JP2012213406A - Nogo遺伝子のヌクレオチド配列およびタンパク質配列、ならびにそれに基づく方法 - Google Patents

Nogo遺伝子のヌクレオチド配列およびタンパク質配列、ならびにそれに基づく方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、遺伝子Nogo、それがコードするタンパク質産物、ならびにその誘導体および類似体に関する。Nogoタンパク質、誘導体および抗体の産生方法も提供する。本発明はさらに、治療用組成物ならびに診断および治療方法に関する。
【解決手段】 配列番号29の全長にわたって90%より高い同一性を有するアミノ酸配列から成る精製ヒトNogoタンパク質であって、(i)天然では結合している全ての中枢神経系ミエリン物質を含まず、且つ(ii)神経突起成長における抑制効果を有する、前記タンパク質。
【選択図】 図1

Description

本出願は米国仮出願第60/107,446号(1998年11月6日出願)に基づく優先権を主張するものである。この仮出願はその全体を参照により本明細書に組み入れるものとする。
1. 序論
本発明はNogo遺伝子、特にそれがコードするタンパク質産物Nogo、ならびにそれらの誘導体および類似体に関する。Nogoタンパク質、誘導体、および抗体の生産も提供する。本発明はさらに、治療用組成物、ならびに診断法および治療法に関する。
2. 発明の背景
高等脊椎動物の中枢神経系(CNS)においては、損傷後の軸索の再生はほとんど起こらず、構造塑性が制限されている。CNSミエリンに関連した成長インヒビターがおそらく重要な役割を果たしていると思われる。このことは、モノクローナル抗体(mAb)のIN-1が強力な神経突起成長抑制性ミエリンタンパク質を中和することによって、成体ラットにおいて脊髄または脳が損傷を受けた後、長期間にわたり軸索の再生を促進し、補償的塑性を高めることから、証明される。
数多くのin vitroおよびin vivoの観察により、反発性ならびに抑制性のシグナルおよび因子の存在という神経突起成長調節の新しい態様が示されている(KeynesおよびCook, 1995, Curr. Opin. Neurosci. 5:75-82)。これらのシグナルの多くはタンパク質または糖タンパク質であると考えられた。それらの因子の同定に向けた第一のブレイクスルーは、ヒヨコの脳由来の成長円錐崩壊誘導分子であるコラプシン(Collapsin)-1(現在はセマフォリン(Semaphorin)3A)と呼ばれている)の精製およびcDNAクローニングであった。
近年精製およびクローニングされた反発性誘導信号の第2の群は、現在エフリン(Ephrin)類と呼ばれている。それらはEph受容体チロシンキナーゼファミリーに対するリガンドである。エフリン-A5およびエフリン-A2は、ヒヨコ胚の視蓋において勾配的に発現され、それらの異所性発現および欠如は網膜軸索の内方向伸長に対する誘導エラーを引き起こす。セマフォリンと同様、エフリンファミリーには15〜20種があり、その各々が神経系において、およびそれ以外の場所で、複合的かつ動的に発現される。これらの分子の多くは機能が未だ解析されないままである。
軸索の成長を阻むことができ、発生中の神経系にて発現される誘導信号の第3の群は、ネトリン(Netrin)類である。ネトリンは、そのオーソログ体である線虫C. elegansのunc-6と同様に、初期脊髄における交連軸索に対する平板由来化学誘引物質として精製された。ネトリン-1は、標的となるニューロンの成長円錐に存在する受容体のタイプに応じた特定のニューロンタイプに対し、反発性作用を有することがわかった(Tessier-Lavigneら, 1996, Science 274:1123-33)。
すでに、成体CNS稀突起神経膠細胞およびミエリンと関連した強力な神経突起成長抑制活性が、CanoniおよびSchwab(1988, J. Cell Biol. 106:1281-1288)によって報告されている。その主な構成要素は、近年精製され、また本発明に係る物質に近縁な高分子量膜タンパク質(NI-250、より小さい構成成分NI-35を伴う、ラット)であり、中和mAbのIN-1と結合する(CanoniおよびSchwab, 1988, J. Cell Biol. 106:1281-1288; 米国特許第5,684,133号;第5,250,414号; PCT公報 WO 93/00427)。
ミエリン関連神経突起成長インヒビターは、損傷を受けたCNS軸索の再生を妨げる上で重要な役割を果たしている。ニワトリまたはラットで稀突起神経膠細胞の発生およびミエリン形成を妨げると、CNS損傷後の再生許容期間が延長される。実際、ミエリン形成は、CNSが高い構造塑性および高い再生可能性を示す発生期の最後に合わせて同時期に起こる。
NI-250およびNI-35はおそらくミエリン関連成長抑制物の主たる構成成分であろう。このことは、脊髄損傷成体ラットに対するin vivoでのIN-1の適用によって、長期間にわたる皮質脊髄軸索の再生が引き起こされ、運動機能および行動機能の回復、特に移動運動に関する回復がなされたことから、証明される。視神経およびコリン作動性中隔-海馬経路に対する同様の実験もまた、IN-1認識抗原であるNI-35/250のin vivoでの関連を示した(SchnellおよびSchwab, 1990, Nature 343:269-272; Bregmanら, 1995, Nature 378:498-501)。
未損傷の神経線維系もまたIN-1による神経突起成長インヒビターの中和に応答する。最近の実験では、選択的な皮質脊髄路損傷(錘体路切断)の後、無傷の神経線維は脊髄および脳幹の中線を横切って出芽し、IN-1存在下での正確な動作のほぼ完全な行動的回復を伴う両側神経支配パターンを確立することが結論として示された(Z'Graggenら, 1998, J. Neuroscience 18(12):4744-4757)。
神経突起成長抑制タンパク質をコードする遺伝子の単離は、ニューロン再生およびCNS腫瘍を含む様々な神経学的障害の治療に有用な製品を開発する上で多様な機会をもたらす。
上記の引用文献の引用は、それら引用文献が本発明の先行技術として利用可能であるという容認事項とはみなされるべきではない。
3. 発明の概要
本発明は、Nogo遺伝子(ヒト、ラット、ウシのNogoと、他の種のNogo相同体)のヌクレオチド配列、それがコードするタンパク質のアミノ酸配列、ならびにその誘導体(例えば、断片)および類似体に関する。前記ヌクレオチド配列にハイブリダイズ可能なまたは相補的な核酸も提供する。特定の実施形態において、Nogoタンパク質はラット、ウシまたはヒトのタンパク質である。
本発明はまた、Nogoと相互作用する遺伝子の同定方法に関する。
Nogoは、神経成長調節タンパク質をコードすると共に該タンパク質と相互作用する遺伝子で、本発明により提供され、本発明の方法により同定された遺伝子である。
本発明はさらに、機能的に活性である本発明のNogo誘導体および類似体に関する。すなわち、それらは天然のNogoタンパク質と関係した機能活性を1以上示すことができる。例えば、アミノ酸542と722の間に主要な抑制領域が同定されている。かかる機能活性としては、神経細胞の神経突起成長抑制、繊維芽細胞または腫瘍性増殖を示す細胞の拡がりおよび移動の抑制、神経成長調節タンパク質と相互作用するかまたは該相互作用について競合する能力、抗Nogo抗体と結合する(または結合についてNogoと競合する)能力である抗原性、Nogoと結合する抗体を生成する能力である免疫原性を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの抗体は、神経突起成長抑制能があるNogoまたはNogoの機能性断片もしくは誘導体の機能を抑制することによって、神経突起の成長を誘導するか、または後根神経節の成長円錐崩壊を防止するという潜在能力を有する。
本発明はさらに、Nogoタンパク質の1以上のドメイン、例えば、酸性でプロリンに富むアミノ末端(例:配列番号2のアミノ酸31-58)、高度に保存されたカルボキシ末端、やはりカルボキシ末端にある2つの疎水性領域(ラットNogoでは35および36アミノ酸長;配列番号2のアミノ酸988-1023および1090-1125)を含むNogoの断片(ならびにその誘導体および類似体)に関する。
さらに、種々のNogo、Nogo誘導体および類似体に対する抗体も提供する。特に例を挙げると、2つの抗体が誘導され、AS 472と名づけた第1の抗体は、配列番号2のアミノ酸623-640に対応する合成ペプチドを免疫原として用いて誘導されたものであり、AS Brunaと名づけた第2の抗体は、Nogoのカルボキシ末端である配列番号2のアミノ酸762-1163に対して生成されたものである。
Nogoタンパク質、その誘導体および類似体の(例えば、組換え法による)産生方法も提供される。
本発明はまた、Nogoタンパク質およびNogo核酸をベースとした治療法、診断法ならびに組成物に関する。本発明の治療用化合物としては、Nogoタンパク質とその類似体および誘導体(断片を含む)、Nogoタンパク質またはその類似体もしくは誘導体をコードする核酸、およびNogoリボザイムまたはNogoアンチセンス核酸が挙げられるが、これらに限らない。
本発明はさらに、Nogoタンパク質、Nogo核酸および抗Nogo抗体をベースとした治療法、診断法ならびに組成物に関する。本発明は、Nogo活性を促進する化合物(例えば、Nogoタンパク質、その機能的に活性な類似体、および断片を含む誘導体、Nogoタンパク質またはその類似体もしくは誘導体をコードする核酸、Nogoのアゴニスト)を投与することによるCNSおよび神経に由来する腫瘍の治療法を提供する。
本発明はさらに、Nogo活性を妨げる化合物(例えば、ドミナントネガティブNogo誘導体、Nogoに対する抗体、Nogoのアンチセンス核酸、NogoリボザイムまたはNogoの活性部位と結合する化学基)を投与することによる、最終的に神経系の損傷をもたらす疾患、障害または損傷の治療法を提供する。そのような疾患、障害または損傷には、中枢神経系(CNS)の外傷(例えば、脊髄または脳の外傷)、梗塞症、感染症、悪性疾患、毒薬への暴露、栄養欠乏症、病的腫瘍性症候群、変性神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺など)が含まれるが、これらに限らない。
また、疾患のモデル動物、疾患への素因の診断法およびスクリーニング法、ならびにNogoアゴニストおよびアンタゴニストの同定方法も本発明により提供される。
3.1 定義
本明細書において、遺伝子の名前に下線を施したりイタリック体を使用することはその遺伝子自体を示しており、これに対して、下線やイタリック体を用いていない遺伝子名はそれがコードするタンパク質産物を示している。例えば、イタリック体の「Nogo」はNogo遺伝子をさし、イタリック体でない「Nogo」はNogo遺伝子のタンパク質産物を示す。
4. 図面の説明
(図面の説明については以下を参照)
図1a-1b: (a)Nogo cDNAクローン:CWP1-3は、ウシ脊髄白質のcDNAライブラリーに対する縮重オリゴヌクレオチドMSC5-8(プールされたもの)およびMSC9によるスクリーニングから単離されたウシcDNAクローンである。このクローンから得た相補RNAは、この後のラットcDNAライブラリースクリーニングに使用した。Oli3およびOli18はオリゴd(T)開始型ラット稀突起神経膠細胞ライブラリーから単離される。R1-3U21、RO18U1およびRO18U37-3はヘキサヌクレオチド開始型ラット脳幹/脊髄ライブラリー(Stratagene)から単離される。6種のウシNI220(bNI220)ペプチド配列の位置をCWP1-3およびR13U21上に示している。各種エキソンの結合部の配列は各クローンの先端に印を付けて示している。RO18U1上に示した疑問符は、このクローン上の、他のどのNogoクローン由来の配列とも一致しなかった配列を表す。RO18U37-3は、5'末端からのみ配列決定されており、未配列決定部分はドットで示している。(b)3種のNogo転写物の生成の仮説的機構を示す概略図。P1およびP2は複式プロモーターの推定上の位置を示す。可能性としては各エキソンが複数のエキソンに分割されることもありうるが、概略図に示すように3種の転写物を生成するためには、最低数として3つのエキソンが必要である。 図2a-2b: (a)Nogo転写物Aのヌクレオチド(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)(配列はRO18U37-3、Oli18、およびR1-3U21のcDNA配列を結合することにより作製した)。長円形の囲み:推定上の開始コドン、ドットの下線:酸性ストレッチ、□:可能性としてのPKC部位、△:可能性としてのカゼインキナーゼII部位、太い下線:カルボキシ末端疎水性領域および可能性としての膜貫通ドメイン、細い下線:可能性としてのN-グリコシル化部位。(b)精製され配列決定されたウシNI220(bNI220; 配列番号3〜8)と、ウシおよびラットのcDNAから翻訳される対応するウシの配列(配列番号9〜14)およびラットの配列(配列番号15〜20)との間のペプチド配列の比較。bNI220ペプチド配列と一致しないラットおよびウシのアミノ酸配列は、小文字で示した。 図2−1の続きである。 図2−2の続きである。 図2−3の続きである。 図2−4の続きである。 図3a-3b: (a)NSP(ヒト; 配列番号21)、S-REX(ラット)(配列番号22)、CHS-REX(ニワトリ; 配列番号23)、NOGOBOV(ウシ; 配列番号24)、NOGORAT(ラット; 配列番号25)、線虫(C.elegans)ESTクローンの1つ(WO6A7A; 配列番号26)、およびキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)ESTクローンの1つ(US51048; 配列番号27)のカルボキシ末端の180アミノ酸共通領域のアミノ酸配列の比較。(b)2つの疎水性領域の進化的保存。共通疎水性領域の種内および種間の類似性パーセンテージを示す。網かけ文字:保存されたアミノ酸。 図3−1の続きである。 図4a-4c: (a)Nogo共通プローブを用いた様々な組織についてのノーザンハイブリダイゼーション。共通プローブはヌクレオチド2583-4678間の転写物Aの配列を含む。ONは視神経、SCは脊髄、Cは大脳皮質、DRGは脊髄神経節、SNは坐骨神経、PC12はPC12細胞系である。(b)エキソン1特異的プローブを用いた脊髄およびPC12細胞のRNAについてのノーザンハイブリダイゼーション(左のパネル)、およびエキソン2特異的プローブを用いた後脳(HB)および骨格筋(M)のRNAについてのノーザンハイブリダイゼーション(右のパネル)。(c)Nogo共通プローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション。Kは腎臓、Bは軟骨(胸骨由来)、Skは皮膚、Mは骨格筋、Luは肺、Liは肝臓、Spは脾臓である。3種の主な転写物は印を付けて示している(4.6キロベース(kb)、2.6kb、および1.7kb)。△:サイズ約1.3kbの拡散しているが合致しているバンド。 図4−1の続きである。 図5a-5f: 成体ラットの脊髄および小脳の切片のin situハイブリダイゼーション。(a,d)脊髄および小脳の白質それぞれにおける稀突起神経膠細胞(OL)の並びを、Nogoアンチセンス「共通」リボプローブにより標識して見ることができる。これは、脊髄連続切片をアンチセンスplopリボプローブに対してハイブリダイズした場合(b)に検出されるシグナルと非常によく似ている。(c)灰白質(GM)中のニューロンもまたNogoアンチセンス「共通」リボプローブにより標識した。WMは白質である。明視野および蛍光視野はそれぞれ、Nogoアンチセンス「共通」リボプローブを用いて二重標識した小脳切片(e)、および抗GFAP抗体を用いたもの(f)である。プルキンエ細胞(二重矢じり印)はNogoプローブにより強く標識されるが、星状膠細胞(矢じり印、黒および白)は標識されない。顆粒細胞層(Gr)中に少数含まれる細胞もまたNogoプローブを用いて標識される。mは分子層である。スケールバー:a,b,d〜f: 50p.m、c: 280p.m。 図6a-6i; Nogoまたはplp(アンチセンスまたはセンス)プローブのいずれかを用いた、出生後様々な日齢(a,f: P0、b,g: P3、c,h: P7、d,e,i: P22)の視神経についてのin situハイブリダイゼーション。(a〜d)Nogoアンチセンスプローブ、(e)Nogoセンスプローブ、(g〜i)plpアンチセンスプローブ、(f)plpセンスプローブ。稀突起神経膠細胞前駆細胞におけるNogo発現は早くもP0には検出することができるが、plp発現は視交叉に近接するP3の視神経にてようやく検出され始めた(g)。 図6−1の続きである。 図7: AS BrunaおよびAS 472はどちらも約200kDのミエリンタンパク質を認識する。ラットミエリン抽出物およびウシq-プールは、Spillmannら, 1998, J. Biol. Chem., 273(30):19283-19293にしたがって調製した。AS BrunaおよびAS 472はそれぞれ、200kDのバンドだけでなく、ウシミエリンにおいていくつかのより低分子量のバンドも認識した。それらはbNI220の破砕産物であろう。AS Brunaはラットミエリンにおいて200kDのバンドを染色した。I:AS Bruna、P:AS Bruna(免疫前血清)、E:アフィニティー精製AS 472。 図8a-8i: IN-1(a〜e)、AS Bruna(d〜f)、およびAS 472(g〜i)(各パネルの左側に表示)を使用した、ラット脊髄および小脳に対する免疫組織化学。凍結切片をエタノール/酢酸で固定した場合、3種の抗体全てについて両方の組織に強いミエリン染色が観察された(a,b,d,e,g,h)。切片のメタノール処理によって、稀突起神経膠細胞細胞体を除き、ミエリン染色は起こらなくなった(矢印;c,f,i)。矢じり印:プルキンエ細胞、WM:白質、GM:灰白質、DR:後根、Gr:顆粒細胞層、m:分子層。スケールバー:a,d,g: 415μm、b,c,e,f,h,i: 143m。 図8−1の続きである。 図8−2の続きである。 図9a-9d: 各種バイオアッセイでのAS 472およびAS Brunaの中和活性。(a)q-プールで被覆し、IN-1、AS Bruna、AS 472、または対応する免疫前血清で前処理した細胞培養皿に、NIH 3T3繊維芽細胞を播いた。どちらのポリクローナル血清もIN-1よりも少し高く抑制性基質の中和を示した。免疫前血清は、NIH 3T3細胞の伸展に対しては有意な効果を有しなかった。AS 472を増加させるために用いるペプチド(P472)を過剰量添加すると中和活性を競争したが、非特異的ペプチド(Px)はその効果を有しなかった。(b)AS BrunaまたはAS 472を用いた抑制性基質の前処理は、ラミニン基質に対して観察され得るものに匹敵するDRG神経突起成長をもたらした。PBSを用いて前処理したq-プール(c; スコア = 0)およびAS Brunaを用いて前処理したq-プール(d; スコア = 4)上での、DRGからの神経突起成長の例。 図9−1の続きである。 図9−2の続きである。 図10a-10d: AS 472を添加した視神経外植片の注入は軸索の内方向伸長をもたらす。(a)成体ラット視神経対を切り出し、AS 472または免疫前血清を注入し、チャンバー培養中に置いて、この神経の片方の末端を、分離したP0のラットDRGニューロンと接触させた。(b)in vitroで2週間置いた後、前記神経のEM切片を切断部から3.5mmのところで切り出し(Aの矢印)、無傷の軸索を体系的にスクリーニングした(3回の実験にて)。(c)再生軸索路(矢印)は、退化したAS 472を注入した視神経を通り抜けて成長する。(d)ミエリンと接触している再生軸索。倍率:cは12,000倍、dは35,000倍。 図10−1の続きである。 図11a-11c: トランスフェクトしたCOS細胞中での組換えNogo Aの発現。(a)組換えNogo A(レーン2)、および一次培養ラット稀突起神経膠細胞由来の内在性Nogo A(レーン3)に対するAS Brunaの免疫反応性を示すウェスタンブロット。これら2種のタンパク質の移動度は、5%変性SDSゲルで約200kDであり、肉眼では同じである。対照としてLacZ構築物でトランスフェクトしたサンプル(レーン1)はAS Brunaによる免疫反応性を示さなかった。同ブロットはまた、示した通り抗myc抗体の9E10でプローブした。AS Brunaと反応したバンドは、抗mycタグ抗体9E10とも反応したが(レーン5)、内在性Nogo Aは反応しなかった(レーン6)。LacZ対照トランスフェクションサンプルは、約118kDにて予想されたバンドを示した(レーン4)。Nogo A構築物により一過性にトランスフェクトしたCOS細胞は、AS Bruna(b)およびIN-1(c)により二重染色された。AS Brunaにより陽性染色された細胞はまた、IN-1でも陽性であった。 図11−1の続きである。 図12: ウシNogo cDNAのヌクレオチド配列(配列番号28)。 図12−1の続きである。 図12−2の続きである。 図12−3の続きである。 図13: ヒトNogoの理論上のアミノ酸配列(配列番号29)とアラインしたラットNogo Aのアミノ酸配列(配列番号2)。ラットNogo配列にエクスプレスド・シーケンス・タグ(EST)をアラインさせ、ラットNogoを指標鋳型として用いてアラインしたヒトESTを翻訳することにより、ヒトNogoアミノ酸配列を推論した。 図13−1の続きである。 図14: ラットNogo C核酸配列(配列番号31)およびそれに対応するアミノ酸配列(配列番号32)。 図14−1の続きである。 図14−2の続きである。 図15a-15e: Nogo Aは稀突起神経膠細胞膜上に存在し、それは培養物中の稀突起神経膠細胞の免疫細胞化学および細胞表面のビオチン化により示される。免疫細胞化学(a〜d): P10ラットの視神経由来の稀突起神経膠細胞を切り出し、2日間培養した。mAb IN-1(a)またはAS 472(c)による生存細胞の染色により、稀突起神経膠細胞細胞体および突起に対する免疫反応性が示された。競合ペプチドP472の存在下では、AS 472はバックグラウンド標識のみを示す(全ての細胞型で)(d)。一次抗体が排除されると、同様の非特異的染色が見られた(b)。評価:番号を付した皿は、3人の独立した観察者によって無作為に混ぜられ、さらに分類された。8/10皿が、AS 472陽性、mAb IN-1陽性、または対照へと、3人の観察者全員によって正しく分類された。ビオチン化(e): 稀突起神経膠細胞中で富化されたラットP4全脳培養物について、7日間培養した後に膜不浸透性試薬により細胞表面をビオチン化した。続いて、細胞のホモジネートをストレプトアビジン-Dynabeadsで処理した。沈殿物(Ppt)および上清(sup)をAS472でブロットした。これらは別々のタンパク質パターンを示した。沈殿物に見られる細胞表面Nogo Aは、細胞内Nogo Aよりも明らかに高い分子量を示した。このずれは、おそらくグリコシル化によるものである。ルミナールERタンパク質BiPおよびβ-チューブリンのほとんどは細胞内画分にしか見られなかった。 図15−1の続きである。 図16a-16j: 機能アッセイは、稀突起神経膠細胞の細胞膜上のNogo Aの存在を示している。AS 472を添加した視神経培養物のプレインキュベーション(a,b)により、NIH 3T3繊維芽細胞は高度に分枝した稀突起神経膠細胞上へと伸展した。これはGalC(O1 抗体)に対する免疫蛍光染色によって輪郭が示される(a)。対応する時期の対比像(b)中の矢印は、稀突起神経膠細胞の先端に伸展するNIH 3T3繊維芽細胞を示している。(c,d): AS 472をP472と共に添加した場合、NIH 3T3繊維芽細胞は、GalC陽性稀突起神経膠細胞の領域を厳密に避けた(矢じり印)(CaroniおよびSchwab, 1988 Neuron 1:85-96)。(e,f): AS 472の存在下で、P0ラットから分離したDRGニューロンは高度に分枝した稀突起神経膠細胞の領域に神経突起を伸ばすことができた(f中の矢印)。(g,h): ペプチドP472はAS 472の中和活性と効果的に競争した。神経突起は完全に稀突起神経膠細胞を避けた。この実験で用いられたAS 472は、ラット472ペプチド配列に対して作製された。(i,j): これらの結果の定量化(方法に記載の通り)により、どちらのタイプのアッセイでもAS 472の強力な中和活性を示した。スケールバー:40μm。 図16−1の続きである。 図16−2の続きである。 図17a-17e: 組換えNogo Aは抑制性基質であり、その抑制活性はmAb IN-1により中和される。安定CHO-Nogo A細胞系由来のRecNogo A富化抽出物、または安定CHO-LacZ細胞系から並行して単離されたβガラクトシダーゼを用いて、NIH 3T3繊維芽細胞伸展アッセイおよびDRG神経突起成長アッセイ用に被覆した。(a)myc-his-タグ付加recLacZ(レーン1)およびRecNogo A(レーン2)の銀ゲルにより、Nogo Aバンドが180kDに示される。Nogo Aバンドの正体は、AS Bruna(レーン3)および抗myc抗体9E10(レーン4)と共にインキュベートしたウェスタンブロットによって確認された。(b)RecNogo Aで被覆した皿は、NIH 3T3伸展を明らかに抑制した。mAb IN-1またはAS Brunaとのプレインキュベーションは、抑制活性の中和を高い有意性(p<0.01)でもたらす。対照IgM mAb O1および免疫前血清は有効でなかった。CHO-LacZ抽出物はNIH 3T3細胞に対し不十分な抑制作用を有する。これはおそらく、内在性CHOタンパク質が原因である。この抑制活性は抗体とのプレインキュベーションにより影響を受けなかった。(c)DRG神経突起成長アッセイについては、(b)に記載のものと同じタンパク質材料をラミニンと混合して被覆した。RecNogo Aは、投与量依存的に、分離したDRGの神経突起成長に対する非常に強い抑制作用を有する。その活性はmAb IN-1で中和されるが(p<0.001)、対照mAb O1では中和されない。CHO-LacZ細胞から単離したタンパク質材料はいかなる濃度を用いても抑制性ではなく、抗体とのインキュベーションも神経突起成長に対するいかなる効果も有しなかった。スコアリングの例は、(d): 1μg recNogo A、神経突起が無いか短いもの(矢印)をスコア2、および(e): 1μg CHO-LacZ、神経突起が長く分枝しているもの(矢じり印)をスコア5〜6、のように示す。両側スチューデント検定を用いて統計解析を行った。スケールバー:280μm。 図17−1の続きである。 図17−2の続きである。 図17−3の続きである。 図18: Nogo欠失突然変異体の機能解析。Nogoの断片、またはNogoの末端切詰型部分(以下に記載)を含む融合タンパク質をコードする以下の欠失構築物は、本明細書下記の節6.2.7に記載される通りに作製された。Nogo-A: His-タグ/T7-タグ/ベクター/Nogo-A配列aa1-1162、Nogo-B: His-タグ/T7-タグ/ベクター/Nogo-A配列aa1-171+975-1162、Nogo-C: His-タグ/T7-タグ/Nogo-C N末端(11aa)+Nogo-A配列aa975-1162、NiAext: His-タグ/T7-タグ/ベクター/Nogo-A配列aa1-974/T7-タグ、NiR: His-タグ/T7-タグ/ベクター/Nogo-A配列aa1-171/ベクター、NiG: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-974/His-タグ、EST: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa760-1162、NiG-D1: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-908/ベクター、NiG-D2: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-866/His-タグ、NiG-D3: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-723/His-タグ、NiG-D4: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-646/ベクター、NiG-D5: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa291-646/His-タグ、NiG-D7: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-234+292-974/His-タグ、NiG-D8: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-628、NiG-D9: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-259+646-974/His-タグ、NiG-D10: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa291-974/His-タグ、NiG-D14: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-259、NiG-D15: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-189+491-974/His-タグ、NiG-D16: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-189+619-974/His-タグ、NiG-D17: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-189+257-974/His-タグ、NiG-D18: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa172-189+261-974/His-タグ、NiG-D20: His-タグ/T7-タグ/Nogo-A配列aa542-722/His-タグ。アミノ酸(aa)数は、第1メチオニンから開始するラットNogo Aアミノ酸配列のナンバリング(配列番号2)に基づいている。His-タグおよびT7-タグは34アミノ酸からなる。N末端およびC末端のベクター配列は発現ベクターpET28から得た。
