JP2012218652A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ノイズ性能の悪化を抑えつつマッド性能を向上させる。
【解決手段】ショルダー縦溝3とショルダー横溝8とが設けられた空気入りタイヤ1である。ショルダー縦溝3は、台形波状のジグザグに形成される。ショルダー横溝8は、その溝中心線8Gがショルダー縦溝3に交わる交点P1と、溝中心線8Gと接地端Teとの交点P2とを結んだ直線のタイヤ軸方向に対する角度が5〜20度である。また、ショルダー横溝8は、溝幅が漸増し、ショルダー縦溝3との連通部での溝幅Wiと、接地端Teでの溝幅Woとの比Wo/Wiが1.5〜3.0である。また、ショルダー横溝8は、ショルダー横溝8の一方側の溝壁8Aとショルダー縦溝3とが交わる一方側の溝交差部20が、ショルダー横溝8の他方側の溝壁8Bとショルダー縦溝3とが交わる他方側の溝交差部21よりもタイヤ軸方向内側に位置する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ノイズ性能の悪化を抑えつつマッド性能を向上させた空気入りタイヤに関する。
マッド路面を走行する、例えば、オールシーズン用タイヤにあっては、トレッド部に、タイヤ周方向にのびる複数の主溝と、タイヤ軸方向にのびる複数の横溝とにより複数のブロックを区分したブロックパターンが採用される。従来、マッド性能を高めるために、主溝や横溝の溝深さや溝幅を大きくして、排土性や、横溝内で押し固めた泥をせん断するせん断力を高めることが知られている。
しかしながら、上述の手法では、主溝や横溝の溝容積が増加し、溝内で生じた空気の共鳴振動(気柱共鳴音)が大きくなり、乾燥路面を走行する際にノイズ性能が悪化するという問題があった。このように、マッド性能の向上とノイズ性能の確保とは、二律背反の関係があり、これらを両立させることは困難であった。関連する技術として次のものがある。
特開2004−58839号公報
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ショルダー縦溝及びショルダー横溝の形状を改善することを基本として、ノイズ性能の悪化を最小限に抑えてマッド性能を向上しうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向にのびるショルダー縦溝と、前記ショルダー縦溝から接地端を越えてのびるショルダー横溝とが設けられることにより、ショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設されたショルダーブロック列が形成された空気入りタイヤであって、前記ショルダー縦溝は、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部と、この外側溝部よりもタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部と、該内側溝部から前記外側溝部に斜めにのびる移行部とを含む台形波状のジグザグをなし、前記ショルダー横溝は、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜するとともに、その溝中心線が前記ショルダー縦溝に交わる交点P1と、前記溝中心線と前記接地端との交点P2とを結んだ直線のタイヤ軸方向に対する角度が5〜20度であり、かつ該ショルダー横溝は、タイヤ軸方向外側に向かって溝幅が漸増し、前記ショルダー縦溝との連通部での溝幅Wiと、前記接地端での溝幅Woとの比Wo/Wiが1.5〜3.0であり、しかも前記ショルダー横溝は、該ショルダー横溝の一方側の溝壁と前記ショルダー縦溝とが交わる一方側の溝交差部が、前記ショルダー横溝の他方側の溝壁と前記ショルダー縦溝とが交わる他方側の溝交差部よりもタイヤ軸方向内側に位置することを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記一方側の溝交差部が前記内側溝部上に位置するとともに、前記他方側の溝交差部が前記外側溝部上に位置する請求項1記載の空気入りタイヤである。
また請求項3記載の発明は、前記一方側の溝交差部が前記内側溝部の前記移行部側の端部に位置するとともに、前記他方側の溝交差部が前記外側溝部の前記移行部側の端部に位置する請求項2記載の空気入りタイヤである。
また請求項4記載の発明は、前記移行部の溝幅Wgと、ショルダー横溝の前記移行部への連通幅Wrとの比Wr/Wgが0.8〜1.8である請求項3記載の空気入りタイヤである。
また請求項5記載の発明は、前記ショルダー縦溝は、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁から前記外側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁までのタイヤ軸方向距離である出っ張り量Ldが、前記外側溝部のタイヤ軸方向の幅Loの0.4〜0.8倍である請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
