JP2012066538A - 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層と、該コア層の少なくとも片側に、3μmより厚く20μm以下の厚みであり、かつ、セルロースアシレートを含む外層を有することを特徴とする、光学フィルム。
【選択図】なし
Description
[1] ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層と、該コア層の少なくとも片側に、3μmより厚く20μm以下の厚みであり、かつ、セルロースアシレートを含む外層を有することを特徴とする、光学フィルム。
[2] 前記コア層の両側に、前記外層を1層ずつ有する3層構成であることを特徴とする、[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記コア層の膜厚が10〜100μmであることを特徴とする、[1]または[2]に記載の光学フィルム。
[4] 全膜厚に占める、前記外層の合計膜厚の割合が、2〜40%であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[5] 光弾性係数の値が−3.0〜3.0×10-12Pa-1 であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[5−2] 前記コア層の残留溶媒量が0.004質量%以上であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[6] セルロースアシレートと有機溶媒を含有するドープ(A)、およびラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に、共流延法により同時に流延基材上に流延する工程と、前記有機溶媒を除去する工程を含み、前記ドープ(A)の流延厚みを該ドープ(A)の乾燥厚みが3μmより厚く20μm以下になるように制御することを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
[7] 前記ドープ(A)および前記ドープ(B)を、流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に共流延法により同時に流延基材上に流延することを特徴とする[6]に記載の光学フィルムの製造方法。
[8] 前記ドープ(A)の複素粘度ηAと、前記ドープ(B)の複素粘度ηBが、下記式Iの関係を満たすように制御することを特徴とする、[6]または[7]に記載の光学フィルムの製造方法。
(式I) ηA≦ηB
[9] 前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の25℃における複素粘度がいずれも10〜80Pa・sであることを特徴とする[6]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[10] 前記ドープ(A)の固形分濃度が15〜25質量%であることを特徴とする[6]〜[9]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[11] [7]〜[10]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする、光学フィルム。
[12] 偏光子と、[1]〜[6]および[11]のいずれか一項に記載の光学フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
[13] [1]〜[6]および[11]のいずれか一項に記載の光学フィルム、または、[12]に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
[15] IPS方式であることを特徴とする、[13]に記載の液晶表示装置。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層と、該コア層の少なくとも片側に、3μmより厚く20μm以下の厚みであり、かつ、セルロースアシレートを含む外層を有することを特徴とする。
以下、本発明のフィルムの好ましい態様について説明する。
(外層の厚み)
本発明の光学フィルムは、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層の少なくとも片側に、3μmより厚く20μm以下の厚みであり、かつ、セルロースアシレートを含む外層を有する。このような構成により、本発明のフィルムは、偏光子との接着性および光学フィルムの脆性を良化する機能を持つ。セルロースアシレートを含む前記外層の厚みは、3.5〜15μmであることが好ましく、より好ましくは4〜8μmである。このような厚みのフィルム層構成とすることで、厚いセルロースアシレートフィルムをコア層として用いてその上に薄いアクリル機能層を表層として塗布等により積層したフィルムと比べて、光弾性係数を小さくすることができる。
本発明の光学フィルムは、通常20〜40μmの偏光子の保護フィルムとしての機能を発揮することが好ましい。このため、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含むコア層の厚みは、10〜100μmであることが好ましい。さらに好ましくは20〜80μmであり、より好ましくは20〜60μmであり、特に好ましくは30〜60μmである。
本発明のフィルムは、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層の少なくとも片側に、セルロースアシレートからなる外層を有する。本発明のコア層は、ラクトン環を有することで(メタ)アクリル系樹脂の機械強度を高めることができる。
本発明のフィルムは、前記コア層の両面に前記外層を少なくとも1層ずつ有することが好ましく、前記コア層の両面に前記外層を1層ずつ有することがより好ましい。詳しくは、コア層の両側に外層としてセルロースアシレートを含む層を特定の厚みで有する構成にすることにより、機械強度(主に、曲げ脆性)をさらに格段に良化することができ、単層のセルロースアシレートフィルムと比べても不満が生じない程度に改善することができる。
本発明のフィルムは、フィルム幅が400〜2500mmであることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1500mm以上であることが特に好ましく、1800mm以上であることがより特に好ましい。
以下、コア層、外層の構成について順に説明する。
本発明の光学フィルムは、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有する外層を有する。本明細書中、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂とアクリル系樹脂の両方を含む概念である。また、(メタ)アクリル系樹脂には、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体も含まれる。
前記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