5. 詳細な説明
本発明は、Nogo遺伝子のヌクレオチド配列およびそれらのコードタンパク質のアミノ酸配列に関する。本発明はさらに、Nogoタンパク質の断片、ならびに他の誘導体および類似体に関する。そのような断片または誘導体をコードする核酸もまた、本発明の範囲にある。本発明は、多くの異なる種のNogo遺伝子およびそれらのコードタンパク質を提供する。本発明のNogo遺伝子としては、ヒト、ラットおよびウシのNogoおよび他の種における関連遺伝子(相同体)が含まれる。Spillmanら, 1998, J. Biol. Chem. 273:19283-19293に開示されているウシのサブ配列は、本発明の一部として権利請求されてはいない。特定の実施形態において、Nogo遺伝子およびタンパク質は脊椎動物、より詳細には哺乳動物に由来するものである。本発明の好ましい実施形態では、Nogo遺伝子およびタンパク質はヒト起源のものである。例えば、組換え方法による上記のタンパク質および誘導体の生産が提供される。
本発明により提供されるNogo遺伝子は、Nogoの3種のアイソフォーム(すなわち、Nogo A、Nogo BおよびNogo C)をコードする核酸分子を包含する。遺伝子「Nogo」についての言及は、特記しない限り、全3種のアイソフォームをコードする核酸分子を含むものとする。同様に、Nogoタンパク質についての言及は、特記しない限り、Nogoの全3種のアイソフォームを含むものとする。本発明のNogoタンパク質は、脊髄または脳におけるニューロンの再生を抑制し(すなわち、非許容性基質特性)、後根神経節の神経突起の成長を阻害し、後根神経節の成長円錐崩壊を誘導し、NIH 3T3細胞の伸展を阻止し、PC12神経突起の成長を阻止することなどができる。
Nogoタンパク質、それらの断片および誘導体は、全ての中枢神経系ミエリン物質を含まない。特に、それらは、Nogoタンパク質が天然では結合している全ての中枢神経系ミエリン物質を含まない。そのような物質としては、他のCNSミエリンタンパク質、脂質および炭水化物を挙げることができる。本発明のNogoタンパク質、それらの断片および誘導体はまた、好ましくは生物学的供試体からの精製において用いられる試薬(例えば界面活性剤)を含まない。
特定の実施形態において、本発明は、遺伝子操作した細胞内でのNogo遺伝子の発現のような、当業界で公知の方法により調製される組換えNogoタンパク質、それらの断片および誘導体を提供する。
本発明はまた、機能的に活性である[すなわち、それらが全長(野性型)Nogoタンパク質に関連する1つ以上の既知の機能的活性を示すことができる]本発明のNogo誘導体および類似体に関する。そのような機能的活性としては、神経成長調節タンパク質と相互作用する(または結合について競合する)能力、抗原性[抗-Nogo抗体と結合する(または結合についてNogoと競合する)能力]、免疫原性(Nogoに結合する抗体を生成する能力)、脊髄または脳におけるニューロンの再生の抑制、基質への、神経細胞および腫瘍性細胞の成長、伸展および移動を抑制する特性の付与、後根神経節の成長、錐体の崩壊を含む後根神経節の神経突起成長の抑制、in vitroでのNIH 3T3細胞の伸展の阻止、PC12神経突起の成長の阻止、神経形成性の制限などが挙げられるが、それらに限定されない。
本発明はさらに、Nogoタンパク質の1つ以上のドメインを含むNogoの断片(ならびにその誘導体および類似体)に関する。
Nogoに対する抗体、その誘導体および類似体がさらに提供される。
本発明はまた、Nogoタンパク質および核酸ならびに抗-Nogo抗体をベースとする治療方法および診断方法ならびに組成物に関する。本発明は、Nogoの活性を促進する化合物[例えば、Nogoタンパク質ならびにそれらの機能的に活性な類似体および誘導体(断片を含む)、Nogoタンパク質、類似体または誘導体をコードする核酸、Nogoのアゴニスト]を投与することによる、成長調節細胞または器官の障害の治療を提供する。
本発明はまた、Nogoの機能をアンタゴナイズまたは抑制する化合物(例えば、抗体、Nogoアンチセンス核酸、Nogoアンタゴニスト誘導体)を投与することによる、神経系の損傷または障害の治療方法を提供する。
障害に対する疾病素質の動物モデル、診断方法およびスクリーニング方法もまた、本発明により提供される。
開示内容を明確にするために(しかし、限定しようとするものではないが)、本発明の詳細な説明を以下のサブセクションに分ける。
5.1 Nogo遺伝子の単離
本発明は、Nogo遺伝子または核酸のヌクレオチド配列に関する。1つの実施形態において、Nogo核酸は、図1bに示すNogo Aとして同定された図2aのラットcDNA配列(配列番号1)もしくはそのコード領域、または長さが1163アミノ酸のNogoタンパク質をコードするヌクレオチド配列もしくはそれらの機能的断片もしくは誘導体(例えば、図2aに示す配列番号2の配列を有するタンパク質)を含む。
別の実施形態において、Nogo核酸は、Nogo Bをコードするヌクレオチド配列を含むが、但し、Nogo Bタンパク質は、Nogo Aのカルボキシ末端の188アミノ酸に融合しているアミノ末端の172アミノ酸に相当し、末端切断型の360アミノ酸のタンパク質を生じる。Nogo Bの転写産物は、介在ヌクレオチドコード配列を除去する別のスプライシングによって生じる。
本発明のさらに別の実施形態において、Nogo核酸は、Nogo Cをコードするヌクレオチド配列を含むが、但し、Nogo Cタンパク質は、そのアミノ末端にNogo Aには存在しない11個のアミノ酸と、Nogo AおよびBのカルボシキ末端の188個のアミノ酸とを含む。Nogo Cタンパク質は199個のアミノ酸を有する。Nogo Cをコードする転写産物は、別のNogoプロモーターからの転写によって生じるものである。
さらに別の特定の実施形態において、本発明はウシNogoの核酸配列(配列番号28)を提供する。
さらに別の特定の実施形態において、本発明は、ヒトNogoをコードするヌクレオチド配列およびヒトNogoタンパク質の断片(ラットのNogo A、Nogo BおよびNogo Cのヒト同等物を含む)を提供する。ヒトNogoの核酸配列は、ラットNogo Aの転写産物を鋳型として用い、ヒト発現配列タグ(EST)と共にスプライシングして連続する核酸配列を明らかにすることにより解明される。ラットおよびウシのNogoのアミノ酸配列はまた、ヒトNogoのアミノ酸配列が推定されるように、適切な翻訳リーディングフレームについての情報を提供する。本発明はまた、ヒトNogo遺伝子の断片のアミノ酸配列を提供する。
本発明はまた、Nogo配列の少なくとも8ヌクレオチド(すなわち、ハイブリダイズし得る部分)からなる精製されたアミノ酸を提供する。別の実施形態では、該核酸は、Nogo配列の少なくとも25の(連続した)ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチド、20ヌクレオチド、500ヌクレオチド、700ヌクレオチドもしくは800ヌクレオチド、または全長Nogoコード配列からなる。別の実施形態では、該核酸は、長さが35、200または500ヌクレオチドよりも小さい。核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよい。本発明はまた、上記の配列にハイブリダイズし得る、または相補的な核酸に関する。特定の態様では、Nogo遺伝子の少なくとも10、25、50、100もしくは200ヌクレオチドまたは全コード領域に相補的な配列を含む核酸が提供される。
特定の実施形態において、低ストリンジェンシーの条件下でNogo核酸にハイブリダイズし得る核酸(例えば、配列番号2を有するもの、図2a)またはNogo誘導体をコードする核酸にハイブリダイズし得る核酸が提供される。例として(しかし、限定しようとするものではないが)、そのような低ストリンジェンシーな条件を用いる手順は以下のとおりである(ShiloおよびWeinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6789-6792も参照されたい):DNAを含むフィルターを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris-HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、0.1% PVP、0.1%フィコール、1% BSAおよび500μg/ml変性サケ精子DNAを含有する溶液中で40℃で6時間にわたって前処理する。ハイブリダイゼーションを、以下の変更を加えた同じ溶液中で行う:0.02% PVP、0.02%フィコール、0.2% BSA、100μg/mlサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストランおよび5〜20×106cpm 32P標識プローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混合物中で40℃で18〜20時間にわたってインキュベートし、次に2×SSC、25mM Tris-HCl(pH 7.4)、5mM EDTAおよび0.1% SDSを含有する溶液中で55℃で1.5時間洗浄する。この洗浄溶液を新しい溶液と交換し、さらに60℃で1.5時間インキュベートする。フィルターをブロット乾燥し、オートラジオグラフィーに暴露する。必要であれば、フィルターを3回目として65〜68℃で洗浄し、フィルムに再暴露する。用い得る低ストリンジェンシーの他の条件は当業界では周知である(例えば、セクション6.1.1.の実施例において示されているような種間ハイブリダイゼーションに用いられるもの)。
別の特定の実施形態において、高ストリンジェンシーの条件下でNogo核酸にハイブリダイズし得る核酸が提供される。例として(しかし、限定しようとするものではないが)、そのような高ストリンジェンシーの条件を用いる手順は以下のとおりである:DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6×SSC、50mM Tris-HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02%フィコール、0.02% BSAおよび500μg/ml変性サケ精子DNAからなるバッファー中で65℃で8時間〜一夜にわたって行う。フィルターを、100μg/ml変性サケ精子DNAおよび5〜20×106cpmの32P標識プローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物中で65℃で48時間ハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄は、2×SSC、0.01% PVP、0.01%フィコールおよび0.01% BSAを含有する溶液中で37℃で1時間行う。これに続いて、0.1×SSC中で50℃にて45分間洗浄した後、オートラジオグラフィーにかける。用い得る高ストリンジェンシーの他の条件は当業界では周知である。
別の特定の実施形態では、中程度ストリンジェンーの条件下でNogo核酸にハイブリダイズし得る核酸が提供される。例えば(しかし、限定しようとするものではないが)、そのような中程度ストリンジェンシーの条件を用いる手順は以下のとおりである:DNAを含むフィルターを、6×SSC、5×Denhart溶液、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNAを含有する溶液中で55℃で6時間にわたって前処理する。ハイブリダイゼーションを同じ溶液中で行い、5〜20×106cpmの32P標識プローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混合物中で55℃で18〜20時間インキュベートし、次に1×SSCおよび0.1% SDSを含有する溶液中で60℃で30分間にわたり2回洗浄する。フィルターをブロット乾燥し、オートラジオグラフィーに暴露する。用い得る中程度ストリンジェンシーの他の条件は当業界では周知である。フィルターの洗浄は、2×SSC、0.1% SDSを含有する溶液中で37℃で1時間行う。そのようなストリンジェンシーの条件は、例えばラットまたはウシのNogo cDNAクローンをプローブとして用いてヒトNogo cDNAを単離する場合のように、別の種におけるNogo遺伝子配列を含む核酸分子を単離するのに好適である。
公表されている核酸配列データベースで報告されている多くのヒト発現配列タグ(EST)は、本発明のNogo遺伝子配列のセグメントと比較した場合に、高度の配列同一性を示す。ヒトESTの以下の予備リストが同定され、それらのGenBank受入れ番号により示す:ENTREZヌクレオチド照会プログラムを用いたAA158636(配列番号35)、AA333267(配列番号36)、AA081783(配列番号37)、AA167765(配列番号38)、AA322918(配列番号39)、AA092565(配列番号40)、AA081525(配列番号41)およびAA081840(配列番号42)。本発明の以前には、上記のESTのいずれもが、アミノ酸配列に関して特性決定されておらず、これらのESTはin vivoでコードすると思われる。該ヒトESTの推定アミノ酸配列を含むタンパク質の機能については全く知られていなかった。さらに、AA158636のようなラットのNogo cDNAの5′末端とアライメントするESTと、AA081840のようなラットのcDNAの3′末端とアライメントする別のESTとは重複せず、同じヒトcDNA配列の一部ではないと推定される。
本発明のNogo遺伝子配列に基づけば、これらのヒトESTが、該ESTが得られた組織内で発現されるヒトNogo遺伝子の部分であると考えられる。したがって、本発明は、上記のヒトESTの2以上を含む核酸分子を包含する。該ESTは、同じヒト組織内で発現されてもよいし、または異なるヒト組織内で発現されてもよい。好ましくは、本発明の核酸分子は、互いに重複しない、または第3またはそれ以上のヒトESTと重複しない少なくとも2つのヒトESTのヌクレオチド配列を含む。
上記のヒトESTはここで、ウシおよびラットのNogo核酸のクローニングによりヒトNogo遺伝子の断片として同定されているので、該ヒトESTは、例えばヒトNogoポリペプチドの発現、ハイブリダイゼーションアッセイおよびアンチセンス核酸分子としてのNogo発現の抑制などのような(しかしそれらに限定されない)本発明の種々の方法において、他のNogo核酸分子と比較してほぼ同様の機能を有すると考えられる。
さらに、本発明は、ヒトNogoタンパク質の推定アミノ酸配列およびその断片を提供し、それらを含む。図13に示すように、ラットNogoタンパク質のアミノ酸配列(図2a、配列番号2)は、ヒトNogoタンパク質の推定アミノ酸配列(図13、配列番号29)とアライメントする。したがって、本発明は、ヒトNogoの推定アミノ酸配列(図13、配列番号29)もしくは少なくとも6個のアミノ酸残基からなるヒトNogoの推定アミノ酸配列のサブ配列、または以下のヒトNogo断片の推定アミノ酸配列の1つ以上を含むヒトNogoタンパク質を包含する:MEDLDQSPLVSSS(ヒトNogo、配列番号43を有するアミノ酸1〜13に該当)、KIMDLKEQPGNTISAG(ヒトNogo、配列番号44を有するアミノ酸187〜203に該当)、KEDEVVSSEKAKDSFNEKR(ヒトNogo、配列番号45を有するアミノ酸340〜358に該当)、QESLYPAAQLCPSFEESEATPSPVLPDIVMEAPLNSAVPSAGASVIQPSS(ヒトNogo、配列番号46を有するアミノ酸570〜619に該当)。天然に存在するヒトNogoおよび組換えヒトNogo、ならびに上記のアミノ酸配列と実質的に類似するアミノ酸配列を有し、かつNogoタンパク質に対する抗体により結合することができるそれらの断片は、本発明の範囲にある。
本発明はさらに、図13に示すアミノ酸配列(図13、配列番号29)と実質的に類似するアミノ酸配列を有するヒトNogoタンパク質をコードする核酸分子を提供する。特定の実施形態では、図13に示すアミノ酸配列(配列番号29)と実質的に類似するアミノ酸配列を有するヒトNogoタンパク質の断片をコードする核酸分子もまた考えられているが、但し、そのような核酸分子は上記のヒトESTのヌクレオチド配列を含まない。
あるアミノ酸配列が、ヒトNogoタンパク質の推定アミノ酸配列と実質的に類似していると見なされるのは、例えばBLASTコンピューター検索(Altschulら, 1994, Nature Genet. 6:119-129)のような当業界で公知のコンピューター相同性プログラムによりアライメントを行うコンピューターアルゴリズムを用いた時に、それら2つの分子中のアミノ酸残基の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または97%より多くが同一である場合である。
例として(しかし限定するものではないが)、有用なコンピューター相同性プログラムとしては、以下のものが挙げられる:ベーシック・ローカル・アライメント・サーチ・ツール(BLAST)(www.nobi.nlm.nih.gov)(Altschulら, 1990, J. of Molec. Biol., 215:403-410, “The BLAST Algorithm”;Altshulら, 1997, Nuc. Acids. Res. 25:3389-3402)、配列類似性の検索用に作られた帰納的検索アルゴリズム(KarlinおよびAltschul 1990, Proc. Nat’l Acad.Sci. USA, 87:2264-68;1993, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 90:5873-77の統計的方法を用いて有意性を帰納する)。5種の特定のBLASTプログラムが以下のタスクを実行する:
1)BLASTPプログラムは、アミノ酸照会配列をタンパク質配列データベースと比較する。
2)BLASTNプログラムは、ヌクレオチド照会配列をヌクレオチド配列データベースと比較する。
3)BLASTXプログラムは、ヌクレオチド照会配列(両鎖)の6フレーム概念的翻訳産物(six-frame conceptual translation products)をタンパク質配列データベースと比較する。
4)TBLASTNプログラムは、タンパク質照会配列を、全6リーディングフレームを合せて翻訳したヌクレオチド配列データベース(両鎖)と比較する。
5)TBLASTXプログラムは、ヌクレオチド照会配列の6フレーム翻訳産物を、ヌクレオチド紹介配列の6フレーム翻訳産物と比較する。
当業者であれば理解されるように、TBLASTNプログラムは、所望の同一性(%)を有する核酸を同定するのに特に有用であり、BLASTPプログラムは、所望の同一性(%)を有するアミノ酸配列を同定するのに特に有用である。
Smith-Waterman(データベース:ヨーロッパ・バイオインフォーマティクス・インスティチュート wwwz.ebi.ac.uk/bic_sw/)(Smith-Waterman, 1981, J. of Molec. Biol., 147:195-197)は、配列アライメント用の数理的に厳密なアルゴリズムである。
FASTA(Pearsonら, 1988, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA, 85:2444-2448を参照)は、Smith-Watermanアルゴリズムについてのヒューリスティックな近似である。BLAST、Smith-WatermanおよびFASTAアルゴリズムの手順および利点の概略的な解説については、Nicholasら, 1998, “A Tutorial on Searching Sequence Databases and Sequence Scoring Methods” (www.psc.edu)およびそこで引用されている文献を参照されたい。
ヒトNogo遺伝子、断片、天然に存在する突然変異体およびそれらの改変体を単離または同定するために、ヒトNogoの推定アミノ酸配列またはヒトESTのヌクレオチド配列(ヒトNogoの該推定アミノ酸配列をコードする縮重配列を含む)を使用することは、本発明の範囲にある。当業者には公知であるそのような使用としては、DNAライブラリースクリーニングのための核酸プローブを調製するための情報の使用、DNAの増幅、ヒト集団の遺伝的スクリーニング、および抗体を作製するための合成ペプチドの調製が挙げられるが、それらに限定されない。そのような使用の幾つかの詳細な説明は、本明細書の後記のセクションにある。
Nogoタンパク質の誘導体および類似体をコードする核酸ならびにNogoアンチセンス核酸がさらに提供される。容易に明らかであり、本明細書中で用いられるように、「Nogoタンパク質の断片または部分をコードする核酸」とは、具陳するNogoタンパク質の断片または部分だけをコードし、連続配列としてのNogoタンパク質の他の隣接部分はコードしない核酸をいうものとする。ここにおいて、部分(portion)とは1個以上のアミノ酸を意味する。
同一または異なる種の他のNogo核酸の間で保存されている(それらに相同である)領域を含むNogo核酸の断片もまた提供される。1以上のNogoドメインをコードする核酸は例えば図2aに提供されており、ラットNogoの保存されているカルボキシ末端ドメイン(約180個のアミノ酸を有する)は、停止コドンの前のコード配列の少なくとも540のヌクレオチドによりコードされる。ラットNogo A中の保存されているカルボキシ末端ドメイン内の2つの疎水性ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(すなわち、アミノ酸988〜1023およびアミノ酸1090〜1125)もまた提供される。ラットNogo Aのアミノ末端の酸性ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(残基31〜58)もまた提供される。
Nogoの種々の領域の機能的分析を行うために、Nogo遺伝子中の一連の欠失を作製し、組換えDNA法により発現ベクターにクローニングし、融合タンパク質として発現させた。Nogoタンパク質の断片をコードする核酸が提供され、例えば、配列番号2のアミノ酸残基1〜171、172〜974、259〜542、542〜722、172〜259、722〜974もしくは975〜1162またはそれらの組合せをコードする核酸;ならびに配列番号29のアミノ酸残基1〜131、132〜939、206〜501、501〜680、132〜206、680〜939および940〜1127またはそれらの組合せをコードする核酸が挙げられる。欠失構築体の幾つかは、Nogoの末端切断部分ならびにヘキサヒスチジンタグおよび/またはT7タグをコードする追加のヌクレオチド配列を含む。配列番号2のアミノ酸残基172〜259、アミノ酸残基974〜1162またはアミノ酸残基172〜259と974〜1162が欠けているが配列番号2の残部を含んでいる、または配列番号29のアミノ酸残基132〜206、アミノ酸残基939〜1127またはアミノ酸残基132〜206と939〜1127が欠けているが配列番号29の残部を含んでいる末端切断型のNogoタンパク質をコードする核酸が提供される。代表的な欠失構築物の構造を図18に示す。これらの欠失構築物は、細胞に導入されると、Nogoの断片または末端切断部分を生じる。これらの突然変異体の生物学的活性は、セクション6.2.7の表2に記載されている種々の機能的アッセイで調べた。
Nogo遺伝子のクローニングのための特定の実施形態は、以下のように特定の実施例として示されているが、それに限定しようとするものではない。
発現クローニング(当業界で一般的に知られている技法)の場合、当業界で公知の方法により発現ライブラリーを構築する。例えば、(例えばヒトの)mRNAを単離し、cDNAを作製し、発現ベクター(例えばバクテリオファージ誘導体)に連結して、それが次いで導入される宿主細胞により発現できるようにする。次に種々のスクリーニングアッセイを用いて、発現されたNogo産物を選択することができる。1つの実施形態では、選択のために抗-Nogo抗体を用いることができる。
別の実施形態では、選択の前に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー中の所望の配列を増幅する。既知のNogo配列に相当するオリゴヌクレオチドプライマーをPCRにおけるプライマーとして用いることができる。好ましい態様では、該オリゴヌクレオチドプライマーは、異なる種のNogoの間で強く相同しているNogo保存セグメントの少なくとも一部に相当する。合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、潜在的に関心のある供給源(RNAまたはDNA)からの、好ましくはcDNAライブラリーからの配列をPCRにより増幅してもよい。PCRは、例えばPerkin-Elmer CetusサーマルサイクラーおよびTaqポリメラーゼ(Gene AmpTM)を用いることにより行うことができる。増幅しようとするDNAとしては、任意の真核種からのmRNAもしくはcDNAまたはゲノムDNAを含み得る。PCR反応で用いるための幾つかの異なる縮重プライマーを合成するために選択してもよい。また、PCR反応をプライムするのに用いられるハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを様々に変えて、既知のNogoヌクレオチド配列と単離しようとする核酸相同体との間のより高度またはより低度のヌクレオチド配列類似性を可能にすることもできる。種間ハイブリダイゼーションの場合、低ストリンジェンシーの条件が好ましい。同種間ハイブリダイゼーションの場合、中程度ストリンジェンシーの条件が好ましい。
