JP2010026029A - 光学フィルムとそれを備える画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性(逆波長分散性)を示す光学フィルムと、この光学フィルムを備える画像表示装置とに関する。
高分子の配向により生じる複屈折を利用した光学部材が、画像表示分野において幅広く使用されている。このような光学部材の一つに、色調の補償、視野角の補償などを目的として画像表示装置に組み込まれる位相差板(位相差フィルム)がある。例えば、反射型の液晶表示装置(LCD)では、複屈折により生じた位相差に基づく光路長差(リターデーション)が波長の1/4である位相差板(λ/4板)が使用される。有機ELディスプレイ(OLED)では、外光の反射防止を目的として、偏光板とλ/4板とを組み合わせた反射防止板が用いられることがある(特許文献1参照)。これら複屈折性を示す光学部材は、今後のさらなる用途拡大が期待される。
従来、光学部材には、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンが主に用いられてきたが、これら一般的な高分子は、光の波長が短くなるほど複屈折が大きくなる(即ち、位相差が増大する)波長分散性を示す。表示特性に優れる画像表示装置とするためには、これとは逆に、光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる(即ち、位相差が減少する)波長分散性を示す光学部材が望まれる。本明細書では、少なくとも可視光領域において光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を、一般的な高分子ならびに当該高分子により形成された光学部材が示す波長分散性とは逆であることに基づいて、「逆波長分散性」と呼ぶ。
一方、特許文献2に、正の固有複屈折を有する重合体と、負の固有複屈折を有する重合体とを含む樹脂組成物からなる位相差板が開示されている。また、特許文献3に、正の固有複屈折を有する分子鎖と、負の固有複屈折を有する分子鎖とを有する共重合体からなる位相差板が開示されており、これらの位相差板は、単層でありながら逆波長分散性を示す。なお、特許文献2には、正の固有複屈折を有する重合体としてポリノルボルネンが、負の固有複屈折を有する重合体としてスチレン系重合体が例示されている。特許文献3には、正の固有複屈折を有する分子鎖としてノルボルネン鎖が、負の固有複屈折を有する分子鎖としてスチレン鎖などのスチレン系の分子鎖が例示されている。
特開2007−273275号公報
特開2001−337222号公報
特開2001−235622号公報
本発明は、逆波長分散性を示す新規な光学フィルムの提供を目的とする。
本発明の光学フィルムは、以下の式(1)により示される分子構造を含む樹脂(A)からなる層を有し、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を示す。
上記式(1)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光学フィルムを備える。
本発明の光学フィルムは、上記式(1)により示される分子構造を含む樹脂(A)からなる層を有することにより、逆波長分散性を示す。
本明細書における「樹脂」は「重合体」よりも広い概念である。樹脂は、例えば1種または2種以上の重合体からなってもよいし、必要に応じて、重合体以外の材料(例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤)を含んでもよい。
[樹脂(A)]
樹脂(A)の構成は、上記式(1)により示される分子構造Xを含む限り特に限定されない。例えば、樹脂(A)は、分子構造Xが結合した構成単位(繰り返し単位)を有する重合体を含む。
樹脂(A)の構成は、上記式(1)により示される分子構造Xを含む限り特に限定されない。例えば、樹脂(A)は、分子構造Xが結合した構成単位(繰り返し単位)を有する重合体を含む。
このような重合体の一例は、以下の式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)である。即ち、樹脂(A)は、以下の式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)を含んでもよい。この場合、構成単位Y内に分子構造Xが存在するため、樹脂(A)は分子構造Xを含む。なお、構成単位Yは、分子構造Xに重合性基であるビニル基が結合した単量体に由来する構成単位である。
上記式(2)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。
具体的な構成単位Yは、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドンおよびN−ビニル−ω−ヘプタラクタムから選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構成単位である。
構成単位Yは、重合体(B−1)に負の固有複屈折を与える作用を有する。構成単位Yが有するこの作用により、本発明の光学フィルムは逆波長分散性を示す。
重合体に負(あるいは正)の固有複屈折を与える作用を有する構成単位とは、当該単位のホモポリマーを形成したときに、形成したホモポリマーの固有複屈折が負(あるいは正)となる構成単位をいう。重合体自体の固有複屈折の正負は、当該単位に由来して生じる複屈折と、重合体が有するその他の構成単位に由来して生じる複屈折との兼ね合いにより決定される。
重合体(ポリマー)の固有複屈折とは、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えばフィルム)における、分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な方向の光の屈折率n1から、配向軸に垂直な光の屈折率n2を引いた値(即ち、「n1−n2」)をいう。当該値が正のとき重合体の固有複屈折は正となり、当該値が負のとき重合体の固有複屈折は負となる。
樹脂の固有複屈折の正負は、当該樹脂に含まれる各重合体に由来して生じる複屈折の兼ね合いにより決定される。
なお、樹脂(A)が重合体(B−1)を含むとき、樹脂(A)は重合体(B−1)以外の重合体を含んでもよいし、重合体(B−1)は構成単位Y以外の構成単位を有してもよい。
分子構造Xが結合した構成単位を有する重合体の別の一例は、少なくとも一部の分子構造および/または官能基が分子構造Xにより変性された構成単位を有する重合体である。当該重合体は、例えば、水酸基および/またはアセチル基が分子構造Xにより変性された繰り返し単位を有する、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース誘導体である。分子構造Xの結合により、セルロース誘導体の繰り返し単位の少なくとも一部が、当該誘導体に負の固有複屈折を与える作用を有するようになる。分子構造Xによる変性に基づくこの作用により、本発明の光学フィルムは逆波長分散性を示す。
ところで、光学フィルムの一種に、偏光板における偏光子を保護するためのフィルム(偏光子保護フィルム)がある。偏光子保護フィルムは、偏光子の片面または両面に接合された状態で使用される。偏光子は、典型的には、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素または二色性染料などの二色性物質により染色して形成されるが、染色に水溶液を使用するため、偏光子に接合される偏光子保護フィルムは、本来、水透過性を有することが好ましい。偏光子と偏光子保護フィルムとの接合に水系の接着剤が使用されることも、水透過性を有する偏光子保護フィルムが好ましい理由の一つである。例えば、ポリシクロオレフィンからなるフィルムは、ポリシクロオレフィンの疎水性が強いために水透過性をほとんど示さず、偏光子保護フィルムとして必ずしも適しているとはいえない。これに対して、分子構造Xおよび構成単位Yは高い親水性を有するため、本発明の光学フィルムは、その構成によっては高い水透過性を示し、偏光子保護フィルムとしての用途に好適となる。
[光学フィルム]
以下、本発明の光学フィルムの具体例について説明する。
以下、本発明の光学フィルムの具体例について説明する。
(実施の形態1)
図1に、本発明の光学フィルムの一例を示す。図1に示す光学フィルム1は1つの層2からなり、層2は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなる。重合体(B−1)の固有複屈折は負である。本実施形態において樹脂(A)は、正の固有複屈折を有する重合体(B−2)をさらに含む。樹脂(A)は、重合体(B−1)と(B−2)とを含む組成物であるともいえる。
図1に、本発明の光学フィルムの一例を示す。図1に示す光学フィルム1は1つの層2からなり、層2は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなる。重合体(B−1)の固有複屈折は負である。本実施形態において樹脂(A)は、正の固有複屈折を有する重合体(B−2)をさらに含む。樹脂(A)は、重合体(B−1)と(B−2)とを含む組成物であるともいえる。
