JP2012104765A - 磁性シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】空孔の発生を抑制して高い透磁率と高いQ値を有するとともに屈曲性に優れた磁性シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る磁性シート1は、支持体11と、支持体11に形成され、軟磁性粒子及び結合剤を含む磁性層12とを有し、結合剤は、1液型結合剤又はセミ1液型結合剤であり、磁性層12における透過損失に対する透磁率の比で表されるQ値が40以上である。また、磁性シートにおいて、磁性層12の透磁率が20以上、かつ、磁性シートの透過損失は1以下であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、支持体に形成された磁性層を有する磁性シート及びその製造方法に関する。
近年、RFID(Radio Frequency IDentification)による非接触通信システムや情報通信の多様化に伴って、RFID通信アプリケーションが普及し始め、今後も拡大することが見込まれる。
RFIDの技術を用いたものとして、ICタグ(RFIDタグ)や非接触ICカード等の電子装置がある。これらの電子装置には、安定動作のために内部に磁性シート等の磁界収束部材が用いられている。
従来、この種の磁性シートの製造方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された磁性シートの製造方法は、軟磁性粒子、バインダー、硬化剤及び揮発性溶剤を含有する磁性塗料を塗布して磁性塗膜を形成する塗布工程と、磁性塗膜に対して配向磁界を印加して軟磁性粒子を配向する配向工程と、軟磁性粒子が配向された磁性塗膜を乾燥させて揮発性溶剤を揮発させる工程とをベースフィルムに対して2回繰り返すことにより、ベースフィルム上に磁性塗膜を2重層して磁性層シートの磁性層を形成するものである。また、乾燥させた磁性塗膜に対してカレンダー処理を施すカレンダー工程も2回繰り返す。
このように、特許文献1に係る製造方法によれば、透磁率が高く、膜厚の厚い磁性層を形成することができる。
特開2007−250822号公報
しかしながら、特許文献1に開示された従来に係る磁性シートの製造方法は、軟磁性粒子を配向させるために配向磁界を印加する配向工程や密度を高めるためのカレンダー工程が必要であるので、工程負荷が大きくなりコスト高を招くという問題がある。
さらに、特許文献1に開示された従来に係る磁性シートの製造方法は、バインダーとして、硬化剤を含有する2液型樹脂を用いているので、相当量の架橋剤が添加される。この結果、樹脂硬化によりシート自身が脆くなるとともに、2液型樹脂と架橋剤との反応により炭酸ガスが発生して磁性層内に空孔が生じるという問題もある。磁性層内に空孔が生じると、磁性層における軟磁性粒子の充填密度が低下して透磁率が低下し、これにより、ICカード等の通信性能が低下する。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、空孔の発生を抑制して高い透磁率及び高いQ値を有するとともに、屈曲性に優れた磁性シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る磁性シートの一態様は、支持体と、前記支持体に形成され、軟磁性粒子及び結合剤を含む磁性層とを有し、前記結合剤は、1液型結合剤又はセミ1液型結合剤であり、前記磁性層における透過損失に対する透磁率の比で表されるQ値が40以上である。
本態様によれば、磁性層は、1液型又はセミ1液型の結合剤によって構成されているので、成膜性に優れ、2液型結合剤のように架橋剤を相当量用いなくとも屈曲性に優れた磁性シートを形成することができる。
また、磁性層を1液型又はセミ1液型の結合剤によって構成することにより、2液型結合剤のように相当量の架橋剤を用いる必要がない。従って、1液型結合剤を用いた場合は、架橋剤を用いないので、架橋剤と結合剤の反応に起因する二酸化炭素ガスの発生がない。この結果、磁性層に空孔が発生することを抑制することができる。これにより、軟磁性粒子の充填密度を高くすることができるので、高い透磁率で、かつ、低い透過損失の磁性層を有する磁性シートを得ることができる。
また、セミ1液型結合剤を用いる場合であっても、少量の架橋剤でよいので、二酸化炭素ガスの発生を低減することができる、これにより、空孔の発生を抑制することができる。なお、本発明に係る磁性シートは、少量の架橋剤でも強い塗膜強度を得ることができ、支持体と磁性層との接着強度も高めることができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの一態様において、前記透磁率が20以上、かつ、前記透過損失は1以下であることが好ましい。
これにより、40以上のQ値を容易に得ることができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの一態様において、前記磁性層の厚みは、30μm〜150μmであることが好ましい。
これにより、透磁率や透過損失、Q値等の性能を安定させることができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの一態様において、前記結合剤と前記軟磁性粒子とが、1:2〜1:15の割合で含まれることが好ましい。