Nogo相同体のセグメントがうまく増幅された後、該セグメントは分子クローニングし、配列決定し、相補的cDNAまたはゲノムクローンを単離するためのプローブとして用いることができる。こうして、このことにより、後記に記載するように、遺伝子の完全なヌクレオチド配列の決定、その発現の分析、および機能的分析のためのそのタンパク質産物の生産が可能になる。このようにして、Nogoタンパク質およびNogo類似体をコードする別の遺伝子が同定できる。
上記の方法は、Nogoのクローンを得ることができる方法の以下の概略的説明を限定しようとするものではない。
どのような真核細胞も、Nogo遺伝子の分子クローニングのための核酸供給源として潜在的に役立ち得る。Nogoをコードする核酸配列は、脊椎動物、哺乳動物、ヒト、ブタ、ネズミ、ウシ、ネコ、鳥類、ウマ、イヌ、ならびに別の霊長類供給源、昆虫などから単離できる。該DNAは、クローニングしたDNA(例えばDNA「ライブラリー」)から当業界で公知の標準的な手順により、化学的合成、cDNAクローニング、またはゲノムDNAもしくはその断片のクローニングにより得て、所望の細胞から精製することができる(例えば、Sambrookら, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York;Glover, D.M.(編), 1985, DNA Cloning: A Practical Approach, MRL Press, Ltd., Oxford, U.K. Vol. I, IIを参照のこと)。ゲノムDNAから誘導されたクローンは、コード領域に加えて、調節領域およびイントロンDNA領域を含んでもよく;cDNAから誘導されるクローンはエキソン配列のみを含む。供給源がどのようなものであっても、該遺伝子は、該遺伝子の増殖のための適切なベクターに分子クローニングしなければならない。
ゲノムDNAからの遺伝子の分子クローニングでは、DNA断片を作製し、その中の幾つかが所望の遺伝子をコードする。該DNAは、種々の制限酵素を用いて特定の部位で切断することができる。あるいはまた、マンガンの存在下でDNAseを用いて該DNAを断片化してもよいし、あるいは該DNAは例えば超音波により物理的に剪断してもよい。次に、この線状化したDNA断片は、アガロースおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動ならびにカラムクロマトグラフィーなど(しかしそれらに限定されない)の標準的な方法によりサイズ別に分離することができる。
該DNA断片が作製されたら、所望の遺伝子を含む特定のDNA断片の同定を幾つかの方法で行う。例えば、ある量の(任意の種の)Nogo遺伝子もしくはその特定のRNAの一部またはその断片(セクション6.1.1を参照)が入手可能であり、かつ精製および標識できる場合には、作製されたDNA断片は標識したプローブへの核酸ハイブリダイゼーションによりスクリーニングできる(Benton, W.およびDavis, R., 1977, Science 196:180;Grunstein, M.およびHogness, D., 1975, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:3961)。該プローブに対して実質的な相同性を有するDNA断片がハイブリダイズする。また、適当な断片を、制限酵素消化、および断片サイズを既知の制限地図(このようなものが入手可能である場合)に従って予期されるものと比較することにより同定することも可能である。該遺伝子の特性に基づいて更なる選択を行ってもよい。
あるいはまた、該遺伝子の存在は、その発現産物の物理的、化学的または免疫学的特性に基づくアッセイにより検出することができる。例えば、適切なmRNAをハイブリッド選択するcDNAクローンまたはDNAクローンを選択することができ、これは、例えばNogoについて知られているのと類似または同一の電気泳動移動、等電点電気泳動挙動、タンパク質分解消化地図、翻訳後修飾、酸もしくは塩基特性、または抗原特性を有するタンパク質を産生する。Nogoに対する抗体は入手可能であり、例えばIN-1およびIN-2(米国特許第5,684,133号)、AS BrunaおよびAS472が挙げられる。AS BrunaおよびAS472の調製はセクション6.1.7に記載されている。Nogoタンパク質は、標識した抗体の推定Nogo合成クローンへの結合により、ELISA(固相酵素免疫検定法)タイプの手順において、または精製もしくは全細胞の抽出物のウェスタンブロッティングにより同定できる。
Nogo遺伝子はまた、核酸ハイブリダイゼーションおよびそれに続くin vitro翻訳によるmRNAの選択によっても同定できる。この方法では、断片を用いて、ハイブリダイゼーションにより相補的mRNAを単離する。そのようなDNA断片は、別の種(例えばマウス、ヒト)の入手可能な精製Nogo DNAであってもよい。単離されたmRNAの単離産物のin vitro翻訳産物を免疫沈降分析または機能的アッセイ(例えば、in vitroでの凝集能力、受容体への結合;後記を参照)することにより該mRNAが同定され、したがって、所望の配列を含む相補的DNA断片が同定される。さらに、特定のmRNAは、細胞から単離されたポリソームの、Nogoタンパク質に対して特異的に生起させた固定化抗体への吸着により選択することができる。放射性標識したNogo cDNAは、選択した(吸着したポリソームからの)mRNAを鋳型として用いて合成することができる。次に、放射性標識したmRNAまたはcDNAをプローブとして用いて、他のゲノムDNA断片の中からNogo DNA断片を同定することができる。
NogoゲノムDNAを単離するための別法としては、その遺伝子配列自体を既知の配列から化学的に合成すること、またはcDNAをNogoタンパク質をコードするmRNAにすることが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、Nogo遺伝子のcDNAクローニングのためのRNAは、Nogoを発現する細胞から単離することができる。他の方法が可能であり、本発明の範囲内である。
次に、同定され単離された遺伝子を適切なクローニングベクターに挿入する。当業界で公知の多数のベクター−宿主系を用いることができる。適当なベクターとしては(しかし、それらに限定されない)、プラスミドまたは改変ウイルスが挙げられるが、ベクター系は用いられる宿主細胞と適合性でなければならない。そのようなベクターとしては、ラムダ誘導体のようなバクテリオファージ、またはpBR322、pUCプラスミド誘導体もしくはBluescriptベクター(Stratagene)のようなプラスミドが挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、タンパク質発現の分析を簡易にするために、Nogoはエピトープタグを有するpcDNA3にクローニングされる(セクション6.1.10)。
クローニングベクターへの挿入は、例えば、該DNA断片を、相補的に付着性である末端を有するクローニングベクターに連結することにより達成できる。しかし、クローニングベクター中に該DNAを断片化するために用いられる相補的な制限部位が存在しない場合には、該DNA分子の末端を酵素的に修飾してもよい。あるいはまた、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNAの末端に連結することにより、所望される任意の部位を作製してもよい。これらの連結されたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特定の化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを含んでもよい。別の方法では、切断されたベクターおよびNogo遺伝子をホモポリマーテイリングにより修飾してもよい。組換え分子は、形質転換、トランスフェクション、インフェクション、エレクトロポレーションなどにより宿主細胞に導入して、該遺伝子配列の多数コピーがつくられるようにすることができる。
別の方法では、所望の遺伝子は、「ショットガン」法で適切なクローニングベクターに挿入した後で、同定し単離することができる。例えばサイズ分画による該所望の遺伝子の濃化は、クローニングベクターに挿入する前に行うことができる。
特定の実施形態では、単離されたNogo遺伝子、cDNAまたは合成DNA配列を組み込んだ組換えDNA分子による宿主細胞の形質転換により、該遺伝子の多数コピーの作製が可能になる。したがって、該遺伝子は、形質転換体を増殖させ、組換えDNA分子を形質転換体から単離し、必要であれば挿入した遺伝子を単離した組換えDNAから回収することにより、大量に得ることができる。
本発明により提供されるNogo配列としては、天然のNogoタンパク質に見られるのと実質的に同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、および機能的に同等であるアミノ酸を有するアミノ酸配列をコードするもの、ならびにNogo誘導体および類似体について後記のセクション6.2.1および6.2.2に記載されている他のNogo誘導体または類似体をコードするものが挙げられる。
5.2 Nogo遺伝子の発現
Nogoタンパク質またはその機能的に活性な類似体もしくは断片もしくは他の誘導体をコードするヌクレオチド配列(図1bおよび2a;第6.2.1節および第6.2.2節を参照)を、好適な発現ベクター、すなわち挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳のために必要なエレメントを含有するベクター中に挿入することができる。必要な転写および翻訳シグナルも、天然のNogo遺伝子および/またはその隣接領域により供給することもできる。コード配列はまた、結合パートナーとの公知の結合特性を有するよく知られている抗原または生体分子をコードする配列(例えば、mycエピトープタグ、ヒスチジンタグ、T7エピトープタグなど、6.2.6節および図11a-11cを参照)を用いてタグを付けすることができる。次いでこの追加した配列を用い、固相マトリックスに結合しているそれに対応するパートナーと結合基との相互作用を用いてNogoタンパク質、タンパク質断片、または誘導体を精製できる。
種々の宿主-ベクター系を利用してタンパク質コード配列を発現させることができる。これらは限定されるものでないが、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染した哺乳類細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含有する酵母、またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAを用いて形質転換された細菌などの微生物を含む。ベクターの発現エレメントはその強度および特異性が様々である。利用する宿主-ベクター系によって、多数の好適な転写および翻訳エレメントのうちのいずれか1つを利用できる。特定の実施形態においては、ヒトNogo遺伝子が発現されるか、またはヒトNogo遺伝子の機能的に活性な部分をコードする配列(特定の例として、Nogo A、Nogo BまたはNogo C)が発現される(Fig 1b)。さらに他の実施形態においては、Nogoタンパク質のドメインを含むNogoのフラグメントが発現される。
本明細書において、ある細胞がある核酸によって「形質転換される」というのは、その細胞が、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入などによって該細胞またはその祖先の中に核酸を導入した後、該細胞中に元来存在しない核酸を含有する場合に用いる。
配列番号29のアミノ酸残基1-131、132-939、206-501、501-680、132-206、680-939、および940-1127からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含むヒトNogo Aのフラグメントをコードするヌクレオチド配列も提供される。ヒトNogo Aの末端が切断された部分をコードするヌクレオチド配列も提供され、該末端切断型タンパク質は配列番号29のアミノ酸残基132-206、アミノ酸残基939-1127、またはアミノ酸残基132-206と939-1127を欠くが、配列番号29の他の残りの部分を含む。
DNA断片のベクターへの挿入について先に記載した方法のいずれかを使って好適な転写/翻訳制御シグナルおよびタンパク質コード配列からなるキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、in vitro組換えDNAおよび合成技術およびin vivo組換え(遺伝子組換え)を含むことができる。Nogoタンパク質またはペプチドフラグメントをコードする核酸配列の発現を第2の核酸配列により調節して、Nogoタンパク質またはペプチドを組換えDNA分子により形質転換された宿主内で発現させることができる。例えば、Nogoタンパク質の発現を当業界で公知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントによって制御することができる。例示の実施形態は、第6.2.1節で論じるNogoの天然プロモーターの1つ、P1またはP2の1つを使うことである。固有のプロモーターではないプロモーターを使うこともできる。Nogo発現を制御するために使用できるプロモーターは、限定されるものでないが、以下のもの:SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus)の3'の長い末端反復配列に含有されるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296:39-42);β-ラクタマーゼプロモーターのような原核細胞発現ベクター(Villa-Kamaroffら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoerら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25);「組換え細菌からの有用なタンパク質」(Useful proteins from recombinant bacteria;Scientific American, 1980, 242:74-94)も参照すること;ノパリンシンセターゼプロモーター領域を含む植物発現ベクター(Herrera-Estrellaら, Nature 303:209-213)またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら, 1981, Nucl. Acids Res. 9:2871)、および光合成酵素リブロース-ビスリン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrellaら, 1984, Nature 310:115-120);Gal 4プロモーターのような酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および組織特異性を示してトランスジェニック動物に利用されている以下の動物転写制御領域;膵腺房細胞において活性を示すエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら, 1984, Cell 38:639-646; Ornitzら, 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515);膵β細胞で活性を示すインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、リンパ系細胞において活性を示す免疫グロブリン遺伝子制御領域(GrosschedIら, 1984, Cell 38:647-658;Adamesら, 1985, Nature 318:533-538;Alexanderら, 1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣、乳房、リンパ系および肥満細胞において活性を示すマウス乳腺腫瘍ウイルス制御領域(Lederら, 1986, Cell 45:485-495)、肝臓において活性を示すアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら, 1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓において活性を示すα-フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら, 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648;Hammerら, 1987, Science 235:53-58);肝臓において活性を示すα-1-抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら, 1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄細胞において活性を示すβ-グロブリン遺伝子制御領域(Morgramら, 1985, Nature 315:338-340;Kolliasら, 1986, Cell 46:89-94);脳の稀突起膠細胞(oligodendrocyte cell)において活性を示すミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら, 1987, Cell 48:703-712);骨格筋において活性を示すミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani, 1985, Nature 314:283-286)、および視床下部において活性を示す性腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropic releasing hormone)遺伝子制御領域(Masonら, 1986, Science 234:1372-1378)を含む。
ある特定の実施形態においては、Nogoコード核酸、1つ以上の複製起点および、場合によっては、1つ以上の選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)と機能的に連結したプロモーターを含むベクターが使われる。
ある特定の実施形態においては、発現構築物を、Nogoコード配列を3種のグルタチオンS-トランスフェラーゼ発現ベクターであるpGEXベクター(SmithおよびJohnson, 1988, Gene 7:31-40)のそれぞれのEcoRI制限部位内にサブクローニングして作製する。これにより、Nogoタンパク質産物が正しいリーディングフレームのサブクローンにより発現する。
Nogo遺伝子インサートを含有する発現ベクターは、次の3種の一般的手法:(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在するか否か、(c)挿入した配列の発現、により同定することができる。第1の手法では、発現ベクターに挿入したNogo遺伝子の存在を、挿入されたNogo遺伝子と相同的な配列を含むプローブを用いて核酸ハイブリダイゼーションにより検出できる。第2の手法では、組換えベクター/宿主系は、ベクターのNogo遺伝子の挿入により生じる、ある特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換された表現型、バキュロウイルスのオクルージョンボディ(occlusion body)の形成、など)が存在するか否かに基づいて、同定し選択できる。例えば、もしNogo遺伝子がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入されれば、Nogo遺伝子インサートを含有する組換え体をマーカー遺伝子機能が存在しないことにより同定できる。第3の手法では、組換え発現ベクターを、組換え体により発現されるNogo生成物をアッセイすることにより同定できる。このようなアッセイは、例えば、in vitroアッセイシステムにおけるNogoタンパク質の物理的または機能的特性(例えば抗Nogo抗体との結合)に基いてよい。
特定の組換えDNA分子が同定および単離されれば、当業界で公知の複数の方法を使ってこれを増やすことができる。適当な宿主系と増殖条件が確立されれば、組換え発現ベクターを増やしかつ大量に調製することができる。先に説明した通り、使用できる該発現ベクターは、限定されるものでないが、以下のベクター:(少数の例としては)ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスのようなヒトまたは動物ウイルス;バキュロウイルスのような昆虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えばλ)、ならびにプラスミドおよびコスミドDNAベクター、またはそれらの誘導体を含む。
さらに、挿入された配列の発現をモジュレートするかまたは所望の特定の様式で遺伝子産物を改変しかつプロセシングする宿主細胞株を選ぶことができる。ある特定のプロモーターからの発現はある特定のインデューサーの存在下で上昇しうるので、遺伝子操作したNogoタンパク質の発現を制御できる。さらに、種々の宿主細胞は、翻訳および翻訳後プロセシングおよび改変(例えば、タンパク質のグリコシル化、リン酸化)に特徴的かつ特異的な機構を有する。好適な細胞系または宿主系を選んで、発現される外来タンパク質の所望の改変とプロセシングを保証することができる。例えば、細菌系における発現を使って、非グリコシル化コアタンパク質生成物を産生することができる。酵母での発現はグリコシル化生成物を産生するであろう。哺乳類動物細胞における発現を用いると、異種タンパク質の「天然の」糖鎖形成が確実に可能である。さらに、種々のベクター/宿主発現系は様々な程度でプロセシング反応に影響を与えうる。
他の特定の実施形態においては、Nogoタンパク質、フラグメント、類似体、または誘導体は、融合体、またはキメラタンパク質産物((異なるタンパク質の)異種タンパク質配列とペプチド結合を介して結合したタンパク質、フラグメント、類似体、または誘導体を含む)として発現させることができる。このようなキメラ産物は、所望のアミノ酸配列をコードする好適な核酸配列を互いに当業界公知の方法によって適当なコーディングフレームで連結し、そして当業界公知の方法によりキメラ産物を発現することによって作製することができる。あるいは、このようなキメラ産物は、タンパク質合成技術により(例えばペプチド合成機の使用により)作ることができる。
cDNAおよびゲノム配列は両方とも、クローニングおよび発現が可能である。
5.3 Nogo遺伝子産物の同定および精製
ある特定の態様においては、本発明は、抗原決定基を含む(すなわち、抗体により認識されうる)かまたはさもなくば機能的に活性なNogo(好ましくはヒトNogo)およびそのフラグメントおよび誘導体のアミノ酸配列、ならびに以上をコードする核酸配列を提供する。本明細書で使われる「機能的に活性な」Nogo物質は、全長(野生型)NogoAタンパク質に関連する1つ以上の既知の機能活性を呈する物質を意味し、例えば以下の:非許容性の基質特性、後根神経節増殖錐体の崩壊、NIH 3T3伸展阻害、神経突起成長阻害、Nogo基質またはNogo結合パートナーとの結合、抗原性(抗Nogo抗体との結合)、免疫原性など、が挙げられる。
特定の実施形態においては、本発明は少なくとも6個のアミノ酸、10個のアミノ酸、17個のアミノ酸、50個のアミノ酸、100個のアミノ酸、または少なくとも220個のアミノ酸から成るNogoタンパク質のフラグメントを提供する。他の実施形態においては、該タンパク質は本質的に高度に保存されたNogoカルボキシ末端ドメイン(NogoAのカルボキシ末端188個のアミノ酸)を含むかまたはそれから成る。Nogoタンパク質の保存カルボキシ末端ドメイン、または疎水性カルボキシ末端伸長部、またはアミノ末端酸性ドメイン、またはアミノ末端ポリプロリン領域またはそれらの組合わせのいずれかを欠くフラグメント、またはこれらのフラグメントを含むタンパク質も提供される。上記のものをコードする核酸が提供される。
Nogo遺伝子配列を発現する組換体が同定されれば、該遺伝子産物を分析できる。この分析は、該産物の物理的または機能的特性に基づくアッセイによって達成され、該産物の放射性標識およびその後のゲル電気泳動、イムノアッセイなどによる分析を含む。
Nogoタンパク質が同定されれば、該タンパク質は標準的方法により単離し精製することができ、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度(differential solubility)、またはタンパク質精製のための任意の他の標準技術を含む。機能的特性は、後根神経節増殖錐体の崩壊、NIH3T3伸展阻害、視神経における神経突起再生阻害(第6.2.4-6.2.5節を参照)を含む任意の適当なアッセイを用いて評価できる。
あるいは、組換え体により生成されるNogoタンパク質が同定されれば、該タンパク質のアミノ酸は該組換え体に含有されるキメラ遺伝子のヌクレオチド配列から推論できる。その結果、該タンパク質は当業界で公知の標準の化学的方法により合成することができる(例えば、Hunkapiller, M.ら, 1984, Nature 310:105-111参照のこと)。
他の代わりの実施形態においては、天然のNogo Cは、天然の供給源から上記の標準的方法(例えば、免疫アフィニティ精製)によって精製することができる。
本発明の特定の実施形態においては、組換えDNA技術もしくは化学合成法により、または固有タンパク質の精製により調製されたNogoタンパク質は、限定されるものでないが、アミノ酸一次配列として、実質的に図2a(配列番号2)、図12(配列番号28)のウシ、または図13のヒト(配列番号29)に記されたアミノ酸配列の全てまたは部分、ならびにフラグメントおよび他の誘導体(限定されるものでないが図18に記されたものなど)、およびそれらの類似体を含有するものを含み、それらに相同的なタンパク質を含む。好ましくは、本発明のNogoタンパク質は通常会合しているCNSミエリン物質を全く含まない。
5.4 Nogo遺伝子とタンパク質の構造
Nogo遺伝子とタンパク質の構造は、当業界で公知の様々な方法により分析することができ、以下の小節でこれらのうちのいくつかの方法を記載する。
5.4.1 遺伝子分析