また請求項6記載の発明は、前記ショルダーブロック列は、タイヤ赤道上の任意の点を中心としてバリアブルピッチを除いて実質的な点対称で形成される請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
また請求項7記載の発明は、前記ショルダー横溝は、タイヤ回転方向後着側に向かって傾斜し、前記一方側の溝壁は、前記ショルダー横溝のタイヤ回転方向の後着側の溝壁であって、前記他方側の溝壁は、前記ショルダー横溝のタイヤ回転方向の先着側の溝壁である請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向にのびるショルダー縦溝と、前記ショルダー縦溝から接地端を越えてのびるショルダー横溝とが設けられることにより、ショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設される。ショルダー縦溝は、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部と、この外側溝部よりもタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部と、該内側溝部から前記外側溝部に斜めにのびる移行部とを含む台形波状のジグザグをなす。このような斜めにのびる移行部を含むショルダー縦溝は、溝内で泥を掴み易くなるため、溝内で押し固められた泥に対するせん断力が高められる。従って、本発明の空気入りタイヤは、マッド性能が向上する。
また、ショルダー横溝は、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜するとともに、その溝中心線が前記ショルダー縦溝に交わる交点P1と、前記溝中心線と前記接地端との交点P2とを結んだ直線のタイヤ軸方向に対する角度が5〜20度で形成される。このような空気入りタイヤは、前記角度を利用して、ショルダー縦溝の泥を容易にショルダー横溝側に排出し、さらにマッド性能を高めるとともに、ショルダー横溝のタイヤ軸方向のエッジ効果によって大きなトラクション性能が確保される。
また、ショルダー横溝は、タイヤ軸方向外側に向かって溝幅が漸増しかつ、前記ショルダー縦溝との連通部での溝幅Wiと、前記接地端での溝幅Woとの比Wo/Wiが1.5〜3.0に設定される。このようなショルダー横溝は、溝内での泥に対し、タイヤ赤道C側の圧力を大きく、接地端側の圧力を小さくするため、ショルダー横溝内の泥を接地端側へと効率良く導く。従って、本発明の空気入りタイヤは、さらに排土性が高められ、マッド性能が向上する。
また、ショルダー横溝は、該ショルダー横溝の一方側の溝壁と前記ショルダー縦溝とが交わる一方側の溝交差部が、前記ショルダー横溝の他方側の溝壁と前記ショルダー縦溝とが交わる他方側の溝交差部よりもタイヤ軸方向内側に位置する。これにより、前記一方側の溝交差部と他方側の溝交差部とにおいて圧力差が生じるため、ショルダー縦溝内の泥が、ショルダー横溝内に円滑に導かれる。従って、本発明の空気入りタイヤは、排土性及びせん断力が大きくなり、マッド性能がより一層向上する。
本発明の一実施形態の空気入りタイヤを示すトレッド部の展開図である。 図1の左半分の拡大図である。 図2の部分拡大図である。 本発明の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)は、例えば四輪駆動車用のオールシーズン用タイヤとして好適に利用され、そのトレッド部2には、最も接地端Te側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー縦溝3と、該ショルダー縦溝3よりもタイヤ赤道C側をタイヤ周方向に連続してのびる1対のセンター縦溝4とが設けられる。これにより、トレッド部2には、ショルダー縦溝3と接地端Teとの間をのびる一対のショルダー陸部5と、前記センター縦溝4と前記ショルダー縦溝3との間をのびる一対のミドル陸部6と、前記一対のセンター縦溝4、4間をのびる一対のセンター陸部7が形成される。
ここで、前記「接地端」Teは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離が接地幅TWとして定められる。また、タイヤの各部の寸法等は、特に断りがない場合、前記正規状態での値とする。
また前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
さらに「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