これにより、透磁率や透過損失、Q値等の性能を安定させることができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの一態様において、前記磁性層は、少なくとも第1磁性層と第2磁性層とからなり、前記第1磁性層は、前記支持体に最も近い層であり、前記第1磁性層における軟磁性粒子の粒子径は、前記第2磁性層における軟磁性粒子の粒子径以下であることが好ましい。
これにより、Q値等の性能が安定した磁性シートを得ることができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの一態様において、前記結合剤が、1液型ウレタン樹脂又はセミ1液型ウレタン樹脂であることが好ましい。
これにより、屈曲性に優れた磁性シートを得ることができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの一態様において、前記セミ1液型結合剤は、イソシアネート又はイソシアヌレート環を有するイソシアヌレート化合物からなる架橋剤が添加されていることが好ましい。
これにより、磁性層の密度、透磁率及び透過損失の向上を維持しつつ、磁性層の塗膜強度を高めながら、磁性層と支持体との接着強度を高めることができる。
また、本発明に係る磁性シートの製造方法の一態様は、軟磁性粒子と、1液型結合剤又はセミ1液型結合剤と、揮発性溶剤とを含有する樹脂溶液を支持体に塗布する樹脂溶液塗布工程と、前記支持体に塗布した前記樹脂溶液を乾燥させる樹脂溶液乾燥工程と、を含み、前記樹脂溶液は、前記1液型結合剤と前記軟磁性粒子との配合比が、1:2〜1:15であり、かつ、前記結合剤と前記揮発性溶剤との配合比が1:10〜1:25である。
本態様によれば、1液型結合剤又はセミ1液型結合剤を用いて磁性層を形成するため、反応による炭酸ガスの発生が極めて少なく磁性層中の空孔の発生を抑制することができる。これにより、軟磁性粒子の充填密度を高くすることができるので、高い透磁率で、かつ、低い透過損失の磁性シートを得ることができる。
また、樹脂溶液を構成する材料が上記範囲内の配合比で構成されているので、Q値が40以上の磁性シートを得ることができる。
また、配向磁界を印加する配向工程又は空孔を減少させるためのカレンダー工程を省略した場合においても、優れたQ値を有する磁性シートが得られる。従って、生産工程を簡素化することができ、製造コストを抑えることができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの製造方法の一態様において、前記樹脂溶液塗布工程において、前記樹脂溶液を乾燥した後の磁性層の厚みが40μm以下となるように前記樹脂溶液を塗布することが好ましい。
これにより、磁性層内に空孔が発生することをさらに抑制することができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの製造方法の一態様において、前記樹脂溶液塗布工程と前記樹脂溶液乾燥工程とを複数回繰り返して行い、複数層からなる磁性層を形成することが好ましい。
これにより、複数層からなる磁性層を形成することができる。
さらに、本発明に係る磁性シートの製造方法の一態様において、前記結合剤が、1液型ウレタン樹脂又はセミ1液型ウレタン樹脂であることが好ましい。
これにより、屈曲性に優れた磁性シートを得ることができる。
本発明に係る磁性シートは、高い透磁率でQ値が40以上という高い性能を有し、RFID等の電子装置において優れた通信性能を有する。また、本発明に係る磁性シートは、可撓性を有し屈曲性に優れる。
さらに、本発明に係る磁性シートの製造方法によれば、高い透磁率であってQ値が40以上という磁性シートを得ることができる。
本発明の第1の実施形態に係る磁性シートの断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る磁性シートの断面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係る磁性シートの断面図である。 実施例1〜9及び比較例1〜5における各磁性層の材料及び配合並びに各磁性シートの評価結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係る磁性シート及びその製造方法について、添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る磁性シートについて、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁性シートの断面図である。
(磁性シートの全体構成)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る磁性シート1は、支持体11と、磁性層12とを有する。
本実施形態において、支持体11は、磁性層12を形成するための基材であって、第1の主面(表側の面)と第2の主面(裏側の面)とを有する。
また、磁性層12は、軟磁性粒子及び少なくとも1種類の1液型結合剤又はセミ1液型結合剤を含み、支持体11の少なくとも片面に形成される。本実施形態において、磁性層12は、支持体11の表側の面(上面)に形成される。
