自動車等において、高い安全性能を実現するためには、剛性と荷重吸収性のバランスが極めて重要となる。しかしながら、上記特許文献1には剛性と荷重吸収性のバランスをとることについて具体的に言及されておらず、そのような構造についての示唆もない。
また、上記特許文献1においては、連結材を追加して剛性の確保を図っている。しかし、連結材の追加(部品追加)によって、コストが嵩み、重量が増大し、生産性が低下するため、なるべく部品を追加せずに要求される性能を満たす構成が求められる。さらに、特許文献1では連結材をアウターパネルの裏面に溶接するが、そのスポット溶接の打点痕がバックドア開時に視認されるため、外観品質の点でも問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、剛性と荷重吸収性の最適なバランスを実現することで、安全性能の向上を図るとともに、コストの低減、重量の削減、スポット溶接等の接合作業の簡略化を可能にするクォータ部構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の代表的な構成は、車体側部のリヤドア開口部と車体後部のバックドア開口部との間に備えられるクォータ部構造において、クォータ部の外面を形成するサイドボディアウタと、サイドボディアウタの車内側に設置されリヤドア開口部の後縁に沿って上下方向に延びるフロントリンフォースと、サイドボディアウタの車内側に設置されバックドア開口部の側縁に沿って上下方向に延びるリヤリンフォースと、サイドボディアウタの車内側に設置されるクォータパネルとを有し、クォータパネルは、車体前方に延びる第1の腕部と、第1の腕部の後端から下方へと延びる第2の腕部とを備え、リヤドア開口部の上縁に沿って車体前後方向に延びるルーフサイドパネルに第1の腕部の前端が溶接され、フロントリンフォースの後端上部に第2の腕部の前端が溶接され、リヤリンフォースの前端上部に第2の腕部の後端が溶接され、クォータパネルの剛性がフロントリンフォースよりも高く設定されていることを特徴とする。
かかる構成では、クォータパネルは、第1の腕部の前端がルーフサイドパネルに溶接され、第2の腕部の後端がリヤリンフォースに溶接され、これらの間の荷重の受け渡しを行う。クォータパネルが破壊されると、荷重の受け渡しが円滑に行われなくなり車体全体での荷重の分散が妨げられるおそれがあるため、ここでは、クォータパネルの剛性を高く設定する。
その一方で、クォータパネルの第2の腕部の前端に、優先的に形状変形させて荷重を吸収する部分としてフロントリンフォースを溶接する。これにより、剛性を高く設定したクォータパネルからフロントリンフォースに荷重が伝達されると、優先的にフロントリンフォースが形状変形しながらその荷重を吸収する。フロントリンフォースに優先的に荷重を吸収させることで、他にかかる荷重を低減可能となる。
他にかかる荷重が低減されれば、他の部位を積極的に補強せずとも、要求される安全性能を満たすことができる。すなわち、部品の低減を図ることができるため、コストの低減、重量の削減、スポット溶接等の接合作業の簡略化を達することが可能となる。なお、特許文献1のように連結材を追加する必要はないので、そのスポット溶接の打点痕が問題となることもなく、外観品質の面でも優れたものとなる。
上記フロントリンフォースと上記第2の腕部の前端との溶接箇所よりも車体前方にて、上記サイドボディアウタとそのフロントリンフォースとが、上記リヤドア開口部の後縁に沿ってそれぞれに形成されたフランジで互いに溶接されているとよい。
かかる構成では、フロントリンフォースに荷重を伝達する剛性の高いクォータパネルの第2の腕部が、フロントリンフォースのフランジには合わせこまれない(フランジの後方にて溶接される)。これにより、クォータパネルの第2の腕部から直接フランジに荷重が伝達されることが回避されるため、サイドボディアウタのフランジとフロントリンフォースのフランジとの溶接の剥がれ(スポット溶接の打点抜け等)を防ぐことができる。
上記フロントリンフォースが、上記第2の腕部の前端の溶接箇所と、上記フランジとの間に、上下方向に延びるビードを備えるとよい。
かかる構成では、上下方向に延びるビードを備えることで、フロントリンフォースに適正な剛性を持たせることができる。適正な剛性を持たせるのは、フロントリンフォースの剛性があまりにも低すぎると伝達された荷重を受けてすぐに形状変形しきってしまい(曲がりきってしまい)充分に荷重を吸収させることができないためであり、これにより荷重吸収性を向上することができる。
