分が異なるものなどを挙げることができる。
本発明で用いられるEVOH樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般
にEVOH樹脂に配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤
、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッ
キング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シラ
ンカップリング剤、酸素吸収剤などが含有されていてもよい。
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸
、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸
類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カ
ルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、
ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アル
カリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩などの塩等の添加剤を添加して
もよい。これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、
リン酸塩を添加することが好ましい。
酢酸を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂100重量部に対して通常0.00
1〜1重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部、特に好ましくは0.010〜0.
1重量部である。酢酸の添加量が少なすぎると、酢酸の含有効果が十分に得られない傾向
があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
また、ホウ素化合物を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂100重量部に対し
てホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001〜1重量部であり、
好ましくは0.002〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部
である。ホウ素化合物の添加量が少なすぎると、ホウ素化合物の添加効果が十分に得られ
ないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の添加量としては、EVOH樹脂10
0重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0
.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.
03重量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことが
あり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。尚、EVOH樹
脂に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好まし
い。
EVOH樹脂に酢酸、ホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加する方法については、特
に限定しない。例えば、i)含水率20〜80重量%のEVOH樹脂の多孔性析出物を、
添加物の水溶液と接触させて、前記多孔性析出物に添加物を含有させた後、乾燥する方法
;ii)EVOH樹脂の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝
固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして
、さらに乾燥処理をする方法;iii)EVOH樹脂と添加物を一括して混合してから押
出機等で溶融混練する方法;iv)EVOH樹脂の製造時において、ケン化工程で使用し
たアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残
存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙
げることができる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法
、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
[(B)水和物形成性の金属塩]
本発明で用いる水和物形成性の金属塩(B)とは、水分子を結晶水として取り込む性質
を有する金属塩である。好ましくは、以下の吸水特性(I)を充足するものであり、さら
に好ましくはさらに(II)も充足するものである。
吸水特性(I):最大水和物中の結晶水含有量(Y)と、使用する水和物形成性の金属
塩(B)を40℃、90%相対湿度環境下に5日間、放置した際の、当該金属塩(B)1
00gあたりの吸水量(X5)との比(X5/Y)が通常0.2以上、好ましくは1〜20
、より好ましくは2〜10、特に好ましくは2.2〜4である。かかる値が小さすぎる場
合、熱水殺菌処理後のガスバリア性が不足する傾向があり、上記範囲内である場合、本発
明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
前記最大水和物とは、結晶水を最大水和数で含有している水和物をいい、その結晶水含
有量Y(g)とは、結晶水を含まない無水物の状態にある水和物形成性の金属塩100g
が取り込むことができる結晶水の量をいう。かかる結晶水含有量(Y)は、下記式により
求められる値で、金属塩の種類に固有の値である。
Y=(最大水和物の水和数×18)/(無水物の分子量)×100
例えば、水和物形成性の金属塩として硫酸マグネシウム(MgSO4:分子量120)
を用いた場合、硫酸マグネシウムの最大水和物は7水和物であることから、下記計算によ
りY=105となる。
Y=(7×18)/120×100=105
最大水和物中の結晶水含有量Yは、水和物形成性の金属塩が最大水和物として存在する
ときの含水量に該当することから、B成分として用いる金属塩(無水物)が吸水できる最
大量の指標となり、EVOH樹脂に入り込んだ水分捕捉量に関する指標となる。EVOH
樹脂組成物中に浸入した水分の捕捉量が大きいほど、多層構造体における熱水殺菌処理後
の酸素透過量の低減が抑制されると考えられることから、Yは大きいほど好ましい。従っ
て、Yは、通常10g以上、さらには30g以上、特には50g以上を満たすことが好ま
しい。
一方、水和物形成性の金属塩が最大水和物で最も安定しているとは限らない。最も安定
して存在できる水和物(安定水和物)に含まれる結晶水の数は、最大水和物よりも少ない
場合がある。
前記使用する水和物形成性の金属塩(B)を40℃、90%相対湿度環境下に5日間、
放置した際の、当該金属塩(B)の100gあたりの吸水量(X5)とは、対象とする水
和物形成性のアルカリ土類金属塩の脱水物(無水物)100gを、40℃、90%相対湿
度環境下に5日間放置した後の吸水量(g)であり、下記式により求められる。
5=(5日後の吸水重量)/(初期重量)×100
5日間の吸水量は、(放置5日後の重量−初期重量)より算出できる。
式中の「初期重量」は、実際に使用する金属塩の使用前重量をいう。
「初期重量」「5日後の吸水重量」は、いずれも実際の測定値であり、電子天秤などの
重量測定器を用いて測定できる。当該値は、金属塩の化合物の種類だけでなく、当該化合
物の製造方法、含有結晶水の有無、性状などによっても異なる値である。
また、B成分として、水和物形成性の金属塩の無水物を用いる場合、理論的には含水量
0gのはずであるが、ここで用いる初期重量は、例えば、熱重量測定装置(パーキンエル
マー社製、熱重量測定装置「Pyris 1 TGA」)を用いて、重量が平衡に達した
状態(完全脱水物の状態)の重量を採用することから、若干量の水分が含まれた重量とな
る。
前記吸水量X5は、通常200超〜400(g)、好ましくは220〜350(g)、
特に好ましくは250〜300(g)である。かかる吸水量X5が小さいアルカリ土類金
属塩では、EVOH樹脂中に進入した水分の捕捉容量が小さいことになるので、熱水殺菌
処理後のガスバリア性が不足する傾向にある。当該吸水量X5が大きい金属塩では、安定
水和物を形成する量を超える水分を取り込む傾向があるためガスバリア性が優れる傾向に
ある。
以上のようにして定義される結晶水含有量Yに対する吸水量X5の比(X5/Y)は、B