また、本実施形態に係る磁性シート1は、磁性層12のQ値が40以上となるように構成されている。ここで、Q値は、磁性層12の透磁率をμ’とし、磁性層12の透過損失をμ”としたときに、透過損失に対する透磁率の比(μ’/μ”)で表される数値である。Q値は、大きいほうがRFID等において優れた通信性能を発揮することができる。
以下、本実施形態に係る磁性シート1の各構成要素について、詳細に説明する。
(支持体)
支持体11は、可撓性及び絶縁性を有する樹脂フィルム等によって構成される。支持体11の材料としては特に制限はなく、目的に応じて非磁性の絶縁性材料等で構成することができる。
このような支持体11として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミドイミン、ポリスルフォン、アラミド、芳香族ポリアミド等の樹脂材料で形成された絶縁性支持体(絶縁フィルム)を用いることができる。また、支持体11は、長尺なテープ状、シート状、カード状、ディスク状等、各種の平面形状に形成されたものを用いることができる。
(磁性層)
磁性層12は、上述のとおり、1液型結合剤及び少なくとも1種類の軟磁性粒子を含有する。また、磁性層12は、架橋剤を含有するセミ1液型結合剤と軟磁性粒子とによって構成していてもよい。
磁性層12の軟磁性粒子としては、一般的に透磁率が大きく、かつ保磁力Hcが小さい、例えば約500A/m(6.3エルステッド)以下の磁性材料であることが好ましい。このような軟磁性粒子としては、例えば、フェライト等が挙げられるが、軟磁性合金または軟磁性アモルファス合金として分類される合金系軟磁性粒子なども好ましい。
また、磁性層12には、上記の軟磁性粒子を1種類用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。なお、磁性層12を構成する軟磁性粒子は、粒子径D50(メディアン径)が30μm以下で、比表面積が1.5m2/g以下で、タップ密度が2g/ml以下であることが好ましい。
また、磁性層12の軟磁性粒子としては、厚みが5μm以下の扁平状粒子であることが好ましい。このような軟磁性粒子を用いることにより、磁性層12中の軟磁性粒子の充填密度を高めることができる。さらに好ましくは、厚みが2μm以下の扁平状粒子を用いることが好ましい。
磁性層12の1液型結合剤又はセミ1液型結合剤としては、磁性シート1の目的とする用途に応じた強度、耐熱性、成形性、難燃性及び柔軟性などの特性を有する結合剤を適宜選択して用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化樹脂やこれらの混合物が結合剤として用いられる。
具体的には、1液型結合剤としては、1液型のポリアミド樹脂、1液型のポリエーテルケトン樹脂、1液型の塩化ビニル樹脂、1液型のポリエステル樹脂、1液型のエポキシ樹脂、1液型のアクリル樹脂、1液型のウレタン樹脂、1液型のセルロース樹脂、1液型の酢酸ビニル樹脂、1液型のポリカーボネート樹脂、1液型のポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。また、これらポリマー以外にモノマー、オリゴマーも結合剤として用いることができる。
この中でも、得られる磁性シートの可撓性や屈曲性の観点からは、1液型のウレタン樹脂を用いることが好ましい。ウレタン樹脂は、アジピン酸と多価アルコールの重縮合によって得られるアジペートとジイソシアネートのウレタン化反応等によって合成されるエステル系ウレタン樹脂やエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
また、磁性層12におけるセミ1液型結合剤としては、上記の1液型結合剤のセミ1液型を用いることができる。
本実施形態において、1液型及びセミ1液型とは、2液型でないものを言い、例えば、ウレタン樹脂を用いる場合は、完全に反応した1液型のウレタン樹脂又はイソシアネート等の架橋剤と反応することができる反応基を有するセミ1液型(反応性1液型)のウレタン樹脂を用いることができる。
このように、磁性層12に、1液型の結合剤、特に1液型又はセミ1液型のウレタン樹脂を用いることにより、強靭で、かつ、空孔の発生を抑制した磁性層を得ることができる。
また、本実施形態に係る磁性シート1は、磁性層12のQ値が40以上となるように構成されている。さらに、Q値は、50以上であることが好ましい。
以上、本実施形態に係る磁性シート1によれば、磁性層12が1液型結合剤又はセミ1液型結合剤で構成されているので、磁性層12内において空孔の発生を抑制することができ、軟磁性粒子の充填密度を高くすることができる。これにより、高い透磁率の磁性層を得ることができるとともに、透過損失を低くすることができる。従って、膜厚の薄い磁性層であって、40以上という高いQ値を有する磁性シートを得ることができる。
なお、本実施形態において、磁性層12の透磁率(μ’)は20以上、かつ、磁性層12の透過損失(μ”)は1以下であることが好ましい。さらに、透磁率(μ’)は25以上、かつ、透過損失(μ”)は0.9以下であることが好ましい。さらに、透磁率(μ’)は30以上、かつ、透過損失(μ”)は0.6以下であることが好ましい。