前記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%以上であれば、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が十分になる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%以下であると、成形加工性に優れる。
前記一般式(1a)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜90重量%である。
前記一般式(1a)で表される単量体以外の水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記一般式(2a)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
また、本発明の製造方法では、ラクトン環を有する(メタ)アクリル系樹脂を有機溶媒に溶解させて溶液流延を行って前記コア層を形成するため、ラクトン環を有する(メタ)アクリル系樹脂の合成時における有機溶媒は、溶融製膜を行う場合よりも限定されず、沸点が高い有機溶媒を用いて合成してもよい。
重合開始剤の量の調整により、重合体の重量平均分子量を調整することができる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
アクリル系樹脂が、重量平均分子量80000以上であり、分子内にメチルメタアクリレート単位を50質量%以上99質量%以下有するアクリル系樹脂であることが特に好ましい。
本発明における前記コア層は、上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。その他の熱可塑性樹脂は、上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂とブレンドしてフィルム状にした際に、ガラス転移温度が120℃以上、面方向の100μmあたりの位相差が20nm以下で、全光線透過率が85%以上の性能を有するものであれば、特に種類は問わないが、熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂の方が、透明性や機械強度を向上させる点において好ましい。
本発明のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって共流延によって製膜されることが好ましい。このように溶液製膜によって、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む前記コア層を形成することによって、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む層を溶融製膜により形成した場合よりも、前記外層の表面面状を改善することができる。
次に、本発明のフィルムの外層について説明する。
本発明のフィルムは、3μmより厚く20μm以下の厚みであり、かつ、セルロースアシレートを含む外層を有する。
前記外層の厚みの好ましい態様については、本発明の層構成の説明において上述したとおりである。
本発明に用いられるセルロースアシレート系樹脂は、特に定めるものではない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度が1.2以上3.0以下であることが好ましい。
さらに、本発明に用いられるセルロースアシレート系樹脂は、アシル基の総置換度をTA全、炭素数が2のアシル基の置換度をTA2、炭素原子数が3以上7以下のアシル基の置換度をTA3としたときに、以下の条件を満たすことが好ましい。以下の範囲にすることで、隣接層との密着性、流延時の支持体からの剥離性、フィルムのカール低減の観点で優れた光学フィルムを得ることができる。
2.2≦TA全≦3.0
1.5≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.7
2.5≦TA全≦3.0
2.4≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.1
本発明においては、アクリル樹脂を前記セルロースアシレート層に添加することもできる。セルロースアシレートに対する、アクリル樹脂の割合は、セルロースアシレートを基準とした場合に、2〜140質量%が好ましく、より好ましくは4〜100質量%、最も好ましくは6〜60質量%である。また、アクリル樹脂の分子量は、1000〜20万が好ましく、更に好ましくは1000〜10万、最も好ましくは1500〜5万以下であり、特に好ましくは1500〜1万である。この分子量範囲にすることで、セルロースアシレート層の透明性に優れる。
本発明の光学フィルムには、前記コア層および前記外層のそれぞれにおいて、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、前記光弾性係数低減剤以外の添加剤を、本発明の趣旨に反しない限りにおいて含有させてもよい。
以下、本発明の光学フィルムに添加してもよい添加剤について説明する。
本発明においては、光学フィルムに柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いてもよい。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
また、耐揮発性、ブリードアウト、低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、例えば特開2009−98674号公報に記載の両末端が水酸基であるポリエステルジオールを用いるのが好ましい。また、光学フィルムの平面性や低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、WO2009/031464号公報に記載の糖エステル誘導体も好ましい。
本発明の光学フィルムには、フィルム自身の耐光性向上、或いは偏光板、液晶表示装置の液晶化合物等の画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤を添加してもよい。
フィルムの表面に凹凸を与えたりフィルム内部に光散乱性を付与したりするために粒子を添加することもでき、その場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
本発明の光学フィルムは、例えば、その上に更に0.1μm以上15μm以下の厚みの硬化性樹脂層を設けてもよい。また、本発明の光学フィルムは、該硬化性樹脂層の上に、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層等の光学機能層を設けることもできる。また、硬化性樹脂層が帯電防止層や高屈折率層を兼ねることもできる。
硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を光透過性基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、硬化性樹脂層には、公知のレベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、屈折率調節用無機フィラー、散乱粒子、チキソトロピー剤等の添加剤を用いることができる。