図2に拡大して示されるように、前記センター陸部7には、センター縦溝4からタイヤ赤道Cに向かってタイヤ軸方向にのびかつタイヤ赤道Cに達することなく終端するセンターラグ溝12が設けられる。
また、前記ミドル陸部6には、ショルダー縦溝3からタイヤ軸方向内側に向かって傾斜してのびかつセンター縦溝4に接することなく終端するミドル外ラグ溝10と、センター縦溝4からタイヤ軸方向外側に向かい傾斜してのびかつショルダー縦溝3に接することなく終端する第1ミドル内ラグ溝11Aと、センター縦溝4からタイヤ軸方向外側に向かいタイヤ軸方向に沿ってのびかつショルダー縦溝3に接することなく終端する第2ミドル内ラグ溝11Bとがタイヤ周方向に隔設される。
図2に示されるように、ショルダー陸部5には、ショルダー縦溝3から接地端Teを越えてのびるショルダー横溝8がタイヤ周方向に隔設される。これにより、ショルダー陸部5は、ショルダー縦溝3、接地端Te及びショルダー横溝8により区分される複数個のショルダーブロック9がタイヤ周方向に並ぶブロック列9Rが形成される。
本実施形態のトレッドパターンは、タイヤ赤道C上の任意の点を中心としてバリアブルピッチを除いて実質的な点対称で形成される。
図2及び3に示されるように、前記ショルダー縦溝3は、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部13と、該外側溝部13よりもタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部14と、該内側溝部14から前記外側溝部13に斜めにのびる移行部15とを含む台形波状のジグザグに形成される。このような斜めにのびる移行部15は、タイヤ軸方向成分を有するため、該移行部15の溝内で泥を掴み易くなり、該溝内で押し固められた泥に対して大きなせん断力を得ることができる。また、タイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部13と内側溝部14とは、排土性を高めるのに役立つ。
本実施形態の移行部15は、内側溝部14から外側溝部13へタイヤ軸方向に対して一方側(本図では左上がり)に傾斜してのびる第1移行片15Aと、該第1移行片15Aとは逆向き(本図では右上がり)に傾斜してのびる第2移行片15Bとを含む。即ち、本実施形態のショルダー縦溝3は、外側溝部13、第1移行片15A、内側溝部14及び第2移行片15Bが順次連続して前記台形波状に形成される。
また、図3に示されるように、ショルダー縦溝3は、内側溝部14のタイヤ軸方向外側の溝縁14eから前記外側溝部13のタイヤ軸方向外側の溝縁13eまでのタイヤ軸方向距離である出っ張り量Ldが、前記外側溝部13のタイヤ軸方向の幅Loの0.4〜0.8倍に形成されるのが望ましい。即ち、出っ張り量Ldが、前記幅Loの0.4倍よりも小さくなると、せん断力が低下するおそれがあり、逆に0.8倍を超えると、ショルダーブロック9の剛性が小さくなるため、耐偏摩耗性能が悪化するおそれがある他、ショルダー縦溝3内で生じた気柱共鳴音が、容易に接地端Te側へ排出されるため、ノイズ性能が悪化するおそれがある。このため、とりわけ、出っ張り量Ldは、より好ましくは前記タイヤ軸方向の幅Loの0.6倍以上が望ましく、またより好ましくは0.7倍以下が望ましい。
また、前述の作用をより有効に発揮させるために、図2に示されるように、移行部15の溝中心線15Gのタイヤ軸方向に対する角度θ1は、好ましくは35度以上、より好ましくは40度以上が望ましく、また好ましくは55度以下、より好ましくは50度以下が望ましい。
また、マッド性能、トラクション性能及び耐偏摩耗性能をバランス良く向上するために、外側溝部13のタイヤ周方向の長さLaと前記長さLcとの比La/Lcは、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上が望ましく、また好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下が望ましい。同様の観点より、内側溝部14のタイヤ周方向の長さLbと移行部15のタイヤ周方向の長さLcとの比Lb/Lcは、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.9以上が望ましく、また好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下が望ましい。
また、本実施形態のセンター縦溝4も、ショルダー縦溝3と同様に、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部17と、タイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部18と、該内側溝部18から前記外側溝部17に斜めにのびる移行部19とを含む台形波状のジグザグに形成される。これにより、クラウン部においても、マッド性能、トラクション性能及び耐偏摩耗性能が向上する。