また、本実施形態において、磁性層12の厚みは30μm〜150μmであることが好ましい。磁性層12の厚みが30μmよりも薄いと、透磁率や透過損失、Q値等の性能が不安定になるおそれがあるからである。一方、磁性層12の厚みが150μmよりも厚いと、磁性層12内における軟磁性粒子の充填密度が低下して、透磁率や透過損失、Q値等の性能が低下するおそれがあるからである。
また、磁性層12の中には、必要に応じて、分散剤、安定剤、充填剤、増量剤、可塑剤、滑剤、他の架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、劣化防止剤又は難燃性材料などの各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤は、例えば、軟磁性粒子を含む磁性層形成用の樹脂溶液に添加及び混合する。
このように、本実施形態に係る磁性シート1によれば、磁性層12の軟磁性粒子の密度を高めて高い透磁率を得ることができ、しかも、透過損失を小さい状態に維持することができる。これにより、高いQ値の磁性シートを実現することができる。さらに、本実施形態に係る磁性シート1は、塗膜強度に優れるとともに屈曲性にも優れる。従って、本実施形態に係る磁性シート1は、Q値が大きく、かつ熱に対する形状変化が少ないため、RFIDタグ等電子装置の安定動作に不可欠である磁界収束部材として好適に用いることができる。
(磁性シートの製造方法)
次に、本発明の第1の実施形態に係る磁性シート1の製造方法について説明する。
まず、所定の軟磁性粒子と、1液型又はセミ1液型の所定の結合剤と、所定の揮発性溶剤とを混合して、磁性層形成用の樹脂溶液を調製する(樹脂溶液調製工程)。樹脂溶液に用いる軟磁性粒子及び1液型結合剤については、上述の材料を用いることができる。
なお、樹脂溶液の具体的な調製方法は、所望の方法によって行うことができる。例えば、所定の軟磁性粒子及び所定の結合剤に所定の揮発性溶剤及び必要に応じて各種添加剤を加えて、混合、撹拌、混練、分散等を行うことにより樹脂溶液を調製することができる。
調製材料及び調製方法の一例を説明すると、軟磁性粒子、結合剤及び架橋剤に対して、揮発性溶剤として例えばメチルエチルケトン及びトルエンを、軟磁性粒子が50重量部に対して50重量部ずつ投入して十分に混練し、その後に、さらにメチルエチルケトン及びトルエンを軟磁性粒子が50重量部に対して50重量部ずつ追加投入して十分に混練を行うことで調製する。
また、揮発性溶剤及び結合剤に軟磁性粒子を混練して、これらを均一に分散させる方法を用いることもできる。このような方法としては、ニーダー、ボールミル、ロールミル、ジェットミル、インペラーなどを使用して行う方法を採用することができる。また、塗膜強度を更に向上させたい場合は、少量の架橋剤をこの系の中に添加して同様の処理を行うことができる。
次に、上記の樹脂溶液を支持体11の少なくとも片面に塗布する(樹脂溶液塗布工程)。このとき、一回の樹脂溶液の塗布によって形成される磁性層の厚みが、樹脂溶液中の揮発性溶剤が十分に揮発するような厚みとすることが好ましい。このような厚みとするには、乾燥後の磁性層12の厚みが40μm以下となるように塗布すればよい。
なお、樹脂溶液の塗布方法は、グラビア塗布、コーター塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布などの塗布方法を用いることができる。
次に、支持体11に塗布した樹脂溶液を乾燥する(樹脂溶液乾燥工程)。これにより、揮発性溶剤が揮発して、所定の膜厚の磁性層を形成することができる。
具体的には、80℃〜140℃の雰囲気内で15秒〜5分乾燥させて、樹脂溶液内の揮発性溶剤を揮発させて樹脂溶液を乾燥させる。本実施形態では、従来技術のように60℃にて長時間乾燥しなくともよく、80℃以上の高温で乾燥した場合においても空孔の発生を抑制することができ、乾燥速度が速く生産性に優れている。また、揮発性溶剤の種類にもよるが、140℃を超えると揮発性溶剤が揮発する前に、乾燥途中の樹脂溶液(あるいは磁性層)の表面に皮膜が形成され、空孔が発生するおそれがある。
なお、乾燥した後は、シート状に形成された磁性シートを必要に応じて巻き取りロールに巻き取る。その後、巻き取った状態の磁性シート1を40℃〜90℃の雰囲気中で6時間〜100時間放置する養生処理を行う。これにより、磁性シート1の作製が完了する。
本実施形態に係る製造方法において、樹脂溶液を構成する材料の配合比は、以下のように構成する。以下、結合剤としては、1液型又はセミ1液型の結合剤を用いることができる。
まず、結合剤と軟磁性粒子との配合比は、重量比で、結合剤:軟磁性粒子=1:2〜1:15とする。結合剤:軟磁性粒子=1:15の配合比よりも結合剤の割合が少なくなると、磁性層12の塗膜強度が低下して塗膜形成性が低下したり、磁性層12に空孔が発生したりする。一方、結合剤:軟磁性粒子=1:2の配合比よりも結合剤の割合が多くなると、軟磁性粒子の充填密度が低下して透磁性(μ’)が低下し、この結果、Q値が低下するおそれがある。結合剤と軟磁性粒子との配合比としては、さらに、結合剤:軟磁性粒子=1:3〜1:6の範囲内とすることが好ましい。
次に、結合剤と揮発性溶剤との配合比については、重量比で、結合剤:揮発性溶剤=1:10〜1:25とする。結合剤:揮発性溶剤=1:25の配合比よりも結合剤の割合が少なくなると、磁性層12の塗膜強度が低下して塗膜形成性が低下したり、磁性層12に空孔が発生したりする。一方、結合剤:揮発性溶剤=1:10の配合比よりも結合剤の割合が多くなると、磁性層に空孔が生じて軟磁性粒子の充填密度が低下し、この結果、透磁性(μ’)が低下してQ値が低下するおそれがある。
