JP6920921B2 - ナノセルロース含有樹脂組成物 - Google Patents
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Description
[1]
樹脂(A)及びナノセルロース(B)を含む組成物であって、樹脂(A)が環構造を1質量%以上有するアクリル樹脂(A1)を含む組成物。
[2]
樹脂(A)及びナノセルロース(B)を含む組成物であって、樹脂(A)が、少なくともラクトン環及び/又はマレイミド構造(特に少なくともラクトン環)を含む環構造を有するアクリル樹脂(A1)を含む組成物。
[3]
樹脂(A)及びナノセルロース(B)を含む組成物であって、樹脂(A)が、環構造を有するアクリル樹脂(A1)を含み、ナノセルロース(B)の割合が樹脂(A)100質量部に対して10質量部以下である組成物。
[4]
樹脂(A)全体に対するアクリル樹脂(A1)の割合が50質量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
ナノセルロース(B)が、セルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタルから選択された少なくとも1種を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
アクリル樹脂(A1)が、ラクトン環及び/又はマレイミド構造(特に、ラクトン環)を含む環構造を5〜60質量%含み、
ナノセルロース(B)が、セルロースナノファイバーを含み、
ナノセルロース(B)の割合が、樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
厚み100μmの未延伸フィルムとしたときの50μm平面圧子を用いて測定されたユニバーサル硬度が、4N/mm2以上である[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]
厚み100μmの未延伸フィルムとしたときの内部ヘイズが0.5以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
[1]〜[8]のいずれかに記載の組成物で形成された(又は組成物を含む)成形体。
[10]
フィルム(例えば、光学フィルム)である[9]記載の成形体。
このような組成物では、樹脂成分としての環構造を有するアクリル樹脂とナノセルロースとの組み合わせにより、優れた物性(例えば、高強度、高硬度、ハードコート性、低熱線膨張係数、良好な寸法安定性など)を実現しうる。
特に、このような優れた物性は、意外なことに、ナノセルロースの含有割合が小さくても、実現しやすい。
また、このような組成物では、ナノセルロースを含んでいても、透明性や耐熱性を損なうことがない。そのため、透明性や耐熱性を維持しつつ、上記のような物性を実現しうる。
本発明の組成物(樹脂組成物)は、樹脂(A)とナノセルロース(B)とを含む。
樹脂(A)は、少なくとも環構造を有するアクリル樹脂(以下、アクリル樹脂(A1)などという)を含む。
[アクリル樹脂(A1)]
アクリル樹脂(A1)を構成するアクリル樹脂は、通常、(メタ)アクリル酸エステル単位[(メタ)アクリル酸エステル由来の単位(構造単位)]を有していてもよい。
アクリル樹脂(A1)は、環構造(環状構造)を有する。この環構造は、通常、アクリル樹脂(ポリマー鎖)の主鎖に有する。
炭化水素基としては、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香族基などが挙げられる。なお、炭化水素基は、さらにハロゲン等の置換基を有していてもよい。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基{例えば、アルキル基[例えば、C1−6直鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、C1−6分岐アルキル基(例えば、イソプロピル基等)等のC1−6アルキル基等]等}、脂環族基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3−20シクロアルキル基等)、芳香族基{例えば、C6−20芳香族基[例えば、C7−20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、C6−20アリール基(例えば、フェニル基等)]}などが挙げられる。なお、炭化水素基は、さらにハロゲン等の置換基を有していてもよい。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−20アルキル基、エテニル基、プロペニル基などのC2−20不飽和脂肪族炭化水素基等)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6−20芳香族炭化水素基等)等が挙げられる。
前記炭化水素基は、酸素原子を含んでいてもよく、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。
ピロリジノン環構造は、基本骨格として5員環のアミド環構造(環状アミド構造)を有する。この環状アミド構造は、5員環のラクタム構造(γ―ラクタム構造)でもある。主鎖にピロリジノン環構造を有するとは、5員環であるピロリジノン環構造の基本骨格を構成する5つの原子のうち少なくとも1つの原子、典型的にはアミド結合(―N(R)CO−)を構成しない3つの炭素原子が当該重合体の主鎖に位置し、主鎖を構成することを意味する。
脂肪族基としては、例えば、C1−18アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のC1−18直鎖又は分岐アルキル基等)等が挙げられる。
脂環族基としては、例えば、C3−18シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等が挙げられる。
