(5.発明の詳細な説明)
本発明は、CD19抗原に結合し、好ましくはヒトADCCを媒介する治療用抗体を使用して、ヒト被験体における自己免疫疾患および障害を処置するための免疫療法用の組成物および方法に関する。本発明は、IgG1またはIgG3ヒトアイソタイプのヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ抗CD19抗体を含む薬学的組成物に関する。本発明はまた、好ましくはヒトADCCを媒介するIgG2またはIgG4ヒトアイソタイプのヒト抗CD19抗体またはヒト化抗CD19抗体を含む薬学的組成物に関する。特定の実施形態において、本発明はまた、当該分野で公知の手段によって作製され得る、モノクローナルのヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ化抗CD19抗体を含む薬学的組成物に関する。
自己免疫疾患または自己免疫障害(関節リウマチ、SLE、ITP、天疱瘡関連障害、糖尿病および強皮症が挙げられるがこれらに限定されない)と診断されたヒト被験体を処置するための治療用の処方物およびレジメンを説明する。
5.1.抗CD19抗体の作製
5.1.1.ポリクローナル抗CD19抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原およびアジュバントを動物の皮下(s.c.)または腹腔内(i.p.)に複数回注入することによって産生される。免疫される種において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビター)と関連抗原を、二機能性の因子または誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイル(maleimidobertzoyl)スルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して結合体化)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸(succunic anhydride)、SOCl2を使用して、結合体化することが有用であり得る。
動物は、例えば、100μgまたは5μgの(それぞれウサギまたはマウスに対して)タンパク質または結合体と3倍の体積のフロイント完全アジュバントとを組み合わせ、そして皮内の複数の箇所にその溶液を注入することによって、抗原、免疫原性の結合体または誘導体に対して免疫される。1ヵ月後、その動物に、もとの量の1/5〜1/10量のフロイント不完全アジュバント中のペプチドまたは結合体を皮下の複数箇所に注入することによって追加免疫を行う。7〜14日後に、その動物から採血し、その血清を抗体価についてアッセイする。その動物は、抗体価がプラトーに達するまで追加免疫を受ける。好ましくは、その動物は、同じ抗原であるが、異なるタンパク質および/または異なる架橋試薬を介して結合体化された結合体で追加免疫される。結合体はまた、タンパク質融合として組換え細胞培養中に生成され得る。また、ミョウバンなどの凝集剤は、免疫応答を増強するために適当に使用される。
5.1.2.モノクローナル抗CD19抗体
本発明のモノクローナル抗CD19抗体は、ヒトCD19抗原への結合特異性を示し、そして好ましくはヒトADCCを媒介し得る。これらの抗体は、当該分野で公知の多岐にわたる技術を使用して作製され得る。それらとしては、ハイブリドーマ、組換えおよびファージディスプレイ技術の使用またはそれらの組み合わせが挙げられる。抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象としている。さらに、代表的には様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、ヒトCD19抗原における単一の決定基を対象としている。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって初めて報告されたハイブリドーマ法によって作製され得る。このハイブリドーマ法は、マウス抗体(または他の非ヒト哺乳動物、例えば、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ラクダなどに由来する抗体)またはトランスジェニック動物由来のヒト抗体(米国特許第6,075,181号、同第6,114,598号、同第6,150,584号および同第6,657,103号を参照のこと)を作製するために使用され得る。あるいは、モノクローナル抗体は、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)によって作製され得、そしてキメラ抗体およびヒト化抗体を含む。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
操作された抗CD19抗体は、当該分野で公知の任意の手段によって作製され得る。その手段としては、以下に記載する技術およびそれらの改良技術が挙げられるがこれらに限定されない。大規模な高収率の作製は、代表的には、操作された抗CD19抗体を産生する宿主細胞を培養することおよびその宿主細胞培養物から抗CD19抗体を回収することを含む。
5.1.3.ハイブリドーマ技術
モノクローナル抗体は、当該分野で公知の技術、および例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling,et al.,Monoclonal Antibodies and T−CeIl Hybridomas,563−681(Elsevier,NY.,1981)(前記参考文献は、それらの全体が参考として援用される)に教示されている技術を含むハイブリドーマ技術を使用して作製され得る。例えば、ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物(例えば、ハムスターまたはマカクザル)を免疫することにより、免疫に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球が誘導される。あるいは、インビトロにおいてリンパ球を免疫してもよい。そして、ポリエチレングリコールなどの適当な融合剤を使用して、リンパ球をミエローマ細胞と融合することにより、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1以上の物質を含む適当な培地中に播種し、生育する。例えば、親ミエローマ細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を有していない場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、代表的には、HGPRT欠損細胞の増殖を妨害する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む(HAT培地)。
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、そして、選択された抗体産生細胞が抗体を安定して高レベルに産生するのをサポートし、そしてHAT培地などの培地に感受性である細胞である。これらのうち、好ましいミエローマ細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,CA,USAから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,MD USAから入手可能なSP−2またはX63−Ag8.653細胞から得られるようなマウスミエローマ株である。ヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の作製について報告されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,NY,1987))。
ハイブリドーマ細胞を生育させる培養培地を、ヒトCD19抗原に特異的なモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって測定される。
所望の特異性、アフィニティーおよび/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されたら、そのクローンを限界希釈手順によってサブクローニングし得、そして標準的な方法(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))によって生育し得る。この目的に適した培養培地としては、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍のようにインビボにおいて生育され得る。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィー)によって培養培地、腹水または血清から適当に分離される。
5.1.4.組換えDNA技術
本発明の抗CD19抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗CD19抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離および配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されると、そのDNAは、発現ベクターに組み込まれ得、そして宿主細胞(例えば、他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはミエローマ細胞)にトランスフェクトされることにより、組換え宿主細胞において抗CD19抗体が合成される。
ファージディスプレイ法では、機能的な抗体ドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面上に提示される。特に、VHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列は、動物のcDNAライブラリー(例えば、罹患組織のヒトまたはマウスのcDNAライブラリー)から増幅される。VHドメインおよびVLドメインをコードするDNAは、PCRによってscFvリンカーと一緒に組換えられ、そしてファージミドベクターにクローニングされる。そのベクターをE.coliにエレクトロポレーションし、そしてそのE.coliをヘルパーファージに感染させる。これらの方法において使用されるファージは、代表的には、fdおよびM13を含む繊維状ファージであり、VHドメインおよびVLドメインは、通常、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかと組換えで融合される。特定の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識された抗原、または固体表面もしくはビーズに結合しているか、もしくはそれらに捕捉されている抗原を使用して、選択され得るか、または同定され得る。本発明の抗体を作製するために使用され得るファージディスプレイ法の例としては、Brinkman et al.,1995,J.Immunol Methods,182:41−50;Ames et al.,1995,J.Immunol.Methods,184:177−186;Kettleborough et al.,1994,Eur.J.Immunol.,24:952−958;Persic et al.,1997,Gene,187:9−18;Burton et al.,1994,Advances in Immunology,57:191−280;国際出願番号PCT/GB91/O1 134;国際公開番号WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401およびWO97/13844;ならびに米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号および同第5,969,108号(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されているものが挙げられる。
上記の参考文献に記載されているように、ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域が、単離され得、ヒト抗体または他の任意の所望の抗原結合フラグメントを含む抗体全体を作製するために使用され得、そして、任意の所望の宿主(下に記載されるような、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む)において発現される。Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメントを組換えで作製するための技術はまた、当該分野で公知の方法(例えば、PCT公開番号WO92/22324;Mullinax et al.,1992,BioTechniques,12(6):864−869;Sawai et al.,1995,AJRI 34:26−34;およびBetter et al.,1988,Sconce,240:1041−1043(前記参考文献は、それらの全体が参考として援用される)に開示されている方法)を使用して利用され得る。
さらなる実施形態において、抗体は、McCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990).Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)に記載されている技術を使用して作製された抗体ファージライブラリーから単離され得る。Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)では、ファージライブラリーを使用した、マウス抗体およびヒト抗体の単離についてそれぞれ記載されている。チェインシャフリング(Chain shuffling)は、高アフィニティー(nM範囲)のヒト抗体を作製するため(Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992))ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するためのストラテジーとしてコンビナトリアル感染およびインビボ組換え(Waterhouse et al.,Nuc Acids.Res.,21:2265−2266(1993))において使用され得る。従って、これらの技術は、抗CD19抗体を単離するための、従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に代わる実行可能な選択肢である。
抗体全体を作製するために、VHまたはVLのヌクレオチド配列、制限酵素認識部位および制限酵素認識部位を保護するための隣接配列を含むPCRプライマーを使用して、scFvクローンにおいてVH配列またはVL配列を増幅することができる。当業者に公知のクローニング技術を利用して、VHドメインを増幅したPCRを、VH定常領域、例えば、ヒトガンマ4定常領域を発現するベクターにクローニングし得、そしてVLドメインを増幅したPCRを、VL定常領域、例えば、ヒトカッパーまたはラムダ定常領域を発現するベクターにクローニングし得る。好ましくは、VHまたはVLドメインを発現するためのベクターは、EF−1αプロモーター、分泌シグナル、可変ドメイン、定常ドメインおよびネオマイシンなどの選択マーカー用のクローニング部位を含む。VHドメインおよびVLドメインはまた、必要な定常領域を発現する1つのベクターにクローニングされ得る。そして、重鎖変換ベクターおよび軽鎖変換ベクターを、細胞株に同時にトランスフェクトすることにより、全長抗体、例えばIgGを安定的または一時的に発現する細胞株が当業者に公知の技術を使用して作製される。
このDNAはまた、例えば、相同なマウス配列の代わりに、ヒト重鎖および軽鎖の定常ドメインのためのコード配列を置換すること(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984))または免疫グロブリンコード配列を非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部と共有結合的に連結することによって改変され得る。
5.1.5.キメラ抗体
本明細書中の抗CD19抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一か、あるいは、それと相同であり、その鎖の別の部分が、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスならびにそのような抗体のフラグメントに属する抗体における対応配列と同一であるか、あるいは相同である、キメラ抗体(免疫グロブリン)を所望の生物学的活性を示す限り含む(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,81:6851−6855(1984))。本明細書中で目的のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル(例えば、ヒヒ、アカゲザルまたはカニクイザル)由来の可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体(米国特許第5,693,780号)を含む。
5.1.6.ヒト化抗体
ヒト化抗体は、当該分野で公知の種々の技術を使用して作製され得る。その技術としては、CDR移植(例えば、欧州特許第EP239,400号;国際公開番号WO91/09967;および米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号および同第5,585,089号(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)、ベニアリング(veneering)または表面再処理(resurfacing)(例えば、欧州特許第EP592,106号および同第EP519,596号;Padlan,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489−498;Studnicka et al.,1994,Protein Engineering,7(6):805−814;およびRoguska et al.,1994,PNAS,91:969−973(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)、チェインシャフリング(例えば、米国特許第5,565,332号(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)および、例えば、公開されている米国特許出願US2005/0042664、公開されている米国特許出願US2005/0048617、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開番号WO9317105,Tan et al.,J.Immunol.,169:1119−25(2002),Caldas et al.,Protein Eng.,13(5):353−60(2000),Morea et al.,Methods,20(3):267−79(2000),Baca et al.,J.Biol.Chem.,272(16):10678−84(1997),Roguska et al.,Protein Eng.,9(10):895−904(1996),Couto et al.,Cancer Res.,55(23 Supp):5973s−5977s(1995),Couto et al.,Cancer Res.,55(8):1717−22(1995),Sandhu JS,Gene,150(2):409−10(1994)およびPedersen et al.,J.Mol.Biol.,235(3):959−73(1994)(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されている技術が挙げられるがこれらに限定されない。しばしば、フレームワーク領域内のフレームワーク残基が、抗原結合を変化させる、好ましくは改善するCDRドナー抗体からの対応する残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、当該分野で周知の方法、例えば、抗原結合および特定の位置における通常のものでないフレームワーク残基を同定する配列比較に重要なフレームワーク残基を同定するCDR残基およびフレームワーク残基の相互作用のモデル化によって同定される(例えば、Queen et al.,米国特許第5,585,089号;およびRiechmann et al.,1988,Nature,332:323(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
ヒト化抗CD19抗体は、非ヒトである起源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と呼ばれることが多く、その残基は、代表的には「移入」可変ドメインから得られる。従って、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン分子由来の1以上のCDRおよびヒト由来のフレームワーク領域を含む。抗体のヒト化は、当該分野で周知であり、Winterおよび共同研究者らの方法(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))に従い、げっ歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって、すなわち、CDR移植(EP239,400;PCT公開番号WO91/09967;および米国特許第4,816,567号;同第6,331,415号;同第5,225,539号;同第5,530,101号;同第5,585,089号;同第6,548,640号(これらの内容は、それらの全体が本明細書中で参考として援用される))によって、本質的に行われ得る。このようなヒト化キメラ抗体において、実質的にインタクトでないヒト可変ドメインは、非ヒト種由来の対応配列によって置換される。実際のところ、ヒト化抗体は、代表的には、いくつかのCDR残基および潜在的にいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似の位置からの残基によって置換されているヒト抗体である。抗CD19抗体のヒト化もまた、ベニアリングまたは表面再処理(EP592,106;EP519,596;Padlan,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489−498;Studnicka et al.,Protein Engineering,7(6):805−814(1994);およびRoguska et al.,PNAS,91:969−973(1994))またはチェインシャフリング(米国特許第5,565,332)によって達成され得る。これらの内容は、それらの全体が本明細書中で参考として援用される。
ヒト化抗体を作製する際に使用される軽鎖と重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるものである。いわゆる「最良適合」方法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。そして、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列がヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として許容される(Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987)(これらの内容は、それらの全体が本明細書中で参考として援用される)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、異なるいくつかのヒト化抗CD19抗体のために使用され得る(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)(これらの内容は、それらの全体が本明細書中で参考として援用される)。
抗CD19抗体は、CD19に対して高いアフィニティーおよび他の好ましい生物学的特性を保持するようにヒト化され得る。本発明の1つの態様によれば、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の3次元モデルを使用した親配列および様々な概念的なヒト化生成物の解析のプロセスによって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の可能性のある3次元高次構造を図示および表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示を観察することによって、候補免疫グロブリン配列が機能する際の残基の可能性なる役割を解析することができ、すなわち、候補免疫グロブリンがCD19に結合する能力に影響を与える残基の解析が可能になる。このようにして、FR残基は、レシピエントおよび移入配列から選択され得、そして組み合わされ得ることにより、CD19に対するアフィニティーが高いなどの所望の抗体特性が達成される。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を与える際、直接かつほぼ実質的に関与する。
「ヒト化」抗体は、もとの抗体と類似の抗原特異性、すなわち、本発明においては、ヒトCD19抗原に結合する能力を保持する。しかしながら、特定のヒト化方法を使用する場合、ヒトCD19抗原に対する抗体のアフィニティーおよび/または結合の特異性は、Wu et al.,J.Mol.Biol.,294:151(1999)(これらの内容はそれらの全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されているような「指向進化」方法を使用して増大され得る。
5.1.7.ヒト抗体
抗体をヒトのインビボにおいて使用することにむけて、ヒト抗体を使用することが好ましい場合がある。完全なヒト抗体は、ヒト被験体の治療用の処置に特に望ましい。ヒト抗体は、当該分野で公知の種々の方法によって作製され得る。その方法としては、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用した、上記のファージディスプレイ法(これらの技術の改良法を含む)が挙げられる。また、米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号;およびPCT公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735およびWO91/10741(これらの各々はそれらの全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。ヒト抗体はまた、重鎖および軽鎖が、ヒトDNAの1以上の起源に由来するヌクレオチド配列によってコードされる抗体であり得る。
ヒト抗CD19抗体はまた、機能性の内在性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して作製され得る。例えば、ヒト重鎖免疫グロブリン遺伝子とヒト軽鎖免疫グロブリン遺伝子との複合体は、無作為に、または相同組換えによってマウス胚性幹細胞に導入され得る。あるいは、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域および多様性領域が、マウス胚性幹細胞に導入され得る。マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子とマウス軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入によって、別々に、または同時に機能性を喪失し得る。例えば、キメラマウスおよび生殖系列変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合の欠失によって、内在性の抗体産生が完全に阻害されることが報告されている。改変胚性幹細胞を殖やし、胚盤胞に微量注入することによりキメラマウスが作製される。次に、このキメラマウスを、ヒト抗体を発現するホモ接合の子孫を得るために交配する。そのトランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全部または一部を用いて、通常の様式で免疫する。その免疫されたトランスジェニックマウスから従来のハイブリドーマ技術を使用してヒトCD19抗原に対する抗CD19抗体を得ることができる。トランスジェニックマウスに含まれるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再構成され、続いてクラススイッチおよび体細胞変異を起こす。このようにして、このような技術を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体(例えば、IgG1(ガンマ1)およびIgG3が挙げられるがこれらに限定されない)を作製することができる。ヒト抗体を作製するための上記技術の概説については、Lonberg and Huszar(Int.Rev.Immunol.,13:65−93(1995))を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製するための上記技術ならびにそのような抗体を作製するためのプロトコールの詳細な考察については、例えば、PCT公開番号WO98/24893、WO96/34096およびWO96/33735;ならびに米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318;および同第5,939,598号(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。さらに、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)およびGenpharm(San Jose,CA)などの会社は、上記と類似の技術を使用して、選択された抗原に対するヒト抗体を提供することができる。抗原チャレンジにおいてヒト抗体を産生する生殖系列変異マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの導入についての特別な考察については、例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993);およびDuchosal et al.,Nature,355:258(1992)を参照のこと。
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991);Vaughan et al.,Nature Biotech,14:309(1996))からも得ることができる。ファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,Nature,348:552−553(1990))を使用して、免疫されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロにおいてヒト抗体および抗体フラグメントを生成することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなどの繊維状バクテリオファージの主要なまたは少数のコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングし、そして機能的抗体フラグメントとしてファージ粒子の表面上に提示させる。この繊維状粒子が、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能特性に基づいた選択を行うことにより、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択される。従って、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式において行われ得る;それらの概説については、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology,3:564−571(1993)を参照のこと。V−遺伝子セグメントのいくつかの供給源は、ファージディスプレイ用に使用され得る。Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)は、免疫されていないマウスの脾臓由来のV遺伝子の小さなランダムコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。免疫されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーが、構築され得、そして抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体は、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)またはGriffith et al.,EMBO J.,12:725−734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離され得る。また、米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。
ヒト抗体はまた、インビトロで活性化されたB細胞によっても作製され得る(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。ヒト抗体はまた、ハイブリドーマ技術(例えば、Roder et al.(Methods Enzymol.,121:140−167(1986))に記載されている技術が挙げられるがこれらに限定されない)を使用してインビトロで作製され得る。
5.1.8.変更された抗体/変異抗体
本発明の組成物および方法の抗CD19抗体は、変異抗体であり得る。本明細書中で使用されるとき、「抗体変異体」または「変更された抗体」とは、抗CD19抗体のアミノ酸残基の1以上が改変されている、抗CD19抗体のアミノ酸配列改変体のことをいう。抗CD19抗体のアミノ酸配列に対する改変は、抗原に対する抗体のアフィニティーまたはアビディティーを改善するための配列の改変を含み、そして/またはエフェクター機能を改善するための抗体のFc部分に対する改変を含む。これらの改変は、公知の任意の抗CD19抗体または本明細書中に記載されるように同定された抗CD19抗体に対してなされ得る。このような変更された抗体は、公知の抗CD19抗体と100%未満の配列同一性または類似性を必ず有する。好ましい実施形態において、変更された抗体は、抗CD19抗体の重鎖または軽鎖のいずれかの可変ドメインのアミノ酸配列と、少なくとも25%、35%、45%、55%、65%または75%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態において、変更された抗体は、抗CD19抗体の重鎖CDR1、CDR2またはCDR3のアミノ酸配列と少なくとも25%、35%、45%、55%、65%または75%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有し、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態において、変更された抗体は、ヒトCD19結合能力を維持している。特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、HB12aの重鎖と対応する配列番号2(図5A)のアミノ酸配列と約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上同一である重鎖を含む。特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、HB12bの重鎖に対応する配列番号4(図5B)のアミノ酸配列と約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上同一である重鎖を含む。特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、HB12aの軽鎖に対応する配列番号16(図6A)のアミノ酸配列と約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上同一である軽鎖を含む。特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、HB12bの軽鎖に対応する配列番号18(図6B)のアミノ酸配列と約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上同一である軽鎖を含む。好ましい実施形態において、変更された抗体は、抗CD19抗体の軽鎖CDR1、CDR2またはCDR3のアミノ酸配列と少なくとも25%、35%、45%、55%、65%または75%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有し、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有する。HB12a抗CD19抗体およびHB12b抗CD19抗体を産生するハイブリドーマは、ATCC寄託番号PTA−6580およびPTA−6581として寄託されている。
この配列に対する同一性または類似性は、抗CD19抗体残基と同一(すなわち、同じ残基)または類似(すなわち、通常の側鎖特性に基づいた同じ群からのアミノ酸残基、以下を参照のこと)である、候補配列内のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書中で定義される。これは、配列をアラインメントし、そしてギャップを挿入したあとに行われ、必要であれば、パーセント配列同一性が最大となるように行われる。可変ドメインの外側の抗体配列への、N末端、C末端または内部の伸長、欠失または挿入は、配列同一性または類似性に影響を与えないと解釈されるだろう。
「%同一性」は、当該分野で公知であるように、配列を比較することによって決定される2つのポリヌクレオチド間または2つのポリペプチド間の関係性の基準である。一般に、比較される2つの配列は、それらの配列の間に最大の相関が得られるようにアラインメントされる。この2つの配列のアラインメントを調べ、2つの配列間でアミノ酸またはヌクレオチドが正確に一致する位置の数を決定し、アラインメントの全長で割り、そして100を掛けることによって、%同一性の数値が得られる。この%同一性の数値は、比較される配列の全長に亘って決定され得、これは、同じ長さか、または非常に似ている長さの配列に特に適しており、そしてそれらの配列が、高い相同性を有する場合に特に適している。あるいは、この%同一性の数値は、上記よりも短い規定された長さに亘って決定され得、これは、等しくない長さの配列により適しているか、またはそれらの配列が低いレベルの相同性を有する場合により適している。
例えば、配列は、Unix(登録商標)下のソフトウェアclustalwでアラインメントされ得る。このソフトウェアは、「.aln」拡張子を有するファイルを生成し、このファイルは、.alnファイルを開くBioeditプログラム(Hall,T.A.1999,BioEdit:a user−friendly biological sequence alignment editor and analysis program for Windows(登録商標) 95/98/NT. Nucl.Acids.Symp Ser.,41:95−98)にインポートされ得る。Bioeditウィンドウでは、個別の配列(一度の2つ)を選択することができ、それらをアラインメントすることができる。この方法により、配列全体の比較が可能になる。
2以上の配列の同一性を比較するための方法は、当該分野で周知である。例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package,バージョン9.1(Devereux J.et al.,Nucleic Acids Res,12:387−395,1984、Genetics Computer Group,Madison,WI,USAから入手可能)におけるプログラムが利用可能である。2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。例えば、プログラムBESTFITおよびGAPを使用して、2つのポリヌクレオチド間の%同一性および2つのポリペプチド配列間の%同一性を決定してもよい。BESTFITは、SmithおよびWaterman(Advances in Applied Mathematics,2:482−489,1981)の「局所ホモロジー」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性が最良の単一領域を探し出す。BESTFITは、長さの異なる2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列を比較するのにより適しており、このプログラムは、短いほうの配列が長いほうの配列の一部であることを仮定している。相対的に、GAPは、NeddlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.,48:443−354,1970)のアルゴリズムに従って2つの配列をアラインメントして、「最大の類似性」を見出す。GAPは、ほぼ同じ長さの配列を比較するのにより適しており、アラインメントは、その全長に亘って予想される。好ましくは、各プログラムにおいて使用されるパラメータ「ギャップウェイト(Gap Weight)」および「レングスウェイト(Length Weight)」は、ポリヌクレオチドについてそれぞれ50および3であり、ポリペプチドについてそれぞれ12および4である。好ましくは、%同一性および類似性は、比較される2つの配列が最適にアラインメントされているときに決定される。
配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムはまた、当該分野で公知であり、例えば、BLASTファミリーのプログラム(Karlin & Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci USA,87:2264−2268,Karlin & Altschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:5873−5877で改変,National Center for Biotechnology Information(NCB),Bethesda,MD,USAから入手可能であり、NCBIのホームページ(www.ncbi.nlm.nih.gov)を介して利用可能である)である。これらのプログラムは、2つの配列を比較するために利用される数学的アルゴリズムの好ましい、非限定的な例を例示するこのようなアルゴリズムは、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行うことにより、本発明の抗CD19抗体の全部または一部をコードする核酸分子に相同なヌクレオチド配列が得られる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行うことにより、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列が得られる。比較の目的でギャップが挿入されたアラインメントを得るために、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記載されているようなGapped BLASTを利用することができる。あるいは、PSI−Blastを使用して、分子間の遠い関係性を検出する反復検索を行うことができる(同上)。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI−Blastプログラムを利用するとき、それぞれのプログラムのデフォルトのパラメータ(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller,1988,CABIOS 4:11−17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バーション2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためのALIGNプログラムを利用するとき、PAM120重み残基表(weight residue table)、ギャップ長ペネルティ=12およびギャップペナルティ=4を使用することができる。
配列間の同一性および/または類似性を決定するための、当該分野で公知であるプログラムの別の非限定的な例は、FASTA(Pearson W.R.and Lipman D.J.,Proc.Nat.Acad.Sci USA,85:2444−2448,1988,Wisconsin Sequence Analysis Packageの一部として入手可能)である。好ましくは、BLOSUM62アミノ酸置換行列(Henikoff S.and Henikoff J.G.,Proc.Nat.Acad.Sci USA,89:10915−10919,1992)は、ヌクレオチド配列が比較される前にまずアミノ酸配列に翻訳される場合を含む、ポリペプチド配列比較に使用される。
アミノ酸配列間の同一性および/または類似性を決定するための当該分野で公知であるプログラムのなおも別の非限定的な例は、SeqWebソフトウェア(GCG Wisconsin Packageに対するウェブベースのインターフェース:Gapプログラム)であり、これは、デフォルトのアルゴリズムおよびプログラムのパラメータ設定:blosum62、ギャップウェイト8、レングスウェイト2で利用される。
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを挿入するかまたは挿入しないで、上記の技術と類似の技術を使用して決定され得る。同一性パーセントを計算する際、代表的には、正確な一致を数える。
好ましくは、プログラムBESTFITは、本発明のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に対する、クエリーのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の%同一性を決定するために使用され、クエリー配列および参照配列は、最適にアラインメントされ、プログラムのパラメータは、デフォルトの値に設定される。
変更された抗体を作製するために、1以上のアミノ酸変更(例えば、置換)が、種に依存する抗体の超可変領域の1以上に導入される。あるいは、またはさらに、フレームワーク領域残基の1以上の変更(例えば、置換)が、抗CD19抗体に導入され得る。これらの結果、第2の哺乳動物種由来の抗原に対する抗体変異体の結合アフィニティーが改善される。改変するフレームワーク領域残基の例としては、直接抗原と非共有結合的に結合する残基(Amit et al.,Science 233:747−753(1986));CDRの高次構造と相互作用する/影響する残基(Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987));および/またはVL−VH界面に関与する残基(EP239400B1)が挙げられる。特定の実施形態において、このようなフレームワーク領域残基の1以上の改変により、第2の哺乳動物種由来の抗原に対する抗体の結合アフィニティーが改善される。例えば、約1〜約5個のフレームワーク残基が、本発明のこの実施形態において変更され得る。超可変領域残基のいずれもが改変されていない場合でも、時折、上記のフレームワークの変更が、前臨床試験における使用に適した抗体変異体を得るのに十分であり得る。しかしながら、通常、変更された抗体は、さらなる超可変領域の変更を含む。
変更される超可変領域残基は、ランダムに変更され得るが、その変更は、特に、第2の哺乳動物種由来の抗原に対する抗CD19抗体の最初の結合アフィニティーが、ランダムに作製された、変更された抗体を容易にスクリーニングし得る程度である。
そのような変更された抗体を作製するための1つの有用な手順は、「アラニンスキャニング突然変異生成」(Cunningham and Wells,Science,244:1081−1085(1989))と呼ばれる。ここで、超可変領域残基の1以上を、アラニン残基またはポリアラニン残基で置換することにより、第2の哺乳動物種由来の抗原とのアミノ酸の相互作用が影響を受ける。次いで、置換に対する機能的感度を示す超可変領域残基が、置換の部位において、またはその部位に対して、さらなる変異または他の変異を導入することによってさらに洗練される。従って、アミノ酸配列の改変を導入するための部位が事前に決定している場合、変異の性質自体は、事前に決められている必要はない。この方法で作製されたAla−変異体は、本明細書中で記載されるような生物学的活性についてスクリーニングされる。