樹脂(A)は、固有複屈折が負の重合体(B−1)と固有複屈折が正の重合体(B−2)とを含むが、双方の重合体に対して同一方向に配向が加えられている場合、各々の重合体の遅相軸(あるいは進相軸)が直交するために、互いの複屈折が打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消し合う程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の逆波長分散性が生じる。
光学フィルム1は、単層でありながら逆波長分散性を示す。このため、薄膜化しながら望む光学特性を得ることができ、光学フィルムを備える画像表示装置のさらなる小型化、軽量化などの実現が可能となる。また、光学フィルム1は、複数の層の積層により逆波長分散性を実現した光学フィルムに比べて、各層の接合角度の調整が不要であるため生産性が高い。
重合体(B−1)、(B−2)の配向に着目すると、光学フィルム1は、重合体(B−1)および(B−2)を含む樹脂(A)に配向を与えて形成した部材であるともいえる。樹脂(A)に配向を与えるには、フィルムに成形した樹脂(A)を延伸すればよい。
重合体(B−2)は、正の固有複屈折を有する限り特に限定されない。重合体(B−2)は、例えば、(メタ)アクリル重合体、ポリシクロオレフィンおよびセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種である。
なかでも、光学フィルム1としての光学特性ならびに機械的強度、成形加工性および表面硬度などの諸特性を向上できることから、重合体(B−2)は(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。
(メタ)アクリル重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単位を、全構成単位の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、有する重合体をいう。(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造をさらに含む重合体の場合、(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の合計が全構成単位の50%以上であれば、(メタ)アクリル重合体とする。
重合体(B−2)が(メタ)アクリル重合体である場合、光学フィルム1における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。構成単位Yを主鎖に有する重合体(B−1)が示す複屈折の波長分散性は、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)が示す複屈折の波長分散性に比べて、かなり大きい。このように、複屈折の波長分散性が大きく異なる重合体(B−1)および(B−2)を組み合わせることで、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
重合体(B−2)は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体であってもよい。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体とすることにより、重合体(B−2)および当該重合体を含む樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が高くなり、高い耐熱性を有する光学フィルム1が得られる。このような光学フィルム1は、例えば画像表示装置において、光源などの発熱部に近接した配置が可能となる。また、耐熱性の向上により、後加工(例えばコーティングなどの表面処理)時の加工温度を上げられるため、光学フィルム1の生産性が高くなる。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)ならびに当該重合体を含む樹脂(A)のTgは、例えば110℃以上である。環構造の種類、重合体(B−2)における環構造の含有率および樹脂(A)における重合体(B−2)の含有率によっては、当該Tgは、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。なお、Tgは、JIS K7121に準拠して求めることができる。
環構造は、例えば、エステル基、イミド基または酸無水物基を有する環構造である。
より具体的な環構造の例は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である。これらの環構造を主鎖に有する重合体(B−2)は配向によって大きな正の固有複屈折を示すため、重合体(B−1)と組み合わせることによって、逆波長分散性の制御の自由度がより向上し、例えば、用途に応じた良好な逆波長分散性の実現が可能となる。
環構造は、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。ラクトン環構造またはグルタルイミド構造、特にラクトン環構造、を主鎖に有する重合体(B−2)は、その波長分散性が非常に小さい。このため、重合体(B−1)と組み合わせることによって、逆波長分散性の制御の自由度がさらに向上する。
重合体(B−2)が有していてもよい具体的なラクトン環構造は特に限定されないが、例えば、以下の式(3)により示される構造である。
上記式(3)において、R3、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでもよい。
有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
式(3)に示すラクトン環構造は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)とを含む単量体群を共重合した後、得られた共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させて形成できる。このとき、R3はH、R4はCH3、R5はCH3である。
以下の式(4)に、グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造を示す。
上記式(4)におけるR6およびR7は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は、酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子のときR8は存在せず、X1が窒素原子のとき、R8は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
X1が窒素原子のとき、式(4)により示される環構造はグルタルイミド構造となる。グルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化して形成できる。
X1が酸素原子のとき、式(4)により示される環構造は無水グルタル酸構造となる。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
以下の式(5)に、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造を示す。
上記式(5)におけるR9およびR10は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は、酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子のときR11は存在せず、X2が窒素原子のとき、R11は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
X2が窒素原子のとき、式(5)により示される環構造はN−置換マレイミド構造となる。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、N−置換マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
X2が酸素原子のとき、式(5)により示される環構造は無水マレイン酸構造となる。無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
なお、式(4)、(5)の説明において例示した、環構造を形成する各方法では、各々の環構造の形成に用いる重合体が全て(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有するため、当該方法により得た重合体(B−2)は(メタ)アクリル重合体となる。
重合体(B−2)が主鎖に環構造を有する場合、重合体(B−2)における環構造の含有率は特に限定されないが、通常5〜90重量%であり、20〜90重量%が好ましい。当該含有率は、30〜90重量%、35〜90重量%、40〜80重量%および45〜75重量%になるほど、さらに好ましい。環構造の含有率は、特開2001−151814号公報に記載の方法により求めることができる。