Nogo遺伝子に対応するクローン化DNAまたはcDNAは、限定されるものでないが、サザンハイブリダイゼーション(Southern, E.M., 1975, J. Mol. Biol. 98:503-517)、ノーザンハイブリダイゼーション(例えば、Freemanら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:4094-4098を参照)、制限エンドヌクレアーゼマッピング(Maniatis, T., 1982, Molecular Cloning(分子クローニング), A Laboratory, Cold Spring Harbor, New York)、およびDNA配列分析を含む方法により分析することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;米国特許第4,683,202号、第4,683,195号、および第4,889,818号;Gyllensteinら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7652-7656;Ochmanら, 1988, Genetics 120:621-623;Lohら, 1989, Science 243:217-220)とその後のNogo遺伝子特異的プローブによるサザンハイブリダイゼーションにより、様々な細胞型に由来するDNA中のNogo遺伝子の検出が可能になる。PCR以外の増幅の方法は公知であり、同様に使うことができる。ある実施形態においてはサザンハイブリダイゼーションを用いてNogoの遺伝子連鎖を確認することができる。ノーザンハイブリダイゼーション分析を使ってNogo遺伝子の発現を確認することができる。発生または活性の様々な状態にある種々の細胞型をNogo遺伝子の発現に対して試験することができる。サザンおよびノーザンハイブリダイゼーション両方のハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを操作して、使用する特定のNogoプローブと所望の程度の関連性をもつ核酸の検出を保証することができる。これらの方法の変法および当業界で公知の他の方法を使うことができる。
制限エンドヌクレアーゼマッピングを用いてNogo遺伝子の大まかな遺伝子構造を確認できる。制限エンドヌクレアーゼ切断により生成した制限酵素地図をDNA配列分析により確証することができる。
DNA配列分析は、当業界で公知のいずれかの技術により実施することができ、限定されるものでないが、マクサム・ギルバート法(MaxamおよびGilbert, 1980, Meth. Enzymol. 65:499-560)、サンガー・ジデオキシ法(Sanger, F.ら, 1977, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.74:5463)、T7 DNAポリメラーゼ(TaborおよびRichardson, 米国特許第4,795,699号)の使用、または自動DNAシーケンサー(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA)の使用を含む。
5.4.2 タンパク質分析
Nogoタンパク質のアミノ酸配列は、DNA配列の推論により、あるいはまた、例えば自動アミノ酸シーケンサーを用いるタンパク質の直接配列決定により導くことができる。
Nogoタンパク質配列はさらに、親水性分析により特性を決定することができる(Hopp, T.およびWoods, K., 1981,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:3824)。親水性プロフィールを使ってNogoタンパク質の疎水性および親水性領域ならびにこれらの領域をコードする遺伝子配列の対応領域を同定することができる。
2次構造分析(Chou, P.およびFasman, G., 1974, Biochemistry 13:222)を行って、特有の二次構造が推定されるNogoの領域を同定することもできる。
遺伝子操作、翻訳、および2次構造予測、オープンリーディングフレーム予測およびプロッティング、ならびに配列相同性の決定はまた、当業界で利用可能なコンピューターソフトウエアプログラムを使って達成することができる。
構造分析の他の方法を使用することもできる。これらは、限定されるものでないが、X線結晶学(Engstom, A., 1974, Biochem. Exp. Biol. 11:7-13)およびコンピューターモデリング(Fletterrick, R.およびZoller, M.(編), 1986, Computer Graphics and Molecular Modeling, in Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York)を含む。
5.5 Nogoタンパク質およびその誘導体に対する抗体の作製
本発明において、Nogoタンパク質、そのフラグメントまたは他の誘導体、またはその類似体を免疫原として用いて、この免疫原と免疫特異的に結合する抗体を作製することができる。このような抗体は、限定されるものでないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、1本鎖、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリーを含む。ラットおよびウシNogoの組換えフラグメントに対する抗体が作製され(第6.1.7節)、これらの抗体はまた他の種のエピトープとも交差反応する。他の実施形態においては、親水性と同定されたNogoタンパク質のフラグメントを抗体作製の免疫原として使う。
当業界で公知の様々な方法を、Nogoタンパク質または誘導体または類似体に対するポリクローナル抗体の作製に利用できる。特定の実施形態においては、図2aの配列番号2、図12の配列番号28、図14の配列番号32、または図13の配列番号29(それぞれ、ラットNogo A、ウシNogo、ラットNogo C、またはヒトNogo)の配列またはそのサブ配列によりコードされるNogoタンパク質のエピトープに対するウサギポリクローナル抗体を取得することができる。抗体の作製のため、限定されるものでないが、ウサギ、マウス、ラット他を含む様々な宿主動物を、固有のNogoタンパク質、または合成物、あるいはそれらの誘導体(例えば、フラグメント)を注入することにより免疫化できる。宿主によって、様々なアジュバントを用いて免疫反応を増強することができ、該アジュバントは限定されるものでないが、フロイント(Freund's)(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムのような無機質性ゲル、リゾレシチンのような表面活性物質、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油乳化剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウムパルバム(corynebacterium parvum)のような潜在的に有用なヒトアジュバントを含む。
Nogoタンパク質配列またはその類似体に対するモノクローナル抗体の調製においては、継続的な細胞系の培養による抗体分子の作製を提供する任意の技術を利用できる。例えば、元来、KohlerおよびMilstein (1975, Nature 256:495-497)により開発されたハイブリドーマ技術、ならびにトリオーマ技術(trioma technique)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら, 1983, Immunology Today 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら, 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp.77-96)が挙げられる。モノクローナル抗体は、最近の技術(PCT/US90/02545)を使って無菌動物で作製することができる。本発明によれば、ヒト抗体の使用が可能であり、かつ、ヒトハイブリドーマを用いることにより(Coteら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:2026-2030)またはヒトB細胞をEBVウイルスでin vitro形質転換することにより(Coleら, 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96)、ヒト抗体を取得できる。実際、本発明によれば、Nogoに特異的なマウス抗体分子からの遺伝子を適当な生物学的に活性なヒト抗体分子からの遺伝子と共にスプライシングすることによる「キメラ抗体」を作製するために開発された技術(Morrisonら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.81:6851-6825;Neubergerら, 1984, Nature 312:604-608;Takedaら, Nature 314:452-454)を使用できる(そのような抗体は本発明の範囲内にある)。
本発明によれば、1本鎖抗体の作製のために公開されている技術(米国特許第4,946,778号)をNogo特異的1本鎖抗体の作製に適用できる。Fab発現ライブラリーの構築のための記載の技術(Huseら, 1989, Science 246:1275-1281)を利用すると、Nogoタンパク質、誘導体、または類似体に対して所望の特異性をもつモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定が可能となる。
分子のイディオタイプを含有する抗体フラグメントを公知の技術により作製できる。例えば、このようなフラグメントは、限定されるものでないが、抗体分子のペプシン消化により作製できるF(ab')2フラグメント;F(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより作製できるFab'フラグメント;抗体分子をパパインおよび還元剤を用いて処理することにより作製されるFabフラグメント、およびFvフラグメントを含む。
抗体の作製において、所望の抗体のスクリーニングは、当業界で公知の技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により実施することができる。例えば、Nogoタンパク質の特定のドメインを認識する抗体を選択するには、作製したハイブリドーマを、そのドメインを含有するNogoフラグメントと結合する産物についてアッセイしてよい。第1のNogo相同体と特異的に結合するが異種のNogo相同体とは特異的に結合しない抗体を選択するために、第1のNogo相同体とのポジティブな結合と第2のNogo相同体との結合の欠損に基づいて選択することができる。
Nogoタンパク質のドメインに特異的な抗体も提供される。
以上の抗体は、本発明のNogoタンパク質配列の局在化および活性に関する当業界で公知の方法に使用でき、例えば、診断法において、これらのタンパク質を画像化し、適当な生理学的サンプル中のそのレベルを測定することなどが挙げられる。
抗Nogo抗体および該結合ドメインを含有するそのフラグメントは治療に有用である。
5.6 Nogoタンパク質、誘導体および類似体
本発明はさらにNogoタンパク質ならびにNogoタンパク質の誘導体(限定されるものでないが断片を含む)および類似体に関する。Nogoタンパク質誘導体およびタンパク質類似体をコードする核酸も提供される。ある実施形態においては、Nogoタンパク質は、上記第5.1節に記載のNogo核酸によりコードされる。特定の態様においては、Nogo A、Nogo B、またはNogo Cタンパク質および誘導体、または類似体は動物(例えばマウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌ、サル、ヒト、ハエ、またはカエル)に由来し、これらは本発明の範囲内である。
Nogoに関連する誘導体および類似体の作製と使用も本発明の範囲内である。特定の実施形態においては該誘導体または類似体は機能的に活性があり、すなわち全長、野生型Nogoタンパク質に関連する1つ以上の機能的活性を示す能力がある。1つの例として、所望の免疫原性または抗原性を有する誘導体または類似体は、例えば、イムノアッセイにおいて、免疫感作のため、Nogo活性阻害のためなどに使うことができる。(例えば、Nogoの結合パートナーと結合して)目的の所望のNogo特性を保持するかあるいはまた欠損させるかもしくは阻害する誘導体または類似体は、そのような特性および生理学的的に関連する現象の、それぞれ誘導剤またはインヒビターとして使うことができる。特定の実施形態は、抗Nogo抗体が結合できるNogo断片に関する。Nogoの誘導体または類似体は、当業界公知の方法により所望の活性について試験でき、これは、限定されるものでないが、第6.1.10節〜第6.1.12節に記載のアッセイを含む。
Nogoの1つ以上の活性領域をマッピングするために、一連のNogo欠失突然変異体を第6.2.7節に記載の組換えDNA技術により調製した。欠失突然変異体に存在するNogoの一部分を図18に示している。特定の実施形態においては、本発明はNogoの断片、例えばNogo A(配列番号2)アミノ酸1-171、172-974、259-542、542-722、722-974、172-259、または975-1162、または以上の組合わせを含む(あるいはまたそれらから成る)断片を提供する。非本質的であり生理学的活性に影響を与えずにNogoから除去できると思われる領域である配列番号2のアミノ酸番号172-259および/または975-1162を欠くNogoの末端切断突然変異体も提供される。配列番号29のアミノ酸番号1-131、132-939、206-501、501-680、132-206、680-939、または940-1127を含む(あるいはまたそれらから成る)ヒトNogo Aの対応する断片も提供される。配列番号29のアミノ酸番号132-206、アミノ酸残基939-1127、またはアミノ酸残基132-206と939-1127を欠くヒトNogo Aの末端切断突然変異体も提供される。
特定の実施形態においては、該断片はCNSミエリン物質を全く含有せずかつ/またはNogoの阻害活性を示す。非Nogo配列と融合した上記断片の1つ以上を含む融合タンパク質も提供される。
Nogo遺伝子は機能的に同等の分子を提供する置換、付加または欠失によりNogo配列を改変して作製できる。ヌクレオチドコード配列の縮重によってNogo遺伝子と実質的に同じアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を、本発明の実施に使うことができる。これらは、限定されるものでないが、配列内の機能的に同等のアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって改変され、サイレントな変化を生じているNogo遺伝子の全体または一部を含有するヌクレオチド配列を含む。同様に、本発明のNogo誘導体は、限定されるものでないが、アミノ酸一次配列として、機能的に同等のアミノ酸残基が配列内で他の残基と置換されてサイレントな変化を生じる改変された配列を含むNogoタンパク質のアミノ酸配列の全体または一部を含有する配列を含む。例えば、該配列内の1つ以上のアミノ酸残基を機能的に同等になるように操作して、サイレントな改変を生じる類似の極性をもつ他のアミノ酸により保存的に置換することができる。配列内のアミノ酸に対する置換体は該アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロシシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正荷電(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンを含む。負荷電(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。
本発明の特定の実施形態においては、Nogoタンパク質の少なくとも10個の(連続した)アミノ酸から成るNogoタンパク質の断片から成るかまたはこれを含むタンパク質が提供される。他の実施形態においては、該断片はNogoタンパク質の少なくとも17個または50個のアミノ酸からなる。特定の実施形態においては、この断片は35個、100個または200個のアミノ酸より大きくはない。Nogoの誘導体または類似体は、限定されるものでないが、Nogoまたその断片と実質的に相同的である(例えば、様々な実施形態においては、アラインメントを当業界で周知のコンピューター相同性プログラム、例えばBLASTコンピューター検索(Altschulら, 1994, Nature Genet. 6:119-129)により実施してアラインさせた配列と比較した場合に、同一サイズのアミノ酸配列にわたって少なくとも60%または70%または80%または90%または95%の同一性を有する)領域を含むか、またはそれをコードする核酸がストリンジェントな、中度にストリンジェントな、または非ストリンジェントな条件のもとでコーディングNogo配列とハイブリダイズする能力のある分子を含む。
例えば、標識または生物活性部分を含む他の部分との炭化水素結合を有するNogo断片を含む分子も提供される。
本発明のNogo誘導体および類似体は、当業界で公知の様々な方法により作製することができる。その作製をもたらす操作は、遺伝子またはタンパク質レベルで実施される。例えば、クローニングしたNogo遺伝子配列は、当業界で公知の多数の方法(Maniatis, T., 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor, New York)のいずれかにより改変することができる。該配列を、適当な部位で制限酵素を用いて切断し、続いて、もし所望であればさらなる酵素的改変を行い、単離し、そしてin vitroで連結する。Nogoの誘導体または類似体をコードする遺伝子の作製において、改変された遺伝子が、所望のNogo活性をコードしている遺伝子領域内で翻訳停止シグナルにより中断されていないNogoと同じ翻訳読み枠内に残るように注意しなければならない。
さらに、Nogoをコードする核酸配列を、in vitroまたはin vivoで突然変異させて翻訳、開始および/もしくは終結配列を作製ならびに/または破壊するか、あるいは、in vitro改変をさらに容易にするために、コード領域を変異させ、および/または新しい制限エンドヌクレアーゼ切断部位を形成するかまたは予め存在した部位を破壊する。限定されるものでないが、化学的突然変異、in vitro部位特異的突然変異(Hutchinson, C.,ら, 1978, J. Biol. Chem 253:6551)、TAB(登録商標)リンカー(Pharmacia)などの使用を含む当業界で公知の突然変異誘発の任意の技術を使用することができる。
Nogo配列の操作はまた、タンパク質レベルで行うこともできる。本発明の範囲内に含まれるのは、翻訳中または翻訳後に例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基、タンパク質分解切断、抗体分子との結合または他の細胞リガンドなどにより様々に改変したNogoタンパク質断片または他の誘導体もしくは類似体である。多数の化学的改変は、限定されるものでないが、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在での代謝合成;その他を含む公知の技術により実施することができる。
さらに、Nogoの類似体および誘導体を化学的に合成することができる。例えば、所望のドメインを含むかまたはin vitroで所望の活性を媒介するNogoタンパク質のある部分に対応するペプチドを、ペプチド合成機を使って合成することができる。さらに、もし所望であれば、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体をNogo配列中に置換または付加により導入することができる。非古典的アミノ酸は、限定されるものでないが、一般アミノ酸のD異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロ-アミノ酸、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸のような設計されたアミノ酸、および一般的なアミノ酸類似体を含む。さらに、該アミノ酸はD(右旋性)またはL(左旋性)であってよい。
ある特定の実施形態においては、該Nogo誘導体は、Nogoタンパク質またはその断片(好ましくは、少なくともNogoタンパク質の1つのドメインもしくはモチーフ、または少なくともNogoタンパク質の10アミノ酸から成る)を含むキメラ、または融合タンパク質であり、そのアミノ-またはカルボキシ-末端でペプチド結合を介して異なるタンパク質のアミノ酸配列に結合している。ある実施形態においては、このようなキメラタンパク質は、該タンパク質をコードする核酸(異なるタンパク質に対するコード配列にインフレームで結合したNogoコード配列を含む)の組換え発現により作製される。このようなキメラ産物は、所望のアミノ酸配列をコードする適当な核酸配列をお互いに当業界公知の方法により適当なコード枠内で連結して作製し、そして当業界で公知の方法によりキメラ産物を発現することができる。あるいはまた、このようなキメラ産物は、タンパク質合成技術、例えばペプチド合成機の使用によって作製できる。任意の異種タンパク質をコードする配列と融合したNogoの部分を含むキメラ遺伝子を構築できる。このような異種タンパク質コード配列は、例えば、ヘキサヒスチジンタグ、およびT7タグを含む。特定の実施形態は、少なくとも6個のアミノ酸のNogoの断片を含むキメラタンパク質に関する。
他の特定の実施形態においては、Nogo誘導体はNogoタンパク質との相同性領域を含む分子である。
ある好ましい実施形態においては、Nogo誘導体(例えば、断片)は天然には存在しないタンパク質である。
誘導体および類似体の他の特定の実施形態を、以下の小節および後段の実施例に記載する。
5.6.1 1つ以上のNogoタンパク質のドメインを含有するNogoの誘導体
ある特定の実施形態においては、本発明は、Nogoタンパク質の1つ以上のドメインを含むかまたはそれから成るNogo誘導体および類似体、特にNogoフラグメントおよびそのフラグメントの誘導体に関し、限定されるものでないが、保存カルボキシ末端および疎水性ドメインまたはアミノ末端酸性またはポリプロリンリッチドメイン、以上のいずれかの機能的フラグメント(例えば結合した)、または以上のいずれかの組合わせを含む。
特定の実施形態は、ラットまたはウシNogoタンパク質の特定のフラグメントと最も相同的なそれぞれのNogoタンパク質内のフラグメントであるNogoの特定のフラグメントを含む分子に関する。Nogo相同体のドメインを含むフラグメントは、第6.1.2.節、第6.1.8節、第6.1.9節、第6.1.10節、第6.1.11節、または第6.1.12節に記載のタンパク質分析方法によって同定できる。
他の特定の実施形態においては、Nogoタンパク質の1つ以上のドメイン(またはその機能的部分)を含むがNogoタンパク質の1つ以上のドメイン(またはその機能的部分)を欠損する分子が提供される。他の実施形態においては、Nogoタンパク質の1つ以上のドメイン(またはその機能的部分)を含み、かつNogoタンパク質の1つ以上の突然変異(例えば、欠失または点突然変異による)を有する(例えば、突然変異ドメインは機能の低減を有するような)分子が提供される。
5.7 Nogoタンパク質、誘導体および類似体のアッセイ
Nogoタンパク質、誘導体および類似体の機能的活性は、様々な方法によりアッセイすることができる。以下の節の機能アッセイの記載は限定を意味するものでなく、かつ当業者に周知の他のアッセイを含むことができる。
5.7.1 Nogoのin vitro神経突起成長阻害アッセイ
ある特定の実施形態においては、Nogoタンパク質、誘導体および類似体を、in vitro組織培養を用いて、NIH 3T3伸展阻害またはPC12神経突起成長阻害についてアッセイできる(第6.1.10節)。
他の実施形態においては、Nogoタンパク質、誘導体および類似体を用いて、Nogoの存在により誘導される移植されたニワトリ後根神経節成長錐体の崩壊についてアッセイできる。同様に、Nogo機能を移植したニワトリ後根神経節の神経突起成長阻害についてアッセイすることができる(Spillmanら, 1998, J. Biol. Chem. 273:19283-19293)。
5.7.2 Nogoのin vivo機能的特性のアッセイ
ある実施例においては、距離の長い皮質脊髄路(corticospinal tract)(CST)の再生およびその挙動回復に対する動物モデルを使うin vivoの機能アッセイに、Nogoタンパク質、誘導体および類似体のアンタゴニストを使うことができる。
好ましい実施形態においては、げっ歯類動物の皮質脊髄路を外科切除または脊髄挫傷により破壊した後、Nogoのアンタゴニストを該動物に投与する。神経の可塑性(neural plasticity)、再生および機能回復を、処理していない対照動物または対照抗体で処理した動物と比較して、解剖技術により(主に規定した神経路の標識により)、構造的な可塑性または再生を観察する。機能回復は、該げっ歯類動物により実施する歩行運動によりおよび電気生理学的技法による試験で測定する(例えば、粘着紙試験、飼料ペレット到達動作、など)(Thallmairら, 1998 Nat. Neuroscience 1(2):124-131)。
5.7.3 Nogoリガンド結合阻害およびそのアッセイ
ある実施形態においては、抗Nogo抗体との結合に対して野生型Nogoと結合または競合する能力についてアッセイする場合、当業界で公知の様々なイムノアッセイを使うことができ、限定されるものでないが、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射線測定アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ(例えば金コロイド、酵素または放射性同位体標識を用いる)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイ、その他の技術を使う競合および非競合アッセイシステムを含む。ある実施形態においては、抗体結合を1次抗体の標識を検出することにより検出する。他の実施形態においては、1次抗体を、1次抗体に対する2次抗体または試薬の結合を検出することにより検出する。さらなる実施形態においては2次抗体を標識する。イムノアッセイの結合を検出するための多数の方法が当業界では公知であり、本発明の範囲内にある。
他の実施形態においては、Nogo結合タンパク質を同定する場合、該結合を、例えば当業界で周知の方法によりアッセイできる。他の実施形態においては、基質に対するNogoの結合の生理学的相関をアッセイしてよい。
当業者は他の方法を精通しているであろうし、それらは本発明の範囲内にある。
5.8 治療用途
本発明は治療用組成物(本明細書では「治療薬」と呼ばれる)の投与による種々の疾病および疾患の治療または予防を提供する。かかる「治療薬」としては限定されるものではないが、Nogoタンパク質ならびにその類似体および誘導体(断片を含む)(例えば上記のもの);それに対する抗体(例えば上記のもの);Nogoタンパク質をコードする核酸、類似体または誘導体(例えば上記のもの);Nogoアンチセンス核酸、ならびにNogoアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられる。調節解除された細胞増殖を伴う疾患、例えばCNS腫瘍はNogo機能を誘導する治療薬の投与によって治療または予防される。神経突起増殖、分化または維持が欠如しているか、または望まれる疾患は、Nogo機能を阻害する治療薬の投与によって治療される。上記は以下のサブセクションで詳細に記載される。
一般に患者の種と同じ種起源または(抗体の場合には)種反応性の産物の投与が好ましい。このように好ましい実施形態では、ヒトNogoタンパク質、誘導体もしくは類似体、または核酸、またはヒトNogoタンパク質に対する抗体が治療上または予防上ヒト患者に投与される。
5.8.1 調節解除された細胞増殖を伴う疾患の治療および予防
調節解除された細胞増殖を伴う疾病および疾患はNogo機能を誘導する(すなわち高める、または供給する)治療薬の投与によって治療または予防される。かかる治療薬の例としては限定されるものではないが、Nogoタンパク質、機能上活性な、特に神経突起伸長の阻害または細胞増殖の阻害(例えば、in vitroアッセイまたは動物モデルにおいて証明されたもの)に活性のある誘導体または断片、ならびにNogoタンパク質断片をコードする核酸またはその機能上活性な誘導体もしくは断片(例えば、遺伝子治療に用いられる)が挙げられる。Nogoタンパク質、その誘導体または断片は、それと天然では結合している全てのCNSミエリン物質を含まないことが好ましい。使用できるその他の治療薬、例えばNogoアゴニストはin vitroアッセイまたは動物モデルを用いて同定することができ、その例は以下に記載されている。