芳香族基としては、例えば、C6−20芳香族基[例えば、C6−20アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等)、C7−20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)等]が挙げられる。
また、R13としては、特に、水素原子、C1−18直鎖アルキル基(好ましくは、C1−12直鎖アルキル基、より好ましくは、C1−4直鎖アルキル基等)、C6−20アリール基(例えば、フェニル基等)、C3−18シクロアルキル基(好ましくは、C3−12シクロアルキル基、より好ましくは、C3−6シクロアルキル基等)等が好ましい。
また、R14の特に好ましい態様も、R13の特に好ましい態様と同じである。
また、R15の特に好ましい態様も、R13の特に好ましい態様と同じである。
環構造の含有割合(又はその上限値)は、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂(A1)中、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下などであってもよい。
一方、環構造の含有割合が大きくなりすぎると、脆くなったり、透明性低下、光弾性係数の絶対値増加などにつながる可能性がある。
このような観点から、環構造は、少なすぎず大きくなりすぎない、適度な含有割合としてもよい。
本発明では、アクリル樹脂(A1)とナノセルロースとを組み合わせることにより、アクリル樹脂(A1)における環構造の含有割合を格別大きくしなくても、このような物性を効率よく維持(物性の低下を抑制)しつつ、所望の物性を付与、向上又は改善しうる。
例えば、アクリル樹脂(A1)は、環構造を有しているため、通常、共重合体と言えるが、環構造の導入形態は、特に限定されず、環構造の種類等に応じて選択でき、ランダムに導入されていてもよく、ブロック、交互、グラフトなどのように導入されていてもよい。
樹脂(A)は、少なくともアクリル樹脂(A1)を含んでいればよく、アクリル樹脂(A1)のみで構成してもよく、必要に応じて、他の樹脂(アクリル樹脂(A1)の範疇に属さない樹脂)を含んでいてもよい。
なお、アクリルの特性(透明性などの光学特性、硬度など)を効率よく発現するという観点から、他の樹脂を含む場合でも、他の樹脂(特に、非アクリル系の他の樹脂)の割合は大きすぎないのが好ましい。
なお、アクリル樹脂(A1)が多い方が、環構造を有するアクリルの特性(耐熱性、硬度(強度)、耐溶剤性、表面硬度、光学特性、寸法安定性、形状安定性など)が発現しやすい点で好ましい。
本発明の組成物は、さらに、ナノセルロース(B)を含む。
ナノセルロース(B)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
LCNFは、リグニンを含有するCNF(リグニン被覆CNF)である。
また、ナノセルロース(結晶領域を有するナノセルロース)において、非晶領域の割合は、例えば、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下などであってもよく、1%以上、3%以上、5%以上などであってもよい。
本発明の組成物は、上記の通り、樹脂(A)とナノセルロース(B)とを少なくとも含む。
特に、透明性、低溶融粘度、低溶液粘度、低着色度(黄色味、YI)、熱安定性、脆くなりにくい等の点で、ナノセルロース(B)の割合を、比較的小さく[例えば、樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以下、さらには、5質量部以下、3質量部以下などに]してもよい。
硬度が大きい程、ハードコートの材料の選択肢が増える、用途によってはハードコート不要になる等の点で好ましい。
深度が小さい程、変形し難いため、ハードコートの材料の選択肢が増える、用途によってはハードコート不要になる等の点で好ましい。
硬度が大きい程、ハードコートの材料の選択肢が増える、用途によってはハードコート不要になる等の点で好ましい。
線膨張係数が小さいほど、ディスプレイやレンズなど使用環境化での変化が小さくなり、そりや光学的歪みが発生しにくいなどの点で好ましい。
また、光学異方性の組成物(光学異方性の発現)を想定する場合、組成物のCrは、その絶対値で20×10−11/Pa以上、好ましくは50×10−11/Pa以上、さらに好ましくは150×10−11/Pa以上、最も好ましくは300×10−11/Pa以上であってもよい。
本発明には、前記組成物で形成された(前記組成物を含む)成形体(成形品)が含まれる。
成形体は、発泡体(発泡成形体)であってもよい。
具体的な用途の例を挙げると、例えば、フィルム用途[例えば、保護フィルム(光学用保護フィルムなど)、光学フィルム(光学シート)など]、レンズ用途(光学レンズなど)、カバー用途(レンズカバーなど)、発泡体(発泡成形体)用途(例えば、緩衝材、保温・断熱材、制振材、防音材、シール材、パッキング材など)などの各種用途が挙げられる。
保護フィルムとしては、例えば、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、液晶表示装置用の偏光板に用いる偏光子保護フィルムなどが挙げられる。
光学フィルム(光学シート)としては、例えば、位相差フィルム、ゼロ位相差フィルム(面内、厚み方向位相差が限りなく小さい)、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルム、拡散板、導光体、位相差板、ゼロ位相差板、プリズムシートなどが挙げられる。
特に、成形体(フィルム)は、液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムであってもよい。フィルムは、通常、そのまま偏光子保護フィルムとして使用してもよい。
本発明は、前記フィルムを備えた偏光板も含有する。
すなわち、前記フィルムは、偏光子保護フィルムとして用いて、偏光板に使用することができる。
