JP2010054750A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

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宏和 丹羽
Tadayoshi Ukamura
忠慶 宇賀村
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Abstract

【課題】画像表示装置、特にVA(垂直配向)モードの液晶表示装置に好適となるNZ係数が所定の範囲にある位相差フィルムを、延伸時におけるフィルムの破断を抑制しながら安定して得ることができる位相差フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムを第1の方向に延伸した後に、第1の方向に対して略垂直の第2の方向に延伸することにより、樹脂フィルムに位相差を付与する方法であって、第1の方向への延伸を、延伸後の樹脂フィルムのNZ係数が1.2以上1.5以下となり、厚さ100μmあたりの面内位相差Reが30nm以上250nm以下となるように行い、第2の方向への延伸を、延伸後の樹脂フィルムのNZ係数が2以上4以下となるように行う方法とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、延伸により熱可塑性樹脂フィルムに位相差を付与して位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造方法に関する。
熱可塑性樹脂フィルムを延伸して得た延伸フィルムが、画像表示分野において幅広く使用されている。この延伸フィルム(光学用延伸フィルム)は、延伸により生じた高分子鎖の配向に基づいて、様々な光学特性を示す。光学用延伸フィルムの一種に、高分子鎖の配向により生じる複屈折を利用した位相差フィルムがある。位相差フィルムは、液晶表示装置(LCD)における色調補償、視野角補償に広く用いられている。
液晶表示モードの一つにVA(垂直配向)モードがあり、VAモードでは、暗状態における光漏れの少ない、高コントラストの画像表示を実現できる。しかし、液晶セルの光学的な特性上、IPS(インプレーンスイッチング)モードに比べて視野角が狭く、位相差フィルムの配置による視野角の改善が試みられている。
VAモードの液晶セルにおける画面に垂直な方向(厚さ方向)の屈折率は、面内方向の屈折率よりも大きい。このため、VAモードにおける視野角の改善には、厚さ方向の屈折率が面内方向の屈折率よりも小さい位相差フィルムが必要となる。しかし、厚さ方向の屈折率が単に小さければよいのではなく、高コントラストの画像表示を保ったまま視野角を改善するには、位相差フィルムにおける面内位相差と厚さ方向の位相差とのバランスが重要である。具体的には、上記バランスの指標となるNZ係数にして2以上4以下の位相差フィルムが、VAモードの液晶セルに好適である。
NZ係数は、位相差フィルム(樹脂フィルム)の面内における遅相軸の屈折率をnx、進相軸の屈折率をnyとし、フィルムの厚さ方向の屈折率をnzとして、式{NZ=(nx−nz)/(nx−ny)}により与えられる。この式を、フィルムの面内位相差Re(Re=(nx−ny)×d:dはフィルムの厚さ)および厚さ方向の位相差Rth(Rth={(nx+ny)/2−nz}×d)を用いて表現すると、NZ係数=Rth/Re+0.5となる。なお、本明細書における面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthは、特に記載がない場合においても、ともに、波長589nmの光に対する、フィルムの厚さ100μmあたりの値(d=100μmの値)とする。
ところで、(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有するアクリル樹脂であって、主鎖に環構造を有する樹脂を主成分とする位相差フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この位相差フィルムは、(メタ)アクリル酸エステル単位に基づく低い光弾性率と、環構造に由来する高い耐熱性および優れた位相差特性から、画像表示装置への使用に好適である。
しかし、アクリル樹脂は、位相差フィルムとして一般的に用いられる他の熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂など、に比べて延伸による位相差が発現しにくく、十分な位相差を発現させるためには、より過酷な条件下での延伸が必要となる。特に、アクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂フィルムに対して二段階の延伸により位相差を付与する場合、十分な位相差特性を得ようとすると、二段階目の延伸時にフィルムの破断が生じやすい。
特開2008−9378号公報
本発明は、二段階の延伸により熱可塑性樹脂フィルムに位相差を付与する工程を含む、位相差フィルムの製造方法であって、NZ係数が2以上4以下の範囲にある位相差フィルムを、延伸時におけるフィルムの破断を抑制しながら安定して得ることができる製造方法の提供を目的とする。