このようなショルダー縦溝3及びセンター縦溝4の溝幅(溝の長手方向と直角な溝幅で、以下、他の溝についても同様とする。)W1、W2及び溝深さD1、D2(図示しない)については、慣例に従って種々定めることができる。しかしながら、前記溝幅W1、W2及び/又は溝深さD1、D2が大きすぎると騒音性能や各陸部5及び6の剛性が低下するおそれがあり、逆に小さすぎると泥を掴みにくくなりマッド性能が低下するおそれがある。このため、溝幅W1、W2は、例えば、接地幅TWの3.0〜8.0%が望ましい。また、溝深さD1、D2は8.0〜10.0mmが望ましい。
また、ショルダー縦溝3の配設位置については、例えばその振幅中心線3Gと接地端Teとの間のタイヤ軸方向距離L1が、好ましくは接地幅TWの16%以上、さらに好ましくは20%以上が望ましく、好ましくは30%以下、さらに好ましくは26%以下が望ましい。また、センター縦溝4の配設位置については、例えばその溝中心線4Gとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L2が、好ましくは接地幅TWの3%以上、さらに好ましくは5%以上が望ましく、好ましくは14%以下、さらに好ましくは10%以下が望ましい。このような範囲に設定することにより、各陸部5、6及び7の剛性バランスがより一層向上し、耐偏摩耗性能を高め得る。
図2に示されるように、前記ショルダー横溝8は、本実施形態では、ショルダー縦溝3から接地端Teまで、直線状にのびる。このようなショルダー横溝8は、ショルダー横溝8内の泥をスムーズに接地端Te側へ排出するのに役立つとともに、ショルダーブロック9の剛性を大きく確保するのに役立つ。
また、ショルダー横溝8は、タイヤ軸方向に対して一方側(本図では左上がり)に傾斜する。さらに、該ショルダー横溝8は、その溝中心線8Gが前記ショルダー縦溝3に交わる交点P1と、前記溝中心線8Gと接地端Teとの交点P2とを結んだ直線のタイヤ軸方向に対する角度θ2が5〜20度に形成される。種々の実験の結果、前記角度θ2が5度未満になると、ショルダー縦溝3の泥をスムーズにショルダー横溝8側に排出できず、マッド性能が悪化する他、接地時に路面と同時に接地する面積が大きくなるため、ノイズ性能が悪化する。一方、前記角度θ2が20度を越えると、タイヤ軸方向のエッジ効果が低下して、トラクション性能が悪化する。このため、前記角度θ2は、より好ましくは、8度以上が望ましく、またより好ましくは17度以下が望ましい。なお、前記交点P1は、ショルダー横溝8が交わるショルダー縦溝3の溝縁3Aが明確に表されている場合は、この溝縁3Aと溝中心線8Gとの交点として定義される。しかしながら、溝縁3Aが不明瞭である場合には、ショルダー縦溝3のタイヤ軸方向内側の溝縁3Bを溝縁3Aに投影させたときの仮想溝縁(図示せず)と溝中心線8Gとの交点として定義される。
また、ショルダー横溝8は、タイヤ軸方向外側に向かってその溝幅W3が漸増する。具体的には、ショルダー横溝8は、ショルダー縦溝3との連通部での溝幅Wiと、接地端Teでの溝幅Woとの比Wo/Wiが1.5〜3.0に設定される。種々の実験の結果、前記比Wo/Wiが1.5未満になると、該ショルダー横溝8内での泥に圧力差を与えることができず、該圧力差を利用した排土効果を十分に発揮することができない。逆に、前記比Wo/Wiが3.0を越えると、ショルダー縦溝3で生じた気柱共鳴音が容易に接地端Te側へ排出され、ノイズ性能が悪化する他、ショルダーブロック9の剛性が小さくなり耐偏摩耗性能が悪化する。このような観点より前記比Wo/Wiは、より好ましくは、2.0以上が望ましく、またより好ましくは2.5以下が望ましい。
また、ショルダー横溝8は、該ショルダー横溝8の一方側の溝壁8A(図2では上側)と、ショルダー縦溝3とが交わる一方側の溝交差部20が、ショルダー横溝8の他方側の溝壁8B(図2では下側)と、ショルダー縦溝3とが交わる他方側の溝交差部21よりもタイヤ軸方向内側に位置する。このようなショルダー横溝8は、一方側の溝交差部20と他方側の溝交差部21とにおいて泥に作用する圧力に差が生じるため、これを利用してショルダー縦溝3内の泥を、ショルダー横溝8内に円滑に導くことができる。従って、本発明のタイヤは、排土性及びせん断力が大きくなり、マッド性能がより一層向上する。
また、上述の作用を確実に発揮させるため、一方側の溝交差部20が内側溝部14上に位置するとともに、他方側の溝交差部21が外側溝部13上に位置するのが望ましい。このようなショルダー横溝8は、該ショルダー横溝8の移行部15への連通幅(図示せず)が大きくなり、ショルダー縦溝3内の泥をショルダー横溝8へと円滑に導くことができるため、排土性やせん断力がさらに高められる。