(光弾性係数)
光弾性係数は物質固有の性質であり、光弾性係数をほとんど発現しない物質はむしろまれである。例えば、高分子樹脂の多くは、外部応力や熱応力により複屈折を発現する。光弾性係数は、印加される応力の方向に関連して符号を定義することができる。即ち、媒体(高分子樹脂) に引っ張り応力を加えた場合、引っ張り応力と平行な方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率nparaと、それに直交する方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率に対して、下記(1B) 式で表される光弾性係数cの正負で光弾性係数の符号が表現される。
c=Δn/σ=(npara−nperp)/σ ・・・・・(1B)
つまり、nparaの方がよりnperpも大きい場合に光弾性係数は正、小さい場合は負となる。
光弾性係数を上記範囲に制御することで、パネルを湿熱耐久試験にかけた後の、「サーモムラ」発生を抑制できる。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、532nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
式(10): n=(nTE×2+nTM)/3
[式中、nTEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、nTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明において、Reの湿度依存性(ΔRe)及びRthの湿度依存性(ΔRth)は、相対湿度がH(単位;%)であるときの面内方向及び膜厚方向のレターデーション値:Re(H%)及びRth(H%)から、下記式に基づいて算出される。
ΔRe=Re(10%)−Re(80%) [nm]
ΔRth=Rth(10%)−Rth(80%) [nm]
Re(H%)及びRth(H%)は、フィルムを25℃、相対湿度H%にて24時間調湿後、25℃、相対湿度H%において、前記方法と同様にして、相対湿度H%における測定波長が590nmであるときのレターデーション値を測定、算出したものである。なお、相対湿度を明記せずに単にReと表記されている場合は、相対湿度60%で測定した値である。
本発明の光学フィルムの湿度を変化させた場合のレターデーション値は、以下の関係式を満たすことが好ましい。
|ΔRe|<8、かつ、|ΔRth|<8
また以下の関係式を満たすことがより好ましい。
|ΔRe|<5、かつ、|ΔRth|<5
また以下の関係式を満たすことが更に好ましい。
|ΔRe|<3、かつ、|ΔRth|<3
上記湿度を変化させた場合のレターデーション値を制御することにより、外部環境が変化した場合のレターデーション変化を低下させることができ、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明の光学フィルムのΔRthを低減させることによって、特定の条件で液晶表示装置を表示面の斜めから観察した際に視認される円形状の色ムラが改善されるという好ましい効果も得られる。
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、セルロースアシレートと有機溶媒を含有するドープ(A)、およびラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に、共流延法により同時に流延基材上に流延する工程と、前記有機溶媒を除去する工程を含み、前記ドープ(A)の流延厚みを該ドープ(A)の乾燥厚みが3μmより厚く20μm以下になるように制御することを特徴とする。
以下、本発明の製造方法について、好ましい態様を説明する。
本発明の光学フィルムの製膜の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。本発明の製造方法は、これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)を用いることで、本発明のフィルムを生産性よく製造することを特徴とする。
本発明の光学フィルムに用いる熱可塑性樹脂の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、室温溶解法、冷却溶解法又は高温溶解方法により実施され、更にはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にはセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の熱可塑性樹脂に対しても、これらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。更に熱可塑性樹脂のドープ溶液は、溶液濃縮、濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明の製造方法において、前記セルロースアシレートおよび前記ラクトン環を有する(メタ)アクリル系樹脂をそれぞれ溶解しドープを形成する有機溶媒について記述する。用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
光学フィルムを形成する材料は、有機溶媒に10〜60質量%の固形分濃度(乾燥後固体となる成分の和)で溶解していることが好ましく、更に好ましくは10〜50質量%である。セルロースアシレート系樹脂を主成分とする場合には、10〜30質量%溶解していることが好ましく、15〜25質量%であることが好ましく、18〜20質量%であることが最も好ましい。但し、用途によっては、有機溶剤の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができるという理由などからドープ(A)の固形分濃度が20質量%を超え22質量%以下であっても好ましい場合がある。これらの固形分濃度に調製する方法は、溶解する段階で所定の固形分濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。更に、予め高濃度の光透過性基材を形成する材料の溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の溶液としてもよい。
本発明の目的である支持体離型性、界面密着性、低カールを達成するために、少なくともドープ(A)、(B)中の熱可塑性樹脂の組成は、以下の条件を満たすことが好ましい。ドープ(A)中の熱可塑性樹脂中セルロースアシレート系樹脂の占める割合は、50〜100質量%が好ましく、更に好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。またドープ(B)中の熱可塑性樹脂中アクリル系樹脂の占める割合は、30〜100質量%が好ましく、更に好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
一方、共流延製膜にて良好な面状のフィルムを得るためには、ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましく、5質量%以内であることがより好ましい。