成分として用いた水和物形成性の金属塩が、安定的に捕捉できる水分量に対して、5日間
で吸水する水分量の割合を示しており、高湿度条件下にて多層構造体を放置した場合の液
体を含むブリスタ状の欠点発生に関する指標となる。
すなわち、X5/Yの値が大きい金属塩は、吸水性能が高く、水分浸入によるガリバリ
ア性の低下抑制効果に優れるが、水和物形成性の金属塩が安定的に吸水できる容量以上の
水分を取り込み、過度の吸水で液体を含むブリスタ状の欠点が発生しやすいことを表して
いる。逆に、X5/Yが小さすぎる場合、過度の吸水が防止され液体を含むブリスタ状の
欠点が発生し難いが、EVOH樹脂中に進入した水分の捕捉能が小さく、水分浸入による
ガスバリア性の低下抑制効果が不足する傾向がある。
吸水特性(II):40℃、90%相対湿度環境での24時間放置後の吸水量に対応する
初期吸水速度(Z)が50g以上、好ましくは80g以上、さらに好ましくは100g以
上である。
Zは、使用する水和物形成性の金属塩(B)100gを、40℃、90%相対湿度環境
下で24時間放置したときの吸水量(g)であらわされる。
初期吸水速度Zが小さい金属塩では、EVOH樹脂に進入した水分の捕捉能が不十分で
、熱水殺菌処理後のガスバリア性が不足する傾向にある。
以上のような吸水特性を充足する水和物形成性のアルカリ土類金属塩は、組成物中に進
入した水分を捕捉し、EVOH樹脂の熱水殺菌処理後のガスバリア性回復効果が高い傾向
がある。
以上のような吸水特性を充足し得る水和物形成性の金属塩のカチオン種としては、カリ
ウム、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属が
挙げられる。また、アニオン種としてはリン酸、炭酸、スルホン酸等の無機酸、乳酸、ク
エン酸などの有機酸(カルボン酸)が挙げられる。
上記金属塩としては例えば、硫酸マグネシウム[7水和物]、炭酸ナトリウム[10水和
物]、コハク酸2ナトリウム[6水和物]、クエン酸3ナトリウム[2水和物]などが挙げ
られる。[ ]内は、最大水和物の最大水和数を示している。これらの水和物形成性の金属
塩は、単独で用いてもよいし、2種以上混合しても用いてもよい。
上記金属塩のアニオン種が無機酸である場合、熱水殺菌処理後のガスバリア性回復効果
に優れる点で好ましい。さらも、かかるアニオン種がスルホン酸である場合、溶融混練特
性が改善される点でも好ましい。
上記金属塩のカチオン種がアルカリ土類金属である場合、2価の金属イオンが製造上、
安定である金属を選ぶことが望ましい。さらに好ましくはマグネシウム、カルシウムであ
る。
すなわち、上記金属塩として好ましくはアニオン種がスルホン酸でありカチオン種がア
ルカリ土類金属のマグネシウム金属塩である。
本発明で用いる水和物形成性の金属塩は、安定水和物が、通常1〜20水和物となる金
属塩であり、好ましくは3〜18水和物となる金属塩であり、特に好ましくは5〜15水
和物となる金属塩である。安定水和物が含有する結晶水含有量が小さいと、進入した水分
の捕捉能が小さくなる傾向にある。
このような金属塩の最大水和物の無水物(結晶水が0の場合)又は部分水和物(安定水
和物の水和数未満の結晶水を含有する金属塩)が、乾燥剤たるB成分として用いることが
できる。部分脱水物(又は部分水和物)の場合、一般に、結晶水量が最大水和量の70%
未満(好ましくは50%以下、さらに好ましくは10%以下)である部分水和物であれば
、上記吸水特性を充足できる傾向にある。
B成分として用いられる水和物形成性の金属塩の無水物または部分水和物は、水和物を
完全脱水又は部分脱水することにより製造してもよいし、市販されている無水物又は部分
水和物結晶を用いてもよい。要するに、上述の吸水特性(I)を充足する水和物形成性の
金属塩が好ましく、更に上述の吸水特性(II)の吸水特性を充足することが好ましい。
水和物形成性の金属塩である無水物(完全脱水物)又は部分水和物(部分脱水物)の化
合物全体に対する含水量は、化学式から算出される理論量とは必ずしも一致しない。例え
ば、無水物(完全脱水物)の場合、理論的には結晶水に基づく含有水分量が0であるから
、熱重量測定装置で測定される含水率も0重量%のはずである。しかしながら、吸湿等に
より、測定値は0重量%より多くなる場合がある。吸湿した場合であっても、完全脱水物
としては、上記熱重量測定装置で測定される値が0〜5重量%であることが好ましい。
尚、実際の含水量については、例えば、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製、熱重
量測定装置「Pyris 1 TGA」)を用いて測定することができる。測定値として
の含水率は、化合物全体に対する水分量の割合であり、測定開始時から重量平衡に到達し
た時点で含まれている水分割合(含水率)で算出した値である。
水和物形成性のアルカリ土類金属塩は、通常粉体である。その粒子分布としてはAST
M E11−04に基づいて測定した値で、通常120メッシュパスが50体積%以上で
あり、好ましくは120メッシュパスが80体積%以上、特に好ましくは120メッシュ
パスが95体積%以上である。かかる粒子分布は、EVOH樹脂への分散性が良好となる
点から、120メッシュパスの粒子割合が多いことが好ましい。120メッシュパスの粒
子割合が少なすぎる場合、多層構造体の外観が悪化する傾向がある。
〔(C)ポリアルキレンオキサイド〕
本発明においては、上記水和物形成性の金属塩(B)に対し、ポリアルキレンオキサイ
ド(C)を併用し、EVOH樹脂に配合する。かかる樹脂組成物を中間層に用いて、接着
樹脂層を介してポリオレフィン系樹脂層で挟持した多層構造体を高湿度下で放置した場合
には、過剰な吸湿に伴う金属塩(B)の潮解や水溶化がおこっても、ポリアルキレンオキ
サイドがこれらの水分を吸収することで樹脂組成物層内における水分移動が抑制されるた
めか、液体を含むブリスタ状の欠点発生が抑制され外観良好な多層構造体を得ることが可
能となる。
ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサ
イド、ポリエチレンオキサイドーポリプロピレンオキサイド共重合体等が挙げられるが、
結晶性の点でポリエチレンオキサイドが好ましい。
かかるポリアルキレンオキサイドは静的光散乱法で測定した重量平均分子量が通常5万
以上であり、好ましくは10万〜1500万、好ましくは10万〜1000万、より好ましくは15万〜800万であり、さらに好ましくは30万〜800万であり、特に好ましくは100万〜800万である。かかる値が低すぎる場合、熱水殺菌処理を行った後に、アルキレンオキサイド分子が溶出する傾向がある。かかる値が高すぎる場合、ポチエチレンオキサイドの溶融粘度が高くなり、樹脂組成物内における分散性が低下する傾向がある。また、かかるポリアルキレンオキサイドは常温で固体であることが好ましい。
上記ポリアルキレンオキサイド(C)の、樹脂組成物へ配合する前の含水率は通常10
重量%以下であり、好ましくは2重量%以下である。かかる含水率が高すぎる場合は、後
述する溶融混練を行う際に、発泡する傾向がある。
上記ポリアルキレンオキサイド(C)は熱安定性が高いことが好ましい。例えばPyr
is1 TGA(パーキンエルマー製)にて10℃/分で昇温した場合における5%重量
減少時の温度が、窒素雰囲気下において通常200〜400℃、好ましくは250〜39
0℃、特に好ましくは330〜380℃であることが好ましい。かかる温度が低すぎる場
合は溶融成形時に分解が発生し、多量のガスが発生する傾向がある。
本発明においては、EVOH樹脂(A)中に水和物形成性の金属塩(B)が分散してい
ることが好ましい。
したがって、本発明の樹脂組成物において、EVOH樹脂(A)/水和物形成性の金属
塩(無水物)(B)の含有重量比(A/B)は、特に限定しないが、通常50超/50未満
〜99/1(50/50を超えて99/1以下)、さらに好ましくは70/30〜97/
3、特には85/15〜92/8である。かかる比率が大きすぎる場合にはEVOH樹脂
(A)に入り込んだ水分を除去する効果が不足し、熱水殺菌処理後のガスバリア性回復効
果が十分とならない傾向がある。一方、小さすぎる場合には、EVOH樹脂の相が形成さ
れず、ガスバリア性が十分とならない傾向がある。また、A/Bの値が小さいということ
は、金属塩の含有量が多いことを意味し、樹脂組成物の流動性が低下し、ひいては押出成
形性が低下する傾向にある。
また、本発明の樹脂組成物において、水和物形成性の金属塩(無水物)(B)に対する前
記ポリアルキレンオキサイド(C)の含有重量比(B/C)は、特に限定しないが、通常
1/99〜99/1、さらに好ましくは10/90〜90/10、特には30/70〜8
0/20である。かかる比率が大きすぎる場合には液体を含むブリスタ状の欠点抑制効果
が低い傾向がある。一方、小さすぎる場合には、熱水殺菌処理後のガスバリア性回復速度
が遅い傾向がある。
なお本発明の樹脂組成物において、EVOH樹脂(A)/前記ポリアルキレンオキサイ