特定の実施形態では、Nogo機能を誘導する治療薬は、(1)Nogoタンパク質のレベルまたは機能が欠損しているか、または低下している疾病または疾患、例えば、Nogoタンパク質が不足している、遺伝子が欠損している、生物学的に不活性もしくは活性不十分または発現不十分である患者に;あるいは(2)in vitro(またはin vivo)アッセイ(以下参照) によりNogoアゴニスト投与が有用であると示された疾病または疾患に治療上(予防も含む)投与される。Nogoタンパク質のレベルまたは機能の欠損または低下は例えば患者の組織サンプルを得(例えば生検組織から)、RNAもしくはタンパク質レベル、発現したNogo RNAもしくはタンパク質の構造および/または活性に関してin vitroでアッセイすることによって容易に検出できる。このように、限定されるものではないが、キナーゼアッセイ、Nogoタンパク質を検出および/または視覚化する免疫アッセイ(例えば、ウエスタンブロット法、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫組織化学など)、および/またはNogo mRNAを検出および/または視覚化することによってNogo発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット法、in situハイブリダイゼーションなど)を始めとする当技術分野で標準的な多くの方法が使用できる。
治療または予防可能な、調節解除された細胞を伴う疾病および疾患としては、限定されるものではないが、増殖性疾患、悪性腫瘍、神経系腫瘍などが挙げられる。これらの例は以下に詳細に示されている。
5.8.1.1 腫瘍性増殖
Nogo機能を促進する治療薬の投与によって治療または予防できる腫瘍性増殖および関連疾患としては、限定されるものではないが、表1に挙げるものがある(かかる疾患に関する総説としては、Fishmanら, 1985, Medicine,第2版, J.B. Lippincott Co., Philadelphiaを参照)。
Figure 2012213406
特定の実施形態では、中枢神経系、脊髄または神経組織のいずれもの悪性または異常増殖変化(変質形成および異形成)、または過剰増殖性疾患が治療または予防される。
5.8.1.2 前癌病変症状
Nogo活性を誘導する本発明の治療薬はまた、限定されるものではないが表1に挙げられた疾患をはじめとする前癌病変症状を治療するため、および腫瘍形成状態または悪性腫瘍状態への進行を予防するために投与することができる。かかる予防または治療用途は腫瘍または癌へと進行することが知られている、または疑われる症状、特に過形成、変質形成または最も好ましくは異形成からなる非腫瘍性細胞増殖が起こっている症状に適用される(かかる異常増殖症状の総説に関しては、RobbinsおよびAngell, 1976, Bacic Pathology, 第2版, W.B Saunders Co., Philadelphia, 68-79頁を参照)。過形成とは、構造または機能に著しい変化を伴わずに組織または器官における細胞数の増加を伴う制御された細胞増殖の一形態である。変質形成とは、あるタイプの成熟細胞または十分分化した細胞が別のタイプの成熟細胞に置き換わる制御された細胞増殖の一形態である。変質形成とは、上皮または結合組織細胞で起こり得る。不定形の変質形成はいく分無秩序な変質形成上皮を伴う。異形成は癌の徴候である場合が多く、主として上皮に見られ、これは個々の細胞に均一性を欠き、また細胞の構造的配向を欠いた最も無秩序な形態の非腫瘍性細胞増殖である。異形成細胞はしばしば異常に大きく、濃く染まる核を持ち、多型性を示す。異形成は特徴的には慢性刺激または炎症が存在するところで起こる。
過形成、変質形成または異形成として特徴づけられる異常な細胞増殖の存在の他、またはそれに加えて、形質転換された表現型または悪性腫瘍表現型の1以上の特徴の存在が、患者由来の細胞サンプルにin vivoまたはin vitroで提示された場合は、Nogo機能を誘導する治療薬の予防的/治療的投与が望ましいことを示し得る。上記のような形質転換された表現型の特徴としては、形態変化、ルーズな基底層の結合、接触阻害の欠如、足場依存の欠如、プロテアーゼの放出、糖輸送の増加、血清要求の低下、胎児抗原の発現、250,000ダルトンの細胞表面タンパク質の消失などがある(形質転換または悪性表現型に関連する特徴については上記84-90頁も参照)。
その他の実施形態では、悪性腫瘍に関して以下の疾病素因因子のうち1以上を示す患者が有効量の治療薬の投与によって治療される:Von Recklineghausenの神経繊維腫症、または網膜芽腫(RobbinsおよびAngell, 1976, Basic Pathology, 第2版, W.B. Saunders Co., Philadelphia, 112-113頁など参照)。
もう1つの特定の実施形態では、本発明の治療薬は腎臓、軟骨(胸骨の)、皮膚、骨格筋、肺または脾臓の癌、黒色腫または肉腫への進行を予防するためにヒト患者に投与される。
5.8.1.3 過剰増殖性および異形増殖性疾患
本発明のもう1つの実施形態では、Nogo活性を促進する治療薬を用いて過剰増殖性または良性の異形増殖性疾患を治療または予防する。特定の実施形態は肝硬変(瘢痕形成が正常な肝再生プロセスを追い越してしまった状態)の治療または予防、ケロイド(肥厚瘢痕)形成(瘢痕形成プロセスが正常な再生を妨害している皮膚の変質)、乾癬(皮膚の過剰な増殖および適切な細胞の運命の決定の遅延によって特徴づけられる)、良性腫瘍、繊維症症状、および組織肥厚(例えば、前立腺肥大) の治療に向けられる。
5.8.1.4 遺伝子治療
特定の実施形態では、Nogoタンパク質またはその機能的誘導体をコードする配列を含んでなる核酸が遺伝子治療によりNogo機能を促進するために投与される。遺伝子治療とは被験体に核酸を投与することによって行われる治療をさす。本発明の本実施形態では、核酸は、それがコードしているNogo機能の促進によって治療作用を媒介するタンパク質を産生する。
当技術分野で利用可能な遺伝子治療のための方法はいずれも本発明に従って使用できる。方法例が以下に記載されている。
遺伝子治療法の一般的な総説に関しては、Goldspielら, 1993, Clinical Pharmacy 12:488-505; WuおよびWu, 1991, Biotherapy 3:87-95; Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596; Mulligan, 1993, Science 260:929-932;ならびにMorganおよびAnderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; May, 1993, TIBTECH 11(5):155-215を参照。使用可能な組換えDNA技術の分野で一般に公知の方法はAusbelら(編), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY;およびKriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY.に記載されている。
好ましい態様では、治療薬は好適な宿主内でNogoタンパク質またはその断片もしくはキメラタンパク質を発現する発現ベクターの一部であるNogo核酸を含んでなる。特にかかる核酸はNogoコード領域に機能し得る形で連結されたプロモーターを有し、該プロモーターは誘導性または構造性であって、また組織特異的であってもよい。もう1つの特定の実施形態では、Nogoコード領域と他のいずれかの所望の配列が、そのゲノムの所望の位置において相同組換えを促進する領域付近に並んでいる核酸分子が使用され、このようにしてNogo核酸の染色体内発現がもたらされる(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935; Zijlstraら, 1989, Nature 342:435-438)。
患者への核酸の送達は直接的 (この場合、患者は核酸または核酸を含むベクターに直接曝される) であっても、あるいは間接的(この場合、まずin vitroで細胞を形質転換し、次に患者へ移植する)であってもよい。これらの2つの試みはそれぞれin vivoまたはex vivoにおける遺伝子治療として公知である。
特定の実施形態では、核酸はin vivoで直接投与され、そこで発現してコードしている産物を産生する。これは、例えば適当な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築し、それを投与して細胞内に存在させることによって達成される。例えば欠陥のあるもしくは弱毒したレトロウイルスまたはその他のウイルスベクターを用いる感染によって(米国特許第4,980,286号参照)、あるいは裸のDNAの直接注入によって、あるいはマイクロパーティクル衝撃(例えば、遺伝子ガン; Biolistic)、あるいは脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤での被覆、リポソーム、マイクロパーティクルもしくはマイクロカプセルへの封入の使用によって、または受容体によって媒介されるエンドサイトーシスを受けるリガンドに結合した状態でそれを投与することによるなどの当技術分野で公知の多くの方法のいずれによっても達成できる(例えば WUおよびWu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)(それは受容体を特異的に発現しているタイプの細胞を標的とするのに使用できる)。もう1つの実施形態では、リガンドがエンドソームを破壊する膜融合性ウイルスペプチドを含む核酸-リガンド複合体が形成されて、それにより核酸がリソソーム分解が避けられるようになる。さらにもう1つの実施形態では、核酸は、その特異的受容体を標的とすることによって、細胞特異的な取り込みおよび発現のための標的とすることができる(例えば、1992年4月16日付けのPCT公開WO92/06180(Wuら); 1992年12月23日付けのWO92/22635(Wilsonら); 1992年11月26日付けのWO92/20316(Findeisら); 1993年7月22日付けのWO93/14188(Clarkeら); 1993年10月付けのWO93/20221(Young)参照)。あるいは、この核酸は相同組換えにより発現のために細胞内に導入され、かつ宿主細胞DNAに組み込むことができる(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935; Zijlstraら, 1989, Nature 342:435-438)。
特定の実施形態では、Nogo核酸を含むウイルスベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターが使用できる(Millerら, 1993, Meth. Enzymol. 217:581-599参照)。これらのレトロウイルスベクターはウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組み込みには必要ではないレトロウイルス配列を欠くように改変されている。遺伝子治療に使用されるNogo核酸は、患者への遺伝子の送達を助けるベクターにクローニングする。レトロウイルスベクターについてのさらなる詳細は、幹細胞をさらに化学療法耐性とするための造血幹細胞へmdr1遺伝子を送達するレトロウイルスベクターの使用を記載しているBoesenら, 1994, Biotherapy 6:291-302に見出すことができる。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を示したその他の参照文献としては、Clowesら, 1994, J. Clin. Invest. 93:644-651; Kiemら, 1994, Blood 83:1467-1473; SalmonsおよびGunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4:129-141;ならびにGrossmanおよびWilson, 1993, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3:110-114がある。
アデノウイルスも遺伝子治療に使用できるその他のウイルスベクターである。アデノウイルスは特に中枢神経系に遺伝子を送達する魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは本来呼吸器上皮に感染し、そこで軽い疾病を引き起こす。アデノウイルスに基づく送達系のその他の標的としては肝臓、呼吸器上皮、内皮細胞および筋肉がある。アデノウイルスは非分裂細胞に感染し得るという利点を持つ。KozarskyおよびWilson, 1993, Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503はアデノウイルスに基づく遺伝子治療の総説を提供している。Boutら, 1994, Human Gene Therapy 5:3-10はアカゲザルの呼吸器上皮に遺伝子を導入するアデノウイルスベクターの使用を実証している。遺伝子治療におけるアデノウイルスの使用のその他の例としてはRosenfeldら, 1991, Science 252:431-434; Rosenfeldら, 1992, Cell 68:143-155;およびMastrangeliら, 1993, J. Clin. Invest. 91:225-234がある。
アデノウイルスの他、アデノ随伴ウイルス(AAV)も遺伝子治療で用いることが提案されている(Walshら, 1993, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300)。
遺伝子治療に対するもう1つのアプローチとしては、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムによって媒介されるトランスフェクションまたはウイルス感染などの方法によって組織培養物の細胞へ遺伝子を導入することがある。通常、導入方法は細胞に選択マーカーを導入することを含む。次にこれらの細胞を選択下に置いて、導入された遺伝子を取り込んで発現している細胞を単離する。次にこれらの細胞を患者に送達する。
この実施形態では、核酸は得られた組換え細胞をin vivoで投与する前に細胞に導入される。かかる導入は、限定されるものではないがトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体によって媒介される遺伝子導入、マイクロセルによって媒介される遺伝子導入、スフェロプラスト融合などをはじめとする当技術分野で公知のいずれの方法によっても行うことができる。細胞へ外来遺伝子を導入するためには当技術分野で多くの技術が知られており(例えば、LoefflerおよびBehr, 1993, Meth. Enzymol. 217:599-618; Cohenら, 1993, Meth. Enzymol. 217:618-644; Cline, 1985, Pharmac. Ther. 29:69-92参照)、受容細胞の必要な発達および生理学的機能が妨げられない限り本発明に従って使用してもよい。この技術は細胞への核酸の安定した導入をもたらし、その結果、核酸は細胞により発現可能となり、好ましくは受け継がれてその後代細胞によって発現可能となる。
得られる組換え細胞は当技術分野で公知の種々の方法によって患者に送達できる。好ましい実施形態では、上皮細胞は例えば皮下注射される。もう1つの実施形態では、組換え皮膚細胞を皮膚移植として患者に適用してもよい。組換え血液細胞(例えば造血幹細胞または始原細胞)は好ましくは静脈投与される。使用のために意図される細胞の量は望まれる作用、患者の状態などによって異なり、当業者ならば決定することができる。
遺伝子治療を目的として核酸が導入できる細胞は所望の入手可能な細胞種のいずれをも包含し、限定されるものではないが、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血球;種々の幹細胞または始原細胞、特に造血肝細胞または始原細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるものが挙げられる。
好ましい実施形態では、遺伝子治療に用いられる細胞は患者自己のものである。
遺伝子治療に組換え細胞が用いられる実施形態では、Nogo核酸は細胞またはそれらの後代によって発現可能なように細胞に導入され、この組換え細胞は次に治療作用のためにin vivoで投与される。特定の実施形態では、幹細胞または始原細胞が用いられる。単離可能であってin vitroで維持可能な幹細胞および/または始原細胞はいずれも本発明の本実施形態に従って使用可能であろう。かかる幹細胞としては限定されるものではないが神経幹細胞が挙げられる(StempleおよびAnderson, 1992, Cell 71:973-985)。
特定の実施形態では、遺伝子治療を目的として導入される核酸は、核酸の発現が転写の適当なインデューサーの存在または不在をコントロールすることによって制御可能なように、コード領域に機能し得る形で連結された誘導プロモーターを含んでいる。
Nogoタンパク質または機能的誘導体をコードする核酸を送達するためにさらなる方法を適用することもできる。
5.8.2 Nogoが再生を阻害する疾患の治療および予防
神経突起伸長、増殖または再生が望まれる疾病および疾患はNogo機能を阻害する治療薬の投与によって治療される。終局的に神経系の損傷をもたらす疾病、疾患または損傷としては、限定されるものではないが、中枢神経系(CNS)外傷(例えば、脊髄または脳損傷)、亀裂骨折、感染、悪性腫瘍、有毒物質への曝露、栄養欠乏、準腫瘍症候群、および変性神経疾患(限定されるものではないがアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症および進行性上核不全麻痺を含む)が挙げられ、Nogo活性を阻害する化合物(例えば、ドミナントネガティブNogo誘導体、Nogoに対する抗体、Nogoをコードするアンチセンス核酸、NogoリボザイムまたはNogoの活性部位と結合する化学群)を投与することにより治療される。
使用できる治療薬としては限定されるものではないが、Nogoアンチセンス核酸、および機能不全であり(例えば、Nogoコード配列内の異種(非Nogo配列)挿入による)、相同組換えによる内因性Nogo機能を「ノックアウト」するのに使用されるNogo核酸が挙げられる(例えば、Capecchi, 1989, Science 244:1288-1292参照)。抗Nogo抗体(ならびに結合領域を含むその断片および誘導体)はNogoのアンタゴニストとして使用できる。本発明の特定の実施形態では、Nogo配列が異なる遺伝子配列に並んでいる(5'および3'双方)Nogo遺伝子の一部を含む核酸をNogoアンタゴニストとして用いて相同組換えによるNogo不活性化を誘導する(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935; Zijlstraら, 1989, Nature 342:435-438も参照)。Nogo機能を阻害するその他の治療薬は、例えばNogoと別のタンパク質との結合を阻害する、またはいずれかの公知のNogo機能を阻害するそれらの能力に基づき、公知の通常のin vitroアッセイの使用によって確認でき、遺伝子アッセイも使用できるが、好ましくはin vitroで、または細胞培養物でアッセイするのがよい。。好ましくは好適なin vitroまたはin vivoアッセイを利用して、特異的治療薬の作用、およびその投与が冒された組織の治療に適用されるかどうかを決定する。
特定の実施形態では、Nogo機能を阻害する治療薬は、(1)Nogoタンパク質のレベルまたは機能の上昇(正常または望ましいレベルと比較)を伴う疾病または疾患、例えばNogoタンパク質が過剰活性または過剰発現している患者に;または(2)in vitro(もしくはin vivo)アッセイ(上記参照)がNogoアンタゴニスト投与の有用性を示す疾病または疾患に治療上(予防を含む)投与される。Nogoタンパク質のレベルまたは機能における上昇は、例えば患者の組織サンプルを得(例えば生検から)、RNAまたはタンパク質レベル、発現したNogo RNAまたはタンパク質の構造および/または活性に関してin vitroでアッセイすることによりタンパク質および/またはRNAを定量することによって容易に検出できる。このように、限定されるものではないが、キナーゼアッセイ、Nogoタンパク質を検出および/または視覚化する免疫アッセイ(例えば、ウエスタンブロット法、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫組織化学など)、および/またはNogo mRNAをそれぞれ検出および/または視覚化することによってNogo発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット法、in situハイブリダイゼーションなど)をはじめとする当技術分野で標準的な多くの方法が使用できる。
5.8.2.1 Nogo発現のアンチセンス調節
特定の実施形態では、Nogo機能はNogoアンチセンス核酸の使用によって阻害される。本発明はNogoもしくはその一部をコードする遺伝子またはcDNAに対してアンチセンスである少なくとも6個のヌクレオチドの核酸の治療または予防的使用を提供する。本明細書においてNogo「アンチセンス」核酸とは、いくつかの配列相補性によってNogo RNA(好ましくはmRNA)の一部とハイブリダイズし得る核酸をいう。このアンチセンス核酸はNogo mRNAのコード領域および/または非コード領域に相補的であり得る。かかるアンチセンス核酸はNogo機能を阻害する治療薬としての有用性を持ち、上記の疾患の治療または予防に使用できる。
本発明のアンチセンス核酸は、細胞に直接投与できるか、または外来の導入配列の転写によって細胞内で産生され得る二本鎖または一本鎖RNAまたはDNAまたはその修飾体もしくは誘導体であるオリゴヌクレオチドであってよい。
特定の実施形態では、本発明によって提供されるNogoアンチセンス核酸は、特に皮質脊髄路の再生、回復時の柔軟性、神経細胞の再増殖、ならびに外傷性損傷、卒中および神経変性疾患に伴う障害の治癒をはじめとする中枢神経系の神経細胞の再生を促進するために使用できる。
本発明はさらに上記のような医薬上許容される担体中に本発明のNogoアンチセンス核酸の有効量を含んでなる医薬組成物を提供する。
もう1つの実施形態では、本発明は、本発明のNogoアンチセンス核酸を含む有効量の医薬組成物を細胞に与え、原核細胞または真核細胞におけるNogo核酸配列の発現を阻害する方法に向けられる。
Nogoアンチセンス核酸およびそれらの使用は以下に詳細に記載される。
5.8.2.1.1 Nogoアンチセンス核酸
Nogoアンチセンス核酸は少なくとも6個のヌクレオチドからなり、好ましくはオリゴヌクレオチド(6〜約50個のオリゴヌクレオチドの範囲)である。特定の態様では、このオリゴヌクレオチドは少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも100個のヌクレオチド、または少なくとも200個のヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドはDNAであってもRNAであってよく、あるいはキメラ混合物、またはその誘導体もしくは修飾体であってもよく、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。このオリゴヌクレオチドは塩基部分、糖部分またはリン酸骨格で修飾されていてもよい。オリゴヌクレオチドとしてはペプチドなどのその他の付属の基、または細胞膜をわたる輸送(例えば、Letsingerら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553-6556; Lemaitreら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648-652; 1988年12月15日公開のPCT公開第WO88/09810号参照)、もしくは血液脳関門(例えば、1988年4月25日公開のPCT公開第WO89/10134号参照)をわたる輸送を助ける薬剤、ハイブリダイゼーションによって誘発される切断剤(例えば、Krolら, 1988, BioTechniques 6:958-976参照)、またはインターカレート剤(例えば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5:539-549参照)が挙げられる。
本発明の好ましい態様では、Nogoアンチセンスオリゴヌクレオチド、好ましくは一本鎖DNAのものが提供される。最も好ましい態様では、かかかるオリゴヌクレオチドはNogo遺伝子の2つのプロモーター配列のうちの一方付近の配列、またはNogo遺伝子のカルボキシ末端部分をコードする配列に対してアンチセンスである配列を含んでいる。Nogoイソ型の一方の発現を選択的に阻害することが望ましい。このオリゴヌクレオチドはそのいずれかの位置で当技術分野で一般に公知の置換によって修飾されていてもよい。
Nogoアンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5ークロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシルー5ーオキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンからなる群より選択される少なくとも1つの修飾された塩基部分を含んでいてもよい。
もう1つの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースからなる群より選択される少なくとも1つの修飾された塩基部分を含む。
なおもう1つの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはその類似体からなる群より選択される少なくとも1つの修飾されたリン酸骨格を含む。
なおもう1つの実施形態では、オリゴヌクレオチドはαーアノマーオリゴヌクレオチドである。α-アノマーオリゴヌクレオチドは相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、ここでは通常のβ-ユニットとは対照的に鎖は互いに並行である(Gautierら, 1987, Nucl. Acids Res. 15:6625-6641)。
このオリゴヌクレオチドは別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーションを誘発する架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーションを誘発する切断剤などと共役し得る。
本発明のオリゴヌクレオチドは例えば自動DNAシンセサイザー(Biosearch, Applied Biosystemsなどから市販されているものなど)を使用するなど、当技術分野で公知の標準法によって合成され得る。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはSteinら(1988, Nucl. Acids Res. 16:3209)の方法によって合成でき、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは調整多孔質グラスポリマー支持体の使用(Sarinら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451)などにより製造できる。