特に、ドープ(B)において、固形分濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましい。
本発明の製造方法では、また、25℃における流前記ドープ(A)の複素粘度ηAと、前記ドープ(B)の複素粘度ηBが、下記式Iの関係を満たすように制御することが、好ましい。
(式I) ηA≦ηB
本発明の製造方法では、その中でも、前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の複素粘度がいずれも10〜80Pa・s以下であり、かつ、前記ドープ(B)の複素粘度が前記ドープ(A)の複素粘度よりも大きいことが、製膜後のフィルム面状を改善する観点から、好ましい。
この範囲内であれば、フィルムの白化の抑制効果がさらに高まる。さらに好ましくは、20〜80Pa・sであり、とくに好ましくは、25〜70Pa・sである。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。
試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜35℃である。上記のとおり、本発明では、25℃における値を採用した。
(流延)
本発明の光学フィルムの製造方法においては、セルロースアシレートと有機溶媒を含有するドープ(A)、およびラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に、共流延法により同時に流延基材上に流延する工程を含む。
図2はドラムを含む流延設備を示す図である。図2は流延設備101の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。なお、上述の図1と同様の装置及び部材については、同じ符号を付し、説明を略する。図2では図1のバンドの代わりにドラム102を用いている。流延ダイ14からの流延ドープ12は、ドラム102上に形成された流延膜が流延開始位置PSから下方に向かうように、ドラム102の最上部よりやや下方に流延されている。この場合も、ドラム102上の流延開始位置PSにおける接線と流延ダイ14からの流延曲線の接線とができるだけ一致するように、流延開始位置PSを定めることが好ましい。
流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時の支持体の表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明の製造方法は、前記有機溶媒を除去する工程を含む。
ドラムやバンド上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
本発明では、多層流延したドープを乾燥させてから、支持体から剥離することが好ましい。
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含んでもよい。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性を更に高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造される光学フィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
本発明の光学フィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用し、偏光子と接着させる場合には、偏光子との接着性の観点から、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面を親水的にする処理を実施することが特に好ましい。
その中でも、本発明の光学フィルムは、少なくとも片側にセルロースアシレートの外層を有するため、このセルロースアシレート層をアルカリ鹸化して、通常使用される、ポリビニルアルコール偏光子との貼り合わせを改善することが好ましい。外層がなければ、接着剤を使用する必要があり、生産効率に劣るため不利となる。
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムを含むことを特徴とする。
本発明の光学フィルムは、偏光子とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
本発明の液晶表示装置は、本発明の光学フィルム、または、本発明の偏光板を用いることを特徴とする。
前記光学フィルム、及び偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、バックライト側の最表層に用いることが好ましい。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<重量平均分子量測定条件>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒 テトラヒドロフラン
装置名 TOSOH HLC−8220GPC
カラム TOSOH TSKgel Super HZM−H(4.6mm×15cm)を3本接続して使用した。
カラム温度 25℃
試料濃度 0.1質量%
流速 0.35ml/min
校正曲線 TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000〜1050までの7サンプルによる校正曲線を使用した。
(ラクトン環含有アクリル系樹脂B1の調整)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた 60L反応釜に10000gのメタクリル酸メチル(MMA) 、2500gの2−(ヒドロキシメチル) アクリル酸メチル(MHMA)、12500gのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として10.0gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名: ルパゾール570) を添加すると同時に、20.0gの開始剤と100gのトルエンからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下(105〜110℃) で溶液重合を行い、さらに4.5時間かけて熟成を行った。
上記で得られたラクトン環含有アクリル系樹脂B1をメチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、ドープ溶液B(固形分濃度25%、複素粘度50Pa・s)を得た。
アセチル置換度2.86のアセチルセルロース100質量部、下記に示す化合物15質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、ドープ溶液A(固形分濃度18質量%、複素粘度15Pa・s)を得た。
アセチル置換度2.86のアセチルセルロース100質量部、下記に示す化合物15質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、ドープ溶液A’(固形分濃度21質量%、複素粘度30Pa・s)を得た。
ドープ溶液Aの代わりにドープ溶液A’を用いた以外は実施例3と同様にして、3層構造の実施例7の光学フィルムを製膜した。