このような変更された抗体を作製するための別の手順は、ファージディスプレイ(Hawkins et al.,J.Mol.Biol.,254:889−896(1992)およびLowman et al.,Biochemistry,30(45):10832−10837(1991))を使用したアフィニティー成熟を含む。簡潔には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7部位)を変異させることにより、それぞれの部位においてすべての可能なアミノ酸置換が生成される。このようにして作製された抗体変異体は、各粒子内にまとめられたM13の遺伝子III産物との融合物として繊維状ファージ粒子から一価の様式で提示される。次いで、ファージによって提示された変異体を、本明細書中に開示されるようなその生物学的活性(例えば、結合アフィニティー)についてスクリーニングする。
抗体配列における変異としては、置換、欠失(内部欠失を含む)、付加(融合タンパク質をもたらす付加を含む)、またはアミノ酸配列内の、および/もしくはアミノ酸配列に隣接したアミノ酸残基の保存的置換が挙げられ得るが、この変異は、その変更が機能的に等しい抗CD19抗体をもたらすという点で「静的な」変化を生じる。保存的アミノ酸置換は、関与する残基の、極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいてなされ得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられ;極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられ;正に帯電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられ;そして負に帯電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。さらに、グリシンおよびプロリンは、鎖配向に影響を及ぼし得る残基である。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーが別のクラスと交換されることを伴うことになる。さらに、所望であれば、従来のものではないアミノ酸または化学的なアミノ酸アナログが、抗体配列への置換または付加として導入され得る。従来のものではないアミノ酸としては、通常のアミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、γ−Abu、ε−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロ−アミノ酸、デザイナー(designer)アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸および通常のアミノ酸アナログ)が挙げられるが、これらに限定されない。
別の実施形態において、改変のために選択された部位は、ファージディスプレイ(上記を参照のこと)を使用してアフィニティー成熟される。
抗体配列内にアミノ酸置換を行うため、またはさらなる操作を容易にする制限酵素認識部位を創出/除去するために、当該分野で公知の突然変異生成のための任意の技術を使用して、DNA配列内の個々のヌクレオチドを改変することができる。このような技術としては、化学的突然変異生成、インビトロ部位特異的突然変異生成(Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci USA,82:488(1985);Hutchinson,C.et al,J.Biol.Chem.,253:6551(1978))、オリゴヌクレオチド指向性突然変異生成(Smith,Ann.Rev.Genet,19:423−463(1985);Hill et al.,Methods Enzymol,155:558−568(1987))、PCRベースのオーバーラップ伸長(Ho et al.,Gene,77:51−59(1989))、PCRベースのメガプライマー突然変異生成(Sarkar et al.,Biotechniques,8:404−407(1990))などが挙げられるがこれらに限定されない。改変は、二本鎖ジデオキシDNA配列決定により確かめることができる。
本発明の特定の実施形態において、抗CD19抗体は、融合タンパク質;すなわち、異種のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに融合された抗体またはフラグメントを生成するために改変され得る。特定の実施形態において、抗CD19抗体の一部に融合されたタンパク質は、ADEPTの酵素成分である。抗CD19抗体との融合タンパク質として操作され得る他のタンパク質またはポリペプチドの例としては、トキシン、例えば、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNase I、ブドウ球菌性エンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン(gelonin)、ジフテリン(diphtherin)トキシン、シュードモナス外毒素およびシュードモナスエンドトキシンが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、Pastan et al.,Cell,47:641(1986)およびGoldenberg et al.,Cancer Journal for Clinicians,44:43(1994)を参照のこと。酵素的に活性なトキシンおよび使用され得るそれらのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの結合しない活性なフラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン(sarcin)、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、ニガウリインヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、sapaonaria officinalisインヒビター、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテシン(tricothecene)が挙げられる。例えば、1993年10月28日公開のWO93/21232を参照のこと。
さらなる融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エキソンシャフリングおよび/またはコドンシャフリング(集合的に「DNAシャフリング」といわれる)の技術を介して生成され得る。DNAシャフリングを使用して、抗体またはそれらのフラグメントの活性が変化され得る(例えば、高いアフィニティーおよび低い解離速度を有する抗体またはそのフラグメント)。一般に、米国特許第5,605,793号;同第5,811,238号;同第5,830,721号;同第5,834,252号;および同第5,837,458号ならびにPatten et al.,1997,Curr.Opinion Biotechnol,8:724−33;Harayama,1998,Trends Biotechnol,16(2):76−82;Hansson et al.,1999,J.Mol.Biol.,287:265−76;およびLorenzo and Blasco,1998,Biotechniques,24(2):308−313(これらの特許および出版物の各々は、その全体が本明細書によって参考として援用される)を参照のこと。上記抗体は、さらに、米国公開20030118592、米国公開200330133939およびPCT公開WO02/056910(これらはすべてLedbetter et al.に対するものであり、その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されているような結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質であり得る。
本発明の特定の実施形態において、抗CD19抗体は、等電点(pI)を変更するために改変され得る。すべてのポリペプチドと同様に抗体はpIを有し、pIとは、一般に、ポリペプチドが実効電荷を保持しないpHと定義される。タンパク質溶解度は、代表的には、その溶液のpHがそのタンパク質の等電点(pI)に等しいときに最も低いことは当該分野で公知である。本明細書中で使用されるとき、pI値は、支配的な電荷型のpIと定義される。タンパク質のpIは、種々の方法によって測定され得る。その方法としては、等電点電気泳動および様々なコンピュータアルゴリズム(例えば、Bjellqvist et al.,1993,Electrophoresis 14:1023を参照のこと)が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、抗体のFabドメインの熱的融解温度(Tm)は、抗体の熱的安定性の良好な指標であり得、さらに、有効期間の指標を提供し得る。低いTmは、凝集性が高いこと/安定性が低いことを示唆し、高いTmは、凝集性が低いこと/安定性が高いことを示唆する。従って、特定の実施形態において、高いTmを有する抗体が好ましい。タンパク質ドメイン(例えば、Fabドメイン)のTmは、当該分野で公知の標準的な任意の方法を使用して、例えば、示差走査熱量測定(例えば、Vermeer et al.,2000,Biophys.J.78:394−404;Vermeer et al.,2000,Biophys.J.79:2150−2154を参照のこと)によって測定され得る。
従って、本発明のさらなる非排他的な実施形態としては、特定の等電点(pI)または融解温度(Tm)などの特定の好ましい生化学的な特性を有する本発明の改変抗体が挙げられる。
より詳細には、1つの実施形態において、本発明の改変抗体は、5.5〜9.5の範囲のpIを有する。なおも別の特定の実施形態において、本発明の改変抗体は、約5.5〜約6.0または約6.0〜約6.5または約6.5〜約7.0または約7.0〜約7.5または約7.5〜約8.0または約8.0〜約8.5または約8.5〜約9.0または約9.0〜約9.5の範囲のpIを有する。他の特定の実施形態において、本発明の改変抗体は、5.5〜6.0または6.0〜6.5または6.5〜7.0または7.0〜7.5または7.5〜8.0または8.0〜8.5または8.5〜9.0または9.0〜9.5の範囲のpIを有する。なおもより詳細には、本発明の改変抗体は、少なくとも5.5または少なくとも6.0または少なくとも6.3または少なくとも6.5または少なくとも6.7または少なくとも6.9または少なくとも7.1または少なくとも7.3または少なくとも7.5または少なくとも7.7または少なくとも7.9または少なくとも8.1または少なくとも8.3または少なくとも8.5または少なくとも8.7または少なくとも8.9または少なくとも9.1または少なくとも9.3または少なくとも9.5のpIを有する。他の特定の実施形態において、本発明の改変抗体は、少なくとも約5.5または少なくとも約6.0または少なくとも約6.3または少なくとも約6.5または少なくとも約6.7または少なくとも約6.9または少なくとも約7.1または少なくとも約7.3または少なくとも約7.5または少なくとも約7.7または少なくとも約7.9または少なくとも約8.1または少なくとも約8.3または少なくとも約8.5または少なくとも約8.7または少なくとも約8.9または少なくとも約9.1または少なくとも約9.3または少なくとも約9.5のpIを有する。
抗体内のイオン化できる残基の数および位置を変化させて、pIを調節することによって溶解度を最適化することができる。例えば、適切なアミノ酸置換を行うこと(例えば、リシンなどの帯電したアミノ酸を、アラニンなどの無電荷の残基に置換すること)によって、ポリペプチドのpIを操作することができる。任意の特定の理論に拘束するつもりはないが、前記抗体のpIの変化をもたらす抗体のアミノ酸置換は、その抗体の溶解性および/または安定性を改善し得る。いずれのアミノ酸置換が、所望のpIを達成するために特定の抗体について最も適しているかは、当業者は理解するであろう。1つの実施形態において、本発明の抗体において置換がなされることにより、pIが変化する。FcγR(前出に記載)に対する結合性の変化をもたらすFc領域の置換によってもまた、pIを変化させ得ることが特に企図される。別の実施形態において、Fc領域の置換は、FcγR結合性の所望の変化とpIの任意の所望の変化の両方に影響を与えるように特に選択される。
1つの実施形態において、本発明の改変抗体は、65℃〜120℃の範囲のTmを有する。特定の実施形態において、本発明の改変抗体は、約75℃〜約120℃または約75℃〜約85℃または約85℃〜約95℃または約95℃〜約105℃または約105℃〜約115℃または約115℃〜約120℃の範囲のTmを有する。他の特定の実施形態において、本発明の改変抗体は、75℃〜120℃または75℃〜85℃または85℃〜95℃または95℃〜105℃または105℃〜115℃または115℃〜120℃の範囲のTmを有する。なおも他の特定の実施形態において、本発明の改変抗体は、少なくとも約65℃または少なくとも約70℃または少なくとも約75℃または少なくとも約80℃または少なくとも約85℃または少なくとも約90℃または少なくとも約95℃または少なくとも約100℃または少なくとも約105℃または少なくとも約110℃または少なくとも約115℃または少なくとも約120℃のTmを有する。なおも他の特定の実施形態において、本発明の改変抗体は、少なくとも65℃または少なくとも70℃または少なくとも75℃または少なくとも80℃または少なくとも85℃または少なくとも90℃または少なくとも95℃または少なくとも100℃または少なくとも105℃または少なくとも110℃または少なくとも115℃または少なくとも120℃のTmを有する。
5.1.9.ドメイン抗体
本発明の組成物および方法の抗CD19抗体は、ドメイン抗体、例えば、ヒト抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域に対応する抗体の小さい機能的結合単位を含む抗体であり得る。ドメイン抗体の例としては、Domantis Limited(Cambridge,UK)およびDomantis Inc.(Cambridge,MA,USA)から入手可能な、治療用の標的に特異的なドメイン抗体(例えば、WO04/058821;WO04/003019;米国特許第6,291,158号;同第6,582,915号;同第6,696,245号;および同第6,593,081号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。ドメイン抗体の市販のライブラリーは、抗CD19ドメイン抗体を同定するために使用され得る。特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、CD19機能的結合単位およびFcガンマレセプター機能的結合単位を含む。
5.1.10.ダイアボディ
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントのことをいい、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。短すぎて、同じ鎖上の2つのドメイン間で対をなすことができないリンカーを使用することによって、それらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対をなさざるえず、2つの抗原結合部位が創り出される。ダイアボディについては、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:6444−6448(1993)に十分に記載されている。
5.1.11.ワクチボディ
本発明の特定の実施形態において、抗CD19抗体は、ワクチボディである。ワクチボディは、二量体のポリペプチドである。ワクチボディの各モノマーは、ヒンジ領域およびCγ3ドメインを介して第2のscFvに連結される、APC上の表面分子に対する特異性を有するscFvからなる。本発明の他の実施形態において、scFvの抗CD19抗体フラグメントの1つとして含むワクチボディは、破壊されるB細胞とADCCを媒介するエフェクター細胞とを並置するために使用され得る。例えば、Bogen et al.,米国特許出願番号20040253238を参照のこと。
5.1.12.直鎖状抗体
本発明の特定の実施形態において、抗CD19抗体は、直鎖状抗体である。直鎖状抗体は、1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。Zapata et al.,Protein Eng.,8(10):1057−1062(1995)を参照のこと。
5.1.13.親抗体
本発明の特定の実施形態において、抗CD19抗体は、親抗体である。「親抗体」は、本明細書中で開示されているような変更された抗体/変異抗体と比較される、その1以上の超可変領域内、またはそれに隣接している1以上のアミノ酸残基を欠いているか、不足しているアミノ酸配列を含む抗体である。従って、親抗体は、本明細書中で開示されるような抗体変異体の対応する超可変領域よりも短い超可変領域を有する。親ポリペプチドは、ネイティブな配列(すなわち、天然に存在する)抗体(天然に存在する対立遺伝子変異体を含む)または天然に存在する配列の既存のアミノ酸配列改変(例えば、他の挿入、欠失および/または置換)を有する抗体を含み得る。好ましくは親抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
5.1.14.抗体フラグメント
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部を含み、一般に抗原結合領域またはその可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。
慣習的に、これらのフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク分解性の消化によって得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods,24:107−117(1992)およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、これらのフラグメントは、現在、組換え宿主細胞によって直接産生され得る。例えば、抗体フラグメントは、上で述べた抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’−SHフラグメントは、E.coliから直接回収され得、また化学的に結合されることにより、F(ab’)2フラグメントを形成する(Carter et al.,Bio/Technology,10:163−167(1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体フラグメントを作製するための他の技術は、当業者に明らかである。他の実施形態において、選択抗体は、一本鎖Fvフラグメント(scFv)であり得る。例えば、WO93/16185を参照のこと。特定の実施形態において、抗体は、Fabフラグメントでない。
5.1.15.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーのうちの2種の異なるエピトープに結合し得る。他のこのような抗体は、第1のB細胞マーカーに結合し得、そして第2のB細胞表面マーカーにもさらに結合し得る。あるいは、抗B細胞マーカー結合腕は、細胞の防御メカニズムをB細胞に集中させるために、T細胞レセプター分子(例えば、CD2またはCD3)などの白血球上のトリガー分子またはIgG(FcγR)に対するFcレセプターに結合する腕と組み合わされ得る。二重特異性抗体はまた、B細胞に細胞傷害性因子を局在化させるために使用され得る。これらの抗体は、B細胞マーカーに結合する腕および細胞傷害性因子(例えば、サポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトラエキセート(methola−exate)または放射性同位体ハプテン)と結合する腕を有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab’):二重特異性抗体)として調製され得る。
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983);Traunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991);Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986);Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992);Hollinger et al.,Proc.Natl Acad.Sci USA,90:6444−6448(1993);Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994);米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;同第5,601,81号;同第95,731,168号;同第4,676,980号;および同第4,676,980号、WO94/04690;WO91/00360;WO92/200373;WO93/17715;WO92/08802;およびEP03089を参照のこと)。
本発明の特定の実施形態において、組成物および方法は、Daniel et al.,Blood,92:4750−4757(1998)に記載されている二重特異性抗体のようなヒトCD19およびT細胞レセプターのCD3イプシロン鎖に対する特異性を有する二重特異性マウス抗体を含まない。好ましい実施形態において、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体が、二重特異性である場合、その抗CD19抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であり、そして、ヒトCD19およびT細胞上のエピトープに対する特異性を有するか、またはヒトエフェクター細胞(例えば、単球/マクロファージおよび/または細胞死に影響を与えるナチュラルキラー細胞)に結合することができる。
5.1.16.エフェクター機能の操作
エフェクター機能に関して、例えば、自己免疫疾患または自己免疫障害を処置する際の抗体の有効性を高めるために、本発明の抗CD19抗体を改変することが望ましいことがある。例えば、システイン残基がFc領域に導入され得ることによって、この領域において鎖間ジスルフィド結合が形成される。このようにして作製されたホモダイマーの抗体は、内部移行能力を改善し得、そして/または補体媒介性細胞殺傷および/もしくは抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を高め得る。Caron et al.,J.Exp Med,176:1191−1195(1992)およびShopes,B.,J.Immunol.,148:2918−2922(1992)を参照のこと。高められた活性を有するホモダイマーの抗体はまた、Wolff et al.,Cancer Research,53.2560−2565(1993)に記載されているようなヘテロ二機能性のクロスリンカーを使用して調製され得る。あるいは、二重のFc領域を有し、それによって補体溶解およびADCC能力が高められ得る抗体が操作され得る。Stevenson et al.,Anti−Cancer Drug Design,3:219−230(1989)を参照のこと。
エフェクター機能を変化させるために抗体のFc領域を操作する他の方法は、当該分野で公知である(例えば、米国特許出願番号20040185045およびPCT公開番号WO2004/016750(両方がKoenig et alに対してものであり、これらには、FcγRIIBに対する結合アフィニティーを、FCγRIIAに対する結合アフィニティーと比較して高くなるようにFc領域を変化させることが説明されている;PCT公開番号WO99/58572(Armour et al.)、WO99/51642(Idusogie et al.)および米国特許第6,395,272号(Deo et al.);(これらの開示は、それらの全体が本明細書中で援用される)も参照のこと)。FcγRIIBに対する結合アフィニティーを低下させるためにFc領域を改変する方法もまた、当該分野で公知である(例えば、米国特許公開番号20010036459およびPCT公開番号WO01/79299(両方ともRavetch et al.)(これらの開示は、その全体が本明細書中で援用される)。野生型Fc領域と比較してFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAに対する結合アフィニティーが高められた改変Fc領域を有する改変抗体がまた、報告されている(例えば、PCT公開番号WO2004/063351(Stavenhagen et al.);この開示の全体が本明細書中で援用される)。
当該分野で公知のインビトロアッセイを使用して、本発明の組成物および方法において使用される抗CD19抗体が、5.3.2.節に記載するようなADCCを媒介することができるか否かを判定することができる。
5.1.17.改変Fc領域
本発明は、改変Fc領域を含むタンパク質の処方物を含む。それは、天然に存在しないFc領域、例えば、1以上の天然に存在しないアミノ酸残基を含むFc領域である。また、本発明の改変Fc領域によって包含されるのは、アミノ酸欠失、付加および/または改変を含むFc領域である。
Fc領域は、本明細書中で使用されるとき、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを含んでいない抗体の定常領域を含むポリペプチドを包含すると理解される。従って、Fcとは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメインならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインならびにこれらのドメインのN末端の柔軟なヒンジのことをいう。IgAおよびIgMについて、Fcは、J鎖を含み得る。IgGについて、Fcは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)ならびにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界が変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226またはP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義される。ここで、その付番は、Kabat et al.(1991,NIH Publication 91−3242,National Technical Information Service,Springfield,VA)におけるようなEU指標に従う。「Kabatにおいて説明されるようなEU指標」とは、Kabat et al.前出で説明されるようなヒトIgG1EU抗体の残基の付番のことをいう。Fcとは、単離されたこの領域または抗体、抗体フラグメントもしくはFc融合タンパク質の状態のこの領域のことをいうことがある。Fc改変タンパク質は、抗体、Fc融合物、またはFc領域を含む任意のタンパク質もしくはタンパク質ドメインであり得る。特に好ましいのは、Fcの天然に存在しない改変体である改変Fc領域を含むタンパク質である。注意:多くのFc位置(Kabat270、272、312、315、356および358が挙げられるがこれらに限定されない)で多型が観察されているため、示される配列と従来技術における配列との間にわずかな差が存在し得る。
本発明は、対応する分子と比べて、Fcリガンドに対して変更された結合特性を有するFc改変タンパク質(例えば、Fcレセプター、C1q)(例えば、野生型Fc領域を有する以外は同じアミノ酸配列を有するタンパク質)を包含する。結合特性の例としては、結合特異性、平衡解離定数(KD)、解離速度および会合速度(それぞれkoffおよびkon)、結合アフィニティーおよび/またはアビディティーが挙げられるがこれらに限定されない。低いKDを有する結合分子(例えば、抗体などのFc改変タンパク質)が、高いKDを有する結合分子よりも好ましいことが一般に理解されている。しかしながら、いくつかの場合において、konまたはkoffの値は、KDの値よりも関連性があり得る。当業者は、どの速度論パラメータが所与の抗体用途に対して最も重要であるかを判定することができる。
Fcドメインのリガンドに対するそのドメインのアフィニティーおよび結合特性は、Fc−FcγR相互作用、すなわち、FcγRへのFc領域の特定の結合を判定するための、当該分野で公知の種々のインビトロアッセイ法(生化学または免疫学ベースのアッセイ)によって測定され得る。そのアッセイ法としては、平衡状態の方法(例えば、酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))または速度論(例えば、BIACORE(登録商標)解析)および他の方法(例えば、間接的結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過))が挙げられるがこれらに限定されない。これらの方法および他の方法は、調べられる成分の1以上に対する標識を利用し得、そして/または種々の検出方法を使用し得る。それらとしては、色素生産性、蛍光、発光またはアイソトープ標識が挙げられるがこれらに限定されない。結合アフィニティーおよび速度論についての詳細な説明は、Paul,W.E.,ed.,Fundamental Immunology,4th Ed.,Lippincott−Raven,Philadelphia(1999)(抗体−免疫原相互作用に注目している)に見られ得る。
例えば、1以上の正の制御因子(例えば、FcγRIIIA)に結合するFcを増強するが、変化させないままでいるか、または負の制御因子FcγRIIBに結合するFcを低減しさえする改変は、ADCC活性を高めるためにより好ましいだろう。あるいは、1以上の正の制御因子への結合を低減する改変および/またはFcγRIIBへの結合を増大させる改変は、ADCC活性を低下させるためには好ましいだろう。従って、結合アフィニティーの比(例えば、平衡解離定数(KD))は、Fc改変体のADCC活性が増大しているか、または低下しているかを示唆し得る。例えば、FcγRIIIA/FcγRIIB平衡解離定数(KD)の比の減少は、改善されたADCC活性と相関するが、その比の増加は、ADCC活性の減少と相関する。さらに、C1qに対する結合性を増大する改変は、CDC活性を増大するために好ましいだろうし、C1qに対する結合性を減少させる改変は、CDC活性を減少または排除するために好ましいだろう。
1つの実施形態において、本発明のFc改変体は、対応する分子と比べて高いアフィニティーでFcγRIIIAと結合する。別の実施形態において、本発明のFc改変体は、高いアフィニティーでFcγRIIIAと結合し、対応する分子と比べて変わらない結合アフィニティーでFcγRIIBと結合する。さらに別の実施形態において、本発明のFc改変体は、高いアフィニティーでFcγRIIIAと結合し、対応する分子と比べて低いアフィニティーでFcγRIIBと結合する。なおも別の実施形態において、本発明のFc改変体は、対応する分子と比べて低下した平衡解離定数(KD)FcγRIIIA/FcγRIIBの比を有する。
1つの実施形態において、Fc改変タンパク質は、対応する分子と比べて1以上のFcリガンドに対して高い結合性を有する。別の実施形態において、Fc改変タンパク質は、Fcリガンドに対して、対応する分子のアフィニティーよりも、少なくとも2倍または少なくとも3倍または少なくとも5倍または少なくとも7倍または少なくとも(a least)10倍または少なくとも20倍または少なくとも30倍または少なくとも40倍または少なくとも50倍または少なくとも60倍または少なくとも70倍または少なくとも80倍または少なくとも90倍または少なくとも100倍または少なくとも200倍高いアフィニティーを有する。特定の実施形態において、Fc改変タンパク質は、Fcレセプターに対する高い結合性を有する。別の特定の実施形態において、Fc改変タンパク質は、FcレセプターFcγRIIIAに対する高い結合性を有する。さらに別の特定の実施形態において、Fc改変タンパク質は、FcレセプターFcRnに対する高い結合性を有する。なおも別の特定の実施形態において、Fc改変タンパク質は、対応する分子と比べてC1qに対する高い結合性を有する。
本発明の1つの実施形態において、抗体は、10−5M未満または10−6M未満または10−7M未満または10−8M未満または10−9M未満または10−10M未満または10−11M未満または10−12M未満または10−13M未満の解離定数またはKd(koff/kon)でCD19およびその抗原性フラグメントと特異的に結合する。
別の実施形態において、本発明の抗体は、1×10−3s−1未満または3×10−3s−1未満のkoffでCD19およびその抗原性フラグメントと結合する。他の実施形態において、上記抗体は、10−3s−1未満、5×10−3s−1未満、10−4s−1未満、5×10−4s−1未満、10−5s−1未満、5×10−5s−1未満、10−6s−1未満、5×10−6s−1未満、10−7s−1未満、5×10−7s−1未満、10−8s−1,未満の5×10−8s−1未満、10−9s−1未満、5×10−9s−1または未満の10−10s−1のkoffでCD19および/またはその抗原性フラグメントと結合する。
別の実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも105M−1s−1、少なくとも5×105M−1s−1、少なくとも106M−1s−1、少なくとも5×106M−1s−1、少なくとも107M−1s−1、少なくとも5×107M−1s−1または少なくとも108M−1s−1または少なくとも109M−1s−1の会合速度定数またはkon速度でCD19および/またはその抗原性フラグメントと結合する。
別の実施形態において、本発明のFc改変体は、対応する分子と比べて、約2倍〜約10倍または約5倍〜約50倍または約25倍〜約250倍または約100倍〜約500倍または約250倍〜約1000倍減少した平衡解離定数(KD)を有する。別の実施形態において、本発明のFc改変体は、対応する分子と比べて、2倍〜10倍または5倍〜50倍または25倍〜250倍または100倍〜500倍または250倍〜1000倍減少した平衡解離定数(KD)を有する。特定の実施形態において、前記Fc改変体は、対応する分子と比べて、FcγRIIIAに対して少なくとも2倍または少なくとも3倍または少なくとも5倍または少なくとも7倍または少なくとも10倍または少なくとも20倍または少なくとも30倍または少なくとも40倍または少なくとも50倍または少なくとも60倍または少なくとも70倍または少なくとも80倍または少なくとも90倍または少なくとも100倍または少なくとも200倍または少なくとも400倍または少なくとも600倍減少した平衡解離定数(KD)を有する。
Fc領域を含むタンパク質の血清半減期は、FcRnに対するFc領域の結合アフィニティーを増大させることによって延長され得る。1つの実施形態において、Fc改変体タンパク質は、対応する分子と比べて血清半減期が長い。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcR)に結合している分泌されたIgが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞と、抗原を有する標的細胞とを特異的に結合することを可能にし、続いて細胞毒によって標的細胞を殺滅することを可能にする、細胞傷害性の形態のことをいう。標的細胞の表面に対する特定の高アフィニティーIgG抗体は、細胞傷害性細胞を「武装」しており、このような殺滅に絶対的に必要である。標的細胞の溶解は、細胞外であり、直接的な細胞と細胞との接触を必要とし、そして補体と関連しない。抗体に加えて、抗原を有する標的細胞に特異的に結合する能力を有する、Fc領域を含む他のタンパク質、特にFc融合タンパク質が、細胞媒介性細胞傷害に影響を及ぼすことができることが企図される。簡単にするために、Fc融合タンパク質の活性から生じる細胞媒介性細胞傷害は、本明細書中でADCC活性とも呼ばれる。
ADCCによって標的細胞の溶解を媒介する、特定の任意のFc改変タンパク質の能力がアッセイされ得る。ADCC活性を評価するために、目的のFc改変タンパク質を、標的細胞の細胞溶解を生じる抗原抗体複合体によって活性化され得る免疫エフェクター細胞と組み合わせて標的細胞に加える。一般に、細胞溶解は、溶解された細胞からの標識(例えば、放射性の基質、蛍光色素または天然の細胞内タンパク質)の放出によって検出される。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。インビトロADCCアッセイの特定の例は、Wisecarver et al.,1985,79:277−282;Bruggemann et al.,1987,J Exp Med,166:1351−1361;Wilkinson et al.,2001,J Immunol.Methods,258:183−191;Patel et al.,1995,J Immunol Methods,184:29−38に記載されている。あるいは、またはさらに、目的のFc改変タンパク質のADCC活性は、Clynes et al.,1998,PNAS USA,95:652−656に開示されているようにインビボ、例えば、動物モデルにおいて評価され得る。
1つの実施形態において、Fc改変タンパク質は、対応する分子と比べて高いADCC活性を有する。特定の実施形態において、Fc改変タンパク質は、対応する分子のADCC活性よりも、少なくとも2倍または少なくとも3倍または少なくとも5倍または少なくとも10倍または少なくとも50倍または少なくとも100倍高いADCC活性を有する。別の特定の実施形態において、Fc改変タンパク質は、FcレセプターFcγRIIIAに対する高い結合性を有し、対応する分子に比べて高いADCC活性を有する。他の実施形態において、Fc改変体タンパク質は、対応する分子と比べて高いADCC活性と長い血清半減期の両方を有する。
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」とは、補体の存在下での標的細胞の溶解のことをいう。補体の活性化経路は、補体系の第1成分(C1q)が分子、例えば、同族の抗原と複合体化された抗体に結合することによって開始される。補体の活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoro et al.,1996,J.Immunol.Methods,202:163に記載されているようなCDCアッセイが行われ得る。1つの実施形態において、Fc改変タンパク質は、対応する分子と比べて高いCDC活性を有する。特定の実施形態において、Fc改変タンパク質は、対応する分子のCDC活性よりも、少なくとも2倍または少なくとも3倍または少なくとも5倍または少なくとも10倍または少なくとも50倍または少なくとも100倍高いCDC活性を有する。他の実施形態において、Fc改変タンパク質は、対応する分子と比べて高いCDC活性と長い血清半減期の両方を有する。
1つの実施形態において、本発明は、Fc領域が、Kabatにおいて説明されるようなEU指標によって付番された234、235、236、239、240、241、243、244、245、247、252、254、256、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、326、327、328、329、330、332、333および334からなる群から選択される1以上の位置において天然に存在しないアミノ酸残基を含む処方物を提供する。必要に応じて、Fc領域は、当業者に公知のさらなる位置および/または別の位置で天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821号;同第6,277,375号;同第6,737,056号;PCT特許公開WO01/58957;WO02/06919;WO04/016750;WO04/029207;WO04/035752およびWO05/040217を参照のこと)。
特定の実施形態において、本発明は、Fc改変体タンパク質処方物を提供し、ここで、Fc領域は、Kabatにおいて説明されるようなEU指標によって付番された234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、2341、234V、234F、235A、235D、235R、235W、235P、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235F、236E、239D、239E、239N、239Q、239F、239T、239H、239Y、240I、240A、240T、240M、241W、241L、241Y、241E、241R、243W、243L、243Y、243R、243Q、244H、245A、247V、247G、252Y、254T、256E、262I、262A、262T、262E、263I、263A、263T、263M、264L、264I、264W、264T、264R、264F、264M、264Y、264E、265G、265N、265Q、265Y、265F、265V、265I、265L、265H、265T、266I、266A、266T、266M、267Q、267L、269H、269Y、269F、269R、296E、296Q、296D、296N、296S、296T、296L、296I、296H、269G、297S、297D、297E、298H、298I、298T、298F、299I、299L、299A、299S、299V、299H、299F、299E、313F、325Q、325L、325I、325D、325E、325A、325T、325V、325H、327G、327W、327N、327L、328S、328M、328D、328E、328N、328Q、328F、328I、328V、328T、328H、328A、329F、329H、329Q、330K、330G、330T、330C、330L、330Y、330V、330I、330F、330R、330H、332D、332S、332W、332F、332E、332N、332Q、332T、332H、332Yおよび332Aからなる群から選択される少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸残基を含む。必要に応じて、Fc領域は、当業者に公知のさらなるおよび/または別の天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821号;同第6,277,375号;同第6,737,056号;PCT特許公開WO01/58957;WO02/06919;WO04/016750;WO04/029207;WO04/035752およびWO05/040217を参照のこと)。
別の実施形態において、本発明は、Fc改変タンパク質処方物を提供し、ここで、そのFc領域は、Kabatにおいて説明されるようなEU指標によって付番された239、330および332からなる群から選択される1以上の位置において少なくとも天然に存在しないアミノ酸を含む。特定の実施形態において、本発明は、Fc改変タンパク質処方物を提供し、ここで、そのFc領域は、Kabatにおいて説明されるようなEU指標によって付番された239D、330Lおよび332Eからなる群から選択される少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸を含む。必要に応じて、Fc領域は、Kabatにおいて説明されるようなEU指標によって付番された252、254および256からなる群から選択される、さらなる天然に存在しないアミノ酸を1以上の位置においてさらに含み得る。特定の実施形態において、本発明は、Fc改変タンパク質処方物を提供し、ここで、そのFc領域は、Kabatにおいて説明されるようなEU指標によって付番された239D、330Lおよび332Eからなる群から選択される、少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸を含み、そして1以上の位置における少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸が、Kabatにおいて説明されるようなEU指標によって付番された252Y、254Tおよび256Eからなる群から選択される。
1つの実施形態において、本発明のFc改変体は、Ghetie et al.,1997,Nat Biotech.15:637−40;Duncan et al.,1988,Nature 332:563−564;Lund et al.,1991,J.Immunol.,147:2657−2662;Lund et al.,1992,Mol Immunol.,29:53−59;Alegre et al.,1994,Transplantation 57:1537−1543;Hutchins et al.,1995,Proc Natl.Acad Sci USA,92:11980−11984;Jefferis et al.,1995,Immunol Lett.,44:111−117;Lund et al.,1995,Faseb J,9:115−119;Jefferis et al.,1996,Immunol Lett.,54:101−104;Lund et al.,1996,J Immunol.,157:4963−4969;Armour et al.,1999,Eur J.Immunol.29:2613−2624;Idusogie et al.,2000,J Immunol.,164:4178−4184;Reddy et al.,2000,J Immunol.,164:1925−1933;Xu et al.,2000,Cell Immunol.,200:16−26;Idusogie et al.,2001,J Immunol.,166:2571−2575;Shields et al.,2001,J.Biol.Chem.,276:6591−6604;Jefferis et al.,2002,Immunol Lett,82:57−65;Presta et al.,2002,Biochem Soc Trans.,30:487−490);米国特許第5,624,821号;同第5,885,573号;同第5,677,425号;同第6,165,745号;同第6,277,375号;同第5,869,046号;同第6,121,022号;同第5,624,821号;同第5,648,260号;同第6,528,624号;同第6,194,551号;同第6,737,056号;同第6,821,505号;同第6,277,375号;米国特許公開番号2004/0002587およびPCT公開WO94/29351;WO99/58572;WO00/42072;WO02/060919;WO04/029207;WO04/099249;WO04/063351に開示されているもののような他の公知のFc改変体と組み合わされ得る。また、欠失、付加および/または改変を含むFc領域もまた本発明によって包含される。Fcドメインのなおも他の改変/置換/付加/欠失は、当業者に直ちに明らかになる。