偏光板の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従ってよい。例えば、偏光子の少なくとも片面に、常法を用いて前記フィルムを貼り合わせることにより、偏光板を得ることができる。当該貼り合わせは、前記フィルムの偏光子に接合する側をアルカリ鹸化処理し、偏光子の少なくとも片面に完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を塗布した後、本発明のフィルムと偏光子とを貼り合わせることにより、好適に実施することができる。
また、偏光子の膜厚は、1〜80μm、1〜40μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。
本発明には、前記フィルムを備えた画像表示装置も含有する。このような画像表示装置において、本発明のフィルムの用途(機能)は特に限定されず、例えば、偏光板を備えた画像表示装置において、当該偏光板(偏光子保護フィルム)を構成してもよい。
本発明において、画像表示装置の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法に従ってよい。画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)等が好ましい。
重合反応時の反応率および重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC−2014)を用いて測定して求めた。
重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下の通りである。
システム:東ソー製GPCシステムHLC−8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム(東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ−L)
・分離カラム(東ソー製、TSKgel SuperHZM−M)2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム(東ソー製、TSKgel SuperH−RC)
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
ガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、Thermo plus EVO DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
メルトフローレートは、JIS K 7210 B法に準拠して、温度240℃、荷重10kgf(98N)で測定した。
まず、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。
1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)により求めた。
ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH―1001DP)を用いて、石英セルに1,2,3,4−テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中にフィルムを浸漬して測定し、100μmあたりの内部ヘイズ値として算出した。なお、フィルムは樹脂又は樹脂組成物のガラス転移温度+120〜130℃の範囲にて熱プレス成形して得られたフィルムを用いた。
内部ヘイズの測定で用いたフィルムの全光線透過率をヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH−1001DP)を用いて測定した。
マルテンス硬度は、樹脂又は樹脂組成物を熱プレス成形して得た未延伸フィルム(厚さ100μm)に対して、超微小硬度計(フィッシャーインストルメンツ社製、フィッシャースコープHM−2000)を用い、ISO−14577−1に準拠した方法により評価した。
評価は、未延伸フィルムをガラス基板に固定した状態で実施した。測定条件は、四角錐型のビッカース圧子(対面角a=136°)を使用;最大試験荷重3mN;荷重付加時のアプリケーション時間60秒;クリープ時間5秒;荷重減少時のアプリケーション時間20秒;測定温度室温;とし、3回測定した値を平均化して求めた。
ユニバーサル硬度は、樹脂又は樹脂組成物を熱プレス成形して得た未延伸フィルム(厚さ100μm)に対して、超微小硬度計(フィッシャーインストルメンツ社製、フィッシャースコープHM−2000)を用い、評価した。評価は、未延伸フィルムをガラス基板に固定した状態で実施した。測定条件は、平面圧子50μmを使用;最大試験荷重3mN;荷重付加時のアプリケーション時間60秒;クリープ時間5秒;荷重減少時のアプリケーション時間20秒;測定温度室温;とし、3回測定した値を平均化して求めた。また、測定時の最大変形量を深度(μm)とし、3回測定した値を平均化して求めた。
樹脂又は樹脂組成物の60〜100℃における線膨張係数は、熱機械測定装置(島津製作所社製、TMA−60)を用い、測定荷重5g、昇温速度5℃/minで、60℃から100℃に昇温する際の傾きとして求める。なお、測定用のサンプルは、樹脂又は樹脂組成物を熱プレス成形して得られた厚さ100μmのフィルム(未延伸フィルム)を5mm×20mmの大きさに切り出し、60℃で15時間の前処理を行った後、室温まで冷却することにより調製する。
樹脂又は樹脂組成物の引張弾性率は、引っ張り試験機(島津製作所社製オートグラフ「AG−1kNX」)を用い、ビデオ式伸び計により25mm間隔のマーク間の伸び量を引張り速度1mm/分で計測して算出した。測定用の試験片は、樹脂又は樹脂組成物を熱プレス成形して得られた厚さ100μmのフィルム(未延伸フィルム)を幅20mm長さ80mmで切り出して用いた。