重合体(B−2)は、固有複屈折が正である限り、任意の構成単位を含むことができる。例えば重合体(B−2)は、上記式(2)により示される構成単位Yを含んでもよく、この場合、重合体(B−1)と(B−2)との相溶性が向上し、透明性に優れる光学フィルム1となる。
重合体(B−2)は公知の方法により製造できる。
一例として、主鎖にラクトン環構造を有する重合体(B−2)は、分子鎖内に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を任意の触媒存在下で加熱し、脱アルコールを伴うラクトン環化縮合反応を進行させて、得ることができる。
重合体(a)は、例えば、以下の式(6)に示される単量体を含む単量体群の重合により形成できる。
上記式(6)において、R12およびR13は、互いに独立して、水素原子または式(3)における有機残基と同様の基である。
式(6)により示される単量体の具体的な例は、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルである。なかでも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、高い透明性および耐熱性を有する光学フィルム1が得られることから、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)が特に好ましい。
なお、これら(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位は、環化により、当該単位を有する重合体に対して正の固有複屈折を与える作用を有する。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、上記式(6)により示される単量体を2種以上含んでいてもよい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、上記式(6)により示される単量体以外の単量体を含んでいてもよい。このような単量体は、式(6)により示される単量体と共重合できる単量体である限り特に限定されず、例えば、式(6)により示される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
このような(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;である。なかでも、高い透明性および耐熱性を有する光学フィルム1が得られることから、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、これら(メタ)アクリル酸エステルを2種以上含んでもよい。
構成単位Y(例えばN−ビニル−2−ピロリドン単位)を有する重合体(B−2)は、上述した(メタ)アクリル酸エステル単量体と、重合により構成単位Yとなる単量体(例えばN−ビニル−2−ピロリドン)とを含む単量体群を重合して形成できる。単量体群が含む(メタ)アクリル酸エステルの種類を選択し、形成した重合体を環化縮合させることによって、構成単位Yを有するとともに、主鎖に環構造を有する重合体(B−2)としてもよい。
重合により構成単位Yとなる単量体は、例えば、以下の式(7)に示す単量体である。
上記式(7)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。
式(7)に示す単量体は、分子構造Xに、重合性基であるビニル基が結合している。
重合体(B−1)は、構成単位Yを有し、かつ負の固有複屈折を有する限り特に限定されない。構成単位Yは、当該単位を主鎖に含む重合体(B−1)の波長分散性を大きく増加させる作用を有する。このため、重合体(B−2)との組み合わせによって、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。重合体(B−2)が(メタ)アクリル重合体、特にラクトン環構造またはグルタルイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体(上述したように、これらの重合体は波長分散性が非常に小さい)である場合、光学フィルム1の逆波長分散性の制御の自由度がさらに高くなる。
なお、特許文献2(特開2001−337222号公報)に例示されている樹脂の組み合わせでは、両者の波長分散性の差はそれほど大きくないため、本発明の光学フィルムのような効果を得ることができない。
また、構成単位Yが重合体(B−1)の波長分散性を大きく増加させる作用を有することから、重合体(B−1)の全構成単位に占める構成単位Yの割合が低い場合にも、重合体(B−1)は大きな波長分散性を示す(本願比較例2の結果[表5]を参照)。なお、ポリカーボネート、ポリスチレンなど、従来の光学部材に用いられている重合体は、ホモポリマーの場合においても、本願実施例に示す可視光領域内のR/R0値にして、およそ0.95〜1.15程度の範囲に入る波長分散性しか示さない。
ところで、芳香環は当該環を含む重合体の光弾性係数を上昇させることが知られている。しかし、構成単位Yは芳香環を含まない。このため、重合体(B−1)を含む光学フィルム1では、芳香環を含む重合体を用いたフィルムに比べて、光弾性係数の上昇が抑制される。このように光弾性係数の上昇が抑制された光学フィルムは、画像表示装置への用途に好適である。なお、構成単位Y(分子構造X)によって光学フィルムの光弾性係数の上昇が抑制される効果は、実施の形態2以降に示す光学フィルム11、21、31においても同様である。
構成単位Yの種類は特に限定されないが、重合体(B−1)の波長分散性を増大させる作用に優れることから、N−ビニル−2−ピロリドン単位が好ましい。
重合体(B−1)は、固有複屈折が負である限り、構成単位Y以外の構成単位を含んでもよい。即ち、重合体(B−1)は、重合により構成単位Yとなる単量体と、その他の単量体との共重合体であってもよい。このとき、重合体(B−1)における構成単位Yの含有率は、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。
例えば重合体(B−1)は、構成単位Yと(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として有してもよい。この場合、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)との相溶性が向上し、透明性に優れる光学フィルム1となる。このような重合体(B−1)は、例えば、N−ビニル−2−ピロリドンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体である。
また、重合体(B−1)は、上述した環構造を主鎖に有してもよい。この場合、より耐熱性に優れる光学フィルム1となる。
具体的な例として、重合体(B−1)は以下の単量体に由来する構成単位を有してもよい:アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル(例えばメチルアクリルレート、エチルアクリレート、カルバゾイルエチルアクリレート)、メタクリル酸アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、カルバゾイルエチルメタクリレート)、アクリル酸アミノアルキルエステル(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)、メタクリル酸アミノアルキルエステル、アクリル酸とグリコールとのモノエステル、メタクリル酸とグリコールとのモノエステル(例えばヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩、アクリル酸のアンモニウム塩、メタクリル酸のアンモニウム塩、アクリル酸アミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、メタクリル酸アミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、ジエチルアミノエチルアクリレートとメチルサルフェートとの第4級アンモニウム化合物、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩、ビニルスルホン酸のアンモニウム塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸塩、酢酸ビニル、ビニルステアレート、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリコールジアリルエーテル。
重合体(B−1)が非水溶性である場合、その重量平均分子量は、例えば5万〜150万であり、8万〜120万が好ましく、10万〜90万がより好ましい。
重合体(B−1)が水溶性である場合、その分子量の指標となるK値は、例えば10〜120であり、25〜95が好ましく、30〜85がより好ましい。K値は、フィケンチャー法により測定した値である。