ド(C)の含有重量比(A/C)は、特に限定しないが、通常50超/50未満〜99/
1(50/50を超えて99/1以下)、さらに好ましくは70/30〜98/2、特に
は80/20〜97/3である。かかる配合比率が大きすぎる場合は液体を含むブリスタ
状の欠点抑制効果が低い傾向がある。一方、小さすぎる場合は熱水殺菌処理後のフィルム
において、十分なガスバリア性能が得られない傾向がある。
〔他の配合樹脂〕
本発明のEVOH樹脂組成物は、樹脂成分として、EVOH樹脂(A)以外の熱可塑性
樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」と表記することがある)を、EVOH樹脂(A)に対
して、通常30重量%以下にて含有してもよい。
上記「他の熱可塑性樹脂」の原料としては、例えば具体的には、直鎖状低密度ポリエチ
レン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸
ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフ
ィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重
合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン
)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、ポリ環状オ
レフィン、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエ
ステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、
ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、
アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系
エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレ
ン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記の「他の熱可塑性樹脂」は、通常はナフサなど石油由来の原料が用いられているが
、シェールガスなど天然ガス由来の原料や、さとうきび、テンサイ、トウモロコシ、ジャ
ガイモなどに含まれる糖、デンプンなどの成分、またはイネ、麦、キビ、草植物などに含
まれるセルロースなどの成分から精製した植物由来の原料を用いてもよい。
特に、本発明の樹脂組成物を多層構造体として食品の包装材として用いた場合、該包装
材の熱水殺菌処理後に、ガスバリア性の低下を抑制したり、包装材端部にてEVOH樹脂
の溶出を防止する点で、特にポリアミド系樹脂(D)を配合することが好ましい。ポリア
ミド系樹脂は、アミド結合がEVOH樹脂のOH基及び/又はエステル基との相互作用に
よりネットワーク構造を形成することが可能であり、ガスバリア性の低下を抑制したり、
熱水殺菌処理時のEVOH樹脂の溶出を防止することができると推測される。よって、レ
トルト食品やボイル食品等の熱水殺菌処理用の食品包装材として用いられる樹脂組成物の
場合には、ポリアミド系樹脂を添加することが好ましい。
該ポリアミド系樹脂(D)としては、公知のものを用いることができる。
例えば具体的には、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナ
イロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロ
ン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーが挙げられる。また
共重合ポリアミド系樹脂としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、
ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイ
ロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンド
デカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデ
カメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体
(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9
)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/
66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロ
ン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペー
ト共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムア
ジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)
、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサ
メチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポ
リアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミ
ド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミ
ド共重合体、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドや、ポリ−p−フェニレン・3−4
'ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これ
らのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミ
ンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等が挙げられる。あるいは
これらの末端変性ポリアミド系樹脂であってもよく、好ましくは末端変性ポリアミド系樹
脂である。
末端変性ポリアミド系樹脂とは、例えば具体的には、炭素数1〜22の炭化水素基で変
性された末端変性ポリアミド系樹脂であり、市販のものを用いてもよい。より詳細には、
例えば末端変性ポリアミド系樹脂の末端COOH基の数[a]と、末端CONR1020
(但し、R10は炭素数1〜22の炭化水素基、R20は水素原子又は炭素数1〜22の炭化
水素基)の数[b]が、
100×b/(a+b)≧5
を満足する末端変性ポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。
末端変性ポリアミド系樹脂は、通常の未変性ポリアミド系樹脂のカルボキシル基を末端
調整剤によりN−置換アミド変性したものであり、変性前のポリアミド系樹脂が含有して
いたカルボキシル基の総数に対して5%以上変性されたポリアミド系樹脂である。かかる
変性量が少なすぎると、ポリアミド系樹脂中のカルボキシル基が多く存在することとなり
、かかるカルボキシル基が溶融成形時にEVOH樹脂と反応してゲルなどを発生し、得ら
れたフィルムの外観が不良となりやすい傾向がある。かかる末端変性ポリアミド系樹脂は
、例えば特公平8−19302に記載の方法にて製造することができる。
上記末端調整剤としては、ポリアミド系樹脂中のカルボキシル基量を減少させるために
、カルボキシル基と反応することが可能なアミンが用いられる。かかるアミンとは、HN
1020で表わされるモノ置換アミン(R20が水素原子)またはジ置換アミンである。H
NR1020のR10および/またはR20が有機基の場合、カルボキシル基を有さない炭化水
素基であればよく、本発明の趣旨を阻害しない範囲において水酸基、アミノ基、カルボニ
ル基等、他の官能基を有していても構わないが、好ましくは脂肪族炭化水素基である。具
体的には、R10及びR20は炭素数1〜22の炭化水素基であり、好ましくは炭素数5〜2
0の炭化水素基である。R10とR20とは同じであっても異なっていても良い。
末端変性ポリアミド系樹脂の変性されていない末端のカルボキシル基の含有量は、少な
いことが好ましい。ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.1N水酸化ナト
リウム水溶液にて滴定して算出した値(ポリマー1gに対するモル当量)で通常0〜50
μeq/ポリマー1gであり、好ましくは0〜30μeq/ポリマー1gであり、特に好
ましくは0〜25μeq/ポリマー1gである。かかる値が大きすぎた場合、製膜時にゲ
