JP7029651B2 - 樹脂組成物及びそれを用いた多層構造体、並びにロングラン安定性改善方法 - Google Patents
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Description
本発明の樹脂組成物は、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)、ポリアミド系樹脂(B)、乾燥剤(C)、及び塩基性金属塩(D)(但し、乾燥剤(C)に該当する金属塩を除く)を含有する樹脂組成物であって、前記塩基性金属塩(D)の樹脂組成物に対する含有率は、金属量換算で40~1000ppmであり、250℃で窒素雰囲気下1時間保持した際の重量減少率が5重量%以上35重量%以下であることを特徴とする。
以下、各成分について、説明する。
本発明で用いるEVOH樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン-ビニルエステル共重合体)をケン化させることにより得られる、非水溶性の熱可塑性樹脂である。
このようにして製造されるEVOH樹脂は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主として含有し必要に応じてケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
前記コモノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類;3-ブテン-1-オール、3-ブテン-1,2-ジオール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などの誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタアクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類;アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類;トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーが挙げられる。
かかる1,2-ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂は、側鎖に1,2-ジオール構造単位を含むものである。かかる1,2-ジオール構造単位とは、具体的には下記構造単位(1)で示される構造単位である。
R1~R3は、通常炭素数1~30、特には炭素数1~15、さらには炭素数1~4の飽和炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4~R6は、通常炭素数1~30、特には炭素数1~15、さらには炭素数1~4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1~R6がすべて水素であるものが最も好ましい。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、-O-、-(CH2O)m-、-(OCH2)m-、-(CH2O)mCH2-等のエーテル結合部位を含む構造;-CO-、-COCO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(C6H4)CO-等のカルボニル基を含む構造;-S-、-CS-、-SO-、-SO2-等の硫黄原子を含む構造;-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-等の窒素原子を含む構造;-HPO4-等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造;-Si(OR)2-、-OSi(OR)2-、-OSi(OR) 2O-等の珪素原子を含む構造;-Ti(OR)2-、-OTi(OR)2-、-OTi(OR)2O-等のチタン原子を含む構造;-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる。なお、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数であり、通常1~30、好ましくは1~15、さらに好ましくは1~10である。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で-CH2OCH2-、および炭素数1~10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1~6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
ii)EVOH樹脂の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法;
iii)EVOH樹脂と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;
iv)EVOH樹脂の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
ポリアミド系樹脂(B)は、アミド結合がEVOH樹脂のOH基及び/又はエステル基との相互作用によりネットワーク構造を形成することが可能であり、これにより、熱水処理時のEVOH樹脂の溶出を防止することができる。例えば、多層構造体として食品の包装材として用いた場合において、該包装材の熱水処理後に包装材端部にて発生するEVOH樹脂の溶出を防止することができる。