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムを第1の方向に延伸した後に、前記第1の方向に対して略垂直の第2の方向に延伸することにより、前記樹脂フィルムに位相差を付与する位相差フィルムの製造方法であって、前記第1の方向への延伸を、延伸後の前記樹脂フィルムのNZ係数が1.2以上1.5以下、面内位相差Reが30nm以上250nm以下となるように行い、前記第2の方向への延伸を、延伸後の前記樹脂フィルムのNZ係数が2以上4以下となるように行う方法である。
ただし、NZ係数は、樹脂フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthから、式(NZ係数=Rth/Re+0.5)により与えられる値であり、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthは、波長589nmの光に対する、樹脂フィルムの厚さ100μmあたりの値である。
本発明の製造方法では、第1の方向への延伸を、当該延伸後の樹脂フィルムのNZ係数および面内位相差が所定の範囲となるように行うことで、後の第2の方向への延伸時においてフィルムの破断を抑制しながら十分なNZ係数を発現させることができ、NZ係数が2以上4以下の範囲にある位相差フィルムを安定して得ることができる。
(第1の延伸)
第1の方向への延伸(第1の延伸)は、延伸後の樹脂フィルムのNZ係数が1.2以上1.5以下となり、かつ当該フィルムの面内位相差Reが30nm以上250nm以下となるように行う。
第1の延伸を、延伸後の樹脂フィルムのNZ係数が1.2未満になるように行った場合、第1の延伸の後に行われる第2の方向への延伸(第2の延伸)によって、NZ係数が2以上4以下の樹脂フィルムを形成し難い。一方、第1の延伸を、延伸後の樹脂フィルムのNZ係数が1.5を超えるように行った場合、第2の延伸の際に樹脂フィルムが破断しやすくなる。
また、第1の延伸を、延伸後の面内位相差Reが30nm未満になるように行った場合、第2の延伸によってNZ係数が2以上4以下の樹脂フィルムを形成し難い。一方、第1の延伸を、延伸後の面内位相差Reが250nmを超えるように行った場合、第2の延伸の際に樹脂フィルムが破断しやすくなる。
第1の延伸の具体的な方法は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。延伸後の樹脂フィルムのNZ係数および面内位相差Reが上記範囲となるように樹脂フィルムを延伸するためには、延伸温度、延伸倍率および延伸速度を制御すればよい。
第1の延伸の延伸温度は特に限定されないが、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)を基準として、例えば、(Tg+5)℃以上(Tg+30)℃以下であり、(Tg+8)℃以上(Tg+20)℃以下が好ましい。延伸温度が低すぎると、樹脂フィルム中の分子の配向が強くなり、延伸後の面内位相差Reが250nmを超えて、第2の延伸の際に樹脂フィルムが破断しやすくなる。また、樹脂フィルムが均一に延伸されず、フィルム表面に曇りや筋が発生して、位相差フィルムとしての使用が困難となる。一方、延伸温度が高すぎると、樹脂フィルム中の分子の配向が弱く、延伸後の面内位相差Reが30nmに達しない。この場合、第2の延伸後も十分な分子の配向が達成されず、第2の延伸後のフィルムのNZ係数が2以上4以下とならない。
第1の延伸の延伸倍率は特に限定されないが、例えば、1.1倍以上3倍以下であり、1.8倍以上2.8倍以下が好ましい。延伸倍率が高すぎると、樹脂フィルム中の分子の配向が強くなり、延伸後の面内位相差Reが250nmを超えて、第2の延伸の際に樹脂フィルムが破断しやすくなる。一方、延伸倍率が低すぎると、樹脂フィルム中の分子の配向が弱く、延伸後の面内位相差Reが30nmに達しない。この場合、第2の延伸後も十分な分子の配向が達成されず、第2の延伸後のフィルムのNZ係数が2以上4以下とならない。
延伸速度を低くすることで、より低い延伸温度での延伸が可能となる。また、より高い延伸倍率での延伸が可能となる。一方、延伸速度を高くすることで、より高い延伸温度での延伸が可能となる。また、より低い延伸倍率での延伸が可能となる。
延伸の温度、倍率および速度の制御により、樹脂フィルムの厚さ、長さおよび幅を制御できるとともに、そのNZ係数を目標値に到達させることができるが、第1の延伸後の面内位相差ReおよびNZ係数が上記範囲を外れる場合には、第2の延伸の際に樹脂フィルムが破断する可能性が高まるか、あるいは第2の延伸後のNZ係数が目標値に達しない。
第1の延伸の方向は特に限定されず、例えば樹脂フィルムのMD方向である。帯状の樹脂フィルムの場合、通常その長さ方向がMD方向となる。
(第2の延伸)
第2の方向への延伸(第2の延伸)は、第1の延伸の後に、第2の延伸後の樹脂フィルムのNZ係数が2以上4以下となるように行う。第2の延伸の方向は、第1の延伸の方向に対して略垂直の方向であり、例えば樹脂フィルムのTD方向である。帯状の樹脂フィルムの場合、通常その幅方向がTD方向となる。
即ち、本発明の製造方法では、第1の方向が帯状の樹脂フィルムの長さ方向であり、第2の方向が帯状の樹脂フィルムの幅方向であってもよい。
なお、「略垂直」とは、垂直からの多少の角度のずれを許容する趣旨である。角度のずれは、例えば5度以内であり、3度以内が好ましく、1度以内がより好ましい。同様に、後述する「略平行」とは、平行からの多少の角度のずれを許容する趣旨である。角度のずれは、例えば5度以内であり、3度以内が好ましく、1度以内がより好ましい。