また、この上下方向に延びるビードを備えた場合、荷重が伝達された際にビードの根元に応力集中が発生し、ビードの根元が形状変形の折れラインとなる。すなわち、上下方向に形状変形の折れラインが発生する。これより、フロントリンフォースに、車体前後方向に折れラインが発生することを抑制でき、サイドボディアウタやクォータパネルの第2の腕部との溶接の剥がれが発生することを回避できる。
上記クォータパネルの上記第1の腕部よりも下方に、シートベルトウェビングが挿し通されるアンカが取り付けられているとよい。
かかる構成では、シートベルトウェビングを装着した乗員が投げ出されるのを防ぐ際に、アンカからクォータパネルに大きな引張力がかかる。しかし、ここでは、上記のようにクォータパネルの剛性が高く設定され、クォータパネルから伝達された荷重が優先的にフロントリンフォースにて形状変形を伴って吸収され、他にかかる荷重が低減されるように構成されているため、アンカからの大きな引張力によって溶接の剥がれが発生することを回避できる。また、クォータパネルの剛性が高く設定され、クォータパネルのアンカの取付部分の形状変形が抑えられるため、高い安全性能を確保可能である。
上記クォータパネルが、上記アンカの取付箇所よりも車体前方にて、上下方向にわたって形成される段差を備えるとよい。
かかる構成では、アンカからクォータパネルにかかる大きな引張力が、上下方向にわたって形成される段差にて分散される。この段差にて、引張力を上下方向に分散することで、その車体前方に位置するフロントリンフォースに、平均的に(効率良く)荷重を吸収させることができる。これにより、荷重吸収性の向上を図ることができる。
上記クォータパネルが高張力鋼により形成され、クォータパネルの板厚が1.2mm以上、フロントリンフォースの板厚が0.6mm〜0.8mmであるとよい。
かかる構成では、クォータパネルを高張力鋼により形成するため、その剛性を好適に確保することができる。また、クォータパネルの板厚を1.2mm以上、フロントリンフォースの板厚を0.6mm〜0.8mmとすることで、少なくとも剛性と荷重吸収性のバランスをとれることが確認された。
上記クォータパネルよりも下方にて、上記フロントリンフォースの後端に前端が溶接され、上記リヤリンフォースの前端に後端が溶接されるリトラクタリンフォースをさらに有し、リトラクタリンフォースの剛性が、フロントリンフォースよりも高く設定されているとよい。
かかる構成では、クォータパネルと同様にリトラクタリンフォースの剛性が高く設定され、リトラクタリンフォースから伝達される荷重を受けて、優先的にフロントリンフォースが形状変形しながらその荷重を吸収する。リトラクタリンフォース等の剛性が求められる部分では剛性を確保し、その一方で、フロントリンフォース等の優先的に荷重を吸収させる部分をしっかりと設定することで、好適に安全性能を確保可能である。
上記リヤリンフォースは、その前端に上記第2の腕部の後端および上記リトラクタリンフォースの後端が溶接されるリヤリンフォースフランジを備え、リヤリンフォースフランジが、第2の腕部の後端とリトラクタリンフォースの後端との間に、車内側へとその一部が盛り上げられて形成された盛上部と、車内側へと延び該盛上部の端部に連続する縦壁とを備えるとよい。
かかる構成では、リヤリンフォースフランジのうち、第2の腕部の後端とリトラクタリンフォースの後端との間が、他の部材が接合されない相対的に弱い部分すなわち優先的に形状変形しながら荷重を吸収する部分となる。この部分に盛上部と縦壁とを備えることで、適正な剛性を確保して、荷重吸収性の向上を図ることができる。また、適正な剛性を確保することで、形状変形過多による第2の腕部の後端やリトラクタリンフォースの後端との溶接の剥がれが発生することを回避できる。
本発明によれば、剛性と荷重吸収性の最適なバランスを実現することで、安全性能の向上を図るとともに、コストの低減、重量の削減、スポット溶接等の接合作業の簡略化を可能にするクォータ部構造を提供可能である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態にかかるクォータ部構造110を適用したハッチバック車100を示す図である。なお、図中の矢印FRは車体前方を示すものとし、図中の矢印INは車内側、図中の矢印OUTは車外側を示すものとする。
図1に示すように、ハッチバック車100の車体側部には、車体前方にフロントドア開口部102が設けられ、その後方にリヤドア開口部104が設けられる。ハッチバック車100の車体後部には、バックドア開口部106が設けられる。本実施形態にかかるクォータ部構造110は、リヤドア開口部104とバックドア開口部106との間に備えられるクォータ部に適用される構造である。