具体的には例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーが挙げられる。また共重合ポリアミド系樹脂としては、例えばポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミド;ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドや、ポリ-p-フェニレン・3-4’ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド;非晶性ポリアミド;これらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性した変性ポリアミド;メタキシリレンジアンモニウムアジペート等が挙げられる。あるいはこれらの末端変性ポリアミド系樹脂であることもロングラン安定性の点で好ましい。
100×b/(a+b)≧5
を満足する末端変性ポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物は、乾燥剤(C)が含有されていることを特徴とする。前記乾燥剤(C)としては、一般に公知の吸湿性化合物、水溶性乾燥剤を用いることができる。好ましくは水溶性乾燥剤、より好ましくは水和物形成性の金属塩である。水溶性乾燥剤、特に水和物形成性の金属塩を用いた場合に、水分子を結晶水として取り込む性質を有することから、熱水処理により樹脂組成物層に侵入した水分を、結晶水として吸収して、EVOH樹脂層における分子間の水素結合の崩れを防止し、これによりガスバリア性能の低下を抑制することができると考えられる。
また、水和物形成性の金属塩を構成する酸としては、例えば硫酸、カルボン酸、リン酸、ホウ酸、硝酸、炭酸、亜硫酸等が挙げられる。この中で好ましい酸は、硫酸、カルボン酸、リン酸であり、特に好ましい酸は硫酸、カルボン酸である。
本発明の樹脂組成物は、上記EVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)及び乾燥剤(C)の他、塩基性金属塩(D)(但し、乾燥剤(C)に該当する金属塩を除く)を含有することが好ましい。塩基性金属塩を含有させることで、本発明の樹脂組成物の熱分解特性である「250℃で窒素雰囲気下1時間保持した際の重量減少率が5重量%以上35重量%以下」を充足させることができる。
・ナトリウム塩(ステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)
・カリウム塩(ステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、モンタン酸カリウム、炭酸カリウムなど)
・マグネシウム塩(ステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムなど)
・カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、炭酸カルシウムなど)
・亜鉛塩(ステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛など)
・バリウム塩(ステアリン酸バリウム、12-ヒドロキシステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウムなど)
・アルミニウム塩(ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウムなど)
・リチウム塩(ステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸リチウム)
また、上記弱酸としては、25℃の水溶液中における酸解離定数pKaが3~6である弱酸が好ましく、具体的には炭素数12~30のカルボン酸(高級脂肪酸)からなる金属塩が好ましい。さらに塩基性金属塩(D)としては、マグネシウム塩が好ましい。中でも高級脂肪酸のマグネシウム塩が最も好ましく、少量で熱安定効果が高いため、ロングラン安定性のための含有量調節に有利である。
また、ロングラン安定性の観点から、下式で表される炭素数12~30の脂肪族モノカルボン酸の1種または2種以上と周期律表第2族金属の酸化物または水酸化物とを乾式直接法により加熱反応させて得られる下記の特殊金属石鹸を用いることもできる。下式中、αは0.1~1.0の数字、Mは周期律表第2族の2価の金属、Rは炭素数11~29の飽和又は不飽和のアルキル基をそれぞれ表す
αMO・M(OOCR)2
本発明のEVOH樹脂組成物は、上記成分の他、必要に応じて、以下のような化合物を、その他の添加剤(E)として、含有してもよい。
その他の添加剤を含有する場合、本発明の効果を阻害しない範囲内で含有することが好ましい。具体的には、添加剤総量として、樹脂組成物全体の通常10重量%以下(0重量%を含む)、さらには5重量%以下とすることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記組成を有し、且つ250℃で窒素雰囲気下1時間保持した際の重量減少率が5重量%以上35重量%以下であることを特徴とする。
上記重量減少率は、高温加工条件における耐熱分解性の指標であり、熱重量測定装置を用いて、樹脂組成物を250℃、窒素雰囲気下の条件で1時間保持した際の重量を測定して、加熱前の重量に対する減少率(重量%)を算出することで求められる。