樹脂又は樹脂組成物を熱プレス成形して得られた厚さ100μmのフィルム(未延伸フィルム)とし、60mm×20mmの長方形に切り出して試験片とした。試験片の短辺の一方(下端)に、1N/mm2以下の応力となるように重りを取り付け、これをアクリル系共重合体のガラス転移温度よりも7℃高い温度で定温乾燥機(アズワン社製、DOV−450A)にチャック間距離40mmでセットし、当該温度で約30分間保持して延伸を行った後、加熱を停止し、アクリル系共重合体のガラス転移温度よりも40℃低い温度となるまで約1℃/分の冷却速度で冷却した。その後、得られた延伸フィルムを定温乾燥機から取り出し、延伸後のフィルムの長さと厚さ、および重りの質量を測定し、延伸後のフィルムの面内位相差Reを測定した。さらに、応力が0.8N/mm2以下となるように4種類の質量の重りを用いて前記と同様にして延伸後のフィルムの長さと厚さ、および重りの質量を測定し、延伸後のフィルムの面内位相差Reを測定した。
きの値を応力光学係数(Cr)とした。なお、nxはフィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率を表し、nyはフィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内においてnxと垂直な方向)の屈折率を表し、σは延伸に対する応力(N/m2)を表す。
樹脂又は樹脂組成物の光弾性係数(Cd)の絶対値は、以下のようにして求めた。最初に、樹脂又は樹脂組成物を熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルム(未延伸フィルム)とした。次に、当該フィルムを幅7mmの長方形に切り出して試験片とした。次に、引張試験機ステージを設置した位相差フィルム・光学材料検査装置RETS−100(大塚電子製)に、切り出した試験片をチャック間距離30mmで装着し、23℃で試験片に伸長応力(σR)を印加しながら(チャック移動速度5mm/分)、波長590nmの光に対するその複屈折を測定した。測定した複屈折の絶対値(|Δn|)と試験片に印加した伸張応力(σR)との関係から、最小二乗法により傾き|Δn|/σRを求め、光弾性係数(Cd)を算出した(Cd=|Δn|/σRである)。
なお、Cdの算出には、伸張応力が2.5MPa≦σR≦10MPaの範囲のデータを用いた。|Δn|は、|Δn|=|nx−ny|である。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた内容積1000Lの反応釜に、204kgのメタクリル酸メチル(MMA)、51kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)および重合溶媒として249kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として281gのt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス570)を添加するとともに、5.4kgのトルエンに561gのt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス570)を溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂のペレットを得た。アクリル樹脂の重量平均分子量は147000、Tgは130℃であった。
製造例1で得られた樹脂ペレット(P1)をアセトンに溶解させ、20質量%のアセトン溶液を作成した。
また、CNF(第一工業製薬製、CNF N−04、固形分2.5質量%のメタノール分散体)をアセトンで希釈し、超音波で30分攪拌混合し、固形分1質量%の分散液を調整した。
次に、上記P1のアセトン溶液と、CNF分散液を、固形分としてP1:CNFが100:1(質量比)になるように混合し、その後超音波で30分攪拌し、CNF含有アクリル樹脂組成物のアセトン溶液を作成した。
この溶液から、真空乾燥機を用いて、真空下、200℃、30分間の条件にて溶媒を除去し、CNF含有アクリル樹脂組成物(A−1)を得た。
この組成物のガラス転移温度は125℃であった。
得られた樹脂組成物(A−1)を、250℃で熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルムを作成し、物性を測定した。なお、全光線透過率は90%であった。結果を表1に示す。
固形分としてP1:CNFを100:3(質量比)にした以外は、実施例1と同様にして、CNF含有アクリル樹脂組成物(A−2)を得た。
この組成物のガラス転移温度は124℃であった。
得られた樹脂組成物(A−2)を、250℃で熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルムを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
製造例1で得られた樹脂ペレット(P1)を250℃で熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルムを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(住友化学製、スミペックスEX)を230℃で熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルムを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
製造例1で得られた樹脂ペレット(P1)をPMMA(住友化学製、スミペックスEX)に変更し、熱プレス温度を230℃にした以外は、実施例1と同様にして、CNF含有アクリル樹脂組成物(A−3)を得た。
この組成物のガラス転移温度は106℃であった。