特定の実施形態では、Nogoアンチセンスオリゴヌクレオチドは触媒RNA、またはリボザイムを含む(例えば、1990年10月4日公開のPCT国際公開WO90/11364; Sarverら, 1990, Science 247:1222-1225参照)。もう1つの実施形態では、オリゴヌクレオチドは2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoueら, 1987, Nucl. Acids Res. 15:6131-6148)、またはキメラRNA-DNA類似体(Inoueら, 1897, FEBS Lett. 215:327-330)である。
別の実施形態では、本発明のNogoアンチセンス核酸は外来配列からの転写によって細胞内で産生される。例えば、ベクターが細胞に取り込まれ、その細胞内でベクターまたはその一部が転写されて本発明のアンチセンス核酸(RNA)を産生するようにベクターをin vivoで導入することができる。かかるベクターはNogoアンチセンス核酸をコードする配列を含む。かかるベクターは、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生する限りエピソームとして維持されてもよいし、あるいは染色体に組み込まれてもよい。かかるベクターは当技術分野で標準的な組換えDNA技術によって構築できる。ベクターはプラスミド、ウイルス、またはその他当技術分野で公知の、哺乳類細胞において複製および発現に用いられるものであり得る。
Nogoアンチセンス核酸をコードする配列の発現は哺乳類、好ましくはヒト細胞で働くことが知られているプロモーターのいずれかによるものであり得る。かかるプロモーターは誘導性のものでも構造性のものであってもよい。かかるプロモーターとしては限定されるものではないが、SV40初期プロモーター領域(BermoistおよびChambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの長い3'末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1983, Nature 296:39-42)などが挙げられる。
本発明のアンチセンス核酸はNogo遺伝子、好ましくはヒトNogo遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的な配列を含む。しかしながら、絶対的な相補性は好ましいが必ずしも必要ではない。本明細書において「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列とは、RNAとハイブリダイズして安定した二重らせんを形成できるに十分な相補性を有する配列を意味し、二本鎖Nogoアンチセンス核酸の場合には、二重らせんDNAの一本鎖をこのようにして試験してもよいし、または三重らせんの形成を分析してもよい。ハイブリダイズ力は相補性の程度とアンチセンス核酸の長さの双方に依存する。一般に、ハイブリダイズする核酸が長いほどNogo RNAとの塩基の誤対合が多くなり、それは安定した二重らせんを含み、しかも、安定した二重らせん(またはあり得るケースとして三重らせん)を形成し得る。当業者ならばハイブリダイズした複合体の融点を測定する標準的な手法を用いて誤対合の許容度を確認することができる。
5.8.2.1.2. Nogoアンチセンス核酸の治療上の使用
Nogoアンチセンス核酸は、Nogoを発現、または好ましくは過剰発現する細胞型の疾患を治療(または予防)するのに使用できる。特定の実施形態において、そのような疾患は細胞増殖性疾患である。特定の実施形態では、一本鎖DNAアンチセンスNogoオリゴヌクレオチドが用いられる。
Nogo RNAを発現または過剰発現する細胞型は当技術分野で公知の種々の方法によって同定することができる。かかる方法としては、限定されるものではないが、Nogo特異的核酸とのハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロットハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション)、in vitroにおけるその細胞型由来RNAのNogoへの翻訳能力の観測、免疫アッセイなどが挙げられる。好ましい態様では、治療に先立ち患者由来の一次組織を、例えば免疫組織化学またはin situハイブリダイゼーションによってNogo発現に関してアッセイすることができる。
医薬上許容される担体中に有効量のNogoアンチセンス核酸を含んでなる本発明の医薬組成物は、Nogo RNAまたはタンパク質を発現または過剰発現するタイプのものである疾病または疾患を有する患者へ投与することができる。
特定の疾患または症状の治療に有効なNogoアンチセンス核酸量は疾患または症状の性質によって異なり、標準的な臨床技術によって決定すことができる。可能であれば、治療される腫瘍型のアンチセンス細胞傷害性をin vitroで、次いでヒトにおける試験および使用に先立って有用なモデル動物系で測定するのが望ましい。
特定の実施形態では、Nogoアンチセンス核酸を含んでなる医薬組成物はリポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルによって投与される。本発明の種々の実施形態では、かかる組成物を用いてNogoアンチセンス核酸の徐放性を得ることが有用であり得る。特定の実施形態では、抗体によって特異的に認識できる腫瘍抗原にターゲッティングされたリポソームを利用することが望ましい(Leonettiら, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2448-2451; Renneisenら, 1990, J. Biol. Chem. 265:16337-16342)。
5.9 治療上または予防上の有用性の説明
本発明の治療薬はヒトに用いる前に所望の治療または予防活性に関してin vitroで、次ぎにin vivoで試験するのが好ましい。例えば、特定の治療薬の投与が指示されるかどうかを決めるのに使用できるin vitroアッセイとしては、患者の組織サンプルを培養系で増殖させて治療薬にさらすか、あるいは治療薬を投与し、かかる治療薬の組織サンプルに対する作用を観測するin vitro細胞培養アッセイが挙げられる。例えばNogo機能の阻害剤である治療薬は神経突起の再生または患者における運動制御の機能回復を測定することによってアッセイできる。
種々の特定の実施形態では、in vitroアッセイは患者の疾患に関わる細胞型の代表的細胞を用いて行い、治療薬がかかる細胞種に所望の作用を有するかどうかを調べることができる。
治療に用いられる化合物はヒトでの試験に先立ち、限定されるものではないがラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどをはじめとする好適なモデル動物系で試験することができる。ヒトへの投与に先立つin vivo試験については、当技術分野で公知のモデル動物系を使用すればよい。
5.10 治療/予防投与および組成物
本発明は被験者への有効量の本発明の治療薬の投与による治療(および予防)の方法を提供する。好ましい態様では、治療薬が実質的に精製される。被験者は動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ等を含むが、これらに限定されない、動物であることが好ましく、哺乳類であることが好ましく、ヒトであることが最も好ましい。特定の実施形態では、非ヒト哺乳類が被験者である。
治療薬が核酸を含む場合に使用し得る製剤化及び投与の方法は先に記載されている;付加的な適当な製剤化及び投与の経路は以下に記載されるものから選択し得る。
種々の送達系が知られており、本発明の治療薬を投与するのに使用し得る。例えば、リポソーム中のカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、治療薬を発現することができる組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432)、レトロウイルス又はその他のベクターの一部としての治療用核酸の構築等である。導入の方法として、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻内経路、硬膜外経路、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物はあらゆる便利な経路により、例えば注入もしくはボーラス注射、上皮内層もしくは粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜等)からの吸収により投与されてもよく、その他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与されてもよい。投与は全身的又は局所的であってもよい。加えて、本発明の医薬組成物を脳室内注射および鞘内注射を含む、あらゆる好適な経路により中枢神経系に導入することが望ましいかもしれない。脳室内注射は、例えば、オマヤレザバー(Ommaya reservoir)の如き溜めに取り付けられた脳室内カテーテルにより促進し得る。また、肺投与は、例えば、吸入器又はネブライザー、およびエーロゾル化剤による製剤化の使用により採用し得る。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を治療を要する領域に局所投与することが望ましいかもしれない。これは、例えば、手術中の局所注入、例えば、手術後の傷包帯と連携しての局所適用、注射、カテーテルによって、又は移植片によって達成されうるが、これらに限定されない。前記移植片はシアラスチック(sialastic)膜の如き膜、又は繊維を含む、多孔性、非多孔性、又はゼラチン質の材料のものである。1つの実施形態では、投与は悪性腫瘍又は腫瘍性組織もしくは腫瘍発生前組織の部位(又は形成部位)における直接の注射によるものであってもよい。
別の実施形態では、治療薬は小胞、特にリポソーム中にて送達し得る(Langer, Science 249:1527-1533 (1990); Treatら, Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-BeresteinおよびFidler(編), Liss, New York, pp.353-365 (1989); Lopez-Berestein,上記文献, pp.317-327を参照のこと;一般に上記文献を参照のこと)。
更に別の実施形態では、治療薬は除放系にて送達し得る。1つの実施形態では、ポンプを使用し得る(Langer,上記文献;Sefton, CRC Crit. Ref. Biorned. Eng. 14:201 (1987); Buchwaldら, Surgery 88:507 (1980); Saudekら, N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照のこと)。別の実施形態では、ポリマー材料が使用し得る(Medical Applications of Controlled Release, LangerおよびWise(編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen及びBall(編), Wiley, New York (1984); RangerおよびPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983)を参照のこと;またLevyら, Science 228:190 (1985); Duringら, Ann. Neurol. 25:351 (1989); Howardら, J. Neurosurg. 71:105 (1989)を参照のこと)。更に別の実施形態では、除放系は治療標的、すなわち、脳に接近して置いてもよく、従って全身投薬量の一部しか必要でない(例えば、Goodson, Medical Applications of Controlled Release,上記文献, Vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照のこと)。
その他の除放系がLanger(Science 249:1527-1533 (1990))により総説中に説明されている。
治療薬がタンパク質治療薬をコードする核酸である特定の実施形態では、該核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、それが細胞内に入るようにそれを投与することにより(例えば、レトロウイルスベクターの使用により(米国特許第4,980,286号を参照のこと)、もしくは直接注射により、又は微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont)の使用により、または脂質もしくは細胞表面受容体又で被覆して、トランスフェクト剤により、又は核に侵入することが知られているホメオボックス様ペプチドに該構築物を結合して投与すること(例えば、Joliotら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868)等により)、該核酸をin vivo投与し、それがコードするタンパク質の発現を促進し得る。また、核酸治療薬は細胞内に導入され、相同組換えにより、発現のための宿主細胞DNA内にとり込まれうる。
また、本発明は医薬組成物を提供する。このような組成物は治療上有効量の治療薬、および医薬上許容されるキャリヤーを含んでなる。特定の実施形態では、「医薬上許容される」という用語は連邦政府もしくは州政府の規制当局により認可され、又は動物、更に特別にはヒトにおける使用についての米国薬局方もしくはその他の一般に認められている薬局方に挙げられていることを意味する。「キャリヤー」という用語は希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクル(これらとともに、治療薬が投与される)を表す。このような医薬キャリヤーは無菌液体、例えば、水および石油、動物、植物又は合成源の油を含む、油(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等)であってもよい。医薬組成物が静脈内投与される場合、水が好ましいキャリヤーである。生理食塩水ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール溶液はまた、液体キャリヤーとして、特に注射液用に使用し得る。好適な医薬賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。組成物はまた、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含みうる。これらの組成物は、溶液剤、懸濁液剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、除放製剤等の形態をとり得る。経口製剤は標準的キャリヤー例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム等を含んでもよい。好適な医薬キャリヤーがE. W. Martin著“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。このような組成物は、患者への適当な投与のための形態を与えるのに適した量のキャリヤーと一緒に、好ましくは精製形態の治療上有効量の治療薬を含む。製剤化は投与の様式に適すべきである。
好ましい実施形態では、組成物はヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物として通常の工程に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は無菌の等張水性バッファー中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤および注射部位における痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。一般に、成分は別々に供給されるか、又は、例えば、凍結乾燥粉末もしくは活性薬剤の量を示すアンプルもしくはサッシェの如き密封された容器中の水を含まない濃縮液として、単位用量形態でに一緒に混合される。組成物が注入により投与される場合、それは無菌医薬等級の水又は食塩水を含む注入びんで調剤し得る。組成物が注射により投与される場合、注射用の無菌水又は食塩水のアンプルを用意し、成分を投与の前に混合し得る。
本発明の治療薬は中性形態又は塩形態として製剤化し得る。医薬上許容される塩として、遊離アミノ基と形成される塩、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から誘導された塩、および遊離カルボキシル基と形成される塩、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導された塩が挙げられる。
特定の障害又は症状の治療に有効である本発明の治療薬の量は、障害又は症状の性質に依存し、通常の臨床技術により決定できる。加えて、場合により最適用量範囲の同定を助けるのに、in vitroアッセイを使用してもよい。製剤化に使用される正確な用量はまた、投与の経路、および疾患又は障害の重度に依存し、医師の判断およびそれぞれの患者の状況に応じて決められるべきである。しかしながら、静脈内投与に適した用量範囲は一般に体重1kg当り約20-500μgの活性化合物である。鼻内投与に適した用量範囲は一般に体重1kg当り約0.01pg〜1mgである。有効用量はin vitro試験系又は動物モデル試験系から誘導された用量−応答曲線から外挿し得る。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1種以上の成分を入れた1つ以上の容器を含んでなる医薬パック又はキットを提供する。医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府当局により規定された形態の注意がこのような1つ以上の容器と必要により関連していてもよく、その注意はヒト投与についての製造、使用又は販売の当局による認可を反映する。
5.11 診断およびスクリーニング
Nogoタンパク質、それらの類似体、誘導体、および部分配列、Nogo核酸(およびそれらに相補的な配列)、抗Nogo抗体は診断に用途を有する。このような分子はNogo発現に影響する種々の症状、疾患、および障害を検出し、予知し、診断し、もしくは監視し、又はその治療を監視するためにイムノアッセイなどのアッセイに使用し得る。特に、このようなイムノアッセイは患者に由来するサンプルを免疫特異的結合が生じうるような条件下で抗Nogo抗体と接触させ、該抗体による免疫特異的結合の量を検出又は測定することを含んでなる方法により行なわれる。特定の態様では、組織切片中の、抗体のこのような結合は異常なNogo局在化又はNogoの異常な(例えば、低い、又は不在の)レベルを検出するのに使用し得る。特定の実施形態では、Nogoの抗体はNogoの異常なレベルが症状の指示である場合に、Nogoの存在について患者の組織又は血清サンプル中でアッセイするのに使用し得る。「異常なレベル」、はその障害を有しない生体の一部又は被験者からの類似のサンプル中に、存在するレベル、又は存在するレベルに相当する通常のレベルと比較して増大した、又は減少したレベルを意味する。
使用し得るイムノアッセイとして、例をいくつか挙げると、免疫組織化学、病理学、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、免疫組織化学アッセイ、プロテインAイムノアッセイの如き技術を使用する競合アッセイ系および非競合アッセイ系が挙げられるが、これらに限定されない。
Nogo遺伝子ならびに相補配列を含む、関連核酸配列および部分配列はまたハイブリダイゼーションアッセイに使用し得る。Nogo核酸配列、又は少なくとも約8ヌクレオチドを含むそれらの部分配列はハイブリダイゼーションプローブとして使用し得る。ハイブリダイゼーションアッセイは前掲のNogoの発現および/又は活性の異常な変化と関連する症状、障害、又は疾患を検出し、予知し、診断し、又は監視するのに使用し得る。特に、このようなハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含むサンプルをハイブリダイゼーションが生じるような条件下でNogo DNA又はRNAにハイブリダイズすることができる核酸プローブと接触させ、得られるいずれのハイブリダイゼーションをも検出又は測定することを含んでなる方法により行なわれる。
特定の実施形態では、細胞の成長障害および発育障害にかかわる疾患および障害が診断でき、又はそれらの推定の存在がスクリーニングでき、又はこのような障害を発生する素因は、Nogoタンパク質、Nogo RNAまたはNogo機能活性の減少されたレベルを実証された成長抑制として検出することにより、又はNogoの減少した発現もしくは活性を生じるNogo RNA、DNAもしくはタンパク質における突然変異(例えば、Nogo核酸中の転座、Nogo遺伝子もしくはタンパク質中のトランケーション、野生型Nogoに対するヌクレオチドもしくはアミノ酸配列の変化)を検出することにより検出し得る。このような疾患および障害として、第3節および第5.8.1.1節に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。例として、Nogoタンパク質のレベルがイムノアッセイにより検出でき、Nogo RNAのレベルがハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンブロット、ドットブロット)により検出でき、細胞成長インヒビタータンパク質受容体へのNogo結合が当業界で一般に知られている結合アッセイにより行なわれ、Nogo核酸中の転座および点突然変異がサザンブロッティング、RFLP分析、好ましくは少なくともNogo遺伝子の殆どにわたる断片を生じるプライマーを使用するPCR、患者から得られたNogoゲノムDNAもしくはcDNAの配列決定等により検出し得る。
1つ以上の容器中に抗Nogo抗体、および、場合により、抗体に対する標識された結合パートナーを含んでなる診断用キットがまた提供される。また、抗Nogo抗体が標識し得る(検出可能なマーカー、例えば、ケミルミネセント部分、酵素部分、蛍光部分、又は放射能部分を用いて)。また、1つ以上の容器中にNogo RNAにハイブリダイズすることができる核酸プローブを含んでなるキットが提供される。特定の実施形態では、キットが1つ以上の容器中に、適当な反応条件下でNogo核酸の少なくとも一部の増幅〔例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、Innisら, 1990, PCR Protocols, Academic Press, Inc., San Diego, CAを参照のこと)、リガーゼ連鎖反応(EP 320,308を参照のこと)、Qβレプリカーゼの使用、環状プローブ反応、又は当業界で知られているその他の方法による〕を開始することができる一対のプライマー(例えば、それぞれ6-30ヌクレオチドのサイズ範囲)を含み得る。キットは場合により容器中に、例えば標準物質又は対照として使用するための所定量の精製Nogoタンパク質又は核酸を更に含んでもよい。
5.12 Nogoアゴニストおよびアンタゴニストについてのスクリーニング
Nogo核酸、タンパク質、および誘導体はまたNogo核酸、タンパク質、又は誘導体に特異的に結合する分子を検出するためのスクリーニングアッセイに用途を有し、従ってNogoのアゴニスト又はアンタゴニスト、特に、そうして細胞成長調節に影響する分子としての潜在的な用途を有する。好ましい実施形態では、このようなアッセイは薬物開発のために神経成長促進剤としての潜在的な用途を有する分子についてスクリーニングするために行なわれる。こうして、本発明はNogo核酸、タンパク質、又は誘導体に特異的に結合する分子を検出するためのアッセイを提供する。例えば、Nogo核酸を発現する組換え細胞を使用し、これらのアッセイにおいてNogoタンパク質を組換え産生し、Nogoタンパク質に結合する分子をスクリーニングし得る。分子(例えば、Nogoの推定の結合パートナー)を、結合を誘導する条件下でNogoタンパク質(又はその断片)と接触させ、次にNogoタンパク質に特異的に結合する分子が同定される。同様の方法がNogo誘導体又は核酸に結合する分子をスクリーニングするのに使用し得る。以上を行なうのに使用し得る方法が当業界で一般的に知られている。
例として、多様性ライブラリー、例えばランダム又はコンビナトリアルペプチド又は非ペプチドライブラリーをNogoに特異的に結合する分子についてスクリーニングし得る。使用し得る多くのライブラリー、例えば、化学合成されたライブラリー、組換え体(例えば、ファージディスプレイライブラリー)、およびin vitro翻訳に基づくライブラリーが当業界で知られている。
化学合成されたライブラリーの例がFodorら, 1991, Science 251:767-773; Houghtenら, 1991, Nature 354:84-86; Lamら, 1991, Nature 354:82-84; Medynski, 1994, Bio/Technology 12:709-710; Gallopら, 1994, J. Medicinal Chemistry 37(9):1233-1251; Ohlmeyerら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926; Erbら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422-11426; Houghtenら, 1992, Biotechniques 13:412; Jayawickremeら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1614-1618; Salmonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11708-11712; PCT公開WO 93/20242;ならびにBrennerおよびLerner, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381-5383に記載されている。
ファージディスプレイライブラリーの例がScottおよびSmith, 1990, Science 249:386-390; Devlinら, 1990, Science, 249:404-406; Christian, R.B.ら, 1992, J. Mol. Biol. 227:711-718; Lenstra, 1992, J. Immunol. Meth. 152:149-157; Kayら, 1993, Gene 128:59-65;および1994年8月18日付けのPCT公開WO94/18318に記載されている。
in vitro翻訳に基づくライブラリーとして、1991年4月18日付けのPCT公開WO 91/05058;およびMattheakisら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022-9026に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