ルなどを発生し外観不良となりやすく、レトルト性が低下する傾向にある。かかる値が小
さすぎる場合、物性の面からは不都合はないが、生産性が低下する傾向があるので、ある
程度は残存していても構わない。この場合、通常5〜50μeq/ポリマー1g、さらに
は10〜30μeq/ポリマー1g、特には15〜25μeq/ポリマー1gであること
が望ましい。
また、未変性ポリアミド系樹脂の末端NH2基についても末端カルボキシル基の場合と
同様に、炭素数1〜22の炭化水素基で変性されていることが好ましい。従って、このと
きに用いる末端調整剤としては、ポリアミド系樹脂中のアミノ基量を減少させるため、ア
ミノ基と反応することが可能なカルボン酸、具体的には、RCOOHで表わされるモノカ
ルボン酸(式中、Rは炭素数1〜22の炭化水素基)が用いられる。
以上のような末端変性ポリアミド系樹脂の融点は、通常200〜250℃、好ましくは
200〜230℃である。
他の熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂(D)を用いる場合、EVOH樹脂/ポリア
ミド系樹脂の含有重量比(A/D)は、通常99/1〜70/30であり、好ましくは9
7/3〜75/25、特に好ましくは95/5〜85/15である。ポリアミド樹脂の比
率が大きすぎる場合には、ロングラン成形性およびガスバリア性が不足する傾向がある。
ポリアミド樹脂の含有量比率が小さすぎる場合には、熱水処理後のEVOH樹脂の溶出抑
制効果が不十分となる傾向にある。
なお、水和物形成性の金属塩(B)のポリアミド系樹脂(D)に対する含有重量比とし
ては、該金属塩完全脱水物としての含有重量比(B/D)にて通常95/5〜5/95で
あり、好ましくは70/30〜30/70、特に好ましくは60/40〜40/60であ
る。ポリアミド樹脂の比率が大きすぎる場合には、熱水殺菌処理後のガスバリア性が不十
分となる傾向がある。ポリアミド樹脂の比率が小さすぎる場合には、熱水殺菌処理時にE
VOH樹脂が溶出しやすくなる傾向がある。
〔配合剤〕
(E)分散剤
さらに、本発明の樹脂組成物には、分散剤を含有することが好ましい。
本発明で使用することができる分散剤としては、従来より樹脂組成物に用いられていた
分散剤で、例えば、高級脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステ
アリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等)、高級脂肪酸金属塩(ステアリン酸などの高級脂
肪酸のアルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、高級
脂肪酸エステル(高級脂肪酸のグリセリンエステル、メチルエステル、イソプロピルエス
テル、ブチルエステル、オクチルエステル等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド
、ベヘニン酸アミド等の飽和脂肪族アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽
和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エ
チレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド)、好
適には高級脂肪酸および/またはその金属塩、エステル、アミドが、更に好適にはステア
リン酸アルカリ土類金属塩および/または高級脂肪酸グリセリンエステルが用いられる。
水和物形成性の金属塩(B)の配合により、樹脂組成物の混練時のトルク値が増大する
傾向にある。また、EVOH樹脂の溶出防止に効果的なポリアミド樹脂の添加も、EVO
H樹脂の混練時のトルク値を増大させる傾向がある。このような増粘傾向は、ペレット製
造、さらにはフィルムの押出成形のようにロングラン性を要する観点からは好ましくない
。この点、分散剤を添加することにより、増粘傾向を抑制することができるので、好まし
い。高級脂肪酸の金属塩、特にステアリン酸の金属塩は、組成物内部において、水和物形
成性の金属塩に対して、滑剤としても作用しているのではないかと考えられ、優れた増粘
抑制を発揮することができる。
分散剤の添加によるEVOH樹脂組成物の増粘の抑制(優れたロングラン性)は、EV
OH樹脂の溶出防止に効果的なポリアミド樹脂共存下でも損なわれずに発揮される。従っ
て、ポリアミド樹脂を添加する場合、さらに分散剤を配合することにより、高湿度下の放
置によっても液体を含むブリスタ状の欠点の発生が抑制され外観に優れた多層構造体の生
産性改善を図ることができる。
このような分散剤の配合量は特に限定しないが、樹脂組成物中、0.01〜5重量%で
あることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%であることが好ましく、さらに好
ましくは0.5〜3重量%である。
かかる分散剤は、樹脂組成物ペレットの内部に均一に含有されてもよいし、樹脂組成物
をペレットとした際、該ペレット表面に付着させて含有させてもよい。
(F)その他の添加物
本発明のEVOH樹脂組成物には、上記成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損
なわない限り(例えば、樹脂組成物全体の5重量%未満)、エチレングリコール、グリセ
リン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;飽和脂肪族アミド(例え
ばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂
肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例
えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレ
ン)等の滑剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤
;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等);充填材(例えば上記F−1
に記載した以外の無機フィラー等);界面活性剤、ワックス;共役ポリエン化合物、エン
ジオール基含有物質(例えば、没食子酸プロピルなどのフェノール類など)、アルデヒド
化合物(例えば、クロトンアルデヒド等の不飽和アルデヒド類など)などの公知の添加剤
を適宜配合することができる。
前記共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がっ
てなる構造であって、炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合
を有する化合物である。共役ポリエン化合物は、2個の炭素−炭素二重結合と1個の炭素
−炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ジエン、3個の炭素−炭素二重結合と
2個の炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役トリエン、あるいはそれ以
上の数の炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ポ
リエン化合物であってもよい。ただし、共役する炭素−炭素二重結合の数が8個以上にな
ると共役ポリエン化合物自身の色により成形物が着色する懸念があるので、共役する炭素
−炭素二重結合の数が7個以下であるポリエンであることが好ましい。また、2個以上の
炭素−炭素二重結合からなる上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あっ
てもよい。例えば、桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物も共役ポリ
エン化合物に含まれる。
共役ポリエン化合物の具体例としては、イソプレン、ミルセン、ファルネセン、センブ
レン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の炭素−炭素二
重結合を2個有する共役ジエン化合物;1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オク
タトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の炭
素−炭素二重結合を3個有する共役トリエン化合物;シクロオクタテトラエン、2,4,
6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の炭素−炭素二
重結合を4個以上有する共役ポリエン化合物などが挙げられる。これらの共役ポリエン化
合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