図2は、図1のクォータ部構造110を示す図である。図3は、図2の分解斜視図である。図4は、図2からアンカ146、リトラクタ148、サイドボディアウタ112を取り外した図である。なお、図4では、理解を容易にするために、クォータパネル126およびリトラクタリンフォース132にハッチを付して図示する。
図2、図3、図4に示すように、クォータ部構造110では、クォータ部の外面を形成するサイドボディアウタ112の車内側に、フロントリンフォース114およびリヤリンフォース116が設置される。フロントリンフォース114は、リヤドア開口部104の後縁に沿って上下方向に延びる部材である。リヤリンフォース116は、バックドア開口部106の側縁に沿って上下方向に延びる部材であり、ここではリヤアッパリンフォース118とリヤインナコンプ120とで構成される。
サイドボディアウタ112およびフロントリンフォース114には、リヤドア開口部104の後縁に沿ったフランジ112a、114aがそれぞれに形成される。図2に示すように、かかるフランジ112a、114aは、複数の溶接打点位置200(図中、代表して1つに符号を付す)にて、互いにスポット溶接される。
フロントリンフォース114上方とリヤリンフォース116上方との間には、クォータパネル126が架設される。クォータパネル126は、車体前方に延びる第1の腕部128と第1の腕部128の後端から下方へと延びる第2の腕部130とを備え、略L字形状に形成される。
第1の腕部128の前端は、リヤドア開口部104の上縁に沿って車体前後方向に延びるルーフサイドパネル134に溶接される。第2の腕部130の前端は、フロントリンフォース114の後端上部に溶接される。詳細には、図4に示すように、フロントリンフォース114のフランジ114aより後方に設定された複数の溶接打点位置202(図中、代表して1つに符号を付す)にて、第2の腕部130の前端はフロントリンフォース114にスポット溶接される。
第2の腕部130の後端は、リヤリンフォース116の前端にて上下方向に延びるリヤリンフォースフランジの上部、すなわちリヤアッパリンフォース118前端のフランジ118aの上部に溶接される。詳細には、図4に示すように、第2の腕部130の後端は、リヤアッパリンフォース118前端のフランジ118a上部に設定された複数の溶接打点位置204(図中、代表して1つに符号を付す)にて、スポット溶接される。
クォータパネル126よりも下方にて、フロントリンフォース114とリヤリンフォース116との間には、リトラクタリンフォース132が架設される。リトラクタリンフォース132の前端は、フロントリンフォース114の後端に溶接される。
リトラクタリンフォース132の後端は、リヤアッパリンフォース118前端のフランジ118a下部に設定された複数の溶接打点位置206(図中、代表して1つに符号を付す)にて、スポット溶接される。また、リトラクタリンフォース132の後端は、リヤインナコンプ120前端のフランジ120a(リヤリンフォースフランジ)の上部にも溶接される。なお、リヤインナコンプ120は、上下方向に延びるリヤインナパネル122と、リヤインナパネル122の上部を補強するリヤインナリンフォース124とで構成される(図3参照)。
図2に示すように、クォータパネル126の第1の腕部128よりも下方にはシートベルト装置のアンカ146が取り付けられ、リトラクタリンフォース132にはシートベルト装置のリトラクタ148が取り付けられる。詳細には、アンカ146は、クォータパネル126の第2の腕部130の取付孔126aにボルト・ナットで締結され、リトラクタ148は、リトラクタリンフォース132の取付孔132aにボルト・ナットで締結される。
アンカ146には、シートベルトウェビング144が挿し通される。かかるシートベルトウェビング144は、リトラクタ148によって巻回される。シートベルトウェビング144を装着した乗員が投げ出されるのを防ぐ際には、アンカ146からクォータパネル126に大きな引張力がかかり、シートベルトプリテンショナー(不図示)の作動によりリトラクタ148からリトラクタリンフォース132にも大きな引張力がかかる。
ここで、クォータパネル126は、第1の腕部128の前端がルーフサイドパネル134に溶接され、第2の腕部130の後端がリヤアッパリンフォース118に溶接され、これらの間の荷重の受け渡しを行う。クォータパネル126が破壊されると、荷重の受け渡しが円滑に行われなくなり車体全体での荷重の分散が妨げられるおそれがある。