天然に存在しないFc領域を作製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、アミノ酸置換および/または欠失は、突然変異生成方法によって作製され得る。その方法としては、部位特異的突然変異生成(Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:488−492(1985))、PCR突然変異生成(Higuchi,in “PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”,Academic Press,San Diego,pp.177−183(1990))およびカセット突然変異生成(Wells et al.,Gene,34:315−323(1985))が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、部位特異的突然変異生成は、オーバーラップ伸長PCR法(Higuchi,“PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification”,Stockton Press,New York,pp.61−70(1989))によって行われる。あるいは、オーバーラップ伸長PCR(Higuchi,同書)の技術を使用して、任意の所望の変異を標的配列(出発DNA)に導入することができる。例えば、オーバーラップ伸長法における初回のPCRは、外側のプライマー(プライマー1)と内部の突然変異生成プライマー(プライマー3)、および第2の外側のプライマー(プライマー4)と内部のプライマー(プライマー2)を用いて別々に標的配列を増幅する工程を含み、その結果、2種のPCRセグメント(セグメントAおよびB)が得られる。内部の突然変異生成プライマー(プライマー3)は、所望の変異を特定する標的配列に対してミスマッチを含むように設計される。第2回目のPCRにおいて、初回のPCR産物(セグメントAおよびB)を、2種の外側のプライマー(プライマー1および4)を使用してPCRによって増幅する。得られた全長PCRセグメント(セグメントC)を、制限酵素で消化し、得られた制限フラグメントを、適切なベクターにクローニングする。突然変異生成の第1の工程として、出発DNA(例えば、Fc融合タンパク質、抗体または単にFc領域をコードするDNA)を、突然変異生成ベクターに作動可能にクローニングする。所望のアミノ酸置換を反映するようにプライマーを設計する。改変Fc領域を作製するために有用な他の方法は、当該分野で公知である(例えば、米国特許第5,624,821号;同第5,885,573号;同第5,677,425号;同第6,165,745号;同第6,277,375号;同第5,869,046号;同第6,121,022号;同第5,624,821号;同第5,648,260号;同第6,528,624号;同第6,194,551号;同第6,737,056号;同第6,821,505号;同第6,277,375号;米国特許公開番号2004/0002587およびPCT公開WO94/29351;WO99/58572;WO00/42072;WO02/060919;WO04/029207;WO04/099249;WO04/063351を参照のこと)。
いくつかの実施形態において、Fc改変タンパク質は、1以上の操作された糖型(glycoform)、すなわち、Fc領域を含む分子に共有結合した炭水化物組成物を含む。操作された糖型は、種々の目的に有用であり得る。その目的としては、エフェクター機能を増大させることまたは低減させることが挙げられるがこれらに限定されない。操作された糖型は、当業者に公知の任意の方法によって、例えば、操作された発現株または改変発現株を使用することによって、1以上の酵素、例えば、DI N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTIII)とともに同時発現することによって、様々な生物体または様々な生物体由来の細胞株においてFc領域を含む分子を発現することによって、または、Fc領域を含む分子が発現された後に炭水化物を改変することによって、作製され得る。操作された糖型を作製するための方法は、当該分野で公知であり、それらとしては、Umana et al.,1999,Nat.Biotechnol,17:176−180;Davies et al.,20017 Biotechnol Bioeng.,74:288−294;Shields et al.,2002,J.Biol.Chem.,277:26733−26740;Shinkawa et al.,2003,J.Biol.Chem.,278:3466−3473)、米国特許第6,602,684号;米国出願番号10/277,370;米国出願番号10/113,929;PCT WO00/61739A1;PCT WO01/292246A1;PCT WO02/311140A1;PCT WO02/30954A1;PotillegentTM技術(Biowa,Inc.,Princeton,N.J.);GlycoMAbTMグリコシル化操作技術(GLYCART biotechnology AG,Zurich,Switzerland)に記載されている方法が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、WO00061739;EA01229125;US20030115614;Okazaki et al.,2004,JMB,336:1239−49を参照のこと。
5.1.18.抗体のグリコシル化
なおも別の実施形態において、本発明に従って利用される抗体のグリコシル化が改変される。例えば、グリコシル化(glycoslated)抗体が作製され得る(例えば、抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を変化させることによって、例えば、標的抗原に対する抗体のアフィニティーを増大することができる。このような炭水化物改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1以上の部位を変化させることによって達成され得る。例えば、1以上のアミノ酸置換がなされ得ることにより、1以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位が除去され、これによって、その部位におけるグリコシル化が排除される。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体のアフィニティーを高め得る。このようなアプローチは、米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。あるいは、1以上のアミノ酸置換がなされ得ることにより、Fc領域に存在するグリコシル化部位(例えば、IgGのアスパラギン297)を除去できる。さらに、グリコシル化抗体は、必要なグリコシル化機構を欠く細菌細胞において産生され得る。
さらに、またはあるいは、フコシル残基の量が少ない低フコシル化(hypofucosylated)抗体または二分されたGlcNAc構造を多く有する抗体などの変更されたタイプのグリコシル化を有する抗体が作製され得る。そのような変更されたグリコシル化パターンによって、抗体のADCC能力が増大することが証明された。このような炭水化物改変は、例えば、変更されたグリコシル化機構を用いて宿主細胞において抗体を発現することによって達成され得る。変更されたグリコシル化機構を有する細胞は、当該分野で報告されており、本発明の組換え抗体を発現することによって、変更されたグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用され得る。例えば、Shields,R.L.et al,(2002)J.Biol.Chem.,277:26733−26740;Umana et al.,(1999)Nat.Biotech.,17:176−1ならびに欧州特許第EP1,176,195号;PCT公開WO03/035835;WO99/54342を参照のこと。また、Li et al.,2006,Nat.Biotech 24:210−215;および公開されている米国特許出願US2006/0040353;US2006/034830;US2006/0034829;US2006/0034828;US2006/0029604およびUS2006/0024304(これらは、抗体の変更されたグリコシル化について記載されている)も参照のこと。
5.2.抗CD19抗体の製造/産生
一旦、所望の抗CD19抗体が設計されると、その抗CD19抗体は、抗体の大規模製造のための当該分野で周知の方法を使用して工業規模で作製され得る。例えば、これは、組換え発現系を使用して達成され得る。その系としては、下に記載するものが挙げられるがそれに限定されない。
5.2.1.組換え発現系
本発明の抗体またはその改変体の組換え発現は、一般に、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。一旦、本発明の抗体分子あるいは抗体の重鎖もしくは軽鎖またはそれらの部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含むが、必ずしもそうでなくてもよい)をコードするポリヌクレオチドが得られると、その抗体分子を生成するためのベクターが、当該分野で周知の技術を使用した組換えDNA技術によって創り出され得る。例えば、米国特許第6,331,415号(その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。従って、ヌクレオチド配列をコードする抗体を含むポリヌクレオチドを発現することによってタンパク質を調製する方法を、本明細書中で記載する。当業者に周知の方法を使用して、抗体コード配列および適切な転写および翻訳の調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ遺伝的組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、抗体の重鎖もしくは軽鎖、抗体の重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインまたはその一部あるいは重鎖CDRもしくは軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含み得(例えば、国際公開番号WO86/05807およびWO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)、そしてその抗体の可変ドメインは、重鎖全体、軽鎖全体または重鎖全体と軽鎖全体の両方の発現のためのこのようなベクターにクローニングされ得る。
別の実施形態において、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体を、標的化された相同組換えを使用して作製することにより、抗CD19抗体の全部または一部が作製され得る(米国特許第6,063,630号、同第6,187,305号および同第6,692,737号)。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体を、ランダムな組換え技術を使用して作製することにより、抗CD19抗体の全部または一部が作製され得る(米国特許第6,361,972号、同第6,524,818号、同第6,541,221号および同第6,623,958号を参照のこと)。抗CD19抗体はまた、Cre−媒介性部位特異的相同組換え(米国特許第6,091,001号を参照のこと)を使用して、改変免疫グロブリン遺伝子座を含む細胞のゲノム配列から抗体を発現する細胞において産生され得る。ヒト抗体の産生が所望である場合、宿主細胞は、ヒト細胞株であるべきである。これらの方法を使用することにより、抗体分子を恒久的に発現する安定な細胞株を有利に操作することができる。
一旦、発現ベクターが、従来の技術によって宿主細胞に移入されると、トランスフェクトされた細胞は、次に従来の技術によって培養されることにより、本発明の抗体が産生される。従って、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体またはそのフラグメントまたはその重鎖もしくは軽鎖またはその一部または本発明の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。好ましい実施形態において、二本鎖抗体の発現にむけて、重鎖と軽鎖の両方をコードするベクターは、下に詳述されるように、免疫グロブリン分子全体を発現するために宿主細胞において同時発現され得る。
種々の宿主発現ベクターシステムは、抗CD19抗体の操作および作製に使用され得る、本発明の抗CD19抗体またはその一部を発現するために利用され得る(例えば、米国特許第5,807,715号を参照のこと)。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期(major intermediate early)遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併せたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、抗体のための有効な発現系である(Foecking et al.,Gene,45:101(1986);およびCockett et al.,Bio/Technology,8:2(1990))。さらに、挿入された抗体配列の発現を調節するか、または所望の特定の様式で抗体遺伝子産物を改変し、そして処理する宿主細胞系統が、選択され得る。タンパク質産物のこのような改変(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能のために重要であり得る。様々な宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の転写後プロセシングおよび改変のための特徴的なメカニズムおよび特定のメカニズムを有する。適切な細胞株または宿主系は、正確な改変および発現される抗体またはその一部の正確なプロセシングを保証するように選択され得る。この目的を達成するために、最初の転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用され得る。このような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NS0(内因的にいかなる免疫グロブリン鎖も生成しないマウスミエローマ細胞株)、CRL7O3OおよびHsS78Bst細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
好ましい実施形態において、ヒトリンパ球を不死化することによって作製されたヒト細胞株を使用して、モノクローナルヒト抗CD19抗体を組換えで作製することができる。好ましい実施形態において、ヒト細胞株PER.C6.(Crucell,Netherlands)を使用して、モノクローナルヒト抗CD19抗体を組換えで作製することができる。
細菌の系では、多くの発現ベクターが、発現される抗体分子について意図された用途に応じて有利に選択され得る。例えば、抗CD19抗体を含む薬学的組成物の製造のために、大量のこのような抗体が作製されるとき、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現をもたらすベクターが望ましいことがある。このようなベクターとしては、融合タンパク質が産生されるように、抗体コード配列がlacZコード領域とインフレームで個別にベクターに連結され得るE.coli発現ベクターpUR278(Ruther et al.,EMBO,12:1791(1983));pINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.,13:3101−3109(1985);Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.,24:5503−5509(1989));などが挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクターもまた、グルタチオン5−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来性ポリペプチドを発現するために使用され得る。一般に、このような融合タンパク質は、可溶性であり、そして溶解された細胞から、マトリックスグルタチオンアガロースビーズに吸着および結合させた後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することより容易に精製され得る。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から放出され得るように、トロンビンまたはファクターXaプロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
昆虫の系では、Autographa californica核多核体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するベクターとして使用される。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で生育する。抗体コード配列は、このウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングされ得、そしてAcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の支配下に配置され得る。
哺乳動物宿主細胞では、多くのウイルスベースの発現系が利用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、目的の抗体コード配列は、アデノウイルスの転写/翻訳調節複合体、例えば、後期プロモーターおよび3つからなる(tripartite)リーダー配列に連結され得る。次いで、このキメラ遺伝子は、インビトロまたはインビボにおける組換えによってアデノウイルスゲノム内に挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域における挿入(例えば、領域E1またはE3)により、感染した宿主において生存可能であり、抗体分子を発現することができる組換えウイルスがもたらされる(例えば、Logan & Shenk,Proc.Natl.Acad.Sci USA,81:355−359(1984)を参照のこと)。特定の開始シグナルもまた、挿入された抗体コード配列の有効な翻訳に必要であり得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。さらに、この開始コドンは、通常、挿入断片全体の翻訳を保証する所望のコード配列の読み枠とインフレーム(in phase)であるべきである。これらの外来性の翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、種々の起源、天然および合成の両方であり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含むことによって増大され得る(例えば、Bittner et al.,Methods in Enzymol,153:51−544(1987)を参照のこと)。
組換えタンパク質の長期にわたる高収率の産生のためには、安定な発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が設計され得る。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターの複製を使用する一次的な発現系ではなく、宿主細胞が、適切な発現調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって調節されるDNAおよび選択可能マーカーで形質転換され得る。外来DNAが導入された後、操作された細胞を、強化培地中で1〜2日間生育し、その後、選択培地に切り替えた。組換えプラスミド内の選択可能マーカーにより、選択に対する耐性が付与され、細胞がプラスミドを染色体に安定的に組み込むことができ、そして生育することにより、クローン化されて、そして細胞株に増殖され得る細胞の集合体を形成することができる。抗CD19抗体をコードするプラスミドを使用して、培養下での産生に適した任意の細胞株に遺伝子/cDNAを導入することができる。あるいは、「標的化ベクター」と呼ばれるプラスミドを使用して、発現調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)を宿主細胞中の適切な染色体の位置に導入することができ、それによって、抗CD19抗体についての内在性遺伝子を「活性化」する。
多数の選択系が使用され得るが、それらとしては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.,Cell,11:223(1977))、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci USA,48:202(1992))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,Cell,22:8−17(1980))が挙げられるがこれらに限定されず、それらの遺伝子は、それぞれtk−細胞、hgprt−細胞またはaprT−細胞において使用され得る。また、代謝拮抗物質耐性は、以下の遺伝子:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al.,Natl.Acad.Sci.USA,77:357(1980);O’Hare et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Wu and Wu,Biotherapy,3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol,32:573−596(1993);Mulligan,Science,260:926−932(1993);およびMorgan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.,62:191−217(1993);May,TIB TECH 11(5):155−215(1993));およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al.,Gene,30:147(1984))についての選択の基礎として使用され得る。組換えDNA技術の通常当該分野で公知の方法は、所望の組換えクローンを選択するために日常的に適用され得、そしてそのような方法は、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology;John Wiley & Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);ならびにDracopoli et al.(eds.),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994)の12章および13章;Colberre−Garapin et al.,1981,J.Mol.Biol.,150:1(これらの全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増大され得る(概説として、Bebbington and Hentschel,The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning,Vol.3,Academic Press,New York,(1987)を参照のこと)。抗体を発現するベクターシステム中のマーカーが増幅可能であるとき、宿主細胞の培養物中に存在するインヒビターのレベルの上昇は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅される領域が抗体遺伝子と関連しているため、抗体の産生も増大することになる(Crouse et al.,Mol Cell.Biol,3:257(1983))。抗体発現レベルは、組換えタンパク質産生の当業者に公知の組換えの方法およびツールの使用(周囲のクロマチンを再構築する技術および活性な人工の転写ドメインの形態でトランスジーン発現を増大する技術などを含む)によって増幅され得る。
宿主細胞は、本発明の2種類の発現ベクターで同時にトランスフェクトされ得る。その2種類のベクターとは、重鎖のポリペプチドをコードする第1のベクターおよび軽鎖のポリペプチドをコードする第2のベクターである。この2種類のベクターは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドが等しく発現することを可能にする同一の選択可能なマーカーを含み得る。あるいは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、発現することができる単一のベクターが使用され得る。このような場合において、軽鎖は、有毒な遊離重鎖が過剰になるのを回避するために、重鎖の前に位置するべきである(Proudfoot,Nature,322:562−565(1986);およびKohler,1980,Proc.Natl Acad.Sci.USA,77:2197−2199(1980))。重鎖および軽鎖についてのコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含み得る。
本発明の抗体分子が、組換え発現によって産生されると、その抗体分子は、免疫グロブリン分子を精製するための当該分野で公知の任意の方法によって精製され得る。その方法としては、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィー、特に、プロテインAクロマトグラフィーの後に特定の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ分離(sizeing)カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解(differential solubility)またはタンパク質を精製するための他の任意の標準的な技術による方法が挙げられる。さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントを、本明細書中に記載されているかまたは他に当該分野で公知の異種ポリペプチド配列に融合することにより、精製が容易になることがある。
5.2.2.抗体の精製および単離
組換え技術を使用するとき、抗体は、細胞内の細胞周辺腔に産生され得るか、または培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第1の工程として、宿主細胞または溶解したフラグメントのいずれかである粒状の破片を、例えば、遠心分離または限外濾過により除去する。Carter et al.,Bio/Technology,10:163−167(1992)では、E.coliの細胞周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順が記載されている。簡潔には、すりつぶした細胞を、酢酸ナトリウム(pH 3.5)、EDTAおよびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分間にわたって解凍する。細胞の破片が遠心分離により除去され得る。抗体変異体が培地中に分泌される場合、そのような発現系由来の上清を、一般には最初に市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮する。タンパク質分解を阻害するために、前述の工程のいずれかにPMSFなどのプロテアーゼインヒビターを含ませてもよいし、外来性の混入物の増殖を防ぐために抗生物質を含ませてもよい。
細胞から調製させた抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および/または単独もしくは他の精製工程と組み合わせたアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製され得る。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体変異体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づいて、抗体を精製するために使用され得る(Lindmark et al.,J.Immunol.Methods.,62:1−13(1983))。プロテインGは、マウスのアイソタイプのすべておよびヒトγ3を対象としている(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。アフィニティーリガンドが結合するマトリックスは、アガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。多孔質ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの力学的に安定なマトリックスを使用することにより、アガロースを用いて達成できたときよりも流速が速くなり、処理時間が短くなる。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技術(例えば、イオン交換カラム、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、ヘパリンによるクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)によるセファロースクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGEおよび硫安塩析による分画)もまた回収する抗体に応じて利用可能である。
任意の予備精製工程の後、目的の抗体および夾雑物を含む混合物を、pHが約2.5〜4.5の溶出緩衝液を使用した低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供し得、好ましくは、低い塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で行い得る。
5.3.治療用の抗CD19抗体
本発明の組成物および方法に使用される抗CD19抗体は、好ましくはヒトADCCを媒介する、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体であるか、または好ましくはヒトADCCを媒介する公知の抗CD19抗体から選択される。特定の実施形態において、抗CD19抗体は、キメラ抗体であり得る。好ましい実施形態において、抗CD19抗体は、モノクローナルのヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ抗CD19抗体である。本発明の組成物および方法に使用される抗CD19抗体は、好ましくはIgG1またはIgG3ヒトアイソタイプのヒト抗体またはヒト化抗体である。他の実施形態において、本発明の組成物および方法に使用される抗CD19抗体は、好ましくはADCCを媒介するIgG2またはIgG4ヒトアイソタイプの好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。
このような抗体が上記の技術を使用して作製され得る一方で、本発明の他の実施形態において、本明細書中に記載されるようなマウス抗体であるHB12aおよびHB12bまたは他の市販の抗CD19抗体をキメラ化すること、ヒト化することまたはヒト抗体にすることができる。
例えば、使用され得る公知の抗CD19抗体としては、HD37(IgG1)(DAKO,Carpinteria,CA)、BU12(G.D.Johnson,University of Birmingham,Birmingham,United Kingdom)、4G7(IgG1)(Becton−Dickinson,Heidelberg,Germany)、J4.119(Beckman Coulter,Krefeld,Germany)、B43(PharMingen,San Diego,CA)、SJ25C1(BD PharMingen,San Diego,CA)、FMC63(IgG2a)(Chemicon Int’l,Temecula,CA)(Nicholson et al.,Mol.Immunol.,34:1157−1165(1997);Pietersz et al.,Cancer Immunol.Immunotherapy,41:53−60(1995);およびZola et al.,Immunol.Cell Biol,69:411−422(1991))、B4(IgG1)(Beckman Coulter,Miami,FL)Nadler et al.,J.Immunol.,131:244−250(1983)および/またはHD237(IgG2b)(Fourth International Workshop on Human Leukocyte Differentiation Antigens,Vienna,Austria,1989;およびPezzutto et al,J.Immunol.,138:2793−2799(1987))が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、配列番号2のアミノ酸配列(図5A)を含むHB12aの重鎖を含む。他の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、配列番号4のアミノ酸配列(図5B)を含むHB12bの重鎖を含む。
特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、配列番号16のアミノ酸配列(図6A)を含むHB12aの軽鎖を含む。他の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、配列番号18のアミノ酸配列(図6B)を含むHB12bの軽鎖を含む。
特定の実施形態において、抗体は、上記の(例えば、HB12aまたはHB12b)のような既知抗体のアイソタイプスイッチされた(例えば、IgG1またはIgG3ヒトアイソタイプに)改変体である。
本発明の組成物および方法に使用される抗CD19抗体は、裸の抗体、免疫結合体または融合タンパク質であり得る。好ましくは、本発明の組成物および方法に使用するための上記抗CD19抗体は、それらで処置されたヒトにおいてB細胞および循環免疫グロブリンを減少または枯渇させることができる。B細胞の枯渇は、循環B細胞または特に組織においてであり得る。それらの組織としては、骨髄、脾臓、消化管関連リンパ系組織および/またはリンパ節が挙げられるがこれらに限定されない。このような枯渇は、様々なメカニズム(例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)、B細胞増殖の阻害および/またはB細胞死(例えば、アポトーシスを介した)の誘導)を介して達成され得る。B細胞の「枯渇」とは、5.4.3.節に記載するような、少なくとも約25%、40%、50%、65%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の循環B細胞および/またはB細胞、特に組織中のB細胞の減少を意味する。特定の実施形態において、実質的にすべての検出可能なB細胞が、循環および/または特定の組織から枯渇される。循環免疫グロブリン(Ig)の「枯渇」とは、5.4.3節に記載するような、少なくとも約25%、40%、50%、65%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の減少を意味する。特定の実施形態において、実質的にすべての検出可能なIgが循環から枯渇される。
5.3.1.ヒトCD19に結合する抗体のスクリーニング
結合アッセイを使用して、ヒトCD19抗原に結合する抗体を同定することができる。結合アッセイは、直接的な結合アッセイまたは競合結合アッセイのいずれかとして行われ得る。結合は、標準的なELISAまたは標準的なフローサイトメトリーアッセイを使用して検出され得る。直接的な結合アッセイでは、ヒトCD19抗原への結合について候補抗体を試験する。特定の実施形態において、スクリーニングアッセイは、第2の工程において、ヒトCD19を発現するB細胞の細胞死またはアポトーシスを引き起こす能力を測定する工程を含む。他方で、競合結合アッセイでは、候補抗体が、公知の抗CD19抗体またはヒトCD19と結合する他の化合物と競合する能力を評価する。
直接的な結合アッセイでは、候補抗体がヒトCD19抗原に結合し得る条件下でヒトCD19抗原を候補抗体と接触させる。結合は、溶液中または固体表面上で生じ得る。好ましくは、候補抗体は、予め検出用に標識しておく。任意の検出可能な化合物を標識用として使用し得る。それらとしては、例えば、発光性のもの、蛍光性のものもしくは放射性同位体または同じものを含む群あるいは酵素もしくは色素などの非同位体標識が挙げられるがこれらに限定されない。結合が十分に生じるのに十分なインキュベーション時間のあと、反応物を過剰量の抗体または非特異的に結合している抗体を除去する条件および操作に供する。代表的には、その操作は、適切な緩衝液で洗浄する工程を含む。最終的に、CD19抗体複合体の存在が検出される。
競合結合アッセイでは、公知の抗CD19抗体(または他の化合物)がヒトCD19抗原に結合することを候補抗体が阻害する能力またはその結合を候補抗体が置換する能力について評価する。標識された公知のCD19の結合剤が候補抗体と混合され得、そしてそれらの相互作用が候補抗体を加えても加えなくても正常に生じる条件下に置かれ得る。ヒトCD19と結合する標識された公知のCD19の結合剤の量が、候補抗体の存在下または不在下で結合している量と比較され得る。
好ましい実施形態において、抗体抗原複合体の形成および検出を促進するために、固体表面に固定された1以上の成分を用いて結合アッセイが行われる。様々な実施形態において、固体支持体は、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス、ニトロセルロース、デキストラン、ナイロン、ポリアクリルアミドおよびアガロースであり得るが、これらに限定されない。支持体形態としては、ビーズ、膜、微小粒子、反応容器(例えば、マイクロタイタープレート、試験管または他の反応容器)の内側表面が挙げられる。ヒトCD19または他の成分の固定化は、共有結合または非共有結合によって達成され得る。1つの実施形態において、その結合は、間接的、すなわち、結合された抗体を介してであってもよい。別の実施形態において、抗GST(Santa Cruz Biotechnology)などの市販の抗体によって固体表面への結合が媒介され得るように、ヒトCD19抗原およびネガティブコントロールは、エピトープ(例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST))でタグ化される。
例えば、そのようなアフィニティー結合アッセイは、固体支持体に固定化されたヒトCD19抗原を使用して行われ得る。代表的には、候補抗CD19抗体の場合において、結合反応の移動性でない成分が検出できるように標識される。種々の標識方法が利用可能であり、例えば、発光、発色団、蛍光または放射性同位体または同じものを含む群および酵素または色素などの非同位体の標識が使用され得る。好ましい実施形態において、候補抗CD19抗体は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC、Sigma Chemicals,St.Louisから入手可能)などのフルオロフォアで標識される。
最終的には、固体表面上に残存している標識が、当該分野で公知の任意の検出方法によって検出され得る。例えば、候補抗CD19抗体が、フルオロフォアで標識されている場合、蛍光光度計を使用して、複合体を検出し得る。
好ましくは、ヒトCD19抗原を発現するインタクトな細胞またはヒトCD19抗原を含む単離された膜の形態でヒトCD19抗原が結合アッセイに加えられる。従って、ヒトCD19抗原との直接の結合が、培養されたインタクトな細胞または動物モデルの候補抗CD19抗体の存在下および不在下でアッセイされ得る。標識された候補抗CD19抗体は、ヒトCD19抗原を発現する細胞またはそのような細胞から得られた粗抽出物と混合され得、そしてその候補抗CD19抗体が加えられ得る。単離された膜を使用して、ヒトCD19と相互作用する候補抗CD19抗体が同定され得る。例えば、単離された膜を使用した代表的な実験において、ヒトCD19抗原を発現するように細胞が遺伝的に操作され得る。膜は、標準的な技術によって回収され得、そしてインビトロ結合アッセイに使用され得る。標識された候補抗CD19抗体(例えば、蛍光標識された抗体)は、膜に結合し、そして特定の活性についてアッセイされる;過剰量の非標識(非放射性)候補抗CD19抗体の存在下で行われる結合アッセイと比較することによって、特異的な結合が決定される。あるいは、可溶性ヒトCD19抗原を組換えで発現させて、非細胞ベースのアッセイに利用することによって、ヒトCD19抗原に結合する抗体が同定され得る。組換えで発現させたヒトCD19ポリペプチドは、非細胞ベースのスクリーニングアッセイに使用され得る。あるいは、ヒトCD19抗原の結合部分の1以上に対応するペプチドまたはヒトCD19抗原の結合部分の1以上を含む融合タンパク質を非細胞ベースのアッセイ系で使用することにより、ヒトCD19抗原の部分に結合する抗体が同定され得る。非細胞ベースのアッセイにおいて、組換えで発現したヒトCD19は、当業者に周知の手段によって固体の基材(例えば、試験管、マイクロタイターウェルまたはカラム)に結合される(Ausubel et al.,前出を参照のこと)。次いで、試験抗体が、ヒトCD19抗原に結合する能力についてアッセイされる。
あるいは、結合反応は、溶液中で行われ得る。このアッセイにおいて、標識された成分は、溶液中でその結合パートナーと相互作用することが可能になる。標識された成分とその結合パートナーとの大きさの差が分離を可能にする場合、その分離は、結合反応の生成物を限外濾過膜を通すことによって達成され得る。ここで、その限外濾過膜は、未結合の標識された成分は通過できるが、その結合パートナーまたはそのパートナーに結合している標識された成分は通過できない細孔を有する。分離はまた、標識された成分の結合パートナーを溶液から捕捉することができる任意の試薬(例えば、結合パートナーに対する抗体など)を使用して達成され得る。
1つの実施形態において、例えば、ファージライブラリーは、プラスチックビーズなどの固相に連結されている、精製されたヒトCD19抗原またはその誘導体、アナログ、フラグメントもしくはドメインを含むカラムに連続的なファージディスプレイライブラリー由来のファージを通すことによってスクリーニングされ得る。洗浄緩衝液のストリンジェンシーを変化することによって、ヒトCD19抗原に対するアフィニティーが高いペプチドを発現するファージを濃縮することが可能である。そのカラムから単離されたファージをクローニングすることができ、そしてアフィニティーを直接測定することができる。どの抗体およびそのアミノ酸配列がヒトCD19抗原に最も強い結合性をもたらすかが分かると、コンピュータモデルを使用して、CD19抗原と候補抗体との間の分子接触を同定することができる。
本発明のこの態様の別の特定の実施形態において、固体支持体は、マイクロタイターディッシュに結合したヒトCD19抗原を含む膜である。候補抗体は、例えば、マイクロタイターディッシュ中でライブラリーメンバーが発現され得る条件下で培養された、ライブラリー抗体を発現する細胞と結合し得る。ヒトCD19に結合するライブラリーメンバーが回収される。このような方法は、一般に例えば、ParmLey and Smith,1988,Gene,73:305−318;Fowlkes et al,1992,BioTechniques,13:422−427;PCT公開番号WO94/18318;および本明細書の上で引用された参考文献に記載されている。ヒトCD19抗原に結合すると同定された抗体は、いずれかのタイプまたは改変の上記の抗体であり得る。
特定の実施形態において、スクリーニングアッセイは、第2の工程において、ヒトCD19を発現するB細胞の細胞死またはアポトーシスを引き起こす能力を測定する工程を含む。細胞生死判定色素(viable dye)を利用するアッセイ、カスパーゼを検出および解析する方法ならびにDNA切断を測定するアッセイを使用して、インビトロで培養される細胞のアポトーシス活性を目的の抗CD19抗体を用いて評価することができる。アポトーシス活性を検出するために、例えば、アネキシンVアッセイまたはTdT−媒介性dUTPニックエンドラベリング(TUNEL)アッセイを、Decker et al.,Blood(USA)103:2718−2725(2004)に記載されているように行うことができる。TUNELアッセイは、DNA鎖が切断した部分に取り込ませるために、フルオレセイン標識されたdUTPとともに目的の細胞を培養する工程を含む。次いで、その細胞をフローサイトメトリーによって解析する。アネキシンVアッセイでは、アポトーシス細胞の表面上で、曝露されているホスファチジルセリン(PS)を特異的に認識するフルオレセイン結合体化抗体を使用して、原形質膜の外側にPSが曝露されているのを検出する。同時に、ヨウ化プロピジウムなどの細胞生死判定色素を使用して、初期のアポトーシス細胞から後期のアポトーシス細胞を排除することができる。目的の細胞を抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析する。さらに、抗体のアポトーシス活性をアッセイするための技術は、当該分野で周知である。例えば、Chaouchi et al.,J.Immunol.,154(7):3096−104(1995);Pedersen et al.,Blood,99(4):1314−1318(2002);Alberts et al.,Molecular Biology of the Cell;Steensma et al.,Methods Mol Med.,85:323−32,(2003))を参照のこと。
5.3.2.ヒトADCCエフェクター機能についての抗体のスクリーニング
ヒトIgGクラスの抗体は、血清中の半減期が長いなどの機能的な特徴を有し、また、様々なエフェクター機能を媒介することができるので(Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Wiley−Liss,Inc.,Chapter 1(1995))、それらは、本発明の用途にとって好ましい。ヒトIgGクラス抗体は、以下の4つのサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4にさらに分類される。多くの研究は、これまでIgGクラス抗体のエフェクター機能としてのADCCおよびCDCについて行われてきており、ヒトIgGクラスの抗体のうち、IgG1サブクラスが、ヒトにおいて最も高いADCC活性およびCDC活性を有することが報告されている(Chemical Immunology,65,88(1997))。
ヒトIgG1サブクラス抗体のADCC活性およびCDC活性の発現は、一般に、抗体のFc領域が、エフェクター細胞(例えば、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞または活性化マクロファージ)の表面上に存在する、抗体に対するレセプター(本明細書で以後「FcγR」と呼ばれる)に結合することに関与する。様々な補体成分が結合され得る。結合に関して、その抗体のヒンジ領域およびC領域の第2のドメイン(本明細書で以後「Cγ2ドメイン」と呼ばれる)のいくつかのアミノ酸残基が重要であること(Eur.J.Immunol.,23,1098(1993),Immunology,86,319(1995),Chemical Immunology,65,88(1997))およびCγ2ドメイン中の糖鎖(Chemical Immunology,65,88(1997))もまた重要であることが示唆されている。
本発明の抗CD19抗体は、エフェクター機能に関して、例えば、その抗体のADCCおよび/または補体依存性細胞傷害(CDC)を増強するように改変され得る。このことは、抗体のFc領域に1以上のアミノ酸置換を導入することによって達成され得る。あるいは、またはさらに、システイン残基をFc領域に導入し得ることにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合の形成が可能になる。このようにして、改善された内部移行能力およびまたは高い補体媒介性細胞殺滅およびADCCを有し得るホモダイマーの抗体が作製され得る(Caron et al.,J.Exp.Med.,176:1191−1195(1992)およびShopes,J.Immunol.,148:2918−2922(1992))。ヘテロ二機能性クロスリンカーを使用して、活性が高いホモダイマーの抗体を作製することもできる(Wolff et al.,Cancer Research,53:2560−2565(1993))。抗体はまた、2以上のFc領域を有するように操作され得る。これにより、補体溶解およびADCC能力が高まる(Stevenson et al.,Anti−Cancer Drug Design,(3)219−230(1989))。