非ペプチドライブラリーの例として、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えば、Buninら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708-4712を参照のこと)が使用に適用し得る。ペプトイドライブラリー(Simonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367-9371)がまた使用し得る。ペプチド中のアミド官能基が過メチル化されて化学変換されたコンビナトリアルライブラリーを生成する、使用可能なライブラリーの別の例がOstreshら(1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11138-11142)により記載されている。
ライブラリーのスクリーニングは種々の普通に知られている方法のいずれかにより行ない得る。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する、下記の文献:ParmleyおよびSmith, 1989, Adv. Exp. Med. Biol. 251:215-218; ScottおよびSmith, 1990, Science 249:386-390; Fowlkesら, 1992, Bio Techniques 13:422-427; Oldenburgら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5393-5397; Yuら, 1994, Cell 76:933-945; Staudtら, 1988, Science 241:577-580; Bockら, 1992, Nature 355:564-566; Tuerkら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6988-6992; Ellingtonら, 1992, Nature 355:850-852;米国特許第5,096,815号、同第5,223,409号、および同第5,198,346号(全てLadnerらの特許);PebarおよびPabo, 1993, Science 263:671-673;ならびにPCT公開WO 94/18318を参照のこと。
特定の実施形態では、スクリーニングがライブラリーメンバーを固相に固定されたNogoタンパク質(又は核酸もしくは誘導体)と接触させ、タンパク質(又は核酸もしくは誘導体)に結合したこれらのライブラリーメンバーを回収することにより行ない得る。「パニング」技術と称される、このようなスクリーニング方法の例が、例えばParmleyおよびSmith, 1988, Gene 73:305-318; Fowlkesら, 1992, Bio Techniques 13:422-427; PCT公開WO 94/18318;ならびに先に引用された文献に記載されている。
別の実施形態では、酵母中の相互作用タンパク質を選択するための2ハイブリッド系(FieldsおよびSong, 1989, Nature 340:245-246; Chienら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578-9582)がNogoタンパク質又は誘導体に特異的に結合する分子を同定するのに使用し得る。
5.13 動物モデル
本発明はまた、マウス、ハムスター、ヒツジ、ブタ、ウシ、および好ましくは非ヒト哺乳動物のモデルを含むが、これらに限定されない動物モデルを提供する。
1つの実施形態では、神経突起の伸長、成長および再生を伴う疾患および障害に関する動物モデルが提供される。このような動物は、その染色体中のNogo遺伝子と生物学的に不活性にされた外因性Nogo遺伝子との間の相同組換えを促進することにより(好ましくは異種配列、例えば、抗生物質耐性遺伝子の挿入により)最初に生産し得る。好ましい態様では、この相同組換えが胚性幹(ES)細胞を挿入により不活性化されたNogo遺伝子を含むベクターを用いて形質転換し、その結果相同組換えを生じさせ、続いてES細胞を芽細胞に注射し、そして芽細胞を養母に移植し、続いてNogo遺伝子が不活性化されたキメラ動物(「ノックアウト動物」)をさせる(Capecchi, 1989, Science 244:1288-1292を参照のこと)。キメラ動物は、さらなるノックアウト動物を生産するために繁殖させ得る。このような動物は、マウス、ハムスター、ヒツジ、ブタ、ウシ等であってよく、非ヒト哺乳動物であることが好ましい。特定の実施形態では、ノックアウトマウスが生産される。
このようなノックアウト動物は、中枢神経系を伴う疾患又は障害を発症するか、又は発症する素因を有すると予想され、そのため、例えば、神経組織の腫瘍を抑制し、それゆえ、このような疾患又は障害を治療又は予防する能力についてスクリーニングするか、又はその能力について試験分子(例えば、潜在的な神経系障害の治療薬)をスクリーニングするための、このような疾患および障害の動物モデルとしての用途を有し得る。
本発明は寄託された微生物又は本明細書に記載された特定の実施形態により範囲を限定されるべきではない。実際に、当業者には、本明細書に記載されたものに加えて本発明の種々の変更が本明細書の記載および添付図面から明らかであろう。このような変更は、特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図されている。
種々の参照文献が本明細書に引用されているが、これらの開示はその全文が参照により本明細書に組み入れられる。
6. 実施例:Nogo遺伝子のヌクレオチドおよびタンパク質産物の特性決定
本明細書に記載された実施例は、クローン化された遺伝子Nogoが強力な神経細胞増殖インヒビターでありかつまたSchwabらの米国特許第5,684,133号に記載されたモノクローナル抗体により認識されるタンパク質をコードすることを示している。
6.1 材料および方法
以下の分節は本発明で用いられる材料および方法について記載する。当業者は、これらの材料および方法がここに特許請求されている本発明をただ例示するのみであって、本発明者らによる改変が想定されることを認識しよう。かかる改変は添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
6.1.1 ミエリンからのウシNogoの精製
すべての精製工程は4℃で実施し、得られた画分の抑制性基質活性はNIH 3T3伸展およびPC12神経突起成長アッセイ(6.1.10節)によりルーチンに測定した。ウシ脊髄組織は髄膜を除去することにより注意深く清浄化し、小片に切断した。次にミエリンを抽出バッファー(60 mM CHAPS, 100 mM トリス-HCl, pH 8.0, 10 mM EDTAバッファー, pH 8.0, 2.5 mMヨードアセトアミド, 1 mMフッ化フェニルメチルスルホニル, 0.1 μg/mlアプロチニン,1 μg/mlロイペプチン, 1 μg/mlペプトスタチンA )中に抽出した。
脊髄抽出物を得るには、組織を直接CHAPS抽出バッファー中1:1, w:vの比率でホモジナイズした。このホモジネートを100,000×g(Kontron 型、K50.13, 固定角)で2回、4℃で1時間遠心した。透明な上清(抽出物)を直ちにバッファーA (20 mMトリス-HCl, pH 8.0, 0.5%(w/v)CHAPS)で平衡化したQ セファロースカラム(2.6 ×11.5 cm)にアプライした。結合したタンパク質をバッファーA 中の0〜1M NaClの直線勾配(50分間で勾配100 ml)の5倍ベッドボリュームを用いて溶出した。0.4 M NaCl付近で溶離したウシNI220を含有する活性画分をプールし(q-プール1)、次にバッファーB (150 mM NaCl, 20 mM トリス-Cl, pH 8.0, 0.5%(w/v)CHAPS )で平衡化したスーパーデックス200(2.6×60 cm)カラムにアプライした。
ゲル濾過(s-プール1)後の活性画分は、還元条件下および一定の低電力(2ワット/ ゲル)で合計2500ボルト時で6% SDS-PAGEにより分離した。クーマシーブルー染色(50% メタノールおよび10% 酢酸中の0.1% w/v R250)後にバンドおよびゲル領域を同定し、切り出し、ゲル溶出バッファー(0.5%(w/v)CHAPS, 20 mM トリス-Cl, pH 8.0, 10 mM EDTA, pH 8.0, 2.5 mM ヨードアセトアミド, 1 mMフッ化フェニルメチルスルホニル, 0.1 μg/mlアプロチニン,1 μg/mlロイペプチン, 1 μg/mlペプトスタチンA)800 μl中に少なくとも48時間4℃で抽出した。
6.1.2 精製Nogoの微量配列決定
いくつかのゲルの、IN-1中和可能な活性ゲル-溶出物質を還元条件下に10% SDS-ポリアクリルアミドゲル上で再泳動し、そして50% メタノールおよび10% 酢酸中の0.1% (w/v)クーマシーブルー R250で染色した。220 KDaバンドを切り出し、直接にゲル中でエンドプロテイナーゼLys-C 消化(モル比1:50)を行った。サンプルを酸性化して逆相高速液体クロマトグラフィーカラムにかけ、ペプチドを0.04% トリフルオロ酢酸および80%アセトニトリルの直線勾配(0-100%)を用いて分離し、単一のペプチド種を含有する画分を自動エドマン分解にかけた。
6.1.3 精製Nogoの電気泳動
6%(w/v) SDS-ポリアクリルアミドゲル(10×24×0.01cm)を用い還元条件下(100 mMジチオトレイトール)に高分解能SDS-PAGEを行った。セミドライトランスファー装置(Bio-Rad, Trans Blot SD)を用い、20 mM トリス塩基, 192 mMグリシン, pH 8.3, 0.037%(w/v)SDS, 20% メタノール中で、Immobilon-P メンブラン(Millipore)への移行を行った。移行時間は0.8 mA/cm2で2時間であった。ブロッキング剤(室温で1時間)はPBS(リン酸緩衝食塩水、pH 7.2, 8g NaCl, 0.2g KH2PO4, 2.8g Na2HPO4 12H2O,および0.2g KClを水1リットル中に溶解)中の3%ゼラチンであり、洗浄溶液は20 mM トリス-HCl, pH 7.5, 150 mM NaCl,および0.4% Tweenを含有した(室温で3×10分間)。(PBS中の1%ゼラチンで希釈するための)第1の抗体に対するインキュベーション時間は通常4℃で一夜であった。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG 2次抗体(1:2000)は室温で1時間インキュベートした。検出にはECL 化学ルミネセンスシステム(Amersham Pharmacia Biotech) を用いた。
6.1.4 cDNAライブラリープロービング
ウシ脊髄から白質を新たに切開し、そしてFastTrackキット(Invitrogen)を用いてポリ(A)+ RNAを抽出した。cDNAライブラリーの構築は製造者の指示に従いUni-ZAPキット(Stratagene)を使用して行なった。ライブラリーの複雑度は全体で4×106 プラーク形成単位より大きく、インサートの平均サイズは約1.8 キロベースであった。
bNI220ペプチド1配列から縮重オリゴヌクレオチドMSC5-8(MSC5:
TCIGTIGGYAAIACIGCIGGYAARTC(配列番号47); MSC6:
TCIGTIGGIAGIACIGCIGGYAAYTC(配列番号48); MSC7:
TCIGTIGGYAAIACIGCIGGIAGRTC(配列番号49); MSC8:
TCIGTIGGIAGIACIGCIGGIAGRTC(配列番号50))を設計し、MSC9 (GARATHGCIGAIATHCARGAYGGIGA(配列番号51)をbNI220ペプチド2配列から設計した。オリゴヌクレオチドはMWG Biotech (Munchenstein, Switzerland)により合成し、DIG DNA 3'末端標識キットを用いて標識した。リボプローブはDIG RNA 標識キット(Boehringer Mannheim)を用いて合成した。
プローブハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は製造者(MSC5-8およびMSC9は57℃のハイブリダイゼーションおよび洗浄温度で使用した)により記載されたとおりであった。プローブ検出はCDP-スターシステム(Boehringer Mannheim)を用いて行なった。cDNA ライブラリーの取扱いおよびスクリーニングはラムダZAP cDNAライブラリー(Stratagene)のプロトコルに従って行なった。Genescreen(DuPont)ナイロンメンブランをプラークリフトに使用した。
6.1.5 DNA配列決定
CWP1-3, Oli18, Oli3,およびR1-3U21の両鎖をMicrosynth (Balgach, Switzerland) によるPerkin Elmer AB1377システムを用いて配列決定した。DNA 配列はDNASISプログラム(Hitachi)により分析した。データベース検索はBLASTプログラム(NCBI)を用いて実施した。
6.1.6 RNA分析
総RNAおよびポリ(A)+ RNAはRNAgent (Promega) またはFastTrackキット(Invitrogen)をそれぞれ用いて組織から抽出した。RNAは1%ホルムアルデヒドゲル上の電気泳動により分離し、Genescreenメンブランに移した。ブロットを、適切なプラスミドからDIG RNA標識キット(Boehringer Mannheim)を用いて生成させたアンチセンスリボプローブとハイブリダイズさせた。ブロットハイブリダイゼーション、洗浄、およびCDP スター検出条件は製造者により記載されたとおりであった。「共通」のプローブEST111410 (TIGR, ATCC, Rockville, MD, USA)はヌクレオチド2535-4678の間の転写物A 配列を含有し、エキソン1特異的プローブはヌクレオチド65-769の間の転写物A 配列を含有し、そしてエキソン2特異的なプローブはヌクレオチド815-3183の間の転写物A 配列を含有する。
6.1.7 抗血清の生産
抗血清472 (AS 472)は合成ペプチドP472, SYDSIKLEPENPPPYEEA(ウシ配列、配列番号33)に対してResearch Genetics, Inc. (Huntsville AL, USA)により生成され、このペプチドは配列番号2のラットNogoアミノ酸配列623-640に相当し、ミスマッチ3個が存在する。
抗血清Bruna (AS Bruna)は、融合タンパク質として大腸菌中に発現された組換えNogoタンパク質のフラグメントに対して生成された。詳細には、配列番号2のアミノ酸762-1163をコードするラットNogo Aヌクレオチド配列(Novagen pET系を用いて大腸菌中に発現された)のカルボキシ末端を用いてAS Bruna抗Nogo抗血清を生成させた。
6.1.8 電気泳動およびウエスタンブロッティング
SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングは当業者に良く知られた標準的方法を用いて実施した。抗体を以下のように希釈した。すなわち、AS Bruna 1:7,500; AS 472 1:2,000; 抗myc (9E10) 1:5,000 (Invitrogen); 抗BiP 2μg/ml (Stressgen); mAb IN-1ハイブリドーマ上清は未希釈のまま使用した。2次抗体は、HRP結合抗ウサギ(Pierce; 1:20,000); 抗マウスIgM (1:50,000); およびアルカリホスファターゼ結合抗マウス(Milan Analytica AG, La Roche, Switzerland; 1:5,000)であった。
6.1.9 免疫組織化学
成体ラットの脊髄または小脳を素早く切開し、OTC 化合物中に包埋し、-40 ℃で凍結させた。20個の死後切片を切り出し、40℃でエタノール/酢酸中で固定した。急冷工程を除外する以外はRubinら、1994、J. Neurocytol. 23:209-217 に記載されたようにして免疫染色を行った。あるいは、組織切片をメタノールで固定し(-20 ℃で2分間)、そして免疫染色を上記Rubin らに記載されるようにして実施した。使用した1次抗体(抗体:(希釈度))は、IN-1のハイブリドーマ上清:(未希釈); AS Bruna:(1:5,000);またはアフィニティ精製AS 472: (1:50)であった。
6.1.10 NIH 3T3繊維芽細胞伸展アッセイ
5 μg/ウエル(=1cm2)のq-プールで予め被覆した培養皿にNIH 3T3繊維芽細胞をプレートした。q-プールとはQ セファロースカラム上に分離されたウシ脊髄抽出物のプールされた活性画分である。IN-1は未希釈の培養上清として使用し(1-10μg/ml)、AS Brunaおよび免疫前血清はPBS中1:1000に希釈し、そしてAS 472および免疫前血清はPBS中1:500に希釈した。異なるq-プール調製物における活性変動を補うために、q-プール上にプレートした、阻害された丸細胞の数を100%にノーマライズし、そしてバッファー対照上にプレートしたそれを0%とした(Spillmanら、1998, J. Biol. Chem. 273:19283-93)。
6.1.11 DRG神経突起成長アッセイ
ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中のE16 胚性ニワトリから後根神経節(DRG)を切開し、2部分に分け、10% (FCS)および1%メタノールを含有するF12培地100 μl中のq-プールで予め被覆した皿にプレートした。個々のDRGからの神経突起成長を37℃で24時間インキュベート後に0(成長なし)から4(最大成長)までの尺度で半定量的方法で評価した。
6.1.12 DRG/視神経同時培養アッセイ
視神経を成体ラットから切り出し、5500グレイを照射し、AS 472または相当する免疫前血清(1:10 希釈)のいずれかを注射した。神経の対は、各神経の一端がシリコングリース/テフロンリングバリアを介して中央チャンバー(ここにはPOラットからの解離した培養一次DRGニューロンが配置してある)中に到達するように3チャンバー培養で培養した。培養2週間後、神経を当分野で知られた標準的技術により固定し、電子顕微鏡(EM)用に包埋し、そしてDRG露出基部から約3.5 mmの距離で超薄切片を取った。切片をZeiss EM 902を用いて再成長中の軸索の存在に関して系統的に分析した。
6.1.13 COS細胞におけるNogo A発現
Nogo Aオープンリーディングフレームを当分野で知られた標準的なクローニング技術を使用してpcDNA3.1mychisベクター(Invitrogen)中にサブクローニングした。生成したプラスミド(Nogo-myc19)は、myc-his タグ(21アミノ酸)に融合したNogo A配列を含有する組換えタンパク質をもたらした。Nogo-myc19 (35mmの皿当たりDNA 2μg)または対照プラスミド(pcDNAmychisLacZ)を、製造者のプロトコルに従いスーパーフェクト(superfect)(Qiagen)を用いてCOS 細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をトランスフェクション36〜48時間後に収穫した。抗myc抗体および酵素によるβガラクトシダーゼ発色反応を用いる免疫蛍光染色に基づき、平均トランスフェクション率は約20%であると推定された。トランスフェクトされたCOS 細胞を95% エタノール/5% 酢酸を用いて固定し(4℃、25分間)、PBS/10% FCS中でブロックし、そしてAS Bruna (1:200)またはIN-1 (1:2)と室温でPBS/1% FCS中2時間インキュベートした。細胞をPBSで洗い、蛍光2次抗体(AS Brunaに関してはヤギ抗ウサギFITC、IN-1検出に関してはヤギ抗マウスTRITC, Jackson Immuno Research Lab. Inc., West Grove, PA)と反応させた。
6.1.14 稀突起神経膠細胞培養
ラット新生児の脳から単離された稀突起神経膠細胞を75cm2ポリリジンフラスコ(Sigma, St.Louis, MO) にプレートし、5% FCSを補添したDMEM中10-12 日間培養した。富化され、混合された集団の稀突起神経膠細胞およびそれらの前駆細胞を軌道シェーカー中210 rpm で1中夜振盪することにより星状細胞単層から放出した。細胞をポリリジン被覆35cm2皿上に1-2 × 10細胞の密度でプレートした。前駆細胞を化学的に規定された培地(CDM) 中3-4 日間分化せしめた。
6.1.15 細胞表面ビオチン化
P4ラット全脳培養物をvan der Haarら、(1998, J. Neurosci. Res. 51:371-81) に記載されるようにして調製した。in vitroで7日目にそれらを、全ての工程を15℃で実施し、細胞を溶解バッファー(0.05M NaHPO pH 8.0, 0.15 M NaCl, 0.5% CHAPS (Sigma), 2.5 mM ヨードアセトアミド, 1 mMフェニルメチルスルホニルフルオライド, 0.1 μg/mlアプロチニン,1 μg/mlロイペプチン, 1 μg/mlペプスタチンA )1 ml中に溶解させる以外は記載されるように、細胞非透過性EZ-LINK スルホNHS-LC-Biotin (Pierce)を用いてビオチン化した。ビオチン化タンパク質をDynabeads M-280 Streptavidin (Dynal)を用いて免疫沈降し、SDS-PAGEにかけ、そしてニトロセルロースメンブランに転写し、これらをAS472,α-BiPおよびα- β- チューブリンを用いてプローブした。メンブランをRe-Blot Western Blot Recyclingキット(Chemicon)を用いてはがした。
6.1.16 免疫細胞化学
視神経稀突起神経膠細胞をSchwabおよびCaroni (1988, J. Neurosci. 8:2381-2393) に記載されるようにして調製した。2日令培養物をAS 472 (1:200)またはmAb IN-1 (1:3)と、培地中室温(rt)で25分間インキュベートした。培養物を洗浄し、PBS 中の4%パラホルムアルデヒド/5% スクロースを用いて固定し、そして0.1 M マレイン酸/2% ブロッキング剤(Boehringer Mannheim) 中で1時間ブロックした。2次アルカリホスファターゼコンジュゲート抗体(Milan Analytica) を0.1M マレイン酸/1% ブロッキング剤(1時間、rt)中の1:7,500 で使用した。トランスフェクションされたCOS 細胞を95% エタノール/5% 酢酸を用いて固定し(4℃、25分間)、ブロックし、そしてAS Bruna (1:200)またはmAb IN-1と室温で2時間インキュベートした。細胞をヤギ抗ウサギFITC、およびヤギ抗マウスTRITC(Jackson Immuno Research Lab) と反応させた。
6.1.17 視神経室
視神経の対をSchwabら (1988, J. Neurosci. 8:2381-2393) に記載されるように3室培養系で培養し、AS 472または相当する免疫前血清(1:10)を注射およびそれにさらした。視神経を電子顕微鏡(EM)用に封埋し、DRG 露出断端から約3.5 mmの距離で超薄切片をとった。切片をZeiss EM 902顕微鏡を用い再生中の軸索の存在に関して組織的に分析した。
6.2 実験結果
以下の分節は6.1 節に示される方法分節およびサブ分節から得られた実験結果を開示する。
6.2.1. Nogo cDNA の単離
ラットNI-250のウシ相同体を精製し、bNI220および精製タンパク質のペプチドをプロテアーゼ消化により生成した。複数のジゴキシゲニン標識した縮重オリゴヌクレオチドを6種の異なるbNI220ペプチド配列に従って設計した。これらオリゴヌクレオチドを使用してウシ白質ライブラリーのスクリーニングから幾つかのcDNAクローンを単離した。最長クローンのインサート(CWP1-3,図1a) を用いてラットcDNAライブラリーの後続のスクリーニング用のプローブを合成した。かかるスクリーニングから選択されたクローンを図1aに示す。これらcDNAクローンのDNA 配列分析では、3種の異なる転写物が1つの遺伝子に由来することが示され、この遺伝子をNogoと表示した。異なる転写物は、選択的プロモーターの使用および選択的スプライシングの両方から生成するようである(Nogo A, Nogo Bおよび NogoC,図1b)。図1Aに示されるクローンからDNA 配列を編集して転写物 Aを生成し、そのDNA 配列を図2aに示す。
3種の転写物を概念的に翻訳すると、Nogo A (1163アミノ酸), Nogo B (360アミノ酸) およびNogo C (199 アミノ酸) で示されるタンパク質産物を産生する。Nogo Aは精製bNI220から得られる全6種のペプチド配列を含有するので(図2b)、精製タンパク質ラットNI250 と恐らく同等である。Nogo A, B および Cは共通のカルボキシ末端188 アミノ酸(共通ドメイン)を有し、そしてNogo AおよびBはアミノ末端172 アミノ酸を共有する。Nogo Aは選択的スプライシングゆえにNogo Bより803 アミノ酸長い。
Nogoイソ型のいずれも、慣用のシグナルペプチドとして使用できるN 末端でのアミノ酸の疎水性の伸長を有しない。しかしながら、慣用のシグナルペプチドに欠けるがなお膜を通って移行するタンパク質、例えば繊維芽細胞増殖因子(Florkiewicz ら、1995, J. Cell. Physiology 162:388-399 )、毛様神経栄養因子(Sendtnerら、1994, J. Neurobiology 25:1436-1353)およびインターロイキン-1(Rubartelliら、1990, EMBO J.9:1503-1510)が記載されている。無横連合(Tearら、1996, Neuron 16:501-51)のような膜タンパク質もまた慣用のシグナルペプチドを欠くが、しかしながら膜中に挿入される。
開始コドンを明確に限定するであろう読み枠内終止コドンは推定の5'未翻訳領域には何ら存在しないが、以下の証拠では図2aに示すメチオニンがNogo AおよびNogo Bの開始コドンであることが示唆される。すなわち(1) この想定された開始コドンの周りの配列が翻訳開始部位のコンセンサス配列(GCCGCC A/G CCATGG; 配列番号39)と良く適合する;(2)ライブラリースクリーニングおよび5'-RACE両方によるさらなる上流の配列を探索する広範な努力が払われた。これら探索のいずれもさらなる上流の配列の同定には至らなかった;および(3) 前記メチオニンから発現する真核生物性組換えNogo AはSDS-PAGEにより判断して見かけの分子量約200 kDを有し、これはラット稀突起神経膠細胞からの内因性Nogo Aとは区別がつかない(図11a )。
6.2.2. Nogo配列決定分析
Nogo Aは7個の有力なN-グリコシル化部位を有するが、しかしながら生化学的証拠ではNogo Aが主要多糖類成分を有しないことが示される。またNogo AはPKCの認識部位を19個およびカゼインキナーゼIIの認識部位を7個有する(図2a)。3種のNogo全ては2種の共通の、それぞれ35および36アミノ酸からなるカルボキシ末端疎水性ドメインを有する。それらドメインの一方または両方は膜貫通性または膜内ドメインとして使用でき、これは内在性膜タンパク質としてのbNI220の特性と一致する。Nogo A(Nogo Bおよび Cも)は何ら公知の細胞接着分子、細胞外マトリックスタンパク質、もしくは他のガイダンス分子のモチーフを含有しない。