また、上記のようにクォータパネル126には、アンカ146が取り付けられている。クォータパネル126のアンカ146の取付部分である取付孔126a等が形状変形すると、アンカ146が損傷、脱落して、安全性能に支障をきたす可能性がある。
リトラクタ148が取り付けられるリトラクタリンフォース132についても、同様である。すなわち、リトラクタリンフォース132のリトラクタ148の取付部分である取付孔132a等が形状変形すると、リトラクタ148が損傷、脱落して、安全性能に支障をきたす可能性がある。
そこで、クォータ部構造110では、クォータパネル126を高張力鋼(ハイテン材)で厚く形成し、クォータパネル126の剛性を高く設定する。また、クォータパネル126と同様にリトラクタリンフォース132も厚く形成しその剛性を高く設定する。その一方で、フロントリンフォース114の板厚を薄くして相対的に剛性を低くし、フロントリンフォース114を優先的に形状変形させて荷重を吸収する部分として機能させる。
具体的には、高張力鋼で形成されるクォータパネル126の板厚を1.2mm以上、フロントリンフォース114の板厚を0.6mm〜0.8mmに設定する。クォータパネル126の板厚、フロントリンフォース114の板厚をこの範囲に設定することで、少なくとも剛性と荷重吸収性のバランスをとれることが確認された。参考として、表1に各部材の板厚を例示する。
なお、高張力鋼は、比強度・比剛性が一般鋼材よりも大きく、軽量化が可能であり、コストが安い利点をもつ。図5は、図2のクォータパネル126のプレス加工について説明する図である。上記のようにクォータパネル126は略L字形状のため、図5に示すように互い違いに2つのクォータパネルを配置して、フォーム型セット取りが可能である。そのため、高い生産性を確保することが可能である。
図6は、図2のA−A断面図およびB−B断面図である。図6(a)が図2のA−A断面図であり、図6(b)が図2のB−B断面図である。図7は、図2のC−C断面図、D−D断面図、およびE−E断面図である。図7(a)が図2のC−C断面図であり、図7(b)が図2のD−D断面図であり、図7(c)が図2のE−E断面図である。
図6(a)、(b)を参照する。アンカ146からクォータパネル126に大きな引張力がかかると、その引張力がフロントリンフォース114へと伝達される。このとき、フロントリンフォース114は優先的に形状変形してその荷重(引張力)を吸収するため、フロントリンフォース114と第2の腕部130の前端との溶接箇所である溶接打点位置202の各打点にかかる荷重を低減することができる(過剰な荷重がかかることを防止できる)。そのため、各打点の抜け(溶接の剥がれ)を防止することができる。
また、上記のように、フロントリンフォース114のフランジ114aは、第2の腕部130の前端の溶接箇所よりも車体前方にて、サイドボディアウタ112のフランジ112aに溶接打点位置200にてスポット溶接されている。アンカ146からの荷重をフロントリンフォース114に伝達する第2の腕部130がフロントリンフォース114のフランジ114aに合わせこまれておらず、直接フランジ112a、114aに荷重が伝達されることはないので、より確実に溶接打点位置200の各打点の抜けが防止される。
図7(a)、(b)に示すように、リトラクタリンフォース132についても同様である。リトラクタ148からリトラクタリンフォース132に大きな引張力がかかると、その引張力がフロントリンフォース114へと伝達される。このとき、フロントリンフォース114は優先的に形状変形してその荷重(引張力)を吸収するため、フロントリンフォース114とリトラクタリンフォース132の前端との溶接箇所にかかる荷重を低減することができる。
また、フロントリンフォース114のフランジ114aは、リトラクタリンフォース132の前端の溶接箇所よりも車体前方にて、サイドボディアウタ112のフランジ112aに溶接打点位置200にてスポット溶接されている。リトラクタ148からの荷重をフロントリンフォース114に伝達するリトラクタリンフォース132がフロントリンフォース114のフランジ114aに合わせこまれておらず、直接フランジ112a、114aに荷重が伝達されることはないので、より確実に溶接打点位置200の各打点の抜けが防止される。