重合体(B−1)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造できる。その際、重合開始剤として、過酸化水素と金属塩との混合物、アゾ化合物および有機過酸化物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
アゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)である。重合開始剤として、2種以上のアゾ化合物を用いてもよい。
これらのアゾ化合物のうち、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が好ましい。
有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1’−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルヒドロペルオキシドである。重合開始剤として、2種以上の有機過酸化物を用いてもよい。
これらの有機過酸化物のうち、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましく、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートが特に好ましい。
重合体(B−1)の重合系における重合開始剤の濃度は、重合する単量体の種類、濃度に応じて調整すればよく特に限定されないが、例えば、単量体100重量部に対して0.001重量部〜3重量部であり、0.005重量部〜2重量部が好ましい。
重合系には、必要に応じ、連鎖移動剤、pH調整剤、緩衝材などを添加できる。
重合溶媒は特に限定されず、例えば水、低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールなど)、ケトン含有溶媒(アセトンとトルエンとの混合溶媒など)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、およびこれらの混合溶媒である。
重合温度は、重合する単量体の種類に応じて調整すればよく特に限定されないが、例えば40℃〜100℃であり、50℃〜95℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましい。
樹脂(A)における重合体(B−1)と重合体(B−2)との混合比は、各重合体の固有複屈折の絶対値、あるいは光学フィルム1として望まれる逆波長分散性の程度などに応じて異なるために一概に述べることができないが、例えば重量比にして、(B−1):(B−2)=1:99〜99:1の範囲であり、(B−1):(B−2)=10:90〜90:10の範囲が好ましく、(B−1):(B−2)=20:80〜80:20の範囲がより好ましい。この範囲において逆波長分散性の制御の自由度を向上でき、用途に応じた良好な逆波長分散性を有する光学フィルム1とすることができる。
本実施形態における樹脂(A)は、2以上の異なる重合体(B−1)あるいは2以上の異なる重合体(B−2)を含んでもよい。
重合体(B−2)が(メタ)アクリル重合体である場合、樹脂(A)における(メタ)アクリル重合体の含有率の合計は、50重量%以上であることが好ましい。
本実施形態における樹脂(A)は、本発明の効果が得られる限り、重合体(B−1)、(B−2)以外の任意の重合体を含んでもよい。
構成単位Yは、その種類によっては非常に強い吸湿性を示す。このため樹脂(A)は、重合体(B−1)が有する構成単位Yの種類、重合体(B−1)における構成単位Yの含有率、および樹脂(A)における重合体(B−1)の含有率によっては、単独で層を形成しづらいことがある。この場合、樹脂(A)は、構成単位Yを有する重合体(B−1)のバインダーとなる重合体(バインダー重合体)を含んでもよい。なお、バインダー重合体は、固有複屈折が0に近い、即ち、延伸によってほとんど複屈折を示さない重合体が好ましく、この場合、光学フィルム1の光学特性の制御が容易となる。
樹脂(A)がバインダー重合体を含む場合、樹脂(A)における重合体(B−1)とバインダー重合体との混合比は、例えば重量比にして、(B−1):バインダー重合体=10:90〜70:30の範囲であり、(B−1):バインダー重合体=20:80〜60:40の範囲が好ましい。
樹脂(A)に含まれる重合体の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)または赤外線分光分析(IR)により求めることができる。
光学フィルム1は、必要に応じ、層2以外の任意の層を有してもよい。
光学フィルム1の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B−1)および(B−2)を含む樹脂(A)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層2を形成し、光学フィルム1とすればよい。
樹脂(A)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
(実施の形態2)
図2に、本発明の光学フィルムの別の一例を示す。図2に示す光学フィルム11は1つの層12からなり、層12は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−3)を含む樹脂(A)からなる。重合体(B−3)は、当該重合体に負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位として構成単位Yを有するとともに、当該重合体に正の固有複屈折を与える作用を有する構成単位Zをさらに有する。
図2に、本発明の光学フィルムの別の一例を示す。図2に示す光学フィルム11は1つの層12からなり、層12は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−3)を含む樹脂(A)からなる。重合体(B−3)は、当該重合体に負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位として構成単位Yを有するとともに、当該重合体に正の固有複屈折を与える作用を有する構成単位Zをさらに有する。
このような重合体(B−3)に配向が加えられると、構成単位YおよびZの各々に由来して生じた複屈折が互いに打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の逆波長分散性が生じる。
光学フィルム11は、単層でありながら逆波長分散性を示す。このため、薄膜化しながら望む光学特性を得ることができ、光学フィルムを備える画像表示装置のさらなる小型化、軽量化などの実現が可能となる。また、光学フィルム11は、複数の層の積層により逆波長分散性を実現した光学フィルムに比べて、各層の接合角度の調整が不要であるため生産性が高い。
重合体(B−3)の配向に着目すると、光学フィルム11は、重合体(B−3)を含む樹脂(A)に配向を与えて形成した部材であるともいえる。樹脂(A)に配向を与えるにはフィルムに成形した樹脂(A)を延伸すればよい。
重合体(B−3)は、構成単位YおよびZを有する限り特に限定されない。
構成単位Zは、重合体(B−3)に正の固有複屈折を与える作用を有する限り特に限定されない。構成単位Zは、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または当該単位の誘導体である環構造であり、この場合、光学フィルム11における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。構成単位Yは、重合体(B−3)における複屈折の波長分散性を増大させる強い作用を有する。これに対して、(メタ)アクリル酸エステル単位および当該単位の誘導体である環構造は、重合体(B−3)における複屈折の波長分散性を増大させる作用はそれほど強くない。このように、重合体(B−3)の波長分散性を増大させる程度が異なる構成単位を組み合わせることにより、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
なお、特許文献3(特開2001−235622号公報)に開示されている構成単位の組み合わせでは、両者の波長分散性の差はそれほど大きくない。このため、構成単位Yと、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または当該単位の誘導体である環構造の構成単位Zとを組み合わせたときのような効果を得ることができない。
環構造は、例えば、実施の形態1において重合体(B−2)を説明するために例示した環構造である。この例示した環構造を、以下、単に「環構造」という。
重合体(B−3)における(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の含有率の合計が50重量%以上である場合、重合体(B−3)は(メタ)アクリル重合体となる。このとき、光学特性ならびに機械的強度、成形加工性および表面硬度などの諸特性に優れる光学フィルム11となる。
