JP7032849B2 - 車両構造 - Google Patents

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Description

本発明は、バッテリなどの充電装置が車室内に搭載された車両構造に関する。
車両構造の具体例として、特許文献1に記載の構造がある。
同文献に記載の車両構造においては、フロア部の車幅方向略中央部に、車両前後方向に延びるフロアトンネル部が形成されている。ただし、フロアトンネル部の途中箇所は、他の部分よりも高さが低い低トンネル部とされ、この低トンネル部上にバッテリが搭載されている。バッテリの上側には、バッテリよりも車両前方側部分と車両後方側部分とを連結するように前後方向に延びるブレースが設けられている。また、バッテリの車両前方側には、車幅方向に延びるフロアクロスメンバ(第1クロスメンバ19)が設けられており、このフロアクロスメンバの車幅方向中央部には、フロアクロスメンバとフロアトンネル部とを接続する接続部材(同文献の符号33の部材)が設けられている。
このような構成によれば、フロアトンネル部の低トンネル部を利用して、大型のバッテリを車室内に搭載することが可能である一方、ブレースおよびフロアクロスメンバの存在により、バッテリ搭載箇所の車体剛性を高めることが可能である。
しかしながら、従来においては、次に述べるように、解決すべき課題がある。
すなわち、前記従来技術においては、フロアトンネル部の低トンネル部上にバッテリを搭載しているが、この構造によれば、フロア部の非トンネル部上にバッテリを配置する場合と比較すると、バッテリの位置が高くなって車両の重心が高くなるため、車両の操安性の悪化を招く虞がある。これを解消する手段として、フロアトンネル部を、バッテリよりも車両前方側の領域のみに形成し、バッテリを非トンネル部上に搭載することが考えられる。
ただし、このような手段によれば、車両の前突が発生した場合には、車両前方側から車両前部に入力した衝突荷重を、フロアトンネル部によって受け止めることが難しくなり、前記衝突荷重の殆どが、ブレースおよびフロアクロスメンバに作用することとなる。このため、前記衝突荷重が大きい場合には、ブレースに加えて、フロアクロスメンバが車両後方側に大きく変形し、このフロアクロスメンバがバッテリに当接する虞がある。バッテリ保護の観点からすると、このようなことは極力防止することが要望される。
前記した不具合を防止する手段としては、ブレースやフロアクロスメンバの大型化・厚肉化を図ることが考えられるが、このような手段を採用したのでは、車両重量の増加や、製造コストの上昇を招く。
特開2018-30513号公報
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、車両の前突に起因してフロアトンネル部に大きな荷重入力が生じた場合におけるバッテリなどの充電装置の保護性能を優れたものにすることが可能な車両構造を提供することを、その課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
本発明により提供される車両構造は、車室のフロア部の前部に形成されているフロアトンネル部と、前記フロア部上のうち、前記フロアトンネル部の車両後方側に位置して車幅方向に延びており、かつ前記フロア部の車幅方向両端部に接続されている左右一対のロッカの相互間に橋渡し接続されているフロアクロスメンバと、前記フロア部上のうち、前記フロアクロスメンバよりも車両後方側の位置に搭載された充電装置と、この充電装置の上側に位置して車両前後方向に延びており、かつ前部が前記フロアトンネル部に第1の接合部を介して接合されている一方、後部が前記充電装置よりも車両後方側に位置する車体構成部材に接合されているブレースと、前記フロア部の下面部に接合され、かつ前記フロアトンネル部の基部の下面側の位置から車両後方側に延びるインナメンバと、を備えている、車両構造であって、前記フロアトンネル部の後部には、前記フロアクロスメンバとの間に隙間を隔てた配置で後下がり状に傾斜した傾斜後端壁部が形成され、かつこの傾斜後端壁部の下端部は、前記インナメンバに接合されており、前記ブレースの車両前後方向途中部分は、前記フロアクロスメンバの上部またはこの上部に固定された部材に第2の接合部を介して接合され、前記ブレースの前記第1の接合部から前記第2の接合部に到る領域は、前記フロアトンネル部の前記傾斜後端壁部に対してその上側に離間した配置に設けられていることを特徴としている。