共役ポリエン化合物の添加量は、EVOH樹脂100重量部に対して通常0.0000
01〜1重量部であり、好ましくは0.00001〜1重量部、特に好ましくは0.00
01〜0.01重量部であることがより好ましい。
なお、かかる共役ポリエン化合物は、EVOH樹脂に、あらかじめ含有されていること
が好ましい。
<EVOH樹脂組成物の調製方法>
上記のEVOH樹脂と、水和物形成性の金属塩およびポリアルキレンオキサイドを混合
するにあたっては、通常溶融混錬または機械的混合法(ドライブレンド)を行ない、好ま
しくは溶融混錬法である。
具体的には、(1)各成分を一括ドライブレンド後に溶融混合する方法、(2)EVO
H樹脂(A)に水和物形成性の金属塩(B)を溶融混合し、これにポリアルキレンオキサ
イド(C)を溶融混合する方法、(3)EVOH樹脂(A)にポリアルキレンオキサイド
(C)を溶融混合し、これに水和物形成性の金属塩(B)を溶融混合する方法、(4)E
VOH樹脂(A)を水和物形成性の金属塩(B)の水溶液に含浸した後に脱水し(含浸法
)、これにポリアルキレンオキサイド(C)を溶融混合する方法、等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、そのまま成形加工に供して各種成形物を得てもよいし、一旦、
金属塩水和物の部分脱水物または完全脱水物およびポリアルキレンオキサイドを配合した
高濃度組成物(マスターバッチとも称される)を製造しておき、成形時にEVOH樹脂で
希釈して、各種成形物を得てもよい。かかるマスターバッチにおけるEVOH樹脂(A)
と水和物形成性の金属塩(B)の含有重量比((A)/(B))は、通常10/90〜5
0未満/50超である。また、かかるマスターバッチにおけるEVOH樹脂(A)とポリ
アルキレンオキサイド(C)の含有重量比((A)/(C))は、通常10/90〜50
未満/50超である。
混合順序は、例えば(1)(A)成分と(B)成分及び(C)成分を同時にブレンドす
る方法;(2)まず(A)成分に(B)成分及び(C)成分を過剰量配合してブレンドし
て(B)成分の高濃度組成物を製造した後、この高濃度組成物にEVOH樹脂を加えるこ
とで、(B)成分及び(C)成分を希釈し、目的の組成とする方法がある。
通常は(1)の方法が用いられるが、流通時のコストの点からは、(2)の方法のよう
に、一旦(B)及び(C)の高濃度組成物を製造し、成形時に希釈して用いる方法も好ま
しく採用される。このとき、前記マスターバッチに対するEVOH樹脂(A)の含有重量
比(A/マスターバッチ)は、マスターバッチの組成にもよるが、通常10/90〜99
/1であり、好ましくは20/80〜95/5であり、特に好ましくは30/70〜90
/10である。
混合方法は、例えばバンバリーミキサー等でドライブレンドする方法や単軸または二軸
の押出機等で溶融混練し、ペレット化する方法等任意のブレンド方法が採用され得る。か
かる溶融混錬温度は、通常150〜300℃、好ましくは170〜250℃である。
尚、上記方法(4)のように、水和物形成性の金属塩(B)の水溶液に、EVOH樹脂
(A)を浸漬することにより、前記(B)成分を含浸させ、その後、乾燥することによっ
て製造する方法(含浸法)も採用可能である。しかしながら、この含浸法は、樹脂組成物
を成形した成形物中において、水和物形成性の金属塩(B)の水和物形成能を低下させる
傾向があるため採用し難い。
また、上記方法(1)〜(3)において、水和物形成性の金属塩(B)に代えて(B)
成分となる金属塩の安定水和物を、EVOH樹脂(A)と混合し、溶融混練した後、金属
塩水和物の水和水を蒸発させて本発明の樹脂組成物を得る方法も採用可能であるが、かか
る方法では樹脂組成物中に発泡が起こる傾向があるため採用し難い。
本発明の樹脂組成物は、原料を溶融混練した後に直接溶融成形品を得ることも可能であ
るが、工業上の取り扱い性の点から、上記溶融混練後に樹脂組成物ペレットを得、これを
溶融成形法に供し、溶融成形品を得ることが好ましい。経済性の点から、押出機を用いて
溶融混練し、ストランド状に押出し、これをカットしてペレット化する方法が好ましい。
かかるペレットの形状は例えば、球形、オーバル形、円柱形、立方体形、直方体形等が
あるが、通常、オーバル形または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用い
る場合の利便性の観点から、オーバル形の場合はペレットの最大外径を長径とし、該長径
に垂直な断面のうち最大面積の断面における最小径を短径としたとき、長径が1〜10m
m、短径が1〜10mmであることが好ましく、特に好ましくは長径が3〜6mm、短径
が2〜6mmである。円柱状の場合は底面の直径が通常1〜6mm、好ましくは2〜5m
mであり、長さは通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmである。
<溶融成形品>
本発明の樹脂組成物は、溶融成形法により例えばフィルム、シート、カップやボトルな
どに成形することができる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、
インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等が挙げられ
る。溶融成形温度は、通常150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
本発明の樹脂組成物を含む溶融成形物はそのまま各種用途に用いてもよい。このとき、
樹脂組成物の層の厚みは通常1〜5000μm、好ましくは5〜4000μm、特に好ま
しくは10〜3000μm以上である。
なお、樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物から形成される層であり、通常、上記のよ
うな溶融成形を行うことにより得られる。本発明の樹脂組成物を成形してなる溶融成形物
は、通常、ベース樹脂である(A)成分に(B)成分が分散した状態となっている。
<多層構造体>
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物を含む層を少なくとも1層有するもの
である。本発明の樹脂組成物を含む層(以下、単に「樹脂組成物層」というと、本発明の
樹脂組成物を含む層をいう)は、他の基材と積層することで、さらに強度を上げたり他の
機能を付与することができる。
上記基材としては、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下「基材樹脂」という)が好
ましく用いられる。
多層構造体の層構成は、本発明の樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、基材樹脂
層をb(b1、b2、・・・)とするとき、a/b、b/a/b、a/b/a、a1/a
2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b
1/b2等任意の組み合わせが可能である。また、該多層構造体を製造する過程で発生す
る端部や不良品当等を再溶融成形して得られる、本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂の混
合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R
/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。多
層構造体の層の数はのべ数にて通常2〜15、好ましくは3〜10層である。
上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を介層しても
よい。
上記のような多層構造体のうち、特に、本発明の樹脂組成物層を中間層として含み、そ
の中間層の両側層として、基材樹脂層を設けた多層構造体の単位(b/a/b、又はb/
接着性樹脂層/a/接着性樹脂層/b)を、少なくとも含む多層構造体が好ましい。本発
明の樹脂組成物層を挟んだサンドイッチ状の多層構造体においては、樹脂組成物層の両側
に位置する少なくとも1つの層(基材樹脂層b又は接着性樹脂層)に、疎水性樹脂を用い
ることで、外部からの吸湿を防止できるので、(B)成分による乾燥効果がより有効に発
揮することができると推測される。従って、熱水殺菌処理に供される用途に用いられる包
装材料用多層構造体の場合、上記多層構造体の単位において、樹脂組成物層の両側に位置
する少なくとも1つの層に疎水性樹脂を用いることで、熱水殺菌処理後のガスバリア性回
復効果が良好となる。
上記「基材樹脂」としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン
、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピ
レン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20