また、ショルダー横溝8では、一方側の溝交差部20が前記内側溝部14の前記移行部15(図2では、第2移行片15B)側の端部14tに位置するとともに、前記他方側の溝交差部21が前記外側溝部13の前記移行部15(図2では、第2移行片15B)側の端部13tに位置するのがさらに望ましい。即ち、本実施形態では、ショルダー横溝8は、第2移行片15Bのタイヤ軸方向外側の溝縁15Eの全長さに亘って接続されている。これにより、ショルダー縦溝3からの気柱共鳴音の排出を抑制しつつ前述の圧力差を確保できるため、マッド性能とノイズ性能とがバランス良く向上する。
とりわけ、ショルダー横溝8は、タイヤ回転方向後着側に向かって傾斜するのが望ましい。即ち、前記一方側の溝壁8Aは、ショルダー横溝8のタイヤ回転方向の後着側の溝壁を形成するとともに、前記他方側の溝壁8Bは、ショルダー横溝8のタイヤ回転方向の先着側の溝壁を形成するのが望ましい。このようなショルダー横溝8は、タイヤ転動により、タイヤ軸方向内側から外側へと順次接地するため、接地入り時に泥が入り易く、接地出時に泥が排出し易くなる。即ち、ショルダー横溝8は、接地入り時から接地出時にかけて、ショルダー横溝8の溝内に多くの泥が確保されるため、大きなせん断力が発揮されるとともに、接地出時には、排土性が大きく作用する。従って、本実施形態のタイヤは、さらにマッド性能が向上する。
さらに、ショルダー横溝8がタイヤ回転方向後着側に向かって傾斜するタイヤでは、前記他方側の溝交差部21が、タイヤ軸方向内側に位置する一方側の溝交差部20よりも先着側になるため、図2に矢印Aで示されるように、ショルダー縦溝3内の泥がタイヤの転動に伴って、ショルダー横溝8側へスムーズに排出される。従って、接地時に、ショルダー横溝8内には、さらに多くの泥を確保され、大きなせん断力が発揮されるため、より一層マッド性能が向上する。
また、図3に示されるように、移行部15の溝幅Wgと、ショルダー横溝8の移行部15への連通幅Wrとの比Wr/Wgは、0.8〜1.8が望ましい。前記比Wr/Wgが大きくなると、ショルダー横溝8の溝幅W3が大きくなり、ショルダー縦溝3の気柱共鳴音を抑制できないおそれがある。逆に、前記比Wr/Wgが小さくなるとショルダー縦溝3からショルダー横溝8へ泥を排出することが困難になるおそれがある。このような観点より、前記比Wr/Wgは、より好ましくは1.0以上が望ましく、またより好ましくは1.6以下が望ましい。なお、移行部15の連通幅Wrは、前記一方側の溝交差部20と他方側の溝交差部21との最短距離として定義される。
このようなショルダー横溝8の溝幅W3(ショルダー横溝8の長さ方向に亘る平均の溝幅)は、マッド性能とノイズ性能とを両立させる観点より、例えば、9.5〜10.5mmが望ましい。また、ショルダー横溝8の溝深さD3(図示しない)は、例えばショルダー縦溝3の溝深さD1の80〜100%が望ましい。
また、ショルダーブロック9には、前記第2移行片15Bと外側溝部13との交差部13Aからタイヤ軸方向外側に向かいタイヤ軸方向に沿ってのびかつ接地端Teに達することなく終端するショルダーラグ溝22が設けられる。このようなショルダーラグ溝22は、トラクション性能を向上させるのに役立つ。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
図1のパターンを有しかつ表1の仕様に基づいた空気入りタイヤ(サイズ:285/60R18)が製造され、それらの各性能についてテストがされた。なお、共通仕様は以下の通りである。
接地幅TW:200mm
<ショルダー主溝>
溝幅W1/接地幅TW:3.1%
溝深さD1:10.0mm
移行部のタイヤ軸方向に対する角度θ1:45度
内側溝部と外側溝部とのタイヤ周方向の長さの比La/Lb:1.17
<センター主溝>
溝幅W2/接地幅TW:4.1%
溝深さD2:10.0mm
センター移行部のタイヤ軸方向に対する角度:40度
<ショルダー横溝>
溝深さD3/D1:90%
<ミドル外ラグ溝・第1ミドル内ラグ溝>
溝深さ5.0〜8.0mm
<ショルダーラグ溝・第2ミドル内ラグ溝・センターラグ溝12>
溝深さ3.0〜5.0mm
テスト方法は、次の通りである。
<ノイズ性能>
試供タイヤをリム18×8.5JJ、内圧(230kPa)の条件にて、車両(国産4600cc、4WD車)の全輪に装着し、ロードノイズ計測路(アスファルト粗面路)を速度60km/hで走行させたときの車内騒音を運転席窓側耳許位置に設置したマイクロホンで採取し、狭帯域240Hz付近の気柱共鳴音のピーク値の音圧レベルを測定した。評価は、比較例1の逆数を100とした指数で示し、数値が大きいほど良好である。
<マッド性能>
上記の車両装着状態で軟弱なマッド路テストコースをドライバー1名乗車で走行し、制動力、旋回性などを総合的にドライバーの感応により評価した。評価は、比較例1を100とする評点で表し、数値が大きいほど良好である。
<トラクション性能>
上記車両条件で同一のテストコースを、プロのテストドライバーにより走行して路面に対する駆動力の伝達度合いが、ドライバーのフィーリングにより、比較例1を100とする評点で表示された。数値が大きいほど良好である。