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、車両の前突が発生し、車両前方側からフロアトンネル部に大きな荷重入力があった場合、この荷重は、ブレースの第1の接合部から第2の接合部に到る領域に伝達する力と、フロアトンネル部の傾斜後端壁部からインナメンバに伝達する力とに分散されることとなる。前記荷重がブレースやフロアクロスメンバに集中的に作用することを適切に回避し、インナメンバにも前記荷重を負担させることが可能である。その結果、車両の前突時において、フロアクロスメンバが大きく変形して充電装置に当接することを適切に防止または抑制し、充電装置の保護性能を高めることができる。
本発明によれば、前記従来技術と比較して、ブレースやフロアクロスメンバの厚肉化や大型化を図る必要はない。また、特殊な部材や大型の部材を新たに追加して用いる必要もない(インナメンバは、フロアトンネル部が設けられている車両においては、元々設けられているのが一般的である)。したがって、重量の増加や、製造コストの上昇を抑制することもできる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
本発明に係る車両構造の一例を示す要部概略斜視図である。 図1のバッテリを省略した状態の要部分解概略斜視図である。 (a)は、図1のバッテリを搭載した状態の要部側面断面図であり、(b)は、(a)とは異なる位置における図1のバッテリを搭載した状態の要部側面断面図である。 (a)は、図3(a)のIVa-IVa断面図であり、(b)は、図3(a)のIVb-IVb断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1および図2に示す車両構造Aは、車室のフロア部3(フロントフロア部)、左右一対のロッカ8、第1および第2のフロアクロスメンバ1,2、バッテリ6、ブレース7、補助ブレース7A、および左右一対のインナメンバ5を備えている。
フロア部3は、金属板製のフロアパネル3aを用いて構成されており、車室前部のダッシュパネル39の下部もフロア部3の一部を構成している。フロア部3の前部の車幅方向中央部には、上方に部分的に膨出したフロアトンネル部30が形成されている。図面においては、フロアトンネル部30がフロアパネル3aによって一体形成されている状態に示されているが、これとは異なり、フロアパネル3aとは別部材を用いてフロアトンネル部30を形成し、かつフロアパネル3aに溶接した構成とされていてもよい。フロアトンネル部30の後部には、傾斜後端壁部30aが設けられているが、この点については後述する。
左右一対のインナメンバ5は、図4(a)によく表れているように、フロア部3の下面部に接合され、かつフロアトンネル部30の左右の基部30bの下面側の位置から車両後方側に延びる部材である。インナメンバ5は、フロアトンネル部30よりも車両後方側の位置においては、図4(b)に示すように、たとえば断面ハット状である。図面において、符号4は、左右一対のサイドメンバであり、これら一対のサイドメンバ4は、インナメンバ5の車幅方向両外方側に位置し、車両の前端部近傍から後端部近傍にわたって一連に延びる部材である。
第1および第2のフロアクロスメンバ1,2は、フロア部3の上面側のうち、フロアトンネル部30よりも車両後方側に設けられ、かつ左右一対のロッカ8の相互間に橋渡し接続された状態で車幅方向に延びている。一対のロッカ8は、車体の左右両側部の下部に位置して車両前後方向に延びる部材であり、たとえばドア用開口部の下縁部などを構成する。第1および第2のフロアクロスメンバ1,2は、たとえば図3に示すように、断面ハット状部材を用いて構成されており、フロア部3の上面部に溶接されている。
第1のフロアクロスメンバ1は、本発明でいうフロアクロスメンバ、つまりフロアトンネル部との関係において本発明が意図する構成を有するフロアクロスメンバの具体例に相当する。これに対し、第2のフロアクロスメンバ2は、それには相当しない。