重合体(B−3)は、構成単位Zとして、(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の双方を有することが好ましい。即ち、重合体(B−3)は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。環構造を含む構成単位は、当該単位を有する重合体(B−3)に対して、その配向時に大きな正の固有複屈折を与える作用を有する。このため、構成単位Yとの組み合わせによって、光学フィルム11における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
また、重合体(B−3)が主鎖に環構造を有することにより、重合体(B−3)および当該重合体を含む樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が高くなり、高い耐熱性を有する光学フィルム11が得られる。
重合体(B−3)および当該重合体を含む樹脂(A)のTgは、例えば110℃以上である。環構造の種類、重合体(B−3)における環構造の含有率ならびに樹脂(A)における重合体(B−3)の含有率によっては、当該Tgは、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。
環構造は、実施の形態1で説明したように、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。これらの環構造は、重合体(B−3)に正の固有複屈折を与える作用を有するが、その波長分散性が非常に小さい。このため、構成単位Yとの組み合わせによって、光学フィルム11の逆波長分散性の制御の自由度がさらに向上する。
構成単位Yの種類は特に限定されないが、重合体(B−3)の波長分散性を増大させる作用に優れることから、N−ビニル−2−ピロリドン単位が好ましい。
また、構成単位Yは芳香環を含まないため、重合体(B−3)、当該重合体を含む樹脂(A)および樹脂(A)からなる光学フィルム11の光弾性係数の上昇を抑制できる。
重合体(B−3)は、構成単位YおよびZが主鎖にランダムに配置されたランダム共重合体であってもよいし、構成単位Yからなるブロックと構成単位Zからなるブロックとが存在するブロック共重合体であってもよい。また、構成単位YおよびZから選ばれる一方の構成単位(例えば構成単位Y)を有する主鎖に、他方の構成単位(例えば構成単位Z)を有する側鎖が結合したグラフト共重合体であってもよい。
重合体(B−3)は、本発明の効果が得られる限り、構成単位YおよびZ以外の任意の構成単位を有してもよい。
重合体(B−3)は、公知の方法により製造できる。
重合体(B−3)における構成単位YおよびZの含有率の比は、重合体(B−3)の固有複屈折に対して各構成単位が作用する程度、あるいは光学フィルム11として望まれる逆波長分散性の程度などに応じて異なるために一概に述べることができないが、例えば重量比にして、構成単位Y:構成単位Z=8:92〜38:62の範囲である。この範囲において、逆波長分散性の制御の自由度を向上でき、用途に応じた良好な波長分散性を有する光学フィルム11が得られる。
重合体を構成する各構成単位の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)あるいは赤外線分光分析(IR)により求めることができる。
樹脂(A)における重合体(B−3)の含有率は特に限定されないが、本発明の効果が確実に得られることから、通常50重量%以上であり、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。
本実施形態における樹脂(A)は2以上の異なる重合体(B−3)を含んでもよい。
光学フィルム11は、必要に応じ、層12以外の任意の層を有してもよい。
光学フィルム11の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B−3)を含む樹脂(A)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層12を形成し、光学フィルム11とすればよい。
樹脂(A)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
(実施の形態3)
図3に、本発明の光学フィルムの別の一例を示す。図3に示す光学フィルム21は、2つの層22、23が積層された構造を有する。層22は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなり、樹脂(A)の固有複屈折は負である。層23は、正の固有複屈折を有する樹脂(C)からなる。
図3に、本発明の光学フィルムの別の一例を示す。図3に示す光学フィルム21は、2つの層22、23が積層された構造を有する。層22は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなり、樹脂(A)の固有複屈折は負である。層23は、正の固有複屈折を有する樹脂(C)からなる。
光学フィルム21は、固有複屈折の符号が互いに異なる2種類の層(層22および層23)が積層された構造を有するが、このような積層構造では、入射した光に対する両層の複屈折が互いに打ち消しあう現象が生じる。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、光学フィルム21は逆波長分散性を示す。
また、光学フィルム21では、層22および23が各々独立して配置されており、固有複屈折の符号が互いに異なる重合体間の相容性、あるいは重合体に与える固有複屈折の符号が互いに異なる構成単位間の相溶性を考慮する必要がないため、それぞれの層がとりうる組成範囲が広い。これにより、逆波長分散性の制御の自由度をはじめとする光学的な設計の自由度が高い光学部材となる。
層22、23では、当該層に含まれる重合体の配向により複屈折が生じる。この観点からは、層22は、樹脂(A)に配向を与えて形成した層であるともいえる。また、層23は、樹脂(C)に配向を与えて形成した層であるともいえる。樹脂(A)、(C)に配向を与えるには、フィルムに成形した樹脂(A)、(C)を延伸すればよい。
樹脂(C)は、正の固有複屈折を有する限り特に限定されず、例えば正の固有複屈折を有する重合体を含めばよい。正の固有複屈折を有する重合体は、例えば上述した重合体(B−2)である。
重合体(B−2)は(メタ)アクリル重合体であることが好ましく、この場合、光学フィルム21における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。層22は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなるが、このような層が示す複屈折の波長分散性は、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)を含む樹脂(C)からなる層23が示す複屈折の波長分散性に比べてかなり大きい。このように、複屈折の波長分散性が大きく異なる2種類の独立した層を組み合わせることで、光学フィルム21における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
なお、特許文献2(特開2001−337222号公報)に例示されている樹脂の組み合わせに基づいて層22、23を形成したとしても(例えば、層23をポリノルボルネンにより形成し、層22をスチレン系重合体により形成する)、それぞれの層が示す複屈折の波長分散性の差がそれほど大きくないために、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)を含む樹脂(C)からなる層23と、重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなる層22とを組み合わせたときのような効果を得ることができない。
重合体(B−2)は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。重合体(B−2)が主鎖に環構造を有することにより、層23の固有複屈折の絶対値が大きくなる。このため、層22と組み合わせることによって、光学フィルム21における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
また、実施の形態1で説明したように、重合体(B−2)が主鎖に環構造を有することによって、重合体(B−2)および当該重合体を含む樹脂(C)のTgが高くなり、層23および光学フィルム21の耐熱性が向上する。Tgが高くなる程度は、上述したとおりである。
環構造は、実施の形態1で説明したように、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。これらの環構造は、重合体(B−2)に正の固有複屈折を与える作用を有するが、その波長分散性が非常に小さい。このため、重合体(B−1)を含む層22との組み合わせにより、光学フィルム21の逆波長分散性の制御の自由度がさらに向上する。
重合体(B−2)のその他の好ましい条件は、実施の形態1において説明した重合体(B−2)の好ましい条件と同じである。
重合体(B−2)を含む樹脂(C)は、正の固有複屈折を有する限り、重合体(B−2)以外の任意の重合体を含んでもよい。