<耐偏摩耗性能>
上記車両にて、乾燥アスファルトのタイヤテストコースを限界走行によって30km走行し、リブやブロックの欠け、偏摩耗の有無などを目視によって観察した。評価は、比較例1を100とする評点で表示し、数値が大きいほど耐偏摩耗性能が良好である。
テストの結果を表1に示す。
Figure 2012218652
Figure 2012218652
Figure 2012218652
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて各種性能が向上していることが確認できる。
2 トレッド部
3 ショルダー縦溝
8 ショルダー横溝
8A 一方側の溝壁
8B 他方側の溝壁
8G ショルダー横溝の溝中心線
9 ショルダーブロック
9R ショルダーブロック列
13 外側溝部
14 内側溝部
15 移行部
20 一方側の溝交差部
21 他方側の溝交差部
Te 接地端

Claims (7)

  1. トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向にのびるショルダー縦溝と、前記ショルダー縦溝から接地端を越えてのびるショルダー横溝とが設けられることにより、ショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設されたショルダーブロック列が形成された空気入りタイヤであって、
    前記ショルダー縦溝は、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部と、この外側溝部よりもタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部と、該内側溝部から前記外側溝部に斜めにのびる移行部とを含む台形波状のジグザグをなし、
    前記ショルダー横溝は、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜するとともに、その溝中心線が前記ショルダー縦溝に交わる交点P1と、前記溝中心線と前記接地端との交点P2とを結んだ直線のタイヤ軸方向に対する角度が5〜20度であり、
    かつ該ショルダー横溝は、タイヤ軸方向外側に向かって溝幅が漸増し、前記ショルダー縦溝との連通部での溝幅Wiと、前記接地端での溝幅Woとの比Wo/Wiが1.5〜3.0であり、
    しかも前記ショルダー横溝は、該ショルダー横溝の一方側の溝壁と前記ショルダー縦溝とが交わる一方側の溝交差部が、前記ショルダー横溝の他方側の溝壁と前記ショルダー縦溝とが交わる他方側の溝交差部よりもタイヤ軸方向内側に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記一方側の溝交差部が前記内側溝部上に位置するとともに、前記他方側の溝交差部が前記外側溝部上に位置する請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記一方側の溝交差部が前記内側溝部の前記移行部側の端部に位置するとともに、前記他方側の溝交差部が前記外側溝部の前記移行部側の端部に位置する請求項2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記移行部の溝幅Wgと、ショルダー横溝の前記移行部への連通幅Wrとの比Wr/Wgが0.8〜1.8である請求項3記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記ショルダー縦溝は、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁から前記外側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁までのタイヤ軸方向距離である出っ張り量Ldが、前記外側溝部のタイヤ軸方向の幅Loの0.4〜0.8倍である請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記ショルダーブロック列は、タイヤ赤道上の任意の点を中心としてバリアブルピッチを除いて実質的な点対称で形成される請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記ショルダー横溝は、タイヤ回転方向後着側に向かって傾斜し、
    前記一方側の溝壁は、前記ショルダー横溝のタイヤ回転方向の後着側の溝壁であって、前記他方側の溝壁は、前記ショルダー横溝のタイヤ回転方向の先着側の溝壁である請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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