Nogo配列は相同の遺伝子について異なるデータベースを探索するのに使用され、3種のNogo産物のカルボキシ末端共通ドメインは同定されたヒトの遺伝子 nsp (ラットでcll3およびs-rex,そしてニワトリでchs-rex)(図3)と類似している(62.5%)。C. elegansからの ESTおよびDrosophila melanogaster EST もまた、Nogoおよび nspの両方に対してこの同じ領域で有意な類似性(それぞれ、16.6%および13.6%)を有する。Nogoおよび nspの両方の180 アミノ酸カルボキシ末端ドメインは哺乳動物種にわたり高度に保存されており(それぞれ、98.3% および97.3%)、このことはそれらが同様の機能および必須的機能を果たすことを示唆している。この領域の外側で、種内の所定のタンパク質に関する類似性も高い(ラットとウシのNogo A間で73%; NSP-AとS-rexbとの間で76.2%; Chs-rexb とNSP-A もしくはS-rexbとの間で50%)。しかしながら、NSP類とNogo類との間の類似性はそれらのカルボキシ末端疎水性共通ドメイン(図3a)、およびこの保存された領域の外側のタンパク質の酸性性質に限定される。NSP 類(NSP-A, -B および-C)は未知の機能を有する神経内分泌特異的な産物として以前に記載されている。in situハイブリダイゼーションおよび免疫組織学では神経系におけるNSP 類のニューロン局在が示された。さらにNsp およびNogoの両方に対して50% の類似性を有するカルボキシ末端疎水性領域を有するもうひとつのヒト遺伝子nsp-like-1が最近同定された。
6.2.3. NOGO組織発現
Nogoの発現パターンがノーザンブロッティングおよびin situ ハイブリダイゼーションにより検査された。「共通」プローブ(6.1.6 節)が使用された場合、視神経、脊髄および大脳皮質において3種の主要なNogo転写物(表示:A, 4.6kb; B, 2.6kb; そしてC, 1.7kb)が検出された(図4a)。後根神経節では、2種のより大きい方の転写物しか検出されなかった。 2.6kbの主要転写物はPC12細胞中で検出されたが、 4.6kbバンドは長期露出後にしか検出できない(図4a)。座骨神経では、転写物の検出レベルが低く 2.6kbバンドが主要転写物である。脊髄およびPC12細胞ポリ(A) + RNA をエキソン1に特異的なプローブとハイブリダイズさせた場合、4.6kb および 2.6kb転写物しか検出されなかった。後脳および骨格筋ポリ(A) + RNA をエキソン2に特異的なプローブとハイブリダイズさせた場合、後脳に4.6kb 転写物のみが検出された(図4b)。これらの結果は図1Bに示される転写マップを証明している。しかしながらノーザンブロッティング結果はまた、Nogo発現が神経系に限定されないこと(図4c); Nogo転写物が骨格筋(1.7kb)、腎臓(2.6kb および1.7kb)、軟骨(胸骨から、1.7kb)、皮膚(1.7kb)、肺(2.6kb)、および脾臓(2.6kb)でも検出されたことも示している。Nogo C転写物を高レベルで発現する骨格筋を除き、神経系の外のNogo転写物レベルは神経系のそれより低い。従って、4.6kb Nogo A転写物は神経系において特有に転写されると見られる。
通常のプローブを使用する成体ラットCNS 組織切片でのin situ ハイブリダイゼーションでは、脳および脊髄の種々の部分の白質中における細胞体の列の中程度の標識化が示された。この配置は維管束間の稀突起神経膠細胞の典型である(図5a, d)。稀突起神経膠細胞に加え、数種類のニューロンもNogo転写物を高レベルで発現する(図5c, e)。小脳では、抗GFAP抗体を用いる切片の2重染色およびin situ ハイブリダイゼーションでNogoプローブによるプルキンエ細胞の強い標識化が明瞭に示されるが、星状細胞は標識されなかった(図5e, f)。発達中の視神経では、Nogo転写物が出生0日目(P0)という早期に検出された。すなわち、主要ミエリンタンパク質であるプロテオリピドタンパク質(PLP) およびミエリン塩基性タンパク質(MBP)のm RNAが検出されうる数日前である(図6)。このタイミングは、IN-1により中和されうる、神経突起増殖阻害活性の発現および第1のガラクトセレブロシド陽性稀突起神経膠細胞の出現と一致する。
ウシNogo A特異的配列(AS 472)に基づく合成ペプチドに対して、および45 kDの組換え、部分的ラットNogo A (AS Bruna)に対して抗血清を生成させた(6.1.7 節)。AS 472およびAS Brunaそれぞれは、ウシミエリン中の約200 kDタンパク質を認識し、そしてAS Brunaはさらに200 kDラットミエリンタンパク質をウエスタンブロットで認識する(図7)。成体ラット脊髄および小脳の切片をAS 472、AS BrunaおよびIN-1で染色した。切片をエタノール/酢酸で固定すると(IN-1抗原の保存および入手可能性に必要であると先に示された操作)、3種の抗体全てについて白質/ミエリンの強い染色が見られた(図8)。稀突起神経膠細胞の細胞体の染色はAS Brunaで特に顕著であった。エタノール/酢酸の代わりにメタノールを用いて新鮮凍結切片を処理すると、稀突起神経膠細胞の細胞体を除きミエリン染色が消失した。
AS BrunaおよびAS 472はまた、脊髄の運動ニューロンおよび小脳の顆粒状および分子状層を含むいくつかの種類のニューロンも染色した。プルキンエ細胞はAS 472およびAS Brunaで強く染色したが、IN-1では何ら検出可能な染色は見られなかった。
6.2.4 Nogo抗体はin vitroでNogo誘導成長阻害を抑制する
半精製されたウシ脊髄NI-220調製物(q-プール)は、NIH 3T3繊維芽細胞の伸展(spreading)と神経突起の成長を妨げることが可能である。Nogo抗血清(AS Bruna(AS 472)またはIN-1のいずれか)の存在下で、q−プール阻害活性が減少した。ここでq−プール阻害活性は、NIH 3T3繊維芽細胞の伸展を示し、また胚性ニワトリ後根神経節(DRG)がq−プールをコートした皿上で神経突起を伸ばす活性をいう(図9)。特異性はP472ペプチドの添加によって示された。このペプチドは、AS 472を誘発させるために使用されたペプチドである(6.1.7節)。P472はうまく、AS 472の阻害作用を阻止したが、一方、対照ペプチドは該阻害に対し全く作用しなかった。
さらにまた、稀突起神経膠細胞の細胞表面上のNogo Aの存在が、AS 472を用いて免疫細胞化学的に、機能的に、および生化学的に実証された。初代培養の、生きた稀突起神経膠細胞がmAb IN-1またはAS 472のいずれかを用いて染色されたときには、比較的弱い(ガラクトセレブロシドについての免疫細胞化学との比較)が明瞭な表面染色が、分化した稀突起神経膠細胞上で認められた(図15a、15c)。AS 472に対する競合性ペプチド(P472)を添加するか、または第一抗体を省略すると、特異的な染色が見られなかった(図15b、15d)。細胞表面をビオチニル化した後、ストレプトアビジンで沈殿させると、稀突起神経膠細胞の形質膜上におけるNogo Aの存在がさらに証明された。沈殿物中には、AS 472により、細胞内の、おそらく切断されていない、かつグリコシル化されていないAS 472免疫陽性バンドの上の約40kDに移動するバンドが検出された。ERタンパク質であるBipは、ビオチニル化画分中に検出できなかった(図15e)。
稀突起神経膠細胞表面分子であるNogo Aもまた、機能性分析が行われた。稀突起神経膠細胞とNIH 3T3繊維芽細胞、あるいは稀突起神経膠細胞とDRGニューロン、を同時培養すると、成熟した稀突起神経膠細胞の阻害特性が明確に示された。これらのアッセイによって、NIH 3T3繊維芽細胞およびDRG神経突起が、稀突起神経膠細胞のテリトリーであるmAb IN-1により中和される作用を強く回避することが示された。AS 472の存在下で、この阻害は等しく低減した(図16a,bおよび16e,f)が、AS 472をP472と前もってインキュベートすると、稀突起神経膠細胞仲介の阻害が回復した(図16c,dおよび16g,h)。定量分析により、両方の種類のアッセイにおいてmAb IN-1とAS 472の高度に有意の中和能が示された(図16i,j)。
安定にトランスフェクトされたCHO細胞系によって産生されたrecNogo-A(図17a)を、NIH 3T3繊維芽細胞の伸展とDRG神経突起の成長に対する、その活性について試験した。安定なCHO細胞系(CHO-LacZ)から単離された組換え的に産生されたβ-ガラクトシダーゼは、recNogo-Aと並行して富化され、両アッセイにおいて内因性CHOタンパク質の阻害活性の対照として使用された。NIH 3T3繊維芽細胞の伸展アッセイでは、recNogo-A含有CHO抽出物(Nogo-A;総タンパク質の約1〜5%;図9a)は、10μg/cm2の伸展をもつ細胞に対して明らかな阻害作用を示した(図17b)。この作用は用量依存的であり、即ち、20μg/cm2で阻害活性はより高まったが、5μg/cm2で阻害は全くなかった(データを示さず)。この阻害活性は、前記コートしたタンパク質をmAb IN-1またはAS Brunaと一緒に前もってインキュベートすることによって背景レベルまで中和可能であったが、一方、ガラクトセレブロシドに対する対照抗体(mAb O1)またはAS Bruna前免疫血清は全く作用を示さなかった(図17b)。
NIH 3T3繊維芽細胞の伸展に対するその強力な作用に加えて、recNogo-A含有CHO抽出物(ただしCHO-LacZ抽出物ではない)は、初代培養ニューロンからの神経突起成長に対し、強力な阻害作用を有していた。即ち、解離したDRGニューロンは、recNogo-Aによって用量依存的に阻害された(図17c)。この阻害活性は、mAb IN-1によって中和可能であったが、対照mAb O1では中和されなかった(図17c-e)。CHO-LacZから単離された組換えタンパク質は、1および5μgで阻害しなかったし、またmAb O1またはIN-1の添加は神経突起の成長に影響を与えなかった。
6.2.5 in vitroでの神経突起の再成長
成体CNS組織を介しての新生仔ラットDRG神経突起の再生および成長能を調べた。視神経の対を、成体ラットから切り分けて、DRG神経突起が各神経の一端に近づくように特殊なチャンバー培養システム内で培養した(図10a)。各培養において、2つの神経のうち1つに前免疫ウサギ血清を注入して該血清に露呈し、他方の神経にはAS 472を注入した。AS 472もまた、前記チャンバー内の該神経のまわりに存在させた。NGFの存在中in vitroで2週間後に、電子顕微鏡(EM)観察のために、該培養物を固定し、取りくずし、そして包埋した。EM切片をDRGニューロンと接触する該神経の端から約3.5mm取った。前免疫血清を注入した神経は軸索を全く含まないか、または、わずか数個の軸索を含んでいるにすぎなかった(図10b)。後者は、該神経表面で、基底膜および星状神経膠細胞と結合することが専ら見出された。これに反して、AS 472が注入された視神経の大部分がしばしば、最高数百個の、かなりの数の軸索を含んでいた。ミエリンとの接触を頻繁に認めることができた(図10c,d)。
6.2.6 IN-1による組換えNogo A認識
Nogo Aが、トランスフェクトされたCOS細胞内で、カルボキシ末端のmyc-hisタグ化組換えタンパク質として発現されると、抗myc抗体およびAS Brunaの両方を用いるウエスタンブロッティングにより、組換えNogo Aが変性SDSゲル上で約200kDの見かけ分子量をもつことが示された(図11a)。同じブロット上で、類似の移動度のバンドが、ラット初代培養稀突起神経膠細胞においてAS Brunaによって検出されたが、このことから、組換えNogo Aが稀突起神経膠細胞由来の内因性Nogo Aとほぼ同一の分子量をもつことが示唆された(図1a)。トランスフェクトされたCOS細胞がIN-1およびAS Brunaを用いた免疫蛍光法によって染色されたときには、IN-1およびAS Brunaは同一の、トランスフェクトされた細胞を認識した(図11b,c)。免疫反応性の大部分は、細胞内に局在し、また透過(permeabilization)後にのみアクセス可能であった。
6.2.7 Nogo活性領域のマッピング
Nogoの一連の欠失変異体を作製して、Nogoの阻害ドメインまたは領域をマッピングした。Nogo遺伝子の欠失構築物は、内部の制限部位、エキソヌクレアーゼIII-ヤエナリ(mung bean)消化、およびポリメラーゼ連鎖反応によって作製された。該変異体の説明は図18とその簡単な説明に与えられている。構築物の大部分は、抗T7モノクローナル抗体を使用する同定のためのN末端T7タグと、固定化Co(II)アフィニティクロマトグラフィーを使用する精製のためのN末端またはC末端ヘキサヒスチジンタグ(「Hisタグ」)とを有している。Nogo欠失変異体(NiG-D1,NiG-D2からNiG-D20と称する)の全てを、NIH 3T3繊維芽細胞の伸展アッセイを用いて試験し、阻害活性を測定した。いくつかの変異体を、PC12神経突起の成長アッセイ、解離されたラットDRG神経突起の成長アッセイ、または網膜神経節線(retinal ganglion stripe)のアッセイで試験した。この結果を下記の表2に示す。
Figure 2012213406
繊維芽細胞またはPC12細胞が、欠失変異体から得られたNogo調製物でコートした平板上でのその伸展について阻害される場合に、NIH 3T3繊維芽細胞アッセイ(3T3)またはPC12アッセイにおける陽性結果が評点付けされる。胚性ニワトリ後根神経節神経突起成長アッセイ(DRG)または神経節成長錐状体衰退(ganglion growth cone collapse;RGC)アッセイにおける陽性結果から、神経突起成長が阻害されること、あるいは、成長錐状体が欠失変異体から得られるNogo調製物の存在下で衰退させられることが示される。
これらのデータは、主要な阻害ドメインがアミノ酸番号172〜974、特にアミノ酸番号542〜722、のNogo-A特定領域中に同定されたことを示している。さらに、Nogo-AおよびNogo-BのN末端配列(アミノ酸番号1〜171)もまた、3T3の伸展を阻害した。この結果に基いて、アミノ酸番号172〜259、およびアミノ酸番号975〜1162のNogo領域は、必須ではないように思われるし、また阻害活性を失うことなく除去可能である。
7.実施例:ヒトNogo核酸ならびにタンパク質、誘導体および断片
本発明は、ヒトNogoタンパク質およびヒトNogoタンパク質断片(ラットNogo A、Nogo B、およびNogo Cの一部に対するヒト等価物)をコードするヌクレオチド配列を提供する。ヒトNogoアミノ酸配列は図13に示されており、配列番号29として割当てられている。
本発明はまた、ヒトNogo遺伝子断片のヌクレオチド配列を提供する。ヒトNogoヌクレオチド配列は、ラットまたはウシcDNA配列と相同であるヒト発現配列タグ(EST)とともに、ラットNogo A転写物をアラインメントおよびスプライシングの助けとして用いて、決定されうる。
例えばESTであるAA081783およびAA333267(5.1節)は、互いに重複し、ラットNogo A(図2a;配列番号1)核酸位置765〜1272に相当する。ESTであるAA322592、AA092565およびAA081525(5.1節)もまた互いに重複しており、重複配列はラットNogo核酸1642〜2131に相当している。本発明のラットまたはウシNogo核酸配列と直接コンピュータ比較することなしには、重複するESTのこれら2つの独立した組をアラインメントさせて該ヒト配列を得ることは不可能である。最初のコンピュータアラインメントのためには、ENTREZ Nucleotide QUERY が好ましい。その代替例として他のコンピュータアラインメントプログラムを5.1節に列挙したが、これは、使用可能なコンピュータプログラムの範囲を限定することを意味したものではない。
8. 考察
8.1 神経突起成長インヒビターNogoのクローニング
Nogo Aは、以前に記載のあるラットNI-250が、CNSミエリンの主たる神経突起成長抑制タンパク質であり、IN-1の抗原であることを支持する、多くの特質を有している。分子レベルでは、Nogo Aは、元々はウシの脊髄ミエリンの主たる抑制性成分であるbNI-220の配列決定によって得られた、6つのペプチドを全て含む。発現レベルでは、稀突起神経膠細胞は成体CNSにおいてNogo Aを発現する主たる細胞型であり、視神経におけるNogo発現のタイミングは、神経突起の伸長に対するミエリン抑制活性がIN-1により中和されるという以前の記載と一致する。さらに、ウェスタンブロッティングは活性q-プール画分におけるNogo Aの存在を示し、また様々なCNS領域に由来する白質は、AS BrunaおよびAS 472(Nogo Aに特異的)によって、IN-1を用いた場合と同じパターンで染色された。これらの事実はどちらも、Nogo AがNI-250であるという説明に合致している。
Nogo A配列に対して産生された2種の抗血清、AS BrunaおよびAS 472は、部分精製したウシ脊髄調製物(q-プール)の前記抑制活性を大きく低減させた。AS 472はまた、多数の脊髄神経節軸索を成体視神経外植体中へ数ミリメートルにわたり内方向伸長させたが、これはIN-1の場合と非常によく似ている。
Nogo Aの算出した分子量は約140kDであるが、変性SDSゲル上では明らかに約200kDの分子量を有し、これは約250kDという以前の算出の範囲内である。SDSゲル中のNogo Aの異常な移動度は、おそらく翻訳後の修飾よりはむしろその酸性の性質に起因するものであろう。SDS-PAGEでのタンパク質の異常な移動度は、他の高度に酸性のタンパク質、例えば増殖関連タンパク質GAP-43、およびNSP-A等では自明のこととみなされている。さらに、細菌で発現された組換えNogo Aは、ラット稀突起神経膠細胞により発現された内在性Nogo Aと明らかに同じ分子量を有する。このことは、グリコシル化等の機構によるNogo Aの主たる修飾とは反する結果である。
8.2 Nogoは再生を妨げ、成体CNSの塑性を制限する
P0由来のラット視神経稀突起神経膠細胞におけるNogoの発現は、先の神経突起成長抑制活性を中和し得るIN-1の発見とよく一致する。興味深いことに、この発現は主要ミエリンタンパク質の発現に先立って起こり、数日のうちにミエリン形成に至る。おそらく軸索のシグナルに応答したNogoの出現は、対応する神経線維路におけるさらなる軸索の成長を妨げることが可能であった(ラット視神経においてE20が軸索数のピーク)。Nogoはまた、二次形成を抑制することによって分化したCNSの全体的構造を安定化することができた。異なるCNS領域の灰白質において、ミエリン含量およびIN-1免疫反応性は、GAP-43のレベルおよび所定領域が有し得る塑性と逆相関している。実際、成体CNSへ適用したIN-1抗体は、脳幹および脊髄において、以前は発生初期のCNSでしか知られていなかった程度まで出芽および塑性を生じさせる。この塑性に対応した大幅な機能的回復は、出芽軸索が機能的に適切な接続を形成することが可能であることを示唆している。
抑制性Nogoに対するニューロンの応答が異なる年齢のニューロンの間で違うことは、以前から示されていた。おそらく、これは受容体の示差的な発現によるものであり、それらは近いうちに特徴付けされることが期待される。ネトリンおよび多くの成長因子と同様に、異なる応答を引き起こす各種のNogo受容体の存在が可能性として残っている。Nogoもまたニューロンのいくつかのタイプで発現されるという事実は、同一のおよび/または異なるNogoアイソフォーム間で起こりうる相互作用を指し示している。
8.3 Nogoは神経突起調節分子の新規ファミリーに属する
Nogoの配列解析からは、軸索誘導(反発性または誘引性)に関わる細胞表面もしくは基質タンパク質の既知のモチーフは示されなかった。すなわち、免疫グロブリン、フィブロネクチンIII型、またはEGFドメインは同定できなかった。記載のある神経突起成長インヒビターの、セマフォリン、ネトリン、またはエフリンに対する相同性は、いずれも存在しなかった。
Nogoは、カルボキシ末端の180アミノ酸の類似性に基づき、近年記載されたタンパク質の一群であるNSP/s-rexおよびNSP-like1タンパク質と共に新規ファミリーを形成する。Nogoの場合と同様に、複式プロモーター使用(NspおよびNsp-lke1遺伝子の両方)および複式スプライシング(Nspのみ)のいずれもが、疎水性アミノ酸のストレッチを2つ含む共通カルボキシ末端を有する複式タンパク質産物の産生の原因となる。名称によって示される通り、NSP(神経内分泌特異的タンパク質)は、ニューロンおよびいくつかの内分泌細胞型において優位に発現される。それらは小胞体と共同して主に細胞内に局在する。NSP-like1遺伝子は脳および筋肉において優位に発現される。NSPファミリーもNSP-like1ファミリーも、機能は知られていない。潜在的オーソログ体が線虫およびキイロショウジョウバエの両方に存在するという事実は、神経再生および出芽抑制活性を有するNogoが、新たに進化した、NSPファミリーのこれまで未記載のメンバーであり得ることを示唆している。
8.4 非ニューロン組織におけるNogo
Nogo C転写物は、神経系に匹敵するレベルで骨格筋にて発現される。筋肉のNogo Cについて考えられる機能の1つは、運動軸索を拒絶し、それらを運動終板領域に限定することである。また低レベルのNogo発現は他の非神経組織でも検出され得る。ミエリン抽出物およびNI-250による繊維芽細胞および星状膠細胞の伸展に対する抑制が観察されたことから、これらの細胞におけるNogoタンパク質の受容体および応答機構の存在が示される。このことは、細胞運動の接触抑制におけるNogoのあり得る一般的機能を示している。
本発明は本明細書に記載の特定の実施形態の範囲に限定されるべきものではない。実際、本明細書の記載以外の本発明の様々な改変が、上記記載および添付図面から当業者には明らかになるであろう。そのような改変は本発明の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
様々な引用文献を本明細書中に引用したが、それらの開示内容はその全体を参照により組み入れるものとする。

Claims (31)

  1. 配列番号29の全長にわたって90%より高い同一性を有するアミノ酸配列から成る精製ヒトNogoタンパク質であって、(i)天然では結合している全ての中枢神経系ミエリン物質を含まず、且つ(ii)神経突起成長における抑制効果を有する、前記タンパク質。
  2. 配列番号29の全長にわたって97%より高い同一性を有するアミノ酸配列から成る、請求項1に記載のタンパク質。
  3. 配列番号29の配列を有する、請求項1に記載のタンパク質。
  4. 配列中の1以上のアミノ酸残基が、サイレントな改変を生じる、機能的同等物として働く類似の極性を持つ他のアミノ酸により保存的に置換されている、配列番号29の配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
  5. 配列番号1のヌクレオチド配列から成る第2の核酸にハイブリダイズすることが可能な第1の核酸によりコードされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質。
  6. 非グリコシル化タンパク質である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質を含む融合タンパク質又はキメラタンパク質。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする単離された核酸。
  9. (a)配列番号29のアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列から成る第2の核酸とハイブリダイズすることができ、且つ(b)配列番号29のアミノ酸配列から成るタンパク質に対する抗体に結合する天然に存在するタンパク質をコードする、請求項8に記載の核酸。
  10. 天然に存在するヒトタンパク質をコードする、請求項9に記載の単離された核酸。
  11. 固有のものでないプロモーターに機能的に連結された、請求項8〜10のいずれか1項に記載の核酸を含むクローニングベクター。
  12. 発現ベクターである、請求項11に記載のベクター。
  13. 請求項11又は12に記載のベクターを用いて配列番号1の核酸により形質転換された組換え細胞。
  14. 原核生物又は真核生物組換え細胞である、請求項13に記載の組換え細胞。
  15. (a)請求項13又は14に記載の細胞を培養するステップ、及び
    (b)請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質を回収するステップ
    を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質の産生方法。
  16. 医薬としての使用のための請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質。
  17. 被験体における請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質の産生を特異的に阻害するリボザイム又はアンチセンス核酸。
  18. 医薬としての使用のための請求項17に記載のリボザイム又はアンチセンス核酸。
  19. 中枢神経系の腫瘍性疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質の使用であって、該タンパク質が被験体での細胞増殖の阻害において活性である、前記使用。
  20. 腫瘍性疾患が、神経膠腫、神経膠芽腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、稀突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫又は網膜芽腫である、請求項19に記載の使用。
  21. 中枢神経系の損傷を治療するための医薬の製造における、ニューロンの再生若しくは出芽を誘導するための医薬の製造における、又は中枢神経系の可塑性を強化するための医薬の製造における、請求項17に記載のリボザイム又はアンチセンス核酸の使用。
  22. 被験体がヒトである、請求項19又は21に記載の使用。
  23. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体。
  24. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質に対するポリクローナル抗体の取得方法であって、
    (a)免疫原性量の請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質を非ヒト動物に投与するステップ、及び
    (b)前記非ヒト動物から前記ポリクローナル抗体を回収するステップ
    を含む、前記方法。
  25. 配列番号29に免疫特異的に結合する、請求項24に記載の方法に従い産生されたポリクローナル抗体を含む単離された抗血清サンプル。
  26. 治療用抗体又は治療用抗血清である、請求項23に記載の抗体又は請求項25に記載の抗血清。
  27. ヒト抗体、キメラ抗体又は一本鎖抗体である、請求項23又は26に記載の抗体。
  28. 医薬としての使用のための、請求項23、26若しくは27に記載の抗体又は請求項25に記載の抗血清。
  29. 中枢神経系の損傷を治療するための医薬の製造における、ニューロンの再生若しくは出芽を誘導するための医薬の製造における、又は被験体での中枢神経系の可塑性を強化するための医薬の製造における、請求項23、26若しくは27に記載の抗体又は請求項25に記載の抗血清の使用。
  30. 被験体がヒトである、請求項29に記載の使用。
  31. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質に対するモノクローナル抗体の取得方法であって、
    (a)免疫原性量の請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質を非ヒト動物に投与するステップ、
    (b)前記非ヒト動物由来の、培養中の継続的な細胞株によりモノクローナル抗体分子を産生させるステップ、及び
    (c)前記培養から前記モノクローナル抗体を回収するステップ
    を含む、前記方法。
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