本実施形態における樹脂(A)は、上記式(2)により示される構成単位Yを有する重合体(B−1)を含み、負の固有複屈折を有する限り特に限定されない。
重合体(B−1)は、実施の形態1において説明した重合体(B−1)と同様である。
本実施形態における樹脂(A)は、負の固有複屈折を有する限り、重合体(B−1)以外の任意の重合体を含んでもよい。
なお、構成単位Yは、その種類によっては非常に強い吸湿性を示す。このため重合体(B−1)は、当該重合体が有する構成単位Yの種類、および当該重合体における構成単位Yの含有率によっては、単独で層を形成しづらいことがある。この場合、樹脂(A)は、重合体(B−1)のバインダ−となる重合体(バインダー重合体)を含んでもよい。バインダー重合体は、固有複屈折が0に近い、即ち、延伸によって複屈折を示さない重合体が好ましく、この場合、層22の光学特性の制御が容易となる。
光学フィルム21の形成方法は特に限定されず、例えば、予め個別に作製した層22および層23を互いに接合すればよい。層22、23の作製方法ならびに層22と層23との接合方法は、公知の手法に従えばよい。
また、層22および23から選ばれる一方の層を予め作製した後に、他方の層を構成する樹脂が溶解した溶液を上記作製した層に塗布、乾燥させて、光学フィルム21を形成してもよい。例えば、(メタ)アクリル重合体、ポリシクロオレフィンまたはセルロース誘導体からなるベースフィルム(当該ベースフィルムは層23に対応する)上に、構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む溶液を塗布した後に全体を乾燥させることで、ベースフィルム上に重合体(B−1)を含む層22を形成し、光学フィルム21としてもよい。
光学フィルム21が有する層22、23の数は特に限定されない。また、層22と層23とは必ずしも接していなくてもよく、それぞれの層の間に任意の層が配置されていてもよい。
層22および23の積層状態(例えば、層22および23の積層パターン、あるいは光学フィルム21の表面に垂直な方向から見た、層22の配向軸と層23の配向軸とがなす角度など)は特に限定されず、光学的な設計事項に合わせて適宜選択、調整できる。なお、層22および23を、それぞれの延伸方向がほぼ一致するように積層した場合に、光学フィルム21が示す逆波長分散性が最も強くなる。
光学フィルム21は、必要に応じ、層22、23以外の任意の層を有してもよい。
光学フィルム21の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B−1)を含む樹脂(A)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層22を形成する。これとは別に、重合体(B−2)を含む樹脂(C)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸することで、樹脂(C)が含む重合体の分子鎖を配向させて層23を形成する。次に、形成した双方の層を積層して、図3に示す光学フィルム21を形成できる。
樹脂(A)、(C)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
形成した層22、23は、公知の手法により積層すればよく、その際、アクリル系の接着剤などにより両層を接着してもよい。
(実施の形態4)
図4に、本発明の光学フィルムの別の一例を示す。図4に示す光学フィルム31は1つの層32からなり、層32は、上記式(1)により示される分子構造Xにより変性された構成単位を有する重合体(B−4)を含む樹脂(A)からなる。
図4に、本発明の光学フィルムの別の一例を示す。図4に示す光学フィルム31は1つの層32からなり、層32は、上記式(1)により示される分子構造Xにより変性された構成単位を有する重合体(B−4)を含む樹脂(A)からなる。
このような重合体(B−4)に配向が加えられると、分子構造Xにより変性される程度が構成単位間で異なるために、各々の構成単位に由来して生じた複屈折が互いに打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の波長分散性が生じる。
重合体(B−4)は公知の手法により形成できる。例えば、変性の対象である構成単位と結合可能な結合基が分子構造Xに結合された化合物を、当該構成単位を有する重合体と反応させればよい。重合体がTACなどのセルロース誘導体である場合、当該結合基は、例えば水酸基であり、上記化合物は、例えば5−オキソピロリジン−2−カルボン酸を塩化チオニルなどにより酸塩化物したものである。
光学フィルム31は、必要に応じ、層32以外の任意の層を有してもよい。
光学フィルム31の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B−4)を含む樹脂(A)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層32を形成し、光学フィルム31とすればよい。
樹脂(A)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
(光学フィルムの用途)
本発明の光学フィルムは逆波長分散性を示す。即ち、本発明の光学フィルムは、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折(あるいは位相差もしくはリターデーション)が小さくなる光学特性を示す。このような広帯域の光学フィルムを用いることによって、表示特性に優れる画像表示装置を構築できる。
本発明の光学フィルムは逆波長分散性を示す。即ち、本発明の光学フィルムは、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折(あるいは位相差もしくはリターデーション)が小さくなる光学特性を示す。このような広帯域の光学フィルムを用いることによって、表示特性に優れる画像表示装置を構築できる。
本発明の光学フィルムは、例えば、位相差板としてもよいし、得られる位相差に基づくリターデーションを光の波長の1/4とすることで、位相差板の一種であるλ/4板としてもよい。また、本発明の光学フィルムを、偏光板などの他の光学部材と組み合わせて、反射防止板とすることもできる。
本発明の光学フィルムは、用途に応じて、他の光学部材と組み合わせて用いてもよい。
本発明の光学フィルムの用途は特に限定されず、従来の光学部材と同様の用途(例えば、LCD、OLEDなどの画像表示装置)に使用が可能である。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
(製造例1:正の固有複屈折を有する重合体の製造)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、15重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、35重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルパゾール570)を添加するとともに、3.34重量部のトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、15重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、35重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルパゾール570)を添加するとともに、3.34重量部のトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、0.1重量部のリン酸オクチル/ジオクチル混合物を加え、約80〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた。
次に、オートクレーブにより、240℃で90分間さらに加熱した後、得られた重合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥させて、主鎖にラクトン環構造を有する透明な(メタ)アクリル重合体(B−2)を得た。
(製造例2:構成単位Yを有し、かつ負の固有複屈折を有する重合体の製造)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、576重量部の脱イオン水を仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。反応装置内の温度が80℃で安定したところで、534重量部のN−ビニル−2−ピロリドンと、重合開始剤として2.45重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオアミジン)二塩酸塩を75.8重量部の脱イオン水に溶解させた溶液とを、3時間かけて装置内に滴下した。滴下終了後、80℃を維持しながら反応を4時間進行させ、次に、得られた重合溶液を減圧下150℃で2時間乾燥させて、N−ビニル−2−ピロリドンの重合体(B−1)を得た。得られた重合体のK値は59.8であった。なお、K値とは、重合体の分子量と相関する粘性特性値であり、フィケンチャー法により測定した。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、576重量部の脱イオン水を仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。反応装置内の温度が80℃で安定したところで、534重量部のN−ビニル−2−ピロリドンと、重合開始剤として2.45重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオアミジン)二塩酸塩を75.8重量部の脱イオン水に溶解させた溶液とを、3時間かけて装置内に滴下した。滴下終了後、80℃を維持しながら反応を4時間進行させ、次に、得られた重合溶液を減圧下150℃で2時間乾燥させて、N−ビニル−2−ピロリドンの重合体(B−1)を得た。得られた重合体のK値は59.8であった。なお、K値とは、重合体の分子量と相関する粘性特性値であり、フィケンチャー法により測定した。