熱重量測定装置で測定した重量減少率は、特定の温度条件における樹脂の耐熱分解性を表す指標であり、数値が小さいほど分解ガス発生量が少なくなり、即ち樹脂組成物の耐熱分解性が高いことを意味する。反対に、数値が大きいほど分解ガス発生量が多くなり、即ち樹脂組成物の耐熱分解性が低いことを意味する。
(1)EVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)、乾燥剤(C)を含有する組成物に対して、塩基性金属塩(D)を配合して、その配合比率(塩基性金属塩の金属量など)を所定の割合に調整する方法
(2)EVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)、乾燥剤(C)を含有する組成物に対して、塩基性金属塩(D)を配合して、その混合条件(温度、混合装置など)を所定の条件に調整する方法
(3)EVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)、乾燥剤(C)を含有する組成物において、乾燥剤(C)の比表面積(粒度状態)を調整する方法
(4)EVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)、乾燥剤(C)を含有する組成物において、ポリアミド系樹脂(B)もしくは乾燥剤(C)の種類(例えば、異なる2種以上のポリアミド系樹脂もしくは乾燥剤を配合するなど)を調整する方法
これらのうち、樹脂組成物の品質や生産効率影響を考慮すると手法(1)が好ましく用いられる。
要するに、EVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)、及び乾燥剤(C)を含有する樹脂組成物の250℃で窒素雰囲気下1時間保持した際の重量減少率を、5重量%以上35重量%以下に調整することにより、高温での熱分解性を抑制するとともに、樹脂組成物のロングラン安定性を改善できる。
また、重量減少率を上記範囲に調整するもっとも好ましい方法としては、塩基性金属塩(D)を、当該塩基性金属塩(D)中の金属の前記樹脂組成物に対する含有率として40~1000ppmとなるように配合することであり、好ましくは50~1000ppm、特に好ましくは80~500ppmである。かかる含有率が低すぎると高温での溶融成形におけるロングラン安定性が低下して長期間製造においてゲル・フィッシュアイ増加を引き起こす傾向があり、高すぎると高温での溶融成形における熱分解が促進されて発泡等による成形品不良を引き起こす傾向がある。
上記のEVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)と、乾燥剤(C)を混合するにあたっては、通常溶融混錬法または機械的混合法(ペレットドライブレンド)が行われるが、好ましくは溶融混錬法である。具体的には、各成分をドライブレンド後に溶融混合する方法や、溶融状態のEVOH樹脂(A)とポリアミド系樹脂(B)に乾燥剤(C)を混合する方法が挙げられる。
また、マスターバッチに対するEVOH樹脂(A)の含有重量比(A/マスターバッチ)は、マスターバッチの組成にもよるが、通常10/90~99/1であり、好ましくは20/80~95/5であり、特に好ましくは30/70~90/10である。
このような溶融混錬温度下では、塩基性金属塩(D)は、通常溶融するが、乾燥剤(C)として用いられる金属塩は溶融せず、固体状態で組成物中に存在している。
また、乾燥剤(C)を、EVOH樹脂(A)、ポリアミド系樹脂(B)と混合し、溶融混練した後、乾燥剤(C)の水和水を蒸発させて本発明の樹脂組成物を得る方法も採用可能であるが、かかる方法では樹脂組成物中に発泡が起こる傾向があるため採用し難い。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形法により例えばフィルム、シート、カップやボトルなどに成形することができる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T-ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等が挙げられる。溶融成形温度は、通常150~300℃の範囲から選択される。
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物を含む層を少なくとも1層有するものである。本発明の樹脂組成物を含む層(以下、単に「樹脂組成物層」というと、本発明の樹脂組成物を含む層をいう)は、他の基材と積層することで、さらに強度を上げたり他の機能を付与することができる。
上記基材としては、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下「基材樹脂」という)が好ましく用いられる。
上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を介層してもよい。
また、本発明の樹脂組成物から得られた多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行えばよい。
以上のようにして得られる多層構造体の容器は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。
尚、例中「部」とあるのは、重量基準を意味する。
得られた樹脂組成物ペレットを、250℃、素雰囲気下の条件で1時間保持した。保持前後の試料重量を、熱重量測定装置「Pyris1 TGA」(パーキンエルマー製)を用いて測定し、加熱前の重量に対する重量減少率(重量%)を算出した。