(折り曲げ試験)
得られた各実施例および比較例の光学フィルムを3cm×20cmに切断し、180°折曲げて折り曲げの前後で膜の状態(脆性)を調べた。その結果、容易に折り曲げが可能で且つ5回繰り返し折り曲げ後の膜に変化がなかったものを「○」、5回折り曲げ後に膜に外層、コア層ともに割れていないが折り曲げクセがつくものを「△」、5回の折り曲げ後にコア層が割れたものを「×」として判定した。得られた結果を下記表1に記載した。
作製した光学フィルムから1cm×5cmのサンプルを切り出し、分光エリプソメーター(M−220、日本分光株式会社製)を用いて、サンプルに25℃で応力をかけながら、フィルム面内のレターデーション値を測定し、レターデーション値と応力の関数の傾きから算出した。得られた結果を下記表1に記載した。
また、レターデーション値の湿度に伴う変化については、フィルムを25℃・相対湿度10%にて12時間調湿した以外は本明細書中に記載の方法と同様にして測定して算出したRth(Rth(10%))、および25℃・相対湿度80%にて12時間調湿した以外は本明細書中に記載の方法と同様にして測定して算出したRth(Rth(80%))から、Rthの湿度依存性ΔRthとを算出した。具体的には、ΔRth=Rth(10%)−Rth(80%)の値を計算し、得られた結果をそれぞれ下記表1に記載した。
実施例及び比較例で作成した各フィルム及びフジタックTD60UL(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光子を調製した。
このようにして得た偏光子と、前記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで前記偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作成した。ここで、偏光子の一方のフィルムは、表2記載のフィルム群から選択される1枚を鹸化したフィルムとし、他方のフィルムはフジタックTD60ULとした。
このとき、以下の基準でPVA偏光子への貼り合わせを評価した結果を下記表1に記載した。
○:フィルムがポリビニルアルコールから剥離しない。
×:フィルムがポリビニルアルコールから容易に剥離する。
(IPS型液晶表示装置への実装)
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ)から、液晶セルを挟んでいる偏光板を剥がし取り、上記にて作製した偏光板を、表1に記載の本発明の光学フィルム側が液晶セル側に配置されるように、粘着剤を介して液晶セルに再貼合した。組みなおした液晶テレビを、40℃・相対湿度80%の環境で10日間保持した後に、25℃・相対湿度60%の環境に移し、黒表示状態で点灯させ続け、48時間後に目視観察して、光ムラを評価した。
装置正面から観察した場合の黒表示時の輝度ムラを観察し、以下の基準で評価した。その結果を下記表1に記載した。
○ : 照度100lxの環境下でムラがほとんど視認されない。
△ : 照度100lxの環境下で淡いムラが視認される。
× : 照度100lxの環境下で明確なムラが視認される。
比較例1および2より、外層厚みが本発明の下限値を大幅に下回る場合、PVAとの貼り合わせが悪く、脆性も悪いことがわかった。また、比較例1および2は通常のPVAとの貼り合わせ工程によって偏光板を作製することができず、パネル実装ができなかった。比較例3より、外層厚みが本発明の下限値をわずかに下回る場合、脆性が悪いことがわかった。比較例4より、外層厚みが本発明の上限値を超える場合、光弾性係数、光学湿度変化が大きくなり悪化し、パネルに光ムラ(光漏れ)が生じることがわかった。
12 ドープ
14 流延ダイ
31 バンド
32 バックアップローラ
33 バックアップローラ
36 フィルム
37 剥ぎ取りローラ
51 温調板
52 凝縮板
53 液受け
56 回収タンク
101 流延設備
102 ドラム
105 凝縮板
PS 流延開始位置
Claims (14)
- ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層と、
該コア層の少なくとも片側に、3μmより厚く20μm以下の厚みであり、かつ、セルロースアシレートを含む外層を有することを特徴とする、光学フィルム。 - 前記コア層の両側に、前記外層を1層ずつ有する3層構成であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記コア層の膜厚が10〜100μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルム。
- 全膜厚に占める、前記外層の合計膜厚の割合が、2〜40%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 光弾性係数の値が−3.0〜3.0×10-12Pa-1 であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートと有機溶媒を含有するドープ(A)、およびラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に、共流延法により同時に流延基材上に流延する工程と、
前記有機溶媒を除去する工程を含み、
前記ドープ(A)の流延厚みを該ドープ(A)の乾燥厚みが3μmより厚く20μm以下になるように制御することを特徴とする、光学フィルムの製造方法。 - 前記ドープ(A)および前記ドープ(B)を、流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に共流延法により同時に流延基材上に流延することを特徴とする請求項6に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記ドープ(A)の複素粘度ηAと、前記ドープ(B)の複素粘度ηBが、下記式Iの関係を満たすように制御することを特徴とする、請求項6または7に記載の光学フィルムの製造方法。
(式I) ηA≦ηB - 前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の25℃における複素粘度がいずれも10〜80Pa・sであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記ドープ(A)の固形分濃度が15〜25質量%であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 請求項6〜10のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする、光学フィルム。
- 偏光子と、請求項1〜6および11のいずれか一項に記載の光学フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜6および11のいずれか一項に記載の光学フィルム、または、請求項12に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
- IPS方式であることを特徴とする、請求項13に記載の液晶表示装置。
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