フィケンチャー法によるK値の測定方法は以下の通りである。最初に、測定対象である重合体1.0gを室温で蒸留水に溶解させ、体積100mLの溶液とする。次に、得られた溶液を、25℃±0.2℃に保持した恒温槽に30分間放置した後、ウベローデ型粘度計を用いて当該溶液の相対粘度[η]を求める。相対粘度を求める際には、蒸留水を標準液として使用し、上記溶液および蒸留水に対して粘度計により計測した流動時間は、ハーゲンバッハ−キュッテ(Hagenbach-Couette)の補正に基づいて補正する。相対粘度[η]は、上記溶液の流動時間t1および蒸留水の流動時間t2から、式[η]=t1/t2により求められる。K値は、このように求めた相対粘度[η]ならびに溶液の濃度C(g/100mL)から、以下の式により求められる。
K値={{300C・log[η]+(C+1.5C・log[η])2}1/2+1.5C・log[η]−C}/(0.15C+0.003C2)
K値={{300C・log[η]+(C+1.5C・log[η])2}1/2+1.5C・log[η]−C}/(0.15C+0.003C2)
この方法により測定したK値が20未満となる場合には、溶液の濃度を5.0(g/100mL)として再測定する。
(製造例3:ピロリドン重合体のバインダーとなる重合体の製造)
製造例2で作製したN−ビニル−2−ピロリドン重合体(B−1)の吸湿性が強く、単独で層を形成しづらいことから、製造例3では、当該重合体のバインダーとなる重合体を以下のように製造した。
製造例2で作製したN−ビニル−2−ピロリドン重合体(B−1)の吸湿性が強く、単独で層を形成しづらいことから、製造例3では、当該重合体のバインダーとなる重合体を以下のように製造した。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、40重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルパゾール570)を添加するとともに、3.34重量部のトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、0.045重量部のリン酸オクチル/ジオクチル混合物を加え、約80〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた。
次に、オートクレーブにより240℃で90分間さらに加熱した後、得られた重合溶液に、5重量部のアクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体を加えた。次に、AS共重合体を加えた重合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥させて、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体とAS共重合体とが混合した透明な樹脂(D)を得た。
作製した樹脂(D)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ120μmのフィルムとし、作製したフィルムをオートグラフ(島津製作所製)を用いて延伸倍率が2倍となるように延伸温度142℃で一軸延伸した。得られた延伸フィルムの位相差を全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−21ADH)により評価したが、厚さ100μmあたりの面内位相差は、測定波長447nm〜750nmの範囲にわたって、ほぼ10nm以下であった。
(製造例4:正の固有複屈折を有する重合体の製造)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、40重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルパゾール570)を添加するとともに、3.34重量部のトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、40重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルパゾール570)を添加するとともに、3.34重量部のトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、0.045重量部のリン酸オクチル/ジオクチル混合物を加え、約80〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた。
次に、オートクレーブにより、240℃で90分間さらに加熱した後、得られた重合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥させて、主鎖にラクトン環構造を有する透明な(メタ)アクリル重合体(B−2)を得た。
(製造例5:構成単位Yと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体の製造)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、70重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、380重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、50重量部のN−ビニル−2−ピロリドン、ならびに重合溶媒として250重量部のトルエンおよび250重量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。重合系が80℃で安定した後、重合開始剤として10重量部のトルエンに1重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を溶解した溶液を添加し、重合系を約83℃に維持しながら、8時間溶液重合を進行させた。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、70重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、380重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、50重量部のN−ビニル−2−ピロリドン、ならびに重合溶媒として250重量部のトルエンおよび250重量部のメチルイソブチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。重合系が80℃で安定した後、重合開始剤として10重量部のトルエンに1重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を溶解した溶液を添加し、重合系を約83℃に維持しながら、8時間溶液重合を進行させた。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、0.5重量部のリン酸オクチル/ジオクチル混合物を加え、約80〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた。
次に、オートクレーブにより、240℃で90分間さらに加熱した後、得られた重合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥させて、重合体に負の固有複屈折を与える構成単位としてN−ビニル−2−ピロリドン単位を有するとともに、重合体に正の固有複屈折を与える構成単位としてラクトン環構造を有する透明な重合体(B−3)を得た。
(実施例1)
製造例1で作製した重合体(B−2)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約120μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、オートグラフ(島津製作所製、以降の実施例、比較例においても同じ)により、MD方向の延伸倍率が2.5倍となるように延伸温度145℃で一軸延伸して、厚さ100μmの延伸フィルム(F1)を得た。