エフェクター機能を変更するために抗体のFc領域を操作する他の方法は、当該分野で公知である(例えば、米国特許公開番号20040185045およびPCT公開番号WO2004/016750(両方がKoenig et alに対するものであり、FcγRIIAに対する結合アフィニティーと比較してFcγRIIBに対する結合アフィニティーを増大するためにFc領域を変更することを説明している)を参照のこと;また、PCT公開番号WO99/58572(Armour et al.)、WO99/51642(Idusogie et al.)および米国特許第6,395,272号(Deo et al.);(これらの開示の全体が本明細書中に援用される)も参照のこと))。FcγRIIBに対する結合アフィニティーを低下させるためにFc領域を改変する方法も、当該分野で公知である(例えば、米国特許公開番号20010036459およびPCT公開番号WO01/79299(両方がRavetch et alに対するものであり、これらの開示の全体が本明細書中に援用される)を参照のこと)。野生型Fc領域と比較してFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAに対する結合アフィニティーが高い改変Fc領域を有する改変抗体もまた、報告されている(例えば、PCT公開番号WO2004/063351(Stavenhagen et al.);この開示の全体が本明細書中に援用される)。
少なくとも4種の異なるタイプのFcγRが見出されており、それらは、それぞれFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIVと呼ばれている。ヒトにおいて、FcγRIIおよびFcγRIIIは、それぞれ、FcγRIIaおよびFcγRIIbならびにFcγRIIIaおよびFcγRIIIbにさらに分類される。FcγRは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質であり、FcγRII、FcγRIIIおよびFcγRIVは、2つの免疫グロブリン様ドメインを含む細胞外領域を有するα鎖を有し、FcγRIは、構成要素として3つの免疫グロブリン様ドメインを含む細胞外領域を有するα鎖を有し、また、そのα鎖は、IgG結合活性に関与する。さらに、FcγRIおよびFcγRIIIは、α鎖と関連してシグナル伝達機能を有する構成要素としてγ鎖またはζ鎖を有する(Annu.Rev.Immunol,18,709(2000),Annu.Rev.Immunol,19,275(2001))。FcγRIVは、Bruhns et al.,Clin.Invest.Med.(Canada)27:3D(2004)によって報告されている。
目的の抗CD19抗体のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが使用され得る。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。例えば、補体活性化および/またはADCCによって任意の特定の抗体が標的細胞の溶解を媒介する能力がアッセイされ得る。目的の細胞を生育し、そしてインビトロで標識する;抗原抗体複合体によって活性化され得る免疫細胞、すなわち、ADCC反応に関与するエフェクター細胞と組み合わせて細胞培養物に抗体を加える。抗体はまた、補体活性化について試験され得る。いずれかの場合において、標的細胞の細胞溶解は、溶解された細胞からの標識の放出によって検出される。実際に、抗体は、補体および/または免疫細胞の起源として患者自身の血清を使用してスクリーニングされ得る。次いで、インビトロ試験においてヒトADCCを媒介することができる抗体が、その特定の患者において治療的に使用され得る。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性が、インビボ、例えば、Clynes et al.,PNAS(USA),95:652−656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価され得る。さらに、抗体のADCCのレベルをおよび必要に応じてCDC活性を調節(すなわち、増加または減少)するための技術は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第6,194,551号を参照のこと。本発明の抗体は、好ましくはADCCおよび/またはCDCを誘導することができるか、またはそれらを誘導する能力を有するように改変される。好ましくは、ヒトエフェクター細胞を使用して、ADCC機能を測定するそのようなアッセイを行うことにより、ヒトADCC機能が評価される。
5.3.3.免疫結合体および融合タンパク質
本発明の特定の態様によれば、治療薬またはトキシンは、本発明の組成物および方法において使用するために、キメラ化抗CD19抗体、ヒト抗CD19抗体またはヒト化抗CD19抗体と結合体化され得る。特定の実施形態において、これらの結合体は、融合タンパク質として作製され得る(5.1.8節を参照のこと)。治療薬およびトキシンの例としては、エンジインファミリーのメンバーの分子(例えば、カリケアマイシンおよびエスペラミシン(esperamicin))が挙げられるが、これらに限定されない。化学トキシンもまた、デュオカルマイシン(例えば、米国特許第5,703,080号および米国特許第4,923,990号を参照のこと)、メトトレキサート、ドキソルビシン、メルファラン、クロラムブシル、ARA−C、ビンデシン、マイトマイシンC、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンおよび5−フルオロウラシルからなる群から得ることができる。化学療法剤の例としては、アドリアマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソテール(ドセタキセル)、ブスルファン、サイトキシン(Cytoxin)、タキソール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン(Vincreistine)、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン(Carminomycin)、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照のこと)、メルファランおよび他の関連ナイトロジェンマスタードも挙げられる。
他の実施形態において、例えば、「CVB」(1.5g/m2シクロホスファミド、200〜400mg/m2エトポシドおよび150〜200mg/m2カルムスチン)が、本発明の併用療法に使用され得る。CVBは、非ホジキンリンパ腫を処置するために使用されるレジメンである(Patti et al.,Eur.J.Haematol.,51:18(1993))。他の適当な併用化学療法レジメンが当業者に周知である。例えば、Freedman et al.,“Non−Hodgkin’s Lymphomas,”Cancer Medicine,Volume 2,3rd Edition,Holland et al.(eds.),pp.2028−2068(Lea & Febiger 1993)を参照のこと。例示として、中間段階の非ホジキンリンパ腫を処置するための第1世代の化学療法レジメンとしては、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)が挙げられる。有用な第2世代の化学療法レジメンは、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)であり、適当な第3世代のレジメンは、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)である。さらなる有用な薬物としては、フェニルブチレートおよびブロスタチン(brostatin)−1が挙げられる。
本発明の免疫結合体に使用され得る他のトキシンとしては、有毒なレクチン、植物トキシン、例えば、リシン、アブリン、モデクシン、ボツリヌストキシンおよびジフテリアトキシンが挙げられる。当然ながら、様々なトキシンの組み合わせもまた、1つの抗体分子に結合され得る。これにより、変化する細胞傷害に適応する。本発明の併用療法で適当に使用されるトキシンの例は、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNase I、ブドウ球菌性エンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルス性タンパク質、ゲロニン(gelonin)、ジフテリア(diphtherin)トキシン、シュードモナス外毒素およびシュードモナスエンドトキシンである。例えば、Pastan et al.,Cell,47:641(1986)およびGoldenberg et al.,Cancer Journal for Clinicians,44:43(1994)を参照のこと。使用され得る酵素的に活性なトキシンおよびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの非結合性の活性なフラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、Momordica charantiaインヒビター、クルシン、クロチン、Sapaonaria officinalisインヒビター、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテシンが挙げられる。例えば、1993年10月28日公開のWO93/21232を参照のこと。
適当なトキシンおよび化学療法剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.(Mack Publishing Co.1995)およびGoodman and Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,7th Ed.(MacMillan Publishing Co.1985)に記載されている。他の適当なトキシンおよび/または化学療法剤は、当業者に公知である。
本発明の抗CD19抗体はまた、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照のこと)を活性な抗癌薬物に変換するプロドラッグ活性化酵素と抗CD19抗体を結合体化することによって、ADEPTにおいて使用され得る。例えば、WO88/07378および米国特許第4,975,278号を参照のこと。ADEPTに有用な免疫結合体の酵素成分としては、その成分をより活性な細胞傷害性型に変換するような方法でプロドラッグに対して作用することができる任意の酵素が挙げられる。
本発明の方法において有用な酵素としては、リン酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアルカリホスファターゼ;硫酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアリールスルファターゼ;無毒の5−フルオロシトシンを抗癌薬物の5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なプロテアーゼ(例えば、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL));D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するために有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬物に変換するために有用な炭水化物切断酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ);α−ラクタムで誘導体化される薬物を遊離薬物に変換するために有用なβ−ラクタマーゼ;および、それぞれフェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基によってそれらのアミン窒素において誘導体化される薬物を遊離薬物に変換するために有用なペニシリンアミダーゼ(例えば、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、「アブザイム」としても当該分野で公知である酵素活性を有する抗体が、本発明のプロドラッグを遊離した活性な薬物に変換するために使用され得る(例えば、Massey,Nature,328:457−458(1987)を参照のこと)。抗体−アブザイム結合体は、自己免疫疾患または自己免疫障害に罹患しているヒトの部分に所望のアブザイムを送達するために、本明細書中に記載されるように調製され得る。
本発明の酵素は、当該分野で周知の技術(例えば、上で述べたヘテロ二機能性の架橋試薬の使用など)によって抗体と共有結合され得る。あるいは、本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な一部と連結した本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質は、当該分野で周知の組換えDNA技術を使用して構築され得る(例えば、Neuberger et al.,Nature,312:604−608(1984)を参照のこと)。
本発明の抗CD19抗体の共有結合性の改変は、本発明の範囲内に含まれる。その改変は、化学合成または適用可能であれば抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によってなされ得る。抗CD19抗体の他のタイプの共有結合性の改変は、この抗体の標的化されたアミノ酸残基を、選択された側鎖またはN末端もしくはC末端の残基と反応することができる有機誘導化剤と反応させることによって分子に導入されるものである。
最も一般的には、システイニル残基を、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα−ハロアセテート(および対応するアミン)と反応させることにより、カルボキシメチル誘導体またはカルボキシアミドメチル誘導体が得られる。同様に、ヨード試薬も使用され得る。システイニル残基もまた、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノールまたはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールと反応することにより、誘導体化される。
ピロ炭酸ジエチルがヒスチジル側鎖に相対的に特異的であるため、ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0でピロ炭酸ジエチルと反応することによって誘導体化される。p−ブロモフェナシルブロミドもまた有用である;この反応は、好ましくはpH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリウム中で行われる。
リシル残基およびアミノ末端残基が、無水コハク酸または他の無水カルボン酸と反応する。これらの因子による誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆転する作用を有する。α−アミノ−含有残基および/またはε−アミノ−含有残基を誘導体化するための他の適当な試薬としては、イミドエステル(例えば、メチルピコリンイミデート、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、0−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン)およびグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
アルギニル残基は、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオンおよびニンヒドリンのうちの1つまたはいくつかの従来試薬との反応によって改変される。アルギニル残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKaが高いため、一般に、その誘導体化の反応がアルカリ性条件において行われることが必要である。さらに、これらの試薬は、リシンのε−アミノ基ならびにアルギニンイプシロン−アミノ基と反応し得る。
チロシル残基の特定の改変は、芳香族のジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によってスペクトル標識をチロシル残基に導入することに特に関心を持ってなされ得る。最も一般には、N−アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンを使用して、それぞれO−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体が形成される。チロシル残基が、125Iまたは131Iを使用してヨウ素化されることにより、ラジオイムノアッセイで使用するための標識されたタンパク質が調製される。
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド類(R−N=C=N−R’)(ここで、RおよびR’は、異なるアルキル基(例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミド)である)との反応によって選択的に改変される。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、それぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基に脱アミド化されることが多い。これらの残基は、中性または塩基性の条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド型は、本発明の範囲内である。
他の改変としては、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルのヒドロキシル基またはトレオニル残基のリン酸化、リシン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.79−86(1983))、N末端のアミンのアセチル化ならびに任意のC末端のカルボキシル基のアミド化が挙げられる。
別のタイプの共有結合性の改変は、グリコシドを抗体に化学的または酵素的に結合することを含む。これらの手順は、N結合型またはO結合型のグリコシル化に対するグリコシル化能力を有する宿主細胞における抗体の産生を必要としないという点で有利である。使用される結合様式に応じて、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインの遊離スルフヒドリル基)(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、トレオニンまたはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基)、(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンの芳香族残基)または(f)グルタミンのアミド基に結合され得る。これらの方法は、1987年9月11日公開のWO87/05330およびAplin and Wriston,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306(1981)に記載されている。
5.4.薬学的処方物、投与および投薬
本発明の薬学的処方物は、活性成分として、ヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ抗CD19抗体を含む。この処方物は、ヒト患者への投与に適した単位体重または単位体積内で所望の応答をもたらすために有効な量で裸の抗体、免疫複合体または融合タンパク質を含み、好ましくは滅菌されている。その応答は、例えば、抗CD19抗体組成物の生理学的効果を計測することによって測定され得る。その効果としては、循環B細胞枯渇、組織B細胞枯渇、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害の後退または疾患症状の低減が挙げられるがこれらに限定されない。他のアッセイが当業者に公知であり、応答レベルを測定するために使用され得る。
5.4.1.薬学的処方物
抗CD19抗体組成物は、薬学的に許容可能なキャリアとともに処方され得る。用語「薬学的に許容可能な」とは、活性成分の生物学的活性の有効性を干渉しない1以上の無毒の材料を意味する。このような調製物は、通常、塩類、緩衝剤、保存剤、適合性のキャリアおよび必要に応じて他の治療薬を含み得る。このような薬学的に許容可能な調製物はまた、通常、ヒトへの投与に適した、適合性の固体もしくは液体の賦形剤、希釈剤または封入物質を含み得る。薬物中で使用されるとき、塩類は、薬学的に許容可能でなければならないが、薬学的に許容可能でない塩が日常的にその薬学的に許容可能な塩を調製するために使用され得、また、それらは、本発明の範囲から排除されない。このような薬理学的および薬学的に許容可能な塩としては、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製される塩が挙げられるが、これらに限定されない。また、薬学的に許容可能な塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩)として調製され得る。用語「キャリア」とは、活性成分が適用を容易にするように組み合わされている有機または無機の、天然または合成の成分のことをいう。薬学的組成物の成分はまた、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用が生じないような様式で本発明の抗体と、および互いに混合することもできる。
本発明の特定の態様によれば、抗CD19抗体組成物は、貯蔵のために凍結乾燥された処方物または水溶液の形態で、所望の程度の純度を有する抗体または免疫複合体を任意の生理的に許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤と混合することによって調製され得る(Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1999))。許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤は、使用される投与量および濃度において、レシピエントにとって無毒であり、そのようなものとしては、緩衝液(例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸);アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン);カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン);単糖類、二糖類およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤(例えば、EDTA);糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN、PLURONICSTM)もしくはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
抗CD19抗体組成物もまた、必要に応じて適当な保存剤、例えば:塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベンおよびチメロサールを含んでもよい。
抗CD19抗体組成物は、便利に単位剤形中に含まれ得、また、薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。すべての方法は、活性因子を1以上の副成分を構成するキャリアに会合させる工程を含む。一般に、この組成物は、活性な化合物を液体キャリア、微粉化された固体キャリアまたはその両方と均一かつ完全に会合させることによって調製され、そして、必要であれば、生成物を成形する。
非経口投与に適した組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張性である、抗CD19抗体の滅菌された水性調製物または非水性調製物を便利に含む。この調製物は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の方法に従って処方され得る。滅菌された注射可能な調製物はまた、無毒な非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の、例えば、1,3−ブタンジオール溶液としての滅菌された注射可能な溶液または懸濁液であり得る。使用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、溶媒または懸濁溶媒として、滅菌された固定油を慣習的に使用する。この目的で、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用され得る。経口、皮下、静脈内、筋肉内投与などに適したキャリア処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAに見出され得る。特定の実施形態において、様々な投与経路に適したキャリア処方物は、RITUXANTMについて記載されているものと同じであるか、または類似のものであり得る。Physicians’ Desk Reference(Medical Economics Company,Inc.,Montvale,NJ,2005),pp.958−960および1354−1357(この全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。本発明の特定の実施形態において、抗CD19抗体組成物は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、ポリソルベート80および滅菌水とともに静脈内投与用として処方される。ここで、この組成物のpHは約6.5に調節されている。静脈内注射により、迅速な抗体の分配が循環によって徹底されることに起因して、有用な投与様式がもたらされることに当業者は気づく。しかしながら、静脈内投与は、脈管構造の内皮細胞および内皮マトリックスを含む血管の障壁のために限界がある。リンパ管内の投与経路(例えば、皮下または筋肉内注射)またはリンパ管のカテーテル法により、自己免疫疾患または自己免疫障害を処置する有用な手段がもたらされる。好ましい実施形態において、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体は、皮下に自己投与される。このような好ましい実施形態において、本組成物は、凍結乾燥された薬物としてか、または約50mg/mLで液体緩衝液(例えば、PBSおよび/またはクエン酸)中に処方される。
本明細書中の処方物はまた、処置される特定の適応症に必要な2つ以上の活性な化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含み得る。例えば、さらに免疫抑制剤を提供することが望ましいことがある。このような分子は、意図される目的に有効な量と組み合わせて適切に含まれる。
活性成分はまた、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されるマイクロカプセル(例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ−(メチルメタアクリレート)マイクロカプセル)内に封入され得る。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
インビボ投与用に使用される処方物は、代表的には滅菌されている。この滅菌は、滅菌された濾過膜に通して濾過することによって容易に達成される。
徐放調製物が調製され得る。徐放調製物の適当な例としては、抗CD19抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、そのマトリックスは、成形されたもの、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタアクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸との共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル共重合体、分解性乳酸−グリコール酸共重合体(例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注入可能なミクロスフェア))およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーが、100日間に亘って分子を放出することができるが、特定のヒドロゲルは、それよりも短い時間に亘ってタンパク質を放出する。カプセルに入った抗体が、体内に長時間残存すると、それらは、37℃の水分に曝露された結果として、変性または凝集し得る。その変性または凝集は、生物学的活性の損失をもたらし、また、免疫原性の変化をもたらし得る。合理的なストラテジーは、関与するメカニズムに応じて安定性について工夫され得る。例えば、凝集メカニズムが、チオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合の形成であることが見出される場合は、スルフヒドリル残基を改変すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、適切な添加物を使用して水分含有量を制御すること、および特定のポリマーマトリックス組成物を使用することによって、安定性は達成され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物に使用される薬学的に許容可能なキャリアは、ヒトADCCまたはヒトCDCに影響を与えない。
本明細書中で開示される抗CD19抗体組成物はまた、免疫リポソームとしても処方され得る。「リポソーム」とは、ヒトへの薬物(例えば、本明細書中で開示される抗CD19抗体)の送達に有用である、様々なタイプの脂質、リン脂質および/または界面活性剤から構成される小型のベシクルのことである。リポソームの構成要素は、通常、生物学的膜の脂質配列と類似の二重層を形成して並ぶ。本発明の抗体を含むリポソームは、当該分野で公知の方法、例えば、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,82:3688(1985);Hwang et al.,Proc Natl Acad.Sci.USA,77:4030(1980);および米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されているような方法によって調製される。循環時間の長いリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって作製され得る。リポソームを、規定のポアサイズのフィルターに通すことにより、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体は、Martin et al.,J.Biol.Chem.,257:286−288(1982)に記載されているようなリポソームと、ジスルフィド交換反応を介して結合体化され得る。治療薬がまた、リポソーム内に含まれ得る。Gabizon et al.,J.National Cancer Inst.,(19)1484(1989)を参照のこと。
好ましい薬学的処方物のいくつかとしては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:
(a)100mg(10mL)または500mg(50mL)のいずれかの使い捨てバイアルに入って10mg/mLの濃度で供給される、抗CD19抗体の静脈内(i.v.)投与用の、保存剤を含まない滅菌された液体濃縮物。この生成物は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、ポリソルベートおよび注射用滅菌水を使用して、i.v.投与用に処方され得る。例えば、この生成物は、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのポリソルベート80および注射用滅菌水中に処方され得る。pHは、6.5に調節される。
(b)使い捨てのガラスバイアルに入った、皮下(s.c.)注射用の滅菌された、凍結乾燥粉末。この生成物は、スクロース、L−塩酸ヒスチジン一水和物、L−ヒスチジンおよびポリソルベート20とともに処方され得る。例えば、使い捨てバイアルの各々は、150mgの抗CD19抗体、123.2mgのスクロース、6.8mgのL−塩酸ヒスチジン一水和物、4.3mgのL−ヒスチジンおよび3mgのポリソルベート20を含み得る。1.3mLの滅菌された注射用水でその使い捨てのバイアルを再構成することにより、約1.5mLの溶液が得られ、125mg/1.25mL(100mg/mL)の抗体がもたらされる。
(c)静脈内(IV)投与用の、保存剤を含まない滅菌された凍結乾燥粉末。この生成物は、α−トレハロース二水和物、L−ヒスチジンHCl、ヒスチジンおよびポリソルベート20(米国薬局方)とともに処方され得る。例えば、各バイアルは、440mgの抗CD19抗体、400mgのα,α−トレハロース二水和物、9.9mgのL−ヒスチジンHCl、6.4mgのL−ヒスチジンおよび1.8mgのポリソルベート20(米国薬局方)を含み得る。保存剤として1.1%ベンジルアルコールを含む20mLの静菌性の注射用水(BWFI)(米国薬局方)で再構成することにより、pHが約6の21mg/mLの抗体を含む複数回分の用量の溶液が得られる。
(d)抗CD19抗体がスクロース、ポリソルベート、リン酸二水素ナトリウム一水和物およびリン酸水素ナトリウム二水和物とともに処方される、静脈内注入用の滅菌された凍結乾燥粉末。例えば、使い捨てバイアルの各々は、100mgの抗体、500mgのスクロース、0.5mgのポリソルベート80、2.2mgのリン酸二水素ナトリウム一水和物および6.1mgのリン酸水素ナトリウム二水和物を含み得る。保存剤は含まない。10mLの注射用滅菌水(米国薬局方)で再構成した後、得られるpHは、約7.2である。
(e)事前に充填されている1mLの使い捨て注射器に入った状態で供給される皮下投与用の、保存剤を含まない滅菌された溶液。この生成物は、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素ナトリウム二水和物、クエン酸ナトリウム、クエン酸一水和物、マンニトール、ポリソルベート80および注射用水(米国薬局方)とともに処方され得る。pHを約5.2に調節するために水酸化ナトリウムを加えてもよい。
例えば、各注射器は、0.8mL(40mg)の薬物生成物がもたらされるように処方され得る。この各0.8mLは、40mgの抗CD19抗体、4.93mgの塩化ナトリウム、0.69mgのリン酸二水素ナトリウム二水和物、1.22mgのリン酸水素ナトリウム二水和物、0.24mgのクエン酸ナトリウム、1.04クエン酸一水和物、9.6mgのマンニトール、0.8mgのポリソルベート80および注射用水(米国薬局方)を含む。
(f)注射用滅菌水(SWFI)(米国薬局方)で再構成され、皮下(s.c.)注射として投与される、使い捨てバイアルに入った、保存剤を含まない滅菌された凍結乾燥粉末。この生成物は、スクロース、塩酸ヒスチジン一水和物、L−ヒスチジンおよびポリソルベートとともに処方され得る。例えば、75mgのバイアルは、129.6mgまたは112.5mgの抗CD19抗体、93.1mgのスクロース、1.8mgのL−塩酸ヒスチジン一水和物、1.2mgのL−ヒスチジンおよび0.3mgのポリソルベート20を含み得、そして、0.9mLのSWFI(米国薬局方)で再構成した後で、0.6mL中に75mgの抗体がもたらされるように作られている。150mgのバイアルは、202.5mgまたは175mgの抗CD19抗体、145.5mgのスクロース、2.8mgのL−塩酸ヒスチジン一水和物、1.8mgのL−ヒスチジンおよび0.5mgのポリソルベート20を含み得、そして1.4mLのSWFI(米国薬局方)で再構成した後で1.2mL中に150mgの抗体がもたらされるように作られている。
(g)注射用滅菌水による再構成用の滅菌された凍結乾燥(hyophylized)生成物。この生成物は、マンニトール、ヒスチジンおよびグリシンを使用した、筋肉内(IM)注射用の使い捨てバイアルとして処方され得る。例えば、使い捨てバイアルの各々は、100mgの抗体、67.5mgのマンニトール、8.7mgのヒスチジンおよび0.3mgのグリシンを含み得、そして1.0mLの注射用滅菌水で再構成されるときに1.0mL中に100mgの抗体がもたらされるように作られている。あるいは、使い捨てバイアルの各々は、50mgの抗体、40.5mgのマンニトール、5.2mgのヒスチジンおよび0.2mgのグリシンを含み得、そして0.6mLの注射用滅菌水で再構成されるとき、50mgの抗体がもたらされるように作られている。
(h)100mg/mLの濃度で供給される筋肉内(IM)注射用の、保存剤を含まない滅菌された溶液。この生成物は、ヒスチジン、グリシンおよび注射用滅菌水とともに使い捨てバイアル中に処方され得る。例えば、使い捨てバイアルの各々は、1mL中に100mgの抗体がもたらされるように作られている1.2mLの体積中に100mgの抗体、4.7mgのヒスチジンおよび0.1mgのグリシンとともに処方され得る。あるいは、使い捨てバイアルの各々は、0.5mL中に50mgの抗体がもたらされるように作られている、0.7mLまたは0.5mLの体積中に50mgの抗体、2.7mgのヒスチジンおよび0.08mgのグリシンとともに処方され得る。
特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、4℃で安定である。特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、室温で安定である。
5.4.2.抗体半減期
特定の実施形態において、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体の半減期は、少なくとも約4〜7日である。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体の平均半減期は、少なくとも約2〜5日、3〜6日、4〜7日、5〜8日、6〜9日、7〜10日、8〜11日、8〜12、9〜13、10〜14、11〜15、12〜16、13〜17、14〜18、15〜19または16〜20日である。他の実施形態において、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体の半減期は、約50日までであり得る。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法の抗体の半減期は、当該分野で公知の方法によって延長され得る。このような延長により、本発明の抗体組成物の投薬の量および/または頻度を次々と減少させていくことができる。改善されたインビボ半減期を有する抗体およびそれらを調製するための方法は、米国特許第6,277,375号;および国際公開WO98/23289およびWO97/3461に開示されている。
インビボにおける本発明の抗CD19抗体の血清循環は、不活性なポリマー分子(例えば、高分子量ポリエチレングリコール(PEG))を抗CD19抗体に、多機能性リンカーを用いて、または用いずに結合することによって延長され得る。ここで、その結合は、上記PEGを上記抗体のN末端もしくはC末端に部位特異的に結合体化することによるものであるか、またはリシル残基上に存在するイプシロン−アミノ基を介した結合のいずれかである。生物学的活性の損失を最小にする直鎖状または分枝状のポリマー誘導体化が使用される。結合体化の程度をSDS−PAGEおよび質量分析によって詳しくモニターすることにより、上記抗体へのPEG分子の適切な結合体化を確かめることができる。未反応PEGは、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーによって抗体−PEG結合体から分離され得る。PEG誘導体化抗体は、当業者に公知の方法、例えば、本明細書中に記載するイムノアッセイを使用して、結合活性ならびにインビボにおける有効性について試験され得る。
重鎖遺伝子および/または軽鎖遺伝子の核酸配列に1以上の変化を導入して、抗体のアミノ酸配列が変更することにより、所望のアミノ酸変化をもたらすことによって、組成物中の抗体の血漿半減期が延長され得る。このような変更としては、可変領域フレームワーク領域および/またはFc定常領域における変更が挙げられ得るが、これらに限定されない。抗体遺伝子配列を変化させるための技術は、当該分野で周知である。
さらに、インビボにおいてより安定であるか、またはインビボにおいてより長い半減期を有する抗体を作製するために、本発明の組成物および方法の抗体は、アルブミンと結合体化され得る。上記の技術は、当該分野で周知であり、例えば、国際公開番号WO93/15199、WO93/15200およびWO01/77137;および欧州特許第EP413,622号(これらのすべてが本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
5.4.3.投与および投薬
本発明によれば、本明細書中の5.4.3節に記載される投与方法および用量の各々は、5.6.節に記載される抗CD19免疫療法プロトコールに使用され得る。
ヒト患者への本発明の組成物の投与は、任意の経路であり得る。その経路としては、静脈内、皮内、経皮的、皮下、筋肉内、吸入(例えば、エアロゾルによる)、頬側(例えば、舌下)、局所的(すなわち、皮膚と粘膜(気道表面を含む)の表面の両方)、鞘内、関節内、胸膜内(intraplural)、脳内、動脈内、腹腔内、経口、リンパ管内、鼻腔内、直腸または膣への投与、局所カテーテルを通した灌流または直接的な病変内への注入が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、規定時間(例えば、0.5〜2時間)に亘る静脈内注入(push)または静脈内注入(infusion)によって投与される。本発明の組成物は、蠕動性手段によってか、または持効性製剤の形態で送達され得るが、任意の所与の場合において、当該分野で周知であるような最も適した経路は、被験体の種、年齢、性別および全般的な状態、処置される状態の種類および重症度ならびに/または投与される特定の組成物の性質(すなわち、投与量、処方物)などの因子に依存する。特定の実施形態において、投与経路は、ある期間に亘って、1週間に1回または2回のボーラスまたは持続注入を介したものである。他の特定の実施形態において、投与経路は、必要に応じて1週間に1回または2回、1以上の部位(例えば、大腿、腰、殿部、腕)への皮下注入によるものである。1つの実施形態において、本発明の組成物および/または方法は、外来患者に投与される。
特定の実施形態において、抗CD19抗体を含む組成物の用量は、mg/kg患者体重の単位である。他の実施形態において、抗CD19抗体を含む組成物の用量は、mg/kg患者除脂肪体重(すなわち、体脂肪含有量を引いた体重)の単位である。なおも他の実施形態において、抗CD19抗体を含む組成物の用量は、mg/m2患者体表面積の単位である。なおも他の実施形態において、抗CD19抗体を含む組成物の用量は、患者に投与する用量あたりのmgの単位である。用量の任意の度量法が、本発明の組成物および方法と組み合わせて使用され得、投与量の単位は、当該分野で標準的な手段によって変換され得る。
投与量は、被験体の年齢、性別、種および状態(例えば、自己免疫疾患または自己免疫障害の活性度)、細胞性抗体もしくは自己免疫性抗体の枯渇の所望の程度、処置されるべき疾患ならびに/または使用される特定の抗体もしくは抗原結合フラグメントを含む多くの因子に基づいて選択され得、また、投与量は、当業者によって決定され得ることを当業者は理解するだろう。例えば、本発明の組成物の有効量は、インビトロ試験システムまたは動物モデル(例えば、コトンラットまたはサル)試験システムから得られる用量反応曲線から推定され得る。抗体の効果を評価するためのモデルおよび方法は、当該分野で公知である(Wooldridge et al.,Blood,89(8):2994−2998(1997)(この全体が本明細書中に参考として援用される))。特定の実施形態において、特定の自己免疫疾患または自己免疫障害について、抗体治療の分野における標準的な治療的レジメンは、本発明の組成物および方法とともに使用され得る。
本発明の方法で使用され得る投薬レジメンの例としては、毎日、1週間に3回(間欠性)、毎週または14日毎が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、投薬レジメンとしては、毎月の投薬または6〜8週間毎の投薬が挙げられるが、これらに限定されない。
維持レジメンと比べて、一般に、最初の処置では投与量が多いことおよび/または投与の頻度が高いことを当業者は理解するだろう。
本発明の実施形態において、抗CD19抗体は、B細胞に結合するため、より効果的な(すなわち、少ない投与量で)B細胞の枯渇(本明細書中に記載するように)がもたらされ得る。患者のB細胞表面上のヒトCD19の密度が高い場合、高い程度の結合が達成され得る。代表的な実施形態において、抗体の投与量(必要に応じて、薬学的組成物の一部としての薬学的に許容可能なキャリア中)は、少なくとも約0.0005、0.001、0.05、0.075、0.1、0.25、0.375、0.5、1、2.5、5、10、20、37.5もしくは50mg/m2、および/または約500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、225、200、175、150、125、100、75、60、50、37.5、20、15、10、5、2.5、1、0.5、0.375、0.1、0.075または0.01mg/m2未満である。特定の実施形態において、投与量は、約0.0005〜約200mg/m2、約0.001〜150mg/m2、約0.075〜125mg/m2、約0.375〜100mg/m2、約2.5〜75mg/m2、約10〜75mg/m2および約20〜50mg/m2である。関連する実施形態において、使用される抗CD19抗体の投与量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5mg/kg患者体重である。特定の実施形態において、使用される裸の抗CD19抗体の用量は、少なくとも約1〜10、5〜15、10〜20または15〜25mg/kg患者体重である。特定の実施形態において、使用される抗CD19抗体の用量は、少なくとも約1〜20、3〜15または5〜10mg/kg患者体重である。好ましい実施形態において、使用される抗CD19抗体の用量は、少なくとも約5、6、7、8、9または10mg/kg患者体重である。特定の実施形態において、抗体の単一投薬単位(必要に応じて、薬学的組成物の一部としての薬学的に許容可能なキャリア中)は、少なくとも約0.5、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248または250マイクログラム/m2であり得る。他の実施形態において、用量は、1g/単一投薬単位までである。
上記用量のすべては、例示であり、本発明の組成物および方法と組み合わせて使用され得るが、しかしながら、トキシンまたは放射性治療薬と組み合わせて抗CD19抗体を使用する場合、上記の用量よりも低い用量が好ましい。特定の実施形態において、患者が低いレベルのCD19密度を有する場合、上記の用量よりも低い用量が好ましい。
本発明の特定の実施形態において、キメラ抗CD19抗体を使用する場合、そのキメラ抗体の用量または量は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16mg/kg患者体重よりも多い。本発明の他の実施形態において、キメラ抗CD19抗体を使用する場合、そのキメラ抗体の用量または量は、約1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1mg/kg患者体重未満である。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、本発明の抗体および/または組成物は、約375mg/m2より少ない用量;約37.5mg/m2より少ない用量;約0.375mg/m2より少ない用量および/または約0.075mg/m2〜約125mg/m2の用量で投与され得る。本発明の方法の好ましい実施形態において、投与レジメンは、低用量を含み、複数の間隔で投与される。例えば、1つの実施形態において、本発明の組成物は、約375mg/m2より少ない用量で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175または200日ごとの間隔で投与され得る。