以上、本発明の第1の実施形態に係る磁性シート1の製造方法によれば、樹脂溶液を上記のような配合比で調整して磁性層を形成することにより、Q値が40以上の磁性シートを容易に得ることができる。
さらに、本実施形態では、1回の樹脂溶液の塗布にて形成する磁性層12の膜厚は、揮発性溶剤が十分に揮発しうる厚みに設定している。すなわち、乾燥後の磁性層12の厚みが40μm以下となるようにしている。これにより、揮発性溶剤を十分に揮発させつつ所定の厚みの磁性層12を形成することができる。なお、乾燥後の磁性層12の厚みが40μmを超えると、乾燥工程において有機溶剤が揮発しきらず、磁性層内に空孔が生じるおそれがある。
また、乾燥後の磁性層12の厚みとしては、10μm〜30μmであることが好ましい。当該厚みが10μmよりも薄いと、透磁率や透過損失、Q値等の性能が不安定となるおそれがあるからである。
なお、結合剤としては、特に1液型ウレタン樹脂又はセミ1液型ウレタン樹脂を用いることが好ましい。1液型又はセミ1液型のウレタン樹脂を上記の範囲内の配合比で配合することにより、樹脂溶液乾燥工程において、揮発性溶剤を揮発させた際における空孔の発生を効率良く抑制することができるとともに、屈曲性に優れた磁性層12を形成することができる。
また、セミ1液型樹脂を用いる場合、樹脂溶液に添加される架橋剤としては、イソシアヌレート環を有するイソシアヌレート化合物あるいはイソシアネート化合物を用いることが好ましい。これにより、磁性層12の密度、透磁率及び透過損失の向上を維持しつつ、磁性層12の塗膜強度を高めながら、磁性層12と支持体11との接着強度をさらに高めることができる。
この場合、架橋剤の配合比は、結合剤が14重量部に対して、好ましくは1重量部以上10重量部以下の範囲内に、更に好ましくは1重量部以上5重量部以下の範囲内とする。なお、架橋剤としてイソシアネート化合物をこの範囲で配合することにより、磁性層12を高密度状態で維持しつつ、透過損失を高度に抑えることができる。
また、樹脂溶液の揮発性溶剤としては、例えば、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶剤の他、ヘキサン、テトラヒドラジン、ジメチルホルムアミドなどから適宜選択して用いることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る磁性シート2について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係る磁性シートの断面図である。
本発明の第2の実施形態に係る磁性シート2が、本発明の第1の実施形態に係る磁性シート1と異なる点は、磁性層の構成である。すなわち、上述の本発明の第1の実施形態では、磁性層12は単層で構成されていたが、図2に示すように、本発明の第2の実施形態に係る磁性シート2では、磁性層22が複数の磁性層で構成されている。なお、図2において、図1に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付しており、その詳しい説明は省略する。
図2に示すように、本発明の第2の実施形態に係る磁性シート2は、支持体11と、磁性層22とを有する。本実施形態においても、磁性シート2は、磁性層22のQ値が40以上となるように構成されている。
本実施形態において、磁性層22は、第1磁性層22aと第2磁性層22bとを有する。第1磁性層22aは、支持体11の表側の面(上面)に形成される。また、第2磁性層22bは、第1磁性層22aの上に形成される。
なお、下層の第1磁性層22aの構成は、本発明の第1の実施形態に係る磁性層12と全く同じであるので、説明は省略する。以下、上層の第2磁性層22bについて詳述する。
第2磁性層22bは、第1磁性層22aと同様に、少なくとも1種類の軟磁性粒子及び1液型結合剤を含有する。また、第2磁性層22bは、架橋剤を含有するセミ1液型結合剤を用いてもよい。第2磁性層22bが第1磁性層22aと異なる点の1つは、第2磁性層22bにおける軟磁性粒子の粒子径が、第1磁性層22aにおける軟磁性粒子の粒子径よりも大きい点である。言い換えると、下層の第1磁性層22aにおける軟磁性粒子の粒子径が、上層の第2磁性層22bにおける軟磁性粒子の粒子径よりも小さい。
第2磁性層22bのそれ以外の構成は、第1磁性層22aと基本的には同様である。例えば、第2磁性層22bの軟磁性粒子としては、一般的に透磁率が大きく、かつ保磁力Hcが小さい、例えば約500A/m(6.3エルステッド)以下の磁性材料、より好ましくは、400A/m以下の磁性材料であることが好ましい。このような軟磁性粒子としては、例えば、フェライト等が挙げられるが、軟磁性合金または軟磁性アモルファス合金として分類される合金系軟磁性粒子なども好ましい。
また、第2磁性層22bには、上記の軟磁性粒子を1種類用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。なお、第2磁性層22bを構成する軟磁性粒子は、粒子径D50(メディアン径)が50μm以下で、比表面積が2.0m2/g以下で、タップ密度3g/ml以下であることが好ましい。