第2の延伸の具体的な方法は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。延伸後の樹脂フィルムのNZ係数が上記範囲となるように樹脂フィルムを延伸するためには、例えば、延伸温度、延伸倍率および延伸速度を制御すればよい。
第2の延伸の延伸温度は特に限定されないが、樹脂フィルムのTgを基準として、例えば、Tg以上(Tg+30)℃以下であり、Tg以上(Tg+20)℃以下が好ましい。延伸温度が低すぎると、延伸後のフィルムにおけるNZ係数が不均一となる。一方、延伸温度が高すぎると、延伸後のフィルムのNZ係数が上記範囲に入らない(目標値に達しない)。
第2の延伸の延伸倍率は特に限定されないが、例えば、1.1倍以上4倍以下であり、2倍以上3倍以下が好ましい。延伸倍率が高すぎるあるいは低すぎると、延伸後のフィルムのNZ係数が上記範囲に入らない。
延伸速度については、第1の延伸と同様である。
第2の延伸後のフィルムの厚さは、20〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
なお、樹脂フィルムを延伸する際には、実際の延伸に引き続いて、延伸したフィルムをわずかに収縮させたり、延伸したフィルムに対して加熱・冷却などの処理を実施したりすることがある。このような処置は、延伸後のフィルム物性の微調整あるいは延伸により発現したフィルム物性の経時変化の抑制を目的として行われる。このような処置を行った場合には、処置後のNZ係数およびReを、延伸後の樹脂フィルムのNZ係数および面内位相差Reとすればよい。
本発明の製造方法では、第1および第2の延伸によって樹脂フィルムに位相差が付与されることで当該樹脂フィルムは位相差フィルムとなるが、得られた位相差フィルムの遅相軸の方向は、後の時点で行われる第2の延伸の方向に影響を受けやすい。このため、第2の延伸の方向は、目的とする位相差フィルムの遅相軸の方向と略平行であることが好ましい。
第1および第2の延伸の方向は、樹脂フィルムの面内方向である。
第1および第2の延伸は、公知の手法により実施できる。
(熱可塑性樹脂フィルム)
延伸する熱可塑性樹脂フィルムの構成は、熱可塑性樹脂を主成分として含む限り特に限定されない。
主成分とは、樹脂フィルムにおける含有率が最大の成分のことであり、当該含有率は、通常50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
熱可塑性樹脂は、例えば、位相差フィルムとして一般的に用いられる樹脂であり、その具体例は、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、セルロースアシレート樹脂、アクリル樹脂である。
なかでも熱可塑性樹脂がアクリル樹脂である場合、即ち熱可塑性樹脂フィルムがアクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂フィルムである場合に、本発明の効果はより顕著となる。上述したようにアクリル樹脂は延伸による位相差が発現しにくく、十分な位相差を発現させるためには過酷な条件下での延伸が必要であり、延伸時に破断が生じやすいからである。
また、熱可塑性樹脂フィルムがアクリル樹脂フィルムである場合、高い透明性、優れた機械的特性、低い光弾性率など、アクリル樹脂に由来する優れた特性を有する位相差フィルムとなる。
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を構成単位として有する樹脂のことである。アクリル樹脂の全構成単位における、(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位の割合の合計は、通常50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの単量体に由来する構成単位である。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。また、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、(メタ)アクリル酸メチル単位を有することが好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、例えば1000〜300000の範囲であり、5000〜250000の範囲が好ましく、10000〜200000の範囲がより好ましく、50000〜200000の範囲がさらに好ましい。
アクリル樹脂は主鎖に環構造を有していてもよく、この場合、得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)が向上する。アクリル樹脂が主鎖に環構造を有することにより、位相差フィルムのTgは、例えば110℃以上となり、環構造の種類ならびにアクリル樹脂における環構造の含有率によっては、120℃以上さらには130℃以上となる。このように高いTgを有する位相差フィルムは、画像表示装置における光源などの発熱部近傍への配置が容易となるなど、光学部材としての用途に好適である。
環構造の種類は特に限定されないが、例えば、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、N−置換マレイミド構造およびラクトン環構造から選ばれる少なくとも1種である。