得られた樹脂組成物ペレットを、アルミカップ上に10g載せ、窒素ガス雰囲気下の無酸化雰囲気恒温器(「IPHH-202M」(ESPEC製))内で、280℃の温度条件で加熱した。加熱10分後に、溶融されたペレットを恒温器から取り出し、冷却固化させることでプレート形状の成形品(直径:55mm,厚み:4mm)を得た。得られたプレート表面に発生した気泡状態を目視にて観察し、下記基準に基づいて評価した。
良好: 表面に気泡が発生せず。
不良:表面に多数の気泡発生(EVOH樹脂の分解ガスに伴う発泡)。
調製した組成物を、溶融混練装置「プラストグラフ(ブラベンダー製)」を用いて、下記溶融混練条件で混練した場合の5分後(T5)及び60分後(T60)のトルク値(Nm)を、測定した。
溶融混練条件
・ローラーミキサー:W50E(試料投入量 55g)
・装置設定温度 :250℃
・ニーダー回転数 :50ppm
(3)で測定したトルク値(Nm)から、5分後のトルク値(T5)に対する60分後のトルク値(T60)の比(T60/T5)が1以上の場合は増粘傾向にあることを示している。当該値が0.001~0.7であれば、ロングラン安定性に優れているといえる。
EVOH樹脂(A)として、エチレン構造単位の含有量29モル%、ケン化度99.6%、ホウ酸含有量500ppm(ホウ素分析値より換算)のエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(MFR4.3g/10分(210℃、荷重2160g)、揮発分0.2%)、ポリアミド系樹脂(B)として、末端変性6ナイロン[末端COOH基:22μeq/g、末端COOH基の数を[a]とし、末端CONR10R20基(但し、R10は炭素数1~22の炭化水素基、R20は水素原子又は炭素数1~22の炭化水素基)の数を[b]とした場合、100×b/(a+b)=31、融点225℃、MFR5g/10分(250℃、荷重2160g)]、乾燥剤(C)として、JOST CHEMICAL製のジクエン酸三マグネシウム(無水物)(融点:300℃以上)を用いた。
また、塩基性金属塩としては、以下に示した化合物を用いた。
・ステアリン酸マグネシウム(C36H70O4Mg):サンエース製「SAK MS-P」(融点:145℃)
・ステアリン酸カルシウム(C36H70O4Ca):日油製「カルシウムステアレートS」(融点:154℃)
・ステアリン酸亜鉛(C36H70O4Zn):勝田化工製「EZ-104」(融点:122℃)
・特殊高級脂肪酸マグネシウム塩(0.44MgO・(C6H10CH(OH)C10H20COO)2Mg):酸化マグネシウムと12-ヒドロキシステアリン酸の乾式直接法により加熱反応して得られた金属塩(融点:229℃)
EVOH樹脂、ポリアミド系樹脂、乾燥剤、塩基性金属塩を、表1に示す割合でブレンドした後、フィーダーに仕込み、ミキシングゾーンを2箇所有する2軸押出機にて下記条件で溶融混練した。このようにして調製したEVOH樹脂組成物を、ストランド状に押出してドラム型ペレタイザーで切断し、円柱状ペレット(ペレット径:2mm、ペレット長さ:3.5mm、揮発分:0.3%)を得た。
・2軸押出機: 直径32mm、L/D=56(日本製鋼所製)
・押出機設定温度: C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C11/C12/C13/C14/C15/C16/D=90/90/110/150/220/230/230/230/230/230/230/230/230/230/230/230℃
・スクリュー回転数: 150ppm
・吐出量: 12kg/時間
・ストランドの冷却: 空冷
・引取速度: 8.8m/分
Claims (4)
- エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)、ポリアミド系樹脂(B)、乾燥剤(C)、及び塩基性金属塩(D)(但し、乾燥剤(C)に該当する金属塩を除く)を含有する樹脂組成物であって、
前記乾燥剤(C)は、融点が300℃以上である水和物形成性のカルボン酸金属塩であり、
前記塩基性金属塩(D)は、炭素数12~30のカルボン酸の金属塩であり、
当該塩基性金属塩(D)の樹脂組成物に対する含有率は、金属量換算で40~1000ppmであり、
250℃で窒素雰囲気下1時間保持した際の重量減少率が5重量%以上35重量%以下であることを特徴とする樹脂組成物。 - 前記塩基性金属塩(D)の融点は、250℃以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする多層構造体。
- エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)、ポリアミド系樹脂(B)、及び乾燥剤(C)として融点が300℃以上である水和物形成性のカルボン酸金属塩を含有する樹脂組成物の250℃超の押出成形又は射出成形におけるロングラン安定性を改善する方法であって、
さらに炭素数12~30のカルボン酸の塩基性金属塩(D)を、当該塩基性金属塩(D)中の金属の前記樹脂組成物に対する含有率として40~1000ppmとなるように配合することにより、
前記樹脂組成物の250℃で窒素雰囲気下1時間保持した際の重量減少率を、5重量%以上35重量%以下に調整することを特徴とする樹脂組成物のロングラン安定性改善方法。
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