製造例1で作製した重合体(B−2)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約120μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、オートグラフ(島津製作所製、以降の実施例、比較例においても同じ)により、MD方向の延伸倍率が2.5倍となるように延伸温度145℃で一軸延伸して、厚さ100μmの延伸フィルム(F1)を得た。
これとは別に、重合体(B−2)の代わりに、製造例2で作製した重合体(B−1)5重量部と、製造例3で作製した樹脂(D)95重量部とをメチルエチルケトン、トルエンおよびクロロホルムの混合溶媒中で均一に混合した後に乾燥して得た樹脂(A)を用いた以外は、上記と同様にして、厚さ95μmの延伸フィルム(F2)を得た。ただし、延伸倍率は2倍、延伸温度は132℃とした。
次に、1枚の延伸フィルム(F1)と、4枚の延伸フィルム(F2)とを、各々のフィルムの延伸方向(延伸軸)を合わせながら積層した。得られた延伸フィルム積層体における位相差(面内位相差)の波長分散性を、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−21ADH)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表1に示す。なお、表1ならびに以降の実施例、比較例における各表では、測定波長を590nmとしたときの位相差を基準(R0)として、その他の波長における位相差RとR0との比(R/R0)を併せて示す。また、各表に示す面内位相差は、膜厚100μmあたりの値である。
表1に示すように、実施例1で作製した延伸フィルムの積層体は、光の波長が短くなるほど位相差が小さくなる逆波長分散性を示した。
(実施例2)
製造例4で作製した重合体(B−2)18重量部と、製造例2で作製した重合体(B−1)2重量部とを、メチルエチルケトン、トルエンおよびクロロホルムの混合溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌して、重合体(B−2)および(B−1)を均一に混合した。次に、得られた混合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥させて、重合体(B−2)および(B−1)を含む樹脂(A)を得た。
製造例4で作製した重合体(B−2)18重量部と、製造例2で作製した重合体(B−1)2重量部とを、メチルエチルケトン、トルエンおよびクロロホルムの混合溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌して、重合体(B−2)および(B−1)を均一に混合した。次に、得られた混合溶液を減圧下240℃で1時間乾燥させて、重合体(B−2)および(B−1)を含む樹脂(A)を得た。
次に、得られた樹脂(A)をプレス成形機により250℃でプレス成形して、厚さ100μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムをオートグラフにより、MD方向の延伸倍率が2倍となるように延伸温度139℃で一軸延伸して、厚さ60μmの延伸フィルムを得た。
得られた延伸フィルムの位相差(面内位相差)の波長分散性を実施例1と同様に評価した結果を以下の表2に示す。
表2に示すように、実施例2で得られた延伸フィルムは、光の波長が短くなるほど位相差が小さくなる逆波長分散性を示した。
(実施例3)
製造例5で作製した重合体(B−3)をプレス成形機により250℃でプレス成形して、厚さ100μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムをオートグラフにより、MD方向の延伸倍率が2倍となるように延伸温度130℃で一軸延伸して、厚さ60μmの延伸フィルムを得た。
製造例5で作製した重合体(B−3)をプレス成形機により250℃でプレス成形して、厚さ100μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムをオートグラフにより、MD方向の延伸倍率が2倍となるように延伸温度130℃で一軸延伸して、厚さ60μmの延伸フィルムを得た。
得られた延伸フィルムの位相差(面内位相差)の波長分散性を実施例1と同様に評価した結果を以下の表3に示す。
表3に示すように、実施例3で得られた延伸フィルムは、光の波長が短くなるほど位相差が小さくなる波長分散性を示した。
(比較例1)
実施例1で作製した延伸フィルム(F1)(延伸フィルム(F1)は、製造例1で作製した重合体(B−2)からなる)に対して、その位相差(面内位相差)の波長分散性を実施例1と同様に評価した結果を以下の表4に示す。
実施例1で作製した延伸フィルム(F1)(延伸フィルム(F1)は、製造例1で作製した重合体(B−2)からなる)に対して、その位相差(面内位相差)の波長分散性を実施例1と同様に評価した結果を以下の表4に示す。
表4に示すように、延伸フィルム(F1)は、光の波長が短くなるほど位相差が大きくなる波長分散性を示した。
なお、これとは別に、延伸フィルム(F1)の配向角を全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−21ADH)を用いて評価したところ、配向角(φ)は−0.7°であり、即ち、製造例1で作製した重合体(B−2)の固有複屈折は正であった。
(比較例2)
実施例1で作製した延伸フィルム(F2)(延伸フィルム(F2)は、製造例2で作製した重合体(B−1)と、製造例3で作製した樹脂(D)とを含む樹脂(A)からなる)に対して、その位相差(面内位相差)の波長分散性を実施例1と同様に評価した結果を以下の表5に示す。
実施例1で作製した延伸フィルム(F2)(延伸フィルム(F2)は、製造例2で作製した重合体(B−1)と、製造例3で作製した樹脂(D)とを含む樹脂(A)からなる)に対して、その位相差(面内位相差)の波長分散性を実施例1と同様に評価した結果を以下の表5に示す。
表5に示すように、延伸フィルム(F2)は、光の波長が短くなるほど位相差が大きくなる波長分散性を示し、その波長分散性は非常に大きかった。
なお、これとは別に、延伸フィルム(F2)の配向角を全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−21ADH)を用いて評価したところ、配向角(φ)は−86.4°であり、即ち、製造例2で作製した重合体(B−1)5重量部と、製造例3で作製した樹脂(D)95重量部とを混合して得た樹脂(A)の固有複屈折は負であった。
本発明の光学部材は、従来の複屈折性を有する光学部材と同様に、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)をはじめとする画像表示装置に広く使用でき、本発明の光学部材の使用により、画像表示装置の表示特性を向上できる。
1、11、21、31 光学フィルム
2、12、22、23、32 層
2、12、22、23、32 層
Claims (10)
- 前記重合体(B−1)の固有複屈折が負であり、
前記樹脂(A)が、正の固有複屈折を有する重合体(B−2)をさらに含む請求項2に記載の光学フィルム。 - 前記樹脂(A)の固有複屈折が負であり、
正の固有複屈折を有する樹脂(C)からなる層をさらに有し、
前記樹脂(A)からなる層と、前記樹脂(C)からなる層とを含む積層構造を有する請求項2に記載の光学フィルム。 - 前記樹脂(C)が、正の固有複屈折を有する重合体(B−2)を含む請求項4に記載の光学フィルム。
- 前記式(2)により示される構成単位が、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドンおよびN−ビニル−ω−ヘプタラクタムから選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構成単位である請求項2に記載の光学フィルム。
- 前記重合体(B−2)が、(メタ)アクリル重合体、ポリシクロオレフィンおよびセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項3または5に記載の光学フィルム。
- 前記重合体(B−2)が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体である請求項7に記載の光学フィルム。
- 前記環構造が、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の光学フィルム。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルムを備える画像表示装置。
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JP2012066538A (ja) * | 2010-09-27 | 2012-04-05 | Fujifilm Corp | 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 |
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