明記される投薬により、少なくとも約1、2、3、5、7、10、14、20、30、45、60、75、90、120、150または180日以上の期間に亘って本発明の組成物および方法を使用して処置されるヒトにおいてB細胞枯渇をもたらすことができる。特定の実施形態において、プレB細胞(表面免疫グロブリンを発現していない)を枯渇する。特定の実施形態において、成熟B細胞(表面免疫グロブリンを発現している)を枯渇する。他の実施形態において、非悪性タイプのB細胞のすべてが、枯渇を示し得る。これらのタイプのB細胞いずれかを使用して、B細胞枯渇を測定することができる。B細胞枯渇は、体液(例えば、血液血清または骨髄などの組織)において測定され得る。本発明の方法の好ましい実施形態において、B細胞は、本発明の組成物および方法を使用する前の処置される患者におけるB細胞レベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%枯渇する。本発明の方法の好ましい実施形態において、B細胞は、ヒトの代表的な標準的B細胞レベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%枯渇する。関連する実施形態において、ヒトについての代表的な標準的B細胞レベルは、年齢、性別、体重および他の因子に関して、処置される患者と比較できる患者を使用して測定される。
本発明の特定の実施形態において、約125mg/m2以下の抗体または抗原結合フラグメントの投薬により、少なくとも約7、14、21、30、45、60、90、120、150または200日間に亘ってB細胞枯渇がもたらされる。別の代表的な実施形態において、約37.5mg/m2以下の投薬により、少なくとも約7、14、21、30、45、60、90、120、150または200日間に亘ってB細胞が枯渇する。なおも他の実施形態において、約0.375mg/m2以下の投薬により、少なくとも約7、14、21、30、45または60日間に亘ってB細胞の枯渇がもたらされる。別の実施形態において、約0.075mg/m2以下の投薬により、少なくとも約7、14、21、30、45、60、90、120、150または200日間に亘るB細胞の枯渇がもたらされる。なおも他の実施形態において、約0.01mg/m2、約0.005mg/m2または約0.001mg/m2以下の投薬でさえも、少なくとも約3、5、7、10、14、21、30、45、60、90、120、150または200日間、B細胞が枯渇する。これらの実施形態によれば、上記投薬を、任意の適当な経路によって投与することができるが、必要に応じて、皮下経路によって投与してもよい。
別の態様として、本発明は、B細胞枯渇および/またはB細胞障害の処置が、現在利用可能な方法で使用されている用量よりも低い用量の抗体または抗体フラグメントによって達成され得るという発見を提供する。従って、別の実施形態において、本発明は、B細胞を枯渇する方法および/またはB細胞障害を処置する方法を提供し、その方法は、CD19と特異的に結合する抗体の有効量をヒトに投与する工程を含み、ここで、約500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、225、200、175、150、125、100、75、60、50、37.5、20、10、5、2.5、1、0.5、0.375、0.25、0.1、0.075、0.05、0.001、0.0005mg/m2以下の投薬により、少なくとも約3、5、7、10、14、21、30、45、60、75、90、120、150、180または200日以上に亘って25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上のB細胞(循環B細胞および/または組織B細胞)の枯渇がもたらされる。代表的な実施形態において、約125mg/m2または75mg/m2以下の投薬により、少なくとも約7、14、21、30、60、75、90、120、150または180日間、少なくとも約50%、75%、85%または90%のB細胞の枯渇がもたらされる。他の実施形態において、約50、37.5または10mg/m2の投薬により、少なくとも約7、14、21、30、60、75、90、120または180日間、少なくとも約50%、75%、85%または90%のB細胞の枯渇がもたらされる。なおも他の実施形態において、約0.375または0.1mg/m2の投薬により、少なくとも約7、14、21、30、60、75または90日間、少なくとも約50%、75%、85%または90%のB細胞の枯渇がもたらされる。さらなる実施形態において、約0.075、0.01、0.001または0.0005mg/m2の投薬により、少なくとも約7、14、21、30または60日間、少なくとも約50%、75%、85%または90%のB細胞の枯渇がもたらされる。
本発明の特定の実施形態において、上記用量を増大させるか、または減少させることにより、血液または組織(例えば、骨髄が挙げられるがこれらに限定されない)中で一定用量を維持することができる。関連する実施形態において、本発明の組成物および方法の抗体の所望のレベルを維持するために、上記用量を約2%、5%、8%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%および95%増大または減少させる。
特定の実施形態において、投薬を、調節することができ、そして/または本発明の組成物および方法に対する患者の免疫原性応答に基づいて注入速度を遅くすることができる。
本発明の方法の1つの態様によれば、抗CD19抗体および/または本発明の組成物の負荷投与量を、初めに投与し得、その後、処置される自己免疫疾患または自己免疫障害が進行するまで維持用量を投与し得るか、または規定の処置経過(例えば、CAMPATHTM、MYLOTARGTMまたはRITUXANTM(最後のものは、さらなるデータが得られる場合、増加させた規定数の用量について患者を処置することが可能である)を続け得る。
本発明の方法の別の態様によれば、患者は、免疫原性応答を検出するためか、免疫原性応答を最小にするためか、または本発明の組成物および方法の有害作用を最小にするために本発明の組成物および方法で前処置され得る。
5.4.4.毒性試験
例えば、LD50(集団の50%に対して致死の用量)、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびIC50(50%阻害を達成するのに有効な用量)を決定するために、本発明の組成物および/または処置レジメンの寛容、毒性および/または有効性を、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手順によって測定し得る。好ましい実施形態において、上記用量は、循環B細胞もしくは循環免疫グロブリンまたはその両方の枯渇を少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%達成するのに有効な用量である。毒性作用と治療的作用との用量比は、治療用の指標であり、LD50/ED50比として表され得る。大きな治療的指標を示す治療が好ましい。有毒な副作用を示す治療を使用し得る場合、CD19を有しない細胞に対する損傷の可能性を最小にすることによって、副作用を低減するためにそのような因子をCD19発現細胞に標的化する送達系を想定するような治療がなされるべきである。
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、組成物の一連の投薬および/またはヒトにおける使用についての処置レジメンを処方する際に使用され得る。そのような因子の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどないかまたは全くないED50を含む一連の循環濃度内である。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。本発明の方法に使用される任意の治療について、治療的に有効な用量は、適切な動物モデルによって推定され得る。動物モデルの種に依存して、用量は、例えば、Freireich et al.,Cancer Chemotherapy Reports,NCI 40:219−244(1966)に提供されているような当該分野で認められている式に従って、ヒトにおいて使用するために見積もられる。細胞培養アッセイから得られるデータは、潜在的な毒性を予測するために有用であり得る。動物研究は、細胞培養において決定されたようなIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度の範囲を達成する特定の用量を処方するために使用され得る。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿薬物レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィー、ELISAまたは細胞ベースのアッセイにおいて測定され得る。
5.5.患者診断、活性および治療用のレジメン
本発明の特定の態様によれば、本発明の組成物および方法とともに使用される処置レジメンおよび用量は、多くの因子に基づいて選択される。その因子としては、処置される自己免疫疾患または自己免疫障害の段階が挙げられるがこれらに限定されない。患者または患者集団における自己免疫疾患または自己免疫障害の特定の段階に対する適切な処置レジメンが、当業者によって決定され得る。様々な段階の自己免疫疾患または自己免疫障害を有する患者を処置するための本発明の組成物の有効量を決定するために、当該分野の標準的なプロトコールを使用して、用量反応曲線を作成することができる。一般に、自己免疫疾患または自己免疫障害の活性がより高い患者は、自己免疫疾患または自己免疫障害の活性が低い患者と比較して、より長い期間にわたって投与され得る、より多い用量の投薬および/またはより高い頻度の投薬が必要である。
本発明の抗CD19抗体、組成物および方法を使用して、自己免疫疾患または自己免疫障害が処置され得る。用語「自己免疫疾患または自己免疫障害」とは、被験体自身の細胞、組織および/または器官に対する被験体の免疫学的反応によって引き起こされる、細胞、組織および/または器官の損傷を特徴とする被験体における状態のことをいう。用語「炎症性疾患」は、炎症、好ましくは慢性炎症を特徴とする被験体における状態のことをいうための用語「炎症性障害」と交換可能に使用される。自己免疫障害は、炎症を伴う場合もあるし、伴わない場合もある。さらに、炎症は、自己免疫障害によって引き起こされる場合もあるし、引き起こされない場合もある。従って、ある特定の障害が、自己免疫性障害と炎症性障害の両方として特徴付けられ得る。代表的な自己免疫疾患または自己免疫障害としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および自己免疫性睾丸炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡(cicatrical pemphigoid)、CREST症候群、寒冷凝集素病、クローン病、円板状狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、糖尿病、好酸球性筋膜炎(eosinophilic fascites)、線維筋痛症−線維筋炎、糸球体腎炎、グレーヴズ病、ギランバレー、橋本病、ヘノッホシェーンライン紫斑病、特発性肺線維症、特発性/自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパシー、若年性関節炎、扁平苔癬、エリテマトーデス(lupus erthematosus)、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病または免疫媒介性真性糖尿病、重症筋無力症、天疱瘡関連障害(例えば、尋常性天疱瘡)、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎(polychrondritis)、多腺症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー(Raynauld’s)現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、スウィート症候群、スティル病、エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎(temporal arteristis)/巨細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎血管炎などの血管炎、白斑ならびにウェゲナー肉芽腫症が挙げられるがこれらに限定されない。炎症性障害の例としては、喘息、脳炎(encephilitis)、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性障害、敗血症性ショック、肺線維症、未分化型(undifferentitated)脊椎関節症、未分化型関節症、関節炎、炎症性骨溶解、移植片対宿主病、じんま疹、Vogt−Koyanagi−Hareda症候群および慢性ウイルス感染症または慢性細菌感染症から生じる慢性炎症が挙げられるが、これらに限定されない。
CD19は、成熟B細胞上で発現し、例えば、CD20よりも早い分化段階のB細胞において発現するため、例えば、骨髄中のプレB細胞および未成熟B細胞(すなわち、細胞表面上にIgを発現していないB細胞)を枯渇させるのに特に適している。
5.5.1.自己免疫疾患または自己免疫障害の診断
自己免疫疾患または自己免疫障害の診断は、それぞれのタイプの自己免疫疾患または自己免疫障害が患者の間で異なって現れるという点で複雑になる。この症状の異質性は、代表的には複数の因子を使用して、臨床診断に至ることを意味する。一般に、臨床医は、因子(例えば、自己抗体の存在、サイトカインレベルの上昇、特定の器官の機能不全、発疹、関節腫脹、疼痛、骨再形成および/または運動性の低下が挙げられるがこれらに限定されない)を自己免疫疾患または自己免疫障害の主要な指標として使用する。RAおよびSLEなどの特定の自己免疫疾患または自己免疫障害についての診断の基準は、当該分野で公知である。特定の自己免疫疾患または自己免疫障害について、疾患の段階が特徴付けられており、それは当該分野で周知である。当該分野で周知の疾患の段階ならびに活性のスケールおよび/または疾患の重症度と同様に自己免疫疾患および自己免疫障害を診断するための当該分野で認識されている方法を使用して、本発明の組成物および方法を使用した自己免疫疾患または自己免疫障害に対する処置が必要な患者および患者集団を同定することができる。
5.5.2.自己免疫疾患または自己免疫障害を診断するための臨床基準
様々な自己免疫疾患または自己免疫障害についての診断基準が当該分野で公知である。これまで、診断は、代表的には、身体的症状の組み合わせに基づくものであった。より最近では、遺伝子発現プロファイリングなどの分子技術を適用することにより、自己免疫疾患または自己免疫障害の分子定義が開発されている。特定の自己免疫疾患または自己免疫障害についての臨床診断の代表的な方法を、下に提供する。他の適当な方法は、当業者に明らかであろう。
本発明の特定の実施形態において、自己免疫疾患の活性レベルが低い患者または初期の自己免疫疾患である患者(段階が判明している疾患について)は、本発明の抗CD19抗体組成物および方法を使用した処置の対象と同定され得る。自己免疫疾患の初期の診断は、その症状が一般的であることおよび疾患間の症状が重複していることに起因して、困難である。このような実施形態において、初期の段階で処置される患者または自己免疫疾患活性のレベルが低い患者は、自己免疫疾患または自己免疫障害の少なくとも1つの症状を含む症状を有する。関連する実施形態において、初期の段階で処置される患者または自己免疫疾患活性のレベルが低い患者は、自己免疫疾患または自己免疫障害の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の症状を含む症状を有する。それらの症状は、任意の自己免疫疾患および自己免疫障害の症状またはそれらの組み合わせであり得る。自己免疫疾患および自己免疫障害の症状の例を、下に記載する。
5.5.2.1.関節リウマチ
関節リウマチは、主に関節の裏打ち(lining)または滑膜の炎症を特徴とする慢性疾患である。関節リウマチは、長期間に亘る関節の損傷を引き起こすことにより、慢性疼痛、機能喪失および障害を生じ得る。関節リウマチに対する処置が必要である患者または患者集団を同定することは、1つのプロセスである。関節リウマチが陽性であるか、または陰性であるとの診断をもたらすような確定的な検査は存在しない。臨床医は、病歴、理学的検査、研究室における検査およびX線を含む多くのツールに頼る。
身体的症状は、患者間で広く異なり、その症状としては、通常、関節腫脹、関節の圧痛、関節の動きの低下、関節のアライメント不良、骨再形成、疲労、硬直(特に、朝および長時間座っているとき)、虚弱、インフルエンザに似た症状(微熱を含む)、長時間の着座に伴う疼痛、緩解または疾患不活性の前の疾患活性の発赤の発生、リウマチ小結節または皮膚下組織の塊(代表的には肘関節に見られ、それはより重篤な疾患活性を示唆し得る)、筋痛、食欲不振、うつ、体重減少、貧血、手足の冷えおよび/または汗ばみならびに涙および唾液の産生の低下を生じる眼および口の周辺の腺の介入(シェーグレン症候群)が挙げられるが、これらに限定されない。特に、シェーグレン症候群については、以下の参考文献が使用され得る。Fox et al.,Arthritis Rheum.,(1986)29:577−586,およびVitali et al.,Ann.Rheum.Dis.,(2002).61:554−558。
身体的症状とは別に、臨床医は、通常、検査(例えば、全血球計算値、赤血球沈降速度(ESRまたは沈降速度)、C反応性タンパク質、リウマチ因子、抗DNA抗体、抗核抗体(ANA)、抗カルジオリピン抗体、画像化研究、X線写真(X線)、関節または器官の磁気共鳴画像(MRI)、関節超音波、骨スキャンおよび骨密度測定(DEXA)が挙げられるがこれらに限定されない)を使用する。これらの検査は、存在し得る異常を調べる(すなわち、処置を必要とする患者または患者集団を同定する)ため、または薬物の副作用をモニターするためおよび進行を調べるために本発明の組成物および方法と組み合わせて使用され得る検査の例である。
関節リウマチの初期の症状は、通常、指、手および手首の小さい関節に見られる。関節の介入は、通常、対称的であり、これは、左手の関節が損傷すると、右手の同じ関節が損傷することになるということを意味する。一般に、関節の侵食が多くなるにつれて、疾患活性がより重篤になる。
より進行した疾患活性の症状としては、変形を引き起こす軟骨、腱、靭帯および骨に対する損傷ならびに関節の不安定性が挙げられる。その損傷によって、動きの範囲が制限されることになり、日常的な作業(フォークを握る、髪の毛を梳かす、シャツのボタンをかける)がより困難になっていく。皮膚潰瘍、感染に対する高い罹患率および健康状態の全般的な低下もまた、より進行した疾患活性の指標である。
関節リウマチの進行は、通常、3つの段階に分割される。第1の段階は、疼痛、温覚、硬直、赤みおよび関節周辺の腫れを引き起こす滑膜の裏打ちの腫れである。第2の段階は、細胞の急速な分裂および増殖または滑膜を肥厚させるパンヌスである。第3の段階では、炎症性細胞が、骨および軟骨を消化し得る酵素を放出し、それにより、関与する関節の形状およびアラインメントが失われ、ひどい疼痛および運動性の低下がもたらされることが多い。
分子技術を使用することによってもまた、処置を必要とする患者または患者集団を同定することができる。例えば、関節リウマチは、ヒト白血球抗原(HLA)−DR4およびHLA−DRB1遺伝子の対立遺伝子多型と関連することが示されている(Oilier and Winchester,1999,Genes and Genetics of Autoimmunity.Basel,Switzerland;Stastny,1978,N.Engl J Med 298:869−871;およびGregersen et al.,1987,Arthritis Rheum 30:1205−1213)。関節リウマチ患者は、2つの疾患関連HLA−DRB1*04対立遺伝子を発現していることが多い(Weyand et al.,1992 Ann Intern Med 117:801−806)。当該分野で標準的な方法を使用して対立遺伝子多型について患者を検査することができる。MHC遺伝子は、RAに対する感受性に影響を与える、生殖細胞系列によってコードされる唯一の遺伝子ではないが、処置を必要とする患者または患者集団を診断または同定するために使用され得る。女性であることが、明らかに関節リウマチの危険性を高め、そして女性患者は、男性患者よりも疾患の様々な表現型を示す。関節リウマチの任意の分子指標を使用して、本発明の抗CD19抗体組成物および方法を用いた処置を必要とする患者または患者集団を同定することができる。
活性のスケールに関して患者における関節リウマチの活性を測定するための方法は、当該分野で周知であり、本発明の薬学的組成物および方法と関連して使用され得る。例えば、米国リウマチ学会分類基準(American College of Rheumatologists Score;ACRスコア)を使用して、患者または患者集団の関節リウマチの活性を決定することができる。この方法によれば、患者は、改善と相関するスコアが与えられる。例えば、ACRによって定義されたファクターにおいて20%改善した患者は、ACR20スコアが与えられる。
関節リウマチの症状を示している患者は、最初に鎮痛薬で処置され得る。他の実施形態において、関節リウマチと診断された患者または関節リウマチの症状を示す患者は、最初に非ステロイド系抗炎症性(NSAID)化合物で処置される。その疾患が進行しているとき、および/またはその症状の重症度が増しているとき、関節リウマチは、ステロイド(例えば、デキサメタゾンおよびプレドニゾンであるがこれらに限定されない)の投与によって処置され得る。より重篤な場合は、関節リウマチの症状を軽減するために化学療法剤(例えば、メトトレキサートまたはサイトキシンであるがこれらに限定されない)が、投与され得る。
特定の場合において、関節リウマチは、金の投与によって処置され得るが、他の場合において、抗体またはレセプター(またはレセプターアナログ)などの生物学的物質が投与され得る。このような治療用抗体の例は、RituxinおよびRemicadeである。関節リウマチを処置するために投与され得る可溶性レセプターの代表例は、Enbrelである。
関節リウマチの極度に重篤な場合は、外科手術が必要となることがある。外科的アプローチとしては、患部滑膜または関節の裏打ちを除去することによって炎症組織の量を減少させる滑膜切除術;組織サンプルを取り出すか、はがれた軟骨を除去するか、断裂を修復するか、粗い表面を滑らかにするか、または患部滑膜組織を除去する、関節鏡視下手術;骨切り術(「骨を切断すること」という意味で、この手順は、関節にかかる体重を再分配することによって安定度を高めるために使用される);再建手術もしくは関節の置換のための関節置換術または関節形成術;あるいは関節固定術もしくは2本の骨を一緒して融合する融合術が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の方法の特定の実施形態において、患者は、上記のいずれかの治療の前、治療中または治療後に抗CD19抗体で処置され得る。さらに、本発明の抗CD19抗体は、上で述べた鎮痛薬、NSAID、ステロイドまたは化学療法剤のいずれかと組み合わせて、ならびに、関節リウマチを処置するために投与される生物学的物質と組み合わせて投与され得る。
5.5.2.2.全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデス(SLE)は、関節、筋肉および他の身体の部分に影響を及ぼす慢性(持続性)リウマチ性疾患である。SLEの処置を必要とする患者または患者集団は、身体的症状を調べることおよび/または研究室の検査結果によって同定され得る。身体的症状は、患者間で大きく異なる。例えば、SLEでは、代表的には、患者がSLEと診断される前に以下の11の症状のうち4つが存在する:1)頬部発疹:頬の発疹;2)円板状の発疹:赤い斑が生じる;3)羞明:太陽光に対する反応、それにより、皮膚発疹を起こすか、または皮膚発疹が広がる;4)口腔潰瘍:鼻または口の内部の潰瘍、通常、無痛;5)関節炎:2以上の末梢関節に関与する非びらん性関節炎(関節周辺の骨が破壊されない関節炎);6)漿膜炎胸膜炎または心膜炎:(肺または心臓の裏打ちの炎症);7)腎障害:尿中の過剰タンパク質(0.5g/日超またはテストスティック上の3+)および/または細胞円柱(赤血球細胞および/もしくは白血球細胞ならびに/または腎臓尿細管細胞由来の尿の異常な成分);8)神経性障害:てんかん発作(痙攣)および/またはそのような作用を引き起こすことが知られている薬物または代謝障害のない精神病;9)血液学的障害:溶血性貧血または白血球減少症(4,000細胞/立方ミリメートル未満の白血球数)またはリンパ球減少症(1,500リンパ球/立方ミリメートル未満)または血小板減少症(100,000血小板/立方ミリメートル未満)(白血球減少症およびリンパ球減少症は、2回以上検出されていなければならない。血小板減少症は、それを誘導することが知られている薬物が存在しない状況で検出されなければならない);10)抗核抗体:それを誘導することが知られている薬物が存在しない状況で抗核抗体(ana)についての検査が陽性、ならびに/あるいは11)免疫性障害:抗二本鎖抗DNA検査が陽性、抗sm検査が陽性、抗カルジオリピンなどの抗リン脂質抗体が陽性または梅毒検査(vdrl)が偽陽性。
SLEを示唆し得る他の身体的症状としては、貧血、疲労、発熱、皮膚発疹、筋痛、悪心、嘔吐および下痢、腫大した腺、食欲不振、冷たいと感じる(レイノー現象)、および体重減少が挙げられるが、これらに限定されない。
研究室の検査はまた、処置を必要とする患者または患者集団を同定するために使用され得る。例えば、血液検査は、SLEを有するほぼすべての人の血液中に見られる自己抗体を検出するために使用され得る。このような検査としては、それを誘導することが知られている薬物が存在しない状況下での抗核抗体(ANA)(Rahman,A.and Hiepe,F.,Lupus.(2002),ll(12):770−773)、抗二本鎖抗DNA(Keren,D.F.,Clin.Lab.Med.,(2002),22(2):447−474.)、抗Sm、抗カルジオリピンなどの抗リン脂質抗体(Gezer,S.Dis.Mon.,2003,49(12):696−741)についての検査または梅毒(VDRL)検査の偽陽性が挙げられ得るがこれらに限定されない。
他の検査としては、血液中を循環している補体タンパク質の量を測定するために使用され得る補体検査(C3、C4、CH50、CH100)(Manzi et al.,Lupus,2004,13(5):298−303)、炎症レベルを測定するために使用され得る沈降速度(ESR)またはC反応性タンパク質(CRP)、腎臓問題を検出するために使用され得る尿解析、肺損傷を検出するために撮影され得る胸部X線および心臓問題を検出するために使用され得るEKGが挙げられ得る。
慢性SLEは、付帯的損害を関係器官、特に腎臓に蓄積することに関与する。従って、初期の治療用介入が望ましく、すなわち、例えば、腎不全の前の治療用介入が望ましい。SLEに対して利用可能な処置は、関節リウマチに対して利用可能な処置と類似している。これらとしては、鎮痛性または非ステロイド性のいずれかの抗炎症性(NSAID)化合物による初期の処置が挙げられる。疾患が進行し、そして/またはその症状の重症度が増すと、SLEは、ステロイド(例えば、デキサメタゾンおよびプレドニゾンであるがこれらに限定されない)の投与によって処置され得る。
より重篤な場合は、SLEの症状を軽減するために化学療法剤(例えば、メトトレキサートまたはサイトキシンであるがこれらに限定されない)を投与し得る。しかしながら、このアプローチは、患者が妊娠可能年齢の女性である場合、好ましくない。そのような場合は、患者の生殖能力を干渉しない治療用アプローチが、非常に好ましい。
特定の場合では、SLEは、抗体またはレセプター(またはレセプターアナログ)などの生物学的物質の投与によって処置され得る。そのような治療用抗体の例は、RituxinおよびRemicadeである。SLEを処置するために投与され得る炎症性サイトカインに対する可溶性レセプターの代表例は、Enbrelである。
本発明の方法の特定の実施形態において、患者は、SLEの処置に使用される上記のいずれかの治療の前、治療中または治療後に抗CD19抗体で処置され得る。さらに、本発明の抗CD19抗体は、上で述べた鎮痛薬、NSAID、ステロイドまたは化学療法剤のいずれかと組み合わせて、ならびに、SLEを処置するために投与される生物学的物質と組み合わせて投与され得る。
5.5.2.3.特発性/自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)
特発性/自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血小板細胞と相互作用し、そしてその血小板細胞を破壊する免疫グロブリンG(IgG)自己抗体を特徴とする血液の障害である。代表的には、その抗体は、血小板膜糖タンパク質に特異的である。その障害は、急性(一時的、2ヶ月未満の継続)であることもあり、または慢性(6ヶ月より長く持続する)であることもある。ITPの処置を必要とする患者または患者集団は、患者の病歴、身体的症状および/または研究室の検査結果を調べることによって同定され得る(Provan,D.,and Newland,A.,Br.J.Haematol.(2002),118(4):933−944;George,J.N.,Curr.Hematol(2003),2(5):381−387;Karptkin,S.,Autoimmunity.(2004),37(4):363−368;Cines,D.B.,and Blanchette,V.S.,N.Engl.J.Med(2002),346(13)995−1008)。
身体的症状としては、紫がかって見える皮膚および粘膜(口の裏打ちなど)の領域が挙げられ、その部分では、出血が起き、結果として、血小板細胞数が減少する。主な症状は、出血であり、挫傷(「斑状出血」)および皮膚または粘膜上の小さな赤い斑点(「点状出血」)が挙げられ得る。いくつかの場合において、鼻、歯肉、消化管または尿路からの出血も起きることがある。稀に、脳内で出血が起きる。通常の徴候、症状および増悪因子としてはまた、突発性の発症(小児ITP)、漸進的な発症(成人ITP)、触知不可能な点状出血、紫斑、月経過多、鼻出血、歯肉出血、粘膜上の易出血性水疱、GI出血の徴候、機能性子宮出血、頭蓋内出血のエビデンス、触知不可能な脾臓、網膜の出血、最近の生ウイルス免疫(小児ITP)、最近のウイルス疾病(小児ITP)、血小板数が20,000/mm3未満のときの自発性出血および挫傷の傾向が挙げられるが、これらに限定されない。
ITPを診断するために使用され得る研究室の検査としては、全血球計算値検査、または骨髄中に適切な血小板形成細胞(巨核球)が存在することを確認するためならびに転移性癌および白血病などの他の疾患を除外するための骨髄検査が挙げられるが、これらに限定されない。単一性の血小板減少症は、研究室での評価に関して重要な知見である。末梢血スメアにおける巨大な血小板は、先天性血小板減少症を示唆する。頭蓋内出血に関する懸念がある場合、頭部CTスキャンによって、保証され得る。
ITPのための現在の処置としては、血小板輸血および脾臓摘出が挙げられる。他の処置としては、糖質コルチコイドの投与、免疫抑制剤の投与、血小板産生を促進する因子(例えば、IL−11)および血小板を産生する巨核球を活性化する因子(例えば、トロンボポエチン(TPO))の投与が挙げられる。
より重篤な場合は、ITPの症状を軽減するために、化学療法剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチンであるがこれらに限定されない)を投与し得る。しかしながら、このアプローチは、患者が妊娠可能年齢の女性である場合、好ましくない。そのような場合は、患者の生殖能力を干渉しない治療用アプローチが、非常に好ましい。
特定の場合では、ITPは、抗体またはレセプター(またはレセプターアナログ)などの生物学的物質の投与によって処置され得る。このような治療用抗体の例は、リツキシマブなどの抗CD20抗体である。
本発明の方法の特定の実施形態において、患者は、ITPの処置に使用される上記のいずれかの治療の前、治療中または治療後に抗CD19抗体で処置され得る。さらに、本発明の抗CD19抗体は、上で述べた因子のいずれかと組み合わせて、ならびに、ITPを処置するために投与される生物学的物質と組み合わせて投与され得る。
5.5.2.4.天疱瘡関連障害および類天疱瘡関連障害
天疱瘡関連障害と類天疱瘡関連障害の両方が、皮膚および/または粘膜表面の水疱形成状態を特徴とする自己免疫疾患の異種群である。両方の疾患において、水疱形成は、真皮および/または表皮の上皮細胞の表面上に発現している様々なタンパク質を認識する自己免疫性抗体によって引き起こされる。
天疱瘡関連疾患を有する患者において、水疱形成は、表皮内で起き、デスモグレイン1(Dsg1)および/またはデスモグレイン3(Dsg3)に特異的な自己抗体の結合に起因する。天疱瘡の古典的なサブタイプは、抗デスモグレイン抗体の特異性によって識別され得る。落葉状天疱瘡(PF)を有する患者は、抗Dsg1抗体のみを産生する。尋常性天疱瘡(PV)および腫瘍随伴性天疱瘡(PNP)を有する患者は、その病変が粘膜組織に限定されている場合、抗Dsg3抗体を産生する。対照的に、皮膚および粘膜の病変を有するPVおよびPNP患者は、抗Dsg1自己抗体と抗Dsg3自己抗体の両方を産生する(Nagasaka,T.et al.,J Clin.Invest.2004,114:1484−1492;Seishema,M.et al.,Arch Dermatol,2004.140(12):1500−1503;Amagai,M.,j.Dermatol.Sci,1999.20(2):92−102)。
類天疱瘡関連疾患(類天疱瘡(bulous phemphigoid)、じんま疹類天疱瘡(urticarial bullous pemphigoid)、瘢痕性類天疱瘡、後天性表皮水疱症および線状IgA水疱症が挙げられるがこれらに限定されない)を有する患者において、水疱形成は、表皮と真皮との界面に生じる。類天疱瘡疾患の最も通常な形態は、水疱性類天疱瘡抗原180(BP180)、水疱性類天疱瘡抗原230(BP230)、ラミニン5および/またはベータ4インテグリンと結合する自己抗体の存在を特徴とする類天疱瘡(BP)である(Fontao,L.et al.,Mol.Biol.Cell.2003),14(5):1978−1992;Challacombe,S.J.et al.,Acta Odontol Scand.(2001),59(4):226−234.)。
天疱瘡関連障害または類天疱瘡関連障害の処置を必要とする患者または患者集団は、患者の病歴、身体的症状および/または研究室の検査結果を調べることによって同定され得る(概説:Mutasim,D.F.,Drugs Aging.(2003),20(9):663−681;Yeh,S.W.et al.,Dermatol.Ther.(2003),16(3):214−223;Rosenkrantz,W.S.,Vet.Dermatol,15(2):90−98.)。
代表的には、これらの天疱瘡関連障害または類天疱瘡関連障害の診断は、皮膚バイオプシーによってなされる。バイオプシー皮膚サンプルは、疱疹(例えば、表皮または真皮と表皮の間)の解剖学的部位を顕微鏡で決定するために調べられる。これらの知見は、病変の部位における自己抗体の存在を検出する直接的または間接的な免疫組織化学的解析と相関する。患者由来の血清サンプルもまた、特定のタンパク質についてELISAベースの検査を使用して、循環自己抗体の存在について調べられ得る。ヒトサンプル中のデスモグレイン抗体を検出するためのいくつかのELISAベースのアッセイが、報告されている(Hashimoto,T.,Arch.Dermatol Res.(2003),295Suppl.1:S2−11)。バイオプシーサンプル中のこれらのデスモグレイン自己抗体が存在する場合、天疱瘡と診断される。
臨床的には、尋常性天疱瘡は、口腔内の疱疹の存在によって診断され得る。炎症またはびらんは、眼および眼瞼の裏打ちならびに鼻または生殖管の膜にも存在し得る。半数の患者は、皮膚、しばしば、鼠径部、腋下、顔面、頭皮および胸部にも疱疹またはびらんを発症する。落葉状天疱瘡は、表層性で、天疱瘡の比較的穏やかな形態である。落葉状天疱瘡は、通常、顔面および頭皮上に現れるが、背中および胸部も関わる。病変は、口腔内には生じない。疱疹は、最外側の表面に限局されることが多く、かゆみを伴うことが多い。腫瘍随伴性天疱瘡は、非常に稀であり、一般に癌を有する人に起きる。この病変は、有痛性であり、皮膚と同様に口腔、口唇および食道(嚥下管)に生じる。気道が関与するため、呼吸器疾患の徴候が生じ得、生命を危うくすることがある。
天疱瘡関連疾患または類天疱瘡関連疾患の現在の処置としては、皮膚状態に関連する不快感を軽減するためのクリーム剤および軟膏の局所的適用、抗炎症剤の投与または免疫抑制剤の投与が挙げられる。
本発明の方法の特定の実施形態において、患者は、類天疱瘡関連疾患または類天疱瘡関連疾患の処置に使用される上記のいずれかの治療の前、治療中または治療後に抗CD19抗体で処置され得る。さらに、本発明の抗CD19抗体は、上で述べた因子のいずれかと組み合わせて投与され得る。
5.5.2.5.自己免疫性糖尿病
本発明の特定の態様によれば、1A型糖尿病としても知られる自己免疫性糖尿病の処置を必要とする患者は、本発明の抗CD19抗体組成物および方法で処置され得る。1A型糖尿病は、最終的に膵臓のβ細胞を破壊する、遺伝的、環境的および免疫学的因子の相乗効果によって引き起こされる自己免疫疾患である。膵臓のβ細胞が破壊される影響は、β細胞質量の減少、インスリン産生/分泌の低下および血中グルコースレベルの漸進的上昇である。
1A型糖尿病の処置を必要とする患者または患者集団は、患者の病歴、身体的症状および/または研究室の検査結果を調べることによって同定され得る。症状は、突然生じることが多く、その症状としては、低血中インスリンレベルまたは血中インスリンが存在しないこと、口渇の増加、排尿増加、不断の空腹感、体重減少、かすみ目および/または疲労が挙げられるが、これらに限定されない。顕性糖尿病は、通常、大部分のβ細胞が破壊される(>80%)まで現れない。代表的には、患者が、ランダムな(最後の食事からの時間に関係ない)血中グルコース濃度≧11.1mmol/L(200mg/dL)および/または空腹時(少なくとも8時間カロリー摂取していない)血漿グルコース≧7.0mmol/L(126mg/dL)および/または2時間後血漿グルコース≧11.1mmol/L(200mg/dL)を有する場合、糖尿病が臨床的に診断される。理想的には、これらの検査は、診断が確定する前に、結果を比較するために異なる日に繰り返されるべきである(Harrison’s Principles of Internal Medicine,16thed./editors,Dennis L.Kasper,et al.The McGraw−Hill Companies,Inc.2005 New York,New York)。
1A型糖尿病の正確な病因は不明であるが、特定のHLA血清型との明らかな遺伝的関連が存在する。特に、自己免疫性糖尿病は、HLA DR3およびDR4血清型に関連する。DR3とDR4の両方が存在する場合、公知の最も高い遺伝的リスクがある。自己免疫性糖尿病の罹患率もまた、HLAクラスII(HLA−DQB1*0302と関連する。対照的に、DRB1−1501およびDQA1−0102−DQB1−0602を有するHLAハプロタイプは、1A型糖尿病の防護に関連する(Redondo,M.J.et al.,J.Clin.Endocrinol.Metabolism(2000),10:3793−3797)。
インスリンを産生するβ島細胞の破壊は、島細胞自己抗体(autoantiboides)、膵臓内および流入領域リンパ節内の活性化リンパ球浸潤、島細胞に対するTリンパ球応答性タンパク質、ならびに島内の炎症性サイトカインの放出を伴い得る(Harrison’s Principles of Internal Medicine,16th ed./editors,Dennis L.Kasper et al.,The McGraw−Hill Companies,Inc.2005,New York,New York)。
1A型糖尿病と関連する自己抗体としては、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、ICA−512/IA−2、フォグリン(phogrin)、島ガングリオシド(islet ganglioside)およびカルボキシペプチダーゼHと結合する抗体が挙げられるがこれらに限定されない(Gianani,R.and Eisenbarth,G.S.Immunol.,Rev.(2005),204:232−249;Kelemen,K.et al.,J.Immunol.(2004),172(6):3955−3962);Falorni,A.and Borozzetti,A.,Best Pract.Res.Clin.Endocrinol.Metab.2005,19(1):119−133)。
自己免疫性糖尿病に対する現在の処置としては、ビタミンD、コルチコステロイド、血圧を制御する因子および血糖症(血中糖レベル)を制御する因子の投与が挙げられる。
本発明の方法の特定の実施形態において、患者は、自己免疫性糖尿病の処置に使用される上記のいずれかの治療の前、治療中または治療後に抗CD19抗体で処置され得る。さらに、本発明の抗CD19抗体は、上で述べた因子のいずれかと組み合わせて投与され得る。
5.5.2.6.全身性硬化症(強皮症)および関連障害
強皮症としても知られる全身性硬化症は、不均一な群の疾患を包含する。その疾患としては、限局性(limited)皮膚疾患、広汎性皮膚疾患、サイン強皮症(Sine scleroderma)、未分化結合組織疾患、重複症候群、限局性強皮症、モルヘア、線状強皮症、En coup de saber、Buschkeの成年性浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、慢性移植片対宿主疾患、好酸球性筋膜炎、糖尿病における手指硬化および原発性アミロイドーシス(Primary anylooidosis)および多発性骨髄腫に関連するアミロイドーシス(anyloidosis)が挙げられるがこれらに限定されない(概説:Harrison’s Principles of Internal Medicine,16thed./editors,Dennis L.Kasper,et al.The McGraw−Hill Companies,Inc.2005 New York,New York)。
強皮症に関連する臨床的特徴としては、レイノー現象、皮膚肥厚、皮下(subcutaneious)石灰沈着症、毛細血管拡張、関節痛/関節炎、ミオパシー、食道運動障害、肺線維症、突発性(isolated)肺動脈高血圧症、うっ血性心不全および腎発症が挙げられ得る。患者がこれらの疾患症状の1以上を示す程度は、診断および有望な処置計画に影響を与え得る。
自己抗体としては:抗トポイソメラーゼ(topioisomerase)1、抗セントロメア、抗RNAポリメラーゼI、IIおよび/またはIII、抗Th RNP、抗U、RNP(抗フィブリラリン)、抗PM/Sci、抗核抗体(ANA)が挙げられる。
強皮症の処置を必要とする患者および患者集団の同定は、病歴および身体所見に基づき得る。強皮症の処置を必要とする患者および患者集団は、患者の病歴、身体的症状および/または研究室の検査結果を調べることによって同定され得る。診断は、顕著な皮膚肥厚を有しない患者においては遅れることがある。研究室の検査、X線検査、肺機能検査および皮膚または腎(腎臓)バイオプシーを使用して、体内器官の関与の程度および重症度を決定することができる。
疾患発症の初期の年月においては、強皮症は、多くの他の結合組織疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎および関節リウマチであるがこれらに限定されない)と似ていることがある。
全身性硬化症(強皮症)のほとんどの古典的な症状は、手足指硬化である。初期症状としては、時折、先細りおよび爪様の変形に進行する手の腫脹が挙げられる。強皮症を有するすべての人がこの程度の皮膚硬化を発症するわけではない。他の症状としては、モルヘア、線状の手足指硬化(指の硬化)、レイノー症候群、石灰沈着および毛細血管拡張が挙げられ得る。
抗核抗体(ANA)検査などの血液検査は、限局性強皮症と全身性強皮症の両方の診断において使用され得る。例えば、抗セントロメア抗体(ACA)および抗Scl−70抗体は、全身性硬化症の処置を必要とする患者であることの示唆である(Ho et al.,2003,Arthritis Res Ther.,5:80−93);抗topo IIアルファ抗体は、限局性(local)強皮症の処置を必要とする患者の示唆である;および抗topoIアルファ抗体は、全身性強皮症の処置を必要とする患者の示唆である。いくつかのタイプの強皮症およびこれらのタイプを診断するための方法が認識されており、当該分野で周知である。その強皮症のタイプとしては、若年性強皮症(Foeldvari,2002,Curr Opin Rheumatol,14:699−703;Cefle et al.,2004,Int J Clin Pract,58:635−638);限局性強皮症;結節性強皮症(Cannick,2003,J Rheumatol.,30:2500−2502);および全身性強皮症(石灰沈着症、レイノー、食道、手足指硬化および毛細血管拡張(CREST)、限局性全身性強皮症およびびまん性全身性強皮症が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない。全身性強皮症は、全身性硬化症(SSc)としても知られている。全身性硬化症はまた、進行性全身性硬化症(PSSc)または家族性進行性全身性硬化症(FPSSc)とも呼ばれ得る(Nadashkevich et al.,2004,Med Sci Monit,10:CR615−621;Frances et al.,2002,Rev Prat.52:1884−90)。全身性硬化症は、結合組織硬化症、細くなった動脈に関する血管異常および微小循環ならびに自己免疫性変化の存在を特徴とする多システムの障害である。
CRESTとして知られる全身性強皮症のタイプは、任意の皮膚の張り(tightening)を特徴としない。CRESTは、通常、指における石灰沈着症(カルシウム沈着);レイノー;嚥下が困難となり得る食道の筋肉制御の低下;手足指硬化、指の骨の先細り変形;および毛細血管拡張、指、顔面の皮膚または口腔内における小さな赤い斑を特徴とする。代表的には、これらの症状のうちの2つがCRESTの診断に十分である。CRESTは、単独または任意の他の形態の強皮症もしくは他の自己免疫疾患と組み合わせて発症し得る。
限局性強皮症は、くぼむ指の潰瘍(pitting digital ulcer)(レイノーに続発)および/または肺線維症を伴う指に限られた堅い皮膚を特徴とする。顔面および頸部の皮膚もまた、限局性強皮症に関連し得る。
びまん性強皮症は、いずれのときでも近位の堅い皮膚が存在するときに診断される。近位とは、基準点に最も近い位置を意味する。近位の堅い皮膚は、手首より上または肘より上の皮膚緊張であり得る。代表的には、肘と手首の間のみの皮膚緊張を有する患者は、びまん性全身性強皮症または限局性全身性強皮症のいずれかの診断を受けるが、それは、診断する臨床医が使用する近位の意味に依存する。
強皮症の現在の治療としては、6−メトキシプソラレンの後の体外フォトフェレーシス(photophoresis)および自家幹細胞移植が挙げられる。
強皮症のための現在の処置としては、以下の薬剤、ペニシラミン、コルヒチン(cholchicine)、インターフェロンアルファ、インターフェロン(interpheron)ガンマ、クロラムブシル、シクロスポリン、5−フルオロウラシル、シクロホスファミド、ミノサイクリン、サリドマイド、エタネルセプトまたはメトトレキサートの投与が挙げられる。
5.5.3.サンプルまたは被験体中のCD19密度の測定
必要ではないのだが、CD19密度についてのアッセイを使用して患者の診断をさらに特徴付けることができる。細胞に結合する抗体の密度を測定するための方法は、当業者に公知である(例えば、Sato et al.,J.Immunology,165:6635−6643(2000)(これは、特異的なCD抗原の細胞表面密度を評価する方法を開示している)を参照のこと)。他の標準的な方法としては、スキャッチャード解析が挙げられる。例えば、抗体またはフラグメントを、単離し、放射標識し得る。そして、その放射標識された抗体の特異的な活性を測定する。次いで、その抗体を、CD19を発現している標的細胞と接触させる。この細胞に関連する放射能を、測定し得、そして、特異的な活性に基づいて、その細胞に結合している抗体または抗体フラグメントの量が決定される。