位相差フィルムのTgがより向上することから、環構造は、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造およびラクトン環構造から選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、さらに光学特性に優れる位相差フィルムが得られることから、環構造がラクトン環構造であることがより好ましい。即ち、熱可塑性樹脂フィルムは、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂フィルムであることがより好ましい。
以下の式(1)に、グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造を示す。
Figure 2010054750
上記式(1)におけるR1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は、酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子のときR3は存在せず、X1が窒素原子のとき、R3は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
1が窒素原子のとき、式(1)により示される環構造はグルタルイミド構造となる。X1が酸素原子のとき、式(1)により示される環構造は無水グルタル酸構造となる。
以下の式(2)に、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造を示す。
Figure 2010054750
上記式(2)におけるR4およびR5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は、酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子のときR6は存在せず、X2が窒素原子のとき、R6は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
2が窒素原子のとき、式(2)により示される環構造はN−置換マレイミド構造となる。X2が酸素原子のとき、式(2)により示される環構造は無水マレイン酸構造となる。
ラクトン環構造は特に限定されず、例えば4〜8員環であってもよいが、環構造としての安定性に優れることから、5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造は、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造であるが、前駆体(前駆体を環化縮合反応させることで、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂が得られる)の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応により、高いラクトン環含有率を有するアクリル樹脂が得られること、メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から、以下の式(3)により示される構造が好ましい。
Figure 2010054750
上記式(3)において、R7、R8およびR9は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
式(3)における有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
ラクトン環構造は、分子鎖内に水酸基およびエステル基を有する前駆体を脱アルコール環化縮合反応させて形成できる。式(3)に示すラクトン環は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)との共重合体を形成した後、当該共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させることで形成できる。なお、このとき、R7はH、R8およびR9はCH3である。
アクリル樹脂が主鎖に環構造を有する場合、当該樹脂における環構造の含有率は特に限定されないが、通常5〜90重量%であり、20〜90重量%が好ましい。当該含有率は、30〜90重量%、35〜90重量%、40〜80重量%および45〜75重量%になるほど、さらに好ましい。上記含有率が過小になると、アクリル樹脂が主鎖に環構造を有することに基づく効果が得られにくい。一方、上記含有率が過大になると、アクリル樹脂の成形性、ハンドリング性が低下する。
アクリル樹脂におけるラクトン環構造の含有率は、ダイナミックTG法により、以下のようにして求めることができる。最初に、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂に対してダイナミックTG測定を実施し、150℃から300℃の間の重量減少率を測定して、得られた値を実測重量減少率(X)とする。150℃は、樹脂に残存する水酸基およびエステル基が環化縮合反応を開始する温度であり、300℃は、樹脂の熱分解が始まる温度である。これとは別に、前駆体である重合体に含まれる全ての水酸基が脱アルコール反応を起こしてラクトン環が形成されたと仮定して、その反応による重量減少率(即ち、前駆体の脱アルコール環化縮合反応率が100%であったと仮定した重量減少率)を算出し、理論重量減少率(Y)とする。具体的には、理論重量減少率(Y)は、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率から求めることができる。なお、前駆体の組成は、必要に応じて、測定対象であるアクリル樹脂の組成から導くことが可能である。次に、式[1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))]×100(%)により、アクリル樹脂の脱アルコール反応率を求める。測定対象であるアクリル樹脂において、求めた脱アルコール反応率の分だけラクトン環構造が形成されていると考えられる。そこで、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率に、求めた脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環構造の重量に換算することで、アクリル樹脂におけるラクトン環構造の含有率を求めることができる。