また、第2磁性層22bの軟磁性粒子としては、厚みが5μm以下の扁平状粒子であることが好ましい。このような軟磁性粒子を用いることにより、磁性層12中の軟磁性粒子の充填密度を高めることができる。
第2磁性層22bの結合剤としては、第1磁性層22aの結合剤、すなわち、第1の実施形態に係る磁性層12の1液型結合剤又はセミ1液型結合剤と同様の構成とすることができる。また、第2磁性層22bの中には、必要に応じて、上述の各種添加剤を添加してもよい。
以上、本実施形態に係る磁性シート2によれば、第1の実施形態と同様に、第1磁性層22a及び第2磁性層22b内における空孔の発生を抑制することができ、軟磁性粒子の充填密度を高くすることができる。これにより、膜厚が薄い磁性層で、40以上という高いQ値を有する磁性シート2を得ることができる。
なお、本実施形態についても、磁性シート2において、磁性層22の透磁率(μ’)は20以上、かつ、磁性層22の透過損失(μ”)は1以下であることが好ましい。さらに、透磁率(μ’)は25以上、かつ、透過損失(μ”)は0.9以下であることが好ましい。さらに、透磁率(μ’)は30以上、かつ、透過損失(μ”)は0.6以下であることが好ましい。
また、本実施形態において、第1磁性層22aの厚みと第2磁性層22bの厚みとを合わせた磁性層22の厚みは、30μm〜150μmであることが好ましい。磁性層22の厚みが30μmよりも薄いと、透磁率や透過損失、Q値等の性能が不安定になるおそれがあるからであり、磁性層22の厚みが150μmよりも厚いと、磁性層22内における軟磁性粒子の充填密度が低下して、透磁率や透過損失、Q値等の性能が低下するおそれがあるからである。
そして、本実施形態に係る磁性シート2では、磁性層22が複数の磁性層が積層されて構成されており、支持体11に最も近い第1磁性層22aに含まれる軟磁性粒子の粒子径が最外層となる第2磁性層22bに含まれる軟磁性粒子の粒子径よりも小さくなるように構成されている。これにより、第1の実施形態と比べてさらに空孔の発生を抑制することができるので、より安定したQ値を得ることができる。これは、1層だけでは軟磁性粒子の充填密度を十分に高めることできない可能性もあるが、複数層積層させることにより安定した高い充填密度の磁性層22を形成することができるからである。さらに、粒子径の小さい1層目によって平坦な磁性層を形成することができ、これにより2層目も安定して形成することができるからである。
このように、本実施形態に係る磁性シート2によれば、第1の実施形態と比べてさらに磁性層22の軟磁性粒子の密度を高めて高い透磁率を得ることができるので、高いQ値の磁性シートを実現することができる。
また、本実施形態に係る磁性シート2は、第1の実施形態に係る磁性シート1の製造方法と同様の方法によって作製することができる。すなわち、第1磁性層22a形成用の樹脂溶液と第2磁性層22b形成用の樹脂溶液とをそれぞれ準備しておき、樹脂溶液塗布工程と樹脂溶液乾燥工程とを交互に繰り返して行うことで、複数層からなる磁性層22を形成することができる。
なお、本実施形態では、下層の第1磁性層22aにおける軟磁性粒子の粒子径が、上層の第2磁性層22bにおける軟磁性粒子の粒子径よりも小さい場合について説明したが、第1磁性層22aの軟磁性粒子の粒子径と第2磁性層22bの軟磁性粒子の粒子径とが同じ場合であっても同様の効果を奏することができる。但し、上層と下層の粒子径が同じ場合よりも、下層の粒子径が上層の粒子径よりも小さくなるように構成した場合の方が、性能のばらつきを低減することができる。
また、本実施形態では、2層構造の磁性層としたが、これに限らない。例えば、図3に示すように、3層構造の磁性層とすることもできる。図3は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る磁性シート3の断面図である。
図3に示すように、本変形例に係る磁性シート3は、支持体11と、支持体11上に形成された3層構造の磁性層32とを有する。磁性層32は、支持体11上に形成された第1磁性層32aと、第1磁性層32a上に形成された第2磁性層32bと、第2磁性層32b上に形成された第3磁性層32cとで構成される。
この場合でも、支持体11に最も近い第1磁性層32aに含まれる軟磁性粒子の粒子径は、最外層となる第3磁性層32cに含まれる軟磁性粒子の粒子径よりも小さくなるように構成されている。また、第2磁性層32bに含まれる軟磁性粒子の粒子径は、第1磁性層32aに含まれる軟磁性粒子の粒子径よりも大きく、かつ、第3磁性層32cに含まれる軟磁性粒子の粒子径よりも小さくなるように構成されている。各磁性層の材料等は、第1の実施形態又は第2の実施形態に係る磁性層12、22の材料等を用いることができる。
このように、磁性層を2層以上の複数層とすることにより、さらに空孔の発生を抑制することができるので、より安定したQ値を得ることができる。但し、複数の磁性層を合わせた厚みは、30μm〜150μmであることが好ましい。
なお、本実施形態において、複数の磁性層を積層する場合には、それぞれの層の材料は同一の配合比であってもよいし、異なった配合比であってもよい。この場合、各層におけるQ値の値が最も大きくなるような組み合わせとすることにより、磁性層全体として最も大きなQ値を得ることができる。
次に、実施例を挙げて本発明に係る磁性シートについて詳細に説明する。なお、図4に、実施例1〜9及び比較例1〜5における各磁性層の材料及び配合並びに磁性シートの評価結果を示す。