得られた樹脂組成物(A−3)を、250℃で熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルムを作成し、物性を測定した。なお、全光線透過率は89%であった。結果を表1に示す。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)32.8部、N−フェニルマレイミド(PMI)8.1部、N−シクロマレイミド(CHMI)1.8部、n−ドデシルメルカプタン(n−DM)0.01部、溶媒としてトルエン55部を仕込み、これに窒素を通じつつ100℃まで昇温させた。重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ製、カヤカルボンBIC−75、有効成分75%品)0.032部を加えると同時に、スチレン(St)2.25部、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ製、カヤカルボンBIC−75、有効成分75%品)0.032部を4時間かけて滴下しながら、100〜110℃で溶液重合を行い、さらに2.5時間かけて熟成を行った。得られた反応液を二軸押出機に導入し揮発分を除去し、主鎖にマレイミド環構造を有するアクリル樹脂(P2)のペレットを得た。
樹脂ペレット(P2)の重量平均分子量は236,000、ガラス転移温度は137℃、メタクリル酸メチル単位72%、N−フェニルマレイミド単位19%、N−シクロヘキシルマレイミド単位4%、スチレン単位5%であった。
樹脂ペレット(P1)に代えて樹脂ペレット(P2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、CNF含有アクリル樹脂組成物(A−4)を得た。この組成物のガラス転移温度は136℃であった。
得られた樹脂組成物(A−4)を、260℃で熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルムを作成し、物性を測定した。結果を表2に示す。
製造例2で得られた樹脂ペレット(P2)を260℃で熱プレス成形して、厚さ100μmのフィルムを作成し、物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にして、P1のアセトン溶液と、CNF分散液を、固形分としてP1:CNFが100:2(質量比)になるように混合し、その後超音波で30分攪拌し、CNF含有アクリル樹脂組成物のアセトン溶液を作成した。
上記溶液をアルミ基板上に敷いた後、50℃で乾燥後、真空下で80℃、12時間乾燥し、フィルムをアルミ基板から剥がしとり、100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの全光線透過率は91%、内部ヘイズは0.2であった。
特に、PMMAの結果と対比すると、環構造を有するアクリル樹脂とナノセルロースとを組み合わせることで、特異的に硬度を向上できることがわかった。
成形品の表面に使用する場合等においては、傷付きを防止できることが要求されるし、成形過程において、硬さが要求される場合もある(フィルム製膜中のラインでの傷つき、
硬化性樹脂との組み合わせにおけるハードコート性能の変動防止など)。
これらのことに鑑みれば、上記組成物は、ハードコート性を有するフィルムの基材(ベース)フィルムなどとしての要求にも耐えうるし、自身も高硬度であるため、成形品表面を構成する材(ハードコート性を有する基材)としての要求にも耐えうる、複合材料としての適用も可能である。
なお、環構造を有するアクリル樹脂とナノセルロースとを複合化したときの光学特性は、従来、全く知られておらず、上記によって、これらの組み合わせにより、光学特性に与える影響が明らかになった。
特に、内部ヘイズの上昇は、意外にも、PMMAと比べて環構造を有するアクリル樹脂においてより抑えられており、透明性の観点では、樹脂の中でも、環構造を有するアクリル樹脂が、ナノセルロースの組み合わせにおいて好適であることがわかる。
Claims (10)
- 樹脂(A)及びナノセルロース(B)を含む組成物であって、樹脂(A)が主鎖にマレイミド構造、グルタルイミド構造、ラクタム構造及びラクトン環構造から選択される1種又は2種以上の環構造を1質量%以上有するアクリル樹脂(A1)を含む組成物。
- 樹脂(A)及びナノセルロース(B)を含む組成物であって、樹脂(A)が、少なくとも主鎖にラクトン環を含む環構造を有するアクリル樹脂(A1)を含む組成物。
- 樹脂(A)及びナノセルロース(B)を含む組成物であって、樹脂(A)が、主鎖にマレイミド構造、グルタルイミド構造、ラクタム構造及びラクトン環構造から選択される1種又は2種以上の環構造を有するアクリル樹脂(A1)を含み、ナノセルロース(B)の割合が樹脂(A)100質量部に対して10質量部以下である組成物。
- 樹脂(A)全体に対するアクリル樹脂(A1)の割合が50質量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- ナノセルロース(B)が、セルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタルから選択された少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- アクリル樹脂(A1)が、ラクトン環を含む環構造を5〜60質量%含み、
ナノセルロース(B)が、セルロースナノファイバーを含み、
ナノセルロース(B)の割合が、樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部である、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。 - 厚み100μmの未延伸フィルムとしたときの50μm平面圧子を用いて測定されたユニバーサル硬度が、4N/mm2以上である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
- 厚み100μmの未延伸フィルムとしたときの内部ヘイズが0.5以下である請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の組成物で形成された成形体。
- フィルムである請求項9記載の成形体。
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