一例として、後述の製造例1で作製したアクリル樹脂(A)の脱アルコール反応率を求める。脱アルコール反応により生成するメタノールの分子量が32であり、前駆体(MHMAとMMAとの共重合体)における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位であるMHMA単位の含有率は30.2重量%であり、MHMA単位の単量体換算の分子量が116であることから、上記樹脂(A)の理論重量減少率(Y)は、(32/116)×30.2=8.33重量%となる。一方、上記樹脂(A)の実測重量減少率(X)は0.21重量%であったので、脱アルコール反応率は97.6%(=(1−0.21/8.33)×100(%))となる。
次に、上記樹脂(A)におけるラクトン環構造の含有率を求める。前駆体におけるMHMA単位の含有率が30.2重量%、MHMA単位の単量体換算の分子量が116、脱アルコール反応率が97.6%、ラクトン環構造の式量が170であることから、上記樹脂(A)におけるラクトン環構造の含有率は、43.2%(=30.2×0.976×170/116)となる。
アクリル樹脂における環構造の含有率は、赤外分光、近赤外分光、ラマン分光、核磁気共鳴、熱分解ガスクロマトグラフィまたは質量分析などの各種の分析手法を、当該樹脂が含有する環構造の種類に応じて適宜適用して求めてもよい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位以外の構成単位を有していてもよい。このような構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、などの単量体に由来する構成単位である。アクリル樹脂は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
アクリル樹脂は、紫外線吸収能を有する構成単位(UVA単位)を有していてもよい。この場合、得られた位相差フィルムの紫外線吸収能が向上する。
主鎖に環構造を有するアクリル樹脂は、公知の方法により形成できる。主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報に記載の方法による製造が可能である。主鎖にN−置換マレイミド構造を有するアクリル樹脂、無水グルタル酸構造を有するアクリル樹脂、およびグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂は、例えば、特開2007−31537号公報、国際公開第2007/26659号パンフレット、国際公開第2005/108438号パンフレットに記載の方法により製造できる。主鎖に無水マレイン酸構造を有するアクリル樹脂は、例えば、特開昭57−153008号公報に記載の方法により製造できる。
一例として、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂の形成方法を説明する。
ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、水酸基とエステル基とを分子鎖内に有する重合体(前駆体)(a)を任意の触媒存在下で加熱し、脱アルコールを伴うラクトン環化縮合反応を進行させて形成できる。
重合体(a)は、例えば、以下の式(4)に示される単量体を含む単量体群の重合により形成できる。
Figure 2010054750
上記式(4)において、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子または式(3)における有機残基と同様の基である。
式(4)により示される単量体は、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなどである。なかでも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、高い透明性および耐熱性を有する位相差フィルムが得られることから、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)が特に好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、上記式(4)により示される単量体を2種以上含んでいてもよい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、上記式(4)により示される単量体以外の単量体を含んでいてもよい。この単量体は、式(4)により示される単量体と共重合できる限り特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルである。