(実施例1)
実施例1は、2積構造の磁性層を有する磁性シートである。従って、図2の符号を用いて説明する。下層の第1磁性層22aを形成するための樹脂溶液は樹脂溶液1とする。また、上層の第2磁性層22bを形成するための樹脂溶液は樹脂溶液2とする。以下に、各樹脂溶液の材料及び配合を記載する。
(樹脂溶液1の調製)
軟磁性粒子:軟磁性粒子A 100重量部
(組成:Fe/Si/Cr/Ni=88%/10%/1.5%/0.5%)
(形状:扁平状)
(保磁力Hc:440A/m)
(厚み:0.1μm〜1.0μm)
(粒子径(D50):25μm)
(比表面積:1m2/g以下)
(タップ密度1g/ml以下)
結合剤 :ウレタン樹脂 14重量部
(粘度:7000mPa・s/30℃)
揮発性溶剤:トルエン 150重量部
メチルエチルケトン 50重量部
ジメチルホルムアミド 10重量部
(樹脂溶液2の調整)
軟磁性粒子:軟磁性粒子B 100重量部
(組成:Fe/Si/Cr/Ni=88%/10%/1.5%/0.5%)
(形状:扁平状)
(保磁力Hc:440A/m)
(厚み:0.1μm〜1.0μm)
(粒子径(D50):30μm)
(比表面積:1.5m2/g以下)
(タップ密度:2g/ml以下)
結合剤 :ウレタン樹脂 14重量部
(粘度:7000mPa・s/30℃)
揮発性溶剤:トルエン 150重量部
メチルエチルケトン 50重量部
ジメチルホルムアミド 10重量部
以上、各樹脂溶液については、上記の各材料をインペラーで混練して調製した。
また、塗膜強度を更に向上させたい場合には、架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製 商品名:コロネートHL)を結合剤が28重量部に対して10重量部を添加および混合して樹脂溶液を調製してもよい。実施例1では各樹脂溶液中に3重量部ずつの架橋剤を添加した。従って、実施例1の結合剤としては、セミ1液型結合剤である。
このように調製した樹脂溶液1、2は、次のようにして塗布及び乾燥させる。
まず、厚さが40μmのポリエステル製の支持体11(フィルム)の一方の面上に、パイプコーター塗布方式で、乾燥後の磁性層の厚みが25μmとなるように粒子径の小さな軟磁性粒子Aを含む樹脂溶液1を塗布した。次いで、120℃雰囲気中で1分間乾燥させた。これにより、1層目の第1磁性層22aを形成することができる。
続いて、上記同様のパイプコーター塗布方式で、乾燥後の厚みが25μmとなるように粒子径の粗い軟磁性粒子Bを含む樹脂溶液2を第1磁性層22a上に塗布する。次いで、120℃雰囲気中で1分間乾燥させた。これにより、二層目の第2磁性層22bを形成することができる。これにより、2層構造の磁性層22を有する磁性シート2を得ることができる。
次に、得られた磁性シート1を巻き取りロールに巻き取った状態で、60℃雰囲気中で72時間養生処理し、1液型結合剤の結晶化(架橋剤を添加したものは架橋剤)の反応を促進させることで、第1磁性層22a及び第2磁性層22bの塗膜強度を向上させた。
このようにして作製した磁性シート1を以下の各評価で規定されている形状に裁断することにより、磁性シートのサンプルを作製した。
(実施例2〜9、比較例1〜5)
実施例2〜9及び比較例1〜5における磁性層の構造、材料、配合比、厚みについては、図4に示す樹脂溶液を上記実施例1の樹脂溶液1、2と同様にして調製して、塗布及び乾燥することにより磁性シートを形成した。なお、各磁性シートの製造方法及び製造条件は、実施例1と同様である。このようにして得られた各磁性シートを、実施例1と同様に、以下の各評価で規定される形状に裁断することにより、各実施例及び各比較例としての磁性シートのサンプルを作製した。
なお、図4において、「A」は、上記軟磁性粒子Aであり、「B」は、上記軟磁性粒子Bであり、「1−ure」は、上記1液型ウレタン樹脂であり、「セミ1−ure」は、上記セミ1液型ウレタン樹脂であり、「Tol」は、トルエンであり、「MK」は、メチルケトンであり、「DMF」は、ジメチルホルムアミドである。なお、図4において、1液型ウレタン樹脂の実施例は、実施例4であり、セミ1液型ウレタン樹脂の実施例は、実施例1〜3、5〜9である。
(磁性シートの評価)
上記のようにして作製した各磁性シートのサンプルについて、次の評価試験を実施した。
(透磁率・透過損失)
磁性シートを外径が20mmで内径が5mmのリング状に打抜いて作製したサンプルについて、アジレントテクノロジー社製の測定器(Agilent 4291B RFインピーダンス/マテリアルアナライザー」を使用して、13.56MHzにおける磁性層の透磁率及び透過損失を測定した。Q値は、得られた透磁率及び透過損失から算出した。
(密度)
磁性シートを20mm×20mmの方形状体に裁断して作製したサンプルについて、株式会社ミツトヨ製の測定器ダイヤルゲージ(DIGMATIC MICROMETER AB−2C)または電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、日立サイエンスシステムズ製)を使用して磁性層の厚みを測定した。また、磁性層の重量も測定し、得られた厚みと重量とから磁性層の密度を算出した。
以上のようにして、実施例1〜9及び比較例1〜5について、磁性層の透磁率、透過損失、密度及びQ値を測定した。また、その算出結果を図4に示す。