バッテリ6は、本発明でいう充電装置の一例に相当する。本実施形態の構造Aが適用される車両は、たとえばハイブリッド車、あるいは電気自動車であり、バッテリ6は、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素二次電池などである。
バッテリ6は、フロア部3上のうち、第1および第2のフロアクロスメンバ1,2の相互間の位置に搭載され、かつ不図示のブラケットなどを用いて固定されている。図面では、省略しているが、第1および第2のフロアクロスメンバ1,2上には、たとえばフロントシート(座席)が跨がった状態で設置され、バッテリ6は、このフロントシートの下方スペースを利用して設置される。
ブレース7は、フロアトンネル部30の補強、およびバッテリ6の保護を図るための部材であり、たとえば金属板をプレス加工して構成されている。このブレース7は、図2に示すように、下向き開口の断面略コ字状の基本形態を有し、上壁部70、この上壁部70の左右両側から下向きに突出する側壁部71、およびこの側壁部71の下端部に繋がった略水平状のフランジ部72を備えている(図4も参照)。
このブレース7は、バッテリ6の上側に位置して車両前後方向に延びるように設定された上で、第1ないし第3の接合部J1~J3(図3では、第1の接合部J1に網点模様を付している)を介して、フロアトンネル部30、第1および第2のフロアクロスメンバ1,2に直接または間接的に接続されている。第1ないし第3の接合部J1~J3は、ボル
ト・ナットなどの締結部材91~93を用いた締結手段、スポット溶接やアーク溶接などの溶接手段、またはこれらを併用した手段のいずれを採用した構成であってもよい。
第1の接合部J1は、ブレース7の前部をフロアトンネル部30の上部寄りの部分に接続している。第2および第3の接合部J2,J3は、ブレース7の前後方向途中部分、およびブレース7の後部を、第1および第2のフロアクロスメンバ1,2の上側に取付けられた第1および第2の固定ブラケット11,21の上部に接合している。第2の固定ブラケット21および第2のフロアクロスメンバ2は、本発明でいう「充電装置よりも車両後方側に位置する車体構成部材」の一例に相当する。
補助ブレース7Aは、第2の固定ブラケット21を補強するための部材であり、第2の固定ブケラット21とその車両後方側に設けられた第3の固定ブラケット98との相互間に橋渡し接続されている。図3においては、第2の固定ブラケット21をさらに補強するための補強部材97(他の図面では省略)がフロア部3上に設けられているが、このような構成を採用することも可能である。
図3によく表れているように、フロアトンネル部30の後部は、第1のフロアクロスメンバ1とは隙間を隔てた配置とされており、この後部には、適当な傾斜角α2で後下がり状に傾斜した傾斜後端壁部30aが形成されている。この傾斜後端壁部30aの下端部は、インナメンバ5に溶接されている。この溶接は、間接的な溶接であってもよく、たとえばフロアトンネル部30がフロアパネル3aとは別体である場合においては、フロアトンネル部30の傾斜後端壁部30aの下端部を、フロアパネル3aに溶接し、このフロアパネル3aを介してインナメンバ5に間接的に溶接した構成としてもよい。また、傾斜後端壁部30aの下端部を、第1のフロアクロスメンバ1の下部フランジ部10に溶接し、この下部フランジ部10を介してインナメンバ5に間接的に溶接した構成としてもよい。
ブレース7の第1の接合部J1から第2の接合部J2に到る領域Sa(ブレース7の下部)は、フロアトンネル部30の傾斜後端壁部30aに対し、その上側に離間した配置に設けられている。また、前記した領域Saは、適度な傾斜角α1で後上がり状に傾斜した構成とされている。
次に、前記した車両構造Aの作用について説明する。