ここで(メタ)アクリル酸エステルは、式(4)に示される単量体以外の単量体であって、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などである。なかでも、高い透明性および耐熱性を有する位相差フィルムが得られることから、メタクリル酸メチル(MMA)が特に好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、これら(メタ)アクリル酸エステルを2種以上含んでいてもよい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、その他、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの単量体を、1種または2種以上含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂以外の任意の添加剤、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなど、を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂フィルムを形成する方法は特に限定されず、例えば、キャスト成形、溶融押出成形、プレス成形などの公知の手法を用いればよい。
[位相差フィルム]
本発明の製造方法により得た位相差フィルムは、第1および第2の延伸により変化したもしくは付与された構成、特性を除き、基本的に延伸前の熱可塑性樹脂フィルムと同様の構成、特性を有する。もちろん、第1および第2の延伸以外の工程が実施された場合には、当該工程の実施に基づくフィルムの構成および/または特性の変化が生じることがある。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムにおけるNZ係数以外の光学特性は、延伸による熱可塑性樹脂の配向の状態に基づく。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムの用途は特に限定されず、従来の位相差フィルムと同様の用途(例えば、LCDなどの画像表示装置)への使用が可能であるが、そのNZ係数が2以上4以下であることから、VAモードの液晶セルを備えるLCDへの使用に好適である。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
本実施例では、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂からなる樹脂フィルムを延伸して位相差フィルムを作製し、作製した位相差フィルムの光学特性(NZ係数ならびに面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rth)を評価した。
最初に、本実施例において作製したアクリル樹脂および位相差フィルムの評価方法を示す。
[ガラス転移温度]
アクリル樹脂および位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガスフロー(50ml/分)下、約10mgの試料を常温から200℃まで昇温(昇温速度10℃/分)して得られたDSC曲線から、中点法により求めた。
[ラクトン環含有率]
アクリル樹脂のラクトン環含有率は、上述した計算方法により求めた。当該方法に用いるパラメータである実測重量減少率(X)は、ダイナミックTG測定により、以下のように求めた。
作製したアクリル樹脂のペレットまたはペレットとする前の重合溶液を、テトラヒドロフラン(THF)に溶解させた後(あるいはTHFで希釈した後)、過剰のヘキサンまたはメタノールを用いて樹脂を沈殿させた。次に、沈殿物を真空乾燥(圧力1.33hPa、80℃、3時間以上)して揮発成分を除去し、得られた白色固体状の樹脂に対して、以下の測定条件下でダイナミックTG測定を行い、その実測重量減少率(X)を求めた。
測定装置:リガク製、Thermo Plus 2 TG-8120 Dynamic TG
試料重量:5〜10mg
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素フロー(200ml/分)下
測定方法:階段状等温制御法(60〜500℃の間で、重量減少速度値を0.005%/秒以下として制御)
[アクリル樹脂の組成]
アクリル樹脂の組成(アクリル樹脂における各構成単位の含有率)は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC17A)により評価した。
[重量平均分子量]
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(システム:東ソー社製、カラム:TSK-Gel Super HZM-M、溶離液:クロロホルム、流量:0.6mL/分、カラム温度:40℃)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。
[メルトフローレート(MFR)]
アクリル樹脂のMFRは、JIS K6874に準拠し、試験温度を240℃、荷重を10kgとして求めた。
[光学特性]
位相差フィルムの屈折率異方性(NZ係数、面内位相差Re、厚さ方向の位相差Rth)は、位相差測定装置(王子計測機器製、KOBRA−WR)を用いて評価した。測定波長は589nmとし、厚さ方向の位相差Rthを測定する際には、位相差フィルムの遅相軸を傾斜軸としてフィルムを40度傾斜させた。