あるいは、蛍光励起細胞分取(FACS)解析が使用され得る。一般に、上記抗体または抗体フラグメントは、CD19を発現している標的細胞に結合する。その抗体に結合する第2の試薬、例えば、蛍光色素(flourochrome)標識された抗免疫グロブリン抗体を加える。次いで、蛍光色素染色が測定され得、そしてそれを使用して、その細胞に結合している抗体または抗体フラグメントの密度が決定される。
別の適当な方法としては、上記抗体または抗体フラグメントをフルオロフォアなどの検出可能な標識で直接標識し、そして標的細胞に結合させることができる。標識とタンパク質との比が、決定され、そして、基準ビーズに結合している既知量の標識を有するビーズと比較される。その細胞に結合している標識の量と既知基準との比較を使用することにより、その細胞に結合している抗体の量を計算することができる。
なおも別の態様において、本発明は、サンプルまたは個体におけるCD19の存在および/または密度をインビトロまたはインビボにおいて検出するための方法を提供する。この方法はまた、疾患および処置の効果をモニターするためならびに投与される抗体の用量を決定するためおよびその用量を調節するために有用であり得る。このインビボにおける方法は、画像化技術(例えば、PET(ポジトロン放出断層撮影)またはSPECT(単一光子放射型コンピュータ断層撮影))を使用して行うことができる。あるいは、共有結合したキレート剤を使用してインジウムで抗CD19抗体を標識することができる。得られる抗体は、ZEVALINTM(インジウム標識抗CD20mAb)(Biogen Idec)を使用してCD20抗原を画像化するのと同じ方法で、標準的なガンマカメラを使用して画像化され得る。
1つの実施形態において、上記インビボ方法は、本発明の抗体とヒトCD19抗原との複合体が形成され得る条件下で、試験されるサンプルを(必要に応じて、コントロールサンプルとともに)本発明のヒト抗CD19抗体と接触させることによって行われ得る。次いで、複合体の形成を(例えば、FACS解析またはウエスタンブロッティングを使用して)検出する。試験サンプルとともにコントロールサンプルを使用する場合、複合体は、両方のサンプルにおいて検出され、サンプル間の複合体の形成における任意の統計的有意差が、試験サンプル中のヒトCD19の存在を示唆する。
他の実施形態において、平均蛍光(florescence)強度が、CD19密度の尺度として使用され得る。このような実施形態において、B細胞を患者から取り出し、そして蛍光(florescent)標識で標識されているCD19抗体で染色し、その蛍光強度をフローサイトメトリーを使用して測定する。蛍光強度は、B細胞あたりの強度の平均として測定および表示され得る。このような方法を用いることにより、CD19密度を表す平均蛍光強度が、本発明の方法および組成物を使用して、処置の前後の患者について、または患者間で、およびB細胞上の正常レベルのhCD19と比較され得る。
B細胞上のCD19発現の密度が決定された患者において、CD19の密度は、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体とともに使用される投薬レジメンおよび/または処置レジメンの決定および/または調節に影響を与え得る。例えば、CD19の密度が高い場合、ヒトにおいてADCCをそれほど効果的に媒介しない抗CD19抗体を使用することが可能であり得る。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法を使用して処置される患者のCD19密度が低い場合、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体がより多く投薬され得る。他の実施形態において、本発明の組成物および方法を使用して処置される患者のCD19密度が低い場合、少ない投与量の本発明の組成物および方法の抗CD19抗体が使用され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法を使用して処置される患者のCD19密度が高い場合、より少ない投与量の本発明の組成物および方法の抗CD19抗体が使用され得る。特定の実施形態において、CD19密度は、患者におけるCD20密度と比較され得るか、CD19密度は、ヒトまたは特定の患者集団についての平均CD19密度と比較され得るか、またはCD19密度は、治療前または自己免疫疾患または自己免疫障害の発症前の患者(patietn)におけるCD19レベルと比較され得る。特定の実施形態において、CD19が、B細胞の表面上に存在する場合、本発明の組成物および方法を使用して処置される患者は、自己免疫疾患または自己免疫障害を有する。
5.6.免疫療法のプロトコール
本発明によれば、本明細書中の5.6節に記載されている免疫療法のプロトコールの各々は、5.4.3節に記載されている投与経路および投与方法ならびに用量を利用することができる。
「抗CD19免疫療法」と本明細書中でよばれる治療用レジメン/治療用プロトコールにおいて使用される抗CD19抗体組成物は、裸の抗体、免疫結合体および/または融合タンパク質であり得る。本発明の組成物は、単一薬剤治療として、または他の治療薬または他のレジメンと組み合わせて使用され得る。上記抗CD19抗体または免疫結合体は、1以上の治療薬の投与前、投与と同時または投与後に投与され得る。本発明の組成物との併用療法レジメンにおいて使用され得る治療薬は、細胞の機能を阻害または妨害し、そして/または細胞の破壊を引き起こす任意の物質を含む。例としては、放射性同位体、化学療法剤およびトキシン(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性なトキシンまたはそれらのフラグメント)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中に記載される治療用レジメンまたは任意の所望の処置レジメンは、ネイティブなCD19抗原に加えてまたはその代わりにヒトCD19抗原を発現する、下の6.2節に記載されるマウスモデルなどのトランスジェニック動物モデルを使用して、有効性について試験され得る。従って、抗CD19抗体処置レジメンは、動物モデルにおいて試験されることにより、ヒトへの投与前に有効性を判定することができる。
本発明の抗CD19抗体、組成物および方法は、自己免疫疾患または自己免疫障害を処置するために用いられ得る。
5.6.1.抗CD19免疫療法
本発明によれば、「抗CD19免疫療法」は、本明細書中に記載される治療用レジメンのいずれかに従う本発明の抗CD19抗体のいずれかの投与を包含する。その抗CD19抗体は、裸の抗体または免疫結合体または融合タンパク質として投与され得る。
抗CD19免疫療法は、自己免疫疾患または自己免疫障害を処置するための治療用の単一の薬剤としての抗CD19抗体の投与を包含する。抗CD19免疫療法は、自己免疫疾患または自己免疫障害の活性のレベルが低いヒト患者を処置する方法を包含する。抗CD19免疫療法は、自己免疫疾患または自己免疫障害の活性のレベルが高いヒト患者を処置する方法を包含する。抗CD19免疫療法は、段階によって特徴付けられている自己免疫疾患または自己免疫障害の初期であるヒト患者を処置する方法を包含する。抗CD19免疫療法は、段階によって特徴付けられている自己免疫疾患または自己免疫障害の後期であるヒト患者を処置する方法を包含する。抗CD19免疫療法は、自己免疫疾患または自己免疫障害処置する方法を包含し、ここで、前記抗CD19抗体は、ADCC、CDCまたはアポトーシスを媒介する。抗CD19免疫療法は、自己免疫疾患または自己免疫障害を処置する方法を包含し、ここで、前記抗CD19抗体は、患者が、自己免疫疾患または自己免疫障害の任意の処置を受ける前に投与される。
好ましい実施形態において、自己免疫疾患または自己免疫障害を有するヒト被験体は、抗CD19抗体を投与することによって処置され得る。特定の実施形態において、抗CD19抗体は、好ましくはヒトADCCを媒介するヒト抗体またはヒト化抗体である。初期の疾患または単一薬剤治療の場合、好ましくはADCCを媒介する任意の抗CD19抗体が、ヒト被験体(マウス抗体およびキメラ抗体を含む)において使用され得る;しかしながら、ヒト抗体およびヒト化抗体が好ましい。
IgG1またはIgG3ヒトアイソタイプの抗体が治療用として好ましい。しかしながら、IgG2またはIgG4ヒトアイソタイプがヒトADCCを媒介する場合、それらが使用され得る。このようなエフェクター機能は、対象とする抗体が、インビトロまたはインビボにおいてエフェクター細胞による的細胞の溶解を媒介する能力を測定することによって評価され得る。
使用される抗体の用量は、循環B細胞を枯渇させるのに十分であるべきである。治療の進行は、血液サンプルを分析することによって、患者においてモニターされ得る。他の臨床的な改善の徴候を使用して、治療をモニターすることができる。
本発明の組成物および方法に関連して使用され得る、B細胞の枯渇を測定するための方法は、当該分野で周知であり、その方法としては、以下の実施形態が挙げられるがこれらに限定されない。1つの実施形態において、循環B細胞の枯渇は、B細胞の量を規定するためにB細胞に結合する抗CD19抗体以外の試薬を使用したフローサイトメトリーによって測定され得る。他の実施形態において、血液中の抗体レベルは、標準的な血清分析を使用してモニターされ得る。このような実施形態において、B細胞の枯渇は、B細胞によって産生されることが知られている抗体に対する量を規定することによって間接的に測定される。次いで、その抗体のレベルをモニターすることによって、B細胞の枯渇および/または機能的な枯渇が判定される。別の実施形態において、B細胞の枯渇は、B細胞を同定する免疫化学的染色によって測定され得る。このような実施形態において、患者組織から抽出されるB細胞を、顕微鏡用スライド上に置き、標識し、そして存在の有無について調べることができる。関連する実施形態において、治療前と治療後に抽出されたB細胞との比較を行うことにより、B細胞の存在の差を判定する。
本発明の実施形態において、抗CD19抗体が単一薬剤治療として投与される場合、本発明は、様々な処置レジメンの使用を企図する。その処置レジメンは、自己免疫疾患または自己免疫障害の活性に応じた1以上の処置サイクルを含み得る。一般に、疾患活性が低い場合、より少ない処置が施される。2サイクル以上が必要である場合、任意の2つの処置サイクル間の時間を固定してもよいし、疾患活性、疾患反応性、薬物忍容性、回復時間、薬物動態学的(PK)パラメータおよび/または薬理学的反応性における患者特異的な差を適応させるために変動させてもよい。例えば、特定の実施形態において、任意の2つの処置サイクル間の時間は、約2ヶ月、4ヶ月、8ヶ月、12ヶ月、18ヶ月または24ヶ月であり得る。特定の実施形態において、任意の2つの処置サイクル間の時間は、約1ヶ月、3ヶ月、5ヶ月、9ヶ月、11ヶ月、17ヶ月、19ヶ月、21ヶ月または25ヶ月であり得る。特定の実施形態において、任意の2つの処置サイクル間の時間は、約2〜4、3〜5、6〜8、7〜9、8〜10、9〜11、10〜12、11〜13、12〜14、13〜15、14〜16、15〜17、16〜18、17〜19、18〜20、19〜21、20〜22、21〜23または22〜24ヶ月であり得る。特定の実施形態において、任意の2つの処置サイクル間の時間は、約24ヶ月であり得る。
本発明の抗CD19抗体組成物の1サイクルあたりの注入回数は、固定してもよいし、疾患活性、疾患反応性、薬物忍容性、回復時間、PKパラメータおよび/または薬理学的反応性における患者特異的な差を許容するために変動させてもよい。特定の実施形態において、1サイクルあたりの注入回数は、1、2、3、4、5または6回の注入であり得る。特定の実施形態において、1サイクルあたりの注入回数は、1回の注入であり得る。
いずれの注入についても、本発明の抗CD19抗体組成物の投与用量は、固定してもよいし、初回薬物負荷を許容するため、ならびに/または質量、体表面積、疾患活性、疾患反応性、薬物忍容性、回復時間、PKパラメータおよび/もしくは薬理学的反応性の患者特異的な差を相殺するために変動させてもよい。特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体組成物の1注入あたりの投与用量は、約0.1mg/Kg患者体重、0.3mg/Kg患者体重、1.0mg/Kg患者体重、2.0mg/Kg患者体重、4.0mg/Kg患者体重または10mg/Kg患者体重である。特定の実施形態において、本発明の抗CD19抗体組成物の1注入あたりの投与用量は、約0.1〜0.3、0.3〜0.5、0.5〜0.7、0.7〜0.9、0.9〜1.1、1.1〜1.3、1.3〜1.5、1.5〜1.7、1.7〜1.9、1.9〜2.1、2.1〜2.3、2.3〜2.5、2.5〜2.7、2.7〜2.9、2.9〜3.1、3.1〜3.3、3.3〜3.5、3.5〜3.7、3.7〜3.9、3.9〜4.1、4.1〜4.3、4.3〜4.5、4.5〜4.7、4.7〜4.9、4.9〜5.1、5.1〜5.3、5.3〜5.5、5.5〜5.7、5.7〜5.9、5.9〜6.1、6.1〜6.3、6.3〜6.5、6.5〜6.7、6.7〜6.9、6.9〜7.1、7.1〜7.3、7.3〜7.5、7.5〜7.7、7.7〜7.9、7.9〜8.1、8.1〜8.3、8.3〜8.5、8.5〜8.7、8.7〜8.9、8.9〜9.1、9.1〜9.3、9.3〜9.5、9.5〜9.7、9.7〜9.9または9.9〜10.1mg/Kg患者体重である。特定の実施形態において、1注入あたりの投与用量は、約0.3mg/Kg患者体重である。
2回以上の注入が必要である場合、本発明の抗CD19抗体組成物の任意の2回の注入間の時間は、固定してもよいし、疾患活性、疾患反応性、薬物忍容性、回復時間、PKパラメータおよび/または薬理学的反応性の患者特異的な差を適応させるために変動させてもよい。特定の実施形態において、任意の2回の注入間の時間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28日、29、30、32、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45日である。特定の実施形態において、任意の2回の注入間の時間は、約1〜3、1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、1〜25、1〜30、1〜35、1〜40または1〜45日である。特定の実施形態において、任意の2回の注入間の時間は、1日である。
本発明の特定の態様によれば、本発明の組成物および方法に使用される抗CD19抗体は、裸の抗体である。関連する実施形態において、使用される裸の抗CD19抗体の用量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5mg/kg患者体重である。特定の実施形態において、使用される裸の抗CD19抗体の用量は、少なくとも約1〜10、5〜15、10〜20または15〜25mg/kg患者体重である。特定の実施形態において、使用される裸の抗CD19抗体の用量は、少なくとも約1〜20、3〜15または5〜10mg/kg患者体重である。好ましい実施形態において、使用される裸の抗CD19抗体の用量は、少なくとも約5、6、7、8、9または10mg/kg患者体重である。
特定の実施形態において、上記用量は、4〜8週間連続して、毎週投与される約375mg/m2の抗CD19抗体を含む。特定の実施形態において、上記用量は、4〜8週間連続して、毎週投与される少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg/kg患者体重である。
上で記載した抗CD19抗体の代表的な用量は、5.4.3.節に記載したように投与され得る。1つの実施形態において、上記用量は、単回注入の用量である。他の実施形態において、上記用量は、一定期間に亘って投与される。他の実施形態において、上記用量は、一定期間に亘って複数回投与される。その期間の単位は、何日、何ヶ月または何週であり得る。抗CD19抗体の反復投与が、有毒な副作用とのバランスをとりながら、治療有益性を達成するのに適した間隔で行われ得る。例えば、反復投与が用いられる場合、抗体による処置を繰り返す前に患者の単球数が回復し得る時間間隔が好ましい。単球集団が、患者におけるADCC機能を反映するため、この投薬レジメンによって、処置の有効性が最適化される。
特定の実施形態において、患者が治療に対して応答性である限り、本発明の組成物は、ヒト患者に投与される。他の実施形態において、患者の疾患が進行しない限り、本発明の組成物はヒト患者に投与される。関連する実施形態において、本発明の組成物は、患者の疾患が進行しなくなるまでか、または一定期間進行しなくなるまでヒト患者に投与される。そして、その疾患が再発しないか、または再度進行を始めない限り、その患者は本発明の組成物を投与されない。例えば、患者は、約4〜8週間、上記用量のいずれかで処置され得、その間、患者は、疾患の進行(すなわち、自己免疫疾患または自己免疫障害の活性)についてモニターされる。疾患進行が停止するか、または逆行したら、その患者が再発するまで、すなわち、処置される疾患が再び発症するか、または進行するまで、患者は、本発明の組成物を投与されなくなる。この再発時または進行時に、患者は、最初に使用していたのと同じ投薬レジメンを用いて、または上記の他の用量を使用して、再び処置され得る。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、負荷投与量として投与され得、その後、一定期間に亘って複数回、低用量(維持用量)で投与され得る。このような実施形態において、上記用量は、時期を選び得、また、量は、効果的なB細胞の枯渇を維持するように調節され得る。好ましい実施形態において、負荷投与量は、約10、11、12、13、14、15、16、17または18mg/kg患者体重であり、維持用量は、少なくとも約5〜10mg/Kg患者体重である。好ましい実施形態において、維持用量は、7、10、14または21日ごとの間隔で投与される。維持用量は、毒性が現れるまで、血小板数が減少するまで、疾患進行がなくなるまで、患者がその薬物に対して免疫応答を示すまで、または疾患が末期の状態に進行するまで、無期限に継続され得る。なおも他の実施形態において、本発明の組成物は、疾患が末期の段階に進行するまで、ヒト患者に投与される。
本発明の実施形態において、患者の循環単球レベルが、処置レジメンの一部としてモニターされる場合、投与される抗CD19抗体の投薬は、単球数が回復し得るように間隔があけられ得る。例えば、本発明の組成物は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日ごとの間隔で投与され得る。
本発明の実施形態において、抗CD19抗体がトキシンと結合体化されている場合、またはトキシンと併せて投与される場合、抗CD19抗体の用量は、トキシン用量に基づいて調節され得、そしてそのトキシン用量は、使用される特定のタイプのトキシンに依存することを当業者は理解するだろう。代表的には、1つのトキシンが使用される場合、抗CD19抗体の用量は、裸の抗CD19抗体で使用される用量より少ない。適切な用量は、当該分野で周知の技術を使用して特定のトキシンについて決定され得る。例えば、トキシンとともに投与されるとき、またはトキシンと結合体化されるとき、抗CD19抗体の最大耐用量を決定するために、用量設定試験が行われ得る。
本発明の実施形態において、抗CD19抗体が放射性治療薬と結合体化されるか、または放射性治療薬と併せて投与される場合、抗CD19抗体の用量は、使用される放射線治療薬に応じて変動する。特定の好ましい実施形態において、2工程プロセスが使用される。第1に、裸の抗CD19抗体を含む組成物をヒト患者に投与し、約6、7、8、9または10日後に少量の放射線治療薬を投与する。第2に、低用量治療の寛容、分配およびクリアランスが測定されたら、患者にある用量の裸の抗CD19抗体を投与し、続いて、治療量の放射線治療薬を投与する。このような処置レジメンは、ZEVALINTM(インジウム標識された抗CD20mAb)(Biogen Idec)またはBEXXARTM(GSK,Coulter Pharmaceutical)を使用した非ホジキンリンパ腫の処置に認められている処置レジメンに類似している。
5.6.2.免疫調節性因子との併用
本発明の抗CD19免疫療法はまた、免疫調節性因子と併用してもよい。このアプローチにおいて、キメラ化抗体の使用が好ましく、ヒト抗CD19抗体またはヒト化抗CD19抗体の使用が最も好ましい。用語「免疫調節性因子」とは、併用療法に対して本明細書中で使用されるとき、宿主の免疫系を抑制、遮断または増強するように作用する物質のことをいう。
免疫調節性因子の例としては、タンパク質性物質(例えば、サイトカイン、ペプチド模倣物および抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fv、ScFv、FabまたはF(ab)2フラグメントまたはエピトープ結合フラグメント))、核酸分子(例えば、アンチセンス核酸分子、iRNAおよび三重らせん)、小分子、有機化合物および無機化合物が挙げられるが、これらに限定されない。特に、免疫調節性因子としては、メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、サイトキサン(cytoxan)、Immuran、シクロスポリンA、ミノサイクリン、アザチオプリン、抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド(steriods)、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナル、マロノニトリノアミンド(malononitriloaminde)(例えば、レフルノミド(leflunamide))、T細胞レセプター調節因子(modulator)およびサイトカインレセプター調節因子が挙げられるが、これらに限定されない。免疫抑制剤(immunosupressant)の例としては、ミコフェノール酸モフェチル(CELLCEPTTM)、D−ペニシラミン(CUPRIMINETM、DEPENTM)、メトトレキサート(RHEUMATREXTM、TREXALLTM)および硫酸ヒドロキシクロロキン(PLAQUENILTM)が挙げられるが、これらに限定されない。
免疫調節性因子はまた、サイトカイン産生を抑制し、自己抗原発現をダウンレギュレートするかもしくは抑制し、またはMHC抗原を遮蔽する物質を含み得る。このような因子の例としては、2−アミノ−6−アリール−5−置換ピリミジン(米国特許第4,665,077号)、アザチオプリン(または、アザチオプリンに有害作用がある場合、シクロホスファミド);ブロモクリプチン;グルタルアルデヒド(米国特許第4,120,649号に記載されているようにMHC抗原を遮蔽する);MHC抗原およびMHCフラグメントに対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびデキサメタゾン)などのステロイド;サイトカインまたはサイトカインレセプターアンタゴニスト(抗インターフェロン−γ、−βまたは−α抗体を含む);抗腫瘍壊死因子−α抗体;抗腫瘍壊死因子−β抗体;抗インターロイキン−2抗体および抗IL−2レセプター抗体;抗L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;pan−T抗体、好ましくは抗CD3抗体または抗CD4/CD4a抗体;LFA−3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開のWO90/08187);ストレプトキナーゼ;TGF−β;ストレプトドルナーゼ;宿主由来のRNAまたはDNA;FK506;RS−61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞レセプター(米国特許第5,114,721号);T細胞レセプターフラグメント(Offner et al.,Science 251:430−432(1991);WO90/11294;およびWO91/01133);ならびにT10B9などのT細胞レセプター抗体(EP340,109)が挙げられる。
サイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカインおよび従来のポリペプチドホルモンが挙げられるがこれらに限定されない。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン);副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH));肝臓成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトーゲン;腫瘍壊死因子−α;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(thrombopoiotin)(TPO);NGF−αなどの神経成長因子;血小板成長因子;トランスフォーミング成長因子(TGF)(例えば、TGF−αおよびTGF−α);インスリン様成長因子−Iおよび−II;エリトロポイエチン(EPO);骨誘導因子(osteoinductive factor);インターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージ−CgP(GM−CSP);ならびに顆粒球−CSF(G−CSF);インターロイキン(IL)(例えば、IL−1、IL−1a、IL−2、1L−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−1I、IL−12、IL−15);腫瘍壊死因子(例えば、TNF−αまたはTNF−β);ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。本明細書中で使用されるとき、用語サイトカインは、天然の起源由来または組換え細胞培養由来のタンパク質およびネイティブな配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。特定の実施形態において、この方法は、1以上の免疫調節性因子、好ましくはサイトカインを被験体に投与する工程をさらに含む。好ましいサイトカインは、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−12、IL−15、IL−18、G−CSF、GM−CSF、トロンボポエチンおよびγインターフェロンからなる群から選択される。
特定の実施形態において、免疫調節性因子は、サイトカインレセプター調節因子である。サイトカインレセプター調節因子の例としては、可溶性サイトカインレセプター(例えば、TNF−αレセプターの細胞外ドメインまたはそのフラグメント、IL−1βレセプターの細胞外ドメインまたはそのフラグメントおよびIL−6レセプターの細胞外ドメインまたはそのフラグメント)、サイトカインまたはそのフラグメント(例えば、インターロイキン(IL)−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15、TNF−α、TNF−β、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γおよびGM−CSF)、抗サイトカインレセプター抗体(例えば、抗IL−2レセプター抗体、抗IL−4レセプター抗体、抗IL−6レセプター抗体、抗IL−10レセプター抗体および抗IL−12レセプター抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFNレセプター抗体、抗TNF−α抗体、抗IL−1β抗体、抗IL−6抗体および抗IL−12抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、サイトカインレセプター調節因子は、IL−4、IL−10またはそれらのフラグメントである。別の実施形態において、サイトカインレセプター調節因子は、抗IL−1β抗体、抗IL−6抗体、抗IL−12レセプター抗体、抗TNF−α抗体である。別の実施形態において、サイトカインレセプター調節因子は、TNF−αレセプターの細胞外ドメインまたはそのフラグメントである。特定の実施形態において、サイトカインレセプター調節因子は、TNF−αアンタゴニストでない。
特定の実施形態において、免疫調節性因子は、T細胞レセプター調節因子である。T細胞レセプター調節因子の例としては、抗T細胞レセプター抗体(例えば、抗CD4抗体(例えば、cM−T412(Boeringer)、IDEC−CE9.1(登録商標)(IDECおよびSKB)、mAB 4162W94、OrthocloneおよびOKTcdr4a(Janssen−Cilag))、抗CD3抗体、抗CD5抗体(例えば、抗CD5リシン連結免疫複合体)、抗CD7抗体(例えば、CHH−380(Novartis))、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体、抗CD52抗体(例えば、CAMPATH 1H(Ilex))、抗CD2モノクローナル抗体)およびCTLA4−免疫グロブリンが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、免疫調節性因子は、TNF−αアンタゴニストである。TNF−αアンタゴニストの例としては、抗体(例えば、インフリキシマブ(REMICADETM;Centocor)、D2E7(Abbott Laboratories/Knoll Pharmaceuticals Co.,Mt.Olive,N.J.)、HUMIRATMおよびCDP−870(両方ともCelltech/Pharmacia,Slough,U.K.)としても知られるCDP571ならびにTN3−19.12(Williams et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2762−2766;Thorbecke et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7375−7379))、可溶性TNF−αレセプター(例えば、sTNF−R1(Amgen)、エタネルセプト(ENBRELTM;Immunex)およびそのラットホモログRENBRELTM、TNFrI、TNFrIIから得られるTNF−αの可溶性インヒビター(Kohno et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:8331−8335)およびTNF−α Inh(Seckinger et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:5188−5192))、IL−10、TNFR−IgG(Ashkenazi et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:10535−10539)、マウス生成物TBP−1(Serono/Yeda)、ワクチンCytoTAb(Protherics)、アンチセンス分子104838(ISIS)、ペプチドRDP−58(SangStat)、サリドマイド(Celgene)、CDC−801(Celgene)、DPC−333(Dupont)、VX−745(Vertex)、AGIX−4207(AtheroGenics)、ITF−2357(Italfarmaco)、NPI−13021−31(Nereus)、SCIO−469(Scios)、TACEターゲッター(Immunix/AHP)、CLX−120500(Calyx)、Thiazolopyrim(Dynavax)、オーラノフィン(Ridaura)(SmithKline Beecham Pharmaceuticals)、キナクリン(メパクリンジクロロ水和物)、テニダプ(Enablex)、Melanin(Large Scale Biological)ならびにUriachによる抗p38MAPK因子が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの免疫調節性因子は、本発明の抗CD19抗体と同時にまたは別々の時間に投与され、そして当該分野で説明されているのと同じかまたはそれより少ない投与量で使用される。好ましい免疫調節性因子は、処置される自己免疫疾患または自己免疫障害のタイプならびに患者の病歴を含む多くの因子に依存するが、全般として好ましいのは、その因子が、シクロスポリンA、副腎皮質ステロイド(最も好ましくは、プレドニゾンまたはメチルプレドニゾロン)、OKT−3モノクローナル抗体、アザチオプリン、ブロモクリプチン、異種性抗リンパ球グロブリンまたはそれらの混合物から選択されることである。
5.6.3.抗炎症剤および抗炎症治療との併用
本発明の抗CD19免疫療法はまた、抗炎症剤と併用してもよい。抗炎症剤は、炎症性障害および自己免疫障害の処置を成功に導いており、現在では、このような障害に対する通常の処置および標準的な処置である。当業者に周知の任意の抗炎症剤は、本発明の組成物および方法に使用され得る。
抗炎症剤の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)、ステロイド系抗炎症性薬物、ベータ−アゴニスト、抗コリン剤(anticholingeric agent)およびメチルキサンチンが挙げられる。NSAIDの例としては、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREXTM)、ジクロフェナク(VOLTARENTM)、エトドラク(LODINETM)、フェノプロフェン(NALFONTM)、インドメタシン(INDOCINTM)、ケトロラク(ketoralac)(TORADOLTM)、オキサプロジン(DAYPROTM)、ナブメントン(nabumentone)(RELAFENTM)、スリンダク(CLINORILTM)、トルメチン(tolmentin)(TOLECTINTM)、ロフェコキシブ(VIOXXTM)、ナプロキセン(ALEVETM、NAPROSYNTM)、ケトプロフェン(ORUDISTMおよびACTRONTM)、ナブメトン(RELAFENTM)、ジクロフェナクおよびミソプロストール(ARTHROTECTM)、イブプロフェン(MOTRINTM、ADVILTM、NUPRINTM)、ケトロラク(TORADOLTM)、バルデコキシブ(BEXTRATM)、メロキシカム(MOBICTM)、フルルビプロフェン(ANSAIDTM)ならびにピロキシカム(FELDENETM)が挙げられる。このようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ(cyclooxgenase)酵素(例えば、COX−1および/またはCOX−2)を阻害することによって機能する。
ステロイド系抗炎症性薬物の例としては、糖質コルチコイド、デキサメタゾン(DECADRONTM)、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(DELTASONETM)、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アズルフィジン(azulfidine)およびエイコサノイド(例えば、プロスタグランジン、トロンボキサンおよびロイコトリエン)が挙げられるが、これらに限定されない。
疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)もまた、本発明の組成物および方法の抗CD19抗体と併せて使用することができる。DMARDは、免疫系を抑制することおよび炎症を低減することによって機能するが、しかしながらDMARDは、他の薬物と比べて結果を示すまで時間がかかる。DMARDの例としては、ヒドロキシクロロキン(PLAQUENILTM)、クロラムブシル(LEUKERANTM)、シクロスホスファミド(CYTOXANTM)、レフルノミド(ARAVATM)、メトトレキサートおよびシクロスポリン(NEORALTM)が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、本発明の抗CD19免疫療法はまた、抗炎症性治療と併用してもよい。このような治療の非限定的な例は、プロテインA免疫吸着治療である。この治療によれば、患者の血液を濾過することにより、炎症を促進する抗体および免疫複合体を除去する。この濾過は、当業者に周知の方法によって達成され得る。
これらの抗炎症剤および治療は、本発明の抗CD19抗体と同時にまたは別々の時間に投与され、そして当該分野で説明されているのと同じかまたはそれより少ない投与量で使用される。好ましい抗炎症剤は、処置される自己免疫疾患または自己免疫障害のタイプならびに患者の病歴を含む多くの因子に依存する。
5.6.4.治療用抗体との併用
本明細書中に記載される抗CD19免疫療法は、他の抗体と併用して投与され得る。その抗体としては、抗CD20mAb、抗CD52mAb、抗CD22抗体(例えば、米国特許第5,484,892号、米国出願番号10/371,797の米国特許公開番号2004/0001828、米国出願番号10/372,481の米国特許公開番号2003/0202975および米国仮出願番号60/420,472(これらの各々の内容全体が、CD22抗原および抗CD22抗体について教示するために参考として本明細書中で援用される)に記載されているような)およびRITUXANTM(C2B8;RITUXIMABTM;IDEC Pharmaceuticals)などの抗CD20抗体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の抗体と併せて使用され得るか、または本発明の組成物中に使用され得る治療用抗体の他の例としては、HERCEPTINTM(トラスツズマブ;Genentech)、MYLOTARGTM(ゲムツズマブオゾガミシン;Wyeth Pharmaceuticals)、CAMPATHTM(アレムツズマブ;Berlex)、ZEVALINTM(イブリツモマブチウキセタン(Ipritumomab tiuxetan);Biogen Idec)、BEXXARTM(トシツモマブ;Glaxo SmithKline Corixa)、ERBITUXTM(セツキシマブ;Imclone)、AVASTINTM(ベバシズマブ;Genentech)およびLymphoStatTM(Human Genome Sciences)が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、抗CD19mAbおよび抗CD20mAbならびに/または抗CD22mAbは、必要に応じて同じ薬学的組成物として、任意の適当な比で投与され得る。例えば、抗CD19抗体と抗CD20抗体との比は、約1000:1、500:1、250:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60;1、50:1、40:1、30:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3,1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:250、1:500または1:1000またはそれ以上の比であり得る。同様に、抗CD19抗体と抗CD22抗体との比は、約1000:1、500:1、250:1、100:1、90:1、80:1、70:1、60;1、50:1、40:1、30:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3,1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:250、1:500または1:1000またはそれ以上の比であり得る。
5.6.5.単球またはマクロファージの機能を増強する化合物の併用
本発明の方法の特定の実施形態において、単球またはマクロファージの機能を増強する(例えば、少なくとも約25%、50%、75%、85%、90%、9%またはそれ以上)化合物は、抗CD19免疫療法と併せて使用され得る。このような化合物は、当該分野で公知であり、それらとしては、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−12)およびインターフェロン(例えば、アルファまたはガンマインターフェロン)が挙げられるがこれらに限定されない。
単球またはマクロファージの機能または強化を増強する化合物は、抗体、免疫複合体または抗原結合フラグメントとして同じ薬学的組成物中に処方され得る。別々に投与されるとき、抗体/フラグメントおよび化合物は、同時に(互いに何時間か以内に)投与され得るし、同じ経過の治療の間に投与され得るし、連続的に投与され得る(すなわち、患者は、最初に抗体/フラグメント処置の経過を受け、そしてマクロファージ/単球の機能を増強する化合物の経過を受けるが、その逆でもよい)。このような実施形態において、単球またはマクロファージの機能を増強する化合物は、他の治療用レジメンおよび/または本発明の組成物による処置の前、処置と同時、または処置後にヒト被験体に投与される。1つの実施形態において、ヒト被験体は、ヒトについて正常範囲内の血中白血球数、単球数、好中球数、リンパ球数および/または好塩基球数を有する。ヒト血中白血球(総数)の正常範囲は、約3.5〜約10.5(109/L)である。ヒト血中好中球の正常範囲は、約1.7〜約7.0(109/L)であり、単球の正常範囲は、約0.3〜約0.9(109/L)であり、リンパ球の正常範囲は、約0.9〜約2.9(109/L)であり、好塩基球の正常範囲は、約0〜約0.3(109/L)であり、そして好酸球の正常範囲は、約0.05〜約0.5(109/L)である。他の実施形態において、ヒト被験体は、ヒトについての正常範囲よりも少ない血中白血球数、例えば、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8(109/L)白血球を有する。
本発明のこの実施形態は、本発明の抗体、免疫結合体もしくは抗体フラグメントまたは当該分野で公知の他の抗体を用いて行われ得、また、抗CD19抗体治療、抗CD20抗体治療および/または抗CD22抗体治療(例えば、C2B8などの既存の抗体による治療)に耐性である被験体、化学療法による処置を現在受けているか、または以前受けていた被験体、B細胞障害を再発したことのある被験体、免疫無防備状態の被験体、または他でマクロファージまたは単球の機能に障害を有する被験体に特に適している。自己免疫疾患または自己免疫障害を治療するのに耐性である患者またはそれらを再発する患者の有病率は、少なくとも部分的に、マクロファージまたは単球の機能の障害に起因し得る。従って、本発明は、抗CD19抗体および抗原結合フラグメントを投与する方法と併せて使用される、ADCCならびに/またはマクロファージおよび/もしくは単球の機能を増強する方法を提供する。
5.6.6.化学療法剤との併用
抗CD19免疫療法(裸の抗体、免疫結合体または融合タンパク質を使用)は、他の治療と併せて使用され得る。その治療しては、化学療法、放射免疫療法(RIT)、化学療法および外照射(放射線併用化学療法、CMT)または放射線併用放射免疫療法(CMRIT)の単独または併用などが挙げられるがこれらに限定されない。特定の好ましい実施形態において、本発明の抗CD19抗体治療は、CHOP(シクロホスファミド−ヒドロキシドキソルビシン−オンコビン(ビンクリスチン)−プレドニゾロン)と併せて投与され得る。本明細書中で使用されるとき、用語「と併せて投与される」とは、抗CD19免疫療法が、用いられる他の治療の前、治療中または治療後に施され得ることを意味する。
特定の実施形態において、抗CD19免疫療法は、細胞傷害性放射性核種または放射線療法用同位体と併用される。例えば、225Ac、224Ac、211At、212Bi、213Bi、212Pb、224Raまたは223Raなどのアルファ放射同位体。あるいは、細胞傷害性放射性核種は、ベータ放射同位体(例えば、186Re、188Re、90Y、131I、67Cu、177Lu、153Sm、166Hoまたは64Cu)であり得る。さらに、細胞傷害性放射性核種は、オージェ電子および低速電子を放出し得、同位体1251、123Iまたは77Brを含む。他の実施形態において、上記同位体は、198Au、32Pなどであり得る。特定の実施形態において、被験体に投与される放射性核種の量は、約0.001mCi/kg〜約10mCi/kgである。
いくつかの好ましい実施形態において、被験体に投与される放射性核種の量は、約0.1mCi/kg〜約1.0mCi/kgである。他の好ましい実施形態において、被験体に投与される放射性核種の量は、約0.005mCi/kg〜0.1mCi/kgである。
特定の実施形態において、抗CD19免疫療法は、化学トキシンまたは化学療法剤と併用される。好ましくは、化学トキシンまたは化学療法剤は、エンジイン、例えば、カリケアマイシンおよびエスペラミシン(esperamicin);デュオカルマイシン、メトトレキサート、ドキソルビシン、メルファラン、クロラムブシル、ARA−C、ビンデシン、マイトマイシンC、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンおよび5−フルオロウラシルからなる群から選択される。
抗CD19免疫療法との併用療法において使用され得る適当な化学トキシンまたは化学療法剤としては、カリケアマイシンおよびエスペラミシンなどの分子のエンジインファミリーのメンバーが挙げられる。化学トキシンはまた、デュオカルマイシン(例えば、米国特許第5,703,080号および米国特許第4,923,990号を参照のこと)、メトトレキサート、ドキソルビシン、メルファラン、クロラムブシル、ARA−C、ビンデシン、マイトマイシンC、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンおよび5−フルオロウラシルからなる群から得られる。化学療法剤の例としてはまた、アドリアマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソテール(ドセタキセル)、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンc、ミトキサントロン、ビンクリスチン(vincreistine)、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照のこと)、メルファランおよび他の関連ナイトロジェンマスタードが挙げられる。
他の実施形態において、例えば、「CVB」(1.5g/m2シクロホスファミド、200〜400mg/m2エトポシドおよび150〜200mg/m2カルムスチン)は、本発明の併用療法に使用され得る。他の適当な併用化学療法レジメンは、当業者に周知である。例えば、Freedman et al.,“Non−Hodgkin’s Lymphomas”Cancer Medicine,Volume 2,3rd Edition,Holland et al.(eds.),pp.2028−2068(Lea & Febiger 1993)を参照のこと。他の適当な併用化学療法レジメンとしては、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン,およびプレドニゾン)、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)およびMACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)が挙げられる。さらなる有用な薬物としては、フェニルブチレートおよびブロスタチン−1が挙げられる。好ましい多様式治療において、化学療法用薬物とサイトカインの両方が、本発明に記載の抗体、免疫複合体または融合タンパク質と同時投与される。サイトカイン、化学療法用の薬物および抗体、免疫複合体または融合タンパク質は、任意の順序でまたは一緒に投与され得る。
本発明の組成物および方法における使用に好ましい他のトキシンとしては、有毒なレクチン、植物トキシン、例えば、リシン、アブリン、モデクシン、ボツリヌストキシンおよびジフテリアトキシンが挙げられる。当然のことながら、様々なトキシンの組み合わせもまた、1つの抗体分子に結合され得る。これにより、変化する細胞傷害に適応する。本発明の併用療法で適当に使用されるトキシンの例は、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNaseI、ブドウ球菌性エンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルス性タンパク質、ゲロニン、ジフテリアトキシン、シュードモナス外毒素およびシュードモナスエンドトキシンである。例えば、Pastan et al.,Cell 47:641(1986)およびGoldenberg et al.,Cancer Journal for Clinicians,44:43(1994)を参照のこと。使用され得る酵素的に活性なトキシンおよびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの非結合性の活性なフラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、momordica charantiaインヒビター、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalisインヒビター、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテシンが挙げられる。例えば、1993年10月28日公開のWO93/21232を参照のこと。