車両の前突が発生し、図3(b)に示すように、車両前方側からフロアトンネル部30に大きな荷重Fが入力した場合、この荷重Fは、ブレース7に入力する力F1(第1の接合部J1から第2の接合部J2に向かう力)と、フロアトンネル部30の傾斜後端壁部30aを介してインナメンバ5に到達する力F2とに分散される。このような荷重分散作用により、ブレース7を支持する第1のフロアクロスメンバ1が車両後方側に大きく変形または変位しないこととなり、第1のフロアクロスメンバ1がバッテリ6に当接することを適切に防止することができる。力F2は、インナメンバ5によって受けられるが、インナメンバ5は高強度部材であり、かつ車両前後方向に延びる部材であるため、インナメンバ5に力F2を負担させることによって、車体に大きな変形を生じさせる虞もない、または少ない。このようなことから、バッテリ6の保護性能を高めることが可能である。
荷重Fを前記した2つの力F1,F2に分散させる場合、その比率は、前記した領域Saおよび傾斜後端壁部30aの傾斜角α1,α2をどのようにするかによって適宜に設定することが可能である。したがって、車体の強度設計も容易なものとなる。
本実施形態においては、補助ブレース7Aや補強部材97をさらに設けることにより、第2のフロアクロスメンバ2を補強し、ブレース7に入力した力F1を、それらの部材によって適切に受け止めることも可能である。第2のフロアクロスメンバ2によるブレース
7の適切な支持状態が解除されると、ブレース7がバッテリ6に当接する虞があるが、このような虞も適切に回避することが可能であり、バッテリ6の保護性能を一層優れたものとすることができる。
その他、本実施形態の車両構造Aによれば、フロアトンネル部30に入力した荷重Fの多くを、ブレース7によって受けさせる必要がないため、ブレース7、ならびにこのブレース7を支持する第1および第2のフロアクロスメンバ1,2の厚肉・大型化を図る必要をなくすことができる。したがって、車両重量の増加や、製造コストの上昇を抑制することも可能である。
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
ブレース7の第1の接合部J1から第2の接合部J2に到る領域Saや、フロアトンネル部30の後部の傾斜後端壁部30aの具体的な傾斜角α1,α2などは限定されない。
ブレースをフロアクロスメンバに接合する手段として、上述した実施形態の固定ブラケットを用いることなく、それらを直接接合してもよい。
本発明でいう充電装置は、バッテリに限定されず、たとえばキャパシタも含まれる。
A 車両構造
J1,J2 第1および第2の接合部
Sa ブレースの第1の接合部から第2の接合部に到る領域
1 第1のフロアクロスメンバ(フロアクロスメンバ)
3 フロア部
30 フロアトンネル部
30a 傾斜後端壁部
5 インナメンバ
6 バッテリ(充電装置)
7 ブレース
8 ロッカ

Claims (1)

  1. 車室のフロア部の前部に形成されているフロアトンネル部と、
    前記フロア部上のうち、前記フロアトンネル部の車両後方側に位置して車幅方向に延びており、かつ前記フロア部の車幅方向両端部に接続されている左右一対のロッカの相互間に橋渡し接続されているフロアクロスメンバと、
    前記フロア部上のうち、前記フロアクロスメンバよりも車両後方側の位置に搭載された充電装置と、
    この充電装置の上側に位置して車両前後方向に延びており、かつ前部が前記フロアトンネル部に第1の接合部を介して接合されている一方、後部が前記充電装置よりも車両後方側に位置する車体構成部材に接合されているブレースと、
    前記フロア部の下面部に接合され、かつ前記フロアトンネル部の基部の下面側の位置から車両後方側に延びるインナメンバと、
    を備えている、車両構造であって、
    前記フロアトンネル部の後部には、前記フロアクロスメンバとの間に隙間を隔てた配置で後下がり状に傾斜した傾斜後端壁部が形成され、かつこの傾斜後端壁部の下端部は、前記インナメンバに接合されており、
    前記ブレースの車両前後方向途中部分は、前記フロアクロスメンバの上部またはこの上部に固定された部材に第2の接合部を介して接合され、前記ブレースの前記第1の接合部から前記第2の接合部に到る領域は、前記フロアトンネル部の前記傾斜後端壁部に対してその上側に離間した配置に設けられていることを特徴とする、車両構造。
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