位相差フィルムの全光線透過率は濁度計(日本電色工業製、NDH−1001DP)により求めた。
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた内容積30Lの反応釜に、7000gのメタクリル酸メチル(MMA)、3000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)および重合溶媒として12000gのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として6.0gのt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、100gのトルエンに上記t−アミルパーオキシイソノナノエート12.0gを溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。重合率は92.9%、重合により形成したアクリル樹脂におけるMHMA単位の含有率は30.2重量%であった。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、20gのリン酸オクチル/リン酸ジオクチル混合物(堺化学製、Phoslex A-8)を加え、約80〜105℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた。次に、メチルエチルケトン4000gを加えて重合溶液を希釈した後に、240℃のオートクレーブ中、加圧下(ゲージ圧にして最大2MPa)において、環化縮合反応をさらに1.5時間進行させた。
次に、得られた重合溶液をベント付きスクリュー二軸押出機に導入し、さらに26.5gのオクチル酸亜鉛(ニッカオクチックス亜鉛18%、日本化学産業製)、4.4gの酸化防止剤(IRGANOX1010(チバスペシャリティケミカル製)2.2g+アデカスタブAO−412S(旭電化工業製)2.2g)および61.6gのトルエンの混合液を押出機に導入して、環化縮合反応のさらなる進行と揮発成分の脱揮とを行った。なお、押出機への混合液の導入速度は、20g/hとした。
次に、押出機の先端から排出された樹脂を水浴で冷却し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A)からなる透明なペレットを得た。得られたペレットに対してダイナミックTGの測定を行ったところ、実測重量減少率(X)は0.21重量%であった。また、樹脂(A)の重量平均分子量は11万であり、MFRは8.7g/10分、Tgは142℃であった。
次に、樹脂(A)のペレットを単軸押出機(シリンダー径20mm、温度280℃)およびコートハンガー型ダイ(幅150mm、温度290℃)により押出成形して、樹脂(A)からなる厚さ約400μmのアクリル樹脂フィルムを得た。
得られたフィルムの光学特性を評価したところ、面内位相差Reは0.3nm、厚さ方向の位相差Rthは0.5nm、全光線透過率は92%であった。また、得られたフィルムのTgは142℃であった。
(実施例1)
製造例1で作製したフィルムを、縦横ともに107mmの正方形に切り出し、延伸装置(東洋精機製作所製、コーナーストレッチ式二軸延伸試験装置X6−S)のチャックにセットした。チャック間の距離は90mmとした。
次に、セットしたフィルムを延伸温度である155℃で3分間予熱した後、当該フィルムのMD方向(押出成形の方向)の長さが2.6倍になるように、10秒間でチャックを移動させた。その際、TD方向(フィルム面内における押出成形の方向とは垂直な方向)にはフィルムが収縮しないようにした。チャックの移動終了後、20秒間静置して応力を緩和させた後にフィルムをチャックから取り外し、延伸倍率が2.6倍である一段階目の延伸(第1の延伸)を終了した。得られた延伸フィルムの厚さおよび光学特性を評価したところ、厚さは168μm、面内位相差Reは52nm、厚さ方向の位相差Rthは42nm、NZ係数は1.3であった。このフィルムの遅相軸は、一段階目の延伸の方向とほぼ同じであった。
次に、得られた延伸フィルムを、縦横ともに97mmの正方形に切り出し、上記延伸装置のチャックにセットした。チャック間の距離は80mmとした。
次に、セットしたフィルムを延伸温度である148℃で3分間予熱した後、当該フィルムのTD方向の長さが2.0倍になるように、60秒でチャックを移動させた。その際、MD方向にはフィルムが収縮しないようにした。チャックの移動終了後、20秒間静置して応力を緩和させた後にフィルムをチャックから取り外し、延伸倍率が2.0倍である二段階目の延伸(第2の延伸)を終了した。得られた二軸性延伸フィルムの厚さおよび光学特性を評価したところ、厚さは66μm、面内位相差Reは103nm、厚さ方向の位相差Rthは223nm、NZ係数は2.7であった。また、当該フィルムのTgは142℃であり、その遅相軸は、二段階目の延伸の方向とほぼ同じであった。
(実施例2)
二段階目の延伸倍率を2.2倍とした以外は実施例1と同様にして、二軸性延伸フィルムを得た。得られた二軸性延伸フィルムの厚さおよび光学特性を評価したところ、厚さは61μm、面内位相差Reは126nm、厚さ方向の位相差Rthは208nm、NZ係数は2.2であった。また、当該フィルムのTgは142℃であり、その遅相軸は、二段階目の延伸の方向とほぼ同じであった。
(比較例1)
一段階目の延伸温度を165℃とした以外は実施例2と同様にして、二軸性延伸フィルムを得た。