のα−オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α
−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、
ポリブテン、ポリペンテン、ポリ環状オレフィン系樹脂(環状オレフィン構造を主鎖およ
び/または側鎖に有する重合体)等の(未変性)ポリオレフィン系樹脂や、これらのポリ
オレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸
変性ポリオレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のポリオレフィン系樹脂
、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチ
レン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポ
リアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレ
ン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー
、ポリスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲ
ン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン類等が挙げられる。
上記「基材樹脂」原料としては、上記例のように、通常はナフサなどの石油由来の原料
が用いられているが、シェールガスなどの天然ガス由来の原料や、さとうきび、テンサイ
、トウモロコシ、ジャガイモなどに含まれる糖、デンプンなどの成分、またはイネ、麦、
キビ、草植物などに含まれるセルロースなどの成分から精製した植物由来の原料を用いて
もよい。
これらのうち、疎水性樹脂である、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエ
ステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリエチレン系樹脂、
ポリプロピレン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂およびこれらの不飽和カルボン酸変性
ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂であり、特にポリプロピレン系樹脂が好
ましく用いられる。
ポリプロピレン系樹脂としては例えばプロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレン
ランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンと他のα−オレ
フィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)少量(1〜
10質量%)との共重合体、プロピレンとエチレンプロピレンなどが挙げられる。リサイ
クル性、ヒートシール性、コストなどの観点からプロピレンホモポリマーが好ましい。
また、本発明においてはより厳しい条件下での熱水殺菌処理を行うことを目的としてい
るため、融点が130℃以上であることが望ましい。
また、接着剤樹脂としては、公知のものを使用でき、基材樹脂「b」に用いる熱可塑性
樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物
をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られる
カルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体を挙げることができる。例えば、
無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン
、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合
体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン
酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン
系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等であり、これらから選ばれ
た1種または2種以上の混合物を用いることができる。
多層構造体において、本発明の樹脂組成物層と基材樹脂層との間に、接着性樹脂層を用
いる場合、接着性樹脂層が樹脂組成物層の両側に位置する少なくとも1つの層となること
から、疎水性に優れた接着性樹脂を用いることが好ましい。
なお、上記ポリ環状オレフィン系樹脂としては、公知の樹脂(例えば、特開2003−
103718号公報、特開平5−177776号公報、特表2003−504523号公
報等参照)を用いることができる。ポリ環状オレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン等の鎖状脂肪族ポリオレフィンと比べて、湿分透過度が低い。このため、本発明
の樹脂組成物層を中間層とし、その両面に用いる他の熱可塑性樹脂層や接着性樹脂層を用
いたサンドイッチ構造の多層構造体では、他の熱可塑性樹脂層や接着性樹脂層にポリ環状
オレフィン系樹脂を用いることで、湿気や熱水殺菌処理等による外部からの水分混入量を
少なくでき、結果として、樹脂組成物層における(B)成分の乾燥効果が有効に発揮され
、熱水殺菌処理後の酸素透過度が良好となる。
上記基材樹脂、接着性樹脂には、本発明の趣旨を阻害しない範囲(例えば、30重量%
以下、好ましくは10重量%以下)において、従来知られているような可塑剤、フィラー
、クレー(モンモリロナイト等)、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロ
ッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいても良い。
本発明の樹脂組成物を上記基材樹脂との積層(接着性樹脂層を介在させる場合を含む)
は、公知の方法にて行うことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート
等に基材樹脂を溶融押出ラミネートする方法、基材樹脂層に本発明の樹脂組成物を溶融押
出ラミネートする方法、樹脂組成物と基材樹脂とを共押出する方法、樹脂組成物(層)と
基材樹脂(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、
ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、基材樹脂上に
樹脂組成物の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等が挙げられる。これらの中でも、
コストや環境の観点から考慮して共押出しする方法が好ましい。
上記の如き多層構造体は、次いで必要に応じて(加熱)延伸処理が施される。延伸処理
は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても
逐次延伸であってもよい。また、延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チュ
ーブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる
。延伸温度は、多層構造体近傍の温度で、通常40〜170℃、好ましくは60〜160
℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎた場合は延伸性が不良となり、高すぎた場
合は安定した延伸状態を維持することが困難となる。
なお、延伸後に寸法安定性を付与することを目的として、次いで熱固定を行ってもよい
。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記延伸フィルムを緊張状態を保ちなが
ら通常80〜180℃、好ましくは100〜165℃で通常2〜600秒間程度熱処理を
行う。
また、本発明の樹脂組成物から得られた多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとし
て用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後の
フィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行えばよい。
また、場合によっては、本発明の多層構造体からカップやトレイ状の多層容器を得るこ
とも可能である。その場合は、通常絞り成形法が採用され、具体的には真空成形法、圧空