図4に示すように、単層で磁性層を構成した比較例1〜3によると、比較例1、2のように軟磁性粒子の添加量が少なすぎると、透磁率が低く(μ’=15)、尚かつ、密度も小さくなり(密度=1.7)、また、比較例3のように軟磁性粒子の添加量が多過ぎても、透磁率が低く(μ’=20)、尚かつ、密度も小さくなる(密度=2.15)ことが確認された。
一方、実施例3のように、2層で磁性層を構成し、下層の第1磁性層については結合剤が14重量部に対して軟磁性粒子Aの添加量が50重量部とし、上層の磁性層については結合剤が14重量部に対して軟磁性粒子Bの添加量が80重量部とすると、厚みが35μmと薄いにもかかわらず、透磁率及び密度はともに高い値(μ’=45、密度=3.28(g/cm3))を示すことが確認された。
また、実施例7のように、3層で磁性層を構成した場合は、磁性層の膜厚が120μmと厚い膜であって透過損失はやや大きくなるものの、透磁率及び密度はともに高い値(μ’=45、密度=3.01(g/cm3))を示すことが確認された。
以上のとおり、軟磁性粒子と1液型又はセミ1液型結合剤を用いて得られる磁性シートは、透磁率が高く、透過損失も比較的に小さく、かつ十分な密度を有するQ値が40以上の磁性層を有する磁性シートであることが確認できた。
以上、本発明に係る磁性シート及びその製造方法について、実施形態及び実施例に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではない。
例えば、上記の第2の実施形態においては、下層の第1磁性層22aにおける軟磁性粒子の粒子径が上層の第2磁性層22bにおける軟磁性粒子の粒子径以下である場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、粒子径の大小関係を逆転させて、下層の第1磁性層22aにおける軟磁性粒子の粒子径が、上層の第2磁性層22bにおける軟磁性粒子の粒子径よりも大きくなるように構成することもできる。
その他、各実施形態及び実施例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態及び実施例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本発明に係る磁性シートは、ICタグや非接触ICカード等の電子装置における磁界収束部材として広く利用することができる。
1、2、3 磁性シート
11 支持体
12、22、32 磁性層
22a、32a 第1磁性層
22b、32b 第2磁性層
32c 第3磁性層

Claims (11)

  1. 支持体と、前記支持体に形成され、軟磁性粒子及び結合剤を含む磁性層とを有し、
    前記結合剤は、1液型結合剤又はセミ1液型結合剤であり、
    前記磁性層における透過損失に対する透磁率の比で表されるQ値が40以上である
    磁性シート。
  2. 前記透磁率が20以上、かつ、前記透過損失は1以下である
    請求項1に記載の磁性シート。
  3. 前記磁性層の厚みは、30μm〜150μmである
    請求項1又は2に記載の磁性シート。
  4. 前記結合剤と前記軟磁性粒子とが、1:2〜1:15の割合で含まれる
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性シート。
  5. 前記磁性層は、少なくとも第1磁性層と第2磁性層とからなり、
    前記第1磁性層は、前記支持体に最も近い層であり、
    前記第1磁性層における軟磁性粒子の粒子径は、前記第2磁性層における軟磁性粒子の粒子径以下である
    請求項1に記載の磁性シート。
  6. 前記結合剤が、1液型ウレタン樹脂又はセミ1液型ウレタン樹脂である
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁性シート。
  7. 前記セミ1液型結合剤は、イソシアネート又はイソシアヌレート環を有するイソシアヌレート化合物からなる架橋剤が添加されている
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁性シート。
  8. 軟磁性粒子と、1液型結合剤又はセミ1液型結合剤の結合剤と、揮発性溶剤とを含有する樹脂溶液を支持体に塗布する樹脂溶液塗布工程と、
    前記支持体に塗布した前記樹脂溶液を乾燥させる樹脂溶液乾燥工程と、を含み、
    前記樹脂溶液は、前記結合剤と前記軟磁性粒子との配合比が、1:2〜1:15であり、かつ、前記結合剤と前記揮発性溶剤との配合比が1:10〜1:25である
    磁性シートの製造方法。
  9. 前記樹脂溶液塗布工程において、前記樹脂溶液を乾燥した後の磁性層の厚みが40μm以下となるように前記樹脂溶液を塗布する
    請求項8に記載の磁性シートの製造方法。
  10. 前記樹脂溶液塗布工程と前記樹脂溶液乾燥工程とを複数回繰り返して行い、複数層からなる磁性層を形成する
    請求項8又は9に記載の磁性シートの製造方法。
  11. 前記結合剤が、1液型ウレタン樹脂又はセミ1液型ウレタン樹脂である
    請求項8〜10のいずれか1項に記載の磁性シートの製造方法。
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