一段階目の延伸により得られた延伸フィルムの厚さは160μm、面内位相差Reは14nm、厚さ方向の位相差Rthは11nm、NZ係数は1.3であった。
二段階目の延伸後に得られた二軸性延伸フィルムの厚さは63μm、面内位相差Reは183nm、厚さ方向の位相差Rthは203nm、NZ係数は1.6であった。また、当該フィルムのTgは142℃であり、その遅相軸は、二段階目の延伸の方向とほぼ同じであった。
(比較例2)
製造例1で作製したフィルムを97mm×150mmの長方形に切り出し、上記延伸装置のチャックにセットした。チャック間の距離は80mmとした。
次に、セットしたフィルムを延伸温度である155℃で3分間予熱した後、当該フィルムのMD方向の長さが2.6倍になるように、10秒間でチャックを移動させた。その際、TD方向にフィルムが自由に収縮できるようにした。チャックの移動終了後、20秒間静置して応力を緩和させた後にフィルムをチャックから取り外し、延伸倍率が2.6倍である一段階目の延伸(第1の延伸)を終了した。得られた延伸フィルムの厚さおよび光学特性を評価したところ、厚さは281μm、面内位相差Reは43nm、厚さ方向の位相差Rthは22nm、NZ係数は1.0であった。このフィルムの遅相軸は、一段階目の延伸の方向とほぼ同じであった。
次に、得られた延伸フィルムを、縦横ともに97mmの正方形に切り出し、上記延伸装置のチャックにセットした。チャック間の距離は80mmとした。
次に、セットしたフィルムを延伸温度である148℃で3分間予熱した後、当該フィルムのTD方向の長さが2.2倍になるように、60秒でチャックを移動させた。その際、MD方向にはフィルムが収縮しないようにした。チャックの移動終了後、20秒間静置して応力を緩和させた後にフィルムをチャックから取り外し、延伸倍率が2.2倍である二段階目の延伸(第2の延伸)を終了した。得られた二軸性延伸フィルムの厚さおよび光学特性を評価したところ、厚さは99μm、面内位相差Reは153nm、厚さ方向の位相差Rthは199nm、NZ係数は1.8であった。また、当該フィルムのTgは142℃であり、その遅相軸は、二段階目の延伸の方向とほぼ同じであった。
(比較例3)
一段階目の延伸の延伸温度を148℃、延伸倍率を2.8倍とした以外は実施例1と同様にして、二軸性延伸フィルムの作製を試みた。しかし、二段階目の延伸時にフィルムの破断が生じ、二軸性延伸フィルムが得られなかった。
一段階目の延伸により得られた延伸フィルムの厚さは152μm、面内位相差Reは267nm、厚さ方向の位相差Rthは198nm、NZ係数は1.3であった。
(比較例4)
比較例4では、特願2008−9378の実施例10に相当する二軸性延伸フィルムを作製した。当該実施例に従った二軸性延伸フィルムの作製の途中、一段階目の延伸により得られた延伸フィルムの面内位相差は260nm、NZ係数は1.0であった。この延伸フィルムに対して、上記実施例10に従った二段階目の延伸を行ったところ、およそ3回に2回の割合でフィルムの破断が生じた。一段階目の延伸の温度、倍率および速度の兼ね合いによって面内位相差Reが250nmを超え、2段階目の延伸の際にフィルムが破断する可能性が高まったと考えられる。
本発明によればNZ係数が2以上4以下の範囲にある位相差フィルムを、延伸時におけるフィルムの破断を抑制しながら安定して得ることができる。
本発明の製造方法により得た位相差フィルムは、LCDをはじめとする画像表示装置に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムを第1の方向に延伸した後に、前記第1の方向に対して略垂直の第2の方向に延伸することにより、前記樹脂フィルムに位相差を付与する、位相差フィルムの製造方法であって、
    前記第1の方向への延伸を、延伸後の前記樹脂フィルムのNZ係数が1.2以上1.5以下、面内位相差Reが30nm以上250nm以下となるように行い、
    前記第2の方向への延伸を、延伸後の前記樹脂フィルムのNZ係数が2以上4以下となるように行う、位相差フィルムの製造方法。
    ただし、NZ係数は、樹脂フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthから、式(NZ係数=Rth/Re+0.5)により与えられる値であり、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthは、波長589nmの光に対する、樹脂フィルムの厚さ100μmあたりの値である。
  2. 前記第1の方向が、帯状の前記樹脂フィルムの長さ方向であり、
    前記第2の方向が、帯状の前記樹脂フィルムの幅方向である請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. 前記樹脂フィルムが、アクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂フィルムである請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 前記アクリル樹脂が、主鎖に環構造を有する請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記環構造が、ラクトン環構造である請求項4に記載の位相差フィルムの製造方法。
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