アンカ146からクォータパネル126に大きな引張力がかかった場合、またはリトラクタ148からリトラクタリンフォース132に大きな引張力がかかった場合、その引張力はリヤリンフォース116へも伝達される。リヤリンフォース116に伝達された荷重は、サイドボディアウタ112に伝達され、車体各所へと荷重が分散される。本実施形態では、リヤドア開口部104やバックドア開口部106にかかる荷重は、クォータパネル126、リトラクタリンフォース132、フロントリンフォース114、リヤリンフォース116にて橋渡しされ分散されるため、好適に安全性能を高めることができる。
また、本実施形態の特徴として、フロントリンフォース114は、そのフランジ114aと第2の腕部130の前端の溶接箇所との間に、上下方向に延びるビード114bを備える。上下方向に延びるビード114bを備えることで、フロントリンフォース114に適正な剛性を持たせることができる。
適正な剛性を持たせるのは、フロントリンフォース114の剛性があまりにも低すぎると伝達された荷重を受けてすぐに形状変形しきってしまい(曲がりきってしまい)充分に荷重を吸収させることができないためである。すなわち、このビード114bを備えることで、荷重吸収性の向上を図ることができる。
この上下方向に延びるビード114bを備えた場合、荷重が伝達された際にビード114bの根元114cに応力集中が発生し、ビード114bの根元114cが形状変形の折れラインとなる。すなわち、上下方向に形状変形の折れラインが発生する。これより、フロントリンフォース114に、車体前後方向に折れラインが発生することを抑制でき、溶接打点位置200の各打点および溶接打点位置202の各打点の打点抜けを回避できる。
本実施形態の特徴として、クォータパネル126は、アンカ146の取付箇所よりも車体前方に、上下方向にわたって形成される段差126bを備える。これにより、アンカ146からクォータパネル126にかかる大きな引張力が、上下方向にわたって形成される段差126bにて分散される。この段差126bにて、引張力を上下方向に分散することで、その車体前方に位置するフロントリンフォース114に、平均的に(効率良く)荷重を吸収させることができるため、荷重吸収性の向上を図ることができる。
図4に示すように、リヤアッパリンフォース118(リヤリンフォース116)のフランジ118a(リヤリンフォースフランジ)のうち第2の腕部130の後端とリトラクタリンフォース132の後端との間は、他の部材が接合されない相対的に弱い部分である(以下、この部分を「パネル未接合範囲E1」と称する)。パネル未接合範囲E1は相対的に弱い部分であるため、大きな引張力がかかると、フロントリンフォース114と同様に優先的に形状変形しながら荷重を吸収する。
そのため、第2の腕部130の後端との溶接箇所である溶接打点位置204(特に、最も下の溶接打点位置204a)、およびリトラクタリンフォース132の後端との溶接箇所である溶接打点位置206(特に、最も上の溶接打点位置206a)にかかる荷重を低減することができる。よって、各打点の抜けを防止することができる。
図8は、図4のパネル未接合範囲E1の拡大図である。図8および図7(c)に示すように、本実施形態の特徴としてパネル未接合範囲E1に、車内側へとその一部が盛り上げられて形成された盛上部140と、車内側へと延び盛上部140の端部に連続する縦壁142とを備える。
この部分に盛上部140と縦壁142とを備えることで、適正な剛性を確保することができる。これにより、すぐに形状変形しきってしまうことを防止できるので、荷重吸収性の向上を図ることができる。また、適正な剛性を確保することで、形状変形過多による溶接打点位置204aの打点や溶接打点位置206aの打点等の抜けを防止することができる。
以上、上述したクォータ部構造110では、剛性が要求されるクォータパネル126やリトラクタリンフォース132の剛性を高くする一方で、フロントリンフォース114やパネル未接合範囲E1等の優先的に荷重を吸収する部分をしっかりと設定している。すなわち、剛性と荷重吸収性のバランスをとっている。これにより、アンカ146ヤリトラクタ148から大きな引張力がかかっても、優先的に荷重を吸収する部分がその荷重を充分吸収する。
そのため、他にかかる荷重が低減され、これらに過剰な荷重がかかることを回避できる。よって、溶接の各打点の抜けを防止することができる。これより、積極的な補強を要せずに安全性能の向上を図ることができる。積極的な補強を要しないということで部品の低減が可能なため、コストの低減、重量の削減、スポット溶接等の接合作業の簡略化を達することが可能となる。
なお、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。