成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等が挙げられる。更に多層パ
リソン(ブロー前の中空管状の予備成形物)からチューブやボトル状の多層容器を得る場
合はブロー成形法が採用され、具体的には押出ブロー成形法(双頭式、金型移動式、パリ
ソンシフト式、ロータリー式、アキュムレーター式、水平パリソン式等)、コールドパリ
ソン式ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法(押出式コールドパリソ
ン二軸延伸ブロー成形法、射出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出成形イン
ライン式二軸延伸ブロー成形法等)などが挙げられる。得られる積層体は必要に応じ、熱
処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理
、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる
多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、更には多層構造体を構成する樹脂組成物層
、基材樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、基材樹脂の種類、接着性樹脂の種類
、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、多層構造体(延伸した
ものを含む)の厚みは、通常10〜5000μm、好ましくは30〜3000μm、特に
好ましくは50〜2000μmである。樹脂組成物層は通常1〜500μm、好ましくは
3〜300μm、特に好ましくは5〜200μmであり、基材樹脂層は通常5〜3000
0μm、好ましくは10〜20000μm、特に好ましくは20〜10000μmであり
、接着性樹脂層は、通常0.5〜250μm、好ましくは1〜150μm、特に好ましく
は3〜100μmである。
さらに、多層構造体における樹脂組成物層と基材樹脂層との厚みの比(樹脂組成物層/
基材樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの薄い層同士の比にて、通常1/99〜
50/50、好ましくは5/95〜45/55、特に好ましくは10/90〜40/60
である。また、多層構造体における樹脂組成物層と接着性樹脂層の厚み比(樹脂組成物層
/接着性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの薄い層同士の比にて、通常10/
90〜99/1、好ましくは20/80〜95/5、特に好ましくは50/50〜90/
10である。
上記の如く得られたフィルム、シート、延伸フィルムからなる袋およびカップ、トレイ
、チューブ、ボトル等からなる容器や蓋材は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシ
ング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の
各種の包装材料容器として有用である。
特に、本発明の樹脂組成物からなる層は、熱水処理後のガスバリア性が優れるため、熱
水処理を行なう食品の包装材料として特に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り
、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
<測定評価方法>
〔水和物形成性の金属塩の吸水特性〕
(1)水和物形成性の金属塩の含水量
熱重量測定装置「Pyris1 TGA(パーキンエルマー製)」を用いて、水和物形
成性の金属塩の含水量を測定した。
なお、完全脱水物の含水量については、加熱により水分除去し、重量平衡に到達した時
点での含有水分量を完全脱水物の含水量とした。
(2)40℃、90%RH下での吸水量(Xn)
水和物形成性の金属塩を、40℃、90%相対湿度環境下で、6日間放置した。水和物
形成性の金属塩100gあたりの、40℃、90%相対湿度環境下にn日間放置した後の
吸水量Xnは、下記式により求められる。
Xn=(n日間の吸水量)/(初期重量)×100
「n日間の吸水量」は、放置開始からn日後(n=1〜6の自然数)の吸水後重量(g
)を測定し、初期重量を差し引くことにより求めた。
なお、「初期重量」及び「n日後の吸水後重量」は、アルミカップ上に試料を載せて、
電子天秤で計測した。
(3)最大水和物の結晶水含有量Y(g)
下記式により求めた。
Y=(最大水和物の水和数×18)/(無水物の分子量)×100
無水物の分子量は、対象とする金属塩の化学式より求められる分子量を採用した。最大
水和物の水和数は、以下の化合物の[ ]に示す水和物である。
硫酸マグネシウム[7水和物]、クエン酸三ナトリウム[2水和物]、コハク酸二ナトリウ
ム[6水和物]。
(4)40℃、90%相対湿度環境下の初期吸水速度:Z([g/水和物形成性の金属塩
100g]/day)
上記(2)に記載の方法で測定した放置1日後の吸水量の値(X1)をZとして採用し
た。
〔樹脂組成物の評価〕
(5)ペレット生産性
溶融混練により調製したEVOH樹脂組成物を2軸押出機で押出し、ペレットを製造す
る過程において、ペレット生産性を、以下の基準で評価した。
良好:ストランド状態が良好で連続的な安定生産が可能。
不良A:発泡によりストランド切れが頻発して連続的な安定生産が困難。
不良B:樹脂融着性の不足によりストランド切れが頻発して連続的な安定生産が困難。
〔多層構造体の評価〕
多層構造体のサンプル片(10cm×10cm)を、熱水浸漬式レトルト装置(日阪製
作所)を用いて130℃で45分間熱水殺菌処理した後、取り出した。サンプル片に付着
した水滴をふき取り、評価を行った。
(6)熱水殺菌処理後の酸素透過性(cc/m2・day・atm)
上記熱水殺菌処理の直後および3日後に、酸素ガス透過量測定装置(モコン社製、OX
−TRAN 2/20)を用いて、酸素透過速度(23℃、内部相対湿度:90%、外部
相対湿度:50%)を測定した。
(7)液体を含むブリスタ状の欠点の発生状況
上記熱水殺菌処理後の多層構造体を、40℃、95%相対湿度および80℃、95%相
対湿度に設定した恒温恒湿槽中でそれぞれ放置した後、60日間において目視により、液
体を含むブリスタ状の欠点の発生状況を観察した。液体を含むブリスタ状の欠点が発生し
ない場合、発生しない日数を測定した。
なお、本発明の効果を短期間で評価する目的における促進試験として、80℃、95%
相対湿度条件で評価を行った。
〔多層構造体の製造〕
調製した組成物のペレットを、Tダイを備えた押出機に供給して、ダイを230℃とし
、厚さ320μmの3種5層多層フィルムを製膜した。押出成形条件は下記のように設定
した。
押出機を3台有し、3種5層型フィードブロック、多層フィルム成形用ダイおよび引取
機を有する共押出多層フィルム成形装置を用いて下記条件で共押出を実施し、冷却水の循
環するチルロールにより冷却して多層構造体(ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社"
ノバテックPP EA7A")/接着性樹脂(Lyondell Basell株式会社
"プレクサー PX6002")/本発明の樹脂組成物/接着性樹脂/ポリプロピレン(
厚さ(μm):120/20/40/20/120))を得た。
・中間層押出機(EVOH):40mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・内外層押出機(PP):40mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・中内外層押出機(接着性樹脂):32mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・ダイ:3種5層型フィードブロックダイ(ダイ温度:220℃)
・冷却ロール温度:50℃
〔水和物形成性の金属塩の種類と吸水特性〕
本実施例で用いた下記水和物形成性の金属塩について、上記方法にて、吸水特性を調べ
た。測定結果を表1に示す。
・硫酸マグネシウム(完全脱水物):和光純薬製の硫酸マグネシウム無水物を用いた。熱
重量測定装置にて測定される含水率は1.0%であった。
Figure 2018059036
〔EVOH樹脂組成物の製造〕
EVOH樹脂(A)として、エチレン構造単位の含有量29モル%、ケン化度99.6
%、ホウ酸含有量500ppm(ホウ素分析値より換算)のエチレン−酢酸ビニル共重合
体ケン化物(MFR4.3g/10分(210℃、荷重2160g)、揮発分0.2%)
を用いた。
水和物形成性の金属塩(B)として、上記の硫酸マグネシウム(完全脱水物)を用いた

ポリアルキレンオキサイド(C)(以下、ポリエチレンオキサイドを「PEO」と略記