適当なトキシンおよび化学療法剤は、Remington’sPharmaceutical Sciences,19th Ed.(Mack Publishing Co.1995)およびGoodman and Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,7th Ed.(MacMillan Publishing Co.1985)に記載されている。他の適当なトキシンおよび/または化学療法剤は、当業者に公知である。
本発明の抗CD19免疫療法はまた、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照のこと)を活性な抗癌薬物に変換するプロドラッグ活性化酵素と併用され得る。例えば、WO88/07378および米国特許第4,975,278号を参照のこと。このような組み合わせの酵素成分は、その成分をより活性な細胞傷害性型に変換するような方法でプロドラッグに作用することができる任意の酵素を含む。用語「プロドラッグ」とは、本出願で使用されるとき、親薬物と比べて腫瘍細胞に対する細胞傷害性が低く、酵素的に活性化され得るか、またはより活性な親型に変換され得る、薬学的に活性な物質の形態の前駆体または誘導体のことをいう。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast(1986)およびStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.(ed.),pp.247−267,Humana Press(1985)を参照のこと。本発明の抗CD19抗体と組み合わせて使用され得るプロドラッグとしては、リン酸含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸改変プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、α−ラクタム含有プロドラッグ、必要に応じて置換されるフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは必要に応じて置換されるフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシンおよびより活性な細胞傷害性遊離薬物に変換され得る他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における使用のためのプロドラッグ型に誘導体化され得る細胞傷害性薬物の例としては、上記の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、本発明の組成物および方法の投与により、有毒な治療を延期することが可能であり得、また、不要な副作用および化学療法に関連する合併症の危険性を回避するのに役立ち得、そして化学療法への耐性の発生を遅延させる。特定の実施形態において、有毒な治療および/または有毒な治療に対する耐性は、本発明の組成物および方法を投与される患者において約6ヶ月、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10年まで遅延される。
5.6.7.他の治療薬との併用
腫瘍新生血管系に作用する因子もまた、抗CD19免疫療法と併せて使用され得、そのような因子としては、チューブリン結合因子(例えば、コンブレスタチン(combrestatin)A4(Griggs et al.,Lancet Oncol.,2:82,(2001))およびアンジオスタチン)およびエンドスタチン(Rosen,Oncologist,5:20,2000に概説されており、本明細書中に参考として援用される)が挙げられる。抗CD19抗体と組み合わせた使用に適した免疫調節因子としては、α−インターフェロン、γ−インターフェロンおよび腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法を使用した併用療法において使用される治療薬は、ペプチドである。
特定の実施形態において、抗CD19免疫療法は、1以上のカリケアマイシン分子と併用される。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、pM以下の濃度で二本鎖DNA切断を生じることができる。使用され得るカリケアマイシンの構造アナログとしては、γ11、γ21、γ31、N−アセチル−γ11、PSAGおよび011(Hinman et al.,Cancer Research,53:3336−3342(1993)およびLode et al.,Cancer Research,58:2925−2928(1998))が挙げられるが、これらに限定されない。
あるいは、本発明の抗CD19抗体および細胞傷害性因子を含む融合タンパク質は、例えば、組換え技術またはペプチド合成によって作製され得る。
なおも別の実施形態において、本発明の抗CD19抗体は、腫瘍を予め標的化するときに利用するための「レセプター」(ストレプトアビジンなど)に結合体化され得る。ここで、そのアンタゴニスト−レセプター結合体が、患者に投与され、続いて、清掃剤(clearing agent)を使用して循環から未結合の結合体が除去され、その後、治療薬(例えば、放射性ヌクレオチド)と結合体化されている「リガンド」(例えば、ビオチン)が投与される。
特定の実施形態において、処置レジメンは、本発明の抗CD19抗体組成物の細胞傷害性作用を緩和する化合物を含む。このような化合物としては、鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン)、ビスホスホネート、抗ヒスタミン剤(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン)およびステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド(deltoid)、ベタメタゾン、コルチゾル、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)が挙げられる。
特定の実施形態において、本発明の抗CD19免疫療法と組み合わせて使用される治療薬は、小分子(すなわち、分子量が約2500ダルトン未満である無機化合物または有機化合物)である。例えば、小分子のライブラリーは、Specs and BioSpecs B.V.(Rijswijk,The Netherlands)、Chembridge Corporation(San Diego,CA)、Comgenex USA Inc.(Princeton,NJ)およびMaybridge Chemicals Ltd.(Cornwall PL34 OHW,United Kingdom)から商業的に入手可能であり得る。
特定の実施形態において、抗CD19免疫療法は、抗細菌剤と組み合わせて投与され得る。抗細菌剤の非限定的な例としては、細菌感染を阻害および/もしくは低減させるか、細菌の複製を阻害および/もしくは低減させるか、または他の細胞または被験体に細菌が広がるのを阻害および/もしくは低減させる、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体、核酸分子、有機分子、無機分子および小分子が挙げられる。抗細菌剤の特定の例としては、抗生物質、例えば、ペニシリン、セファロスポリン、イミペネム、アズトレオナム(axtreonam)、バンコマイシン、サイクロセリン、バシトラシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、トリメトプリム、ノルフロキサシン、リファンピン、ポリミキシン、アンホテリシンB、ナイスタチン、ケトコナゾール(ketocanazole)、イソニアジド、メトロニダゾールおよびペンタミジンが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、本発明の抗CD19免疫療法は、抗真菌薬と組み合わせて投与され得る。抗真菌薬の特定の例としては、アゾール薬物(例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール(NIZORAL(登録商標))、カスポファンギンアセテート(CANCIDAS(登録商標))、イミダゾール、トリアゾール(例えば、フルコナゾール(DIFLUCAN(登録商標)))およびイトラコナゾール(SPORANOX(登録商標)))、ポリエン(例えば、ナイスタチン、アンホテリシンB(FUNGIZONE(登録商標))、アンホテリシンB脂質複合体(「ABLC」)(ABELCET(登録商標))、アンホテリシンBコロイド分散(「ABCD」)(AMPHOTEC(登録商標))、リポソームアンホテリシンB(AMBISONE(登録商標)))、ヨウ化カリウム(KI)、ピリミジン(例えば、フルシトシン(ANCOBON(登録商標)))ならびにボリコナゾール(VFEND(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。抗細菌薬および抗真菌薬の投与は、患者のB細胞が顕著に枯渇される場合の、本発明の方法において起きうる感染性疾患の作用または悪化を緩和し得る。
本発明の特定の実施形態において、本発明の抗CD19免疫療法は、本発明の組成物の投与に伴い得る有毒な副作用を緩和する上記の因子の1以上と組み合わせて投与され得る。他の実施形態において、本発明の抗CD19免疫療法は、抗体投与、化学療法、トキシンまたは薬物の副作用を緩和する際に使用するための当該分野で周知の1以上の因子と組み合わせて投与され得る。
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は、カルシウムチャネル遮断薬を用いる処置レジメンと組み合わせて、またはその処置レジメンにおいて投与され得る。そのカルシウムチャネル遮断薬としては、ニフェジピン(PROCARDIA(登録商標)、ADALAT(登録商標))、アムロジピン(amlodopine)(NORVASC(登録商標))、イスラジピン(DYNACIRC(登録商標))、ジルチアゼム(CARDIZEM(登録商標)、DILACOR XR(登録商標))、ニカルジピン(CARDENE(登録商標))、ニソルジピン(SULAR(登録商標))およびフェロジピン(PLENDIL(登録商標))が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は、アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニストを用いる処置レジメンと組み合わせて、またはその処置レジメンにおいて投与され得る。そのアンギオテンシンIIレセプターアンタゴニストとしては、ロサルタン(COZAAR(登録商標))およびバルサルタン(DIOVAN(登録商標))が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は、プラゾシン(MINIPRESS(登録商標))、ドキサゾシン(CARDURA(登録商標))およびペントキシフィリン(TRENTAL(登録商標))を用いる処置レジメンと組み合わせて、またはその処置レジメンにおいて投与され得る。
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は、高用量化学療法(メルファラン、メルファラン/プレドニゾン(MP)、ビンクリスチン/ドキソルビシン/デキサメタゾン(VAD)、リポソームのドキソルビシン/ビンクリスチン、デキサメタゾン(DVd)、シクロホスファミド、エトポシド/デキサメタゾン/シタラビン、シスプラチン(EDAP))、幹細胞移植(例えば、自家幹細胞移植もしくは同種幹細胞移植および/またはミニ同種(非骨髄破壊的)幹細胞移植)、放射線治療、ステロイド(例えば、コルチコステロイド、デキサメタゾン、サリドマイド/デキサメタゾン、プレドニゾン、メルファラン/プレドニゾン)、支持的治療(例えば、ビスホスホネート、成長因子、抗生物質、静脈内免疫グロブリン、低線量放射線治療および/または整形外科的介入)、THALOMIDTM(サリドマイド、Celgene)および/またはVELCADETM(ボルテゾミブ、Millennium)による処置レジメンと組み合わせて、またはその処置レジメンにおいて投与され得る。
本発明の実施形態において、本発明の抗CD19免疫療法が、別の抗体および/または因子と組み合わせて投与される場合、さらなる抗体および/または因子は、本発明の抗体の投与に対して任意の順所で投与され得る。例えば、さらなる抗体は、本発明の抗CD19抗体または免疫複合体の投与の前、投与と同時、および/または投与の後にヒト被験体に投与され得る。さらなる抗体は、本発明の抗体と同じ薬学的組成物中に存在してもよいし、そして/または異なる薬学的組成物中に存在してもよい。本明細書中に提供され、また、当該分野で周知であるような投薬量および投与の様式についての教示のいずれかに従って、本発明の抗体の投与の用量および様式ならびにさらなる抗体の用量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
5.7.自己免疫疾患または自己免疫障害を診断する際の抗CD19抗体の使用
本発明はまた、ヒトCD19抗原に免疫特異的に結合する抗CD19抗体およびその組成物を包含し、その抗CD19抗体は、診断薬または検出可能な因子と結合体化されている。好ましい実施形態において、上記抗体は、ヒト抗CD19抗体またはヒト化抗CD19抗体である。このような抗CD19抗体は、特定の治療の有効性を判定するなどの臨床的な試験の手順の一部として、自己免疫疾患または自己免疫障害の発症または進行をモニターまたは予後診断するために有用であり得る。このような診断および検出は、ヒトCD19抗原に免疫特異的に結合する抗CD19抗体を検出可能な物質に連結することによって達成され得る。その検出可能な物質としては、様々な酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼであるがこれらに限定されない);補欠分子族(例えば、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンであるがこれらに限定されない);蛍光材料(例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(isothiocynate)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンであるがこれらに限定されない);発光材料(例えば、ルミノールであるがこれらに限定されない);生物発光材料(例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンであるがこれらに限定されない);放射性材料(例えば、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)およびテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Snおよび117Tinであるがこれらに限定されない);様々なポジトロン放出断層撮影を使用するポジトロン放出金属、非放射性の常磁性金属イオンおよび放射標識されているか、または特定の放射性同位体と結合体化されている分子が挙げられるがこれらに限定されない。容易に測定され得る任意の検出可能な標識は、抗CD19抗体と結合体化され得、そして自己免疫疾患または自己免疫障害を診断する際に使用され得る。検出可能な物質は、当該分野で公知の技術を使用して、抗体に直接、または中間体(例えば、当該分野で公知のリンカー)を介して間接的のいずれかによって連結され得るか、または結合体化され得る。例えば、米国特許第4,741,900号(本発明に従って診断薬として使用するための抗体に結合体化され得る金属イオンについて)を参照のこと。特定の実施形態において、本発明は、診断薬または検出可能な因子と結合体化された抗CD19抗体を備える診断キットを提供する。
5.8.キット
本発明は、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、あるいは自己免疫疾患もしくは自己免疫障害によって増強されているか、またはそれを増強しているその1以上の症状を予防、処置、管理または回復するための本発明の組成物が入っている1以上の容器を備える薬学的パックまたは薬学的キットを提供する。
本発明は、上記の方法において使用され得るキットを提供する。1つの実施形態において、キットは、1以上の容器に本発明の組成物を備える。別の実施形態において、キットは、1以上の容器に本発明の組成物を備え、そして自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、あるいは自己免疫疾患もしくは自己免疫障害によって増強されているか、またはそれを増強している1以上の症状の予防、管理または処置に有用な1以上の他の予防薬または治療薬を1以上の他の容器に備える。好ましくは、上記キットは、自己免疫疾患または自己免疫障害を予防、処置、管理または回復するための指示書ならびに副作用および投与方法についての投薬情報をさらに備える。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を管理している行政機関によって規定されている形態の注意書きが、必要に応じてそのような容器に添付され得る。この注意書きは、ヒト投与用の製品の製造、使用または販売に関する機関による承認を反映している。
以下の実施例において、トランスジェニックマウスモデルを、ヒトCD19を対象とした免疫療法を評価するために使用した。これらのデータは、CD19抗原に結合し、かつADCCを媒介する抗体が、FcγR(好ましくは、FcγRIIIまたはFcγRIV)を発現し、ADCCを行うエフェクター細胞を有する被験体においてインビボにおけるB細胞枯渇を誘導する際に有効であることを示す。このような抗体を使用して、インビボにおいてB細胞の永続性のある枯渇を誘導することができ、特定の実施形態においては、循環、脾臓およびリンパ節から実質的にすべてのB細胞を除去することができる。驚いたことに、骨髄B細胞およびCD19抗原を比較的低密度で発現している骨髄B細胞の前駆体が、同様に枯渇される。B細胞枯渇の有効性は、抗CD19抗体が結合するヒトCD19の領域に依存されないが、CD19密度によって影響される(患者サンプル中)。B細胞クリアランスの効率は、抗CD19抗体のADCCを媒介する能力と相関し得る。抗CD19抗体を使用したB細胞クリアランスの効率は、宿主エフェクターFcγRの発現/機能と相関し得る。
6.1.材料および方法
本明細書中に記載のマウスHB12aおよびHB12b抗CD19抗体は、ヒトCD19に結合する代表的な抗体である。このような抗体は、上の5.1節に記載した技術を使用して、ヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ抗CD19抗体を作り出すことができる。ヒトCD19またはその部分に対して、HB12aおよびHB12b抗体と同じ特異性を有するヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ抗CD19抗体は、本発明の組成物および方法における使用について企図されている。特に、HB12aまたはHB12bと同じか、または類似の重鎖CDR1、CDR2および/またはCDR3領域を有するヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ抗CD19抗体は、本発明の組成物および方法における使用について企図されている。
6.1.1.材料および方法
抗体作製および配列解析。HB12a抗体およびHB12b抗体を、ヒトCD19をコードするcDNA(Zhou et al.,Mol.Cell Biol,.14:3884−94(1994))でトランスフェクトしたマウスプレB細胞株で免疫したBalb/cマウスにおいて作製した。両方の抗体を1993年11月3〜7日にBostonで開催されたFifth International Workshop and Conference on Human Leukocyte Differentiation Antigensに提出した。
RNEASY(登録商標)ミニキット(QIAGEN(登録商標),Valencia,CA)を使用して1〜5×106ハイブリドーマ細胞から抽出したRNAを使用して重鎖遺伝子利用を決定した。200単位のSUPERSCRIPT III(登録商標)逆転写酵素およびINVITROGEN(登録商標)(Carlsbad,CA)製のファーストストランドcDNA合成緩衝液、20ngのランダムヘキサマープライマーおよびPROMEGA(登録商標)(Madison,WI)製の20単位のRNAseインヒビターおよびDenville(Metuchen,NJ)製の80ナノモルのdNTPを使用して、2μgの全RNAから20μLの体積中でファーストストランドcDNAを合成した。1μLのcDNA溶液を、重鎖(VH)遺伝子のPCR増幅のための鋳型として使用した。PCR反応を、10mM Tris−HCl(pH8.3)、5mM NH4Cl、50mM KCl、1.5mM MgCl2、800μM dNTP(Denville)、400pmolの各プライマーおよび10%pfuプルーフリーディングポリメラーゼ(Stratagene,LaJolla,CA)を含む2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)から構成される反応混合物の50μLの体積中で行った。VLについては、PCR反応は、20mM Tris−HCl(pH 8.4)、50mM KCl、1.5mM MgCl2、800μM dNTP(Denville)、400pmolの各プライマーおよび10%pfuプルーフリーディングポリメラーゼ(Stratagene)を加えた2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)から構成される反応混合物の50μLの体積中で行った。3分間の変性工程の後、増幅を32サイクル(94℃1分、58℃1分、72℃1分)行った後、72℃で10分間伸長した(Thermocycler,Perkin Elmer)。重鎖cDNAを、以前に報告されているような(Kantor,et al.,J.Immunol.,158:1175−1186(1997))無差別な(promiscuous)センス5’VHプライマー(MsVHE;5’GGGAATTCGAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGG3’)(配列番号19)およびCγコード領域に相補的なアンチセンスプライマー(プライマーCγ1;5’GAGTTCCAGGTCACTGTCACTGGCTCAGGGA3’)(配列番号20)を使用して増幅した。
軽鎖遺伝子利用を、重鎖について記載したように抽出された細胞質RNAを使用して決定した。5’可変領域ヌクレオチド配列を、GeneRacerTMキット(Invitrogen)を使用して生成したcDNAから得た。全RNAを、子ウシ腸管ホスファターゼで脱リン酸化した。タバコ酸性ピロホスファターゼを用いて、5’キャップ構造をインタクトな全長mRNAから除去した。GeneRacer RNAオリゴを、T4 RNAリガーゼを使用してそのmRNAの5’末端に連結することにより、そのmRNAがcDNAに転写された後、GeneRacer PCRプライマーに既知の5’開始部位を提供する。連結されたmRNAを、SuperscriptTMIII RTおよびGeneRacerランダムプライマーを用いて逆転写した。ファーストストランドcDNAを、GeneRacer5’プライマー(GeneRacer RNAオリゴと相同)および定常領域特異的アンチセンス3’プライマー(GACTGAGGCACCTCCAGATGTTAACTG)(配列番号21)を使用して増幅した。タッチダウンPCR増幅を、10%pfuプルーフリーディングポリメラーゼ(Stratagene)を加えた2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を使用して、Invitrogenによって推奨されているような緩衝液を含む50μL体積中で行った。2分間の変性工程の後、Taqおよびpfuを加え、そして増幅を3工程:94℃30秒、72℃60秒を5サイクル;94℃30秒、72℃60秒を5サイクル;94℃30秒、65℃30秒、72℃60秒を20サイクル行い、その後、72℃で10分間の伸長を行った。2.5UのTaqを加え、そしてさらに10分間伸長を進めることによって、インタクトな3’A−オーバーハングを確実にした。増幅されたPCR産物を、塩基配列決定のためおよびOneShot(登録商標)TOP10コンピテントセルに形質転換するためのpCR4−TOPOベクターにクローニングした。重鎖について記載したように、pCR4−TOPOベクター特異的「M13順方向」および「M13逆方向」プライマーを使用して、8クローンからのDNA挿入断片を各mAb軽鎖について塩基配列決定した。
軽鎖について記載したように、AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼおよび最初のPCR増幅に使用したのと同じプライマーまたはpCR4−TOPOベクター特異的プライマーを用いて、Perkin Elmer Dye Terminator Sequencingシステムを使用して増幅した後、精製された重鎖および軽鎖PCR産物を、ABI377PRISM(登録商標)DNA配列分析装置を使用して両方向から直接塩基配列決定した。HB12aおよびHB12bの重鎖領域および軽鎖領域をセンスDNA鎖とアンチセンスDNA鎖の両方において完全に配列決定した。
抗体および免疫蛍光解析。本明細書中で使用されるヒトCD19抗原に結合するモノクローナルマウス抗CD19抗体は、HB12a(IgG1)およびHB12b(IgG1)、FMC63(IgG2a,Chemicon International,Temecula,CA)、B4(IgG1,Beckman Coulter,Miami,FL)(Nadler et al.,J.Immunol.,131:244−250(1983))およびHD237(IgG2b,Fourth International Workshop on Human Leukocyte Differentiation Antigens,Vienna,Austria,1989)、HD37抗体のアイソタイプスイッチ改変体(Pezzutto et al.,J.Immunol.,138:2793−2799(1987))を含んでいた。他の抗体としては:マウスCD19に結合するモノクローナルマウス抗CD19抗体、MB19−1(IgA)(Sato et al.,J.Immunol.,157:4371−4378(1996));モノクローナルマウスCD20特異的抗体(Uchida et al.Intl.Immunol,16:119−129(2004));B220抗体RA3−6B2(DNAX Corp.,Palo Alto,CA);Thy1.2抗体(CALTAGTM Laboratories,Burlingame,CA);ならびにCD5、CD43およびCD25抗体(BD PHARMINGENTM,Franklin Lakes,NJ)を含んでいた。アイソタイプ特異的および抗マウスIg抗体または抗マウスIgM抗体は、Southern Biotechnology Associates,Inc.(Birmingham,AL)製であった。
マウスプレB細胞株、300.19(Alt et al.,Cell,27:381−388(1981))、hCD19cDNA(Tedder and Isaacs,J.Immunol.,143:712−717(1989))でトランスフェクトされたマウスプレB細胞株または単一細胞白血球懸濁液を、確立された方法(Zhou et al.,Mol.Cell.Biol,14:3884−3894(1994))に従って、20〜30分間、所定の最適濃度の各抗体を使用して氷上で染色した。リンパ球の前方散乱光および側方散乱光の特性を有する細胞を、FACSCAN(登録商標)またはFACSCALIBUR(登録商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson,San Jose,CA)において解析した。非反応性コントロール抗体(CALTAGTM Laboratories,Burlingame,CA)を使用して、バックグラウンド染色を測定し、ゲートをそれらの細胞の98%以上を排除するように設定した。各試験サンプルについて、単核細胞の前方散乱光および側方散乱光の特性を有する1万個の細胞を、各サンプルについて解析し、可能である場合はいつも、蛍光強度を4ディケードログスケール(decade log scale)で示した。
マウス。ヒトCD19(h19−1)を発現しているトランスジェニックマウスおよびそれらの野生型(WT)同腹仔を、以前に報告されているように(Zhou et al.,Mol.Cell.Biol.,14:3884−3894(1994))作製した。TG−1マウスを最初のh19−1創始者(C57BL/6×B6/SJL)から作製し、そして少なくとも7世代に亘ってC57BL/6バックグラウンドと交配した。TG−2マウスを、最初のh19−4創始者(C57BL/6×B6/SJL)から作製した。戻し交配を複数世代行った後、TG−1+/+マウスが得られ、そのB細胞は、ヒトB細胞上で見られるのとほぼ同じ密度でヒトCD19が発現された細胞表面密度を有した。ヒトCD19を発現するマウスは、さらに、いくつかの研究(Engel et al.,Immunity,3:39−50(1995);Sato et al.,Proc Natl.Acad.Sci.USA,92:11558−11562(1995);Sato et al.,J.Immunol.,157:4371−4378(1996);Tedder et al.,Immunity,6:107−118(1997);Sato et al.,J.Immunol.,158:4662−4669(1997);Sato et al.,J.Immunol.,159:3278−3287(1997);Sato et al.,Proc.Natl Acad.Sci,USA,94:13158−13162(1997);Inaoki et al.,J.Exp Med.,186:1923−1931(1997);Fujimoto et al.,J.Immunol.,162:7088−7094(1999);Fujimoto et al.,Immunity,11:191−200(1999);Satterthwaite et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:6687−6692(2000);Fujimoto et al.,Immunity,13:47−57(2000);Sato et al.,J.Immunol.,165:6635−6643(2000);Zipfel et al.,J.Immunol.,165:6872−6879(2000);Qian et al.,J.Immunol.,166:2412−2419(2001);Hasegawa et al.,J.Immunol.,167:2469−2478(2001);Hasegawa et al.,J.Immunol.,167:3190−3200(2001);Fujimoto et al.,J.Biol.Chem.,276:44820−44827(2001);Fujimoto et al.,J.Immunol.,168:5465−5476(2002);Saito et al.,J.Clin.Invest,109:1453−1462(2002);Yazawa et al.,Blood,102:1374−80(2003);Shoham et al.,J.Immunol.,171:4062−4072(2003))において報告されており、それらの中でモデルとして使用されている。CD19欠損(CD19−/−)マウスおよびそれらのWT同腹仔もまた、以前に報告されている(Engel,et al.,Immunity,3:39−50(1995))。トランスジェニックマウスにおけるヒトCD19の発現は、内在性マウスCD19発現を低下させることが示されており(Sato et al.,J.Immunol.,157:4371−4378(1996);およびSato et al.,J.Immunol.,158:4662−4669(1997))、この内在性マウスCD19発現の低下に関する仮説もまた、評価されている(Shoham et al.,J.Immunol.,171:4062−4072(2003))。ヒトCD19を発現しているトランスジェニックマウスにおけるCD19発現の密度もまた、評価されている(Sato et al.,J.Immunol.,165:6635−6643(2000))。
TG−1+/+マウスを、Taconic Farms(Germantown,NY)からのFcR(Fcレセプター)共通γ鎖(FcRγ)欠損マウス(FcRγ−/−,B6.129P2−Fcerg1tm1)と交配することにより、hCD19+/−FcRγ−/−およびWT同腹仔が作製された。c−Myc導入遺伝子についてヘミ接合のマウス(Eμ−cMycTG,C57Bl/6J−TgN(IghMyc);The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)が報告された(Harris et al.,J.Exp.Med,167:353(1988)およびAdams et al.,Nature,318:533(1985))。c−MycTGマウス(B6/129バックグラウンド)をhCD19TG−l+/+マウスと交配することにより、ヘミ接合のhCD19TG−l+/−cMycTG+/−子孫を作製し、PCRスクリーニングによって判定した。Rag1−/−(B6.129S7−Rag1tm1Mom/J)マウスは、The Jackson Laboratory出身である。標準的な方法(Van Rooijen and Sanders,J.Immunol.Methods 174:83−93(1994))に従って−2日目、1日目および4日目に、クロドロネートが封入されたリポソーム(0.1mL/10g体重;Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)をC57BL/6マウスの尾静脈に注入することによってマクロファージ欠損マウスを作製した。すべてのマウスを病原体のない特別な仕切り設備内で飼育し、6〜9週齢で初めて使用した。
ELISA。アフィニティー精製されたマウスIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgA(Southern Biotechnology Associates,Inc)を使用して、血清Ig濃度をELISAによって測定することにより、報告されているように(Engel et al.,Immunity,3:39(1995))検量線を作成した。報告されているように(Sato et al.,J.Immunol.,157:4371(1996))、子ウシ胸腺二本鎖(ds)DNA(Sigma− Aldrich)、子ウシ胸腺煮沸DNA(一本鎖(ss)DNAを含む)またはヒストン(Sigma−Aldrich)でコーティングされたマイクロタイタープレートを使用して、dsDNA、ssDNAおよびヒストンに対する血清IgMおよびIgG自己抗体レベルをELISAによって測定した。
免疫療法。滅菌抗CD19抗体および非反応性アイソタイプコントロール抗体(0.5〜250μg)の200μLリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液を、外側の尾静脈を介して注入した。他に示されない限り、すべての実験において、250μgの抗体を使用した。血中白血球数を赤血球溶解後に血球計算板によって数量化し、B220+B細胞頻度を、フローサイトメトリー解析を用いた免疫蛍光法によって測定した。ヒトおよびマウスにおける抗体用量を、Oncology Tool Dose Calculator(www.fda.gov/cder/cancer/animalframe.htm)を使用して比較した。
免疫。2月齢のWTマウスを、食塩水中の50μgの2,4,6−トリニトロフェニル(TNP)−結合体化リポ多糖(LPS)(Sigma,St.Louis,MO)または食塩水中の25μgの2,4−ジニトロフェノール−結合体化(DNP)−FICOLL(登録商標)(Biosearch Technologies,San Rafael,CA)でi.p.により免疫した。マウスを、フロイント完全アジュバント中の100μgのDNP−結合体化キーホールリンペットヘモシアニン(DNP−KLH,CALBIOCHEM(登録商標)−NOVABIOCHEM(登録商標)Corp.,La Jolla,CA)でもi.p.により免疫し、21日後にフロイント不完全アジュバント中のDNP−KLHで追加免疫した。示されるように、免疫の前後でマウスから採血した。個々の血清サンプルにおけるDNP特異的抗体価またはTNP特異的抗体価を、標準的な方法(Engel et al.,Immunity,3:39−50(1995))に従って、DNP−BSA(CALBIOCHEM(登録商標)−NOVABIOCHEM(登録商標)Corp.,La Jolla,CA)またはTNP−BSA(Biosearch Technologies,San Rafael,CA)でコーティングされたELISAプレートを使用して、2つ組で測定した。TNP−LPS免疫マウス由来の血清を、DNP−FICOLL(登録商標)の血清と1:400希釈し、DNP−BSA免疫マウス由来の血清を、ELISA解析のために1:1000希釈した。
統計解析。すべてのデータは、平均±SEMとして示す。スチューデントt検定を使用して、サンプル平均間の差の有意性を判定した。
6.2.実施例1:トランスジェニックマウスにおけるヒトCD19発現
本明細書中に記載のトランスジェニックhCD19TGマウスまたはヒトCD19を発現している他のトランスジェニック動物を使用して、ヒト抗CD19抗体、ヒト化抗CD19抗体またはキメラ抗CD19抗体を含む様々な治療的レジメン(例えば、投薬の濃度、量または時期のバリエーション)を評価することができる。ヒト患者における様々な治療的レジメンの有効性を、以下に記載する2つの指標、すなわち、特定の体液および/または組織におけるB細胞枯渇ならびにモノクローナルのヒト抗CD19抗体またはヒト化抗CD19抗体がB細胞に結合する能力、を使用して予測することができる。特定の実施形態において、ヒトCD19トランスジェニックマウスにおいて有効な処置レジメンは、ヒトにおける自己免疫疾患または自己免疫障害を処置するための本発明の組成物および方法と共に使用され得る。
ヒトCD19が、ヒトCD19導入遺伝子を発現しているトランスジェニックマウス(ヘミ接合のTG−1+/−)由来のB細胞上で発現しているか否かを判定するために、これらのマウスの骨髄、血液、脾臓および腹腔洗浄からB細胞を抽出した。これらの細胞を、CD19と結合するマウスモノクローナル抗CD19抗体と接触させることによって、ヒトCD19およびマウスCD19の発現をそれらの細胞において評価した。B系列細胞への抗体の結合を、フローサイトメトリー解析を用い、2色免疫蛍光染色を使用して検出した。
結果を図1Aに、骨髄(BM)、血液、脾臓および腹腔洗浄(PL)についての、検出されたヒトCD19(hCD19)の発現(y軸)に対してプロットされた、検出されたマウスCD19(mCD19)の発現(x軸)のグラフとして示す。軸の単位は、左下の1から始まる4ディケードログスケールで表している。ヒトCD19(Beckman/Coulter)に結合するB4抗CD19抗体を使用して、ヒトCD19発現を可視化し、マウスCD19(PharMingen)に結合する1D3CD19抗体を使用して、マウスCD19発現を可視化した(図1Bおよび1Cにも使用した)。ヒトCD19発現は、ヒトB細胞の発達の間に徐々に増えるが、マウスCD19は、マウス骨髄B細胞発達の間、高レベルで発現される。図1Aは、ヒトCD19発現が、血液、脾臓および腹腔洗浄(PL)に見られる末梢B細胞上のマウスCD19発現と相関していることを示しており、このことから、マウス抗hCD19抗体(ヒトCD19に結合する)が末梢B細胞集団に結合することが証明される。さらに、小集団の骨髄(BM)由来のB細胞は、ヒトCD19ではなく内在性マウスCD19を発現する(ヒトCD19に結合するモノクローナルマウス抗CD19抗体)。従って、骨髄B細胞は、ヘミ接合のTG−1+/−マウスにおいて2つのカテゴリー、すなわち、hCD19+mCD19+である成熟B系列細胞およびmCD19+だけでありあまり成熟していないB系列細胞に分類される(図1A)。これらの結果は、これらのトランスジェニックマウスにおけるヒトCD19発現がB細胞成熟と相関することを示唆したZhou et al.(Mol.Cell.Biol,14:3884−3894(1994))の知見と一致する。血液、脾臓および腹膜腔内のすべての成熟B細胞は、hCD19+かつmCD19+であった。
平均蛍光強度(hCD19に対するマウス抗CD19およびmCD19に対するマウス抗CD19)を測定することによって評価されるmCD19およびhCD19の相対的な発現レベルをそれぞれ図1Bに示す。hCD19導入遺伝子についてホモ接合であるTG−1マウス(TG−1+/+)のうち、血液中のB細胞におけるhCD19発現は、ヒトB細胞におけるhCD19発現に匹敵した。TG−1+/+、TG−1+/−およびTG−2+/+トランスジェニックマウス系統におけるhCD19発現とmCD19発現との相対的な密度を比較するために、血液由来のB細胞を抽出し、上記のようにCD19発現についてアッセイした。その結果を、ヒト血中B細胞、hCD19TGマウス由来のTG−1+/+、TG−1+/−およびTG−2+/+の血中B細胞についてのパーセントヒトCD19発現(左)および野生型(WT)マウス血中B細胞、hCD19TGマウス由来のTG−1+/+、TG−1+/−およびTG−2+/+のCD19+血中B細胞についてのパーセントマウスCD19発現(右)を示しているヒストグラムとして図1Bに示す。値(平均蛍光強度の線形値(linear value))は、ヒトまたは野生型(WT)マウス由来の血中B細胞(100%として表示)と比較したCD19発現の平均相対的密度(±SEM)を表す。ホモ接合のTG−1+/+マウスにおいて、血中B細胞を測定したとき、ヒト血中B細胞よりも平均蛍光強度が約72%高い密度でhCD19を発現したという結果を示す。TG−1+/−マウスにおける血中B細胞は、ヒト血中B細胞と類似の密度でhCD19を発現し、TG−2+/+マウスにおける血中B細胞は、ヒト血中B細胞よりも65%低い密度でhCD19を発現した。
TG−1+/−マウス組織由来のB細胞におけるhCD19発現とmCD19発現との相対的密度のさらなる比較を、hCD19(左)およびmCD19(右)についての、骨髄、血液、脾臓、リンパ節およびPL由来のB細胞について抗CD19抗体染色の平均蛍光強度(MFI±SEM)を示すヒストグラムとして図1Cに示す。これらの結果から、TG−1+/−マウスにおいて、hCD19が骨髄(ヒト血液レベルの63%)<血液(100%)<脾臓(121%)=リンパ節(120%)そして<腹膜腔(177%)においてB220+細胞によって上昇したレベルで発現したことが証明された。ヒトCD19発現は、mCD19発現に対して少し影響を与えた。hCD19およびmCD19についてのmRNAのレベルは変化しなかった。
IgG1(HB12a、HB12b、B4)、IgG2a(FMC63)およびIgG2b(HD237)アイソタイプのマウス抗hCD19抗体(ヒトCD19に結合する)が異なって反応するか否かを判定するために、血中および脾臓のB220+B細胞をTG−1+/−マウスから単離した。単離された細胞をインビトロにおいて上記の抗CD19抗体と接触させ、そしてそれらのヒトCD19を発現するトランスジェニックマウス(hCD19TG)B細胞と結合する能力についてモノクローナル抗体染色を使用して評価した。その染色を、フローサイトメトリー解析を用いて、アイソタイプ特異的PE結合体化2次抗体を使用して可視化した。
その結果を、5μg/mLの、IgG2b(マウスアイソタイプ)、IgG2a(マウスアイソタイプ)およびIgG1(マウスアイソタイプ)抗CD19抗体に対する蛍光強度(x軸)対相対B細胞数(y軸)のグラフとして図1Dに示す。抗CD19抗体で染色されるB220+細胞の蛍光強度を実線で示し、アイソタイプ一致コントロール(CTL)の蛍光強度を破線で示す。各抗体は、5μg/mLの濃度で脾臓B細胞との反応性の飽和レベルに達した。この結果から、TG−1+/−マウス由来のマウス血中B220+細胞および脾臓B220+細胞上の抗CD19抗体結合密度が、試験された抗体アイソタイプについて一様であり、血中B細胞と脾臓B細胞の両方について一様であることが証明された。
平均蛍光強度が抗CD19抗体アイソタイプに対して非依存的であるか否かを判定するために、hCD19cDNAでトランスフェクトしたマウスプレB細胞株の300.19を同じ抗マウスIg2次抗体を使用して染色することによって、個別の抗CD19抗体(5μg/mLで)の結合活性を評価した。マウスIg特異的PE結合体化2次抗体を使用し、フローサイトメトリー解析を用いて、抗体染色(MFI±SEM)を可視化した。その結果を、HB12a、HB12b、B4、FMC63、HD237抗CD19抗体およびコントロール抗体(CTL)に対する、hCD19cDNAでトランスフェクトした300.19細胞との抗CD19抗体結合(染色強度によって示される、y軸)のヒストグラムとして図1Eに示す。各抗体は、抗CD19抗体アイソタイプに対して非依存的である特徴的な平均蛍光強度を有する細胞を染色し、HB12bが、染色の最低レベルを示し、HD237が、最高レベルを示した。従って、示された結果から、300.19細胞は、抗CD19抗体がインビトロにおいてCD19と結合する能力の比較のためのインビトロ系のモデルであることが証明される。
従って、まとめると、図1に示される結果から、hCD19が一連の密度で発現しているとき、hCD19TGマウスおよび300.19細胞は、B細胞に結合する抗hCD19抗体の能力を評価するための適切なインビトロおよびインビボモデル系であることを表す。
図1A〜Dは、各遺伝子型について3匹以上のマウスで得られた結果を示している。
6.3.実施例2:インビボにおけるB細胞の抗CD19抗体枯渇
マウス抗CD19抗体(ヒトCD19に結合する)が、インビボにおいてhCD19TG(TG−1+/−)の血中B細胞、脾臓B細胞およびリンパ節B細胞を枯渇させる能力について評価した。ヒトにおける抗CD20治療に対して最初に4回投与される用量の375mg/m2(Maloney et al.,J.Clin.Oncol,15:3266−74(1997)およびMcLaughlin et al.,12:1763−9(1998))よりも約10〜50倍少ない単一用量である250または50μg/マウスのいずれかで各抗体をマウスに投与した。
その結果を、HB12a、HB12bまたはFMC63抗CD19抗体またはアイソタイプ一致コントロール(CTL)による処置の7日後のB細胞量のプロットである図2Aに示す。別々のプロットは、各抗CD19抗体に対するリンパ節、脾臓および血液組織について提供される。各プロットに示されている7日目で枯渇したゲーティングがかけられたリンパ球のパーセンテージは、フローサイトメトリー解析を用いて免疫蛍光染色によって測定したとき、TG−1+/−マウスの血液、脾臓およびリンパ節由来の代表的なB細胞枯渇を証明している。図2Bは、抗CD19(黒丸)またはアイソタイプコントロール(白丸)抗体による処置後のB220+血中B細胞の平均数(±SEM/mL)を示す。時間0の後に示される値は、1時間後に得たデータを示す。図2Cおよび図2Dは、示されている用量の抗CD19(黒棒)またはコントロール(白棒)抗体でTG−1+/−マウスを処置した後の脾臓およびリンパ節のB細胞数(±SEM)をそれぞれ示す。図2B〜Dにおいて、抗CD19またはアイソタイプ−コントロール抗体で処置されたマウスについての平均結果間の有意差(データポイントあたり3匹以上のマウス)が示されている;*p<0.05、**p<0.01、コントロールとの比較。