することがある)として、ポリエチレンオキサイド(C1)(明成化学工業社製 アルコ
ックスE100、熱重量測定装置「Pyris1 TGA(パーキンエルマー製)」にお
ける窒素雰囲気下において5%重量減少率が363℃)、ポリエチレンオキサイド(C2
)(熱重量測定装置における窒素雰囲気下において5%重量減少率が369℃、明成化学
工業社製 アルコックス R1000)、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキ
サイド共重合体(明成化学工業社製 EP−10、プロピレンオキサイド共重合比10%
、熱重量測定装置における窒素雰囲気下において5%重量減少率が370℃)(以下、ポ
リエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体を「PEO−PPO共重合体
」と略記することがある)をそれぞれ用いた。
[ポリアルキレンオキサイドの分子量測定]
ポリアルキレンオキサイドの分子量を、静的光散乱法(以下、SLSと称することがあ
る)により測定した。精製水を溶媒として、ポリマー濃度が0.01から0.05mg/
mLまで5水準の測定溶液を調製した。細孔径0.80μmの酢酸セルロース製メンブラ
ンフィルターで、それぞれ5回づつ繰り返しろ過した。
[静的光散乱測定]
静的光散乱光度計を用いて、前述のろ液のSLS測定を行った。散乱角度θは20°か
ら160°まで10°間隔、測定は25℃であった。装置の較正にはトルエンを用いた。
[静的光散乱解析]
SLS測定から得られた散乱強度のZimmプロットより重量平均分子量(Mw)を求
めた。ここで、PEOの屈折率濃度増分dn/dcの値として0.132mL/mgを、
水の屈折率の値として1.331を用いた。
その結果、ポリエチレンオキサイド(C1)の分子量は321万Daであった。ポリエチレンオキサイド(C2)の分子量は37万Daであった。ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体の分子量は445万Daであった。
ポリアミド樹脂(D)として、6ナイロン(末端変性6ナイロン[末端COOH基:2
2μeq/g、末端COOH基の数を[a]とし、末端CONR1020基(但し、R10
炭素数1〜22の炭化水素基、R20は水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基)の数を
[b]とした場合、100×b/(a+b)=31、融点225℃、MFR5g/10分
(250℃、荷重2160g)]を用いた。
分散剤(E)としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)を用いた(以下、ステア
リン酸カルシウムを「St-Ca」と略記することがある)。
他の水溶性樹脂として、比較例1においてはカルボキシメチルセルロース(以下、CM
Cと表記することがある)として日本製紙社製サンローズF1400MC(エーテル化度
0.65)を用いた。
比較例2において、ポリビニルアルコール樹脂として、上記構造式(1a)で表される
構造単位を8モル%、重合度300、ケン化度98.5モル%以上のポリビニルアルコー
ル樹脂を用いた。
比較例3において、ポリアクリル酸ナトリウムとして、ポリアクリル酸ナトリウム(和
光純薬社製 分子量30000〜40000)を用いた。
表2に示すように、EVOH樹脂、水和物形成性の金属塩およびポリエチレンオキサイ
ドおよび他の配合成分を所定割合で配合して、ドライブレンドした後、フィーダーに仕込
み、ミキシングゾーンを2箇所有する2軸押出機にて下記条件で溶融混練した。
このようにして調製したEVOH樹脂組成物を、ストランド状に押出してドラム型ペレ
タイザーで切断し、円柱状ペレット(ペレット径:2mm、ペレット長さ:3.5mm、
揮発分:0.3%)を得た。なお、ペレット製造に際して、ダイから押し出されたストラ
ンドの状態に基づいて、ペレット生産性を評価した。
EVOH樹脂組成物の製造に用いた溶融混練条件
・2軸押出機: 直径32mm、L/D=56(日本精鋼所製)
・押出機設定温度: C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C
11/C12/C13/C14/C15/C16/D=90/90/110/150/2
20/230/230/230/230/230/230/230/230/230/2
30/230℃
・スクリュー回転数: 250ppm
・吐出量: 12kg/時間
・ストランドの冷却: 空冷
・引取速度: 8.0m/分
上記で作成したEVOH樹脂組成物のペレットについて、上記方法に基づいて多層構造
体を製造し、熱水殺菌処理後の酸素透過性、液体を含むブリスタ状の欠点の発生状況、耐
熱水殺菌処理性、を評価した。結果を表2に示す
Figure 2018059036
比較例4より、EVOHに対して硫酸マグネシウムの完全脱水物のみを用いた場合には
、得られた多層構造体は熱水殺菌処理後の酸素透過量が低く、また3日後のガスバリア性
はさらに低下し良好な値となり、厳しい条件下においても良好なガスバリア性が得られる
ことがわかった。しかしながら、高湿度下での保存による液体を含むブリスタ状の欠点が
28日目に発生した。そして、かかる結果は樹脂分として、EVOHとポリアミド樹脂を
併用した比較例5でも同様であった。
一方、実施例1は、EVOHに対して硫酸マグネシウムの完全脱水物を用い、ポリアル
キレンオキサイドとしてポリエチレンオキサイドを用いた本発明のEVOH樹脂組成物を
用いた例である。得られた多層構造体は熱水殺菌処理後の酸素透過量が低く、また3日後
のガスバリア性はさらに低下し良好な値となった。さらに、高湿度下での保存による液体
を含むブリスタ状の欠点発生が認められず、発生しない日数も長期間であった。
かかる樹脂分として、EVOHとポリアミド樹脂を併用した実施例2においても、得ら
れた多層構造体は熱水殺菌処理後の酸素透過量が低く、ガスバリア性の低下が抑制された
。また3日後のガスバリア性はさらに低下し良好な値となった。さらに、液体を含むブリ
スタ状の欠点発生が認められず、発生しない日数も、実施例1と同様の長期間であった。
また、異なるポリエチレンオキサイド(C2)を用いた実施例3においても、同様に優
れた効果が得られた。
さらに、PEO−PPO共重合体を用いた実施例4においては促進試験において15日
目に液体を含むブリスタ状の欠点が確認されたが、40℃90%Rhでの試験結果は他の
実施例と同様に良好であり、実用には十分な効果が得られることがわかった。
なお、ポリアルキレンオキサイドではなく、カルボキシメチルセルロースを用いた樹脂
組成物(比較例1)および、ポリアクリル酸ナトリウムを用いた樹脂組成物(比較例3)
では、樹脂組成物のペレット生産性が不良であり、樹脂組成物ペレットを生産することが
できなかった。
また、ポリビニルアルコール樹脂を用いた樹脂組成物(比較例2)では、得られた多層
構造体は熱水殺菌処理後の酸素透過量が低く、また3日後のガスバリア性はさらに低下し
良好な値となり、厳しい条件下においても良好なガスバリア性が得られた。しかしながら
、高湿度下での保存による液体を含むブリスタ状の欠点が28日目に発生した。
本発明のEVOH樹脂組成物層を含む多層構造体は、熱水殺菌処理後のガスバリア性に
優れ、かつ高湿度下で放置しても、液体を含むブリスタ状の欠点状の欠点発生が抑制され
ることから、工業的に極めて有用である。

Claims (6)

  1. エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)、水和物形成性の金属塩(B)及びポリアルキレンオキサイド(C)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記水和物形成性の金属塩(B)が、下記(I)の吸水特性を充足することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物:
    (I)前記金属塩(B)の最大水和物中の結晶水含有量(Y)と、前記金属塩(B)を40℃、90%相対湿度環境下、放置した際の5日間の吸水量(X5)との比(X5/Y)が2以上である。
  3. 前記水和物形成性の金属塩(B)がさらに下記吸水特性(II)を充足することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物:
    (II)前記金属塩(B)を40℃、90%相対湿度環境下に放置した際の24時間後の100gあたりの吸水量(Z)が50g以上である。
  4. (D)ポリアミド樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. (E)分散剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層構造体。
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