各抗体は、処置の1時間以内に大部分の循環B細胞を枯渇させ(図2B)、強力な枯渇が、7日目まで、脾臓およびリンパ節のB細胞の頻度(図2A)および数(図2C〜D)に影響を与えた。HB12a抗体は、血中B細胞の98%および脾臓およびリンパ節のB細胞の90〜95%を7日目まで枯渇させた。同様に、HB12b、B4、FMC63およびHD237抗体は、血中B細胞の99%、96%、99%および97%をそれぞれ枯渇させた。HB12b、B4、FMC63およびHD237抗体は、脾臓およびリンパ節のB細胞の88〜93%、64〜85%、72〜95%および88〜90%をそれぞれ枯渇させた。ほんの少し残っていた末梢B細胞は、骨髄からの潜在的な移出(emigrant)であった主に未成熟細胞の表現型を示した。WTマウスに投与したとき、いずれのCD19抗体も有意な効果を有しなかった。また、同一の条件下で投与したアイソタイプ一致コントロール抗体は、B細胞の数に影響を与えなかった(図2A〜D)。従って、抗hCD19抗体は、7日目まで、hCD19TGマウスの循環、脾臓およびリンパ節から効果的にB細胞を枯渇させた。TG−1+/−マウスにおけるB細胞枯渇を表1にまとめた。
aB細胞サブセットは:骨髄(BM)プロB(CD43
+IgM
−B220
lo)、プレB(CD43
−IgM
−B220
lo)、未成熟B(IgM
+B220
lo)、成熟B(IgM
+B220
hi);腹膜のB1a(CD5
+B220
lo)、B2(CD5
−B220
hi)であった。
b値(±SEM)は、抗体処置(250μg)の7日後のマウスに存在する細胞数(×10−6)を示す。BM値は、両大腿骨についてである。血球数は、1mLあたりである。LN数は、両鼠径部および両腋窩の節についてである。マウス数は、括弧内に示す。平均間の有意差を;*p<0.05、**p<0.01として示す。
6.3.1.骨髄B細胞の枯渇
公知の抗CD19抗体が様々な体液および組織由来のB細胞を枯渇させる際に有効であるか否か判定するために、このような抗体をhCD19TGマウスにおいて試験した。本明細書中に記載されるアッセイを使用して、他の抗CD19抗体、例えば、ヒトCD19抗原の特定の部分に結合する抗CD19抗体がB細胞を効果的に枯渇させるか否かを判定することができる。B細胞を枯渇させることができると同定された抗CD19抗体を使用した結果は、ヒトにおける使用と相関し得る。その同定された抗体の特性を有する抗体は、ヒトにおける自己免疫疾患および自己免疫障害を処置するための本発明の組成物および方法に使用され得る。図3A〜3Fは、CD19抗体処置後の骨髄B細胞の枯渇を示す。
図3Aは、TG−1+/−骨髄B細胞亜集団によるhCD19およびmCD19の発現についての蛍光強度(x軸)対B細胞の相対数(y軸)のグラフを示す。この蛍光強度は、リンパ球の前方散乱特性および側方散乱特性による細胞のフローサイトメトリー解析を用いた4色免疫蛍光染色によって評価した。プロB細胞をCD43+IgM−B220lo、プレB細胞をCD43−IgM−B220lo、未成熟B細胞をIgM+B220loそして成熟B細胞をIgM+B220hiと定義した。棒グラフ(右)は、各B細胞サブセット(データポイントあたり3匹以上のマウス)についてのCD19発現に対する相対平均MFI(±SEM)値を示す。hCD19TGマウス(図1A)では、B細胞が成熟し、骨髄を出るときのヒトにおけるCD19発現は、不均一である。少数のプロB細胞だけが(20%,CD43hiIgM−B220lo)、TG−1+/−マウスにおいてhCD19を発現したが、ほとんどのプレB細胞は、hCD19+であり、骨髄中の大部分の成熟B細胞は、比較的高レベルでhCD19を発現した。半数のプロB細胞(55%,IgM−220+)がTG−1+/−マウスにおいてmCD19を発現していたが、mCD19は、骨髄中の大部分のプレB細胞および成熟B細胞によって比較的高レベルで発現していた。
図3Bは、FMC63またはアイソタイプ一致コントロール抗体(250μg)による処置の7日後のhCD19TGマウスにおけるhCD19+細胞の枯渇を示す。これはフローサイトメトリー解析を用いた2色免疫蛍光染色によって評価した。数値は、示されたゲート内の細胞の相対度数を表す。結果は、マウス遺伝子型の各々の3つの同腹仔対で得られた結果を表す。CD19抗体処置後、TG−1+/、TG−1+/−およびTG−2+/+マウスの骨髄中のかなり大部分のhCD19+細胞が、250μg/マウスで投与されたFMC63抗体によって枯渇した。
図3Cは、TG−1+/−マウスの抗CD19またはアイソタイプ一致コントロール抗体(250μg)による処置の7日後の代表的なB220+B細胞枯渇を示す。棒グラフ値は、抗体処置マウスの両大腿骨内のB220+細胞の総数(±SEM)を表す。サンプル平均間の有意差(1群あたり3匹以上のマウス)を示す;*p<0.05、**p<0.01。予想外にも、低レベルから検出不可能なレベルでhCD19を発現していた多数のmCD19+プレB細胞もまた、骨髄から枯渇した。このことと一致して、FMC63、HB12a、HB12b、B4およびHD237抗体は、大部分の骨髄B220+細胞を枯渇させた。
図3Dは、FMC63またはアイソタイプ一致コントロール抗体(250μg)で処置した7日後のTG−1+/−マウスの代表的な骨髄B細胞サブセットの枯渇を示す。これは、3色免疫蛍光染色によって評価した。IgM−B220loプロ/プレB細胞をCD43発現に基づいてさらに細分した(下のパネル)。図3Eは、hCD19TGマウス系統をFMC63またはアイソタイプ一致コントロール抗体(250μg)で処置した7日後の骨髄のCD25+B220loプレB細胞の代表的な枯渇を示す。これは、2色免疫蛍光染色によって評価した。結果は、異なる日に行われた実験からの結果であるため、ゲートは、同一ではない。個々の骨髄亜集団を解析したとき、大部分のCD43hiIgM−B220loプロB細胞(図3D)は、TG−1+/+、TG−1+/−またはTG−2+/+マウスにおいてFMC63抗体の処置によって影響を受けなかったが、大部分のCD25+CD43loIgM−B220loプレB細胞(図3E)は、枯渇した。図3Fは、3対以上の同腹仔をFMC63(黒棒)またはコントロール(白棒)抗体で処置した7日後の両大腿骨内のプロB、プレB、未成熟および成熟B細胞の数値(±SEM)を表す棒グラフを示す。これらの結果から、TG−1+/+、TG−1+/−およびTG−2+/+マウスの未成熟B細胞および成熟B細胞の大部分が骨髄から枯渇したことが証明された。従って、CD19抗体処置によってほとんどのhCD19+細胞(低レベルでhCD19を発現していたプレB細胞を含む)が骨髄から枯渇した。
6.3.2.腹膜B細胞の枯渇
TG−1+/−マウスにおける腹膜腔B細胞は、CD5−IgMloB220hiのサブセットの通常の(B2)B細胞よりも約25%高い密度でhCD19を発現していたCD5+IgMhiB220loB1細胞の存在(図4A)に主に起因して、他の組織B細胞よりも高いレベルでhCD19を発現する(図1Aおよび図1C)。図4B〜4Cにより、腹膜腔B細胞が抗CD19抗体処置に感受性であることが証明される。
図4Aは、ヒトCD19発現およびマウスCD19発現(x軸)対腹膜腔のCD5+B220+B1aおよびCD5−B220hiB2(通常)B細胞(y軸)の相対数のプロットを示す。腹膜腔リンパ球の単一細胞の懸濁液を、フローサイトメトリー解析を用いた3色免疫蛍光染色によって調べた。棒グラフは、TG−1+/−マウスの3対の同腹仔によるCD19発現についての平均MFI(±SEM)値を表す。
図4Bは、CD19(250μgのHB12a、HB12bおよびFMC63;50μgのB4およびHD237)抗体またはコントロール抗体(250μg)で処置されたTG−1+/−マウス由来の腹膜腔B220+細胞の枯渇を示す。数値は、7日目における、示されているゲート内のB220+細胞の相対度数を表している。棒グラフ値は、抗体処置マウス(1群あたり3匹以上のマウス)の腹膜内のB220+細胞の総数(±SEM)を表している。サンプル平均間の有意差を;*p<0.05、**p<0.01として示す。これらの結果から、250μg/マウスでの抗CD19抗体処置が腹膜B220+B細胞のかなりの部分を7日目までに枯渇させたことが証明される。図4Bに示される結果は、B1細胞と通常のB2細胞の両方の枯渇を部分的に説明する。hCD19がTG−1+/+マウスにおいて最も高い密度で発現されるとき、大部分のB1細胞およびB2細胞が枯渇した。しかしながら、hCD19レベルが低い場合、B1細胞およびB2細胞のCD19媒介性枯渇は、TG−1+/−およびTG−2+/+マウスにおいてそれほど効率的でなかった。従って、CD19抗体処置により、平均蛍光強度を使用して評価されるようにCD19発現の密度に依存して腹膜B1細胞および腹膜B2細胞が枯渇したが、腹膜B細胞が脾臓およびリンパ節のB細胞よりも抗CD19抗体媒介性枯渇に対して抵抗性であった。
図4Cは、hCD19TGマウスを抗CD19抗体またはコントロール抗体で処置した7日後のCD5+B220+B1aB細胞およびCD5−B220hiB2B細胞の代表的な枯渇を示す。数値は、示されたゲート内の各B細胞サブセットの相対度数を表している。棒グラフ値は、抗体処置マウス(1群あたり3匹以上のマウス)の腹膜内の各細胞サブセットの総数(±SEM)を表している。サンプル平均間の有意差を;*p<0.05、**p<0.01として示す。
6.3.3.異なる抗CD19抗体がB細胞クリアランスを媒介する
HB12aおよびHB12b抗CD19抗体が公知の抗CD19抗体と異なるか否かを判定するために、本明細書中で使用される抗CD19抗体の可変領域の各々のアミノ酸配列を解析した(図5Aおよび5B、6Aおよび6B、7Aおよび7B)。
図5Aは、HB12a抗CD19抗体の重鎖VH−D−JH接合配列についてのヌクレオチド(配列番号1)および予測アミノ酸(配列番号2)配列を示す。5’PCRプライマーと重複する配列を二重下線で示す。重複プライマーを使用するため、その配列は、実際のDNA配列と異なり得る。V配列とD配列とJ配列との間の接合部境界のおよその位置を配列中に縦棒(|)で示す。小文字のヌクレオチドは、接合部境界または体細胞超変異のための潜在的な部位のいずれかにおけるヌクレオチド付加を示す。抗体のアミノ末端残基(E)を残基1と標識する。
図5Bは、HB12b抗CD19抗体の重鎖VH−D−JH接合配列についてのヌクレオチド(配列番号3)および予測アミノ酸(配列番号4)配列を示す。5’PCRプライマーと重複する配列を二重下線で示す。重複プライマーを使用するため、その配列は、実際のDNA配列と異なり得る。V配列とD配列とJ配列との間の接合部境界のおよその位置を配列中に縦棒(|)で示す。小文字のヌクレオチドは、接合部境界または体細胞超変異のための潜在的な部位のいずれかにおけるヌクレオチド付加を示す。抗体のアミノ末端残基(E)を残基1と標識する。
図6Aは、HB12a抗CD19抗体の軽鎖Vκ−Jκ接合配列についてのヌクレオチド(配列番号15)および予測アミノ酸(配列番号16)配列を示す。図6Bは、HB12b抗CD19抗体の軽鎖V−J接合配列についてのヌクレオチド(配列番号17)および予測アミノ酸(配列番号18)配列を示す。アミノ酸配列解析によって推定される成熟分泌タンパク質のアミノ末端アミノ酸を1番と付番する。3’PCRプライマーと重複する配列を二重下線で示す。V−J−C領域についてのJ領域ヌクレオチドとの予測接合部境界を(/)で示し、体細胞超変異を起こす可能性のある部位を太字で示す。
図7Aおよび7Bは、公開されているマウス抗CD19抗体のアミノ酸配列アラインメントを示す。図7Aは、コンセンサス配列(配列番号5)、HB12a(配列番号2);4G7(配列番号6)、HB12b(配列番号4)、HD37(配列番号7)、B43(配列番号8)およびFMC63(配列番号9)を含む重鎖VH−D−JH接合配列についての配列アラインメントを示す。各抗体のV領域、D領域およびJ領域についてのコード配列の起源の、アミノ酸の付番および命名は、従来の方法(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Government Printing Office,Bethesda,MD(1991))に従う。ここで、アミノ酸の1〜94位および相補性決定領域CDR1および2は、VH遺伝子によってコードされる。ダッシュ記号は、類似のアミノ酸配列のアラインメントを最大にするために配列中に挿入されたギャップを示す。中点は、各抗CD19抗体のアミノ酸配列とすべての抗体についてのコンセンサスアミノ酸配列とが同一であることを示す。CDR領域は、明確にするために強調されている。図7Bは、抗CD19抗体の軽鎖Vκアミノ酸配列解析を示す。コンセンサス配列(配列番号10)、HB12a(配列番号16);HB12b(配列番号18);HD37(配列番号11)、B43(配列番号12)、FMC63(配列番号13)および4G7(配列番号14)をアラインメントした。各抗CD19抗体についてのコード配列の起源のアミノ酸の付番および命名は、従来の方法(Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Government Printing Office,Bethesda,MD)に従う。予測されるシグナル配列切断部位の後ろのアミノ酸を1番とする。ダッシュ記号は、類似のアミノ酸配列のアラインメントを最大にするために配列中に挿入されたギャップを示す。CDR領域は、明確にするために強調されて(四角で囲われて)いる。
この研究において調べられた各抗CD19抗体は、かなりの数のB細胞をインビボにおいて枯渇させたため、これらの抗体の配列が異なっているか否か、およびこれらの抗体が、潜在的に異なるCD19エピトープと結合するのか否かを判定するために各抗CD19抗体の可変領域のアミノ酸配列を評価した。抗体は、各抗体分子の可変領域内の特定のアミノ酸によって媒介される分子相互作用によって標的抗原と結合する。従って、タンパク質抗原とこれらの抗原上の特定のエピトープに結合するその抗体との間の複雑な相互作用は、各抗体およびその特定のアミノ酸配列に対してほぼ独特である。抗原と抗体の相互作用におけるこの複雑さのレベルは、ほとんどのタンパク質抗原に対する多様な抗体レパートリーを反映している。標的抗原との抗体の相互作用は、抗体分子の相補性決定領域(CDR)内のアミノ酸によって主に媒介されるが、フレームワークアミノ酸もまた、抗原結合活性にとって不可欠である。従って、構造的に似ている抗体は、同じ抗原または同じ標的分子領域に結合する可能性があるが、異なるV領域およびCDR領域を有する構造的に異なる抗体は、異なる分子相互作用によって抗原の異なる領域と相互作用する可能性がある。
標的抗原の同じ分子領域(またはエピトープ)と相互作用し、それに結合する抗体は、定義上は構造的に似ている。HB12a、HB12b、FMC63ならびにHD37(Kipriyanov,et al.,J.Immunol.Methods,196:51−62(1996);Le Gall,et al.,FEBS Letters,453:164−168(1999))、2G7(Meeker,et al.,Hybridoma,3:305−320(1984);Brandl,et al.,Exp.Hematol.,27:1264−1270(1999))およびB43(Bejcek,et al.,Cancer Res.,55:2346−2351(1995))抗体を含む他の公開されている抗CD19抗体のアミノ酸配列を比較した。抗CD19抗体の重鎖を、V(D)J遺伝子セグメントと、V1S39、V1S56、V1S136またはV2S1遺伝子セグメント由来のV領域、FL16.1遺伝子セグメント由来のD領域およびJ2またはJ4遺伝子セグメントのいずれか由来のJ領域との異なる組み合わせによって作製した(表2)。B43抗体およびHD37抗体の公開されている重鎖および軽鎖の可変領域は、アミノ酸配列において実質的に同じであった(図7A〜B)。この変換のレベルは、これらの抗体の各々が、同一のVH(D)JHおよびVLJL接合部を有し、ヌクレオチドレベルでも顕著に似ているという事実を反映しており、ほとんどの差は、各cDNA配列をPCR増幅するための重複プライマーの使用が原因である。このことにより、HD37抗体およびB43抗体が、同一ではないにしても共通の起源を共有していることが示唆され、従って、これらの抗体は、CD19タンパク質上の同一のエピトープに結合することが示唆される。HB12a抗体および4G7抗体はまた、他の抗CD19抗体とも異なっていた。HB12a抗体および4G7抗体の重鎖領域が似ていて、そして同じ生殖細胞系列VH(D)JH遺伝子セグメント由来であった可能性があるにもかかわらず、異なる接合部境界がD−JH構築に使用された(図7A)。HB12b抗体が異なるVH遺伝子セグメントを利用し(表2)、他の抗CD19抗体由来の明確に異なるCDR3配列を有した(図7A)。FMC63抗体もまた、他の抗CD19抗体と非常に異なったアミノ酸配列を有していた。
N.D.,測定せず
a括弧内の数値は、PCRプライマーと重複する領域を除外したときの、CD19抗体をコードする遺伝子と、現在のデータベースにおいて同定される最も相同な生殖細胞系列配列とのヌクレオチドの差の数を示す。
b遺伝子配列についてのGENBANK(登録商標)受託番号
図7Bに示されるように、HB12a、HB12b、FMC63、4G7およびHD37/B43抗体の各々は、異なる軽鎖遺伝子を利用する(図7B)。軽鎖は、複数のV遺伝子セグメントとJ遺伝子セグメントから作製された。これらの6つの抗CD19抗体のH鎖配列とL鎖配列との間の均一性がないということは、これらの抗体が、ヒトCD19上のいくつかの異なる部位に結合することを示唆する。対をなした重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の比較から、これらの抗CD19抗体のほとんどが、構造的に異なり、それゆえ、異なる分子相互作用によってヒトCD19と結合することがさらに示唆される。従って、抗CD19抗体がインビボにおいてB細胞を枯渇させる能力は、同一の部位でCD19と結合する限られた数の抗体に制限されるものではないが、分類としての抗CD19抗体の一般特性である。
6.3.4.CD19密度はCD19抗体に誘導されるB細胞枯渇の有効性に影響を及ぼす
B細胞を枯渇させる抗CD19抗体の能力がCD19密度に依存するか否かを判定するために、HB12bおよびFMC63抗CD19抗体を、異なるレベルでCD19を発現しているマウスに投与した。その結果から、B細胞上のヒトCD19密度および抗体アイソタイプが、抗CD19抗体の存在下でのB細胞の枯渇に影響を及ぼし得ることが証明された。同じアッセイを使用して、他の抗CD19抗体がB細胞を効果的に枯渇させ得るか否かを判定することができ、その結果は、異なるレベルのCD19発現によるヒト患者の処置と相関し得る。従って、5.5.3節に記載されているヒト被験体におけるCD19の存在および密度を調べるための方法を使用して、特定の抗CD19抗体がB細胞を枯渇させ得る患者または患者集団を同定することができ、そして/または適当な投与量を決定することができる。
上で示した結果から、試験した5つすべての抗CD19抗体が250または50μgで使用したとき、TG−1+/−マウスにおいて同様に有効であったが、血液骨髄および脾臓由来のB細胞についてのB細胞枯渇の程度は、抗体アイソタイプと相関していると考えられることが示唆される。IgG2a>IgG1>IgG2b(図2A〜2D)。それゆえ、HB12b(IgG1)およびFMC63(IgG2a)抗体の有効性を、様々な密度でCD19を発現している、ホモ接合であるTG−1+/+、ヘテロ接合であるTG−1+/−およびホモ接合であるTG−2+/+マウスにおいて比較した(図1A〜E)。
CD19密度が、抗CD19抗体に誘導されるB細胞枯渇の有効性に影響を及ぼすか否かを判定するために、HB12b(図8A)またはFMC63(図8B)抗体で処置(7日、250μg/マウス)した後のhCD19TGマウスにおいて代表的な血中B細胞および脾臓B細胞の枯渇を調べた。数値は、ゲーティングがかけられたB220+リンパ球のパーセンテージを表している。棒グラフは、抗CD19抗体(黒棒)またはアイソタイプコントロール(白棒)抗体で処置した後の、血中(1mLあたり)B細胞または脾臓(総数)B細胞の数値(±SEM)を示している。抗CD19抗体またはアイソタイプコントロール抗体で処置マウス(データポイントあたり3匹以上のマウス)についての平均結果間の有意差を;*p<0.05、**p<0.01として示す。
図8A〜8Dで示される結果から、CD19密度が、インビボにおいて抗CD19抗体によってB細胞枯渇の効率に影響を与えることが証明される。TG−2+/+のマウスにおける低レベルのCD19発現は、HB12b抗体によって7日目に循環B細胞または組織B細胞の枯渇に顕著な影響を有した(図8A)。TG−1+/+、TG−1+/−およびTG−2+/+マウスによるCD19発現の差もまた、FMC63抗体によって循環B細胞および組織B細胞の枯渇に影響を与えたが、循環B細胞の枯渇を有意に変化させなかった(図8B)。
CD19密度が、CD19mAb媒介性B細胞枯渇における重要な因子であるか否かをさらに検証するために、CD19TG−1+/+およびCD19TG−2+/+B細胞の相対的な枯渇速度を直接比較した。hCD19TG−1+/+およびhCD19TG−2+/+マウス由来の分画されていない脾細胞をそれぞれ0.1および0.01μMのVybrantTM CFDA SE(CFSE;Molecular Probes)で製造者の指示に従って標識することによって、CD19TG−1+/+およびCD19TG−2+/+マウス由来の脾細胞を、CFSEで区別して標識した。CFSE標識脾細胞のうちのB220+細胞の相対度数を、フローサイトメトリー解析を用いた免疫蛍光染色によって測定した。続いて、等しい数のCFSE標識B220+hCD19TG−l+/+およびhCD19TG−2+/+脾細胞(2.5×105)を3匹の野生型B6マウスの腹膜腔に注入した。1時間後、そのマウスにFMC63またはコントロールmAb(250μg,i.p.)のいずれかを投与した。24時間後、標識脾細胞を混合し、野生型マウスに導入した。24時間後、標識リンパ球を回収し、CFSE標識B220+およびB220−細胞の相対度数をフローサイトメトリーによって評価した。図8C中の各ヒストグラム内のゲートは、CD19TG−1+/+(CFSEhigh)およびCD19TG−2+/+(CFSElow)脾細胞集団内のB220+細胞の頻度を示す。棒グラフは、コントロールmAb処置マウスに対する抗CD19mAb処置マウス中に存在するCFSE標識細胞集団の数を示す。結果は、3匹以上の野生型レシピエントマウスに導入したhCD19TG−l+/+脾細胞(黒棒)およびhCD19TG−2+/+脾細胞(白棒)を表し、サンプル平均(±SEM)間の有意差を**p<0.01として示す。
個々のマウスを抗CD19またはコントロールmAbで処置した24時間後にB細胞クリアランスを評価した。CD19TG−1+/+B220+B細胞は、抗CD19mAb処置マウスにおいて、コントロールmAb処置マウスと比較してCD19TG−2+/+B細胞よりも有意に速い速度で(p<0.01)枯渇していた(図8C)。さらに、抗CD19mAb処置マウスにおけるCD19TG−2+/+B220+B細胞に対するCD19TG−1+/+B220+B細胞の相対度数は、コントロールmAb処置マウスにおけるCD19TG−2+/+B220+B細胞に対するCD19TG−1+/+B220+B細胞の比よりも有意に低かった(p<0.01)。同様に、抗CD19またはコントロールmAbマウスにおけるCD19TG−1+/+およびCD19TG−2+/+CFSE標識B220−細胞の数もまた似ていた。このようにして、高密度でCD19を発現するCD19TG−1+/+B細胞は、低密度でCD19を発現するCD19TG−2+/+B細胞よりも速い速度で枯渇した。
図8Dは、CD19抗体(太線)、CD20抗体(細線)またはアイソタイプ一致コントロール(CTL、破線)抗体(5μg/mL)で染色したB220+細胞の蛍光強度を示しており、抗体染色は、アイソタイプ特異的PE結合体化2次抗体を使用して、フローサイトメトリー解析により可視化した。結果は、4つの実験において得られたものを表している。これらの結果は、TG−1+/−マウス由来の脾臓B220+B細胞上の相対的な抗hCD19抗体および抗mCD20抗体の結合密度を示す。抗mCD20抗体結合の密度は、各抗体について使用した抗体アイソタイプと無関係に抗CD19抗体結合よりも10〜64%高かった(図8D)。mCD20発現は、概してhCD19発現よりも低かったが、TG−1+/−マウスにおけるhCD19発現のレベルは、ヒトB細胞上で見られたhCD19発現のレベル(図1B)に匹敵した。従って、TG−1+/+およびTG−1+/−B細胞による高レベルのCD19発現が、IgG2aおよびIgG1抗体の有効性における相対的な差を混乱させたが、抗CD19抗体は、比較的低密度でhCD19を発現していた(図1B)TG−2+/+B細胞を効果的に枯渇させた。TG−1およびTG−2トランスジェニックマウスにおけるB細胞の数とhCD19発現の密度との間に直接的な逆相関があるが、hCD19の密度が、B細胞の枯渇に寄与する重要な因子である。250μg/マウスで投与したとき、抗CD19抗体レベルは飽和した(図12における飽和レベルもまた参照のこと)。従って、B細胞数にかかわらず、遊離抗CD19抗体レベルは、過剰であった。
6.4.実施例3:組織B細胞枯渇はFCγR依存性である
以下のアッセイを使用して、抗CD19抗体によるB細胞枯渇がFcγR発現に依存するか否かを判定した。hCD19tgと、特定のFcγRの発現を欠くマウスとを交配させるプロセスによって、hCD19を発現し、かつ特定のFcγRを発現しないマウスを作製した。このようなマウスを使用して、FcγR発現が関与する経路、例えば、ADCCを介して抗CD19抗体がB細胞を枯渇させる能力について評価するアッセイを行った。つまり、これらのアッセイにおいて同定された抗CD19抗体は、上の5.1.節に記載した技術を使用して、キメラ抗CD19抗体、ヒト抗CD19抗体またはヒト化抗CD19抗体を操作するために使用され得る。このような抗体は、ヒトにおける自己免疫疾患および自己免疫障害を処置するための本発明の組成物および方法に次々と使用され得る。
先天免疫系は、抗CD20抗体で処置した後、FcγR依存性プロセスを介してB細胞枯渇を媒介する。マウスエフェクター細胞は、IgGに対する4つの異なるFcγRクラス、すなわち、高アフィニティーFcγRI(CD64)および低アフィニティーFcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIV分子を発現する。FcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIVは、それぞれのリガンド結合α鎖が通常のγ鎖(FcRγ)と会合するヘテロオリゴマー複合体である。FcRγ鎖発現は、FcγRの構築およびFcγRがエフェクター機能(マクロファージによるファゴサイトーシスを含む)を引き起こすのに必要である。FcRγ−/−マウスは、高アフィニティーFcγRI(CD64)および低アフィニティーFcγRIII(CD16)およびFcγRIV分子を欠いているため、hCD19を発現するFcRγ−/−マウスを使用して、抗CD19抗体による処置の後の組織B細胞枯渇におけるFcγRの役割を評価した。図9Aは、FcRγ+/−またはFcRγ−/−同腹仔を抗CD19抗体またはアイソタイプコントロール抗体で処置した7日後の代表的な血中B細胞および脾臓B細胞の枯渇を示す。数値は、示されたゲート内のB220+リンパ球のパーセンテージを示している。図9Bは、0日目にFcRγ−/−同腹仔を抗体で処置した7日後の血中B細胞および組織B細胞の枯渇を示している。血液について、時間0の後の値は、1時間後に得られたデータを示している。棒グラフは、マウス(1群あたり3匹以上のマウス)を抗CD19(黒棒)抗体またはアイソタイプコントロール(白棒)抗体で処置した後の平均B220+B細胞数(±SEM)を示している。抗CD19抗体またはアイソタイプコントロール抗体で処置マウスに対する平均結果間の有意差を*p<0.05、**p<0.01として示す。図9Aおよび9Bに示される結果から、抗CD19抗体処置後のB細胞枯渇は、FcRγ依存性であることが証明される。コントロールIgG2a抗体で処置したFcRγ−/−同腹仔と比較して、FMC63抗体で処置した後のFcRγ−/−マウスにおける骨髄、血液、脾臓、リンパ節および腹膜腔のB細胞の数に有意な変化はなかった。対照的に、抗CD19抗体処置により、FcRγ+/−同腹仔中のほとんどのB細胞が枯渇した。従って、抗CD19抗体処置により、主に、FcγRIおよびFcγRIII発現を必要とする経路を介して血中B細胞および組織B細胞が枯渇される。
図9Cは、単球が枯渇したhCD19TG−1+/−マウス中の代表的なB細胞数を示している。マウスを、−2、1および4日目にクロドロネートリポソームで処置し、また、FMC63(n=9)、アイソタイプコントロール(n=6)またはCD20(n=3)mAb(250μg)を0日目に投与した。PBSリポソームおよびFMC63抗CD19抗体(n=3)で処置されたマウスは、コントロールとして役立つ。抗体で処置した7日後の代表的な血中B細胞および脾臓B細胞の枯渇を示し、示されたゲート内のリンパ球のパーセンテージを示す。
図9Dは、(C)における抗体で処置した7日後の血中B細胞および組織B細胞の枯渇を示している。棒グラフは、マウス(1群あたり3匹以上のマウス)を抗体で処置した後の平均B220+B細胞数(±SEM)を表している。血液について、値は、FMC63抗CD19抗体(黒三角)で処置されたPBS処置マウスまたはコントロール抗体(白丸)、CD20抗体(黒四角)もしくはFMC63抗CD19抗体(黒丸)で処置された単球枯渇マウスにおける循環B細胞の数を示している。アイソタイプコントロールmAb処置マウスおよび他の群についての平均結果間の有意差を*p<0.05、**p<0.01として示す。
図9に示される結果は、抗CD19抗体で処置した後のB細胞枯渇が、FcRγ依存性かつ単球依存性であることを示している。リポソーム被包性クロドロネートで処置することによってマクロファージ欠損となったマウスは、FMC63、抗CD20(MB20−11)またはコントロール抗CD19抗体で処置した1日後に循環B細胞を有意に枯渇しなかったが、FMC63抗体処置により、PBSリポソームで処置されたマウス中の循環B細胞は排除された(図9C〜D)。4〜7日後、循環B細胞数は、FMC63と抗CD20抗体の両方の処置によって有意に枯渇し、抗CD19抗体処置は、クロドロネート処置マウス中のB細胞数に対してより劇的な効果を有した。同様に、抗CD19抗体および抗CD20抗体の処置によって、7日目のクロドロネート処置マウスにおいて、コントロール抗体で処置された同腹仔と比べて骨髄B220+細胞数が55%減少し、抗CD19抗体処置により、PBS処置マウスにおいて骨髄B220+細胞数が88%減少した。抗CD19抗体処置によって、コントロール抗体で処置された同腹仔と比べて7日目のクロドロネート処置マウス中の脾臓B細胞数が52%減少し、抗CD20抗体は、B細胞を最小限に枯渇させ、そして抗CD19抗体処置によって、PBS処置マウスにおける脾臓B細胞数が89%減少した。抗CD19抗体と抗CD20抗体の両方の処置により、コントロール抗体で処置した同腹仔と比べて、7日目のクロドロネート処置マウス中のリンパ節B細胞数が48〜53%減少し、抗CD19抗体処置によって、PBS処置マウス中のリンパ節B細胞数が93%減少した。血液、脾臓およびリンパ節において、抗CD19抗体処置は、PBS処置同腹仔よりもクロドロネート処置マウスでは有意に効果が低かった(p<0.01)。これらの知見から、インビボにおけるCD19+およびCD20+B細胞の枯渇にとってマクロファージが主要なエフェクター細胞であると意味づけられ、また、単球数または単球の機能が低下しているとき、抗CD19抗体治療が、抗CD20抗体治療よりも有効であり得ることが示唆される。
6.5.実施例4:抗CD19抗体に誘導されるB細胞枯渇は永続的である
B細胞枯渇の有効性および持続を評価するために、hCD19TGマウスに、抗CD19抗体の単回低用量の250μgを投与した。図10A〜10Cは、抗CD19抗体で処置した後のB細胞枯渇の持続および用量応答を示している。図10Aは、0日目にFMC63またはアイソタイプコントロール抗体で処置した後のTG−1+/−マウスの血中B220+B細胞およびThy−1+T細胞の数を示している。値は、各群6匹のマウスにおける平均(±SEM)結果を表している。これらの結果から、13週間に亘って循環B細胞が枯渇し、そのあとの13週間に亘って血液中のB細胞が徐々に回復したことが証明される。抗CD19処置の結果、Thy−1+T細胞の提示は、変化しなかった。
図10B〜10Cは、抗体処置の11、16および30週間後における図10Aで示されたマウス中の代表的な組織B細胞の枯渇を示している。数値は、示されたゲート内のB220+リンパ球のパーセンテージを示している。図10Bの結果から、骨髄、血液、脾臓、リンパ節および腹膜腔は、抗体処置の11週間後、本質的にB細胞を欠いていることが示される(サンプル平均間の有意差を*p<0.05、**p<0.01として示す)。循環B細胞が初めて見られた後、循環B細胞数が正常範囲に達するまでにさらに10週を超える時間がかかった。抗体処置後の第16週までに、血液、脾臓、LNおよびPLのB細胞数は、回復し始めていたが、BMのB細胞コンパートメントは、図10Cに示されるように未処置コントロールと有意に異ならなかった。第30週までに、すべての組織において、正常コントロールにおける数に匹敵するレベルにB細胞の数が戻った。
図10Dは、血液、骨髄および脾臓のB細胞枯渇に対する抗CD19抗体の用量反応を示す。マウスを0日目に抗CD19抗体で処置し、組織B細胞の提示を7日目に評価した。結果は、各抗体用量について、各群3匹のマウスで得られた結果を表している。コントロール抗体用量は、250μgとした。サンプル平均間の有意差を*p<0.05、**p<0.01として示す。2μg/マウスという低い単回FMC63抗体用量によって、かなりの数の循環B細胞が枯渇したが、循環B細胞数を有意に減少させるのに10μgのHB12b抗体が必要であった(図10D)。7日目まで骨髄および脾臓のB細胞を有意に枯渇させるためには、5倍より多い抗体用量である10〜50μg/マウスが必要であった。従って、比較的低用量でのCD19抗体処置によって、かなりの期間に亘って大部分の循環B細胞および組織B細胞を枯渇させることができる。
6.5.1.CD19は抗CD19抗体の投与後もB細胞表面上に残存する
CD19の内部移行がインビボにおけるB細胞枯渇に影響を及ぼすか否かを、HB12a、HB12bおよびFMC63抗体で処置(250μg)した後の細胞表面CD19発現を比較することによって評価した。
図11A〜11Cは、インビボにおいて、HB12a(図11A)、HB12b(図11B)、FMC63(図11C)またはアイソタイプ一致コントロール抗体(250μg)で処置されたTG−1+/−マウスにおける細胞表面CD19発現およびB細胞クリアランスを示している。時間0(抗CD19投与前)ならびに抗体投与の1、4および24時間後に、脾臓B細胞を回収して、CD19(太線)抗体およびコントロール(細線)抗体の結合について、インビトロにおいてアイソタイプ特異的2次抗体で細胞を処置することによってフローサイトメトリー解析を用いて評価した。単離されたB細胞を、飽和濃度の各CD19抗体でインビトロにおいて処置し、さらに、アイソタイプ特異的2次抗体でインビトロにおいて処置し、フローサイトメトリー解析を用いて細胞表面CD19発現全体を可視化した。各時点は、1匹のマウスにおける結果を示している。図11A〜11Cに示される結果により、細胞表面CD19が、インビボにおいて抗体が結合した後も細胞表面から排除されないことが証明され、また、B細胞の一部がFMC63抗体処置の1時間後にhCD19の発現レベルが低下したが(図11C)、大部分の脾臓B細胞が、抗体処置の24時間後までの間、一定の高レベルの細胞表面hCD19を発現していたことが示される。図11A〜11Cに示される結果はまた、B細胞表面上のCD19の量が一定であることも証明し、このことから、B細胞がADCCを媒介する能力が維持されていることが示唆される。
これらの結果は、驚いたことに、CD19は、抗CD19抗体の投与後、予想されたレベルよりも低いレベルの内部移行を示したことを証明する。特に、これらの結果は、抗CD19抗体が結合した後もCD19が予想外に細胞表面上に残存しており、ゆえに、そのB細胞は、ADCC活性を受けやすいままであることを証明する。これらの結果は、どうして本発明の抗CD19抗体および処置レジメンが自己免疫疾患および自己免疫障害を処置する際に有効であるかを部分的に証明するものである。
図12A〜12Cは、B細胞枯渇の程度および抗hCD19抗体がhCD19と結合することにより、他の抗hCD19抗体の結合を阻害する能力を実証している。図12Aにおける結果から、TG−1+/−マウスへのFMC63(250μg)の単回投与により、抗体投与の1時間以内に血中B細胞と脾臓B細胞の両方が有意に枯渇することが証明される。この実験では、血液細胞および脾臓細胞を回収し、そして、抗CD19抗体の投与前または投与後の様々な時点(1、4または24時間)におけるB細胞頻度について評価した。血液サンプルを抗Thy1.2および抗B220で染色することにより、四分割の右下のB細胞を同定した。脾臓細胞を抗IgM抗体および抗B220抗体で染色することにより、示されたゲート内のB細胞を同定した。各時点は、1匹のマウスにおける結果を示す。予想外にも、血中B細胞は、脾臓B細胞よりも速く除去された。
図12Aに示されるB細胞枯渇により、投与された抗体が、投与の1時間以内にhCD19上の利用可能な抗体結合部位を迅速に飽和させたことが示唆された。この観察結果を検証するために、マウスをFMC63(hCD19結合抗体)またはアイソタイプコントロール抗体のいずれかで処置した。処置後の様々な時点において、血中B細胞および脾臓B細胞を蛍光色素結合体化B4抗体で染色することにより、mCD19+またはmCD20+B細胞の表面上の非占有の抗体結合部位を同定した。四分割の上部および右下内の細胞の頻度を示す。各時点は、1匹のマウスにおける結果を示す。これらの結果から、FMC63処置により、実験経過に亘ってhCD19を有する細胞の進行性の枯渇が生じ、血中B細胞は、脾臓B細胞よりも速く枯渇したことが示唆される。各時点で残存しているそれらのB細胞は、mCD19またはmCD20の発現によって同定され得たが、B4によって染色されなかった。このことから、投与されたFMC63が、残存しているB細胞に結合していたことが示唆される。これらの知見から、インビボにおいてFMC63がB細胞と結合し、B細胞を枯渇させる能力が確かめられた。さらに、FMC63は、B4の結合を妨害することから、これらの抗体が、hCD19上の重複したエピトープを認識していることが示唆される。図12Cにおける結果から、HB12b抗体による処置(250μg)もまた、投与の1時間以内にhCD19上の抗体結合部位を飽和させ、その結果、hCD19陽性B細胞を枯渇させることが確かめられた。予想外にも、HB12b抗体は、B4抗体の結合を完全に阻害しなかったことから、FMC63とは異なり、HB12bは、B4によって認識されているhCD19上のエピトープと異なるエピトープを認識していることが示唆される。図12B〜12Cに示される結果から、ほとんどの抗CD19抗体が他のほとんどの抗CD19抗体の結合を阻害することが証明され、このことから、ほとんどの抗CD19抗体が、CD19タンパク質上の類似か、同じか、または重複した領域またはエピトープに結合することが示唆される。あるいは、これらの観察結果はまた、抗体分子の大きさと比べて比較的小さいCD19細胞外ドメインに起因し得る。
6.6.実施例5:抗CD19抗体処置は体液性免疫および自己免疫を抑制する
この実施例において説明されるアッセイを使用して、抗CD19抗体が、免疫応答を排除または減弱させることができるか否かを判定することができる。これらのアッセイにおいて同定された抗CD19抗体は、上の5.1.節で記載した技術を使用して、キメラ抗CD19抗体、ヒト抗CD19抗体またはヒト化抗CD19抗体を操作するために使用され得る。このような抗体は、ヒトにおける自己免疫疾患および自己免疫障害を処置するために本発明の組成物および方法に次々と使用され得る。
血清抗体レベルに対する、抗CD19抗体に誘導されるB細胞枯渇の作用を、hCD19TG+/−マウスへの抗CD19抗体の単回注射を行うことによって評価した。図13Aは、CD19抗体処置が、TG−1+/−マウス中の血清免疫グロブリンレベルを低下させることを示している。2月齢の同腹仔を、0日目に、FMC63(黒丸)またはコントロール(白丸)抗体(250μg)の単回注射により処置した。抗体レベルをELISAによって測定し、平均値(±SEM)は、各群5匹以上のマウスについて示した。CD19またはコントロールmAbで処置されたマウス間の差は有意であった:*p<0.05、**p<0.01。これらの結果は、1〜2週間後の血清IgM、IgG2b、IgG3およびIgA抗体レベルが有意に減少しており、また、少なくとも10週間減少したままであったことを示す(図13A)。IgG1およびIgG2a血清レベルは、処置の6および4週間後において正常レベルよりも有意に低かった。
2月齢以上のhCD19TG+/−マウスが検出可能な自己抗体を産生する(Sato et al.,J.Immunol.,157:4371(1996))ため、ssDNA、dsDNAおよびヒストンに結合する血清自己抗体を評価した。図13Bは、抗CD19抗体処置によって、抗CD19抗体処置後に自己抗体の抗dsDNA、抗ssDNAおよび抗ヒストン自己抗体レベルが減少することを示している。これらの結果から、抗CD19抗体処置が、2週間後に血清IgM自己抗体レベルを有意に低下させることおよび10週までの間、アイソタイプスイッチしたIgG自己抗体の生成を妨害することが示される(図13B)。従って、B細胞枯渇は、実質的に、急性および長期間の抗体応答を減少させ、正常な免疫応答および病原性の免疫応答のクラススイッチを減弱した。
T細胞非依存性のタイプ1(TI−1)およびタイプ2(TI−2)抗体応答に対するB細胞枯渇の影響を、TNP−LPSまたはDNP−フィコール(0日目)でhCD19TG+/−マウスを免疫し、7日後に抗CD19抗体(FMC63)またはコントロール抗体処置することによって評価した。いずれかの抗原で免疫され、抗CD19抗体で処置されたマウスにおいて、有意なハプテン特異的IgM、IgGおよびIgA抗体の反応が観察されなかった(図14Aおよび14B)。T細胞依存性(TD)Ag、DNP−KLHに対する抗体応答もまた、免疫の7日前に抗CD19抗体で処置したマウスを使用して評価した(図14B)。図14Cは、DNP−KLHで免疫され、抗CD19抗体で処置されたマウスの体液性免疫が低下したことを示している。0日目の初回免疫の7日前に同腹仔をFMC63(黒丸)またはコントロール(白丸)抗体(250μg)で処置し、示した日に血清を採取した。DNP−KLH免疫について、21日目にすべてのマウスに100μgのDNP−KLHを投与した。すべての値は、各群5匹のマウス由来の血清を使用して得られた平均(±SEM)ELISA OD単位である。抗CD19またはコントロール抗体処置マウス間の差が有意であった。*p<0.05、**p<0.01。これらの結果から、コントロール抗体で処置された同腹仔が、DNP−KLH免疫の7日後の最初のIgM抗体応答および21日目の抗原チャレンジ後の2次応答を示したことが示される(図14C)。しかしながら、有意なハプテン特異的IgM、IgGまたはIgA抗体応答は、抗原で免疫されたか、または再負荷を受けたCD19mAb処置マウスにおいて検出されなかった。2次抗体応答に対するB細胞枯渇の作用を評価するために、マウスを、DNP−KLHで免疫し、そして14日後に抗CD19抗体で処置した(矢頭)(図14D)。21日目まで、血清IgM、IgGおよびIgA抗DNP抗体応答は、CD19mAb処置マウスにおいて、コントロールmAbで処置された免疫マウスの反応よりも低いレベルに低下した。しかしながら、コントロールmAbで処置されたマウスのDNP−KLHによる21日目の再負荷が、有意な2次抗体応答を誘導したが、CD19mAbで処置されたマウスは、DNP−KLH再負荷後、抗DNP抗体を産生しなかった。従って、CD19mAbに誘導されるB細胞枯渇は、1次抗体応答と2次抗体応答の両方を実質的に減少させ、また、体液性免疫応答の間のクラススイッチを妨害した。
6.7.実施例6:抗CD20抗体処置と併用した抗CD19抗体処置
本明細書中に記載のアッセイを使用して、他の併用療法または結合体治療、例えば、化学療法、トキシン治療または放射線治療と組み合わせた抗CD19抗体が、有益な効果(例えば、相加的または相加的以上のB細胞の枯渇)を有するか否かを判定することができる。動物モデルにおいて試験される併用療法の結果は、当該分野で周知の手段によってヒトと相関させることができる。
抗CD20抗体は、ヒトおよびマウスのB細胞をインビボにおいて枯渇させる際に有効である。従って、抗CD19(FMC63)および抗CD20(MB20−11)抗体で同時に処置する利点を評価することにより、この処置がB細胞枯渇を増大させるか否かを判定した。各抗体を個々に最適以下の2μgの用量で、または両方の抗体を1μgずつ組み合わせて、2μgずつの用量を合わせて、マウスを処置した。図15は、0日目に、コントロール(250μg)、FMC63(CD19,2μg)、MB20−11(CD20,2μg)、FMC63+MB20−11(各々1μg)またはFMC63+MB20−11(各々2μg)抗体で処置したTG−1+/−マウスの結果を示す。血中B細胞数を、時間0、1時間後および1日目、4日目および7日目に計測した。組織B細胞数を7日目に測定した。値は、各群3匹のマウスからの平均(±SEM)として示す。図15に示される結果から、抗CD19抗体と抗CD20抗体の同時処置が有益であることが証明される。両方の抗体を1μgずつあわせて処置されたマウスにおけるB細胞枯渇は、個々の抗体の2μgでマウスを処置した後に観察された枯渇の中間であったか、またはそれに似たものであった(図15)。しかしながら、2μgずつ両方の抗体で同時に処置したマウスでは、どちらか単独の抗体で観察されたものよりも有意に大きいB細胞枯渇がもたらされる。従って、抗CD19抗体治療と抗CD20抗体治療との併用は、B細胞枯渇を増大させる有益な効果を有した。これは、おそらく、個々のB細胞の表面上に治療的により有効な抗体分子の蓄積に起因する。
6.8.実施例7:皮下(S.C.)抗CD19抗体投与は治療的に有効である
本明細書中に記載のアッセイを使用して、抗CD19抗体を皮下経路によって投与することが、効果的にB細胞を枯渇させ得るか否かを判定することができる。動物モデルにおいて試験される様々な送達経路の有効性についての結果は、当該分野で周知の手段によってヒトに相関させることができる。
i.v.投与された抗CD19抗体は、循環B細胞および組織B細胞を効果的に枯渇させるため、s.c.またはi.p.投与された抗CD19抗体が、B細胞を同程度に枯渇させるか否かを評価した。皮下(s.c)、腹腔内(i.p.)またはi.v.のいずれかによって、250μgのFMC63抗体で野生型マウスを処置した。値は、フローサイトメトリーによって評価したときの7日目の平均(±SEM)血液(1mLあたり)、骨髄、脾臓、リンパ節および腹膜腔のB220+B細胞数(n≧3)を表している。各群のマウスの平均結果間の有意差をコントロールと比較して*p<0.05、**p<0.01として示す。図16における結果は、CD19抗体の皮下(s.c)、腹腔内(i.p.)およびi.v.投与が、効果的に循環および組織B細胞をインビボにおいて枯渇させることを証明している。i.v.、i.p.またはs.c.のいずれかで250μg用量の抗CD19抗体を投与されたマウスにおいて、大部分の循環B細胞および組織B細胞が枯渇した(図16)。予想外にも、i.p.による抗CD19抗体の投与は、i.v.処置よりも有意に良好に腹膜B細胞を枯渇させなかった。従って、抗CD19抗体の64mg以下をs.c.注射によって投与するとき、循環B細胞および組織B細胞の両方を効果的に枯渇させることができる。抗CD19抗体は、10μg用量i.v.まで少なくても有効である(図10D)ため、一層少ないs.c.抗体用量が有効である可能性がある。
本発明は、本明細書中に記載された特定の実施形態によって制限されるべきでない。実際に、記載したものに加えて本発明の様々な改変が、前述の記載および添付の図面から当業者に明らかになるだろう。そのような改変は、付属の特許請求の範囲の範囲内に入ると解釈される。
本発明は、本明細書中に記載された特定の実施形態によって制限されるべきでない。実際に、記載したものに加えて本発明の様々な改変が、前述の記載および添付の図面から当業者に明らかになるだろう。そのような改変は、付属の特許請求の範囲の範囲内に入ると解釈される。
様々な出版物が本明細書中に引用されるが、それらの開示は、その全体が参考として援用される。